(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124247
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】オンデマンド水素発生装置並びに出力パッケージに合わせた水素生成制御方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/06 20060101AFI20240905BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240905BHJP
【FI】
C01B3/06
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032260
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】592016485
【氏名又は名称】株式会社デイトナ
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
(72)【発明者】
【氏名】星 伸一
(72)【発明者】
【氏名】末川 知弥
(72)【発明者】
【氏名】田村 開都
(72)【発明者】
【氏名】小野 智喜
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AA01
5H127FF20
(57)【要約】
【課題】負荷に応じて必要量の水素ガスを生成段階で制御するという着想の下、新規なオンデマンド水素発生装置並びに出力パッケージに合わせた水素生成制御方法を開発することを技術課題とした。
【解決手段】SBH水溶液から水素ガスを生成する水素リアクタユニット4を具えて成る装置であって、反応による生成物を受け入れる、フィルタリングチャンバ44と水素ガス貯留チャンバ46とを具えて成るバッファユニット40が設けられ、フィルタリングチャンバ44は反応による生成物を水素ガスと副生成物とに分離すると共にドレン経路に副生成物排出弁44Vを具え、水素ガス貯留チャンバ46は、生成された水素ガスを出力パッケージ2側に送り出す水素ガス取出管49を具え、供給路5に設けらた給液装置7を、出力パッケージ2の負荷に応じて制御するための制御装置8が具えられていることを特徴として成る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ホウ素ナトリウム水溶液を収納するSBH水溶液タンクと、クエン酸水溶液を収納するクエン酸水溶液タンクとを具え、各タンクから給液を行う供給路を反応路で合流させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液から水素ガスを生成する水素リアクタユニットを具えて成る装置であって、
前記反応路は水素化ホウ素ナトリウム水溶液から水素ガスを生成するために必要な有効長を確保するために迂回状に形成され、且つ水素ガス生成反応が始まる反応開始部から反応が終了する反応終了部にかけて、下りの傾斜状態に形成され、
また前記反応路の反応終了部側には、反応による生成物を受け入れるバッファユニットが設けられ、このバッファユニットはフィルタリングチャンバと水素ガス貯留チャンバとを具え、
前記フィルタリングチャンバは反応による生成物を水素ガスと副生成物とに分離すると共にドレン経路に副生成物排出弁を具え、
一方、水素ガス貯留チャンバは、生成された水素ガスを燃料とする出力パッケージ側に送り出す水素ガス取出管を具え、
更に前記供給路には、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液とを供給する給液装置が設けられ、
更にこの給液装置を、前記出力パッケージの負荷に応じて制御するための制御装置が具えられていることを特徴とするオンデマンド水素発生装置。
【請求項2】
前記反応路において水素ガスの生成を行うには、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液とを反応させるか、または反応路内に触媒を配置するか、のいずれか一方または双方により水素ガスの生成を行うことができるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のオンデマンド水素発生装置。
【請求項3】
前記給液装置はチューブポンプを具えて成るものであり、このチューブポンプの回転速度を制御装置で制御することにより、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液との供給量を調節するものであることを特徴とする請求項2記載のオンデマンド水素発生装置。
【請求項4】
前記バッファユニットは上下を閉塞される筒状の本体部を具えて成るものであり、この本体部の内側に内周面に添うように間隔を空けてセパレータを設け、このセパレータによってその外側にフィルタリングチャンバを形成し、
一方、前記セパレータの内側に水素ガス貯留チャンバを形成するものであり、
フィルタリングチャンバと水素ガス貯留チャンバとは、バッファユニットの底部近くにおいて連通し、
前記フィルタリングチャンバは、フィルタエレメントを具えると共に反応路と連通され、
一方、水素ガス貯留チャンバは、その上部において水素ガス取出管と連通していること
を特徴とする請求項2または3記載のオンデマンド水素発生装置。
【請求項5】
前記バッファユニットは、その上方を前記反応路を内部に設けた反応路ブロックによって蓋状に閉塞されていることを特徴とする請求項2または3記載のオンデマンド水素発生装置
【請求項6】
前記反応路ブロックは、上ブロックと下ブロックとにより上下分割され、それぞれ反応路凸条と反応路凹溝との組み合わせのいずれかを形成して、内部に集束螺旋傾斜状の反応路を形成したことを特徴とする請求項5記載のオンデマンド水素発生装置。
【請求項7】
前記バッファユニットにおける水素ガス取出管と対向するセパレーターの部位には、オリフィスが形成されていることを特徴とする請求項4記載のオンデマンド水素発生装置
【請求項8】
前記バッファユニットにおける水素ガス取出管と出力パッケージとを接続する管路には、減圧レギュレータが具えられていることを特徴とする請求項4記載のオンデマンド水素発生装置
【請求項9】
前記SBH水溶液タンク及びクエン酸水溶液タンクは、補充充填が可能なカートリッジ容器が装着できるように構成されていることを特徴とする請求項2または3記載のオンデマンド水素発生装置
【請求項10】
前記請求項1または2記載のオンデマンド水素発生装置により生成される水素ガスを燃料とする負荷装置としての出力パッケージは、内燃機関とこれに駆動される発電機または燃料電池であり、
発電負荷を制御装置への入力情報とし、この発電負荷に応じて給液装置へ必要な制御情報を出力するようにしたことを特徴とする出力パッケージに合わせた水素生成制御方法。
【請求項11】
前記給液装置はチューブポンプを具えて成るものであり、このチューブポンプの駆動にあたっては、
水素ガス取出管を通じて出力パッケージ側に供給される水素量が適したものとなる水溶液投入量へ回転数の制御を行うことを特徴とする請求項10記載の出力パッケージに合わせた水素生成制御方法。
【請求項12】
前記請求項1または2記載のオンデマンド水素発生装置を用いて水素ガスを生成するにあたり、
バッファユニットにおけるドレン経路に具えられた副生成物排出弁を開放することにより、
バッファユニットのフィルタリングチャンバ部分に存在する副生成物の溶液を適度に排出し、
バッファユニット内に副生成物を溜め過ぎることなく、水素ガス取出管を通じて出力パッケージ側に送り出す水素ガスの量を所望の値とすることを特徴とする出力パッケージに合わせた水素生成制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の出力パッケージの燃料としての水素ガスを水素化ホウ素ナトリウム水溶液を基幹原料として、その消費状況に応じてその都度必要量生成することのできるオンデマンド水素発生装置並びに出力パッケージに合わせた水素生成制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全の見地からいわゆる化石燃料に替わるエネルギー源の一つとして水素が注目されている。
しかしながら、水素は目下商用可能なものとするには専ら大規模プラントでの生成がされており、且つその貯留タンクも大規模なものとなっている。加えて水素ガスの小分け補充のための扱いも、充分な安全確保操作を要求されており、必ずしも簡便な使い勝手は得られていない。
【0003】
このような現状から本発明者は、水素ガスを必要が生じた都度発生させて利用できるようにする手法の研究を進めており、既に特許取得乃至は特許出願により、その成果を開示している。
具体的には、特許文献1は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液とを反応管内に必要時間かけて通過させて、水素ガスを発生させる基本的手法を開示したものである。
また特許文献2は、高圧水素ガスを燃料とする出力パッケージ(エンジン)に対し、その動力負荷に応じて水素ガス供給量を適切に制御する手法を開示するものである。
また特許文献3は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液とを積極的に撹拌混合させ水素ガスを効果的に発生させ、且つ撹拌混合の動力源としてのエンジンに燃料としてその発生した水素ガスを用いることを開示したものである。
【0004】
このような研究開発の中では出力パッケージによる水素ガスの燃費向上も技術課題とされるものであるが、従来はこの課題は解決途上というべき段階であり、いわゆる省エネルギー対策としては開発の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6869799号公報
【特許文献2】特開2020-33992公報
【特許文献3】特願2022-079814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、省エネルギー化、省燃費化を達成するには水素ガスの供給の段階で負荷対応させるのではなく、根本的に負荷に応じて必要量の水素ガスを生成段階で制御するという着想の下、新規なオンデマンド水素発生装置並びに出力パッケージに合わせた水素生成制御方法を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載のオンデマンド水素発生装置は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を収納するSBH水溶液タンクと、クエン酸水溶液を収納するクエン酸水溶液タンクとを具え、各タンクから給液を行う供給路を反応路で合流させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液から水素ガスを生成する水素リアクタユニットを具えて成る装置であって、前記反応路は水素化ホウ素ナトリウム水溶液から水素ガスを生成するために必要な有効長を確保するために迂回状に形成され、且つ水素ガス生成反応が始まる反応開始部から反応が終了する反応終了部にかけて、下りの傾斜状態に形成され、また前記反応路の反応終了部側には、反応による生成物を受け入れるバッファユニットが設けられ、このバッファユニットはフィルタリングチャンバと水素ガス貯留チャンバとを具え、前記フィルタリングチャンバは反応による生成物を水素ガスと副生成物とに分離すると共にドレン経路に副生成物排出弁を具え、一方、水素ガス貯留チャンバは、生成された水素ガスを燃料とする出力パッケージ側に送り出す水素ガス取出管を具え、更に前記供給路には、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液とを供給する給液装置が設けられ、更にこの給液装置を、前記出力パッケージの負荷に応じて制御するための制御装置が具えられていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項1記載の要件に加え、前記反応路において水素ガスの生成を行うには、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液とを反応させるか、または反応路内に触媒を配置するか、のいずれか一方または双方により水素ガスの生成を行うことができるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記給液装置はチューブポンプを具えて成るものであり、このチューブポンプの回転速度を制御装置で制御することにより、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液との供給量を調節するものであることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記バッファユニットは上下を閉塞される筒状の本体部を具えて成るものであり、この本体部の内側に内周面に添うように間隔を空けてセパレータを設け、このセパレータによってその外側にフィルタリングチャンバを形成し、一方、前記セパレータの内側に水素ガス貯留チャンバを形成するものであり、フィルタリングチャンバと水素ガス貯留チャンバとは、バッファユニットの底部近くにおいて連通し、前記フィルタリングチャンバは、フィルタエレメントを具えると共に反応路と連通され、一方、水素ガス貯留チャンバは、その上部において水素ガス取出管と連通していることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記バッファユニットは、その上方を前記反応路を内部に設けた反応路ブロックによって蓋状に閉塞されていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項5記載の要件に加え、前記反応路ブロックは、上ブロックと下ブロックとにより上下分割され、それぞれ反応路凸条と反応路凹溝との組み合わせのいずれかを形成して、内部に集束螺旋傾斜状の反応路を形成したことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項4記載の要件に加え、前記バッファユニットにおける水素ガス取出管と対向するセパレーターの部位には、オリフィスが形成されていることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項8記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項4記載の要件に加え、前記バッファユニットにおける水素ガス取出管と出力パッケージとを接続する管路には、減圧レギュレータが具えられていることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項9記載のオンデマンド水素発生装置は、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記SBH水溶液タンク及びクエン酸水溶液タンクは、補充充填が可能なカートリッジ容器が装着できるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項10記載の出力パッケージに合わせた水素生成制御方法は、前記請求項1または2記載のオンデマンド水素発生装置により生成される水素ガスを燃料とする負荷装置としての出力パッケージは、内燃機関とこれに駆動される発電機または燃料電池であり、発電負荷を制御装置への入力情報とし、この発電負荷に応じて給液装置へ必要な制御情報を出力するようにしたことを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項11記載の出力パッケージに合わせた水素生成制御方法は、前記請求項10記載の要件に加え、前記給液装置はチューブポンプを具えて成るものであり、このチューブポンプの駆動にあたっては、水素ガス取出管を通じて出力パッケージ側に供給される水素量が適したものとなる水溶液投入量へ回転数の制御を行うことを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項12記載の出力パッケージに合わせた水素生成制御方法は、前記請求項1または2記載のオンデマンド水素発生装置を用いて水素ガスを生成するにあたり、バッファユニットにおけるドレン経路に具えられた副生成物排出弁を開放することにより、バッファユニットのフィルタリングチャンバ部分に存在する副生成物の溶液を適度に排出し、バッファユニット内に副生成物を溜め過ぎることなく、水素ガス取出管を通じて出力パッケージ側に送り出す水素ガスの量を所望の値とすることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の要件を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0019】
まず請求項1記載の発明によれば、出力パッケージの負荷に応じて水素ガスの生成量を最適化することができ、省エネルギー化、省燃費化を達成することができる。
【0020】
また請求項2記載の発明によれば、一つのオンデマンド水素発生装置において、異なる反応態様で水素ガスを生成することができるとともに、反応促進剤の使用量を著しく低下させた運用を実施することができる。
【0021】
また請求項3記載の発明によれば、水素化ホウ素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液との供給を、正確且つ安定して行うことができる。
【0022】
また請求項4記載の発明によれば、生成された水素ガスと、副生成物とを効果的に分離することができる。
【0023】
また請求項5記載の発明によれば、反応路を内在させる水素リアクタユニットの気密性を、簡素な構成により、且つ簡単に確保することができる。
【0024】
また請求項6記載の発明によれば、反応路凹溝と反応路凸状との組み合わせにより反応路を容易に形成することができる。またこれらを組み合わせる前に触媒の設置等を容易に行うことができる。
【0025】
また請求項7記載の発明によれば、水素リアクタユニットから外部に排出される水素ガスの圧力を所望の圧力とすることができる。
【0026】
また請求項8記載の発明によれば、出力パッケージに供給される水素ガスの圧力を所望の圧力とすることができる。
【0027】
また請求項9記載の発明によれば、オンデマンド水素発生装置に対して、容易な燃料タンクの設置、容易な燃料供給を行うことが可能となり,大型化することなく連続運転が可能なものとすることができる。
【0028】
また請求項10記載の発明によれば、発電機または燃料電池の出力が安定するように、内燃機関を稼働させることができる。
【0029】
また請求項11記載の発明によれば、内燃機関を安定した状態で稼働させることができるとともに、発電機または燃料電池の出力をよりいっそう安定させることができる。
【0030】
また請求項12記載の発明によれば、副生成物の排出を行い、内部圧力が一定となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のオンデマンド水素発生装置を骨格的に示すブロック図である。
【
図2】本発明のオンデマンド水素発生装置を制御系に主眼を置いて骨格的に示すブロック図である。
【
図3】水素リアクタユニットを一部拡大して示す縦断側面図である。
【
図4】水素リアクタユニットを示す分解斜視図である。
【
図5】反応ブロックにおける下ブロックを示す平面図、b-b断面図、c-c断面図である。
【
図6】反応ブロックにおける上ブロックを示す平面図、b-b断面図、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更に本発明の技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
【実施例0033】
以下本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。本発明のオンデマンド水素発生装置1(以下水素発生装置と略記する)は別途構成される出力パッケージ2に対して、制御装置8による制御にしたがって、生成された水素ガスを供給するものである。
なお出力パッケージ2は、水素ガスを燃料とする例えば4ストロークの内燃機関それによる動力出力あるいは、そのエンジン本体20によって発電機21を駆動し電力を出力させる形態を採るものである。また出力パッケージ2としては、燃料電池、水素ガスステーション等の形態を採ることも可能であり、従ってこのような種々の出力形態を考慮して、出力パッケージ2という呼称にしたものである。
【0034】
まず本発明の水素発生装置1について説明する。この水素発生装置1は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(以下SBH水溶液と略記することがある)とクエン酸水溶液とを混合反応させて水素ガスを生成することが大きな特徴である。
なお水素キャリア物質である水素化ホウ素ナトリウムの保存(貯蔵)にあたっては、このものを水に溶解させる前の固体状態例えば粉末状あるいは顆粒状としておき、水素ガスを生成する際に初めて水素化ホウ素ナトリウムを水に溶解させて溶液化するものである。これによって水素をガスの状態で保存する必要がなく、水素キャリア物質である水素化ホウ素ナトリウムを、容易に且つ安全に取り扱うことができる。
すなわち水素はガスの状態で保存しておく事が困難であり、且つ危険性が伴うものであるため、従来は水素ガスを高耐圧のガスボンベ等に充填して貯蔵や輸送する形態が主流になっていた。この点本発明では、ガスの状態で水素を持ち運びする必要がなく、水素キャリア物質を固体状態で容易に保存や輸送することができ、特別な技術資格等を持たないものであっても安全に取り扱うことができる。このように必要が生じた都度、水素ガスを生成することを本出願ではオンデマンド水素ガス生成という。
【0035】
なお固体の水素化ホウ素ナトリウムは、やや吸湿性があるものの密閉状態で保存すれ ば長期保存が可能であり、当然水素ガスも発生しない。また水素化ホウ素ナトリウムは水溶液の状態でもアルカリ濃度で維持すれば、加水分解による水素ガスが発生しないため極めて取り扱いやすい物質である。因みにクエン酸については、固体状態で保存しても良いし、水溶液の状態で保存しても良い。
【0036】
以下、本発明の水素発生装置1について更に詳細に説明し、その後出力パッケージ2及び制御装置8について説明すると共に、それらの作動状態を説明しながら合わせて本発明の出力パッケージに合わせた水素生成制御方法について説明する。
水素発生装置1は一例として
図1に示すように、SBH水溶液及びクエン酸水溶液を貯留するタンク3を具える。なおそれぞれのタンク3については、SBH水溶液タンクを符号3Aで示し、クエン酸水溶液タンクを3Bで示す。
なお水素化ホウ素ナトリウムとクエン酸それぞれについて、包括的に説明する場合には原料素材と記す他、その水溶液についても原料液と記すこともある。
【0037】
このようなタンク3に続いて水素リアクタユニット4が設けられる。この水素リアクタユニット4は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液から水素ガスを生成する反応路400と、反応路400における生成物を水素ガスと副生成物とに分離するバッファユニット40とを具えて成るものである。
この実施例では一例として
図3、4に示すように、円筒状のケーシング部材である本体部41内にバッファユニット40を形成し、その上部に反応路400が形成される反応路ブロック405を配するとともに、これらを一体化して水素リアクタユニット4が構成されるようにした。
なお水素リアクタユニット4全体は、生成された水素ガスの圧力等に耐え得るような適宜の強度を要する金属素材等で構成されることが好ましい。
【0038】
前記円筒状の本体部41の上端部には、内側に張り出した上部フランジ41Aが形成され、一方、下端部には、外側に張り出した下部フランジ41Bが形成されるとともに、これらフランジ部に対して適宜の個所にボルト孔が形成されている。
このような本体部41に対しその内側にセパレータ43が設けられるものであり、このセパレータ43は前記本体部41の内側に一定寸法を隔てて添うよう、円筒状に形成されて成るものである。
なおセパレータ43の上端部には外側に張り出したフランジ43Fが具えられており、このフランジ43Fに形成されたボルト孔と、前記本体部41における上部フランジ41Aに形成されたボルト孔、更に反応路ブロック405に形成されたボルト孔にボルトを挿通して締結することにより、所望の位置決めが行われる。
【0039】
そしてこのセパレータ43によって実質的に本体部41内が二空間に区画されるものであり、セパレータ43と本体部41との間の円筒状空間をフィルタリングチャンバ44とするものであり、ここにステンレスメッシュ等、ろ過機能を有する素材により形成されたフィルタエレメント45が充填される。なおフィルタエレメント45として用いるステンレスメッシュ等は、目詰まりを起こさない程度の粗目のものが好ましい。
【0040】
一方、セパレータ43の内側の空間は水素ガス貯留チャンバ46とされるものである。そして、セパレータ43の側周上部に形成された穿孔部43Hに嵌り込むように設けられる誘導管47が、セパレータ43の内側に突出した状態とされている。
【0041】
また本体部41の下部フランジ41Bには、セパレータ43の内径よりも短径の孔が形成されたセパレータアンダ41Cを介在させて、底板41Dが組み付けられる。
この底板41Dに形成された排出口41Hには排出管48が設けられるとともに、本体部41の側周上部に形成された水素ガス取出口41Eには、水素ガス取出管49が設けられる。
更に前記水素ガス取出口41E(水素ガス取出管49)と対向することとなるセパレータ43の部位には、オリフィス43Rが形成されている。なおオリフィス43Rとしては、いわゆるネジ型オリフィスを採用することが好ましく、この場合には穴径の異なるネジ型オリフィスを複数用意しておき、その中から適宜のものを選択することにより、絞り抵抗の調節を容易に行うことが可能となる。
なおセパレータ43の高さ寸法は、穿孔部43Hが形成される個所が最大となり、オリフィス43Rが形成される部位が最小となるように設定されている。
【0042】
また前記反応路400は、反応路ブロック405によって形成されるものであり、この反応路ブロック405は一例として偏平な逆円錐形状とされるものであり、その内部に反応路400が構成される。
具体的には、反応路ブロック405は
図4~6に示すように、下ブロック405Nと上ブロック405Pの組み合わせによって構成されるものであって、下ブロック405Nに対し下窄まり螺旋状の反応路凹溝406が形成され、一方、上ブロック405Pには、反応路凹溝406の上部の開放部を閉塞するような反応路凸条407が形成される。
そしてこれら下ブロック405Nと上ブロック405Pとが組み合わされることにより、螺旋状に迂回した状態で必要な反応時間を得られるような長さが確保された反応路400が形成される。
【0043】
また前記上ブロック405Pの上面には、反応路400と連通する注入口408が形成されるものであり、SBH水溶液注入口408Aとクエン酸水溶液注入口408Bとが並ぶように配される。
【0044】
一方、下ブロック405Nには、反応路400の終端部(反応終了部402)に反応生成物取出口409が形成される。
なお反応路ブロック405は、実質的に前記バッファユニット40の上蓋状の部材として機能するように構成されているものである。
そして
図3、4に示すように、本体部41内にフィルタエレメント45を設置し、その内側にセパレータ43を設置するとともに、本体部41(セパレータ43)の上部開口を反応路ブロック405で塞ぐようにこれらを組み付けることにより、注入口408から、反応路400、反応生成物取出口409、フィルタリングチャンバ44、水素ガス貯留チャンバ46,水素ガス取出管49へと繋がる流路が形成される。
【0045】
なお前記反応生成物取出口409には、一例としてシリコーンゴム製の接続チューブ409T一端が挿入され、この接続チューブ409Tの他端側が、前記セパレータ43に具えられた誘導管47に挿通されることにより、反応路400がフィルタリングチャンバ44に連通した状態とされる。
【0046】
そして以上述べたようなタンク3及び水素リアクタユニット4に対して、供給路5が接続されるものであり、SBH水溶液タンク3Aからの給液管50Aと、クエン酸水溶液タンク3Bからの給液管50BとがそれぞれSBH水溶液注入口408A、クエン酸水溶液注入口408Bに接続され、反応路400において実質的に合流するものである。
【0047】
そして更に前記供給路5に対して給液装置7が具えられるものであり、この給液装置7は、制御装置8によって制御されて、タンク3から流出し、注入口408に供給されるSBH水溶液並びにクエン酸水溶液の量を、所望の量に調節するものである。その調節の目的は、出力パッケージ2における負荷に応じて適切な水素ガスが生成されるようにすることにある。
因みに出力パッケージ2の負荷に応じて水素ガスの供給を制御するための手法について本出願人は、既に前記した先行技術文献において開示しているが、本発明はいわゆる省燃費化を更に進めるべく、水素ガス生成に当っての原料液であるSBH水溶液並びにクエン酸水溶液を供給する段階で適切な量とするものである。
このような給液装置7の一例として、本実施例では以下に示すようにチューブポンプ71を適用するが、もちろんチューブポンプ71以外にも、流量を制御することのできるバルブ等を適用してもよい。
【0048】
前記チューブポンプ71は、一般的に用いられるものであってポンプハウジング70内に、流入口72と流出口73との間に接続された可撓チューブ74を円周状に配置し、その可撓チューブ74をポンプロータ75におけるローラ状の突起で部分的に押しつぶし、可撓チューブ74内の流体(原料液)を送り出すものである。
なお給液装置7についてもSBH水溶液に関するものについては、各符号にチューブポンプ71A等、Aの符号を付して区別して図示し、一方クエン酸水溶液にするものについてはもチューブポンプ71B等、Bの符号を付して記するものである。
【0049】
なおこの実施例では
図7に示すように、ポンプハウジング70に対してチューブポンプ71Aとチューブポンプ71Bとが搭載され、これら二基のポンプのポンプロータ75Aと、ポンプロータ75Bとが一基のモータMによって駆動されるようにした。
具体的には一例として、ポンプロータ75Aのシャフト78Aに具えられたギヤ76Aと、ポンプロータ75Bのシャフト78Bに具えられたギヤ76Bとの間に、これらと噛み合うギヤ76を設けるとともに、シャフト78Aに対してモータMの回転軸を直接または適宜のアダプタを介在させて接続する形態が採られる。このような形態が採られたときには、ギヤ76Aが駆動ギヤとして機能し、ギヤ76は中間従動ギヤとして機能し、ギヤ76Bは従動ギヤとして機能することとなる。
【0050】
なおモータMの回転軸の接続は、ポンプロータ75Bのシャフト78Bに対して行うようにしてもよく、更にギヤ76が具えられるシャフト78に対して行うようにしてもよい。
更にシャフト78A、シャフト78Bにそれぞれ個別にモータMを接続するようにしてもよい。
また前記モータMとしては、一例としてギヤモータが採用されるが、適宜の回転制御モータを採用することもできる。
【0051】
更にこの実施例では、ポンプロータ75Aを四葉タイプとしてローラ状の突起が四個所に具えられたものとし、ポンプロータ75Bを二葉タイプとしてローラ状の突起が二個所に具えられたものとした。
またこの実施例では、チューブポンプ71Aによって送り出されるSBH水溶液と、チューブポンプ71Bによって送り出されるクエン酸水溶液との質量比が約1:1.48となるように、ポンプロータ75Aを駆動するためのギヤ76Aと、ポンプロータ75Bを駆動するためのギヤ76Bとのギヤ比を、それぞれの水溶液密度を考慮して約1:1.1に設定し,これらが(中間従動)ギヤ76によって同時に同方向に回転駆動されるようにした。
【0052】
またこの実施例では流出口73と給液管50との間に、ゴム風船様のダンパ77を具えることにより、流出口73から排出される原料液の脈動抑制を図るようにした。
【0053】
また前記バッファユニット40の底板41Dに設けられた排出管48は、ドレンタンク4Dに接続されるものであり、この排出管48に対して副生成物排出弁44Vが設けられる。更にドレンタンク4Dと減圧レギュレータ49Rとは管路によって接続され、この管路にはエアクリ-ナ209Aを具えたサージタンク209が配される。
【0054】
以上、本発明の水素発生装置1についてその構成を説明したが、次いで出力パッケージ2について説明する。
前記出力パッケージ2は、一例としてエンジン本体20と発電機21とを組み合わせて構成されたものであり、エンジン本体20は常法に従い、いわゆるレシプロ、4ストロークエンジンが適用される。
【0055】
まず前記エンジン本体20は、シリンダ201内に往復動するピストン202が収められ、シリンダ201上部のシリンダヘッドに対して点火プラグ203を具え、この点火プラグ203によるスパークにより、シリンダ201内に吸入した水素ガスに点火するものである。
具体的には点火プラグ203を具えたシリンダヘッドは吸気口204を具え、そこに吸気バルブ204Vを具え、更に排気口205には排気バルブ205Vが具えられてシリンダ201内の気密状態の設定とその開放とを図っている。
【0056】
そして動力の取出しはクランクシャフト206によってなされるものであり、このクランクシャフト206は前記ピストン202とコンロッド207を介して接続され、ピストン202の往復運動が回転運動として取り出される。
このクランクシャフト206の回転により、発電機21のロータを直接回転駆動してもよいが、適宜減速して回転駆動するようにしてもよい。
【0057】
次に前記発電機21は、一例として多極界磁回転型の発電部を具えたものであり、交流100Vの電圧出力、定格出力0.9kVAのものを適用した。なお本明細書では、発電機21にはインバータを含むものとした。
【0058】
そしてこのような出力パッケージ2に対して、水素発生装置1から水素ガスを供給するために、水素リアクタユニット4における水素ガス取出管49と、出力パッケージ2におけるエンジン本体20におけるインテークマニホールド208とが管路によって接続されるものであり、この管路に対して水蒸気トラップ49T及び減圧レギュレータ49Rが具えられる。
更に前記減圧レギュレータ49Rに対しては、圧力センサ49Pが具えられている。
【0059】
次いで制御装置8について説明すると、このものは、例えば汎用のプロセッサユニット80(一例として商標名:Arduino (アルディーノ)等を用い、そのソフトウェアを適宜の不図示のパソコンによって設定できるように構成されている。このような設定がされたプロセッサユニット80を主要部材として、出力パッケージ2の負荷に応じた水素ガス供給量を設定するための制御装置8が構成される。
【0060】
まず負荷自体は出力パッケージ2における発電機21(インバータ22)の出力電圧〔V〕の変化をもってその負荷の過少を検出する。具体的には、一般的ないわゆるダイオードブリッジブリッジにより構成された電圧センサ82の出力に応じた変化を検出するものである。この電圧センサ82の出力をプロセッサユニット80に入力し、そこで出力パッケージ2の負荷に応じたフィードバック制御の設定をして、これを制御信号として速度コントローラ83に出力する。
【0061】
そしてこの速度コントローラ83の指令信号は、前記チューブポンプ71を駆動するモータMに対して送られる。
具体的には出力パッケージ2の負荷が増大した場合には電圧は降下傾向にあり、その傾向を検出した時には、直ちにこれを回復すべく速度コントローラ83から給液装置7のモータMの回転速度を増加させるような信号を出力するものである。
また逆に出力パッケージ2の負荷が減少した場合には電圧は上昇傾向にあり、その傾向を検出した時には、直ちにこれを回復すべく速度コントローラ83から給液装置7のモータMの回転速度を減少させるような信号を出力するものである。
【0062】
本発明は以上述べたような構成を有するものであり、次のように作動してオンデマンド水素ガス生成と水素ガス生成量を負荷対応させて制御する方法を現出させるものである。
まず水素発生装置1における水素ガスの生成状況について説明する。
はじめに水素ガスを実際に生成したい場合、たとえば水素ガスを燃料として出力パッケージ2を稼働させたい場合に、固体状態の水素化ホウ素ナトリウムを水に溶解させ、水溶液の状態でSBH水溶液タンク3Aに投入する。また同様に、クエン酸を水に溶解させ、水溶液の状態でクエン酸水溶液タンク3Bに投入する。
【0063】
なお、このときのSBH水溶液の濃度は、一例として33.3wt%であり、pH値としては一例としてpH9である。このようにSBH水溶液はアルカリ性で維持することが望ましく、アルカリ性の状態であれば、水溶液であっても水素化ホウ素ナトリウム(水溶液)から水素ガス(加水分解による水素)が発生しない。
またクエン酸水溶液の濃度は一例として27.0wt%である。
なお、各水溶液を収容したSBH水溶液タンク3A、クエン酸水溶液タンク3Bは、例えば
図1に示すように、上下逆にした状態で水素発生装置1内に設置される。
【0064】
次いで水溶液を送り込む作業を行うものであり、給液装置7のチューブポンプ71を駆動すると、そのポンピング作用によってSBH水溶液とクエン酸水溶液とが、所定の混合比で供給路5(給液管50A、50B)から反応路400に送り込まれる。
ここで各水溶液の供給流量は、一例としてSBH水溶液が34.8g/min、クエン酸水溶液が51.6g/minである。また、SBH水溶液とクエン酸水溶液の混合割合は、一例の質量比として5:7.4である。
【0065】
このようにして給液管50A、50BからSBH水溶液注入口408A、クエン酸水溶液注入口408Bに供給された二液は、その後、反応路400内における反応開始部401で合流し、反応路400内をその緩傾斜に従ってゆっくりと流動(流下)して行くものであり、その間(反応開始部401~反応終了部402まで)反応が継続する。すなわち、反応路400内に供給された二液は、反応路400内において全てが結合する(反応する)ものであり、この反応路400は、一例として内径8mm、長さが約400mmとされている。
なお、二液は、混合された瞬間から直ぐに反応し、即座に必要な水素ガス量を取り出せることが本出願人によって確認されている。また、各水溶液の供給流量を適宜変化させることにより、水素ガスの発生量を増減させることができ、必要なときに必要な量の水素ガスが生成できることも確認されている。
【0066】
以上述べたように、本発明では、反応路400においてSBH水溶液とクエン酸水溶液とを反応(混合・結合)させて水素ガスを生成するものであり、以下その反応を化学式を例示しながら説明する。
例えば、二液の反応式は下記のように示される。なお、反応時の水素ガス発生温度は95℃前後である。
【0067】
【0068】
ここで当該反応式において発生するガス並びに副産物(副生成物)について説明すると、ガスは水素ガスと水蒸気であり、副産物はクエン酸ナトリウム塩とホウ酸となり、基本的に害の少ない物質である。また、このような副産物は、再生燃料化することが好ましい。
【0069】
また、二液を反応させて水素ガスを生成する化学式としては、以下のように示されるものもある。
【0070】
【0071】
この場合、副産物は、当該化学式のように、メタホウ酸ナトリウムとクエン酸の混合物と考えられ、このような副産物を再利用するにあたっては、例えば混合状態の副産物から、まずクエン酸部分を分離し、その後、メタホウ酸ナトリウムを再生することが考えられる。
【0072】
このようにして二つの水溶液を反応させて生成した水素ガスや副産物は、
図3に示すように、反応路400から反応生成物取出口409を通じて排出され、フィルタリングチャンバ44に進入し、ここで気液分離が図られる。
そして気体(水素ガス及び水蒸気)は、フィルタリングチャンバ44と水素ガス貯留チャンバ46とが連通している水素リアクタユニット4の下部において積極的に分離され、水素ガスは軽量高圧であって水素ガス貯留チャンバ46内にその下方から移動貯留される状態となる。その後、水素ガス貯留チャンバ46内に貯留された水素ガスは、オリフィス43R,水素ガス取出管49を通じて出力パッケージ2へと供給される。
なお、このようにして得られる水素ガスの生成量は、一例として一分間に30リットル程度となっている。
そしてこのような水素ガスの発生量の制御は、前述したとおりチューブポンプ71の回転速度を設定することにより原料液の供給量が増減され、出力パッケージ2の負荷に応じた適切な水素ガスの供給がなされる。
【0073】
なおエンジン本体20の吸気口204側に、適宜の絞り弁たるスロットルバルブ等を設けて、ここでもエンジン本体20側への水素ガスの供給量をコントロールするようにしてもよい。
【0074】
一方、副産物を含む液体は、一旦、水素リアクタユニット4内の下部に貯留される。
因みに、副産物の水蒸気も水素ガスと一緒に反応生成物取出口409から排出されるが、水蒸気トラップ49Tによって水素ガスから分離されることとなる。
そして水素リアクタユニット4内の下部に貯留された副生成物に関しては、副生成物排出弁44Vを、貯留する副生成物の量に応じて適宜開放させて排出するものである。なおこのような副生成物に関しても未回収の水素ガス成分があり、これらをサージタンク209に貯留した後、減圧レギュレータ49Rに供給する。
【0075】
〔給液装置(ポンプロータ)の制御〕
以下、発電機負荷を制御装置8への入力情報とし、この発電機負荷に応じて給液装置7へ必要な制御情報を出力する制御について説明する。
上述のような作用形態によって生成された水素ガスの生成量については、出力パッケージ2における発電機21(インバータ22)の電圧を検出することにより、例えば電圧の低下が生じた場合には発電機21の出力を増加させるべく、エンジン本体20の出力を増すために水素ガスの供給量すなわち生成量を増加させる。
既に述べたようにこれは電圧センサ82により電圧降下を検知して、制御装置8によっていわゆるフィードバック制御を実行するものであり、速度コントローラ83からモータMの回転数を増加させるような信号を出力し、これにより結果的にSBH水溶液とクエン酸水溶液との供給量を増加させ、反応生成される水素ガスの量を増加させることができるものである。
具体的には、電圧センサ82により電圧降下が検知されたときには、プロセッサ80への入力電圧が降下し、プロセッサ80からの出力電圧が上昇する。
【0076】
〔触媒反応による水素ガスの生成〕
ところで、水素ガスが生成される化学式は必ずしも前記の式に限定されるものではなく、以下のような式も考えられる。すなわち、上述した実施例では、SBH水溶液とクエン酸水溶液とを反応させて水素ガスを生成するものであるが、その発生要因が、主にSBH水溶液のアルカリ濃度をクエン酸水溶液で下げたことによるとも考えられる。その場合、化学式ではSBH水溶液のみから水素を生成し得る式が考えられ、この場合には、以下のように示される。
【0077】
【0078】
そしてこのようなSBH水溶液のみから水素を生成する反応を促進するために、反応路400内に触媒Cを設けるとともに、この触媒Cを加熱する加熱手段を設けることにより、本発明の水素発生装置1を、SBH水溶液のみから水素を生成する装置として供することができる。
なお前記加熱手段を機能させなければ、SBH水溶液のみから水素を生成する反応は促進されないため、水素発生装置1を、前出の実施例で説明したSBH水溶液とクエン酸水溶液とを反応させて水素ガスを生成する装置と同様に供することができ、いわゆるハイブリッドでの運用が可能となる。
【0079】
ここで前記触媒Cとしてはニッケル触媒やコバルト触媒、好ましくは一例としてラネーニッケルが採用され、
図3中に拡大して示すように、粒状の触媒Cを反応路400内底部に配し、その上に流出防止用のネット型ヒータ403を設置して、触媒Cを90℃程度で加熱するような形態が採り得る。更に反応路400の内面に、メッキや蒸着等により触媒Cの層を形成するような形態も採り得る。
なおネット型ヒータ403による触媒Cの加熱温度を90℃程度としたのは、これより高すぎると水蒸気が多くなってしまい、更に発火の危険性も高まるため、これらを回避するためである。
【0080】
〔副生成物の排出制御〕
本発明は上述したように、発電機21(インバータ22)の出力電力に対応させて行う給液装置7(チューブポンプ71)の制御を主たる制御とするものであるが、副次的には次のような制御を併せ行い、前記制御の適化を行うことができる。
具体的には、水素リアクタユニット4(バッファユニット40)における副生成物等の排出を行う副生成物排出弁44Vの作動タイミングの設定等である。
【0081】
前述のように、SBH水溶液から水素ガスを生成する際に生じる副産物を含む液体は、一旦、水素リアクタユニット4(バッファユニット40)内の下部に貯留されるため、水素発生装置1を連続運転するにあたってはこのものを定期的に外部に放出する必要がある。
この実施例では、水素リアクタユニット4における水素ガス取出管49と、出力パッケージ2におけるエンジン本体20におけるインテークマニホールド208とを結ぶ管路に具えられた減圧レギュレータ49Rに設置された圧力センサ49Pにより圧力上昇を検知して、プロセッサユニット80によっていわゆるフィードバック制御を実行するものである。すなわち圧力センサ49Pの検出値を元に、プロセッサユニット80が副生成物排出弁44Vを開放させるような信号を出力し、副産物を含む液体を水素リアクタユニット4から排出する。これにより結果的に水素リアクタユニット4(バッファユニット40)内の圧力が一定に保たれることとなる。
なおこのようにしてバッファユニット40におけるドレン経路に具えられた副生成物排出弁44Vを開放することにより、バッファユニット40のフィルタリングチャンバ44部分に存在する副生成物の溶液を適度に排出し、バッファユニット40内に副生成物を溜め過ぎることなく、水素ガス取出管49を通じて出力パッケージ2側に送り出す水素ガスの量を所望の値とすることができる。