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特開2024-125290多孔質焼結金属体及び多孔質焼結金属体の調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125290
(43)【公開日】2024-09-18
(54)【発明の名称】多孔質焼結金属体及び多孔質焼結金属体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/08 20060101AFI20240910BHJP
   B22F 1/10 20220101ALI20240910BHJP
   B22F 1/062 20220101ALI20240910BHJP
   B22F 1/06 20220101ALI20240910BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20240910BHJP
   B22F 10/12 20210101ALI20240910BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240910BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240910BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240910BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20240910BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240910BHJP
   C22C 19/05 20060101ALN20240910BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20240910BHJP
   C22C 38/38 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C22C1/08 F
B22F1/10
B22F1/062
B22F1/06
B22F10/14
B22F10/12
B22F10/28
B22F10/38
B33Y10/00
B33Y70/10
B33Y80/00
C22C19/05 Z
C22C38/00 302Z
C22C38/38
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024073330
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2022542916の分割
【原出願日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】62/962,004
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワーク, ヴィレンドラ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック, メーガン
(72)【発明者】
【氏名】ディオン, デヴォン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】グダティ, スバシュ
(72)【発明者】
【氏名】リービー, モントレー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多孔質焼結金属体を形成するための供給原料、及び多孔質焼結金属体を提供する。
【解決手段】供給原料組成物は、50~80体積%の硬化性液体ポリマーバインダー;及び供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子を含む。多孔質焼結金属体は、積層造形法によって形成され、焼結金属粒子を含み、50~80%の範囲の多孔度を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形工程によって多孔質焼結金属体を形成する方法であって、
金属粒子を含有する供給原料を含む層を表面上に形成すること;
層の、20~50体積%の金属粒子を含有する部分において、金属粒子及び固体ポリマーを含む固化供給原料を選択的に形成すること;
固化供給原料を含有する層の上に、金属粒子を含有する供給原料を含む第2の層を形成すること;
第2の層の、20~50体積%の金属粒子を含有する部分において、金属粒子及び固体ポリマーを含む固化供給原料を選択的に形成すること;及び
該部分の金属粒子を焼結して、20~50体積%の金属粒子を含有する多孔質焼結金属体を形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
固化供給原料を形成した後に残っている供給原料から固化供給原料を分離することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属粒子が、2.0グラム/立方センチメートル未満の見かけ密度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
金属粒子が、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
供給原料が、金属粒子及び細孔形成ポリマー粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
層又は第2の層の部分に液体ポリマーバインダーを選択的に適用し、液体ポリマーバインダーを固化させることによって固化供給原料を形成することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
層又は第2の層の部分に電磁エネルギーを選択的に印加し、孔形成ポリマー粒子を溶融させることによって固化供給原料を形成することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
供給原料組成物が、金属粒子及び硬化性液体ポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
層又は第2の層の部分に電磁エネルギーを選択的に印加し、硬化性液体ポリマーを硬化させることによって固化供給原料を形成することをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
供給原料が、少なくとも95重量%の金属粒子を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
層又は第2の層の部分に液体ポリマーバインダーを選択的に適用し、液体ポリマーバインダーの固化を可能にするか又は引き起こすことによって固化供給原料を形成することをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
固化供給原料の複数の層を含む多層固化供給原料複合体を、
それぞれが、金属粒子を含有する供給原料を含む追加の層を第2の層上に形成すること、
それぞれの追加の層の、20~50体積%の金属粒子を含む部分に、固体ポリマー中の金属粒子を含む固化供給原料を選択的に形成すること、及び、
層の供給原料から多層固体を分離すること
によって形成すること
を含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
多孔質焼結金属体が、三次元管を含む形状を有する環状フィルタ膜である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
管が、管軸方向から見て円形断面を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
管が、管軸方向から見て非円形断面を有する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
多孔質焼結金属体が三次元非管状フィルタ膜である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
供給原料組成物であって、
50~80体積%の硬化性液体ポリマーバインダー;及び
供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子
を含む、供給原料組成物。
【請求項18】
供給原料組成物であって、
固体細孔形成ポリマー粒子、及び
供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子
を含む、供給原料組成物。
【請求項19】
金属粒子が樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見かけ密度を有する、請求項17又は18記載の組成物。
【請求項20】
積層造形法によって形成され、焼結金属粒子を含み、50~80%の範囲の多孔度を有する多孔質焼結金属体。
【請求項21】
粒子が樹枝状粒子である、請求項20記載の多孔質焼結金属体。
【請求項22】
粒子が繊維状粒子である、請求項20記載の多孔質焼結金属体。
【請求項23】
光学顕微鏡を使用して視認可能な多層構造を有する、請求項20から22のいずれか一項に記載の多孔質焼結金属体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載される発明は、多孔質焼結金属体、並びに積層造形法によって多孔質焼結金属体を形成するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質焼結体は、エレクトロニクス及び半導体製造産業、並びに加工のために高純度材料を必要とする他の産業で使用される材料の濾過を含む、様々な産業用途で使用される。例えば、半導体及びマイクロエレクトロニクス産業では、流体から粒子状物質を除去して製造プロセスへの粒子状物質の移入を防止するために、インラインフィルタが頻繁に使用される。流体は、気体又は液体の形態であってもよい。
【0003】
現在、多孔質焼結金属体を商業的に調製する一般的な方法は、多孔質体の中間体(製造過程中)形態を手動で移動及びハンドリングすることを必要とする形成及び焼結工程を含む。これらの工程は労働集約的である。さらに、本体は脆く、形成工程は不正確な可能性がある。これらの特徴により、方法は、実質的な無駄、望ましくない低効率、及び望ましくない高コストになりやすい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、多孔質焼結金属体を形成するための新規かつ発明的な技術及び組成物を提供する。本発明の方法は、現在の技術と同等の非効率性及びコスト損失を負わないが、労働集約的で、精度が低く、潜在的に可変性である手動工程を、高度に複雑な形状の部品を形成することができるという利点も有する、より正確で、労働集約的でない積層造形技術に置き換える。
【0005】
記載されるプロセスは、他のタイプの金属構造体を調製するための現在及び以前の積層造形技術と比較して、新規かつ発明的であると考えられる。金属部品を調製するための以前の積層造形法は、低い多孔度を有する金属体端部、例えば10%未満の多孔度を有する固体金属体を製造するように設計されている。対照的に、本発明は、具体的には、実質的な、又は高い多孔度、例えば少なくとも50%の多孔度の金属体を製造するように設計され、意図されている。例示的なプロセスは、50~80%の範囲の多孔度を有する完成多孔質焼結金属体を製造することができる。この方法で首尾よく加工を行うために、焼結多孔質体を形成するために使用される粒子は、粒子の形態(例えば、形状)の関数となり得る、低い「相対見かけ密度」を示すように選択され得ることが判明した。
【0006】
一態様では、本発明は、積層造形工程により多孔質焼結金属体を形成する方法に関する。方法は、金属粒子を含有する供給原料を含む層を表面上に形成すること;層の、20~50体積%の金属粒子を含有する部分において、金属粒子及び固体ポリマーを含む固化供給原料を選択的に形成すること;固化供給原料を含有する層の上に、金属粒子を含有する供給原料を含む第2の層を形成すること;第2の層の、20~50体積%の金属粒子を含有する部分において、金属粒子及び固体ポリマーを含む固化供給原料を選択的に形成すること;及びその部分の金属粒子を焼結して、20~50体積%の金属粒子を含有する多孔質焼結金属体を形成することを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、50~80体積%の硬化性液体ポリマーバインダー;及び供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子を含有する供給原料に関する。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、固体細孔形成ポリマー粒子、及び供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子を含有する供給原料に関する。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、積層造形法によって形成され、焼結金属粒子を含有し、50~80%の範囲の多孔度を有する多孔質焼結金属体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成する記載された方法の例示的な工程を示す。
図1B】積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成する記載された方法の例示的な工程を示す。
図2A】積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成する記載された方法の例示的な工程を示す。
図2B】積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成する記載された方法の例示的な工程を示す。
図3A】積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成する記載された方法の例示的な工程を示す。
図3B】積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成する記載された方法の例示的な工程を示す。
図4A】本明細書に記載される金属粒子の集合体を示す。
図4B】本明細書に記載される金属粒子の集合体を示す。
図4C】本明細書に記載される金属粒子の集合体を示す。
図4D】本明細書に記載される金属粒子の集合体を示す。
図5A】本明細書に記載の積層造形技術によって形成することができる例示的な焼結多孔質体の様々な形状を示す。
図5B】本明細書に記載の積層造形技術によって形成することができる例示的な焼結多孔質体の様々な形状を示す。
図5C】本明細書に記載の積層造形技術によって形成することができる例示的な焼結多孔質体の様々な形状を示す。
図5D】本明細書に記載の積層造形技術によって形成することができる例示的な焼結多孔質体の様々な形状を示す。
図6A】本明細書に記載の積層造形技術によって形成することができる例示的な焼結多孔質体を示す。
図6B】本明細書に記載の積層造形技術によって形成することができる例示的な焼結多孔質体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明に従って、多孔質焼結金属体(フィルタ膜として有用な多孔質焼結膜を含むが、これに限定されない)は、一般に「三次元印刷」(「3D印刷」)技術と呼ばれるものを含む、積層造形法によって調製される。多様な積層造形技術が知られている。ほんの数例を挙げると、いくつかの具体的な種類は、「バインダージェット印刷」、「ステレオリソグラフィ」、及び「選択的レーザー焼結」と呼ばれる。本明細書の方法及び組成物を、これらの3つの例示的な種類に関して説明する。しかしながら、さらに、記載された方法及び組成物は、特定の「バインダージェット印刷」、「ステレオリソグラフィ」、及び「選択的レーザー焼結」の例に加えて、他の積層造形技術に一般に有用であると理解される。
【0012】
記載された方法は、固体ポリマー中に分散した金属粒子を含有する固化供給原料の複数の層を個別かつ順次形成する積層工程を含む。一連の積層工程を使用して、固化供給原料の複数の層は、各層が別々に形成された、固化供給原料の複数の層から作られた多層複合体へと形成される。多層複合体は、分散され、固体ポリマーによって所定の位置に保持された金属粒子を含む。場合により多層複合体をさらに加工して、固体ポリマーを硬化又はさらに硬くすることができる。任意の望ましい順序で、又は単一の工程で、固体ポリマーを金属粒子から除去することができ、金属粒子を焼結温度での焼結工程によって加工して、金属粒子に相互結合された多孔質金属粒子マトリックス、すなわち多孔質焼結金属体を形成させることができる。得られた多孔質焼結金属体は、融合し、それによって相互結合された金属粒子の固体(例えば、剛性又は半剛性)マトリックスを含む(又はそれからなる、又は本質的にそれからなる)。マトリックスは多孔質(例えば、高度に多孔質)であり、マトリックスの粒子は焼結工程中に隣接する表面で互いに結合される。
【0013】
多孔質焼結金属体は、特に積層造形技術によって調製された以前の金属構造体と比較して、高い多孔度を有することができる。例示的な多孔質焼結金属体は、非常に高純度の流体(例えば、気体又は液体)、例えば電子デバイス、マイクロ電子デバイス、又は半導体材料を製造するために使用される流体から粒子又は他の夾雑物を除去するためのフィルタとして使用される金属体に有効な多孔度を有するように調製することができる。例示的な多孔度は、少なくとも50%、例えば、50体積%~60、70、75、80、又は85体積%まで、又はそれ以上の範囲であり得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、及び多孔質体の当該技術分野では、多孔質焼結金属体の「多孔度」(「空隙比率」と呼ばれることもある)は、本体の総体積のパーセントとしての本体内の空隙(すなわち、「空」)空間の尺度であり、本体の総体積に対する本体の空隙の体積の比率として計算される。0%の多孔度を有する本体は、完全に固体である。
【0015】
本明細書の多孔質体又はその前駆体(例えば、一連の積層造形工程中に存在する「固化供給原料」)の関連する測定値は、組成物又は構造体中の金属粒子の体積による量である。構造体又は組成物の体積当たりの金属粒子の量は、組成物又は構造物体の総体積当たりの組成物又は構造体中の金属粒子の体積%である。組成物又は構造体の総体積の金属粒子を含有しない部分は、別の材料、例えば積層造形工程中に使用されるポリマー(例えば、供給原料のポリマー又はバインダー)を任意の形態(例えば、固体、液体、硬化、未硬化)で含有してもよい(又は含有しなくてもよい)。完成した多孔質焼結金属体(多孔質焼結金属体の表面に残留物が残っていないと仮定)について、焼結体の多孔度(パーセント)に焼結体の金属粒子の体積パーセントを加えた値は、100(パーセント)である。
【0016】
多孔質体は、任意の有用な形態及び形状、例えば平坦なシートの形態を有し得る膜の形態、例えば実質的に平面であり、本質的に二次元の(非常に薄い厚さを有する)単一片の平坦なシート又は膜であり得る。しかしながら、積層造形技術を多孔質焼結金属体の形成に適用して、多孔質体を調製するための以前の方法を使用すると不可能であった、極めて広範囲の新しい可能な形状及び形態を可能にすることができる。
【0017】
積層造形を使用して、ほぼ全ての二次元又は三次元形状を形成することができる。多孔質金属体は、従来のように、考えられるほぼ全ての二次元又は三次元形状を有する単一の一体構造から作製され得る。又は、積層造形技術を使用することにより、多孔質金属体は、ここで複数の断片、任意の所望の形状のものを含むことができ、それらは相互結合し、例えば絡み合い、織られ、巻かれ、螺旋状にされ、連結され、又は折り畳まれている。フィルタ膜としての使用の場合、一般的な形状は、以下を含む:湾曲した、又は丸みを帯びたプレート又は「カップ」;環、例えば管の軸に沿って見ると円形又は丸い断面を有する管、例えば円筒又は円筒状の管;任意の断面を有する管であり、1つの端部が開き、1つの端部が閉まっている「閉鎖円筒」;断面が非円形の形状を有する管(円筒又は閉鎖円筒)、例えば角度、角、又はひだ状パターン(多点星形、又は円形の「ジグザグ」パターン)を含む形状。
【0018】
フィルタ(任意の形状)として使用するための多孔質焼結金属体は、典型的には、2つの対向する主表面と、濾過工程中に流体が流れる、2つの対向する主表面間の厚さとを含むことができる。フィルタ膜として使用される例示的な金属体の厚さ(例えば、ディスク若しくはカップの厚さ、又は管若しくは円筒の本体壁の厚さ)は、多孔質体をフィルタとして、例えば、所与の圧力降下での十分なフローなどの望ましいフロー特性、及び粒子保持などの濾過特性を、フィルタシステムの一部としてハンドリングされ、設置され、使用されるのに十分な強度及び構造的完全性を有しながらもたらすフィルタとして使用するのに有効な範囲内とすることができる。有用な厚さの例は、0.5~5ミリメートル、例えば1~4ミリメートルの範囲であり得る。
【0019】
本明細書に記載されるように、多孔質焼結金属体は、積層造形技術により形成される。積層造形技術は、様々な構造体、例えば非多孔質ポリマー及び金属又は金属含有構造体の製造における使用が一般に知られている。典型的には、積層造形法によって形成された構造体の多孔度は望ましくない。典型的な目標は、金属部品を含む、積層造形によって製造された完成部品の細孔を回避することである。細孔を回避するという典型的な関心と一致して、本明細書に記載のタイプの多孔質焼結金属体、例えば電子デバイス、マイクロ電子デバイス、又は半導体材料製造に使用するために流体を非常に高純度に濾過するためのフィルタ膜として有用であり得る多孔質焼結金属体を形成するために、何らかの積層造形法が以前に使用されていたとは考えられない。換言すれば、高い多孔度(空隙比率)、例えば50%を超える多孔度を有する多孔質焼結金属体を形成するために積層造形の使用が以前に使用されたとは考えられない。
【0020】
積層造形工程によって多孔質金属体を形成する方法は、一般的に、一連の複数の個々の工程を含むことができ、各工程を使用して多孔質金属体の単一の断面層を形成し、一連の複数の工程は、各工程によって調製された断面層の固化供給原料の多層複合体である多孔質焼結金属体、すなわち多層多孔質焼結金属体を形成するのに有効である。各工程は、金属粒子及び任意選択のポリマーを含有する供給原料を含む単一の供給原料層を表面上に形成すること;及び、その後、供給原料層の選択された部分に、供給原料の金属粒子と、固体ポリマーとを含む固化供給原料を選択的に形成することを含む。多孔質金属体を製造するために、固化供給原料は、好ましくは、体積に基づいて50%未満の金属粒子の量、例えば、固化供給原料の総体積に基づいて20~50%の範囲の金属粒子の量を含むことができる。
【0021】
組成物又は構造体の金属粒子の体積パーセントを計算するために本明細書で使用される場合、組成物又は構造体の総体積は、組成物又は構造物体公称又は「バルク」体積とみなされる。例えば、供給原料層の一部としての、固化供給原料である供給原料層の部分、供給原料層の総体積は、層の総面積に層の厚さを掛けたものであり、供給原料層の固化供給原料の総体積は、供給原料層の固化原料部分の面積に供給原料層の厚さを掛けたものである。
【0022】
供給原料層は、任意の有用なプロセス又は装置によって表面上に形成することができる。粉末供給原料を表面に適用する一例により、ローラーが表面上に一定量の粉末供給原料を、一回の通過で一回の量の粉末供給原料を適用することによって、又は表面上の複数回の通過で複数の別個の量の粉末供給原料を適用することによって、均一に適用する。「供給原料層」は、供給原料を表面に適用し、ローラー又は他の適用方法を使用して所望の有用な深さを有する滑らかで均一な供給原料層を形成する、1つ又は複数の工程によって形成することができる。供給原料層の有用な深さは、供給原料層にバインダーを適用するために使用される印刷ヘッドの分解能に依存し得る。1つの非限定的な例として、100ミクロンの分解能を有する印刷ヘッドは、約10ミクロンの供給原料層で使用されてもよい。
【0023】
固化供給原料の固体ポリマーは、表面に形成された供給原料層に最初に存在するポリマー材料(重合可能なオリゴマー又はモノマー材料を含む)に由来してもよい。代替方法では、固体ポリマーは、代わりに、供給原料層が表面上に形成された後であるが、その供給原料層の上に後続の供給原料層が塗布される前に行われる別個の工程で層に積層されるポリマー材料に由来し得る。
【0024】
金属粒子を含有する供給原料を使用して単一の供給原料層を各々形成し、続いて個々の供給原料層の各々の一部に固化供給原料を選択的に形成する複数の連続工程で、個々の供給原料層の各々に形成された固化供給原料の一部の複合体である多層固化供給原料複合体を製造する。ここで後続の新しい供給原料層(最初の供給原料層以外)は、固化供給原料を含有する先行の供給原料層の上に形成される。多層固化供給原料複合体は、固化供給原料に形成されておらず、その後多層固化供給原料複合体から分離され得る元の供給原料の塊内にある。
【0025】
多層固化供給原料複合体(又は略して「多層複合体」)は、固化供給原料の個別に形成された複数の層を含み、各層は、1つ又は複数の隣接する固化供給原料の層と接触し、固化供給原料の各層は、表面上に堆積された供給原料層の1つを使用して形成された固化供給原料の個別の量である。多層複合体は、金属粒子を含有する供給原料層を表面上に形成する工程;及び供給原料層の領域の一部分に固化供給原料を形成する工程のそれぞれ中に形成された1つの層を含み、固化供給原料は、供給原料層からの金属粒子と、固体(例えば、硬化した、固めた乾燥した、等)ポリマーとを含む。
【0026】
表面上に層を形成するために使用される供給原料は、金属粒子を含有し、場合により(金属粒子と組み合わせて)1つ以上のポリマーを含有してもよい。供給原料の一部としてのポリマーは、様々な機能のいずれか1つ以上を実行するのに有効であり得、様々な有用な形態、例えば、金属粒子の表面上のポリマーコーティングの形態;金属粒子とは分離された固体ポリマー(例えば、熱可塑性)粒子;又は金属粒子が供給原料の一部として分配及び懸濁されている硬化性(例えば、UV光などの電磁照射によって)液体ポリマーのいずれかの形態であり得る。
【0027】
供給原料中のポリマーの可能性ある1つの目的は、供給原料の金属粒子と、表面上に堆積された供給原料層の金属粒子とを分離し、その間に空間をもたらすことである。場合によって「細孔形成ポリマー粒子」と呼ばれるこれらの固体ポリマー粒子は、供給原料の一部として固体形態であり、供給原料内及び供給原料層内の金属粒子を物理的に分離して、供給原料層の金属粒子間に空間をもたらし、供給原料層全体にわたって所望のレベルの間隔及び均一性で金属粒子を分配するように作用することができる。細孔形成ポリマー粒子は、各々の中に分配された金属粒子を含有する原料層又は固化原料層の形成を促進し、金属粒子は、原料層又は固化原料層の体積に対して望ましい低い体積%で存在し、例えば、好ましい原料層及び固化原料層は、体積に基づいて50%未満の金属粒子を含有し得る。金属粒子及びポリマー粒子を含有する粉末の形態の供給原料は、流動助剤、粒子凝集を防止するための分散剤などの微量成分をさらに含んでもよい。
【0028】
細孔形成ポリマー粒子は、任意の有用なポリマー組成物(例えば、熱可塑性であってもよく、供給原料の金属粒子と組み合わせて有用となるサイズであってもよい。細孔形成粒子のサイズは、ミクロンスケールなどで、例えば100ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、10ミクロン、又は20ミクロン未満の平均サイズを有する、例えば1~20ミクロンの範囲内の、供給原料の金属粒子にも有用なサイズの範囲内であり得る。
【0029】
供給原料に含まれ得る別の種類のポリマーは、供給原料の金属粒子の表面上に固体コーティングとして存在するポリマーであり得る。このポリマーは、可逆的に溶融及び固化して、溶融及び固化したポリマーで作られ、供給原料層の金属粒子を結合して、固体ポリマー及び結合された金属粒子で作られた固化供給原料を形成する結合性ポリマーマトリックスを選択的に(すなわち、層の一部の領域上に)生成するのに有用な熱可塑性ポリマーであってもよい。供給原料の金属粒子の表面上のポリマーコーティングのこの種類は、供給原料層の一部で選択的かつ可逆的に溶融及び再硬化されて、隣接する金属粒子間でポリマーとの構造的結合を生成し、本明細書に記載の固化供給原料内の隣接する金属粒子に対する金属粒子の位置を固定することができる。
【0030】
金属粒子を含有する供給原料に含まれ得るさらに別の種類のポリマーは、硬化性液体ポリマー(場合により「バインダー」と呼ばれる)であり得る。供給原料は、硬化性液体ポリマー全体に(好ましくは均一に)分散した金属粒子を含有する液体である。供給原料は、表面上で液体供給原料層へと形成され、次いで供給原料層の全領域に対して選択的に硬化することができる。例えば、層の硬化性液体ポリマーの一部は、液体ポリマーをレーザー、例えばUVレーザーなどからの電磁エネルギーに曝露することによって、選択的に(層の選択された領域で)硬化(固化)させることができる。硬化性液体ポリマーが選択的に供給原料層の一部で硬化すると、金属粒子を取り囲む固体(硬化)ポリマーの塊を含む固化供給原料が生成される。固体ポリマーは、固化供給原料の金属粒子の位置を隣接する金属粒子に対して固定する。硬化性液体ポリマーはまた、供給原料層及び固化供給原料(供給原料層の一部として)の形成を促進し、それは、供給原料層及び固化供給原料内に分配された金属粒子を所望の低い体積%で含有し、例えば、供給原料層又は固化供給原料は、好ましくは、供給原料層又は固化供給原料の総体積にそれぞれ基づいて50%未満の金属粒子を含有し得る。
【0031】
硬化性液体ポリマー(バインダー)は、オリゴマー、ポリマーなどを含有し得る硬化性ポリマー材料を含むことができ、通常、ポリマーの流動又は硬化を可能にするか又は促進する少量の機能性成分又は添加剤をさらに含有することができる。これらは、流動助剤、界面活性剤、乳化剤、粒子凝集を防止するための分散剤、及び電磁(例えば、紫外線)照射に曝露されたらポリマーの硬化を開始するための開始剤のいずれかを含み得る。
【0032】
記載されているような積層造形プロセスは、個々の供給原料層を形成する複数の連続工程を、1枚の層につき1工程で使用し、最初の層を除く各層は、供給原料及び固化供給原料を含む先行の層の上に形成される。連続する各供給原料層は、供給原料層の一部に固化供給原料を形成するように加工される。続いて、後続の層を適用し、加工して、固化供給原料を含む供給原料層の所望の数が形成されるまで固化供給原料を形成する。一連の工程によって形成された個々の層は、各層が固化供給原料である部分を有し、個々の供給原料層それぞれに形成された固化供給原料の個々の層の複合体である多層固化供給原料複合体(又は単に「固化供給原料複合体」)を形成する。多層固化供給原料複合体は、固化供給原料へと加工されていない元の供給原料の量の範囲内及びその間で存在する。
【0033】
一般に積層造形工程を使用して金属粒子から相互結合された金属体及び多孔質焼結金属体を調製する本明細書に基づいて、そのような本体は、非常に広範囲の様々な種類の積層造形工程、方法、技術及び関連するポリマー及び組成物を使用することによって調製され得ることが本明細書では企図され、それには、本明細書に記載されるもの、現在知られ理解されている他のもの、並びに将来開発され、一般的又は具体的に本明細書に記載されるいずれかと一致する有用な工程、方法、組成物及び技術が含まれる。現在知られており、本明細書に従って使用することが企図されている積層造形技術の特定の非限定的な例には、場合によりバインダージェット印刷、ステレオリソグラフィ(SLA)、及び選択的レーザー焼結(SLS)と呼ばれる積層造形技術が含まれる。
【0034】
他の積層造形技術と同様に、バインダージェット印刷(「パウダーベッドとインクジェット」印刷、「バインダージェット3D印刷」、及び「ドロップオンパウダー印刷」などとしても知られている)と呼ばれる技術は、CAD(コンピュータ支援設計)ファイルなどのデジタルデータによって記述された物体を製造するための方法である。また、他の積層造形プロセスと同様に、三次元構造体は、三次元構造体の多数の薄い断面層(本明細書における「層」の「固化供給原料」)から作製される複合体(本明細書における「固体複合体」)を製造するために組み合わされる、一連の個々の工程によって連続して構築される。印刷ヘッドは、本発明によれば金属粒子を含有する供給原料の層を横切って移動する。印刷ヘッドは、供給原料層の上面の一部に液体ポリマー(本明細書における「バインダー」)を選択的に堆積させる。液体ポリマーは、供給原料層に流入し、乾燥、さもなければ固化されて、層の一部に固化供給原料を形成する。固化供給原料は、金属粒子と、適用された液体ポリマーから形成された固化(例えば、乾燥)ポリマーとを含む。
【0035】
供給原料の追加の薄層は、元の(固化していない)供給原料及び固化供給原料を含む完成した層の上面に広がる。
【0036】
このプロセスは繰り返され、各層が先行の層上に形成され、それに接着される。複数の供給原料層が、完成した各層の上に1つずつ連続して堆積されて、固化供給原料の各層を含む多層固化供給原料複合体を形成する。多層固化供給原料複合体の全ての層が堆積された後、固化供給原料を調製するのに使用されなかった元の供給原料を含有する層の領域は、多層複合体から分離される。その後、多層複合体は、高温を使用して液体バインダーを硬化(例えば、架橋)する硬化工程、液体バインダーの硬化ポリマーを除去するばらし工程、及び複合体の金属粒子を互いに融着させて焼結多孔質金属体を形成する焼結工程によって加工することができる。
【0037】
ばらし工程及び焼結工程は、単一の装置(例えば、オーブン又は炉)で実行されてもよく、又は第1の装置でのばらし工程、続く第2の(異なる)装置での焼結工程の順番で実行されてもよい。ばらし工程に使用される温度は、焼結工程に用いられる温度よりも低い。ばらし工程の温度は、通常、摂氏600度未満の範囲、例えば摂氏100~550又は600度の範囲であり得る。特定の多層複合体の任意の特定のばらし工程の選択される温度は、バインダーの化学的性質に依存し得る。焼結のための温度は、一般に、ばらし工程のための温度よりも高くてもよく、例えば、摂氏550度又は600度よりも高くてもよい。
【0038】
例示的な方法及び組成物によれば、バインダージェット印刷法に使用される供給原料は、場合により、好ましくは、金属粒子と共に固体ポリマーを含有してもよい。固体ポリマーは、熱可塑性(室温で固体形態)細孔形成ポリマーであってもよく、任意の量、例えば供給原料総重量に基づいて0.5~15重量%、例えば供給原料総重量に基づいて1~12又は2~10重量%の量で供給原料中に存在してもよく、供給原料の残部(重量基準)は金属粒子である。
【0039】
多孔質焼結金属体を調製するのに有用なバインダージェット印刷積層造形技術(100)の例を図1A及び図1Bに示す。図1Aは、有用なジェット印刷積層造形技術の一連の工程を示し、本方法が異なる形態の供給原料102及び104と共に独立して使用できることを特定する。供給原料102は、固体熱可塑性ポリマー(例えば、別の熱可塑性ポリマーのポリメチルメタクリレート、「PMMA」)細孔形成粒子ビーズ、並びにビーズ及び金属粒子上にコーティングされたポリマー(例えば、溶媒コーティング熱可塑性ポリマー)と組み合わせて金属粒子粉末を含有する粉末である。供給原料104は、ポリマー細孔形成粒子ビーズと組み合わせて金属粒子を含有するが、ビーズ又は金属粒子上のポリマーコーティングを含まない粉末である。図1Bは、関連するプロセス装置及び供給原料を含む技術100の工程を概略的に示す。
【0040】
プロセスは、市販のバインダージェット印刷装置、(供給原料の)熱可塑性ポリマーを使用し、装置の印刷ヘッドから分配された液体ポリマーバインダーを用いて実施することができる。方法の例示的な工程(図1、補足的に番号が付けられた工程を含む)によれば、供給原料(102又は104)は、装置(110)のビルドプレート上に所望の深さの均一な供給原料層として形成される。次の工程(112)において、印刷ヘッドは、液体ポリマーバインダーを最初の層の一部上に選択的に堆積させる。液体ポリマーバインダーは、液体溶媒中にポリマーを含有する。液体ポリマーバインダーが供給原料層に選択的に適用された後、液体ポリマーバインダーに熱を加えてバインダーから溶媒を除去することによって液体ポリマーバインダーを固化し、その部分に固化供給原料を形成することができる。
【0041】
液体バインダーは、供給原料層の金属粒子及び任意選択の細孔形成剤の位置を固定するのに有効な量で供給原料層に適用される。液体バインダーは、粉末供給原料の金属粒子又は細孔形成剤の間の空間を充填する必要はないが、粉末供給原料層の隣接又は近くの粒子を結合又は「架橋」して、粒子の位置を他の粒子に対して固定させる量で適用することができ、供給原料層の空隙空間を必ずしも充填する必要はない。「固化」供給原料は、強化、剛性、又は硬化した、すなわち硬化又は乾燥した(非液体)ポリマーで作られたという意味で「固体」であるが、多孔質であってもよい。
【0042】
固化供給原料へと形成されていない層の部分は、元の粉末供給原料として残る。ビルドプレートが下方に移動され(114)、最初の層及び最初の固化供給原料の上に第2の均一な層として供給原料の第2の層が形成される(116)。次いで、印刷ヘッドは、第2の量の液体ポリマーバインダーを第2の層の部分に選択的に堆積させ(118)、第2の量の液体ポリマーバインダーは、熱を使用して溶媒を除去し、乾燥(固化)ポリマーバインダーを形成することによって固化され、第2の層から固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない第2の層の部分は、元の粉末供給原料として残る。工程114,116及び118を繰り返して(120)、元の粉末供給原料(102又は104)に囲まれた完成多層固化供給原料複合体(「最終部品」)を形成する。多層固化供給原料複合体は、形成された各層の固化供給原料を含む本体であり、固化(固体)ポリマーバインダー中に分散した金属粒子で構成される。多層固化供給原料複合体を、任意選択的に周囲の元の粉末供給原料の存在下で、加熱して、液体ポリマーバインダーを架橋及び硬化させてもよい(122)。元の(固まっていない)粉末供給原料(102又は104)を除去し、多層複合体から分離することができる(124)。多層複合体を、固化バインダーを除去する(ばらす)のに有効な焼結温度まで加熱するための炉に移動させ(126)、多層複合体固体の金属粒子を融合させて、所望の最終密度を有する最終多孔質焼結金属体を形成する(128)ことができる。
【0043】
図1Bを参照すると、プロセスは、市販のバインダージェット印刷装置(130)、本明細書に記載される供給原料(132)、及び装置(130)の印刷ヘッド(136)から分配される液体ポリマーバインダー(133)を用いて実施することができる。本方法の例示的な工程によれば、供給原料(132)は、装置(130)のビルドプレート(138)の上に均一な供給原料層(134)として形成される。供給原料層(134)は、ローラー又は他の水平化デバイスを使用して、所望の深さの供給原料(132)を均一に形成及び分配するために1回又は複数回の通過を使用して形成することができる。印刷ヘッド(136)は、液体バインダー(133)を最初の層(134)の一部に選択的に堆積させる。液体ポリマーバインダー(133)は、熱による乾燥によって固化されてバインダーの溶媒をエバポレートさせ、その部分に固体ポリマーを含む最初の固化供給原料(140)を形成する。固化供給原料(140)へと形成されていない供給原料層134の部分は、元の粉末供給原料(132)として残る。ビルドプレート(136)が下方に移動され(114)、最初の層(134)及び最初の固化供給原料(140)の上に第2、又は後続の供給原料層(142)が形成される。次いで、印刷ヘッド(136)は、第2の量の液体ポリマーバインダー(133)を第2の層(142)の部分に選択的に堆積させ、第2の量の液体ポリマーバインダー(133)は固化して、第2の層から固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない第2の層の部分は、元の粉末供給原料として残る。この、先行する層の上に供給原料層を適用する工程と、新しい供給原料層にバインダーを適用して新しい供給原料層の固化供給原料を生成する工程とのシーケンスを繰り返して(150)、元の粉末供給原料(132)に囲まれた完成多層固化供給原料複合体(「最終部品」)(152)を形成する。多層固化供給原料複合体(152)は、形成された各層の固化供給原料を含む本体であり、固化(固体)ポリマーバインダー中に分散した供給原料からの金属粒子で構成される。
【0044】
多層固化供給原料複合体を、任意選択的に周囲の元の粉末供給原料の(132)存在下で、加熱して、液体ポリマーバインダーを硬化させてもよい(122)。
【0045】
元の(固まっていない)粉末供給原料(132)を除去し、多層複合体(152)から分離することができる。多層複合体(152)を、多層複合体(152)から固化バインダーを除去する(ばらす)のに有効な焼結温度まで加熱するための炉に移動させ、多層複合体(152)の金属粒子を融合させて最終多孔質焼結金属体(160)を形成することができる。
【0046】
ステレオリソグラフィ(SLA)と呼ばれる技術は、積層造形技術の変形であり、ここで理解されるように、かつ本明細書に記載されるように、多孔質焼結金属体を交互積層法で、光が選択的に液体供給原料の層の化学モノマー及びオリゴマー(まとめて「ポリマー」又は「液体ポリマーバインダー」と呼ばれる)を一緒に架橋及び固化させて、供給原料層の固化供給原料の硬化したポリマー反応生成物(「固体ポリマー」)を形成する光化学プロセスを使用して形成するために使用することができる。液体ポリマーバインダーは、紫外線(UV)光などの電磁照射への曝露によって選択的に硬化することができる。供給原料は液体形態であり、金属粒子と組み合わせて硬化性液体ポリマー(「液体ポリマーバインダー」)を含有する。
【0047】
製造(「印刷」)される部品は、より大きな三次元構造の多数の薄い断面(本明細書における「層」の「固化供給原料」)で作られた複合体(本明細書における「固体複合体」)を製造する一連の工程によって構築される。電磁照射源(例えば、レーザー)は、本発明によれば、金属粒子と、電磁照射への曝露で化学的に硬化することによって固化することができる液体ポリマーバインダーとを含有する液体供給原料の層の一部の上に、電磁照射を選択的に与える。レーザーは、層の表面で液体供給原料の層の一部を選択的に照射する。電磁照射は、液体ポリマーバインダーを化学反応によって固化(すなわち、硬化)させて、金属粒子及び固化(硬化)ポリマーを含む固化供給原料を形成する。
【0048】
供給原料の追加の薄層が、固化供給原料を含む完成した層の上面上に広げられ、このプロセスが繰り返され、先行層の上面上に複数の層が形成されてそこに付着する。複数の層が、完成した各層の上に1つずつ連続して堆積されて、固化供給原料の各層の複合体である多層固化供給原料複合体を形成する。多層固化供給原料複合体の全ての層が形成された後、固化供給原料を調製するのに使用されなかった元の液体供給原料を含有する層の部分は、多層固化供給原料複合体から分離される。その後多層固化供給原料複合体を、固化(硬化)ポリマーを金属粒子から除去すること(すなわち、「ばらすこと」)、及び焼結工程によって加工して、多層複合体の金属粒子を互いに融合させて多孔質焼結金属体を形成することができる。これらのばらし工程及び焼結工程は、単一の装置(オーブン又は炉)又は2つの別々の装置を使用して実行することができる。
【0049】
本明細書に記載される多孔質焼結金属体を調製するのに有用なステレオリソグラフィ積層造形技術(200)の一例を図2Aに示す。供給原料202は、液体硬化性ポリマーバインダーと組み合わせて金属粒子を含有する液体である。
【0050】
このプロセスは、市販のステレオリソグラフィ積層造形装置及び液体ポリマーバインダーを使用して実施することができる。例示的な方法の例示的な工程によれば(図2Aに示すとおり、補足的に番号付けされた工程)、SLA積層造形装置によって含有された液体供給原料(202)は、装置のビルドプレート上に均一な層として形成される(204,206)。次の工程(208)において、電磁照射源(例えば、UV(紫外線)レーザー)は、この最初の層の一部に、供給原料の液体ポリマーバインダーを化学的に硬化させて固化させる波長の照射を選択的に照射する。固化液体ポリマーバインダーは、照射部分において固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない層の部分は、元の液体供給原料として残る。ビルドプレートが下方に移動され(210)、最初の供給原料層上及び最初の供給原料層の固化供給原料上の第2の均一な層として、液体供給原料の第2の層が形成される(212)。次いで、電磁照射源は、第2の層の一部を選択的に照射して(214)、液体供給原料の第2の層の一部を固化(硬化)させて、第2の層の一部に固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない第2の層の部分は、元の液体供給原料として残る。工程212,214及び216を繰り返して(218)、元の液体供給原料(202)に囲まれた完成多層固化供給原料複合体(「最終部品」)を形成する。多層固化供給原料複合体は、形成された各層の固化供給原料を含む本体であり、液体供給原料の固化(固体)ポリマーバインダー中に分散した金属粒子で構成される。元の液体供給原料(202)を除去し、多層複合体から分離することができる(218)。多層複合体を、固化バインダーを除去する(ばらす)のに有効な焼結温度まで加熱するための炉に移動させ(220)、多層複合体固体の金属粒子を融合させて、所望の最終密度を有する最終多孔質焼結金属体を形成する(222)ことができる。
【0051】
図2Bを参照すると、例示的なプロセスは、市販のSLA装置(230)を使用し、本明細書による液体供給原料(232)を使用して実行することができる。本方法の例示的な工程によれば、液体供給原料(232)は、装置(230)のビルドプレート(238)の上に均一な供給原料層(234)として形成される。レーザー(236)が、最初の層(234)の一部に電磁照射(233)を与えて、その部分に最初の固化供給原料(240)を形成する。固化供給原料(240)へと形成されていない供給原料層(234)の部分は、元の液体供給原料(232)として残る。ビルドプレート(238)が下方に移動され(214)、最初の層(234)及び最初の固化供給原料(240)の上に第2、又は後続の液体供給原料層(242)が形成される。次いでレーザー(236)が、第2の層(242)の一部に電磁照射(233)を選択的に与えて、第2の層から固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない第2の層の部分は、元の液体供給原料として残る。シーケンスを繰り返して(250)、元の液体供給原料(232)に囲まれた完成多層固化供給原料複合体(「最終部品」)(252)を形成する。多層固化供給原料複合体(252)は、形成された各層の固化供給原料を含む本体であり、供給原料の固化した(固体)硬化ポリマー中に分散した供給原料からの金属粒子で構成される。
【0052】
元の液体供給原料(232)を除去し、多層複合体(252)から分離することができる。多層複合材(252)は、ばらし温度、次いで焼結温度に加熱するために炉に移動することができる。ばらし温度は、多層複合体(252)から固化ポリマーを除去する(ばらす)のに有効である。通常、ばらし温度よりも高い焼結温度は、多層複合材(252)の金属粒子を融合させて最終多孔質焼結金属体(260)を形成する。
【0053】
選択的レーザー焼結SLSと呼ばれる技術は、本明細書に記載されるように使用して、レーザーを電源として使用する交互積層法で多孔質焼結金属体を形成することができる、デジタル三次元モデルに従って選択された供給原料層の部分にレーザーを自動的に導くことによって粉末供給原料材料の金属粒子を所定の位置に固定し、任意選択的に焼結するための積層造形技術の一形態である。粉末供給原料は、熱可塑性ポリマー(バインダー)と組み合わせて金属粒子を含有する。レーザーは熱可塑性ポリマーを溶融させ、ポリマーが再固化されて供給原料の金属粒子を互いに結合し、固体供給原料を生成することができる。
【0054】
供給原料は、金属粒子と、細孔形成粒子の形態であり得る固体熱可塑性ポリマーとを含有する。製造(「印刷」)される部品は、より大きな三次元構造の多数の薄い断面(本明細書における「層」の「固化供給原料」)で作られた複合体(本明細書における「固体複合体」)を製造する一連の工程によって構築される。レーザーは、供給原料層の一部分上に電磁照射を選択的に与える。電磁照射により、固体熱可塑性ポリマーが溶融し、金属粒子の表面と接触する。熱可塑性ポリマーは再固化して、金属粒子及び固化(再固化)熱可塑性ポリマーを含む固化供給原料を形成することができる。
【0055】
次に、供給原料の追加の薄層が、固化供給原料を含む完成した層の上面上に広げられ、このプロセスが繰り返され、先行層の上面上に複数の層が形成されてそこに付着する。複数の層が、完成した各層の上に1つずつ連続して堆積されて、固化供給原料の各層の複合体である多層固化供給原料複合体を形成する。多層固化供給原料複合体の全ての層が形成された後、固化供給原料を調製するのに使用されなかった元の粉末供給原料を含有する層の部分は、多層固化供給原料複合体から分離される。その後多層固化供給原料複合体を、任意の順序で固化(硬化)ポリマーを金属粒子から除去すること、及び焼結工程によって加工して、多層複合体の金属粒子を互いに融合させて多孔質焼結金属体を形成することができる。
【0056】
本明細書に記載される多孔質焼結金属体を調製するのに有用な選択的レーザー焼結積層造形技術(300)の一例を図3Aに示す。供給原料302は、粒子表面にコーティングされた熱可塑性ポリマーを有する金属粒子を含む粉末である。
【0057】
このプロセスは、市販の選択的レーザー焼結積層造形装置、及び熱可塑性ポリマーでコーティングされた本明細書に記載の金属粒子を含む供給原料を使用して実施することができる。例示的な方法の例示的な工程によれば(図3Aに示すとおり、補足的に番号付けされた工程)、SLS積層造形装置によって含有された粉末供給原料(302)は、装置のビルドプレート上に均一な層として形成される(304,306)。次の工程(308)において、電磁照射源(例えば、CO2レーザー、YAGレーザー、ディスクレーザー、ファイバーレーザーなど)は、この最初の層の一部を、供給原料の熱可塑性ポリマーを溶融し、任意選択的に、放射線に曝露される金属粒子のある程度の融合を引き起こし得る波長の放射線に選択的に曝露する。熱可塑性ポリマーは、電磁照射に曝露された部分において再固化し、(固体ポリマー及び金属粒子の)固化供給原料を形成することが可能になる。固化供給原料へと形成されていない層の部分は、元の粉末供給原料として残る。ビルドプレートが下方に移動され(310)、最初の供給原料層上及び最初の供給原料層の固化供給原料上の第2の均一な層として、供給原料の第2の層が形成される(312)。次いで、電磁照射源は、第2の層の一部を選択的に照射して(314)、第2の供給原料層の一部を固化(硬化)させて、第2の層の一部に固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない第2の層の部分は、元の粉末液体供給原料として残る。工程310,312及び314を繰り返して(316)、元の粉末供給原料(302)に囲まれた完成多層固化供給原料複合体(「最終部品」)を形成する。多層固化供給原料複合体は、形成された各層の固化供給原料を含む本体であり、粉末供給原料の固化(固体)ポリマーバインダー中に分散した金属粒子で構成される。元の供給原料(302)を除去し、多層複合体(318)から分離することができる。多層複合体を、ばらし温度、次いで焼結温度まで加熱するための炉に移動させて(320)、固化バインダーを金属粒子から除去し(ばらす)、次いで多層複合体固体の金属粒子を融合させて、所望の最終密度を有する最終多孔質焼結金属体を形成する(322)ことができる。
【0058】
図3Bを参照すると、例示的なプロセスは、市販のSLS装置(230)を使用し、本明細書に記載される粉末供給原料(332)を用いて実行することができる。本方法の例示的な工程によれば、粉末供給原料(332)は、ローラー又は他の水平化デバイスの1回以上の通過を使用して、装置(330)のビルドプレート(336)の上に均一な供給原料層(334)として形成される。レーザー(338)が、最初の層(334)の一部に電磁照射(339)を与えて、その部分に最初の固化供給原料(340)を形成する。固化供給原料(340)へと形成されていない供給原料層(334)の部分は、元の粉末供給原料(332)として残る。ビルドプレート(336)が下方に移動され(314)、最初の層(332)及び最初の固化供給原料(340)の上に第2、又は後続の粉末供給原料層(342)が形成される。次いでレーザー(338)が、第2の層(342)の一部に電磁照射(339)を選択的に与えて、第2の層から固化供給原料を形成する。固化供給原料へと形成されていない第2の層の部分は、元の粉末供給原料として残る。シーケンスを繰り返して(350)、元の粉末供給原料(332)に囲まれた完成多層固化供給原料複合体(「最終部品」)(352)を形成する。多層固化供給原料複合体(352)は、形成された各層の固化供給原料を含む本体であり、供給原料の固化した(固体)熱可塑性ポリマー中に分散した供給原料からの金属粒子で構成される。
【0059】
元の粉末供給原料(332)を除去し、多層複合体(352)から分離することができる。多層複合体(352)を、ばらし温度、次いで焼結温度まで加熱するための炉に移動させて、固化ポリマーを多層複合体(352)の金属粒子から除去し(ばらす)、多層複合体(352)の金属粒子を融合させて、所望の最終密度を有する最終多孔質焼結金属体(360)を形成することができる。
【0060】
これらのプロセスのそれぞれの例示的な工程は、多層固化原料複合体から固体ポリマーを除去する工程(「ばらし」工程)、及び多層固化原料複合体の金属粒子を焼結する工程を含むことができる。これらの2つの工程は、別々に、又は好ましくは多層固化供給原料複合体を加熱する単一の工程で行うことができる。
【0061】
有用な、又は好ましいばらし工程は、金属粒子から固体ポリマーを除去する。ばらし工程は、多層複合体を、多層複合体から固体ポリマーを除去するとともに、他のあらゆる残留非金属材料を除去するのに十分な高温に曝露する。ばらし工程後、複合体の金属粒子は、実質的に金属粒子のみを含む実質的に残留物のない多孔質体として残る。例えば、ばらし工程の後(さらに、焼結工程の後)、多孔質体は、1、0.5、0.1、0.05、又は0.01重量パーセント以下のバインダー、抗酸化剤、界面活性剤、又は供給原料若しくはポリマーバインダーの他の成分、その他の任意の成分を含むことができ、すなわち、少なくとも99、99.5、99.9、99.95、又は99.99重量パーセントの金属粒子を含むことができる。ばらし工程の後、本体は、未融合、未焼結状態の金属粒子で作られるが、自己支持性である。
【0062】
同じ加熱工程は、金属粒子を融合させ、結合させる焼結工程であってもよい。本明細書で使用される「焼結」という用語は、金属フィルタ膜として使用され得るタイプの多孔質焼結金属膜など、多孔質焼結金属構造体の当該技術分野で使用される場合に、この用語に与えられる意味と一致する意味を有する。これと一致して、用語「焼結」は、粒子の表面が、粒子表面間の物理的(機械的)結合によって粒子表面を互いに融合させるが、粒子を溶融させない(すなわち、いずれの金属材料もその溶融温度に達しない)温度に達するように、非酸化性環境において粒子に(すなわち、多孔質体に)熱を加えることによって、1つ以上の異なる種類(サイズ、組成、形状など)の小さな焼結性粒子の集合体を互いに結合させる(例えば、「固相溶接」又は「融合」)プロセスを指すために使用することができる。
【0063】
焼結工程は、本体の金属粒子の焼結点より高いが、金属粒子の溶融温度より低い温度で行われる。本明細書で使用される場合、金属粒子の「焼結点」は、粒子の材料が焼結することができる温度、すなわち、金属粒子が焼結される本体の他の金属粒子に接着し始め、例えば大気圧などの特定の圧力で別の粒子に融合することができる温度である。材料(例えば、金属)の焼結点は、通常、材料の溶融温度より低く、金属が液体になる温度を意味する。
【0064】
したがって、焼結及びばらし工程を実施するための有用な温度は、ばらし工程については固体ポリマーの組成、及び金属粒子の組成及び粒子の焼結点、並びに焼結される粒子のサイズ、例えば粒子が「粗い」(より大きい)か又は微細(より小さい)かどうかに依存し得る。ニッケルの場合、焼結点は摂氏550度~750度の範囲内であってよく、焼結工程は摂氏550度~800度の範囲内の温度で実行することができる。ニッケル及びステンレス鋼合金の場合、焼結点は摂氏950度~1250度の範囲内であってよく、焼結工程は摂氏950度~1300度の範囲内の温度で実行することができる。焼結工程は、炉又はオーブン内で、焼結されている本体の金属粒子と反応しないか、そうでなければ有害な影響を与えない非酸化性雰囲気中、例えば真空中又は濃縮若しくは純粋な水素、濃縮若しくは純粋な不活性ガス、又は濃縮若しくは純粋な水素と不活性ガスとの組み合わせの雰囲気中で行うことができる。
【0065】
積層造形技術によって形成された多孔質体は、焼結工程中に粒子を相互結合させる積層造形技術の工程によって配置された金属粒子を使用して製造される。粒子は、粒子を比較的低い体積量で固化供給原料の一部として存在させるが、それでも焼結時に相互結合させる、形態(形状を含む)及び密度特性を含む物理的特性を示すように選択される。
【0066】
具体的には、積層造形技術によって多孔質焼結金属体を形成するための好ましい金属粒子は、低い「相対見かけ密度」を有することができる。低い「相対見かけ密度」では、粒子は、記載される固化供給原料内に低い体積パーセンテージ、例えば総体積固化供給原料基づいて50体積%未満の金属粒子の量で存在することができるが、それでもなお焼結によって加工されて自己支持性多孔質焼結金属体を形成することができる。低い「相対見かけ密度」では、金属粒子は、固化供給原料の体積の低いパーセンテージで存在する場合であっても、焼結によって互いに効果的に融合して、有用な多孔質焼結金属体、例えば、融合した相互結合粒子で作られた「自己支持性」の多孔質体、一例として、本明細書に記載のフィルタ膜として有用であるものを形成することができる。
【0067】
金属粒子は、集合体として、サイズ、形状、及び密度を含む物理的特性を有し、それによって、金属粒子は供給原料層及び固化供給原料内に比較的低い体積量で分配され得るが、依然として有用な(例えば、相互結合され、自己支持性である)多孔質焼結金属体を形成するための積層造形工程及び焼結によって加工可能である。得られる焼結体が比較的高い多孔度を示すように、固化供給原料中の金属粒子の体積量が少ないことが望ましく、その結果、焼結体を多孔質フィルタ膜として有効に使用することができる。しかし、固化供給原料に含まれる金属粒子は、(多孔度の高い焼結体を製造するために)固化供給原料中の体積量が低くても、焼結時に効果的に融合及び相互結合されるように、十分な量の粒子の隣接表面の間に十分な近接度を有さなければならず、その結果、焼結体を形成する金属粒子は高度に相互結合され、したがって多孔質焼結金属体は自己支持性である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「自己支持性」である本体は、所与の形態又は形状で、崩壊することなく、好ましくはわずかな程度でのみたるむ、使用中にその自重を支持することができる本体である。自己支持性である本明細書に記載の多孔質焼結金属体は、ポリマーバインダーなどの別の構造物からの支持を必要とせずに、ハンドリング、移動、場合によりさらに加工することができる。
【0069】
自己支持性焼結体に関して具体的には、金属粒子の集合体が、焼結時に互いと融合(すなわち、「結合」又は「相互結合」)するのに十分に互いと接近した粒子を十分に高い割合で積層造形工程中に含めば(例えば、供給原料層又は固化供給原料の一部として接触している、又はほぼ接触している表面を有する)、金属粒子の集合体を自己支持性の多孔質焼結金属体に形成することができる。好ましくは、固化供給原料の金属粒子の大部分は、十分に互いと近接して配置され、例えば、少なくとも1つの表面が、少なくとも1つの他の金属粒子の表面と接触するか又はほぼ接触し、その結果、固化供給原料の金属粒子の大部分又は本質的に全て(例えば、粒子の総量の95、99、又は99.9%)が多孔質焼結金属体の融合粒子になる。金属粒子表面間の高度な接触又は近接(ほぼ接触)は、供給原料、供給原料層、固化供給原料中に、及び多層固化供給原料複合体の一部として存在することができる。粒子表面間の高度な接触又は近接はまた、多層固化供給原料複合体の加工中、例えばばらし工程(多層固化供給原料複合体の粒子の表面からポリマーを除去する)中、及び焼結工程中及びその後にも残る。
【0070】
図1A図1B図2A図2B図3A、及び図3Bを参照すると、記載された例示的な積層造形技術は、金属粒子を含む原料の使用を伴う。金属粒子は、例えば粉末としての小粒子の集合体の形態であり得、粒子は、様々な既知の粒子形態、例えば、とりわけ 「凝集粒子」、「樹枝状粒子」又は「繊維状粒子」と呼ばれる個々の金属粒子のいずれかであり得る。
【0071】
金属粒子は、ミクロンスケール(例えば、500ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、10ミクロン未満、又は5ミクロン未満の平均サイズを有する)の小さい、又は比較的小さい粒子を含む、有効な任意のサイズ又はサイズ範囲のものであり得る。
【0072】
任意選択的に、金属粒子粉末は、二峰性サイズ分布を有する粒子の組み合わせを含有してもよい。例示的な粉末は、ミクロンサイズ粒子とナノサイズ粒子との二峰性の組み合わせを含み得る。ナノサイズ粒子をミクロンサイズ粒子と組み合わせて含有する粉末の潜在的な機能及び利点は、焼結による相互結合粒子マトリックスの形成の改善である。ナノサイズ粒子は、より大きな(ミクロンサイズの)粒子を結合する「ネッキング剤」として作用することによって焼結を促進することができる。焼結工程は、ナノサイズ粒子が存在するのでより低い温度で行うことができ、場合によりマイクロ波エネルギーを使用して行われてもよい。
【0073】
本明細書で使用される「金属」という用語は、任意の金属若しくは半金属の化学元素又はこれらの元素の2つ以上の合金を指す。有用、又は好ましい粒子は、とりわけ、ニッケル、ニッケル合金、及びステンレス鋼を含む金属で作製され得る(以下を参照)。
【0074】
金属粒子は、記載される加工の効率を達成し、供給原料に含められ、供給原料層へと形成され、固化供給原料及び多層固化供給原料複合体へと形成され、次いで焼結されて、フィルタ膜として効果的に機能する多孔質焼結金属体を形成することができるように選択することができる。金属粒子のサイズ、形状、及び化学的構成は、これらの目的に有効な任意のものであり得る。いくつかの実施形態では、有用であると特定された本明細書に記載の金属粒子は、サイズ、形状(形態を含む)、及び密度特性に基づいて選択することができる。
【0075】
選択された金属粒子の密度特性は、見かけ密度(a.k.a.バルク密度)及び相対見かけ密度(見かけ密度を理論(又は「粒子」密度)で割ったもの)として説明することができる。粉末形態で測定された、ニッケル、ニッケル合金、又はステンレス鋼で作られた例示的な粒子は、2グラム/立方センチメートル(g/cc)未満、例えば1.8g/cc未満、又は1.5g/cc未満の見かけ(「バルク」)密度を有することができる。他の材料は、より高い密度値(例えば、耐火性金属)又はより低い見かけ密度値(例えば、特定のセラミック材料)を有することができる。知られているように、粉末(粒子の集合体)の見かけ(バルク)密度は、所与の体積の粉末に対する粉末の質量を指し、体積は、粒子の体積並びに粉末形態の粒子間の空間の体積を含む。見かけ(バルク)密度を測定するための方法は周知であり、ASTM B703-17「アーノルドメーターを使用した金属粉末及び関連化合物の見かけ密度の標準試験方法」を含む。
【0076】
粉末の形態の例示的な金属粒子を、上述のような加工を可能にする「相対見かけ密度」有するように選択して、積層造形技術によって多孔質焼結金属体を製造することもできる。本明細書で特定されるように、粒子は、相対見かけ密度に基づいて、粒子が積層造形工程及びその後の焼結によって粒子を首尾よく加工されて、望ましくは高い多孔度を有し、さらに相互結合され、自己支持体を形成する粒子を含む多孔質焼結金属体を製造することができるように選択され得る。本明細書で使用される場合、一般に理解されるように、「相対見かけ密度」という用語は、粉末の理論密度で割った粉末の見かけ密度の比として計算される。粒子の集合体(例えば、粉末)の理論密度は、場合により粒子の「粒子密度」とも呼ばれ、粒子を構成する材料(例えば、金属)の密度、例えば、単一粒子の密度(体積当たりの質量)、又は体積当たりの重量に基づいて計算される粒子の集合体の密度を指し、体積は粒子の体積のみを含んで、粒子間の空間の体積は含まないように計算される。記載される方法に従って有用である例示的な金属粒子は、理論密度の5~35%の範囲の相対見かけ密度を有する粉末の形態であり得る。
【0077】
本明細書によれば、低い「相対見かけ密度」を示す粒子を積層造形工程によって加工して、高い多孔度及びそれに対応して低い固体負荷、すなわち金属粒子の低い体積パーセント、例えば50%未満(すなわち、高い多孔度)を有する多孔質焼結金属体を形成することができることが決定された。低い相対見かけ密度の粒子は、固化供給原料に含まれる場合(固化供給原料中に少量(低い体積パーセント)で存在する場合であっても)、粒子間の空間の量が多く、金属粒子の表面間の接触又は近接を引き起こす度合いが高い物理的形状及びサイズ特性を有する。粒子表面間の接触又は近接の度合いが高いと、空隙空間が多くても、固化供給原料の固体ポリマーを除去することができ、金属粒子を焼結によって加工して、粒子をその表面で互いと十分に融合させて相互結合及び自己支持させ、有用な多孔質焼結膜を形成することができる。
【0078】
比較的低い「相対見かけ密度」は、粒子の物理的サイズ及び形状特性によって直接影響され得る粒子の集合体の特性である。金属で作られた粉末のサイズ及び形状特性は、多様な形状を有する既知の金属粒子で、大きく変動し得る。一般的な粒子形状のいくつかの例としては、球状、円形、角状、フレーク状、円筒状、針状、立方体状、柱状、樹枝状、伸長、及び分岐状と呼ばれるものが挙げられる。他の粒子形状、及び特定の形状を説明するために使用される他の用語も知られている。様々な種類の金属粒子はまた、凝集又は非凝集、又は「繊維状」であってもよい。特定の種類の粒子又はその分枝若しくはフィブリルは、厚さ及び幅寸法の小ささに対して優勢な長さ寸法を有し、高いアスペクト比を有するとして特徴を明らかにすることができる。
【0079】
記載されている積層造形法に有用な金属粒子は、粒子が低い相対見かけ密度を示す、例えば粉末として粒子間に高レベルの空隙空間、例えば低い充填密度を含む粒子の集合体を形成する形状及びサイズ特徴を有する。相対見かけ密度が低い粒子のサイズ及び形状の特徴には、低い充填密度(「充填効率」)をもたらす特徴が含まれる。低充填密度(及び高空隙率)をもたらすことができる粒子の形状特徴には、粒子間にランダムに(非反復)配置された複数のフィブリル又は分枝を含む不規則な(非幾何学的)形状特徴;粒子又は粒子の一部の細長い形状(例えば、高アスペクト比);高表面積;分岐;ねじれた、曲がった、又は湾曲したフィラメント又は分枝;及び、粒子が粉末の一部である場合に粒子の密集を防止し、粒子間に実質的な空隙空間の存在をもたらす同様のものが含まれる。
【0080】
相対見かけ密度が低くなり得る粒子形状の例は、分岐した形状、「樹枝状」と呼ばれる形状、及び「繊維状」と呼ばれる形状等を含む。
【0081】
樹枝状金属粒子は、米国特許第5,814,272号に記載されているような樹枝状形態を有する粒子を含む。そこに提示されるように、「樹枝状」という用語は、フィラメントの他の2つの寸法よりも実質的に大きい1つの寸法をそれぞれ有する1つ以上のフィラメントを含む、異方性の高い不規則な形態を指す。フィラメントは、直線状又は屈曲していてもよく、さらに、分岐状又は非分岐状であってもよく、不規則な表面を有する。樹枝状粒子は、より規則的な形態の粒子と比較した低い充填効率で特徴を明らかにされ、したがって、より規則的な形態の粒子によって形成されるものよりも低い見かけ(バルク)密度の粉末を形成する。樹枝状粒子の例には、図4Aに示すニッケル255粒子、及び図4Cに示す処理されたステンレス鋼粒子が含まれる。
【0082】
樹枝状金属粒子は、粒子が所望の樹枝状形態及び有用な相対見かけ密度を達成するように調製及び加工することができる。記載の密度特性を有する樹枝状金属粒子を製造するのに有用なプロセスの例は、米国特許第5,814,272号に提示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で説明されるように、金属粒子は、粒子を樹枝状に加工することによって、比較的低い「相対見かけ密度」を有するように加工することができる。一般に、効果的な加工方法は、(1)非樹枝状金属粒子を含む粉末を、軽度に焼結した材料を形成するのに適した条件下で加熱する工程;及び(2)軽度に焼結した材料を破壊して、樹枝状金属粒子を含む粉末を形成する工程を含む。
【0083】
「軽度に焼結した材料」という用語は、Randall(Randall in ’’Powder Metallurgy Science,’’ second edition,German,ed.,Metal Powder Federation Industry(1994)、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)によって定義されるように、焼結の初期段階を通して金属粉末粒子の融合を引き起こすように加工された材料を指す。焼結又は短距離拡散焼結の初期段階では、接触した粒子表面で金属粒子間に結合が形成され、粒子とその間近の隣接物との融合のみが生じる。したがって、焼結の初期段階は、機械的強度の低い、脆い構造をもたらす。所与の材料の場合、焼結は、その材料の焼結範囲の下限の温度でこの初期段階を超えてゆっくりと進行する。本明細書の目的のために、「初期段階焼結」という用語は、焼結が初期段階を実質的に超えて進行しない条件下での粉末の焼結を指す。
【0084】
図4Aは、ニッケル255(市販の純粋なニッケル金属粉末の一例)で作られた樹枝状粒子を示す顕微鏡写真である。図4Bは、樹枝状形態を有するように粒子を加工する前のステンレス鋼粒子の顕微鏡写真である。図4Cは、加工して樹枝状にした後の図4Bのステンレス鋼粒子の顕微鏡写真である。
【0085】
低い充填効率及び比較的低い「相対見かけ密度」によって特徴を明らかにされる金属粒子の別の例は、「繊維状」粒子と呼ばれる粒子である。繊維状粒子は、細長く(例えば、「麺状」)、場合により湾曲又は屈曲し、高アスペクト比、例えば少なくとも10:1(長さ:直径)、少なくとも30:1、少なくとも50:1、又は少なくとも75:1又は少なくとも100:1のアスペクト比(長さ対直径の比)を有する。繊維状金属粒子の例としては、図4Dに示すような繊維状ステンレス鋼粒子が挙げられる。
【0086】
非樹枝状及び非繊維状として認識されている、粉末形態の他の種類の粒子は既知であり、焼結による金属体の調製に有用でもある。これらの粒子は、樹枝状粒子又は繊維状粒子と比較して比較的高い充填効率を示し、通常は(樹状粒子又は繊維状粒子と組み合わされずに)低い相対見かけ密度を有さない。これらのタイプの粒子の例には、球状、円形、角状、フレーク状、円筒状、針状、及び立方体と呼ばれる粒子タイプを含む、一般に(実質的に)非分岐の、比較的低いアスペクト比(例えば、5:1未満又は3:1未満又は2:1未満)を有する粒子が含まれる。
【0087】
記載される方法において有用な粒子の集合体は、粉末の形態であり、相対見かけ密度が低く、全てが実質的に同一又は同等のサイズ、形状、及び形態を有する粒子、例えば、全て樹枝状粒子の集合体、又は全て繊維状粒子の集合体を含み得る。あるいは、所望であれば、粒子の集合体は、異なるサイズ、形状、又は形態の特徴を有する2つ以上の異なる種類の金属粒子の組み合わせを含んでもよい。粉末の金属粒子は、例えば、樹枝状粒子と非樹枝状粒子の両方の組み合わせ、又は繊維状粒子と非繊維状粒子の両方の組み合わせなどを含むことができ、組み合わせは、記載されるように、加工されて多孔質焼結金属体及びその前駆体を形成するのに十分な相対見かけ密度を有する。
【0088】
供給原料に使用される金属粒子の集合体は、1つ以上の異なる種類の金属粒子を含むことができる。供給原料に有用な粒子の例には、実質的に又は完全に単一の種類の金属粒子で作られた粒子の集合体、例えば、少なくとも90、95、99、又は99.9重量パーセントの1種類の金属(金属合金を含む)で作られた粒子、例えば鋼粒子(例えば、ステンレス鋼)、ニッケル粒子、ニッケル合金粒子、又は別の金属若しくは金属合金で作られた粒子の集合体が含まれ得る。市販の例には、ニッケル255、「合金22」(Hastelloy(登録商標)C-22)、及び316Lステンレス鋼の名称で販売されているものが含まれる。
【0089】
一部のニッケル粒子は、総重量粒子に基づいて少なくとも99重量%のニッケルを、炭素などの少量以下の不純物と共に含有する。
【0090】
他の粒子は、ニッケル(例えば、45~56重量%)、クロム(例えば、15~30重量%)、及びモリブデン(例えば、8~18重量%)の組み合わせを、鉄、コバルト、タングステン、マンガン、ケイ素、炭素、バナジウム、及び銅などのより少量の金属と共に含むニッケル合金で作られてもよい。一般的にニッケル「合金22」(例えば、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標))と呼ばれるニッケル合金の具体例は、ニッケル(残部56)、クロム(22)、モリブデン(13)、鉄(3)、コバルト(最大2.5)、タングステン(3)、マンガン(最大0.5)、ケイ素(最大0.08)、炭素(最大0.01)、バナジウム(最大0.35)、及び銅(最大0.5)を含む(重量%)。
【0091】
ステンレス鋼合金の例は、ステンレス鋼合金316Lであり、これはクロム(16-18)、ニッケル(10-14)、モリブデン(2-3)、マンガン(最大2.0)、ケイ素(最大0.75)、炭素(最大0.08)、リン(最大0.045)、硫黄(最大0.30)、窒素(最大0.10)、及び鉄(残部)を含むことができる(重量%)。
【0092】
記載される有用かつ好ましい金属粒子は、記載のとおり見かけ密度及び相対見かけ密度を有することができ、特定の金属合金は、密度特性及び密度特性の特徴的な組み合わせを有する。
【0093】
有用又は好ましいステンレス鋼粒子は、0.5~2グラム/立方センチメートル、例えば0.8~1.2グラム/立方センチメートルの範囲の見かけ密度、及び理論密度の5~25、例えば7~20%の範囲の相対見かけ密度を有し得る。
【0094】
有用又は好ましいニッケル粒子は、0.3~1.5グラム/立方センチメートル、例えば0.4~0.8グラム/立方センチメートルの範囲の見かけ密度、及び理論密度の4~17、例えば理論密度の5~9%の範囲の相対見かけ密度を有し得る。
【0095】
高い量(重量%)のニッケル(例えば、45~56重量パーセント)、クロム(例えば、15~30重量%)、及びモリブデン(例えば、8~18重量%)を有するニッケル合金で作られた有用又は好ましい粒子、例えばHastelloy(登録商標)C-22は、見かけ密度が0.5~2グラム/立方センチメートルの範囲、例えば1.2~1.8グラム/立方センチメートルであり、相対見かけ密度が理論密度の5~13%の範囲、例えば理論密度の7~11%であり得る。
【0096】
供給原料、固化供給原料、又はその両方における粒子の体積量は、本明細書に記載の多孔度を有する、本明細書に記載の多孔質焼結金属体を製造するのに有用な量であり得る。例は、総体積基準で、総体積固化供給原料に基づいて20~50体積%の範囲、例えば25~45%であり得る。
【0097】
記載の方法に従って調製された多孔質焼結金属体は、ガス、例えば半導体加工に使用されるガスを濾過するためのフィルタ膜として有用であり得る。多孔質焼結金属体の様々な特徴は、フィルタ膜としての有用性に影響を及ぼすと考えられる。半導体加工に使用するガス状材料の濾過では、ガス状流体は、ほぼ大気圧(例えば、2気圧下)であるか、大気圧より高い、又は大気圧より低い(例えば真空条件)圧力で供給されてもよい。ガス状流体を使用するプロセスは、ナノスケール及びミクロンスケール粒子の非常に高い除去率、例えば、濾過工程の「対数減少値」(LRV)によって評価される、少なくとも3、4、5、7、又は9を必要とし得る。これらのガス状材料を濾過するプロセスはまた、比較的低い流速、例えば、前部フィルタ面積1平方センチメートル当たり50、25、10、5、2、1、又は0.5未満の毎分標準リットル(slpm)で実行されてもよい。本明細書に記載の方法は、これらのような要件を満たすフィルタ膜を調製して、フィルタ膜を、例えば半導体加工に使用するガス状材料を濾過するためのフィルタ膜として効果的に使用することを可能にするのに有用であり得る。
【0098】
有利には、積層造形法によって形成された焼結多孔質体は、フィルタ膜として有用なタイプの多孔質体を形成するための従来の技術では製造することが不可能であり得る特定のタイプの形状を含む、非常に多種多様な三次元形状のいずれかを有するように調製することができる。例示的な形状は、一般に三次元であり得、非管状(例えば、いくらか又は実質的に平坦又は平面)の形態、及び実質的に環状又は円筒状の形態又はその変形形態を含む管状の形態を含む。
【0099】
非管状形状の例は、2つの対向する主表面及び2つの対向する表面の間の厚さを有する、平坦な、湾曲した、又は丸みを帯びたプレート又は「カップ」の形態であってもよい。対向する主表面は、一般に平坦又は湾曲していてもよく、さらに、平坦であるか、又は非平坦パターン化若しくは非パターン化三次元構造、例えば、隆起したリッジ若しくは壁、窪み若しくはチャネル、又は「ワッフル(waffling)」を含む表面構造を有してもよい。図5A図5B図5C、及び図5Dを参照されたい。図5A及び図5C(上面図)、並びに図5B及び図5D(斜視図)に示すように、フィルタ膜500及び504は、幅及び長さ有する2つの対向する主表面を含むことができ、2つの表面間の厚さは、幅及び長さよりも実質的に小さい。少なくとも1つの表面は、三次元構造、例えば窪み(例えば、沈下したチャネル)又は上昇若しくは隆起したリッジ、壁などの反復又は非反復パターンを含むことができ、一例は図5A図5B図5C、及び図5Dに示すようなワッフル(waffling)パターンである。現在説明されている射出成形技術を使用して、表面構造及びパターンの他の形状も可能である。
【0100】
あるいは、多孔質焼結金属体は、三次元、例えば、管の軸、すなわち円筒に沿って見ると、丸い又は円形の断面を有する管(例えば、環、円筒)の形態などの管状膜であってもよい。他の管は、断面が非円形形状、例えば、角度、角、湾曲(例えば、フルーティング)、又はひだ状パターン(多点星形、又は円形の「ジグザグ」パターン)の、管の内面又は外面の周りに延びる反復パターンを含む形状を有してもよい。膜(任意の形状)は、2つの対向する主表面と、2つの対向する主表面間の厚さとを含む。管状膜の少なくとも1つの端部は開放されていてもよく、2つ目の端部は開放又は閉鎖されていてもよい。例えば、1つの端部が開放され、1つの端部が閉鎖された、複数の反復湾曲表面、例えば「ペダル」又は「フルーティング」を含む非円形断面を有する環状フィルタ膜510の斜視図を示す、図6A及び図6Bを参照されたい。
【0101】
本明細書で使用される場合、積層造形法によって形成されると言われる多孔質焼結金属体は、積層造形法によって製造された、すなわち積層造形法によって形成されていることを示す物理的特徴を含む本体として構造的又は物理的に特定可能であり得る。積層造形法の間、本体は、供給原料の複数の層を適用し、固化させて各層から固化供給原料を形成する複数の一連の工程によって形成される。固化供給原料の複数の層の兆候は、光学顕微鏡(例えば、50,100,200倍又は500倍の倍率で)を用いて、又は用いずに、焼結工程後に視覚的に特定可能であり得る。
【0102】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当該技術分野の当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作成及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書によって網羅される本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、詳細、特に部品の形状、サイズ、及び配置に関して変更を加えることができる。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
【0103】
第1の態様では、積層造形工程によって多孔質焼結金属体を形成する方法は、金属粒子を含有する供給原料を含む層を表面上に形成すること;層の、20~50体積%の金属粒子を含有する部分において、金属粒子及び固体ポリマーを含む固化供給原料を選択的に形成すること;固化供給原料を含有する層の上に、金属粒子を含有する供給原料を含む第2の層を形成すること;第2の層の、20~50体積%の金属粒子を含有する部分において、金属粒子及び固体ポリマーを含む固化供給原料を選択的に形成すること;及びその部分の金属粒子を焼結して、20~50体積%の金属粒子を含有する多孔質焼結金属体を形成することを含む。
【0104】
第1の態様に従う第2の態様は、固化供給原料を形成した後に残っている層の供給原料から固化供給原料を分離することをさらに含む。
【0105】
第1又は第2の態様に従う第3の態様は、金属粒子が、2.0グラム/立方センチメートル未満の見かけ密度を有する。
【0106】
第1~3の態様のいずれかに従う第4の態様は、金属粒子が、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する。
【0107】
第1~4の態様のいずれかに従う第5の態様は、供給原料が金属粒子及び細孔形成ポリマー粒子を含む。
【0108】
第5の態様に従う第6の態様は、領域に液体ポリマーバインダーを選択的に適用し、液体ポリマーバインダーを固化させることによって固化供給原料を形成することをさらに含む。
【0109】
第5の態様に従う第7の態様は、領域に電磁エネルギーを選択的に印加し、細孔形成ポリマー粒子を溶融させることによって固化供給原料を形成することをさらに含む。
【0110】
第1~4の態様のいずれかに従う第8の態様は、供給原料組成物が金属粒子及び硬化性液体ポリマーを含む。
【0111】
第8の態様に従う第9の態様は、領域に電磁エネルギーを選択的に印加して、硬化性液体ポリマー粒子を硬化させることによって固化供給原料を形成することをさらに含む。
【0112】
第1~4の態様のいずれかに従う第10の態様は、供給原料が少なくとも95重量%の金属粒子を含む。
【0113】
第10の態様に従う第11の態様は、領域上に液体ポリマーバインダーを選択的に適用し、液体ポリマーバインダーの固化を可能にするか又は引き起こすことによって固化供給原料を形成することをさらに含む。
【0114】
第1~11の態様のいずれかに従う第12の態様は、固化供給原料の複数の層を含む多層固化供給原料複合体を、それぞれが、金属粒子を含有する供給原料を含む追加の層を第2の層上に形成すること;それぞれの追加の層の、20~50体積%の金属粒子を含む部分に、固体ポリマー中の金属粒子を含む固化供給原料を選択的に形成すること、及び、層の供給原料から多層固体を分離することによって形成することを含む。
【0115】
第1~12の態様のいずれかに従う第13の態様は、多孔質焼結金属体が、三次元管を含む形状を有する環状フィルタ膜である。
【0116】
第13の態様に従う第14の態様は、管が、管軸方向から見て円形断面を有する。
【0117】
第13の態様に従う第15の態様は、管が、管軸方向から見て非円形断面を有する。
【0118】
多孔質焼結金属体が三次元非管状フィルタ膜である、第1~15の態様のいずれかに従う第16の態様。
【0119】
第17の態様では、供給原料組成物は、供給原料組成物の総体積に基づいて、50~80体積%の硬化性液体ポリマーバインダーと、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子とを含む。
【0120】
第18の態様では、供給原料組成物は、固体細孔形成ポリマー粒子と、供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子とを含む。
【0121】
第17又は18の態様に従う第19の態様は、金属粒子が樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見かけ密度を有する。
【0122】
第20の態様では、多孔質焼結金属体は、積層造形法によって形成され、焼結金属粒子を含み、50~80%の範囲の多孔度を有する。
【0123】
第20の態様に従う第21の態様は、粒子が樹枝状粒子である、
【0124】
第20の態様に従う第22の態様は、粒子が繊維状粒子である。
【0125】
第20~22の態様に従う第23の態様は、本体が、光学顕微鏡を用いて視認可能な多層構造を有する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給原料組成物であって、
50~80体積%の硬化性液体ポリマーバインダー;及び
供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子
を含む、供給原料組成物。
【請求項2】
供給原料組成物であって、
固体細孔形成ポリマー粒子、及び
供給原料組成物の総体積に基づいて、粒子の理論密度の5~35%の範囲内の相対見かけ密度を有する20~50体積%の金属粒子
を含む、供給原料組成物。
【請求項3】
積層造形法によって形成され、焼結金属粒子を含み、50~80%の範囲の多孔度を有する多孔質焼結金属体。
【請求項4】
粒子が樹枝状粒子である、請求項3に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項5】
粒子が繊維状粒子である、請求項3に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項6】
光学顕微鏡を使用して視認可能な多層構造を有する、請求項に記載の多孔質焼結金属体。
【外国語明細書】