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  • 特開-光学積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124169
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032156
(22)【出願日】2023-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149CA02
2H149DA02
2H149EA02
2H149EA05
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA02Z
2H149FA05X
2H149FA24Y
2H149FA66
2H149FC08
2H149FD05
2H149FD09
(57)【要約】
【課題】偏光サングラス越しに表示画像を視認した場合であっても、表示角度に依存せずに視認することができ、また表示角度による色味の差が低減された画像表示装置を構成することができる光学積層体を提供する。
【解決手段】第1位相差板、偏光子、第2位相差板、および粘着剤層をこの順に有し、前記第1位相差板は、下記式(1)の関係を満たし、前記第2位相差板は、重合性液晶化合物が重合した液晶硬化物を含む位相差層を2層以上含み、下記式(2)及び(3)の関係を満たす、光学積層体。
1.0≦Re1(450)/Re1(550) (1)
70nm≦Re2(450)≦130nm (2)
Re2(450)/Re2(550)≦1.0 (3)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位相差板、偏光子、第2位相差板、および粘着剤層をこの順に有し、
前記第1位相差板は、
その遅相軸が前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ1が40°~50°または-40°~-50°となるように配置され、かつ
波長λnmの光に対する面内位相差値をRe1(λ)とすると、下記式(1)の関係を満たし、
前記第2位相差板は、
重合性液晶化合物が重合した液晶硬化物を含む位相差層を2層以上含み、
2層以上の前記位相差層のうちの少なくとも2層は互いの遅相軸が面内で交差し、
波長λnmの光に対する面内位相差値をRe2(λ)とすると、下記式(2)及び(3)の関係を満たす、光学積層体。
1.0≦Re1(450)/Re1(550) (1)
70nm≦Re2(450)≦130nm (2)
Re2(450)/Re2(550)≦1.0 (3)
【請求項2】
前記第1位相差板は、熱可塑性樹脂フィルムを延伸したフィルムであり、厚みが10μm~100μmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1位相差板は、前記Re1(λ)が下記式(4)および(5)を満たす請求項1または請求項2に記載の光学積層体。
100nm≦Re1(450)≦130nm (4)
100nm≦Re1(550)≦130nm (5)
【請求項4】
前記偏光子と前記第2位相差板の間に配置された保護フィルムをさらに有し、
前記保護フィルムは、波長550nmの光の面内位相差値が0nm~20nmである、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第2位相差板を構成する前記位相差層のうちの少なくとも2層は遅相軸が面内で交差する、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第2位相差板を構成する2層以上の位相差層のうちで前記偏光子に最も近い層である第1層は、その遅相軸が前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ2が10°~20°または-10°~-20°である、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第2位相差板を構成する2層以上の位相差層のうちで前記偏光子に最も近い層である第1層は、その遅相軸と前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ2の符号が、前記角度θ1の符号と逆である、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記第1位相差板の前記偏光子とは反対側の表面にさらに所定の紫外線吸収特性を有する層を有し、
前記所定の紫外線吸収特性は、波長λnmの光の透過率をTr(λ)とすると、下記式(6)、(7)、および(8)の関係を満たす特性である、請求項1または2に記載の光学積層体。
Tr(450)≧85% (6)
30%≦Tr(420)≦75% (7)
0%≦Tr(400)≦10% (8)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置において、画像表示パネルの視認側に円偏光板を配置して、外来光の反射による視認性の低下を抑制する方法が採用されている。
【0003】
円偏光板は偏光子と位相差板とが積層された光学積層体である。円偏光板では、画像表示パネルに向かう外来光を偏光子により直線偏光に変換し、続く位相差板により円偏光に変換する。円偏光である外来光は、画像表示パネルの表面で反射するものの、この反射の際に偏光面の回転方向が逆転し、位相差板により直線偏光に変換された後、続く偏光子により遮光される。その結果、外部への外来光の出射が抑制される。円偏光板の構成として、液晶化合物の硬化物を含む位相差板を有する構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-27431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートフォン等のポータブル画像表示装置は、通常、縦置きおよび横置きなどの異なる表示角度で用いることができるように構成されている。ポータブル画像表示装置は、屋外の使用において、偏光サングラス越しに表示画像を視認することがある。偏光サングラス越しに表示画像を視認すると、表示角度によって、視認できない場合や視認される画像の色味に違いが生じる場合がある。
【0006】
本発明は、反射光が抑制され、かつ偏光サングラス越しに表示画像を視認した場合であっても、表示角度に依存せずに視認することができ、また表示角度による色味の差が低減された画像表示装置を構成することができる光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の光学積層体を提供する。
〔1〕第1位相差板、偏光子、第2位相差板、および粘着剤層をこの順に有し、
前記第1位相差板は、
その遅相軸が前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ1が40°~50°または-40°~-50°となるように配置され、かつ
波長λnmの光に対する面内位相差値をRe1(λ)とすると、下記式(1)の関係を満たし、
前記第2位相差板は、
重合性液晶化合物が重合した液晶硬化物を含む位相差層を2層以上含み、
2層以上の前記位相差層のうちの少なくとも2層は互いの遅相軸が面内で交差し、
波長λnmの光に対する面内位相差値をRe2(λ)とすると、下記式(2)及び(3)の関係を満たす、光学積層体。
1.0≦Re1(450)/Re1(550) (1)
70nm≦Re2(450)≦130nm (2)
Re2(450)/Re2(550)≦1.0 (3)
〔2〕前記第1位相差板は熱可塑性樹脂フィルムを延伸したフィルムであり、厚みが10μm~100μmである、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕前記第1位相差板は、前記Re1(λ)が下記式(4)および(5)を満たす請求項1または請求項2に記載の光学積層体。
100nm≦Re1(450)≦130nm (4)
100nm≦Re1(550)≦130nm (5)
〔4〕前記偏光子と前記第2位相差板の間に配置された保護フィルムをさらに有し、
前記保護フィルムは、波長550nmの光の面内位相差値が0nm~20nmである、〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
〔5〕前記第2位相差板を構成する前記位相差層のうちの少なくとも2層は遅相軸が面内で交差する、〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
〔6〕前記第2位相差板を構成する2層以上の位相差層のうちで前記偏光子に最も近い層である第1層は、その遅相軸が前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ2が10°~20°または-10°~-20°である、〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
〔7〕前記第2位相差板を構成する2層以上の位相差層のうちで前記偏光子に最も近い層である第1層は、その遅相軸が前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ2の符号が、前記角度θ1の符号と逆である、〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
〔8〕前記第1位相差板の前記偏光子とは反対側の表面にさらに所定の紫外線吸収特性を有する層を有し、
前記所定の紫外線吸収特性は、波長λnmの光の透過率をTr(λ)とすると、下記式(6)、(7)、および(8)の関係を満たす特性である、〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
Tr(450)≧85% (6)
30%≦Tr(420)≦75% (7)
0%≦Tr(400)≦10% (8)
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、反射光が抑制され、かつ偏光サングラス越しに表示画像を視認した場合であっても、表示角度に依存せずに視認することができ、また表示角度による色味の差が低減された画像表示装置を構成することができる光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の図面においては、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0011】
[光学積層体]
本発明の光学積層体は、第1位相差板、偏光子、第2位相差板、および粘着剤層をこの順に有する。
第1位相差板は、その遅相軸が前記偏光子の吸収軸に対してなす角度θ1が40°~50°または-40°~-50°となるように配置され、かつ波長λnmの光の面内位相差値をRe1(λ)とすると、下記式(1)の関係を満たす。
1.0≦Re1(450)/Re1(550) (1)
上記式(1)を満たす第1位相差板を有する光学積層体を画像表示装置の前面に配置することにより、偏光サングラス越しに表示画像を視認した場合であっても、表示角度に依存せずに視認することができ、また表示角度による色味の差が低減され、視認性を向上させることができる。
【0012】
第2位相差板は、重合性液晶化合物が重合した液晶硬化物を含む位相差層を2層以上含み、2層以上の前記位相差膜はそのうちの少なくとも2層は互いの遅相軸が面内で交差し、かつ波長λnmの光の面内位相差値をRe2(λ)とすると、下記式(2)及び(3)の関係を満たす。
70nm≦Re2(450)≦130nm (2)
Re2(450)/Re2(550)≦1.0 (3)
前記第2位相差板を構成する2層以上の前記位相差層は、式(1-2)
1.0≦Re2(450)/Re2(550) (1-2)
の関係を満たすことが好ましい。
前記第2位相差板が上記式(2)および式(3)の関係を満たし、前記第2位相差板を構成する2層以上の前記位相差層の全てが式(1-2)の関係を満たす光学積層体を画像表示装置の前面に配置することにより反射光を抑制することができ、また反射光の色付きを抑制することができる。
【0013】
図1は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。図1に示すように、光学積層体1は、前面側から、表面処理層11、第1保護フィルム12、第1貼合層13、偏光子14、第2貼合層15、第2保護フィルム16、第3貼合層17、第2位相差板18、粘着剤層19を備え、これらがこの順に厚み方向に積層されている。
【0014】
本明細書において、偏光子を含む構成要素を直線偏光板とも称する。直線偏光板は偏光子のみからなるものであってもよく、偏光子以外の構成要素を含むものであってもよい。光学積層体1において、表面処理層11、第1保護フィルム12、第1貼合層13、偏光子14、第2貼合層15、第2保護フィルム16からなる層構成部分を直線偏光板10と称する。
【0015】
光学積層体1において、第1保護フィルム12は第1位相差板に相当する。第1位相差板は、直線偏光板に含まれる構成要素であってもよく、また直線偏光板とは別に設けられている構成要素であってもよい。図1に示される各層は一層からなる構成であってもよく、複数層からなる構成であってもよい。光学積層体1は、図1に示されている層以外の層を有している構成であってもよく、また図1に示されている層の一部の層を有しない構成であってもよい。
【0016】
[直線偏光板]
直線偏光板は、光吸収異方性の機能を有するフィルムであり、一般的には二色性色素を一軸配向した偏光子を含むフィルムである。二色性色素を一軸配向させるためには、PVA等のポリマー中にヨウ素や有機二色性染料を含浸させた状態で一軸延伸したフィルム(以下、「偏光子」ともいう)や、重合性液晶化合物と二色性色素を含む組成物(以下、「偏光膜形成用組成物」ともいう)から二色性色素と重合性液晶化合物を配向させることによって形成される二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体からなる光学異方性層(以下、「偏光膜」ともいう)から作製する事ができる。すなわち、延伸ポリマーや重合性液晶化合物の重合体中に包摂された二色性色素によって光が異方性吸収されることによって偏光機能を発現する。
【0017】
直線偏光板の偏光性能は、分光光度計を用いて測定することができる。例えば、可視光である波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向(配向垂直方向)の透過率(T1)及び吸収軸方向(配向方向)の透過率(T2)を、分光光度計にプリズム偏光子をセットした装置を用いてダブルビーム法で測定することができる。可視光範囲での偏光性能は、下記式(11)ならびに(12)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)で算出することができる。また、同様に測定した透過率からC光源の等色関数を用いて、L(CIE)表色系における色度a及びbを算出することで、直線偏光板単体の色相(単体色相)、直線偏光板を平行配置した色相(平行色相)、直線偏光板を直交配置した色相(直交色相)が得られる。a及びbは値が0に近いほど、ニュートラルな色相であると判断できる。
単体透過率(%)= (T1+T2)/2 ・・・(11)
偏光度(%) = (T1-T2)/(T1+T2)×100 ・・・(12)
【0018】
直線偏光板の視感度補正偏光度Pyは、通常80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上であり、99.9%以上でれば液晶ディスプレイに好適に用いる事ができる。直線偏光板の視感度補正偏光度Pyを高くすることは、光学積層体の反射防止機能を高めるうえで有利である。視感度補正偏光度Pyが80%未満であると、反射防止フィルムとして使用した際の反射防止機能を果たせないことがある。
【0019】
直線偏光板の視感度補正単体透過率Tyは、高くなるほど白表示時の明瞭性が増すが、式(11)と式(12)の関係からわかるように、単体透過率を高くしすぎると偏光度が下がるという問題がある。よって、30%以上60%以下が好ましく、より好ましくは35%以上55%以下、さらに好ましくは40%以上50%以下であり、さらに好ましくは40%以上45%以下である。視感度補正単体透過率Tyが過度に高いと視感度補正偏光度Pyが低くなりすぎて、反射防止フィルムとして使用した際の反射防止機能が不十分となることがある。
【0020】
<フィルムから形成される偏光子>
PVA等のポリマー中にヨウ素や有機二色性染料を含浸させた状態で一軸延伸したフィルムである偏光子は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0021】
偏光子の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。該厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であればよい。
【0022】
ポリビニルアルコール系フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間でフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いてフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法、テンターを使用して幅方向に延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶媒を用い、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。また、熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布した後に乾燥処理を施し、熱可塑性樹脂フィルムと共に上記方法にて延伸してもよい。
【0023】
ポリビニルアルコール系フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。
【0024】
<塗布膜から形成される偏光子>
二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体からなる光学異方性層である偏光子は、色相を任意に制御可能である点、ならびに大幅に薄型化できる点、さらに熱による延伸緩和が無いため非収縮性を有する点で例えば、フレキシブルディスプレイ用途に好適に用いる事ができる。
【0025】
偏光子は、必要に応じて基材上に形成された配向膜上に、偏光子形成用組成物を塗布し、上記偏光子形成用組成物に含まれる二色性色素が配向することによって形成される。偏光子は厚さが0.1μm以上5μm以下の膜であり、より好ましくは0.3μm以上4μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。膜厚がこの範囲よりも薄くなると、必要な光吸収が得られない場合があり、かつ、膜厚がこの範囲よりも厚くなると、配向膜による配向規制力が低下し、配向欠陥を生じやすい傾向にある。また、偏光子形成用組成物は、溶剤、光重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤及び密着性向上剤等をさらに含み得る。
【0026】
二色性色素と重合性液晶化合物が基材面に対して水平配向した光学異方層は、波長λnmの光に対する配向方向の吸光度A1(λ)と配向面内垂直方向の吸光度A2(λ)の比(二色比)が7以上であれば好ましく、20以上であればより好ましく、さらに好ましくは40以上である。この値が高ければ高い程、吸収選択性の優れる偏光板である。二色性色素の種類にもよるが、ネマチック液晶相の状態で硬化した液晶硬化膜の場合には5~10程度である。
【0027】
吸収波長の異なる2種以上の二色性色素を混合することで、様々な色相の偏光子を作製することができ、可視光全域に吸収を有する偏光子とすることができる。このような吸収特性を有する偏光子とすることで、様々な用途に展開しうる。
【0028】
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物(以下、重合性液晶ともいう)である。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよいが、後述する二色性色素と混合する場合には、サーモトロピック液晶が好ましい。重合性液晶化合物はモノマーであっても良いし、二量体以上重合したポリマーであっても良い。
【0029】
重合性液晶化合物がサーモトロピック液晶である場合は、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。高い二色性を発現し得るという観点で、重合性液晶化合物が示す液晶状態は、スメクチック相であることが好ましく、高次スメクチック相であれば高性能化の観点からより好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相またはスメクチックL相を形成する高次スメクチック液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相またはスメクチックI相を形成する高次スメクチック液晶化合物がさらに好ましい。重合性液晶が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、偏光性能のより高い偏光子を製造することができる。また、このように偏光性能の高い偏光子はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、その周期間隔が3~6Åである膜を得ることができる。本発明の偏光子は、この重合性液晶がスメクチック相の状態で配向した重合性液晶の重合体を含むことが、より高い偏光特性が得られるという観点から好ましい。
【0030】
重合性液晶化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。後述する他の化合物を含む重合性液晶組成物は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い偏光子を得る観点から、重合性液晶組成物に含まれる全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0031】
本発明の偏光子形成用組成物における重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、重合性液晶組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0032】
(二色性色素)
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有する特性を有する事が好ましく、380~680nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものがより好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素などが挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素およびトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、組み合わせてもよいが、可視光全域で吸収を得るためには、2種類以上の二色性色素を組み合わせるのが好ましく、3種類以上の二色性色素を組み合わせるのがより好ましい。
【0033】
アゾ色素としては、例えば、式(XVI)で表される化合物(以下、「化合物(XVI)」ということもある)が挙げられる。
-A(-N=N-A-N=N-A-T(XVI)
[式(XVI)中、AおよびAおよびAは、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルエステル基、置換基を有していてもよい4,4‘-スチルベニレン基、または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、TおよびTは電子吸引基あるいは電子放出基であり、アゾ結合面内に対して実質的に180°の位置に有する。pは0~4の整数を表す。pが2以上である場合、各々のAは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0034】
二色性色素の含有量(複数種含む場合にはその合計量)は、良好な光吸収特性を得る観点から、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常1~60質量部であり、好ましくは1~40質量部であり、より好ましくは1~20質量部である。二色性色素の含有量がこの範囲より少ないと光吸収が不十分となり、十分な偏光性能が得られず、この範囲よりも多いと液晶分子の配向を阻害する場合がある。
【0035】
<フィルムから形成される偏光子の製造方法>
偏光子は、通常、PVA系フィルムを一軸延伸する工程、PVA系フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理して架橋させる工程、及びホウ酸水溶液による架橋処理後に水洗する工程(以下、ホウ酸処理ともいう。)を経て、製造される。
【0036】
PVA系フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間でフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いてフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法、テンターを使用して幅方向に延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶媒を用い、PVA系フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0037】
PVA系フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にPVA系フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、PVA系フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
【0038】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常0.01~1質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒間程度である。
【0039】
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常0.0001~10質量部程度であり、好ましくは0.001~1質量部である。この染料水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性有機染料水溶液の温度は、通常20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10~1,800秒間程度である。
【0040】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたPVA系フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により、行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒間程度であり、好ましくは150~600秒間、さらに好ましくは200~400秒間である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0041】
ホウ酸処理後のPVA系フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたPVA系フィルムを水に浸漬する方法により、行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒間程度である。
【0042】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒間程度であり、好ましくは120~600秒間である。乾燥処理により、偏光子中の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、偏光子の総質量に対して通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%以上であると、偏光子は十分な可撓性を有するため、乾燥後に損傷したり、破断したりすることを抑制することができる。また水分率が20質量%以下であると、偏光子は、十分な熱安定性を有する。
【0043】
以上のようにして、PVA系フィルムに二色性色素が吸着配向した偏光子を製造することができる。
【0044】
また、上記で得られた偏光子は、さらにその片面又は両面に、上記接着剤を介して保護フィルムが貼合されていてもよい。
【0045】
<保護フィルム>
保護フィルムは偏光子の表面を保護する機能を有する。偏光子と保護フィルムとは互いに直接積層されていてもよい。ここで「直接積層されている」とは、保護フィルムの自己粘着性によって偏光子に積層されている態様、及び、接着剤又は粘着剤を介して積層されている態様を含む。保護フィルムは、偏光子との密着性を向上するため、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(易接着層ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。
【0046】
保護フィルムとしては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方
性、延伸性等に優れる樹脂フィルムを用いることもできる。樹脂フィルムは熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。このような樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。かかる材質の保護フィルムは市場から容易に入手できる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。
【0047】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)、ポリプロピレン樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)のような鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0048】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0049】
ポリエステル系樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸またはその誘導体と多価アルコールとの重縮合体が一般的である。多価カルボン酸またはその誘導体としては2価のジカルボン酸またはその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0050】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらのセルロースエステル系樹脂を構成する重合単位を複数種有する共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものも挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50~100重量%、好ましくは70~100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0052】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。ポリカーボネート系樹脂の詳細は、例えば、特開2012-31370号公報に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0053】
保護フィルムの厚さは、好ましくは0.1μm~60μm、より好ましくは0.5μm~40μm、更に好ましくは1μm~30μmである。
【0054】
保護フィルムは偏光子より視認側となるように配置して用いることができる。したがって、保護フィルムには、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護フィルムには、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、位相差板付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。光学積層体1において、偏光子14より視認側に配置される第1保護フィルム11は位相差が付与されている第1位相差板である。第1位相差板については後段で詳述する。
【0055】
上記熱可塑性樹脂を含むフィルムを延伸することにより、保護フィルムを作製することができる。延伸処理としては、一軸延伸や二軸延伸等が挙げられる。延伸方向としては、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向(MD)に斜交する方向等が挙げられる。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。延伸処理は、例えば出口側の周速を大きくした2対以上のニップロールを用いて、長手方向(機械流れ方向:MD)に延伸したり、未延伸フィルムの両側端をチャックで把持して機械流れ方向に直交する方向(TD)に広げたりすることで行うことができる。この際、フィルムの厚みを調整したり、延伸倍率を調整したりすることによって、位相差値及び波長分散を制御することが可能である。また、樹脂に波長分散調整剤を添加したりすることによって、波長分散値を制御することが可能である。
【0056】
前記保護フィルムは、目的に応じて任意の適切な添加剤を含有し得る。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤などの帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;位相差低減剤などが挙げられる。含有される添加剤の種類、組み合わせ、含有量などは、目的や所望の特性に応じて適切に設定され得る。
【0057】
また、所望の表面光学特性又はその他の特徴を付与するために、保護フィルムの外面に表面処理層を設けることができる。表面処理層の具体例は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層を含む。表面処理層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。表面処理層は、保護フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
【0058】
光学積層体1において、第1保護フィルム12および第2保護フィルム16が上述の保護フィルムに相当する。光学積層体1において、第1保護フィルム11は、偏光子14より視認側に配置される保護フィルムであり、その視認側表面に表面処理層11が形成されている。第2保護フィルム16は、偏光子14と第2位相差板18との間に配置される。第2保護フィルム16は、斜め方向から観察される画像表示装置の反射光の色づき抑制の観点から、波長550nmの光の面内位相差値が0nm~20nmであることが好ましく、0nm~10nmであることがより好ましく、0nm~5nmであることが最も好ましく、理想的には0nmである。
【0059】
<表面処理層>
表面処理層は、保護フィルムの表面硬度を高める機能を有し、表面の擦り傷防止等の目的で設けられる。表面処理層は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(表面処理層を有する光学フィルムをガラス板の上に置いて測定する)で測定される鉛筆硬度がH又はそれより硬い値であることが好ましい。
【0060】
表面処理層を形成する材料は、一般に、熱や光によって硬化するものである。例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、(メタ)アクリル系、ウレタン(メタ)アクリレート系のような有機ハードコート材料、二酸化ケイ素のような無機ハードコート材料を挙げることができる。これらの中でも、保護フィルムに対する密着性が良好であり、生産性に優れることから、ウレタン(メタ)アクリレート系又は多官能(メタ)アクリレート系ハードコート材料が好ましく用いられる。
【0061】
表面処理層は、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、さらには耐熱性、帯電防止性、防眩性等の向上を図る目的で、各種フィラーを含有することができる。また表面処理層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤のような添加剤を含有することもできる。
【0062】
表面処理層は、強度をより向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。また、表面処理層の厚さは、硬さを持たせるためには厚い方が良いが、厚すぎるとカット時に割れやすくなるため、1μm~20μmであってもよく、2μm~10μmであってもよい。表面処理層の厚さは、3μm~7μmとすることが好ましい。
【0063】
防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有する層であり、好ましくは、上述したハードコート材料を用いて形成される。
【0064】
表面に微細な凹凸形状を有する防眩層は、1)延伸フィルム上に微粒子を含有する塗膜を形成し、その微粒子に基づく凹凸を設ける方法、2)微粒子を含有するか、又は含有しない塗膜を延伸フィルム上に形成した後、表面に凹凸形状が付与された金型(ロール等)に押し当てて凹凸形状を転写する方法(エンボス法とも呼ばれる)、等、によって形成することができる。
【0065】
反射防止層は、保護フィルムを観察する者にとって、保護フィルム表面の外光反射を弱めるための層であり、通常は、可視光に対する反射率が1.5%以下となる。このような反射率の反射防止層は典型的には、高い屈折率を有する高屈折率層と、低い屈折率を有する低屈折率層とを積層する事や、特開2021-6929号公報に記載の方法や材料を用いる事によってなる。これらの屈折率と各層の厚さを調整することで各層からの反射光が互いに弱め合うようにすることができ、優れた反射防止機能が奏される。
【0066】
高屈折率層と低屈折率層とからなる反射防止層は、後に詳細を述べるとおり、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれを形成し得る塗布型組成物を用いて反射防止層を製造すると、操作が極めて簡便であるため好ましい。ここで、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれを形成し得る塗布型組成物の一例を挙げておく。かかる塗布型組成物は液状のものであり、適切な硬化性樹脂と、必要に応じて添加剤とを含む。高屈折率層を形成し得る塗布型組成物(高屈折率層形成用塗布液)は例えば、ウレタンアクリレートのような硬化性樹脂と、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、α-アミノアルキルフェノン系やチオキサントン系といった光重合のための開始剤(光重合開始剤)とを、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンといった溶剤に溶解してなる。塗布性をより良好とするために、レベリング剤、好ましくはフッ素系レベリング剤を含ませてもよい。また、低屈折率層を形成し得る塗布型組成物(低屈折率層形成用塗布液)としては、硬化性樹脂として、ポリエチレングリコールジアクリレートやペンタエリストール(トリ/テトラ)アクリレートのようなバインダー樹脂に、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、α-アミノアルキルフェノン系やチオキサントン系といった光重合のための開始剤(光重合開始剤)を、1-メトキシ-2-プロピルアセテートやメチルイソブチルといった溶剤に溶解してなる溶液にシリカ粒子を分散させてなる。塗布性をより良好とするために、フッ素系レベリング剤を含ませてもよい。なお、ここで挙げた高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれを形成し得る塗布型組成物はあくまで一例であり、形成しようとする反射防止層の特性に応じて、高屈折率層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液をそれぞれ最適化することが好ましい。
【0067】
反射防止層は、たとえば低屈折率層を備えるものであることができる。また、保護フィルムと低屈折率層との間に、高屈折率層および/または中屈折率層をさらに備える多層構造であってもよい。
【0068】
低屈折率層は、上述の硬化性樹脂の硬化物や金属アルコキシド系ポリマー等の透光性樹脂および無機粒子を含有する塗工液を塗工した後、塗工層を必要に応じて硬化させる方法によって形成することができる。無機粒子としては、たとえば、LiF(屈折率1.4)、MgF(屈折率1.4)、3NaF・AlF(屈折率1.4)、AlF(屈折率1.4)、NaAlF(屈折率1.33)などの低屈折粒子や、中空シリカ粒子などが挙げられる。
【0069】
帯電防止層は、保護フィルムの表面に導電性を付与し、静電気による影響を抑制する等の目的で設けられる。帯電防止層の形成には、例えば、導電性物質(帯電防止剤)を含有する樹脂組成物を保護フィルム上に塗布する方法が採用できる。例えば、上述したハードコート層の形成に用いるハードコート材料に帯電防止剤を共存させておくことにより、帯電防止性のハードコート層を形成することができる。
【0070】
防汚層は、撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性等を付与するために設けられる。防汚層を形成するための好適な材料は、フッ素含有有機化合物である。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物等を挙げることができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着やスパッタリングを代表例とする物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法等を用いることができる。防汚層の平均厚みは、通常1~50nm程度、好ましくは3~35nmである。
【0071】
[第1位相差板]
第1位相差板は、位相差を発現する層を含んでいればよく、位相差を発現する層は、熱可塑性樹脂フィルムから延伸等により形成される位相差フィルムであってもよいし、重合性液晶化合物の配向状態における重合体からなり、光学異方性を示す層(以下、「位相差膜」ともいう)であってもよい。熱可塑性樹脂フィルムを延伸したフィルムの方が、耐擦傷性の観点から好ましく、シクロオレフィンポリマーフィルムやトリアセチルセルロースフィルムが光学用途の観点からより好ましく、汎用性の観点から、シクロオレフィンポリマーフィルムがさらに好ましい。第1位相差板が熱可塑性樹脂フィルムを延伸したフィルムである場合、その厚みは10μm~100μmであることが好ましく、光学積層体の層厚み設計の観点から15μm~80μmであることがより好ましく、20μm~50μmであることがさらに好ましい。
第1位相差板が位相差フィルムである場合に、光学積層体は、直線偏光板の構成要素である第1保護フィルムが第1位相差板を兼ねる構成であってもよく、直線偏光板とは別に第1位相差板を備える構成であってもよい。第1位相差板が位相差膜を有する構成である場合、位相差膜は、正分散の特性を示すように(式(1)を満たすように)、正分散性の重合性液晶化合物を選択する点以外は、後述する第2位相差板の位相差層の形成方法にしたがって得ることができる。
【0072】
第1位相差板は、その遅相軸が偏光子の吸収軸に対してなす角度θ1が40°~50°または-40°~-50°となるように配置され、好ましくは約45°または約-45°となるように配置されている。第1位相差板の波長λnmの光に対する面内位相差値をRe1(λ)とすると、下記式(1)の関係を満たし、好ましくはさらに下記式(1a)の関係を満たす。
1.0≦Re1(450)/Re1(550) (1)
1.0≦Re1(550)/Re1(650) (1a)
(式中、Re1(450)は波長450nmの光に対する第1位相差板の面内位相差値を、Re1(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re1(650)は波長650nmの光に対する第1位相差板の面内位相差値を表す。)
【0073】
第1位相差板は、Re1(λ)が、好ましくは下記式(4)および(5)を満たす。
100nm≦Re1(450)≦130nm (4)
100nm≦Re1(550)≦130nm (5)
【0074】
第1位相差板が、上記式(1)及び(4)を満たすことにより、偏光サングラス越しに表示画像を視認しても、表示角度に依存せずに視認することができ、また表示角度による色味の差が低減された画像表示装置を構成することができる光学積層体を提供することができる。位相差値は、波長550nmの光を基準にして設計されることが多いが、波長450nmの光に対する位相差値が所定の範囲にあることが、課題の解決に重要であると考えられる。
第1位相差板の「Re1(450)/Re1(550)」が1.0未満であると、表示角度による色味の差が大きくなる。好ましくは、1.00以上1.3以下、より好ましくは1.02以上1.2以下、さらに好ましくは1.03以上1.1以下である。「Re1(450)/Re1(550)」の値は、位相差フィルムの材料を調整する事によって、または重合性液晶化合物の混合比率や複数の光学異方性層の積層角度や位相差値を調整する事で任意に調整する事が可能である。
【0075】
第1位相差板に含まれる位相差を発現する層が位相差膜である場合に、その厚みは、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは0.8~4μm、さらに好ましくは1~3μmである。
【0076】
[第2位相差板]
第2位相差板は、重合性液晶化合物が重合した液晶硬化物を含み、光学異方性を示す位相差膜である位相差層を2層以上含む。第2位相差板は、例えば2層の位相差層を含む場合には、これら2層の位相差層の遅相軸が互いに面内で交差するように配置されている。第2位相差板が3層以上の位相差層を備える場合、3層以上の位相差層のうちの2層の位相差層の遅相軸が面内で互いに交差するように配置されていることが好ましい。3層以上の全ての位相差層の遅相軸が面内で互いに異なる方向となるように配置されていること、即ち3層以上の全ての位相差層のうちの任意の2層の位相差層の遅相軸が交差するように配置されていることも好ましい。
第2位相差板は、波長λnmの光の面内位相差値をRe2(λ)とすると、下記式(2)及び(3)の関係を満たす。
70nm≦Re2(450)≦130nm (2)
Re2(450)/Re2(550)≦1.0 (3)
【0077】
第2位相差板は、本発明の目的である反射防止機能を高度に達成するためには、可視光全域でのλ/4層機能(すなわちπ/2の位相差機能)を有すればよい。具体的には逆波長分散性λ/4層であってもよく、正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層を組み合わせたものであることが好ましい。さらに、斜め方向での反射防止機能を補償し得る観点から、厚み方向に異方性を有する層(ポジティブCプレート)をさらに含んでいる事が好ましい。また、それぞれの光学異方性層はチルト配向をしていても良いし、コレステリック配向状態を形成していても良い。
【0078】
第2位相差板は、例えば、液晶硬化物を含む位相差層がいずれもポジティブAプレートであり、かつ位相差層の遅相軸が面内で互いに交差する構成が挙げられる。さらに、斜め方向から観察される画像表示装置の反射光の色づき抑制の観点から、λ/2層は、ネガティブAプレートであることが好ましい。
【0079】
<位相差膜>
重合性液晶化合物を含む組成物(以下、「位相差膜形成用組成物」ともいう)を透明基材上に塗布形成し、重合性液晶化合物の配向した重合体からなる光学異方性層とすることが、薄型化ならびに波長分散特性を任意に設計できる点で好ましい。また、位相差膜形成用組成物は、溶剤、光重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤及び密着性向上剤等をさらに含み得る。
【0080】
位相差膜は、通常、基材上に形成された配向膜上に、位相差膜形成用組成物を塗布し、上記位相差膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合することによって形成される。位相差膜は、通常、重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した膜であり、視認面内で位相差を生じるためには、重合性液晶化合物が基材面に対して水平方向に配向した状態で重合性基が重合した硬化膜である必要がある。この際、重合性液晶化合物が棒状の液晶である場合にはポジティブAプレートであればよく、重合性液晶化合物が円盤状の液晶であればネガティブAプレートであればよい。
【0081】
位相差膜の厚さは、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上3μm以下である。好ましくは1以上の重合性液晶を重合することで形成されるコーティング層である。
【0082】
[正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層を組み合わせた構成]
第2位相差板として、反射防止性能を達成する方法の一つとして、正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層を組み合わせた構成が知られている。例えば、正波長分散性λ/2層は、ネガティブAプレートであり、正波長分散性λ/4層はポジディブAプレートである。正波長分散性λ/2層の遅相軸と正波長分散性λ/4層の遅相軸とは、面内で例えば50°~70°の交差角度で交差するように配置されることが好ましい。ここでいう交差角度とは、二つの遅相軸の交差角度の内、狭い交差角の角度を意味する。
【0083】
偏光子の吸収軸に対しては、正分散性λ/2層の遅相軸が例えば10°~20°であり、好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは約15°であり、正分散性λ/4層の遅相軸が例えば70°以上80°以下であり、より好ましくは72°以上78°以下であり、さらに好ましくは約75°である。
別の実施形態では、偏光子の吸収軸に対して、正分散性λ/2層の遅相軸が例えば-10°~-20°であり、好ましくは-12°~-18°であり、さらに好ましくは約-15°であり、正分散性λ/4層の遅相軸が例えば-70°~-80°であり、より好ましくは-72°~-78°であり、さらに好ましくは約-75°である。
さらに別の実施形態では、偏光子の吸収軸に対して、正分散性λ/2層の遅相軸が70°~80°であり、好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは約75°であり、正分散性λ/4層の遅相軸が例えば10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは約15°である。
さらに別の実施形態では、偏光子の吸収軸に対して、正分散性λ/2層の遅相軸が-70°~-80°であり、好ましくは-72°~-78°であり、さらに好ましくは約-75°であり、正分散性λ/4層の遅相軸が例えば-10°~-20°であり、より好ましくは-12°~-18°であり、さらに好ましくは約-15°である。
【0084】
波長λのときの面内位相差値をRe(λ)とすると、式(21)、(23)及び式(24)で表される光学特性を有する層と、式(22)、(23)及び式(24)で表される光学特性を有する層とを特定の遅相軸関係で組み合わせることで得られる。
100nm<Re(550)<150nm (21)
150nm<Re(550)<320nm (22)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (23)
1.00≧Re(650)/Re(550) (24)
【0085】
式(21)において、Re(550)の好ましい範囲は、100nm~150nmであり、105nm~145nmであることがより好ましく、110nm~140nmであることがさらに好ましい。また、式(22)において、Re(550)の好ましい範囲は、150nm~320nmであり、170nm~310nmであることがより好ましく、210nm~300nmであることがさらに好ましい。
【0086】
上記の構成の組み合わせる方法としては、特開2015-163935号公報や、WO2013/137464号公報等の周知の方法が挙げられる。視野角補償の観点から好ましくは円盤状の重合性液晶化合物であるλ/2層と棒状の重合性液晶化合物であるλ/4層を用いることが好ましい。
【0087】
円盤状の重合性液晶化合物としては、例えば、式(W)で表される基を含む化合物(以下、重合性液晶化合物(C)ということがある)が挙げられる。

[式(W)中、R40は、下記式(W-1)~(W-5)を表わす。
【0088】
【0089】
40およびZ40は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。
【0090】
棒状の重合性液晶としては、例えば式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、 A12~A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14~B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SOH)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する-CH-は、-O-に置き換っていてもよい。)
【0091】
[その他の構成]
上記正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層を組み合わせた構成以外にもチルト配向やコレステリック配向している構成についても反射防止機能を達成する構成であれば特に制限はなく、例えばWO2021/060378号公報、WO2021/132616号公報、WO2021/132624号公報等の周知の構成が挙げられる。
【0092】
重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0093】
第2位相差膜の面内位相差値は、位相差膜の厚さによって調整することができる。面内位相差値は下記式(8)によって決定されることから、所望の面内位相差値(Re2(λ))を得るには、Δn(λ)と膜厚dとを調整すればよい。位相差膜の厚さは、0.5μm~5μmが好ましく、1μm~3μmがより好ましい。位相差膜の厚さは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計により測定することができる。尚、Δn(λ)は、後述する重合性液晶化合物の分子構造に依存する。
Re2(λ)=d×Δn(λ) …(8)
(式中、Re2(λ)は波長λnmにおける面内位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0094】
<基材>
基材としては、ガラス基材及びフィルム基材が挙げられ、フィルム基材が好ましい、連続的に製造できる点で長尺のロール状フィルムがより好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシド;等のプラスチックが挙げられる。中でも光学フィルム用途で使用する際の透明性等の観点からトリアセチルセルロース、環状オレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレートのいずれかから選ばれるフィルム基材がより好ましい。
【0095】
市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)及び“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)及び“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0096】
基材の厚さは、実用的な取り扱いができる程度の質量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚さは、通常、5μm~300μmであり、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは10~50μmである。また、基材を剥離して二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体を転写することによって、本発明の光学異方性層のみを適用する事が可能であるため、さらなる薄膜化効果が得られる。
【0097】
<配向膜>
本明細書において配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
【0098】
配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜および重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向またはハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向または傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、光学異方性層平面を基準とした場合の、配向した重合性液晶化合物の長軸の方向を表す。例えば、垂直配向とは光学異方性層平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶化合物の長軸を有することである。ここでいう垂直とは、光学異方性層平面に対して90°±20°のことを意味する。
【0099】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0100】
基材と光学異方性層との間に形成される配向膜としては、配向膜上に光学異方性層を形成する際に使用される溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜およびグルブ(groove)配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、長尺のロール状フィルムに適用する場合には、配向方向を容易に制御できる点で、光配向膜が好ましい。
【0101】
配向膜の厚さは、通常10nm~5000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0102】
ラビング配向膜に用いられる配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0104】
光配向膜は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマーまたはモノマーからなる。光配向膜は、偏光を照射することで配向規制力が得られる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点で光配向膜がより好ましい。
【0105】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応、または光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応または光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0106】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。反応性の制御が容易であるという点や光配向時の配向規制力発現の観点から、カルコン基およびシンナモイル基が好ましい。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基および芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基およびホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基およびハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0107】
偏光を照射するには、膜面から直接偏光を照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外光の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0108】
<光学異方性層形成用組成物>
偏光膜形成用組成物又は位相差膜形成用組成物(以下、光学異方性層形成用組成物ともいう)はさらに、溶媒やレベリング剤、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、架橋剤、密着剤等の反応性添加剤を含んでいても良く、溶媒やレベリング剤を含む事が加工性の観点から好ましい。
【0109】
<溶剤>
光学異方性層形成用組成物は溶剤を含有してよい。一般に重合性液晶化合物は粘度が高いため、溶剤に溶解させた光学異方性層形成用組成物とすることで塗布が容易になり、結果として光学異方性層の形成がし易くなる場合が多い。溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0110】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトンまたはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよび乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
溶剤の含有量は、前記光学異方性層形成用組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、光学異方性層形成用組成物における固形分の含有量は、2~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。該固形分の含有量が50質量%以下であると、光学異方性層形成用組成物の粘度が低くなることから、光学異方性層の厚さが略均一になることで、当該光学異方性層にムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分の含有量は、製造しようとする光学異方性層の厚さを考慮して定めることができる。
【0112】
<レベリング剤>
光学異方性層形成用組成物には、レベリング剤を含有させてもよい。レベリング剤とは、組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。中でも、ポリアクリレート系レベリング剤およびパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0113】
光学異方性層形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる光学異方性層がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる光学異方性層にムラが生じやすい傾向がある。なお、光学異方性層形成用組成物は、レベリング剤を2種以上含有していてもよい。
【0114】
<重合開始剤>
光学異方性層形成用組成物は重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0115】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0116】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用でき、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等を使用することができる。低温での反応効率に優れるという観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0117】
光学異方性層形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0118】
<増感剤>
光学異方性層形成用組成物は増感剤を含有してもよい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。該増感剤としては、例えば、キサントンおよびチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセンおよびアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。
【0119】
光学異方性層形成用組成物が増感剤を含有する場合、光学異方性層形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる増感剤の使用量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0120】
[重合禁止剤]
重合反応を安定的に進行させる観点から、光学異方性層形成用組成物は重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0121】
前記重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0122】
光学異方性層形成用組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。重合禁止剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0123】
<光学異方性層形成用組成物;反応性添加剤>
光学異方性層形成用組成物は、反応性添加剤を含んでもよい。反応性添加剤としては、その分子内に炭素-炭素不飽和結合や活性水素反応性基とを有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が有する、炭素-炭素不飽和結合および活性水素反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0124】
反応性添加剤が有する炭素-炭素不飽和結合とは、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合、またはそれらの組み合わせであってよいが、炭素-炭素二重結合であることが好ましい。中でも、反応性添加剤としては、ビニル基および/または(メタ)アクリル基として炭素-炭素不飽和結合を含むことが好ましい。さらに、活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種である反応性添加剤が好ましく、アクリル基とイソシアネート基とを有する反応性添加剤がより好ましい。
【0125】
OLEDから出射される光は偏光を有するため、第2位相差板、偏光子、第1位相差板を通して出射さるOLEDの出射光をサングラス越しに観察する際に、偏光子の吸収軸に対する第2位相差板の第1層(偏光子に最も近い位相差層)の遅相軸の角度θ2の符号と、偏光子の吸収軸に対する第1位相差板の遅相軸の角度θ1の符号とは、互いに異なることが、サングラス越しに観察される光の色付きを低減できるという観点から好ましい。このように配置されていると、第1位相差板の吸収軸と、第2位相差板を構成する位相差層のうちでもっとも偏光子に近い位相差層(第1層)の吸収軸とが、偏光子の吸収軸を軸として反転配置されていることとなるため、位相差がキャンセルされ、観察される光の色づきが小さい。
【0126】
偏光子の吸収軸に対する第2位相差板の第1層(偏光子に最も近い位相差層)の遅相軸の角度の絶対値は小さい方が、すなわち前記吸収軸と前記遅相軸とは平行に近い方が、斜め方向からみた際の反射率を低減する観点で好ましい。このため偏光子の吸収軸に対する第2位相差板の第1層(偏光子に最も近い位相差層)の遅相軸の角度は、10°~20°であるか、または-10°~-20°であることが好ましい。第2位相差板について、上記で例示した正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層を組み合わせた構成である場合、第1層は、正波長分散性λ/2層であってもよく、正波長分散性λ/4層であってもよい。
【0127】
[第1貼合層、第2貼合層、第3貼合層、粘着剤層]
光学積層体1における第1貼合層13、第2貼合層15、および第3貼合層17は、光学積層体1内において、二つの層の貼合を担う層であり、粘着剤層、または接着剤層を用いることができる。
【0128】
<粘着剤層>
粘着剤層は、第1貼合層13、第2貼合層15、第3貼合層17、および粘着剤層19の一形態である。粘着剤層は、これらの層以外にも、二つの層の貼合層として用いることができる。粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤組成物を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂などのベースポリマーを有する粘着剤組成物を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、熱硬化型粘着剤組成物などであってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。
粘着剤組成物は、さらに、架橋剤、シラン化合物、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0129】
[(メタ)アクリル系樹脂]
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、下記式(X)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(以下、「構造単位(X)」ともいう。)を主成分(例えば、(メタ)アクリル系樹脂の構造単位100質量部に対して50質量部以上含む。)とする重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル重合体」ともいう。)であることが好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とはアクリル樹脂又はメタクリル樹脂のいずれでもよいことを意味し、(メタ)アクリレートなどの「(メタ)」も同様の意味である。
【0130】

[式中、R10は、水素原子またはメチル基を表し、R20は、炭素数1~20のアルキル基を表し、前記アルキル基は直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造を有していてもよく、前記アルキル基の水素原子は、炭素数1~10のアルコキシ基で置き換わっていてもよい。]
【0131】
式(X)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、i-へキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-及びi-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキルアクリレートの具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもn-ブチル(メタ)アクリレートまたは2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、特にn-ブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0132】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、構造単位(X)以外の他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する構造単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体が含み得る他の単量体としては、極性官能基を有する単量体、芳香族基を有する単量体、アクリルアミド系単量体が挙げられる。
【0133】
極性官能基を有する単量体としては、極性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。極性官能基としては、ヒドロキシ基;カルボキシ基;炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基又は無置換アミノ基;エポキシ基などの複素環基等が挙げられる。
【0134】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構造単位100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上5質量部以下、特に好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0135】
芳香族基を有する単量体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環など)を有し、フェニル基、フェノキシエチル基、またはベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの構造単位を含むことで、高温、高湿環境において発生する偏光板の白抜け現象を抑制することができる。
【0136】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の芳香族基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構造単位100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは4質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは4質量部以上15質量部以下である。
【0137】
アクリルアミド系単量体としては、N-(メトキシメチル)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(2-メチルプロポキシメチル)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの構造単位を含むことで、後述する帯電防止剤等の添加物のブリードアウトを抑制することができる。
【0138】
さらに、構造単位(X)以外の他の単量体に由来する構造単位として、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位、などが含まれていてもよい。
【0139】
(メタ)アクリル系樹脂(X)の重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)は、50万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万以上であると、高温、高湿の環境下における第1の粘着剤層の耐久性を向上させることができる。重量平均分子量が250万以下であると、粘着剤組成物を含有する塗工液を塗工する際の操作性が良好となる。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(以下、単に「Mn」ともいう。)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、通常2~10である。本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0140】
(メタ)アクリル系樹脂は、酢酸エチルに溶解させて濃度20質量%の溶液としたとき、25℃における粘度が、20Pa・s以下であることが好ましく、0.1~15Pa・sであることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂の25℃における粘度が前記範囲内であると、前記樹脂により形成された粘着剤層を含む偏光板の耐久性の向上や、リワーク性に寄与する。前記粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定できる。
【0141】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば-60~20℃、好ましくは-50~15℃、より好ましくは-45~10℃、さらに好ましくは-40~0℃である。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0142】
(メタ)アクリル系樹脂は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル重合体を含んでもよい。そのような(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(X)を主成分とするものであって、重量平均分子量が5万~30万の範囲にあるような比較的低分子量の(メタ)アクリル酸エステル重合体が挙げられる。
【0143】
(メタ)アクリル系樹脂は、通常、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂の製造においては、通常、重合開始剤の存在下に重合が行われる。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全ての単量体の合計100質量部に対して、通常0.001~5質量部である。(メタ)アクリル系樹脂は、紫外線などの活性エネルギー線によって重合する方法により製造することもできる。
【0144】
<架橋剤>
粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、過酸化物など)が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ、架橋速度、及び偏光板の耐久性などの観点から、イソシアネート系化合物であることが好ましい。
【0145】
イソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物である。具体的には、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物と、グリセロールやトリメチロールプロンなどのポリオールを反応させて得られるアダクト体や、これらイソシアネート化合物の二量体や三量体も挙げられる。2種以上のイソシアネート化合物を組み合わせてもよい。
【0146】
架橋剤の割合は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~1質量部である。
【0147】
<シラン化合物>
粘着剤組成物は、さらにシラン化合物を含有していてもよい。
シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、シラン化合物は、上記シラン化合物に由来するオリゴマーを含むことができる。
【0148】
粘着剤組成物におけるシラン化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部である。シラン化合物の含有量が0.01質量部以上であると、粘着剤層と被着体との密着性が向上する傾向にあり、含有量が10質量部以下であると、粘着剤層からのシラン化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にある。
【0149】
<帯電防止剤>
粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。帯電防止剤としては、公知のものが挙げられ、イオン性帯電防止剤が好適である。イオン性帯電防止剤を構成するカチオン成分としては、有機カチオン及び無機カチオンが挙げられる。有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。無機カチオンとしては、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオンなどのアルカリ金属カチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオンなどのアルカリ土類金属カチオンなどが挙げられる。イオン性帯電防止剤を構成するアニオン成分としては、無機アニオン及び有機アニオンのいずれでもよいが、帯電防止性能に優れるという点で、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CFSO]、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO]アニオンなどが挙げられる。
粘着剤組成物の帯電防止性能の経時安定性に優れるという点で、室温で固体であるイオン性帯電防止剤が好ましい。
帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.01~20質量部、好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは1~7質量である。
【0150】
粘着剤組成物は、紫外線吸収剤、溶媒、架橋触媒、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)、可塑剤等の添加剤を単独または2種以上含むことができる。また、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
【0151】
粘着剤層は、例えば、前記粘着剤組成物を、溶剤に溶解又は分散して溶剤含有の粘着剤組成物とし、次いで、これを、粘着剤層を設ける層の表面に塗布し、乾燥させることで形成できる。
【0152】
粘着剤層の厚みは、通常0.1~30μmであり、好ましくは3~30μmであり、さらに好ましくは5~25μmである。
【0153】
[接着剤層]
接着剤層は、第1貼合層13、第2貼合層15、および第3貼合層17の一形態である。接着剤層は、これらの層以外にも、二つの層の貼合層として用いることができる。接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤組成物、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性接着剤組成物等が挙げられる。水系接着剤組成物としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に溶解したもの、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に分散させたものが挙げられる。水系接着剤組成物は、さらに、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキサール化合物、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤を含有していてもよい。水系接着剤組成物としては、例えば、特開2010-191389号公報に記載の接着剤組成物、特開2011-107686号公報に記載の接着剤組成物、特開2020-172088号公報に記載の組成物、特開2005-208456号公報に記載の組成物等が挙げられる。
【0154】
硬化性接着剤組成物は、主成分として硬化性(重合性)化合物を含み、活性エネルギー線照射により硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物との両方を含むハイブリッド型接着剤組成物等が挙げられる。
【0155】
カチオン重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応が進行して硬化する化合物又はオリゴマーであり、具体的にはエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物(脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物);ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物(分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物);2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物(脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に少なくとも1個有する化合物)等が挙げられる。
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等の分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
カチオン重合型接着剤組成物は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。カチオン重合開始剤は熱カチオン重合開始剤であってもよいし、光カチオン重合開始剤であってもよい。カチオン重合開始剤としては、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート等の芳香族ジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の芳香族ヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩;キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート等の鉄-アレーン錯体等が挙げられる。カチオン重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して通常0.1~10質量部である。カチオン重合開始剤は2種以上含んでいてもよい。
カチオン重合型接着剤組成物としては、例えば、特開2016-126345号公報、国際公開第2019/10315号公報、特開2021-113969号公報に記載のカチオン重合性組成物等が挙げられる。
【0156】
ラジカル重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりラジカル重合反応が進行して硬化する化合物又はオリゴマーであり、具体的にはエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、分子内に1個以上のビニル基を有するビニル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。
ラジカル重合型接着剤組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤は熱ラジカル重合開始剤であってもよいし、光ラジカル重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;キサントン、フルオレノン等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して通常0.1~10質量部である。ラジカル重合開始剤は2種以上含んでいてもよい。
ラジカル重合型接着剤組成物としては、例えば、特開2016-126345号公報、特開2016-153474号公報、国際公開第2017/183335号に記載のラジカル重合性組成物等が挙げられる。
【0157】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、必要に応じて、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0158】
接着剤層による二層の貼合は、二層それぞれの貼合面から選ばれる少なくとも一方の貼合面に接着剤組成物を塗工し、接着剤組成物の塗工層を介して両者を重ね、貼合ロール等を用いて上下から押圧して貼合後、接着剤層を乾燥させる、活性エネルギー線を照射して硬化させる、又は加熱して硬化させることにより行うことができる。
接着剤層の塗工層を形成する前に、二層それぞれの貼合面から選ばれる少なくとも一方の貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。
接着剤組成物の塗工層の形成には、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター等の種々の塗工方式を使用することができる。
【0159】
活性エネルギー線を照射する場合の光照射強度は、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の組成ごとに決定されるものであって特に限定されないが、10mW/cm2以上1,000mW/cm2以下であることが好ましい。なお、照射強度は、好ましくは光カチオン重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量を、10mJ/cm2以上とすることが好ましく、100mJ/cm2以上1,000mJ/cm2以下とすることがより好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の重合硬化を行うために使用する光源は、特に限定されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
【0160】
水系接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば5μm以下であってよく、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上であってよく、0.05μm以上であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば、10μm以下であってよく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【0161】
[光学積層体が有していてもよい他の層]
光学積層体は、所定の紫外線吸収特性を有する層を備えることが好ましい。所定の紫外線吸収特性は、波長λnmの光の透過率をTr(λ)とすると、下記式(5)、(6)、および(7)の関係を満たす特性である。
Tr(450)≧85% (5)
30%≦Tr(420)≦75% (6)
0%≦Tr(400)≦10% (7)
所定の紫外線吸収特性を有する層を備えることにより、透過光の色付きを抑制することができる。
【0162】
所定の紫外線吸収特性を有する層は、光学積層体中のいずれかの位置に備えればよく、例えば、第1保護フィルムの視認側の表面に設けられる上述の表面処理層が上記式(5)、(6)、および(7)を満たす構成であってもよい。
【0163】
上記式(5)、(6)、および(7)を満たすために好適な所定の紫外線吸収特性を有する層の一形態を説明する。
【0164】
一実施態様によれば、所定の紫外線吸収特性を有する層は、紫外線吸収剤を含む。例えば、下記式(XI):

で表される化合物(XI)を紫外線吸収剤として含む。
【0165】
上記式(XI)において、Aはメチレン基、第二級アミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Aは、高い光選択吸収性を発現させる観点から、好ましくはメチレン基、第二級アミノ基又は酸素原子を表す。
【0166】
上記式(XI)において、Rは水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。Rは、高い光選択吸収性を発現させる観点から、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~5、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表す。ここで、該アルキル基が少なくとも1つのメチレン基を有する場合、該メチレン基の少なくとも1つは酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい。かかるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、メトキシ基、エトキシ基、及びイソプロプキシ基等が挙げられる。
【0167】
上記式(XI)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~12のアルキル基を表す。R及びRは、高い光選択吸収性を発現させる観点から、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1~8のアルキル基、さらに好ましくは水素原子又は炭素数1~5のアルキル基、特に好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。
【0168】
上記式(XI)において、Rは炭素数3~50のアルキル基、又は少なくとも1つのメチレン基を有する炭素数3~50のアルキル基であって、該メチレン基の少なくとも1つは酸素原子に置換されているアルキル基を表す。
【0169】
における炭素数3~50のアルキル基は、疎水性物質との親和性、疎水性溶媒への溶解性及び製造上の経済性の観点から、炭素数が好ましくは8~45(例えば10~45)、より好ましくは12~40、さらに好ましくは13~35、特に好ましくは14~30である。なお、該アルキル基上の炭素原子には置換基が結合していてもよい。
【0170】
における少なくとも1つのメチレン基を有する炭素数3~50のアルキル基は、疎水性物質との親和性、疎水性溶媒への溶解性及び製造上の経済性の観点から、炭素数が好ましくは3~40、より好ましくは4~35、特に好ましくは5~30、のアルキル基を示す。ここで、少なくとも1つのメチレン基を有する炭素数3~50のアルキル基において、該メチレン基の少なくとも1つは酸素原子に置換されていており、例えば、エトキシ基、プロポキシ基、2-メトキシエトキシメチル基が挙げられる。また、ジエチレングリコール基、トリエチレングリコール基等のポリエチレングリコール基、及びジプロピレングリコール基、トリプロピレングリコール基等のポリプロピレングリコール等も挙げられる。
【0171】
また、Rのアルキル基上の炭素原子には置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、炭素数1~6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。
【0172】
が炭素数3~50のアルキル基である場合、疎水性物質との親和性、及び疎水性溶媒への溶解性の観点から、Rは炭素数3~12の枝分かれ構造を有するアルキル基であることがより好ましく、炭素数6~10の枝分かれ構造を有するアルキル基であることが更に好ましい。
【0173】
ここで、枝分かれ構造を有するアルキル基とは、該アルキル基が有する炭素原子の少なくとも一つが第三級炭素、又は第四級炭素であるアルキル基を示す。炭素数3~12の枝分かれ構造を有するアルキル基の具体例としては、下記構造を有するアルキル基が挙げられる。
【0174】

*は連結部を表す。
【0175】
上記式(XI)において、Xは電子吸引性基を表す。光選択吸収性を向上させる観点から、Xは-NO、-CN、-COR、-COOR、-OR10、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、-CSR11、-CSOR12、又は-CSNR13が好ましく、ニトロ基、シアノ基、又は-COORがより好ましく、シアノ基、又は-COORがさらに好ましい。ここで、R、R、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6、例えば炭素数2~5のアルキル基、又はフェニル基を表す。
【0176】
上記式(XI)において、Yは-CO-、-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、又は-CS-を表し、光選択吸収性を向上させる観点から、好ましくは-CO-、-COO-、-OCO-、又は-O-を表し、より好ましくは-CO-、-COO-、又は-OCO-を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6、例えば炭素数2~5のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0177】
本発明の好ましい実施態様において、上記式(XI)で表される化合物(XI)は、下記式(XI-I):

で表されることが、種々の溶媒への溶解性及び/又は種々の化合物との親和性に優れる観点から好ましい。
【0178】
上記式(XI-I)において、R4-1は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数2~5のアルキル基、より好ましくは3~4のアルキル基を表す。
nは1~10の整数、種々の溶媒への溶解性及び/又は種々の化合物との親和性に優れる観点から、好ましくは1~8の整数、より好ましくは1~6の整数、例えば1~4の整数、特に1~3の整数を表す。なお、nが上記範囲内であると、1質量部当たりが有する光吸収性が向上し、光学積層体を構成する部材に含まれる化合物(XI)が少量であっても、ブルーライトカット機能を発現でき、また、例えば粘着剤に該化合物(XI)を含有させる場合にはその粘着機能を阻害しにくく、また保護フィルムに該化合物(XI)を含有させる場合には保護フィルムとしての光学機能を阻害しにくい。
A、R、R及びRは上記式(XI)中と同一である。
【0179】
本発明のより好ましい実施態様において、上記式(XI-I)で表される化合物は、下記式(XI-II):
で表されることがより好ましい。上記式(XI-I)で表される化合物が上記式(XI-II)で表される化合物であると、種々の溶媒への溶解性及び/又は種々の化合物との親和性に優れるため、該化合物を溶媒に均一に溶解させることが容易となり、また同時に、種々の化合物との親和性にも優れ、両親媒性を示すため、光学積層体を構成する部材に該化合物を含ませた場合にブリードアウトを生じにくく、安定して光吸収機能を発揮させることができる。
【0180】
式(XI-II)において、R4-1及びnは式(XI-I)中と同一である。
【0181】
[画像表示装置]
画像表示装置は、光学積層体と、画像表示素子(有機EL表示素子等)とを含む。光学積層体は、画像表示素子の視認側に配置される。粘着剤層19を用いて、光学積層体1を画像表示素子に貼合することができる。
【0182】
画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられる。
【0183】
画像表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器または計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【実施例0184】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例、比較例中の「%」及び「部」で表される配合量は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
【0185】
[光学積層体の作製]
図1に示す構成を有する、実施例および比較例の光学積層体を作製した。図1に示す構成中、表面処理層付第1保護フィルム(表面処理層11と第1保護フィルム12の積層体)および第2位相差板18については、各実施例および各比較例毎に選択して採用し、その他の構成要素、すなわち、第1貼合層13、偏光子14、第2貼合層15、第2保護フィルム16、第3貼合層17、粘着剤層19は、全ての実施例および比較例で同じものを採用した。
【0186】
[位相差値の測定]
第1保護フィルムおよび第2位相差板の位相差値は、位相差測定装置(王子計測機器株式会社製 KOBRA-WPR)を用いて測定した。
【0187】
[透過率の測定]
表面処理層付第1保護フィルムの表面処理層の透過率は、表面処理層付第1保護フィルムを30mm×30mmの大きさに裁断し、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計「UV-2450」を用いて、波長200~800nmの間で透過率[%]を測定した。
【0188】
[1]第1保護フィルム
第1保護フィルムとして、以下の第1保護フィルム1a~5aを準備した。
(1)第1保護フィルム1a
シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZF-14」、ガラス転移温度140℃)を準備した。準備したフィルムを140℃で一軸延伸し、下記の位相差値になる様に延伸倍率を変えて調整し第1保護フィルム1aを得た。得られた延伸フィルムは、位相差値がRe1(450)=105nm,Re1(550)=100nmであり、延伸方向に遅相軸を有していた。
【0189】
(2)第1保護フィルム2a
第1保護フィルム1aの延伸フィルムを得る際の延伸条件を変更して、下記位相差値となるように調整し第1保護フィルム2aを得た。得られた延伸フィルムは、位相差値がRe1(450)=127nm,Re1(550)=121nmであり、延伸方向に遅相軸を有していた。
【0190】
(3)第1保護フィルム3a
第1保護フィルム1aの延伸フィルムを得る際の延伸条件を変更して、下記位相差値となるように調整し第1保護フィルム4aを得た。得られた延伸フィルムは、位相差値がRe1(450)=147nm,Re1(550)=140nmであり、延伸方向に遅相軸を有していた。
【0191】
(4)第1保護フィルム4a
シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZF-14」)を準備した。準備したシクロオレフィン系フィルム上に、特開2015-163935号記載の重合性液晶化合物を下記位相差値となる様に比率を調整した上で塗布後、重合性液晶化合物を重合させることで、位相差膜を形成し、第1保護フィルム5aを得た。得られた第1保護フィルム5aは、位相差値がRe1(450)=119nm,Re1(550)=140nmであった。
【0192】
(5)第1保護フィルム5a
シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZF-14」)を準備した。このフィルムをそのまま第1保護フィルムとした。第1保護フィルムは、位相差値がRe1(450)=0nm,Re1(550)=0nmであった。
【0193】
[2]表面処理層付第1保護フィルム
上記で得た第1保護フィルム上に、下記の表面処理層組成物を用いて、表面処理層を形成し、表面処理層付第1保護フィルムを得た。その組み合わせおよび評価結果を表3に示した。表面処理層付第1保護フィルムの遅相軸が矩形の長手方向に対して45°もしくは-45°になる様にカットして光学積層体に用いた。
【0194】
(表面処理層組成物A)
表面処理層組成物Aとして、EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス(株)製)20部、Irgacure-184(BASFジャパン(株)製)0.21部、シクロペンタノン(関東化学(株)製)26部、及びN-メチル-2-ピロリドン(関東化学(株)製)24部を混合し、室温にて2時間撹拌することで均一溶液を得てこれを用いた。
【0195】
(表面処理層の形成)
第1保護フィルム上に、ワイヤーバーを用いて上記の表面処理層組成物Aを硬化後の膜厚が5μmとなる様に塗布して塗膜を形成した。形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより溶剤を蒸発させ紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して硬化させることにより表面処理層を形成した。表面処理層は、波長450nmの光の透過率Tr(450)は100%、波長420nmの光の透過率Tr(420)は100%、波長400nmの透過率Tr(400)は100%であった。
【0196】
(表面処理層組成物B)
表面処理層組成物Bとして、EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス(株)製)20部、合成例1で合成されたUVA-01 0.80部、Irgacure-184(BASFジャパン(株)製)0.21部、シクロペンタノン(関東化学(株)製)26部、及びN-メチル-2-ピロリドン(関東化学(株)製)24部を混合し、室温にて2時間撹拌することで均一溶液を得てこれを用いた。
【0197】
(合成例1)
【0198】
ジムロート冷却管及び温度計を設置した200mL-四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、特許文献(特開2014-194508)を参考に合成した化合物UVA-M-02粉末10g、無水酢酸(和光純薬工業(株)製)3.7g、シアノ酢酸2-エトキシエチル(東京化成工業(株)製)5.8g、及びアセトニトリル(和光純薬工業(株)製)60gを仕込み、マグネチックスターラーで撹拌した。内温25℃にてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(以下、DIPEAと略す。東京化成工業(株)製)4.7gを滴下漏斗から1時間かけて滴下し、滴下終了後に内温25℃にて更に2時間保温した。反応終了後、減圧エバポレーターを用いてアセトニトリルを除去し、得られた油状物にトルエンを加えて生成した不溶成分を濾過で取り除いた。濾液を再度減圧エバポレーターを用いて濃縮し、濃縮後の溶液をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)に供して精製し、トルエン中から再結晶することで目的物を得た。該結晶を60℃減圧乾燥することにより、黄色粉末として化合物UVA-01を5.2g得た。収率は65%であった。また、分光光度計UV-3150((株)島津製作所製)を用いて吸収極大波長(λmax)を測定したところ、λmax=389nm(2-ブタノン中)、ε(400)は125L/(g・cm)、ε(420)/ε(400)は0.0153であった。
そして、H-NMR解析を行ったところ、以下のピークが観測されたことから、化合物UVA-01が生成したことが確かめられた。
H-NMR(CDCl)δ:1.21(t、3H)、2.10(quIn.2H)、2.98-3.04(m、5H)、3.54-3.72(m、6H)、4.31(t、2H)、5.53(d、2H)、7.93(d、2H)
【0199】
(表面処理層の形成)
第1保護フィルム上に、ワイヤーバーを用いて上記の表面処理層組成物Bを硬化後の膜厚が5μmとなる様に塗布して塗膜を形成した。形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより溶剤を蒸発させ紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して硬化させることにより表面処理層を形成した。表面処理層は、波長450nmの光の透過率Tr(450)は90%、波長420nmの光の透過率Tr(420)は50%、波長400nmの透過率Tr(400)は0%であった。
【0200】
(表面処理層組成物C)
表面処理層用組成物Cとして、EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス(株)製)20部、下記化学式(1-1-2)で表されるUVA-02 0.80部、Irgacure-184(BASFジャパン(株)製)0.21部、シクロペンタノン(関東化学(株)製)26部、及びN-メチル-2-ピロリドン(関東化学(株)製)24部を混合し、室温にて2時間撹拌することで均一溶液を得てこれを用いた。
【0201】
(UVA-02)
【0202】
(表面処理層の形成)
第1保護フィルム上に、ワイヤーバーを用いて上記の表面処理層組成物Cを硬化後の膜厚が5μmとなる様に塗布して塗膜を形成した。形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させることにより溶剤を蒸発させ紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)にて積算光量が200mJ/cmになるように照射して硬化させることにより表面処理層を形成した。表面処理層は、波長450nmの光の透過率Tr(450)は49%、波長420nmの光の透過率Tr(420)は18%、波長400nmの透過率Tr(400)は6%であった。
【0203】
[3]第2位相差板
(第2位相差板1b)
<第1層1bの作製>
[光配向性ポリマー組成物(1)の調製]
下記構造の光配向性材料(重量平均分子量:50000、m:n=50:50)は特開2021-196514に記載の方法に準じて製造した。光配向性材料2部とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、溶剤)98部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向性ポリマー組成物(1)を調製した。
光配向性材料:
【0204】
[重合性液晶化合物の製造]
下記に示す構造を有する重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)を、それぞれ調製した。重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)は、特開2010-244038号公報に記載の方法と同様に準備した。
重合性液晶化合物(A1):

重合性液晶化合物(A2):
【0205】
[位相差膜形成用組成物(Y1)の調製]
重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)を質量比80:20で混合し、混合物を得た。得られた混合物100部に対して、レベリング剤「メガファックF-556」(DIC社製)0.1部と、光重合開始剤「Omnirad907」(IGM Resin B.V.社製)2.5部と、イオン性化合物(B)0.1部を添加した。さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)を添加し、この混合物を温度80℃で1時間撹拌することにより、位相差膜形成用組成物(Y1)を調製した。イオン性化合物(B)は、下記式で表される構造を有する。
【0206】
【表1】

イオン性化合物(B)
【0207】
矩形に切り出したトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(コニカミノルタ株式会社製、KC4UY)に光配向性ポリマー組成物(1)を塗布した。得られた塗布膜を120℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却して乾燥被膜を形成した。さらに、UV照射装置を用いて、TACの長手方向に対して-15°となる様に、偏光紫外光100mJ(313nm基準)を連続的に照射し100nmの光配向膜を形成した。その上に、位相差膜形成用組成物(Y1)を、バーコーターにより塗布した。得られた塗布膜を100℃で1分間乾燥した後、室温まで冷却して乾燥被膜を得た。次いで、高圧水銀ランプを用いて、窒素雰囲気下にて露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外光を前記乾燥被膜に連続的に照射することにより、重合性液晶化合物が基材面内に対して水平方向に配向した状態で硬化した。このようにして、TAC/配向膜/(λ/2層)からなる第1層1bを得た。得られたλ/2層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1.8μmであった。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=270nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=291nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して-15°であった。
【0208】
<第2層1bの作製>
市販のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)に水を加えた。混合液を100℃で1時間加熱し、配向性ポリマー組成物を得た。
重合性液晶化合物Paliocolor LC242(BASFジャパン社製)、レベリング剤「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)、及び光重合開始剤として「Omnirad907」(IGM Resin B.V.社製)を下記表2配合量となるようにして混合した。さらに、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGME)を添加した。この混合物を温度80℃で1時間撹拌することにより、位相差板形成用組成物(Y2)を調製した。
【0209】
【表2】

重合性液晶化合物LC242:

矩形に切り出したトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(コニカミノルタ株式会社製、KC4UY)に配向性ポリマー組成物を塗布した。塗膜を加熱乾燥し、厚さ100nmの配向性ポリマーの膜を形成した。得られた配向性ポリマーの膜の表面に前記TACの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、配向膜を形成した。配向膜の上に、位相差板形成用組成物(Y2)を、バーコーターにより塗布した。得られた塗膜を100℃で1分間乾燥した後、室温まで冷却して乾燥被膜を得た。次いで、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下にて露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外光を前記乾燥被膜に照射し、重合性液晶化合物を基材面内に対して水平方向に配向した状態で硬化させた。このようにして、TAC/配向膜/(λ/4層)からなる第2層1bを得た。得られたλ/4層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1.0μmであった。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=142nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=153.4nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して75°であった。
【0210】
第1層1bである基材/配向膜/(λ/2層)と第2層1bである基材/配向膜/(λ/4層)の位相差膜側にそれぞれコロナ処理を施した後、それぞれの基材の長手方向が同一方向となるように粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を介して貼合し、基材/配向膜/(λ/2層)/粘着剤層/(λ/4層)/配向膜/基材を得た。第2位相差板1bについて、波長550nmにおける見かけの面内位相差値Re2(550)は139nmであり、波長450nmにおける見かけの面内位相差値Re2(450)は106nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角はλ/2層側から見たときに、前記TACの長手方向に対してλ/2層が15°、λ/4層が75°であった。
【0211】
(第2位相差板2b)
<第1層2bの作製>
第1層1bの光配向膜の配向方向がTACの長手方向に対して15°としたこと以外は第1層1bと同様の条件にて、第1層3bを作製した。得られたλ/2層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1.8μmであった。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=270nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=291nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して15°であった。
【0212】
<第2層2bの作製>
第2層1bのラビング処理の角度をTACの長手方向に対して‐75°としたこと以外は第2層1bと同様の条件にて、第2層2bを作製した。波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=142nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=153.4nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して-75°であった。
【0213】
第1層2bである基材/配向膜/(λ/2層)と第2層2bである基材/配向膜/(λ/4層)の位相差膜側にそれぞれコロナ処理を施した後、それぞれの基材の長手方向が同一方向となるように粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を介して貼合し、基材/配向膜/(λ/2層)/粘着剤層/(λ/4層)/配向膜/基材を得た。第2位相差板2bについて、波長550nmにおける見かけの面内位相差値Re2(550)は139nmであり、波長450nmにおける見かけの面内位相差値Re2(450)は106nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角はλ/2層側から見たときに、前記TACの長手方向に対してλ/2層が-15°、λ/4層が-75°であった。
【0214】
(第2位相差板3b)
<第1層3bの作製>
第1層1bの光配向膜の配向方向がTACの長手方向に対して‐75°としたこと以外は第1層1bと同様の条件にて、第1層3bを作製した。得られたλ/2層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1.8μmであった。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=270nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=291nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して‐75°であった。
【0215】
<第2層3bの作製>
第2層1bのラビング処理の角度をTACの長手方向に対して15°としたこと以外は第2層1bと同様の条件にて、第2層3bを作製した。波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=142nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=153.4nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して15°であった。
【0216】
第1層3bである基材/配向膜/(λ/2層)と第2層3bである基材/配向膜/(λ/4層)の位相差膜側にそれぞれコロナ処理を施した後、それぞれの基材の長手方向が同一方向となるように粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を介して貼合し、基材/配向膜/(λ/2層)/粘着剤層/(λ/4層)/配向膜/基材を得た。第2位相差板3bについて、波長550nmにおける見かけの面内位相差値Re2(550)は139nmであり、波長450nmにおける見かけの面内位相差値Re2(450)は106nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角はλ/2層側から見たときに、前記TACの長手方向に対してλ/2層が75°、λ/4層が15°であった。
【0217】
(第2位相差板4b)
<第1層4bの作製>
第1層1bの光配向膜の配向方向がTACの長手方向に対して75°としたこと以外は第1層1bと同様の条件にて、第1層4bを作製した。得られたλ/2層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1.8μmであった。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=270nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=291nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して75°であった。
【0218】
<第2層4bの作製>
第2層1bのラビング処理の角度をTACの長手方向に対して-15°としたこと以外は第2層1bと同様の条件にて、第2層4bを作製した。波長550nmにおける面内位相差値はRe(550)=142nmであり、波長450nmにおける面内位相差値はRe(450)=153.4nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は前記TACの長手方向に対して-15°であった。
【0219】
第1層4bである基材/配向膜/(λ/2層)と第2層4bである基材/配向膜/(λ/4層)の位相差膜側にそれぞれコロナ処理を施した後、それぞれの基材の長手方向が同一方向となるように粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を介して貼合し、基材/配向膜/(λ/2層)/粘着剤層/(λ/4層)/配向膜/基材を得た。第2位相差板4bについて、波長550nmにおける見かけの面内位相差値Re2(550)は139nmであり、波長450nmにおける見かけの面内位相差値Re2(450)は106nmであった。なお、TACの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角はλ/2層側から見たときに、前記TACの長手方向に対してλ/2層が-75°、λ/4層が-15°であった。
【0220】
[4]粘着剤層
第3貼合層17および粘着剤層19として、両面が剥離フィルムに貼り合わせられた、厚み25μmのアクリル系粘着剤層(温度23℃の貯蔵弾性率:1.3MPa)を用いた。
【0221】
[5]偏光子
厚み20μm、重合度2400、ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルムを、熱ロール上で延伸倍率4.5倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100質量部あたりヨウ素0.05質量部及びヨウ化カリウム5質量部を含有する、28℃の染色浴に60秒間浸漬した。
【0222】
次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有する、64℃のホウ酸水溶液1に、110秒間浸漬した。次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有する、67℃のホウ酸水溶液2に、30秒間浸漬した。その後、10℃の純水を用いて水洗し、乾燥して、偏光子を得た。偏光子の厚みは8μmであり、ホウ素含有量は4.3質量%あった。
【0223】
[6]光学積層体(実施例1~12、比較例1~3)の作製
偏光子の片面に水系接着剤(第2貼合層15)を介して第2保護フィルム(トリアセチルセルロース、厚み20μm)を、他方の表面に水系接着剤(第1貼合層13)を用いて表面処理層付第1保護フィルム(比較例1については、表面処理層を有しない第1保護フィルム)を、ロール貼合機を用いて貼合した。貼合後、80℃で3分間乾燥処理を行った。偏光子14の両面に保護フィルムが積層された直線偏光板10を得た。直線偏光板10は、表面処理層11、第1保護フィルム12、第1貼合層13、偏光子14、第2貼合層15、第2保護フィルム16がこの順で積層されたものであった。かかる積層体において、第1保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度θ1を表3に示した。各例において、表面処理層の形成に用いた表面処理層組成物、第1位相差板に用いた第1保護フィルム、および第2位相差板は、表3に示す。
【0224】
直線偏光板10を、長手方向がPVAの吸収軸となるように矩形に切り出したのち、直線偏光板10の第2保護フィルム16の表面に粘着剤層(第3貼合層17)を介して、第2位相差板18の第1層面側から、基材を剥離し、第1層面側が直線偏光板10側に位置するように第2位相差板18を貼合し、さらに第2位相差板18の第2層面側から、基材を剥離し、剥離した表面に粘着剤層19を貼合して光学積層体1を得た。光学積層体1において、第2位相差板18は、表3に示すように第2位相差板1b~4bである。光学積層体1において、第1層の遅相軸と直線偏光板10の偏光子の吸収軸の角度θ2を表3に示した。
【0225】
[7]評価
粘着剤層19を介して各光学積層体1を有機EL表示素子に貼合して有機EL表示装置を作製した。
【0226】
(1)透過光観察
有機EL表示装置を白表示にして、表示角度を変化させて白表示の見栄えを偏光サングラス越しに観察した。また、観察の際に、縦表示と横表示で視認される画像の色味または視認性に違いがあるかについても観察した。以上の観察結果を下記基準に基づいて評価した。表3に結果を示す。表3には、縦表示で観察された色味と横表示で観察された色味とを、(縦表示で観察された色味/横表示で観察された色味)として示す。
【0227】
A:どの表示角度で観察しても白表示の見栄えは全く違いを感じなかった。
B:表示角度によって白表示の見栄えに僅かに違いを感じた。
C:表示角度によって白表示の見栄えに違いを感じた。
D:表示角度によって白表示の見栄えに違いを感じ、黒くなる表示角度があった。
【0228】
(2)反射光観察
有機EL表示装置を黒表示にして、表示角度を変化させて黒表示の見栄えを偏光サングラス越しに観察した。また、観察の際に、視認される画像の色味についても観察した。以上の観察結果を下記基準に基づいて評価した。表3に結果を示す。表3には、黒以外の色味が観察された場合にはその色味も合わせて示す。
A:どの表示角度で観察しても黒表示の見栄えは全く違いを感じなかった。
B:表示角度によって黒表示の見栄えに僅かな違いを感じた。
C:表示角度によって黒表示の見栄えに違いを感じた。
【0229】
(3)透過光斜方観察
有機EL表示装置を白表示にして、斜め方向(仰角60°、方位角0~360°の範囲)からの白表示の色づきを偏光サングラス越しに観察した。観察結果を下記基準に基づいて評価した結果を表3に結果を示す。
A:白表示に色づきを感じなかった。
B:白表示にやや色づきを感じた。
C:白表示に色づきを感じた。
【0230】
(4)反射光斜方観察
有機EL表示装置を黒表示にして、斜め方向(仰角60°、方位角0~360°の範囲)からの黒表示の色づきを偏光サングラス越しに観察した。観察結果を下記基準に基づいて評価した結果を表3に結果を示す。
A:黒表示の色づきに違いを感じなかった。
B:黒表示にやや色づきを感じた。
C:黒表示に色づきを感じた。
【0231】
【表3】
【符号の説明】
【0232】
1 光学積層体、11 表面処理層、12 第1保護フィルム、13 第1貼合層、14 偏光子、15 第2貼合層、16 第2保護フィルム、17 第3貼合層、18 第2位相差板、19 粘着剤層。
図1