(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124339
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置および液体を吐出する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B41J2/015 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004712
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2023031056
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】町田 治
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG44
2C057AQ02
2C057AR08
2C057BA05
2C057BA14
2C057CA04
(57)【要約】
【課題】ノズル振動方式の液体吐出ヘッドまたは同液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置において、マルチドロップによる液滴可変によって安定した駆動方式を提供すること。
【解決手段】液体を吐出する装置は、圧力室が形成された基板と、圧力室の液体を吐出するノズルと、ノズルから液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、アクチュエータを保持する振動板と、信号発生器と、を備える。一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の液滴を形成するパルスとすると、信号発生器は、複数の一単位パルスを所定期間内に駆動信号として発生させ、一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室が形成された基板と、
前記圧力室の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルから前記液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを保持する振動板と、
信号発生器と、を備え、前記振動板の位置を可変させて、前記ノズルを駆動して前記液体を吐出させる液体を吐出する装置であって、
一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の前記液滴を形成するパルスとすると、
前記信号発生器は、
複数の前記一単位パルスを所定期間内に駆動信号として発生させ、
前記一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記駆動信号は、正電位及び負電位の両極に変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記駆動信号は、開始電位と終了電位とが正電位であり、正電位内で変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
駆動信号は、開始電位と終了電位とが負電位であり、負電位内で変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
複数の前記一単位パルスは、振幅が異なる一以上の前記単位パルスを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記振動板は、駆動電圧を立上げると、前記圧力室の体積を小さくするように変化し、前記駆動電圧を立下げると、前記圧力室の体積を大きくするように変化し、前記駆動電圧を立上げたときに前記液体を吐出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記一単位パルスを、振幅方向が異なる二つのパルスの組み合わせとするとき、
前記開始電位と前記終了電位とが0Vであり、前記駆動信号が正電位及び負電位の両極に変化する場合には、前記開始電位が0Vのときの前記振動板の位置を第一位置とし、前記駆動信号を前記負電位から前記正電位に立上げたときに前記液体を吐出し、
前記開始電位と前記終了電位とが正電位であり、前記駆動信号が正電位内で変化する場合には、前記駆動電圧を立下げたときに前記第一位置となり、前記第一位置から前記駆動電圧を立上げたときに前記液体を吐出し、
前記開始電位と前記終了電位とが負電位であり、前記駆動信号が負電位内で変化する場合には、前記駆動電圧を立上げたときに前記第一位置となり、前記第一位置から前記駆動電圧を立下げた後、立上げたときに前記液体を吐出する
ことを特徴とする請求項6に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
前記一単位パルスの数が、五以上の連続する複数パルスである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項9】
前記一単位パルスの数によって可変する液滴量が、前記一単位パルスの五倍以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項10】
圧力室が形成された基板と、
前記圧力室の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルから前記液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを保持する振動板と、
信号発生器と、を備え、前記振動板の位置を可変させて、前記ノズルを駆動して前記液体を吐出させる液体を吐出する装置が液体を吐出する方法であって、
一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の前記液滴を形成するパルスとすると、
前記信号発生器が、
複数の前記一単位パルスを連続した駆動信号を発生させ、
前記一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる
ことを特徴とする液体を吐出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置および液体を吐出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッド(「インクジェットヘッド」ともいう)の中でノズルを振動させて液体を吐出させるノズル振動方式の液体吐出ヘッドは構造が簡単で低コスト、高密度が実現可能な技術としてすでに知られている。
ノズル振動方式の液体吐出ヘッドは、共振を用いて液体を吐出させて液滴を形成するため、駆動波形を連続して印加させるマルチ波形駆動に適しており、比較的単純な波形の繰り返しで液滴量の可変範囲を広くできるという特徴を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、インク滴の大きさは変えずに、一ドットに対して打ち込むインク滴の数を可変して濃度階調を行なうマルチドロップ駆動方式の技術が開示されている。しかし、特許文献1は、ノズル振動方式とは異なる、ノズルと振動板とが離れて配置されている方式のインクジェットヘッドに関する技術であり、ノズル振動方式の特性に沿うものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドまたは同液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置において、マルチドロップによる液滴可変によって安定した駆動方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、圧力室が形成された基板と、前記圧力室の液体を吐出するノズルと、前記ノズルから前記液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、前記アクチュエータを保持する振動板と、信号発生器と、を備え、前記振動板の位置を可変させて、前記ノズルを駆動して前記液体を吐出させる液体を吐出する装置であって、
一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の前記液滴を形成するパルスとすると、
前記信号発生器は、
複数の前記一単位パルスを所定期間内に駆動信号として発生させ、前記一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させるものとする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドまたは同液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置において、マルチドロップによる液滴可変によって安定した駆動方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態におけるノズル振動方式の液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
【
図2】同液体吐出ヘッドを模式的に示す斜視図である。
【
図4】液体吐出ヘッドが液体をノズルから吐出し、液滴を形成する様子の一例を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
【
図5】液体吐出ヘッドが液体をノズルから吐出し、液滴を形成する様子の他の例を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態のマルチ波形駆動により印刷されるラインの一例を説明する図である。
【
図7】本実施形態の液体吐出ヘッドにおいて、複数の液滴が飛翔し、合一する様子を説明する模式図である。
【
図8】比較例の液体吐出ヘッドにおいて、液滴が飛翔する様子を説明する模式図である。
【
図9】一単位パルスの波形を、正弦波としたときの駆動信号の一例を説明する図である。
【
図10】単純な正弦波の一単位パルスを三波繰り返して印加する駆動信号の一例を説明する図である。
【
図11】単位波形を、矩形波として三波繰り返して印加する駆動信号の一例を説明する図である。
【
図12】単位波形を台形波として四波繰り返して印加する駆動信号の一例を説明する図である。
【
図13】各単位波形の電圧を可変した場合の駆動信号の一例を説明する図である。
【
図14】一単位パルスを連続して印加した際のパルス数と液滴体積との関係の一例を説明する図である。
【
図15】駆動波形の開始電位と終了電位とを0Vとする駆動信号の一例について説明する図である。
【
図16】駆動波形の開始電位及び終了電位を正電位とし、且つ波形の各電位を0Vより大きい正電位に設定した駆動信号の一例を説明する図である。
【
図17】駆動波形の開始電位及び終了電位を負電位とし、且つ波形の各電位を0Vより小さい負電位に設定した駆動信号の一例を説明する図である。
【
図18】
図13の駆動波形が印加されたときの振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
【
図19】
図15の駆動波形が印加されたときの振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
【
図20】
図16の駆動波形が印加されたときの振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
【
図21】
図17の駆動波形が印加されたときのノズルの駆動状態を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
【
図22】一単位パルスの形状例を説明する図である。
【
図23】ヘッドユニットを搭載するインクジェット記録装置の制御系のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
【
図25】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【
図26】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例の要部平面説明図である。
【
図28】本発明に係る液体吐出ユニットの一例の要部平面説明図である。
【
図29】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
本発明の実施形態の一態様の液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッドの一例を説明する。
図1は、本実施形態におけるノズル振動方式の液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図であり、
図2は、液体吐出ヘッドを模式的に示す斜視図である。
液体吐出ヘッド1は、アクチュエータ形成層110と、流路基板100と、フレーム部材120とを有している。
【0010】
アクチュエータ形成層110は、薄膜状であり、振動膜(「振動板」ともいう)103と、液体を吐出する複数のノズル2と、ノズル2の周囲に配置された環状の圧電素子5とを有している。流路基板100は、複数のノズル2に各々連通する複数の加圧液室(「個別液室」または「圧力室」ともいう)4を有している。フレーム部材120は、複数の加圧液室4に通じる共通液室3を有している。
【0011】
液体吐出ヘッド1の両端には、外部の電源等の電気部品と接続するための電気接続パッド6が設けられている。
【0012】
図3は、
図1のX部分の拡大断面図である。
流路基板100は、SOI(Silicon on Insulator)基板であり、振動膜103が成膜される側に駆動回路101および配線部102を有している。駆動回路101は、トランジスタや抵抗などを含む回路である。配線部102は、第一電極51にバイアスを印加するための配線部と、第二電極53にバイアスを印加するための配線部と有している。また、配線部102は、振動膜103に開けられた第三コンタクト7cを介して電気接続パッド6に電気的に接続されている。
【0013】
アクチュエータ形成層110は、複数のノズル2が形成され、圧電素子5を覆うノズル形成部(膜)111を有している。このノズル形成部111のノズル面に撥液膜を設けてもよい。ノズル面に撥液膜を形成することで、ノズル面への液体の付着を抑制することができ、ノズル2から吐出した液体が、ノズル面に付着した液体の影響を受けるのを抑制することができる。液体の溶剤が水性の場合は、撥液膜の材料として、パーフルオロデシルトリクロロシランやパーフルオロオクチルトリクロロシランを用いることができる。
【0014】
アクチュエータ形成層110の圧電素子5は、第一電極51(「下部電極」ともいう)と、圧電膜(「圧電体」ともいう)52と、第二電極53(「上部電極」ともいう)とを有している。圧電素子5は絶縁膜8に覆われている。
【0015】
絶縁膜8は、第一電極51に電気的に接続するための孔状の第四コンタクト7dと、第二電極53に電気的に接続するための孔状の第五コンタクト7eとが形成されている。この絶縁膜8には、圧電素子の第一電極と流路基板100の配線部102とを電気的に連結する第一引き出し配線9aと、圧電素子の第二電極53と流路基板100の配線部102とを電気的に連結する第二引き出し配線9bとが形成されている。
【0016】
第一引き出し配線9aは、第四コンタクト7dを介して第一電極51に電極的に接続され、第一コンタクト7aを介して配線部102に電極的に接続されている。第二引き出し配線9bは、第五コンタクト7eを介して第二電極53に電極的に接続され、第二コンタクト7bを介して配線部102に電極的に接続されている。
【0017】
第一引き出し配線9aおよび第二引き出し配線9bは、防湿膜11に覆われている。これにより、樹脂からなるノズル形成部111に侵入した湿気が第一引き出し配線9aおよび第二引き出し配線9bへ侵入するのを防止して各引き出し配線の腐食を抑制することができる。
【0018】
また、防湿膜11としては、電気絶縁性を有するのが好ましい。防湿膜11として、絶縁性と防湿性の2つの機能を有することで、防湿膜11の下に絶縁膜を形成する場合に比べて、アクチュエータ形成層110を薄くすることができる。これにより、振動膜103が変形しやすくなり、振動効率を高めることができる。
【0019】
防湿膜11としては、半導体の防湿膜として広く用いられているSiN(窒化ケイ素)を用いることで、防湿膜11として、絶縁性と防湿性の2つの機能を有することができ、好ましい。また、防湿膜11の材質としては、他にもALDにて緻密な膜を形成しやすいAl(アルミ)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、W(タングステン)の酸化物を用いることができる。
【0020】
上述した実施の一形態の液体吐出ヘッド1は、ノズル振動方式(ノズル振動型)であり、ヘッド先端の膜(ノズル形成部111)内に駆動源(圧電素子5)を配置し、その駆動により、液体を吐出する液体吐出機構を備え、マルチ波形駆動を実施する。液体吐出ヘッド1は、マルチ波形駆動により加圧液室4の液体をノズル2から吐出させて複数の液滴(マルチドロップ)を出力する。このとき、液体吐出ヘッド1は、印加する駆動信号で発生する信号数によって液滴の数を可変させる液滴可変方式(マルチドロップによる液滴可変方式)により、出力する液滴量を制御する。
【0021】
本発明の実施形態では、例えば、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置において、以下の構成により、マルチドロップによる液滴可変方式を行う。
本発明の実施の一形態の液体を吐出する装置は、
圧力室(加圧液室4)が形成された基板(流路基板100)と、
圧力室の液体を吐出するノズル(ノズル2)と、
ノズルから液体を吐出させて液滴を形成する圧電体(圧電膜52)を有するアクチュエータ(圧電素子5)と、
アクチュエータを保持する振動板(振動膜103)と、
信号発生器(駆動回路101)と、を備え、振動板の位置を可変させて、ノズルを駆動して液体を吐出させる。
( )内は
図1から
図3に示す構成を一例として対応付けている。
【0022】
信号発生器は、複数の一単位パルスを連続した駆動信号を発生させ、一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる。信号発生器は、例えば、振動板の位置を可変させて、ノズルを駆動して液体を吐出させるように、信号(駆動波形)を発生させる。
ここで、「一単位パルス」は、開始電位と終了電位とが同一であり、圧力室の液体をノズルから吐出させ、一個の液滴を形成する(出力する)パルスとする。また、一単位パルスの波形を「単位波形」ともいう。
液滴量は、一以上の液滴の量(体積、重量、大きさ等)であり、記録媒体の一ドット(任意の一つの位置)に到達する一以上の液滴が合一された量とする。液滴量については、
図6から
図8を参照して後述する。
「開始電位」は、振動開始時の電位とする。
「終了電位」は、振動する前の位置に戻す電位とする。
【0023】
上述のように構成すると、ノズルと振動板とが離れて配置されている従来ヘッドと比較して、単純な波形の繰り返しによってマルチ波形駆動が可能である。これにより、幅広い液滴可変が可能となり、液滴可変範囲を大きくすることができる。
また、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドは、駆動波形の電位を任意に設定することができるため、安価な電源により効率の良い吐出が可能となる。加えて、基準電位を任意に設定が可能なので、使用できる電源の選択肢が広がり、安価で安定した吐出が可能となる。
これらにより、本実施形態の液体吐出ヘッドまたは同液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置は、安定した駆動方式を提供することが可能になる。
以下、詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の液体吐出ヘッド1が、ノズル振動方式によりノズル2を駆動する状態例を説明する。
図4は、液体吐出ヘッド1が液体をノズル2から吐出し、液滴を形成する様子の一例を説明する図であり、振動板の動きと駆動波形との関係例を示している。
図4(A)は、振動板の動きを説明する模式図、
図4(B)は駆動波形の一例を示す図である。
図4(A)の(a)から(c)に示す振動板(アクチュエータ形成層110)の状態は、
図4(B)の(a)から(c)に示す駆動波形が印加されたタイミングに対応している。例えば、
図4(B)(a)に示す駆動波形が印加されたタイミングでは、振動板が
図4(A)(a)の状態となる。また、
図4(A)は、アクチュエータ形成層110の動きを模式的に示したものであり、詳細には、駆動回路101により駆動された圧電素子5により変化する、振動板(振動膜103)の動きを模式的に示している。後述する振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図(
図5、
図18から
図21等)も同様である。
【0025】
図4において、上位の電位の加圧液室4の体積は、下位の電位の加圧液室4より小さい。
振動板は、駆動電圧を立上げると、加圧液室4の体積を小さくするように変化し、駆動電圧を立下げると、加圧液室4の体積を大きくするように変化する。液体吐出ヘッド1は、駆動電圧を立上げたときにノズル2から液体を吐出し、液滴が形成される。
【0026】
液体吐出ヘッド1は、ノズル振動方式であり、液滴吐出時にノズル2が駆動する。このため、吐出した液滴が吐出後にすぐに分離してなおかつミストが発生しにくいため、ノズル振動方式ではない液体吐出ヘッドと比較してマルチパルスの間隔を短くすることができて液滴可変量を大きくすることが可能である。
具体的には、一例として、一単位パルスを5マイクロ秒(us)以下にすることが可能であり、ノズル振動方式ではない液体吐出ヘッドの液滴可変駆動周波数が30kHz程度であったが、駆動周波数100kHzで液滴可変が可能であることが実験から分かった。
【0027】
図5は、液体吐出ヘッド1が液体をノズル2から吐出し、液滴を形成する様子の他の例を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
図5の例は、液体吐出ヘッド1に、駆動前に予備振動(
図5(B)の(a)から(b)までの駆動波形)を与えることにより、最初の振動板の変位(
図5(A)の(a)から(b)の変位)でメニスカスに振動が発生し、さらに効率の良い液滴吐出が可能となる。またメニスカスとノズル2の変形速度の関係でさらにミストが発生しにくくなる。
【0028】
図6を参照して、マルチ波形(「マルチパルス」ともいう)による印刷のイメージを説明する。
図6は、本実施形態のマルチ波形駆動により印刷されるラインの一例を説明する図である。
図6は、上段に印刷されたライン、中段に印刷時の液滴、下段に印刷時の駆動波形の一例を示す。
【0029】
上段は、異なる三種類の太さのラインL1、L2、L3を印刷する例を示し、ラインL1、L2、L3の順に太くなる設定(L1<L2<L3)とした。
中段は、上段のラインを形成する液滴の大きさの一例を示し、液滴D1、D2、D3をラインL1、L2、L3と対応させて表している。上段のラインL1、L2、L3の太さが変わる点と、中段の液滴の大きさが変わる点とを破線で対応づけている。
下段は、中段に示す液滴を形成するマルチ波形の一例を示す。
図6では、一単位パルスの一例として、正弦波形状のパルスを示す。また、液滴D1は、一つの一単位パルスが圧電体に印加され、一個の液滴が出力された状態とする。液滴D1は、一単位パルスにより形成される液滴の液滴量を有する。
【0030】
また、液滴D2は、三つの一単位パルスが圧電体に印加され、三個の液滴が出力され、合一した状態とする。液滴D2は、一単位パルスにより形成される液滴三つ分の液滴量を有する。
液滴D3は、五つの一単位パルスが圧電体に印加され、五個の液滴が出力され、合一したときの状態とする。液滴D3は、一単位パルスにより形成される液滴五つ分の液滴量を有する。
このように、信号発生器は、一単位パルスを連続させる数を変更することにより、出力する液滴量を可変させる。
液滴量は、例えば、
図6に示すように大きさ(面積)で表してもよいし、体積または重量で表してもよい。液滴量は、体積で表すときに「液滴体積」、重量で表すときに「液滴重量」ともいう。
【0031】
次に、液体吐出ヘッドから吐出された複数の液滴が、合一(結合)する過程を説明する。
マルチ波形駆動により形成された複数の液滴は、記録媒体に向かって飛翔する。このとき、液滴は、尾引きが少なく、短周期で一単位パルスを複数繰り返して印加しても、個々の液滴が飛翔し、複数の液滴が合一し、一つの液滴(例えば、
図6の液滴D2、D3)となって記録媒体に到達する。
【0032】
図7に、本実施形態のノズル振動方式の液体吐出ヘッドにおいて、複数の一単位パルスの印加によって形成された複数の液滴が飛翔し、合一する状態例を示す。
また、
図8に、比較例として、ノズル振動方式ではない液体吐出ヘッドにおいて、液滴が飛翔する状態例を示す。
図7、
図8では、時間が左側から右側へ、例えば、時刻T11、T21から時刻T15、T25へ経過する。
【0033】
本実施形態の液体吐出ヘッド1は、共振で駆動する際の液滴の尾引きが少ないため短周期の繰り返しで複数パルスを印加することが可能である。例えば、加圧液室4の液体がノズル2から吐出されると(T11)、吐出された液体は、吐出直後に、液滴を形成し、ノズル2から離れ、尾引きのない液滴として飛翔する(T12)。このため、液体吐出ヘッド1は、次の液滴を吐出するタイミングを早くすることができる(T13-T14)。例えば、時刻T13は、二つの一単位パルスが印加され、二つの液滴が形成された後の状態例であり、時刻T14は、三つの一単位パルスが印加され、三つの液滴が形成された後の状態例とする。このように、本実施形態のマルチ波形駆動は、繰り返しパルス数に応じた液滴量の可変範囲を大きくすることが可能である。
【0034】
また、振動板の変位量は徐々に大きくなるため液滴速度は繰り返し毎に速くなり、前に出力された液滴に追いつき合一されて一つの液滴となる。
時刻T14に、液滴速度が、速度v1、v2、v3に示すように後から出力される液滴で速くなることを示す。また、時刻T15に、複数の液滴のうち、一部が合一されたタイミングにおける液滴の状態例を示す。
【0035】
一方、比較例の液体吐出ヘッドは、ノズル振動方式ではないヘッドであり、本実施形態の液体吐出ヘッド1に比べ、ノズル202から液体を吐出したときに、尾引きが長くなるヘッドの一例とする。
例えば、加圧液室204の液体がノズル202から吐出されると(T21)、吐出された液体は、ノズル202から離れることなく液柱となり(T22)、さらに長い液柱となった後、ノズル202から離れる(T23)。その後、液柱が短くなり(T24)、所定の時間が経過したタイミングで液滴を形成する(T25)。このため、短周期で複数パルスを印加することが困難となる。このように、比較例の液体吐出ヘッドは、本実施形態に比べ、液滴量を大きくすることが困難となる。ここで、短周期は、例えば、数~数百μs(マイクロ秒)であり、連続する複数パルスが所定期間内に行われる。
【0036】
このように、従来ヘッドと比較して、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドは、加圧液室4の共振周波数で駆動する際の液滴の尾引きが少ないため、短周期の繰り返しで複数パルスを印加することが可能である。そのため、一単位パルスを繰り返すパルス数に応じた液滴量の可変範囲を大きくできる。
【0037】
さらに、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドは、従来ヘッドと比較して吐出効率が良いため、振動板を駆動する圧電体の選択肢が広まる。
例えば、従来ヘッドでは、振動板の大きな変位量を得るための圧電体として強誘電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられている。PZTは分極しているため、正または負の一方の電界(「片電界」ともいう)を利用する必要があった。
一方、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドでは、振動板の駆動効率が高いためPZT等の強誘電体以外の材料が使用可能となる。このため、正および負の両方の電界(「両電界」ともいう)を使用した駆動が可能となる。その結果、最大電位(MAX電位)が片電界に比較して低い安価な電源で安定した駆動が可能となる。
【0038】
次に、信号発生器が発生させる駆動信号の具体例を、図を参照して説明する。
図9は、一単位パルスの波形を、正弦波としたときの駆動信号の一例を説明する図である。
図9では、短周期、所定期間内で、駆動信号を発生させる駆動例であり、単純な正弦波(Sin波)の繰り返しで同一波形を十波連続で印加する例(Sin波-十波)を示している。ここで、連続での印加は、例えば、パルスが基準電圧レベルでの待ち時間なく、所定時間内で連続して出力されることとする。また、多少の0V期間を有してもよい。
液滴は一単位パルス毎に形成(出力)され、且つ、各一単位パルス間の間隔は圧力室の共振周波数で加えられている。従って、振動板の変位量は徐々に大きくなるため、液滴を出力する速度(圧力室の液体を吐出する速度)が繰り返し毎に速くなり、後に出力した液滴は、前に出力した液滴に追いつき合一されて一つの液滴となる。
このようにして、液滴重量を可変させる。
【0039】
図10は、単純な正弦波の一単位パルスを三波繰り返して印加する駆動信号(Sin波-三波)の一例を説明する図である。このように、単純なパルスの印加数を変えることにより液滴体積を任意に変えることが可能となり、液滴量の可変範囲を大きくできる。
図9、
図10では、波形を正弦波としているがこれに限らず任意の単位波形の繰り返しで駆動しても良い(例えば、
図11から
図13)。
【0040】
図11は、単位波形を、矩形波として三波繰り返して印加する駆動信号の一例を説明する図である。単位波形を矩形波とした場合は電位のON/OFFのみで波形が形成できるため、比較的安価な電源及び単純な回路構成で波形を形成することが可能となる。
【0041】
図12は、単位波形を台形波として四波繰り返して印加する駆動信号の一例を説明する図である。台形波では印加する電位のON/OFFの時間を制御できるため各液滴の速度の可変が可能であり、すなわち各液滴の制御を可変できるため最終的に合一した液滴体積の制御性が増す。また、各単位パルスのON/OFF時間を可変することで液滴体積を制御することも可能である。
【0042】
図13は、各単位波形の電圧を可変した場合の駆動信号の一例を説明する図である。
例えば、駆動信号を形成する複数の一単位パルスは、振幅(電圧、電圧の変化量)が異なる一以上の単位パルスを有するとよい。
ノズル振動方式で共振マルチ波形を用いて液滴を出力する場合、前述したようにパルス数が増加するにつれて液滴速度が増加する傾向となる。液滴速度が増加する場合でも液滴の出力には問題がないが、高周波駆動の際にメニスカスの振動が大きくなり不安定になる場合がある。このため、後発液滴が前出液滴に合一する範囲で印加電圧を低下させて安定化することが可能である。本図では台形波の例を示しているがほかの波形でも同様の効果が得られる。
【0043】
また、印加電圧の高低は一単位パルス毎に任意に設定しても良い。
駆動信号を形成する複数の一単位パルスにおいて、上下の幅、傾斜は、可変であり、出力する液滴(形成する液滴)に応じて変更するとよい。
【0044】
図14は、一単位パルスを連続して印加した際のパルス数と液滴体積との関係の一例を説明する図である。本図の上段のグラフは、横軸にパルス数、縦軸に液滴体積(pL:ピコリットル)を表す。また、パルス数が三波の駆動信号の一例を図の左下に示し、パルス数が十波の駆動信号の一例を図の右下に示し、破線の矢印で対応づけている。
本図では、同一の波形で同一の印加電圧で駆動した際の例を示しており、パルス数に応じて液滴体積が線形に増加していることを示している。
【0045】
本図では同一の印加電圧の例を示しているが、
図13のように一単位パルス毎の印加電圧を可変することで、液滴の体積は任意に増加させることが可能であり、印刷濃度や解像度によって対応が可能となる。
また、信号発生器は、異なる波形と異なる印加電圧とを組み合わせて、所望の液滴体積となるような駆動信号を生成することもできる。
【0046】
次に、
図15から
図17を参照して、駆動波形の開始電位と終了電位について説明する。
一単位パルス及び一単位パルスを連続して印加する波形の開始電位及び終了電位は同一となるがその基準電位は任意に設定が可能である。
図15は、駆動波形の開始電位と終了電位とを0Vとする駆動信号の一例について説明する図である。
例えば、駆動信号は、開始電位と終了電位とが0Vであり、正電位及び負電位の両極に変化するように、信号発生器によって発生させるとよい。
【0047】
上述したように、ノズル振動方式の液体吐出ヘッド1では、PZT等の強誘電体以外の材料が使用可能であり、両電界を使用した駆動ができる。両電界を使用した場合には、駆動に必要な電圧として、0Vを基準に設定できるため、電源からの要求電圧を1/2にすることができる。その結果、比較的低い電圧を発生できる電源の使用が可能となる。
【0048】
図16は、駆動波形の開始電位及び終了電位を正電位とし、且つ波形の各電位を0Vより大きい正電位に設定した駆動信号の一例を説明する図である。
例えば、駆動信号は、開始電位と終了電位とが正電位であり、正電位内で変化するように、信号発生器によって発生させるとよい。
【0049】
図17は駆動波形の開始電位及び終了電位を負電位とし、且つ波形の各電位を0Vより小さい負電位に設定した駆動信号の一例を説明する図である。
例えば、駆動信号は、開始電位と終了電位とが負電位であり、負電位内で変化するように、信号発生器によって発生させるとよい。
本例では印加電圧は両電界を利用する場合よりも大きくなるが、電圧の反転が必要とならないために比較的単純な回路構成の電源が利用可能である。
【0050】
このように強誘電体以外の圧電体を使用することで駆動電圧を任意に設定することが可能となる。例えば、圧電体にPZT等の強誘電体を使用する場合には、
図16、
図17の駆動電圧を設定することになる。一方、圧電体にPZT等の強誘電体以外の材料を使用した場合には、
図15から
図17の駆動電圧を設定することができるため、電源の選択範囲が増える。
【0051】
ここで、
図13、
図15から
図17の駆動波形が印加されたときの、ノズルの駆動状態について説明する。
図18は、
図13の駆動波形が印加されたときの振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図であり、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
駆動波形の変位量が各単位パルスによって異なるため、変位量の変化に伴い、ノズル2の駆動状態(ノズル2の変位量)に表れる。このようにして、加圧液室4の体積の大きさに変化を生じさせることができる。
【0052】
図19は、
図15の駆動波形が印加されたときの振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図であり、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
図19では、正負に駆動波形の電圧を変化させたときの振動板の状態と駆動波形との関係を示している。
【0053】
図20は、
図16の駆動波形が印加されたときの振動板の動きと駆動波形との関係を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図であり、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
図20では、正電位のみで駆動波形の電圧を変化させたときの振動板の状態と駆動波形との関係を示している。
図20(A)において、状態(b)の変位量は状態(a)の変位量の2倍となっている。
【0054】
図21は、
図17の駆動波形が印加されたときのノズルの駆動状態を説明する図であり、(A)は振動板の動きを説明する模式図であり、(B)は駆動波形の一例を示す図である。
図21では、負電位のみで駆動波形の電圧を変化させたときの振動板の状態と駆動波形との関係を示している。
図21(A)において、状態(c)の変位量は状態(a)の変位量の2倍となっている。
【0055】
なお、
図9から
図12の駆動波形を印加した場合のノズル2の駆動状態については、例えば、
図19と同様になる。ただし、波形の違いより、各状態(a)、(b)等で滞留する期間、または、状態(a)から(b)への変化、状態(b)から(c)等へ変化する期間が異なる。
【0056】
上述した
図19から
図21では、振動板と駆動信号との関係を以下のように説明することもできる。
図19から
図21は、駆動信号の一単位パルスを、振幅方向が異なる二つのパルスの組み合わせとしている。
図19では、駆動信号の開始電位と終了電位とが0Vであり、駆動信号が正電位及び負電位の両極に変化する場合の振動板の状態変化の一例を示している。ここで、開始電位が0Vのときの振動板の状態(振動板の位置)を第一位置とする(
図19(A)(a))。また、第一位置は、振動板が平坦な状態であり、ノズル2と振動板(振動膜103)とが一つの平面上(直線上)に配置される状態であり、「中立」ともいう。
【0057】
また、加圧液室4の体積が第一位置より大きくなる振動板の状態(
図19(A)(c))を、第二位置とし、加圧液室4の体積が第一位置より小さくなる振動板の状態(
図19(A)(d))を第三位置とする。
図19の駆動波形では、振動板が第二位置となるのは、負電位(
図19(B)(c))であり、振動板が第三位置となるのは、正電位(
図19(B)(d))である。
液体吐出ヘッド1は、駆動信号を負電位から正電位に立上げたときに(
図19(B)(c)から(d))、振動板が第二位置から第三位置に変化し(
図19(A)(c)から(d))、ノズル2から液体を吐出し、液滴が形成される。
【0058】
図20は、開始電位と終了電位とが正電位であり、駆動信号が正電位内で変化する場合の振動板の状態変化の一例を示している。
図20の例では、駆動波形が下位の電位(
図20(B)(c))で振動板が第一位置、上位の電位(
図20(B)(d))で振動板が第三位置となり、振動板が第二位置とならない。
図20(B)に示す駆動波形では、液体吐出ヘッド1は、駆動電圧を立下げたときに(
図20(B)(b)から(c))、振動板が第一位置となり(
図20(A)(c))、振動板の第一位置から駆動電圧を立上げたときに(
図20(B)(c)から(d))、振動板が第一位置から第三位置に変化し(
図20(A)(c)から(d))、ノズル2から液体を吐出し、液滴が形成される。
【0059】
図21は、開始電位と終了電位とが負電位であり、駆動信号が負電位内で変化する場合の振動板の状態変化の一例を示している。
図21の例では、駆動波形が上位の電位(
図21(B)(b)、(d))で振動板が第一位置、下位の電位(
図21(B)(c))で振動板が第二位置となり、振動板が第三位置とならない。
図21(B)に示す駆動波形では、液体吐出ヘッド1は、駆動電圧を立上げたときに(
図21(B)(a)から(b)または(c)から(d))、振動板が第一位置となり(
図21(A)(c))、振動板の第一位置から駆動電圧を立下げると(
図21(B)(b)から(c)または(d)から(c))、振動板が第一位置から第二位置に変化する(
図21(A)(b)から(c)または(d)から(c))。その後、駆動電圧を立上げたときに(
図21(B)(c)から(d))、液体吐出ヘッド1は、振動板が第二位置から第一位置に変化し(
図21(A)(c)から(d))、ノズル2から液体を吐出し、液滴が形成される。
【0060】
次に、一単位パルスの変形例について説明する。
上記では、一単位パルスは、振幅方向が異なる二つのパルスを組み合わせて一単位パルスとしたが、これに限られるものではない。一単位パルスは、一個の液滴を吐出できるパルスであればよく、例えば、振幅方向が一方となるパルスを一単位パルスとしてもよい。
【0061】
図22は、一単位パルスの形状例を説明する図である。
図22において、(a)は振幅方向が異なる二つのパルスを組み合わせた一単位パルスの一例、(b)は駆動電圧を立上げてから立下げる一単位パルスの一例、(c)は駆動電圧を立下げてから立上げる一単位パルスの一例を示す。例えば、
図22(b)に示す駆動信号は、開始電位と終了電位とが最も低い電位となる。
図22(c)に示す駆動信号は、開始電位と終了電位とが最も高い電位となる。
なお、
図22は、駆動波形として、
図11に示す波形を一例として用いているが、他の駆動波形、例えば、
図9、
図10、
図12、
図13も同様に振幅方向が一方となる一単位パルスとすることが可能である。
【0062】
次に、液体を吐出する装置に搭載する制御手段の一例について、インクジェット記録装置の例を用いて説明する。
図23は、ヘッドユニットを搭載するインクジェット記録装置の制御系のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
インクジェット記録装置540は、ヘッドユニット550のほか、制御部600、搬送駆動部710、操作表示部720及び入出力インタフェース730が、バスライン740を介して相互に接続されて構成されている。インクジェット記録装置540及びヘッドユニット550の一例については、
図24、
図25を参照して後述する。
【0063】
ヘッドユニット550には、各ノズルを駆動するヘッド駆動部20が備わっている。
ヘッド駆動部20は、制御部600から入力される制御信号に応じて、各ノズル列におけるアクチュエータとしての電気機械変換素子である各圧電素子を変形動作させる駆動波形を生成する。この駆動波形が各ノズル列の各液体吐出ヘッド1の各圧電素子に入力されることで、ノズル2に連通する圧力室内の液体が加圧されて吐出エネルギーが印加され、対応するノズル2からインクが吐出される。
ヘッド駆動部20は、上述した信号発生器(
図3の駆動回路101)の一例である。
【0064】
制御部600は、CPU(Central Processing Unit)610、記憶部620、RAM(Random Access Memory)630及びROM(Read Only Memory)640を有する。CPU610は、ROM640に記憶された各種制御用のプログラム及び設定データを読み出してRAM630に記憶させて実行し、各種演算処理を行う。また、CPU610は、インクジェット記録装置540の全体動作を制御する。
記憶部620には、入出力インタフェース730を介して入力されるプリントジョブ(画像記録命令)等が記憶される。
搬送駆動部710は、制御部600から供給される制御信号に基づいて、搬送用モータに駆動信号を供給し、所定の速度及びタイミングで記録媒体を搬送する。
【0065】
操作表示部720は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置と、操作キー及び表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネル等の入力装置とを備える。操作表示部720は、表示装置に各種情報を表示させ、また、入力装置に対するユーザの入力操作に対応する操作信号を制御部600に供給する。
入出力インタフェース730は、外部装置800と制御部600との間のデータの送受信を媒介する。
バスライン740は、制御部600と他の構成部との間で、信号の送受信を行うための経路である。
【0066】
次に、信号発生器の配置について説明する。
上述した実施の一形態の液体を吐出する装置は、信号発生器を備えるが、信号発生器を、液体吐出ヘッドの内部または外部に配置することができる。
例えば、
図3では、信号発生器としての駆動回路101は、液体吐出ヘッド1内に配置される例を示しているが、これに限られるものではない。信号発生器は、例えば、液体吐出ヘッド1の外部に配置されてもよく、配線部102等を介して、出力する液滴量を制御してもよい。信号発生器は、例えば、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドを備える液体吐出ユニットまたは液体を吐出する装置において、同液体吐出ヘッドの外部に配置してもよい。
また、信号発生器は、例えば、マルチドロップによる液滴可変方式によって液滴量を制御する機能を、液体吐出ヘッドを有する液体を吐出する装置または液体吐出ユニットからの制御に基づいて実現する。
【0067】
液体を吐出する装置または液体吐出ユニットは、信号発生器を液体吐出ヘッド内に配置する構成例として、例えば、
圧力室(加圧液室4)が形成された基板(流路基板100)と、
圧力室の液体を吐出するノズル(ノズル2)と、
ノズルから液体を吐出させて液滴を形成する圧電体(圧電膜52)を有するアクチュエータ(圧電素子5)と、
アクチュエータを保持する振動板(振動膜103)と、
振動板と、振動板と隣接する圧力室とを隔てる隔壁(配線部102を含む絶縁層(不図示))と、
信号発生器(駆動回路101)と、
を有する複数の液体吐出機構(液体吐出ヘッド1)を備える構成とすることができる。
【0068】
また、液体を吐出する装置または液体吐出ユニットは、信号発生器を液体吐出ヘッドの外部に配置する構成例として、例えば、
圧力室(加圧液室4)が形成された基板(流路基板100)と、
圧力室の液体を吐出するノズル(ノズル2)と、
ノズルから液体を吐出させて液滴を形成する圧電体(圧電膜52)を有するアクチュエータ(圧電素子5)と、
アクチュエータを保持する振動板(振動膜103)と、
振動板と、振動板と隣接する圧力室とを隔てる隔壁(配線部102を含む絶縁層(不図示))と、
を有する複数の液体吐出機構と、
信号発生器と、を備える構成とすることができる。
( )内は
図1から
図3に示す構成を一例として対応付けている。また、複数の液体吐出機構は、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドとする。
【0069】
また、信号発生器は、例えば、ノズル振動方式の液体吐出ヘッドを備える、液体を吐出する装置としての印刷装置(画像形成装置)において、マルチドロップによる液滴可変方式によって液滴量を制御する機能を、同装置が有する制御部等において実現するように構成してもよい。
【0070】
さらに、
図3に示すように、本発明の実施の一形態の液体吐出ヘッド1は、例えば、
圧力室(加圧液室4)が形成された基板(流路基板100)と、
圧力室の液体を吐出するノズル(ノズル2)と、
ノズルから液体を吐出させて液滴を形成する圧電体(圧電膜52)を有するアクチュエータ(圧電素子5)と、
アクチュエータを保持する振動板(振動膜103)と、
振動板と、振動板と隣接する圧力室とを隔てる隔壁(配線部102を含む絶縁層(不図示))と、
信号発生器(駆動回路101)と、
を有するものとしている。
【0071】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置である印刷装置の一例について
図24及び
図25を参照して説明する。
図24は同装置の概略説明図、
図25は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0072】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連帳紙、シート材などの連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0073】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0074】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0075】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0076】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0077】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)1をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0078】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について、
図26及び
図27を参照して説明する。
図26は同装置の要部平面説明図、
図27は同装置の要部側面説明図である。
【0079】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0080】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0081】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0082】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0083】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0084】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0085】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0086】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0087】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0088】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0089】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0090】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0091】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0092】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの一例について
図28を参照して説明する。
図28は同ユニットの要部平面説明図である。
【0093】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0094】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0095】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図29を参照して説明する。
図29は同ユニットの正面説明図である。
【0096】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0097】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0098】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0099】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0100】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0101】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0102】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0103】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0104】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。さらに、「液体」は、ハンダ等の溶融金属であってもよい。
【0105】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0107】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0108】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0109】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図27で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0110】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0111】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図28で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0112】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0113】
また、液体吐出ユニットとして、
図29で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0114】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0115】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0116】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0117】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。また、上述した二以上の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0118】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
圧力室が形成された基板と、
前記圧力室の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルから前記液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを保持する振動板と、
信号発生器と、を備え、前記振動板の位置を可変させて、前記ノズルを駆動して前記液体を吐出させる液体を吐出する装置であって、
一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の前記液滴を形成するパルスとすると、
前記信号発生器は、
複数の前記一単位パルスを所定期間内に駆動信号として発生させ、
前記一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる
ことを特徴とする液体を吐出する装置である。
<2>
前記駆動信号は、正電位及び負電位の両極に変化する
前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<3>
前記駆動信号は、開始電位と終了電位とが正電位であり、正電位内で変化する
前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<4>
駆動信号は、開始電位と終了電位とが負電位であり、負電位内で変化する
前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<5>
複数の前記一単位パルスは、振幅が異なる一以上の前記単位パルスを有する
前記<1>から<4>のいずれか一つに記載の液体を吐出する装置である。
<6>
前記振動板は、駆動電圧を立上げると、前記圧力室の体積を小さくするように変化し、前記駆動電圧を立下げると、前記圧力室の体積を大きくするように変化し、前記駆動電圧を立上げたときに前記液体と吐出する
ことを特徴とする前記<1>から<5>のいずれか一つに記載の液体を吐出する装置である。
<7>
前記一単位パルスを、振幅方向が異なる二つのパルスの組み合わせとするとき、
前記開始電位と前記終了電位とが0Vであり、前記駆動信号が正電位及び負電位の両極に変化する場合には、前記開始電位が0Vのときの前記振動板の位置を第一位置とし、前記駆動信号を前記負電位から前記正電位に立上げたときに前記液体を吐出し、
前記開始電位と前記終了電位とが正電位であり、前記駆動信号が正電位内で変化する場合には、前記駆動電圧を立下げたときに前記第一位置となり、前記第一位置から前記駆動電圧を立上げたときに前記液体を吐出し、
前記開始電位と前記終了電位とが負電位であり、前記駆動信号が負電位内で変化する場合には、前記駆動電圧を立上げたときに前記第一位置となり、前記第一位置から前記駆動電圧を立下げた後、立上げたときに前記液体を吐出する
ことを特徴とする前記<6>に記載の液体を吐出する装置である。
<8>
前記一単位パルスの数が、五以上の連続する複数パルスである
ことを特徴とする前記<1>から<7>のいずれか一つに記載の液体を吐出する装置である。
<9>
前記一単位パルスの数によって可変する液滴量が、前記一単位パルスの五倍以上である
ことを特徴とする前記<1>から<8>のいずれか一つに記載の液体を吐出する装置である。
<10>
圧力室が形成された基板と、
前記圧力室の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルから前記液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを保持する振動板と、
信号発生器と、を備え、前記振動板の位置を可変させて、前記ノズルを駆動して前記液体を吐出させる液体を吐出する装置が液体を吐出する方法であって、
一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の前記液滴を形成するパルスとすると、
前記信号発生器が、
複数の前記一単位パルスを連続した駆動信号を発生させ、
前記一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる
ことを特徴とする液体を吐出する方法である。
<11>
圧力室が形成された基板と、
前記圧力室の液体を吐出するノズルと、
前記ノズルから前記液体を吐出させて液滴を形成する圧電体を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータを保持する振動板と、
信号発生器と、を備え、前記振動板の位置を可変させて、前記ノズルを駆動して前記液体を吐出させる液体吐出ヘッドであって、
一単位パルスを、開始電位と終了電位とが同一であり、一個の前記液滴を形成するパルスとすると、
前記信号発生器は、
複数の前記一単位パルスを連続した駆動信号を発生させ、
前記一単位パルスの数によって、出力する液滴量を可変させる
ことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
【符号の説明】
【0119】
1 液体吐出ヘッド
2 ノズル
3 共通液室
4 加圧液室(個別液室)
5 圧電素子
6 電気接続パッド
51 第一電極(下部電極)
52 圧電膜(圧電体)
53 第二電極(上部電極)
100 流路基板
101 駆動回路
102 配線部
103 振動膜(振動板)
110 アクチュエータ形成層
111 ノズル形成部
120 フレーム部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】