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特開2024-125183試験測定システム及びNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法
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  • 特開-試験測定システム及びNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法 図1
  • 特開-試験測定システム及びNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法 図2A
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  • 特開-試験測定システム及びNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法 図6
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  • 特開-試験測定システム及びNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125183
(43)【公開日】2024-09-13
(54)【発明の名称】試験測定システム及びNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/309 20150101AFI20240906BHJP
【FI】
H04B17/309
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024025145
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】202321012113
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18/582,360
(32)【優先日】2024-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ピー・イー・ラメッシュ
(72)【発明者】
【氏名】プラハルシャ・ピー・シルシ
(57)【要約】
【課題】NFCデバイスからの複数のタグ応答を試験する。
【解決手段】試験測定システム100は、NFC近傍結合デバイス108によって生成された無線キャリア信号110を受信すると共に、無線キャリア信号110に応答して近傍集積回路カード112、114、116によって生成された負荷変調された無線キャリア信号を受信するように構成された無線周波数(RF)アンテナ120と、近傍集積回路カード112、114、116によって生成され、RFアンテナ120で受信された負荷変調無線キャリア信号があるか否かを判断するように構成されたマルチ応答検出部104とを有する。応答検出部104は、負荷変調無線キャリア信号が存在するかどうかを判断するのに相互相関を使用しても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信(NFC)システム用の試験測定システムであって、
NFC近傍結合デバイスによって生成された無線キャリア信号を受信すると共に、上記無線キャリア信号に応答して1つ以上の近傍集積回路カードによって生成された負荷変調無線キャリア信号を受信するように構成された無線周波数アンテナと、
1つ以上の近傍集積回路カードによって生成された負荷変調無線キャリア信号が、上記無線周波数アンテナによって受信されたかどうかを判断するように構成された応答検出部と
を具える試験測定システム。
【請求項2】
上記応答検出部は、上記無線キャリア信号の受信に続く1つ以上の応答時間ウィンドウを分離するように更に構成され、上記応答検出部は、上記1つ以上の応答時間ウィンドウ中に上記アンテナが負荷変調無線キャリア信号を受信したかどうかを判断するように構成される請求項1の試験測定システム。
【請求項3】
上記応答検出部は、負荷変調無線キャリア信号を探すために上記1つ以上の応答時間ウィンドウのみを調べるように構成されている請求項2の試験測定システム。
【請求項4】
上記応答検出部は、上記1つ以上の応答時間ウィンドウ中に負荷変調無線キャリア信号を受信したかどうかを判断する際に相互相関機能を呼び出す請求項2の試験測定システム。
【請求項5】
上記アンテナから受信した無線キャリア信号を捕捉し、
捕捉した信号を波形として上記試験測定システム内に記憶させる
よう構成された波形取得システムを更に有する請求項1の試験測定システム。
【請求項6】
1つ以上の近傍集積回路カードによって生成され、上記アンテナによって受信された任意の負荷変調無線キャリア信号からデータをデコードするように構成されたデコーダと、
デコードされたデータを表示するための表示画面と
を更に具える請求項1の試験測定システム。
【請求項7】
NFCポーリング・デバイスによって送信されたコマンドに続く、近距離無線通信(NFC)リスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法であって、
測定デバイスの入力部に取り付けられたRFアンテナによって一連のNFC通信信号を受信する処理と、
上記NFCポーリング・デバイスによってコマンドが送信されたことを検出する処理と、
NFCプロトコルに従って上記コマンドに続く上記応答の1つ以上の有効期間を分離する処理と、
上記1つ以上の有効期間のみにおいて、上記一連のNFC通信信号中の上記応答を検索する処理と
を具えるNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法。
【請求項8】
上記一連のNFC通信信号をIQ波形として記憶する処理を更に具え、上記応答を検索する処理が、記憶された上記IQ波形と特徴的な波形との間で相互相関機能を実行する処理を含む請求項7のNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法。
【請求項9】
上記特徴的な波形は、上記NFCリスニング・デバイスによって生成されたフレーム開始(SOF)信号である請求項8のNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法。
【請求項10】
上記一連のNFC通信信号において、少なくとも1つの応答を見出す処理と、
上記応答中にエンコードされているデータをデコードする処理と
を更に具える請求項7のNFCリスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、試験測定システム及び方法に関するものであって、より詳細には、試験中の近距離無線通信(NFC)デバイスからの複数の応答を特定し、デコードすることに関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)は、互いに短距離で間隔を空けた2つの電子デバイス間の通信を定義する一連の無線通信プロトコル規格である。NFCは、2つのNFC対応電子デバイス上の2つのアンテナの無線キャリア信号との磁界結合によって、2つのNFC対応電子デバイス間の通信を行う。NFCは、モバイル決済や、住宅や商業ビルのドアや車両のアクセス認証などの無線自動識別(RFID)タグなど、様々な用途で利用されている。NFC対応の電子デバイスは、RFIDタグなどのパッシブ・デバイスである場合もあれば、スマートフォンや決済端末など、近接するパッシブ・デバイスとの通信セッションを起動するアクティブ・デバイスの場合もある。この通信は、2つのデバイス間の距離が無線キャリア信号の波長の長さよりもはるかに短いため、「近距離無線(near field)」通信と呼ばれる。例えば、無線キャリア信号が13.56MHzのキャリア信号の場合、波長は約22メートルであるが、ポーリング及びリスニングNFC対応デバイス間の一般的な距離は10cm以下である。
【0003】
典型的なNFCシステムには、近傍結合デバイス(VCD:Vicinity Coupling Device)と近傍集積回路カード(VICC:Vicinity Integrated Circuit Card)とが含まれる。VCDは、「リーダ」又は「ポーリング・デバイス」とも呼ばれ、VICCは、本説明では「タグ」又は「リスニング・デバイス」と呼ばれることもある。VCDとVICCは、磁気的に結合され、NFC規格の通信プロトコルの1つによって無線(ワイヤレス)で通信し、VCDはキャリア信号の振幅を変調してVICCにコマンドを伝送し、VICCは負荷変調によって、これらのコマンドをデコードして応答する。様々なタイプの負荷変調が、様々なNFC規格で利用されている。NFC-Aタイプのデバイスは、ISO/IEC 14443A 規格に従って通信し、VCDは、振幅変調を利用してVICCにコマンドを送信し、VICCは負荷変調にオン・オフ・キーイング(OOK:on-off keying)を使用してこれらのコマンドに応答する。NFC-Bタイプのデバイスは、ISO/IEC 14443B 規格に従って通信し、VCDは振幅変調を利用してVICCにコマンドを送信し、VICCは負荷変調を利用してバイナリ位相シフト・キーイング(BPSK:binary phase shift keying)変調信号を生成し、これらのコマンドに応答する。その他のNFCプロトコルとしては、ISO/IEC 15693 やFeliCa(登録商標)などがある。
【0004】
NFCが利用されるアプリケーションの数は増え続けており、そのような新しいアプリケーションごとに、適切な動作を保証するため、NFC対応デバイスの試験が重要である。複数のNFC対応デバイスが互いに近接している場合に発生する問題の1つは、VCDがインベントリ(Inventory:在庫一覧)要求などのコマンドを近くのVICCに送信した後、VCDの近くにある全てのVICCが応答を送信することである。NFCプロトコルは、VICCからの個々の応答が互いに衝突するのを防止するが、同じプロトコルでは、事前定義された応答スロットを空にすることができる。従って、空の応答タイム・スロットをVICC応答の終了と見なすことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-179459号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0064165号明細書
【特許文献3】国際公開第2011/135328号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「テクトロニクス社製オシロスコープ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年2月21日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の測定デバイスでは、スペクトラム・アナライザを使用して、ローカルの被試験VICCからの無線周波数(RF)応答を測定し、次いで、ベクトル・シグナル・アナライザを使用して応答をIQ波形に変換して更に測定する。しかし、この試験システムは、1つのNFCトランザクションのみの追跡とデコードに限定される。
【0008】
従って、オシロスコープやその他の装置などの試験測定装置に実装でき、その試験測定装置が、例えば、複数のNFC対応デバイスの試験を実施できるようにするための、無線(ワイヤレス)信号を復調する改善された試験技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示技術の実施形態は、近傍結合デバイス(VCD)がインベントリ要求などのコマンドを送信するときに、近傍集積回路カード(VICC)などのいくつかの異なるNFCリスニング・デバイスに近接している場合に生じるNFCデバイスからの複数のタグ応答を検出するための方法及びシステムに関する。実施形態は、また、オシロスコープにおけるスペクトル処理を用いて、VCD及びVICCの両方によって送信されたデータ・フレームのデータをデコードし、次いで、デコードされたデータを周波数領域の信号に対応する時間領域信号にアライメント(位置合わせ)して表示し、これにより、ユーザは、オシロスコープによって測定されたNFC通信を非常に明確に表示して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態による試験測定システムを示し、これは、RF信号を受信するアンテナ、受信したRF信号を波形として記憶するメモリ、複数のNFC応答を分離する検出部及び検出された複数の応答をデコードするデコーダを有する試験測定装置を含んでいる。
図2A図2Aは、本開示技術の実施形態による、近傍結合デバイスと、複数のポーリング・デバイスを含むNFCシステムの挙動を示すタイミング・チャートの第1部分を示す。
図2B図2Bは、本開示技術の実施形態による、近傍結合デバイスと、複数のポーリング・デバイスを含むNFCシステムの挙動を示すタイミング・チャートの第2部分を示す。
図3図3は、本開示技術の実施形態による、複数のNFC応答を分離する検出部と、検出された複数の応答をデコードするデコーダとで使用される処理の例のフローチャートである。
図4図4は、本開示技術の実施形態による、相互相関を使用してNFC応答が存在するか否かを判断する全体的なプロセスを示す。
図5図5は、本開示技術の実施形態によるDC成分が除去された後の受信されたNFC信号を示す。
図6図6は、本開示技術の実施形態による図5の波形との相互相関に用いられる基準波形を示す。
図7図7は、本開示技術の実施形態を用いて図1の試験測定装置でデコードしたNFCデコード・データの2つの表を含む。
図8図8は、本開示技術の実施形態による検出処理及びデコード処理の結果を示す図1の試験測定装置に示されることがある表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示技術の実施形態による試験測定システム100のブロック図であって、これには、オシロスコープのような試験測定装置102があり、NFC対応デバイスからの複数の応答を検出するためのマルチ応答検出部104と、NFC対応デバイス106の試験中に検出された複数の応答をデコードする応答デコーダ105とを有している。試験測定システム100のマルチ応答検出部104及び応答デコーダ105と、他の構成要素の動作の詳細な説明は、以下に示す。
【0012】
また、試験測定装置102には、1つ以上のメイン・プロセッサ150があり、これは、メイン・メモリ152からの命令を実行するように構成されても良く、そのような命令によって示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。メモリ152の一部は、試験測定装置102が取得した波形データを記憶する波形メモリとして構成されても良い。メモリ152の一部は、他のデータも格納しても良い。ユーザ・インタフェース154は、1つ以上のプロセッサ150に結合されても良く、ユーザが試験測定装置102をインタラクティブに操作するために利用可能な、例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、出力表示装置、ファイル・ストレージやその他の任意の操作装置を有していても良い。いくつかの実施形態では、ユーザ・インタフェース154は、リモート・インタフェース(図示せず)に接続されるか又はリモート・インタフェースによって制御されても良く、このため、ユーザは、試験測定装置から物理的に離れた遠隔地で試験測定装置102の動作を制御しても良い。ユーザ・インタフェース154の表示部分は、波形、測定値及びその他のデータをユーザに表示するLCDなどのデジタル・スクリーン又はその他の任意のモニタであっても良い。いくつかの実施形態では、ユーザ・インタフェース154のメイン出力表示装置は、試験測定装置102から離れた場所に配置されても良い。
【0013】
1つ以上の測定ユニット156は、試験測定装置102によって測定されるデバイスからの信号のパラメータ及びその他の特性を測定するという主要機能を実行する。典型的な測定としては、時間領域での入力信号の電圧、電流及び電力の測定に加えて、周波数領域での入力信号の特性の測定がある。測定ユニット156は、典型的には、試験測定装置上で実行される任意の測定を表し、マルチ応答検出部104及び応答デコーダ105は、そのような測定ユニット156内に統合又は結合されても良い。
【0014】
図1は、NFC対応デバイス106には、ポーリング・デバイス又は近傍結合デバイス(VCD)108と、リスニング・デバイス112、114、116があることも示し、これらは近傍集積回路カード(VICC)と呼ばれることがある。図1には、3つのVICC112、114、116が図示されているが、本発明の実施形態は、VCD108の近傍にある任意の数のVICCで動作する。動作中、ポーリング・デバイス108は、電力供給及び通信コマンドの両方のためのNFC無線キャリア信号WCS(wireless carrier signal)110をリスニング・デバイス112、114及び116へ送信し、リスニング・デバイスは、無線キャリア信号110の負荷変調を個別に実行して、VCDへ返す応答を生成する。VICCによるこれらの応答は、848kHzのキャリア(搬送波)変調周波数のサブキャリアを持っている。
【0015】
無線周波数(RF)プローブ又はアンテナ120は、試験測定装置102の試験入力部に結合され、リスニング・デバイス112、114、116のうちの1つ以上に近接して適切に配置され、無線キャリア信号WCS110を検知する。NFC信号の有効距離(range:到達距離)は限られているため、アンテナは、概して、NFC対応デバイス106の約5~10cm以内に配置される。NFC対応デバイス106の試験中、試験測定装置102は、RFアンテナ120によって検知された無線キャリア信号WCS110を捕捉(キャプチャ)する。これらのNFC信号が入力波形として試験測定装置102によって捕捉された後、マルチ応答検出部104は、何らかの応答がVICC、112、114、116によってなされたかどうかを判断し、もしそうであれば、これら応答は、応答デコーダ105によってデコードされ、そのため、試験測定装置102は、デコードされた応答をユーザ・インタフェース154上でユーザに表示しても良い。このようにして、ユーザは、試験測定装置102を使用して、以前は不可能であった方法で、NFC対応デバイス106を試験及び測定することができる。
【0016】
上述したように、ポーリング・デバイス108及びリスニング・デバイス112、114、116は、NFC通信を介して通信し、図1では、無線キャリア信号WCS110で、このNFC通信を表している。本開示技術の実施形態によるマルチ応答検出部104及び応答デコーダ105の動作をよりよく説明するため、ポーリング・デバイス108とリスニング・デバイス112、114、116との間の無線キャリア信号WCS110及びNFC通信の特性を、図1図2A及び図2Bを参照して、より詳細に説明する。ポーリング及びリスニング・デバイス108、112、114及び116の夫々には、図1に示されるように、それぞれそれ自身のアンテナ109、113、115及び117がある。各アンテナは、対応するポーリング又はリスニング・デバイス108、112、114、116内の電子部品(図示せず)に結合される。これらのアンテナ109、113、115、117は、物理的に互いに近接して配置され、これによって、トランスの複数のインダクタと同様に、これらアンテナが無線キャリア信号WCS110を介して誘導的に結合されるようにする。従って、これらアンテナ109、113、115、117は、空中コア・トランスの中の複数のコイルと見なすことができ、このとき、無線キャリア信号WCS110は、交流磁場を表し、これは、ポーリング・デバイス108によって、そのアンテナ109に印加される交流信号により生成される。この交流信号は、通常、NFCプロトコル規格によって規定される13.56MHzのキャリア信号であるが、他の周波数のキャリア信号も本開示の範囲内で使用されても良い。当業者であれば、ポーリング及びリスニング・デバイス108、112、114、116のアンテナ109、113、115、117間の磁気結合及びNFCの特性を、アンテナ間の電磁信号の従来の遠方界伝搬と比較して理解できよう。従って、NFCの特性は、本願では簡単に説明して、詳細は説明しないが、そのような詳細は、本開示技術の実施形態の理解には必要ない。
【0017】
技術な背景として、通常、NFC通信は、ポーリング・デバイス(つまり、VCD)108が、無線キャリア信号WCS110上の信号の形態でコマンドを生成することによって開始され、これは、アンテナ109によって、隣接するNFCリスニング・デバイス又はVICC112、114、116に伝搬される。VICC112、114、116は、無線キャリア信号WCS110を受信し、この信号を復調して、VCD108によって送られたコマンドをデコードする。次に、VICC112、114、116は、それぞれ、デコードされたコマンドを処理し、ある時間フレーム内で、デコードされたコマンドに対応する適切な応答を送信する。より詳細には、VICC112、114、116は、無線キャリア信号WCS110を負荷変調することによって応答を送信する。負荷変調(Load modulation)は、リスニング・デバイス112、114、116のアンテナ113、115、117のインピーダンスを変化させ、アンテナの磁気結合により、アンテナ113、115、117のインピーダンスのこの変動は、ポーリング・デバイス108のアンテナ109における信号の変化を引き起こす。このようにして、リスニング・デバイス112、114、116は、無線キャリア信号WCS110を変調して、ポーリング・デバイス108に応答を送信する。多くのNFCデバイス・プロトコルによれば、リスニング・デバイス112、114、116は、848kHzのサブキャリアを使用し、これが、振幅シフト・キーイング又はバイナリ位相シフト・キーイングなどの特定のキーイングによって変調される。このため、リスニング・デバイス112、114、116は、ポーリング・デバイス108によって送信されたコマンドに対する応答を含むキー変調されたサブキャリア信号を含むように、無線キャリア信号WCS110を負荷変調する。以下でより詳細に説明するように、本開示による実施形態は、マルチ応答検出部104(図1)を使用して、ポーリング装置108のコマンドに応答して行われるリスニング・デバイス112、114、116からの応答の夫々を検出するのに加えて、応答デコーダ105(図1)を使用して、検出された応答の夫々をデコードする。
【0018】
NFC通信セッションの例が、図2A及び2Bに表されている。図2Aは、NFC通信セッション200Aの第1部分を示し、図2Bは、NFC通信セッションの第2部分を示す。つまり、NFC通信セッションは、図2Aの200Aに示した動作から始まり、図2Bの200Bで示した動作に引き継がれる。このセッションは、2つの図で示されているが、時間的に連続している。
【0019】
NFC通信セッションは、VCD108がインベントリ要求コマンドを開始し、このコマンドをそのアンテナ109から近くにある任意のNFCアンテナに送信することで開始される。図1において、VCD108によって送信されたコマンドは、VICC112、114、116内のそれぞれのアンテナによって検知されることになる。図2Aに戻ると、インベントリ要求コマンドは、その前にフレーム開始(SOF:start-of-frame、フレームの最初)信号があり、それから、時刻T1とT2の間にVCD108によって送信されるフレーム終了(EOF:end-of-frame、フレームの最後)信号によって終了する。これらSOF及びEOF信号は、WCS信号110を介して、VCD108によって送信される特定のコードであって、NFC規格の一部として定義されるため、NFC対応デバイス112、114、116の全てがSOF及びEOF信号をデコードし、確立されたNFCプロトコル内でのそれらの使用について解釈できる。
【0020】
引き続き図2Aを参照すると、VCD108が、VICC112、114、116のうちの1つ以上に近接している場合、無線キャリア信号WCS110は、各VICC内のそれぞれアンテナによって受信される。この無線キャリア信号WCS110の受信と、これに由来する発電は、図2AのVCD108によって送信されるインベントリ要求コマンドの受信に対応する。VCDからインベントリ要求コマンドが送信された後、VCD108のアンテナ109(図1)の有効範囲内の各VICCは、図2A及び図2Bに例示されるように、応答を送信する準備をする。上述したように、NFCプロトコルには、2つのVICCがインベントリ要求コマンドに同時に応答することを防ぐためのルールがある。つまり、複数のVICCの応答間で、衝突は発生しない。このため、VCD108からインベントリ要求コマンドを受信した後の期間t1の後、複数のVICCの中の1つ、例えば、VICC112は、上述したプロセス、即ち、負荷変調を用いて、応答「応答1」を生成し、T3で送信する。なお、応答1は、T2で終了したEOFの後の、最初のタイム・スロット「応答スロット0」で発生することに注意されたい。VCD108は、T4でEOF信号を送信することにより、VICC112(及びVCDの近傍にある他のVICC114、116)に対して、応答1を受信したことを示す。そして、次のVICC、例えば、VICC114は、応答スロット1の間に、その応答「応答2」をT5で準備して送信し、再度、VCDは、タイムライン上のT6でEOF信号を送ることによって、応答2の受信を知らせる。異なる点としては、T6でEOF信号が送信された後、VICC112、114、116のいずれも、スロット2の間、即ち、タイムライン上のT7とT8の間の期間に、いかなる応答も送信しない。これは、NFCプロトコルの非衝突ルールによるものである。VCDは、T8で新たなEOFを送信し、その後、VICC(この場合はVICC116)が、応答スロット3で「応答3」を送信する。VCDは、応答スロット3で応答3を受信した後、コマンド要求をVICC112に直接送信するが、これは、タイムライン上のT10から始まる。VCDと1つ以上のVICCとの間の要求の送受信には多くのバリエーションがあり得るが、図2A及び図2Bに設定された例は、開示技術の実施形態によって解決される問題の1つを示しており、これは、いずれかのVICCが、特定の応答タイム・スロットで応答を送信したかどうかを特定できる。即ち、本開示技術の実施形態としては、近接して、VCDコマンドに応答するVICCによる複数の応答を測定できる検出部104を有する測定装置が含まれる。
【0021】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、図1のマルチ応答検出部104及び応答デコーダ105によって実行される例示的なプロセス300のフローチャートである。次に、プロセス300について、図1図8を参照して、より詳細に説明する。プロセス300は、工程302で開始され、この工程では、試験測定装置102が、アンテナ120から信号を取得し、それを処理のためにデジタル化された波形に変換する。アンテナ120は、NFCデバイスが動作する周波数帯域内の信号を検出できるようチューニングされた又は別の方法で検出できる無線周波数(RF)アンテナである。本開示による実施形態は、このデジタル化波形を分析することにより、試験測定装置102は、上述したようなポーリング・デバイス及び1つ以上のリスニング・デバイスを含むNFC通信システムにおいて行われた応答を測定及びデコードできる。図1の試験システム100では、試験測定装置102は、NFCデバイス106のいずれにも物理的に接続されていないが、アンテナ120は、無線で、即ち、アンテナによって検知される無線周波数信号を介して、入力信号を取得する。これは、また、試験システム100がNFCデバイス106をいかなる方法でも変更せず、NFCシステムの試験及び測定に特別なデバイスを必要としないことを意味する。工程302は、IQ波形を取得することを記載しており、これは、アンテナ120によって検出されたRF信号が、試験測定装置102によって、そのI(同相)及びQ(直交)成分に変換されることを意味しており、これは概してIQ波形と呼ばれる。一般に、この変換は、信号に中心周波数を印加してIQ成分を導出することによって実行される。このIQ波形は、試験測定装置102の波形メモリ152などのメモリに記憶される。いくつかの実施形態では、試験測定装置102は、NFC通信セッション中にアンテナ120によって検出された5秒又は10秒のIQ波形データなど、何秒も記憶するのに十分なメモリ152を有する。
【0022】
図3及び図2Aを参照して、次に、図1のマルチ応答検出部104によって実行される工程304、306、308及び310について説明する。上述したように、図2Aは、VCD108などのVCDから送信され、VICC112、114、116などの3つのVICCによって応答されるインベントリ要求コマンドの例のタイミング図を示す。NFCシステムでは、VCD108などのポーリング・デバイスによって送信される信号のエネルギーが、図1の無線キャリア信号WCS110などの信号の変調エネルギーの約90%を使用することが知られている。本開示技術の実施形態は、VICCが応答を生成するタイミングを特定するのを助けるために、信号強度におけるこのばらつき(disparity)を利用する。言い換えれば、本願に開示される実施形態は、まず、VICCからの応答が最も存在しそうなIQ波形内の位置を特定するのを助けるために、VCDから送られる信号の特性を特定し、次いで、IQ波形のこれらの部分を検索して、応答が存在するかどうかを判断(determine:決定)する。そして、応答が存在する場合、実施形態は、また、以下でより詳細に説明するように、応答を自動的にデコードし、それを試験システム100のユーザに提示する。
【0023】
図3に戻ると、プロセス300の工程304では、VCDによって生成された次の「フレーム開始(SOF:start of frame)」信号を見つける。試験測定装置102(図1)は、VCDデバイスがデータを送信するときに大きな振幅を有するため、その振幅に基づいてVCDによって生成された信号を検出する。一実施形態では、検出された振幅が閾値と比較され、振幅が閾値を超える場合、試験測定装置は、その送信がVCDから発信されたと判断する。いくつかの実施形態では、これに加えて(又は、これに代えて)、プロセス304で、VCDによって生成されたSOF信号に続く「フレーム終了(end of frame)」EOF信号を特定する。図2Aを参照すると、VCDは、時刻T1とT10でSOF(Start of frame)信号を生成し、これら2つは、VICC(T1)から応答を受信する前(T1)と、全ての応答を受信した後(T10)であることを思い出してください。図3の工程304では、少なくともT1のSOF信号を特定し、いくつかの実施形態では、T10のSOF信号も特定し、その場合、VICCの応答を有していても良い保存されたIQ波形の部分が、完全に特定される。以下で説明するように、プロセス300の工程306(図3)では、T1のSOF信号に続く次のEOF信号を見つけるので、工程304でT10のSOFを特定することは、必ず必要なわけではない。換言すれば、図2Aを参照すると、工程304は、最初に、T1のSOF信号の位置を特定し、次いで、工程306は、T2で終わるEOF信号の位置を特定する。次に、工程308は、VCDから送られる2つのEOF信号の間に入る応答期間を分離する。図2A及び図2Bを参照すると、VICCからの各応答期間は、応答スロットnに位置し、各応答スロットnは、VCDによって生成された2つのEOF信号の間に位置することに留意されたい。工程308は、IQ波形中のスロットnの応答を分離し、これらの領域を、潜在的にVICCの応答を含むものとして特定する。
【0024】
従って、この時点までで、プロセス300、特に工程302~308は、応答が存在する場合には、記憶されたIQ波形内の応答が存在する、記憶されたIQ波形の領域を特定している。次の工程310は、以下を参照して説明するように、VCDの近傍にあるVICCのうちの1つからの応答が存在するか否かを判断する。
【0025】
概して、本開示技術の実施形態は、相互相関プロセスを使用して、VICCの応答を有する可能性のあるIQ波形内の特定された位置が、実際に応答を含むか否かを判断する。
【0026】
図4は、相互相関を使用して応答が存在するかどうかを判断する全体的なプロセス400を示す。プロセス400では、工程302(図3)において試験測定装置102(図1)によって取得され、記憶された波形は、参照番号402として表される。また、VICCからの標準又は基準SOF信号は、参照番号410として図示される。図2A及び図2Bに戻ると、VICCのいずれかからの各応答、即ち、応答1、応答2及び応答3は、明瞭にするために図示していないが、全てが、SOF信号とEOF信号を含む。VICCの応答中におけるSOF及びEOF信号は、上述したVCDによって生成されたSOF及びEOF信号とは異なる信号であっても良い。VCDの信号とVICCの応答の違いの1つは、VICCの応答が848kHzを中心とするサブキャリア信号で伝送されるのに対し、VCDのコマンドは13.56MHzのキャリア信号で伝送されることである。従って、図3の工程310は、工程308で分離された応答期間が、VICCのSOF信号を含むかどうかを判断することによって、VICCの応答が存在するかどうかを判断する。そして、より具体的には、図3の工程310は、SOF信号410と記憶された波形402の修正バージョンとの間の相互相関演算(cross-correlation operation)を実行することによって、VICCの応答が存在するか否かを判断する。相互相関演算及び波形402に加えられる修正の両方については、以下でより詳細に説明する。
【0027】
相互相関処理用の記憶波形402を用意するために、まず、上述したように試験測定装置102によって取り込まれ、記憶された記憶波形を以下のように定義する:

Waveformresponse = Waveformresponse(kT) (数式1)

ここで、Tは、IQ信号のサンプリング・インターバルであり、k=1, 2, ..., n である。
【0028】
次に、記憶波形のDC(直流)成分を、以下の数式2を行うことにより、記憶波形402から除去する。
Waveformwithout DC = Waveformresponse-mode(Waveformresponse) (数式2)
【0029】
記憶波形402から直流成分が除去された後に得られる波形は、参照番号502として図5に表される。
【0030】
次に、基準SOF波形は、次のように定義される。
【0031】
ReferenceWaveformSOF=WaveformSOF(zT) (数式3)

ここで、z={1, …, K} で、K∈SOFのカウント値。
【0032】
概して、相互相関演算とは、2つの時間依存の信号を互いに比較して、それらが互いにどのように相関しているかを調べて、信号間のラグの量を決定するものである。上述したケースでは、相互相関によって比較される2つの波形は、波形502、即ち、直流成分を除去した後の取得波形402と、参照番号610として図6に表されるSOF信号波形である。
【0033】
試験測定装置102(図1)で実行される相互相関コマンドは、次のように表すことができる。

[CorrelatedData, Lag]=corr(Waveformwithout DC, ReferenceWaveformSOF) (数式4)
【0034】
この相互相関演算(cross-correlation operation)の出力は、相互相関関数(cross-correlation function)であると同時に、2つの相関波形間の関連するラグを示す。
【0035】
次に、相互相関演算によって生成された相関データは、以下の演算で正規化されても良い。

CorrelatedDataNormalized=CorrelatedData/max(CorrelatedData) (数式5)
【0036】
次に、この正規化されたデータは、以下に述べる「応答検証工程(response validation operation)」で使用されても良く、これは、相互相関の結果及び相関データを分析して、応答検証比を生成する。そのような応答検証工程の例の1つを以下に示す。

応答検証工程の例

mean_corr_sof = mean(CorrelatedDataNormalized(sof_start:sof_end));
mean_corr_sof_rest = mean(CorrelatedDataNormalized(sof_end:sof_start)
if(max(CorrelatedDataNormalized > 0.8) && (abs(min(CorrelatedDataNormalized)), < 0.4) && mean_corr_sof > 0.3 && mean_corr_sof_rest < 0.25) % calculate valid ratio
val_ratio = abs(max(C21))/abs(min(C21));
end
if(val_ratio > 4)
is_valid =1;
end
【0037】
図3に戻ると、応答検出工程310は、上述した検証工程によって実行されても良く、これは、VCDのコマンドに続く事前定義されたタイム・スロットの中の1つに、VICCの応答が存在するかどうかを判断する。勿論、上述した検証工程は、このような検証の具体例であって、特定の相関係数又は比率が全ての実施形態において用いられる必要はない。しかし、上記工程の例は、有効なVICCの応答が受信されたかどうかを、非常に良く示すと考えられる。
【0038】
VICCの応答の信号強度が不明であるため、保存された波形の高速フーリエ変換は不可能であることに注意することが重要である。また、図1のWCS110のような支配的な13.56MHzのキャリア信号のために、VICCの応答を伝送する848kHz信号の位置を正確に特定して検出する機能の能力が制限される。
【0039】
図3の工程310が、上述した検証手順又はそれらの変形を用いて、試験測定装置102に記憶されたIQ波形の特定の部分にVICC応答が存在すると判断したら、その応答は、工程312においてデコードすることができる。デコード処理の工程は、応答デコーダ105(図1)によって実行されても良く、応答デコーダ105は、マルチ応答検出部104が、記憶波形にVICCの応答が存在すると判断した場合にのみ動作するように指示される。工程310によって実行される応答の実際のデコード処理は、IQ波形自体からデジタル・データを抽出する。いくつかの実施形態では、VCD及びVICCデバイスは、試験測定装置102(図1)によって、BUS信号として表される。
【0040】
工程312で応答がデコードされた後、又は、工程310で応答期間内に応答が存在しないと判断された場合、プロセス310は、工程306にループ・バックして、IQ波形内の次の応答期間を見つける。試験測定装置102(図1)は、大量のデータ記憶を有しても良いので、記憶されたIQ波形は、5~10秒など、数秒に及ぶようにできる。
【0041】
図7は、図1のVCD108などのVCDデバイスのデコードされたデータの表702の例と、やはり図1に図示されたVICC112、114、116などのVICCデバイスのデコードされたデータの表704の例を示す。データ表704内のデコードされたフィールドの1つに、UIDフィールドがあり、これは、特定のVICCデバイスの一意の識別子(unique identifier)である。VICCデバイスのUIDが検出されると、試験測定装置は、デコードされたUIDを使用して、UIDでアドレス指定された特定のVICCデバイスへVCDから送信されたコマンドを特定できる。例えば、図2Bを参照すると、システム100(図1)は、VCDによって送信されたUIDを、上述したデコード・プロセスによってデコードされたUIDと単純に比較することによって、VCDがVICC112に要求を送信していると判断することができる。
【0042】
図8は、例示的な表示スクリーン800を示し、これに、測定され、デコードされたNFC信号に関する情報が、試験測定装置102(図1)のユーザへと提示されても良い。表示画面800は、上述したユーザ・インタフェース154の一部であっても良い。概して、表示画面800は2つのセクションに分割され、周波数領域の信号はセクション802に示される一方、時間領域の信号はセクション804に示される。好ましくは、周波数及び時間領域セクション802、804は、記憶されたIQ信号に対して互いに位置合わせ(アライメント)され、これら領域のいずれかで発生するイベントは、表示画面の両方のセクション802、804に同時に現れる。
【0043】
上述したように、試験システム100の特徴の1つは、応答デコーダ105が、上述した技術を用いてIQ信号からの応答をデコードすることである。図7の表702、704に例示されるような、これらのデコードされた応答は、表示画面上に同時に表示されても良い。例えば、C3(チャンネル3)によって表される信号によって搬送され、デコードされたデータは、表示ボックス810に示されても良いし、そうでなければ、その特定の信号に関連付けられても良い。同様に、表示ボックス812は、C5(チャンネル5)によって表される信号からデコードされたデータを表示しても良い。これに代えて、又は、これに加えて、デコードされたデータを、表示ボックス820に表示し、そのデータがデコードされた元の信号でラベル付けされても良い。また、データは、表示ボックス830に示すこともできる。これらどの表示ボックスも、特徴の1つは、ユーザが、マウスでデータをクリックすることなどによって、特定のデコードされたデータを選択でき、表示画面800は、選択されたデータを含むIQ信号の部分をリフレッシュする。このようにして、ユーザは、関心のある特定の領域をスキップ又は選択して、デコードされたデータを見ることができるのに加えて、このデータがデコードされた元の信号を周波数領域セクション802及び時間領域セクション804で見ることができる。
【0044】
概して、本開示技術の実施形態により、試験システムのユーザは、NFCデバイスからの複数のタグの応答の存在を検出できる。これら複数のタグの応答は、試験システムのRFアンテナが、複数のVICCのような異なるいくつかのNFCリスニング・デバイスに近接しているときに、VCDがインベントリ要求などのコマンドを送信し、試験システムがこのコマンドを捕捉するときに発生する。実施形態は、また、オシロスコープにおけるスペクトル処理を用いて、VCD及びVICCの両方によって送信されたデータ・フレームのデータをデコードする処理を含む。実施形態には、更に、デコードされたデータを、周波数領域内の信号に対応する時間領域信号とともに、位置を合わせて表示する処理があり、これにより、ユーザは、オシロスコープによって測定されたNFC通信を、非常に明確に表示して見ることができる。
【0045】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0046】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0047】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。

実施例
【0048】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0049】
実施例1は、近距離無線通信(NFC)システム用の試験測定システムであって、NFC近傍結合デバイスによって生成された無線キャリア信号を受信すると共に、上記無線キャリア信号に応答して1つ以上の近傍集積回路カードによって生成された負荷変調無線キャリア信号を受信するように構成された無線周波数アンテナと、1つ以上の近傍集積回路カードによって生成された負荷変調無線キャリア信号が、上記無線周波数アンテナによって受信されたかどうかを判断するように構成された応答検出部とを具える。
【0050】
実施例2は、実施例1による試験測定システムであって、上記応答検出部は、上記無線キャリア信号の受信に続く1つ以上の応答時間ウィンドウを分離するように更に構成され、上記応答検出部は、上記1つ以上の応答時間ウィンドウ中に上記アンテナが負荷変調無線キャリア信号を受信したかどうかを判断するように構成される。
【0051】
実施例3は、上記実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記応答検出部は、負荷変調無線キャリア信号を探すために上記1つ以上の応答時間ウィンドウのみを調べるように構成されている。
【0052】
実施例4は、上記実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記応答検出部は、上記1つ以上の応答時間ウィンドウ中に負荷変調無線キャリア信号を受信したかどうかを判断する際に相互相関機能(function:関数)を呼び出す。
【0053】
実施例5は、実施例4による試験測定システムであって、上記相互相関機能は、一対の相互相関信号のうちの一方として、フレーム開始(SOF)信号を用いて相互相関機能を実行することを含む。
【0054】
実施例6は、上記実施例のいずれかによる試験測定システムであって、上記アンテナから受信した無線キャリア信号を捕捉し、捕捉した信号を波形として試験測定システム内に記憶させるよう構成された波形取得システムを更に有する。
【0055】
実施例7は、実施例6による試験測定システムであって、捕捉した信号はIQ波形として保存される。
【0056】
実施例8は、上記実施例のいずれかによる試験測定システムであって、1つ以上の近傍集積回路カードによって生成され、上記アンテナによって受信された任意の負荷変調無線キャリア信号からデータをデコードするように構成されたデコーダと、デコードされたデータを表示するための表示画面とを更に具える。
【0057】
実施例9は、実施例8による試験測定システムであって、上記表示画面は、受信した上記無線キャリア信号を上記表示画面に表示させるように操作される。
【0058】
実施例10は、実施例9による試験測定システムであって、受信した上記無線キャリア信号を表示する処理は、上記無線キャリア信号を周波数領域と時間領域で上記表示画面上に同時に表示する処理を含む。
【0059】
実施例11は、NFCポーリング・デバイスによって送信されたコマンドに続く、近距離無線通信(NFC)リスニング・デバイスによる応答の存在を判断する方法であって、測定デバイスの入力部に取り付けられたRFアンテナによって一連のNFC通信信号を受信する処理と、上記NFCポーリング・デバイスによってコマンドが送信されたことを検出する処理と、NFCプロトコルに従って上記コマンドに続く上記応答の1つ以上の有効期間を分離する処理と、1つ以上の有効期間のみにおいて、上記一連のNFC通信信号中の上記応答を検索する処理とを具える。
【0060】
実施例12は、実施例11による方法であって、上記一連のNFC通信信号をIQ波形として記憶する処理を更に具え、上記応答を検索する処理は、記憶された上記IQ波形を分析する処理を含む。
【0061】
実施例13は、実施例12による方法であって、記憶された上記IQ波形を分析する処理が、記憶された上記IQ波形と特徴的な(signature:固有の特徴、代表的な)波形との間で相互相関機能を実行する処理を含む。
【0062】
実施例14は、実施例13に記載の方法であって、上記特徴的な(signature)波形は、上記NFCリスニング・デバイスによって生成されたフレーム開始(SOF:start-of-frame)信号である。
【0063】
実施例15は、上記実施例の方法のいずれかによる方法であって、上記一連のNFC通信信号において、少なくとも1つの応答を見出す処理と、上記応答中にエンコードされているデータをデコードする処理とを更に具える。
【0064】
実施例16は、実施例15による方法であって、少なくとも2つの応答が見出され、見出された上記応答のそれぞれについてデータをデコードする。
【0065】
実施例17は、実施例15又は16による方法であって、デコードされたデータを表示装置に表示させる処理を更に具える。
【0066】
実施例18は、上記実施例の方法のいずれかによる方法であって、受信した上記一連のNFC通信信号を上記表示装置上に表示させる処理を更に具える。
【0067】
実施例19は、実施例18による方法であって、受信した上記一連のNFC通信信号を上記表示装置に表示させる処理は、受信した上記一連のNFC通信信号を周波数領域と時間領域で同時に表示する処理を含む。
【0068】
上述の説明は、本開示技術の実施形態の例を示すために述べたに過ぎず、限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の本質を組み込んで、開示された実施形態を変形させることができるであろうことから、本発明は、本発明の範囲内の全てを含むと解釈されるべきである。
【0069】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0070】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される全ての特徴と、開示される全ての方法又は処理における全ての工程は、互いに少なくとも一部分が排他的でない限り、任意に組み合わせても良い。特許請求の範囲、要約及び図面を含め、本明細書に開示される特徴の夫々は、特に明記されていない限り、同じ、等価又は類似の目的に寄与する代替の特徴で置き換えても良い。
【0071】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0072】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0073】
100 試験測定システム
102 試験測定装置
104 マルチ応答検出部
105 応答デコーダ
106 NFC対応デバイス
108 近傍結合デバイス(VCD)
109 アンテナ
110 無線キャリア信号(WCS)
112 近傍集積回路カード(VICC)
113 アンテナ
114 近傍集積回路カード(VICC)
115 アンテナ
116 近傍集積回路カード(VICC)
117 アンテナ
120 無線周波数(RF)プローブ(アンテナ)
150 プロセッサ
152 メモリ
154 ユーザ・インタフェース
156 測定ユニット
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】