(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124361
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】中継装置、無線中継システム、検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20240905BHJP
H04J 3/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H04W16/26
H04J3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026209
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023032238
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 勉
(72)【発明者】
【氏名】小出 健
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 禎央
【テーマコード(参考)】
5K028
5K067
【Fターム(参考)】
5K028AA01
5K028BB04
5K028CC02
5K028DD04
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間とを精度よく検出する。
【解決手段】検出方法は、TDD方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する場合に、基地局から送信されたDL信号の強度に基づいて、DL信号に対応したパルス信号を生成し、パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含むパルス情報を生成し、DL信号が通信トラフィックを含まない場合に、パルス情報に基づいて、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定し、TDD方式において予め定められている、無線フレームにおけるDL期間、UL期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報と、判定されたフレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報とに基づいて、DL期間とUL期間とを検出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて、時分割多重方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する中継装置であって、
前記基地局から送信されたダウンリンク信号の強度に基づいて、前記ダウンリンク信号に対応したパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含むパルス情報を生成するパルス情報生成部と、
前記ダウンリンク信号が通信トラフィックを含まない場合に、前記パルス情報に基づいて、前記パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定するフレーム先頭判定部と、
前記時分割多重方式において予め定められている、無線フレームにおけるダウンリンク期間、アップリンク期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部と、
判定された前記フレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報と、前記フレーム構成情報とに基づいて、ダウンリンク期間とアップリンク期間とを検出するタイミング検出部と、
を備える中継装置。
【請求項2】
前記パルス情報は、パルス幅、および次のパルス成分までのパルス間隔をさらに含む
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記パルス情報生成部は、前記パルス情報として、各パルス成分の情報をパルス成分の開始時刻の順に配列した第1データ配列を形成し、その後、前記第1データ配列を、最もパルス間隔が長いパルス成分が最後となるようにパルス成分の情報の順序を巡回シフトして第2データ配列を形成し、
前記第2データ配列として形成された前記パルス情報を前記フレーム先頭判定部に出力する
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記所定時間は、前記中継装置において中継される無線通信信号のサブキャリア間隔に応じて設定される
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項5】
前記所定時間は、
前記サブキャリア間隔が15kHzの場合および30kHzの場合は2OFDMシンボル分であり、
前記サブキャリア間隔が120kHzの場合は4OFDMシンボル分であり、
前記サブキャリア間隔が240kHzの場合は8OFDMシンボル分であり、
前記サブキャリア間隔が480kHzの場合および960kHzの場合は2OFDMシンボル分である
請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
前記所定時間は、前記パルス信号に含まれるパルス成分のうち時間的に先頭のパルス成分のパルス幅に応じて設定される
請求項2に記載の中継装置。
【請求項7】
前記先頭のパルス成分のパルス幅が250μsを超え321μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が15kHzの場合の2OFDMシンボル分であり、
前記先頭のパルス成分のパルス幅が125μsを超え161μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が30kHzの場合の2OFDMシンボル分であり、
前記先頭のパルス成分のパルス幅が15.6μsを超え75.9μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が120kHzの場合の4OFDMシンボル分であり、
前記先頭のパルス成分のパルス幅が7.81μsを超え10.0μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が480kHzの場合の2OFDMシンボル分であり、
前記先頭のパルス成分のパルス幅が3.91μsを超え5.02μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が960kHzの場合の2OFDMシンボル分である
請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記記憶部は、さらに前記基地局の動作バンドに関する動作バンド情報を記憶しており、前記所定時間は、サブキャリア間隔と前記動作バンド情報とに応じて設定される
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項9】
前記記憶部は、さらに前記基地局の動作バンドに関する動作バンド情報を記憶しており、前記所定時間は、前記パルス情報と前記動作バンド情報とに応じて設定される
請求項1または2に記載の中継装置。
【請求項10】
前記無線通信システムは第5世代移動通信システムである
請求項1に記載の中継装置。
【請求項11】
少なくとも一つの、請求項1または2に記載の中継装置と、
それぞれが、前記中継装置のそれぞれと通信を行う少なくとも一つの基地局と、
それぞれが、少なくとも一つの前記無線通信端末のそれぞれと通信する少なくとも一つの子局装置と、
前記中継装置のそれぞれからのダウンリンク信号を集約し、前記子局装置のそれぞれに対する集約ダウンリンク信号を生成して送信するとともに、前記子局装置のそれぞれからのアップリンク信号から、前記基地局のそれぞれに対する分配アップリンク信号を生成して送信する集約分配部と、
を備える
無線中継システム。
【請求項12】
前記集約分配部よりも前記基地局側における伝送の遅延時間に基づいて、ダウンリンク信号間のタイミングを調整する第1調整部を備える
請求項11に記載の無線中継システム。
【請求項13】
前記集約分配部よりも前記子局装置側における伝送の遅延時間に基づいて、ダウンリンク信号間のタイミングを調整する第2調整部を備える
請求項11に記載の無線中継システム。
【請求項14】
前記集約分配部よりも前記子局装置側における伝送の遅延時間に基づいて、アップリンク信号間のタイミングを調整する第3調整部を備える
請求項11に記載の無線中継システム。
【請求項15】
前記集約分配部よりも前記基地局側における伝送の遅延時間に基づいて、アップリンク信号間のタイミングを調整する第4調整部を備える
請求項11に記載の無線中継システム。
【請求項16】
無線通信システムにおいて時分割多重方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する場合に、前記基地局から送信されたダウンリンク信号の強度に基づいて、前記ダウンリンク信号に対応したパルス信号を生成するパルス信号生成ステップと、
前記パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含むパルス情報を生成するパルス情報生成ステップと、
前記ダウンリンク信号が通信トラフィックを含まない場合に、前記パルス情報に基づいて、前記パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定するフレーム先頭判定ステップと、
前記時分割多重方式において予め定められている、無線フレームにおけるダウンリンク期間、アップリンク期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報と、判定された前記フレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報とに基づいて、ダウンリンク期間とアップリンク期間とを検出する検出ステップと、
を備える検出方法。
【請求項17】
無線通信システムにおいて時分割多重方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する場合に、前記基地局から送信されたダウンリンク信号の強度に基づいて、前記ダウンリンク信号に対応したパルス信号を生成するパルス信号生成ステップと、
前記パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含むパルス情報を生成するパルス情報生成ステップと、
前記ダウンリンク信号が通信トラフィックを含まない場合に、前記パルス情報に基づいて、前記パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定するフレーム先頭判定ステップと、
前記時分割多重方式において予め定められている、無線フレームにおけるダウンリンク期間、アップリンク期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報と、判定された前記フレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報とに基づいて、ダウンリンク期間とアップリンク期間とを検出する検出ステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置、無線中継システム、検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においてダウンリンク(DL)信号とアップリンク(UL)信号とを多重する方式として、周波数分割多重(FDD)と時分割多重(TDD)がある。第4世代や第5世代の移動通信システムでは、DL信号とUL信号とのリソース割り当ての自由度が高いTDD方式が用いられることが多い。TDD方式を用いる場合、複数の無線基地局は、DL-UL間干渉を避けるため、DL期間とUL期間とが同期するように動作する。
【0003】
ところで、無線基地局から離れた場所における電波不感地帯の存在を解消するため、無線中継装置の技術が開示されている。TDD方式の無線中継装置は、周辺エリアの無線基地局とDL期間とUL期間とが同期していない場合、基地局間干渉や端末間干渉が発生する場合があるので、端末のユーザは通信の遅延を感じる場合がある。このためTDD方式の無線中継装置は、周辺エリアの無線基地局と、DL期間とUL期間とが同期するように動作しなければならない。そこで、受信した無線信号からDL期間とUL期間とを正確に検出するための技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、第4世代や第5世代の移動通信システム向け無線中継装置が中継する無線信号はCP(Cyclic Prefix)-OFDM信号であり、通信トラフィック量に応じて信号強度が大きく変化する。信号強度が変動する場合でもDL期間とUL期間とを正確に検出するために、無線中継装置が受信した無線信号と、無線信号をCP-OFDM信号の1シンボル分の長さだけ時間シフトした信号と、の所定区間における相似性を示す値に基づいて、DL期間とUL期間とを検出する技術が開示されている(特許文献2,3)。より具体的には、相似性を示す値が「0」と「1」の間で頻繁に増減を繰り返す区間の始まりをDL期間の先頭とし、フレーム構成情報に基づいてDL期間とUL期間とを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-046776号公報
【特許文献2】特開2019-129440号公報
【特許文献3】特開2021-114677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第4世代移動通信システムにおいて通信トラフィックがない場合、無線基地局が送信する無線信号は、RS、PSS、SSS、BCH、PDCCH、PCFICH、PHICHといった制御信号を含む。一方、第5世代移動通信システムで通信トラフィックがない場合、無線基地局が送信する無線信号は、PSS、SSS、BCH、CORESET0といった制御信号を含む。無線中継装置においては、このように通信トラフィックがなく、無線信号に制御信号だけを含む期間においても、DL期間とUL期間とを検出できることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間とを精度よく検出できる中継装置、無線中継システム、検出方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、無線通信システムにおいて、時分割多重方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する中継装置であって、前記基地局から送信されたダウンリンク信号の強度に基づいて、前記ダウンリンク信号に対応したパルス信号を生成するパルス信号生成部と、前記パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻を含むパルス情報を生成するパルス情報生成部と、前記ダウンリンク信号が通信トラフィックを含まない場合に、前記パルス情報に基づいて、前記パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定するフレーム先頭判定部と、前記時分割多重方式において予め定められている、無線フレームにおけるダウンリンク期間、アップリンク期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶する記憶部と、判定された前記フレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報と、前記フレーム構成情報とに基づいて、ダウンリンク期間とアップリンク期間とを検出するタイミング検出部と、を備える中継装置である。
【0009】
前記パルス情報は、パルス幅、および次のパルス成分までのパルス間隔をさらに含んでもよい。
【0010】
前記パルス情報生成部は、前記パルス情報として、各パルス成分の情報をパルス成分の開始時刻の順に配列した第1データ配列を形成し、その後、前記第1データ配列を、最もパルス間隔が長いパルス成分が最後となるようにパルス成分の情報の順序を巡回シフトして第2データ配列を形成し、前記第2データ配列として形成された前記パルス情報を前記フレーム先頭判定部に出力してもよい。
【0011】
前記所定時間は、前記中継装置において中継される無線通信信号のサブキャリア間隔に応じて設定されてもよい。
【0012】
前記所定時間は、前記サブキャリア間隔が15kHzの場合および30kHzの場合は2OFDMシンボル分であり、前記サブキャリア間隔が120kHzの場合は4OFDMシンボル分であり、前記サブキャリア間隔が240kHzの場合は8OFDMシンボル分であり、前記サブキャリア間隔が480kHzの場合および960kHzの場合は2OFDMシンボル分でもよい。
【0013】
前記所定時間は、前記パルス信号に含まれるパルス成分のうち時間的に先頭のパルス成分のパルス幅に応じて設定されてもよい。
【0014】
前記先頭のパルス成分のパルス幅が250μsを超え321μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が15kHzの場合の2OFDMシンボル分であり、前記先頭のパルス成分のパルス幅が125μsを超え161μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が30kHzの場合の2OFDMシンボル分であり、前記先頭のパルス成分のパルス幅が15.6μsを超え75.9μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が120kHzの場合の4OFDMシンボル分であり、前記先頭のパルス成分のパルス幅が7.81μsを超え10.0μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が480kHzの場合の2OFDMシンボル分であり、前記先頭のパルス成分のパルス幅が3.91μsを超え5.02μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が960kHzの場合の2OFDMシンボル分でもよい。
【0015】
前記記憶部は、さらに前記基地局の動作バンドに関する動作バンド情報を記憶しており、前記所定時間は、サブキャリア間隔と前記動作バンド情報とに応じて設定されてもよい。
【0016】
前記記憶部は、さらに前記基地局の動作バンドに関する動作バンド情報を記憶しており、前記所定時間は、前記パルス情報と前記動作バンド情報とに応じて設定されてもよい。
【0017】
前記無線通信システムは第5世代移動通信システムでもよい。
【0018】
本発明の一態様は、少なくとも一つの前記中継装置と、それぞれが、前記中継装置のそれぞれと通信を行う少なくとも一つの基地局と、それぞれが、少なくとも一つの前記無線通信端末のそれぞれと通信する少なくとも一つの子局装置と、前記中継装置のそれぞれからのダウンリンク信号を集約し、前記子局装置のそれぞれに対する集約ダウンリンク信号を生成して送信するとともに、前記子局装置のそれぞれからのアップリンク信号から、前記基地局のそれぞれに対する分配アップリンク信号を生成して送信する集約分配部と、を備える無線中継システムである。
【0019】
前記集約分配部よりも前記基地局側における伝送の遅延時間に基づいて、ダウンリンク信号間のタイミングを調整する第1調整部を備えてもよい。
【0020】
前記集約分配部よりも前記子局装置側における伝送の遅延時間に基づいて、ダウンリンク信号間のタイミングを調整する第2調整部を備えてもよい。
【0021】
前記集約分配部よりも前記子局装置側における伝送の遅延時間に基づいて、アップリンク信号間のタイミングを調整する第3調整部を備えてもよい。
【0022】
前記集約分配部よりも前記基地局側における伝送の遅延時間に基づいて、アップリンク信号間のタイミングを調整する第4調整部を備えてもよい。
【0023】
本発明の一態様は、無線通信システムにおいて時分割多重方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する場合に、前記基地局から送信されたダウンリンク信号の強度に基づいて、前記ダウンリンク信号に対応したパルス信号を生成するパルス信号生成ステップと、前記パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含むパルス情報を生成するパルス情報生成ステップと、前記ダウンリンク信号が通信トラフィックを含まない場合に、前記パルス情報に基づいて、前記パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定するフレーム先頭判定ステップと、前記時分割多重方式において予め定められている、無線フレームにおけるダウンリンク期間、アップリンク期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報と、判定された前記フレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報とに基づいて、ダウンリンク期間とアップリンク期間とを検出する検出ステップと、を備える検出方法である。
【0024】
本発明の一態様は、無線通信システムにおいて時分割多重方式による基地局と無線通信端末との間の通信を中継する場合に、前記基地局から送信されたダウンリンク信号の強度に基づいて、前記ダウンリンク信号に対応したパルス信号を生成するパルス信号生成ステップと、前記パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含むパルス情報を生成するパルス情報生成ステップと、前記ダウンリンク信号が通信トラフィックを含まない場合に、前記パルス情報に基づいて、前記パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定するフレーム先頭判定ステップと、前記時分割多重方式において予め定められている、無線フレームにおけるダウンリンク期間、アップリンク期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報と、判定された前記フレーム先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報とに基づいて、ダウンリンク期間とアップリンク期間とを検出する検出ステップと、をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る中継装置を備えた無線中継システムの構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る中継装置の構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る中継装置の構成の一部をより具体的に示す図である。
【
図4】
図4は、動作例1における受信DL信号を示す図である。
【
図5】
図5は、動作例1においてパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す図である。
【
図6】
図6は、動作例2における受信DL信号を示す図である。
【
図7】
図7は、動作例2においてパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す図である。
【
図8】
図8は、動作例3における受信DL信号を示す図である。
【
図9】
図9は、動作例3においてパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る中継装置の構成図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る中継装置の構成の一部をより具体的に示す図である。
【
図12】
図12は、動作例4における受信DL信号を示す図である。
【
図13】
図13は、動作例4においてパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す図である。
【
図14】
図14は、サブキャリア間隔が30kHzでCase Bの場合に、8個のSSBが送信される場合を示す図である。
【
図15】
図15は、動作例5における受信DL信号を示す図である。
【
図16】
図16は、動作例5においてパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す図である。
【
図17】
図17は、動作例6における受信DL信号を示す図である。
【
図18】
図18は、動作例6においてパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態3に係る無線中継システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略している。
【0028】
(実施形態1)
[通信システムの構成]
図1は、実施形態1に係る中継装置を備えた無線中継システムの構成図である。この無線中継システム1000は、たとえば第4世代や第5世代の移動通信システムである。中継装置100は、無線中継システム1000においてTDD方式による無線基地局200と無線通信端末400との間の通信を中継するものである。
【0029】
無線基地局200の通信可能範囲は、建屋の外壁などの障害物300により遮られており、電波不感地帯が発生しているとする。また、電波不感地帯に無線通信端末400があるとする。この場合、中継装置100は、屋外の無線基地局200からの無線通信信号であるDL信号を、屋外に設置された基地局側アンテナ1で受信する。中継装置100は、受信したDL信号に対して不要成分の除去や信号レベルの変換といった信号処理を行って中継DL信号を生成し、屋内などの電波不感地帯側に設置された端末側アンテナ2から送信する。電波不感地帯にある無線通信端末400は、端末側アンテナ2から送信された中継DL信号を受信することで、無線基地局200とのDL通信を行うことができる。
【0030】
また、中継装置100は、無線通信端末400からの無線通信信号であるUL信号を端末側アンテナ2で受信する。中継装置100は、受信したUL信号に対して不要成分の除去や信号レベルの変換といった信号処理を行って中継UL信号を生成し、基地局側アンテナ1から送信する。無線基地局200は、基地局側アンテナ1から送信された中継UL信号を受信することで、電波不感地帯にある無線通信端末400とのUL通信を行うことができる。
【0031】
なお、
図1の例では無線基地局200と中継装置100とは無線インターフェースで接続されているが、同軸RFケーブルなどの有線インターフェースで接続されてもよい。
【0032】
[無線中継装置の構成]
図2は、実施形態1に係る無線中継装置の構成図である。中継装置100は、基地局側アンテナ1と、端末側アンテナ2と、方向性結合器3と、基地局側切替部4と、DL処理部5と、UL処理部6と、端末側切替部7と、信号処理部8と、タイミング検出部9と、記憶部10と、を備えている。
【0033】
基地局側アンテナ1は、無線基地局200からの受信DL信号を受信する。方向性結合器3は、受信DL信号を分岐して、基地局側切替部4と信号処理部8とに出力する。基地局側切替部4は、タイミング検出部9からの基地局側タイミング信号によって、経路をDL処理部5側かUL処理部6側かに切り替える。端末側切替部7は、タイミング検出部9からの端末側タイミング信号によって、経路をDL処理部5側かUL処理部6側かに切り替える。
【0034】
DL処理部5は、基地局側切替部4および端末側切替部7によって経路がDL処理部5側に切り替わっている場合、基地局側切替部4から入力された受信DL信号に対して不要成分の除去や信号レベルの変換といった信号処理を行って、中継DL信号を生成する。DL処理部5は中継DL信号を端末側切替部7に出力する。DL処理部5は、たとえばアナログ/デジタル変換器(ADC)とデジタル/アナログ変換器(DAC)とDSP(Digital Signal Processor)とを含んで構成されている。
【0035】
端末側切替部7は、中継DL信号を端末側アンテナ2に出力する。端末側アンテナ2は、中継DL信号を無線通信端末400に出力する。
【0036】
一方、端末側アンテナ2は、無線通信端末400からの受信UL信号を受信する。UL処理部6は、基地局側切替部4および端末側切替部7によって経路がUL処理部6側に切り替わっている場合、端末側切替部7から入力された受信UL信号に対して不要成分の除去や信号レベルの変換といった信号処理を行って、中継UL信号を生成する。UL処理部6は中継UL信号を基地局側切替部4に出力する。UL処理部6は、たとえばアナログ/デジタル変換器とデジタル/アナログ変換器とDSPとを含んで構成されている。
【0037】
基地局側切替部4は、中継UL信号を基地局側アンテナ1に出力する。基地局側アンテナ1は、中継UL信号を無線基地局200に出力する。
【0038】
図3は、実施形態1に係る無線中継装置の構成の一部をより具体的に示す図である。以下では、信号処理部8、タイミング検出部9、記憶部10について主に説明する。
【0039】
信号処理部8は、パルス信号生成部8aと、電力検出部8bと、パルス情報生成部8cと、フレーム先頭判定部8dと、を備えている。
【0040】
パルス信号生成部8aは、信号処理部8に入力された受信DL信号の強度に基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する。具体的には、信号処理部8に入力された受信DL信号の強度が所定の閾値を超えていればレベル「1」であり、所定の閾値を超えていなければレベル「0」であるようなパルス成分を含むパルス信号を生成する。このようなパルス信号を生成する方法としては、たとえば特許文献1に記載されているように、検波器で信号を検波し、検波した信号を平滑器で平滑化し、平滑化した信号が閾値を超えている場合はレベル「1」を、超えない場合はレベル「0」を出力するように構成する方法がある。ただし、パルス信号を生成する方法は、この方法に限らず、以降の処理に好適なパルス信号を生成できる手法であれば、任意の手法を用いてよい。
【0041】
電力検出部8bは、信号処理部8に入力された受信DL信号の電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含むか、通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むかを判定する。電力検出部8bは、受信DL信号が通信トラフィックを含むか通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むかの情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。たとえば、電力検出部8bは、入力された受信DL信号の電力が所定の閾値電力を超えている場合に受信DL信号が通信トラフィックを含むと判定し、電力が所定の閾値電力を超えていない場合に受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むと判定する。この場合、入力された受信DL信号の電力の所定期間における平均値が所定の閾値電力を超えているか否かによって当該判定を行ってもよい。
【0042】
パルス情報生成部8cには、パルス信号生成部8aが生成したパルス信号が入力される。パルス情報生成部8cは、入力されたパルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻、パルス幅、および次のパルス成分までのパルス間隔の情報を含むパルス情報を生成する。パルス情報生成部8cは、生成したパルス情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0043】
フレーム先頭判定部8dは、無線フレームのフレーム先頭を判定する。具体的には、フレーム先頭判定部8dは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含む場合に、パルス信号のパルス列先頭を無線フレームのフレーム先頭と判定する。また、フレーム先頭判定部8dは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まない場合に、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、無線中継システム1000において予め定められた通信仕様とに基づいて、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。ここで、無線中継システム1000において予め定められた通信仕様とは、たとえば中継におけるサブキャリア間隔や制御信号送信パターンである。サブキャリア間隔と制御信号送信パターンとの関係は、たとえば、3GPP(登録商標) TS38.213 4.1節に定義されている。フレーム先頭判定部8dは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0044】
記憶部10は、TDD方式において予め定められている、無線フレームにおけるDL期間、UL期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶している。なお、各期間の割り当ては、無線フレームの先頭が基準とされている。
【0045】
タイミング検出部9は、フレーム先頭判定部8dから入力されたフレーム先頭情報と、記憶部10から読み出したフレーム構成情報とに基づいて、DL期間とUL期間とを検出する。さらに、タイミング検出部9は、検出の結果に基づいて、中継装置100におけるDL経路とUL経路とを切り替えるタイミングを示すタイミング信号を生成し、基地局側タイミング信号および端末側タイミング信号として基地局側切替部4および端末側切替部7のそれぞれに出力する。ここで、基地局側タイミング信号と端末側タイミング信号とは、DL処理部5やUL処理部6の処理にかかる遅延時間等を考慮して互いに異なる信号としてもよい。
【0046】
信号処理部8、タイミング検出部9、および記憶部10は、たとえば、ADC、DACと、マイクロコンピュータとを含んで構成されている。マイクロコンピュータは、プロセッサとメモリとを備える。信号処理部8およびタイミング検出部9の機能部は、たとえばプロセッサがメモリから読み出したプログラムを実行することによってハードウェアとソフトウェアとが協働して実現される。
【0047】
プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)やDSPなどであり、演算処理を行う。メモリは、たとえば半導体メモリである。半導体メモリは、たとえばプロセッサが演算処理を行う際の作業スペースを提供したりプログラムやデータを記憶したりする。半導体メモリは、たとえば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などである。
【0048】
[無線中継装置の動作例1]
つぎに、具体的な受信DLを用いて、中継装置100が実施形態に係る検出方法を実施する際の動作例について説明する。
図4は、動作例1における受信DL信号を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)の拡大図である。
図4に示す受信DL信号は、第5世代移動通信システムにおいて通信トラフィックがない期間の受信DL信号であって、制御信号として、PSS、SSS、BCHの組(以下、SSB)が4回送信される場合の受信DL信号である。なお、動作例1においては、サブキャリア間隔は15kHzであり、3GPP TS38.213 4.1節によれば送信パターンはCase Aと定義されている。
【0049】
図4の横軸は受信開始時刻からの経過時間であり、縦軸は受信強度である。また、
図4は、受信開始時刻と無線フレーム先頭時刻とが一致していない場合を例示している。無線フレーム先頭時刻は破線で示しており、時刻0msで表される受信開始時刻より1msだけ遅い。なお、サブキャリア間隔が15kHzであるので、1OFDMシンボルはおよそ0.071msである。したがって、1msは14OFDMシンボル分に相当する。
【0050】
パルス信号生成部8aは、
図4に示す受信DL信号が入力されると、その強度に基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する(検出方法およびプログラムにおけるパルス信号生成ステップの一例)。
図5は、動作例1においてパルス信号生成部8aが生成するパルス信号を示す図である。
図5の横軸は受信開始時刻からの経過時間であり、縦軸はパルス信号のレベルである。
図5に示すように、パルス信号生成部8aは、受信DL信号に含まれる4組のSSBに応じたレベル「1」の強度の4つのパルス成分を含むパルス信号を生成して出力する。
【0051】
電力検出部8bは、
図4に示す受信DL信号が入力されると、その電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むという情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0052】
パルス情報生成部8cは、パルス信号生成部8aから入力されたパルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻、パルス幅、および次のパルス成分までのパルス間隔の情報を含むパルス情報を生成する(検出方法およびプログラムにおけるパルス情報生成ステップの一例)。動作例1の場合、パルス情報生成部8cは、まず表1で示されるようなパルス情報を生成する。パルス情報は、各パルス成分の情報を、パルス成分の開始時刻の順に配列した第1データ配列として形成されている。
【0053】
表1において、パルス番号1のパルス成分は時刻1.143msから開始し、時刻1.429msで終了するので、開始時刻は1.143ms、パルス幅は0.285msである。パルス番号2のパルス成分は時刻1.572msから開始しているので、パルス番号1のパルス成分のパルス間隔0.143msとなる。同様の手順でパルス番号2~4に関する情報を生成する。パルス番号4のパルス間隔は、パルス番号4のパルス終了時刻からパルス番号1のパルス開始時刻とする。ただし、パルスの周期は20msとする。また、表1では、OFDMシンボル単位での開始時刻、パルス幅、パルス間隔をカッコ内に併記している。
【0054】
【0055】
パルス情報生成部8cは、第1データ配列を、最もパルス間隔が長いパルス成分がパルス列の最後となるようにパルス成分の情報の順序を巡回シフトして、第2データ配列として形成されたパルス情報を生成する。動作例1では、表1の第1データ配列における最後のパルス成分であるパルス番号4のパルス成分のパルス間隔が最大であるため、第2データ配列としてのパルス情報は表1で示されるパルス情報と同じである。その後、パルス情報生成部8cは、生成したパルス情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0056】
動作例1においては、フレーム先頭判定部8dは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まないと判定している。この場合、フレーム先頭判定部8dは、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、予め定められた通信仕様とに基づいて、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する(検出方法およびプログラムにおけるフレーム先頭判定ステップの一例)。フレーム先頭判定部8dは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0057】
動作例1の場合、通信仕様としては、SSB送信パターンがCase Aであるので、SSBは、OFDMシンボル単位で無線フレーム先頭から2シンボル目、8シンボル目、16シンボル目、22シンボル目・・・に送信される。したがって、フレーム先頭判定部8dは、パルス列の先頭のパルス成分(パルス番号1のパルス成分)から2シンボル前、すなわち、0.143ms前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。すなわち、動作例1の場合、所定時間は中継される無線通信信号のサブキャリア間隔に応じて設定されており、具体的には2OFDMシンボル分に設定されている。
図4、5、表1によれば、パルス番号1のパルス成分から0.143ms前は、破線に示す無線フレーム先頭時刻であるから、フレーム先頭判定部8dの判定が実際の状況と合致している正しい判定であることが分かる。ここで、0.143msは所定時間の一例であり、サブキャリア間隔に応じて設定される値の一例である。
【0058】
タイミング検出部9は、フレーム先頭判定部8dから入力されたフレーム先頭情報と、記憶部10から読み出したフレーム構成情報とに基づいて、DL期間とUL期間とを検出する(検出方法およびプログラムにおける検出ステップの一例)。さらに、タイミング検出部9は、検出結果に基づいて、中継装置100におけるDL経路とUL経路とを切り替えるタイミングを示すタイミング信号を生成し、基地局側タイミング信号および端末側タイミング信号として基地局側切替部4および端末側切替部7のそれぞれに出力する。
【0059】
以上の動作例1の説明から明らかなように、中継装置100によれば、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できる。
【0060】
なお、サブキャリア間隔と送信パターンとの組み合わせは上記に限られない。たとえば、サブキャリア間隔が120kHz~960kHzの場合の送信パターンおよび所定時間は以下のように例示できる。
サブキャリア間隔[kHz] 送信パターン 所定時間[μs]
120 Case D 35.7
240 Case E 35.7
480 Case F 4.46
960 Case G 2.23
すなわち、所定時間は、サブキャリア間隔が120kHzの場合は4OFDMシンボル分である。また、サブキャリア間隔が240kHzの場合は8OFDMシンボル分である。さらにまた、サブキャリア間隔が480kHzの場合は2OFDMシンボル分である。さらにまた、サブキャリア間隔が960kHzの場合は2OFDMシンボル分である。
【0061】
[無線中継装置の動作例2]
図6は、動作例2における受信DL信号を示す図である。
図6の横軸は受信開始時刻からの経過時間であり、縦軸は受信強度である。
図6に示す受信DL信号は、動作例1と同じ信号であるが、受信開始時刻が異なる。無線フレーム先頭時刻は破線で示しており、時刻0msで表される受信開始時刻より18.928msだけ遅い。なお、サブキャリア間隔が15kHzであるので、18.928msは265OFDMシンボル分に相当する。
【0062】
パルス信号生成部8aは、
図6に示す受信DL信号が入力されると、そのレベルに基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する。
図7は、動作例2においてパルス信号生成部8aが生成するパルス信号を示す図である。
図7の横軸は受信開始時刻からの経過時間であり、縦軸はパルス信号のレベルである。
【0063】
電力検出部8bは、
図6に示す受信DL信号が入力されると、その電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むという情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0064】
パルス情報生成部8cは、動作例2の場合、まず表2で示されるようなパルス情報を生成する。パルス情報は、各パルス成分の情報を、パルス成分の開始時刻の順に配列した第1データ配列として形成されている。ただし、パルスの周期は20msとする。また、表2でも、OFDMシンボル単位での開始時刻、パルス幅、パルス間隔をカッコ内に併記している。
【0065】
【0066】
パルス情報生成部8cは、第1データ配列を、最もパルス間隔が長いパルス成分がパルス列の最後となるようにパルス成分の情報の順序を巡回シフトして、表3に示すような第2データ配列として形成されたパルス情報を生成する。動作例2では、表2の第1データ配列におけるパルス番号2のパルス成分のパルス間隔が最大であるため、表3で示される第2データ配列としてのパルス情報では、表2と比較して、パルス番号2のパルス成分がパルス番号4のパルス成分となるように巡回シフトされている。パルス情報生成部8cは、生成したパルス情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0067】
【0068】
動作例2においても、フレーム先頭判定部8dは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まないと判定している。この場合、フレーム先頭判定部8dは、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、予め定められた通信仕様とに基づいて、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。フレーム先頭判定部8dは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0069】
動作例2の場合も、通信仕様としては、SSB送信パターンがCase Aであるので、フレーム先頭判定部8dは、パルス列の先頭のパルス成分(パルス番号1のパルス成分)から2シンボル前、すなわち、0.143ms前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。
図6、7、表3によれば、パルス番号1のパルス成分から0.143ms前は、破線に示す無線フレーム先頭時刻であるから、フレーム先頭判定部8dの判定が実際の状況と合致している正しい判定であることが分かる。
【0070】
タイミング検出部9の動作は動作例1の場合と同じなので説明を省略する。
【0071】
中継装置100は、以上の動作例2の場合にも、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できる。
【0072】
[無線中継装置の動作例3]
図8は、動作例3における受信DL信号を示す図である。
図8(b)は、
図8(a)の拡大図である。
図8に示す受信DL信号は、第5世代移動通信システムにおいて通信トラフィックがない期間の受信DL信号であって、制御信号としてSSBが4回送信される場合の受信DL信号である。ただし、サブキャリア間隔は30kHzである。このように、第5世代移動通信システムでは、第4世代移動通信システムとは異なりサブキャリア間隔が15kHz以外の場合がある。サブキャリア間隔が30kHzの場合、SSB送信パターンにはCase BとCase Cの2種類があるが、動作例3はCase Cの場合である。また、動作例3では、受信開始時刻と無線フレーム先頭時刻とが一致しているとする。
【0073】
パルス信号生成部8aは、
図8に示す受信DL信号が入力されると、その強度に基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する。
図9は、動作例3においてパルス信号生成部8aが生成するパルス信号を示す図である。
図9(b)は、
図9(a)の拡大図である。
【0074】
電力検出部8bは、
図8に示す受信DL信号が入力されると、その電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むという情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0075】
パルス情報生成部8cは、動作例3の場合、まず表4で示されるような第1データ配列として形成されたパルス情報を生成する。ただし、パルスの周期は20msとする。また、表4でも、OFDMシンボル単位での開始時刻、パルス幅、パルス間隔をカッコ内に併記している。サブキャリア間隔が30kHzであるので、1OFDMシンボルはおよそ0.036msである。
【0076】
【0077】
動作例3では、最後のパルス成分であるパルス番号4のパルス成分のパルス間隔が最大である。動作例3では、第2データ配列は第1データ配列と同じである。パルス情報生成部8cは、第2データ配列として形成されたパルス情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0078】
動作例3においても、フレーム先頭判定部8dは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まないと判定している。この場合、フレーム先頭判定部8dは、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、予め定められた通信仕様とに基づいて、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。フレーム先頭判定部8dは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0079】
動作例3の場合、通信仕様としては、サブキャリア間隔が30kHzでSSB送信パターンはCase Cであるので、SSBは、OFDMシンボル単位で無線フレーム先頭から2シンボル目、8シンボル目、16シンボル目、22シンボル目・・・に送信される。したがって、フレーム先頭判定部8dは、パルス列の先頭のパルス成分(パルス番号1のパルス成分)から2シンボル前、すなわち、0.072ms前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。すなわち、動作例3の場合、所定時間はサブキャリア間隔に応じて設定されており、具体的には2OFDMシンボル分に設定されている。
図8、9、表4によれば、パルス番号1のパルス成分から0.072ms前は、受信開始時刻と一致している無線フレーム先頭時刻であるから、フレーム先頭判定部8dの判定が実際の状況と合致している正しい判定であることが分かる。
【0080】
タイミング検出部9の動作は動作例1の場合と同じなので説明を省略する。
【0081】
中継装置100は、以上の動作例3の場合にも、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できる。
【0082】
(実施形態1の変形例)
ところで、上記動作例1、2では、サブキャリア間隔が15kHzでSSB送信パターンがCase Aという通信仕様が予め定まっている。このため、動作例1、2では、フレーム先頭判定部8dは、パルス列の先頭のパルス成分から2シンボル前である0.143ms前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定している。一方、動作例3では、サブキャリア間隔が30kHzでSSB送信パターンがCase Cという通信仕様が予め定まっている。このため、動作例3では、フレーム先頭判定部8dは、パルス列の先頭のパルス成分から2シンボル前である0.072ms前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定している。
【0083】
これに対して、実施形態1に係る中継装置100の変形例として、フレーム先頭判定部8dが、サブキャリア間隔を判定する機能を有していれば、無線中継システム1000が、サブキャリア間隔が切り替わるようなシステムであっても、そのサブキャリア間隔に応じて無線フレーム先頭時刻を決定することができる。
【0084】
具体的には、SSBを構成するOFDMシンボル数はサブキャリア間隔が異なっても4シンボルで固定である(表1~表4の「パルス幅」参照)。そこで、フレーム先頭判定部8dにおいて、フレーム先頭時刻を判定する際の所定時間は、パルス信号に含まれるパルス成分のうち時間的に先頭のパルス成分のパルス幅に応じて設定されてもよい。たとえば、フレーム先頭判定部8dは、パルス信号に含まれるパルス成分のうち時間的に先頭のパルス成分であるパルス番号1のパルス成分のパルス幅がサブキャリア間隔15kHzの4シンボル分相当であるときはサブキャリア間隔が15kHzと判定して所定時間を2シンボル分に設定され、サブキャリア間隔30kHzの4シンボル分相当であるときはサブキャリア間隔が30kHzと判定して所定時間が2シンボル分に設定されるように構成されてもよい。フレーム先頭判定部8dがこのように構成されていれば、サブキャリア間隔に応じて無線フレーム先頭時刻を決定することができる。
【0085】
また、たとえば、受信DL信号に雑音が含まれるなどの原因によって、パルス信号に含まれるパルス成分のうち時間的に先頭のパルス成分のパルス幅が、想定されるシンボル数分からずれる場合がある。この場合、たとえばパルス幅が、想定されるシンボル数分から-0.5シンボル分~0.5シンボル分程度にずれている場合であれば、そのパルス幅を想定されるシンボル数分に丸めて、これを所定時間に設定してもよい。すなわち、たとえば先頭のパルス成分のパルス幅が250μsを超え321μsを超えない場合、所定時間は、サブキャリア間隔が15kHzの場合の2OFDMシンボル分と設定されてもよい。またたとえば、先頭のパルス成分のパルス幅が125μsを超え161μsを超えない場合、所定時間は、サブキャリア間隔が30kHzの場合の2OFDMシンボル分と設定されてもよい。さらにたとえば、先頭のパルス成分のパルス幅が15.6μsを超え75.9μsを超えない場合、所定時間は、サブキャリア間隔が120kHzの場合の4OFDMシンボル分と設定されてもよい。またさらにたとえば、先頭のパルス成分のパルス幅が7.81μsを超え10.0μsを超えない場合、所定時間は、サブキャリア間隔が480kHzの場合の2OFDMシンボル分と設定されてもよい。またさらにたとえば、先頭のパルス成分のパルス幅が3.91μsを超え5.02μsを超えない場合、前記所定時間は、サブキャリア間隔が960kHzの場合の2OFDMシンボル分と設定されてもよい。
【0086】
また、中継装置100のさらなる変形例として、記憶部10が、サブキャリア間隔などの通信仕様情報を予め記憶していてもよい。この場合、フレーム先頭判定部8dが、記憶部10から通信仕様情報を読み出してサブキャリア間隔を取得し、取得したサブキャリア間隔に応じて無線フレーム先頭時刻を決定するように構成されていてもよい。
【0087】
以上の2つの変形例によれば、サブキャリア間隔の切り替わりに対応可能な無線中継装置を、比較的少ない量の演算処理の追加で実現することができる。
【0088】
(実施形態2)
つぎに、実施形態2に係る無線中継装置について説明する。実施形態2に係る無線中継装置は、
図1に示す無線中継システム1000において中継装置100に置き替えて使用することができる。
【0089】
図10は、実施形態2に係る無線中継装置の構成図である。実施形態2に係る中継装置100Aは、中継装置100の構成における信号処理部8、記憶部10を、信号処理部8A、記憶部10Aに置き替えた構成を有する。
【0090】
図11は、中継装置100Aの構成の一部をより具体的に示す図である。記憶部10Aは、TDD方式において予め定められている、無線フレームにおけるDL期間、UL期間、およびガード期間の割り当ての情報を示すフレーム構成情報を記憶している。また、記憶部10Aは、動作バンド情報を記憶している。動作バンド情報とは、無線基地局200の動作バンドに関する情報である。3GPP TS38.104 Table5.4.3.3によれば、SSB送信パターンの候補はこの動作バンドに応じて定まっている。
【0091】
信号処理部8Aは、中継装置100の信号処理部8の構成において、フレーム先頭判定部8dをフレーム先頭判定部8Adに置き替えた構成を有する。フレーム先頭判定部8Adは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まない場合に、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、記憶部10Aから読み出した動作バンド情報とに基づいて、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。この場合、所定時間は、たとえばサブキャリア間隔と動作バンド情報とに応じて設定される。
【0092】
[無線中継装置の動作例4]
つぎに、具体的な受信DLを用いて、中継装置100Aの動作例について説明する。
図12は、動作例4における受信DL信号を示す図である。
図12(b)は、
図12(a)の拡大図である。
図12に示す受信DL信号は、第5世代移動通信システムにおいて通信トラフィックがない期間の受信DL信号であって、制御信号としてSSBが1回送信される場合の受信DL信号である。なお、動作例4においては、サブキャリア間隔は30kHzであり、送信パターンはCase Bである。また、動作例4では、受信開始時刻と無線フレーム先頭時刻とが一致しているとする。
【0093】
パルス信号生成部8aは、
図12に示す受信DL信号が入力されると、そのレベルに基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する。
図13は、動作例4においてパルス信号生成部8aが生成するパルス信号を示す図である。
図13(b)は、
図13(a)の拡大図である。
【0094】
電力検出部8bは、
図12に示す受信DL信号が入力されると、その電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むという情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0095】
パルス情報生成部8cは、動作例4の場合、まず表5で示されるような第1データ配列として形成されたパルス情報を生成する。ただし、パルスの周期は20msとする。また、表5でも、OFDMシンボル単位での開始時刻、パルス幅、パルス間隔をカッコ内に併記している。サブキャリア間隔が30kHzであるので、1OFDMシンボルはおよそ0.036msである。
【0096】
【0097】
動作例4では、第2データ配列は第1データ配列と同じである。パルス情報生成部8cは、第2データ配列として形成されたパルス情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0098】
動作例4においても、フレーム先頭判定部8dは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まないと判定している。この場合、フレーム先頭判定部8dは、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、判定したサブキャリア間隔と、記憶部10Aから読み出した動作バンド情報とに基づいて、SSB送信パターンを判定するとともに、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。フレーム先頭判定部8dは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0099】
上述したように、3GPP TS38.104 Table5.4.3.3によれば、SSB送信パターンの候補は動作バンドに応じて定まっている。ここで、動作例4の場合は動作バンドがn5であるとする。この場合、フレーム先頭判定部8dは、動作バンド情報と、サブキャリア間隔が30kHzであることと、から、SSB送信パターンはCase Bであると判定する。この場合、SSBは、OFDMシンボル単位で無線フレーム先頭から4シンボル目、8シンボル目、16シンボル目、20シンボル目・・・に送信される。したがって、フレーム先頭判定部8dは、パルス列の先頭のパルス成分(パルス番号1のパルス成分)から4シンボル前、すなわち、0.143ms前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。
図11、12、表5によれば、パルス番号1のパルス成分から0.143ms前は、受信開始時刻と一致している無線フレーム先頭時刻であるから、フレーム先頭判定部8dの判定が実際の状況と合致している正しい判定であることが分かる。
【0100】
タイミング検出部9の動作は動作例1の場合と同じなので説明を省略する。
【0101】
以上の動作例4の説明から明らかなように、中継装置100Aによれば、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できる。
【0102】
なお、SSB送信パターンがCase Bであって、SSBが2回以上送信される場合、1番目のSSBと2番目のSSBとは時間的に連続して送信されるよう規定されている。たとえば、
図14は、サブキャリア間隔が30kHzでCase Bの場合に、SSBの送信回数が8回である場合を示すである。
図14(a)は受信DL信号を示し、
図14(b)はパルス信号生成部が生成するパルス信号を示す。この場合、1番目と2番目のパルス成分、3番目と4番目のパルス成分、5番目と6番目のパルス成分、7番目と8番目のパルス成分が、それぞれ時間的に連続して送信される。パルス情報生成部8cが生成するパルス情報におけるパルス番号1のパルス成分のパルス幅は約0.286msである。
図14(b)から分かるように、パルス信号は、サブキャリア間隔が15kHzの場合に4個のSSBが送信される場合と同様の波形となる。
【0103】
この場合、フレーム先頭判定部8dはサブキャリア間隔が15kHzであると判定し、サブキャリア間隔が15kHzの場合の2OFDMシンボル前すなわち0.143ms前をフレーム先頭時刻と判定してもよい。上述したように、15kHz間隔の場合の2OFDMシンボルは30kHz間隔の場合の4OFDMシンボルに相当する(すなわち、いずれの場合も0.143ms)。このように、フレーム先頭判定部8dがサブキャリア間隔の判定を仮に誤ったとしても、フレーム先頭時刻の判定を適切に行うことができる。
【0104】
(動作例5)
つぎに、通信トラフィックがない期間の受信DL信号の別の例として、制御信号としてSSBとともにCORESET0が送信される場合についての中継装置100Aの動作例5を説明する。
【0105】
図15は、動作例5における受信DL信号を示す図である。
図15(b)は、
図15(a)の拡大図である。動作例5では、SSBのサブキャリア間隔は30kHzで送信パターンはCaseB、SSBの送信回数は4回とする。また、CORESET0のサブキャリア間隔は30kHzとし、CORESET0の送信パターンは3GPP TS38.213のTable13-4のIndex13およびTable13-11のIndex2に従う場合を示している。この場合、CORESET0はSSBと同じ回数である4回送信される。また、
図15の場合、
図14の場合と同様に、SSBの1番目と2番目、3番目と4番目は、それぞれ時間的に連続して送信されている。
【0106】
パルス信号生成部8aは、
図15に示す受信DL信号が入力されると、そのレベルに基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する。
図16は、動作例5においてパルス信号生成部8aが生成するパルス信号を示す図である。
図16(b)は、
図16(a)の拡大図である。
【0107】
電力検出部8bは、
図15に示す受信DL信号が入力されると、その電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むという情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0108】
パルス情報生成部8cは、動作例5の場合、まず表6で示されるような第1データ配列として形成されたパルス情報を生成する。ただし、パルスの周期は20msとする。また、表6でも、OFDMシンボル単位での開始時刻、パルス幅、パルス間隔をカッコ内に併記している。動作例5では、最後のパルス成分であるパルス番号6のパルス成分のパルス間隔が最大であるので、第2データ配列は第1データ配列と同じである。ただし、動作例5では、制御信号としてCORESET0が送信されるので、パルス情報生成部8cは、パルス番号1のパルス成分の開始時刻が0msとなるように各パルス成分の時間シフトを行い、表7に示すような第3データ配列として形成されたパルス情報を生成する。パルス情報生成部8cは、第3データ配列として形成されたパルス情報をフレーム先頭判定部8Adに出力する。
【0109】
【0110】
動作例5においても、フレーム先頭判定部8Adは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まないと判定している。この場合、フレーム先頭判定部8Adは、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、判定したサブキャリア間隔と、記憶部10Aから読み出した動作バンド情報とに基づいて、SSB送信パターンを判定するとともに、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。これは、3GPPで規定されるSSBとCORESET0の取り得る送信パターンにおいて、パルス情報生成部8cが出力するパルス情報と動作バンド情報との組が決まると、パルス番号1のパルス成分の開始時刻と無線フレーム先頭時刻との時間差が一意に決まるためである。この場合、所定時間は、パルス情報と動作バンド情報とに応じて設定される。
【0111】
パルス情報と動作バンド情報と上述した時間差の情報との組の情報である組情報は、たとえば記憶部10Aにテーブルデータとして記憶されており、フレーム先頭判定部8Adが記憶部10Aから組情報を読み出して、上述した時間差の特定に用いてもよい。また、組情報は、ツリー状のデータ構造を有していてもよい。このようなデータ構造は、上述したテーブルデータから、決定木分析などの手法を用いて作成することができる。この場合、フレーム先頭判定部8Adは、記憶部10Aから組情報を読み出し、パルス情報にしたがって場合分けステップを順次行って、上述した時間差の特定に用いてもよい。
【0112】
ツリー状のデータ構造を有する組情報を用いて場合分けステップを行う場合について例示する。まず、フレーム先頭判定部8Adは、動作バンド情報から、SSBの送信パターンがCaseBの場合であると判定し、次の枝に分岐する。つづいて、フレーム先頭判定部8Adは、パルス情報から、パルス番号2のパルス成分の開始時刻が8OFDMシンボルより大きい場合であると判定し、次の枝に分岐する。つづいて、フレーム先頭判定部8Adは、パルス情報から、パルス番号1のパルス幅が9OFDMシンボル以下の場合であると判定し、次の枝に分岐する。つづいて、フレーム先頭判定部8Adは、パルス情報から、パルス数が10以下の場合であると判定する。フレーム先頭判定部8dは、以上の判定の結果、パルス番号1のパルス成分の開始時刻と無線フレーム先頭時刻との時刻差が、サブキャリア間隔が30kHzの場合の4OFDMシンボル分であると判定することができる。なお、この場合分けステップは例示であって、これに限定されるものではない。
【0113】
また、フレーム先頭判定部8Adは、フレーム先頭時刻を判定する前に、表8に示すようなパルス情報に含まれる各数値を、サブキャリア間隔が30kHzの場合の1OFDMシンボル単位に丸める処理を行ってもよい。そして、組情報に含まれる各数値も、サブキャリア間隔が30kHzの場合の1OFDMシンボル単位に丸められていてもよい。このように、数値が丸められた組情報と数値を丸める処理を行ったパルス情報とから時間差の特定を行うことで、受信DL信号に雑音が含まれるなどの原因によって、パルス情報に含まれる数値に、想定される数値からのずれがあったとしても、時間差の特定処理における演算処理等の負荷が軽減される。なお、数値を丸める際に使用するサブキャリア間隔の値は、30kHzに限らず、動作バンドにおいて使用されるサブキャリア間隔のうち最も高周波数の値を用いてもよい。ただし、このように数値の丸めは、必ずしも行わなくてもよい。
【0114】
その後、フレーム先頭判定部8Adは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0115】
タイミング検出部9の動作は動作例1の場合と同じなので説明を省略する。
【0116】
中継装置100Aは、以上の動作例5の場合にも、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できる。
【0117】
(動作例6)
図17は、動作例6における受信DL信号を示す図である。動作例6では、SSBのサブキャリア間隔は30kHzで送信パターンはCase C、SSBの送信回数は8回とする。また、CORESET0のサブキャリア間隔は15kHzとし、CORESET0の送信パターンは3GPP TS38.213のTable13-4のIndex10およびTable13-11のIndex9に従う場合を示している。この場合、CORESET0はSSBと同じ回数である8回送信される。
【0118】
パルス信号生成部8aは、
図17に示す受信DL信号が入力されると、そのレベルに基づいて、受信DL信号に対応したパルス信号を生成する。
図18は、動作例6においてパルス信号生成部8aが生成するパルス信号を示す図である。
【0119】
電力検出部8bは、
図17に示す受信DL信号が入力されると、その電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まずに制御信号だけを含むという情報をフレーム先頭判定部8dに出力する。
【0120】
パルス情報生成部8cは、動作例6の場合、第1データ配列として形成されたパルス情報を生成する。ただし、パルスの周期は20msとする。
図17、18から分かるように動作例6では、第1データ配列における8番目のパルス成分のパルス間隔が最大である。また、動作例6では、制御信号としてCORESET0が送信される。そこで、表8で示される第3データ配列としてのパルス情報は、第1データ配列と比較して、パルス番号8のパルス成分がパルス番号16のパルス成分となるように巡回シフトされ、かつパルス番号1のパルス成分の開始時刻が0msとなるように各パルス成分の時間シフトがされている。パルス情報生成部8cは、生成したパルス情報をフレーム先頭判定部8Adに出力する。
【0121】
【0122】
動作例6においても、フレーム先頭判定部8Adは、電力検出部8bから入力された情報に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含まないと判定している。この場合、フレーム先頭判定部8Adは、パルス情報生成部8cから入力されたパルス情報と、判定したサブキャリア間隔と、記憶部10Aから読み出した動作バンド情報とに基づいて、SSB送信パターンを判定するとともに、パルス信号のパルス列先頭から所定時間前を無線フレームのフレーム先頭時刻と判定する。この場合、フレーム先頭判定部8Adはテーブルデータやツリー状のデータ構造を参照してフレーム先頭時刻を判定することができる。
【0123】
その後、フレーム先頭判定部8Adは、判定されたフレーム先頭の先頭時刻の情報を含むフレーム先頭情報をタイミング検出部9に出力する。
【0124】
タイミング検出部9の動作は動作例1の場合と同じなので説明を省略する。
【0125】
中継装置100Aは、以上の動作例6の場合にも、通信トラフィックがない場合でもDL期間とUL期間を精度よく検出できる。
【0126】
(動作例7)
動作例7では、SSBのサブキャリア間隔は120kHzで送信パターンはCase D(FR2-1)、SSBの送信回数は3回とする。また、CORESET0のサブキャリア間隔は60kHzとし、CORESET0の送信パターンは3GPP TS38.213のTable13-7のIndex10(CORESET0のシンボル数1)およびTable13-12のIndex2(開始2.5ms、間隔0.5ms)に従うとする。この場合、CORESET0はSSBと同じ回数である3回送信される。
【0127】
パルス情報生成部8cは、表9のような第3データ配列として形成されたパルス情報を生成する。なお、数値の単位は240kHzのOFDMシンボルである。
【0128】
【0129】
フレーム先頭判定部8Adは記憶部10Aから組情報を読み出して、上述した時間差の特定に用いてもよい。
【0130】
ツリー状のデータ構造を有する組情報を用いて場合分けステップを行う場合について例示する。まず、フレーム先頭判定部8Adは、2番目のパルスの開始時刻が16以下かどうか判定する。表9の場合、16以下であるので、次に2番目のパルスの開始時刻が26以下かどうか判定する。表9の場合、26以下であるので、次に70番目のパルスの開始時刻が3636以下かどうか判定する。表9の場合、パルス数が5であるため、70番目のパルスの開始時刻はゼロとして扱う。フレーム先頭判定部8Adは、以上の判定の結果、パルス番号1のパルス成分の開始時刻と無線フレーム先頭時刻との時刻差が8OFDMシンボル分であると判定することができる。
【0131】
この動作例7では、フレーム先頭判定部8Adは、パルス情報が、パルス信号に含まれる各パルス成分の開始時刻の情報を含んでいれば、所定時間を判定することができる。
【0132】
(実施形態3)
[無線中継システムの構成]
図19は、実施形態3に係る無線中継システムの構成図である。無線中継システム1000Bは、親局装置としての複数の中継装置100B-1~100B-Mと、複数の基地局200-1~200-Mと、集約分配局装置500と、複数の子局装置600-1~600-Nと、を備えている。ここで、M、Nはそれぞれ2以上の整数である。ただし、中継装置、基地局、および子局装置は、複数に限られず、少なくとも一つであればよい。
【0133】
基地局200-1~200-Mと中継装置100B-1~100B-Mと集約分配局装置500とは、基地局側伝送路700-1~700-Mで有線接続されている。基地局側伝送路700-1~700-Mは通信ケーブルを備えている。ただし、基地局側伝送路700-1~700-Mは有線接続に限らず、無線接続でもよい。
【0134】
集約分配局装置500と子局装置600-1~600-Nとは、子局側伝送路800-1~800-Nで有線接続されている。子局側伝送路800-1~800-Nは通信ケーブルを備えている。また、子局装置600-1~600-Nは、それぞれ電波不感地帯900-1~900-Nのそれぞれに設置されている。
【0135】
基地局200-1~200-Mは、互いに異なる通信業者の基地局である。電波不感地帯900-1~900-Nのそれぞれに存在する無線通信端末400-1~400-Nは、それぞれ、子局装置600-1~600-Nのそれぞれを経由して、基地局200-1~200-Mのうち対応する通信事業者の基地局と通信を行う。中継装置100B-1~100B-Mは、無線中継システム1000BにおいてTDD方式による基地局200-1~200-Mと無線通信端末400-1~400-Nとの間の通信を中継するものである。
【0136】
無線中継システム1000Bの機能について概説する。中継装置(親局装置)は、各基地局から入力された受信DL信号から伝送DL信号を生成して集約分配局装置に送信する。集約分配局装置は、各中継装置から入力された伝送DL信号を集約し、各子局装置に対する集約信号である集約DL信号を生成して各子局装置に送信する。子局装置は、集約DL信号から中継DL信号を生成して端末側アンテナから無線通信端末に送信する。また、子局装置は無線通信端末から受信した受信UL信号から伝送UL信号を生成して集約分配局装置へ送信する。集約分配局装置は、各子局装置から入力された伝送UL信号から、各基地局に対する分配信号である分配UL信号を生成して各中継装置へ送信する。各中継装置は、分配UL信号から伝送UL信号を生成して各基地局へ送信する。受信DL信号、伝送DL信号、集約DL信号、中継DL信号、受信UL信号、伝送UL信号、分配UL信号、および伝送UL信号は通信信号の一例である。
【0137】
[中継装置の構成および機能]
図20は、
図19における中継装置の構成図である。
図20では、中継装置100B-1の構成を示している。
【0138】
中継装置100B-1は、
図2に示す中継装置100の構成において、端末側切替部7を削除し、伝送インターフェース部11を追加した構成を有する。
【0139】
中継装置100B-1の機能は中継装置100の機能と同様である。ただし、中継装置100B-1では、基地局200-1からDL信号として第1受信DL信号が入力される。
【0140】
中継装置100B-1では、方向性結合器3の機能によって第1受信DL信号が信号処理部8に入力されると、中継装置100と同様に信号処理部8、タイミング検出部9、および記憶部10の機能によって、中継装置100と同様の検出方法が実施され、第1基地局側タイミング信号が生成される。タイミング検出部9は、第1基地局側タイミング信号を基地局側切替部4および伝送インターフェース部11に出力する。基地局側切替部4は、第1基地局側タイミング信号によって、経路をDL処理部5側かUL処理部6側かに切り替える。経路がDL処理部5側に切り替わっている場合、DL処理部5は、入力された第1受信DL信号に対して不要成分の除去や信号レベルの変換といった信号処理を行って、第1伝送DL信号を生成し、伝送インターフェース部11に出力する。
【0141】
伝送インターフェース部11は、第1基地局側タイミング信号と第1伝送DL信号を多重して、集約分配局装置500側の基地局側伝送路700-1に出力する。また、伝送インターフェース部11は、集約分配局装置500側の基地局側伝送路700-1で送信されてきた第1分配UL信号を抽出し、UL処理部6に出力する。UL処理部6は、第1分配UL信号に対して信号レベルの変換といった信号処理を行って第1中継UL信号を生成し、基地局側切替部4に出力する。基地局側切替部4の経路がUL処理部6側に切り替わっている場合、第1中継UL信号は基地局側切替部4および方向性結合器3を経由して基地局200-1側の基地局側伝送路700-1に出力され、基地局200-1に伝送される。
【0142】
中継装置100B-1~100B-Mのうち中継装置100B-1以外の中継装置も中継装置100B-1と同様の構成および機能を備えている。ただし、iを2以上M以下の整数とすると、中継装置100B-iには、基地局200-iから第i受信DL信号が入力され、タイミング検出部9は第i基地局側タイミング信号を生成する。DL処理部5は第i受信DL信号に対して信号処理を行って第i伝送DL信号を生成し、伝送インターフェース部11に出力する。伝送インターフェース部11は、第i基地局側タイミング信号と第i伝送DL信号を多重して、集約分配局装置500側の基地局側伝送路700-iに出力する。また、伝送インターフェース部11は、集約分配局装置500側の基地局側伝送路700-iで送信されてきた第i分配UL信号を抽出し、UL処理部6に出力する。UL処理部6は、第i分配UL信号に対して信号処理を行って第i中継UL信号を生成する。基地局側切替部4の経路がUL処理部6側に切り替わっている場合、第i中継UL信号は基地局200-i側の基地局側伝送路700-iに出力され、基地局200-iに伝送される。
【0143】
[子局装置の構成および機能]
図21は、
図19における子局装置の構成図である。
図21では、子局装置600-1の構成を示している。
【0144】
子局装置600-1は、伝送インターフェース部21と、DL処理部22と、UL処理部23と、端末側切替部24と、端末側アンテナ25と、を備えている。
【0145】
伝送インターフェース部21は、集約分配局装置500で生成されて子局側伝送路800-1を伝送されてきた第1集約DL信号および第1端末側タイミング信号を抽出する。また、伝送インターフェース部21は、子局側伝送路800-1に第1伝送UL信号を出力する。
【0146】
DL処理部22は、伝送インターフェース部21から入力された第1集約DL信号に対して信号レベルの変換といった信号処理を行って第1中継DL信号を生成する。
【0147】
端末側切替部24は、伝送インターフェース部21から入力された第1端末側タイミング信号によって、経路をDL処理部22側かUL処理部23かに切り替える。端末側切替部24の経路がDL処理部22側に切り替わっている場合、DL処理部22は第1中継DL信号を端末側切替部24に出力する。端末側切替部24は第1中継DL信号を端末側アンテナ25に出力する。端末側アンテナ25は第1中継DL信号を無線通信端末400-1に出力する。
【0148】
また、端末側アンテナ25は、無線通信端末400-1からの第1受信UL信号を受信する。端末側切替部24の経路がUL処理部23側に切り替わっている場合、UL処理部23は、第1受信UL信号に対して不要成分の除去や信号レベルの変換といった信号処理を行って第1伝送UL信号を生成する。UL処理部23は第1伝送UL信号を伝送インターフェース部21に出力する。
【0149】
子局装置600-1~600-Nのうち子局装置600-1以外の子局装置も子局装置600-1と同様の構成および機能を備えている。ただし、jを2以上N以下の整数とすると、子局装置600-jには、集約分配局装置500から第j集約DL信号および第j端末側タイミング信号が入力される。伝送インターフェース部21は、子局側伝送路800-jに第j伝送UL信号を出力する。DL処理部22は、第j集約DL信号に対して信号処理を行って第j中継DL信号を生成する。端末側切替部24の経路がDL処理部22側に切り替わっている場合、DL処理部22は第j中継DL信号を端末側切替部24に出力する。端末側切替部24は第j中継DL信号を端末側アンテナ25に出力する。端末側アンテナ25は第j中継DL信号を無線通信端末400-jに出力する。端末側アンテナ25は、無線通信端末400-jからの第j受信UL信号を受信する。端末側切替部24の経路がUL処理部23側に切り替わっている場合、UL処理部23は、第j受信UL信号に対して信号処理を行って第j伝送UL信号を生成する。UL処理部23は第j伝送UL信号を伝送インターフェース部21に出力する。
【0150】
[集約分配局装置の構成および機能]
図22は、
図19における集約分配局装置の構成図である。集約分配局装置500は、伝送インターフェース部31、36と、タイミング調整情報記憶部32と、タイミング調整部33と、DL処理部34と、UL処理部35と、を備えている。集約分配局装置は集約分配部の一例である。
【0151】
伝送インターフェース部31は、中継装置100B-1~100B-Mで生成されて基地局側伝送路700-1~700-Mを伝送されてきた第1~第M基地局側タイミング信号および第1~第M伝送DL信号を抽出して出力する。また、伝送インターフェース部31は、UL処理部35が生成した第1~第M分配UL信号のそれぞれを基地局側伝送路700-1~700-Mのそれぞれに出力する。基地局側伝送路700-1~700-Mのそれぞれは、第1~第M分配UL信号のそれぞれを中継装置100B-1~100B-Mのそれぞれに伝送する。
【0152】
タイミング調整情報記憶部32は、タイミング調整情報を保持するとともに、タイミング調整情報をタイミング調整部33、DL処理部34、およびUL処理部35に出力する。ここで、タイミング調整情報とは、第1~第M伝送DL信号が集約分配局装置500へ到着するタイミング(遅延時間)の違いに関する情報と、第1~第N集約DL信号が子局装置600-1~600-Nへ到着するタイミングの違いに関する情報と、第1~第N伝送UL信号が集約分配局装置500へ到着するタイミングの違いに関する情報と、第1~第M分配UL信号が中継装置100B-1~100B-Mに到着するタイミングの違いに関する情報と、を含む。タイミング調整情報は、伝送の遅延時間に関する情報の一例である。
【0153】
タイミング調整情報記憶部32が保持するタイミング調整情報は、無線中継システム1000Bに対応した値をあらかじめ記憶しておいても良いし、集約分配局装置500が算出した値を用いても良い。たとえば、第1~第M伝送DL信号が集約分配局装置500へ到着するタイミングの違いは、第1~第M基地局側タイミング信号を比較することで容易に算出できる。また、第1~第M分配UL信号が中継装置100B-1~100B-Mに到着するタイミングの違いに関する情報は、第1~第M伝送DL信号が集約分配局装置500へ到着するタイミングの違いに関する情報と同じとしてもよい。また、第1~第N集約DL信号が子局装置600-1~600-Nへ到着するタイミングの違いに関する情報は、第1~第N伝送UL信号が集約分配局装置500へ到着するタイミングの違いに関する情報と同じとしても良い。
【0154】
ここで、第1~第M伝送DL信号は、集約分配局装置500への到着のタイミング(遅延時間)が互いに異なり得る。遅延時間の違いは、たとえば基地局側伝送路700-1~700-Mの伝送路長の違い等によって発生する。
【0155】
そこで、DL処理部34は、伝送インターフェース部31から入力された第1~第M伝送DL信号のそれぞれに対して、タイミング調整情報記憶部32から入力されたタイミング調整情報(図中、DLタイミング調整情報)に基づくタイミング調整を行って、第1~第M伝送DL信号のタイミングを一致させる。ここで、タイミング調整情報は、たとえば基地局200-1~200-M側における伝送の遅延時間の違いの情報を含んでいる。そして、DL処理部34は、タイミングを一致させた第1~第M伝送DL信号を各事業者に割り当てられた無線周波数に配置する集約を行い、第1~第N集約DL信号を生成する。これにより、DL処理部34は、第1~第M伝送DL信号の遅延時間の違いに関わらず、適正に第1~第N集約DL信号を生成することができる。
【0156】
すなわち、DL処理部34は、集約分配局装置500よりも基地局200-1~200-M側における伝送の遅延時間に基づいて、第1~第M伝送DL信号間のタイミングを調整する第1調整部の一例である。第1~第M伝送DL信号はタイミングを調整されるDL信号の一例である。
【0157】
タイミング調整部33は、伝送インターフェース部31から出力された第1~第M基地局側タイミング信号を受け付ける。タイミング調整部33は、タイミング調整情報記憶部32からのタイミング調整情報(図中、タイミング信号調整情報)に基づいて、端末側タイミング信号1~Nを生成して出力する。タイミング調整部33は、たとえば、ADC、DACと、マイクロコンピュータとを含んで構成されている。
【0158】
伝送インターフェース部36は、タイミング調整部33が生成した第1~第N端末側タイミング信号と、DL処理部34が生成した第1~第N集約DL信号とを多重化し、子局側伝送路800-1~800-Nのそれぞれに出力する。
【0159】
第1~第N集約DL信号のそれぞれは、基地局200-1~200-Mからの第1~第M伝送DL信号が集約された信号であって、伝送インターフェース部36および子局側伝送路800-1~800-Nのそれぞれを介して子局装置600-1~600-Nのそれぞれに送信される。これにより、子局装置600-1~600-Nのそれぞれは、各基地局からの伝送DL信号が集約された集約DL信号を、中継DL信号として各電波不感帯の存在する無線通信端末に送信することができる。
【0160】
また、第1~第N中継DL信号は、子局装置600-1~600-Nの端末側アンテナ25から出力されるタイミング(出力の遅延時間)が異なり得る。遅延時間の違いは、たとえば子局側伝送路800-1~800-Nの伝送路長の違い等によって発生する。
【0161】
そこで、DL処理部34は、タイミング調整情報記憶部32から入力されたタイミング調整情報に基づいて、子局装置600-1~600-Nのそれぞれで、第1~第N中継DL信号が端末側アンテナ25から出力されるタイミングが一致するように、DL処理部34から第1~第N集約DL信号を出力するタイミングを調整する。ここで、タイミング調整情報は、子局装置600-1~600-N側における伝送の遅延時間の違いの情報を含んでいる。これにより、子局装置600-1~600-Nで、第1~第N中継DL信号が端末側アンテナ25から出力されるタイミングを一致させることができる。
【0162】
すなわち、DL処理部34は、集約分配局装置500よりも子局装置600-1~600-N側における伝送の遅延時間に基づいて、第1~第N集約DL信号間のタイミングを調整する第2調整部の一例である。第1~第N集約DL信号はタイミングを調整されるDL信号の一例である。
【0163】
一方、伝送インターフェース部36は、第1~第N伝送UL信号を抽出してUL処理部35に出力する。
【0164】
上記と同様に、第1~第N伝送UL信号は、集約分配局装置500への到着のタイミング(遅延時間)が互いに異なり得る。
【0165】
そこで、UL処理部35は、伝送インターフェース部36から入力された第1~第N伝送UL信号のそれぞれに対して、タイミング調整情報記憶部32から入力されたタイミング調整情報(図中、ULタイミング調整情報)に基づくタイミング調整を行って、第1~第N伝送UL信号のタイミングを一致させる。ここで、タイミング調整情報は、たとえば子局装置600-1~600-N側における伝送の遅延時間の違いの情報を含んでいる。そして、UL処理部35は、タイミングを一致させた第1~第N伝送UL信号を各事業者に分配するための処理を行い、第1~第M分配UL信号を生成する。これにより、UL処理部35は、第1~第N伝送UL信号の遅延時間の違いに関わらず、適正に第1~第M分配UL信号を生成することができる。
【0166】
すなわち、UL処理部35は、集約分配局装置500よりも子局装置600-1~600-N側における伝送の遅延時間に基づいて、第1~第N伝送UL信号間のタイミングを調整する第3調整部の一例である。第1~第N伝送UL信号はタイミングを調整されるUL信号の一例である。
【0167】
また、第1~第M分配UL信号は、基地局200-1~200-Mのそれぞれへの到着のタイミング(遅延時間)が互いに異なり得る。
【0168】
そこで、UL処理部35は、タイミング調整情報記憶部32から入力されたタイミング調整情報に基づいて、基地局200-1~200-Mのそれぞれへの到着のタイミングが一致するように、第1~第M分配UL信号をUL処理部35から出力するタイミングを調整する。ここで、タイミング調整情報は、たとえば基地局200-1~200-M側における伝送の遅延時間の違いの情報を含んでいる。これにより、第1~第M分配UL信号のそれぞれが基地局200-1~200-Mに到着するタイミングを一致させることができる。
【0169】
すなわち、UL処理部35は、集約分配局装置500よりも基地局200-1~200-M側における伝送の遅延時間に基づいて、第1~第M分配UL信号間のタイミングを調整する第4調整部の一例である。第1~第M分配UL信号はタイミングを調整されるUL信号の一例である。
【0170】
また、タイミング調整部33が生成する第1~第N端末側タイミング信号は、子局装置600-1~600-Nに送信されて、端末側切替部24の経路の切り替えに用いられる。ここで、子局装置600-1~600-Nの全てにおける端末側切替部24の経路の切り替えと、中継装置100B-1~100B-Mの全てにおける基地局側切替部4の経路の切り替えとは同期している必要がある。
【0171】
そこで、タイミング調整部33は、中継装置100B-1~100B-Mと子局装置600-1~600-Nとの間の伝送の遅延時間に関する情報を含むタイミング調整情報(図中、タイミング信号調整情報)に基づいて、全ての基地局側切替部4および端末側切替部24が同期するように、第1~第N端末側タイミング信号の出力のタイミングを調整する。これにより、全ての基地局側切替部4および端末側切替部24が同期し、無線中継システム1000Bが適正に動作する。
【0172】
以上のように構成された無線中継システム1000Bでは、通信事業者ごとに通信トラフィック量が異なり、たとえばある通信業者では通信トラフィックがない時間帯でも、DL期間とUL期間とを精度よく検出できる。そして、DL期間とUL期間とを精度よく検出できることによって、通信事業者ごとの遅延時間の調整や、基地局側切替部4および端末側切替部24の同期を適正に実施することができる。
【0173】
なお、無線中継システム1000Bでは、集約分配局装置500におけるDL処理部34が第1調整部として機能し、UL処理部35が第4調整部として機能している。しかしながら、第1調整部や第4調整部は、集約分配局装置500以外の装置が備えていてもよい。たとえば、第1調整部や第4調整部を、中継装置100B-1~100B-Mが備えていてもよい。この場合、タイミング調整情報記憶部32が保持するタイミング調整情報は、伝送インターフェース部31から、中継装置100B-1~100B-Mのそれぞれに伝送される。そして、たとえばDL処理部5が第1調整部として機能する。この場合、タイミングを調整されるDL信号は第1~第M伝送DL信号である。また、たとえばUL処理部6が第4調整部として機能する。この場合、タイミングを調整されるUL信号は第1~第M中継UL信号である。
【0174】
また、無線中継システム1000Bでは、集約分配局装置500におけるDL処理部34が第2調整部として機能し、UL処理部35が第3調整部として機能している。しかしながら、第2調整部や第3調整部は、集約分配局装置500以外の装置が備えていてもよい。たとえば、第2調整部や第3調整部を、子局装置600-1~600-Nが備えていてもよい。この場合、タイミング調整情報記憶部32が保持するタイミング調整情報は、伝送インターフェース部36から、子局装置600-1~600-Nのそれぞれに伝送される。そして、たとえばDL処理部22が第2調整部として機能する。この場合、タイミングを調整されるDL信号は第1~第n中継DL信号である。また、たとえばUL処理部23が第3調整部として機能する。この場合、タイミングを調整されるUL信号は第1~第N伝送UL信号である。
【0175】
また、無線中継システム1000Bでは、基地局200-1~200-M同士の距離が比較的遠距離である場合の構成を示している。これに対して、基地局200-1~200-M同士の距離が比較的近距離である場合は、中継装置100B-1~100B-Mと集約分配局装置500とを一体に構成してもよい。この場合、中継装置100B-1~100B-Mにおける伝送インターフェース部11、集約分配局装置500における伝送インターフェース部31、および基地局側伝送路700-1~700-Mのうち中継装置100B-1~100B-Mと集約分配局装置500とを接続している伝送路は省略してもよい。
【0176】
また、通信トラフィックがない場合に制御信号が送信される期間は、第4世代移動通信システムの場合は時間的にはDL期間全体を占めている。しかしながら、第5世代移動通信システムで通信トラフィックがない場合に制御信号が送信される期間は、時間的にはDL期間の一部を占めている場合が多い。そのため、上記実施形態に係る中継装置による検出方法が特に効果的である。
【0177】
また、上記実施形態に係る中継装置100では、信号処理部8における電力検出部8bが、信号処理部8に入力された受信DL信号の電力に基づいて、受信DL信号が通信トラフィックを含むか含まないかを判定している。しかしながら、中継装置が受信DL信号が通信トラフィックを含むか含まないかを判定する手段はこれに限られない。たとえば、動作例5のように記憶部がパルス情報と動作バンド情報と時間差の情報との組情報を記憶している場合は、フレーム先頭判定部が、記憶されている組情報の中に該当する組情報が無いと判定したときに、受信DL信号が通信トラフィックを含むと判定してもよい。
【0178】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0179】
1 :基地局側アンテナ
2、25 :端末側アンテナ
3 :方向性結合器
4 :基地局側切替部
5、22、34:DL処理部
6、23、35:UL処理部
7、24 :端末側切替部
8、8A :信号処理部
8a :パルス信号生成部
8b :電力検出部
8c :パルス情報生成部
8d、8Ad:フレーム先頭判定部
9 :タイミング検出部
10、10A:記憶部
11、21、31、36:伝送インターフェース部
32 :タイミング調整情報記憶部
33 :タイミング調整部
100、100A、100B-1~100B-M:中継装置
200 :無線基地局
200-1~200-M:基地局
300 :障害物
400、400-1~400-N:無線通信端末
500 :集約分配局装置
600-1~600-N:子局装置
700-1~700-M:基地局側伝送路
800-1~800-N:子局側伝送路
900-1~900-N:電波不感地帯
1000、1000B:無線中継システム