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特開2024-124973ケース構造体の排水構造、電気接続箱の排水構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124973
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ケース構造体の排水構造、電気接続箱の排水構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20240906BHJP
   H02G 3/14 20060101ALI20240906BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/14
B60R16/02 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032998
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田村 和也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 彰久
(72)【発明者】
【氏名】神薗 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 明晴
【テーマコード(参考)】
5G361
【Fターム(参考)】
5G361AA06
5G361AB09
5G361AC02
5G361AC04
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】 効率よくケースの内部への水の吹き上がりを抑制することが可能なケース構造体の排水構造等を提供する。
【解決手段】 電気接続箱は、電気部品等が収容されるケース部と、ケース部の上方に取り付けられるアッパーカバーと、ケース部の下方に取り付けられるロアカバー7とからなる。排水構造9は、ロアカバー7の対向する両側方にそれぞれ排出部11が設けられる。すなわち、ロアカバー7の対向する外側面13側に開口部が形成される。それぞれの排出部からロアカバー7の内部に連通するように、所定長さの筒状流路15が形成される。筒状流路15は、ロアカバー7の内部において開口する。筒状流路15の内面は、ロアカバー7の内側面の一部と底面19の一部と共有する。このため、筒状流路15の内部の底面とロアカバー7の底面とが同一高さで連続する。このため、排水構造9の排出部11は、ロアカバー7の下方に突出することが無い。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース構造体における排水構造であって、
前記ケース構造体の対向する両側方にそれぞれ形成される排出部と、
それぞれの前記排出部から前記ケース構造体の内部に連通して開口する、所定長さの筒状流路と、
を具備し、
前記筒状流路の内面は、前記ケース構造体の内面側の側面の一部と底面の一部と共有し、前記筒状流路の底面と前記ケース構造体の底面とが同一高さで連続することを特徴とするケース構造体の排水構造。
【請求項2】
前記筒状流路の一部が、前記ケース構造体の外側面から外方に突出することを特徴とする請求項1に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項3】
前記ケース構造体の内部において、互いに対向して配置される前記筒状流路の間に、前記ケース構造体の底面と側面とをつなぐ遮蔽部が設けられ、前記遮蔽部と前記ケース構造体の底面と側面とで囲まれた空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項4】
前記遮蔽部は、一対の前記筒状流路の略中央に配置されることを特徴とする請求項3に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項5】
前記遮蔽部と前記筒状流路の間の隙間の上方において、前記ケース構造体の内側面に突起が配置されることを特徴とする請求項3に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項6】
前記遮蔽部と前記筒状流路の間の隙間が、前記遮蔽部の両側にそれぞれ方形成されることを特徴とする請求項3に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項7】
前記ケース構造体の排水構造が、前記ケース構造体に複数形成されることを特徴とする請求項1に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項8】
前記ケース構造体の内部において、前記ケース構造体の底面には、前記筒状流路の開口部側へ向けて下り勾配を有する大傾斜部と、前記筒状流路の近傍において前記大傾斜部につながる小傾斜部が設けられ、前記ケース構造体の長手方向に対して前記小傾斜部は前記大傾斜部と比較して傾斜が小さいことを特徴とする請求項1に記載のケース構造体の排水構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のケース構造体の排水構造を具備し、
前記ケース構造体は、車両に搭載される電気接続箱であることを特徴とする電気接続箱の排水構造。
【請求項10】
前記排出部が、車両に搭載された前記電気接続箱の最下面に配置されることを特徴とする請求項9記載の電気接続箱の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載される電気接続箱などのケース構造体の排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、内部にヒューズやリレー等が収容された電気接続箱が設置される。電気接続箱は、エンジンルームや車体の下方側部に配置されている場合が多いが、車外にむき出しに搭載される場合もある。このため、激しい雨が降ってできる水路の走行時や、高圧洗浄時等において、電気接続箱の内部に水が浸入する場合がある。
【0003】
電気接続箱の内部に浸入した水を排出するため、電気接続箱の下部には水抜き穴が形成される場合がある。しかし、このような水抜き穴は、電気接続箱の内部への水の浸入経路ともなりうる。
【0004】
特に、例えば電気接続箱の水抜き穴に直接高水圧がかかると、水抜き穴から電気接続箱の内部に水が勢いよく流入するおそれがある。通常、水抜き穴は電気接続箱の下方に配置され、接続端子や電装品等の電気部品は水抜き穴よりも上方に配置されるが、接続箱の内部に勢いよく水が流入すると、電気接続箱の内部で水が噴き上がってしまい、電気部品等にも水がかかることで漏電などの危険がある。このため、水抜き孔からの水の噴き上げを抑制する必要がある。
【0005】
このような水の吹き上がりを抑制するため、例えば、電気接続箱のロアカバーに、水抜き孔に取り付けるための別体の防水蓋が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、電気接続箱の下方に排出部を突出させ、水の吹き上がり方向の流路に突起を設ける方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-278663号公報
【特許文献2】特開2006-254517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、別体で防水蓋を取り付ける必要があるため、取り付け作業が必要となる。また、元の水抜き孔の一部を塞ぐことになるため、電気接続箱の内部から外部への排水性が低下する。また、別体であるため、振動等によって防水蓋の脱落の恐れもある。
【0009】
これに対し、特許文献2では、排水部の出口を電気接続箱のロアカバーの下方に突出させるようにすることで、排出口の位置を低くし、電気接続箱の内部(電気部品の配置される部位)から下方に離れた位置に排出口を配置することができる。このため、排出口から電気部品までの高さ方向の距離を確保することができる。また、上方に向かう流路に突起を形成することで、上方への吹き上がりを抑制するものである。
【0010】
しかし、電気接続箱の下方に排出部を突出させるため、電気接続箱の全高が高くなりスペース効率が悪い。また、排水口をロアカバーの下方に突出させることで、鉛直方向の流路が形成され、ロアカバーの内部における開口部から却って上方に向かう水流が強くなる恐れがある。また、流路を塞ぐように突起を形成することで、電気接続箱の内部から外部への排水性が低下する。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、効率よくケースの内部への水の吹き上がりを抑制することが可能なケース構造体の排水構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、ケース構造体における排水構造であって、前記ケース構造体の対向する両側方にそれぞれ形成される排出部と、それぞれの前記排出部から前記ケース構造体の内部に連通して開口する、所定長さの筒状流路と、を具備し、前記筒状流路の内面は、前記ケース構造体の内面側の側面の一部と底面の一部と共有し、前記筒状流路の底面と前記ケース構造体の底面とが同一高さで連続することを特徴とするケース構造体の排水構造である。
【0013】
前記筒状流路の一部が、前記ケース構造体の外側面から外方に突出させてもよい。
【0014】
前記ケース構造体の内部において、互いに対向して配置される前記筒状流路の間に、前記ケース構造体の底面と側面とをつなぐ遮蔽部が設けられ、前記遮蔽部と前記ケース構造体の底面と側面とで囲まれた空間が形成されることが望ましい。
【0015】
前記遮蔽部は、一対の前記筒状流路の略中央に配置されてもよい。
【0016】
前記遮蔽部と前記筒状流路の間の隙間の上方において、前記ケース構造体の内側面に突起が配置されてもよい。
【0017】
前記遮蔽部と前記筒状流路の間の隙間が、前記遮蔽部の両側にそれぞれ方形成されてもよい。
【0018】
前記ケース構造体の排水構造が、前記ケース構造体に複数形成されてもよい。
【0019】
前記ケース構造体の内部において、前記ケース構造体の底面には、前記筒状流路の開口部側へ向けて下り勾配を有する大傾斜部と、前記筒状流路の近傍において前記大傾斜部につながる小傾斜部が設けられ、前記ケース構造体の長手方向に対して前記小傾斜部は前記大傾斜部と比較して傾斜が小さくてもよい。
【0020】
第1の発明によれば、水の流路となる筒状流路の内面が、ケース構造体の内面側の側面の一部と底面の一部と共有されるため、筒状流路の底面とケース構造体の底面とが同一高さで形成することができる。このため、水の排出部がケース構造体の下方に突出することがなく、コンパクトである。
【0021】
また、筒状流路はケース構造体の両側方に排出部が形成されるため、水が排出部から逆流した際にも、水平方向成分の水流が支配的となり、上方への吹き上がりを抑制することができる。すなわち、筒状流路は水平方向に水が流れ、鉛直方向には筒状の流路が形成されないため、水が勢いよく上方に向かって流れることを抑制することができる。
【0022】
また、筒状流路の一部をケース構造体の外側面から外方に突出するようにすることで、筒状流路の長さを延長することができる。このため、外部からの高圧の水に対して、流入抵抗を高めることができるとともに、水平方向の水流をより支配的にすることができる。
【0023】
また、ケース構造体の内部において、互いに対向して配置される筒状流路の間に、遮蔽部を設けることで、両方の筒状流路から水平方向に流れた水がぶつかり合う部位近傍において、周囲に水が飛び散ること(すなわち、上方への吹き上がりも含む)を抑制することができる。
【0024】
また、遮蔽部を、一対の筒状流路の略中央に配置することで、両側の筒状流路から浸入してぶつかり合った水が、直接ケースの内部に飛び散ることを抑制することができる。
【0025】
また、遮蔽部と筒状流路の間の隙間の上方において、ケース構造体の内側面に突起を配置することで、隙間から上方への水の吹き上がりを抑制することができる。
【0026】
また、遮蔽部と筒状流路の間の隙間を、遮蔽部の両側にそれぞれ形成することで、浸水を抑制しつつ、効率よく内部から外部へ溝を排出することができる。
【0027】
また、このような排水構造をケース構造体の複数個所に形成することで、より効果的である。
【0028】
また、ケース構造体の底面に、ケース構造体の長手方向に対して筒状流路の開口部側へ向けて下り勾配を有する大傾斜部を形成することで、ケース構造体の内部に浸入した水を効率よく排水構造へ導き排出することができる。また、筒状流路の近傍において下り勾配が小さい小傾斜部が設けることで、筒状流路から流入する勢いのある水が、傾斜面を登って上方へ向かうことを抑制することができる。すなわち、筒状流路から流入した勢いのある水を一度小傾斜面へ導入し、勢いを落としてから大傾斜面に導入することで、水の上方への流れ成分を抑制し、また、角度変化部での乱流によって水の勢いを低減することができる。
【0029】
第2の発明は、第1の発明に係るケース構造体の排水構造を具備し、前記ケース構造体は、車両に搭載される電気接続箱であることを特徴とする電気接続箱の排水構造である。
【0030】
前記排出部が、車両に搭載された前記電気接続箱の最下面に配置されることが望ましい。
【0031】
第2の発明によれば、内部に電気部品が収容される電気接続箱において、外部から浸入した水の吹き上がりを抑制しつつ、効率よく水を外部へ排出することができる。
【0032】
この際、排出部を車両に搭載された電気接続箱の最下面に配置することで、電気接続箱を大型化することなくコンパクトな電気接続箱とすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、効率よくケースの内部への水の吹き上がりを抑制することが可能なケース構造体の排水構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】電気接続箱1の下方斜視図。
図2】(a)は、ロアカバー7の側面図、(b)は、ロアカバー7の部分斜視図。
図3】ロアカバー7の平面図。
図4】(a)は、図3のA-A線断面図、(b)は、図3のB-B線断面図。
図5図3のF-F線断面図。
図6】筒状流路15と遮蔽部17の隙間16の部分拡大断面図。
図7図4(a)のC-C線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態にかかるケース構造体の排水構造について説明する。図1は、電気接続箱1の下方斜視図である。電気接続箱1は、電気部品等が収容されるケース部3と、ケース部3の上方に取り付けられるアッパーカバー5と、ケース部3の下方に取り付けられるロアカバー7とからなる。
【0036】
ケース部3とアッパーカバー5及びロアカバー7の接合部には止水構造が形成される。また、ロアカバー7の下部には、電気接続箱1の内部に浸入した水を排出するための排水構造9が形成される。なお、図示した例では、電気接続箱1は、ケース部3とアッパーカバー5及びロアカバー7からなる例を示すが、アッパーカバーとロアケース(カバー部材とケース部材)のみからなってもよい。また、本実施形態では、ケース構造体が電気接続箱である例を説明するが、ケース部とカバー部材とを有する他のケース構造体へも適用可能である。なお、以下の説明において、ケース構造体の排水構造として車両に搭載される電気接続箱1の排水構造について説明し、ケース部3とアッパーカバー5の構成を省略し、ロアカバー7のみを用いて説明する。
【0037】
図2(a)は、ロアカバー7の側面図であり、図2(b)は、部分上方斜視図である。また、図3は、ロアカバー7の部分平面図である。前述したように、排水構造9は、ロアカバー7の下部に配置される。また、図2(a)に示すように、排水構造9は、ロアカバー7(電気接続箱)の対向する両側方(両側部)にそれぞれ開口する排出部11が設けられる。すなわち、ロアカバー7の対向する(図中左右方向)それぞれの外側面13側に開口部が形成される。
【0038】
なお、本実施形態では、両側部が「対向する」とは、必ずしも外側面13同士が平行である場合に限られず、少なくとも一方の外側面13が傾斜している場合を含む。すなわち、底面を挟んで互いに逆側に配置される側部同士を、互いに「対向する」側部とする。例えば、本実施形態では、ロアカバー7は、下方に向かうにつれて幅(図2(a)の左右方向)が狭くなるように外側面13は傾斜面を有する。
【0039】
図2(b)に示すように、それぞれの排出部11(外部への開口部)からロアカバー7の内部空間に連通するように、一対の所定長さの筒状流路15が形成される。すなわち、筒状流路15は、ロアカバー7の内部において開口する。また、筒状流路15は、それぞれの排出部11をつなぐ直線状に配置される。すなわち、一対の筒状流路15同士は略同一線上に形成される。
【0040】
図2(b)、図3に示すように、ロアカバー7の内部において、互いに対向して配置される筒状流路15の間には、遮蔽部17が設けられる。遮蔽部17は、ロアカバー7の底面19と内側面21とをつなぐように略筒状に形成される。すなわち、遮蔽部17とロアカバー7の底面19と内側面21とで囲まれた空間が形成される。
【0041】
遮蔽部17は、筒状流路15同士の間の略中央に配置される。また、筒状流路15と遮蔽部17とは隙間16をあけて配置される。すなわち、隙間16は、遮蔽部17の両側に形成され、それぞれの筒状流路15の端部と遮蔽部17との間にはロアカバー7の内部空間と連通する開口部が形成される。
【0042】
ここで、筒状流路15の流路断面積S1(筒状流路15の筒軸方向に垂直な断面における断面積)と、筒状流路15と遮蔽部17との隙間16における開口面積S2(筒状流路15と遮蔽部17との間から水が流れる開口部の面積)とを比較した際、筒状流路15の流路断面積S1を、隙間16の開口面積S2以上としてもよい。このように排出部側の断面積を大きくすることで、ロアカバー7の内部から排水する際に、排水抵抗を小さくすることができる。なお、隙間16は、約3mm角程度のサイズである。
【0043】
一方、筒状流路15と遮蔽部17との隙間16の開口面積S2を筒状流路15の流路断面積S1より大きくしてもよい。このように筒状流路15と遮蔽部17との隙間16の開口面積を大きくすることで、筒状流路15側からの水が、隙間16で絞られて勢いよくロアカバー7の内部に噴き出すことを抑制することができる。
【0044】
なお、遮蔽部17は、筒状流路15同士の間の中央からずらして配置してもよい。すなわち、遮蔽部17の両側に隙間16の開口面積を変えてもよい。例えば、一対の筒状流路15の長さが異なるような場合において、遮蔽部17を長さの短い筒状流路15方向にずらして配置してもよい。
【0045】
図4(a)は、図3のA-A線断面図、図4(b)は、図3(b)のB-B線断面図である。前述したように、それぞれの筒状流路15は、ロアカバー7の対向する外側面13方向(図中左右)に向けて形成される。この際、図4(a)に示すように、筒状流路15の一部を、ロアカバー7の外側面13から外方に突出させてもよい。例えば、図4(a)に示す例では、右側に配置される筒状流路15の先端(排出部11)が、ロアカバー7の外側面13よりも外方に突出する。
【0046】
このように、それぞれの筒状流路15の排出部11が配置される対向する外側面13が下方に向かって近づく方向に傾斜する場合において、排出部11を外側面13の傾斜に合わせて下方に向けて斜めにしてもよく(図中左側の排出部11)、外側面13から突出させて筒状流路15の開口面を水平方向に向くようにしてもよい(図中右側の排出部11)。
【0047】
また、図4(b)に示すように、筒状流路15の内面は、ロアカバー7の内側面21(筒状流路15の上方の内側面21)の一部と底面19の一部と共有する。このため、筒状流路15の内部の底面の高さとロアカバー7の底面の高さとを略同一高さで連続するように形成することができる。このため、排水構造9の排出部11は、ロアカバー7の下方に突出することが無い。すなわち、電気接続箱1が車両に搭載された際に、排出部11は、電気接続箱1の最下面に配置される。
【0048】
なお、図4(a)に示すように、ロアカバー7の幅方向(図中左右方向)は、両側が筒状流路15の開口部側(筒状流路15と遮蔽部17との隙間16側)に向かって幅が狭くなるように傾斜する。また、図3図4(b)に示すように、ロアカバー7の長手方向(図4(b)の左右方向)には、ロアカバー7の内部において、ロアカバー7の底面19に、筒状流路15の開口部側(ロアカバー7の長手方向の端部側)へ向けて下り勾配を有する大傾斜部19aが形成される。このため、ロアカバー7の内部の水は、筒状流路15方向へ集められる。
【0049】
一方、ロアカバー7の長手方向に対しては、筒状流路15の近傍において、大傾斜部19aにつながる小傾斜部19bが設けられる。なお、小傾斜部19bは、使用状態において、ロアカバー7の長手方向に対して、大傾斜部19aよりも水平に対する傾斜角度が小さければよく、完全な水平であってもよく、大傾斜部19aと比較して下り勾配が小さく、水平に近い状態であればよい。
【0050】
図5は、図3のF-F線断面図である。図示したように、一対の筒状流路15の下面側は、一方の筒状流路15側(図中右側)へ向かって傾斜する。すなわち、筒状流路15の流路断面積は、左右の筒状流路15で異なってもよい。なお、前述したように、筒状流路15の下面は、ロアカバー7の底面19と連続する(図4(b)参照)。したがって、小傾斜部19bは、幅方向にはわずかに傾斜する。例えば、小傾斜部19bは、長手方向には略水平であり、幅方向には傾斜する。
【0051】
なお、一方の筒状流路15から他方の筒状流路15へは底面の高さは連続して変化する。また、遮蔽部17を構成する壁面(ロアカバー7の内部側の壁面)と筒状流路15を構成する壁面(ロアカバー7の内部側の壁面)とは略一直線状となることが望ましい。このため、筒状流路15の筒軸方向から見た際に、遮蔽部17で形成される空間の断面形状は、両側のそれぞれの筒状流路15で形成される流路断面形状の略中間の形状(例えば、それぞれの筒状流路の断面積の略中間の断面積)となることが望ましい。
【0052】
図6は、筒状流路15と遮蔽部17の間の隙間16(開口部)における断面拡大図であり、図7は、図4(a)のC-C線断面図である。筒状流路15と遮蔽部17の間の隙間16の上方において、ロアカバー7の内側面21には突起23が形成される。突起23は、筒状流路15(又は遮蔽部17)の上面部の一部が延長された形態である。すなわち、突起23は筒状流路15及び遮蔽部17の上部の一部と連続した形状となる。
【0053】
前述したように、筒状流路15と遮蔽部17との隙間16はロアカバー7の内部空間と連通する。また、ロアカバー7の長手方向に対しては、筒状流路15と遮蔽部17の隙間16に向かって、底面19には大傾斜部19aが形成される。さらに、筒状流路15の形成される内側面21は、上方に向けて傾斜する。
【0054】
突起23を形成することで、例えば排出部11側から流入した水(図7の矢印D)が、上方に向けて噴き出す(内側面21を伝って上方に流れる)ことを抑制することができる。また、逆に、大傾斜部19aを流れてきた水(図7の矢印E)が、隙間16から筒状流路15へ流出する際に、内側面21を伝って上方に向かう流れを抑制することができる。
【0055】
なお、このような構成が特に効果的であるのは、図6に示すように、筒状流路15の断面形状を内側面21側に向けて傾斜するような形状(隙間16における底面19と内側面21とが鈍角となるような略平行四辺形)とした場合である。
【0056】
以上、本実施形態によれば、ロアカバー7(電気接続箱1)の下部に排水構造9を形成することで、内部に浸入した水を効率よく排出することができる。この際、排水構造9(筒状流路15)の底面は、ロアカバー7の底面19と同一高さに形成されるため、ロアカバー7の高さが高くなることを抑制することができる。
【0057】
また、排水構造9をロアカバー7の底面と同一高さとすることで、略水平方向に向けて形成される筒状流路15の開口部から鉛直方向に向かう他の筒状流路が存在しない。このため、排出部11から水が浸入した場合でも、上方に向けて水が噴き出すことを抑制することができる。
【0058】
また、一対の筒状流路15を対向配置させることで、一方の排出部11からのみ高圧の水が流入した場合には、一対の筒状流路15が略一直線状に配置されるため、他方の排出部11から効率よく水を排出することができる。
【0059】
一方、両側から同時に水が浸入した際には、筒状流路15からでた水を水平方向にぶつけ合うことができるため、水の流速を低減することができる。このため、水の噴き上げを抑制することができる。
【0060】
さらに、一対の筒状流路15の間に遮蔽部17を配置することで、両側から水が流入して水がぶつかり合う部位において、水の飛び散り(噴き上げ含む)をより効率よく抑制することができる。
【0061】
また、筒状流路15の一部を、ロアカバー7の幅方向の外面に突出させることで、筒状流路15の長さを長くすることができる。この場合でも、ロアカバー7の両側面が下方に行くにつれて幅が狭くなるように傾斜していれば、ロアカバー7の上部はより幅が広いため、筒状流路15の一部をロアカバー7の下方で多少幅方向に突出させても、ロアカバー7の全幅が広くなることはない。
【0062】
また、ロアカバーの底面に大傾斜部19aを形成することで、効率よく内部の水を筒状流路15方向に流して排出することができる。この場合でも、筒状流路15と遮蔽部17との隙間16近傍に小傾斜部19bを形成することで、水の上方に向かう流れ成分を低減することができる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、電気接続箱1の形態は図示した例には限られず、ロアカバー7への排水構造9の配置位置も図示した例には限られない。また、排水構造9の形状も図示した例には限られず、筒状流路15の断面形状等は適宜変更することができる。
【0065】
また、排水構造9は、ロアカバー7に対して少なくとも1か所形成されればよいが、複数か所に形成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1………電気接続箱
3………ケース部
5………アッパーカバー
7………ロアカバー
9………排水構造
11………排出部
13………外側面
15………筒状流路
16………隙間
17………遮蔽部
19………底面
19a………傾斜部
19b………水平部
21………内側面
23………突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7