(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124895
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】炒め調理用油脂組成物、炒め物に用いられる調味料の香り保持剤、炒め物、炒め物の製造方法、炒め物に用いられる調味料の香りを保持する方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240906BHJP
A23D 9/013 20060101ALI20240906BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240906BHJP
A23L 27/00 20160101ALN20240906BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/013
A23L5/10 Z
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032871
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】綾 恵弥
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DK01
4B026DK05
4B026DL03
4B026DP01
4B026DP03
4B035LC01
4B035LE20
4B035LG08
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG57
4B035LP02
4B047LB02
4B047LB09
4B047LE02
4B047LG08
4B047LG11
(57)【要約】
【課題】 離型性を有し、調理後の炒め物に用いられる調味料の香りを保持する効果に優れる炒め調理用油脂組成物を提供する。
【解決手段】 0.5質量%以上20質量%以下のジグリセリンモノ脂肪酸エステルと、0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む、調味料とともに炒められる炒め調理用油脂組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5質量%以上20質量%以下のジグリセリンモノ脂肪酸エステルと、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む、調味料とともに炒められる炒め調理用油脂組成物。
【請求項2】
前記粗製レシチンが糖を含み、前記粗製レシチン中の糖の含有量が1質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
前記ジグリセリンモノ脂肪酸エステルがジグリセリンモノオレイン酸エステルである、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか1項に記載の油脂組成物を有効成分とする、炒め物に用いられる調味料の香り保持剤。
【請求項5】
請求項1乃至3いずれか1項に記載の油脂組成物にて調理された、炒め物。
【請求項6】
0.5質量%以上20質量%以下のジグリセリンモノ脂肪酸エステルと、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む、油脂組成物を準備する工程と、
前記油脂組成物にて調味料と調理具材とを炒め調理する工程と、
を含む、炒め物の製造方法。
【請求項7】
炒め物に用いられる調味料の香りを保持する方法であって、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む油脂組成物にて調味料と調理具材とを炒め調理することを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炒め調理用油脂組成物、炒め物に用いられる調味料の香り保持剤、炒め物、炒め物の製造方法、炒め物に用いられる調味料の香りを保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外食、中食、産業給食等の業態において、炒め物の調理時には、調理器具と食材との付着防止や、食材同士の付着防止といった作業性の向上が求められている。これら作業性の向上には、乳化剤を含み離型性を有する油脂組成物が利用されてきた。また、炒め物は、目的の味に仕上げるために、調理の際に様々な調味料を加えて味付けをする。
【0003】
近年、共働き世帯や単身世帯の増加に伴い、コンビニエンスストアやスーパーマーケットの調理済み食品へのニーズが高まっているが、炒め物等の加熱する調理済み食品の場合、調理時に香り成分が揮発しやすいこと、また、調理から喫食までの時間が長時間になることや、チルドでの流通、保存により、調理済み食品の香りが落ちてしまうという課題がある。そのため、調理済み食品のなかでも炒め物については、調理時の作業性の向上と調理後の炒め物の調味料の香りを保持することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、炒飯などの調理に用いられる風味油を、固形化し且つ小片状に成形することで風味油の風味を維持し、結果として調理済み食品の風味を維持できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は風味を付与した風味油自体の風味を維持するものであり、調理時の作業性の向上や調理済み食品の調味料の香りを保持することは記載も示唆もない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、特定の乳化剤と特定のレシチンを所定量含む油脂組成物が、離型性を有し、かつ炒め物に用いられる調味料の香りを保持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、炒め調理用油脂組成物、炒め物に用いられる調味料の香り保持剤、炒め物、炒め物の製造方法、炒め物に用いられる調味料の香りを保持する方法を提供する。
[1]
0.5質量%以上20質量%以下のジグリセリンモノ脂肪酸エステルと、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む、調味料とともに炒められる炒め調理用油脂組成物。
[2]
前記粗製レシチンが糖を含み、前記粗製レシチン中の糖の含有量が1質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の油脂組成物。
[3]
前記ジグリセリンモノ脂肪酸エステルがジグリセリンモノオレイン酸エステルである、請求項1に記載の油脂組成物。
[4]
請求項1乃至3いずれか1項に記載の油脂組成物を有効成分とする、炒め物に用いられる調味料の香り保持剤。
[5]
請求項1乃至3いずれか1項に記載の油脂組成物にて調理された、炒め物。
[6]
0.5質量%以上20質量%以下のジグリセリンモノ脂肪酸エステルと、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む、油脂組成物を準備する工程と、
前記油脂組成物にて調味料と調理具材とを炒め調理する工程と、
を含む、炒め物の製造方法。
[7]
炒め物に用いられる調味料の香りを保持する方法であって、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む油脂組成物にて調味料と調理具材とを炒め調理することを特徴とする、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、離型性を有し、かつ調味料とともに炒められる炒め物における調味料の香りを保持できる調理用油脂組成物、調味料とともに炒められる炒め物における調味料の香り保持剤、前記調理用油脂組成物を用いた炒め物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0011】
本発明の調味料とともに炒められる炒め調理用油脂組成物は、
0.5質量%以上20質量%以下のジグリセリンモノ脂肪酸エステルと、
0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む。
【0012】
(食用油脂)
炒め調理用油脂組成物に用いられる原料油脂としては、食品に供される油脂であれば特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、米油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ごま油、ぶどう種子油、亜麻仁油、クルミ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、オリーブ油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、カカオ脂、シア脂などの植物油脂;牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、魚油などの動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂などが挙げられる。また、これらの油脂を、硬化、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理をした加工油脂を使用することができる。これらの食用油脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油であり、より好ましくは菜種油、大豆油、コーン油であり、さらに好ましくは菜種油または大豆油である。
【0013】
(ジグリセリンモノ脂肪酸エステル)
本発明におけるジグリセリンモノ脂肪酸エステルの脂肪酸は、好ましくは炭素数が12以上22以下の脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が14以上20以下の脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数が18の脂肪酸であり、さらにより好ましくはオレイン酸である。
【0014】
ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、炒め調理用油脂組成物中に0.5質量%以上20質量%以下含み、好ましくは0.8質量%以上18質量%以下含み、より好ましくは1.0質量%以上15質量%以下含み、さらに好ましくは1.2質量%以上13質量%以下含む。
【0015】
ジグリセリンモノ脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは8以下であり、より好ましくは7.5以下である。
【0016】
(粗製レシチン)
本発明における粗製レシチンとしては、植物由来である限り、特に限定されず、例えば、大豆レシチン、菜種レシチン、ひまわりレシチン、綿実レシチン、とうもろこしレシチン、落花生レシチン、パームレシチン、ゴマレシチン、米レシチン、エゴマレシチン、アマニレシチン等が挙げられる。好ましくは大豆レシチン、菜種レシチン及びひまわりレシチンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくは大豆レシチン及び菜種レシチンからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、さらに好ましくは大豆レシチンである。
【0017】
粗製レシチンは、炒め調理用油脂組成物中に、0.1質量%以上10質量%以下含み、好ましくは0.1質量%以上8質量%以下含み、より好ましくは0.2質量%以上7質量%以下含み、さらに好ましくは0.3質量%以上7質量%以下含む。
【0018】
粗製レシチンは、糖を含み、粗製レシチン中の糖の含有量は1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは1質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上6質量%以下である。
【0019】
本実施形態において、炒め調理用油脂組成物は、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、粗製レシチン以外の成分を含んでもよい。たとえば、シリコーン、香料、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル以外の乳化剤、酵素製剤、アルカリ製剤、リン酸塩、増粘剤、色素、酸化防止剤、静菌剤、調味料等の通常食品に用いられる成分を、発明の効果を損なわない範囲において含んでもよい。
【0020】
本実施形態において炒め調理用油脂組成物とともに用いられる調味料としては、特に限定されないが、醤油、ソース、塩、胡椒、酒、みりん、砂糖、マヨネーズ、ケチャップ、味噌、オイスターソース、鍋つゆ、ポン酢、麺つゆ、バターなどが挙げられる。
【0021】
本実施形態において適用される炒め物としては、野菜炒め、炒飯、回鍋肉、青椒肉絲、麻婆豆腐、ゴーヤーチャンプルー、焼きそば、焼きうどん、ナポリタンなどが挙げられる。
【0022】
本実施形態において炒め物の製造をする際の調味料の投入タイミングには特に限定はなく、具材を炒めている途中で投入してもよいし、具材が全て炒め終わってから投入してもよい。
【0023】
本実施形態において製造された炒め物は、常温、冷蔵、冷凍のいずれの状態で保管、流通、販売されるものに適用されるが、特に冷蔵の状態で流通され販売される炒め物に対して好適である。
【0024】
本発明における、炒め物に用いられる調味料の香りを保持する方法は、0.1質量%以上10質量%以下の粗製レシチンと、を含む油脂組成物にて調味料と調理具材とを炒め調理することを特徴とする。
【0025】
本実施形態における、調味料の香りを保持する方法において、油脂組成物中に含まれる粗製レシチンの含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
【実施例0026】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0027】
(1)原料
炒め調理用油脂組成物の調製に際し、以下のものを使用した。
【0028】
<食用油脂>
菜種油:株式会社J-オイルミルズ製「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油」
大豆油:株式会社J-オイルミルズ製「AJINOMOTO 大豆のサラダオイル」
コーン油:株式会社J-オイルミルズ製「Jコーンサラダ油NS」
【0029】
<乳化剤>
ジグリセリンモノ脂肪酸エステル:理研ビタミン株式会社製「DO-100V」(構成脂肪酸:オレイン酸、蒸留品、HLB7.4)
粗製レシチン:株式会社J-オイルミルズ製「レシチンCL」(大豆由来、糖含有量4.3質量%)
脱糖レシチン:後述する調製方法で脱糖処理した大豆レシチン(糖含有量は検出限界以下)
【0030】
(脱糖レシチンの調製方法)
以下の方法で脱糖レシチンを調製した。
1)粗製レシチン200gを1Lの遠沈チューブに入れた。
2)35質量%含水エタノール(特級エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)と蒸留水とを65:35(質量比)で混合したもの)600gを、1)の遠沈チューブに入れてディスパーザー(型番 T25DS1、IKA社製)で5000rpm、10分間攪拌後、1時間静置した。
3)2)の遠沈チューブを遠心分離機(型番H-103NN、KOKUSAN社製)で3000rpm、5分間遠心分離し、上澄みをデカンテーションにて廃棄した。
4)2)~3)の操作を更に2回繰り返した。
5)遠沈チューブから沈殿物をステンレス製のバットに取り出し、厚さが5mmになるように整えてから、真空乾燥機(型番DRV320DA、ADVANTEC社製)に入れ、50℃で、10時間真空乾燥させ、脱糖レシチンを調製した。
6)
【0031】
(2)炒め調理用油脂組成物の調製
表1、表2及び表3に記載の原料を60℃で10分間攪拌混合し、炒め調理用油脂組成物を調製した。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
(糖含有量の測定方法)
前述した粗製レシチン、脱糖レシチン及び炒め調理用油脂組成物の糖含有量は、以下の方法で測定した。
【0036】
(分析サンプルの調製)
1)50mL容遠心チューブに試料約5gを精秤した。
2)クロロホルム(HPLCグレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)10mLを加え、よく混ぜた。
3)メタノール(HPLCグレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)18mLをさらに加え、よく混ぜた。
4)0.01質量%マルトース含有水(マルトースはマルトース水和物(D(+)-マルトース一水和物(特級、富士フィルム和光純薬株式会社製))をさらに9mL加え、よく混ぜた。
5)4)の遠心チューブを遠心分離機(型番5920、株式会社久保田製作所製)に入れて、3500rpmで5分遠心分離した。
6)5)の遠心チューブから回収した上層をC18フィルター(Sep-PAK Vac C18 Cartridges、Waters社製)に通して、100mLナシフラスコに入れた。
7)エバポレーター(NVC-2200、EYELA東京理化器械株式会社製)を用いて濃縮乾固した。
8)蒸留水500μLに溶解し、フィルター(DIAPOSABLEMEMBRANE FILTER UNIT 13HP020AN、0.20μm、株式会社ADVANTEC製)で濾過を行った。
9)
【0037】
調製した分析サンプルを、HPLC分析に供した。検量線は、マルトースとしてマルトース水和物(D(+)-マルトース一水和物(特級、富士フィルム和光純薬株式会社製)、スクロースとしてスクロース(試薬特級 富士フイルム和光純薬株式会社製)を定量標品として使用して、所定濃度ごとにHPLC分析に供した際のピーク面積から作成した。また、スクロース含量、ラフィノース含量、スタキオース含量の合計を糖含量として定量した。なお、本実施例のHPLC条件においては、物質の重量に依存して応答が得られるため、ラフィノース含量およびスタキオース含量については、マルトースとスクロースの検量線から算出することができる。
【0038】
HPLCの条件は以下に示す。
(HPLC条件)
測定機器:型番UltiMate3000、Thermo Fisher社製
カラム:CADENZA UK-Amino 3.0μm, 3.0mmID×250mm(Imtakt社製)
カラム温度:60℃
移動相:A相 アセトニトリル(HPLCグレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)
B相 水(HPLCグレード、富士フイルム和光純薬株式会社製)
グラジエント:表4を参照
流量:0.7mL/分
検出器:荷電化粒子検出器 Corona Veo
注入量:3μL
【0039】
【0040】
(3)炒め物の調製と評価
【0041】
(3-1)焼きうどんの調製と評価
(3-1-1)焼きうどんの調製方法
表5の配合に従い、以下の方法にて焼きうどんを調製した。
1)ゆでうどんにさばき油をかけて全体に和えた。
2)ステンレスフライパンをIH調理器(KZ-PH33、パナソニック株式会社製)に載せて、火力を5に設定して加熱した。
3)ステンレスフライパンの中心表面温度が170℃になったら、火力を5に設定したまま、炒め調理用油脂組成物を2)で加熱したステンレスフライパンに投入し30秒間加熱した。
4)1)のゆでうどんを3)のステンレスフライパンに投入し30秒間炒めた。
5)ほんだし、しょうゆを4)のステンレスフライパンに加えて1分間炒め、焼きうどんを調製した。
6)調製した焼きうどんは4℃に設定した恒温槽で3日間保管し、評価に供した。
【0042】
【0043】
(3-1-2)焼きうどんの評価方法
(3-1-2-1)離型性の評価方法
上述した(3-1-1)にて焼きうどんを調製した後のフライパンを観察し、下記の評価基準で評価し、1以上を合格とした。
【0044】
[離型性の評価基準]
3:フライパンに調味料の焦げ付きがなく、非常に離型性が優れている。
2:フライパンに調味料の焦げ付きがほぼなく、離型性が優れている。
1:フライパンに調味料の焦げ付きが少なく、充分な離型性を有している。
0:フライパンに調味料の焦げ付きが多く、離型性が劣っている。
【0045】
(3-1-2-2)調味料の香りの評価方法
4℃で3日保管した焼きうどんを電子レンジ(NE-BS606、Panasonic株式会社製)にて800Wで1分加熱した。評価直前に表1に記載の比較例1の油脂組成物を用いて、(3-1-1)と同じ調製方法で焼きうどんを調製し、対照とした。ただし、比較例2-1と実施例2-1の対照は、表1に記載の比較例2の油脂組成物を用い、比較例3-1と実施例3-1の対照は、表1に記載の比較例3の油脂組成物を用いて、それぞれ評価直前に(3-1-1)と同じ調製方法で調製した焼うどんを対照とした。
各焼きうどんを専門パネラー3名が香りを嗅いで、下記の評価基準で評価し、専門パネラーが付けたスコアの平均を評価値とした。結果を表6、7に示す。
【0046】
[調味料の香りの評価基準]
5:調味料の香りが対照より強い
4:調味料の香りを対照と同等に感じる
3:調味料の香りが対照よりやや弱い
2:調味料の香りが対照より弱い
1:調味料の香りが対照より非常に弱い
【0047】
(3-1-2-3)調味料の風味の評価方法
(3-1-2-2)調味料の香りの評価方法で評価した焼きうどんを専門パネラー3名が食して、口内から鼻に抜ける香りと口内で感じる味を含む調味料の風味を下記の評価基準で評価し、専門パネラーが付けたスコアの平均を評価値とした。結果を表6、7に示す。
【0048】
[評価基準]
5:調味料の風味が対照より強い
4:調味料の風味を対照と同等に感じる
3:調味料の風味が対照よりやや弱い
2:調味料の風味が対照より弱い
1:調味料の風味が対照より非常に弱い
【0049】
【0050】
【0051】
表6に記載の通り、実施例1~3の炒め調理用油脂組成物は離型性に優れており、炒め調理用として適していることがわかった。実施例1-1~3-1の焼きうどんは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高かった。一方、比較例1~3の炒め調理用油脂組成物は離型性が劣っており、炒め調理用として不適であった。比較例1-1~2-1の焼きうどんは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が低かった。比較例3-1の焼きうどんは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が比較例1-1~2-1よりは高かったものの、実施例3-1よりも劣っていた。
このことから、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルと粗製レシチンとを含む炒め調理用油脂組成物を用いて焼きうどんを調製すると、調製後に保管しても、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高いことがわかった。
【0052】
表7に記載の通り、実施例4~8の炒め調理用油脂組成物は充分な離型性を有しており、炒め調理用として適していることがわかった。実施例4-1~8-1の焼きうどんは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高かった。一方、比較例4-1~5-1の焼きうどんは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が低かった。
このことから、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを1.7~10.2質量%と粗製レシチンを0.5~5質量%を含む炒め調理用油脂組成物を用いて焼きうどんを調製すると、調製後に保管しても、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高いことがわかった。
【0053】
(3-2)炒飯の調製と評価
(3-2-1)炒飯の調製方法
表8の配合に従い、以下の方法にて炒飯を調製した。
(3-2-1-1)ごはんの調製
1)米(千葉県産コシヒカリ)400gをボウルにはかりとり、水道水を生米が浸る程度に入れ10回かき混ぜた後、水を切る作業を3回繰り返した。
2)1)の米を30分間1000gに水に浸漬した後、ざるに上げてから30秒間水を切り、浸漬米を準備した。
2)浸漬米を炊飯器(圧力IH炊飯ジャー NP-BG10、象印マホービン株式会社製)の釜に移した。
3)2)と水の合計が938gになるように加水して炊飯油KJ(株式会社J-オイルミルズ製)2g添加にて白米ふつうモードで炊飯した。
4)3で得た炊飯米をしゃもじで混ぜてうるつや保温モードに設定してごはんを得た。すぐに評価に用いた。
(3-2-1-2)炒飯の調製
1)650mL容量の紙ボウルにごはんを量り取った。
2)1)のごはんにほぐし油を投入し、フォークを使って毎秒1掻きの速度で30秒間和えた。具体的には、ごはんを量り取った紙ボウルを少し傾けて持ち、下側に溜まったごはんをフォークで紙ボウル底面に沿って持ち上げて落とす操作を繰り返した。
3)ステンレスフライパンをIH調理器(KZ―PH33、パナソニック株式会社製)に載せて、火力を5に設定して加熱した。
4)ステンレスフライパンの中心表面温度が170℃になったら、火力を5に設定したまま、炒め調理用油脂組成物を3)で加熱したステンレスフライパンに投入し30秒間加熱した。
5)溶いた卵、ご飯を順番に4)のステンレスフライパンに投入し、30秒間炒めた。
6)塩胡椒と中華だしを5)のステンレスフライパンに投入し、1分30秒間炒め、炒飯を調製した。
7)調製した炒飯は4℃に設定した恒温槽で3日間保管し、評価に供した。
【0054】
【0055】
(3-2-2)炒飯の評価方法
(3-2-2-1)離型性の評価方法
上述した(3-2-1)にて炒飯を調製した後のフライパンを観察し、下記の評価基準で評価し、1以上を合格とした。
【0056】
[離型性の評価基準]
1:フライパンに調味料の焦げ付きが少ない、もしくはなく、離型性が優れている。
0:フライパンに調味料の焦げ付きが多く、離型性が劣っている。
【0057】
(3-2-2-2)調味料の香りの評価方法
4℃で3日保管した炒飯を電子レンジにて800Wで1分加熱した。表1に記載の比較例1の油脂組成物を用いて、評価直前に(3-2-1)と同じ調製方法にて調製した炒飯を対照とした。
各炒飯を専門パネラー3名が香りを嗅いで、下記の評価基準で評価し、専門パネラーが付けたスコアの平均を評価値とした。結果を表9に示す。
【0058】
[調味料の香りの評価基準]
5:調味料の香りが対照より強い
4:調味料の香りを対照と同等に感じる
3:調味料の香りが対照よりやや弱い
2:調味料の香りが対照より弱い
1:調味料の香りが対照より非常に弱い
【0059】
(3-2-2-3)調味料の風味の評価方法
(3-2-2-2)調味料の香りの評価方法で評価した炒飯を専門パネラー3名が食して、口内から鼻に抜ける香りと口内で感じる味を含む調味料の風味を下記の評価基準で評価し、専門パネラーが付けたスコアの平均を評価値とした。結果を表9に示す。
【0060】
[評価基準]
5:調味料の風味が対照より強い
4:調味料の風味を対照と同等に感じる
3:調味料の風味が対照よりやや弱い
2:調味料の風味が対照より弱い
1:調味料の風味が対照より非常に弱い
【0061】
【0062】
表9に記載の通り、実施例9、10の炒め調理用油脂組成物は離型性に優れており、炒め調理用として適していることがわかった。実施例9-2~実施例10-2の炒飯は、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高いことがわかった。一方、比較例1の炒め調理用油脂組成物は離型性が劣っており、炒め調理用として不適であった。比較例5-2の炒飯は、調製直後の調味料の香りを保持する効果が実施例9-2、10-2の炒飯よりも劣っていた。
このことから、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルと粗製レシチンとを含む炒め調理用油脂組成物は炒飯調製時の離型性に優れており、調製した炒飯は保管後においても調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高いことがわかった。
【0063】
(3-3)焼きそばの調製と評価
(3-3-1)焼きそばの調製方法
表10の配合に従い、以下の方法にて焼きそばを調製した。
1)麺を内袋のまま電子レンジにて600Wで30秒加熱してほぐした。
2)ステンレスフライパンをIH調理器(KZ―PH33、パナソニック株式会社製)に載せて、火力を5に設定して加熱した。
3)ステンレスフライパンの中心表面温度が170℃になったら、火力を5に設定したまま、炒め調理用油脂組成物を3)で加熱したステンレスフライパンに投入し30秒間加熱した。
4)内袋から出した1)でほぐした麺を3)のステンレスフライパンに投入し、1分30秒間炒めた。
5)ソース30gを4)のステンレスフライパンに投入し、1分間炒めた。
6)黒パスタ皿に5)で炒めた麺の約半量を移し、ソース20gを乗せた。その上に残りの炒めた麺を乗せて、焼きそばを調製した。
7)調製した焼きそばは、4℃に設定した恒温槽で3日間保管し、評価に供した。
【0064】
【0065】
(3-3-2)焼きそばの評価方法-1
(3-3-2-1)調味料の香りの評価方法
4℃で3日保管した焼きそばを電子レンジにて800Wで1分加熱した。表1に記載の比較例1の油脂組成物を用いて、評価直前に(3-3-1)と同じ調製方法で調製した焼きそばを対照とした。
各焼きそばを専門パネラー3名が香りを嗅いで、下記の評価基準で評価し、専門パネラーが付けたスコアの平均を評価値とした。結果を表11に示す。
【0066】
[調味料の香りの評価基準]
5:調味料の香りが対照より強い
4:調味料の香りを対照と同等に感じる
3:調味料の香りが対照よりやや弱い
2:調味料の香りが対照より弱い
1:調味料の香りが対照より非常に弱い
【0067】
(3-3-2-2)調味料の風味の評価方法
(3-3-2-1)調味料の香りの評価方法で評価した焼きそばを専門パネラー3名が食して、口内から鼻に抜ける香りと口内で感じる味を含む調味料の風味を下記の評価基準で評価し、専門パネラーが付けたスコアの平均を評価値とした。結果を表11に示す。
【0068】
[評価基準]
5:調味料の風味が対照より強い
4:調味料の風味を対照と同等に感じる
3:調味料の風味が対照よりやや弱い
2:調味料の風味が対照より弱い
1:調味料の風味が対照より非常に弱い
【0069】
【0070】
表11に記載の通り、実施例1-3、4-3、9-3、10-3の焼きそばは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高かった。比較例1-3の焼きそばは、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が実施例1-3、4-3、9-3、10-3の焼きそばよりも劣っていた。
なお、実施例1、4、9、10の炒め調理用油脂組成物を使用した場合、比較例1の炒め調理用油脂組成物を使用した場合と比較して、焼きそばを炒めたフライパンの焦げ付きがないか少ないため、離型性に優れており、炒め調理用として適していることがわかった。
このことから、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルと粗製レシチンとを含む炒め調理用油脂組成物は焼きそば調製時の離型性に優れており、調製した焼きそばは保管後においても、調製直後の調味料の香りおよび調味料の風味を保持する効果が高いことがわかった。
【0071】
(3-3-3)焼きそばの評価方法-2
(3-3-1)と同じ調整方法で、表3に記載の実施例11~実施例13を炒め調理用油脂組成物として用いて焼きそばを調製した。4℃で3日保管し、電子レンジにて800Wで1分加熱した焼きそばを評価に供した。また、表1に記載の比較例1の油脂組成物を用いて、評価直前に(3-3-1)と同じ調製方法で調製した焼きそばを対照とした。
【0072】
実施例11~実施例13を用いて調製した焼きそばは、対照と比較して調味料の香りを強く感じた。したがって、粗製レシチンを含む炒め調理用油脂組成物を用いて調製した焼きそばは保管後においても調製直後の調味料の香りを保持する効果が高いことがわかった。