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特開2024-124225撮影台、超音波画像撮影装置、マンモグラフィ装置、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124225
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】撮影台、超音波画像撮影装置、マンモグラフィ装置、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240905BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B8/00
A61B8/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032234
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】延山 理紗子
(72)【発明者】
【氏名】坪田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈恭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 涼香
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB09
4C601BB13
4C601DD08
4C601EE04
4C601EE09
4C601GC01
4C601GC04
4C601HH14
4C601LL25
4C601LL33
(57)【要約】
【課題】撮影台に接する乳房の接触面から超音波画像を撮影する。
【解決手段】撮影台10は、乳房を載せる積載面10Aの下方に、積載面10Aの外部から、積載面10Aに向かって出力した超音波に対する乳房での反射波を取得する超音波プローブ23が配置可能である空間を有し、積載面10Aの裏面に乳房と超音波プローブ23との音響インピーダンスの差分を低減させる音響マッチング部材11との接触面10Cを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房の積載面の下方に、前記積載面の外部から、前記積載面に向かって出力した超音波に対する乳房での反射波を取得する超音波プローブが配置可能である空間を有し、前記積載面の裏面に乳房と超音波プローブとの音響インピーダンスの差分を低減させる音響マッチング部材との接触面を有する
撮影台。
【請求項2】
前記超音波プローブを、前記音響マッチング部材を介して前記積載面の裏面に押し付けたとしても、前記積載面の位置が変化しないように、前記積載面に乳房を載せた被検者から眺めた場合に、前記積載面の中央より手前にある前記積載面と交差する側面と、前記積載面の中央より向こうにある前記積載面と交差する側面とにそれぞれ、前記撮影台を前記撮影台の取り付け箇所に固定する固定部材を取り付けるための取り付け機構が設けられた
請求項1に記載の撮影台。
【請求項3】
前記接触面が、前記接触面の周囲の面に対して隆起又は窪んでいる
請求項2に記載の撮影台。
【請求項4】
前記接触面に接触する前記音響マッチング部材がゲルの場合、前記音響マッチング部材は、前記音響マッチング部材を前記接触面に取り付ける保持部材によって前記接触面に固定される
請求項3に記載の撮影台。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の前記撮影台が取り付けられ、
前記超音波プローブによって取得された超音波の反射波を用いて乳房の超音波画像を撮影するように制御する制御部
を備えた超音波画像撮影装置。
【請求項6】
前記撮影台によって形成される前記空間には前記超音波プローブを移動させる移動機構が備えられており、
前記制御部は、前記移動機構を用いて前記超音波プローブを移動させる場合、前記超音波プローブが前記撮影台における前記積載面の裏面に接触しないように前記超音波プローブの長さを制御し、前記超音波プローブが予め定めた位置に移動した場合、前記超音波プローブが前記音響マッチング部材を介して前記撮影台における前記積載面の裏面に接触するように前記超音波プローブの長さを制御して、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房の前記予め定めた位置における超音波画像を取得する制御を行う
請求項5に記載の超音波画像撮影装置。
【請求項7】
前記撮影台によって形成される前記空間には前記超音波プローブを移動させる移動機構が備えられており、
前記制御部は、前記超音波プローブが前記音響マッチング部材を介して前記撮影台における前記積載面の裏面に接触したまま前記超音波プローブを移動させ、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房の超音波画像を取得する制御を行う
請求項5に記載の超音波画像撮影装置。
【請求項8】
前記超音波プローブに、前記撮影台の前記積載面の裏面にある前記音響マッチング部材を前記超音波プローブの移動方向に押し広げながら前記音響マッチング部材を掻きとる摺動板が取り付けられた
請求項7に記載の超音波画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記超音波プローブを第1地点から第2地点に移動させた場合、前記超音波プローブが移動することにより前記撮影台における前記積載面の裏面から掻きとられた前記音響マッチング部材によって前記超音波プローブの移動方向前方に形成される音響マッチング部材溜まりに前記超音波プローブを接触させないように、前記第2地点において前記超音波プローブを前記撮影台における前記積載面の裏面から離したうえで、前記音響マッチング部材溜まりを乗り越えた位置まで前記超音波プローブを移動させてから前記撮影台における前記積載面の裏面に接触させ、前記超音波プローブを前記第1地点に向かって再び移動させる制御を行う
請求項8に記載の超音波画像撮影装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房に対して超音波画像の撮影以外の他の撮影が行われる場合、前記他の撮影の撮影範囲外に前記超音波プローブを移動させる制御を行う
請求項9に記載の超音波画像撮影装置。
【請求項11】
前記撮影台における前記積載面と交差する前記撮影台の側面のうち、胸壁と対向する側面と交差する側面の少なくとも一方に、医療従事者が前記空間に手を入れ、前記超音波プローブを移動させる開口部が設けられている場合、前記空間内の前記超音波プローブを撮影する撮影装置が備えられ、
前記制御部は、前記撮影装置から得られた画像を表示装置に表示しながら、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房の超音波画像を取得する制御を行う
請求項5に記載の超音波画像撮影装置。
【請求項12】
請求項5に記載の超音波画像撮影装置を備えた
マンモグラフィ装置。
【請求項13】
請求項6から請求項11の何れか1項に記載の超音波画像撮影装置を備えた
マンモグラフィ装置。
【請求項14】
撮影台における乳房を載せる積載面の下に設けられた空間に配置可能な超音波プローブから、前記積載面に向かって出力した超音波に対する乳房での反射波を用いて乳房の超音波画像を撮影するように制御する処理をコンピュータに実行させるための
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮影台、超音波画像撮影装置、マンモグラフィ装置、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の乳房に沿って超音波プローブを走査することにより、乳房の超音波画像を撮影する超音波画像撮影装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、被検体からの音響波を受信して被検体内の情報を取得する装置であって、複数の第1変換素子を支持する支持体が球面を有するボウル部を備え、複数の第2変換素子が球面の内側の空間において音響波の送信及び反射波の受信を行う被検体情報取得装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、被検体からの音響波を受信して被検体内の情報を取得する装置であって、所望の数のCMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducer)プローブの指向性が球の中心に向くように球面状に設けられた検出器を備え、球面の内側の空間において音響波の送信及び反射波の受信を行う被検体情報取得装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、超音波アレイプローブと、液体及び超音波アレイプローブを収納し、一部に超音波を透過する伸縮性の膜を有する液体封入容器と、超音波アレイプローブに超音波の送受信を行わせる超音波送受信回路と、を備える超音波乳房検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-85201号公報
【特許文献2】特開2015-177907号公報
【特許文献3】特開2007-282960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乳房の超音波画像を撮影する場合、被検者が撮影台に乳房を載せた状態で超音波画像を撮影することがある。このような場合、撮影台に接する乳房部分に超音波プローブを近づけることができないため、撮影台に接する乳房部分の超音波画像が他の乳房部分の超音波画像に比べて不鮮明になることがある。
【0008】
本開示は、上記事情を考慮して成されたもので、撮影台に接する乳房の接触面から超音波画像を撮影することができる撮影台、超音波画像撮影装置、マンモグラフィ装置、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様に係る撮影台は、乳房の積載面の下方に、前記積載面の外部から、前記積載面に向かって出力した超音波に対する乳房での反射波を取得する超音波プローブが配置可能である空間を有し、前記積載面の裏面に乳房と超音波プローブとの音響インピーダンスの差分を低減させる音響マッチング部材との接触面を有する。
【0010】
第2態様に係る撮影台は、第1態様に係る撮影台において、前記超音波プローブを、前記音響マッチング部材を介して前記積載面の裏面に押し付けたとしても、前記積載面の位置が変化しないように、前記積載面に乳房を載せた被検者から眺めた場合に、前記積載面の中央より手前にある前記積載面と交差する側面と、前記積載面の中央より向こうにある前記積載面と交差する側面とにそれぞれ、前記撮影台を前記撮影台の取り付け箇所に固定する固定部材を取り付けるための取り付け機構が設けられる。
【0011】
第3態様に係る撮影台は、第2態様に係る撮影台において、前記接触面が、前記接触面の周囲の面に対して隆起又は窪んでいる。
【0012】
第4態様に係る撮影台は、第3態様に係る撮影台において、前記接触面に接触する前記音響マッチング部材がゲルの場合、前記音響マッチング部材は、前記音響マッチング部材を前記接触面に取り付ける保持部材によって前記接触面に固定される。
【0013】
第5態様に係る超音波画像撮影装置は、第1態様から第4態様の何れか1つに記載の前記撮影台が取り付けられ、前記超音波プローブによって取得された超音波の反射波を用いて乳房の超音波画像を撮影するように制御する制御部を備える。
【0014】
第6態様に係る超音波画像撮影装置は、第5態様に係る超音波画像撮影装置において、前記撮影台によって形成される前記空間には前記超音波プローブを移動させる移動機構が備えられており、前記制御部は、前記移動機構を用いて前記超音波プローブを移動させる場合、前記超音波プローブが前記撮影台における前記積載面の裏面に接触しないように前記超音波プローブの長さを制御し、前記超音波プローブが予め定めた位置に移動した場合、前記超音波プローブが前記音響マッチング部材を介して前記撮影台における前記積載面の裏面に接触するように前記超音波プローブの長さを制御して、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房の前記予め定めた位置における超音波画像を取得する制御を行う。
【0015】
第7態様に係る超音波画像撮影装置は、第5態様に係る超音波画像撮影装置において、前記撮影台によって形成される前記空間には前記超音波プローブを移動させる移動機構が備えられており、前記制御部は、前記超音波プローブが前記音響マッチング部材を介して前記撮影台における前記積載面の裏面に接触したまま前記超音波プローブを移動させ、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房の超音波画像を取得する制御を行う。
【0016】
第8態様に係る超音波画像撮影装置は、第7態様に係る超音波画像撮影装置において、前記超音波プローブに、前記撮影台の前記積載面の裏面にある前記音響マッチング部材を前記超音波プローブの移動方向に押し広げながら前記音響マッチング部材を掻きとる摺動板が取り付けられる。
【0017】
第9態様に係る超音波画像撮影装置は、第8態様に係る超音波画像撮影装置において、前記制御部は、前記超音波プローブを第1地点から第2地点に移動させた場合、前記超音波プローブが移動することにより前記撮影台における前記積載面の裏面から掻きとられた前記音響マッチング部材によって前記超音波プローブの移動方向前方に形成される音響マッチング部材溜まりに前記超音波プローブを接触させないように、前記第2地点において前記超音波プローブを前記撮影台における前記積載面の裏面から離したうえで、前記音響マッチング部材溜まりを乗り越えた位置まで前記超音波プローブを移動させてから前記撮影台における前記積載面の裏面に接触させ、前記超音波プローブを前記第1地点に向かって再び移動させる制御を行う。
【0018】
第10態様に係る超音波画像撮影装置は、第9態様に係る超音波画像撮影装置において、前記制御部は、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房に対して超音波画像の撮影以外の他の撮影が行われる場合、前記他の撮影の撮影範囲外に前記超音波プローブを移動させる制御を行う。
【0019】
第11態様に係る超音波画像撮影装置は、第5態様に係る超音波画像撮影装置において、前記撮影台における前記積載面と交差する前記撮影台の側面のうち、胸壁と対向する側面と交差する側面の少なくとも一方に、医療従事者が前記空間に手を入れ、前記超音波プローブを移動させる開口部が設けられている場合、前記空間内の前記超音波プローブを撮影する撮影装置が備えられ、前記制御部は、前記撮影装置から得られた画像を表示装置に表示しながら、前記撮影台における前記積載面に載せられた乳房の超音波画像を取得する制御を行う。
【0020】
第12態様に係るマンモグラフィ装置は、第5態様に記載の超音波画像撮影装置を備える。
【0021】
第13態様に係るマンモグラフィ装置は、第5態様から第11態様の何れか1つに記載の超音波画像撮影装置を備える。
【0022】
第14態様に係る制御プログラムは、撮影台における乳房を載せる積載面の下に設けられた空間に配置可能な超音波プローブから、前記積載面に向かって出力した超音波に対する乳房での反射波を用いて乳房の超音波画像を撮影するように制御する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、撮影台に接する乳房の接触面から超音波画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る医用撮影システムの構成例を表す図である。
図2】超音波画像撮影装置の構成例を示す図である。
図3】画像保存システムの構成例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る超音波画像撮影装置の外観例を表す図である。
図5】撮影台の積載面に乳房を載せている被検者の様子を示す図である。
図6】撮影台の構造例を示す図である。
図7】撮影台の他の構造例を示す図である。
図8】音響マッチング部材にゲルを用いた撮影台の例を示す図である。
図9】撮影台の裏面に沿って移動する超音波プローブの例を示す図である。
図10】超音波画像撮影装置によって実行される撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】超音波プローブの移動に伴う音響マッチング部材溜まりの生成例を示す図である。
図12】音響マッチング部材溜まりの生成を解消する撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】音響マッチング部材溜まりの生成を解消する超音波プローブの移動例を示す図である。
図14】乳房における特定の位置の例を示す図である。
図15】伸縮する超音波プローブの一例を示す図である。
図16】乳房の特定の位置を撮影する撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図17】開口部を備えた撮影台の構造例を示す図である。
図18】第2実施形態に係る医用撮影システムの構成例を示す図である。
図19】マンモグラフィ装置とコンソールの構成例を示す図である。
図20】第2実施形態に係る超音波画像撮影装置の外観例を表す図である。
図21】マンモグラフィ装置によって実行される撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図22】放射線画像の撮影範囲外に退避した超音波プローブの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る医用撮影システム1の構成例を表す図である。医用撮影システム1は、超音波画像撮影装置2、及び画像保存システム3を含む。
【0027】
超音波画像撮影装置2は、例えば検査技師や医師等の医療従事者によって、被検者の乳房を被検体とした超音波画像を撮影する装置である。
【0028】
画像保存システム3は、超音波画像撮影装置2によって撮影された超音波画像を保存するシステムである。画像保存システム3は、保存している超音波画像の中から、超音波画像撮影装置2や後述するコンソール6(図18参照)からの要求に応じた超音波画像を取り出して要求元の装置に送信する。画像保存システム3の具体例としては、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)が挙げられる。
【0029】
まず、超音波画像撮影装置2の構成例について説明する。図2は、超音波画像撮影装置2の構成例を示す図である。
【0030】
図2に示すように、超音波画像撮影装置2は、制御部20、プローブ駆動部22、超音波プローブ23、記憶部24、I/F(Interface)部25、出力部26、操作部27、圧迫板駆動部28、圧迫板47、及び圧迫力検知センサ51を含む。制御部20、プローブ駆動部22、記憶部24、I/F部25、出力部26、操作部27、圧迫板駆動部28、及び圧迫力検知センサ51は、バス29を介して相互に各種情報の授受が可能となるように接続されている。
【0031】
制御部20は、医療従事者の指示に基づいて超音波画像撮影装置2の動作を制御する。制御部20は、プロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、及びRAM(Random Access Memory)20Cを備える。ROM20Bには、CPU20Aが超音波画像の撮影に関する制御を行うために読み込む制御プログラム21を含む各種のプログラム、及びCPU20Aが超音波画像撮影装置2の動作を制御するうえで参照する各種パラメータが予め記憶されている。RAM20Cは、CPU20Aの一時的な作業領域として使用される。
【0032】
超音波プローブ23は、被検体、すなわち、乳房に対して超音波を出力すると共に、乳房によって反射した超音波の反射波を取得して、取得した反射波から反射波の状態を反射波データに変換し、制御部20に出力する。反射波データを受け付けた制御部20は、受け付けた反射波データを用いて乳房の超音波画像を生成する。
【0033】
プローブ駆動部22は制御部20の制御に従って、超音波プローブ23を、乳房を上から眺めた場合における被検者の胸壁に沿った方向、すなわち、横方向、及び乳房を上から眺めた場合における被検者の胸壁と交差する方向、すなわち、縦方向にそれぞれ移動させる。医療従事者が、手に持った超音波プローブ23を動かして乳房の超音波画像を撮影してもよいが、ここでは一例として、プローブ駆動部22によって超音波プローブ23の位置を変化させる。
【0034】
圧迫板47は、乳房を上から押さえつけて乳房を圧迫する器具である。圧迫板47は、乳房の圧迫状態が視認できる程度の透明度を有することが好ましい。
【0035】
圧迫板駆動部28は制御部20の制御に従って、圧迫板47を上下方向に移動させる。
【0036】
圧迫力検知センサ51は、圧迫板駆動部28の駆動によって移動した圧迫板47による乳房への圧迫力を検出する機能を有する。
【0037】
このように、超音波画像撮影装置2は、圧迫板47によって圧迫された状態の乳房の超音波画像を撮影する。しかしながら、乳房の超音波画像は乳房を圧迫しなくても撮影可能であるため、超音波画像撮影装置2は必ずしも圧迫板駆動部28、圧迫板47、及び圧迫力検知センサ51を備える必要はない。
【0038】
記憶部24は、撮影された超音波画像、及びその他の各種情報等を記憶する。記憶部24は、記憶部24に供給される電力が遮断されても記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えばSSD(Solid State Drive)等の半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。
【0039】
I/F部25は、無線通信又は有線通信により、例えばLAN(Local Area Network)等の通信回線(図示省略)に接続された外部装置との間で各種情報の通信を行う。例えば制御部20は、撮影した超音波画像を、I/F部25を介して画像保存システム3に送信する。
【0040】
出力部26は、例えば超音波画像の撮影状況に関する情報、撮影した超音波画像、及び警報のように、制御部20によって処理された情報を医療従事者に出力する。情報を出力するとは、情報を医療従事者が確認可能な状態にすることである。したがって、例えば情報を表示装置の一例であるディスプレイ(図示省略)に表示する形態、情報を画像形成装置(図示省略)によって用紙等の記録媒体に印字する形態、及び情報をスピーカー(図示省略)によって音声で通知する形態等は何れも出力部26による情報の出力例である。
【0041】
操作部27は、超音波画像の撮影等に関する指示及び各種情報等を医療従事者が入力するために用いられる。操作部27における操作形態に制約はなく、例えばスイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等による操作の受付が可能である。
【0042】
一方、図3は、画像保存システム3の構成例を示す図である。図3に示すように、画像保存システム3は、制御部30、記憶部34、及びI/F部35を含む。制御部30、記憶部34、及びI/F部35は、バス39を介して相互に各種情報の授受が可能となるように接続されている。
【0043】
制御部30は、画像保存システム3の動作を制御する。制御部30は、CPU30A、ROM30B、及びRAM30Cを備える。ROM30Bには、CPU30Aが超音波画像の保存に関する制御を行うために読み込む各種のプログラム、及びCPU30Aが画像保存システム3の動作を制御するうえで参照する各種パラメータが予め記憶されている。RAM30Cは、CPU30Aの一時的な作業領域として使用される。
【0044】
記憶部34は、超音波画像を撮影オーダや被検者に関する情報等と関連付けて記憶する。すなわち、記憶部34は超音波画像のデータベースとして機能する。
【0045】
I/F部35は、無線通信又は有線通信により、例えばLAN等の通信回線に接続された外部装置との間で各種情報の通信を行う。例えば制御部30は、要求された超音波画像を、I/F部35を介して超音波画像撮影装置2に送信する。
【0046】
次に、超音波画像撮影装置2による乳房の超音波画像の撮影例について説明する。図4は、第1実施形態に係る超音波画像撮影装置2を側面から見た場合の外観例を表す図である。
【0047】
超音波画像撮影装置2は、アーム部42と、基台44と、軸部45とを備える。アーム部42は、基台44によって、上下方向(Z軸方向)に移動可能に保持される。軸部45は、アーム部42を基台44に連結する。また、アーム部42は、軸部45を回転軸として、基台44に対して相対的に回転可能となっている。
【0048】
こうしたアーム部42には、超音波画像の撮影作業が行われる作業台40A、プローブ駆動ユニット9、及び圧迫板駆動ユニット46が設けられている。
【0049】
作業台40Aの上には撮影台10が置かれ、被検者は撮影台10の上面に位置する積載面10Aに乳房を載せる。
【0050】
圧迫板駆動ユニット46には圧迫板47が取り付けられ、圧迫板駆動ユニット46は、圧迫板駆動部28からの指示に従って圧迫板47を下方向に移動させることによって、撮影台10の積載面10Aに載せられた乳房を圧迫板47によって押し付けて圧迫する。また、圧迫板駆動ユニット46は、圧迫板駆動部28からの指示に従って乳房を圧迫している圧迫板47を上方向に移動させることによって、圧迫板47による乳房の圧迫を解除する。
【0051】
圧迫板47の移動方向に関して、特に乳房を圧迫する方向、すなわち、圧迫板47を撮影台10の積載面10Aに近づける方向を「圧迫方向」といい、乳房への圧迫を解除する方向、すなわち、圧迫板47を撮影台10の積載面10Aから遠ざける方向を「圧迫解除方向」という場合がある。
【0052】
撮影台10は乳房が載せられる積載面10Aと、積載面10Aの周囲に沿って積載面10Aと交差する面、すなわち、撮影台10の側面とによって構成される。積載面10Aと対向する面、すなわち、作業台40Aに接する面は開放面となっており、積載面10Aの下方には超音波プローブ23の配置が可能な空間が設けられている。図4に例示した撮影台10は、Z軸方向に沿った撮影台10の高さが2段階に分かれており、高さが高い方の上面が乳房を載せる積載面10Aとして用いられる。
【0053】
撮影台10の空間には、超音波の出力口が積載面10Aに向かうように取り付けられた超音波プローブ23が設置されており、超音波プローブ23は、積載面10Aの外部から積載面10Aに向かって出力した超音波に対する乳房での反射波を取得する。後ほど説明するように、超音波プローブ23における超音波の出力口の周囲には出力口を取り囲むように摺動板23Aが取り付けられている。
【0054】
撮影台10の空間には、例えば被検者の胸壁に沿った方向である横方向、すなわち、X軸方向と、被検者の胸壁と交差する方向である縦方向、すなわち、X軸及びZ軸とそれぞれ直交するY軸方向とに沿って移動レール49が取り付けられている。超音波プローブ23は移動レール49に取り付けられ、例えばモーター(図示省略)によって回転するローラー14間に吊架されたベルト16の移動を駆動力として、移動レール49に沿った方向に移動する。なお、超音波プローブ23を移動させる移動機構に制約はなく、公知の移動手法が適用される。また、撮影台10に超音波プローブ23を移動させる移動機構を取り付けなくても、撮影台10の空間に、別体としての超音波プローブ23の移動機構が収容できればよい。
【0055】
プローブ駆動ユニット9はプローブ駆動部22からの指示に従ってモーターを回転させ、指示された位置に超音波プローブ23を移動させる。
【0056】
こうした撮影台10は外部から衝撃が加えられても位置が変わらないように、固定部材18を用いて作業台40Aに取り付けられる。具体的には、撮影台10の積載面10Aに乳房を載せた被検者から撮影台10を眺めた場合に、積載面10Aの中央より手前にある撮影台10の側面と、積載面10Aの中央より向こう側にある撮影台10の側面とにそれぞれ、撮影台10を作業台40Aに固定する固定部材18を取り付けるための取り付け機構が設けられている。
【0057】
図4に示す例では、固定部材18Aが積載面10Aの中央より手前にある撮影台10の側面の取り付け機構に取り付けられた固定部材18であり、固定部材18Bが積載面10Aの中央より向こう側にある撮影台10の側面の取り付け機構に取り付けられた固定部材18である。
【0058】
図5は、撮影台10の積載面10Aと対向する上の位置から、積載面10Aに乳房を載せている被検者をZ軸方向に向かって眺めた一例を示す図である。
【0059】
図5に示す例では、撮影台10のY軸方向に沿った側面の四隅が固定部材18A、18B、18C、18Dによって作業台40Aに固定されている。しかしながら、積載面10Aの中央より手前にある撮影台10の側面を固定する固定部材18A、18Dに加えて、又は、固定部材18A、18Dの代わりに、被検者の胸壁と接する撮影台10の側面を固定部材18Eによって固定してもよい。
【0060】
移動レール49は、例えばX軸方向に沿って伸びる1本の移動レール49Xと、Y軸方向に沿って伸びる2本の移動レール49Yとによって構成される。移動レール49Yは積載面10Aの下を積載面10Aの両端に沿って設けられており、プローブ駆動ユニット9は、超音波プローブ23が取り付けられた移動レール49XをY軸方向に沿って移動させることによって、Y軸方向に沿った超音波プローブ23の位置を変化させる。また、プローブ駆動ユニット9は、移動レール49Xに沿って超音波プローブ23を移動させることによって、X軸方向に沿った超音波プローブ23の位置を変化させる。
【0061】
次に、撮影台10の積載面10Aの反対側に位置する面であって、超音波プローブ23の超音波の出力口と接触する撮影台10の裏面10Bの構造について説明する。
【0062】
図6は、作業台40Aに取り付けられた撮影台10のY軸方向に沿った側面をX軸方向に沿って眺めた図である。説明の便宜上、図6では、固定部材18、超音波プローブ23、移動レール49、並びに、超音波プローブ23の移動に用いられるローラー14及びベルト16等の駆動部材の図示を省略している。
【0063】
撮影台10の裏面10Bには音響マッチング部材11との接触面10Cが存在する。音響マッチング部材11とは、例えば超音波プローブ23と撮影台10、及び撮影台10と乳房というように、異なる物体との間に塗布される部材である。異なる物体との間に音響マッチング部材11が塗布されることにより、異なる物体同士の音響インピーダンスの差分が低減する。具体的には、音響マッチング部材11は、生体に近い音響インピーダンスを有する部材であり、乳房と超音波プローブ23との間の音響インピーダンスの差分を低減し、乳房と超音波プローブ23との間の音響インピーダンスを生体が有する音響インピーダンスに近づける。
【0064】
また、超音波プローブ23と撮影台10の裏面10Bとの間に、生体に近い音響インピーダンスを有する音響マッチング部材11が満たされることによって、超音波プローブ23と裏面10Bとの間への空気の混入が抑制され、音響マッチング部材を用いなかった場合よりも乳房に超音波が伝わり易くなり、より鮮明な超音波画像が得られる。
【0065】
撮影台10自体の材質もできるだけ生体に近い音響インピーダンスを有していることが好ましく、例えばポリメチルペンテン(polymethylpentene:PMP)が用いられる。
【0066】
撮影台10の裏面10Bにある接触面10Cは、接触面10Cの周囲の面に対して窪んでおり、音響マッチング部材11を塗布する位置をわかりやすく示すような加工が行われている。医療従事者は、周囲よりも窪んだ接触面10Cに音響マッチング部材11を塗布する。接触面10Cの境界が超音波画像の撮影範囲Wに位置すると、接触面10Cの境界部分において撮影した超音波画像が他の部分の超音波画像よりも不鮮明になる場合があるため、接触面10Cの境界は超音波画像の撮影範囲Wの外側に設けられる。
【0067】
なお、撮影台10の裏面10Bにおける音響マッチング部材11との接触面10Cは、必ずしも接触面10Cの周囲の面に対して窪んだ面でなくてもよい。
【0068】
図7は、接触面10Cの形状の他の一例を示す図である。図7に示す接触面10Cは、接触面10Cの周囲の面よりも隆起している。医療従事者は、周囲よりも隆起した接触面10Cに音響マッチング部材11を塗布する。この場合においても、接触面10Cの境界を超音波画像の撮影範囲Wの外側に設けることが好ましい。
【0069】
接触面10Cに接触する音響マッチング部材11の種類に制約はなく、例えばジェル状の音響マッチング部材11が用いられるが、ゲル等の音響マッチング部材11であってもよい。
【0070】
ゲルを音響マッチング部材11として用いる場合、音響マッチング部材11は、音響マッチング部材11を接触面10Cに取り付ける保持部材13によって接触面10Cに固定される。保持部材13には、例えば両面テープが用いられる。
【0071】
図8は、周囲よりも隆起した接触面10Cに、保持部材13を用いて音響マッチング部材11の一例であるゲルを固定した例を示す図である。図8に示す例では、接触面10Cと接触する音響マッチング部材11の範囲全体が保持部材13によって接触面10Cに固定されているが、接触面10Cに接触する音響マッチング部材11の範囲の一部を保持部材13によって接触面10Cに固定してもよい。当然のことながら、保持部材13を用いて音響マッチング部材11の一例であるゲルを、周囲よりも窪んだ接触面10Cに固定してもよい。
【0072】
また、音響マッチング部材11は、封入袋に閉じ込められた液体であってもよい。この場合、保持部材13を用いて液体の音響マッチング部材11が入った封入袋を接触面10Cに固定するが、接触面10Cに接触する封入袋の範囲に粘着性のある素材を用いれば、保持部材13を用いることなく封入袋を接触面10Cに固定できる。
【0073】
以降では一例として、ジェル状の音響マッチング部材11が撮影台10の裏面10Bにある接触面10Cに塗布されているものとして説明を行う。なお、乳房にも音響マッチング部材11が塗布されるため、撮影台10の積載面10Aと乳房の間にも音響マッチング部材11が充填される。
【0074】
図9は、撮影台10の裏面10Bに沿って移動する超音波プローブ23の例を示す図である。超音波プローブ23の超音波の出力口の周囲には出力口を取り囲むように摺動板23Aが取り付けられている。摺動板23Aは、超音波プローブ23の移動方向に音響マッチング部材11を押し広げながら音響マッチング部材11を掻きとる役割を有するヘラ状の部材である。
【0075】
図9の例では、超音波プローブ23に対する摺動板23Aの取り付け状況をわかりやすく説明するため、摺動板23Aによって覆われている超音波プローブ23の部分を点線によって表しているが、他の図に示した超音波プローブ23では、摺動板23Aによって覆われている超音波プローブ23の形状の図示を省略する。また、移動レール49、並びに、超音波プローブ23の移動に用いられるローラー14及びベルト16等の駆動部材の図示についても省略する。
【0076】
ジェル状の音響マッチング部材11は超音波プローブ23よりも上にある撮影台10の裏面10Bに塗布されているため、超音波プローブ23の移動に伴って、音響マッチング部材11が超音波プローブ23に垂れることがある。しかしながら、超音波プローブ23には超音波プローブ23の周囲を覆う傘状の摺動板23Aが取り付けられているため、超音波プローブ23本体に音響マッチング部材11が付着しないようになっている。
【0077】
次に、撮影台10の積載面10Aの下に設けられた空間にある超音波プローブ23を用いて、撮影台10の積載面10Aに載せられた乳房の超音波画像を撮影する超音波画像撮影装置2の作用について説明する。
【0078】
図10は、医療従事者による操作部27を介した操作によって、乳房に対する超音波画像の撮影開始指示を受け付けた場合に、超音波画像撮影装置2によって実行される撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。超音波画像撮影装置2のCPU20Aは、ROM20Bから制御プログラム21を読み込んで撮影処理を実行する。
【0079】
超音波画像の撮影に先立ち、被検者の乳房及び撮影台10の裏面10Bにある接触面10Cには音響マッチング部材11が塗布されているものとする。乳房への音響マッチング部材11の塗布は、医療従事者が手で行っても、乳房に音響マッチング部材11を自動で塗布する塗布ユニット(図示省略)を用いて行ってもよい。また、図4に示したように、被検者は撮影台10の積載面10Aに被検体である乳房を載せている状態とする。
【0080】
まず、ステップS10において、制御部20は圧迫板駆動部28を介して圧迫板駆動ユニット46の制御を行い、圧迫板47を圧迫方向へ移動して、乳房を圧迫板47によって圧迫する。
【0081】
ステップS20において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波プローブ23から超音波を出力させ、乳房に対する超音波画像の撮影を開始する。
【0082】
ステップS30において、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を行い、超音波プローブ23が音響マッチング部材11を介して撮影台10の裏面10Bに接触した状態のまま、超音波プローブ23を指定した位置まで移動させる。したがって、制御部20は、連続した範囲の超音波画像を撮影することができる。
【0083】
ステップS40において、制御部20は、予定していたすべての範囲の超音波画像の撮影を完了したか否かを判定する。まだ撮影が完了していない場合にはステップS30に移行し、超音波プローブ23を指定した位置まで移動させる処理を繰り返し実行する。
【0084】
一方、ステップS40の判定処理によって超音波画像の撮影が完了したと判定された場合にはステップS50に移行する。
【0085】
以上により、乳房の超音波画像が撮影されたことから、ステップS50において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波の出力を停止する。
【0086】
ステップS60において、制御部20は、圧迫板駆動部28を介して圧迫板駆動ユニット46の制御を行い、圧迫板47を圧迫解除方向へ移動して、圧迫板47による乳房の圧迫を解除する。以上により、図10に示す撮影処理を終了する。
【0087】
このように、第1実施形態に係る超音波画像撮影装置2には、乳房の積載面10Aの裏側にあたる裏面10Bに音響マッチング部材11が塗布された撮影台10が取り付けられる。超音波画像撮影装置2は、積載面10Aの下にある空間内の超音波プローブ23を用いて、積載面10Aの下方から積載面10Aに載せられた乳房の超音波画像を撮影する。
【0088】
[第1実施形態の変形例1]
図11は、ステップS30の処理によって、超音波プローブ23を始点から終点まで移動させた移動例を示す図である。始点は第1地点の一例であり、終点は第2地点の一例である。
【0089】
摺動板23Aは、超音波プローブ23の移動方向に音響マッチング部材11を押し広げながら音響マッチング部材11を掻きとる。したがって、超音波プローブ23の移動方向前方にある摺動板23Aに音響マッチング部材11が溜まっていき、音響マッチング部材溜まり11Aが形成される。
【0090】
したがって、撮影台10の裏面10Bに塗布されていた、超音波プローブ23の移動経路にあたる音響マッチング部材11は超音波プローブ23の移動前より減少する。撮影台10の裏面10Bに塗布されている音響マッチング部材11が減少した場合、例えば音響マッチング部材11に気泡が含まれやすくなる。音響マッチング部材11に気泡が発生した場合、気泡が発生した部分において音響インピーダンスが変化してしまい、超音波画像を不鮮明にさせる原因となり得る。
【0091】
本変形例1では、超音波プローブ23を撮影台10の裏面10Bに接触させた状態で移動させたとしても、撮影台10の裏面10Bに塗布されている音響マッチング部材11の減少を抑制する超音波プローブ23の移動方法について説明する。
【0092】
図12は、医療従事者による操作部27を介した操作によって、乳房に対する超音波画像の撮影開始指示を受け付けた場合に、本変形例1の超音波画像撮影装置2によって実行される撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0093】
図12に示す撮影処理が図10に示した撮影処理と異なる点は、ステップS31からステップS33が追加された点であり、その他の処理は同じである。したがって、ここでは追加した処理を中心に図12に示す撮影処理の説明を行う。
【0094】
なお、本変形例1では、撮影台10の空間内にある超音波プローブ23がX軸方向及びY軸方向に加えて、更にZ軸方向に移動できるような移動機構を備えている。
【0095】
ステップS30の処理によって超音波プローブ23を移動させた後、ステップS31が実行される。
【0096】
ステップS31において、制御部20は、超音波プローブ23が終点に到着したか否かを判定する。超音波プローブ23がまだ終点に到着していない場合、ステップS30に移行し、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を引き続き行い、超音波プローブ23の移動を継続する。
【0097】
一方、ステップS31の判定処理によって超音波プローブ23が終点に到着したと判定された場合、ステップS32に移行する。
【0098】
ステップS32において、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を行い、超音波プローブ23を撮影台10の裏面10Bから遠ざける方向に移動させ、終点に到着した超音波プローブ23の超音波の出力口を撮影台10の裏面10Bから離す。
【0099】
この場合、制御部20は、超音波の出力口が、超音波プローブ23の移動に伴い形成された音響マッチング部材溜まり11Aを乗り越える位置まで超音波プローブ23を移動させる。
【0100】
制御部20は、撮影台10の裏面10Bから遠ざける方向に移動させた超音波プローブ23を、始点から終点に向かう移動方向に沿って更に移動させた後、超音波プローブ23を撮影台10の裏面10Bに近づける方向に移動させ、超音波の出力口を撮影台10の裏面10Bに接触させる。これにより、超音波プローブ23は生成された音響マッチング部材溜まり11Aを乗り越えた位置に移動する。
【0101】
ステップS33において、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を行い、始点から終点まで超音波プローブ23が移動してきた元の移動経路を、今度は終点から始点に向かって超音波プローブ23を逆方向に移動させる。
【0102】
図13は、図12に示した撮影処理による超音波プローブ23の移動例を示す図である。位置15Aが超音波プローブ23の移動前の始点であり、位置15Bが超音波プローブ23の終点である。位置15Cが音響マッチング部材溜まり11Aを乗り越えた位置である。
【0103】
超音波プローブ23が位置15Aから位置15Bまで移動した後、超音波プローブ23は、生成された音響マッチング部材溜まり11Aを乗り越えて位置15Cに移動する。超音波プローブ23を撮影台10の裏面10Bに接触させた状態のまま、超音波プローブ23が元の移動経路に沿って位置15Cから位置15Aに向かって移動すれば、音響マッチング部材溜まり11Aが移動方向に沿って移動経路上に押し広げられ、元の移動経路に音響マッチング部材11が補充されることがわかる。したがって、超音波プローブ23の移動経路上にあたる音響マッチング部材11の減少が抑制される。
【0104】
[第1実施形態の変形例2]
ここまで、超音波プローブ23が撮影台10の裏面10Bに接触した状態で、超音波プローブ23を裏面10Bに沿って走査させながら乳房全体の超音波画像を撮影する例について説明してきた。
【0105】
しかしながら、状況によっては、乳房全体の超音波画像を撮影するのではなく、乳房の特定の位置のみの超音波画像を撮影したいことがある。
【0106】
図14は、撮影台10の積載面10Aと対向する上の位置から、積載面10Aに乳房を載せている被検者をZ軸方向に向かって眺めた一例を示す図である。図14において、範囲7A、7Bが超音波画像の撮影を行いたい位置に相当する。
【0107】
こうした撮影形態に対応するため、本変形例2における超音波画像撮影装置2は、Z軸方向に伸縮する超音波プローブ23を用いて、予め指定された乳房の特定の位置における超音波画像を撮影する。
【0108】
図15は、Z軸方向に伸縮する超音波プローブ23の一例を示す図である。超音波プローブ23は伸縮部材23Bを備え、プローブ駆動部22からの指示によりZ軸方向へ伸縮する機能を備える。制御部20はプローブ駆動部22を介して伸縮部材23Bの長さを制御し、超音波プローブ23の長さを調整する。
【0109】
以降では、伸縮部材23Bが短くなることによって、超音波プローブ23の超音波の出力口が撮影台10の裏面10Bに接触しなくなる状態を「超音波プローブ23が短縮している」と表す。また、伸縮部材23Bが長くなることによって、超音波プローブ23の超音波の出力口が撮影台10の裏面10Bに接触する状態を「超音波プローブ23が伸長している」と表す。
【0110】
図16は、医療従事者による操作部27を介した操作によって、乳房の指定された特定の位置に対する超音波画像の撮影開始指示を受け付けた場合に、本変形例2の超音波画像撮影装置2によって実行される撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0111】
超音波画像撮影装置2のCPU20Aは、ROM20Bから制御プログラム21を読み込んで図16に示す撮影処理を実行する。なお、超音波画像の撮影開始指示を受け付けた時点において、超音波プローブ23は短縮しているものとする。
【0112】
ステップS100において、制御部20は圧迫板駆動部28を介して圧迫板駆動ユニット46の制御を行い、圧迫板47を圧迫方向へ移動して、乳房を圧迫板47によって圧迫する。
【0113】
ステップS110において、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を行い、超音波プローブ23を短縮させた状態で指定した位置まで移動させる。
【0114】
ステップS120において、制御部20は超音波プローブ23が指定した位置に到着したか否かを判定する。超音波プローブ23が指定した位置に到着していない場合、ステップS110に移行し、超音波プローブ23を指定した位置まで移動させる。
【0115】
一方、ステップS120の判定処理によって超音波プローブ23が指定した位置に到着したと判定された場合、ステップS130に移行する。
【0116】
ステップS130において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波プローブ23を伸長させる。
【0117】
ステップS140において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波プローブ23から超音波を出力させ、乳房に対する超音波画像の撮影を開始する。すなわち、超音波画像撮影装置2は、乳房の指定された特定の位置における超音波画像を撮影する。制御部20は、超音波画像の撮影が終了した後、超音波プローブ23からの超音波の出力を停止する。
【0118】
ステップS150において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波プローブ23を短縮させる。
【0119】
ステップS160において、制御部20は、指定されたすべての位置の超音波画像の撮影を完了したか否かを判定する。まだ撮影が完了していない位置が存在する場合にはステップS110に移行し、超音波プローブ23を指定した位置まで移動させる処理を繰り返し実行する。
【0120】
一方、ステップS160の判定処理によって、指定されたすべての位置の超音波画像の撮影が完了したと判定された場合にはステップS170に移行する。
【0121】
ステップS170において、制御部20は、圧迫板駆動部28を介して圧迫板駆動ユニット46の制御を行い、圧迫板47を圧迫解除方向へ移動して、圧迫板47による乳房の圧迫を解除する。以上により、図16に示す撮影処理を終了する。
【0122】
このように本変形例2における超音波画像撮影装置2によれば、医療従事者によって指定された位置の超音波画像を撮影することができる。
【0123】
なお、伸縮部材23Bを備えていない超音波プローブ23であっても、超音波プローブ23がX軸方向及びY軸方向に加えて、更にZ軸方向に移動できるような移動機構を準備すれば、制御部20はプローブ駆動部22を制御して、超音波プローブ23自体を撮影台10の裏面10Bに近づける方向、及び遠ざける方向に移動させることができる。
【0124】
[撮影台10の変形例]
ここまで、制御部20からの制御によって、超音波プローブ23が積載面10Aの下に設けられた空間を移動できるような移動機構を有する超音波プローブ23を用いて、撮影台10の積載面10Aの下から乳房の超音波画像を撮影した。しかしながら、必ずしも制御部20が超音波プローブ23の移動を制御する必要はなく、医療従事者が手動で超音波プローブ23を移動させてもよい。この場合、撮影台10の積載面10Aの下に設けられた空間からは、移動レール49、並びに、超音波プローブ23の移動に用いられるローラー14及びベルト16等の駆動部材が不要となる。その代わりに、撮影台10の側面には、医療従事者が撮影台10の積載面10Aの下に超音波プローブ23を持った手を入れるための開口部17が設けられる。
【0125】
図17は、開口部17を備えた撮影台10のY軸方向に沿った側面をX軸方向に沿って眺めた図である。説明の便宜上、撮影台10を作業台40Aに固定する固定部材18は省略している。
【0126】
開口部17は、撮影台10の側面のうち、胸壁と接触する側面と交差する側面、すなわち、YZ平面に沿った側面の少なくとも一方に設けられる。被検者の胸壁側の超音波画像も撮影できるように、図17に示した撮影台10は、積載面10Aの裏側だけでなく、胸壁と接触する側面の裏側まで接触面10Cが延長され、胸壁側接触面10C-1を構成する。接触面10C及び胸壁側接触面10C-1には音響マッチング部材11が塗布される。
【0127】
なお、積載面10Aの裏側に設けられた接触面10Cと胸壁側接触面10C-1とは、予め定めた曲率半径を有する曲面によって接続される。したがって、接触面10Cと胸壁側接触面10C-1が直角に交差する場合よりも、接触面10Cと胸壁側接触面10C-1の接続部分に超音波プローブ23を密着させやすくなるため、鮮明な超音波画像を撮影することができる。
【0128】
このように、医療従事者が開口部17から手を入れて超音波プローブ23を移動させる場合、医療従事者は超音波プローブ23の位置を目視することが困難になる。したがって、撮影台10の空間内には、空間内を移動する超音波プローブ23を撮影するカメラ19が備えられる。
【0129】
カメラ19は、撮影台10の接触面10C及び胸壁側接触面10C-1の全体が撮影できるような位置に取り付けられる。具体的には、カメラ19は、撮影台10の接触面10C及び胸壁側接触面10C-1を見上げるような位置に取り付けられる。
【0130】
カメラ19が撮影した画像は、制御部20が出力部26を制御することによってディスプレイに表示される。医療従事者は、ディスプレイに表示された画像を見ることによって、超音波プローブ23の位置を確認しながら超音波画像の撮影を行うことができる。なお、カメラ19の台数に制約はなく、複数のカメラ19によって超音波プローブ23の位置を撮影してもよい。カメラ19は、撮影台10の空間内に入れられた超音波プローブ23を撮影する撮影装置の一例である。
【0131】
図5に示したように、撮影台10の積載面10Aに乳房を載せた被検者から撮影台10を眺めた場合に積載面10Aの中央より手前にある撮影台10の側面は、例えば固定部材18A、18Dによって固定されている。したがって、医療従事者が超音波プローブ23を接触面10Cと胸壁側接触面10C-1の接続部分に押し付けて乳房の超音波画像を撮影したとしても、撮影台10が浮き上がることがない。
【0132】
[第2実施形態]
第2実施形態では、図1に示した医用撮影システム1に対して放射線画像撮影システム4を追加した医用撮影システム1Aについて説明する。
【0133】
図18は、第2実施形態に係る医用撮影システム1Aの構成例を示す図である。医用撮影システム1Aは、図1に示した超音波画像撮影装置2と、放射線画像撮影システム4と、図1に示した画像保存システム3を拡張した画像保存システム3Aとを含む。更に、放射線画像撮影システム4は、マンモグラフィ装置5及びコンソール6を含む。
【0134】
マンモグラフィ装置5は、圧迫板47によって圧迫された被検者の乳房に放射線R(例えばX線:図20参照)を照射して乳房の放射線画像を撮影する装置である。マンモグラフィ装置5は、図4に示した超音波画像撮影装置2と共通の筐体によって実現される。すなわち、マンモグラフィ装置5は、第1実施形態において説明した超音波画像撮影装置2の機能も備える。
【0135】
コンソール6は、マンモグラフィ装置5の操作を行う操作卓であり、例えばマンモグラフィ装置5及び画像保存システム3Aと接続される。
【0136】
画像保存システム3Aは、超音波画像撮影装置2によって撮影された超音波画像、及びマンモグラフィ装置5によって撮影された放射線画像を保存するシステムである。画像保存システム3Aは、保存している超音波画像及び放射線画像の中から、コンソール6からの要求に応じた超音波画像及び放射線画像を取り出してコンソール6に送信する。
【0137】
なお、コンソール6は、LAN等の通信回線を介してRIS(Radiology Information System)7から取得した撮影オーダ及び各種情報と、操作部27を介して医療従事者から受け付けた指示等とを用いて、マンモグラフィ装置5の制御を行う機能を備える。
【0138】
図19は、マンモグラフィ装置5とコンソール6の構成例を示す図である。マンモグラフィ装置5は超音波画像撮影装置2の機能も備えるため、図2に示した超音波画像撮影装置2の構成に加えて、放射線源41R及び放射線検出器52を備える。また、図2における制御プログラム21、及び記憶部24がそれぞれ制御プログラム21A、及び記憶部24Aに置き換えられる。
【0139】
放射線源41Rは、コンソール6からの指示を受け付けた制御部20からの制御に従って乳房に放射線Rを照射する。
【0140】
放射線検出器52は、作業台40Aの下に位置するアーム部42の内部に配置され、被検体である乳房を通過した放射線Rを検出する。放射線Rが照射される作業台40Aは、放射線Rの透過性や強度の観点から、例えばカーボン等で形成されている。
【0141】
記憶部24Aは、撮影された超音波画像及び放射線画像、並びに、その他の各種情報等を記憶する。
【0142】
なお、マンモグラフィ装置5における圧迫板47は、放射線Rの透過性に優れた材料によって形成される。更に、圧迫板47は、超音波プローブ23から出力される超音波を伝播し易い材料により形成されることが好ましい。圧迫板47の材料としては、例えばポリメチルペンテン、ポリカーボネート、アクリル、及びポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることができる。特にポリメチルペンテンは、剛性が低く伸縮性及び可撓性に優れると共に、超音波の反射率に影響する音響インピーダンスと超音波の減衰に影響する減衰係数とにおいて適した値を有するため、圧迫板47の材料として適している。なお、圧迫板47を構成する部材は上記の例に限定されない。例えば圧迫板47を構成する部材は、フィルム状の部材であってもよい。
【0143】
制御プログラム21Aは、プロセッサの一例であるCPU20Aが超音波画像の撮影に関する制御、及び放射線画像の撮影に関する制御を行うために読み込むプログラムである。
【0144】
コンソール6は、一例としてサーバーコンピュータによって構成される。図19に示すように、コンソール6は、制御部60、出力部61、操作部62、記憶部63、及びI/F部64を備えている。制御部60、出力部61、操作部62、記憶部63、及びI/F部64は、バス69を介して相互に各種情報の授受が可能となるように接続されている。
【0145】
制御部60は、コンソール6全体の動作を制御する。制御部60は、CPU60A、ROM60B、及びRAM60Cを備える。ROM60Bには、CPU60Aで実行される各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM60Cは、CPU60Aの一時的な作業領域として使用される。
【0146】
出力部61は、制御部60によって処理された情報を医療従事者に出力する。
【0147】
操作部62は、放射線Rの照射指示を含む放射線画像の撮影等に関する指示や各種情報等を医療従事者が入力するために用いられる。したがって、操作部62には、放射線Rの照射を指示する場合に医療従事者が押圧する照射指示ボタンが少なくとも含まれる。操作部62における操作形態に制約はなく、例えばスイッチ、タッチパネル、タッチペン、及びマウス等による操作の受付が可能である。
【0148】
記憶部63は、マンモグラフィ装置5で撮影された放射線画像、及びその他の各種情報等を記憶する。記憶部63は、記憶部63に供給される電力が遮断されても記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えばSSD等の半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。
【0149】
I/F部64は、無線通信又は有線通信により、例えばLAN等の通信回線に接続されたマンモグラフィ装置5、RIS7、及び画像保存システム3Aとの間で各種情報の通信を行う。例えばコンソール6は、I/F部64を介してマンモグラフィ装置5で撮影された放射線画像を受信すると共に、受信した放射線画像を、I/F部64を介して画像保存システム3Aに送信し、放射線画像を画像保存システム3Aに保存する。
【0150】
図20は、マンモグラフィ装置5を側面から見た場合の外観例を表す図である。マンモグラフィ装置5においても作業台40Aに撮影台10が取り付けられ、被検者が撮影台10の積載面10Aに乳房を載せた状態で、乳房の超音波画像及び放射線画像が撮影される。
【0151】
図20に示すマンモグラフィ装置5には、図4に示した超音波画像撮影装置2の装置構成に対して、放射線源41R及び放射線検出器52が追加される。
【0152】
放射線源41Rは、アーム部42のうち、撮影台10の積載面10Aと対向する位置に設けられる。
【0153】
なお、マンモグラフィ装置5は、被検者が起立している状態(立位状態)のみならず、被検者が椅子(車椅子を含む)等に座った状態(座位状態)において、被検者の乳房を撮影することができる。
【0154】
また、マンモグラフィ装置5に取り付けられる撮影台10には、例えば拡大撮影台が用いられる。拡大撮影台とは、被検体である乳房を放射線源41Rに近づけることによって、乳房を作業台40Aに直接載せた場合よりも拡大された乳房の放射線画像を撮影するための台である。
【0155】
次に、乳房の超音波画像及び放射線画像を撮影するマンモグラフィ装置5の作用について詳細に説明する。
【0156】
図21は、医療従事者によるコンソール6を介した操作によって、乳房に対する超音波画像及び放射線画像の撮影開始指示を受け付けた場合に、マンモグラフィ装置5によって実行される撮影処理の流れの一例を示すフローチャートである。マンモグラフィ装置5のCPU20Aは、ROM20Bから制御プログラム21Aを読み込んで撮影処理を実行する。
【0157】
超音波画像の撮影に先立ち、被検者の乳房及び撮影台10の裏面10Bにある接触面10Cには音響マッチング部材11が塗布されているものとする。乳房への音響マッチング部材11の塗布は、医療従事者が手で行っても、乳房に音響マッチング部材11を自動で塗布する塗布ユニットを用いて行ってもよい。また、図20に示したように、被検者は撮影台10の積載面10Aに被検体である乳房を載せている状態とする。
【0158】
まず、ステップS200において、制御部20は圧迫板駆動部28を介して圧迫板駆動ユニット46の制御を行い、圧迫板47を圧迫方向へ移動して、乳房を圧迫板47によって圧迫する。
【0159】
ステップS210において、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を行い、超音波プローブ23の存在が放射線画像に影響を与えないように、超音波プローブ23を放射線画像の撮影範囲外に退避させる。なお、放射線画像の撮影範囲外の位置を表す位置情報は、例えばROM20Bに予め記憶されている。放射線画像の撮影は、超音波画像の撮影以外の他の撮影の一例である。
【0160】
図22は、超音波プローブ23を放射線画像の撮影範囲外に退避させた様子を示す図である。ステップS210の処理によって、超音波プローブ23は、放射線画像の撮影範囲48の外側の位置に移動する。
【0161】
ステップS220において、制御部20は、放射線Rの照射を開始するように放射線源41Rを制御し、圧迫板47によって圧迫された乳房の放射線画像を撮影する。
【0162】
ステップS230において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波プローブ23から超音波を出力させ、乳房に対する超音波画像の撮影を開始する。
【0163】
ステップS240において、制御部20はプローブ駆動部22を介してモーターの制御を行い、超音波プローブ23が音響マッチング部材11を介して撮影台10の裏面10Bに接触した状態のまま、超音波プローブ23を指定した位置まで移動させる。
【0164】
ステップS250において、制御部20は、予定していたすべての範囲の超音波画像の撮影を完了したか否かを判定する。まだ撮影が完了していない場合にはステップS240に移行し、超音波プローブ23を指定した位置まで移動させる処理を繰り返し実行する。
【0165】
一方、ステップS250の判定処理によって超音波画像の撮影が完了したと判定された場合にはステップS260に移行する。
【0166】
以上により、乳房の超音波画像が撮影されたことから、ステップS260において、制御部20はプローブ駆動部22を介して超音波プローブ23の制御を行い、超音波の出力を停止する。
【0167】
ステップS270において、制御部20は、圧迫板駆動部28を介して圧迫板駆動ユニット46の制御を行い、圧迫板47を圧迫解除方向へ移動して、圧迫板47による乳房の圧迫を解除する。以上により、図21に示す撮影処理を終了する。
【0168】
なお、ステップS240の処理において、医療従事者が超音波プローブ23を手に持ち、圧迫板47越しに超音波プローブ23を乳房に近づけて、乳房の上側の超音波画像を撮影してもよい。
【0169】
また、制御部20は、乳房の放射線画像から、超音波によって更に詳細に検査した方がよいと思われる箇所を特定し、特定した乳房の箇所だけ超音波画像の撮影を行ってもよい。制御部20は、例えばCAD(computer-aided diagnosis)のようなコンピュータを利用した診断手法を用いて放射線画像の診断を行う。
【0170】
このようにマンモグラフィ装置5は、乳房に対する放射線画像の撮影と共に、乳房の超音波画像の撮影も行う。また、撮影台10を用いることによって、マンモグラフィ装置5は、乳房の下側の超音波画像を撮影することができる。撮影台10は、移動レール49、並びに、超音波プローブ23の移動に用いられるローラー14及びベルト16等の駆動部材を収容する撮影台10の他、図17に示したような、医療従事者が手動で超音波プローブ23を移動させるような撮影台10であってもよい。
【0171】
また、超音波プローブ23の移動に関して、図12及び図16に示した撮影処理における超音波プローブ23の移動制御を適用してもよい。
【0172】
以上、実施形態を用いて医用撮影システム1、1Aの一形態について説明したが、開示した医用撮影システム1、1Aの形態は一例であり、医用撮影システム1、1Aの形態は実施形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術的範囲に含まれる。
【0173】
例えば本開示の要旨を逸脱しない範囲で図10図12図16、及び図21に示したフローチャートにおける内部の処理順序を変更してもよい。
【0174】
上記の各実施形態では、一例として、図10図12図16、及び図21に示した各撮影処理をソフトウェア処理で実現する形態について説明した。しかしながら、各撮影処理のフローチャートと同等の処理をハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、各撮影処理をソフトウェア処理で実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0175】
上記の各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU20A)や、専用のプロセッサ(例えば GPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0176】
また、上記の各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記の実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0177】
上記の各実施形態では、ROM20Bに制御プログラム21、21Aが記憶されている例について説明した。しかしながら、制御プログラム21、21Aの記憶先はROM20Bに限定されない。制御プログラム21、21Aは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。
【0178】
例えば制御プログラム21、21AをCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びブルーレイディスクのような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、制御プログラム21、21Aを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。ROM20B、CD-ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、USB、及びメモリカードは非一時的(non-transitory)記憶媒体の一例である。
【0179】
更に、制御部20はI/F部25を通じて、通信回線に接続された外部装置から制御プログラム21、21Aをダウンロードし、ダウンロードした制御プログラム21、21Aを制御部20のROM20Bに記憶してもよい。この場合、制御部20のCPU20Aは、外部装置からダウンロードした制御プログラム21、21AをROM20Bから読み込んで各撮影処理を実行する。
【符号の説明】
【0180】
1、1A 医用撮影システム
2 超音波画像撮影装置
3、3A 画像保存システム
4 放射線画像撮影システム
5 マンモグラフィ装置
6 コンソール
7A、7B 範囲
9 プローブ駆動ユニット
10 撮影台
10A (撮影台の)積載面
10B (撮影台の)裏面
10C 接触面
10C-1 胸壁側接触面
11 音響マッチング部材
13 保持部材
14 ローラー
15A~15C (超音波プローブの)位置
16 ベルト
17 開口部
18、18A~18E 固定部材
19 カメラ
20 制御部
21、21A 制御プログラム
22 プローブ駆動部
23 超音波プローブ
23A (超音波プローブの)摺動板
23B (超音波プローブの)伸縮部材
24、24A 記憶部
25 I/F部
26 出力部
27 操作部
28 圧迫板駆動部
29 バス
30 (画像保存システムの)制御部
34 (画像保存システムの)記憶部
35 (画像保存システムの)I/F部
39 (画像保存システムの)バス
40A 作業台
41R 放射線源
42 アーム部
44 基台
45 軸部
46 圧迫板駆動ユニット
47 圧迫板
48 放射線画像の撮影範囲
49、49X、49Y 移動レール
51 圧迫力検知センサ
52 放射線検出器
60 (コンソールの)制御部
61 (コンソールの)出力部
62 (コンソールの)操作部
63 (コンソールの)記憶部
64 (コンソールの)I/F部
69 (コンソールの)バス
R 放射線
W 超音波画像の撮影範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22