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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125180
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】モリブデン研磨用組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20240906BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240906BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
H01L21/304 621D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022598
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】63/449,831
(32)【優先日】2023-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED22
3C158ED26
5F057AA14
5F057BB31
5F057BB34
5F057BC01
5F057BC05
5F057CA11
5F057EA07
5F057EA22
5F057EA27
5F057EA31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モリブデンについて低い静的エッチング速度(SER)を達成しながら、高い除去速度を有する、モリブデン表面を研磨する組成物および方法を提供する。
【解決手段】研磨剤と、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第1の酸化剤と、第2の酸化剤と、を含む、pHが4~9である、モリブデン研磨用組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤と、
第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、
第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、
第1の酸化剤と、
第2の酸化剤と、
を含む、pHが4~9である、モリブデン研磨用組成物。
【請求項2】
前記研磨剤は、未修飾コロイダルシリカを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、スルホン酸部分(-SO)、リン酸部分(-OPO)、またはそれらの塩を有するアニオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ジフェニルエーテル構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、2つ以上のスルホン酸部分(-SO)を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、オキシアルキレン構造、かつ、リン酸部分(-OPO)を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、
ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸またはその塩、
ベンゼン,1,1’-オキシビス-,sec-ヘキシル誘導体,スルホン化(酸型)またはその塩、
ベンゼン,1,1’-オキシビス-,テトラプロピレン誘導体,スルホン化(酸型)またはその塩、
ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルホスフェート、
ポリオキシエチレン(8)フェニルホスフェート、
ポリオキシエチレン(14)オレイルエーテルホスフェート、
ポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルホスフェート、
ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテルホスフェート、
ポリオキシエチレン(10)トリデシルエーテルホスフェート、
ポリオキシエチレン(12)トリデシルエーテルホスフェート、および
その塩
から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、アミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、塩基性アミノ酸を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、ジフェニルエーテル構造を有し、前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、塩基性アミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の酸化剤は、ハロゲン原子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の酸化剤は、ヨウ素酸カリウムを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の酸化剤は、過酸化水素を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記研磨剤のシラノール基密度が2.0個/nm以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記研磨剤が、未修飾コロイダルシリカを含み、
前記研磨剤のシラノール基密度が2.0個/nm以上であり、
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、一分子に、
ジフェニルエーテル構造、かつ、1つ以上のスルホン酸部分(-SO)を有し、あるいは、
オキシアルキレン構造、かつ、リン酸部分(-OPO)を有し、
前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、塩基性アミノ酸を含み、
前記第1の酸化剤が、ヨウ素酸カリウムを含み、
前記第2の酸化剤が、過酸化水素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤の合計濃度が、約0.03重量%~約1.0重量%である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、6.0超のモリブデン除去速度対モリブデン静的エッチング速度の比を有する、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本技術の背景に関する以下の説明は、単に本技術を理解するための補助として提供されるものであり、本技術の先行技術を説明または構成するために認められるものではない。
【0002】
モリブデン金属は、特にナノスケール寸法(例えば、50nm未満の厚さ)を有する低抵抗率相互接続における使用を含む、マイクロ電子デバイスの用途における使用の増加を見られる。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、モリブデン表面を研磨するための現在の組成物および方法は、研磨されたモリブデンについて、低い除去速度、または、高い静的エッチング速度をもたらすことを見出した。したがって、モリブデンについて低い静的エッチング速度(SER)を達成しながら、高い除去速度を有する、モリブデン表面を研磨する組成物および方法を提供することした。
【0004】
一態様において、本開示は、研磨剤と、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第1の酸化剤と、第2の酸化剤と、を含む、モリブデン研磨用組成物であって、研磨用組成物のpHが4~9である、モリブデン研磨用組成物に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、研磨剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.1重量%~約3重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、研磨剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.2重量%~約1.5重量%の濃度で存在する。
【0006】
いくつかの実施形態では、研磨剤は、約10nm~約70nmの平均一次粒子径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、研磨剤は、約10nm~約30nmの平均一次粒子径を有する粒子を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、研磨剤は、コロイダルシリカを含む。いくつかの実施形態では、研磨剤は、未修飾コロイダルシリカを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、組成物の総重量に対して、約0.001重量%~約1重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約0.1重量%の濃度で存在する。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、スルホン酸部分、リン酸部分、またはそれらの塩を有するアニオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸またはその塩(例えば、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0))、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、sec-ヘキシル誘導体(CAS番号147732-59-0)、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、テトラプロピレン誘導体(CAS番号119345-03-8)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)フェニルホスフェート、ポリオキシエチレン(14)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(12)トリデシルエーテルホスフェート、およびその塩から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸またはその塩(例えば、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0));スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、sec-ヘキシル誘導体(CAS番号147732-59-0)、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、テトラプロピレン誘導体(CAS番号119345-03-8)、およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ドデシル-(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ドデシル-(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0)を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.005重量%~約1.0重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約0.7重量%の濃度で存在する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、塩基性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンからなる群から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、アルギニンを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の酸化剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約1.0重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、第1の酸化剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約0.7重量%の濃度で存在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の酸化剤は、ヨウ化カリウムを含む。いくつかの実施形態では、第2の酸化剤は、過酸化水素を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2の酸化剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約5.0重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、第2の酸化剤は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.5重量%~約1.5重量%の濃度で存在する。
【0015】
いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、pH調整剤を含む。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、KOHである。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、5~7である。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約300Å/分のモリブデン除去速度を得るのに有効である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約500Å/分のモリブデン除去速度を得るのに有効である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約700Å/分のモリブデン除去速度を得るのに有効である。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は、100Å/分以下のモリブデン静的エッチング速度を得るのに有効である。いくつかの実施形態では、組成物は、70Å/分以下のモリブデン静的エッチング速度を得るのに有効である。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約5のモリブデン除去速度対モリブデン静的エッチング速度の比を得るのに有効である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約8のモリブデン除去速度対モリブデン静的エッチング速度の比を得るのに有効である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約10のモリブデン除去速度対モリブデン静的エッチング速度の比を得るのに有効である。
【0019】
別の態様において、任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができ、本開示は、モリブデン表面を本開示による研磨用組成物と接触させることと、少なくとも約300Å/分の除去速度でモリブデン表面からモリブデンを除去して、研磨されたモリブデン表面を生成することと、を含む研磨方法に関する。いくつかの実施形態では、除去速度は、少なくとも約500Å/分である。いくつかの実施形態では、除去速度は、少なくとも約700Å/分である。
【0020】
本発明はまた、下記態様および形態を包含する。
【0021】
1.研磨剤と、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第1の酸化剤と、第2の酸化剤と、を含む、pHが4~9である、モリブデン研磨用組成物。
【0022】
2.前記研磨剤は、未修飾コロイダルシリカを含む、1.に記載の組成物。
【0023】
3.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、スルホン酸部分(-SO)、リン酸部分(-OPO)、またはそれらの塩を有するアニオン性界面活性剤を含む、1.または2.に記載の組成物。
【0024】
4.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ジフェニルエーテル構造を有する、1.~3.のいずれかに記載の組成物。
【0025】
5.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、2つ以上のスルホン酸部分(-SO)を有する、1.~4.のいずれかに記載の組成物。
【0026】
6.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、オキシアルキレン構造、かつ、リン酸部分(-OPO)を有する、1.~5.のいずれかに記載の組成物。
【0027】
7.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸またはその塩、ベンゼン,1,1’-オキシビス-,sec-ヘキシル誘導体,スルホン化(酸型)またはその塩、ベンゼン,1,1’-オキシビス-,テトラプロピレン誘導体,スルホン化(酸型)またはその塩、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)フェニルホスフェート、ポリオキシエチレン(14)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(12)トリデシルエーテルホスフェート、およびその塩から選択される少なくとも1つを含む、1.~6.のいずれかに記載の組成物。
【0028】
8.前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、アミノ酸を含む、1.~7.のいずれかに記載の組成物。
【0029】
9.前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、塩基性アミノ酸を含む、1.~8.のいずれかに記載の組成物。
【0030】
10.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、ジフェニルエーテル構造を有し、前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、塩基性アミノ酸を含む、1.~9.のいずれかに記載の組成物。
【0031】
11.前記第1の酸化剤は、ハロゲン原子を含む、1.~10.のいずれかに記載の組成物。
【0032】
12.前記第1の酸化剤は、ヨウ素酸カリウムを含む、1.~11.のいずれかに記載の組成物。
【0033】
13.前記第2の酸化剤は、過酸化水素を含む、1.~12.のいずれかに記載の組成物。
【0034】
14.前記研磨剤のシラノール基密度が2.0個/nm以上である、1.~13.のいずれかに記載の組成物。
【0035】
15.前記研磨剤が、未修飾コロイダルシリカを含み、前記研磨剤のシラノール基密度が2.0個/nm以上であり、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、一分子に、ジフェニルエーテル構造、かつ、1つ以上のスルホン酸部分(-SO)を有し、あるいは、オキシアルキレン構造、かつ、リン酸部分(-OPO)を有し、前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤が、塩基性アミノ酸を含み、前記第1の酸化剤が、ヨウ素酸カリウムを含み、前記第2の酸化剤が、過酸化水素を含む、1.~14.のいずれかに記載の組成物。
【0036】
16.前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と前記第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤の合計濃度が、約0.03重量%~約1.0重量%である、1.~15.のいずれかに記載の組成物。
【0037】
17.前記組成物は、6.0超のモリブデン除去速度対モリブデン静的エッチング速度の比を有する、1.~16.のいずれかに記載の組成物。
【0038】
ここで、本開示によって企図されるいくつかの特定の実施形態を詳細に参照する。様々な実施形態が本明細書に記載されているが、本技術を記載された実施形態に限定することは意図されていないことが理解されよう。それどころか、添付の特許請求の範囲によって定義される技術の精神および範囲内に含まれ得る代替、修正、および均等物を網羅することが意図されている。
【0039】
本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。「X~Y」が複数記載されている場合、例えば、「X1~Y1、あるいは、X2~Y2」と記載されている場合、各数値を上限とする開示、各数値を下限とする開示、および、それらの上限・下限の組み合わせは全て開示されている(つまり、補正の適法な根拠となる)。具体的には、X1以上との補正、Y2以下との補正、X1以下との補正、Y2以上との補正、X1~X2との補正、X1~Y2との補正等は全て適法とみなされなければならない。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。なお、本明細書中に記載の濃度は、POU(ポイントオブユース)における濃度であっても、POUの濃度に希釈する前の濃度であってもよい。希釈倍率は、2~10倍であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、高いMo除去速度(RR)、および低いMo静的エッチング速度(SER)を達成する、モリブデン表面を研磨する組成物および方法に関する。一態様において、本開示は、研磨剤と、1つ以上のMo静的エッチング速度抑制剤と、1つ以上の酸化剤と、を含むモリブデン研磨用組成物に関する。
【0041】
研磨剤
研磨剤は、複数の研磨粒子から構成される。
【0042】
本開示による研磨用組成物は、モリブデン(Mo)を含む表面を研磨するのに適した研磨粒子を含む。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、1つ以上の金属酸化物粒子、例えば、ジルコニア、ハフニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリア、およびそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、コロイダルシリカを含む。さらに、研磨粒子は、市販品、合成品、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、アニオン性である。本出願の文脈内で、「アニオン性」粒子は、研磨用組成物のpHにおいて負の表面電荷またはゼータ電位電荷を有する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、カチオン性である。本出願の文脈内で、「カチオン性」粒子は、研磨用組成物のpHにおいて正の表面電荷またはゼータ電位電荷を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、研磨剤は、ジルコニア、ハフニア、アルミナ、チタニア、および、セリアからなる群から選択される少なくとも一種を含まない。
【0044】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、未修飾(すなわち、粒子表面に結合した化学種を有していない)である。研磨対象物たるモリブデンの表面電位は、pHが4~9付近の環境下ではマイナスである。ここで、例えば研磨粒子としてアニオン性修飾(例えばスルホン酸修飾)コロイダルシリカを使用すると、当該シリカの表面電位は当該pH範囲ではマイナスである。そのため研磨粒子と研磨対象物との電気的反発が大きくなり、研磨粒子は研磨対象物に接触しづらくなり、その結果、研磨速度が落ちる。一方、未修飾の研磨粒子(典型的には未修飾コロイダルシリカ)の表面電位は、pH7から酸性に変化させるにつれてプラスの方向に変化し、pHが2~3付近で0(等電点)となる。そして、pH7から9の範囲では未修飾の研磨粒子(典型的には未修飾コロイダルシリカ)の表面電位はマイナスである。つまり、研磨用組成物のpHを4~9という適切な範囲に調整し、その上で未修飾の研磨粒子(典型的には未修飾コロイダルシリカ)を使用すると、研磨粒子と研磨対象物との電気的な関係を適切なものとできる。そのため研磨対象物は効率的に研磨される。また、研磨用組成物の安定性が向上するという技術的効果も付随する。いくつかの実施形態では、研磨剤(研磨粒子)は、未修飾コロイダルシリカを含む。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、粒子表面に共有結合し、末端アニオン性基またはカチオン性基を有する化学種によって表面修飾される。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、例えば、コロイド粒子表面上の有機酸の固定化によってアニオン修飾されたコロイド粒子を含む。いくつかの実施形態では、組成物に含まれる研磨剤のうち、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、あるいは、99重量%以上が、コロイダルシリカ(特に、未修飾コロイダルシリカ)である。
【0045】
いくつかの実施形態では、研磨用組成物中の研磨粒子(例えば、コロイダルシリカ)の表面への有機酸の固定は、有機酸の官能基を研磨粒子(例えば、コロイダルシリカ)の表面に化学的に結合させることによって行われ得る。コロイダルシリカに有機酸を固定化するには、単にコロイダルシリカと有機酸を共存させるだけでは達成できない。コロイダルシリカへの有機酸(例えば、スルホン酸)の固定化は、例えば、E.Cano-Serrano et al.,Sulfonic Acid-Functionalized Silica Through Quantitative Oxidation of Thiol Groups,Chem.Commun.246-47(2003)に記載の方法により行われ得、それは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(「MPS」)等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後、過酸化水素によりチオール基を酸化して表面固定化スルホン酸(例えば、酸化MPS等の表面結合プロパンスルホン酸)を形成することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0046】
カルボン酸のコロイダルシリカへの固定化は、例えば、Y.Kazuo et al.,Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel,3 Chem.Lett.228-29(2000)に記載の方法によって行われ得、それは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後、光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。コロイダルシリカへの有機酸固定化のこれらの例は、例示的であることを意図しており、限定的であることを意図していない。異なる有機酸および異なる研磨粒子材料(例えば、コロイダルシリカ以外)を使用する他の有機固定化技術は、本開示の範囲内に包含されることが意図されている。
【0047】
研磨粒子は、高品質の表面(例えば、スクラッチ等の表面欠陥の減少)を達成しながら効率的な研磨(高い除去速度)を達成するために、任意の適切な平均一次粒子径を有し得る。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約5nm以上、約6nm以上、約7nm以上、約8nm以上、約9nm以上、約10nm以上、約11nm以上、約12nm以上、約13nm以上、約14nm以上、約15nm以上、約16nm以上、約17nm以上、約18nm以上、約19nm以上、約20nm以上、約21nm以上、約22nm以上、約23nm以上、約24nm以上、約25nm以上、約30nm以上、約35nm以上、約40nm以上、約45nm以上、約50nm以上、約55nm以上、約60nm以上、約65nm以上、約70nm以上、約75nm以上、約80nm以上、約85nm以上、約90nm以上、約95nm以上、約100nm以上、約110nm以上、約120nm以上、約130nm以上、約140nm以上、約150nm以上、またはこれらの間の任意の範囲もしくは値の平均一次粒子径を有する。平均一次粒子径は、当技術分野で公知の任意の適切な方法(例えば、透過型電子顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、または日立ハイテクHD-2700走査透過型電子顕微鏡を使用する等のSTEMによる)を使用して測定することができる。
【0048】
本明細書中、約X(Xは数値)とは、Xの±10%あるいは±5%を更に含むことを意味し、具体的には、X×0.9~X×1.1を意味する。また、約Xは、X自体であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約150nm以下、約140nm以下、約130nm以下、約120nm以下、約110nm以下、約100nm以下、約95nm以下、約90nm以下、約85nm以下、約80nm以下、約75nm以下、約70nm以下、約65nm以下、約60nm以下、約55nm以下、約50nm以下、約45nm以下、約40nm以下、約35nm以下、約30nm以下、約25nm以下、約24nm以下、約23nm以下、約22nm以下、約21nm以下、約20nm以下、約19nm以下、約18nm以下、約17nm以下、約16nm以下、約15nm以下、約14nm以下、約13nm以下、約12nm以下、約11nm以下、約10nm以下、約9nm以下、約8nm以下、約7nm以下、またはこれらの間の任意の範囲もしくは値の平均一次粒子径を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約5nm~約150nm、約5nm~約100nm、約5nm~約90nm、約5nm~約80nm、約5nm~約70nm、約5nm~約60nm、約5nm~約50nm、約5nm~約45nm、約5nm~約40nm、約5nm~約35nm、約5nm~約30nm、約5nm~約25nm、約10nm~約150nm、約10nm~約100nm、約10nm~約90nm、約10nm~約80nm、約10nm~約70nm、約10nm~約60nm、約10nm~約50nm、約10nm~約45nm、約10nm~約40nm、約10nm~約35nm、約10nm~約30nm、約10nm~約25nm、約10nm~約20nm、約10nm~約15nm、約20nm~約150nm、約20nm~約100nm、約20nm~約90nm、約20nm~約80nm、約20nm~約70nm、約20nm~約60nm、約20nm~約50nm、約20nm~約45nm、約20nm~約40nm、またはこれらの中の任意の範囲もしくは値の平均一次粒子径を有する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約14nm~約31nm、またはこれらの中の任意の範囲もしくは値の平均一次粒子径を有する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約24nm~約40nm、またはこれらの中の任意の範囲もしくは値の平均一次粒子径を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約10nm以上、約15nm以上、約16nm以上、約17nm以上、約18nm以上、約19nm以上、約20nm以上、約21nm以上、約22nm以上、約23nm以上、約24nm以上、約25nm以上、約30nm以上、約35nm以上、約40nm以上、約45nm以上、約50nm以上、約55nm以上、約60nm以上、約65nm以上、約70nm以上、約75nm以上、約80nm以上、約85nm以上、約90nm以上、約95nm以上、約100nm以上、約110nm以上、約120nm以上、約125nm以上、約130nm以上、約135nm以上、約140nm以上、約150nm以上、またはこれらの間の任意の範囲もしくは値の平均粒子径を有する。平均粒子径は、当技術分野で公知の任意の適切な方法(例えば、マルバーンパナリティカルゼータサイザーナノ光散乱システムを使用する等の光散乱による)を使用して測定することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約150nm以下、約140nm以下、約135nm以下、約130nm以下、約120nm以下、約110nm以下、約100nm以下、約95nm以下、約90nm以下、約85nm以下、約80nm以下、約75nm以下、約70nm以下、約65nm以下、約60nm以下、約55nm以下、約50nm以下、約45nm以下、約40nm以下、約35nm以下、約30nm以下、約25nm以下、約24nm以下、約23nm以下、約22nm以下、約21nm以下、約20nm以下、またはこれらの間の任意の範囲もしくは値の平均粒子径を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約10nm~約150nm、約10nm~約135nm、約10nm~約100nm、約10nm~約90nm、約10nm~約80nm、約10nm~約70nm、約10nm~約60nm、約10nm~約50nm、約10nm~約45nm、約10nm~約40nm、約10nm~約35nm、約10nm~約30nm、約10nm~約25nm、約10nm~約24nm、約10nm~約23nm、約10nm~約22nm、約10nm~約21nm、約10nm~約20nm、約20nm~約150nm、約20nm~約135nm、約20nm~約100nm、約20nm~約90nm、約20nm~約80nm、約20nm~約70nm、約20nm~約60nm、約20nm~約50nm、約20nm~約45nm、約20nm~約40nm、約20nm~約35nm、約20nm~約30nm、約20nm~約25nm、またはこれらの中の任意の範囲もしくは値の平均粒子径を有する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約24nm~約64nm、またはこれらの中の任意の範囲もしくは値の平均粒子径を有する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約45nm~約100nm、またはこれらの中の任意の範囲もしくは値の平均粒子径を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.15重量%以上、約0.2重量%以上、約0.25重量%以上、約0.3重量%以上、約0.35重量%以上、約0.4重量%以上、約0.45重量%以上、約0.5重量%以上、約0.55重量%以上、約0.60重量%以上、約0.65重量%以上、約0.7重量%以上、約0.75重量%以上、約0.8重量%以上、約0.85重量%以上、約0.9重量%以上、約0.95重量%以上、約1.0重量%以上、約1.1重量%以上、約1.2重量%以上、約1.3重量%以上、約1.4重量%以上、約1.5重量%以上、約1.6重量%以上、約1.7重量%以上、約1.8重量%以上、約1.9重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、約3.0重量%以上、約3.5重量%以上、約4.0重量%以上、約4.5重量%以上、約5.0重量%以上、約5.5重量%以上、約6.0重量%以上、約6.5重量%以上、約7.0重量%以上、約7.5重量%以上、約8.0重量%以上、約8.5重量%以上、約9.0重量%以上、約9.5重量%以上、約10.0重量%以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の重量濃度で存在する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、組成物中に、組成物の総重量に対して、0.2重量%超の値の重量濃度で存在する。
【0055】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約10.0重量%以下、約9.5重量%以下、約9.0重量%以下、約8.5重量%以下、約8.0重量%以下、約7.5重量%以下、約7.0重量%以下、約6.5重量%以下、約6.0重量%以下、約5.5重量%以下、約5.0重量%以下、約4.5重量%以下、約4.0重量%以下、約3.5重量%以下、約3.0重量%以下、約2.5重量%以下、約2.0重量%以下、約1.9重量%以下、約1.8重量%以下、約1.7重量%以下、約1.6重量%以下、約1.5重量%以下、約1.4重量%以下、約1.3重量%以下、約1.2重量%以下、約1.1重量%以下、約1.0重量%以下、約0.95重量%以下、約0.9重量%以下、約0.85重量%以下、約0.8重量%以下、約0.75重量%以下、約0.7重量%以下、約0.65重量%以下、約0.6重量%以下、約0.55重量%以下、約0.5重量%以下、約0.45重量%以下、約0.4重量%以下、約0.35重量%以下、約0.3重量%以下、約0.25重量%以下、約0.2重量%以下、約0.15重量%以下、約0.1重量%以下、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の重量濃度で存在する。
【0056】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.1重量%~約10.0重量%、約0.2重量%~約10.0重量%、約0.3重量%~約10.0重量%、約0.4重量%~約10.0重量%、約0.5重量%~約10.0重量%、約0.6重量%~約10.0重量%、約0.7重量%~約10.0重量%、約0.8重量%~約10.0重量%、約0.9重量%~約10.0重量%、約1.0重量%~約10.0重量%、約2重量%~約10.0重量%、約3重量%~約10.0重量%、約4重量%~約10.0重量%、約5重量%~約10.0重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.2重量%~約5重量%、約0.3重量%~約5重量%、約0.4重量%~約5重量%、約0.5重量%~約5重量%、約0.6重量%~約5重量%、約0.7重量%~約5重量%、約0.8重量%~約5重量%、約0.9重量%~約5重量%、約1.0重量%~約5重量%、約0.1重量%~約3.0重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約1.5重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約3.0重量%、約0.2重量%~約2.5重量%、約0.2重量%~約2.0重量%、約0.2重量%~約1.5重量%、約0.2重量%~約1.0重量%、約0.3重量%~約2.0重量%、約0.4重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.6重量%~約2.0重量%、約0.7重量%~約2.0重量%、約0.8重量%~約2.0重量%、約0.9重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、または約1.0重量%~約1.5重量%、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の重量濃度で存在する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.01重量%~約10.0重量%、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の重量濃度で存在する。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、組成物中に、組成物の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の重量濃度で存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、シリカ(例えば、コロイダルシリカ粒子である)を含む。研磨剤(例えば、シリカ粒子)の単位表面積あたりのシラノール基数(以下、「シラノール基の密度」または「シラノール基密度」ともいう。)は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、0個/nm以上、1個/nm以上、1.1個/nm以上、1.2個/nm以上、1.3個/nm以上、1.4個/nm以上、1.5個/nm以上、1.6個/nm以上、1.7個/nm以上、1.8個/nm以上、1.9個/nm以上、2個/nm以上、2.1個/nm以上、2.2個/nm以上、2.3個/nm以上、2.4個/nm以上、2.5個/nm以上、3.0個/nm以上、3.5個/nm以上、4.0個/nm以上、4.5個/nm以上、5.0個/nm以上、5.1個/nm以上、5.2個/nm以上、5.3個/nm以上、5.4個/nm以上、5.5個/nm以上、5.6個/nm以上、5.7個/nm以上、5.8個/nm以上、5.9個/nm以上、6.0個/nm以上、6.1個/nm以上、6.2個/nm以上、6.3個/nm以上、6.4個/nm以上、6.5個/nm以上、6.6個/nm以上、6.7個/nm以上、6.8個/nm以上、6.9個/nm以上、7.0個/nm以上、7.1個/nm以上、7.2個/nm以上、7.3個/nm以上、7.4個/nm以上、7.5個/nm以上、7.6個/nm以上、7.7個/nm以上、7.8個/nm以上、7.9個/nm以上、8.0個/nm以上、8.5個/nm以上、9.0個/nm以上、9.5個/nm以上、10.0個/nm以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値のシラノール基密度を有する。いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、6.2個/nm超のシラノール基密度を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、10.0個/nm以下、9.5個/nm以下、9.0個/nm以下、8.5個/nm以下、8.0個/nm以下、7.5個/nm以下、7.0個/nm以下、6.5個/nm以下、6.0個/nm以下、5.5個/nm以下、5.0個/nm以下、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値のシラノール基密度を有する。いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、4.0個/nm以下、3.0個/nm以下、2.5個/nm以下、2.4個/nm以下、2.3個/nm以下、2.2個/nm以下、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値のシラノール基密度を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、1.0個/nm~10.0個/nm、1.5個/nm~9.5個/nm、2.0個/nm~9.0個/nm、2.5個/nm~8.5個/nm、3.0個/nm~8.0個/nm、4.5個/nm~7.5個/nm、5.0個/nm~7.0個/nm、5.5個/nm~6.5個/nm、またはその中の任意の範囲もしくは値のシラノール基密度を有する。
【0060】
<シラノール基密度の算出方法>
研磨剤の単位表面積あたりのシラノール基密度(単位:個/nm)は、以下の測定方法または計算方法により、各パラメータを測定または算出した後、下記の方法により算出する。
【0061】
より具体的には、下記式中のCは、研磨剤の合計質量であり、下記式中のSは、研磨剤のBET比表面積である。さらに具体的には、まず、固形分として1.50gの研磨剤を200mlビーカーに採取し、100mlの純水を加えてスラリーとした後、30gの塩化ナトリウムを添加して溶解する。次に、1N 塩酸を添加してスラリーのpHを3.0~3.5に調整した後、スラリーが150mlになるまで純水を加える。
【0062】
このスラリーに対して、自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1700)使用して、25℃で0.1N 水酸化ナトリウムを用いてpHが4.0になるよう調整し、さらに、pH滴定によってpHを4.0から9.0に上げるのに要した0.1N 水酸化ナトリウム溶液の容量V[L]を測定する。平均シラノール基密度(シラノール基密度)は、下記式により算出できる。
【0063】
ρ=(c×V×N)/(C×S)
上記式中、
ρは、平均シラノール基密度(シラノール基密度)(個/nm)を表わし;
cは、滴定に用いた水酸化ナトリウム溶液の濃度(mol/L)を表わし;
Vは、pHを4.0から9.0に上げるのに要した水酸化ナトリウム溶液の容量(L)
を表わし;
は、アボガドロ定数(個/mol)を表わし;
Cは、研磨剤の合計質量(固形分)(g)を表わし;
Sは、研磨剤のBET比表面積の加重平均値(nm/g)を表わす。当該BET比表面積は、株式会社マウンテック製の“MacsorbHM model-1210”を用いて測定されたBET法による研磨剤の比表面積の値である。
【0064】
モリブデン静的エッチング速度抑制剤
本明細書で使用される場合、「静的エッチング速度」(SER)という用語は、組成物(例えば、研磨用組成物)に浸漬した後の膜厚変化を浸漬時間で割ったものを意味する。例えば、「Mo静的エッチング速度」は、組成物(例えば、本開示の研磨用組成物)に浸漬した後のモリブデン層の厚さの変化を浸漬時間で割ったものである。
【0065】
本開示による研磨用組成物は、1つ以上のモリブデン静的エッチング速度抑制剤(「Mo SER抑制剤」)を含む。Mo SER抑制剤は、1つのMo SER抑制剤または2つ以上のMo SER抑制剤(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のMo SER抑制剤)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、第1のMo SER抑制剤および第2のMo SER抑制剤を含む。本開示による研磨用組成物は、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤と、第2のモリブデン静的エッチング速度抑制剤とを含むが、その意味は、2つ以上のMo SER抑制剤を含む、ということである。
【0066】
1つ以上のMo SER抑制剤は、特に限定されず、研磨用組成物の安定性を低下させることなく、高いモリブデン除去速度を達成しながらモリブデン静的エッチング速度を低下させるのに有効な任意の1つ以上の化合物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、スルホン酸部分、リン酸部分、またはその塩、トリアゾール化合物、アミノ酸、またはそれらの任意の組み合わせを有するアニオン性界面活性剤を含む。スルホン酸部分は、-SOで示され、リン酸部分は、-OPOで示される。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ジフェニルエーテル構造を有する。ここで、ジフェニルエーテル構造の概念は、以下:
【0068】
【化1】
【0069】
で示される構造を含む他、以下:
【0070】
【化2】
【0071】
で示される構造も含む。なお、式2で示される構造は、実際には以下:
【0072】
【化3】
【0073】
のように、ジフェニルエーテル構造における酸素原子をプラスに帯電させる任意の基(X)(Xは、例えば、スルホ基(-SOH)等である)を更に含む。具体例は、以下のような構造:
【0074】
【化4】
【0075】
である。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、下記式:
【0077】
【化5】
【0078】
で示される、ジフェニルエーテル構造を有し、R~R10の基は、それぞれ独立して、水素原子、スルホ基(-SOH)およびアルキル基から選択され、ただし、R~R10の基のうち少なくとも1つは、スルホ基(-SOH)である。スルホ基(-SOH)はNa等の塩の形態でもよい。いくつかの実施形態では、当該アルキル基の炭素数は2~15、3~14、4~13、5~12である。いくつかの実施形態では、当該アルキル基は、直鎖状または分岐状であり、好ましくは直鎖状である。いくつかの実施形態では、R~R10の基のうち、スルホ基(-SOH)の数が、4個以下、3個以下、あるいは、2個以下である。いくつかの実施形態では、R~R10の基のうち、アルキル基の数が4個以下、3個以下、2個以下、あるいは、1個である。いくつかの実施形態では、R~R10の基のうち、スルホ基(-SOH)の数が1個または2個であり、アルキル基の数が1~4個、1~3個、あるいは1個または2個であり、残りが水素原子である。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、下記式:
【0080】
【化6】
【0081】
で示される、ジフェニルエーテル構造を有し、R11~R15の基は、それぞれ独立して、水素原子、スルホ基(-SOH)およびアルキル基から選択される。式6中に含まれる、スルホ基(-SOH)はNa等の塩の形態でもよい。いくつかの実施形態では、当該アルキル基の炭素数は1~9、2~7、あるいは、3~5である。いくつかの実施形態では、当該アルキル基は、直鎖状または分岐状であり、好ましくは直鎖状である。いくつかの実施形態では、R11~R15の基のうち、スルホ基(-SOH)の数が、2個以下であり、好ましくは1個である。このように、第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤がその一分子中に2つのスルホ基(-SOH)を有している場合、そのうちの1つが共鳴酸素に結合していることも好ましい。いくつかの実施形態では、R11~R15の基のうち、アルキル基の数が1個以上、2個以上、あるいは、3個以上である。いくつかの実施形態では、R11~R15の基のうち、スルホ基(-SOH)の数が1個または2個であり、アルキル基の数が1~4個であり、残りが水素原子である。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、オキシアルキレン構造、かつ、リン酸部分(-OPO)を有する。いくつかの実施形態では、オキシアルキレン構造の炭素数は、1、2または3である。いくつかの実施形態では、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、X-(OY)-OPOで示され、nは3~20であり、Xはアルキル基、アルケニル基、またはアリール基であり、Yはアルキレン基である。リン酸部分(-OPO)はNa等の塩の形態でもよい。いくつかの実施形態では、nは17以下、15以下、13以下、11以下、10以下、あるいは、9以下である。いくつかの実施形態では、nは4以上、5以上、6以上、あるいは、7以上である。いくつかの実施形態では、アルキル基の炭素数は3~20、4~19、5~18、6~17、7~17、8~16、9~15、10~14、あるいは、11~13である。いくつかの実施形態では、アルケニル基の炭素数は3~20、4~19、5~18、6~17、7~17、8~16、9~15、10~14、あるいは、11~13である。いくつかの実施形態では、アリール基はフェニル基またはナフチル基である。いくつかの実施形態では、アルキレン基の炭素数は1、2または3である。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、一分子に2つ以上のスルホン酸部分(-SO)を有する。前記第1のモリブデン静的エッチング速度抑制剤は、一分子に5つ以下、4つ以下、あるいは、3つ以下のスルホン酸部分(-SO)を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホネートまたはその塩(例えば、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0))、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、sec-ヘキシル誘導体(CAS番号147732-59-0)、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、テトラプロピレン誘導体(CAS番号119345-03-8)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)フェニルホスフェート、ポリオキシエチレン(14)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(12)トリデシルエーテルホスフェート、およびその塩から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホネートまたはその塩(例えば、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0))、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、sec-ヘキシル誘導体(CAS番号147732-59-0)、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、テトラプロピレン誘導体(CAS番号119345-03-8)、およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、モリブデン静的エッチング速度抑制剤は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0)またはその塩である。
【0085】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、トリアゾール化合物、アミノ酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、トリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸(CAS番号60932-58-3またはCAS番号23814-12-2)、または2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビス-エタノール(CAS番号88477-37-6)を含む。いくつかの実施形態では、トリアゾール化合物はベンゾトリアゾールを含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アルギニン(例えば、L-アルギニン)、ヒスチジン(例えば、l-ヒスチジン)、リジン(例えば、L-リジン)、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、塩基性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤はアルギニンを含む。いくつかの実施形態では、組成物中に含まれるアミノ酸のうち、塩基性アミノ酸が占める割合が、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、あるいは、99重量%以上である(上限:100重量%)。
【0086】
いくつかの実施形態では、組成物は、スルホン酸部分、リン酸部分またはその塩を有するアニオン性界面活性剤から選択される第1のMo SER抑制剤と、アミノ酸から選択される第2のMo SER抑制剤と、を含む。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホネートまたはその塩(例えば、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0))、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、sec-ヘキシル誘導体(CAS番号147732-59-0)、スルホン化ベンゼン、1,1’-オキシビス-、テトラプロピレン誘導体(CAS番号119345-03-8)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)フェニルホスフェート、ポリオキシエチレン(14)オレイルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(10)トリデシルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン(12)トリデシルエーテルホスフェート、およびその塩から選択される第1のMo SER抑制剤と、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンから選択される第2のMo SER抑制剤と、含む。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、ドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0)である第1のMo SER抑制剤と、アルギニンである第2のMo SER抑制剤と、を含む。
【0087】
1つ以上のMo SER抑制剤は、研磨用組成物の安定性を低下させることなく、高いモリブデン除去速度を達成しながらモリブデン静的エッチング速度を低下させるための任意の適切な濃度で研磨用組成物中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に、約0.001重量%以上、約0.005重量%以上約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.03重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.07重量%以上、約0.08重量%以上、約0.09重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.7重量%以上、約0.8重量%以上、約0.9重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、約3.0重量%以上、約3.5重量%以上、約4.0重量%以上、約4.5重量%以上%、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、約10重量%以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。
【0088】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4.5重量%以下、約4.0重量%以下、約3.5重量%以下、約3.0重量%以下、約2.5重量%以下、約2.0重量%以下、約1.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.9重量%以下、約0.8重量%以下、約0.7重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下、約0.005重量%以下、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。Mo SER抑制剤の濃度を闇雲に高くするのではなく適切な上限を設けることによって、モリブデンについて低い静的エッチング速度(SER)を達成しながら、高い除去速度を有する効果がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に、約0.001重量%~約10重量%、約0.001重量%~約5重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.001重量%~約0.7重量%、約0.001重量%~約0.5重量%、約0.001重量%~約0.1重量%、約0.001重量%~約0.05重量%、約0.001重量%~約0.01重量%、約0.005重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、約0.005重量%~約1重量%、約0.005重量%~約0.7重量%、約0.005重量%~約0.5重量%、約0.005重量%~約0.1重量%、約0.005重量%~約0.05重量%、約0.005重量%~約0.01重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.01重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.7重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、またはその中の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。
【0090】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に(合計濃度で)、約0.03重量%~約1.0重量%、またはその中の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMo SER抑制剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に(合計濃度で)、約0.07重量%~約1.0重量%、またはその中の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.02重量%~約0.4重量%の濃度のスルホン酸部分(-SO)、リン酸部分(-OPO)、またはそれらの塩を有する第1のSER抑制剤と、組成物の総重量に対して約0.02重量%~約1重量%の濃度のアミノ酸構造を有する第2のSER抑制剤と、を含む。Mo SER抑制剤の濃度を闇雲に高くするのではなく適切な上限を設け、また、適切な下限を設けることによって、モリブデンについて低い静的エッチング速度(SER)を達成しながら、高い除去速度を有する効果がある。この濃度の調整は、本発明者らが、SER抑制剤には低い静的エッチング速度(SER)の達成と、高い除去速度の達成というトレードオフの効果があることを知見したからなせるものである。
【0091】
いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.005重量%~約1重量%の濃度のドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0)である第1のMo SER抑制剤と、組成物の総重量に対して約0.01重量%~約1.0重量%の濃度のアルギニンである第2のMo SER抑制剤と、を含む。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.01重量%~約0.7重量%の濃度のドデシル(スルホナトフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(CAS番号28519-02-0)である第1のMo SER抑制剤と、組成物の総重量に対して約0.05重量%~約0.7重量%の濃度のアルギニンである第2のMo SER抑制剤と、を含む。
【0092】
酸化剤
本開示による研磨用組成物は、1つ以上の酸化剤を含む。いくつかの実施形態では、本開示による研磨用組成物は、第1の酸化剤および第2の酸化剤を含む。研磨用組成物は、3つ以上の酸化剤(例えば、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の酸化剤)を含んでいてもよい。本開示による研磨用組成物は、第1の酸化剤と、第2の酸化剤と、を含むが、その意味は、2つ以上の酸化剤を含む、ということである。
【0093】
第1および第2の酸化剤は、特に限定されず、研磨用組成物の安定性を低下させることなく、高いモリブデン除去速度を達成しながら、モリブデン静的エッチング速度を低下させるのに有効な任意の1つ以上の化合物を含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1の酸化剤は、1つ以上の遷移金属化合物(例えば、遷移金属ハロゲン化物)を含む。いくつかの実施形態では、第1の酸化剤は過酸化物ではない。いくつかの実施形態では、第1の酸化剤は、銀(II)塩、鉄(III)塩、過マンガン酸、クロム酸、二クロム酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、ジクロロイソシアヌル酸、ヨウ化カリウム、過マンガン酸カリウム、およびそれらの塩から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、第2の酸化剤は、1つ以上の過酸化物を含む。いくつかの実施形態では、第2の酸化剤は、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、オゾン水、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、ペルフタル酸、過硫酸、およびそれらの塩から選択される1つ以上の化合物を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1の酸化剤はヨウ化カリウムを含み、第2の酸化剤は過酸化水素を含む。いくつかの実施形態では、第1の酸化剤はヨウ素酸カリウムを含み、第2の酸化剤は過酸化水素を含む。
【0097】
第1の酸化剤および第2の酸化剤は、研磨用組成物中に、研磨用組成物の安定性を低下させることなく、高いモリブデン除去速度を達成しながら、モリブデン静的エッチング速度を低下させるための任意の適切な濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の酸化剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に、約0.001重量%以上、約0.005重量%以上約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.03重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.07重量%以上、約0.08重量%以上、約0.09重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.7重量%以上、約0.8重量%以上、約0.9重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、約3.0重量%以上、約3.5重量%以上、約4.0重量%以上、約4.5重量%以上%、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、約10重量%以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。
【0098】
いくつかの実施形態では、第1および第2の酸化剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4.5重量%以下、約4.0重量%以下、約3.5重量%以下、約3.0重量%以下、約2.5重量%以下、約2.0重量%以下、約1.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.9重量%以下、約0.8重量%以下、約0.7重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下、約0.005重量%以下、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。
【0099】
いくつかの実施形態では、第1および第2の酸化剤は、研磨用組成物中に、個々にまたは集合的に、約0.001重量%~約10重量%、約0.001重量%~約5重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.001重量%~約0.7重量%、約0.001重量%~約0.5重量%、約0.001重量%~約0.1重量%、約0.001重量%~約0.05重量%、約0.001重量%~約0.01重量%、約0.005重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、約0.005重量%~約1重量%、約0.005重量%~約0.7重量%、約0.005重量%~約0.5重量%、約0.005重量%~約0.1重量%、約0.005重量%~約0.05重量%、約0.005重量%~約0.01重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.01重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.7重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、約0.05重量%~約10重量%、約0.05重量%~約5.0重量%、約0.05重量%~約1.0重量%、約0.05重量%~約0.7重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.05重量%~約0.07重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5.0重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約1.5重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約0.7重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5.0重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約0.5重量%~約0.7重量%、約1.0重量%~約10.0重量%、約1.0重量%~約5.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、またはその中の任意の範囲もしくは値の濃度(組成物の総重量に対する重量による)で存在する。
【0100】
いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.01重量%~1.0重量%の濃度のヨウ化カリウムである第1の酸化剤と、組成物の総重量に対して約0.01重量%~5.0重量%の濃度の過酸化水素である第2の酸化剤と、を含む。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.01重量%~1.0重量%の濃度のヨウ素酸またはその塩である第1の酸化剤と、組成物の総重量に対して約0.01重量%~5.0重量%の濃度の過酸化水素である第2の酸化剤と、を含む。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.05重量%~0.7重量%の濃度のヨウ化カリウムである第1の酸化剤と、組成物の総重量に対して約0.5重量%~1.5重量%の濃度の過酸化水素である第2の酸化剤と、を含む。いくつかの実施形態では、研磨用組成物は、組成物の総重量に対して約0.05重量%~0.7重量%の濃度のヨウ素酸またはその塩である第1の酸化剤と、組成物の総重量に対して約0.5重量%~1.5重量%の濃度の過酸化水素である第2の酸化剤と、を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、ヨウ素酸またはその塩である第1の酸化剤の濃度に対する、過酸化水素である第2の酸化剤の濃度が、1.2倍以上、1.4倍以上、1.6倍以上、あるいは、1.8倍以上である。いくつかの実施形態では、ヨウ素酸またはその塩である第1の酸化剤の濃度に対する、過酸化水素である第2の酸化剤の濃度が、5.5倍以下、4.5倍以下、3倍以下、あるいは、2.5倍以下である。
【0102】
いくつかの実施形態では、組成物中に含まれる酸化剤のうち、ヨウ素酸カリウムおよび過酸化水素が占める割合が、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、あるいは、99重量%以上である(上限:100重量%)。
【0103】
pH調整剤
いくつかの実施形態では、本開示による組成物は、pHを選択されたpH値に調整するための1つ以上のpH調整剤をさらに含み得る。
【0104】
pH調整剤は特に限定されず、任意の適切なpH調整剤を使用して、上述のように、組成物のpHを任意の所望の範囲にすることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のpH調整剤は、無機化合物、有機化合物、またはそれらの組み合わせを含み得るか、それらから本質的になり得るか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のpH調整剤は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸)、有機酸(例えば、クエン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のカルボン酸)、および/または有機硫酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等)を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のpH調整剤は、1つ以上のプロトン(H)が放出され得る場合(例えば、炭酸水素アンモニウムまたはリン酸水素アンモニウム)に塩基の形態であり得る上記酸(例えば、硫酸、炭酸、リン酸、シュウ酸等)の二価以上の酸を含み得るが、任意の対イオンが使用され得る(例えば、アンモニウム、トリエタノールアミン等の弱塩基性カチオン)。いくつかの実施形態では、1つ以上のpH調整剤はリン酸を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、1つ以上のpH調整剤は、アルカリ金属の1つ以上の水酸化物(例えば、NaOH、KOH)またはその塩(例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等)、第4級アンモニウム化合物(例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等)、第4級アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム)またはその塩、アンモニア、アミン、または任意の他の適切なpH調整剤を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のpH調整剤はKOHを含む。
【0106】
研磨用組成物のpH
pH調整剤は、上述のように、第1の材料(例えば、SiN)および第2の材料(例えば、SiO)の反対に帯電した表面を得るために所望のpH値を達成するのに適した任意の量で存在してもよい。研磨用組成物のpHは、当該分野で公知の任意の適切な方法(例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィックORION(商標)VERSA STAR PRO(商標)pH/ISE/導電率/溶存酸素マルチパラメータベンチトップメータを使用する)を用いて測定され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約10.0以下、約9.9以下、約9.8以下、約9.7以下、約9.6以下、約9.5以下、約9.4以下、約9.3以下、約9.2以下、約9.1以下、約9.0以下、約8.9以下、約8.8以下、約8.7以下、約8.6以下、約8.5以下、約8.4以下、約8.3以下、約8.2以下、約8.1以下、約8.0以下、約7.9以下、約7.8以下、約7.7以下、約7.6以下、約7.5以下、約7.4以下、約7.3以下、約7.2以下、約7.1以下、約7.0以下、約6.9以下、約6.8以下、約6.7以下、約6.6以下、約6.5以下、約6.4以下、約6.3以下、約6.2以下、約6.1以下、約6.0以下、約5.9以下、約5.8以下、約5.7以下、約5.6以下、約5.5以下、約5.4以下、約5.3以下、約5.2以下、約5.1以下、約5.0以下、約4.9以下、約4.8以下、約4.7以下、約4.6以下、約4.5以下、約4.4以下、約4.3以下、約4.2以下、約4.1以下、約4.0以下、約3.9以下、約3.8以下、約3.7以下、約3.6以下、約3.5以下、約3.4以下、約3.3以下、約3.2以下、約3.1以下、約3.0以下、またはそれ以下である。
【0108】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約3.0以上、約3.1以上、約3.2以上、約3.3以上、約3.4以上、約3.5以上、約3.6以上、約3.7以上、約3.8以上、約3.9以上、約4.0以上、約4.1以上、約4.2以上、約4.3以上、約4.4以上、約4.5以上、約4.6以上、約4.7以上、約4.8以上、約4.9以上、約5.0以上、約5.1以上、約5.2以上、約5.3以上、約5.4以上、約5.5以上、約5.6以上、約5.7以上、約5.8以上、約5.9以上、約6.0以上、約6.1以上、約6.2以上、約6.3以上、約6.4以上、約6.5以上、約6.6以上、約6.7以上、約6.8以上、約6.9以上、約7.0以上、約7.1以上、約7.2以上、約7.3以上、約7.4以上、約7.5以上、約7.6以上、約7.7以上、約7.8以上、約7.9以上、約8.0以上、約8.1以上、約8.2以上、約8.3以上、約8.4以上、約8.5以上、約8.6以上、約8.7以上、約8.8以上、約8.9以上、約9.0以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値である。
【0109】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約3~約10、約3.5~約9.5、約4~約9、約4.5~約8.5、約5~約8、約5.5~約7.5、約6~約7である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約4~約9、例えば、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5もしくは9.0、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約4.5~約8.1以下である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約5.0~約8.0以下である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約5.0~約7.8以下である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約5.5~約7.5以下である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、4超である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、9未満である。
【0110】
液体担体
本開示による研磨用組成物は、液体担体を含んでいてもよい。研磨用組成物の液体担体は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、液体担体は、脱イオン水等の水である。液体担体は、例えば、適切なpH調整剤を含有する水溶液であってもよい。いくつかの実施形態では、液体担体は、アルコール化合物、例えば脂肪族アルコールのグリコールエーテルおよび2~6個の炭素原子を有する3~10個の炭素原子等の1つ以上の有機溶媒を含むことができる。炭素数2~6の脂肪族アルコールの例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、エリスリトール、D-トレイトール、L-トレイロール、D-アラビニトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、マンニトールおよびソルビトールが挙げられる。炭素数3~10のグリコールエーテルの例としては、メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、イソプロピルグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、アリールグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、およびフェニルプロピレングリコールが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物に含まれる液体担体のうち、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、あるいは、99重量%以上が、水である(上限は、100重量%)。
【0111】
追加の成分
いくつかの実施形態では、組成物は、任意の濃度で他の添加剤を含んでもよい。しかしながら、表面欠陥の存在の原因となり得る不要な成分を添加しないことが望ましい。したがって、任意の他の添加剤は、それらが存在する場合、比較的低い濃度(例えば、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下、0.001重量%以下、0.0005重量%以下、0.0001重量%以下、0.0001重量%~0.1重量%、0.0001重量%~0.01重量%、または0.0001重量%~0.001重量%等)で存在することが好ましい。他の添加剤の例としては、防腐剤、防カビ剤、殺生物剤(例えば、メチルイソチアゾリノン(「MIT」)、ベンゾイソチアゾリノン(「BIT」)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリノン)、分散剤(一旦沈降した研磨剤の再分散性を向上させる添加剤)、電気伝導度調整剤(研磨用組成物の電気伝導度を調整する添加剤)、上記研磨剤以外の研磨剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、および溶存ガスが挙げられる。
【0112】
研磨方法
別の態様において、本開示は、モリブデン表面を本開示による研磨用組成物と接触させることと、モリブデン表面からモリブデンを除去することと、を含む研磨方法に関する。
【0113】
いくつかの実施形態では、モリブデンは、約200Å/分以上、約250Å/分以上、約300Å/分以上、約350Å/分以上、約400Å/分以上、約450Å/分以上、約500Å/分以上、約550Å/分以上、約600Å/分以上、約650Å/分以上、約700Å/分以上、約750Å/分以上、約800Å/分以上、約850Å/分以上、約900Å/分以上、約950Å/分以上、約1000Å/分以上、約1050Å/分以上、約1100Å/分以上、約1150Å/分以上、約1200Å/分以上、約1250Å/分以上、約1300Å/分以上、約1350Å/分以上、約1400Å/分以上、約1450Å/分以上、約1500Å/分以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値の除去速度(RR)でモリブデン表面から除去される。
【0114】
いくつかの実施形態では、研磨は、低いMo静的エッチング速度(SER)を達成する。いくつかの実施形態では、Mo SERは、約1200Å/分以下、約1150Å/分以下、約1100Å/分以下、約1050Å/分以下、約1000Å/分以下、約950Å/分以下、約900Å/分以下、約850Å/分以下、約800Å/分以下、約750Å/分以下、約700Å/分以下、約650Å/分以下、約600Å/分以下、約550Å/分以下、約500Å/分以下、約450Å/分以下、約400Å/分以下であり、約350Å/分以下、約300Å/分以下、約250Å/分以下、約200Å/分以下、約190Å/分以下、180Å/分以下、170Å/分以下、160Å/分以下、150Å/分以下、140Å/分以下、130Å/分以下、120Å/分以下、110Å/分以下、100Å/分以下、90Å/分以下、80Å/分以下、70Å/分以下、60Å/分以下、50Å/分以下、40Å/分以下、30Å/分以下、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値である。
【0115】
いくつかの実施形態では、研磨は、少なくとも約2、少なくとも約2.5、少なくとも約3、少なくとも約3.5、少なくとも約4、少なくとも約4.5、少なくとも約5、少なくとも約5.5、少なくとも約6、少なくとも約6.5、少なくとも約7、少なくとも約7.5、少なくとも約8、少なくとも約8.5、少なくとも約9、少なくとも約9.5、少なくとも約10、少なくとも約10.5、少なくとも約11、少なくとも約11.5、少なくとも約12、またはそれを超えるMo RR対Mo SERの比を達成する。いくつかの実施形態では、研磨は、6.0超、6.2以上、6.4以上、6.6以上、6.8以上、7.0以上、7.2以上、7.4以上、7.6以上、7.8以上、8.0以上、8.2以上、8.4以上、8.6以上、8.8以上、9.0以上、9.2以上、9.4以上、9.6以上、9.8以上、10.0以上、10.2以上、10.4以上、10.6以上、10.8以上、あるいは、11.0以上またはそれを超えるMo RR対Mo SERの比を達成する。いくつかの実施形態では、研磨は、20以下、あるいは、18以下のMo RR対Mo SERの比を達成する。
【実施例0116】
実施例1.研磨用組成物の調製
Mo除去速度、Mo静的エッチング速度の抑制、およびMo RR-SER選択性に関して本開示による研磨用組成物の研磨性能を試験するために、研磨用組成物を以下のように調製した。
【0117】
以下の実験で使用される例示的な研磨用組成物について、以下の成分を以下の順序:(1)脱イオン水(全脱イオン水の80%)、(2)第1のSER抑制剤、(3)第2のSER抑制剤、(4)第2の酸化剤、(5)研磨剤、(6)脱イオン水(全脱イオン水の20%)、(7)pH調整剤、および(8)第1の酸化剤、で混合しながら容器に添加することによって研磨用組成物を調製した。なお、例によっては(3)第2のSER抑制剤等の少なくとも1種の成分が含まれないものもある。
【0118】
研磨用組成物は、異なる研磨剤の種類(表1に示す)および異なるMo SER抑制剤(表2に示す)を用いて調製した。
【0119】
Mo除去速度を試験するために、研磨用組成物(例1~67)を、Si基板上の熱SiO上の50nm PE-CVD SiN上の200nm PVD Mo(上から下)を含むMoコーティング基板に、以下の研磨条件を使用して操作される卓上研磨機を使用して塗布した。
【0120】
・●パッド:FUJIBO H800
・●コンディショナー:3Mナイロンブラシ
・●ダウンフォース:2.0psi
・●プラテン回転:150rpm
・●スラリー流量:30ml/分
・●研磨時間:30秒
Mo除去速度を決定するために、Mo層の厚さを研磨前後に測定し、次いで研磨時間で割った。Mo静的エッチング速度(SER)を決定するために、0.5重量%クエン酸溶液に基板を浸漬し、脱イオン水で2分間すすぎ、その後、基板を300mlの研磨用組成物に40℃で2分間浸漬することによって基板を前処理(洗浄)する前後に、Mo層の厚さを測定した。
【0121】
【表1】
【0122】
研磨剤A~Cはいずれもコロイダルシリカであり、いずれも表面未修飾である。
【0123】
【表2-1】
【0124】
【表2-2】
【0125】
実施例2.Mo除去速度および静的エッチング速度に対する酸化剤の効果
それぞれ1重量%の研磨剤(タイプB)を含む研磨用組成物1~14を用いてMo基板を研磨し、研磨用組成物のpHは(pH調整剤としてKOHを用いて)6.5とした。異なる濃度の第1および第2の酸化剤(それぞれKIOおよびH)を使用して、Mo RR、Mo SER、およびRR/SER選択性を決定した。研磨性能を表3にまとめた。
【0126】
【表3】
【0127】
実施例3.モリブデンSER抑制剤の効果
単一のMo SER抑制剤を含む組成物の研磨性能を試験するために、それぞれ1重量%の研磨剤(タイプB)、第1の酸化剤としての0.5重量%のKIO、第2の酸化剤としての1.0重量%のHを含む研磨用組成物3および15~43を使用して、Mo基板を研磨し、研磨用組成物のpHは(pH調整剤としてKOHを用いて)6.5とした。様々な第1のMo SER抑制剤(A~R)を異なる濃度で使用して、Mo RR、Mo SER、およびRR/SER選択性を決定した。研磨性能を表4にまとめた。
【0128】
2つの異なるMo SER抑制剤を含む組成物の研磨性能を試験するために、それぞれ1重量%の研磨剤(タイプB)、第1の酸化剤としての0.5重量%のKIO、第2の酸化剤としての1.0重量%のHを含む研磨用組成物15および44~57を使用して、Mo基板を研磨し、研磨用組成物のpHは(pH調整剤としてKOHを用いて)6.5とした。様々な第1のMo SER抑制剤(A-C、P)および様々な第2のMo SER抑制剤(S-W)を異なる濃度で使用して、Mo RR、Mo SER、およびRR/SERの選択性を決定した。研磨性能を表5にまとめた。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
実施例4.Mo除去速度および静的エッチング速度に対する組成物のpHの効果
組成物のpHの機能としての研磨性能を試験するために、それぞれ1重量%の研磨剤(タイプB)、第1の酸化剤としての0.5重量%のKIO、第2の酸化剤としての1.0重量%のH、0.05重量%の抑制剤A、および0.05重量%のL-アルギニン(抑制剤S)を含む研磨用組成物58~63を使用して、Mo基板を研磨した。リン酸(例58~60)またはKOH(61~63)を使用して組成物のpHを調整して、酸性および塩基性研磨用組成物をそれぞれ製造した。研磨性能を表6にまとめた。
【0132】
【表6】
【0133】
実施例5.Mo除去速度および静的エッチング速度に対する研磨剤の種類の効果
研磨剤の種類および濃度の機能としての研磨性能を試験するために、それぞれ第1の酸化剤としての0.5重量%のKIO、第2の酸化剤としての1.0重量%のH、0.05重量%の抑制剤A、および0.05重量%のL-アルギニン(抑制剤S)を含み、組成物のpH6.5(pH調整剤としてKOHを用いた)を有する研磨用組成物44および64~67を使用して、Mo基板を研磨した。研磨性能を表7にまとめた。
【0134】
【表7】
【0135】
特定の実施形態を図示および説明したが、以下の特許請求の範囲に定義されるそのより広い態様の技術から逸脱することなく、当業者に従って変更および修正を行うことができることを理解されたい。
【0136】
本明細書に例示的に記載される組成物および方法は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限がない状態で適切に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などの用語は、広範に、限定することなく読まれるものとする。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示され説明された特徴またはその一部の均等物を除外する意図はない。特許請求される開示の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本開示は好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示されている開示の修正および変形は当業者によって行われてもよく、そのような修正および変形は本開示の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0137】
本開示は、本明細書において広く一般的に説明されている。一般的な開示に含まれるより狭い種および亜属のグループ化のそれぞれも、方法の一部を形成する。これは、切除された材料が本明細書に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を除去するという条件または否定的限定を伴う方法の一般的な説明を含む。本技術は、本技術の個々の態様の単一の例示として意図される本出願に記載された特定の実施形態に関して限定されるべきではない。当業者には明らかなように、本技術の精神および範囲から逸脱することなく、本技術の多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価な方法および装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および変形は、本技術の範囲内に含まれることが意図される。この本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物または生物学的系に限定されず、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0138】
当業者は、本開示が目的を実行し、言及された目的および利点、ならびにそれらに固有の目的および利点を得るのによく適合していることを容易に理解する。その中の変更および他の使用が当業者には思い浮かぶであろう。これらの修正は、本開示の精神の範囲内に包含され、本開示の非限定的な実施形態を示す特許請求の範囲によって定義される。
【0139】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。
【0140】
本明細書で引用されるすべての参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、および特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。しかしながら、本明細書で引用される任意の参考文献、論文、出版物、特許、特許出版物、および特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成するか、または世界の任意の国における共通の一般知識の一部を形成するという承認または任意の形態の提案ではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0141】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される。
【0142】
本出願は、2023年3月3日に出願された米国仮特許出願番号第63/449,831号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。