(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124348
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】潜像画像発現装置、潜像画像発現方法及び潜像画像発現要素群表示用ソフトウェア
(51)【国際特許分類】
B42D 25/337 20140101AFI20240905BHJP
G07D 7/207 20160101ALI20240905BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20240905BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20240905BHJP
B41M 3/14 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
B42D25/337
G07D7/207
G06K7/14 017
G06K19/06 037
B41M3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017695
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023031466
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】堀内 直人
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 拓真
(72)【発明者】
【氏名】大江 定道
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
3E041
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005JB18
2C005JB26
2H113AA06
2H113BA01
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB22
2H113CA34
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
2H113FA24
3E041AA01
3E041AA03
3E041BA15
3E041BA16
3E041BB03
3E041CA10
(57)【要約】
【課題】万線フィルタやレンチキュラーレンズ等の判別具を必要とせず、大多数の人が携帯しているスマートフォンなどのディスプレイを有する多機能端末によって潜像画像を視認可能とする。
【解決手段】光透過性を有する基材上に、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像模様を形成した潜像画像形成体から潜像画像を発現させるための潜像画像発現装置であって、潜像模様から潜像画像を発現させるための、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを記憶する記憶部と、画像データをディスプレイに表示する機能を有する表示部を少なくとも有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基材上に、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像模様を形成した潜像画像形成体から潜像画像を発現させるための潜像画像発現装置であって、
前記潜像模様から前記潜像画像を発現させるための、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを記憶する記憶部と、
前記画像データをディスプレイに表示する機能を有する表示部を少なくとも有することを特徴とする潜像画像発現装置。
【請求項2】
前記記憶部は、複数種類の前記潜像模様に対応して、前記潜像画像発現要素のピッチ及び要素幅を異ならせた複数の前記潜像画像発現要素群の画像データを記憶し、
前記記憶部で記憶している複数の前記潜像画像発現要素群の画像データのうち、前記潜像模様に対応したピッチ及び要素幅を有する前記潜像画像発現要素群の画像データを選択する機能を有する入力部と、
前記入力部で選択された前記潜像画像発現要素群の画像データを前記記憶部から取り出し、前記表示部に表示させるための指示を出す機能を有する制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の潜像画像発現装置。
【請求項3】
前記記憶部は、複数種類の前記潜像模様の画像データと、複数種類の前記潜像模様にそれぞれ対応した前記潜像画像発現要素群の画像データを記憶し、
前記潜像画像形成体を撮像し、前記潜像模様を取り込む機能を有する撮像部と、
前記撮像部によって取り込まれた前記潜像模様と、前記記憶部に記憶された複数種類の前記潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の前記潜像模様の画像データのうち、前記撮像部によって取り込まれた前記潜像模様に最も近似する前記潜像模様の画像データを特定する機能を有する演算部と、
前記演算部で特定された前記潜像模様の画像データに対応した前記潜像画像発現要素群の画像データを前記記憶部から読み出し、前記表示部に表示させるための指示を出す機能を有する制御部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の潜像画像発現装置。
【請求項4】
請求項2に記載の潜像画像発現装置によって、前記潜像画像形成体から前記潜像画像を発現させる潜像画像発現方法であって、
前記入力部によって、前記記憶部に記憶されている複数の前記潜像画像発現要素群の画像データから、前記潜像模様に対応したピッチ及び要素幅を有する前記潜像画像発現要素群の画像データを選択するステップと、
前記制御部によって、前記入力部で選択された前記潜像画像発現要素群の画像データを前記記憶部から読み出し、前記表示部に表示させるための指示を出すステップと、
前記表示部によって、前記潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップと、
前記ディスプレイの上に前記潜像画像形成体を重畳させるステップと、
を少なくとも有することを特徴とする潜像画像発現方法。
【請求項5】
請求項3に記載の潜像画像発現装置によって、前記潜像画像形成体から前記潜像画像を発現させる潜像画像発現方法であって、
前記撮像部によって、前記潜像画像形成体を撮像し、前記潜像模様を取り込むステップと、
前記演算部によって、前記撮像部が取り込んだ前記潜像模様と、前記記憶部が記憶している複数種類の前記潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の前記潜像模様の画像データのうち、前記撮像部によって取り込まれた前記潜像模様に最も近似する前記潜像模様の画像データを特定し、前記特定された潜像模様の画像データに対応した前記潜像画像発現要素群の画像データを前記記憶部から読み出すステップと、
前記制御部によって、前記記憶部から読み出した前記潜像画像発現要素群の画像データを前記表示部に表示させるための指示を出すステップと、
前記表示部によって、前記潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップと、
前記ディスプレイの上に前記潜像画像形成体を重畳させるステップと、
を少なくとも有することを特徴とする潜像画像発現方法。
【請求項6】
光透過性を有する基材上に、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像模様を形成した潜像画像形成体から潜像画像を発現させるために、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを表示する方法を、記憶部、入力部、表示部、制御部を有する潜像画像発現装置に実行させるための潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアにおいて、
前記制御部によって、前記記憶部が記憶している複数の前記潜像画像発現要素群の画像データのうち、前記入力部で選択された前記潜像画像発現要素群の画像データを前記記憶部から読み出し、前記表示部に表示させるための指示を出すステップと、
前記表示部によって、前記潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップと、
を少なくとも備えることを特徴とする潜像画像発現要素群表示用ソフトウェア。
【請求項7】
光透過性を有する基材上に、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像模様を形成した潜像画像形成体から潜像画像を発現させるために、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを表示する方法を、記憶部、撮像部、演算部、表示部、制御部を有する潜像画像発現装置に実行させるための潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアにおいて、
前記演算部によって、前記撮像部が前記潜像画像形成体を撮像して取り込んだ潜像模様と、前記記憶部が記憶している複数種類の前記潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の前記潜像模様の画像データのうち、前記撮像部によって取り込まれた前記潜像模様に最も近似する前記潜像模様の画像データを特定するステップと、
前記制御部によって、前記演算部で特定された前記潜像模様の画像データに対応した前記潜像画像発現要素群の画像データを前記記憶部から読み出し、前記表示部に表示させるための指示を出すステップと、
前記表示部によって、前記潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップと、
を少なくとも備えることを特徴とする潜像画像発現要素群表示用ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類の偽造、改竄の防止が求められるセキュリティ印刷物やカード製品等における、万線模様やピンホール模様を有するシート状の判別具を重ねて観察することで潜像画像が視認できる技術において、従来にないディスプレイ上に潜像画像発現要素群を表示して観察する潜像画像発現装置、潜像画像発現方法及び潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にセキュリティ印刷物では、偽造防止効果を与えるために様々な技術が適用されているが、近年、カラー複写機の高画質化及びカラー製版技術のコンピュータ化に伴い、セキュリティ印刷物の偽造技術が多様化する傾向にある。これに伴うセキュリティ印刷物の偽造防止策も、高度化することによって対応してきた。しかし、その一方で、偽造防止策に費やす製造コストも上がり、偽造防止効果を確認する環境を得るために特殊な機械器具から成る専用設備を導入する等、真偽判定するために高コストとなる場合があった。
【0003】
低コストで真偽判定を可能にする有用な方法として、
図1に示すように印刷物である基材(1)上にシート状の判別具(2)を重ねて行う技術がある。つまり、不可視画像が施されている基材(1)に判別具を重ねることによって、不可視画像を可視画像として発現させるもので、この判別具(2)の主な形態は、平行線スクリーンを印刷した透明シート(以下「万線フィルタ」という。)、レンチキュラーレンズ又はレンズアレイが活用されている。
【0004】
判別具を活用して潜像画像を発現させる偽造防止技術の一つとして、本出願人は、反射光下では潜像が不可視であることで、セキュリティ印刷物のデザインに影響することがないとともに、偽造防止を図り、透過光下の観察角度の変化により潜像画像が変化する透過潜像画像発現構造及びそれを備えた透過潜像画像形成体を出願している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術は、基材に潜像模様となる透かしを付与することで、透過光下でレンチキュラーレンズ等の判別具を重ねて観察した際に潜像画像が発現し、更に観察角度の変化又は判別具の位置を動かすことにより潜像画像が変化して視認できる。
【0005】
また、本出願人は、万線状に配置された要素の一部の位相が異なることで潜像模様の図柄が現されて成る位相変調模様に、万線フィルタを重ねて観察することで潜像画像が視認できる潜像模様発現構造を出願している(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の技術は、万線フィルタ等の判別具を重ねて観察することで、潜像画像が視認できる位相変調模様において、従来よりも、通常時の観察で位相差によって現わされた潜像模様の図柄の隠蔽性が向上した位相変調模様を備えた潜像模様発現構造である。
【0006】
また、本出願人は、所定の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第1の画線及び第2の画線と、所定の方向と直交する第2の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第3の画線及び第4の画線とを有する画線要素が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の画線要素における第1の画線と第2の画線、第3の画線と第4の画線は、ネガポジの関係にあり、第1の画線又は第2の画線により第1の不可視画像が形成され、第3の画線又は第4の画線により第2の不可視画像が形成されることを特徴とする偽造防止用印刷物を出願している(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の技術は、レンチキュラーレンズ等の判別具により鮮明な画像の発現が可能な不可視画像が形成されるとともに、不可視画像を発現させた時に可視画像によって視認性が阻害されず、印刷再現上の不具合を解消した偽造防止用印刷物である。
【0007】
また、ピンホール群を有するピンホールアレイと、立体表示用に画像処理を行ったデータから作成した立体表示用画像との組み合わせにより、立体感に優れた立体画像を表示させる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許6966747号公報
【特許文献2】特開2021-115799号公報
【特許文献3】特許4635160号公報
【特許文献4】特開2005-165175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1から特許文献4までの技術に用いられている偽造防止技術は、レンチキュラーレンズや万線フィルタ、レンズアレイ等の判別具を必要とするものであり、誰でも携帯しているものではないため、銀行や空港等の特殊な場所以外での真偽判別には向かないものであった。
【0010】
また、特許文献1から特許文献4までの技術に用いられている潜像要素は、判別具であるレンチキュラーレンズや万線フィルタ等の幅やピッチに合わせた潜像要素を形成する必要があり、幅やピッチが制限されることに伴って、潜像画像のデザイン性に制約を受けていた。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、万線フィルタやレンチキュラーレンズ等の判別具を必要とせず、大多数の人が携帯しているスマートフォンなどのディスプレイを有する多機能端末によって潜像画像を視認可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、光透過性を有する基材上に、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像模様を形成した潜像画像形成体から潜像画像を発現させるための潜像画像発現装置であって、潜像模様から潜像画像を発現させるための、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを有する記憶部と、画像データをディスプレイに表示する機能を有する表示部を少なくとも有することを特徴とする潜像画像発現装置である。
【0013】
また、本発明は、記憶部は複数種類の潜像模様に対応して、潜像画像発現要素のピッチ及び要素幅を異ならせた複数の潜像画像発現要素群の画像データを有し、記憶部で記憶している複数の潜像画像発現要素群の画像データのうち、潜像模様に対応したピッチ及び要素幅を有する潜像画像発現要素群の画像データを選択する機能を有する入力部と、入力部で選択された潜像画像発現要素群の画像データを記憶部から取り出し、表示部に表示させるための指示を出す機能を有する制御部をさらに有することを特徴とする潜像画像発現装置である。
【0014】
また、本発明は、記憶部は複数種類の潜像模様の画像データと、複数種類の潜像模様にそれぞれ対応した潜像画像発現要素群の画像データを有し、潜像画像形成体を撮像し、潜像模様を取り込む機能を有する撮像部と、撮像部によって取り込まれた潜像模様と、記憶部に記憶された複数種類の潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の潜像模様の画像データのうち、撮像部によって取り込まれた潜像模様に最も近似する潜像模様の画像データを特定する機能を有する演算部と、演算部で特定された潜像模様の画像データに対応した潜像画像発現要素群の画像データを記憶部から読み出し、表示部に表示させるための指示を出す機能を有する制御部をさらに有することを特徴とするとする潜像画像発現装置である。
【0015】
また、本発明は、潜像画像発現装置によって、潜像画像形成体から潜像画像を発現させる潜像画像発現方法であって、入力部によって、記憶部に記憶されている複数の潜像画像発現要素群の画像データから、潜像模様に対応したピッチ及び要素幅を有する潜像画像発現要素群の画像データを選択するステップと、制御部によって、入力部で選択された潜像画像発現要素群の画像データを記憶部から読み出し、表示部に表示させるための指示を出すステップと、表示部によって、潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップと、ディスプレイの上に潜像画像形成体を重畳させるステップを少なくとも有することを特徴とする潜像画像発現方法である。
【0016】
また、本発明は、潜像画像発現装置によって、潜像画像形成体から潜像画像を発現させる潜像画像発現方法であって、撮像部によって、潜像画像形成体を撮像し、潜像模様を取り込むステップと、演算部によって、撮像部が取り込んだ潜像模様と、記憶部が記憶している複数種類の潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の潜像模様の画像データのうち、撮像部によって取り込まれた潜像模様に最も近似する潜像模様の画像データを特定し、特定された潜像模様の画像データに対応した潜像画像発現要素群の画像データを記憶部から読み出すステップと、制御部によって、演算部で読み出した潜像画像発現要素群の画像データを表示部に表示させるための指示を出すステップと、表示部によって、潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップと、ディスプレイの上に潜像画像形成体を重畳させるステップを少なくとも有することを特徴とする潜像画像発現方法である。
【0017】
また、本発明は、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを表示する方法を、記憶部、入力部、表示部、制御部を有する潜像画像発現装置に実行させるための潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアにおいて、制御部によって、記憶部が記憶している複数の潜像画像発現要素群の画像データのうち、入力部で選択された潜像画像発現要素群の画像データを記憶部から読み出し、表示部に表示させるための指示を出すステップと、表示部によって、潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップを少なくとも備えることを特徴とする潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアである。
【0018】
また、本発明は、一定のピッチ及び一定の要素幅を有する潜像画像発現要素が所定の方向に複数配置されて成る潜像画像発現要素群の画像データを表示する方法を、記憶部、撮像部、演算部、表示部、制御部を有する潜像画像発現装置に実行させるための潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアにおいて、演算部によって、撮像部が潜像画像形成体を撮像して取り込んだ潜像模様と、記憶部が記憶している複数種類の潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の潜像模様の画像データのうち、撮像部によって取り込まれた潜像模様に最も近似する潜像模様の画像データを特定するステップと、制御部によって、演算部で特定された潜像模様の画像データに対応した潜像画像発現要素群の画像データを記憶部から読み出し、表示部に表示させるための指示を出すステップと、表示部によって、潜像画像発現要素群の画像データを表示するステップを少なくとも備えることを特徴とする潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の潜像画像発現装置、潜像画像発現方法及び潜像画像発現要素群表示用ソフトウェアにより、従来潜像画像を発現させるために必要であったシート状の判別具を必要とせず、大多数の人が携帯しているスマートフォン等の多機能端末によって潜像画像が発現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来の潜像画像を発現させる方法について示す図である。
【
図2】本発明における潜像画像発現装置と潜像画像発現要素群について示す図である。
【
図3】本発明における潜像画像発現装置のハードウエア構成について示す図である。
【
図5】第1の実施の形態における要素構成について示す図である。
【
図10】第1の実施の形態における要素構成と潜像画像発現要素群の関係を示す図である。
【
図11】第1の実施の形態について、効果を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態における要素構成と潜像画像発現要素群の関係を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態における潜像模様の詳細について示す図である。
【
図14】第2の実施の形態における潜像模様の形成方法について示す図である。
【
図15】第2の実施の形態について、効果を示す図である。
【
図16】第3の実施の形態における要素構成と潜像画像発現要素群の関係を示す図である。
【
図17】第3の実施の形態について、効果を示す図である。
【
図18】第4の実施の形態における要素構成について示す図である。
【
図19】第4の実施の形態における要素構成と潜像画像発現要素群の関係を示す図である。
【
図20】第4の実施の形態について、効果を示す図である。
【
図21】第5の実施の形態における要素構成について示す図である。
【
図22】第5の実施の形態における要素構成と潜像画像発現要素群の関係を示す図である。
【
図23】第5の実施の形態について、効果を示す図である。
【
図24】第6の実施の形態における要素構成について示す図である。
【
図25】第6の実施の形態における要素構成と潜像画像発現要素群の関係を示す図である。
【
図26】第6の実施の形態について、効果を示す図である。
【
図27】一例目の潜像画像発現方法におけるフローチャートを示す図である。
【
図28】一例目の潜像画像発現方法における潜像画像発現装置でアプリを起動させたディスプレイの一例を示す図である。
【
図29】二例目の潜像画像発現方法におけるフローチャートを示す図である。
【
図30】二例目の潜像画像発現方法における潜像画像発現装置でアプリを起動させたディスプレイの一例を示す図である。
【
図31】三例目の潜像画像発現方法におけるフローチャートを示す図である。
【
図32】複数種類の潜像模様の画像データと、それに対応した潜像画像発現装置を示す図である。
【
図33】潜像画像がチェンジ又は動的の少なくとも一方に変化する場合のフローチャートを示す図である。
【
図34】本発明において、基材に2次元コードを付与した潜像画像形成体を示す図である。
【
図35】2次元コードを活用して潜像画像を発現させるフローチャートを示す図である。
【
図36】実施例1の潜像模様の構成を示す図である。
【
図37】実施例2の潜像模様の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0022】
(潜像画像発現装置)
図2に、本発明の潜像画像発現装置(3)を示す。潜像画像発現装置(3)は、スマートフォン、タブレット等の多機能端末におけるディスプレイに、後述する潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示させるものである。ここでいう多機能端末とは、携帯電話(スマートフォンを含む)やタブレット端末、パーソナルコンピュータ等、ディスプレイを有しているものであればよく、特に限定するものではない。なお、携帯性の面から持ち運びができるものが好ましい。この潜像画像発現装置(3)のディスプレイには、
図4(a)に示す万線か、
図4(b)に示すピンホールが潜像画像発現要素群(4)として表示される。
【0023】
図3に、本発明の潜像画像発現装置(3)のハードウエア構成を説明するブロック図を示す。潜像画像発現装置(3)は、少なくとも制御部(101)、記憶部(103)及び表示部(106)から成る。また、入力部(102)、演算部(104)、撮像部(105)及び外部接続部(107)を有してもよい。
【0024】
入力部(102)は、コンピュータにデータ等を入力する装置で、キーボードやテンキー等を含む。
【0025】
記憶部(103)は、ROM、RAM、ハードディスク等を含み、本発明に用いられる潜像画像発現要素(4a)のピッチや要素幅を異ならせた複数の潜像画像発現要素群(4)の画像データを記憶する。また、記憶部(103)は、複数種類の潜像模様の画像データと、複数種類の潜像模様の画像データにそれぞれ対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データを記憶する。また、記憶部(103)は、入力部(102)により入力された潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した潜像画像発現要素群(4)のピッチ及び要素幅を求めるための計算式を記憶する。
【0026】
演算部(104)は、撮像部(105)によって取り込まれた潜像模様(11)と、記憶部(103)に記憶された複数種類の潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の潜像模様の画像データのうち、撮像部(105)によって取り込まれた潜像模様(11)に最も近似する潜像模様の画像データを特定する。なお、比較判定の方法は、複数種類の潜像模様の画像データのうち、撮像部(105)によって取り込まれた潜像模様(11)に最も近似する潜像模様の画像データを特定できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、パターンマッチング、エッジ抽出、特徴点抽出等の方法を用いることができる。
【0027】
また、演算部(104)は、入力部(102)により入力された潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に基づき、適切な潜像画像発現要素群(4)のピッチ及び要素幅の値を記憶部(103)の計算式によって演算する機能を有してもよい。
【0028】
撮像部(105)は、撮像機能を有したカメラのことであり、潜像画像形成体(10)を撮像し、潜像模様を取り込むことや、潜像画像形成体(10)に付与された2次元コード等を読み取ることができる。
【0029】
表示部(106)は、潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示するディスプレイのことであり、表示部(106)がタッチパネル機能を有する場合は、入力部(102)の機能を包含することも可能である。
【0030】
外部接続部(107)は、ネットワークインターフェース、外部機器との各種接続インターフェースである。
【0031】
本発明における潜像画像発現装置(3)の構成は、スマートフォンのように入力部(102)、撮像部(105)及び表示部(106)が一体型の構成でもよいし、パソコン、キーボード、カメラ及びディスプレイが個別に接続された構成でもよい。
【0032】
制御部(101)は、後述するフローチャートで示す処理を実行するもので、例えば、入力部(102)からの入力信号に基づき、記憶部(103)に記憶されている複数の潜像画像発現要素群(4)の画像データから所望の構成(ピッチ及び要素幅)を有する潜像画像発現要素群(4)の画像データを適宜選定して表示部(106)に表示させるための指示を出す。また、前述した演算部(104)で特定された潜像模様(11)の画像データに対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データを記憶部(103)から読み出し、表示部(106)に表示させるための指示を出す。また、前述した演算部(104)の演算結果に対応したピッチ及び要素幅を有する潜像画像発現要素群(4)の画像データを作成する。なお、各部における詳細な処理方法については後述する。
【0033】
(潜像画像発現要素群)
図4に、潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示された潜像画像発現要素群(4)の画像データを示す。
図4(a)は、潜像画像発現要素群(4)の画像データである万線の潜像画像発現要素(4a)が第1のピッチ(P1)及び第3の要素幅(W3)を有して第1の方向(S1)に複数配置された構成である。ここで、第1の方向(S1)は、
図4(a)における左から右方向のことである。第1のピッチ(P1)及び第3の要素幅(W3)は、潜像画像(14)を発現させるために必要な値を有するが、詳細については後述する。また、
図4(a)における潜像画像発現要素群(4)の画像データは、第1の方向(S1)である左から右方向又は第1の方向とは逆の方向である右から左方向へ平行移動しても良い。ここでいう平行移動とは、ディスプレイに表示された潜像画像発現要素群(4)の画像データの発光しているそれぞれの画素の位置が第1の方向(S1)である隣の画素に順次移動して発光することによって、結果的に潜像画像発現要素群(4)が平行移動しているように視認されることをいう。
【0034】
また、
図4(a)における潜像画像発現要素群(4)は黒色、潜像画像発現要素群(4)の間隙部分は白色で構成されており、黒色の万線と白色の間隙部分で画面光量に差が生じ、白色の間隙部分が黒色の万線部分よりも画面光量が強いことを利用して潜像画像(14)を発現させる。なお、ここでは潜像画像発現要素群(4)を黒色、潜像画像発現要素群(4)の間隙部分は白色で説明したが、本発明において潜像画像発現要素群(4)は黒色に近い画面光量が弱くなる色であればよく、間隙部分は白色に近い画面光量が強くなる色であればよい。ただし、潜像画像発現要素群(4)を黒色、間隙部分を白色で構成することで画面光量の差がより大きくなり、潜像画像(14)の視認性が高くなることから好ましい。
【0035】
図4(b)は潜像画像発現要素群(4)の画像データであるピンホール状の潜像画像発現要素(4a)が第1の方向(S1)に第5のピッチ(P5)、第2の方向(S2)に第6のピッチ(P6)及び第9の要素幅(W9)を有して格子状に複数配置された構成である。ここで、第5のピッチ(P5)、第6のピッチ(P6)及び第9の要素幅(W9)は、潜像画像(14)を発現させるために必要な値を有するが、詳細については後述する。また、
図4(b)における潜像画像発現要素群(4)の画像データは、ランダム方向に移動してもよい。ランダム方向とは、第1の方向(S1)への平行移動や、第1の方向(S1)と直交する第2の方向(S2)への移動、斜め方向への移動等様々な方向への移動のことである。ここでいう潜像画像発現要素群(4)の移動に関しても、前述した潜像画像発現要素群(4)の発光しているそれぞれの画素の位置が変化することによって潜像画像発現要素群(4)が移動しているように視認される。なお、本発明における潜像画像発現要素群(4)の画像データとは、平行移動していない静止画の潜像画像発現要素群(4)、平行移動やランダム方向に移動している動画の潜像画像発現要素群(4)のいずれも含む。
【0036】
図4(b)における潜像画像発現要素群(4)は白色、潜像画像発現要素群(4)以外の背景部分は黒色で構成しており、白色のピンホール部分と黒色の背景部分で画面光量に差が生じ、白色のピンホール部分が黒色の背景部分よりも画面光量が強いことを利用して潜像画像(14)を発現させる。なお、ここでは潜像画像発現要素群(4)を白色、潜像画像発現要素群(4)以外の背景部分は黒色で説明したが、本発明において潜像画像発現要素群(4)であるピンホールは白色に近い画面光量が強くなる色であればよく、背景部分は黒色に近い画面光量が弱くなる色であればよい。ただし、潜像画像発現要素群(4)を白色、背景部分を黒色で構成することで画面光量の差がより大きくなり、潜像画像(14)の視認性が高くなることから好ましい。また、ピンホールの形状は特に限定されるものではなく、円、楕円、多角形などを用いることができる。
【0037】
本発明において、潜像画像発現要素群(4)は、
図4(a)に示す万線状の潜像画像発現要素(4a)が第1の方向(S1)に配置される形態と、
図4(b)に示すピンホール状の潜像画像発現要素(4a)が第1の方向(S1)及び第2の方向(S2)に配置される形態があり、潜像模様(11)の形態に応じて万線状の潜像画像発現要素(4a)又はピンホール状の潜像画像発現要素(4a)が所定の方向に配置される。なお、潜像画像発現要素(4a)をディスプレイに表示させる所定の方向は、
図4(a)に示す第1の方向(S1)及び
図4(b)に示す第1の方向(S1)及び第2の方向(S2)に限定されるものではない。
【0038】
このような構成とすることで、潜像画像形成体(10)を潜像画像発現要素群(4)の画像データが表示された潜像画像発現装置(3)に重ねて配置した際、潜像画像発現要素群(4)である黒又は白で表示される部分とそれ以外の部分で画面光量に差が生じるため、潜像画像発現要素群(4)に対応して潜像画像(14)が発現する。
【0039】
本発明において、潜像模様(11)とは、基材上に形成され、反射光下又は透過光下において視認される画像で、基画像(13)を分割、圧縮等することで形成される。また、潜像画像(14)とは、潜像模様(11)を付与した潜像画像形成体(10)を潜像画像発現装置(3)に重ねた際、不可視であった基画像(13)がディスプレイの画面光量の差を利用して視認される画像である。また、潜像要素(12)とは、潜像模様(11)を形成しているひとつひとつの要素のことであり、潜像要素(12)が組み合わさることで潜像模様(11)を形成している。潜像要素(12)は、印刷、基材(1)の一部において紙層構造を部分的に変化させた透かし、透かしインキ、レーザ発色、レーザ穿孔等によって付与する。
【0040】
(基材)
本発明において潜像要素(12)を形成するための基材(1)は、光透過性を有する基材(1)を用いる。ここでいう光透過性を有する基材とは、紙基材、透明又は半透明のフィルム又はカード、穿孔を施したカード、透明又は半透明な窓を有するカード等、基材(1)そのものが光透過性を有するものに加え、基材(1)に加工を施すことにより光透過性を付与したものも含む。
【0041】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態における潜像模様(11)は、基画像が分割された潜像要素(12)が第1のピッチ(P1)で第1の方向(S1)に複数形成されて成るものであり、
図5を用いて説明する。第1の実施の形態は、潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示させたディスプレイに潜像模様(11)を付与した潜像画像形成体(10)を重ねると、基画像(13)が潜像画像(14)として視認でき、更に潜像画像発現要素群(4)の平行移動によって複数の潜像画像(14)の図柄が変化して視認できる効果を奏する。ここでは、構成を簡単に説明するため、潜像画像発現要素群(4)が移動した際にアルファベットの文字「A」と、アルファベットの文字「B」で潜像画像(14)が変化する例について説明する。
【0042】
図5(b)は、本実施の形態における基画像(13)を示すもので、ここではアルファベットの文字「A」を第1の基画像(13A)、「B」を第2の基画像(13B)としている。
【0043】
図5(a)は、第1の実施の形態の潜像模様(11)の構成を示す図であり、潜像模様(11)は、
図5(c)に示すアルファベットの文字「A」を現す第1の潜像要素群(11A)と、
図5(d)に示すアルファベットの文字「B」を現す第2の潜像要素群(11B)によって構成される。また、第1の潜像要素群(11A)と第2の潜像要素群(11B)は、複数の潜像要素(12)によって構成される。
【0044】
図5(c)は、第1の潜像要素群(11A)の構成を示す図であり、第1の要素幅(W1)を有する第1の潜像要素(12A)が、第1の方向(S1)に、第1のピッチ(P1)で、万線状に配置されて成る。
図5(c)に示すように、第1の潜像要素群(11A)を構成する各々の第1の潜像要素(12A)は、潜像として出現する第1の基画像(13A)の「A」の文字(
図5(b))を分割した各々の要素に対応しており、複数の第1の潜像要素(12A)が合わさることで「A」の文字を現す構成となっている。なお、本明細書において「万線状」とは、要素が規則的に複数配置されている状態をいう。
【0045】
図5(d)は、第2の潜像要素群(11B)の構成を示す図であり、第2の要素幅(W2)を有する第2の潜像要素(12B)が、第1の方向(S1)に、第1の潜像要素(12A)の配置と同じ第1のピッチ(P1)で、万線状に配置されて成る。なお、以降の説明において、個別の潜像要素(12A、12B)を指すのではなく、潜像要素全般を指す場合には潜像要素(12)として説明する。
図5(d)に示すように、第2の潜像要素群(11B)を構成する各々の第2の潜像要素(12B)は、潜像として出現する第2の基画像(13B)の「B」の文字(図示せず)を分割した各々の要素に対応しており、複数の第2の潜像要素(12B)が合わさることで「B」の文字を現す構成となっている。
【0046】
第1の潜像要素(12A)の第1の要素幅(W1)は全て同一であり、第2の潜像要素(12B)の第2の要素幅(W2)も全て同一である必要があるが、第1の潜像要素(12A)の第1の要素幅(W1)と第2の潜像要素(12B)の第2の要素幅(W2)の値は同一であってもよいし、異なっていてもよい。ここでいう同一とは、設計上同一の要素幅で作製し、製造上のあばれ等により要素幅が異なってしまう程度の誤差であれば本発明に含まれる。
【0047】
ここで、それぞれの第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)の位置関係について説明する。第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)は重なり合ってはならない。具体的に第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)は、第1の方向(S1)に位相がずれている必要がある。
図5(a)は、その一例として、第1のピッチ(P1)の2分の1ずれて配置された状態を示している。仮に、第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)が重なり合って配置された場合には、潜像画像発現要素群(4)の移動において、第1の潜像要素群(11A)が現す「A」の文字と、第2の潜像要素群(11B)が現す「B」の文字が重なり合った不明瞭な画像が出現するため、そのような構成は避けなければならない。
【0048】
(潜像要素の加工)
潜像要素(12)は、透過光下で視認できる構成で基材(1)に形成される。透過光下で視認できる潜像要素(12)は、具体的には、基材(1)における潜像要素(12)が構成される部分が、基材(1)における潜像要素(12)が構成された部分以外に対して、光透過性が高い構成か、光透過性が低い構成である。
【0049】
部分的に光透過性が異なる潜像要素(12)を形成する方法について、
図6から
図9を用いて説明する。
図6は、紙を製造する工程で、円網やダンディロールによる公知のすき入れ技術を用いて、基材に対して部分的に厚さが厚いか、薄い構成とする方法について示す図である。
図6(a)は、紙の基材(1)にすき入れ技術を用いて、基材(1)より厚さが薄い潜像要素(12)が形成された状態を示す図であり、
図5(a)に示す配置に対応して、第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)が交互に形成される。
【0050】
図6(b)は、紙の基材(1)にすき入れ技術を用いて、基材(1)より厚さが厚い潜像要素(12)が形成された状態を示す図であり、
図5(a)に示す配置に対応して、第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)が交互に形成される。
【0051】
図7は、紙又はポリマーの基材(1)に、印刷を施すことで潜像要素(12)と周囲の基材(1)で部分的に光透過性を異ならせる方法について示す図である。
図7(a)は、紙から成る基材(1)に、メジウム等の透明インキ又は透明ニス等によるすかしインキを印刷することで、潜像要素(12)を形成した透かし技術の例であり、この場合、基材(1)にすかしインキが浸透して、光透過性が高い潜像要素(12)が形成される。
【0052】
図7(b)は、紙又はポリマーの基材(1)に、光遮断性のインキを印刷して光透過性の低い潜像要素(12)を形成した例を示す図である。潜像要素(12)を形成する手段としては、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷機、更にはインクジェットプリンタやレーザプリンタを用いることができる。また、基材(1)に潜像要素(12)を形成する方法は、レーザ照射によって印字する方法でもよく、基材(1)に色を付与できる方法であれば、特に限定されるものではない。光遮断性のインキは、特に限定しないが、金属顔料を含むインキは光遮断性が高く、潜像要素(12)のコントラストが高くなることから好ましい。光遮断性を有するインキとしては、金属顔料であって、透明、白色又は淡い色彩の顔料を選択して配合すればよい。このような顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミ等の金属酸化物の顔料が最も適している。また、前述の顔料には劣るものの、炭酸カルシウム、シリカ等を含む白色インキでも一定の光遮断性の効果を得ることができる。
【0053】
図7(c)は、紙又はポリマーの基材(1)に、基材(1)と等色の光遮断性のインキにより、潜像要素(12)以外の領域を覆うことで、基材(1)自体の光透過性を利用し、部分的に光透過性が高い潜像要素(12)を形成した透かし技術の例である。光遮断性のインキの色について限定はしないが、金属顔料を含むインキは光遮断性が高く、潜像要素(12)のコントラストが高くなることから好ましい。金属顔料を含むインキの例については前述と同様である。
【0054】
図8は、紙又はポリマーの基材(1)に、レーザ照射によって潜像要素(12)と周囲の基材(1)で部分的に光透過性を異ならせる方法について示す図である。
図8(a)は、紙又はポリマーの基材(1)にレーザ加工により、基材(1)の一部を除去することで光透過性の高い潜像要素(12)を形成したものである。なお、
図6(b)に示すように、潜像要素(12)の周囲の基材(1)をレーザ照射によって除去することで光透過性の低い潜像要素(12)を形成することも可能である。
【0055】
図8(b)は、紙又はポリマーの基材(1)に、レーザ穿孔によって貫通孔が付与され、光透過性の高い潜像要素(12)が形成された状態を示す図である。
【0056】
図8(c)は、紙又はポリマーの基材(1)上に、穿孔による貫通孔を付与したホログラム(6)を貼付することで、貫通孔による潜像要素(12)が形成された状態を示す図である。この場合、基材(1)自体の光透過性を利用するため、基材(1)自体がある程度の光透過性を有する必要がある。
【0057】
図9は、潜像要素(12)を構成する基材(1)上に少なくとも透明層(7)を設け、潜像要素(12)の領域と重なる部分の基材(1)を窓状に刳りぬいた窓部(9)を設けた構成となっている。
図9(a)は、窓部(9)を設けた基材(1)、透明層(7)及び保護層(8)の順に積層し、透明層(7)の一部に潜像要素(12)を形成している。
図9(b)は、窓部(9)を設けた基材(1)及び透明層(7)の順に積層し、透明層(7)の上の窓部(9)と重なる位置に潜像要素(12)を付与したホログラム(6)を貼付した構成となっている。なお。層構成や積層順はこれらに限定されるものではなく、窓部(9)を設けた基材(1)と重なる位置に潜像要素(12)が付与され、透過光により潜像画像(14)が視認される構成であればよい。
【0058】
第1の実施の形態において、潜像要素(12)は、
図6、
図7、
図8及び
図9に示すいずれの構成でもよく、
図6、
図7、
図8及び
図9に示す構成を組み合わせてもよい。例えば、第1の潜像要素(12A)を
図6に示す構成のいずれか一つで構成し、第2の潜像要素(12B)を
図7に示す構成のいずれか一つで構成してもよい。また、潜像模様(11)を構成する複数の潜像要素(12)は、基材(1)の一部の領域に形成してもよいし、基材(1)の全体に形成してもよい。また、後述する実施の形態においても、本実施の形態同様に、
図6、
図7、
図8及び
図9に示す構成のいずれであってもよい。
【0059】
次に、
図10を用いて、本実施の形態における潜像模様(11)と潜像画像発現要素群(4)の関係を説明する。
図10(a)は、
図5(a)と同じ図であり、
図10(b)は、
図4(a)と同じ図であるが、それぞれの関係性を説明しやすいように改めて図示している。本実施の形態において、
図10(a)に示す潜像要素(12)の第1のピッチ(P1)と
図10(b)に示す潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)は、同一となる。また、本実施の形態においては、潜像模様(11)を構成する潜像要素群(11A、11B)が2つの構成において、第1の潜像要素(12A)の第1の要素幅(W1)、第2の潜像要素(12B)の第2の要素幅(W2)及び潜像画像発現要素群(4)の第3の要素幅(W3)は、それぞれ同一の値を有している。例えば、潜像模様(11)を構成する潜像要素群が3つあり、それぞれの要素幅が同一の場合は、潜像画像発現要素群(4)の要素幅は潜像要素(12)の要素幅の2倍の値を有し、潜像要素群が4つあり、それぞれの要素幅が同一の場合は、潜像画像発現要素群(4)の要素幅は潜像要素(12)の要素幅の3倍の値を有することとなる。ここでいう同一とは、潜像要素(12)のピッチと潜像画像発現要素群(4)のピッチが略同一、また、潜像要素(12)の要素幅と潜像画像発現要素群(4)の要素幅が略同一を含むものであり、潜像画像(14)が視認できる程度の誤差であれば本発明の範囲に含まれる。このような構成とすることで、潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示した潜像画像発現装置(3)のディスプレイ上に、
図4に示した潜像模様(11)を付与した基材(1)を重ねることで潜像画像(14)が発現する。
【0060】
(効果)
本実施の形態における効果について、
図11を用いて説明する。
図11(a)は、第2の潜像要素群(11B)である「B」を発現させるための配置関係を示しており、潜像画像発現装置(3)で表示した潜像画像発現要素群(4)の上に第1の潜像要素(12A)が重なるように潜像画像形成体(10)を配置することで、ディスプレイ(3a)の画面光量が潜像画像発現要素群(4)と重なる第2の潜像要素(12B)と、それ以外の部分である第1の潜像要素(12A)で透過光量差(コントラスト)が生じ、透過光量の大きい第2の潜像要素(12B)側の「B」が発現し、視認可能となる。
【0061】
図11(b)は、第1の潜像要素群(11A)である「A」を発現させるための配置関係を示しており、潜像画像発現装置(3)で表示した潜像画像発現要素群(4)の上に第2の潜像要素(12B)が重なるように潜像画像形成体(10)を配置することで、ディスプレイ(3a)の画面光量が潜像画像発現要素群(4)と重なる第1の潜像要素(12A)と、それ以外の部分である第2の潜像要素(12B)で透過光量差(コントラスト)が生じ、透過光量の大きい第1の潜像要素(12A)側の「A」が発現し、視認可能となる。
【0062】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における潜像模様(11)は、基画像が分割圧縮された潜像要素(12a)が一定のピッチで第1の方向(S1)に複数形成されて成るものであり、
図12を用いて説明する。なお、第2の実施の形態における潜像模様(11)の符号は、説明の便宜上、「(11a)」として説明する。
図12(a)は、インテグラルフォトグラフィ方式の立体画像の形成方法を利用して、基材(1)を潜像画像発現装置(3)に重ねて観察することで基画像(13)が潜像画像(14)として出現し、潜像画像発現要素群(4)の平行移動により、出現した潜像画像(14)が動いて見える、動画効果を生じさせることが可能な潜像模様(11a)の形態とその拡大図である。ここでは、
図12(b)に示す「森」の文字を基画像(13)とした例について説明する。また、
図12(c)には、本実施の形態で使用する潜像画像発現要素群(4)を図示している。
【0063】
図12(a)の潜像模様(11a)は、基画像(13)の「森」の文字を基にして形成した潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n(nは、2以上の自然数とする。))が、
図12(c)に示す潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)以下の第4の要素幅(W4)、かつ、潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)と同じ第1のピッチ(P1)で規則的に第1の方向(S1)に複数配置されて成る。本実施の形態において、個別の潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)を指すのではなく、潜像要素全般を指す場合には潜像要素(12a)として説明する。なお、潜像要素(12a)の要素幅が、潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)を超えて形成されると、潜像要素(12a)と隣り合う潜像要素(12a)が重なり合う領域ができ、出現する潜像画像(14)が複数重なり合った状態で出現してしまう場合があることから、潜像要素(12a)の第4の要素幅(W4)は、第1のピッチ(P1)以下に留めて設計する必要がある。
【0064】
潜像模様(11a)の具体的な構成について説明する。潜像模様(11a)は、基画像(13)である「森」の文字の上に、一定のピッチ(P)で蒲鉾レンズが連続して配置された縦スリットタイプのレンチキュラーレンズを重ねた場合に、レンチキュラーレンズを通して観察される画像を、画像処理ソフトで擬似的に再現したものである。潜像模様(11a)は、複数の潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)から構成されており、個々の潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)は、基画像(13)である「森」の文字の一部分が特定の割合で左右に圧縮して形成されて成る。このように、本発明における潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)は、不連続な画像の合成で形成されているわけではなく、連続した画像によって形成されている。このことは、スムーズで動画的な視覚効果や、自然な立体的な視覚効果を実現させる上で欠かせない条件である。
【0065】
潜像模様(11a)を構成する潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)は、図面左から潜像要素(12a-1)、潜像要素(12a-2)、・・・、潜像要素(12a-n)とした場合、それぞれ第1のピッチ(P1)ずつ位相が第1の方向(S1)へずれて配置されている。潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)の第4の要素幅(W4)は、
図12(c)に示した潜像画像発現要素群(4)のピッチ(P1)を超えない幅で構成されることから、潜像要素(12a)同士が重なり合うことはない。
【0066】
図13に、潜像模様(11a)を形成している潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)の構成を示す。複数の潜像要素(12a-1、12a-2、・・・、12a-n)のうち、潜像模様(11a)において、図面一番左側に位置する潜像要素(12a-1)、図面ほぼ中央に位置する潜像要素(12a-16)及び図面右側に位置する潜像要素(12a-28)を抜き出して説明する。図示はしていないが、潜像要素(12a-1)と潜像要素(12a-16)の間には、潜像要素(12a-2)から潜像要素(12a-15)までが第1のピッチ(P1)で配置されて成り、同様に、潜像要素(12a-16)と潜像要素(12a-28)の間には、潜像要素(12a-17)から潜像要素(12a-27)までが第1のピッチ(P1)で配置されて成る。潜像要素(12a-1、12a-16、12a-28)は、基画像(13)である「森」の文字に対して、特定の大きさのフレーム(16-1、16-16、16-28)を当てはめることで基画像(13)を分割し、分割された基画像(13)をそれぞれのフレーム内画像(15-1、15-16、15-28)として抜き出し、このフレーム内画像(15-1、15-16、15-28)を第4の要素幅(W4)に圧縮して形成されて成る。
【0067】
基画像(13)に当てはめるフレームの高さは、基画像(13)の高さ以上であれば良く、
図13に示すフレームの幅(W5)は、基画像(13)の幅以下である必要がある。よって、潜像模様(11a)の左端に位置する潜像要素(12a-1)には、基画像(13)の左端部分の画像のみが含まれ、潜像模様(11a)のほぼ中央に位置する潜像要素(12a-16)には、基画像(13)の中央部分の画像のみが含まれ、潜像模様(11a)の右側に位置する潜像要素(12a-28)には、基画像(13)の右部分の画像のみが含まれている。
【0068】
図14を用いて、具体的な潜像模様(11a)の作製手順の一例を説明する。まず、STEP1として、すべてのフレーム位置の基準となる図面実線で示した最左端のフレーム(16-1)位置を決定する。基準となる最左端のフレーム(16-1)の位置は、フレーム(16-1)の右辺が基画像(13)の左端にわずかに重なった位置とする。ここでいう「わずかに重なった位置」とは、フレーム(16-1)と基画像(13)が少しでも重なっている状態の位置のことであり、まったく重ならない位置を除いた状態のことである。このフレーム(16-1)内に含まれる基画像(13)をフレーム内画像(15-1)として、このフレーム内画像(15-1)を第4の要素幅(W4)に圧縮し、潜像要素(12a-1)を形成して配置する。
【0069】
次に、STEP2として、図面点線で示した左端のフレーム(16-1)の位置から第1のピッチ(P1)だけ右側にずらして、図面実線で示したフレーム(16-2)の位置を決定する。フレーム(16-2)内に含まれる基画像(13)をフレーム内画像(15-2)とし、同様に第4の要素幅(W4)に圧縮して潜像要素(12a-2)を作製し、潜像要素(12a-1)から第1のピッチ(P1)だけ離して右側に配置する。
【0070】
次に、STEP3として、同様に、図面点線で示したフレーム(16-2)の位置から第1のピッチ(P1)だけ右側にずらして、図面実線で示したフレーム(16-3)の位置を決定する。フレーム(16-3)内に含まれる基画像(13)をフレーム内画像(15-3)とし、同様に第4の要素幅(W4)に圧縮して潜像要素(12a-3)を作製し、潜像要素(12a-2)から第1のピッチ(P1)だけ離して右側に配置する。この手順をSTEPnまで繰り返し、フレーム内に基画像(13)が含まれない位置まで達した時点で潜像要素(12a)の作製が終了する。つまり、フレーム(16-n)まで同様の手順を繰り返し、最後に潜像要素(12a-n)を配置して潜像模様(11a)が完成する。この潜像模様(11a)の作製には市販の画像処理ソフトを用いれば良い。なお、上記の作製手順では、基準となるフレームの位置を基画像(13)の左端を基準点に作製したが、これに限定されるわけではなく、基画像(13)の中心や右端を基点にして作製しても何ら問題ない。
【0071】
このように、本実施の形態における潜像要素(12a)は、基画像(13)を基にして分割されたフレーム内画像を横方向、縦方向又は両方向に所定の縮率で圧縮した形状の異なる要素のことであり、それぞれの潜像要素(12a)は、すべて同じ縮率で形成されている。
【0072】
なお、本発明における「基画像を基にして分割されたフレーム内画像」とは、基画像(13)の中心点と潜像模様(11a)の中心点を重ね合わせたと仮定した場合に、潜像模様(11a)を形成しているそれぞれの潜像要素(12a)における要素幅方向の中心に、特定の大きさのフレームにおける幅方向の中心を当てはめた場合に、そのフレーム内に収まっている基画像(13)のことである。したがって、基画像(13)を単純に複数に分割しているわけではないため、
図14に示すように、フレーム内画像(15-2)には、隣接するフレーム内画像(15-1)の一部が含まれており、さらにフレーム内画像(15-3)には、隣接するフレーム内画像(15-2)の一部が含まれており、このように隣接するフレーム内画像には、それぞれ重複する基画像(13)の一部が存在することとなる。
【0073】
また、潜像要素(12a)を圧縮する方向は、縦方向、横方向又は斜め方向等の一方向に対して画像を圧縮するものと、縦方向と横方向の両方向(単純な縮小)の圧縮とが可能である。本実施の形態における「所定の縮率」とは、一つの潜像模様(11a)を形成している複数の潜像要素(12a)同士が、すべて同じ縮率であるという意味である。ただし、縦方向と横方向の両方向に圧縮する場合は、縦方向の縮率と横方向の縮率を異ならせても良いが、この場合も一つの潜像模様(11a)を形成している複数の潜像要素(12a)同士は、すべて同じ縮率で形成される。なお、インテグラルフォトグラフィ方式の立体画像の形成方法の詳細については、例えば、特許第5200284号公報に記載されており、特許第5200284号公報に記載の要素、画素の構成を本発明の潜像要素(12a)の構成に応用することができる。
【0074】
図12(c)に示す潜像画像発現要素群(4)の第3の要素幅(W3)に関しては、潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)の幅に対して70%以上、より好ましくは80%以上の要素幅にすることで、好適に潜像画像(14)が視認可能となる。
【0075】
(効果)
図12(a)に示した潜像模様(11a)を備えた潜像画像形成体(10)を、
図15(a)に示すように、潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)に重ねて観察すると、基画像(13)である「森」の文字が潜像画像(14)として視認でき、さらに、
図15(b)及び
図15(c)に示すように、潜像画像発現要素群(4)が第1の方向(S1)に平行に移動していくと、潜像画像(14)も第1の方向(S1)に動く様子を視認することができる。このとき、
図15(a)における左端の潜像画像発現要素群(4)の位置は、潜像画像発現装置(3)の左端からx0の位置にあるが、
図15(b)ではx1、
図15(c)ではx2の位置に移動している。移動量については特に限定せず、潜像画像発現要素群(4)の移動量に応じて潜像画像(14)の位置も移動する。また、
図15においては潜像画像発現装置(3)のみ図示し、ディスプレイについては省略しており、第3の実施の形態以降における効果の説明においても同様にディスプレイについては省略している。
【0076】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態における潜像模様(11b)は、基画像(13)が圧縮された潜像要素(12b)が一定のピッチで第1の方向(S1)に複数形成されて成るものであり、
図16を用いて説明する。なお、第3の実施の形態における潜像模様(11)の符号は、説明の便宜上、「(11b)」として説明する。
図16(a)は、モアレ拡大現象を利用して潜像として拡大モアレが出現し、潜像画像発現要素群(4)の平行移動により、出現した拡大モアレが動いて見える動画効果が生じる潜像画像(14)の形態である。ここでは、
図16(b)に示す「J」の文字を基画像(13)とした例について説明する。また、
図16(c)には、本実施の形態で使用する潜像画像発現要素群(4)を図示している。
【0077】
モアレ拡大現象を利用する潜像模様(11b)は、
図16(a)に示すように、第1の方向(S1)に基画像(13)を圧縮して第6の要素幅(W6)とした潜像要素(12b)を、潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)と異なる第2のピッチ(P2)で複数配置した構成を有する。潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)は、潜像要素(12b)の第2のピッチ(P2)より大きくてもよいし、小さくてもよいが、モアレ拡大現象が生じるために、一方のピッチの値が、他方のピッチの値で割り切れる数値であってはならない。なお、一方のピッチの値が、他方のピッチの値の80%から120%(100%を除く)程度の数値である場合、視認性が高く、動画効果も高い拡大モアレが出現することから好ましい。また、このモアレ拡大現象を利用した要素構成は、
図13に記載の構成に限定されるものではなく、特許第4844894号公報、特許第5131789号公報等に記載のその他の要素構成を用いてもよい。
【0078】
(効果)
図16(a)に示した潜像模様(11b)を備えた潜像画像形成体(10)を、
図17(a)に示すように、潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)に重ねて観察すると、モアレ拡大現象により、「J」の文字の拡大モアレが潜像画像(14)として視認でき、更に、
図17(b)及び
図17(c)に示すように、潜像画像発現要素群(4)が第1の方向(S1)に平行移動していくと、潜像画像(14)が一定の方向に動く様子を視認することができる。このとき、
図17(a)における左端の潜像画像発現要素群(4)の位置は、潜像画像発現装置(3)の左端からx0の位置にあるが、
図17(b)ではx1、
図17(c)ではx2の位置に移動している。移動量については特に限定せず、潜像画像発現要素群(4)の移動量に応じて潜像画像(14)の位置も移動する。
【0079】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態における潜像模様(11c)は、第1の方向(S1)と直交する第2の方向(S2)に万線状に配置された要素の一部の位相が異なることで潜像の図柄が現されて成るものであり、
図18を用いて説明する。
図18に示す潜像模様(11c)は、万線の位相差を設けることで、「1」の数字を現した例である。第4の実施の形態において、潜像模様(11c)を付与した潜像画像形成体(10)のみでは潜像画像(14)を視認することはできないが、潜像画像発現装置(3)に表示した潜像画像発現要素群(4)に重ねて観察することで、
図20に示す「1」の数字の潜像画像(14)を視認することができる。潜像模様(11c)と潜像画像発現要素群(4)の詳細な構成について説明する。
【0080】
本実施の形態における潜像模様(11c)は、有色の要素(21)が第2の方向(S2)に第1のピッチ(P1)で配置された要素において、
図18の拡大図に示すように、一部の位相が異なることで、潜像模様(11c)の図柄(ここでは、「1」の数字の例)を現す潜像部(21A)とその背景を現す背景部(21B)に区分けされる。なお、ここでいう「要素の位相が異なる」とは、潜像部(21A)を構成する要素と背景部(21B)を構成する要素が、互いに要素の方向と直行する方向にずれて配置されることである。
図18に示す潜像模様(11c)は、潜像部(21A)を構成する要素が、背景部(21B)を構成する要素に対して、第2の方向(S2)における上側にずれて配置された例を示しているが、第2の方向(S2)における下側にずれて配置されてもよい。本実施の形態では、潜像部(21A)を構成する要素が、背景部(21B)を構成する要素に対して、第2の方向(S2)における上側にずれて配置された例について説明する。また、潜像部(21A)を構成する要素を、以降、「潜像要素(22A)」、背景部(21B)を構成する要素を、以降、「背景要素(22B)」として説明する。
【0081】
第4の実施の形態において潜像部(21A)が現す図柄は、「1」の数字に限定されるものではなく、他の数字や、文字、記号、マーク等でもよい。
【0082】
図19を用いて潜像模様(11c)と潜像画像発現要素群(4)の関係について説明する。
図19(a)は、
図18に示す潜像模様(11c)の拡大図、
図19(b)は本実施の形態で使用する潜像画像発現要素群(4)を示しており、
図19(a)に示す潜像要素(22A)の第3の要素幅(W3)及び背景要素(22B)の第3の要素幅(W3)と、
図19(b)に示す潜像画像発現要素群(4)の第3の要素幅(W3)はそれぞれ同一の値であり、それぞれの第1のピッチ(P1)も同一の値である。ここでいう同一とは、潜像要素(22A)及び背景要素(22B)の第1のピッチ(P1)と潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)が略同一、また、潜像要素(22A)の第3の要素幅(W3)及び背景要素(22B)の第3の要素幅(W3)と潜像画像発現要素群(4)の第3の要素幅(W3)が略同一を含むものであり、潜像画像(14)が視認できる程度の誤差であれば本発明の範囲に含まれる。
【0083】
図18に示す潜像模様(11c)による図柄を発現させるためには、潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)の上に、潜像模様(11c)を付与した潜像画像形成体(10)を重ねる際、潜像画像発現要素群(4)の上に潜像模様(11c)の背景を現す背景要素(22B)が重なるよう配置することで、潜像要素(22A)の間隙が潜像画像発現要素群(4)の黒色で再現されることから、潜像画像(14)である「1」が黒色で発現し、視認可能となる。また、潜像画像発現要素群(4)が潜像要素(22A)と同一位置へ移動することにより、潜像要素(22A)の間隙が潜像画像発現要素群(4)の間隙である白色で再現されることから、潜像画像(14)である「1」がネガポジ反転した白色で発現し、視認可能となる。
【0084】
(効果)
図18に示した潜像模様(11c)を備えた潜像画像形成体(10)を、
図20(a)に示すように、潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)に重ねて観察すると、潜像部(21A)が顕在化し、潜像画像(14)である「1」が視認される。また、
図20(b)に示すように潜像画像発現要素群(4)の位置が第1の方向(S1)に第3の要素幅(W3)分移動することで潜像画像(14)である「1」がネガポジ反転して視認される。このとき、
図20(a)における左端の潜像画像発現要素群(4)の位置は潜像画像発現装置(3)の左端からx0の位置にあるが、
図20(b)ではx1の位置に移動している。この移動量(x1-x0)の値が第3の要素幅(W3)の値と同一となる。なお、第4の実施の形態に示す潜像模様(11)の態様については、特許文献2に記載されている構成を活用することができる。
【0085】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態における潜像模様(11d)は、第2の方向(S2)に沿って、中心を境に対向するように配置された第1の要素及び第2の要素と、第1の方向(S1)に沿って、中心を境に対向するように配置された第3の要素及び第4の要素とを有する要素が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の要素における第1の要素と第2の要素、第3の要素と第4の要素は、ネガポジの関係にあり、第1の要素又は第2の要素により第1の潜像画像が形成され、第3の要素又は第4の要素により第2の潜像画像が形成されて成るものであり、詳細について
図21を用いて説明する。なお、以降の説明において、個別の要素(第1の要素、第2の要素、第3の要素、第4の要素)を指すのではなく、それぞれの要素全般を指す場合には潜像要素(12c)として説明する。
図21(a)は、本実施の形態における
図21(b)に示す潜像模様(11d)に対する潜像要素(12c)を構成するユニットを部分的に拡大したものである。ここで、縦横の寸法Sは、例えば、340μmというように1mm以下の大きさであり、ここではユニットと定義する。このようなユニットが、マトリクス状に規則的に配置されることで
図21(b)に示す潜像模様(11d)を形成する。要素Aと要素A’とは、対を成しており、相互にネガポジの関係にある。このネガポジの関係とは、例えば、一方が黒(オン)のときは他方は白(オフ)、一方が有着色のときは他方は無着色であり、双方ともに黒又は双方ともに白であることがないということである。そして、要素Aと要素A’とは、面積が同一である。このような要素Aと要素A’とが存在することで通常の可視条件下では視認されず、要素Aのみにより第1の潜像画像(ネガ又はポジ)、要素A’のみにより第1の潜像画像(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。
【0086】
同様に、要素Bと要素B’とは、対を成してネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一である。要素Bのみにより第2の潜像画像(ネガ又はポジ)、要素B’のみにより第2の潜像画像(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。また、要素Aと要素A’、要素Bと要素B’の第3の要素幅(W3)については同一である。
【0087】
図23に示すように、ここでは、わかりやすいように要素A及び要素A’によって視認される第1の潜像画像(14A)をローマ字の「A」、要素B及び要素B’ によって視認される第2の潜像画像(14B)をローマ字の「B」として説明する。
【0088】
図21(a)に示す要素Cは、可視画像(デザイン:模様)を構成するものであり、通常の視認状態において肉眼で視認される任意の図形及び文字等から成る模様を構成する。
【0089】
要素Aと要素A’、要素Bと要素B’に関し、縦横の寸法がSであるユニット内において、縦軸方向に円形の要素Aと要素A’とを、それぞれ寸法Sの約半分の直径を有して配置し、横軸方向に円形の要素Bと要素B’ とを、それぞれ寸法Sの約半分の直径を有して配置している。さらに、ユニットの四隅に要素Cの中心が来るように、それぞれ寸法Sの長さの4分の1の要素を配置している。
【0090】
このような構成を有する要素を潜像画像形成体(10)の少なくとも一部にマトリクス状に隙間なく、連続的かつ規則的に配置すると
図21(b)のようになる。この
図21(b)は、潜像画像形成体(10)に付与された潜像要素(12c)である要素A、要素A’、要素B、要素B’、要素Cによって構成される、マトリクス状に配置された複数のユニットを、第1の潜像画像(14A)、第2の潜像画像(14B)及び第1の可視画像のそれぞれの構成が解るように簡易的に示した模式図である。ユニット内において、要素Aの総要素面積と要素A’の総要素面積とが等しく、それぞれ対になっているもの同士がネガポジの関係にあることによって、第1の潜像画像(14A)が通常の目視では不可視の状態になっている。同様に、要素Bと要素B’により構成される第2の潜像画像(14B)が不可視の状態になっている。
【0091】
図22を用いて本実施の形態の潜像要素(12c)と潜像画像発現要素群(4)の関係について説明する。
図22(a)は、
図21(a)と同一の図を、
図22(b)は本実施の形態における潜像画像発現要素群(4)を示している。
図22(b)に示す潜像画像発現要素群(4)の第3の要素幅(W3)は
図21(a)に示す要素A、要素A’、要素B、要素B’の第3の要素幅(W3)と同一で、潜像画像発現要素群(4)の第1のピッチ(P1)については、要素A、要素A’、要素B、要素B’の第3の要素幅(W3)の2倍の長さのピッチである。ここでいう同一とは、潜像要素(12)の要素幅と潜像画像発現要素群(4)の要素幅が略同一を含むものであり、潜像画像(14)が視認できる程度の誤差であれば本発明の範囲に含まれる。
【0092】
(効果)
図21(b)に示した潜像模様(11d)を構成するマトリクス状に配置された複数のユニットを備えた潜像画像形成体(10)を、
図23に示すように、潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)に第1の方向(A1)又は第2の方向(S2)に重ねて観察すると、要素Aと要素A’に対応した「A」又は要素Bと要素B’に対応した「B」が潜像画像(14)として視認される。ここで、
図23(a)に示すように「A」が黒文字で視認された場合、潜像画像発現要素群(4)が第1の方向(S1)に第3の要素幅(W3)と同じ長さを平行移動すると、
図23(b)に示すように「A」が白文字に切り替わって視認される。
【0093】
ここで、潜像画像形成体(10)の重ねる角度を90度変更すると、
図23(c)に示すように、視認される潜像画像(14)が「A」から「B」の黒文字に切り替わり、こちらも潜像画像発現要素群(4)が第1の方向(S1)に第3の要素幅(W3)と同じ長さを平行移動すると「B」の文字が黒文字から白文字に切り替わって視認される。このとき、
図23(a)及び
図23(c)における左端の潜像画像発現要素群(4)の位置は潜像画像発現装置(3)の左端からx0の位置にあるが、
図23(b)及び
図23(d)ではx1の位置に移動している。この移動量(x1-x0)の値が第3の要素幅(W3)の値と同一となる。なお、第5の実施の形態に示すそれぞれの潜像要素(12c)の態様については、特許文献3に記載されている構成を活用することができる。
【0094】
(第6の実施の形態)
続いて、本発明の第6の実施の形態の構成について説明する。
図24(a)は、潜像画像発現要素群(4)であるピンホールによるモアレ拡大効果を利用して潜像画像(14)が出現する構成について示す図である。ここでは、
図24(b)に示す「顔のマーク」を基画像(13)として、マイクロパターン化した潜像要素(12d)によって構成した例について説明する。なお、以降は潜像要素(12d)と潜像画像発現要素群(4)の関係を説明するために
図25を用いて説明する。
図25(a)は
図24(a)と同一の図であり、
図25(b)は本実施の形態における潜像画像発現要素群(4)を図示したものである。
【0095】
図25(a)に示す潜像要素(12d)と、
図25(b)に示す潜像画像発現要素群(4)の配置は、どちらも格子状に配置されたものとなっている。
図25(a)に示す隣同士の潜像要素(12d)は、第1の方向(S1)方向に第7の要素幅(W7)及び第3のピッチ(P3)、第1の方向(S1)と直交する第2の方向(S2)に第8の要素幅(W8)及び第4のピッチ(P4)を有して配置されることで、潜像模様(11e)を構成している。第7の要素幅(W7)と第8の要素幅(W8)、第3のピッチ(P3)と第4のピッチ(P4)のそれぞれの関係は特に限定しないが、等距離に近いほうが、視認性が高く、動画効果も高い潜像画像(14)が出現することから好ましい。潜像要素(12d)の形状は、特に限定されず、例えば、円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、モチーフ、あるいは文字や記号、数字等、任意な形状とすることができる。
【0096】
一方、
図25(b)に示されるように潜像画像発現要素群(4)は、潜像要素(12d)と同様に格子状に配置され、黒色で表示される背景と、白色をはじめとした明るい色で表示される潜像画像発現要素群(4)がピンホールの形状で構成される。そして隣同士の潜像画像発現要素(4a)は、第1の方向(S1)に第5のピッチ(P5)、第2の方向(S2)に第6のピッチ(P6)、直径が第9の要素幅(W9)を有して配置されている。ただし、この第5のピッチ(P5)は、潜像要素(12d)の第3のピッチ(P3)に対して僅かな差(ピッチ差)を有したものとなっており、第6のピッチ(P6)についても、潜像要素(12d)の第4のピッチ(P4)と僅かな差(ピッチ差)を有して配置されている。ここでいう僅かな差とは、一方のピッチの値が、他方のピッチの値より大きくてもよいし、小さくてもよいが、モアレ拡大現象が生じるために、一方のピッチの値が、他方のピッチの値で割り切れる数値であってはならない。なお、一方のピッチの値が、他方のピッチの値の80%から120%(100%を除く)程度の数値である場合、視認性が高く、動画効果も高い拡大モアレが出現することから好ましい。
【0097】
潜像画像発現要素群(4)の大きさについて、
図25(b)の拡大図を用いて説明する。潜像画像発現要素群(4)は、拡大図に示すように、第1の方向(S1)に第5のピッチ(P5)、第2の方向(S2)に第6のピッチ(P6)と同じ長さを有するブロックがマトリクス状に規則的に配置される。このブロックは、実際には存在しないが、説明のために図示している。ひとつの潜像画像発現要素(4a)は、『第5のピッチ(P5)×第6のピッチ(P6)』のブロック面積に対して20%以下の面積率で形成される。さらに好ましくは、10%以下の面積率で形成される。例えば、第5のピッチ(P5)及び第6のピッチ(P6)の長さを有する幅が700μm、潜像画像発現要素(4a)の直径が80μmで形成した場合、潜像画像発現要素群(4)の面積率は約10%となり、本発明における潜像画像発現効果を確認することが可能であるが、この数値に限定されるものではない。なお、
図25(b)に示す潜像画像発現要素群(4)はわかりやすいように目視で視認できる大きさで記載しているが、実際には目視で視認できないほどの大きさである。一方、潜像画像発現要素群(4)によってサンプリングされる潜像要素(12d)の大きさは、潜像画像発現要素群(4)の大きさに合わせて適宜選定すればよい。
【0098】
(効果)
図25(a)に示した潜像模様(11e)を備えた潜像画像形成体(10)を、
図25(b)に示す潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)に重ねて観察すると、
図26(a)に示すように、潜像画像発現要素群(4)のピンホールの効果によって潜像要素(12d)のそれぞれの一部ずつが異なる位置でサンプリングされ、それぞれが組み合わさった「顔のマーク」が潜像画像(14)として視認できる。さらに、
図26(b)及び
図26(c)に示すように、一例として潜像画像発現要素群(4)が第1の方向(S1)に移動していくと、潜像画像(14)が第1の方向(S1)に動く様子を視認することができる。このとき、
図26(a)における左端の潜像画像発現要素群(4)の位置は潜像画像発現装置(3)の左端からx0の位置にあるが、
図26(b)ではx1、
図26(c)ではx2の位置に移動している。移動量については特に限定せず、潜像画像発現要素群(4)の移動量に応じて潜像画像(14)の位置も移動する。
図26においては、第1の方向(S1)への動く様子のみしか図示していないが、上下左右や斜め方向等ランダム方向に潜像画像発現要素群(4)が移動すると、それに応じて潜像画像(14)もランダム方向に移動する。
【0099】
本発明の潜像画像発現装置(3)及びその発現方法は、以上に説明した潜像模様(11)、潜像要素(12)の構成により、潜像画像発現要素群(4)を表示した潜像画像発現装置(3)に潜像模様(11)を付与した潜像画像形成体(10)を重ねて観察することで、潜像画像(14)の発現、チェンジ、動的変化等の様々な効果を生み出すことができる。
【0100】
本発明における潜像画像発現装置(3)は、実施の形態1~6に示した潜像画像(14)を発現させるための潜像画像発現要素群(4)を表示させるものである。なお、潜像模様(11)の構成は実施の形態1~6に限定されず、特許請求の範囲で形成し、万線状又はピンホール状で構成された潜像画像発現要素群(4)に重ねることで潜像画像(14)が発現するものであればよい。
【0101】
潜像画像発現要素群(4)と潜像要素(12)のピッチ及び要素幅の関係については、実施の形態1~6に示したとおりであり、潜像要素(12)のピッチ及び幅に対応した潜像画像発現要素群(4)を潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる。このような構成とすることで、潜像画像発現要素群(4)のピッチ及び要素幅を適宜設定可能となり、潜像要素(12)の構成(ピッチ、幅)を自由に形成可能となるため、潜像画像(14)のデザインに制約を受けない。
【0102】
(潜像画像発現方法)
潜像画像発現要素群(4)の画像データを潜像画像発現装置(3)に表示させ、潜像画像(14)を発現させる方法としては、専用のアプリを作成して活用する方法や、バーコードや2次元コードをはじめとするコード情報を活用する方法がある。
【0103】
専用のアプリを活用する方法について、3つの例を説明する。まずは、1つ目の例について、
図27及び
図28を用いて説明する。
【0104】
図27に、潜像画像(14)を発現させる方法の1例目のフローチャートを示し、
図28に、1例目の潜像画像発現装置(3)において、専用のアプリを立ち上げた状態のディスプレイの一例を示す。はじめに、潜像画像発現装置(3)においてアプリを立上げ、
図28に示すディスプレイを表示させる(STEP1)。このディスプレイ上には、ピッチ及び要素幅を異ならせた潜像画像発現要素群(4)の複数のパターンに対応したボタンが配置されている。なお、アプリを立ち上げた状態のディスプレイの表示内容はあくまで一例である。
【0105】
次に、潜像要素(12)の構成(ピッチ、要素幅)に該当するボタンを
図28から選択し、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データを潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる(STEP2)。これらの処理は、
図3に示した潜像画像発現装置(3)の制御部(101)、入力部(102)、記憶部(103)及び表示部(106)によって処理される。
【0106】
ここで、
図28に示す潜像画像発現装置(3)のディスプレイがタッチパネル機能を有する場合において、ディスプレイのボタンを選択し、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した万線の潜像画像発現要素群(4)の画像データを潜像画像発現装置(3)に表示させる処理の流れについて具体的に説明する。まず、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示させるために、例えば、
図28(a)に示すタッチパネルの「製品1」のボタンを選択する。このタッチパネルは、
図3に示す表示部(106)であるが、入力部(102)の機能も包含しているため、選択された「製品1」というデータが入力される。制御部(101)は、「製品1」に付与された潜像模様(11)に対応するピッチ及び要素幅を有する潜像画像発現要素群(4)の画像データを記憶部(103)から取り出し、表示部(106)である潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる。なお、
図28(b)に示すように、製品に付与された潜像模様(11)に対応したピッチと要素幅の値をタッチパネルに表示していてもよい。例えば、
図28(b)の1番のボタンを選択すると、ピッチが636.0μm、要素幅が424.0μmの値を有する潜像画像発現要素群(4)の画像データがディスプレイに表示される。
【0107】
次に、潜像画像発現要素群(4)の画像データが表示された潜像画像発現装置(3)のディスプレイ上に、潜像模様(11)が付与された潜像画像形成体(10)を重畳する(STEP3)。
【0108】
万線の潜像画像発現要素群(4)によって、ディスプレイの黒い部分と白い部分の画面光量に差が発生することで、潜像画像(14)が発現する(STEP4)。
【0109】
次に、2つ目の例について、
図29及び
図30を用いて説明する。
図29に、潜像画像(14)を発現させる方法の2例目のフローチャートを示し、
図30に、2例目の潜像画像発現装置(3)において、専用のアプリを立ち上げた状態のディスプレイの一例を示す。まず、潜像画像発現装置(3)においてアプリを立上げ、
図30に示すディスプレイを表示させる(STEP1)。
【0110】
次に、潜像要素(12)の構成(ピッチ、要素幅)を
図30に示すように入力する(STEP2)。入力されたデータに基づき、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データを作成し、潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる(STEP3)。これらの処理は、
図3に示した潜像画像発現装置(3)の制御部(101)、入力部(102)、記憶部(103)、演算部(104)及び表示部(106)によって処理される。
【0111】
ここで、
図30に示す潜像画像発現装置(3)において、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅を入力した際に、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した値を有する万線の潜像画像発現要素群(4)の画像データを潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる処理の流れについて具体的に説明する。まず、
図30に示す潜像画像発現装置(3)において、潜像要素(12)のピッチ及び要素幅を入力する。入力されたデータは、
図3に示す入力部(102)から演算部(104)に送信され、潜像要素(12)に対応した潜像画像発現要素群(4)のピッチ及び要素幅を記憶部(103)の計算式により演算する。次に、制御部(101)によって、演算結果の値(ピッチ及び要素幅)を有する万線の潜像画像発現要素群(4)の画像データを作成し、表示部(106)である潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる。
【0112】
ここで、記憶部(103)に格納してある計算式について説明する。ここでは、説明の便宜上、潜像画像発現要素群(4)のピッチをP1、要素幅をW1とし、潜像模様(11)のピッチをP2、要素幅をW2として説明する。例えば、潜像模様(11)が第1の実施の形態の場合の計算式は以下のとおりとなる。なお、W1に関しては、潜像模様(11)を構成している潜像要素群の数によって計算式が異なる。潜像要素群が2つの場合は、以下の計算式になり、3つ以上の場合は、潜像要素群の数-1の値をW2に乗算した値によってW1を求める。例えば、潜像要素群が3つある場合は、カッコ内の計算式となる。
P1=P2、W1=W2(W1=W2×2)
【0113】
潜像模様(11)が第2の実施の形態の場合の計算式は以下のとおりとなる。なお、W1に関しては、P1に対して70%以上、より好ましくは80%以上であれば特に限定しないため、ここでは、一例としてカッコ内の計算式としている。
P1=P2、W1≠W2(W1=P1×0.8)
【0114】
潜像模様(11)が第3の実施の形態の場合の計算式は以下のとおりとなる。なお、P1に関してはP2の80%から120%(100%を除く)程度の数値で、P2で割り切れる数値でなければ特に限定しない。また、W1に関しては、P1に対して70%以上、より好ましくは80%以上であれば特に限定しないため、ここでは、P1及びW1の計算式を一例としてカッコ内の計算式としている。
P1≠P2(P1=P2×0.91)、W1≠W2(W1=P1×0.8)
【0115】
潜像模様(11)が第4の実施の形態の場合の計算式は以下のとおりとなる。
P1=P2、W1=W2
【0116】
潜像模様(11)が第5の実施の形態の場合の計算式は以下のとおりとなる。
P1=W2×2、W1=W2
【0117】
潜像模様(11)が第6の実施の形態の場合の計算式は以下のとおりとなる。ここでは、第6の実施の形態における潜像画像発現要素(4a)及び潜像要素(12)の第1の方向(S1)のピッチ及び要素幅が同一で、第2の方向(S2)のピッチ及び要素幅が同一の場合で説明する。なお、P1に関してはP2の80%から120%(100%を除く)程度の数値で、P2で割り切れる数値でなければ特に限定しないことから、一例として以下のカッコ内の計算式としている。また、W1に関しては、『P1×P1』のブロック面積に対して20%以下の面積率であれば特に限定しないため、潜像画像発現要素(4a)の面積率が10%の場合を一例としてカッコ内の計算式としている。
P1≠P2(P1=P2×0.91)、W1≠W2(W1=P1×0.357)
【0118】
次に、潜像画像発現要素群(4)の画像データが表示された潜像画像発現装置(3)のディスプレイ上に潜像模様(11)を付与した潜像画像形成体(10)を重畳する(STEP4)。
【0119】
万線の潜像画像発現要素群(4)によって、ディスプレイの黒い部分と白い部分の画面光量に差が発生することで、潜像画像(14)が発現する(STEP4)。
【0120】
次に、3つ目の例について、
図31及び
図32を用いて説明する。
図31に、潜像画像(14)を発現させる方法の3例目のフローチャートを示す。まず、潜像画像発現装置(3)においてアプリを立上げる(STEP1)。
【0121】
次に、潜像画像発現装置(3)の撮像部(105)によって、潜像画像形成体(10)を撮像し、潜像模様(11)を取り込む(STEP2)。
【0122】
次に、演算部(104)によって、撮像部(105)で取り込まれた潜像模様(11)と、記憶部(103)が記憶している複数種類の潜像模様の画像データとを比較判定し、複数種類の潜像模様の画像データのうち、カメラ機能によって取り込まれた潜像模様(11)に最も近似する潜像模様の画像データを特定する(STEP3)。
【0123】
複数種類の潜像模様の画像データとそれに対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データについて、
図32を用いて詳細に説明する。
図32は、記憶部(103)に予め記憶されている複数種類の潜像模様の画像データ(11D1、11D2)と、それに対応した潜像画像発現要素群の画像データ(4D1、4D2)について示す図である。例えば、STEP3において、
図10(a)に示す潜像模様(11)が撮像部(105)によって取り込まれた場合、演算部(104)によって
図32(a)の潜像模様の画像データ(11D1)が最も近似するものであると特定される。次に、STEP4において、特定された潜像模様の画像データ(11D1)に対応した
図32(a)の潜像画像発現要素群の画像データ(4D1)を記憶部(103)から読み出し、潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる。
【0124】
次に、制御部(101)によって、特定された潜像模様に対応した潜像画像発現要素群(4)の画像データを記憶部(103)から読み出し、潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる(STEP4)。これらの処理は、
図3に示した潜像画像発現装置(3)の制御部(101)、記憶部(103)、演算部(104)、撮像部(105)及び表示部(106)によって処理される。
【0125】
次に、潜像画像発現要素群(4)の画像データが表示された潜像画像発現装置(3)のディスプレイ上に潜像模様(11)を付与した潜像画像形成体(10)を重畳する(STEP5)。
【0126】
ディスプレイ上に表示された潜像画像発現要素群(4)の黒い部分と白い部分の画面光量に差が発生することで、潜像画像(14)が発現する(STEP6)。
【0127】
潜像画像(14)がチェンジ及び動的の少なくとも一方に変化する方法について
図3及び
図33を用いて説明する。なお、潜像画像が発現するまでの方法に関しては、前述した3つの例のいずれにおいても可能であることから、
図33においては、1つ目の例を用いて説明する。
【0128】
図33において、潜像画像(14)が発現するSTEP4までは前述と同様のため省略する。次に、潜像画像発現要素群(4)を平行移動させるための操作を行う(STEP5)。ここでは図示していないが、タッチパネル型ディスプレイの一部に平行移動用のボタンを配置し、ボタン押下によって潜像画像発現要素群(4)が平行移動するような構成とすれば良い。これらの処理は、
図3に示した潜像画像発現装置(3)の制御部(101)、入力部(102)、記憶部(103)及び表示部(106)によって処理される。また、平行移動のための操作は、ディスプレイが有するタッチパネルによる操作に限定されず、パソコンの入力部(102)であるキーボードから受信した信号を基に平行移動させることも可能である。
【0129】
処理の流れについて説明する。平行移動のボタンを押下した際、平行移動のデータが
図3における入力部(102)から入力される。制御部(101)は、潜像画像発現要素群(4)を平行移動させる処理を表示部(106)に送信することで、表示部(106)であるディスプレイに表示された潜像画像発現要素群(4)が平行移動する。この平行移動は、前述したように、ディスプレイに表示された潜像画像発現要素群(4)の画素の位置を第1の方向(S1)である隣の画素に順次変更する処理によって、結果的に潜像画像発現要素群(4)が平行移動しているように視認されるものである。なお、記憶部(103)に、平行移動する速度及び方向を予め記憶させておき、適宜選定してもよい。
【0130】
次に、潜像画像発現要素群(4)の平行移動によって画面光量の強い位置が変わり、それに合わせて潜像画像(14)がチェンジ及び動的の少なくとも一方に変化する(STEP6)。なお、STEP4における潜像画像発現要素群(4)の発現と同時に平行移動する構成としてもよく、その場合は、潜像画像発現要素群(4)を平行移動させるための操作を省略することが可能となる。
【0131】
潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示させる方法のその他の一例として、2次元コード(5)を活用する方法について、
図3、
図34及び
図35を用いて説明する。
図34は、紙又はポリマーの基材(1)の一部に潜像模様(11)及び2次元コード(5)が付与された潜像画像形成体(10)である。
【0132】
2次元コード(5)は、印刷、所定の箇所において紙層構造を部分的に変化させた透かし、レーザ発色、レーザ穿孔等によって基材(1)に付与される。
【0133】
図35のフローチャートに示すように、潜像画像(14)を発現させる者は、はじめに、潜像画像発現装置(3)の撮像部(105)によって
図34に示す2次元コード(5)を読み取る(STEP1)。
【0134】
2次元コード(5)の読み取りによって自動でアプリが起動し、更に潜像画像形成体(10)に形成された潜像模様(11)を構成する潜像要素(12)のピッチ及び要素幅に対応した潜像画像発現要素群(4)が潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示される(STEP2)。これらの処理は、
図3に示した潜像画像発現装置(3)の制御部(101)、記憶部(103)、撮像部(105)及び表示部(106)によって処理される。
【0135】
処理の流れについて説明する。まずは、
図3に示す潜像画像発現装置(3)の撮像部(105)により、2次元コード(5)を読み取る。読み取ったデータは、記憶部(103)に送信され、制御部(101)が2次元コード(5)のデータに対応したピッチ及び要素幅を有する潜像画像発現要素群(4)の画像データを記憶部(103)から呼び出して表示部(106)である潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる。また、外部接続部(107)をさらに有することで、2次元コード(5)の読み取りによって外部接続部(107)からインターネットに接続し、潜像画像発現要素群(4)の画像データが表示されたページを表示部(106)である潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示させる構成でも良い。この場合は、アプリを必要としない。
【0136】
STEP3以降については、前述と同様であり、潜像画像形成体(10)を潜像画像発現装置(3)のディスプレイ上に重畳すると潜像画像(14)が発現し、更に潜像画像発現要素群(4)が平行移動することで潜像画像(14)がチェンジ及び動的の少なくとも一方に変化する。
【0137】
また、本発明の潜像画像発現装置(3)は、入力部(102)からの信号によって潜像画像発現要素群(4)の要素幅やピッチを調整できる構成としてもよい。一例として、スマートフォンやタブレット端末等のタッチパネル機能によって、ディスプレイ上に配置されたボタン等を操作する方法や、キーボードを操作する方法がある。
【0138】
本発明の潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示するためのソフトウェアは、上述した潜像画像発現要素群(4)の画像データを潜像画像発現装置(3)のディスプレイに表示する方法を、コンピュータに実行させるものである。
【0139】
以上に説明した潜像画像発現方法によって、従来必要であったレンチキュラーレンズ等の判別具(2)を必要とせず、大多数の人が携帯しているスマートフォン等の多機能端末を活用することで潜像画像(14)が視認可能となる。
【0140】
(実施例1)
以下、発明を実施するための形態にしたがって、 本発明の潜像画像発現装置(3)と潜像画像形成体(10)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0141】
図36(a)は、本実施例の潜像模様(11)の構成を示す図であり、潜像模様(11)は、
図36(b)に示す「鳳凰」の図柄を構成する第1の潜像要素群(11A)及び
図36(c)に示す「桜」の図柄を構成する第2の潜像要素群(11B)を含んで成る。
【0142】
第1の潜像要素群(11A)を構成する第1の潜像要素(12A)及び第2の潜像要素群(11B)を構成する第2の潜像要素(12B)は、いずれも要素幅を317.5μmとし、ピッチを635μmとして、第1の方向(S1)に複数形成した。なお、第1の潜像要素(12A)と第2の潜像要素(12B)は、第1の方向(S1)に317.5μmずらして交互に配置した。このような要素構成の潜像要素(12)を公知のすき入れ技術を用いて、紙から成る基材(1)に形成した。なお、すき入れ技術による加工を施していない基材(1)の厚さは、100μmであり、厚さが70μmの潜像要素(12A、12B)を形成した。
【0143】
潜像画像発現装置(3)として用いた多機能端末は、スマートフォンを用い、
図4(a)に示すように潜像画像発現要素群(4)として要素幅が317.5μm、ピッチが635μmの万線の画像データを作成してディスプレイに表示させた。本実施例では、予めパソコンの画像作成ソフトにより作成した万線の画像データをスマートフォンに取り込んで、その画像データをディスプレイに表示させた。
【0144】
本実施例の潜像画像形成体(10)の効果について説明する。基材(1)に形成された潜像模様(11)は、反射光下の観察では、基材(1)と等色であるため視認することができなかった。一方、潜像画像発現装置(3)であるスマートフォンのディスプレイに潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示し、潜像模様(11)を形成した潜像画像形成体(10)をディスプレイに重ねて観察すると、「鳳凰」の図柄が黒い画像として視認され、更に、潜像画像発現要素群(4)を平行移動させると「桜」の図柄が黒い画像として視認された。以上のように、潜像画像発現装置(3)に潜像模様(11)を付与した潜像画像形成体(10)を重ねると不可視であった画像が潜像画像(14)として視認され、更に潜像画像発現要素群(4)の平行移動により視認される潜像画像(14)がチェンジする効果を有することが確認できた。
【0145】
(実施例2)
図37(a)は、
図37(b)、
図37(c)及び
図37(d)に示す潜像要素群(11A、11B、11C)から成り、
図37(b)、
図37(c)及び
図37(d)の潜像要素群(11A、11B、11C)はそれぞれ角度の異なる桜の図柄の基画像を分割した潜像要素(12)から成る。
【0146】
第1の潜像要素群(11A)を構成する第1の潜像要素(12A)、第2の潜像要素群(11B)を構成する第2の潜像要素(12B)及び第3の潜像要素群(11C)を構成する第3の潜像要素(12C)は、いずれも要素幅を212.0μmとし、ピッチを636.0μmとして、第1の方向(S1)に複数形成した。なお、第1の潜像要素(12A)、第2の潜像要素(12B)及び第3の潜像要素(12C)は、第1の方向(S1)に212.0μmずつ重ならないように、3つの要素を順次交互に配置した。このような要素構成の潜像要素(12)を公知のレーザプリンタ印刷技術を用いて、樹脂から成る透明な基材(1)に黒色で形成した。なお、レーザプリンタ印刷技術による加工を施していない樹脂から成る透明な基材(1)の厚さは、100μmであり、厚さが30μmの潜像要素(12A、12B、12C)を形成した。
【0147】
潜像画像発現装置(3)としてスマートフォンを用い、潜像画像発現要素群(4)として実施例1に記載の要素幅が317.5μm、ピッチが635μmの万線の画像データと、新たに要素幅が424.0μm、ピッチが636.0μmの万線の画像データを作成して、予めスマートフォンに記憶させた。次に、予め記憶された万線の画像データのうち、要素幅が424.0μm、ピッチが636.0μmの万線の画像データを選択してディスプレイに表示させた。本実施例においても、予めパソコンの画像作成ソフトにより作成した万線の画像データをスマートフォンに取り込んで、その画像データをディスプレイに表示させた。
【0148】
本実施例の潜像画像形成体(10)の効果について説明する。基材(1)に形成された潜像模様(11)は、目視では、それぞれの潜像要素群(11A、11B、11C)が重なった状態で視認されるため
図37(a)の画像がそのまま視認され、潜像としてどの図柄が付与されているのかはわからない。一方、潜像画像発現装置(3)であるスマートフォンのディスプレイに潜像画像発現要素群(4)の画像データを表示し、潜像模様(11)を付与した基材(1)を第1の方向(S1)と直交する角度でディスプレイに重ねて観察すると、「桜」の図柄が黒い画像として視認され、さらに、潜像画像発現要素群(4)が自動で平行移動すると「桜」の黒い画像の角度が徐々に回転しながら動的に視認され、動的効果を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0149】
1 基材
2 判別具
3 潜像画像発現装置
3a ディスプレイ
4 潜像画像発現要素群
4D1、4D2 潜像画像発現要素群の画像データ
4a 潜像画像発現要素
5 2次元コード
6 ホログラム
7 透明層
8 保護層
9 窓部
10 潜像画像形成体
11、11a、11b、11c、11d 潜像模様
11A 第1の潜像要素群
11B 第2の潜像要素群
11C 第3の潜像要素群
11D1、11D2 潜像模様の画像データ
12、12a、12a-1、12a-2、12a-15、12a-16、12a-17、12a-27、12a-28、12a-n、12b、12c、12d 潜像要素
12A 第1の潜像要素
12B 第2の潜像要素
13 基画像
13A 第1の基画像
13B 第2の基画像
14 潜像画像
14A 第1の潜像画像
14B 第2の潜像画像
15-1、15-16、15-28 フレーム内画像
16-1、16-16、16-28 フレーム
21 有色の要素
21A 潜像部
21B 背景部
22A 潜像要素
22B 背景要素
101 制御部
102 入力部
103 記憶部
104 演算部
105 撮像部
106 表示部
107 外部接続部