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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124712
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240906BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240906BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101H
H01L21/302 101F
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032588
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030BA10
4K030BA42
4K030BA43
4K030BA46
4K030DA06
4K030EA04
4K030FA01
4K030FA10
4K030GA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030KA41
5F004AA15
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB19
5F004BB24
5F004BD04
5F004DA00
5F004DA04
5F004DA20
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DA27
5F004DA29
5F004DB12
5F004DB13
5F004DB14
5F045AA08
5F045AB04
5F045AB31
5F045AB33
5F045AC15
5F045AC16
5F045BB08
5F045DP19
5F045DP28
5F045EB06
5F045EE13
5F045EE18
5F045EF03
5F045EH06
5F045EH13
5F045EK06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドライプロセスで処理容器内の金属酸化膜を除去する処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】処理容器内にハロゲン含有ガスを供給し、前記処理容器内の金属酸化膜を除去する工程を有する方法であって、プリコート工程S10と、成膜工程S20と、判定工程S30と、膜除去工程S40と、を有する。プリコート工程S10、成膜工程S20及び膜除去工程S40は、同じ処理容器内で行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内にハロゲン含有ガスを供給し、前記処理容器内の金属酸化膜を除去する工程を有する、
処理方法。
【請求項2】
前記金属酸化膜を除去する工程は、前記処理容器内を室温以上40℃以下の温度に維持することを含む、
請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記ハロゲン含有ガスは、フッ化水素ガスであり、
前記金属酸化膜は、酸化アルミニウム膜であり、
前記金属酸化膜を除去する工程は、前記処理容器内を13.3kPa以上に維持することを含む、
請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記処理容器内に酸素ラジカルを供給し、前記金属酸化膜を除去する工程において生成される金属ハロゲン化物を除去する工程と、
前記金属酸化膜を除去する工程と前記金属ハロゲン化物を除去する工程とを交互に繰り返す工程と、
を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記処理容器を構成する材料よりも前記ハロゲン含有ガスに対するエッチング耐性が高い膜によって前記処理容器内を被覆する工程と、
前記処理容器内に基板を収容し、前記基板に前記金属酸化膜を形成することを1回又は2回以上行う工程と、
を有し、
前記被覆する工程と、前記金属酸化膜を形成することを1回又は2回以上行う工程と、前記繰り返す工程とをこの順に行う、
請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
処理容器と、
前記処理容器内にハロゲン含有ガスを供給するガス供給部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記処理容器内に前記ハロゲン含有ガスを供給し、前記処理容器内の金属酸化膜を除去する工程を行うよう前記ガス供給部を制御する、
処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーニング溶液を用いて洗浄対象物の表面に付着した金属酸化膜を洗浄により除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-167087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ドライプロセスで金属酸化膜を除去できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による処理方法は、処理容器内にハロゲン含有ガスを供給し、前記処理容器内の金属酸化膜を除去する工程を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ドライプロセスで金属酸化膜を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る処理方法を示すフローチャートである。
図2】膜除去工程の一例を示すフローチャートである。
図3】実施形態に係る処理装置を示す縦断面図である。
図4】実施形態に係る処理装置を示す横断面図である。
図5】エッチング圧力とAlO膜のエッチング量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔処理方法〕
図1及び図2を参照し、実施形態に係る処理方法について説明する。図1は、実施形態に係る処理方法を示すフローチャートである。図2は、膜除去工程S40の一例を示すフローチャートである。
【0010】
図1に示されるように、実施形態に係る処理方法は、プリコート工程S10と、成膜工程S20と、判定工程S30と、膜除去工程S40とを有する。プリコート工程S10、成膜工程S20及び膜除去工程S40は、同じ処理容器内で行われる。
【0011】
プリコート工程S10は、処理容器の内部をプリコート膜で被覆することを含む。プリコート工程S10は、例えば処理容器の内部に金属酸化膜が成膜される前に行われる。プリコート膜は、処理容器を構成する材料よりもハロゲン含有ガスに対するエッチング耐性が高い膜である。プリコート膜を構成する材料としては、アモルファスシリコン(a-Si)、窒化シリコン(SiN)、炭窒化シリコン(SiCN)、窒化チタン(TiN)、タングステンが好適である。プリコート膜で被覆する対象(以下「被覆対象」ともいう。)は、膜除去工程S40で処理容器内に供給されるハロゲン含有ガスによってエッチングされる部材、例えば石英製の部材を少なくとも含む。例えば、石英製の処理容器が用いられる場合、被覆対象は処理容器の内壁を含む。例えば、処理容器の内部で石英製の部品が用いられる場合、被覆対象は石英製の部品を含む。
【0012】
プリコート工程S10を行うことで、石英製の部材の表面がプリコート膜で被覆される。これにより、膜除去工程S40において石英製の部材のエッチングを防止できる。その結果、石英製の部品の寿命を延ばすことができる。なお、処理容器の内部にハロゲン含有ガスによってエッチングされる部材が含まれない場合や、処理容器の内部がすでにプリコート膜で被覆されている場合等には、プリコート工程S10を省略してもよい。
【0013】
成膜工程S20は、プリコート工程S10の後に行われる。成膜工程S20は、処理容器の内部に基板を収容し、該基板に対して金属酸化膜を成膜することを含む。成膜工程S20では、基板の表面に金属酸化膜が成膜されると共に、処理容器の内部にも金属酸化膜が堆積する。金属酸化膜は、酸化アルミニウム(AlO)膜、酸化チタン(TiO)膜、酸化ハフニウム(HfO)膜等のhigh-k膜であってよい。
【0014】
判定工程S30は、成膜工程S20の後に行われる。判定工程S30では、成膜工程S20を設定回数実施したか否かが判定される。実施回数が設定回数に達していない場合(判定工程S30のNO)、成膜工程S20を再び実施する。実施回数が設定回数に達している場合(判定工程S30のYES)、膜除去工程S40を実施する。このように、実施回数が設定回数に達するまで成膜工程S20が繰り返される。設定回数は、1回であってもよく、2回以上であってもよい。設定回数は、例えば成膜工程S20で処理容器の内部に堆積する金属酸化膜の膜厚に応じて定められる。
【0015】
膜除去工程S40は、判定工程S30の後に行われる。膜除去工程S40は、図2に示されるように、ハロゲン含有ガス供給工程S41と、酸素ラジカル供給工程S42と、判定工程S43とを有する。
【0016】
ハロゲン含有ガス供給工程S41は、処理容器内にハロゲン含有ガスを供給し、処理容器内の金属酸化膜を除去することを含む。金属酸化膜は、成膜工程S20で処理容器の内部に堆積した金属酸化膜を含む。ハロゲン含有ガスは、ハロゲン化水素ガスであってよい。ハロゲン化水素ガスとしては、例えばフッ化水素(HF)ガス、塩化水素(HCl)ガス、臭化水素(HBr)ガス、ヨウ化水素(HI)ガスが挙げられる。ハロゲン含有ガスは、ハロゲンガスであってもよい。ハロゲンガスとしては、例えばフッ素(F)ガス、塩素(Cl)ガス、臭素(Br)ガス、ヨウ素(I)ガスが挙げられる。ハロゲン含有ガスは、ハロゲン化水素ガスとハロゲンガスとの混合ガスであってもよい。
【0017】
金属酸化膜は、希フッ酸(DHF)を用いたウェットエッチングによりエッチングされやすい。これに対し、ハロゲン含有ガス、特に反応性の高いフッ素含有ガスを用いたドライエッチングでは、ハロゲン含有ガスが金属酸化膜と反応して金属フッ化物が生成される。金属フッ化物は非常に高い融点を有するため、エッチングして除去することが困難である。
【0018】
そこで、ハロゲン含有ガス供給工程S41では、処理容器の内部でハロゲン含有ガスを用いたウェット(液相)ライクな反応が生じる環境を形成することで、処理容器の内部の金属酸化膜を除去する。具体的には、処理容器内を室温以上40℃以下の温度に維持し、かつ処理容器内を高圧に維持することで、ウェットライクな反応が生じる環境を形成できる。室温とは、10℃以上30℃以下の温度であってよく、例えば23℃である。例えば、金属酸化膜がAlO膜、ハロゲン含有ガスがフッ化水素ガスである場合、処理容器内を室温以上40℃以下の温度に維持し、処理容器内の圧力を100Torr(13.3kPa)以上の高圧に維持することで、ウェットライクな反応が生じる環境を形成できる。
【0019】
ハロゲン含有ガス供給工程S41では、完全なウェットエッチングによる反応で金属酸化膜を除去するものではないため、金属ハロゲン化物が生成されうる。特に、ハロゲン含有ガス供給工程S41を継続して行うと、表面から深い位置まで金属酸化膜のハロゲン化が進行し、金属酸化膜のエッチングが停滞しうる。そこで、ハロゲン含有ガス供給工程S41を継続して所定の時間行うごとに、後述する酸素ラジカル供給工程S42を行って金属ハロゲン化物を除去することが好ましい。
【0020】
酸素ラジカル供給工程S42は、処理容器内に酸素ラジカルを供給することを含む。ハロゲン含有ガス供給工程S41で生成される金属ハロゲン化物(例えばAlF)は、酸素ラジカルによって、金属酸化物(例えばAlO)やハロゲン(例えばF)等の気体となって処理容器の内部から排出される。これにより、ハロゲン含有ガス供給工程S41で生成される金属ハロゲン化物が除去される。酸素ラジカルは、例えば処理容器内に酸素含有ガスを供給し、酸素含有ガスからプラズマを生成することで得られる。酸素含有ガスは、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HO)、又はこれらの組み合わせであってよい。酸素含有ガスには、水素(H)ガスが添加されてもよい。なお、金属酸化膜のエッチング速度が低下しない場合等には、酸素ラジカル供給工程S42を省略してもよい。
【0021】
判定工程S43は、酸素ラジカル供給工程S42の後に行われる。判定工程S43では、ハロゲン含有ガス供給工程S41及び酸素ラジカル供給工程S42を設定回数実施したか否かが判定される。実施回数が設定回数に達していない場合(判定工程S43のNO)、ハロゲン含有ガス供給工程S41及び酸素ラジカル供給工程S42を再び実施する。実施回数が設定回数に達している場合(判定工程S43のYES)、膜除去工程S40を終了する。このように、実施回数が設定回数に達するまで、ハロゲン含有ガス供給工程S41と酸素ラジカル供給工程S42とが交互に繰り返される。この場合、エッチング速度をほとんど低下させることなく、金属酸化膜を継続してエッチングできる。設定回数は、1回であってもよく、2回以上であってもよい。設定回数は、例えば膜除去工程S40を開始する直前に処理容器の内部に堆積した金属酸化膜の膜厚に応じて定められる。
【0022】
以上に説明したように、実施形態に係る処理方法によれば、処理容器内にハロゲン含有ガスを供給し、処理容器内の金属酸化膜を除去する。この場合、ドライプロセスで金属酸化膜を除去できる。これにより、処理容器内の金属酸化膜を除去するために生じる処理装置のダウンタイムを低減できる。その結果、処理装置の稼働率が向上する。
【0023】
これに対し、クリーニング溶液を用いたウェットエッチングによって処理容器内の金属酸化膜を除去する場合、例えば処理容器内を大気開放して金属酸化膜を除去する対象の部品を処理装置から取り外して洗浄する。このため、処理容器内の金属酸化膜を除去するために生じる装置のダウンタイムが長くなる。その結果、処理装置の稼働率が低下する。
【0024】
〔処理装置〕
図3及び図4を参照し、実施形態に係る処理装置100について説明する。図3及び図4に示されるように、処理装置100は、主として、処理容器1と、ガス供給部20と、プラズマ生成部30と、排気部40と、加熱部50と、制御部60とを備える。
【0025】
処理容器1は、下端が開口された有天井の縦型の筒体状を有する。処理容器1の全体は、例えば石英により形成される。処理容器1内の上端近傍には天井板2が設けられ、天井板2の下側の領域が封止される。天井板2は、例えば石英により形成される。処理容器1の下端の開口には、筒体状に成形された金属製のマニホールド3がシール部材4を介して連結される。シール部材4は、例えばOリングであってよい。
【0026】
マニホールド3は、処理容器1の下端を支持する。マニホールド3の下方からボート5が処理容器1内に挿入される。ボート5は、複数枚(例えば25枚~150枚)の基板Wを上下方向に沿って間隔を有して略水平に保持する。基板Wは、例えば半導体ウエハであってよい。ボート5は、例えば石英により形成される。ボート5は、例えば3本の支柱6を有し、支柱6に形成された溝により複数枚の基板Wが支持される。
【0027】
ボート5は、保温筒7を介して回転台8の上に載置される。保温筒7は、例えば石英により形成される。保温筒7は、マニホールド3の下端の開口からの放熱を抑制する。回転台8は、回転軸10の上に支持される。マニホールド3の下端の開口は、蓋体9によって開閉される。蓋体9は、例えばステンレス鋼等の金属材料により形成される。回転軸10は、蓋体9を貫通する。
【0028】
回転軸10の貫通部には、磁性流体シール11が設けられる。磁性流体シール11は、回転軸10を気密に封止し、かつ回転可能に支持する。蓋体9の周辺部とマニホールド3の下端との間には、処理容器1内の気密性を保持するためのシール部材12が設けられる。シール部材12は、例えばOリングであってよい。
【0029】
回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構に支持されたアーム13の先端に取り付けられる。アーム13が昇降することにより、ボート5、保温筒7、回転台8及び蓋体9が回転軸10と一体で昇降し、処理容器1内に対して挿脱される。
【0030】
ガス供給部20は、処理容器1内へ各種のガスを供給する。ガス供給部20は、例えば4本のガスノズル21~24を有する。ガス供給部20は、例えば4本のガスノズル21~24に加えて更に別のガスノズルを有してもよい。
【0031】
ガスノズル21は、例えば石英により形成され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に伸びるL字形状を有する。ガスノズル21は、その垂直部分がプラズマ生成空間Pの外部、例えば処理容器1内における該処理容器1の中心Cよりもプラズマ生成空間Pの側に設けられる。ガスノズル21は、例えばその垂直部分が処理容器1内における該処理容器1の中心Cよりも排気口41の側に設けられてもよい。ガスノズル21は、1又は2以上の処理ガスの供給源と接続される。処理ガスは、プリコート工程S10、成膜工程S20、膜除去工程S40で用いられる各種のガスを含んでよい。例えば、処理ガスは、シリコン含有ガスと、金属含有ガスとを含む。ガスノズル21の垂直部分には、ボート5の基板支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って複数のガス孔21aが間隔を空けて形成される。ガス孔21aは、例えば処理容器1の中心Cに配向し、処理容器1の中心Cに向かって水平方向に処理ガスを吐出する。ガス孔21aは、例えばプラズマ生成空間P側に配向してもよく、処理容器1の近傍の内壁側に配向してもよい。
【0032】
ガスノズル22は、例えば石英により形成され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に伸びるL字形状を有する。ガスノズル22は、その垂直部分がプラズマ生成空間Pの外部、例えば処理容器1内における該処理容器1の中心Cよりもプラズマ生成空間Pの側に設けられる。ガスノズル22は、例えばその垂直部分が処理容器1内における該処理容器1の中心Cよりも排気口41の側に設けられてもよい。ガスノズル22は、1又は2以上の処理ガスの供給源と接続される。処理ガスは、プリコート工程S10、成膜工程S20、膜除去工程S40で用いられる各種のガスを含んでよい。例えば、処理ガスは、ハロゲン含有ガスを含む。ガスノズル22の垂直部分には、ボート5の基板支持範囲に対応する上下方向の長さ方向に亘って複数のガス孔22aが間隔を空けて形成される。ガス孔22aは、例えば処理容器1の中心Cに配向し、処理容器1の中心Cに向かって水平方向に処理ガスを吐出する。ガス孔22aは、例えばプラズマ生成空間P側に配向してもよく、処理容器1の近傍の内壁側に配向してもよい。
【0033】
ガスノズル23は、例えば石英により形成され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に伸びるL字形状を有する。ガスノズル23は、その垂直部分がプラズマ生成空間Pに設けられる。ガスノズル23は、1又は2以上の処理ガスの供給源と接続される。処理ガスは、プリコート工程S10、成膜工程S20、膜除去工程S40で用いられる各種のガスを含んでよい。例えば、処理ガスは酸素含有ガスを含む。ガスノズル23の垂直部分には、ボート5の基板支持範囲に対応する上下方向の長さ方向に亘って複数のガス孔23aが間隔を空けて形成される。ガス孔23aは、例えば処理容器1の中心Cに配向し、処理容器1の中心Cに向かって水平方向に処理ガスを吐出する。
【0034】
ガスノズル24は、例えば石英により形成され、マニホールド3の側壁を貫通して水平に伸びる直管形状を有する。ガスノズル24は、その先端部分がプラズマ生成空間Pの外部、例えば処理容器1内に設けられる。ガスノズル24は、パージガスの供給源と接続される。ガスノズル24は、先端部分が開口しており、開口から処理容器1内にパージガスを供給する。パージガスとしては、例えばアルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガス等の不活性ガスが挙げられる。
【0035】
プラズマ生成部30は、処理容器1の側壁の一部に設けられる。プラズマ生成部30は、ガスノズル23から供給される処理ガスからプラズマを生成する。プラズマ生成部30は、プラズマ区画壁32と、一対のプラズマ電極33と、給電ライン34と、RF電源35と、絶縁保護カバー36とを有する。
【0036】
プラズマ区画壁32は、処理容器1の外壁に気密に溶接される。プラズマ区画壁32は、例えば石英により形成される。プラズマ区画壁32は断面凹状をなし、処理容器1の側壁に形成された開口31を覆う。開口31は、ボート5に支持される全ての基板Wを上下方向にカバーできるように、上下方向に細長く形成される。プラズマ区画壁32により規定されると共に処理容器1内と連通する内側空間であるプラズマ生成空間Pにはガスノズル23が配置される。ガスノズル21及びガスノズル22は、プラズマ生成空間Pの外部の処理容器1の内側壁に沿った基板Wに近い位置に設けられる。
【0037】
一対のプラズマ電極33は、それぞれ細長い形状を有し、プラズマ区画壁32の両側の壁の外面に、上下方向に沿って対向して配置される。各プラズマ電極33の下端には、給電ライン34が接続される。
【0038】
給電ライン34は、各プラズマ電極33とRF電源35とを電気的に接続する。給電ライン34は、例えば一端が各プラズマ電極33の短辺の側部である下端に接続され、他端がRF電源35と接続される。
【0039】
RF電源35は、各プラズマ電極33の下端に給電ライン34を介して電気的に接続される。RF電源35は、一対のプラズマ電極33に例えば13.56MHzのRF電力を供給する。これにより、プラズマ区画壁32により規定されたプラズマ生成空間Pに、RF電力が印加される。
【0040】
絶縁保護カバー36は、プラズマ区画壁32の外側に、該プラズマ区画壁32を覆うようにして取り付けられる。絶縁保護カバー36の内側部分には、冷媒通路(図示せず)が設けられる。冷媒通路に冷却された窒素ガス等の冷媒を流すことにより、プラズマ電極33が冷却される。プラズマ電極33と絶縁保護カバー36との間に、プラズマ電極33を覆うようにシールド(図示せず)が設けられてもよい。シールドは、例えば金属等の良導体により形成され、電気的に接地される。
【0041】
排気部40は、開口31に対向する処理容器1の側壁部分に形成された排気口41に設けられる。排気口41は、ボート5に対応して上下に細長く形成される。処理容器1の排気口41に対応する部分には、排気口41を覆うように断面U字状に成形されたカバー部材42が取り付けられる。カバー部材42は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びる。カバー部材42の下部には、排気配管43が接続される。排気配管43には、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、圧力調整弁44及び真空ポンプ45が設けられる。排気部40は、制御部60の制御に基づき圧力調整弁44及び真空ポンプ45を動作して、真空ポンプ45に処理容器1内のガスを吸引しながら、圧力調整弁44により処理容器1内の圧力を調整する。
【0042】
加熱部50は、ヒータ51を含む。ヒータ51は、処理容器1の径方向外側において処理容器1を囲む円筒形状を有する。ヒータ51は、処理容器1の側周囲全体を加熱することで、処理容器1内に収容された各基板Wを加熱する。
【0043】
制御部60は、例えば処理装置100の各部の動作を制御する。制御部60は、例えばコンピュータであってよい。また、処理装置100の各部の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0044】
〔処理装置の動作〕
処理装置100において実施形態に係る処理方法を実施する場合の動作について説明する。以下では、プリコート膜がa-Si膜であり、金属酸化膜がAlO膜である場合を例に挙げて説明する。プリコート膜がa-Si膜以外の膜であり、金属酸化膜がAlO膜以外の膜である場合についても同様であってよい。
【0045】
まず、制御部60は、プリコート工程S10を実行するように処理装置100の各部の動作を制御する。具体的には、制御部60は、昇降機構を制御して、基板Wを保持していない空のボート5を処理容器1内に搬入し、蓋体9により処理容器1の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。続いて、制御部60は、排気部40を制御して処理容器1内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して処理容器1内を所定の温度に調整して安定化させる。続いて、制御部60は、ガス供給部20を制御して処理容器1内にシリコン含有ガスを供給する。これにより、処理容器の内部がa-Si膜で被覆される。続いて、制御部60は、処理容器1内を大気圧に昇圧し、処理容器1内を搬出温度に降温させた後、昇降機構を制御してボート5を処理容器1内から搬出する。
【0046】
次に、制御部60は、成膜工程S20を実行するように処理装置100の各部の動作を制御する。具体的には、制御部60は、昇降機構を制御して、複数枚の基板Wを保持したボート5を処理容器1内に搬入し、蓋体9により処理容器1の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。続いて、制御部60は、排気部40を制御して処理容器1内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して処理容器1内を所定の温度に調整して安定化させる。続いて、制御部60は、ガス供給部20を制御して、処理容器1内にAl含有ガス及び酸素含有ガスを供給する。これにより、各基板WにAlO膜が成膜される。このとき、制御部60は、プラズマ生成部30を制御してRF電源35から一対のプラズマ電極33にRF電力を供給し、処理容器1内に供給された酸素含有ガスからプラズマを生成してもよい。続いて、制御部60は、処理容器1内を大気圧に昇圧し、処理容器1内を搬出温度に降温させた後、昇降機構を制御してボート5を処理容器1内から搬出する。
【0047】
次に、制御部60は、成膜工程S20の実施回数が設定回数に達するまで、成膜工程S20を繰り返すよう処理装置100の各部の動作を制御する(判定工程S30)。
【0048】
成膜工程S20の実施回数が設定回数に達した後、制御部60は、膜除去工程S40を実行するように処理装置100の各部の動作を制御する。具体的には、制御部60は、昇降機構を制御して、基板Wを保持していない空のボート5を処理容器1内に搬入し、蓋体9により処理容器1の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。続いて、制御部60は、排気部40を制御して処理容器1内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して処理容器1内を所定の温度に調整して安定化させる。続いて、制御部60は、ガス供給部20を制御して処理容器1内にハロゲン含有ガスを供給する。このとき、制御部60は、排気部40を制御して処理容器1内の圧力を調整することで、処理容器の内部でハロゲン含有ガスを用いたウェット(液相)ライクな反応が生じる環境を形成する。これにより、成膜工程S20が繰り返し行われることで処理容器1の内壁、ボート5等に堆積したAlO膜を除去できる。なお、完全なウェットエッチングによる反応でAlO膜を除去するものではないため、AlFが生成されうる。特に、ハロゲン含有ガスを継続して供給する時間が長くなると、表面から深い位置までAlO膜のハロゲン化が進行し、AlO膜のエッチングが停滞しうる。そこで、制御部60は、処理容器1内にハロゲン含有ガスを所定の時間供給するごとに、処理容器1内へのハロゲン含有ガスの供給を停止する。続いて、制御部60は、ガス供給部20を制御して処理容器1内に酸素含有ガスを供給すると共に、プラズマ生成部30を制御してRF電源35から一対のプラズマ電極33にRF電極を供給し、処理容器1内に供給された酸素含有ガスからプラズマを生成する。これにより、AlFが、酸素ラジカルによって、AlOやハロゲン(例えばF)等の気体となって処理容器の内部から排出される。このように、制御部60は、処理容器1内にハロゲン含有ガスを所定の時間供給するごとに、処理容器1内へのハロゲンガスの供給を停止して、処理容器1内に酸素ラジカルを供給するようガス供給部20を制御する。この場合、エッチング速度をほとんど低下させることなく、金属酸化膜を継続してエッチングできる。続いて、制御部60は、処理容器1内を大気圧に昇圧し、処理容器1内を搬出温度に降温させた後、昇降機構を制御してボート5を処理容器1内から搬出する。
【0049】
〔実施例〕
実施形態に係る処理方法により、金属酸化膜であるAlO膜を除去できることを確認した実施例について説明する。
【0050】
実施例では、AlO膜を表面に有するシリコンウエハを準備し、準備したシリコンウエハを前述の処理装置100内に収容し、実施形態に係る膜除去工程S40を実施した。実施例では、処理容器1内の圧力が異なる複数の条件で膜除去工程S40を実施し、シリコンウエハの表面に形成されたAlO膜のエッチング量を測定した。膜除去工程S40の条件は以下である。
【0051】
(ハロゲン含有ガス供給工程S41)
温度:室温
圧力:40Torr、50Torr、60Torr、70Torr、100Torr
ハロゲン含有ガス:フッ化水素ガス+窒素ガス
時間:10分
(酸素ラジカル供給工程S42)
温度:室温
圧力:0.3Torr
酸素含有ガス:酸素ガス
RF電力:100W
時間:10分
(判定工程S43)
設定回数:10回
【0052】
図5は、エッチング圧力とAlO膜のエッチング量との関係を示す図である。図5中、横軸はハロゲン含有ガス供給工程S41における処理容器1内の圧力であるエッチング圧力[Torr]を示し、縦軸はAlO膜のエッチング量[nm]を示す。
【0053】
図5に示されるように、エッチング圧力が40Torr~70Torrの場合にはAlO膜がエッチングされていないが、エッチング圧力が100Torrの場合にはAlO膜がエッチングされていることが分かる。この結果から、ハロゲン含有ガス供給工程S41における処理容器1内の圧力を100Torr以上にすることで、AlO膜をエッチングできることが示された。
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、処理装置が複数の基板に対して一度に処理を行うバッチ式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、処理装置は基板を1枚ずつ処理する枚葉式の装置であってもよい。例えば、処理装置は処理容器内の回転テーブルの上に配置した複数の基板を回転テーブルにより公転させ、第1ガスが供給される領域と第2ガスが供給される領域とを順番に通過させて基板に対して処理を行うセミバッチ式の装置であってもよい。
【0056】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 処理容器
20 ガス供給部
60 制御部
100 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5