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特開2024-124978配管装置および配管装置を用いた製造方法
<図1>
  • 特開-配管装置および配管装置を用いた製造方法 図1
  • 特開-配管装置および配管装置を用いた製造方法 図2
  • 特開-配管装置および配管装置を用いた製造方法 図3
  • 特開-配管装置および配管装置を用いた製造方法 図4
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  • 特開-配管装置および配管装置を用いた製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124978
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】配管装置および配管装置を用いた製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 16/06 20060101AFI20240906BHJP
   B04B 7/04 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08F16/06
B04B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033004
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】松永 康平
(72)【発明者】
【氏名】平田 達也
【テーマコード(参考)】
4D057
4J100
【Fターム(参考)】
4D057AA07
4D057AB01
4D057AC02
4D057AD01
4D057AE02
4D057AE03
4D057AF05
4D057BC11
4J100AG02P
4J100CA01
4J100FA47
4J100HF01
(57)【要約】
【課題】ケーキを排出する脱水機の下流側において、ケーキの詰まりを抑制すると共に、配管やタンク等の付帯設備への負荷を抑制し、設備全体のコスト削減を可能とする配管装置を提供する。
【解決手段】
樹脂(a)および溶媒を含有するスラリーが投入された脱水機から排出されるケーキを輸送する配管装置であって、
前記配管装置は、前記脱水機の排出口に接続される継手を含み、
前記継手は、流れ方向の下流端に排出口を有し、下記の式(1)におけるKの値が2以下であることを特徴とする配管装置。
(S1/S2/H)×100 = K ・・・(1)
S1:脱水機の排出口の流路断面積(mm2
S2:継手の排出口の流路断面積(mm2
H:継手の流れ方向長さ(mm)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(a)および溶媒を含有するスラリーが投入された脱水機から排出されるケーキを輸送する配管装置であって、
前記配管装置は、前記脱水機の排出口に接続される継手を含み、
前記継手は、流れ方向の下流端に排出口を有し、下記の式(1)におけるKの値が2以下であることを特徴とする配管装置。
(S1/S2/H)×100 = K ・・・(1)
S1:脱水機の排出口の流路断面積(mm2
S2:継手の排出口の流路断面積(mm2
H:継手の流れ方向長さ(mm)
【請求項2】
前記樹脂(a)が、ポリビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の配管装置。
【請求項3】
前記継手は、ケーキを自重流下させて輸送することを特徴とする請求項1または2に記載の配管装置。
【請求項4】
前記継手は、金属製であることを特徴とする請求項1または2に記載の配管装置。
【請求項5】
前記継手の内面は、樹脂(b)製であることを特徴とする請求項1または2に記載の配管装置。
【請求項6】
前記脱水機は、遠心分離式脱水機であることを特徴とする請求項1または2に記載の配管装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の配管装置を用いた、樹脂(a)を含有する成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水機から排出されるケーキを輸送する配管装置に関し、更に詳しくは、樹脂および溶媒を含有するスラリーが投入された脱水機から排出されるケーキを下流へ輸送する配管装置において、配管内におけるケーキの詰まりを抑制すると共に、下流側に設置された配管やタンク等の付帯設備への負荷を抑制し、設備全体のコスト削減を可能とする配管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリーから溶媒等を除去するために脱水機が用いられている(一例として図4参照(特許文献1))。かかる脱水機を使用した脱水工程の後には、次工程の処理を行うために、脱水機の排出口(S)から排出されるケーキ(C)(スラリー中から溶媒を排出させて流動性の低いペースト状にしたもの)を輸送する配管が設置されている。
これらのケーキを輸送するために使用する配管においては、ケーキが配管内で詰まることや、ケーキが配管内面に付着して搬送能力が落ちることを防止するため、脱水機からケーキが排出される排出口(S)の流路断面積を維持した状態で配管を設計していた。すなわち、脱水機の前記排出口(S)の流路断面積と略同一の流路断面積を有し、流れ方向全長に亘って略同一の流路断面積を有する配管を用いて、配管装置を設計していた。
【0003】
また、脱水機の排出口から排出されたケーキは、次工程の処理を行うために、密閉されたタンク等へ輸送されることがあり、そのタンク等には、脱水機の排出口の流路断面積を維持した配管が直接接続されている。
【0004】
これら脱水機から排出されたケーキを、次工程の処理を行うために、タンク等に配管を接続する例としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する工程においては、ポリビニルアルコール系樹脂をメタノールあるいは水で洗浄し、洗浄後のポリビニルアルコール系樹脂を脱水機にて脱水し、脱水後のポリビニルアルコール系樹脂(ケーキ)を溶解缶を用いて、可塑剤、添加剤等を仕込み、加温、撹拌することが行われている(特許文献2参照)。
また、ポリビニルアセタール樹脂を製造する工程においては、アセタール化反応の反応物を、予備脱水し、40℃以下の水を加えてスラリー化して洗浄し、脱水することでポリビニルアセタール樹脂の一次ケーキをリスラリー缶に投入する方法、更に、一次ケーキに40℃以下の水を加えて再度スラリー化して洗浄し、乾燥機に投入する方法が行われている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5192609号公報
【特許文献2】特開2002-062429号公報
【特許文献3】特開2008-222938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら脱水機から排出されたケーキを使用して次工程の処理を行うために使用する密閉されたタンク等は、無圧で使用するもの、タンクに内圧をかけて使用するもの等、様々な種類のものが使用されており、これらのタンクは内容物を処理するのに必要な強度で設計する必要がある。
しかしながら、前述のとおり、配管にケーキが詰まること等を防止するために、脱水機の排出口の流路断面積を維持した配管をタンクに直接接続すると、タンクの配管接続部の開口が、脱水機の排出口の流路断面積と略同一の大きさになる。
その結果、タンクの配管接続部の強度が低下してしまうため、前記配管接続部の強度を上げる設計にする必要がある。とりわけ、使用するタンクに内圧を作用させる場合には、より強固な設計とすることが必要になるため、タンクの配管接続部は更に強度を上げる必要があり、設備費用が高価となるという問題があった。
【0007】
本発明ではこのような背景下において、樹脂および溶媒を含有するスラリーが投入された脱水機から排出されるケーキを輸送する配管装置において、ケーキの詰まり等を抑制すると共に、脱水機の下流に設置されるタンク等の付帯設備に対する強度低下等の負荷を抑制し、設備全体のコスト削減を可能とする配管装置、およびこれを用いた製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、脱水機から排出されたケーキを輸送する配管装置において、特定の条件を満足する継手を使用することにより、脱水機から排出されるケーキの詰まりを抑制すると共に、脱水機の下流に設置されるタンク等の付帯設備への負荷を軽減することを可能とする配管装置が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]
樹脂(a)および溶媒を含有するスラリーが投入された脱水機から排出されるケーキを輸送する配管装置であって、
前記配管装置は、前記脱水機の排出口に接続される継手を含み、
前記継手は、流れ方向の下流端に排出口を有し、下記の式(1)におけるKの値が2以下であることを特徴とする配管装置。
(S1/S2/H)×100 = K ・・・(1)
S1:脱水機の排出口の流路断面積(mm2
S2:継手の排出口の流路断面積(mm2
H:継手の流れ方向長さ(mm)
[2]
前記樹脂(a)が、ポリビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする[1]に記載の配管装置。
[3]
前記継手は、ケーキを自重流下させて輸送することを特徴とする[1]または[2]に記載の配管装置。
[4]
前記継手は、金属製であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の配管装置。
[5]
前記継手の内面は、樹脂(b)製であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の配管装置。
[6]
前記脱水機は、遠心分離式脱水機であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の配管装置。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の配管装置を用いた、樹脂(a)を含有する成形物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配管装置は、脱水機から排出されたケーキを輸送する配管装置において、特定の条件を満足する継手を使用することにより、ケーキの詰まりを抑制することができると共に、脱水機の下流に設置されるタンク等の付帯設備への負荷を軽減することができ、設備全体のコスト削減を可能とする配管装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の配管装置の一例を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の配管装置における継手等の一例を模式的に示す説明図であり、継手等の側面図である。
図3】本発明の配管装置における継手等の一例を模式的に示す説明図であり、継手等の正面図である。
図4】本発明の配管装置における継手等の一例を模式的に示す説明図であり、図2のA-A’線断面における端面図、およびB-B’線断面における端面図である。
図5】本発明の配管装置における継手等の一例を模式的に示す説明図であり、図3のC-C’線断面における端面図である。
図6】脱水機の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態にかかる配管装置(以下、「本配管装置」という)は、樹脂(a)および溶媒を含有するスラリーが投入された脱水機から排出されるケーキを輸送する配管装置であって、前記配管装置は、前記脱水機の排出口に接続される継手を含み、前記継手は、流れ方向の下流端に排出口を有し、下記の式(1)におけるKの値が2以下であることを特徴とする。
(S1/S2/H)×100 = K ・・・(1)
S1:脱水機の排出口の流路断面積(mm2
S2:継手の排出口の流路断面積(mm2
H:継手の流れ方向長さ(mm)
【0013】
なお、本明細書において、「流路断面積」とはケーキが通過することができる空間の断面積を意味するものであり(開口面積)、より詳細には、ケーキの流れ方向に垂直な平面で切断した断面における空間の面積である。
また、「継手の流れ方向長さ(H)」とは、ケーキ流れ方向長さの上流端から下流端までの長さを意味するものである。具体的には、例えば、継手の上端に流入口を有し、継手の下端に排出口を有する場合、上下方向における流入口の位置(高さ)から、継手の排出口の位置(高さ)までの垂直距離である。
また、式(1)中、「/」は除算を意味する演算子であり、「×」は乗算を意味する演算子である。
【0014】
本配管装置において、樹脂(a)および溶媒を含有するスラリーを脱水機に投入する方法としては、脱水機に投入する前の工程で、樹脂(a)および溶媒をタンク内で混合、撹拌した後に脱水機に投入する方法、または、樹脂(a)と溶媒を脱水機に直接投入する方法が挙げられる。樹脂(a)から不純物等を取り除くための洗浄処理等を行う場合は、樹脂(a)から不純物をより多く効率的に取り除くことができる点で、前者の方が好ましい。なお、樹脂(a)および溶媒に加えて、他の成分を含有するスラリーを脱水機に投入してもよい。
【0015】
前記式(1)で規定するKの値は、2以下であることが重要であり、1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.8以下であることが特に好ましい。Kの範囲を上記とすることで、脱水処理後のケーキを用いて次工程の処理を行うために使用するタンク等への負荷を抑制し、タンク等の設計強度を低く設定することができ、設備費用が高価となることを抑制することができる。また、Kの範囲を上記とすることで、脱水機から排出されたケーキが継手の内面に付着したり、ケーキが継手内において詰まることを抑制することができる。
また、Kの値の下限値は特に限定する必要はないが、設備全体をコンパクトにし、コストを削減することを考慮すると0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることが特に好ましい。
【0016】
脱水機の排出口の流路断面積(S1)は、式(1)におけるKの値が2以下を満足する限り特に限定はされないが、例えば、5×104~500×104mm2が好ましく、より好ましくは10×104~300×104mm2、更により好ましくは20×104~150×104mm2である。
【0017】
継手の排出口の流路断面積(S2)は、式(1)におけるKの値が2以下を満足する限り特に限定はされないが、例えば、0.5×104~50×104mm2が好ましく、より好ましくは1×104~30×104mm2、更により好ましくは1.5×104~20×104mm2である。
【0018】
継手の流れ方向長さ(H)は、式(1)におけるKの値が2以下を満足する限り特に限定はされないが、例えば、100~4000mmが好ましく、より好ましくは200~3000mm、更により好ましくは300~2500mmである。
【0019】
本配管装置で用いる継手は、脱水機の排出口の下流に接続され、脱水機の排出口から排出されたケーキを下流側の配管やタンク等へ輸送するものである。かかる継手は、ケーキを輸送するための流路(内部空間)を有する筒状体から構成されるものであり、流れ方向の上流端にはケーキが流入する流入口を有し、下流端にはケーキを排出する排出口を有するものである。
【0020】
本配管装置で用いる継手の材質は、強度や耐久性を考慮すると、金属製とすることが好ましく、ステンレス製とすることが更に好ましい。継手の材質を上記とすることで腐食性やメンテナンス性に優れるものとなる。
【0021】
また、本配管装置で用いる継手は、脱水機から下方に向けて設置することが好ましい。すなわち、上記方法により、継手の流れ方向が下方向になるため、脱水機から排出されたケーキは前記継手内(流路)を自重流下(自重落下)しながら移動して輸送されることになる。これにより脱水機から排出されたケーキは、流れ方向に圧力を加えることなく配管を通り、次工程のタンク等に輸送することができるため、継手や継手に接続する配管等の強度をより低く設計することができる。
【0022】
本配管装置で用いる継手の上流端に形成される流入口の流路断面形状は、角形状であることが好ましく、四角形状(特には長方形状)であることが更に好ましい。また、継手の流入口は、脱水機の排出口に接続される。継手の流入口を脱水機の排出口に接続する形態としては、継手の流入口を脱水機の排出口に直接接続する形態であっても、或いは、継手の流入口と脱水機の排出口との間に、脱水機の排出口と略同一の流路断面形状および流路断面積を有する配管を設けて、脱水機の排出口と継手の流入口とを接続する形態であってもよい。脱水機の排出口と継手の流入口との接続部に段差が生じると、内部を流れるケーキがこの段差部に堆積しやすくなることから、継手の流入口の流路断面形状は、脱水機の排出口の流路断面形状に合わせた形状にすることが好ましい。特に遠心分離式の脱水機の排出口の流路断面形状は角形状である場合が多いため、継手の流入口の流路断面形状は上記とすることが好ましい。これにより継手の内部を流れるケーキの付着を効果的に抑制することができる。
【0023】
したがって、継手の流入口の流路断面積は、脱水機の排出口の流路断面積(S1)と略同一であることが好ましく、例えば、5×104~500×104mm2が好ましく、より好ましくは10×104~300×104mm2、更により好ましくは20×104~150×104mm2である。
【0024】
本配管装置で用いる継手の下流端に形成される排出口の流路断面形状は、円形状であることが好ましく、真円形状であることが更に好ましい。継手の排出口の流路断面形状を上記とすることで、次工程で接続する密閉されたタンク等との接続部を円形状とすることができるため、タンク等の開口に加わる圧力を均等化しやすくなり、タンク等の壁面にかかる圧力を低減することができる。
また、本配管装置で用いる継手は、次工程のタンク等に直接接続してもよく、また継手に配管を接続し、前記配管を介して次工程のタンク等に接続することもできる。
【0025】
また、継手の流路において、継手の排出口の中心点は、継手の流入口の流路断面形状の流れ方向の投影面内に位置していることが好ましく、また、継手の排出口の中心点は、継手の流入口の流路断面形状の流れ方向の投影面内であって、前記投影面の中央領域内に位置していることがより好ましい。前記投影面の中央領域内とは、投影面形状の中心点を基準として相似形状に面積を縮小した場合に縮小率が50%以下になる領域内を意味する。更には、継手の流入口の中心点と、継手の排出口の中心点が同一軸線上に位置していることが特に好ましい。前記同一軸線上とは、厳密な一致のみならず、継手の流入口の中心点から流れ方向に延びる軸線と、継手の排出口の中心点との同一平面上における直線距離が100mm以内であることを含む概念である。継手のケーキ排出口の中心点の位置を上記とすることで、継手の内部を流れるケーキの付着をより効果的に抑制することができる。
【0026】
また、本配管装置で用いる継手は、継手の内面を樹脂(b)製とすることが好ましい。前記樹脂(b)の材質は特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂等を使用することができる。また、継手の内面を樹脂(b)とする方法は、特に限定されるものではなく、例えば、樹脂(b)を吹き付けてコーティングする方法、予め継手の内面の形状に沿うように成形されたものを嵌め合う方法、フィルム状の樹脂(b)を継手の内面に張り付ける方法等を使用することができる。
【0027】
前記樹脂(b)としては、ポリエチレン系樹脂が好ましい。なかでも、重量平均分子量が2万~800万のポリエチレン系樹脂が好ましく、より好ましくは重量平均分子量が100万~700万のポリエチレン系樹脂である。
なお、重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量である。
【0028】
また、前記樹脂(b)は、帯電防止処理を施すことも好適である。すなわち、帯電防止処理をしておくと、継手への異物の混入を防ぐことができる。帯電防止処理の方法としては、帯電防止剤や導電性材料を樹脂(b)中に練り込む方法や、帯電防止剤や導電性材料を含む被膜によって樹脂(b)の表面をコーティングしてもよい。練り込みの場合は樹脂100質量部に対して0.01~5質量部程度、表面コーティングの場合は0.01~1g/m2程度の帯電防止剤や導電性材料が使用される。帯電防止剤としては、特に制限はなく、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が使用され、導電性材料としては、特に制限はなく、例えば導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、銀、ニッケル、銅等の金属等を使用することができる。
【0029】
また、本配管装置で用いる継手の内面の動摩擦抵抗値は、1以下とすることが好ましく、0.8以下とすることがより好ましく、0.5以下とすることが更に好ましく、0.3以下とすることが特に好ましい。また、動摩擦抵抗値の下限値は特に規定することはないが、0に近いほど好ましい。継手の内面の動摩擦抵抗値を上記の範囲とすることで、輸送するケーキが継手の内面に付着することを効果的に抑制することができ、継手が閉塞して詰まりが発生することを抑制することができる。
【0030】
前記動摩擦抵抗値の測定方法は、常温(約23℃)環境下において、サンプル試験片(長さ40mm、幅25mm、厚み15mm)を2枚使用し、相手材(S45C、表面粗さRa:0.1μm)を面圧50kgf/cm2で挟み(挟み面:40mm×25mm)、相手材を摺動速度5mm/minで移動させたときの荷重Fを測定した。得られた荷重Fを挟み面圧(50kgf/cm2)で除した値を動摩擦抵抗値とした。
【0031】
また、本配管装置で用いる継手の内面は、スラスト型摩耗試験(JIS K 7218準拠(試験条件:A法、面厚:15kgf/cm2、速度:5m/min、相手材:S45C、相手材の面粗度:Ra=0.5μm、摺動距離:10km))における摩耗性評価において、摩耗量(深さ)が10mm以下とすることが好ましく、1mm以下とすることがより好ましく、0.5mm以下とすることが更に好ましく、0.1mm以下とすることが特に好ましく、0.05mm以下とすることがとりわけ好ましい。また、摩耗性評価においての下限値は特に規定することはないが0に近いほど好ましい。継手の内面の摩耗量を上記の範囲とすることで、継手を長期に使用した場合も継手の内面が摩耗することを抑制し、更に継手の内面の摩擦抵抗値が悪化することを抑制することができる。また、継手の内面の摩耗物が異物としてその後の工程で検出されることも抑制することができ、安定的な生産を可能とすることができる。
【0032】
本発明の脱水機は、ろ過式、遠心分離式を使用することができる。ろ過式の脱水機は、スクリュープレス型、フィルタープレス型、ベルトプレス型、多重円板型、加圧ろ過型、真空ろ過型等を使用することができる。また、遠心分離式では、デカンタ型遠心分離機、円筒型遠心分離機等を使用することができる。本発明では脱水性能や維持管理性を考慮すると遠心分離式の脱水機を使用することが好ましく、連続的にケーキを排出することができるデカンタ型の遠心分離式脱水機を使用することが好ましい。
【0033】
本配管装置において使用できる樹脂(a)は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等の一般的に流通している樹脂を使用することがきる。なかでも水溶性樹脂を使用することが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂を使用することがより好ましい。前記樹脂(a)を使用することで、本配管装置の効果を有効に活用することができる。
【0034】
(水溶性樹脂)
本配管装置において使用できる水溶性樹脂は、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、クインシードガム、カラギーナン、ペクチン、マンナン、デンプン、寒天等の植物系多糖類;ザンサンガム、サクシノグリカン、カードラン、ヒアルロン酸、デキストラン等の微生物系多糖類;ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の植物系タンパク質;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、疎水化セルロース等のセルロース系;可溶化デンプン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン系、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系;その他多糖類誘導体;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(ポリアクリル酸)、ポリアクリルアミドおよびその誘導体等のビニル系;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロック共重合体等のエーテル系;およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0035】
(ポリビニルアルコール系樹脂)
本配管装置に使用できるポリビニルアルコール系樹脂は、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、すなわち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂、また必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を使用することができる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2~30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等があげられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。これらは単独でもしくは2種以上併せて使用することができる。
【0036】
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を使用することもできる。かかる側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
【0037】
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、6万~30万であることが好ましく、特に好ましくは8万~28万、更に好ましくは10万~26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に十分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを用いて偏光膜を製造する際に、延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC-MALS法により測定される重量平均分子量である。
【0038】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常80モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは85モル%以上、更に好ましくは98モル%以上、殊に好ましくは99モル%以上である。平均ケン化度が小さすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜とする場合に充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0039】
(溶媒)
本配管装置に使用できる溶媒は、樹脂(a)の種別等に応じて適宜選択されるが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて使用することができる。
【0040】
樹脂(a)および溶媒を含有するスラリーを脱水処理して得られるケーキの含水率は、配管の詰まりを抑制する観点から、例えば、含水率60質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下である。
なお、含水率とは、例えば、ケーキの質量をW(g)、水分含有量をH(g)とし、含水率(質量%)は、下記式にて求められる。
(式)含水率=H/W×100(%)
【0041】
本配管装置の一例を、模式的に示す図1を参照して説明する。但し、本発明はその要旨を超えない限り以下に限定されるものではない。
タンク(10)には、配管(P1)および配管(P2)が接続されている。配管(P2)は、図示しない供給源から、ポリビニルアルコール系樹脂(P)等の樹脂(a)をタンク(10)へ輸送するため配管であり、配管(P1)は、図示しない供給源から、水(W)等の溶媒をタンク(10)へ輸送するための配管である。タンク(10)は、撹拌機を備えており、タンク内の樹脂(a)および溶媒を撹拌・混合し、スラリーを生成するものである。
【0042】
タンク(10)の下流側には、配管(P3)、脱水機(20)が設置されている。タンク(10)と脱水機(20)とは、配管(P3)で接続されている。配管(P3)は、タンク(10)内で生成したスラリーを脱水機(20)へ輸送するための配管である。脱水機(20)は、タンク(10)で生成したスラリーに脱水処理を施し、ケーキを生成するものである。
【0043】
脱水機(20)は、排出口(21)を有する(以下、「ケーキ排出口(21)」とする)。脱水機(20)のケーキ排出口(21)の下流には、継手(30)が接続されており、継手(30)の下流には、配管(P5)が接続され、更に、配管(P5)の下流には、タンク(40)が接続されている。
【0044】
脱水機(20)のケーキ排出口(21)は、脱水機(20)外へケーキを排出するための排出口である。継手(30)は、ケーキ排出口(21)から排出されたケーキを下流の配管(P5)へ輸送するための配管である。配管(P5)は、継手(30)を通過したケーキを下流のタンク(40)へ輸送するための配管である。
【0045】
タンク(40)には、配管(P5)および配管(P6)が接続されている。配管(P6)は、図示しない供給源から可塑剤等のその他の成分(O)をタンク(40)へ輸送するための配管である。なお、配管(P6)の数は、1つに限るものではなく、2以上であってもよい。
【0046】
タンク(40)は、撹拌機を備えており、タンク内のケーキおよびその他の成分を、加温・加熱条件下において、撹拌・混合し、ケーキを溶解するものである。
【0047】
タンク(40)の下流は、図示しないが、配管や各種の付帯設備が接続されており、所定の工程を経て、樹脂フィルム等の各種の成形品が製造される。
【0048】
樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、タンク(40)においてケーキを含有する水溶液を調製した後、当該水溶液を一定量ずつT型スリットダイに導入し、次いで、回転するキャストドラム上に吐出および流延する連続キャスト法によって製膜する方法が挙げられる。
【0049】
前記樹脂フィルムとしては、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムが挙げられる。
【0050】
なお、脱水機(20)は、分離液排出口(22)を有しており、分離液排出口(22)の下流には配管(P4)が接続されており、配管(P4)の下流側には、図示しないタンク等が設置されている。分離液排出口(22)は、スラリーから分離された分離液を排出するための排出口である。配管(P4)は、分離液排出口(22)から排出された分離液を、下流側の図示しないタンク等へ輸送する配管である。
【0051】
また、脱水機(20)のケーキ排出口(21)の下流に対して継手(30)を接続する形態は、直接的に接続しても、ケーキ排出口(21)の流路断面形状および流路断面積が略同一である配管を介して間接的に接続してもよい。
【0052】
次に、本発明の配管装置に用いられる継手等について、図1と共に、模式的に示す図2図5を参照して説明する。但し、本発明はその要旨を超えない限り以下に限定されるものではない。
なお、図2図5において、脱水機(20)の構成のうちケーキ排出口(21)以外の構成は省略し、図示しない。また、本発明の配管装置の模式的な説明図であり、寸法等は厳密なものではない。
【0053】
本配管装置の好ましい実施形態において用いられる脱水機(20)は、デカンタ型遠心分離機である。具体的には、フィードパイプより脱水機内方にスラリーが投入され、高速回転する外胴ボウル内の遠心力場における比重差による固液分離を行うデカンタ型遠心分離機である。分離されたケーキは、内胴スクリューによって搬送される間に脱水され、外胴ボウルのケーキ出口を経て、脱水機(20)のケーキ排出口(21)から機外へ排出される。
【0054】
脱水機(20)のケーキ排出口(21)は、脱水機(20)の外胴ボウルの軸方向の一方端部の下側に設けられる筒状体の下側開口である(一例として図6参照)。具体的には、前記筒状体は、外胴ボウルのケーキ出口の下側に設けられるものであり、ケーキを下流へ輸送するための流路を有し、上下方向に各々開口を有している(前記筒状体は、本技術分野において、「固体シュート」とも称される場合がある部材である)。
【0055】
図2図5は、脱水機(20)のケーキ排出口(21)と、継手(30)の一例を示す図である。
ケーキ排出口(21)は、前記筒状体の下側開口に相当する。筒状体の流路は、図4のとおり、断面矩形状(長方形状)である。また、筒状体の流路断面積は、上下方向(流れ方向)の全範囲において一定の大きさである。
ケーキ排出口(21)の流路断面積(S1)は、図4のとおり、長方形状における長辺と短辺の各長さの積で求められる。
【0056】
ケーキ排出口(21)には、継手(30)が接続されている。継手(30)は、脱水機(20)のケーキ排出口(21)と、ケーキ排出口(21)の下流に位置する配管(P5)の間に設置され、両者を接続するものである。継手(30)は、締結部材(ボルト等)の固定具を用いて、脱水機(20)のケーキ排出口(21)に接続されると共に、前記と同様の固定具を用いて、配管(P5)に接続されている。
継手(30)は、図4図5に示すとおり、上下方向に沿った流路を有する筒状体であり、前記流路は、ケーキ排出口(21)から排出されたケーキを、下側の配管(P5)へ輸送するための流路である。継手(30)の前記流路の上端には、上方向に開口しているケーキ流入口が形成されており、前記流路の下端には、下方向に開口している排出口(31)が形成されている(以下、「継手側ケーキ排出口(31)」とする)。
【0057】
継手(30)のケーキ流入口における流路断面形状および流路断面積は、図4、5等に示すとおり、脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状および流路断面積と略同一に設定されている。脱水機(20)のケーキ排出口(21)と継手(30)のケーキ流入口とは内面に段差がないように接続される。
【0058】
継手側ケーキ排出口(31)における流路断面形状は、図4に示すとおり、真円形状であり、所定の流路断面積(S2)を有する。継手側ケーキ排出口(31)の流路断面積(S2)は、真円形状の半径に基づいて求めることができる。
【0059】
継手(30)の流路断面積は、図2図5等に示すとおり、流れ方向の上流側から下流側に向かうに従って漸減している。具体的には、継手(30)の内面は、ケーキ流入口から下側に位置する継手側ケーキ排出口(31)に向かって、継手(30)の流れ方向の中心軸方向に傾斜する傾斜面を有するものである。また、継手(30)の内面のうち、継手(30)のケーキ流入口の長辺方向に対向する一対の内面の傾斜は、継手(30)のケーキ流入口の短辺方向に対向する一対の内面の傾斜よりも大きく設定されている。このようにして、継手(30)の流路断面積は、下側に向かうに従って小さくなり、下端に位置する継手側ケーキ排出口(31)の流路断面積が最も小さくなる。
【0060】
また、継手(30)の流路において、継手(30)のケーキ流入口の中心点(すなわち、流路断面形状(長方形状)の対角線の交点)と、継手側ケーキ排出口(31)の中心点(すなわち、流路断面形状(真円形状)の中心点)とは、上下方向(流れ方向)において同一軸線上に位置している。
【0061】
なお、図示しないが、継手(30)の継手側ケーキ排出口(31)における流路断面形状および流路断面積と、継手(30)の下流に接続される配管(P5)の流路断面形状および流路断面積とは、略同一に設定されている。すなわち、配管(P5)の流路断面形状は真円形状であり、その流路断面積は流路断面積(S2)と同一である。継手側ケーキ排出口(31)と配管(P5)とは内面に段差がないように接続される。
そして、配管(P5)が接続されるタンク(40)の配管接続部の開口の流路断面形状および流路断面積は、配管(P5)と略同一である。
【0062】
なお、図2において、継手(30)等の一方の側面図を示しているが、左右の側面図は同一に表れる。また、図3において、継手(30)等の正面図を示しているが、その背面図は正面図と同一に表れる。
【0063】
本配管装置によれば、脱水機(20)から排出されたケーキを輸送する配管装置において、式(1)におけるKの値が2以下の条件を満足するため、ケーキの詰まりを抑制することができると共に、脱水機(20)の下流に設置されるタンク(40)等の付帯設備の強度低下等の負荷を軽減することができ、設備全体のコスト削減を可能とする配管装置とすることができるため、有用である。
【実施例0064】
以下、実施例をあげて、図1を参照しながら本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0065】
<実施例1>
図1の配管装置を参照して、タンク(10)に水10000kgを入れ、撹拌しながら、重合度2600、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(a-1)1000kgを加え30分間撹拌を続けた。
得られたスラリーを、遠心分離式の脱水機(20)(スーパーデカンタ(巴工業社製))に投入し脱水処理を行った。脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状は四角形状(長方形状)、流路断面積(S1)は50×104mm2とし、脱水機(20)のケーキ排出口(21)にステンレス製の継手(30)を接続した。継手(30)の流入口の流路断面形状および流路断面積は、脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状および流路断面積と略同一である。継手(30)の継手側ケーキ排出口(31)の流路断面形状を真円形状とし、流路断面積(S2)を7.5×104mm2、継手(30)の流れ方向長さ(H)を1500mmとした(K値:0.44)。なお、継手(30)の内面はステンレス製とし、動摩擦係数は0.65であった。
継手(30)からタンク(40)の間は、流路断面積(S2)と同一の流路断面積を有する真円形状のステンレス製の配管(P5)を垂直に設置して、タンク(40)に接続した。
当該装置を使用して1カ月稼働した結果、継手(30)の内面のケーキ付着は若干見られたが、閉塞することなく稼働できる結果であった。また、タンク(40)への接続箇所の強度も補強が必要なく、設備費用が高価となることを抑制できた。
【0066】
<実施例2>
図1の配管装置を参照して、タンク(10)に水10000kgを入れ、撹拌しながら、重合度2600、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(a-2)1000kgを加え30分間撹拌を続けた。
得られたスラリーを遠心分離式の脱水機(20)(スーパーデカンタ(巴工業社製))に投入し脱水処理を行った。脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状は四角形状(長方形状)、流路断面積(S1)は50×104mm2とし、脱水機(20)のケーキ排出口(21)にステンレス製の継手(30)を接続した。継手(30)の流入口の流路断面形状および流路断面積は、脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状および流路断面積と略同一である。継手(30)の継手側ケーキ排出口(31)の流路断面形状を真円形状とし、流路断面積(S2)を7.9×104mm2、継手の流れ方向長さ(H)を1800mmとした(K値:0.35)。なお、継手(30)の内面はステンレス製とし、動摩擦係数は0.65であった。
継手(30)からタンク(40)の間には、流路断面積(S2)と同一の流路断面積を有する真円形状のステンレス製の配管(P5)を垂直に設置し、タンク(40)に接続した。当該装置を使用して1か月稼働した結果、継手(30)の内面のケーキ付着は若干見られたが、閉塞することなく稼働できる結果であった。また、タンク(40)への接続箇所の強度も補強が必要なく設備費用が高価となることを抑制できた。
【0067】
<実施例3>
実施例1の継手(30)の内面を超高分子量ポリエチレン製としたこと以外は実施例1と同様にして配管装置を構成した。なお、継手(30)の内面の動摩擦係数は0.096、摩耗性評価(摩耗量(深さ))は0.02mmであった。
当該装置を使用して1か月稼働した結果、継手(30)の内面のケーキ付着は見られず、閉塞することなく稼働できる結果であった。また、タンク(40)への接続箇所の強度も補強が必要なく設備費用が高価となることを抑制できた。
【0068】
<実施例4>
図1の配管装置を参照して、タンク(10)に水15000kgを入れ、撹拌しながら、重合度2600、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(a-2)1500kgを加え30分間撹拌を続けた。
得られたスラリーを遠心分離式の脱水機(20)(スーパーデカンタ(巴工業社製))に投入し脱水処理を行った。脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状は四角形状(長方形状)、流路断面積(S1)は90×104mm2とし、脱水機(20)のケーキ排出口(21)にステンレス製の継手を接続した。継手(30)の流入口の流路断面形状および流路断面積は、脱水機(20)のケーキ排出口(21)の流路断面形状および流路断面積と略同一である。継手(30)の継手側ケーキ排出口(31)の流路断面形状を真円形状とし、流路断面積(S2)を7.5×104mm2、継手の流れ方向長さ(H)を1500mmとした(K値:0.8)。なお、継手(30)の内面はステンレス製とし、動摩擦係数は0.65であった。
継手(30)からタンク(40)の間には、流路断面積(S2)と同一の流路断面積を有する真円形状のステンレス製の配管(P5)を垂直に設置し、タンク(40)に接続した。当該装置を使用して1か月稼働した結果、継手(30)内面のケーキ付着は若干見られたが、閉塞することなく稼働できる結果であった。また、タンク(40)への接続箇所の強度も補強が必要なく設備費用が高価となることを抑制できた。
【0069】
<考察>
実施例1~4の配管装置は、いずれも継手でのケーキの付着を抑制できており、閉塞することなく稼働できることから、メンテナンス性に優れることが分かった。特に、継手の内面を樹脂(b)製とした実施例3の配管装置は、継手でのケーキ付着を効果的に抑制できており、優れたものであった。
また、実施例1~4の配管装置は、いずれもタンク(40)の配管接続部への負荷も軽減でき、配管装置全体のコストを抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、脱水機から排出されたケーキを輸送する配管装置において、式(1)におけるKの値が2以下の条件を満足するため、ケーキの詰まりを抑制することができると共に、脱水機の下流に設置されるタンク等の付帯設備の強度低下等の負荷を軽減することができ、設備全体のコスト削減を可能とする配管装置とすることができるため有用である。
【符号の説明】
【0071】
10 タンク
20 脱水機
21 ケーキ排出口(脱水機)
22 分離液排出口
30 継手
31 ケーキ排出口(継手)
40 タンク
P1~P6 配管
W 溶媒
P 樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6