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特開2024-124523基板処理方法、基板処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124523
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 647A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109428
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2022561840の分割
【原出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020190303
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】緒方 庸元
(57)【要約】
【課題】本開示は、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能な基板処理方法、基板処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【解決手段】
基板処理方法の一例は、基板を回転させつつ基板に洗浄液を供給して、基板に洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、第1の工程の後に、基板を回転させつつ基板にリンス液を供給して、基板にリンス液の液膜を形成する第2の工程と、第2の工程の後に、基板を回転させつつ基板に第1の有機溶剤を供給して、基板に第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、第3の工程の後に、基板を回転させつつ基板に第2の有機溶剤を供給して、基板に第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、第4の工程の後に、基板を乾燥させる第5の工程とを含む。第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第1の有機溶剤よりも沸点が高い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させつつ前記基板に洗浄液を供給して、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板にリンス液を供給して、前記基板から前記洗浄液を排出すると共に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第1の有機溶剤を供給して、前記基板から前記リンス液を排出すると共に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第2の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記基板を乾燥させる第5の工程とを含み、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第4の工程は、
前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記基板に第2の有機溶剤を供給することと、
前記基板の低速回転時において、前記基板への前記第2の有機溶剤の供給量を増加させることとを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さく、
前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第4の工程の後で且つ前記第5の工程の前に、前記基板を回転させつつ前記基板に第3の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成する第6の工程をさらに含み、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第6の工程は、前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記基板に第3の有機溶剤を供給することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第6の工程は、前記基板の低速回転時において、前記基板への前記第3の有機溶剤の供給量を増加させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
基板を回転させつつ前記基板に洗浄液を供給して、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板にリンス液を供給して、前記基板から前記洗浄液を排出すると共に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第1の有機溶剤を供給して、前記基板から前記リンス液を排出すると共に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第2の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記基板を乾燥させる第5の工程と、
前記第4の工程の後で且つ前記第5の工程の前に、前記基板を回転させつつ前記基板に第3の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成する第6の工程とを含み、
前記第6の工程は、
前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記基板に第3の有機溶剤を供給することと、
前記基板の低速回転時において、前記基板への前記第3の有機溶剤の供給量を増加させることとを含み、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高い、基板処理方法。
【請求項8】
前記第6の工程における前記基板の最高回転数は、前記第4の工程における前記基板の最高回転数よりも大きい、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液である、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
基板を保持して回転させるように構成された回転保持部と、
前記基板に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部と、
前記基板にリンス液を供給するように構成されたリンス液供給部と、
前記基板に第1の有機溶剤を供給するように構成された第1の溶剤供給部と、
前記基板に第2の有機溶剤を供給するように構成された第2の溶剤供給部と、
制御部とを備え、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記制御部は、
前記回転保持部及び前記洗浄液供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の処理と、
前記第1の処理の後に、前記回転保持部及び前記リンス液供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成しつつ、前記基板から前記洗浄液を排出する第2の処理と、
前記第2の処理の後に、前記回転保持部及び前記第1の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記リンス液を排出する第3の処理と、
前記第3の処理の後に、前記回転保持部及び前記第2の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出する第4の処理と、
前記第4の処理の後に、前記回転保持部を制御して、前記基板を乾燥させる第5の処理とを実行するように構成されており、
前記第4の処理は、
前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記基板に第2の有機溶剤を供給することと、
前記基板の低速回転時において、前記基板への前記第2の有機溶剤の供給量を増加させることとを含む、基板処理装置。
【請求項12】
前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さく、
前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液である、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記基板に第3の有機溶剤を供給するように構成された第3の溶剤供給部をさらに備え、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記制御部は、前記第4の処理の後で且つ前記第5の処理の前に、前記回転保持部及び前記第3の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出する第6の処理をさらに実行するように構成されている、請求項11~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第6の処理は、前記回転保持部が前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記第3の溶剤供給部が前記基板に第3の有機溶剤を供給することを含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第6の処理は、前記基板の低速回転時に、前記第3の溶剤供給部が前記第3の有機溶剤の供給量を増加させることを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
基板を保持して回転させるように構成された回転保持部と、
前記基板に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部と、
前記基板にリンス液を供給するように構成されたリンス液供給部と、
前記基板に第1の有機溶剤を供給するように構成された第1の溶剤供給部と、
前記基板に第2の有機溶剤を供給するように構成された第2の溶剤供給部と、
前記基板に第3の有機溶剤を供給するように構成された第3の溶剤供給部と、
制御部とを備え、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記制御部は、
前記回転保持部及び前記洗浄液供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の処理と、
前記第1の処理の後に、前記回転保持部及び前記リンス液供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成しつつ、前記基板から前記洗浄液を排出する第2の処理と、
前記第2の処理の後に、前記回転保持部及び前記第1の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記リンス液を排出する第3の処理と、
前記第3の処理の後に、前記回転保持部及び前記第2の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出する第4の処理と、
前記第4の処理の後に、前記回転保持部を制御して、前記基板を乾燥させる第5の処理と、
前記第4の処理の後で且つ前記第5の処理の前に、前記回転保持部及び前記第3の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出する第6の処理とを実行するように構成されており、
前記第6の処理は、
前記回転保持部が前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記第3の溶剤供給部が前記基板に第3の有機溶剤を供給することと、
前記基板の低速回転時に、前記第3の溶剤供給部が前記第3の有機溶剤の供給量を増加させることを含む、基板処理装置。
【請求項18】
前記第6の処理における前記基板の最高回転数は、前記第4の処理における前記基板の最高回転数よりも大きい、請求項15~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第3の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい、請求項14~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記第3の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液である、請求項14~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項22】
基板を回転させつつ前記基板に洗浄液を供給して、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板にリンス液を供給して、前記基板から前記洗浄液を排出すると共に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第1の有機溶剤を供給して、前記基板から前記リンス液を排出すると共に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第2の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記基板を乾燥させる第5の工程と、
前記第4の工程の後で且つ前記第5の工程の前に、前記基板を回転させつつ前記基板に第3の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成する第6の工程とを含み、
前記リンス液は、純水であり、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さく、
前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい、基板処理方法。
【請求項23】
前記第1の有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)であり、
前記第2の有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)である、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板に処理液を供給する工程と、処理液の液膜が形成されている基板を加熱する工程と、基板に揮発性処理液を供給する工程と、揮発性処理液を除去して基板を乾燥する工程とを含む基板処理方法を開示している。加熱する工程は、基板の表面が揮発性処理液から露出するよりも前に基板の表面温度が露点温度よりも高くなるように、基板を加熱することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-146951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能な基板処理方法、基板処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板処理方法の一例は、基板を回転させつつ基板に洗浄液を供給して、基板に洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、第1の工程の後に、基板を回転させつつ基板にリンス液を供給して、基板から洗浄液を排出すると共に、基板にリンス液の液膜を形成する第2の工程と、第2の工程の後に、基板を回転させつつ基板に第1の有機溶剤を供給して、基板からリンス液を排出すると共に、基板に第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、第3の工程の後に、基板を回転させつつ基板に第2の有機溶剤を供給して、基板から第1の有機溶剤を排出すると共に、基板に第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、基板を乾燥させる第5の工程とを含んでいてもよい。第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第1の有機溶剤よりも沸点が高くてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る基板処理方法、基板処理装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、基板処理システムの一例を模式的に示す平面図である。
図2図2は、処理ユニットの一例を模式的に示す側面図である。
図3図3は、基板処理システムの主要部の一例を示すブロック図である。
図4図4は、コントローラのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図5図5は、基板の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、基板の処理手順の一例を説明するための図である。
図7図7は、図6の後続の手順を説明するための図である。
図8図8は、基板上における有機溶剤の流動状態の一例を説明するための図である。
図9図9は、基板上における有機溶剤の流動状態の他の例を説明するための図である。基板の処理手順の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、符号の向きを基準とすることとする。
【0009】
[基板処理システム]
まず、図1を参照して、基板Wを処理するように構成された基板処理システム1(基板処理装置)について説明する。基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3と、コントローラCtr(制御部)とを備える。搬入出ステーション2及び処理ステーション3は、例えば水平方向に一列に並んでいてもよい。
【0010】
基板Wは、円板状を呈してもよいし、多角形など円形以外の板状を呈していてもよい。基板Wは、一部が切り欠かれた切欠部を有していてもよい。切欠部は、例えば、ノッチ(U字形、V字形等の溝)であってもよいし、直線状に延びる直線部(いわゆる、オリエンテーション・フラット)であってもよい。基板Wは、例えば、半導体基板(シリコンウエハ)、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。基板Wの直径は、例えば200mm~450mm程度であってもよい。後述する図2に示されるように、基板Wの表面Waに所定のパターンPが形成されていてもよい。
【0011】
搬入出ステーション2は、載置部4と、搬入搬出部5と、棚ユニット6とを含む。載置部4は、幅方向(図1の上下方向)において並ぶ複数の載置台(図示せず)を含んでいる。各載置台は、キャリア7(収容容器)を載置可能に構成されている。キャリア7は、少なくとも一つの基板Wを密封状態で収容するように構成されている。キャリア7は、基板Wを出し入れするための開閉扉(図示せず)を含む。
【0012】
搬入搬出部5は、搬入出ステーション2及び処理ステーション3が並ぶ方向(図1の左右方向)において、載置部4に隣接して配置されている。搬入搬出部5は、載置部4に対応して設けられた開閉扉(図示せず)を含む。載置部4上にキャリア7が載置された状態で、キャリア7の開閉扉と搬入搬出部5の開閉扉とが共に開放されることで、搬入搬出部5内とキャリア7内とが連通する。
【0013】
搬入搬出部5は、搬送アームA1及び棚ユニット6を内蔵している。搬送アームA1は、搬入搬出部5の幅方向(図1の上下方向)における水平移動と、鉛直方向における上下動と、鉛直軸周りにおける旋回動作とが可能に構成されている。搬送アームA1は、キャリア7から基板Wを取り出して棚ユニット6に渡し、また、棚ユニット6から基板Wを受け取ってキャリア7内に戻すように構成されている。棚ユニット6は、処理ステーション3の近傍に位置しており、搬入搬出部5と処理ステーション3との間での基板Wの受け渡しを仲介するように構成されている。
【0014】
処理ステーション3は、搬送部8と、複数の処理ユニット10とを含む。搬送部8は、例えば、搬入出ステーション2及び処理ステーション3が並ぶ方向(図1の左右方向)において水平に延びている。搬送部8は、搬送アームA2を内蔵している。搬送アームA2は、搬送部8の長手方向(図1の左右方向)における水平移動と、鉛直方向における上下動と、鉛直軸周りにおける旋回動作とが可能に構成されている。搬送アームA2は、棚ユニット6から基板Wを取り出して各処理ユニット10に渡し、また、各処理ユニット10から基板Wを受け取って棚ユニット6内に戻すように構成されている。
【0015】
複数の処理ユニット10は、搬送部8の両側のそれぞれにおいて、搬送部8の長手方向(図1の左右方向)に沿って一列に並ぶように配置されている。処理ユニット10は、基板Wに所定の処理(例えば、洗浄処理)を行うように構成されている。処理ユニット10の詳細については、後述する。
【0016】
コントローラCtrは、基板処理システム1を部分的又は全体的に制御するように構成されている。コントローラCtrの詳細については後述する。
【0017】
[処理ユニット]
続いて、図2を参照して、処理ユニット10について詳しく説明する。処理ユニット10は、回転保持部20と、洗浄液供給部30と、リンス液供給部40と、溶剤供給部50(第1の溶剤供給部)と、溶剤供給部60(第2の溶剤供給部)と、溶剤供給部70(第3の溶剤供給部)とを備える。
【0018】
回転保持部20は、回転部21と、シャフト22と、保持部23とを含む。回転部21は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、シャフト22を回転させるように構成されている。回転部21は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。
【0019】
保持部23は、シャフト22の先端部に設けられている。保持部23は、例えば吸着等により、基板Wの裏面全体を吸着保持するように構成されていてもよい。この場合、基板Wに反りなどがあっても、保持部23の表面に沿って基板Wが略水平となるように矯正される。すなわち、回転保持部20は、基板Wの姿勢が略水平の状態で、基板Wの表面に対して垂直な中心軸(回転軸)周りで基板Wを回転させるように構成されていてもよい。図2に例示されるように、回転保持部20は、上方から見て反時計回りに基板Wを回転させてもよい。
【0020】
洗浄液供給部30は、基板Wに洗浄液L1を供給するように構成されている。洗浄液L1は、例えば、基板Wの表面Waの薄膜(例えば、シリコン酸化膜などの自然酸化膜)を除去するための酸性の薬液や、基板Wの表面Waに付着した異物(例えば、パーティクル、有機物など)を除去するためのアルカリ性の薬液を含む。酸性の薬液は、例えば、SC-2液(塩酸、過酸化水素及び純水の混合液)、HF液(フッ酸)、DHF液(希フッ酸)、HNO+HF液(硝酸及びフッ酸の混合液)などを含む。アルカリ性の薬液は、例えば、SC-1液(アンモニア、過酸化水素及び純水の混合液)、過酸化水素水などを含む。
【0021】
洗浄液供給部30は、液源31と、ポンプ32と、バルブ33と、ノズル34と、配管35とを含む。液源31は、洗浄液L1の供給源である。ポンプ32は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源31から吸引した洗浄液L1を、配管35及びバルブ33を介してノズル34に送り出すように構成されている。
【0022】
バルブ33は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管35における流体の流通を許容する開状態と、配管35における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル34は、吐出口が基板Wの表面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル34は、ポンプ32から送り出された洗浄液L1を吐出口から吐出するように構成されている。
【0023】
ノズル34は、図示しない駆動源に対して直接的又は間接的に接続されていてもよい。当該駆動源は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル34を移動させるように構成されていてもよい。配管35は、上流側から順に、液源31、ポンプ32、バルブ33及びノズル34を接続している。
【0024】
リンス液供給部40は、基板Wにリンス液L2を供給するように構成されている。リンス液L2は、例えば、基板Wの表面Waに供給された洗浄液L1及び洗浄液L1による膜の溶解成分を表面Waから除去する(洗い流す)ための液である。リンス液L2は、例えば、純水(DIW:deionized water)、オゾン水、炭酸水(CO水)、アンモニア水などを含む。
【0025】
リンス液供給部40は、液源41と、ポンプ42と、バルブ43と、ノズル44と、配管45とを含む。液源41は、リンス液L2の供給源である。ポンプ42は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源41から吸引したリンス液L2を、配管45及びバルブ43を介してノズル44に送り出すように構成されている。
【0026】
バルブ43は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管45における流体の流通を許容する開状態と、配管45における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル44は、吐出口が基板Wの表面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル44は、ポンプ42から送り出されたリンス液L2を吐出口から吐出するように構成されている。
【0027】
ノズル44は、図示しない駆動源に対して直接的又は間接的に接続されていてもよい。当該駆動源は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル44を移動させるように構成されていてもよい。配管45は、上流側から順に、液源41、ポンプ42、バルブ43及びノズル44を接続している。
【0028】
溶剤供給部50は、基板Wに有機溶剤L3(第1の有機溶剤)を供給するように構成されている。有機溶剤L3は、例えば、基板Wの表面Waに供給されたリンス液L2を表面Waから除去する(洗い流す)ための液である。有機溶剤L3は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)などを含む。
【0029】
溶剤供給部50は、液源51と、ポンプ52と、バルブ53と、ノズル54と、配管55とを含む。液源51は、有機溶剤L3の供給源である。ポンプ52は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源51から吸引した有機溶剤L3を、配管55及びバルブ53を介してノズル54に送り出すように構成されている。
【0030】
バルブ53は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管55における流体の流通を許容する開状態と、配管55における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル54は、吐出口が基板Wの表面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル54は、ポンプ52から送り出された有機溶剤L3を吐出口から吐出するように構成されている。
【0031】
ノズル54は、図示しない駆動源に対して直接的又は間接的に接続されていてもよい。当該駆動源は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル54を移動させるように構成されていてもよい。配管55は、上流側から順に、液源51、ポンプ52、バルブ53及びノズル54を接続している。
【0032】
溶剤供給部60は、基板Wに有機溶剤L4(第2の有機溶剤)を供給するように構成されている。有機溶剤L4は、例えば、基板Wの表面Waに供給された有機溶剤L3を表面Waから除去する(洗い流す)ための液である。有機溶剤L4の詳細については、後述する。
【0033】
溶剤供給部60は、液源61と、ポンプ62と、バルブ63と、ノズル64と、配管65とを含む。液源61は、有機溶剤L4の供給源である。ポンプ62は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源61から吸引した有機溶剤L4を、配管65及びバルブ63を介してノズル64に送り出すように構成されている。
【0034】
バルブ63は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管65における流体の流通を許容する開状態と、配管65における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル64は、吐出口が基板Wの表面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル64は、ポンプ62から送り出された有機溶剤L4を吐出口から吐出するように構成されている。
【0035】
ノズル64は、図示しない駆動源に対して直接的又は間接的に接続されていてもよい。当該駆動源は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル64を移動させるように構成されていてもよい。配管65は、上流側から順に、液源61、ポンプ62、バルブ63及びノズル64を接続している。
【0036】
溶剤供給部70は、基板Wに有機溶剤L5(第3の有機溶剤)を供給するように構成されている。有機溶剤L5は、例えば、基板Wの表面Waに供給された有機溶剤L4を表面Waから除去する(洗い流す)ための液である。有機溶剤L5の詳細については、後述する。
【0037】
溶剤供給部70は、液源71と、ポンプ72と、バルブ73と、ノズル74と、配管75とを含む。液源71は、有機溶剤L5の供給源である。ポンプ72は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源71から吸引した有機溶剤L5を、配管75及びバルブ73を介してノズル74に送り出すように構成されている。
【0038】
バルブ73は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管75における流体の流通を許容する開状態と、配管75における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル74は、吐出口が基板Wの表面Waに向かうように基板Wの上方に配置されている。ノズル74は、ポンプ72から送り出された有機溶剤L5を吐出口から吐出するように構成されている。
【0039】
ノズル74は、図示しない駆動源に対して直接的又は間接的に接続されていてもよい。当該駆動源は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの上方において、水平方向又は鉛直方向に沿ってノズル74を移動させるように構成されていてもよい。配管75は、上流側から順に、液源71、ポンプ72、バルブ73及びノズル74を接続している。
【0040】
[基板処理用の液体]
ここで、本明細書において基板処理に用いられる液体について、より詳しく説明する。
【0041】
有機溶剤L4は、水に対する溶解性が有機溶剤L3よりも低く、且つ、有機溶剤L3よりも沸点が高い溶剤である。有機溶剤L5は、水に対する溶解性が有機溶剤L3よりも低く、且つ、有機溶剤L4よりも沸点が高い溶剤である。有機溶剤L4,L5は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル(nBA)又は乳酸エチルを主としたエステル類、シクロヘキサノン、高級アルコール(例えば、1-ペンタノール)、フロン系溶剤(例えば、3M社製「NOVEC(登録商標)7300」)、塩素系溶剤、長鎖アルカン(例えば、オクタン)および芳香族炭化水素(例えば、トルエン)からなる群から選択される少なくとも一つの溶剤であってもよい。
【0042】
有機溶剤L4,L5は、複数の有機溶剤が混合された混合液であってもよい。有機溶剤L4,L5は、上記の群から選択される2つ以上の溶剤が混合された混合液であってもよい。この場合、例えば、水への溶解性が異なる複数の有機溶剤を混合することにより、沸点等のパラメータを容易に調節することが可能となる。有機溶剤L4,L5は、例えば、10質量%~90質量%のPGMEと90質量%~10質量%のPGMEAとが混合された混合液であってもよいし、10質量%~90質量%のPGMEと90質量%~10質量%の酢酸ブチルとが混合された混合液であってもよい。有機溶剤L4,L5は、例えば、70質量%のPGMEと及び30質量%のPGMEAとが混合された混合液(OK73シンナー:東京応化工業株式会社製)であってもよい。
【0043】
有機溶剤L3の溶解度パラメータ(以下、「SP値」ともいう。)は、リンス液L2のSP値よりも小さくてもよい。有機溶剤L4のSP値は、有機溶剤L3のSP値よりも小さくてもよい。有機溶剤L5のSP値は、有機溶剤L4のSP値よりも小さくてもよい。SP値は物質間の親和性の尺度を示すパラメータであり、2つの成分のSP値の差が小さいほど溶解度が大きくなることが経験的に知られている。SP値を推定する方法としては、例えば、Hansen法[C. M. Hansen: J. Paint Tech., 39 [505], 104-117 (1967)]、Hoy法[H. L. Hoy:J.Paint Tech., 42 [540], 76-118 (1970)]、Fedors法[R. F. Fedors: Polym. Eng. Sci., 14 [2], 147-154 (1974)]などが知られている。
【0044】
表1に、本明細書に例示された液体のうちのいくつかについて、沸点、水溶解性及びSP値のデータを示す(出典:小林敏勝、外20名、「溶解性パラメーター適用事例集」、株式会社情報機構、2007年3月)。なお、表1のSP値は、Fedors法によって計算されたものである。
【表1】
【0045】
[コントローラの詳細]
コントローラCtrは、図3に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0046】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、処理ユニット10を含む基板処理システム1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMは、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。なお、以下では、基板処理システム1の各部は、回転部21、保持部23、ポンプ32,42,52,62,72、バルブ33,43,53,63,73を含みうる。
【0047】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データなどを記憶してもよい。記憶部M2は、例えば、基板Wの処理のための処理条件などを記憶していてもよい。
【0048】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、基板処理システム1の各部を動作させるための信号を生成してもよい。
【0049】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を、基板処理システム1の各部に送信するように構成されている。
【0050】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、図4に示されるように、ハードウェア上の構成として回路C1を含んでいてもよい。回路C1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路C1は、例えば、プロセッサC2と、メモリC3と、ストレージC4と、ドライバC5と、入出力ポートC6とを含んでいてもよい。
【0051】
プロセッサC2は、メモリC3及びストレージC4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートC6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを実現するように構成されていてもよい。メモリC3及びストレージC4は、記憶部M2として機能してもよい。ドライバC5は、基板処理システム1の各部をそれぞれ駆動するように構成された回路であってもよい。入出力ポートC6は、ドライバC5と基板処理システム1の各部との間で、信号の入出力を仲介するように構成されていてもよい。
【0052】
基板処理システム1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。基板処理システム1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路C1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路C1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路C1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサC2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサC2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサC2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0053】
[基板処理方法]
続いて、図5図7を参照して、基板Wの処理方法について説明する。なお、当該方法の開始前に、載置部4の載置台にキャリア7が予め載置される。当該キャリア7内には、表面WaにパターンPが形成された少なくとも一枚の基板Wが収容されている。
【0054】
まず、コントローラCtrが搬送アームA1,A2を制御して、キャリア7から基板Wを1枚取り出し、いずれかの処理ユニット10内に搬送する。処理ユニット10内に搬送された基板Wは、保持部23に載置される。
【0055】
次に、コントローラCtrが回転部21及び保持部23(回転保持部20)を制御して、基板Wの裏面を保持部23で吸着保持し、且つ、基板Wを回転させる。この状態で、コントローラCtrがポンプ32及びバルブ33(洗浄液供給部30)を制御して、ノズル34から基板Wの表面Waの中央近傍に洗浄液L1を供給させる(図5のステップS10及び図6(a)参照)。基板Wの表面Waに供給された洗浄液L1は、基板Wの回転によって、基板Wの中央部から外周縁に向けて表面Waの全体を流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。そのため、ノズル34からの洗浄液L1の供給が継続されている間、基板Wの表面Waに洗浄液L1の液膜が形成される。このとき、基板Wが洗浄液L1によって洗浄される。
【0056】
ステップS10において、例えば、以下の処理条件1で基板Wに洗浄液L1が供給されてもよい。
<処理条件1>
基板Wの回転数: 1000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
洗浄液L1の供給時間: 30秒程度
洗浄液L1の吐出流量: 1000ml/min程度
【0057】
次に、コントローラCtrが回転部21及び保持部23(回転保持部20)を制御して、基板Wの裏面を保持部23で吸着保持し、且つ、基板Wを回転させる。この状態で、コントローラCtrがポンプ42及びバルブ43(リンス液供給部40)を制御して、ノズル44から基板Wの表面Waの中央近傍にリンス液L2を供給させる(図5のステップS11及び図6(b)参照)。基板Wの表面Waに供給されたリンス液L2は、基板Wの回転によって、基板Wの中央部から外周縁に向けて洗浄液L1と置き換わりながら表面Waの全体を流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。そのため、基板Wの表面Waから洗浄液L1が排出されると共に、ノズル44からのリンス液L2の供給が継続されている間、基板Wの表面Waにリンス液L2の液膜が形成される。
【0058】
ステップS11において、例えば、以下の処理条件2で基板Wにリンス液L2が供給されてもよい。
<処理条件2>
基板Wの回転数: 1000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
リンス液L2の供給時間: 30秒程度
リンス液L2の吐出流量: 1000ml/min程度
【0059】
次に、コントローラCtrが回転部21及び保持部23(回転保持部20)を制御して、基板Wの裏面を保持部23で吸着保持し、且つ、基板Wを回転させる。この状態で、コントローラCtrがポンプ52及びバルブ53(溶剤供給部50)を制御して、ノズル54から基板Wの表面Waの中央近傍に有機溶剤L3を供給させる(図5のステップS12及び図6(c)参照)。基板Wの表面Waに供給された有機溶剤L3は、基板Wの回転によって、基板Wの中央部から外周縁に向けてリンス液L2と置き換わりながら表面Waの全体を流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。そのため、基板Wの表面Waからリンス液L2が排出されると共に、ノズル54からの有機溶剤L3の供給が継続されている間、基板Wの表面Waに有機溶剤L3の液膜が形成される。
【0060】
ステップS12において、例えば、以下の処理条件3で基板Wに有機溶剤L3が供給されてもよい。
<処理条件3>
基板Wの回転数: 1000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
有機溶剤L3の供給時間: 30秒程度
有機溶剤L3の吐出流量: 100ml/min程度
【0061】
次に、コントローラCtrが回転部21及び保持部23(回転保持部20)を制御して、基板Wの裏面を保持部23で吸着保持し、且つ、基板Wを回転させる。この状態で、コントローラCtrがポンプ62及びバルブ63(溶剤供給部60)を制御して、ノズル64から基板Wの表面Waの中央近傍に有機溶剤L4を供給させる(図5のステップS13及び図7(a)参照)。基板Wの表面Waに供給された有機溶剤L4は、基板Wの回転によって、基板Wの中央部から外周縁に向けて有機溶剤L3と置き換わりながら表面Waの全体を流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。そのため、基板Wの表面Waから有機溶剤L3が排出されると共に、ノズル64からの有機溶剤L4の供給が継続されている間、基板Wの表面Waに有機溶剤L4の液膜が形成される。
【0062】
ステップS13において、例えば、以下の処理条件4で基板Wに有機溶剤L4が供給されてもよい。
<処理条件4>
基板Wの回転数: 1000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
有機溶剤L4の供給時間: 10秒程度
有機溶剤L4の吐出流量: 100ml/min程度
【0063】
次に、コントローラCtrが回転部21及び保持部23(回転保持部20)を制御して、基板Wの裏面を保持部23で吸着保持し、且つ、基板Wを回転させる。この状態で、コントローラCtrがポンプ72及びバルブ73(溶剤供給部70)を制御して、ノズル74から基板Wの表面Waの中央近傍に有機溶剤L5を供給させる(図5のステップS14及び図7(b)参照)。基板Wの表面Waに供給された有機溶剤L5は、基板Wの回転によって、基板Wの中央部から外周縁に向けて有機溶剤L4と置き換わりながら表面Waの全体を流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。そのため、基板Wの表面Waから有機溶剤L4が排出されると共に、ノズル74からの有機溶剤L5の供給が継続されている間、基板Wの表面Waに有機溶剤L5の液膜が形成される。
【0064】
ステップS14において、例えば、以下の処理条件5で基板Wに有機溶剤L5が供給されてもよい。
<処理条件5>
基板Wの回転数: 1000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
有機溶剤L5の供給時間: 10秒程度
有機溶剤L5の吐出流量: 100ml/min程度
【0065】
次に、コントローラCtrが回転部21及び保持部23(回転保持部20)を制御して、基板Wの裏面を保持部23で吸着保持し、且つ、基板Wを回転させる。これにより、基板Wの表面Waの有機溶剤L5が基板Wの外周縁から外方に振り切られ、基板Wの乾燥が行われる(図5のステップS15及び図7(c)参照)。以上により、基板Wの処理が完了する。
【0066】
ステップS15において、例えば、以下の処理条件6で基板Wが乾燥されてもよい。
<処理条件6>
基板Wの回転数: 1500rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
基板Wの乾燥時間: 30秒程度
【0067】
[作用]
以上の例によれば、基板Wに対して、有機溶剤L3、有機溶剤L4、有機溶剤L5がこの順に供給される。有機溶剤L4,L5は、水に対する溶解性が有機溶剤L3よりも低いので、大気中の水分を比較的取り込み難い。そのため、有機溶剤L3を有機溶剤L4で置換し、その後さらに有機溶剤L4を有機溶剤L5で置換した後に基板Wの乾燥が行われると、基板Wに水分が極めて残存し難くなる。また、有機溶剤L4は、有機溶剤L3よりも沸点が高いので、比較的気化し難い。加えて、有機溶剤L5は、有機溶剤L4よりも沸点が高いので、いっそう気化し難い。そのため、基板Wの温度低下が極めて生じ難い。したがって、加熱源や吸湿装置を追加することなく、雰囲気中の水分の結露や吸湿が抑制される。その結果、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能となる。
【0068】
以上の例によれば、リンス液L2、有機溶剤L3、有機溶剤L4、有機溶剤L5の順に、SP値が小さくなるように設定されうる。この場合、有機溶剤L3はリンス液L2と溶解しやすく、有機溶剤L4は有機溶剤L3と溶解しやすく、有機溶剤L5は有機溶剤L4と溶解しやすくなる。したがって、有機溶剤L3が基板Wに供給されると、リンス液L2が有機溶剤L3に混ざり合って基板Wから排出され、リンス液L2が基板Wに残存し難くなる。同様に、有機溶剤L4が基板Wに供給されると、有機溶剤L3が有機溶剤L4に混ざり合って基板Wから排出され、有機溶剤L3が基板Wに残存し難くなる。さらに同様に、有機溶剤L5が基板Wに供給されると、有機溶剤L4が有機溶剤L5に混ざり合って基板Wから排出され、有機溶剤L4が基板Wに残存し難くなる。その結果、リンス液L2、有機溶剤L3及び有機溶剤L4が次々と後続の液に置換されるので、特にリンス液としてDIW(純水)が用いられている場合には、ウォーターマークの発生をより抑制することが可能となる。
【0069】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0070】
(1)ステップS13において、基板Wの回転の加速及び減速を繰り返しつつ、基板Wに有機溶剤L4を供給してもよい。例えば、ステップS13において、上記の処理条件4で基板Wに有機溶剤L4を供給した後に、下記の処理条件4Aにて有機溶剤L4の供給を継続してもよい。すなわち、処理条件4Aでは、基板Wの回転数を100rpm程度と1000rpm程度との間で変動させながら、基板Wの回転を加減速させてもよい。
<処理条件4A>
基板Wの回転数: 100rpm程度~1000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
有機溶剤L4の供給時間: 30秒程度
有機溶剤L4の吐出流量: 100ml/min程度
【0071】
同様に、ステップS14において、基板Wの回転の加速及び減速を繰り返しつつ、基板Wに有機溶剤L5を供給してもよい。例えば、ステップS14において、上記の処理条件5で基板Wに有機溶剤L5を供給した後に、下記の処理条件5Aにて有機溶剤L5の供給を継続してもよい。すなわち、処理条件5Aでは、基板Wの回転数を100rpm程度と2000rpm程度との間で変動させながら、基板Wの回転を加減速させてもよい。
<処理条件5A>
基板Wの回転数: 100rpm程度~2000rpm程度
基板Wの回転の加速度: 500rpm/s程度
有機溶剤L4の供給時間: 30秒程度
有機溶剤L4の吐出流量: 100ml/min程度
【0072】
上記の場合、基板Wの回転の加速時には、基板W上の液が、基板Wの径方向において、基板Wの外周縁側に向かう(図8(a)参照)。そのため、基板WにパターンPが形成されている場合には、パターンP間の隙間内において、上から下に向かった後に基板Wの回転中心側に向かう回転流が生ずる(同参照)。一方、基板Wの回転の減速時には、基板W上の液が、基板Wの径方向において、基板Wの回転中心側に向かう(図8(b)参照)。そのため、基板WにパターンPが形成されている場合には、パターンP間の隙間内において、基板Wの回転中心側で且つ斜め下方に向かう流れが生ずる(同参照)。したがって、基板Wの回転の加減速が繰り返されると、基板W上の液は、基板Wの径方向において揺動する。そのため、ステップS13においては、有機溶剤L4が有機溶剤L3に対して置換されやすくなり、ステップS14においては、有機溶剤L5が有機溶剤L4に対して置換されやすくなる。特に、基板WにパターンPが形成されている場合には、図8(c)に例示されるように、パターンP間の隙間に入り込んだ有機溶剤が、当該隙間内において後続の有機溶剤と混合され、前のステップで供給された有機溶剤が当該隙間から排出されやすくなる。したがって、前のステップで供給された有機溶剤を基板Wから効果的に排出することが可能となる。
【0073】
処理条件4A,5Aに例示されるように、ステップS14における基板Wの最高回転数(例えば2000rpm程度)は、ステップS13における基板Wの最高回転数(例えば1000rpm程度)よりも大きくてもよい。この場合、有機溶剤L5により大きな遠心力が作用するので、有機溶剤L4に対する有機溶剤L5への置換を促進させることが可能となる。
【0074】
(2)上記のように、ステップS13,S14において基板Wの回転の加速及び減速を繰り返す場合、基板Wの低速回転時(例えば、100rpm程度~300rpm程度の時)に、基板Wへの有機溶剤L4,L5の供給量を一時的に増加させてもよい。この場合、基板Wの低速回転時において、有機溶剤L4,L5の液溜まりPUが基板Wの表面Waに形成される(図9(a)参照)。そのため、その後に基板Wの回転数が加速すると、比較的質量の大きな液溜まりPUが塊状態のまま基板Wの外周縁に向けて移動する(図9(b)参照)。このとき、基板W上の液も、塊状の液溜まりPUの移動に引き寄せられて、基板Wの外周縁に移動する。特に、基板WにパターンPが形成されている場合には、パターンP間の隙間に入り込んだ液(前のステップで供給された有機溶剤)が、塊状の液溜まりPUの移動によって当該隙間から外方に引き出される。したがって、前のステップで供給された有機溶剤を基板Wから効果的に排出することが可能となる。
【0075】
(3)以上の例では、有機溶剤L4の供給後に有機溶剤L5が基板Wに供給されていたが、有機溶剤L5の供給が行われなくてもよい。すなわち、図5のステップS14が省略されてもよい。あるいは、有機溶剤L5の供給後に、さらに別の有機溶剤が基板Wに供給されてもよい。
【0076】
有機溶剤L3の後に複数の有機溶剤が供給される形態において、これらの複数の有機溶剤を、第2の有機溶剤、第3の有機溶剤、・・・、第Nの有機溶剤(Nは2以上の自然数)と呼ぶこととする。この場合、第nの有機溶剤(nは、3~Nのいずれかの自然数)は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第n-1の有機溶剤よりも沸点が高くてもよい。また、第nの有機溶剤のSP値は、第n-1の有機溶剤のSP値よりも小さく設定されてもよい。
【0077】
(4)以上の例では、各種液が基板Wの表面Waに供給されていたが、基板Wの裏面に当該各種液が供給されてもよい。この場合も、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能となる。
【0078】
(5)パターンPが形成されていない基板Wに本明細書の技術を適用してもよい。この場合も、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能となる。
【0079】
[他の例]
例1.基板処理方法の一例は、基板を回転させつつ基板に洗浄液を供給して、基板に洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、第1の工程の後に、基板を回転させつつ基板にリンス液を供給して、基板から洗浄液を排出すると共に、基板にリンス液の液膜を形成する第2の工程と、第2の工程の後に、基板を回転させつつ基板に第1の有機溶剤を供給して、基板からリンス液を排出すると共に、基板に第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、第3の工程の後に、基板を回転させつつ基板に第2の有機溶剤を供給して、基板から第1の有機溶剤を排出すると共に、基板に第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、第4の工程の後に、基板を乾燥させる第5の工程とを含んでいてもよい。第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第1の有機溶剤よりも沸点が高くてもよい。
【0080】
ところで、基板へのリンス液の供給後に基板の乾燥が行われると、基板にパターンが形成されている場合には、リンス液の表面張力によってパターンの破損や倒壊の懸念がある。また、特に基板の表面が疎水化されている場合に顕著であるが、基板の外周部近傍において、液に作用する遠心力が大きくなり、液膜が途切れた状態が出現しやすくなる。この場合、基板のうち液膜が途切れた領域において、ウォーターマークが発生し、微小なパーティクルが付着する懸念がある。そのため、リンス液の後に、揮発性を有する有機溶剤(例えば、IPA(イソプロピルアルコール)など)を基板に供給し、リンス液を有機溶剤で置換した後に基板の乾燥を行う手法が知られている。
【0081】
しかしながら、この場合、有機溶剤の気化熱により基板が冷却され、雰囲気中の水分が基板上で結露して、基板にウォーターマークが発生する懸念がある。また、特にIPAを用いた場合、IPAの吸湿性が高いため、基板にウォーターマークが発生する懸念が高まる。そのため、基板を加熱しながら基板処理する手法(特許文献1参照)や、基板の処理環境を乾燥雰囲気とする手法が知られている。これらの場合、加熱源や吸湿装置の追加が必要となり、装置のコストやランニングコストが増加しうる。
【0082】
一方、例1の場合、第1の有機溶剤の供給後に、第2の有機溶剤が供給される。第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低いので、大気中の水分を比較的取り込み難い。そのため、第1の有機溶剤を第2の有機溶剤で置換した後に基板の乾燥が行われると、基板に水分が残存し難くなる。また、第2の有機溶剤は、第1の有機溶剤よりも沸点が高いので、比較的気化し難い。そのため、基板の温度低下が生じ難い。したがって、加熱源や吸湿装置を追加することなく、雰囲気中の水分の結露や吸湿が抑制される。その結果、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生を抑制することが可能となる。
【0083】
例2.例1の方法において、第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さくてもよく、第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さくてもよい。溶解度パラメータ(SP値)が近い溶液同士ほど溶け合う傾向が強いことが知られている。そのため、例2によれば、第1の有機溶剤はリンス液と溶解しやすく、第2の有機溶剤は第1の有機溶剤と溶解しやすい。したがって、第1の有機溶剤が基板に供給されると、リンス液が第1の有機溶剤に混ざり合って基板から排出され、リンス液が基板に残存し難くなる。同様に、第2の有機溶剤が基板に供給されると、第1の有機溶剤が第2の有機溶剤に混ざり合って基板から排出され、第1の有機溶剤が基板に残存し難くなる。その結果、特にリンス液として純水が用いられている場合には、ウォーターマークの発生をより抑制することが可能となる。
【0084】
例3.例1又は例2の方法において、第2の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液であってもよい。この場合、例えば、水への溶解性が異なる複数の有機溶剤を混合することにより、沸点等のパラメータを容易に調節することが可能となる。
【0085】
例4.例1~例3のいずれかの方法において、第4の工程は、基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、基板に第2の有機溶剤を供給することを含んでいてもよい。この場合、基板上の液は、基板の径方向において、基板の外周縁側に向かったり、基板の中心側に向かったりする。すなわち、基板上の液は、基板の径方向において揺動する。そのため、第2の有機溶剤が第1の有機溶剤に対して置換されやすくなる。特に、基板にパターンが形成されている場合には、パターン間の隙間に入り込んだ第1の有機溶剤が、当該隙間内において第2の有機溶剤と混合され、当該隙間から第1の有機溶剤が排出されやすくなる。したがって、第1の有機溶剤を基板から効果的に排出することが可能となる。
【0086】
例5.例4の方法において、第4の工程は、基板の低速回転時において、基板への第2の有機溶剤の供給量を増加させることを含んでいてもよい。この場合、基板の低速回転時において、第2の有機溶剤の液溜まりが基板の表面に形成される。そのため、その後に基板の回転数が加速すると、比較的質量の大きな液溜まりが塊状態のまま基板の外周縁に向けて移動する。このとき、基板上の液も、塊状の液溜まりの移動に引き寄せられて、基板の外周縁に移動する。特に、基板にパターンが形成されている場合には、パターン間の隙間に入り込んだ第1の有機溶剤が、塊状の液溜まりの移動によって当該隙間から外方に引き出される。したがって、第1の有機溶剤を基板から効果的に排出することが可能となる。
【0087】
例6.例1~例5の方法は、第4の工程の後で且つ第5の工程の前に、基板を回転させつつ基板に第3の有機溶剤を供給して、基板から第2の有機溶剤を排出すると共に、基板に第3の有機溶剤の液膜を形成する第6の工程をさらに含んでいてもよい。第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第2の有機溶剤よりも沸点が高くてもよい。この場合、第2の有機溶剤の供給後に、第3の有機溶剤が供給される。第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が第2の有機溶剤よりも低いので、大気中の水分をいっそう取り込み難い。そのため、第2の有機溶剤を第3の有機溶剤で置換した後に基板の乾燥が行われると、基板に水分が極めて残存し難くなる。また、第3の有機溶剤は、第2の有機溶剤よりも沸点が高いので、いっそう気化し難い。そのため、基板の温度低下が極めて生じ難い。したがって、加熱源や吸湿装置を追加することなく、雰囲気中の水分の結露や吸湿が抑制される。その結果、基板処理のコストを抑制しつつ、ウォーターマークの発生をさらに抑制することが可能となる。
【0088】
例7.例6の方法において、第3の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さくてもよい。この場合、第3の有機溶剤は第2の有機溶剤と溶解しやすい。そのため、第3の有機溶剤が基板に供給されると、第2の有機溶剤が第3の有機溶剤に混ざり合って基板から排出され、第2の有機溶剤が基板に残存し難くなる。その結果、特にリンス液として純水が用いられている場合には、ウォーターマークの発生をより抑制することが可能となる。
【0089】
例8.例6又は例7の方法において、第3の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液であってもよい。この場合、例えば、水への溶解性が異なる複数の有機溶剤を混合することにより、沸点等のパラメータを容易に調節することが可能となる。
【0090】
例9.例6~例8のいずれかの方法において、第6の工程は、基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、基板に第3の有機溶剤を供給することを含んでいてもよい。この場合、例4と同様に、基板上の液は、基板の径方向において揺動する。そのため、第3の有機溶剤が第2の有機溶剤に対して置換されやすくなる。特に、基板にパターンが形成されている場合には、パターン間の隙間に入り込んだ第2の有機溶剤が、当該隙間内において第3の有機溶剤と混合され、当該隙間から第2の有機溶剤が排出されやすくなる。したがって、第2の有機溶剤を基板から効果的に排出することが可能となる。
【0091】
例10.例9の方法において、第6の工程における基板の最高回転数は、第4の工程における基板の最高回転数よりも大きくてもよい。この場合、第3の有機溶剤により大きな遠心力が作用するので、第2の有機溶剤に対する第3の有機溶剤への置換を促進させることが可能となる。
【0092】
例11.例9又は例10の方法において、第6の工程は、基板の低速回転時において、基板への第3の有機溶剤の供給量を増加させることを含んでいてもよい。この場合、例5と同様に、基板上の液が、塊状の液溜まりの移動に引き寄せられて、基板の外周縁に移動する。特に、基板にパターンが形成されている場合には、パターン間の隙間に入り込んだ第2の有機溶剤が、塊状の液溜まりの移動によって当該隙間から外方に引き出される。したがって、第2の有機溶剤を基板から効果的に排出することが可能となる。
【0093】
例12.基板処理装置の一例は、基板を保持して回転させるように構成された回転保持部と、基板に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部と、基板にリンス液を供給するように構成されたリンス液供給部と、基板に第1の有機溶剤を供給するように構成された第1の溶剤供給部と、基板に第2の有機溶剤を供給するように構成された第2の溶剤供給部と、制御部とを備えていてもよい。第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第1の有機溶剤よりも沸点が高くてもよい。制御部は、回転保持部及び洗浄液供給部を制御して、回転保持部による基板の回転中に、基板に洗浄液の液膜を形成する第1の処理と、第1の処理の後に、回転保持部及びリンス液供給部を制御して、回転保持部による基板の回転中に、基板にリンス液の液膜を形成しつつ、基板から洗浄液を排出する第2の処理と、第2の処理の後に、回転保持部及び第1の溶剤供給部を制御して、回転保持部による基板の回転中に、基板に第1の有機溶剤の液膜を形成しつつ、基板からリンス液を排出する第3の処理と、第3の処理の後に、回転保持部及び第2の溶剤供給部を制御して、回転保持部による基板の回転中に、基板に第2の有機溶剤の液膜を形成しつつ、基板から第1の有機溶剤を排出する第4の処理と、第4の処理の後に、回転保持部を制御して、基板を乾燥させる第5の処理とを実行するように構成されていてもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。
【0094】
例13.例12の装置において、第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さくてもよく、第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さくてもよい。この場合、例2の方法と同様の作用効果が得られる。
【0095】
例14.例12又は例13の装置において、第2の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液であってもよい。この場合、例3の方法と同様の作用効果が得られる。
【0096】
例15.例12~例14のいずれかの装置において、第4の処理は、回転保持部が基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、第2の溶剤供給部が基板に第2の有機溶剤を供給することを含んでいてもよい。この場合、例4の方法と同様の作用効果が得られる。
【0097】
例16.例15の装置において、第4の処理は、基板の低速回転時に、第2の溶剤供給部が第2の有機溶剤の供給量を増加させることを含んでいてもよい。この場合、例5の方法と同様の作用効果が得られる。
【0098】
例17.例12~例16のいずれかの装置は、基板に第3の有機溶剤を供給するように構成された第3の溶剤供給部をさらに備えていてもよい。第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が第1の有機溶剤よりも低く、且つ、第2の有機溶剤よりも沸点が高くてもよい。制御部は、第4の処理の後で且つ第5の処理の前に、回転保持部及び第3の溶剤供給部を制御して、回転保持部による基板の回転中に、基板に第3の有機溶剤の液膜を形成しつつ、基板から第2の有機溶剤を排出する第6の処理をさらに実行するように構成されていてもよい。この場合、例6の方法と同様の作用効果が得られる。
【0099】
例18.例17の装置において、第3の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さくてもよい。この場合、例7の方法と同様の作用効果が得られる。
【0100】
例19.例17又は例18の装置において、第3の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液であってもよい。この場合、例8の方法と同様の作用効果が得られる。
【0101】
例20.例17~例19のいずれかの装置において、第6の処理は、回転保持部が基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、第3の溶剤供給部が基板に第3の有機溶剤を供給することを含んでいてもよい。この場合、例9の方法と同様の作用効果が得られる。
【0102】
例21.例20の装置において、第6の処理における基板の最高回転数は、第4の処理における基板の最高回転数よりも大きくてもよい。この場合、例10の方法と同様の作用効果が得られる。
【0103】
例22.例20又は例21の装置において、第6の処理は、基板の低速回転時に、第3の溶剤供給部が第3の有機溶剤の供給量を増加させることを含んでいてもよい。この場合、例11の方法と同様の作用効果が得られる。
【0104】
例23.コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例は、例1~例11のいずれかの方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録していてもよい。この場合、例1の方法と同様の作用効果が得られる。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、一時的でない有形の媒体(non-transitory computer recording medium)(例えば、各種の主記憶装置又は補助記憶装置)又は伝播信号(transitory computer recording medium)(例えば、ネットワークを介して提供可能なデータ信号)を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…基板処理システム(基板処理装置)、10…処理ユニット、20…回転保持部、30…洗浄液供給部、40…リンス液供給部、50…溶剤供給部(第1の溶剤供給部)、60…溶剤供給部(第2の溶剤供給部)、70…溶剤供給部(第3の溶剤供給部)、Ctr…コントローラ(制御部)、L1…洗浄液、L2…リンス液、L3…有機溶剤(第1の有機溶剤)、L4…有機溶剤(第2の有機溶剤)、L5…有機溶剤(第3の有機溶剤)、P…パターン、RM…記録媒体、W…基板、Wa…表面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させるように構成された回転保持部と、
前記基板に洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給部と、
前記基板にリンス液を供給するように構成されたリンス液供給部と、
前記基板に第1の有機溶剤を供給するように構成された第1の溶剤供給部と、
前記基板に第2の有機溶剤を供給するように構成された第2の溶剤供給部と、
前記基板に第3の有機溶剤を供給するように構成された第3の溶剤供給部と、
制御部とを備え、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さく、
前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さく、
前記制御部は、
前記回転保持部及び前記洗浄液供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の処理と、
前記第1の処理の後に、前記回転保持部及び前記リンス液供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成しつつ、前記基板から前記洗浄液を排出する第2の処理と、
前記第2の処理の後に、前記回転保持部及び前記第1の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記リンス液を排出する第3の処理と、
前記第3の処理の後に、前記回転保持部及び前記第2の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出する第4の処理と、
前記第4の処理の後に、前記回転保持部を制御して、前記基板を乾燥させる第5の処理と
前記第4の処理の後で且つ前記第5の処理の前に、前記回転保持部及び前記第3の溶剤供給部を制御して、前記回転保持部による前記基板の回転中に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成しつつ、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出する第6の処理とを実行するように構成されている、基板処理装置。
【請求項2】
前記リンス液は、純水である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)であり、
前記第2の有機溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)である、請求項1又は2に記載の装置
【請求項4】
前記第2の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第4の処理は、前記回転保持部が前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記第2の溶剤供給部が前記基板に第2の有機溶剤を供給することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第4の処理は、前記基板の低速回転時に、前記第2の溶剤供給部が前記第2の有機溶剤の供給量を増加させることを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第6の処理は、前記回転保持部が前記基板の回転の加速及び減速を繰り返しつつ、前記第3の溶剤供給部が前記基板に第3の有機溶剤を供給することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第6の処理は、前記基板の低速回転時に、前記第3の溶剤供給部が前記第3の有機溶剤の供給量を増加させることを含む、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記第6の処理における前記基板の最高回転数は、前記第4の処理における前記基板の最高回転数よりも大きい、請求項のいずれか一項に記載の装置
【請求項10】
前記第3の有機溶剤は、複数種類の有機溶剤が混合された混合液である、請求項~9のいずれか一項に記載の装置
【請求項11】
基板を回転させつつ前記基板に洗浄液を供給して、前記基板に前記洗浄液の液膜を形成する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板にリンス液を供給して、前記基板から前記洗浄液を排出すると共に、前記基板に前記リンス液の液膜を形成する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第1の有機溶剤を供給して、前記基板から前記リンス液を排出すると共に、前記基板に前記第1の有機溶剤の液膜を形成する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記基板を回転させつつ前記基板に第2の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第1の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第2の有機溶剤の液膜を形成する第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記基板を乾燥させる第5の工程と、
前記第4の工程の後で且つ前記第5の工程の前に、前記基板を回転させつつ前記基板に第3の有機溶剤を供給して、前記基板から前記第2の有機溶剤を排出すると共に、前記基板に前記第3の有機溶剤の液膜を形成する第6の工程とを含み、
前記第2の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第1の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第3の有機溶剤は、水に対する溶解性が前記第1の有機溶剤よりも低く、且つ、前記第2の有機溶剤よりも沸点が高く、
前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記リンス液の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さく、
前記第2の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、前記第1の有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)よりも小さい、基板処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
前記リンス液は純水である、請求項12に記載の記録媒体。