IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

特開2024-125005ガス脱吸着方法、吸着分離剤および複合材料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125005
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】ガス脱吸着方法、吸着分離剤および複合材料
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20240906BHJP
   C07C 211/29 20060101ALI20240906BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20240906BHJP
   C07C 309/46 20060101ALI20240906BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20240906BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
B01D53/04
C07C211/29
C07C211/27
C07C309/46
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033048
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】足達 健二
(72)【発明者】
【氏名】藤内 謙光
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4H006
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA20
4D012CB11
4D012CD04
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF02
4D012CF03
4D012CF04
4D012CG01
4G066AB11B
4G066AB13B
4G066AB16B
4G066AB21B
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA36
4G066CA32
4G066CA33
4G066DA01
4H006AA03
4H006AB90
(57)【要約】
【課題】本開示は、フルオロカーボンの新たな脱吸着方法を提供することを目的とする。
【解決手段】多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを接触させることを含み、前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを接触させることを含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む、フルオロカーボンの脱吸着方法。
【請求項2】
多孔質有機塩を含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含み、
前記芳香族アミンは、ハロゲン原子を含む、フルオロカーボンの吸着分離剤。
【請求項3】
前記芳香族アミンは、1分子中にハロゲン原子を3個以上含む、請求項2に記載のフルオロカーボンの吸着分離剤。
【請求項4】
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子および臭素原子から選ばれる1種または2種以上である、請求項2または3に記載のフルオロカーボンの吸着分離剤。
【請求項5】
前記多孔質有機塩の空隙率は、10%以上65%以下である、請求項2または3に記載の吸着分離剤。
【請求項6】
前記多孔質有機塩の最小空孔径は、1Å以上20Å以下である、請求項2または3に記載の吸着分離剤。
【請求項7】
フルオロカーボンの最大吸着量が、5mL/g以上100mL/g以下である、請求項2または3に記載の吸着分離剤。
【請求項8】
クロロジフルオロメタン及びジフルオロメタンから選ばれる1種または2種以上を選択的に吸着する、請求項2または3に記載の吸着分離剤。
【請求項9】
多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む、複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス脱吸着方法、吸着分離剤および複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芳香族スルホン酸および芳香族アミンを含み、ホストとして機能する有機塩を用意する工程(a)と、かかる有機塩を、ゲストとして機能する揮発性化合物の蒸気に曝露させる工程(b)とを包含する包接結晶の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-193563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、フルオロカーボンの新たな脱吸着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下を提供する。
[1]
多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを接触させることを含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む、フルオロカーボンの脱吸着方法。
[2]
多孔質有機塩を含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含み、
前記芳香族アミンは、ハロゲン原子を含む、フルオロカーボンの吸着分離剤。
[3]
前記芳香族アミンは、1分子中にハロゲン原子を3個以上含む、[2]に記載のフルオロカーボンの吸着分離剤。
[4]
前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子および臭素原子から選ばれる1種または2種以上である、[2]または[4]に記載のフルオロカーボンの吸着分離剤。
[5]
前記多孔質有機塩の空隙率は、10%以上65%以下である、[2]~[4]のいずれか1つに記載の吸着分離剤。
[6]
前記多孔質有機塩の最小空孔径は、1Å以上20Å以下である、[2]~[5]のいずれか1つに記載の吸着分離剤。
[7]
フルオロカーボンの最大吸着量が、5mL/g以上100mL/g以下である、[2]~[6]のいずれか1つに記載の吸着分離剤。
[8]
クロロジフルオロメタン及びジフルオロメタンから選ばれる1種または2種以上を選択的に吸着する、[2]~[7]のいずれか1つに記載の吸着分離剤。
[9]
多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む、複合材料。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、フルオロカーボンの新たな脱吸着方法を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第一実施形態:フルオロカーボンの脱吸着方法)
本開示のフルオロカーボンの脱吸着方法は、
多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを接触させることを含み、
前記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む。
【0008】
本開示によれば、フルオロカーボンの新たな脱吸着方法を提供し得る。
【0009】
(フルオロカーボン)
上記フルオロカーボンは、炭素原子と該炭素原子に結合するフッ素原子とを含む化合物であり、代表的には、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
【0010】
上記ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、クロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロエタン等が挙げられる。
【0011】
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン等の炭素数1のハイドロフルオロカーボン;ジフルオロエタン(例えば、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、特に、1,1-ジフルオロエタン)、トリフルオロエタン(例えば、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、特に、1,1,1-トリフルオロエタン)、テトラフルオロエタン(例えば、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、ペンタフルオロエタン等の炭素数2のハイドロフルオロカーボン;テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン等の炭素数3のハイドロフルオロカーボン等が挙げられる。
【0012】
上記フルオロカーボンの炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~3であり得る。
【0013】
上記フルオロカーボンの分子径は、例えば0.430nm超であり、0.440nm以上2.00nm以下であってよく、0.440nm以上1.00nm以下であってよい。
【0014】
上記分子径は、フルオロカーボン分子の形状を剛体球と仮定し、以下の式により算出される値である。
d=(ma/(3×21/2ηπ))1/2 …(x1)
ただし、式(x1)中、dは分子径、mは分子1個の質量、aは分子速度、ηは粘性係数を表す。
aは、以下の式により算出される。
a=(γRT/M)1/2 …(x2)
ここで、γは比熱比であり、1.333として近似する。また、Rは気体定数、Tは絶対温度であり、Mは、モル分子質量である。
また、ηは、毛細管法により測定してよい。
【0015】
上記フルオロカーボンの沸点は、1気圧において、例えば-80℃以上-20℃以下であってよく、さらに-60℃以上-30℃以下であってよい。一の態様において、上記混合物中、炭素数nのフルオロカーボンは、ガス(気体)として存在する。
【0016】
本開示の脱吸着方法によれば、フルオロカーボンを脱吸着することが可能であり、好ましくは、特定のフルオロカーボンを脱吸着し得る。
【0017】
一の態様において、本開示の脱吸着方法によれば、炭素数1のフルオロカーボンを脱吸着し得、特に、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれる1種または2種以上を選択的に吸着し得る。
【0018】
好ましい態様において、本開示の脱吸着方法では、炭素数1のフルオロカーボンの吸着量が、炭素数2以上のフルオロカーボンの吸着量よりも大きく、より好ましい態様において、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれるフルオロカーボンの吸着量が、炭素数2以上のフルオロカーボンの吸着量よりも大きい。そのため、炭素数1のフルオロカーボンと炭素数2以上のフルオロカーボンとを含む混合物について、本開示の脱吸着方法を実施した場合に、炭素数1のフルオロカーボンを優先的に吸着し得ること、より好ましくは、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれるフルオロカーボンを優先的に吸着し得ることも期待される。
【0019】
(多孔質有機塩)
上記多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む。上記多孔質有機塩は、代表的には、芳香族アミンのアミノ基と芳香族スルホン酸のスルホン酸基とがイオン間相互作用して有機塩単位を形成し、さらに、かかる有機塩単位が2以上集まって、電荷補助型水素結合、あるいは、芳香族環に由来するπ-π相互作用により、多孔質の超分子構造を形成したものであり得る。
【0020】
上記芳香族アミンは、代表的には、芳香族環を有するアミン化合物であり得、好ましくは、以下の式(A1):
【0021】
【化1】
[式(A1)中、
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基、もしくは、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基を表す。]
で表され得る。
【0022】
上記1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基における「C6-20芳香族炭化水素基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC6-20芳香族炭化水素基は、好ましくはC6-10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基であり得る。
【0023】
上記1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基における「C3-20芳香族複素環基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC3-20芳香族複素環基は、好ましくはC4-10芳香族複素環基であり、具体的には、フリル基、ピロリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、チオフェニル基、インドリル基、ピリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基等が挙げられ、好ましくは、フリル基、チオフェニル基、ピリジニル基が挙げられ、より好ましくは、チオフェニル基、ピリジニル基が挙げられる。
【0024】
上記C6-20芳香族炭化水素基、または、上記C3-20芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基;C1-10アルコキシ基等が挙げられる。
【0025】
上記1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基における「C1-10アルキル基」は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルキル基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり得る。
【0026】
上記C1-10アルキル基を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、より好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0027】
上記1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されたC1-10アルキル基は、好ましくは、1またはそれ以上のフッ素原子により置換された直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-5パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3パーフルオロアルキル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基であり得る。
【0028】
上記C1-10アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルコキシ基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルコキシ基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルコキシ基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基であり得る。
【0029】
芳香族アミンに含まれるアミノ基の個数は、1分子あたり、例えば1個以上2個以下であり得、1個であり得る。
【0030】
芳香族アミンは、ハロゲン原子を含むことが好ましい。該ハロゲン原子は、芳香族環の置換基として含まれ得る。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられ、より好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0031】
芳香族アミンに含まれるハロゲン原子の数は、1分子の芳香族アミンあたり、好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは3個以上9個以下であり得、好ましくは1個以上、より好ましくは3個以上であり、好ましくは9個以下であり得る。
【0032】
上記芳香族アミンとしては、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【0033】
【化2】
【0034】
上記芳香族スルホン酸は、代表的には、芳香族環を有するスルホン酸化合物であり得、好ましくは、以下の式
【0035】
【化3】
[式(B1)中、
b1は、芳香族環および芳香族複素環から選ばれる1種または2種以上を含むn価の基を表し、
n、1~5の整数を表す。]
【0036】
b1で表される、芳香族環および芳香族複素環から選ばれる1種または2種以上を含むn価の基は、1またはそれ以上の置換基を有していてもよい1価のC6-20芳香族炭化水素基、1またはそれ以上の置換基を有していてもよい1価のC3-20芳香族複素環基、以下の式:
【0037】
【化4】
【0038】
[上記式中、
b2は、各出現においてそれぞれ独立して、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基、および、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基から選ばれる1種または2種以上を表し、
b1は、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC2-10アルケニレン基、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC2-10アルキニレン基、もしくは、アゾ基を表す。]
で表される基、および、以下の式:
【0039】
【化5】
【0040】
[上記式中、
b3は、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基、および、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基から選ばれる1種または2種以上を表し、
b2は、各出現においてそれぞれ独立して、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC2-10アルケニレン基を表す。]
で表される基から選ばれる1種または2種以上であり得る。
【0041】
上記1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基における「C6-20芳香族炭化水素基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC6-20芳香族炭化水素基は、好ましくはC6-10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基であり得る。
【0042】
上記1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基における「C3-20芳香族複素環基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC3-20芳香族複素環基は、好ましくはC4-10芳香族複素環基であり、具体的には、フリル基、ピロリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、チオフェニル基、インドリル基、ピリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基等が挙げられ、好ましくは、フリル基、チオフェニル基、ピリジニル基が挙げられ、より好ましくは、チオフェニル基、ピリジニル基が挙げられる。
【0043】
上記C6-20芳香族炭化水素基またはC3-20芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基;C1-10アルコキシ基;置換または非置換のアミノ基等が挙げられる。
【0044】
上記1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基における「C1-10アルキル基」は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルキル基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり得る。
【0045】
上記C1-10アルキル基を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0046】
上記1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されたC1-10アルキル基は、好ましくは、1またはそれ以上のフッ素原子により置換された直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-5パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3パーフルオロアルキル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基であり得る。
【0047】
上記C1-10アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルコキシ基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルコキシ基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルコキシ基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基であり得る。
【0048】
上記置換または非置換のアミノ基としては、アミノ基;1つのC1-10アルキル基により置換されたモノアルキルアミノ基;2つのC1-10アルキル基により置換されたジアルキルアミノ基等が挙げられる。モノアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基におけるC1-10アルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルキル基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり得る。上記置換または非置換のアミノ基としては、ジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0049】
b2で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基における「C6-20芳香族炭化水素基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC6-20芳香族炭化水素基は、好ましくはC6-10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニレン基であり得る。
【0050】
b2で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基における「C3-20芳香族複素環基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC3-20芳香族複素環基は、好ましくはC4-10芳香族複素環基であり、具体的には、フランジイル基、ピロリンジイル基、ベンゾフランジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、チオフェンジイル基、インドリンジイル基、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基等が挙げられ、好ましくは、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基が挙げられ、より好ましくは、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基が挙げられる。
【0051】
b2で表されるC6-20芳香族炭化水素基またはC3-20芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基;C1-10アルコキシ基;置換または非置換のアミノ基等が挙げられる。
【0052】
上記1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基における「C1-10アルキル基」は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルキル基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり得る。
【0053】
上記C1-10アルキル基を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0054】
上記1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されたC1-10アルキル基は、好ましくは、1またはそれ以上のフッ素原子により置換された直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のC1-5パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3パーフルオロアルキル基であり、特に好ましくはトリフルオロメチル基であり得る。
【0055】
上記C1-10アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルコキシ基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルコキシ基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルコキシ基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基であり得る。
【0056】
上記置換または非置換のアミノ基としては、アミノ基;1つのC1-10アルキル基により置換されたモノアルキルアミノ基;2つのC1-10アルキル基により置換されたジアルキルアミノ基等が挙げられる。モノアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基におけるC1-10アルキル基は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC1-10アルキル基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-10アルキル基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状のC1-3アルキル基であり、特に好ましくはメチル基であり得る。上記置換または非置換のアミノ基としては、ジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0057】
b1で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC2-10アルケニレン基における「C2-10アルケニレン基」は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC2-10アルケニレン基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC2-10アルケニレン基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC2-5アルケニレン基であり、さらに好ましくは直鎖状のC2-3アルケニレン基であり、特に好ましくはエテニレン基であり得る。Lb1で表されるC2-10アルケニレン基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0058】
b1で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC2-10アルキニレン基における「C2-10アルキニレン基」は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC2-10アルキニレン基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC2-10アルキニレン基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC2-5アルキニレン基であり、さらに好ましくは直鎖状のC2-3アルキニレン基であり、特に好ましくはエチニレン基であり得る。Lb1で表されるC2-10アルケニレン基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0059】
b3で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC6-20芳香族炭化水素基における「C6-20芳香族炭化水素基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC6-20芳香族炭化水素基は、好ましくはC6-10芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニン基であり得る。
【0060】
b3で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC3-20芳香族複素環基における「C3-20芳香族複素環基」は、単環であっても多環であってもよく、好ましくは単環であり得る。かかるC3-20芳香族複素環基は、好ましくはC4-10芳香族複素環基であり、具体的には、フランジイル基、ピロリンジイル基、ベンゾフランジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、チオフェンジイル基、インドリンジイル基、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基等が挙げられ、好ましくは、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基が挙げられ、より好ましくは、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基が挙げられる。
【0061】
b3で表されるC6-20芳香族炭化水素基またはC3-20芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;1またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-10アルキル基;C1-10アルコキシ基等が挙げられる。
【0062】
b2で表される、1またはそれ以上の置換基を有していてもよいC2-10アルケニレン基における「C2-10アルケニレン基」は、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。かかるC2-10アルケニレン基は、好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC2-10アルケニレン基であり、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のC2-5アルケニレン基であり、さらに好ましくは直鎖状のC2-3アルケニレン基であり、特に好ましくはエテニレン基であり得る。Lb1で表されるC2-10アルケニレン基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0063】
nは、1~5の整数を表し、好ましくは1~3、より好ましくは1~2であり得る。
また、上記芳香族スルホン酸に含まれるスルホン酸基の個数は、1分子当たり、好ましくは1~5個であり得、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個であり得る。
【0064】
上記Rb1としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。
【0065】
【化6】
【0066】
上記芳香族スルホン酸としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。
【0067】
【化7】
【0068】
上記多孔質有機塩において、上記芳香族アミンの量は、上記芳香族スルホン酸1モルに対して、例えば、好ましくは0.5モル以上5モル以下、より好ましくは1モル以上3モル以下、さらに好ましくは1モル以上2モル以下であり得る。
【0069】
上記多孔質有機塩は、代表的には、規則的に配列した細孔を有しているため、フルオロカーボンを選択的に脱吸着することが可能であり得る。
【0070】
上記多孔質有機塩の空隙率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは10%以上65%以下、さらに好ましくは12%以上62%以下であり得る。
【0071】
本開示において、空隙率は、単結晶エックス線構造解析の結果を用いて計算できる。
【0072】
上記多孔質有機塩の最小空孔径は、好ましくは1Å以上20Å以下、より好ましくは2Å以下15Å以下、さらに好ましくは3Å以上10Å以下であり得る。
【0073】
本開示において、最小空孔径は、単結晶エックス線構造解析の結果を用いて計算できる。
【0074】
上記多孔質有機塩における、フルオロカーボンの最大吸着量は、好ましくは5mL/g以上100mL/g以下、より好ましくは10mL/g以上100mL/g以下、さらに好ましくは20mL/g以上100mL/g以下である。
【0075】
本開示において、フルオロカーボンの最大吸着量は、フルオロカーボンを用いたガス吸着法により測定できる。ガス吸着装置として、マイクロトラックベル Belsorp-Maxを用い得る。
【0076】
上記多孔質有機塩は、例えば、上記芳香族アミンおよび上記芳香族スルホン酸と溶媒とを混合して、混合液を得ること;上記混合液から溶媒を除去して、有機塩を得ること;上記有機塩と鋳型分子とを接触させて、上記有機塩に上記鋳型分子が包接された包接結晶を得ること;上記包接結晶から、上記鋳型分子を除去して、多孔質有機塩を得ること、を含む製造方法により製造され得る。
【0077】
上記芳香族アミンおよび上記芳香族スルホン酸と溶媒とを混合して、混合液とすることで、該溶液中において、芳香族アミンのアミノ基と芳香族スルホン酸のスルホン酸基とが相互作用し、有機塩が形成され得る。上記溶媒は、好ましくは、芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸を溶解し得る溶媒であり得、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)等を用い得る。
【0078】
上記混合液から溶媒を除去することで、有機塩を単離し得る。上記混合液からの溶媒の除去は、該混合液における、芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸から形成され得る有機塩の溶解度を下げることにより実施され得、例えば、該混合液の温度を引き下げること;または、該混合液に有機塩の貧溶媒を添加すること等により実施され得る。
【0079】
上記有機塩と上記鋳型分子とを接触させることで、上記鋳型分子が、上記有機塩中に取り込まれ得、分子間相互作用、または、π-π相互作用等により、上記有機塩中で規則的に配置し、上記鋳型分子を包接した包接結晶が得られると考えられる。かかる鋳型分子としては、ベンゼン、トルエン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,2-ジクロロエタン、1-ブロモブタン、1,3-ジヨードプロパン、o-クロロトルエン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,4-ジオキサン、アニソール、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリル、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-o-トルイジン、N,N-ジメチルホルムアミドおよびエチルアセテートからなる群より選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0080】
上記有機塩と上記鋳型分子とを接触させる際、上記鋳型分子を蒸気として接触させてもよい。また、上記有機塩と上記鋳型分子との接触は、閉容器または開容器等の容器中で実施してよい。
【0081】
上記包接結晶から鋳型分子を除去すると、有機塩の構造が保持された状態で、鋳型分子の存在箇所が空孔となるため、多孔質有機塩が得られると考えられる。上記包接結晶からの鋳型分子の除去は、包接結晶の加熱、又は、減圧下での保持等により実施され得る。
【0082】
(接触方法)
上記フルオロカーボンと上記多孔質有機塩とを接触させることにより、フルオロカーボンが多孔質有機塩に脱吸着され得る。フルオロカーボンは、代表的には、ガス(気体)として多孔質有機塩と接触され得る。
【0083】
一の態様において、上記脱吸着方法によれば、特定のフルオロカーボンを選択的に吸着し得、2種以上のフルオロカーボンの混合物から、特定のフルオロカーボンを分離および/または回収し得る。好ましい態様において、本開示の脱吸着方法によれば、2種以上のフルオロカーボンの混合物から、炭素数1のフルオロカーボンを分離および/または回収し得る。
【0084】
フルオロカーボンと多孔質有機塩との接触は、例えば、バッチ法またはカラム法により実施してよい。バッチ法は、密閉可能な容器にフルオロカーボンと多孔質有機塩とを入れ、所定温度および所定圧力の条件下で、一定時間静置することにより、フルオロカーボンと多孔質有機塩とを接触させる方法である。また、カラム法は、多孔質有機塩を容器(カラム)に充填し、フルオロカーボンを該容器(カラム)内に流すことにより、フルオロカーボンと多孔質有機塩とを接触させる方法である。
【0085】
一の態様において、上記接触の際の温度は、例えば10℃以上40℃以下であってよく、さらに15℃以上35℃以下であってよい。また、上記接触の際の圧力(ゲージ圧)は、0.2MPaG以上2MPaG以下であってよく、0.4MPaG以上1.5MPaG以下であってよい。接触の際の圧力が上記範囲にあることで、吸着質が吸着媒に吸着されやすくなり分離効率が向上しうるとともに、吸着媒の細孔構造を保持しうる。
【0086】
上記接触をカラム法により実施する場合、上記フルオロカーボンの流量は、50mL/分以上1,000mL/分以下であってよく、100mL/分以上500mL/分以下であってよい。
【0087】
多孔質有機塩に吸着されたフルオロカーボンは、減圧、昇温等により多孔質有機塩から脱離することができる。これにより、多孔質有機塩を再生(リサイクル)し、フルオロカーボンを回収することができる。
【0088】
一の態様において、上記多孔質有機塩の再生(リサイクル)は、フルオロカーボンと多孔質有機塩とを接触させて、フルオロカーボンを多孔質有機塩に吸着させた後、多孔質有機塩からフルオロカーボンを脱着することを含み得;フルオロカーボンを脱着した多孔質有機塩と上記溶媒とを混合し、有機塩を得ること、かかる有機塩と上記鋳型分子を接触させて、包接結晶を得ること、および、かかる包接結晶から鋳型分子を除去して多孔質有機塩を得ること、をさらに含み得る。
【0089】
上記多孔質有機塩と上記フルオロカーボンとを接触させる際、他の化合物が共存していてもよい。かかる他の化合物の沸点は、例えば-100℃以下であってよく、-150℃以下であってよい。一の態様において、かかる他の化合物は、気体(ガス)として上記混合物に含まれる。上記他の化合物としては、窒素、酸素、二酸化炭素、水等が挙げられる。
【0090】
(第二実施形態:吸着分離剤)
本開示の吸着分離剤は、多孔質有機塩を含み、該多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含み、上記芳香族アミンは、ハロゲン原子を含む。
【0091】
本実施形態における多孔質有機塩は、ハロゲン原子を必須として含むこと以外は、第一実施形態における多孔質有機塩と、同意義であり、本実施形態における芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸は、第一実施形態における芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸と同意義である。
【0092】
本開示の吸着分離剤における多孔質有機塩の含有率は、例えば50質量%以上100質量%以下、好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0093】
上記吸着分離剤は、上記多孔質有機塩の他に、樹脂を含んでいてもよい。かかる樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリスルホン樹脂等が挙げられる。
【0094】
上記吸着分離剤は、乳化剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、粘弾性調整剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料等の添加剤を含んでいてもよい。また、上記吸着分離剤は、粉末状、粒状、フレーク状、または、ペレット状であってよい。
【0095】
上記吸着分離剤は、フルオロカーボンの吸着分離剤として用いることができる。特に、上記吸着分離剤は、炭素数1のフルオロカーボンの吸着分離剤として用いることができ、特に、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれる1種または2種以上を選択的に吸着し得る吸着分離剤として用いることができる。
【0096】
好ましい態様において、上記吸着分離剤は、炭素数1のフルオロカーボンの吸着量が、炭素数2以上のフルオロカーボンの吸着量よりも大きく、より好ましい態様において、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれるフルオロカーボンの吸着量が、炭素数2以上のフルオロカーボンの吸着量よりも大きい。そのため、炭素数1のフルオロカーボンと炭素数2以上のフルオロカーボンとを含む混合物と、本開示の吸着分離剤とを接触させた場合、炭素数1のフルオロカーボンを優先的に吸着し得ること、より好ましくは、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれるフルオロカーボンを優先的に吸着し得ることも期待される。
【0097】
一の態様において、上記吸着分離剤によれば、特定のフルオロカーボンを選択的に吸着し得、2種以上のフルオロカーボンの混合物から、特定のフルオロカーボンを分離および/または回収し得る。好ましい態様において、上記吸着分離剤によれば、2種以上のフルオロカーボンの混合物から、炭素数1のフルオロカーボンを分離および/または回収し得る。
【0098】
(第三実施形態:複合材料)
本実施形態における複合材料は、多孔質有機塩と、フルオロカーボンとを含み、かかる多孔質有機塩は、芳香族アミンと芳香族スルホン酸との塩を含む。
【0099】
本実施形態におけるフルオロカーボン、多孔質有機塩、芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸は、第一実施形態におけるフルオロカーボン、多孔質有機塩、芳香族アミンおよび芳香族スルホン酸と同意義である。
【0100】
かかる複合材料において、上記フルオロカーボンは、好ましくは、炭素数1のフルオロカーボンを含み、より好ましくは、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれる1種または2種以上を含み得る。
【0101】
好ましい態様において、上記フルオロカーボンにおける炭素数1のフルオロカーボンの含有量は、炭素数2以上のフルオロカーボンの含有量よりも大きく、より好ましくは、クロロジフルオロメタンおよびジフルオロメタンから選ばれる1種または2種以上の合計の含有量は、それ以外のフルオロカーボンの含有量よりも大きい。
【0102】
上記複合材料は、上記フルオロカーボンおよび多孔質有機塩の他に、樹脂を含んでいてもよい。かかる樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリスルホン樹脂等が挙げられる。
【0103】
上記複合材料は、乳化剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、粘弾性調整剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、防腐剤、可塑剤、浸透剤、香料、殺菌剤、殺ダニ剤、防かび剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、顔料等の添加剤を含んでいてもよい。
【実施例0104】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0105】
(実施例1~8)
表1に示すように、芳香族スルホン酸と芳香族アミンとを所定のモル比で秤量し、これらをエタノール中で混合し、その後エタノールを減圧で留去し、有機塩を得た。調整した有機塩0.005gをスライドガラス上に載せてシャーレ中に置いた。シャーレ中のスライドガラス以外の場所に表1の鋳型分子を100μL滴下し、シャーレに蓋をして密閉し、10分静置した。これにより包接結晶を得た。得られた包接結晶を10Paで減圧下、100℃で2時間静置して、鋳型分子を除去し、多孔質有機塩を得た。
【0106】
【表1】
【0107】
表1において、ABDS、TPMA、TPMA-F、TPMA-2F、TPMA-3F、TPMA-CF3、TPMA-ClおよびTPMA-Brは、それぞれ、以下の式で表される化合物を意味する。
【0108】
【化8】
【0109】
〔空隙率の測定〕
多孔質有機塩の単結晶エックス線構造解析を行い、得られた原子座標データを用いて三次元構造図を作成する。作成した三次元構造図から、Mercuryなどの計算ソフトを用いて空隙率を計算した。
実施例1で製造した多孔質有機塩の空隙率は、20.9%であり、実施例2で製造した多孔質有機塩の空隙率は、15.7%であり、実施例3で製造した多孔質有機塩の空隙率は、60.4%であり、実施例7で製造した多孔質有機塩の空隙率は、57.7%であった。
【0110】
〔最小空孔径の測定〕
多孔質有機塩の単結晶エックス線構造解析を行い、得られた原子座標データを用いて三次元構造図を作成する。作成した三次元構造図から、Mercuryなどの計算ソフトを用いて最小空孔径を計算した。
実施例1で製造した多孔質有機塩の最小空孔径は、3.9Åであり、実施例2で製造した多孔質有機塩の最小空孔径は、1.9Åであり、実施例7で製造した多孔質有機塩の最小空孔径は、7.2Åであり、実施例8で製造した多孔質有機塩の最小空孔径は、7.0Åであった。
【0111】
〔吸着測定〕
100℃、10Pa、2時間の条件で活性化させた多孔質有機塩30mgを測定セルに封入し、マイクロトラックベル Belsorp-Maxを用いて、23℃の温度条件で0気圧から1気圧までの表2に示すフルオロカーボンと接触させることで吸着測定を行った。
【0112】
結果を表2に示す。なお、表2における「N.D.」は、未測定であることを示す。
【0113】
【表2】
【0114】
実施例1~7では、フルオロカーボンを吸着し得ることが確認された。さらに、実施例1、2、5~7では、R22(クロロジフルオロメタン)およびR32(ジフルオロメタン)の吸着量は、R125(ペンタフルオロエタン)およびR134a(テトラフルオロエタン)の吸着量よりも大きく、炭素数1のフルオロカーボンを優先的に吸着し得ることが確認された。また、実施例3、4では、R22(クロロジフルオロメタン)の吸着量は、R32(ジフルオロメタン)、R125(ペンタフルオロエタン)およびR134a(テトラフルオロエタン)の吸着量よりも大きく、特定のフルオロカーボンを優先的に吸着し得ることが確認された。