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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125069
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】セメント系固化材の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240906BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240906BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240906BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240906BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C04B28/02
G01N33/38
C04B22/14 B
C04B18/14 A
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033154
(22)【出願日】2023-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 正人
(72)【発明者】
【氏名】土肥 浩大
【テーマコード(参考)】
2G059
4G112
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB09
2G059EE02
2G059EE13
2G059HH02
2G059MM01
2G059MM12
4G112MB23
4G112PA29
4G112PB11
(57)【要約】
【課題】セメント系固化材の品質を迅速且つ簡易に管理し得る方法を提供すること。
【解決手段】ハンター色差計を用いて測定したセメント系固化材の色度L値及びb値に基づき、該セメント系固化材に含まれる材料の混合割合を推定する、セメント系固化材の品質管理方法である。セメント系固化材に含まれるセメントの割合をC(質量%)とし、L値をXとし、b値をYとしたとき、回帰式:C=c+cX+cYに基づきセメント系固化材に含まれるセメントの割合を推定することが好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンター色差計を用いて測定したセメント系固化材の色度L値及びb値に基づき、該セメント系固化材に含まれる材料の混合割合を推定する、セメント系固化材の品質管理方法。
【請求項2】
前記材料がセメント及び石膏を含む、請求項1に記載のセメント系固化材の品質管理方法。
【請求項3】
前記材料がセメント、スラグ及び石膏を含む、請求項1に記載のセメント系固化材の品質管理方法。
【請求項4】
前記セメント系固化材に含まれる前記セメントの割合をC(質量%)とし、L値をXとし、b値をYとしたとき、回帰式:C=c+cX+cYに基づき前記セメント系固化材に含まれる前記セメントの割合を推定する、請求項2又は3に記載のセメント系固化材の品質管理方法。
【請求項5】
前記セメント系固化材に含まれるセメント以外の材料の割合をS(質量%)とし、L値をXとし、b値をYとしたとき、回帰式:S=c+cX+cYに基づき前記セメント系固化材に含まれる前記スラグの割合を推定する、請求項3に記載のセメント系固化材の品質管理方法。
【請求項6】
前記セメント系固化材に含まれる前記材料の混合割合を推定し、
前記混合割合の推定値と、前記セメント系固化材における前記材料の混合割合の設定値とを比較して、該推定値と該設定値との乖離の程度を求め、
前記乖離の程度が閾値を超えた場合、前記セメント系固化材における前記材料の混合割合を調整する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセメント系固化材の品質管理方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセメント系固化材の品質管理方法を用いてセメント系固化材を製造する、セメント系固化材の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系固化材の品質を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セメント系固化材を用いた地盤改良工事の実施件数が増加している。このことに伴い、顧客ニーズに応えることを目的として、リードオンタイムでセメント系固化材を必要な場所に素早く納入する必要がある。そのためにはセメント系固化材の品質を短時間で管理することが求められる。
【0003】
従来のセメント系固化材の製造及び品質管理方法として、実際に製造されたセメント系固化材製品について蛍光X線回折法による定量分析や湿式定量分析等を行い、含有成分の定量結果から品質を管理する方法が知られている。しかし、この方法では測定結果を得るまでに時間を要していたので、タイムリー且つ迅速な管理を行うことは難しかった。また、計量器での測定結果では所定の混合割合となっていても、その後の工程において各材料が適切に混合されているか否かの判断については別途分析を実施する必要があった。
【0004】
ところで特許文献1には、セメント組成物中の凝集シリカフュームの多寡を色差計によって判定し、その結果に基づきセメント組成物の混練時間を制御する方法が提案されている。しかし同文献では、セメント系固化材について、その構成材料であるセメント及び石膏等の配合割合を推定し、品質管理を行う技術については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-206134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、セメント系固化材の品質を迅速且つ簡易に管理し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セメント系固化材を製造する際の品質管理工程における技術について研究を進めた結果、構成材料の混合割合が、色差計によって測定した色度L値及びb値と高い相関を有することを見出した。
本発明は、この知見に基づいて得られたものであり、ハンター色差計を用いて測定したセメント系固化材の色度L値及びb値に基づき、該セメント系固化材に含まれる材料の混合割合を推定する、セメント系固化材の品質管理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成材料の混合割合が未知であるセメント系固化材の色度L値及びb値に基づき、該構成材料の混合割合を高い精度で迅速に且つ簡易に推定できる。この推定結果に基づきセメント系固化材の品質管理をタイムリーに行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の品質管理方法は、セメント系固化材の構成材料の混合割合を、ハンター色差計を用いて推定することに関する。具体的には、ハンター色差計を用いてセメント系固化材の色度L値及びb値を測定し、L値及びb値に基づきセメント系固化材の構成材料の混合割合を推定する。
【0010】
本発明の品質管理方法の対象であるセメント系固化材は一般に、砂質土や粘性土等の一般的な軟弱土や、含水比が高い泥状物や有機質含有土を固化処理する幅広い用途で用いられるものである。セメント系固化材をこれらの土と混合する処理を行うことで、処理後の土に高い強度が発現する。
【0011】
セメント系固化材は固化母材としてセメントを含む。セメント系固化材におけるセメントの割合は40質量%以上であることが好ましい。
セメント系固化材は、セメントに加えて石膏を含むことが、処理後の土に高い強度を発現させ得る点から好ましい。同様の理由によってセメント系固化材は、セメント及び石膏に加えてスラグを含むことも好ましい。セメント系固化材は、更に石灰、フライアッシュ及びシリカ等の一種以上を更に含むことも好ましい。
【0012】
セメント系固化材に含まれるセメントとしては、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント及び高炉セメントを例示することができる。
ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントとしては、例えばJIS R5210:2019に規定されるものを用いることができる。
高炉セメントは、ポルトランドセメントと高炉スラグとを含むものであり、例えばJIS R5211:2019に規定されるものを用いることができる。具体的には、高炉セメントは、高炉スラグを5質量%超30質量%以下含む高炉セメントA種、高炉スラグを30質量%超60質量%以下含む高炉セメントB種及び高炉スラグを60質量%超70質量%以下含む高炉セメントC種のうち少なくとも一種を用いることができる。
【0013】
セメント系固化材の構成材料の一つである石膏としては、例えば無水石膏、半水石膏及び二水石膏などが挙げられる。有機質含有土の強度改善を効率的に行う観点から、石膏は、無水石膏及び二水石膏のいずれかであることが好ましく、無水石膏であることが更に好ましい。
【0014】
セメント系固化材の構成材料の一つであるスラグとしては、例えば高炉スラグを用いることが好ましい。
【0015】
セメント系固化材は、例えば高炉セメント及び石膏を混合して製造することができる。あるいは、ポルトランドセメント、石膏及び高炉スラグを混合してセメント系固化材を製造することができる。
製造時及び運搬時の利便性の向上と、固化処理を行う現場において固化処理対象の土の性状に応じて固化材の使用量を調整しやすくする観点から、セメント粉末及び石膏粉末を混合する方法、又はセメント粉末、石膏粉末及びスラグ粉末を混合する方法でセメント系固化材を製造することが好ましい。このようにして得られたセメント系固化材は好ましくは粉末状である。
【0016】
本発明においては、粉末状であるセメント系固化材の色味を、ハンター色差計を用いて測定する。具体的にはL値及びb値を測定する。ハンター色差計を用いた色味の測定においては、L値及びb値に加えてa値も測定することができる。本発明者の検討の結果、意外にも、L値、a値及びb値のうち、L値及びb値が、セメント系固化材の構成材料の混合割合との相関が極めて高いことが判明した。
【0017】
ハンター色差計を用いたセメント系固化材の色味の測定に際し測定環境に特に制限はないが、環境温度は一定であることが好ましい。例えば20±3℃の室内で測定することが好ましい。
測定対象の試料の調製は、ばらつきが生じにくく品質が一定となる方法、例えば振動バイブレーターなどを使用して行うことが好ましい。
【0018】
本発明においては、構成材料の混合割合が既知である数種類のセメント系固化材について、ハンター色差計を用いてL値及びb値を測定する。そして、セメント系固化材に含まれるセメントの割合(質量%)をCとし、L値をXとし、b値をYとして、回帰式:C(X,Y)=c+cX+cYに基づき重回帰分析を行う。式中、c、c及びcは、重回帰分析によって算出される定数である。
【0019】
具体的には、各セメント系固化材におけるCi、Xi及びYi(添え字iは、i番目のサンプルを意味する。)に基づき、Σ(Ci-C(Xi,Yi))が最小となるc、c及びcを算出する。つまり最小自乗法によってc、c及びcを算出する。構成材料の混合割合が既知であるセメント系固化材のサンプル数は、好ましくは3以上、更に好ましくは6以上とすることが、精度の高い推定が可能になる点から好ましい。
【0020】
このようにして算出・決定された回帰式:C=c+cX+cYを検量線として用い、構成材料の混合割合が未知であるセメント系固化材についてL値及びb値を測定する。測定されたL値及びb値を前記検量線に当てはめることで、該セメント系固化材に含まれるセメントの混合割合Ce(質量%)を推定することができる。
【0021】
セメント系固化材がセメント及び石膏のみからなる場合には、上述の方法によって推定されたセメントの混合割合Ce(質量%)を100から減じることによって、すなわち〔100-Ce〕の計算をすることによって、石膏の混合割合Ae(質量%)を推定することができる。
【0022】
前記検量線を作成するときに用いるセメント及び石膏は、測定に供するセメント系固化材、すなわち構成材料の混合割合が未知であるセメント系固化材に含まれるセメント及び石膏と同種であることが、精度の高い推定が可能であることから好ましい。セメント及び/又は石膏の種類が異なるセメント系固化材における構成材料の混合割合を推定する場合には、新たな検量線を求めることが、精度の高い推定を可能にする点から好ましい。
【0023】
以上の説明は、検量線に基づきセメント系固化材に含まれるセメントの混合割合を推定する方法に係るものであったところ、本発明においては、セメント系固化材に含まれるセメント以外の材料についても、その混合割合の推定が可能である。セメント以外の材料としては、典型的にはスラグが挙げられるが、これに限られず例えばフライアッシュや石灰などを対象とすることもできる。
【0024】
具体的には、構成材料の混合割合が既知である数種類のセメント系固化材について、ハンター色差計を用いてL値及びb値を測定する。そして、セメント系固化材に含まれるセメント以外の材料、例えばスラグの割合(質量%)をSとし、L値をXとし、b値をYとして、回帰式:S(X,Y)=c+cX+cYに基づき重回帰分析を行う。式中、c、c及びcは、重回帰分析によって算出される定数である。具体的には、各セメント系固化材におけるSi、Xi及びYi(添え字iは、i番目のサンプルを意味する。)に基づき、Σ(Si-S(Xi,Yi))が最小となるc、c及びcを算出する。つまり最小自乗法によってc、c及びcを算出する。
【0025】
このようにして算出・決定された回帰式:S=c+cX+cYを検量線として用い、構成材料の混合割合が未知であるセメント系固化材についてL値及びb値を測定する。測定されたL値及びb値を前記検量線に当てはめることで、該セメント系固化材に含まれるセメント以外の材料、例えばスラグの混合割合を推定することができる。
【0026】
セメント系固化材がセメント、石膏及びスラグ等の他の材料からなる場合には、上述の方法によって推定されたセメントの混合割合Ce(質量%)及びスラグ等の他の材料の混合割合Se(質量%)を100から減じることによって、すなわち〔100-Ce-Se〕の計算を行うことによって、石膏の混合割合Ae(質量%)を推定することができる。
【0027】
前記検量線を作成するときに用いるセメント、石膏及びスラグ等の他の材料は、測定に供するセメント系固化材、すなわち構成材料の混合割合が未知であるセメント系固化材に含まれるセメント、石膏及びスラグと同種であることが精度の高い推定が可能であることから好ましい。セメント及び/又は石膏及び/又はスラグ等の種類が異なるセメント系固化材における構成材料の混合割合を推定する場合には、新たな検量線を求めることが、精度の高い推定を可能にする点から好ましい。
【0028】
以上の方法によってセメント系固化材に含まれる構成材料の混合割合を推定することで、セメント系固化材の品質管理を精度良く行うことができる。詳細には、上述の方法によってセメント系固化材に含まれる構成材料の混合割合を推定し、該混合割合の推定値と、セメント系固化材における構成材料の混合割合の設定値とを比較する。そして推定値と設定値との乖離の程度を求める。この乖離の程度が予め設定しておいた閾値を超えた場合、セメント系固化材に含まれる構成材料の混合割合を調整する。例えばセメントの混合割合を増減したり、石膏の混合割合を増減したり、あるいはスラグ等のその他の材料の混合割合を増減したりする。それによって、前記推定値と前記設定値との乖離を前記閾値内に収めるようにフィードバック制御を行う。これによって、セメント系固化材の品質を一定に保つことが容易となる。
【0029】
本発明の品質管理方法は、例えばセメント系固化材の出荷拠点(サービスステーション)において、セメント及び石膏、並びに必要に応じてスラグ等の他の材料を混合してセメント系固化材を製造する場面に適用することができる。あるいは、セメント系固化材がサイロに保管されている状態の場合には、該サイロに色差計を取り付けることで、本発明の品質管理方法を適用することができ、またセメント系固化材の輸送ラインに色差計を取り付けることで、本発明の品質管理方法を適用することもできる。
【0030】
本発明によれば、上述したセメント系固化材の品質管理方法を用いてセメント系固化材を製造する、セメント系固化材の製造システムも提供される。この製造システムは、構成材料が混合された状態のセメント系固化材を対象とし、セメント系固化材の色度L値及びb値を測定してセメント系固化材に含まれる材料の混合割合を推定することを含むものである。この製造システムを採用することによって、一定品質のセメント系固化材を容易に製造することが可能となる。
【0031】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、本発明の効果が奏される範囲において種々の変更が可能である。
【実施例0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0033】
〔実施例1〕
<セメント系固化材の製造>
高炉セメントB種(UBE三菱セメント九州工場製)と、石膏(無水石膏;秋田製錬製)とを、以下の表1に示す種々の割合で混合して、異なる組成を有する複数種の粉状のセメント系固化材(表1中、「セメント系固化材a~e」として示す。)を得た。
【0034】
<色差計によるL値及びb値の測定>
ハンター色差計として、日本電色工業株式会社製SE7700を用いた。この色差計を用い、セメント系固化材a~eのL値及びb値を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
<重回帰計算>
回帰式をC=c+cX+cYに設定し重回帰計算を行った。その結果、c=481.1582、c=-5.8949、c=-3.5508となった。この重回帰計算による重相関Rは0.9546であり、重決定R2は0.9113であった。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す結果から明らかなとおり、セメント系固化材に含まれるセメントの混合割合(質量%)と、L値及びb値とは高い相関を有することが分かる。
【0038】
次に、セメント:石膏=90:10(質量比)で配合したセメント系固化材を別途用意した。このセメント系固化材を色差計によって測定したところ、L値は63.19であり、b値は5.27であった。このL値及びb値を上述の重回帰計算によって得られた検量線に当てはめたところ、セメントの混合割合は89.9%と推定され、実際の混合割合(90%)に極めて近い値となった。この結果から、上述の検量線を用いることで、未知のセメント系固化材に含まれるセメントの混合割合を精度良く推定できることが確認できた。
【0039】
〔実施例2〕
<セメント系固化材の製造>
早強ポルトランドセメント(UBE三菱セメント九州工場製)と、石膏(無水石膏;秋田製錬製)と、高炉スラグ(ケイメント製)とを以下の表2に示す種々の割合で混合して、異なる組成を有する複数種の粉状のセメント系固化材(表2中、「セメント系固化材f~l」として示す。)を得た。
【0040】
<色差計によるL値及びb値の測定>
実施例1と同様に、セメント系固化材a~eのL値及びb値を測定した。その結果を表2に示す。
【0041】
<重回帰計算>
回帰式をC=c+cX+cYに設定しセメントの混合割合について重回帰計算を行った。その結果、c=-50.6864、c=-1.1450、c=30.0909となった。この重回帰計算による重相関Rは0.9989であり、重決定R2は0.9979であった。
また、回帰式をS=c+cX+cYに設定しスラグの混合割合について重回帰計算を行った。その結果、c=178.8188、c=0.849665、c=-33.2753となった。この重回帰計算による重相関Rは0.9895であり、重決定R2は0.9791であった。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示す結果から明らかなとおり、セメント系固化材に含まれるセメントの混合割合(質量%)と、L値及びb値とは高い相関を有することが分かる。また、セメント系固化材に含まれるスラグの混合割合(質量%)と、L値及びb値とは高い相関を有することが分かる。
【0044】
次に、セメント:石膏:スラグ=65:10:25(質量比)で配合したセメント系固化材を別途用意した。このセメント系固化材を色差計によって測定したところ、L値は61.79であり、b値は6.20であった。このL値及びb値を上述の重回帰計算によって得られた検量線に当てはめたところ、セメントの混合割合は65.1%と推定され、実際の混合割合(65%)に極めて近い値となった。また、スラグの混合割合は25.0%と推定され、実際の混合割合(25%)と同じ値となった。これらの結果から、上述の検量線を用いることで、未知のセメント系固化材に含まれるセメント及びスラグの混合割合を精度良く推定できることが確認できた。
【0045】
〔実施例3〕
<セメント系固化材の製造>
高炉セメントB種(UBE三菱セメント宇部工場製)と、石膏(無水石膏;国際商事製)とを以下の表3に示す種々の割合で混合して、異なる組成を有する複数種の粉状のセメント系固化材(表3中、「セメント系固化材m~q」として示す。)を得た。
【0046】
<色差計によるL値及びb値の測定>
ハンター色差計として、実施例1で用いた色差計に代えて、コニカミノルタ社製CR-20(ハンディタイプ)を用いた。この色差計を用い、セメント系固化材m~qのL値及びb値を測定した。その結果を表3に示す。
【0047】
<重回帰計算>
回帰式をC=c+cX+cYに設定し重回帰計算を行った。その結果、c=441.06059、c=-6.1376、c=-3.256264となった。この重回帰計算による重相関Rは0.9986であり、重決定R2は0.9973であった。
【0048】
【表3】
【0049】
表1に示す結果から明らかなとおり、セメント系固化材に含まれるセメントの混合割合(質量%)と、L値及びb値とは高い相関を有することが分かる。
【0050】
次に、セメント:石膏=90:10(質量比)で配合したセメント系固化材を別途用意した。このセメント系固化材を色差計によって測定したところ、L値は61.0であり、b値は6.9であった。このL値及びb値を上述の重回帰計算によって得られた検量線に当てはめたところ、セメントの混合割合は89.7%と推定され、実際の混合割合(90%)に極めて近い値となった。この結果から、上述の検量線を用いることで、未知のセメント系固化材に含まれるセメントの混合割合を精度良く推定できることが確認できた。また、実施例1で得られた結果との比較から、異なる色差計を用いた場合であっても、同様の精度で混合割合の推定が可能であることが確認された。