(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125171
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240906BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20240906BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240906BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240906BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240906BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240906BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/00
C08L77/00
C08L67/00
C08L67/02
C08L69/00
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010158
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023033034
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023168829
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】吉國 道生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆介
(72)【発明者】
【氏名】薄田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 晃司
【テーマコード(参考)】
4J002
5J046
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG011
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002DE098
4J002DE128
4J002DL006
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EW067
4J002FA016
4J002FD016
4J002FD037
4J002FD090
4J002FD160
4J002FD208
4J002GN00
4J002GQ00
5J046PA00
(57)【要約】
【課題】 低誘電特性を示し、かつ、誘電特性の異方性が小さい成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 熱可塑性樹脂100質量部に対し、比誘電率5.5以下、誘電正接が0.0020以下、平均粒径(D50)10~200μm、平均厚み0.1μm以上2.0μm未満の低誘電フレーク状ガラス15~160質量部を含む樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100質量部に対し、比誘電率5.5以下、誘電正接が0.0020以下、平均粒径(D50)10~200μm、平均厚み0.1μm以上2.0μm未満の低誘電フレーク状ガラス15~160質量部を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.10<ΔDK<0.10である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を1~30質量部を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.1<ΔDK<0.1であり、
前記熱可塑性樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含み、
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.10<ΔDK<0.10であり、
前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含み、
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.10<ΔDK<0.10であり、
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂を含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含み、
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項21】
請求項19に記載のペレットから形成された成形品。
【請求項22】
前記成形品が、アンテナ筐体またはアンテナ基材である、請求項20に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、熱可塑性樹脂を含み、低誘電特性を示す成形品を提供可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代無線通信システムとして、第5世代移動通信システム(5G)の標準化が進められている。次世代無線通信システムでは、データ伝送速度の高速化や大容量化が実現できるため、様々なサービスが提供されることが期待されている。
【0003】
5Gでは、従来に比較して高い周波数領域の電波が用いられることから、誤動作が起きやすい、発熱しやすくなるといった問題があり、材料面からの改良が望まれる。誤動作を防ぐためには、絶縁性の高い材料であることが必要であり、そのためには、低誘電率の材料であることが求められる。
【0004】
そのような低誘電材料として、特許文献1には、熱可塑性樹脂と、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と、ポリオレフィンとを含み、前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、および、ポリアミド樹脂の少なくとも1種を含み、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、ポリオレフィンを4.0~30.0質量部含む、低誘電性レーザーダイレクトストラクチャリング用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の材料は、低誘電特性を示す優れた材料であるが、低誘電材料の需要拡大に伴い、新たな低誘電材料が求められる。特に、誘電特性の異方性が小さい成形品の需要が高い。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、低誘電特性を示し、かつ、誘電特性の異方性が小さい成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、低誘電特性を示し、かつ、所定の形状のフレーク状ガラスを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>熱可塑性樹脂100質量部に対し、比誘電率5.5以下、誘電正接が0.0020以下、平均粒径(D50)10~200μm、平均厚み0.1μm以上2.0μm未満の低誘電フレーク状ガラス15~160質量部を含む樹脂組成物。
<2>前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.10<ΔDK<0.10である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記熱可塑性樹脂が結晶性熱可塑性樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記熱可塑性樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を1~30質量部を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.1<ΔDK<0.1であり、
前記熱可塑性樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含み、
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<14>前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、<13>に記載の樹脂組成物。
<15>前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.10<ΔDK<0.10であり、
前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含み、
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<16>前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、<15>に記載の樹脂組成物。
<17>前記樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であり、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が-0.10<ΔDK<0.10であり、
前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂を含み、
さらに、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、安定剤を0.1~5.0質量部を含み、
前記低誘電フレーク状ガラスにおけるSiO2の含有割合が95質量%以上である、<1>~<15>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<18>前記フレーク状ガラスの含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し、25~160質量部である、<17>に記載の樹脂組成物。
<19><1>~<18>のいずれか1項に記載の樹脂組成物のペレット。
<20><1>~<18>のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<21><19>に記載のペレットから形成された成形品。
<22>前記成形品が、アンテナ筐体またはアンテナ基材である、<20>または<21>に記載の成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、低誘電特性を示し、かつ、誘電特性の異方性が小さい成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0011】
本明細書において、数平均分子量は、特に述べない限り、特開2018-165298号公報の段落0047の記載に従って測定することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本明細書において、融点(Tm)は、特に述べない限り、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。具体的には、国際公開第2016/084475号の段落0036の記載に従って測定することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
図1は、縮尺度などは実際と整合していないこともある。
【0012】
本明細書において、MDとは、射出成形した成形品の機械方向(machine direction、樹脂組成物の流れ方向)を意味し、TDとは、機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率を意味する。しかしながら、本実施形態における成形品は必ずしも射出成形した成形品である必要はないことは言うまでもない。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、比誘電率5.5以下、誘電正接が0.0020以下、平均粒径(D50)10~200μm、平均厚み0.1μm以上2.0μm未満の低誘電フレーク状ガラス15~160質量部を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、低誘電特性を示し、かつ、誘電特性の異方性が小さい成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。低誘電ガラス充填材を配合すれば、樹脂組成物から得られる成形品が低誘電特性を示すことは想定される。しかしながら、本発明では、低誘電ガラス充填材として所定の形状のフレーク状ガラスを用いることにより、誘電特性の異方性が小さいものとすることに成功したものである。誘電特性が同等程度のガラス充填材であっても、形状によって、誘電特性の異方性が異なることは驚くべきことである。この理由は、ガラスフィラーのアスペクト比の影響であると推測される。
さらに、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品は、非低誘電の樹脂組成物と同等レベルの機械的強度、線膨張特性、光沢度を達成することができる。本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品は、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(以下、「LDS添加剤」ということがある)を配合することによって、メッキ性を付与することができる。
【0014】
<熱可塑性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、結晶性熱可塑性樹脂であっても、非晶性熱可塑性樹脂であってもよいが、結晶性熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に定めるものではなく、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂;等が例示され、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、および、ポリフェニレンエーテル樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂の少なくとも1種を含むことがより好ましく、少なくともポリアミド樹脂を含むことがさらに好ましい。また、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、および、ポリブチレンテレフタレート樹脂の少なくとも1種を含むことも好ましい。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物の一形態は、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂の少なくとも1種を含むことであり、少なくともポリアミド樹脂を含むことが好ましい。好ましくは、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)がポリアミド樹脂およびポリフェニレンエーテル樹脂の少なくとも1種である形態である。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物の他の一形態は、ポリエステル樹脂を含むことであり、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことが好ましい。好ましくは、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)がポリエステル樹脂(好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)である形態である。
【0017】
本実施形態の樹脂組成物の他の一形態は、ポリカーボネート樹脂を含むことである。好ましくは、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の90質量%以上(好ましくは95質量%以上)がポリカーボネート樹脂である形態である。
【0018】
ポリカーボネート樹脂の詳細は、WO2023/181868号公報の段落0016~0035の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、ポリエステル樹脂の詳細は、特開2021-66787号公報の段落0014~0021の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の詳細は、特開2021-028401号公報の段落0014~0015の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂であってもよく、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂であってもよい。例えば、酸変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、三菱エンジニアリングプラスチックス製、ユピエース PME-80が例示される。
【0019】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、その種類を特に定めるものではなく、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66が挙げられ、ポリアミド66が好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、半芳香族ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の20~80モル%が芳香環を含む構成単位であることをいう。このような半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、得られる成形品の機械的強度を高くすることができる。半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T)、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示される。
本実施形態では、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂およびポリアミド66を含む形態が一例として例示される。
【0020】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂が好ましい。以下、このようなポリアミド樹脂を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂ということがある。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは85モル%以上、より一層好ましくは90モル%以上、さらに一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは97モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、さらに一層好ましくは97モル%以上が、炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0021】
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよび/またはメタキシリレンジアミンが好ましく、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましい。
具体的には、ジアミン由来の構成単位の0~100モル%がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であり、ジアミン由来の構成単位の0~100モル%がパラキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく(但し、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない)、ジアミン由来の構成単位の50~100モル%がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であり、前記ジアミン由来の構成単位の50~0モル%がパラキシリレンジアミン由来の構成単位であることがより好ましく、ジアミン由来の構成単位の80~100モル%がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であり、前記ジアミン由来の構成単位の20~0モル%がパラキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましい。
【0022】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0023】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸がより好ましく、アジピン酸がさらに好ましい。
【0024】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0025】
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の0~100モル%がパラキシリレンジアミンに由来し、100~0モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸および/またはアジピン酸に由来するものが好ましい。さらには、本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の0~90モル%がパラキシリレンジアミンに由来し、100~10モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がアジピン酸に由来するものがより好ましい。
【0026】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましく、98%以上を占めることがさらに好ましい。
なお、ジアミン由来の構成単位の合計が100モル%を超えることは無く、ジカルボン酸由来の構成単位の合計も100モル%を超えることはない。
【0027】
ポリアミド樹脂の融点は、150~350℃であることが好ましく、180~330℃であることがより好ましく、200~300℃であることがさらに好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、5,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、8,000以上であることがさらに好ましく、10,000以上であることが一層好ましく、14,000以上であることがより一層好ましく、16,000以上であることがさらに一層好ましい。上記Mnの上限は、30,000以下が好ましく、24,000以下がより好ましく、22,000以下がさらに好ましく、20,000以下が一層好ましい。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0029】
本実施形態で用いるポリエステル樹脂としては、公知の熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることができ、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、少なくともポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位および1,4-ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーとポリブチレンテレフタレート共重合体との混合物を含む。
【0030】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を1種または2種以上含んでいてもよい。
他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ビス(4,4’-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位が全ジカルボン酸単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
【0031】
ジオール単位としては、1,4-ブタンジオールの外に1種または2種以上の他のジオール単位を含んでいてもよい。
他のジオール単位の具体例としては、炭素数2~20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’-ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
本実施形態で用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオール単位が全ジオール単位の80モル%以上を占めることが好ましく、90モル%以上を占めることがより好ましい。
【0032】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4-ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が、好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3~40モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性が向上しやすい傾向にあり、好ましい。
【0033】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。上記上限値以下とすることにより、耐アルカリ性および耐加水分解性が向上する傾向にある。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/ton以上である。
【0034】
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0035】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5~2dL/gであるのが好ましい。成形性および機械的特性の点からして、0.6~1.5dL/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度を0.5dL/g以上とすることにより、得られる樹脂組成物の機械強度がより向上する傾向にある。また、2dL/g以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上し、成形性が向上する傾向にある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
【0036】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレフタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4-ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0037】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0038】
ポリエステル樹脂としては、上記の他、特開2010-174223号公報の段落番号0013~0016の記載を参酌でき、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0039】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂としては、特に限定されず、種々のものが用いられる。ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、ポリカーボネート樹脂としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0040】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0041】
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0042】
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0043】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0044】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0045】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0046】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0047】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0048】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0049】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0050】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0051】
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中では、界面重合法、溶融エステル交換法によるものが耐湿熱性の向上効果がより高い点から好ましく、界面重合法が特に好ましい。
【0052】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、好ましくは10,000~50,000であり、より好ましくは10,000~45,000,中でも10,000~40,000であり、更には10,500以上、11,000以上、特には11,500以上、最も好ましくは12,000以上であり、さらには35,000以下、特に好ましくは30,000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0053】
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
-4Mv
0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[η
sp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0054】
また、成形体の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0055】
さらにポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよく、バージン原料とリサイクル樹脂の両方を含有することも好ましく、リサイクルポリカーボネート樹脂からなることでもよい。ポリカーボネート樹脂(A)中のリサイクルポリカーボネート樹脂の割合は40%以上、50%以上、60%以上、80%以上が好ましく、100%が特に好ましい。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物における熱可塑性樹脂(好ましくはポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはポリアミド樹脂)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが一層好ましく、用途等に応じて、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形品の機械的強度が向上する傾向にある。本実施形態の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、さらには、70質量%以下、65質量%以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形品の機械的強度を維持できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、各熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0057】
<低誘電フレーク状ガラス>
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、比誘電率5.5以下、誘電正接が0.0020以下、平均粒径(D50)10~200μm、平均厚み0.1μm以上2.0μm未満の低誘電フレーク状ガラス15~160質量部の割合で含む。
フレーク状ガラスとしては、日本板硝子社製のガラスフレークが好ましい。
このような低誘電フレーク状ガラスを含むことにより、得られる成形品が低誘電特性を示すと共に、誘電特性の異方性を小さくすることができる。
本実施形態で用いるフレーク状ガラスは、比誘電率が5.0以下であることが好ましく、4.6以下であることがより好ましく、4.4以下であることがさらに好ましく、4.2以下であることが一層好ましく、4.0以下であることがより一層好ましい。前記比誘電率の下限値は特に定めるものではないが、1.0以上が実際的である。
本実施形態で用いるフレーク状ガラスは、誘電正接が0.0018以下であることが好ましく、0.0016以下であることがより好ましく、0.0014以下であることがさらに好ましく、0.0011以下であることが一層好ましく、0.0010未満であることがより一層好ましい。前記比誘電率の下限値は特に定めるものではないが、0.00010以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物が低誘電フレーク状ガラスを2種以上含む場合、前記比誘電率は、各低誘電フレーク状ガラスの比誘電率に低誘電フレーク状ガラスの質量分率をかけた値の和とする。誘電正接についても同様である。
【0058】
本実施形態で用いるフレーク状ガラスは、平均粒径(D50)が10μm以上であり、20μm以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いるフレーク状ガラスは、平均粒径D50が200μm以下であり、195μm以下であることが好ましく、190μm以下であることがより好ましく、185μm以下であることがさらに好ましく、180μm以下であることが一層好ましく、175μm以下であることがより一層好ましく、用途等に応じて、170μm以下、165μm以下、100μm以下、50μm以下、40μm以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、押出機で混練する際の生産安定性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がフレーク状ガラスを2種以上含む場合、平均粒径D50は、混合物の平均粒径D50とする。
【0059】
本実施形態で用いるフレーク状ガラスは、平均厚みが0.1μm以上であり、0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがさらに好ましく、0.5μm以上であることが一層好ましく、0.6μm以上であることがより一層好ましく、0.7μm超、0.75μm以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、押出機で混練する際の生産安定性がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いるフレーク状ガラスは、平均厚みが2.0μm未満であり、1.5μm以下であることが好ましく、1.3μm以下であることがより好ましく、1.1μm以下であることがさらに好ましく、0.9μm以下であることが一層好ましく、0.8μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、機械的強度がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物がフレーク状ガラスを2種以上含む場合、平均厚みは、混合物の平均厚みとする。
【0060】
本実施形態で用いる低誘電フレーク状ガラスは、SiO2の含有割合が多いことが好ましい。具体的には、低誘電フレーク状ガラス中のSiO2の含有割合は、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、96質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、より低い誘電特性を示す樹脂組成物が得られる傾向にある。前記低誘電フレーク状ガラス中のSiO2の含有割合の上限は、100質量%未満であることが実際的である。
本実施形態の樹脂組成物が低誘電フレーク状ガラスを2種以上含む場合、低誘電フレーク状ガラスの総量を100質量%としたときのSiO2の含有割合が上記範囲となることが好ましい。
【0061】
本実施形態の樹脂組成物における低誘電フレーク状ガラスの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、15質量部以上であり、20質量部以上であることが好ましく、用途等に応じて、25質量部以上であることがさらに好ましく、45質量部以上であることが一層好ましく、55質量部以上であることがより一層好ましく、60質量部以上であることがさらに一層好ましく、70質量部以上であることが特に一層好ましく、80質量部以上であることがより特に一層好ましく、95質量部以上であることがさらにより特に一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記低誘電フレーク状ガラスの含有量の上限値は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、160質量部以下であり、155質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることがさらに好ましく、130質量部以下であることが一層好ましく、120質量部以下であることがより一層好ましく、用途等に応じて、100質量部以下、80質量部以下、60質量部以下、40質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の誘電特性をより低く抑えられる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、低誘電フレーク状ガラスを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。低誘電フレーク状ガラスを2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物は、非低誘電ガラス充填材を含んでいてもよいが、実質的に含んでいない方が好ましい。非誘電ガラス充填材とは、比誘電率5.5超および/または誘電正接が0.0020超であるガラス充填材を意味する。
本実施形態の樹脂組成物は、また、非低誘電充填材を含んでいてもよいが、実質的に含んでいない方が好ましい。非誘電充填材とは、比誘電率5.5超および/または誘電正接が0.0020超である充填材を意味する。
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態で規定する形状の低誘電フレーク状ガラス以外の形状のガラス充填材を含んでいてもよいが、実質的に含んでいない方が好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、また、本実施形態で規定する形状の低誘電フレーク状ガラス以外の形状の充填材を含んでいてもよいが、実質的に含んでいない方が好ましい。
ここで、実質的に含まないとは、樹脂組成物に含まれる低誘電フレーク状ガラスの総量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが一層好ましい。
【0063】
<安定剤>
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を含んでいてもよい。
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられ、フェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、チオエーテル系安定剤が好ましく、リン系安定剤およびフェノール系安定剤(好ましくはヒンダードフェノール系安定剤)がより好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0064】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0065】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0066】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0067】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0068】
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、脂肪酸アミドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪酸アミドが好ましく、脂肪族カルボン酸の塩がより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましく、0.2~0.8質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0069】
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)>
本実施形態の樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)を含んでいてもよい。LDS添加剤を含むことにより、得られる樹脂成形品にメッキを形成することが可能になる。
本実施形態におけるLDS添加剤は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を10質量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程として無電解メッキ浴に浸漬した際にレーザー照射部のみ選択的にメッキを形成できる化合物をいう。本実施形態で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品は、LDS添加剤として市販されているものの他、本実施形態におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。LDS添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本実施形態で用いるLDS添加剤は、銅、アンチモン、錫、アルミニウムおよび亜鉛の少なくとも1種を含むことが好ましく、銅クロム酸化銅、および/または、アンチモンと錫を含む酸化物を含むことがより好ましく、銅クロム酸化銅を含むことがさらに好ましい。
また、本実施形態で用いるLDS添加剤は、その抵抗率が5×103Ω・cm超であることが好ましい。このように抵抗率が高いLDS添加剤を用いることにより、より低誘電特性の樹脂組成物とすることができる。
【0071】
より具体的には、本実施形態で用いるLDS添加剤の第一の実施形態は、銅およびクロムを含む化合物である。第一の実施形態のLDS添加剤としては、銅を10~30質量%含むことが好ましい。また、クロムを15~50質量%含むことが好ましい。第一の実施形態におけるLDS添加剤は、銅およびクロムを含む酸化物(銅クロム酸化物)であることが好ましい。
【0072】
銅およびクロムの含有形態としては、スピネル構造が好ましい。スピネル構造とは、複酸化物でAB2O4型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の1つである。
【0073】
第一の実施形態のLDS添加剤は、銅およびクロムの他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、アンチモン、錫、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウムおよびカルシウムなどが例示され、マンガンが好ましい。これら金属は酸化物として存在していてもよい。
第一の実施形態のLDS添加剤の好ましい一例は、銅クロム酸化物以外の金属酸化物の含有量が10質量%以下であるLDS添加剤である。
【0074】
本実施形態で用いるLDS添加剤の第二の実施形態は、アンチモンおよびリンの少なくとも1種と、錫とを含む酸化物、好ましくはアンチモンと錫とを含む酸化物である。
【0075】
第二の実施形態のLDS添加剤は、錫の含有量がリンおよびアンチモンの含有量よりも多いものがより好ましく、錫とリンとアンチモンの合計量に対する錫の量が、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0076】
特に、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンと錫とを含む酸化物が好ましく、錫の含有量がアンチモンの含有量よりも多い酸化物がより好ましく、錫とアンチモンの合計量に対する錫の量が、80質量%以上である酸化物がさらに好ましい。
より具体的には、第二の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、リン酸化物がドープされた酸化錫が挙げられ、アンチモンがドープされた酸化錫および酸化アンチモンがドープされた酸化錫が好ましく、酸化アンチモンがドープされた酸化錫がより好ましい。
【0077】
本実施形態で用いるLDS添加剤の数平均粒径は、0.01~100μmであることが好ましく、0.05~30μmであることがより好ましく、0.05~15μmであることがさらに好ましい。このような数平均粒径とすることにより、メッキの表面をより均一にすることができる。
【0078】
本実施形態の樹脂組成物におけるLDS添加剤の含有量は、含有する場合、熱可塑性樹脂100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以上であることが一層好ましく、5質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、メッキ性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるLDS添加剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが一層好ましく、10質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物がより低誘電を示す傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、LDS添加剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0079】
<タルク>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、タルクを含んでいてもよい。特に、本実施形態の樹脂組成物がLDS添加剤を含む場合、タルクを含むことが好ましい。タルクを含むことによって寸法安定性、製品外観を良好にすることができ、また、よりメッキ成長速度を早くすることができる。さらに、タルクを含むことにより、LDS添加剤の含有量を減らしても、樹脂成形品のメッキ性を良好にすることができる。
タルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたものを用いてもよい。この場合、タルクにおけるシロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1~5質量%であることが好ましい。
タルクの平均粒径は1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが一層好ましく、8μm以下であることがより一層好ましい。
タルクは、通常、鱗片状であるが、最も長い部分の長さを平均粒径とする。タルクの平均粒径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、粒径を測定する対象のタルクをランダムに抽出し粒径を測定し、得られた測定値から平均値を算出する。観察の倍率は1,000倍とし、測定数は1,000個以上として行う。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物におけるタルクの含有量は、含有する場合、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、4.5質量部以上であることがさらに好ましく、また、20.0質量部以下であることが好ましく、15.0質量部以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物がLDS添加剤を含む場合、LDS添加剤100.0質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、10.0質量部以上であることがさらに好ましく、60.0質量部以上であることが一層好ましく、100.0質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、メッキ性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるタルクの含有量は、LDS添加剤100質量部に対し、200.0質量部以下であることが好ましく、180.0質量部以下であることがより好ましく、170.0質量部以下であることがさらに好ましく、160.0質量部以下であることが一層好ましく、150.0質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の機械的物性をより効果的に向上させることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、タルクを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0081】
<着色剤>
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤は、顔料であっても染料であってもよいが、滞留安定性、成形性、および、離型性の観点から顔料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
カーボンブラックの詳細は、特開2011-57977号公報の段落0021の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、本実施形態の樹脂組成物にカーボンブラック等の着色剤を配合する場合、マスターバッチを形成してから、熱可塑性樹脂と混練することが好ましい。マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることがより好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることにより樹脂組成物の結晶化が促進される。特に、カーボンブラック等の着色剤の近い位置にポリブチレンテレフタレート樹脂が存在すると、樹脂組成物の結晶化促進効果がより効果的に発揮される。
マスターバッチ中の着色剤の割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0082】
本実施形態の樹脂組成物が着色剤(好ましくはカーボンブラック)を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、また、3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1質量部であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、着色剤(好ましくはカーボンブラック)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0083】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、難燃剤などが挙げられる。これらの成分の合計量は、樹脂組成物100質量%中、10質量%であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103に記載の添加剤を配合でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、熱可塑性樹脂、および、フレーク状ガラス、ならびに、必要に応じ配合される他の成分の含有量等が調整される。
【0084】
本実施形態では、熱可塑性樹脂(好ましくはポリアミド樹脂)、フレーク状ガラス、離型剤、および、安定剤の合計が樹脂組成物の90質量%以上、好ましくは95質量%以上を占める態様が例示される。本実施形態では、また、熱可塑性樹脂(好ましくはポリアミド樹脂)、フレーク状ガラス、離型剤、安定剤、LDS添加剤、および、タルクの合計が樹脂組成物の90質量%以上、好ましくは99質量%以上を占める態様が例示される。本実施形態においては、フレーク状ガラスの含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、25~160質量部であることが好ましい。
【0085】
本実施形態では、熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル樹脂、より好ましくはポリブチレンテレフタレート樹脂)、フレーク状ガラス、離型剤、および、安定剤の合計が樹脂組成物の90質量%以上、好ましくは95質量%以上を占める態様が例示される。本実施形態では、また、熱可塑性樹脂、フレーク状ガラス、離型剤、安定剤、および、カーボンブラックの合計が樹脂組成物の90質量%以上、好ましくは99質量%以上を占める態様が例示される。本実施形態においては、フレーク状ガラスの含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、15~160質量部であることが好ましい。
本実施形態では、熱可塑性樹脂(好ましくはポリカーボネート樹脂)、フレーク状ガラス、離型剤、および、安定剤の合計が樹脂組成物の90質量%以上、好ましくは95質量%以上を占める態様が例示される。本実施形態では、また、熱可塑性樹脂、フレーク状ガラス、離型剤、安定剤、および、カーボンブラックの合計が樹脂組成物の90質量%以上、好ましくは99質量%以上を占める態様が例示される。本実施形態においては、フレーク状ガラスの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、15~160質量部であることが好ましい。
【0086】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、誘電特性の異方性が小さいことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の比誘電率が、それぞれ、4.0以下であることが好ましく、3.8以下であることがより好ましく、3.7以下であることがさらに好ましく、3.6未満以下であることが一層好ましく、3.5未満以下であることがより一層好ましい。前記MDおよびTDの比誘電率の下限は、特に定めるものではないが、3.0以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品の機械方向(MD)と前記機械方向に垂直な方向(TD)の誘電正接が、それぞれ、0.010以下であることが好ましく、0.009未満であることがより好ましい。誘電正接の下限値は、特に定めるものではないが、0.001以上が実際的である。
【0087】
本実施形態の樹脂組成物は、誘電特性の異方性が小さいことが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品のMDとTDの比誘電率の差(ΔDk)が小さいことが好ましい。より具体的には、前記比誘電率の差(ΔDk(MD-TD))が-0.10超であることが好ましく、-0.08以上であることがより好ましく、-0.05以上であることがさらに好ましく、-0.04超であることが一層好ましく、-0.03以上であることがより一層好ましい。また、前記MDとTDの比誘電率の差(ΔDk、絶対値)は、0.1未満であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらに好ましく、0.04未満以下であることが一層好ましく、0.03以下であることがより一層好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物を100mm×100mm×2mmの平板状試験片に射出成形した成形品のMDとTDの誘電正接の差(ΔDf)が小さいことが好ましい。具体的には、前記誘電正接の差(ΔDf(MD-TD))が-0.002超であることが好ましく、-0.001以上であることがより好ましく、また、0.002未満であることが好ましく、0.001以下であることがより好ましい。また、前記誘電正接の差(ΔDf、絶対値)が0.002未満であることが好ましく、0.001以下であることがより好ましく、後述する実施例に記載の方法では差が見えないことがさらに好ましい。
【0088】
本実施形態の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO178に準拠した曲げ強さが150MPa以上であることが好ましく、180MPa以上であることがさらに好ましく、200MPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ強度の上限は、特に定めるものではないが、例えば、300MPa以下が実際的である。特に、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いたときに上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO178に準拠した曲げ弾性率が8.0GPa以上であることが好ましく、10.0GPa以上であることがさらに好ましく、11.0GPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ弾性率の上限は、特に定めるものではないが、例えば、30GPa以下が実際的である。特に、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いたときに上記範囲となることが好ましい。
【0089】
本実施形態の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO179規格に準拠したノッチ無しシャルピー衝撃強さが18kJ/m2以上であることが好ましい。上記ノッチ無しシャルピー衝撃強さの上限は、特に定めるものではないが、例えば、40kJ/m2以下が実際的である。特に、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いたときに上記範囲となることが好ましい。
【0090】
上記比誘電率、誘電正接、曲げ強さ、曲げ弾性率、および、ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、それぞれ、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0091】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する単軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。上記熱可塑性樹脂、および、フレーク状ガラス、ならびに、必要に応じて配合される他の添加剤を、混練機に一括して供給してもよいし、熱可塑性樹脂を供給した後、他の配合成分を順次供給してもよい。フレーク状ガラスは、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
本実施形態では、LDS添加剤および/またはカーボンブラック等の顔料は、熱可塑性樹脂等で、マスターバッチ化したものをあらかじめ調製した後、他の成分と混練して、本実施形態における樹脂組成物を得てもよい。
【0092】
本実施形態における、成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。この場合、特に好ましい成形方法は、流動性の良さから、射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を250~310℃にコントロールするのが好ましい。
【0093】
<メッキ付き成形品の製造方法>
本実施形態においては、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキを形成し、メッキ付成形品を製造してもよい。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。
図1では、成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している成形品であってもよい。また、得られるメッキ付き成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。
【0094】
再び
図1に戻り、成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YAGレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm~1200nmであり、より好ましくは800~1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、成形品1が活性化される。この活性化された状態で、成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として、銅、ニッケル、銀、金、およびパラジウムの1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)が好ましく、銅、ニッケル、銀、および金の1種以上からなるメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がより好ましく、銅を含むメッキ液(特に、無電解のメッキ液)がさらに好ましい。すなわち、本実施形態におけるメッキは、金属成分が、上記金属の少なくとも1種からなることが好ましい。
成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ5が形成される。
本実施形態の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を有するメッキ(回路)を形成することができる。メッキは、形成したメッキ(回路)の腐食や劣化を抑えるために、例えば無電解メッキを実施した後にニッケル、金でさらに保護することもできる。また、同様に無電解メッキ後に電解メッキを用い、必要な膜厚を短時間で形成することもできる。
また、上記メッキ付成形品の製造方法は、上記メッキ付成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法として好ましく用いられる。
【0095】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、各種樹脂成形品(好ましくは、射出成形品)に用いられる。
また、本実施形態の樹脂組成物の一実施形態はペレットである。
また、本実施形態においては、成形品は、樹脂組成物ないしペレットから形成されることが好ましい。
【0096】
本実施形態の成形品は、種々の用途、例えば、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。
具体的には、本実施形態の成形品は、センサー、コネクタ、スイッチ、リレー、導電回路、アンテナ等の電子部品(特に、携帯電子機器部品、通信基地局、パソコン周辺機器)などの種々の用途に用いることができる。特に、本実施形態の成形品は、アンテナ筐体またはアンテナ基材に適している。
【実施例0097】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0098】
1.原料
以下の表1に示す原料を用いた。
【表1】
【0099】
本実施例で用いたフレーク状ガラス、ガラス繊維の詳細は下記の通りである。
【表2】
【0100】
上記フレーク状ガラス、ガラス繊維の誘電特性は、規格JIS C2565に従って測定した。
上記フレーク状ガラス、ガラス繊維の組成は、波長分散 蛍光X線分析方法に従って、φ44mm×33mmの試料ホルダーに試料を入れて測定した。
上記フレーク状ガラス、ガラス繊維の平均厚み、平均粒径(D50)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、100枚以上のフレーク状ガラスにつき、それぞれの粒径および厚さを測定した。平均粒径はD50の値とし、平均厚みは測定値の平均値とした。フレーク状ガラス断面(厚さ面)が走査型電子顕微鏡の照射電子線軸に垂直になるように、走査型電子顕微鏡の試料台を試料台微動装置により調整した。
【0101】
実施例1~7、比較例1~3
<コンパウンド>
表1に示す成分を、表3または表4に示す通り、それぞれ秤量し(各成分の単位は質量部である)、フレーク状ガラスまたはガラス繊維以外の成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(芝浦機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した。その後、フレーク状ガラスまたはガラス繊維をサイドフィードして熱可塑性樹脂のペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、280℃とした。
【0102】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
上述の製造方法で得られた熱可塑性樹脂のペレットを120℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。結果を下記表3または表4に示す。
【0103】
<ノッチ付シャルピー衝撃強さ>
ISO179-1、2に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下で1Jハンマーを用いノッチ付シャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。結果を下記表3または表4に示す。
【0104】
<線膨張(TD)>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
得られた試験片を10mm×10mm×4mm形状に切り出し、JIS K 7197法に従って、TD(Transverse Direction、樹脂の射出成形時の幅方向)について、20-80℃範囲の線膨張係数を測定した。
【0105】
<比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)の測定、誘電特性の異方性の計算>
比誘電率および誘電正接は、樹脂組成物から形成された100mm×100mm×2mmの平板状試験片について、周波数1GHzにおける値を空洞共振器摂動法により測定した。具体的には、上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(芝浦機械社製、「EC75SX」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、100mm×100mm×2mmの平板状試験片を成形した。
得られた平板状試験片からMDを長手方向に100mm×1mm×2mmの平板状試験片を切削により得た後、空洞共振器摂動法により、設定周波数における比誘電率および誘電正接を測定した。また、得られた平板状試験片からTDを長手方向に100mm×1mm×2mmの平板状試験片を切削により得た後、同様に測定した。
測定に際し、KEYSIGHT社製、ネットワークアナライザおよび関東電子応用開発社製、空洞共振器を用いた。
【0106】
上記で測定された比誘電率および誘電正接に基づき、それぞれ、MDとTDの差である、ΔDKおよびΔDfを算出した。
【0107】
<光沢度>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で3時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業製、「NEX80」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、100mm×100mm×2mmの平板状試験片を射出成形した。日本電色工業(株)光沢計 VG7000を用いて規格ISO8254-1およびJISP8142に基づく収束光での60°測定光沢度を測定した 。
【0108】
<メッキ性>
上記で得られたISO引張り試験片(4mm厚)の10×10mmの範囲に、Trumpf製、VMc1のレーザー照射装置(波長1064nmのYAGレーザー最大出力15W)を用い、出力(Power)10Wで、周波数(Frequency)80kHz、速度2m/sにてレーザーを照射した。その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製、Copper100XBの65℃のメッキ槽(設定温度は68℃)にて、10分間処理した。
A:メッキが形成された。
B:メッキが形成されなかった。
【0109】
【0110】
【0111】
上記表3および表4において、「E-05」は、「×10-5」であることを意味している。例えば、実施例1の線膨張(TD)は、3.5×10-5、すなわち、0.000035であることを示している。
【0112】
実施例8
<コンパウンド>
表1に示す成分を、表5に示す通り、それぞれ秤量し(各成分の単位は質量部である)、フレーク状ガラス以外の成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)の根元から投入し、溶融した。フレーク状ガラスをサイドフィードした。シリンダーの設定温度を260℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0113】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
得られた樹脂のペレットを120℃で6時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J-85AD」)にて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。結果を表5に示す。
【0114】
<比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)の測定、誘電特性の異方性の計算>
比誘電率および誘電正接は、樹脂組成物から形成された100mm×100mm×2mmの平板状試験片について、周波数5.8GHzにおける値を空洞共振器摂動法により測定した。具体的には、上記で得られたペレットを120℃にて6時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX-80」)を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で、100mm×100mm×2mm厚の平板状試験片を成形した。
得られた平板状試験片からMDを長手方向に100mm×1mm×2mmの平板状試験片を切削により得た後、空洞共振器摂動法により、設定周波数における比誘電率および誘電正接を測定した。また、得られた平板状試験片からTDを長手方向に100mm×1mm×2mmの平板状試験片を切削により得た後、同様に測定した。
測定に際し、KEYSIGHT社製、ネットワークアナライザおよび関東電子応用開発社製、空洞共振器を用いた。
上記で測定された比誘電率および誘電正接に基づき、それぞれ、MDとTDの差である、ΔDKおよびΔDfを算出した。
【0115】
【0116】
実施例9
<コンパウンド>
表1に示す成分を、表6に示す通り、それぞれ秤量し(各成分の単位は質量部である)、フレーク状ガラスまたはガラス繊維以外の成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)の根元から投入し、溶融した。フレーク状ガラスまたはガラス繊維をサイドフィードした。シリンダーの設定温度を280℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0117】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
得られた樹脂のペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J-85AD」)にて、シリンダー温度290℃、金型温度90℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。結果を下記表6に示す。
【0118】
<比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)の測定、誘電特性の異方性の計算>
比誘電率および誘電正接は、樹脂組成物から形成された100mm×100mm×2mmの平板状試験片について、周波数5.8GHzにおける値を空洞共振器摂動法により測定した。具体的には、上記で得られたペレットを120℃にて4時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX-80」)を用い、シリンダー温度290℃、金型温度90℃で、100mm×100mm×2mm厚の平板状試験片を成形した。
得られた平板状試験片からMDを長手方向に100mm×1mm×2mmの平板状試験片を切削により得た後、空洞共振器摂動法により、設定周波数における比誘電率および誘電正接を測定した。また、得られた平板状試験片からTDを長手方向に100mm×1mm×2mmの平板状試験片を切削により得た後、同様に測定した。
測定に際し、KEYSIGHT社製、ネットワークアナライザおよび関東電子応用開発社製、空洞共振器を用いた。
上記で測定された比誘電率および誘電正接に基づき、それぞれ、MDとTDの差である、ΔDKおよびΔDfを算出した。
【表6】
【0119】
本発明の樹脂組成物は、低誘電特性を示し、かつ、誘電特性の異方性が小さい成形品を提供できた(実施例1~9)。これに対し、非低誘電フレーク状ガラスを用いた場合(比較例1)、低誘電特性が達成できなかった。また、低誘電ガラスであっても、ガラス繊維を用いた場合(比較例2)、誘電特性の異方性が大きかった。一方、フレーク状ガラスの代わりに、同等の形状のタルクを用いた場合、低誘電特性が達成できず、かつ、その異方性も大きかった。