(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124378
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびその樹脂組成物を用いた成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240905BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240905BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240905BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240905BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240905BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20240905BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240905BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240905BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240905BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240905BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240905BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L101/00 ZAB
C08L67/00
C08L77/00
C08L23/08
C08L31/04 S
C08L23/26
C08K5/098
C08L29/04 S
B65D65/40 D
B65D65/02 E
C08J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029696
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023032151
(32)【優先日】2023-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】釘本 大資
(72)【発明者】
【氏名】福原 由紀
(72)【発明者】
【氏名】菊地 元三
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹也
【テーマコード(参考)】
3E086
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 フィルム化した際にフィッシュアイの発生が少ない樹脂組成物およびその樹脂組成物を用いたフィルムの提供することを目的とする。
【解決手段】 使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)もしくはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.01重量部以上5重量部以下含む樹脂組成物((A)と(B)と(C)及び/又は(D)の合計は100重量部)。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下含む樹脂組成物((A)と(B)と(C)及び/又は(D)の合計は100重量部)。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン以外の成分としてポリエステル、ポリアミド及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであり、ポリアミドがナイロン6、又はナイロン66である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
相溶化剤(B)が、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び/又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
脂肪酸金属塩(C)が、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛のステアリン酸塩、及びヒドロキシステアリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)が、エチレン含量が75モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上25モル%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物であって、酢酸ビニル成分のケン化度が20重量%以上であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)は、JIS K6924-1に準拠して190℃、2160g荷重の条件下で測定したメルトマスフローレートが40g/10分以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
使用済みのプラスチック製品が、食品包装容器、衛生用品包装容器、化粧品包装容器及び日用品包装容器からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層フィルム。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルムからなる包装容器。
【請求項12】
請求項10に記載のフィルムからなる包装容器。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を190℃以上250℃以下で成形する、請求項9に記載のフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を190℃以上250℃以下で成形する、請求項10に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項15】
使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下含む溶融混合物を取得する工程を含む樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックによる環境汚染問題への関心が高まっており、プラスチック製品のマテリアルリサイクルが促進されている。
【0003】
プラスチックのマテリアルリサイクルでは、一般的に、回収したプラスチック廃棄物中に異種のプラスチックが混在した状態でリサイクルすると、互いの相溶性が悪いことからリサイクルされたプラスチックの物性が低下する問題が生じる。そのため、現在は回収したプラスチック廃棄物を素材毎に選別したのち、製品へ再生するという工程がとられている。
【0004】
しかしながら、異種のプラスチックが積層された多層フィルムや多層容器など(以下、複合プラスチック)では、素材毎に分別することが困難であることからリサイクルすることができず、埋立てや焼却処理されているのが現状である。
【0005】
このような背景の中、複合プラスチックをリサイクルする手段として、相溶化剤の添加が検討されている。
【0006】
例えば、ポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリプロピレン(PP)とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などの複合プラスチックに相溶化剤を添加することにより複合プラスチックの物性を向上できることが開示されている(特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、本発明者らが複合プラスチックのリサイクルを検討する中で、ポリオレフィンにPETやポリアミドを含むリサイクル樹脂をフィルム化した際にフィッシュアイと呼ばれる外観不良が多発することが判明した。そして、フィッシュアイと呼ばれる外観不良は、ポリオレフィンとポリオレフィン以外の樹脂を含むリサイクル樹脂だけでなく、ポリオレフィン樹脂を2種以上含むリサイクル樹脂であっても、その組み合わせによっては発生し得るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フィルム化した際にフィッシュアイの発生が少ない樹脂組成物およびその樹脂組成物を用いたフィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくともポリオレフィンを含む2種以上の熱可塑性樹脂を含む使用済みのプラスチック製品の回収物に、所定量の相溶化剤および滑性を示す成分を添加した樹脂組成物がフィルム化した際にフィッシュアイの発生が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の各態様は、以下の[1]~[15]である。
[1] 使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下含む樹脂組成物((A)と(B)と(C)及び/又は(D)の合計は100重量部)。
[2] 熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィン以外の成分としてポリエステル、ポリアミド及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであり、ポリアミドがナイロン6、又はナイロン66である、上記[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 相溶化剤(B)が、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び/又は無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、上記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5] 脂肪酸金属塩(C)が、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛のステアリン酸塩、及びヒドロキシステアリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[6] エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)が、エチレン含量が75モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上25モル%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物であって、酢酸ビニル成分のケン化度が20重量%以上であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物である、上記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7]エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)は、JIS K6924-1に準拠して190℃、2160g荷重の条件下で測定したメルトマスフローレートが40g/10分以上である、上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[8] 使用済みのプラスチック製品が、食品包装容器、衛生用品包装容器、化粧品包装容器及び日用品包装容器からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9] 上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[10] 上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層フィルム。
[11] 上記[9]に記載のフィルムからなる包装容器。
[12] 上記[10]に記載のフィルムからなる包装容器。
[13] 上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を190℃以上250℃以下で成形する、上記[9]に記載のフィルムの製造方法。
[14] 上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を190℃以上250℃以下で成形する、上記[10]に記載の多層フィルムの製造方法。
[15] 使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下含む溶融混合物を取得する工程を含む樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様である樹脂組成物は、フィルム化した際のフィッシュアイが少ないため、外観に優れたリサイクル製品の原料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
本発明の一態様である樹脂組成物は、使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)もしくはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)からなる群から選ばれる少なくとも1種を0.01重量部以上5重量部以下含む。
【0015】
少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)は、2成分以上の熱可塑性樹脂で構成され、且つ、その熱可塑性樹脂のうちの少なくとも1つとしてポリオレフィンを含んでいればよい。つまり、熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィンとポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂を含むものであってもよく、2成分以上(2種類以上)のポリオレフィンを含むものであってもよい。フィッシュアイの発生をより抑制する観点からは、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)は、ポリオレフィンとポリオレフィン以外の樹脂を含むものであることが好ましい。ポリオレフィン以外の樹脂の成分としては、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0016】
ポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。なお、本明細書において、低密度ポリエチレンとは、密度が910kg/m3以上930kg/m3未満であるポリエチレンを意味し、高密度ポリエチレンとは、密度が930kg/m3以上であるポリエチレンを意味する。ポリエチレンの密度は、JIS K6922-1(2011年)に準拠して測定することができる。
【0017】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0018】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG樹脂)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0019】
これらの中で、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)に含まれる樹脂としては、フィルム成形性に優れることから、ポリオレフィンとして高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを用いることがより好ましい。ポリオレフィン以外の樹脂としてはポリエステル、ポリアミド及びエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましく、ポリアミドとしてはナイロン6、及びナイロン6,6の少なくともいずれかを用いることがより好ましい。
【0020】
少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)は、使用済みのプラスチック製品の回収物に由来するものである。ここで、使用済みのプラスチック製品の回収物に由来するとは、使用済みのプラスチック製品の回収物が原料になっていることを意味し、例えば、熱可塑性樹脂(A)として、使用済みのプラスチック製品の回収物に含まれる熱可塑性樹脂を用いることを例示することができる。なお、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)は、1種の使用済みのプラスチック製品の回収物に由来するものだけなく、2種類以上のプラスチック製品の回収物に由来するものであってもよい。
【0021】
使用済みのプラスチック製品の回収物は、熱可塑性樹脂を含む限り、熱可塑性樹脂以外の他の成分が含まれていてもよい。例えば、使用済みのプラスチック製品の回収物は、樹脂フィルム層などの熱可塑性樹脂を含む限り、その表面や層間などに印刷層(オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等により形成された層など)、保護層(メジウム印刷層、ニスやセルロースナノファイバー(CNF)等がコーティングされたコーティング層、UV吸収層など)、無機層(アルミ箔等の金属層など)等を含むものであっても良い。さらに、使用済みのプラスチック製品の回収物は、無機酸化物(シリカ、アルミナなど)または金属(アルミなど)が樹脂フィルム層の表面に蒸着された蒸着樹脂フィルム層を含んでいても良い。
【0022】
少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)に含まれる熱可塑性樹脂の比率としては、フィルムの強度に優れることから、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、ポリオレフィンが70重量部以上99重量部以下であり、且つ、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂が1重量部以上30重量部以下であることが好ましい。
【0023】
使用済みのプラスチック製品の回収物は、一旦市場で製品として用いられたものを回収してきたものであり、具体的な一例として、包装容器の回収物を例示することができる。包装容器は、特に限定されるものではないが、内容物の安全性やプラスチック製包装容器に用いられる材料の安全性の観点に基づき、食品包装容器や、衛生用品包装容器、化粧品包装容器、日用品包装容器などの多層構造から成る、消費者から廃棄されたプラスチック製包装容器が好ましい。プラスチック製品の回収物は、再利用可能なプラスチック製品であってもよいが、プラスチックゴミ削減の観点に基づき、これらの廃棄物が用いられることが好ましく、これらを混合したものでもよい。また、形状としては特に限定されるものではないが、フィルムやボトル、パウチ、カップ、トレイ、チューブなどが挙げられる。
【0024】
また、使用済みのプラスチック製品の回収物として、プラスチック製品を製造する過程で生じ、それ自体が製品としての価値を有さない端材をもちいることもできる。ただし、使用済みのプラスチック製品の回収物は、海洋プラスチック削減のために、消費者から廃棄されたプラスチック製品の回収物が含まれていることが好ましく、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)100重量%が、当該回収物(廃棄物)に由来することが好ましい。
【0025】
相溶化剤(B)は、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を相溶化できるものであれば特に限定されず、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体、アイオノマー樹脂、オキサゾリン基含有樹脂などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0026】
酸変性ポリオレフィンとしては、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0027】
アイオノマー樹脂としては、エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー、ブチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン-ビニルスルホン酸共重合体アイオノマーなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。なお、アイオノマー樹脂の対イオンとしてはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオンなどが挙げられる。
【0028】
オキサゾリン基含有樹脂としては、オキサゾリン基含有ポリスチレンなどが挙げられる。
【0029】
相溶化剤(B)は、これらの中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレンの少なくともいずれかであることがフィルム成形性やフィルム強度に優れるため好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることがフィルム外観に優れるためより好ましい。
【0030】
エチレン-酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含量の異なる複数種のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むエチレン酢酸ビニル共重合体組成物であってもよい。この場合、エチレン酢酸ビニル共重合体の種類は、相溶性の観点から、3種以上が好ましい。また、相溶性の観点から、複数種のエチレン酢酸ビニル共重合体を含むエチレン酢酸ビニル共重合体組成物を100質量%としたときに、各エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量の差は40重量%以下であることが好ましく、さらに少なくとも1組のエチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量の差は5重量%以上であることが好ましい。
【0031】
相溶化剤(B)は、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレートが1g/10分以上であることが好ましく、より好ましくは5g/10分以上である。メルトマスフローレートの上限値は、特に限定されないが、例えば、1000g/10分以下である。これにより、熱可塑性樹脂(A)に含まれる複数種の熱可塑性樹脂がより相溶化されやすくなる。
【0032】
脂肪酸金属塩(C)としては、特に限定されるものではないが、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛のステアリン酸塩、ヒドロキシステアリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがフィッシュアイ抑制効果に優れるため好ましい。
【0033】
これら脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ヒドロキステアリン酸カルシウム、ヒドロキステアリン酸亜鉛などが例示できる。
【0034】
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル部位を加水分解方法により部分的あるいは完全にビニルアルコールに変性したものである。つまり、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル部位の一部のみがビニルアルコールに変性したものであってもよく、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル部位の全てがビニルアルコールに変性したものであってもよい。
【0035】
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)は特に限定されるものではないが、エチレン含量と酢酸ビニル含量の合計を100モル%としたときに、エチレン含量が75モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上25モル%以下であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化したものが好ましく、エチレン含量が85モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上15モル%以下であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化したものがより好ましい。
【0036】
また、ケン化度としては、JIS K7192(1999年)に準拠して算出された酢酸ビニル成分のケン化度が20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上100重量%以下、さらに好ましくは61重量%以上100重量%以下であり、特に好ましくは70重量%以上100重量%以下である。
【0037】
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)は、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレートが40g/10分以上であることが好ましく、より好ましくは100g/10分以上であり、特に好ましくは200g/10分以上である。メルトマスフローレートの上限値は、特に限定されないが、例えば、1000g/10分以下である。これにより、樹脂が成形機内で滞留することをより抑制することができる。
【0038】
このようなエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物は市販品の中から便宜選択することができ、東ソー株式会社からメルセンHの商品名で市販されている。
【0039】
少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)、相溶化剤(B)、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の含有比率は、熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下である。ここで、(A)と(B)と(C)及び/又は(D)の合計は100重量部である。
【0040】
なお、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の含有比率(0.01重量部以上5重量部以下)は、本発明の樹脂組成物に脂肪酸金属塩(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)のいずれか一方のみが含まれる場合、その一方のみの含有比率を意味し、本発明の樹脂組成物に脂肪酸金属塩(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の両方が含まれる場合、脂肪酸金属塩(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の含有比率の合計を意味する。また、(A)と(B)と(C)及び/又は(D)の合計が100重量部であるとは、本発明の樹脂組成物に脂肪酸金属塩(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)のいずれか一方のみが含まれる場合には、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)とその一方(脂肪酸金属塩(C)又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D))の含有比率の合計が100重量部であることを意味し、本発明の樹脂組成物に脂肪酸金属塩(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の両方が含まれる場合には、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の含有比率の合計が100重量部であることを意味する。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物における各成分の含有比率は、さらに好ましくは少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を80重量部以上98.9重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上19.9重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.1重量部以上3重量部以下であり、最も好ましくは少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を90重量部以上98.8重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上9.8重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.2重量部以上2重量部以下である。なお、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計は100重量部である。
【0042】
相溶化剤(B)が1重量部以上の場合はヒートシール強度やフィルム外観に優れるため好ましく、29.99重量部以下であればフィルム成形性に優れるため好ましい。また、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)が0.01重量部以上の場合はフィッシュアイの抑制効果に優れるため好ましく、5重量部以下であればフィルム成形性が悪化しないため好ましい。
【0043】
上記樹脂組成物は、上述した各成分((A)と(B)と(C)及び/又は(D))に加えて、必要に応じてバージン樹脂がブレンドされていてもよい。ブレンドされ得るバージン樹脂としては特に限定されないが、フィルム成形性に優れることから直鎖状低密度ポリエチレンや低密度ポリエチレンが好ましい。
【0044】
上記樹脂組成物の190℃、2160g荷重の条件で測定したメルトマスフローレート(MFR)は特に限定されないが、フィルム成形性に優れることから、0.5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、0.8g/10分以上20g/10分以下であることがより好ましく、1g/10分以上10g/10分以下であることが最も好ましい。
【0045】
上記樹脂組成物の製造方法は、使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下含む溶融混合物(以下、単に「溶融混合物」ともいう)を取得する工程を含む。なお、溶融混合物は、混合した溶融物を冷却することで得られる固体状の混合物であり、熱可塑性樹脂(A)を70重量部以上98.99重量部以下、相溶化剤(B)を1重量部以上29.99重量部以下、脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を0.01重量部以上5重量部以下含む溶融物(以下、単に「溶融物」ともいう)を混合して冷却することで得ることができる。
【0046】
溶融物の混合は、各成分を分散できれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混練装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロール、インターナルミキサーなどの混練装置が挙げられる。この中で、分散性および連続生産性に優れることから、二軸押出機が好ましい。
【0047】
二軸押出機で混練を行う場合のスクリュ回転数は特に制限されないが、50rpm以上3000rpm以下で混練することが好ましく、より好ましくは150rpm以上1000rpm以下である。スクリュ回転数50rpm以上であれば混合した各成分の分散性が向上し、得られた樹脂の物性に優れるため好ましく、スクリュ回転数3000rpm以下であれば過剰なせん断発熱による樹脂の劣化が生じないことから、得られた樹脂の物性に優れるため好ましい。
【0048】
溶融物は、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の中の少なくとも一つ成分が溶融している溶融物であり、好ましくは、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の全ての成分が溶融している溶融物である。溶融物は、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)を所定の含有比率で含む原料を、それらの成分の中で最も融点が低い成分の融点以上(最も融点が低い成分が非晶性樹脂であればガラス転移温度以上)の温度に加熱することで得ることができる。加熱温度の上限値については特に限定されるものではないが、300℃以下であることが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態の樹脂組成物に、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)以外の他の成分が含まれる場合には、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)に加えて当該他の成分を溶融物に含有すればよい。
【0050】
混合した溶融物の冷却温度は、得られる溶融混合物が固体状になる温度であればよく、例えば、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)の中で最も融点が低い成分の融点未満(最も融点が低い成分が非晶性樹脂であればガラス転移温度未満)の温度を挙げることができる。
【0051】
上記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂(A)と相溶化剤(B)と脂肪酸金属塩(C)及び/又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)以外の他の成分が含まれてもよい。このような他の成分として、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、着色剤、無機系中和剤、塩酸吸収剤、充填剤導電剤、鎖長延長剤、加水分解防止剤等が1種又は2種以上用いられても良い。
【0052】
また上記樹脂組成物は、ペレットやパウダーなどの任意の形態にしておいて使用することができる。
【0053】
上記樹脂組成物の成形方法としては特に制限されないが、例えば異形押出、フィルム、シート、ブロー、射出、発泡、押出コーティング、回転成形などが挙げられ、この中で本発明の樹脂組成物の成形性に優れることからフィルムが好ましい。
【0054】
フィルムの成形方法については、特に制限はなく、インフレーション成形法、共押出インフレーション成形法、Tダイ成形法、共押出Tダイ成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法などを例示できる。これらの中で、生産性に優れることからインフレーション成形法、共押出インフレーション成形法、Tダイ成形法、共押出Tダイ成形法が好ましい。また、本発明のフィルムは他のフィルムと積層してもよく、積層方法についても同様に特に制限はないが、ドライラミネート法、押出ラミネート法、サンドウィッチラミネート法などを例示できる。
【0055】
以上説明した本実施形態の樹脂組成物によれば、フィルム化した際にフィッシュアイの発生を抑制することができる。なお、フィッシュアイは、フィルムに生じた異物(未溶融物等)が原因となって生じる魚眼のような粒子状の塊である。
【0056】
本発明の一態様であるフィルムは、上記樹脂組成物をフィルム化(フィルム状に成形)することで得ることができる。上記樹脂組成物からなるフィルムは、1層でもよく、多層フィルムの様態としても使用できる。多層フィルムの積層構成としては、特に限定されるものではないが、例えば、本発明の樹脂組成物(I)層のみだけでなく他の成分からなる層、例えばバージン樹脂層(II)や接着層(III)やバリア層(IV)を含んでいてもよい。具体的には、(I)/(II)、(II)/(I)/(II)、(I)/(III)/(IV)/(III)/(I)、(I)/(III)/(IV)/(III)/(II)などが挙げられる。上記樹脂組成物からなるフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、フィッシュアイの発生をより抑制する観点から、10μm~300μmであることが好ましい。
【0057】
フィルム成形温度は190℃以上250℃以下の範囲が好ましく、200℃以上250℃以下の範囲がより好ましく、220℃以上250℃以下の範囲がさらに好ましい。成形温度が190℃以上であればフィッシュアイの発生が少なく、250℃以下であればフィルム成形性に優れるため好ましい。
【0058】
上記フィルムは、食品、日用品、工業部品、医薬品、事務用品、化学用品などの包装容器、表面保護フィルム、サイレージラップなどの農業用フィルム、シュリンクフィルム、輸送袋などとして有用である。
【実施例0059】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(1)メルトマスフローレート(MFR)
実施例で使用した樹脂のMFRは、JIS K6924-1に準拠して、メルトインデクサー(宝工業製)にて190℃、2160g荷重の条件にて測定した。
【0061】
(2)酢酸ビニル含量およびケン化度
エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いてJIS K7192(1999年)に準拠して酢酸ビニル含量を測定し、下記計算式に従いケン化度(重量%)を求めた。
ケン化度(重量%)=100×{(加水分解前のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量(重量%))-(加水分解後のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量(重量%))}/(加水分解前のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量(重量%))
【0062】
(3)フィッシュアイ数
作製したフィルムにおける樹脂組成物層について、500cm2あたりのフィッシュアイの数を目視でカウントした。
【0063】
[実施例1]
使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)として使用済のフィルム容器の回収物からなる複合樹脂(A1)(組成:ポリエチレン80重量部、ポリエチレンテレフタレート(PET)10重量部、ナイロン6(PA6)10重量部)を94.6重量部、相溶化剤(B)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B1)(東ソー製、MFR10g/10分、商品名メルセンS S-A5115)を5重量部、脂肪酸金属塩(C)としてステアリン酸マグネシウム(C1)を0.4重量部使用し、これらをタンブラー混合機で予備ブレンドした後、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度260℃(A1、B1、及びC1の溶融温度以上)、スクリュ回転数600rpmの条件で溶融混合し、室温まで冷却することで樹脂組成物ペレット(溶融混合物)を得た。樹脂組成物のMFRは1.3g/10分であった。
【0064】
3種3層マイクロキャスト成形機(Labtech Engineering製)を用い、上記樹脂組成物ペレットおよびバージン直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(東ソー製 密度910kg/m3、MFR2g/10分、商品名HF210K)からなる3層フィルム(フィルム構成:バージンLLDPE層/樹脂組成物層/バージンLLDPE層)を得た。
【0065】
このとき、3層すべての成形温度を230℃とし、引取速度2m/分でフィルム幅50mm、フィルムの総厚み110μmとした。各層の厚みはバージンLLDPE層/樹脂組成物層/バージンLLDPE層=30μm/50μm/30μmとした。
【0066】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)として使用済のフィルム容器の回収物からなる複合樹脂(A1)(組成:ポリエチレン80重量部、ポリエチレンテレフタレート(PET)10重量部、ナイロン6(PA6)10重量部)を93重量部、相溶化剤(B)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B1)(東ソー製、MFR10g/10分、商品名メルセンS S-A5115)を5重量部、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)としてエチレン含量89モル%、酢酸ビニル含量11モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分をケン化度80重量%でケン化したエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D1)(東ソー製、MFR220g/10分、商品名メルセンH H6822X)を2重量部使用し、これらをタンブラー混合機で予備ブレンドした後、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度260℃((A1、B1、及びD1の溶融温度以上))、スクリュ回転数600rpmの条件で溶融混合し、室温まで冷却することで樹脂組成物ペレット(溶融混合物)を得た以外は実施例1と同様の手法により3層フィルムを得た。なお、樹脂組成物のMFRは1.3g/10分であった。
【0068】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0069】
[実施例3]
相溶化剤(B)として無水マレイン酸変性ポリエチレン(B2)(SK Geo Centric Japan製 、MFR3g/10分、商品名OREVAC OE825)を2重量部使用した以外は実施例2と同様の手法により3層フィルムを得た。なお、樹脂組成物のMFRは0.6g/10分であった。
【0070】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D)としてエチレン含量89モル%、酢酸ビニル含量11モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分をケン化度40重量%でケン化したエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(D2)(東ソー製、MFR16g/10分、商品名メルセンH H6410M)を2重量部使用した以外は実施例2と同様の手法により3層フィルムを得た。なお、樹脂組成物のMFRは1.2g/10分であった。
【0072】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0073】
[実施例5]
3層フィルムの成形温度を3層すべて210℃とした以外は実施例2と同様の手法により3層フィルムを得た。なお、樹脂組成物のMFRは1.3g/10分であった。
【0074】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)として使用済のフィルム容器の回収物からなる複合樹脂(A1)(組成:ポリエチレン80重量部、ポリエチレンテレフタレート(PET)10重量部、ポリアミド6(PA6)10重量部)を100重量部使用し、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度260℃(A1の溶融温度以上)、スクリュ回転数600rpmの条件で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た以外は実施例1と同様の手法により3層フィルムを得た。なお、樹脂組成物のMFRは1.0g/10分であった。
【0076】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0077】
[比較例2]
使用済みのプラスチック製品の回収物に由来する、少なくともポリオレフィンを含む2成分以上の熱可塑性樹脂(A)として使用済のフィルム容器の回収物からなるリサイクル樹脂(A1)(組成:ポリエチレン80重量部、ポリエチレンテレフタレート(PET)10重量部、ポリアミド6(PA6)10重量部)を95重量部、相溶化剤(B)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B1)(東ソー製、MFR10g/10分、商品名メルセンS S-A5115)を5重量部使用し、これらをタンブラー混合機で予備ブレンドした後、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度260℃(A1、及びB1の溶融温度以上)、スクリュ回転数600rpmの条件で溶融混合し、室温まで冷却することで樹脂組成物ペレット(溶融混合物)を得た以外は実施例1と同様の手法により3層フィルムを得た。なお、樹脂組成物のMFRは1.2g/10分であった。
【0078】
得られたフィルムの樹脂組成物層に発生したフィッシュアイの数について前記評価方法で測定した。評価の結果を表1に示す。
【0079】
本発明の樹脂組成物から成るフィルムは、食品、日用品、工業部品、医薬品、事務用品、化学用品などの包装容器、表面保護フィルム、サイレージラップなどの農業用フィルム、シュリンクフィルム、輸送袋などとして有用である。