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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124820
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】電線端末構造及び外嵌部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240906BHJP
   H01R 13/655 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R13/655
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032752
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】市田 博也
【テーマコード(参考)】
5E021
5E085
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FB11
5E021FC29
5E021LA21
5E085BB04
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD13
5E085DD16
5E085EE11
5E085JJ38
(57)【要約】
【課題】容易にシールド電線の端末部分に装着できる外嵌部材及び外嵌部材が装着された電線端末構造を提供することを目的する。
【解決手段】芯線11と、絶縁性を有し、芯線11の外周を覆う絶縁被覆12と、絶縁被覆12を内側に配置する、導電性を有する筒状の編組線13と、該編組線13の外側を囲繞するシース14とを備えたシールド電線10の電線端末構造1は、シース14の外周面に導電性を有する外嵌部材20が外嵌され、外嵌部材20は、シース14の外周面に当接する筒状の外筒部21と、外筒部21に対して所定の間隔を隔てて内側に配置される内側配置部22と、外筒部21の先端側と内側配置部22の先端側とを連結する連結部23とが備えられており、内側配置部22は、編組線13とシース14との間に挿通されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、
絶縁性を有し、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、
前記絶縁被覆を内側に配置する、導電性を有する筒状のシールド層と、
該シールド層の外側を囲繞する保護外装とを備えたシールド電線の電線端末構造であって、
少なくとも前記保護外装の外周面に、導電性を有する外嵌部材が組み付けられ、
前記外嵌部材は、
前記保護外装の外周面に当接する筒状の外筒部と、
前記外筒部に対して所定の間隔を隔てて内側に配置される内側配置部と、
前記外筒部の先端側と前記内側配置部の前記先端側とを連結する連結部とが備えられ、
前記内側配置部は、
前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿通された
電線端末構造。
【請求項2】
前記保護外装は、前記シールド層の先端まで囲繞する
請求項1に記載の電線端末構造。
【請求項3】
前記内側配置部が、前記絶縁被覆と前記シールド層との間に挿通された
請求項2に記載の電線端末構造。
【請求項4】
前記外筒部と前記内側配置部との間に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられた
請求項1又は請求項2に記載の電線端末構造。
【請求項5】
前記内側配置部の外周面から前記外筒部に向けて突出する突出部が設けられた
請求項3に記載の電線端末構造。
【請求項6】
前記外筒部に、
前記シールド電線の先端に接続された接続端子を挿入するコネクタにおける接地箇所と当接する当接部が設けられた
請求項1に記載の電線端末構造。
【請求項7】
前記外筒部に、
前記コネクタにおける接地箇所に係止する係止部が備えられた
請求項6に記載の電線端末構造。
【請求項8】
前記外嵌部材に、前記保護外装を加締めた加締め部が備えられた
請求項1に記載の電線端末構造。
【請求項9】
前記内側配置部は、前記絶縁被覆と前記シールド層との間に挿入されるとともに、前記加締め部よりも基端側に延出している
請求項8に記載の電線端末構造。
【請求項10】
前記外筒部と前記内側配置部との間に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられ、
前記加締め部は、前記突出部に対応する箇所を加締めた
請求項8に記載の電線端末構造。
【請求項11】
前記内側配置部が、筒状に形成された
請求項1に記載の電線端末構造。
【請求項12】
前記内側配置部の基端が、前記シールド電線の長手方向に対して傾斜する
請求項11に記載の電線端末構造。
【請求項13】
前記内側配置部が、
筒状に構成された前記外筒部の周方向に沿って所定の間隔を隔てた複数の延出部で構成された
請求項1に記載の電線端末構造。
【請求項14】
前記保護外装に、前記シールド電線の長手方向に沿ったスリットが設けられた
請求項1に記載の電線端末構造。
【請求項15】
前記突出部は、前記内側配置部の外周面から前記外筒部に向けて突出し、
前記外筒部における前記突出部と対向する位置に、板厚方向に沿って開口した開口部が設けられた
請求項10に記載の電線端末構造。
【請求項16】
芯線と、絶縁性を有し、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆を内側に配置する、導電性を有する筒状のシールド層と、該シールド層の外側を囲繞する保護外装とを備えたシールド電線の先端側に外嵌する外嵌部材であって、
前記保護外装の外周面に当接する外筒部と、
前記外筒部の内周面との間に所定の間隔を隔てて配置される内側配置部と、
前記外筒部の前記先端側と、前記内側配置部の前記先端側とを連結する連結部とが備えられ、
前記内側配置部は、
前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿通する
外嵌部材。
【請求項17】
前記外筒部に、
前記シールド電線の先端に接続された接続端子を挿入するコネクタにおける接地箇所と当接する当接部が設けられた
請求項16に記載の外嵌部材。
【請求項18】
前記外筒部に、
前記コネクタにおける接地箇所に係止する係止部が備えられた
請求項17に記載の外嵌部材。
【請求項19】
前記内側配置部が、筒状に形成された
請求項16に記載の外嵌部材。
【請求項20】
前記内側配置部の基端が、前記シールド電線の長手方向に対して傾斜する
請求項19に記載の外嵌部材。
【請求項21】
前記外筒部及び前記内側配置部の少なくとも一方に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられた
請求項16に記載の外嵌部材。
【請求項22】
前記突出部は、
前記内側配置部の外周面から前記外筒部に向けて突出する
請求項21に記載の外嵌部材。
【請求項23】
前記保護外装に対して加締める加締め箇所が備えられた
請求項16に記載の外嵌部材。
【請求項24】
前記内側配置部は、前記加締め箇所よりも基端側に延出し、
前記絶縁被覆と前記シールド層との間に挿入される
請求項23に記載の外嵌部材。
【請求項25】
前記内側配置部を、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿通した状態において、
前記外筒部及び前記内側配置部の少なくとも一方に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられ、
前記加締め箇所は、前記突出部に対応する箇所に設けられた
請求項23に記載の外嵌部材。
【請求項26】
前記突出部は、前記内側配置部の外周面から前記外筒部に向けて突出し、
前記外筒部における前記突出部と対向する位置に、板厚方向に沿って開口した開口部が設けられた
請求項25に記載の外嵌部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、シールド電線の端末部分に外嵌部材が備えられた電線端末構造及び外嵌部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多種多様な電子機器類が車両に搭載されており、電子機器類の間に大電流が導通されることがある。このような大電流が電線を導通することで発生する電磁波の影響を抑制するため、又は、外部から照射される電磁波による影響を抑制するため、電線をシールド層で覆ったシールド電線が用いられている。
【0003】
一般的に、シールド電線は、芯線の外周を絶縁被覆で覆うとともに、絶縁被覆を編組線などのシールド層で囲繞し、シールド層の周りに保護外装を設けている。そして、シールド層に蓄積する電荷を逃がすために、シールド電線の端末には、シールド層と接触させた導電性を有する外嵌部材が組み付けられている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に開示されている外嵌部材をシールド電線の端末部分に装着する方法は、シールド電線における端末部分の保護外装を剥ぎ取ってシールド層を露出させ、保護外装の端部近傍にインナー部材を取り付けた後に、インナー部材の外周を覆うようにシールド層を折り返して被せ、シールド層を挟み込むようにアウター部材をインナー部材に取り付ける。そして、シールド層を挟み込んだインナー部材とアウター部材とを加締めることで、シールド電線に外嵌部材を装着している。
このようにシールド電線の端末部分に外嵌部材を装着する方法は煩雑であり、容易に外嵌部材をシールド電線の端末部分に装着できる構造が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-171057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、容易にシールド電線の端末部分に装着できる外嵌部材及び外嵌部材が装着された電線端末構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、芯線と、絶縁性を有し、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆を内側に配置する、導電性を有する筒状のシールド層と、該シールド層の外側を囲繞する保護外装とを備えたシールド電線の電線端末構造であって、少なくとも前記保護外装の外周面に、導電性を有する外嵌部材が外嵌され、前記外嵌部材は、前記保護外装の外周面に当接する筒状の外筒部と、前記外筒部に対して所定の間隔を隔てて内側に配置される内側配置部と、前記外筒部の先端側と前記内側配置部の前記先端側とを連結する連結部とが備えられ、前記内側配置部は、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿通されたことを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、芯線と、絶縁性を有し、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆を内側に配置する、導電性を有する筒状のシールド層と、該シールド層の外側を囲繞する保護外装とを備えたシールド電線の先端側に外嵌する外嵌部材であって、前記保護外装の外周面に当接する外筒部と、前記外筒部の内周面との間に所定の間隔を隔てて配置される内側配置部と、前記外筒部の前記先端側と、前記内側配置部の前記先端側とを連結する連結部とが備えられ、前記内側配置部は、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿通することを特徴とする。
【0009】
前記シールド層は、導電性を有する金属素線を編んで筒状に形成された編組線や、導電性を有する金属箔や金属製のテープを筒状に形成したもの、金属製のパイプ、導電性を有するポリマー層を筒状に形成したものなどを含む。また、前記シールド層は、前記絶縁被覆の一部が内側に配置されていればよい。具体的には、前記シールド層が、前記絶縁被覆の外周部分に埋め込まれた状態であってもよい。
なお、前記シールド層は、前記シールド電線における一端側において、保護外装を剥ぎ取ることで露出されていてもよいし、保護外装で囲繞されていてもよい。
【0010】
前記内側配置部は、前記外筒部の内側において前記連結部における内側から先端側と反対側に向けて延出していれば、どのような形状であってもよく、例えば、円筒状などの管状や、前記連結部における周方向の一部から延出する、帯形状や棒形状や針形状などを含む。なお、前記内側配置部が帯形状や棒形状や針形状などの場合には、前記内側配置部は一つだけ設けてもよいし、周方向に沿って所定の間隔を隔てて複数設けてもよい。
【0011】
この発明によると、外筒部及び連結部と一体の内側配置部をシールド電線の先端側から、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿入するだけで、シールド層と内側配置部とが当接した状態で、シールド電線の端末部分に外嵌部材を装着することができる。
【0012】
このように、シールド電線の端末から外嵌部材を挿通させるだけで、内側配置部とシールド層とを導通させた状態で、容易に外嵌部材をシールド電線の端末に装着することができる。したがって、シールド電線の端末部分に外嵌部材を装着する作業の作業性を向上でき、作業者の負担を軽減できる。
【0013】
また、外筒部と内側配置部とが連結部で連結されているため、部品点数を削減できるとともに、外筒部と内側配置部との間に配置されるシールド電線の位置決めを行うことができる。
加えて、絶縁被覆とシールド層との間、及び、シールド層と保護外装との間の一方に内側配置部を挿入した状態において、長手方向に沿った内側配置部と外筒部との位置ずれを防止できる。
【0014】
この発明の態様として、前記保護外装は、前記シールド層の先端まで囲繞してもよい。
この発明により、保護外装を剥ぎ取ってシールド層を露出させる作業を行う必要がないため、シールド電線の先端部分に外嵌部材を装着する作業の作業効率をより向上することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記内側配置部が、前記絶縁被覆と前記シールド層との間に挿通されてもよい。
この発明により、内側配置部でシールド層を外筒部の側に向けて押し付けることができるため、シールド層が内側配置部から離間する方向に向けて移動することを抑制できる。したがって、内側配置部をシールド層に確実に当接させることができ、内側配置部とシールド層との導通性をより確実に確保できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記外筒部と前記内側配置部との間に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられてもよい。
前記突出部は、前記外筒部の内周面及び前記内側配置部の外周面の少なくとも一方から突出されている。
【0017】
この発明により、シールド層に向けて突出する突出部を介して、内側配置部とシールド層とをより接触させることができるため、内側配置部とシールド層との導電性をより向上できる。
また、外筒部と内側配置部との間に挿入されたシールド層に向けて突出部が突出していることにより、外筒部と内側配置部との間に挿入されたシールド層に突出部が引っかかるため、外嵌部材がシールド電線から抜け落ちることを規制できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記内側配置部の外周面から前記外筒部に向けて突出する突出部が設けられてもよい。
この発明により、絶縁被覆とシールド層との間に挿通された内側配置部から突出する突出部を、内側配置部の外側に配置されたシールド層に当接させることができるため、内側配置部とシールド層とをより接触させることができる。したがって、内側配置部とシールド層との導電性をより向上させることができる。
【0019】
また、外筒部と内側配置部との間に挿入されたシールド層に向けて突出部が突出していることにより、外筒部と内側配置部との間に挿入されたシールド層に突出部が引っかかるため、外嵌部材がシールド電線から抜け落ちることを規制できる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記外筒部に、前記シールド電線の先端に接続された接続端子を挿入するコネクタにおける接地箇所と当接する当接部が設けられてもよい。
この発明により、外嵌部材を介してシールド層と接地箇所とを電気的に接続できる。すなわち、外嵌部材を介してシールド層に発生するノイズ電流をコネクタにおける接地箇所に導通でき、シールド層に発生するノイズ電流を確実に除去できる。したがって、シールド電線の機能を確実に確保できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記外筒部に、前記コネクタにおける接地箇所に係止する係止部が備えられてもよい。
前記係止部は、前記当接部と一体又は別体である場合を含む。
【0022】
この発明により、コネクタと外嵌部材との接触状態が不用意に解消することを防止できる。また、当接部と接地箇所との接触状態を維持することができるため、シールド層に発生するノイズをより確実に除去できる。したがって、シールド電線の機能をより確実に確保できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記電線端末構造において、前記外嵌部材に、前記保護外装を加締めた加締め部が備えられてもよい。
またこの発明の態様として、前記外嵌部材において、前記保護外装に対して加締める加締め箇所が備えられてもよい。
【0024】
この発明により、内側配置部とシールド層とを接触させた状態で、外筒部と内側配置部とが保護外装に加締められるため、内側配置部とシールド層とをより強固に接触させることができる。したがって、シールド電線に装着した外嵌部材が脱落することを防止できるとともに、外嵌部材とシールド層との導通性をより確保することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記電線端末構造において、前記内側配置部は、前記絶縁被覆と前記シールド層との間に挿入されるとともに、前記加締め部よりも基端側に延出していてもよい。
またこの発明の態様として、前記外嵌部材における前記内側配置部は、前記加締め箇所よりも基端側に延出し、前記絶縁被覆と前記シールド層との間に挿入されてもよい。
【0026】
この発明により、外筒部と内側配置部との間に挟まれた保護外装を加締めることができるため、内側配置部にシールド層を強固に接触させた状態で、保護外装を外筒部と内側配置部とで挟持できる。したがって、シールド電線に装着した外嵌部材が脱落することをより確実に防止できる。
【0027】
また、加締め部において、外筒部がシールド層を内側配置部に押し付けることとなるため、シールド層が内側配置部から離間する方向に向けて移動することを規制できる。したがって、内側配置部をシールド層に確実に当接させることができ、内側配置部とシールド層との安定した導通性を確保できる。
【0028】
さらにまた、内側配置部がシールド層を外筒部の側に押し付けた状態で加締められているため、加締め部において、内側配置部とシールド層とをより確実に接触させることができる。これにより、外嵌部材とシールド層との導通性を確実に確保することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記電線端末構造において、前記外筒部及び前記内側配置部の少なくとも一方に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられ、前記加締め部は、前記突出部に対応する箇所を加締めてもよい。
またこの発明の態様として、前記外嵌部材において、前記内側配置部を、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに挿通した状態において、前記外筒部及び前記内側配置部の少なくとも一方に、前記シールド層に向けて突出する突出部が設けられ、前記加締め箇所は、前記突出部に対応する箇所に設けられてもよい。
【0030】
この発明によると、突出部が設けられた箇所において、シールド電線に対して外筒部が加締められるため、シールド層に外嵌部材を確実に係止できるとともに、シールド層と突出部とをより安定して接触させることができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記内側配置部が、筒状に形成されてもよい。
この発明により、内側配置部の強度を向上させることができるため、シールド層との良好な接触状態を維持できる。また、周方向に沿って内側配置部とシールド層とが接触するため、内側配置部とシールド層との接触面積を増大させることができる。したがって、内側配置部とシールド層との導通性をより安定させることができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記内側配置部の基端が、前記シールド電線の長手方向に対して傾斜してもよい。
この発明によると、長手方向に傾斜する内側配置部の基端は一部分が尖った形状となる。このため、内側配置部の尖先を、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間に突き刺すことができる。したがって、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに内側配置部を容易に挿入することができる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記内側配置部が、筒状に構成された前記外筒部の周方向に沿って所定の間隔を隔てた複数の延出部で構成されてもよい。
この発明により、周方向に沿った複数個所で内側配置部とシールド層とを接触させることができるため、内側配置部とシールド層とをより確実に導通させることができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記保護外装に、前記シールド電線の長手方向に沿ったスリットが設けられてもよい。
この発明によると、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに内側配置部を挿入することで、長手方向に沿って設けられたスリットが開くこととなる。これにより、前記絶縁被覆と前記シールド層との間、及び、前記シールド層と前記保護外装との間のいずれかに、内側配置部をより容易に挿入することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記内側配置部の外周面から前記外筒部に向けて突出し、前記外筒部における前記突出部と対向する位置に、板厚方向に沿って開口した開口部が設けられてもよい。
この発明により、シールド層の一部が開口部に配置されるため、外嵌部材がシールド電線から外れることをより抑制できる。また、突出部が加締め箇所を加締めた加締め部により潰されることがないため、より確実に突出部をシールド層に係止させることができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、容易にシールド電線の端末部分に装着できる外嵌部材及び外嵌部材が装着された電線端末構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】電線端末構造の概略斜視図。
図2】シールド電線及び外嵌部材の概略斜視図。
図3】外嵌部材の説明図。
図4】外嵌部材の説明図。
図5】外嵌部材の装着方法の説明図。
図6】外嵌部材の装着方法の説明図。
図7】外嵌部材の装着方法の説明図。
図8】外嵌部材の装着方法の説明図。
図9】外嵌部材の装着方法の説明図。
図10】シールド電線の端末部分をコネクタに組み付けた状態の概略断面図。
図11】他の実施形態における外嵌部材の説明図。
図12】他の実施形態における外嵌部材の説明図。
図13】他の実施形態における電線端末構造の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
この発明の一実施形態を、以下図1乃至図10とともに説明する。
図1はシールド電線10の端末に外嵌部材20を装着させた電線端末構造1の概略斜視図を示し、図2はシールド電線10の端末及び外嵌部材20の概略斜視図を示す。なお、図2におけるシース14は編組線13の構造を明確にするため、一部分を除いて図示している。
【0039】
図3及び図4は外嵌部材20の説明図を示し、図5乃至図8はシールド電線10の端末に外嵌部材20を装着する方法の説明図を示し、図9は電線端末構造1の部分拡大断面図を示す。図10は電線端末構造1の先端に接続したコネクタ端子40をコネクタ50に装着させた状態の概略断面図を示す。
【0040】
図3乃至図10について詳述する。図3(a)は外嵌部材20の概略平面図を示し、図3(b)は外嵌部材20の概略側面図を示し、図4(a)は図3(a)におけるA-A矢視断面図を示し、図4(b)は図3(b)におけるB-B矢視断面図を示す。
【0041】
図5(a)はシールド電線10の端末に外嵌部材20を装着させる前の状態の概略断面図を示し、図5(b)は絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22の先端を挿入させた状態の概略断面図を示し、図6(a)は図5(b)におけるa部の拡大図を示し、図6(b)は絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22の先端を挿入させた状態の概略平面図を示す。
【0042】
図7(a)はシールド電線10の端末に外嵌部材20を組み付けた状態の概略断面図を示し、図7(b)は図7(a)におけるb部の拡大図を示す。図8はシールド電線10の端末に外嵌部材20を装着させた電線端末構造1の概略断面図を示し、図9図8の部分拡大断面図を示す。図10(a)は電線端末構造1の先端に接続させたコネクタ端子40をコネクタ50に組み付けた状態の概略断面図を示し、図10(b)は図10(a)における当接部221の部分拡大断面図を示す。
なお、図5(a)、図5(b)、図7(a)及び図8はA-A矢視断面図に対応する断面図を示し、図10(a)はB-B矢視断面図に対応する断面図を示す。
【0043】
ここで、図1において上下方向を高さ方向Hとし、電線端末構造1の延出する方向を長手方向Lとする。なお、長手方向Lと高さ方向Hとは直交している。そして、長手方向L及び高さ方向Hと直交する方向を幅方向Wとする。また、図1中において、長手方向Lに沿って右側を前方側Lf、長手方向Lに沿って左側を後方側Lbとする。上述の方向は、図2乃至図11において対応する方向を同様とする。
【0044】
電線端末構造1は、図1及び図2に示すように、電磁漏れや干渉から導体を保護するシールド電線10と、シールド電線10の先端に外嵌させた外嵌部材20とで構成されている。
シールド電線10は、図2に示すように、導電性を有する芯線11と、芯線11の外周面を覆う絶縁被覆12と、絶縁被覆12の外周側に配置された編組線13と、編組線13の外周を囲繞するシース14とで構成されている。
【0045】
芯線11は、銅などの導電率の高い導体を複数本束ねて構成されており、先端(前方側Lfの端部)には、例えば、コネクタ50と電気的に接続されるコネクタ端子40が接続されている(図10(a)参照)。
コネクタ端子40は、後方側Lbが芯線11と圧着して接続されるとともに、前方側Lfが中空状の筐体で構成された、いわゆる雌型端子であり、コネクタ50に設けられたキャビティー51に挿入することができる。なお、キャビティー51の内周面における後方側Lbには、接地させるための接地用係止部52が設けられている(図8参照)。
【0046】
絶縁被覆12は、絶縁性を有する合成樹脂で構成されており、押し出し成形などにより芯線11を被覆する。このように構成された絶縁被覆12の先端部分は、芯線11の先端にコネクタ端子40を接続できるように、所定の長さだけ剥いである。
【0047】
編組線13は、錫メッキした銅製などの導電性を有する金属素線を編んで円筒状に形成されている。なお、本実施形態では、編組線13を錫メッキした銅製の金属素線を編んで形成しているが、錫メッキした銅製の金属素線に限らず、軟銅線や鉄線又はアルミニウム線などの導電性を有する金属素線を編んで形成してもよい。また、編組線13の代わりに、導電性を有する金属箔や導電性を有する金属テープを筒状に形成したもの、あるいは、筒状に形成された金属製のパイプ、導電性を有するポリマー層を筒状に形成したものなどを用いてもよい。
【0048】
シース14は、絶縁性を有する合成樹脂で断面円形状に構成されており、編組線13の外周面に沿って編組線13を囲繞している。これにより、シース14は編組線13や絶縁被覆12の損傷を抑制している。なお、シース14の先端部分には、先端からシールド電線10の長手方向Lに沿って、所定の長さだけ切り込んだスリット141が設けられている(図2参照)。
【0049】
スリット141は、シース14の先端から後方側Lbに向けて、外嵌部材20の長さのおよそ半分程度だけ切り込んで形成されている。なお、スリット141の後方側Lbの端部には、スリット141よりも後方側Lbが不用意に開放しないように、例えば、周方向に沿うとともに、前方側Lfに向けて傾斜する切り込みなどを設けてもよい。
【0050】
このように構成されたシールド電線10は、編組線13及びシース14の先端部分を剥ぎ取ることで、絶縁被覆12の先端部分を露出させている。すなわち、編組線13の先端はシース14に囲繞されている。また、上述のように、絶縁被覆12の先端部分を剥ぎ取ることで芯線11も露出されている。
【0051】
外嵌部材20は、図2図3及び図4に示すように、径の異なる略円筒形状を、径方向に対して所定の間隔を隔てて二つ並べて配置された構成であり、導電性を有する一枚の金属板を湾曲させて形成されている。
【0052】
詳述すると、外嵌部材20は、図3及び図4に示すように、円筒状で構成された外筒部21と、外筒部21に対して所定の間隔を隔てて内側に配置される内側配置部22と、外筒部21と内側配置部22の先端を連結する連結部23とで一体で構成されている。
【0053】
外筒部21は、シース14の外径と略同じ内径を有する円筒状で構成されており、外筒部21の後方側Lbの端部近傍には、図3(b)及び図4(b)に示すように、外周面から幅方向Wの外側に向けて突出する凸状部211が対となって設けられている。また、内側配置部22の外周面における長手方向Lの中央部分には、シールド電線10を挿通した状態においてシールド電線10に対して加締める加締め箇所212が設けられている。
【0054】
凸状部211は、外筒部21における長手方向Lの中央よりも、十分に後方側Lbに設けられている。この凸状部211の前方側Lfには、長手方向Lの前方側Lfから後方側Lbに向かうに伴い、外側に向けて傾斜する傾斜面が設けられ、凸状部211の後方側Lbには、外筒部21の外周面と直交するように、幅方向Wに沿った係止面が設けられている。
【0055】
加締め箇所212は、図3(a)及び図3(b)に示すように、外筒部21における長手方向Lの中央を中心として、外筒部21の外周にわたって設けられている。この加締め箇所212の長手方向Lに沿った長さは、外筒部21の長手方向Lに沿った長さのおよそ半分である。なお、凸状部211は、加締め箇所212よりも後方側Lbに設けられている。
【0056】
内側配置部22は、図4(a)及び図4(b)に示すように、絶縁被覆12の外径と略同じ内径を有する断面円形状の筒状で構成されており、外筒部21の後方側Lbの端部よりも後方側Lbに延出している。また、内側配置部22は、外筒部21の内側にシース14の板厚よりもわずかに大きな間隔だけ隔てて配置されている。
なお、外筒部21と内側配置部22との間隔は、本実施形態の間隔に限定されず、適宜変更することができる。
【0057】
内側配置部22の後方側Lbの端部は、図4(a)に示すように、長手方向Lの後方側Lbに向かうに伴い、高さ方向Hの一方側(図4(a)中の下方側)に向けて傾斜している。すなわち、内側配置部22の基端は、高さ方向Hの一方側が他方側に比べて突出した、中空の円錐状に形成されている。
【0058】
内側配置部22は、図4(a)に示すように、外筒部21における長手方向Lの中央部分に対応する位置に、外周面から外筒部21に向けて突出する当接部221が設けられている。
当接部221は、長手方向Lの後方側Lbから前方側Lfに向かうに伴い、内側配置部22の外周面から外側に向けて突出する尖形状をしている。なお、当接部221の突出量は、外筒部21と内側配置部22との間隔の5分の1程度である。
【0059】
このように構成された外嵌部材20は、シールド電線10の先端に挿通させて装着することができる。以下、外嵌部材20の装着方法について、図5乃至図9に基づいて、簡単に説明する。
はじめに、シールド電線10の前方側Lfを保護している編組線13及びシース14を剥いで絶縁被覆12を露出させるとともに、露出させた絶縁被覆12の前方側Lfを剥いで芯線11を露出させる(図5(a)参照)。
【0060】
次に、露出させた芯線11の前方側Lfに外嵌部材20を配置するとともに、内側配置部22の内側に芯線11及び絶縁被覆12を挿通させ、内側配置部22の基端を絶縁被覆12と編組線13との間に挿入させながら外嵌部材20を後方側Lbに相対移動させる(図5(b)及び図6参照)。ここで、内側配置部22の後方側Lbの端部は尖形状に形成されているため、絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22を容易に差し込んで割り込ませることができる(図6(a)参照)。
【0061】
ここで、シース14の先端には、長手方向Lに沿って所定の長さを有するスリット141が設けられている。このため、絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22の尖先を差し込んで割り込ませることで、編組線13がシース14の側に移動し、スリット141が前方側Lfから徐々に開くこととなる。
【0062】
これにより、編組線13の径外側に空間ができるため(図6(b)参照)、絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22を挿入する際に、内側配置部22に作用する抵抗が減少される。したがって、内側配置部22を絶縁被覆12と編組線13との間にさらに割り込ませていくことができる。
【0063】
また、内側配置部22は円錐状に形成された環状の筒状体であるため、外嵌部材20を後方側Lbに相対移動させることで、高さ方向Hの一方側から編組線13及びシース14を外筒部21及び内側配置部22の間に徐々に挿入させることができる。
【0064】
さらにまた、外筒部21における後方側Lbの端部よりも後方側Lbに内側配置部22が突出しているため、内側配置部22の端部を目視しながら絶縁被覆12と編組線13との間に、内側配置部22を挿入することができるため、作業性を向上させることができる。
【0065】
このように絶縁被覆12と編組線13との間に略円筒状の内側配置部22を差し込んで割り込ませることで、編組線13及びシース14を外筒部21及び内側配置部22の間に配置できる。したがって、内側配置部22の外周面に編組線13が接触した状態とすることができる。
【0066】
また、内側配置部22の外周面には、先端側に向かうに伴い外側に向けて突出する尖形状で形成された当接部221が設けられているため、編組線13が前方側Lfに向けて相対移動することを当接部221に妨げられることなく、外嵌部材20を後方側Lbに相対移動させることができる(図7(a)参照)。
【0067】
このように、絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22を割り込ませながら、外嵌部材20を後方側Lbに相対移動させることにより、外筒部21と内側配置部22との間に挟まれるように編組線13及びシース14が配置される。
【0068】
また、当接部221は前方側Lfに向けて尖った尖形状であるため、外嵌部材20が前方側Lfに相対移動した場合に、当接部221が編組線13に係止され、外嵌部材20の前方側Lfへの相対移動を規制することができる(図7(b)参照)。すなわち、当接部221は、編組線13と内側配置部22との接触部位を増大させるとともに、編組線13及びシース14の後方側Lbへの移動を抑制することができる。
【0069】
次に、編組線13及びシース14が外筒部21と内側配置部22との間に配置された状態において、外筒部21の長手方向Lの中央部分に設けた加締め箇所212を加締めることにより、シールド電線10に対して外筒部21及び内側配置部22の一部に加締め部24を形成することができる(図8参照)。
【0070】
この際、連結部23を介して外筒部21と内側配置部22とが一体に構成されているため、内側配置部22が外筒部21に対して相対移動することを防止できる。したがって、外筒部21と内側配置部22との位置合わせを行う必要がなく、容易かつ確実に外筒部21と内側配置部22とをシールド電線10に対して加締めることができる。
【0071】
また、外嵌部材20の長手方向Lの中央部分に設けられた加締め部24は、図9に示すように、当接部221に対応する位置に設けられているため、当接部221と編組線13とを確実に係止させるとともに、内側配置部22と編組線13とをより接触させることができる。
【0072】
このようにシールド電線10に対して外嵌部材20を装着させた電線端末構造1の先端、より具体的には、絶縁被覆12の先端から露出した芯線11には、コネクタ端子40を接続することができる。そして、コネクタ端子40をキャビティー51に挿入し、コネクタ端子40とコネクタ50とを接続することで、シールド電線10の両端に接続した電気機器類同士を電気的に接続できる。
【0073】
ここで、コネクタ端子40をコネクタ50に接続した状態において、外筒部21に設けられた凸状部211は、図10に示すように、キャビティー51の内部において接地用係止部52と係止された状態で当接することとなる。これにより、コネクタ端子40がコネクタ50から離脱することを防止しつつ、外嵌部材20を介して接地用係止部52と編組線13とを電気的に接続することができる。したがって、外嵌部材20を介して編組線13に蓄積する電荷を接地用係止部52に逃がすことができる。
【0074】
このように、芯線11と、絶縁性を有し、芯線11の外周を覆う絶縁被覆12と、絶縁被覆12を内側に配置する、導電性を有する筒状の編組線13と、該編組線13の外側を囲繞するシース14とを備えたシールド電線10の電線端末構造1は、シース14の外周面に導電性を有する外嵌部材20が外嵌されている。そして、外嵌部材20は、シース14の外周面に当接する筒状の外筒部21と、外筒部21に対して所定の間隔を隔てて内側に配置される内側配置部22と、外筒部21の前方側Lfと内側配置部22の前方側Lfとを連結する連結部23とが備えられており、内側配置部22は、編組線13とシース14との間に挿通されている。
【0075】
これにより、外筒部21及び連結部23と一体の内側配置部22をシールド電線10の前方側Lfから、編組線13とシース14との間に挿入するだけで、編組線13と内側配置部22とが当接した状態で、シールド電線10の前方側Lfに外嵌部材20を装着することができる。
【0076】
このように、シールド電線10の端末から外嵌部材20を挿通させるだけで、内側配置部22と編組線13とを導通させた状態で、容易に外嵌部材20をシールド電線10の端末に装着することができる。したがって、シールド電線10の端末部分に外嵌部材20を装着する作業の作業性を向上でき、作業者の負担を軽減できる。
【0077】
また、外筒部21と内側配置部22とが連結部23で連結されているため、部品点数を削減できるとともに、外筒部21と内側配置部22との間に配置されるシールド電線10の位置決めを行うことができる。加えて、絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22の一方に挿通した状態において、長手方向Lに沿った内側配置部22と外筒部21との位置ずれを防止できる。
【0078】
また、シース14は、編組線13の先端まで囲繞している。これにより、シース14を剥ぎ取って編組線13を露出する作業を行う必要がないため、シールド電線10の先端部分に外嵌部材20を装着する作業の作業効率をより向上することができる。
【0079】
さらにまた、内側配置部22が、絶縁被覆12と編組線13との間に挿通されていることにより、内側配置部22で編組線13を外筒部21の側に向けて押し付けることができるため、編組線13が内側配置部22から離間する方向に向けて移動することを抑制できる。したがって、内側配置部22を編組線13に確実に当接させることができ、内側配置部22と編組線13との導通性をより確実に確保できる。
【0080】
また、外筒部21と内側配置部22との間に、編組線13に向けて突出する当接部221が設けられていることにより、編組線13に向けて突出する当接部221を介して、内側配置部22と編組線13とをより接触させることができるため、内側配置部22と編組線13との導電性をより向上できる。
【0081】
また、外筒部21と内側配置部22との間に挿入された編組線13に向けて当接部221が突出していることにより、外筒部21と内側配置部22との間に挿入された編組線13に当接部221が引っかかるため、外嵌部材20がシールド電線10から抜け落ちることを規制できる。
【0082】
また、図10に示すように、外筒部21に、シールド電線10の先端に接続された接続端子を挿入するコネクタ50における接地用係止部52と当接する凸状部211が設けられている。これにより、少なくとも外嵌部材20を介して編組線13と接地用係止部52とを電気的に接続できる。すなわち、外嵌部材20を介して編組線13に発生するノイズ電流をコネクタ50における接地用係止部52に導通でき、編組線13に発生するノイズ電流を確実に除去できる。したがって、シールド電線10の機能を確実に確保できる。なお、外筒部21の外周面を、コネクタ50の内面と当接させることで、導通のための接触面積を広げることができるため、編組線13に発生するノイズ電流をより確実に除去できる。
【0083】
さらにまた、凸状部211は、コネクタ50における接地用係止部52に係止できるため、コネクタ50と外嵌部材20との接触状態が不用意に解消することを防止できる。また、凸状部211と接地用係止部52との接触状態を維持することができるため、編組線13に発生するノイズをより確実に除去できる。したがって、シールド電線10の機能をより確実に確保できる。
【0084】
また、外嵌部材20には、シース14に対して加締める加締め箇所212が備えられ、加締め箇所212をシース14に加締めることで、シールド電線10の電線端末構造1には、シース14を加締めた加締め部24が備えられる。これにより、内側配置部22と編組線13とを接触させた状態で、外筒部21と内側配置部22とがシース14に加締められるため、内側配置部22と編組線13とをより強固に接触させることができる。したがって、シールド電線10に装着した外嵌部材20が脱落することを防止できるとともに、外嵌部材20と編組線13との導通性をより確保することができる。
【0085】
さらにまた、外嵌部材20における内側配置部22は、加締め箇所212よりも後方側Lbに延出し、絶縁被覆12と編組線13との間に挿入されていることにより、外筒部21と内側配置部22との間に挟まれたシース14を加締めることができるため、内側配置部22と編組線13とをより強固に接触させた状態で、シース14を外筒部21と内側配置部22とで挟持できる。したがって、シールド電線10に装着した外嵌部材20が脱落することをより確実に防止できる。
【0086】
また、加締め部24において、外筒部21がシース14を内側配置部22に押し付けることとなるため、編組線13が内側配置部22から離間する方向に向けて移動することを規制できる。したがって、内側配置部22を編組線13に確実に当接させることができ、内側配置部22と編組線13との安定した導通性を確保できる。
【0087】
さらにまた、内側配置部22が編組線13を外筒部21の側に押し付けた状態で加締められているため、加締め部24において、内側配置部22と編組線13とがより確実に接触される。これにより、外嵌部材20と編組線13との導通性を確実に確保することができる。
【0088】
また、内側配置部22に、編組線13に向けて突出する当接部221が設けられ、加締め部24は、当接部221に対応する箇所を加締めている。これにより、当接部221が設けられた箇所において、編組線13に外嵌部材20を確実に係止できるとともに、編組線13と当接部221とをより安定して接触させることができる。
【0089】
さらにまた、内側配置部22が筒状に形成されていることにより、内側配置部22の強度を向上させることができるため、編組線13との良好な接触状態を維持できる。また、周方向に沿って内側配置部22と編組線13とが接触するため、内側配置部22と編組線13との接触面積を増大させることができる。したがって、内側配置部22と編組線13との導通性をより安定させることができる。
【0090】
また、内側配置部22の基端が、シールド電線10の長手方向Lに対して傾斜している。すなわち、長手方向Lに傾斜する内側配置部22の基端は一部分が尖った形状となる。このため、内側配置部22の尖先を、編組線13とシース14との間に突き刺すことができる。したがって、編組線13とシース14との間に内側配置部22を容易に挿入することができる。
【0091】
また、シース14に、シールド電線10の長手方向Lに沿ったスリット141が設けられているため、編組線13とシース14との間に内側配置部22を挿入することで、長手方向Lに沿って設けられたスリット141が開くこととなる(図6(b)参照)。これにより、編組線13に挿入する際の抵抗が減少し、絶縁被覆12と編組線13との間に内側配置部22をより容易に挿入することができる。
【0092】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の芯線は、実施形態の芯線11に対応し、以下同様に、
絶縁被覆は、絶縁被覆12に対応し、
シールド層は、編組線13に対応し、
保護外装は、シース14に対応し、
シールド電線は、シールド電線10に対応し、
端末構造は、電線端末構造1に対応し、
外嵌部材は、外嵌部材20に対応し、
外筒部は、外筒部21に対応し、
内側配置部は、内側配置部22に対応し、
連結部は、連結部23に対応し、
突出部は、当接部221に対応し、
コネクタは、コネクタ50に対応し、
接地箇所は、接地用係止部52に対応し、
当接部は、凸状部211に対応し、
係止部は、凸状部211に対応し、
加締め部は、加締め部24に対応し、
スリットは、スリット141に対応し、
加締め箇所は、加締め箇所212に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0093】
例えば、本実施形態において、内側配置部22は、絶縁被覆12及び編組線13の間に挿入しているが、編組線13とシース14との間に挿入してもよい。この場合、内側配置部22により、編組線13が絶縁被覆12に押し付けられるため、内側配置部22と編組線13とを接触させることができる。
【0094】
この場合において、当接部221は、外筒部21と反対側である径内側に向けて突出している方が好ましい。これにより、内側配置部22と編組線13とをより強固に接触させることができる。
【0095】
さらにまた、本実施形態において、内側配置部22の基端は、略円錐状の尖形で形成されているが、必ずしもこの形状である必要はなく、円筒状で構成されていてもよい。
また、本実施形態において、内側配置部22は外筒部21よりも後方側Lbに延出している円筒状としているが、長手方向Lに沿った長さが外筒部21と同じあるいは短くてもよい。
【0096】
さらにまた、本実施形態において、内側配置部22の後方側Lbの端部は、高さ方向Hの一方側において、内側配置部22の径外側が径内側よりも後方側Lbに配置されているが、高さ方向Hの一方側において、内側配置部22の径内側が径外側よりも後方側Lbに配置されてもよい。これにより、絶縁被覆12及び編組線13の間、及び編組線13及びシース14の間に、内側配置部22をより容易に挿入できる。
【0097】
また、外嵌部材20は、断面円環状に形成された外筒部21及び内側配置部22を有しているが、必ずしもこの構造である必要はなく、例えば、外筒部21及び内側配置部22の断面形状が、多角形状など、様々な形状とすることができる。
【0098】
また、例えば、図11に示すように、内側配置部22の代わりに、連結部23から後方側Lbに延出する延出部25を有する外嵌部材20aとしてもよい。
ここで、図11(a)は外嵌部材20aの概略斜視図を示し、図11(b)は外嵌部材20aの概略平面図を示し、図11(c)外嵌部材20aを後方側Lbから長手方向Lに沿って視た概略背面図を示す。なお、外嵌部材20aにおいて、外嵌部材20と同じ構成については、同じ付番を付し、その説明を省略する。
【0099】
詳述すると、図11(a)に示すように、外嵌部材20aは、外筒部21と、外筒部21の径内側に配置された延出部25と、外筒部21と延出部25とを連結する連結部23とで構成されている。
【0100】
延出部25は、図11(b)及び図11(c)に示すように、連結部23から後方側Lbに延設する複数の延出片251で構成されている。延出片251は、連結部23の周方向に沿った断面円弧状の帯状体であり、連結部23の径内側端部から長手方向Lに沿って延出している。
【0101】
延出片251は、外筒部21の後方側Lbの端部よりも後方側Lbに延出している。また、延出片251の後方側Lbの端部は、径外側が径内側よりも後方側Lbに配置された尖形状をしている。
このように構成された延出片251は、連結部23の周方向に沿って互いに所定の間隔を隔てて設けられており、編組線13とシース14との間、又は、絶縁被覆12と編組線13との間にそれぞれを挿入することで、外嵌部材20aと編組線13とを導通させることができる。
【0102】
このように、外嵌部材20aは、筒状に構成された外筒部21の周方向に沿って所定の間隔を隔てた複数の延出部25で構成されている。これにより、周方向に沿った複数個所で内側配置部22と編組線13とを接触させることができるため、内側配置部22と編組線13とをより確実に導通させることができる。
【0103】
なお、外嵌部材20aにおいて、延出片251は帯状体で構成されているが、この形状に限らず、例えば、棒形状や、後方側Lbに向かうに伴い先細りする針形状などとしてもよい。また、外嵌部材20aにおいて、複数の延出片251が設けられているが、その数に限定はなく、適宜変更できるし、一つとしても構わない。
【0104】
さらにまた、シールド電線10に装着する外嵌部材20の代わりに、外筒部21に開口部213が設けられた外嵌部材20bとしてもよい。
以下、外嵌部材20b及び、シールド電線10に外嵌部材20bを装着した電線端末構造1bについて図11及び図12に基づき簡単に説明する。
【0105】
ここで、図12(a)は外嵌部材20bの概略平面図を示し、図12(b)は図12(a)におけるC-C矢視断面図を示し、図13は電線端末構造1bの前方側LfのC-C矢視断面に対応する概略断面図を示す。なお、外嵌部材20aにおいて、外嵌部材20と同じ構成については、同じ付番を付し、その説明を省略する。
【0106】
外嵌部材20bは、図11(a)に示すように、外筒部21bと、外筒部21bの径内側に配置された内側配置部22と、外筒部21bと内側配置部22とを連結する連結部23とで構成されている。
【0107】
外筒部21bは、図11(a)及び図11(b)に示すように、加締め箇所212の高さ方向Hの一方側及び他方側の中央部分を、より詳しくは、加締め箇所212における当接部221と対向する位置を、板厚方向に沿って貫通させて形成した開口部213が設けられている。
【0108】
このような開口部213が設けられた外嵌部材20bを、シールド電線10に装着させた電線端末構造1bでは、図13に示すように、外筒部21bに開口部213が設けられているため、加締め箇所212を加締めることにより、加締め部24の中央部分に設けられた開口部213にシース14の一部分が入り込むこととなる。このため、シース14が開口部213に係止されることとなり、外嵌部材20bがシールド電線10から外れることをより抑止できる。
【0109】
また、内側配置部22から外筒部21bに向けて突出する当接部221が加締め箇所212を加締めた加締め部24により潰されることがないため、より確実に当接部221を編組線13に係止させることができる。
【0110】
また、本実施形態において、シース14は編組線13の先端までを囲繞しているが、シース14の前方側Lfを剥ぐことで、編組線13の先端部分を露出させてもよい。これにより、容易に内側配置部22を絶縁被覆12と編組線13との間に挿入することができる。
【0111】
さらにまた、本実施形態において、シース14の先端部分には、長手方向Lに沿ったスリット141が設けられているが、シース14の周方向に沿って複数のスリット141を設けてもよい。また、必ずしもスリット141を設ける必要はなく、スリット141が設けられていないシールド電線10に外嵌部材20を装着させてもよい。
【0112】
また、本実施形態において、凸状部211は、外周面から幅方向Wの外側に向けて突出していればその形状に限定はなく、例えば、鉤状などのように、編組線13に係止できる構造であってもよい。なお、凸状部211が設けられている位置は、加締め箇所212の後方側Lbに設けられている場合に限定されず、例えば、加締め箇所212よりも前方側Lfに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…電線端末構造
10…シールド電線
11…芯線
12…絶縁被覆
13…編組線
14…シース
20…外嵌部材
21…外筒部
22…内側配置部
23…連結部
24…加締め部
25…延出部
50…コネクタ
52…接地用係止部
141…スリット
211…凸状部
212…加締め箇所
213…開口部
221…当接部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
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図13