(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124108
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】熱溶着用メタクリル系樹脂組成物、溶着方法及び車両用部材
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20240905BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20240905BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240905BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09J133/00
B29C65/02
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032050
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】本吉 正典
【テーマコード(参考)】
4F211
4J040
【Fターム(参考)】
4F211AA21
4F211AB12
4F211AG07
4F211AH17
4F211AR06
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD07
4F211TN07
4J040DF021
4J040DF051
4J040GA07
4J040HA026
4J040HA136
4J040HB27
4J040JB01
4J040NA12
4J040NA15
(57)【要約】
【課題】(メタ)アクリル系重合体とカーボンブラック等の黒色顔料とその分散剤である脂肪酸塩とを含有するメタクリル系樹脂組成物において、熱溶着時の発泡現象を抑制し得る熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する熱溶着用メタクリル系樹脂組成物から形成された第1の部材の少なくとも一部を熱板に近接又は接触させて溶融させる工程と、前記第1の部材を前記熱板から引き離し、第2の部材と圧着する工程とを備える第1の部材と第2の部材の溶着方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記黒色顔料(B)は、カーボンブラック及び/又はチタンブラックである、請求項1に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記黒色顔料(B)は、カーボンブラックである、請求項2に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸亜鉛(C)の脂肪酸の炭素数が8~22である、請求項1に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸亜鉛(C)が、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、及びミリスチン酸亜鉛よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項4に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸亜鉛(C)が、ステアリン酸亜鉛である、請求項5に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)中のメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の含有割合が70質量%以上である、請求項1に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸亜鉛(C)を、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下含有する、請求項1に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項9】
車両用部材の原材料として用いられる、請求項1に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項10】
前記車両用部材が、テールランプカバー、ヘッドランプカバー及びメーターパネルから選択される、請求項9に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【請求項12】
(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する熱溶着用メタクリル系樹脂組成物から形成された第1の部材の少なくとも一部を熱板に近接又は接触させて溶融させる工程と、
前記第1の部材を前記熱板から引き離し、第2の部材と圧着する工程とを備える
第1の部材と第2の部材の溶着方法。
【請求項13】
第1の部材と第2の部材を熱溶着してなる複合部材を含む車両用部材であって、
前記第1の部材が、(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含む車両用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶着用メタクリル系樹脂組成物と、この熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を用いた溶着方法及び車両用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂は、その優れた外観、透明性、耐候性、耐薬品性等から、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネルといった車両の内外装材料等の車両用部材;建築部材;洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備向け部材等、多くの用途に用いられている。
メタクリル系樹脂を前記用途に用いる場合、かかる部材は、これにMS樹脂やABS樹脂等のようなスチレン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂等のメタクリル系樹脂以外の樹脂からなる部材と接合され、加工される。これらの部材を接合する方法として、熱溶着法(熱板溶着法とも称す。)が知られている(特許文献1~4)。
熱溶着法とは、上述した各部材の接合面をそれぞれ金属製の熱板に近接又は接触させることにより加熱、溶融し、熱板を退避させた後、樹脂が冷えて固まるまでに、これらを他の部材と溶着(圧着)して接合する方法であり、高い溶着強度が得られる。また、熱溶着法は、大きな部品同士を溶着することが可能であり、接着剤を塗布する手間や接着剤を硬化させる時間を省くことができる等の利点があることから、生産性に優れた方法である。
【0003】
一方で、メタクリル系樹脂を各種用途、特に車両用部材に適用する場合、耐候性や黒色の意匠性、隠蔽性を付与する目的で、カーボンブラック等の黒色顔料を配合することが行われている(特許文献5)。
特許文献5では、カーボンブラックの分散剤として、脂肪酸塩が配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-239823号公報
【特許文献2】特開2009-249528号公報
【特許文献3】国際公開第2009-125766号
【特許文献4】特開2009-249529号公報
【特許文献5】特開2019-131673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者による検討により、カーボンブラックと脂肪酸塩を含むメタクリル系樹脂組成物に熱溶着法を適用して他の樹脂部材との接合に用いると、接合部に発泡が生じ、得られる接合部材の外観や接合強度が損なわれることが見出された。
【0006】
本発明は、(メタ)アクリル系重合体とカーボンブラック等の黒色顔料とその分散剤である脂肪酸塩とを含有するメタクリル系樹脂組成物において、熱溶着時の発泡現象を抑制し得る熱溶着用メタクリル系樹脂組成物と、この熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を用いた溶着方法及び車両用部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため検討を重ねた結果、脂肪酸塩の中でも脂肪酸亜鉛を用いることで、発泡現象を抑制することができることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0008】
[1] (メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0009】
[2] 前記黒色顔料(B)は、カーボンブラック及び/又はチタンブラックである、[1]に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0010】
[3] 前記黒色顔料(B)は、カーボンブラックである、[2]に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0011】
[4] 前記脂肪酸亜鉛(C)の脂肪酸の炭素数が8~22である、[1]~[3]のいずれかに記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0012】
[5] 前記脂肪酸亜鉛(C)が、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、及びミリスチン酸亜鉛よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[4]に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0013】
[6] 前記脂肪酸亜鉛(C)が、ステアリン酸亜鉛である、[5]に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0014】
[7] 前記(メタ)アクリル系重合体(A)中のメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位の含有割合が70質量%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0015】
[8] 前記脂肪酸亜鉛(C)を、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上0.50質量部以下含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0016】
[9] 車両用部材の原材料として用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0017】
[10] 前記車両用部材が、テールランプカバー、ヘッドランプカバー及びメーターパネルから選択される、[9]に記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物。
【0018】
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
【0019】
[12] (メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する熱溶着用メタクリル系樹脂組成物から形成された第1の部材の少なくとも一部を熱板に近接又は接触させて溶融させる工程と、
前記第1の部材を前記熱板から引き離し、第2の部材と圧着する工程とを備える
第1の部材と第2の部材の溶着方法。
【0020】
[13] 第1の部材と第2の部材を熱溶着してなる複合部材を含む車両用部材であって、
前記第1の部材が、(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含む車両用部材。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、(メタ)アクリル系重合体とカーボンブラック等の黒色顔料とその分散剤である脂肪酸塩とを含有するメタクリル系樹脂組成物において、脂肪酸塩の中でも脂肪酸亜鉛を用いることで、熱溶着時の発泡現象を抑制して、外観や熱溶着接合強度に優れた樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る熱溶着方法を示す工程図である。
【
図2】実施例1~3及び比較例1の樹脂成形体の発泡現象の状態を示す微分干渉顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる少なくとも1種を意味し、「(メタ)アクリル系重合体」は、「アクリル系重合体」及び「メタクリル系重合体」から選ばれる少なくとも1種を意味する。
本発明において、「単量体」は未重合の化合物を意味し、「繰り返し単位」は単量体が重合することによって形成された前記単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
本発明において、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
本明細書において、「得られる樹脂成形体」は、本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を成形してなる成形体を意味する。
【0024】
<熱溶着用メタクリル系樹脂組成物>
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物(以下、適宜「メタクリル系樹脂組成物」という。)は、後述する(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含有する樹脂組成物である。
本発明のメタクリル系樹脂組成物において、熱溶着時の発泡が抑制される効果が奏されるメカニズムの詳細については明らかではないが、脂肪酸亜鉛(C)は、脂肪酸マグネシウム等の他の脂肪酸塩に比べて熱分解温度が高いため、脂肪酸塩の熱分解に起因する発泡が抑制されることによると考えられる。
また、脂肪酸亜鉛(C)は、(メタ)アクリル系重合体(A)との相溶性に優れるため、得られる樹脂成形体は優れた外観を有するものとなる。
【0025】
なお、前述の特許文献5には、カーボンブラックの分散剤としての脂肪酸塩として、ステアリン酸カルシウムの記載もあるが、特許文献5では、本発明において、発泡を抑制し得ない比較例の脂肪酸塩として挙げたステアリン酸マグネシウムとステアリン酸カルシウムとを並列して列挙しており、特許文献5には、脂肪酸塩の中でも特にステアリン酸カルシウム等の脂肪酸亜鉛(C)を用いることで、熱溶着時の発泡を抑制し得ることを示唆する記載は全くない。
もとより、特許文献5には、樹脂組成物を射出成形等の成形に供することは記載されているが、熱溶着に供するための検討はなされていない。
【0026】
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
(メタ)アクリル系重合体(A)は、本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物の構成成分の1つである。
本発明における(メタ)アクリル系重合体(A)は、好ましくはメタクリル酸メチル由来の繰り返し単位(以下、「メタクリル酸メチル単位」という。)を主成分とする重合体である。
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物は、前記(メタ)アクリル系重合体(A)を含有することにより、得られる樹脂成形体が優れた外観を有し、樹脂成形体の熱分解が抑制され、耐候性、成形性を良好にすることができる。
なお、本明細書において、「メタクリル酸メチル単位を主成分とする」とは、(メタ)アクリル系重合体(A)の総質量100%に対して、メタクリル酸メチル単位を70質量%以上含むことを言う。
【0027】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)の一実施形態としては、前記(メタ)アクリル系重合体(A)中のメタクリル酸メチル単位の含有割合が、該(メタ)アクリル系重合体(A)の総質量100%に対して、70質量%以上である重合体を挙げることができる。前記(メタ)アクリル系重合体(A)として、具体的には、メタクリル酸メチルの単独重合体、又は、メタクリル酸メチル単位70質量%以上100質量%未満、及びメタクリル酸メチル以外の単量体由来の繰り返し単位(以下、「他の単量体単位」という。)0質量%を超えて30質量%以下を含む共重合体を挙げることができる。
【0028】
前記他の単量体単位に用いられる「他の単量体」としては、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であれば、特に限定されるものではなく、一分子内にラジカル重合可能な二重結合を1つ有する単官能単量体であってもよいし、一分子内にラジカル重合可能な二重結合を2つ以上有する多官能単量体であってもよい。中でも、(メタ)アクリル系重合体(A)の流動性、成形性及び熱分解性のバランスに優れる観点から、アクリル酸エステルが好ましい。
【0029】
前記他の単量体として、アクリル酸エステルを使用する場合、前記(メタ)アクリル系重合体(A)が、該(メタ)アクリル系重合体(A)の総質量100%に対して、メタクリル酸メチル単位70質量%以上100質量%未満及びアクリル酸エステル由来の繰り返し単位(以下、「アクリル酸エステル単位」という。)0質量%を超えて30質量%以下を含有することが好ましく、メタクリル酸メチル単位80質量%以上99.9質量%以下及びアクリル酸エステル単位0.1質量%以上20質量%以下を含有することがより好ましく、メタクリル酸メチル単位90質量%以上99.5質量%以下及びアクリル酸エステル単位0.5質量%以上10質量%以下を含有することがさらに好ましい。
【0030】
前記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。これらのアクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアクリル酸エステルの中でも、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチルが好ましい。
【0031】
或いは又、前記(メタ)アクリル系重合体(A)の別の実施形態としては、主鎖に、(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」という。)と環構造由来の構造単位(以下、「環構造単位」という。)を含む重合体(a)を挙げることができる。
前記環構造単位としては、例えば、グルタル酸無水物構造単位、マレイン酸無水物構造単位、グルタルイミド構造単位、ラクトン環構造単位、及びN-置換マレイミド構造単位から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0032】
前記重合体(a)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合の下限値は、特に限定されないが、得られる樹脂成形体が、外観、加工性、機械的特性に優れるというメタクリル系樹脂本来の性能を損なわない観点から、前記重合体(a)に含まれる繰り返し単位の総モル数に対して、80.0mol%が好ましく、90.0mol%がより好ましく、94.0mol%がさらに好ましい。一方、(メタ)アクリル系重合体(A)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合の上限値は、特に限定されないが、得られる樹脂成形体の耐熱性に優れる観点から、99.999mol%が好ましく、99.9mol%が好ましく、99.5mol%がより好ましい。上記の好ましい上限値及び好ましい下限値は任意に組み合わせることができる。
【0033】
前記重合体(a)中の環構造単位の含有割合の下限値は、特に限定されないが、得られる樹脂成形体が耐熱性に優れる観点から、前記重合体(a)に含まれる繰り返し単位の総モル数に対して、0.001mol%が好ましく、0.01mol%がより好ましく、0.05mol%がさらに好ましい。重合体(a)中の環構造単位の含有割合の上限値は、特に限定されないが、得られる樹脂成形体が耐熱性に優れる観点から、10.0mol%が好ましく、成形着色の抑制、成形外観、及び耐候性に優れる観点から、3.0mol%がより好ましく、0.3mol%がさらに好ましい。
上記の好ましい上限値及び好ましい下限値は任意に組み合わせることができる。
【0034】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸などの単量体に由来する構成単位である。これらの構成単位は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。得られる樹脂成形体の熱安定性が向上する観点から、メタクリル酸メチル単位が好ましい。
【0035】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位は、カルボン酸基を有する単量体に由来する構成単位(以下、「カルボン酸基を有する単量体単位」という。)を含むことができる。カルボン酸基を有する単量体単位は、環化反応により環構造単位を形成するので、(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖中に環構造単位を導入できる。したがって、(メタ)アクリル系重合体(A)に、未反応のカルボン酸基を有する単量体単位が含まれていてもよい。カルボン酸基を有する単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記重合体(a)の一態様としては、前記(メタ)アクリル酸エステル単位として、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位(a1)(以下、「単位(a1)」という。)及び(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位(a2)(以下、「単位(a2)」という。)、並びに、前記環構造単位としてグルタル酸無水物構造単位(a3)(以下、「単位(a3)」と略する。)を含む重合体が挙げられる。
【0037】
前記単位(a3)は、以下の化学構造式で示される構造単位である。
【0038】
【化1】
[式中、R
A及びR
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。]
【0039】
前記重合体(a)が単位(a3)を含むことにより、得られる樹脂成形体の耐熱性を向上できる。
【0040】
前記重合体(a)中の単位(a1)の含有割合の下限値は、特に限定されないが、得られる樹脂成形体が、外観に優れ、加工性、機械的特性に優れるというメタクリル系樹脂本来の性能を損なわない観点から、重合体(a)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、80.0mol%が好ましく、90.0mol%がより好ましく、94.0mol%がさらに好ましい。前記重合体(a)中の単位(a1)の含有割合の上限値は、特に限定されないが、得られる樹脂成形体の耐熱性に優れる観点から、99.499mol%が好ましく、99.0mol%がより好ましく、98.0mol%がさらに好ましい。
上記の好ましい上限値及び好ましい下限値は任意に組み合わせることができる。
【0041】
前記単位(a2)を構成する(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの混合物をいう。得られる樹脂成形体の耐熱性に優れることから、メタクリル酸が好ましい。
【0042】
前記重合体(a)中の単位(a2)の含有割合の下限値は、得られる樹脂成形体の耐熱性、機械特性に優れる観点から、重合体(a)に含まれる繰り返し単位の総モル数に対して、0.5mol%が好ましく、1.0mol%がより好ましく、2.0mol%がさらに好ましい。重合体(a)中の単位(a2)の含有割合の上限値は、得られる樹脂成形体の成形外観、低吸水性、及び成形性に優れるというメタクリル系樹脂本来の性能を損なわない観点から、20.0mol%が好ましく、7.0mol%がより好ましく、3.5mol%がさらに好ましい。
上記の好ましい上限値及び好ましい下限値は任意に組み合わせることができる。
【0043】
重合体(a)中の単位(a3)の含有割合の下限値は、得られる樹脂成形体が耐熱性に優れる観点から、重合体(a)に含まれる繰り返し単位の総モル数に対して、0.001mol%が好ましく、0.01mol%がより好ましく、0.05mol%がさらに好ましい。重合体(a)中の単位(a3)の含有割合の上限値は、得られる樹脂成形体の成形着色の抑制、成形外観、及び耐候性に優れる観点から、10.0mol%が好ましく、3.0mol%がより好ましく、0.3mol%がさらに好ましい。
上記の好ましい上限値及び好ましい下限値は任意に組み合わせることができる。たとえば、重合体(a)中の単位(a3)の含有割合は、重合体(a)に含まれる繰り返し単位の総モル数に対して、0.001mol%以上10.0mol%以下であり、0.01mol%以上2.0mol%以下が好ましく、0.3mol%以上0.15mol%以下がより好ましい。
【0044】
前記単位(a3)は、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸を共重合させた共重合体において、単位(a1)に由来するメトキシカルボニル基と、該単位(a1)に隣接する単位(a2)に由来するカルボキシル基との環化反応により構築された単位であってもよい。
【0045】
なお、本明細書において、単位(a1)、単位(a2)及び単位(a3)を含む重合体中の各単位の含有率は、1H-NMR測定から算出した値とする。具体的には、国際公開第2019/013186号に開示された方法を用いることができる。
【0046】
また、単位(a1)、単位(a2)及び単位(a3)を含む重合体を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2017-022393号や、国際公開第2019/013186号に開示された製造方法を用いることができる。
【0047】
(メタ)アクリル系重合体(A)の質量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、50,000以上150,000以下であり、70,000以上130,000以下がより好ましい。(メタ)アクリル系重合体(A)の質量平均分子量が50,000以上であると、得られる樹脂成形体の機械特性に優れる。また、(メタ)アクリル系重合体(A)の質量平均分子量が150,000以下であると、熱溶着用メタクリル系樹脂組成物の流動性に優れる。
なお、本明細書において、質量平均分子量は、標準試料として標準ポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値とする。
(メタ)アクリル系重合体(A)の質量平均分子量を制御するためには、単量体混合物の重合において連鎖移動剤の量を調整することが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法が挙げられる。これらの重合方法の中でも、生産性に優れる観点から、塊状重合法、懸濁重合法が好ましい。
【0049】
<黒色顔料(B)>
黒色顔料(B)としては、カーボンブラック、チタンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラック、ペリレンブラック、酸化鉄系黒色顔料等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中で、カーボンブラック、チタンブラックが得られる樹脂成形体の色調や、メタクリル系樹脂組成物の成形性及び分散性に優れる観点から好ましく、より好ましくはカーボンブラックである。
【0050】
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物中に含まれるカーボンブラック等の黒色顔料(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.07質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が更に好ましい。黒色顔料(B)の含有量が上記下限以上であれば、黒色顔料(B)を配合することによる耐候性、意匠性等を十分に得ることができる。一方、本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物中に含まれるカーボンブラック等の黒色顔料(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.20質量部以下が好ましく、0.17質量部以下がより好ましく、0.15質量部以下が更に好ましい。黒色顔料(B)の含有量が上記上限以下であれば、得られる樹脂成形体の色調や、メタクリル系樹脂組成物の成形性及び分散性が良好なものとなる。
【0051】
<脂肪酸亜鉛(C)>
カーボンブラック等の黒色顔料(B)の分散剤としての脂肪酸亜鉛(C)の脂肪酸は、直鎖炭化水素のモノカルボン酸であり、その炭素数は、得られる樹脂成形体の外観や耐候性の観点から好ましくは8~22であり、より好ましくは12~20、更に好ましくは14~18である。
【0052】
前記脂肪酸亜鉛(C)としては、具体的には、ラウリル酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ミリスチル酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛のような飽和脂肪酸亜鉛や、オレイン酸亜鉛、リノール酸亜鉛のような不飽和脂肪酸亜鉛等が挙げられる。これらの脂肪酸亜鉛(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの脂肪酸亜鉛(C)の中でも、得られる樹脂成形体の外観や耐候性の観点から、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、及びミリスチル酸亜鉛が好ましく、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
【0053】
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物中に含まれる脂肪酸亜鉛(C)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.07質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が更に好ましい。脂肪酸亜鉛(C)の含有量が上記下限以上であれば、脂肪酸亜鉛(C)を配合することによるカーボンブラックの分散性向上の効果を十分に得ることができる。一方、脂肪酸亜鉛(C)の含有量が多過ぎると発泡抑制効果が損なわれるおそれがあることから、本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物中に含まれる脂肪酸亜鉛(C)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.50質量部以下が好ましく、0.25質量部以下がより好ましく、0.15質量部以下が更に好ましい。
【0054】
<他の添加剤>
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物には、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲内で、必要に応じて、紫外線吸収剤、光拡散剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、熱安定化剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤等を含有させてもよい。
【0055】
<メルトフローレート(MFR)>
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、好ましくは、ISO 1133-1:2011に準じ、温度230℃、荷重3.8kgの条件で測定したMFRが、0.1~10g/10minの範囲内にあることが好ましく、0.2~5.0g/10minの範囲がより好ましく、0.3~2.0g/10minの範囲がさらに好ましい。
前記MFRが10g/10min以下であることより、熱溶着法におけるメタクリル系樹脂組成物の溶融時に気泡等の発生がより一層効果的に抑制される。前記MFRが0.1g/10min以上であることにより、メタクリル系樹脂組成物の成形性が良好となる。
【0056】
前記MFRを0.1~10g/10minに制御するためには、前述したような単量体単位の組成比を制御することや、前記(メタ)アクリル系重合体(A)の質量平均分子量を調整する方法等が有効である。
【0057】
<熱溶着用メタクリル系樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、下記(1)又は(2)の方法が挙げられる。
(1)(メタ)アクリル系重合体(A)と黒色顔料(B)及び脂肪酸亜鉛(C)とを、単独押出機や二軸押出機に投入し、加熱溶融して混練することにより混合する方法。
(2)メタクリル酸メチルを主成分とする単量体に、黒色顔料(B)及び脂肪酸亜鉛(C)を混合して、重合する方法。
【0058】
<熱溶着用メタクリル系樹脂組成物の成形方法>
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る場合の成形方法としては、特に制限はなく、一般的に樹脂組成物の成形に用いられる成形方法、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
【0059】
<用途>
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物は、この樹脂組成物から得られる樹脂成形体を熱溶着法に適した場合に、熱溶着部に発泡が生じにくい。そのため、本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体は、熱溶着用の部材として好適に使用できる。
特に本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物は、その熱溶着性、黒色顔料(B)による耐候性、黒色発色性(意匠性、隠蔽性)に優れることから、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネルといった車両の内外装材料等の車両用部材用途に好適である。
【0060】
[溶着方法]
本発明の溶着方法は、上述した本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物から形成された第1の部材の少なくとも一部を熱板に近接又は接触させて溶融させる工程と、第1の部材を熱板から引き離し、第2の部材と圧着する工程とを備えることで第1の部材と第2の部材とを熱溶着する方法である。
【0061】
ここで、第2の部材の材質としては、前記(メタ)アクリル系重合体(A)と熱溶着する材質であれば、特に限定されない。例えば、ABS、SAN、AS、MS樹脂等のスチレン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂が挙げられる。また、第2の部材には、本発明に係る熱溶着用メタクリル系樹脂組成物を用いることもできる。
【0062】
図1は、本発明の溶着方法の一実施形態を示す工程図である。
第1の部材1と第2の部材2との間に熱板3を配置し(
図1(a))、第1の部材1及び第2の部材2の少なくとも一部を熱板3に接触させてそれぞれ溶融させた後(
図1(b))、熱板3から引き離して(
図1(c))、第1の部材の溶融部1aと第2の部材の溶融部2aとを溶着(圧着)して、第1の部材1と第2の部材2を接合することができる(
図1(d))。
【0063】
[車両用部材]
本発明の車両用部材は、第1の部材と第2の部材を熱溶着してなる複合部材を含む車両用部材であって、前記第1の部材が、(メタ)アクリル系重合体(A)と、黒色顔料(B)と、脂肪酸亜鉛(C)とを含む本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物よりなるものであり、上記した本発明の溶着方法により製造される。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
[原材料]
以下の実施例及び比較例では、熱溶着用メタクリル系樹脂組成物の材料として以下のものを用いた。
・(メタ)アクリル系重合体(A)(A-1):アクリペット(登録商標)VH001(商品名、三菱ケミカル(株)製)
・黒色顔料(B-1):三菱(登録商標)カーボンブラック#45(商品名、三菱ケミカル(株)製)
・ステアリン酸亜鉛(C-1):Zn-St(商品名、日東化成工業(株)製)
・ステアリン酸マグネシウム(X-1):Mg-St(商品名、日東化成工業(株)製)
【0066】
[実施例1]
(メタ)アクリル系重合体(A)(A-1)100質量部、黒色顔料(B-1)0.15質量部及びステアリン酸亜鉛(C-1)0.1質量部を二軸押出機(機種名「PCM45」、(株)池貝製)に供給し、250℃で混練し、メタクリル系樹脂組成物の黒色ペレットを得た。得られた黒色ペレットを、射出成形機(機種名「FAS-T100D」、ファナック(株)製)に供給し、成形温度を270℃、金型温度を60℃とし、樹脂成形体(幅140mm、長さ140mm、厚さ3mm)を得た。
【0067】
[実施例2~3、比較例1]
表1に示す配合とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、樹脂成形体を得た。
【0068】
[熱溶着性試験]
実施例1~3及び比較例1で得られた樹脂成形体について、以下の方法で熱溶着試験を行い、発泡現象の有無を調べた。
樹脂成形体の切断面を、以下の評価装置及び評価条件で加熱し、微分干渉顕微鏡による観察で発泡現象の状態を調べ、結果を表1に示した。
(1)評価装置;日本ジュラックス製M型オートガスウェルダー
(トーチチップ内径0.5mm)
(2)評価条件;酸水素ガス圧力 250mmH
2O
トーチ-サンプル間距離 60mm
トーチ送り速度 100~300cm/分
(3)発泡痕の評価;微分干渉顕微鏡による観察
また、微分干渉顕微鏡写真を
図2(a)~(d)にそれぞれ示した。
なお、発泡現象は下記評価基準で評価した。
AA:発泡痕が目視で確認できない、またはあってもごくわずかな程度である。
A:発泡痕がわずかにある。
B:発泡痕がわずかにあり、一部発泡痕が密集している。
C:発泡痕が散見され、全体的に発泡痕が点在している。
【0069】
【0070】
以上の評価結果から、脂肪酸塩として脂肪酸亜鉛(C)を用いることにより、熱溶着時の発泡を抑制することができることが分かる。
これに対して、同じ脂肪酸塩であっても、前述の特許文献5において、カーボンブラックの分散剤として脂肪酸亜鉛と同等に列記されている脂肪酸マグネシウムでは、発泡を抑制することはできず、熱溶着用メタクリル系樹脂組成物として熱溶着時の発泡を抑制するためには、脂肪酸塩として脂肪酸亜鉛(C)を用いる必要があることが分かる。
本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物は、熱溶着時の発泡抑制効果に優れている。そのため、本発明の熱溶着用メタクリル系樹脂組成物は、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネルといった車両の内外装材料等の車両用部材;建築部材;洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備向け部材の原材料に好適に用いることができ、特に、車両用部材の原材料に好適である。
車両用部品としては、例えば、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、メーターパネル、ドアミラーハウジング、ピラーカバー(サッシュカバー)、ライセンスガーニッシュ、フロントグリル、フォグガーニッシュ、エンブレム等が挙げられる。