(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012532
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】撮像素子
(51)【国際特許分類】
H04N 25/62 20230101AFI20240123BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240123BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240123BHJP
【FI】
H04N25/62
H01L27/146 A
H04N25/76
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190030
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2021551415の分割
【原出願日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019180780
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 良次
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダーク信号と光電変換信号との差が小さくなることに起因して画像の品質が低下することを抑制。
【解決手段】撮像素子3は、光電変換により電荷を生成する光電変換部を有する複数の画素10、複数の画素10で生成された信号がそれぞれ出力される複数の信号線22及び前記信号線の電圧が所定電圧以下にならないよう前記信号線に電圧を供給し、列方向に設けられる複数の供給部30が設けられる第1基板111と、複数の前記信号線に出力された信号を処理する処理部50が設けられ、第1基板111に積層される第2基板112と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換により電荷を生成する複数の光電変換部と、複数の前記光電変換部で生成された電荷に基づく信号がそれぞれ出力される複数の信号線と、前記信号線の電圧が所定電圧以下にならないよう前記信号線に電圧を供給し、列方向に設けられる複数の供給部とが設けられる第1基板と、
複数の前記信号線に出力された信号を処理する処理部が設けられ、前記第1基板に積層される第2基板と、
を備える撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
画素から出力される信号を所定の電圧レベルにクランプするためのトランジスタが、各カラム別に一つずつ設けられた撮像素子が知られている(特許文献1)。従来から、画質の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2004-222273号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、撮像素子は、光電変換により電荷を生成する複数の光電変換部と、複数の前記光電変換部で生成された電荷に基づく信号がそれぞれ出力される複数の信号線と、前記信号線の電圧が所定電圧以下にならないよう前記信号線に電圧を供給し、列方向に設けられる複数の供給部とが設けられる第1基板と、複数の前記信号線に出力された信号を処理する処理部が設けられ、前記第1基板に積層される第2基板と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る撮像素子の構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の断面構造の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る撮像素子の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図6】第1の実施の形態に係る撮像素子の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図7】第1の実施の形態に係る撮像素子の一部のレイアウトの一例を示す図である。
【
図8】変形例に係る撮像素子の一部のレイアウトの一例を示す図である。
【
図9】変形例に係る撮像素子の一部のレイアウトの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の構成例を示す図である。カメラ1は、撮影光学系(結像光学系)2、撮像素子3、制御部4、メモリ5、表示部6、及び操作部7を備える。撮影光学系2は、焦点調節レンズ(フォーカスレンズ)を含む複数のレンズ及び開口絞りを有し、撮像素子3に被写体像を結像する。なお、撮影光学系2は、カメラ1から着脱可能にしてもよい。
【0007】
撮像素子3は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等の撮像素子である。撮像素子3は、撮影光学系2を通過した光束を受光し、撮影光学系2により形成される被写体像を撮像する。撮像素子3には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(行方向及び列方向)に配置される。光電変換部は、フォトダイオード(PD)によって構成される。撮像素子3は、受光した光を光電変換して信号を生成し、生成した信号を制御部4に出力する。
【0008】
メモリ5は、メモリカード等の記録媒体である。メモリ5には、画像データ、制御プログラム等が記録される。メモリ5へのデータの書き込み、及びメモリ5からのデータの読み出しは、制御部4によって制御される。表示部6は、画像データに基づく画像、シャッター速度、絞り値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部7は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチ等の各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に基づく信号を制御部4へ出力する。
【0009】
制御部4は、CPU、FPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROM、RAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づきカメラ1の各部を制御する。制御部4は、撮像素子3を制御する信号を撮像素子3に供給して、撮像素子3の動作を制御する。制御部4は、静止画撮影を行う場合、動画撮影を行う場合、表示部6に被写体のスルー画像(ライブビュー画像)を表示する場合等に、撮像素子3に被写体像を撮像させて信号を出力させる。
【0010】
制御部4は、撮像素子3から出力される信号に各種の画像処理を行って画像データを生成する。制御部4は、画像データを生成する生成部4でもあり、撮像素子3から出力される信号に基づいて静止画像データ、動画像データを生成する。画像処理には、階調変換処理、色補間処理等の画像処理が含まれる。
【0011】
図2は、第1の実施の形態に係る撮像素子の構成例を示すブロック図である。撮像素子3は、画素10が複数設けられた第1基板111と、読み出し部60が設けられた第2基板112とを積層して構成される。第1基板111及び第2基板112は、それぞれ半導体基板を用いて構成される。第1基板111に設けられた回路、及び第2基板112に設けられた回路は、電極、バンプ等の接続部により電気的に接続される。
【0012】
第1基板111は、複数の画素10がそれぞれ配置される複数の領域20を有する。
図2に示す例では、4つの領域20を図示している。これら4つの領域20は、それぞれ、第1基板111の画素10が配置される領域を、所定数の画素を含む領域に分けたときの1つの領域を示している。なお、各領域20は、部分的に重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。各領域20の画素の数は、2画素×2画素の4画素であってもよいし、4画素×4画素の16画素であってもよく、任意の数としてよい。以下では、領域20を画素ブロック20と称する。
【0013】
第1基板111には、画素ブロック20毎に、信号線22と後述する供給部30とが設けられる。また、後述するが、第1基板111には、画素ブロック20毎に、画素制御部及び供給制御部が設けられる。信号線22は、画素ブロック20と読み出し部60とを結ぶ信号線であり、画素10から信号が出力される。信号線22は、電極、バンプ等の接続部を用いた信号線である。
【0014】
読み出し部60は、アナログ/デジタル変換部(AD変換部)40を含む処理部50を有する。処理部50は、画素ブロック20毎に設けられる。本実施の形態に係る撮像素子3では、画素ブロック20それぞれに設けられた信号線22を用いて、複数の画素ブロック20からの画素の信号の読み出しが並列に行われる。読み出し部60は、各画素ブロック20の画素の信号を画素ブロック20毎に設けられる処理部50に同時に(並列に)出力させて、各処理部50において画素の信号を同時に信号処理することができる。各処理部50が各画素ブロック20から出力される信号を同時に信号処理するので、読み出し部60は高速な信号処理ができる。
【0015】
処理部50のAD変換部40は、画素ブロック20の各画素10から信号線22を介して入力されるアナログ信号である画素の信号を、デジタル信号に変換する。なお、処理部50は、信号線22を介して入力される画素の信号を所定のゲイン(増幅率)で増幅するアンプ部を有していてもよい。この場合、AD変換部40は、アンプ部により増幅された画素の信号をデジタル信号に変換する。
【0016】
デジタル信号に変換された画素の信号は、処理部50において、相関二重サンプリング(CDS;Correlated Double Sampling)や信号量を補正する処理等の信号処理が施された後に、カメラ1の制御部4に出力される。なお、画素の信号に対する相関二重サンプリング等の信号処理を、不図示の信号処理部において行うようにしてもよい。この場合、処理部50は、AD変換部40によりデジタル信号に変換された画素の信号を信号処理部に出力する。信号処理部は、入力された画素の信号に対して相関二重サンプリング等の信号処理を行った後に、処理後の画素の信号を制御部4に出力する。
【0017】
第1基板111において各画素10が配置される領域の周囲には、電源電圧VDDが供給(印加)される複数の電極(パッド)200が設けられる。電極200は、配線(電源線)121を介して、第1基板111に配置された複数の画素10と供給部30とに接続される。画素10及び供給部30には、電源線121を介して電源電圧VDDが供給される。電極200は、複数の画素10及び供給部30に共通の電極であり、
図2に示すように第1基板111の一方の面に配置される。
以下では、図面を参照して、本実施の形態に係る撮像素子3の構成について更に説明する。
【0018】
図3は、第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の断面構造の一例を示す図である。
図4は、第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。
図3に示す撮像素子3は、裏面照射型の撮像素子である。撮像素子3は、第1基板111と、第1基板111に積層して設けられる配線層101と、第2基板112と、第2基板112に積層して設けられる配線層102とを備える。配線層101及び配線層102は、それぞれ、導体膜(金属膜)及び絶縁膜を含む配線層であり、複数の配線やビア、層間絶縁膜などが配置される。
【0019】
被写体からの光は、
図3のZ軸プラス方向に向かって入射する。また、
図3の座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面右方向をX軸プラス方向、Z軸及びX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。以降の図においては、
図3の座標軸を基準として、それぞれの図の向きが分かるように座標軸を表示する場合もある。第1基板111及び配線層101では、複数の画素10及び供給部30を含む画素ブロック20が、X軸方向及びY軸方向に複数配置される。第2基板112及び配線層102では、処理部50がX軸方向及びY軸方向に複数配置される。
【0020】
図4では、撮像素子3に設けられた複数の画素10のうちの一部の画素10と、一部の電流源25及び供給部30と、一部の画素制御部35及び供給制御部36と、読み出し制御部70とを示している。電流源25及び供給部30は、信号線22に対して設けられる。画素制御部35及び供給制御部36は、それぞれ、画素ブロック20毎に配置される。なお、
図4では、図を簡略化するために、1つの画素ブロック20につき1つの画素10のみ図示している。
【0021】
画素10は、光電変換部11と、転送部12と、フローティングディフュージョン(FD)13と、リセット部14と、増幅部15と、選択部16とを有する。光電変換部11は、フォトダイオードPDであり、入射した光を電荷に変換し、光電変換された電荷を蓄積する。
【0022】
転送部12は、信号TXにより制御されるトランジスタM1から構成され、光電変換部11で光電変換された電荷をFD13に転送する。トランジスタM1は、転送トランジスタである。FD13は、FD13に転送された電荷を蓄積(保持)して、容量値で除算した電圧に変換する。FD13は、蓄積部13であり、光電変換部11で生成された電荷を蓄積する。
【0023】
増幅部15は、ゲート(端子)がFD13に接続されるトランジスタM3から構成され、FD13に蓄積された電荷による信号を増幅して出力する。トランジスタM3のドレイン(端子)は、電源線121を介して電極200(
図2参照)に接続され、電源電圧VDDが供給される。トランジスタM3のソース(端子)は、選択部16を介して信号線22に接続される。増幅部15は、電流源25を負荷電流源として、ソースフォロワ回路の一部として機能する。トランジスタM3は、増幅トランジスタである。増幅部15と選択部16とは、光電変換部11により生成された電荷に基づく信号を生成し出力する出力部を構成する。
【0024】
リセット部14は、信号RSTにより制御されるトランジスタM2から構成され、FD13と電源線121とを電気的に接続又は切断する。リセット部14は、FD13により蓄積された電荷をリセットする。リセット部14は、FD13に蓄積された電荷を排出して、FD13の電圧をリセットする。トランジスタM2は、リセットトランジスタである。選択部16は、信号SELにより制御されるトランジスタM4から構成され、増幅部15と信号線22とを電気的に接続又は切断する。選択部16のトランジスタM4は、オン状態の場合に、増幅部15からの信号を信号線22に出力する。トランジスタM4は、選択トランジスタである。
【0025】
電流源25は、ゲートに信号VBが入力されるトランジスタM5を含んで構成される。電流源25は、信号線22を介して、画素ブロック20の各画素10と供給部30とに接続される。電流源25は、信号VBの信号レベルに基づいて電流を生成し、生成した電流を信号線22、画素10、及び供給部30に供給する。なお、電流源25は、カスコード接続された2つのトランジスタによって構成されてもよい。信号VBは、不図示の信号生成部により生成される。信号生成部は、信号線22毎に設けられる電流源25に共通に接続され、信号VBを各電流源25に供給する。各電流源25のトランジスタM5のゲートは、互いに電気的に接続されており、信号生成部から信号VBが入力される。
【0026】
信号線22には、FD13の電圧をリセットしたときの信号(ダーク信号)と、転送部12により光電変換部11からFD13に転送された電荷に基づく信号(光電変換信号)とが順次出力される。ダーク信号は、光電変換信号に含まれるノイズの除去に用いられる。ダーク信号は、光電変換信号に対する基準レベルを示すアナログ信号とも言え、光電変換信号の補正に用いられる。光電変換信号は、光電変換部11によって光電変換された電荷に基づいて生成されるアナログ信号である。ダーク信号及び光電変換信号は、信号線22を介して、読み出し部60の処理部50(
図2参照)に入力される。本実施の形態では、処理部50は、光電変換信号とダーク信号との減算を行う演算部を有し、光電変換信号とダーク信号との減算によるCDSを行って、光電変換信号からノイズ成分を除去する。
【0027】
供給部30は、
図4に示すように信号出力部31及びスイッチ部32を有し、信号線22に電圧を供給する機能を有する。信号出力部31は、ゲートに信号CLIPが入力されるトランジスタM11から構成され、信号CLIPに基づく電圧レベルの信号を生成して出力する。トランジスタM11のドレインは、電源線121を介して電極200(
図2参照)に接続され、電源電圧VDDが供給される。トランジスタM11のソースは、スイッチ部32を介して信号線22に接続される。
【0028】
スイッチ部32は、信号CLIP_SWにより制御されるトランジスタM12から構成され、信号出力部31と信号線22とを電気的に接続又は切断する。スイッチ部32のトランジスタM12は、オン状態の場合に、信号出力部31からの信号を信号線22に出力可能となる。本実施の形態では、スイッチ部32がオン状態の場合、信号線22の電圧(電位)は、信号出力部31によって、信号CLIPに基づく電圧を下限値とする範囲内の値となるように制限される。供給部30は、信号線22の電圧が所定の電圧以下にならないように、信号線22に電圧を供給する。供給部30は、信号線22の電圧を制限する制限部30であるともいえる。供給部30は、信号線22の電圧が電源電圧VDDから信号CLIPに基づく電圧までの値となるように信号線22に電圧を供給し、信号線22の電圧を制御(調整)するともいえる。
【0029】
画素制御部35は、スイッチ及びバッファを含んで構成され、読み出し制御部70によって制御される。画素制御部35は、上述した信号TX、信号RST、信号SEL等の信号を画素ブロック20の画素10に供給して、各画素10の動作を制御する。画素制御部35は、画素10の各トランジスタのゲートに信号を供給して、トランジスタをオン状態(接続状態、導通状態、短絡状態)又はオフ状態(切断状態、非導通状態、開放状態、遮断状態)とする。
【0030】
読み出し制御部70及び画素制御部35は、画素10に入力される信号TX及び信号SEL等を制御することにより、画素ブロック20において電荷の蓄積が行われる期間、及び画素の信号を読み出すタイミングを制御する。画素ブロック20毎に設けられる画素制御部35は、電荷蓄積時間が画素ブロック20毎に異なるように画素10を制御することも、電荷蓄積時間が全ての画素ブロック20において同一になるように画素10を制御することも可能である。また、各画素制御部35は、画素の信号を読み出すタイミングが画素ブロック20毎に異なるように画素10を制御することも、画素の信号を読み出すタイミングが全ての画素ブロック20において同一になるように画素10を制御することも可能である。画素制御部35が、電荷蓄積時間を画素ブロック20毎に異なるように画素10を制御することで、複数の被写体があっても、各被写体の明るさに合わせて撮像することができる。また、画素制御部35が、画素の信号を読み出すタイミングを画素ブロック20毎に異なるように画素10を制御することで、複数の被写体があっても、各被写体の移動する速さに合わせて撮像することができる。
【0031】
供給制御部36は、スイッチ及びバッファを含んで構成され、読み出し制御部70によって制御される。上述したように、画素制御部35は、電荷蓄積時間が画素ブロック20毎に異なるように画素10を制御すること、画素の信号を読み出すタイミングが画素ブロック20毎に異なるように画素10を制御することが可能である。その場合、各ブロック20毎に信号線22に信号が出力されるタイミングが異なるので、供給制御部36は、画素ブロック20毎に各スイッチ部32の動作を制御しなければならない。供給制御部36は、上述した信号CLIP_SWを画素ブロック20のスイッチ部32に供給して、各スイッチ部32の動作を制御する。供給制御部36は、スイッチ部32をオンオフ制御して、信号出力部31から信号線22への電圧の供給を開始及び停止する。本実施の形態では、画素ブロック20毎に設けられた供給制御部36は、画素ブロック20においてダーク信号及び光電変換信号の読み出しを行うタイミングに基づき、画素ブロック20において信号出力部31から信号線22に電圧を供給するタイミングを調整する。例えば、或る画素ブロック20に対して設けられた信号線22と他の画素ブロック20に対して設けられた信号線22とに異なるタイミングで電圧を供給可能となるように、それぞれの画素ブロック20の供給制御部36は、スイッチ部32を制御する。なお、各供給制御部36は、全ての画素ブロック20において同じタイミングで電圧を供給可能になるように、各スイッチ部32を制御してもよい。
【0032】
読み出し制御部70は、複数の画素ブロック20に共通に設けられる。読み出し制御部70は、タイミングジェネレータを含む複数の回路により構成され、第2基板112に配置される。読み出し制御部70は、カメラ1の制御部4によって制御される。読み出し制御部70は、画素制御部35を介して画素10に入力される信号TX、信号RST、信号SEL等の信号を制御することにより、画素10の動作を制御する。また、読み出し制御部70は、供給制御部36を介して供給部30に入力される信号CLIP_SWを制御することにより、供給部30の動作を制御する。
【0033】
なお、上述した画素制御部35及び供給制御部36は、第1基板111及び第2基板112のいずれか一方の基板に配置してもよいし、第1基板111と第2基板112に分けて配置してもよい。画素制御部35及び供給制御部36を、第1基板111と第2基板112とは異なる基板に配置してもよい。読み出し制御部70は、第1基板111と第2基板112に分けて配置してもよいし、第1基板111に配置してもよい。読み出し制御部70を、第1基板111と第2基板112とは異なる基板に配置してもよい。
【0034】
画素10の選択部16と供給部30のスイッチ部32とがそれぞれオン状態となることで、増幅部15のソースと信号出力部31のソースとが、信号線22に電気的に接続される。この場合、増幅部15のゲートの電圧(即ち、FD13の電圧)と供給部30のゲートの電圧(即ち、信号CLIPの電圧)との大小関係に基づき、信号線22に接続された電流源25による電流の流れる経路が変わる。
【0035】
FD13の電圧が信号CLIPの電圧よりも高い場合、電流源25の電流は、主に信号線22及び選択部16を介して増幅部15に流れる。増幅部15は、FD13の電圧に基づく信号を信号線22に出力する。これにより、信号線22の電圧は、FD13の電圧に応じた電圧となる。FD13の電圧が信号CLIPの電圧よりも低い場合には、電流源25の電流は、主に信号線22及びスイッチ部32を介して信号出力部31に流れる。このとき、信号出力部31は、信号CLIPの電圧に基づく信号を信号線22に出力することにより、信号線22の電圧を信号CLIPの電圧に基づく電圧に制限する。信号線22の電圧は、信号CLIPの電圧に応じた電圧となる。
【0036】
このように、供給部(制限部)30は、スイッチ部32がオン状態の場合に、FD13の電圧と信号CLIPの電圧とに応じて、信号線22の電圧を制限する。供給部30のトランジスタM11は、信号線22の電圧を制限(クリップ)するトランジスタであり、クリップトランジスタ又はクランプトランジスタと称される場合もある。FD13の電圧が比較的低い場合に、信号線22の電圧が信号CLIPに基づく電圧に制限される。これにより、信号線22の電圧が低下して電流源25が正常に動作しなくなってしまうことを回避することができる。この結果、電流源25の電流が供給されなくなることを防ぐことができる。また、信号線22の電圧が想定した範囲外の電圧となって読み出し部60に入力されることを防ぐことができる。
【0037】
また、本実施の形態に係る撮像素子3では、ダーク信号の読み出しを行う場合と光電変換信号の読み出しを行う場合とで、異なる信号レベルの信号CLIPが供給部30に入力される。これにより、供給部30は、ダーク信号の読み出しを行う場合と光電変換信号の読み出しを行う場合とで、異なる電圧を信号線22に供給可能となる。
【0038】
ダーク信号の読み出しを行う場合、信号出力部31のトランジスタM11のゲートには、第1の電圧V1が供給される。この場合、信号線22の電圧は、第1の電圧V1に基づく電圧が下限となるように制限される。これにより、ダーク信号として読み出し部60に出力される信号の電圧が制限される。光電変換信号の読み出しを行う場合、トランジスタM11のゲートには、第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2が供給される。この場合、信号線22の電圧は、第2の電圧V2に基づく電圧が下限となるように制限される。これにより、光電変換信号として読み出し部60に出力される信号の電圧が制限される。
【0039】
画素の欠陥に起因して電荷がFD13に蓄積されてしまい、ダーク信号の電圧が低下する場合がある。高輝度の被写体を撮影する際に、電荷がFD13に蓄積されてダーク信号の電圧の低下が生じる場合もある。このような場合、ダーク信号と光電変換信号との差が小さくなり、CDS処理後の信号を用いて生成される画像の画質が低下し得る。本実施の形態では、上述したようにダーク信号の電圧を制限して、ダーク信号の信号レベルと光電変換信号の信号レベルとの差を確保することができる。このため、ダーク信号と光電変換信号との差が小さくなることに起因して画像の品質が低下することを抑制することができる。
【0040】
上述した第2の電圧V2は、信号線22の電圧が電流源25のトランジスタM5の動作に必要な電圧よりも下がらないように、且つ、信号線22の電圧が可能な限り低い電圧を取り得るように、定められる。これにより、光電変換部11で生成された電荷がFD13に転送された場合に生じる信号線22の電圧の変化が妨げられることを、抑制することができる。また、電流源25の電流の変動を抑制し、信号線22に出力される光電変換信号にノイズが混入することを抑制することができる。
【0041】
図5及び
図6は、それぞれ、第1の実施の形態に係る撮像素子3の動作例を示すタイミングチャートである。
図5及び
図6に示すタイミングチャートにおいて、縦軸は信号の電圧レベルを示し、横軸は時刻を示している。FDはFD13の信号(電圧信号)を示し、VOUTは信号線22に出力される信号を示す。
図5及び
図6に示す例では、信号CLIP_SWはハイレベルにされており、供給部30のスイッチ部32はオン状態となる。
図5及び
図6において、ハイレベル(例えば電源電圧VDD)の制御信号(信号SEL、信号RST、信号TX)が入力されるトランジスタはオン状態となり、ローレベル(例えば接地電圧)の制御信号が入力されるトランジスタはオフ状態となる。
【0042】
図5に示す時刻t1では、信号RSTがハイレベルになることで、画素10のリセット部14のトランジスタM2がオン状態になり、FD13と電源線121とが電気的に接続される。これにより、FD13の電荷がリセットされ、FD13の電圧がリセット電圧になる。また、時刻t1では、信号SELがハイレベルになることで、選択部16のトランジスタM4がオン状態になる。これにより、増幅部15及び選択部16は、画素10のリセット電圧に基づく信号、即ち画素10のFD13の電荷をリセットした後の信号を、信号線22に出力可能となる。時刻t2において、信号RSTがローレベルになることで、リセット部14のトランジスタM2はオフ状態になる。
【0043】
供給部30の信号出力部31は、第1の電圧V1の信号CLIPが入力されており、第1の電圧V1に基づく電圧(
図5において破線で示すクリップ電圧Vc1)を、信号線22に供給可能な状態である。
図5に示す例では、時刻t2から時刻t3までの期間において、FD13の電圧(
図5に示すFDの電圧)は、信号CLIPの電圧である第1の電圧V1よりも高い。このため、信号線22に出力される信号VOUTの電圧は、FD13の電圧に基づく電圧、即ちFD13に蓄積された電荷をリセットした後のリセット電圧に基づく電圧となる。
【0044】
時刻t3において、読み出し部60の処理部50は、リセット電圧に基づく電圧となる信号VOUTを、ダーク信号としてサンプリングする。時刻t3においてダーク信号の電圧が確定されるともいえる。処理部50のAD変換部40は、ダーク信号をデジタル信号に変換する。時刻t4において、信号出力部31には、第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2の信号CLIPが入力される。信号CLIPの電圧が第1の電圧V1から第2の電圧V2に変わり、信号出力部31は、第2の電圧V2に基づく電圧(
図5において破線で示すクリップ電圧Vc2)を、信号線22に供給可能な状態となる。
【0045】
時刻t5では、信号TXがハイレベルになることで、転送部12のトランジスタM1がオン状態になり、光電変換部11で光電変換された電荷がFD13に転送される。これにより、FD13の電圧は、光電変換部11から転送された電荷に基づく電圧になる。また、信号SELがハイレベルであるため、増幅部15及び選択部16は、光電変換部11で生成された電荷に基づく信号を信号線22に出力可能な状態である。時刻t6において、信号TXがローレベルになることで、転送部12のトランジスタM1はオフ状態になる。
【0046】
図5に示す例では、時刻t6から時刻t7までの期間において、FD13の電圧は信号CLIPの電圧である第2の電圧V2よりも高い。このため、信号線22に出力される信号VOUTの電圧は、FD13の電圧に基づく電圧、即ち光電変換部11で光電変換された電荷に基づく電圧となる。
【0047】
時刻t7において、処理部50は、光電変換部11で光電変換された電荷に基づく電圧となる信号VOUTを、光電変換信号としてサンプリングする。時刻t7において光電変換信号の電圧が確定されるともいえる。処理部50のAD変換部40は、光電変換信号をデジタル信号に変換する。処理部50は、デジタル信号に変換されたダーク信号及び光電変換信号に対して、ダーク信号と光電変換信号との差分処理を行うCDSを行う。処理部50は、CDS処理等の信号処理を行った後に、処理後の信号を制御部4に出力する。
【0048】
次に、
図6を参照して、撮像素子3の動作の別の例について説明する。
図6に示す時刻t11では、信号RSTがハイレベルになることで、画素10のリセット部14のトランジスタM2がオン状態になる。これにより、FD13の電荷がリセットされ、FD13の電圧がリセット電圧になる。また、時刻t11では、信号SELがハイレベルになることで、選択部16のトランジスタM4がオン状態になる。これにより、増幅部15及び選択部16は、画素10のリセット電圧に基づく信号を信号線22に出力可能となる。時刻t12において、信号RSTがローレベルになることで、リセット部14のトランジスタM2はオフ状態になる。
【0049】
供給部30の信号出力部31は、第1の電圧V1の信号CLIPが入力されており、第1の電圧V1に基づく電圧(クリップ電圧Vc1)を、信号線22に供給可能な状態である。
図6に示す例では、時刻t12から時刻t13までの期間において、FD13の電圧は、信号CLIPの電圧である第1の電圧V1よりも高い。このため、信号線22に出力される信号VOUTの電圧は、FD13のリセット電圧に基づく電圧となる。
【0050】
時刻t13では、読み出し部60の処理部50は、リセット電圧に基づく電圧となる信号VOUTを、ダーク信号としてサンプリングする。処理部50は、ダーク信号をデジタル信号に変換する。時刻t14において、信号出力部31は、第1の電圧V1よりも低い第2の電圧V2の信号CLIPが入力され、第2の電圧V2に基づく電圧(クリップ電圧Vc2)を、信号線22に供給可能な状態となる。
【0051】
時刻t15では、信号TXがハイレベルになることで、転送部12のトランジスタM1がオン状態になり、光電変換部11で光電変換された電荷がFD13に転送される。これにより、FD13の電圧は、光電変換部11から転送された電荷に基づく電圧になる。また、信号SELがハイレベルであるため、増幅部15及び選択部16は、光電変換部11で生成された電荷に基づく信号を信号線22に出力可能な状態である。時刻t16において、信号TXがローレベルになることで、転送部12のトランジスタM1はオフ状態になる。
【0052】
図6に示す例では、時刻t16から時刻t17までの期間において、FD13の電圧は信号CLIPの電圧である第2の電圧V2よりも低い。このため、信号線22に出力される信号VOUTの電圧は、第2の電圧V2に基づく電圧、即ちクリップ電圧Vc2に制限される。
【0053】
時刻t17において、処理部50は、クリップ電圧Vc2となる信号VOUTを、光電変換信号としてサンプリングする。処理部50は、光電変換信号をデジタル信号に変換する。処理部50は、デジタル信号に変換されたダーク信号と光電変換信号とを用いてCDS処理等の信号処理を行った後に、処理後の信号を制御部4に出力する。このように、本実施の形態では、供給部30は、ダーク信号の読み出しを行う場合と光電変換信号の読み出しを行う場合とで、互いに異なる信号レベルの信号CLIPが入力される。供給部30は、信号CLIPの電圧及びFD13の電圧に応じて信号線22に電圧を供給することで、信号線22の電圧を制限することができる。
【0054】
図4に示したように、信号線22毎に設けられる各電流源25のトランジスタM5のゲートは、信号VBが入力される信号線に共通に接続されている。また、画素の信号が出力される信号線22とその信号線22に接続されるトランジスタM5のゲートとの間には、寄生容量(負荷容量)が付加され得る。この寄生容量の影響のため、信号線22の電圧の変動によって、信号VBの電圧が変動し、各電流源25を流れる電流の大きさが変動し得る。仮に、撮像素子3が供給部30を有しない場合、信号線22の電圧が大きく低下すると共に信号VBの電圧も大きく低下し、電流源25から供給される電流が減少することや、電流源25から電流が供給されなくなることが考えられる。或る画素ブロック20に対して設けられた信号線22の電圧が変動した場合に、各電流源25に共通に供給される信号VBの電圧が変動することによって、他の画素ブロック20に対して設けられた信号線22の電圧も変動してしまう。
【0055】
一方、本実施の形態に係る撮像素子3には、画素ブロック20毎に供給部30が設けられる。供給部30は、スイッチ部32がオン状態の場合に信号CLIPに基づく電圧を信号線22に供給可能であり、信号線22の電圧を制限することができる。このため、撮像素子3は、信号線22の電圧を制限することによって、信号VBの電圧の変動を抑制することができる。これにより、信号VBの電圧の変動に起因するノイズが、信号線22に出力される信号(光電変換信号、ダーク信号)に混入することを抑制することができる。
【0056】
本実施の形態では、FD13の電圧が比較的低い場合は、信号線22の電圧が制限される動作(クリップ動作)が行われ、FD13の電圧が比較的高い場合には、クリップ動作が行われない。クリップ動作が行われるときと、クリップ動作が行われないときとで、上述したように電流源25による電流の流れる経路が変わる。クリップ動作が行われる場合、電流源25の電流は、電源線121と
図4に示す配線(接地線)131との間を、供給部30の信号出力部31を経由して流れる。クリップ動作が行われない場合は、電流源25の電流は、電源線121と接地線(グランド配線)131との間を、画素10の増幅部15を経由して流れる。電源線121と接地線131には、
図4に模式的に示すように配線抵抗が付加されるため、配線抵抗に起因する電圧降下(IRドロップ)が生じる。
【0057】
上述した電流経路の変化の影響により、クリップ動作が行われる場合とクリップ動作が行われない場合とで、電源線121及び接地線131における電圧降下量が変わり、電源線121を介して各画素10に与えられる電源電圧VDDの値に差が生じ得る。複数の画素ブロック20から信号の読み出しを同時に行う場合、信号の読み出しを行う間に他の画素ブロック20においてクリップ動作が行われる画素ブロック20と、信号の読み出しを行う間に他の画素ブロック20においてクリップ動作が行われない画素ブロック20とで、画素の信号に電源電圧VDDの変動に起因する差異が生じてしまう。また、光電変換信号の読み出しを行う際に電源電圧VDDの変動が生じると、FD13のリセット電圧の信号レベル、即ち光電変換部11から転送された電荷に応じて生じる電圧変化の基準となる信号レベルが変動し得る。ダーク信号の読み出し期間と光電変換信号の読み出し期間とでリセット電圧の信号レベルに差が生じると、光電変換信号の基準とすべき信号レベルとは異なる信号レベルのダーク信号を用いてCDS処理が行われ、CDS処理後の信号を用いて生成される画像には例えば黒沈みやストリーキングが生じることになる。特に、画素10及び供給部30に別々の電極から別々の電源線を介して電源電圧が供給される場合に、クリップ動作が行われる場合とクリップ動作が行われない場合との画素10に供給される電源電圧の値の差が大きくなると考えられる。
【0058】
本実施の形態では、画素10と供給部30とが、同じ第1基板111に配置される。また、画素10及び供給部30は、共通の電極200から共通の電源線121を介して電源電圧VDDが供給される。これにより、クリップ動作が行われるときとクリップ動作が行われないときとで、画素10に与えられる電源電圧VDDの差を低減することができる。このため、各画素の信号に電源電圧の変動に起因する差異が生じることを抑制することができる。この結果、画素の信号を用いて生成される画像に、黒沈みやストリーキングが生じることを防ぐことができる。
【0059】
図7は、第1の実施の形態に係る撮像素子の一部のレイアウトの一例を示す図である。撮像素子3の複数の画素ブロック20の各々には、光電変換部11を含む画素10が、第1方向である行方向(X方向)、及び第1方向と交差する第2方向である列方向(Y方向)に複数配置される。
図7に示す例では、画素ブロック20には、4つの画素10、4つのスイッチ部32、及び1つの信号出力部31が設けられる。撮像素子3の第1基板111では、4つの画素10を含む画素ブロック20が、行方向(水平方向)及び列方向(垂直方向)に複数配置される。4つのスイッチ部32と1つの信号出力部31は、供給部30を構成する。なお、
図7では、画素ブロック20に設けられる配線の一部を模式的に示している。
【0060】
図7に示す例では、信号出力部31は、4つのスイッチ部32の各々に接続され、4つのスイッチ部32の各々に電圧を供給する。画素ブロック20毎に設けられた1つの信号出力部31を用いてクリップ動作が行われる。このため、画素ブロック20内に複数の信号出力部31を設ける場合と比較して、光電変換部11の受光面積を大きくすることができる。画素の開口率が低下することを防ぐことができる。また、チップ面積を増大させることなくクリップ動作を行うことができ、画素の信号を用いて生成される画像の画質が低下することを抑制することができる。
【0061】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子3は、光電変換により電荷を生成する光電変換部11と、光電変換部11で生成された電荷に基づく信号が出力される信号線22と、信号線22に電圧を供給する供給部30とが設けられる第1基板111と、信号線22に出力された信号を処理する処理部50が設けられ、第1基板111に積層される第2基板112と、を備える。本実施の形態では、光電変換部11を有する画素10と供給部30とが、同じ第1基板111に配置される。このため、供給部30の動作に伴う電源電圧の変動を低減させて、画素の信号の品質が低下することを防ぐことができる。これにより、画素の信号を用いて生成される画像の画質低下を抑制することができる。
(2)本実施の形態では、複数の処理部50を有する読み出し部60は、第2基板112に配置される。このため、チップ面積を増大させることなく、画素の信号を処理するための複数の回路を配置することができる。また、画素の開口率の低下を抑制することができる。
【0062】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0063】
(変形例1)
図8は、変形例1に係る撮像素子の一部のレイアウトの一例を示す図である。
図8に示すように、画素ブロック20を、スイッチ部32を有しない構成としてもよい。信号出力部31は、スイッチ部32を介さずに信号線22に電気的に接続され、ダーク信号の読み出しを行う場合と光電変換信号の読み出しを行う場合とで、共に信号線22に電圧を供給可能となる。本変形例では、スイッチ部32を削減することができ、チップ面積を低減させることができる。また、光電変換部11の受光面積を大きくすることも可能となる。
【0064】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る撮像素子の一部のレイアウトの一例を示す図である。
図9に示すように、信号出力部31を画素10毎に設けるようにしてもよい。
図9に示す例では、4つの信号出力部31と4つのスイッチ部32とが、画素ブロック20毎に配置される。
【0065】
信号出力部31毎または複数の信号出力部31毎に、別々の配線を用いて信号CLIPを供給するようにしてもよい。この場合、1つの配線に接続される信号出力部31の数を減らすことができ、信号CLIPの信号レベルの切り替えを高速に行うことができる。
【0066】
(変形例3)
上述した実施の形態では、画素ブロック20毎に信号線22及び供給部30を設ける例について説明した。しかし、画素10毎に信号線22を配置し、信号線22毎に供給部30を配置してもよい。この場合、画素10毎に画素制御部35が配置され、供給部30毎に供給制御部36が配置されるようにしてもよい。各供給制御部36は、信号線22毎に異なるタイミングで電圧を供給可能となるように、信号線22毎に設けられた供給部30を制御してもよい。
【0067】
(変形例4)
画素10及び供給部30は、MOSトランジスタを用いたアナログ回路により構成される。アナログ回路は第1基板111、AD変換部40といったデジタル回路は第2基板112に、分けて設けられる。第1基板111にはアナログ回路に最適なプロセスを、第2基板112にはデジタル回路に最適なプロセスを適用することができる。更に、画素10及び供給部30を同じNMOSトランジスタ(又はPMOSトランジスタ)を用いて構成すると、ウェル分離を不要とすることが可能となる。また、画素10及び供給部30を同じNMOSトランジスタを用いて構成することで、撮像素子の製造工程を短くすることができる。
【0068】
画素10及び供給部30は、NMOSトランジスタを用いて構成されてもよいし、PMOSトランジスタを用いて構成されてもよい。画素10及び供給部30を、NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタの両方を用いて構成してもよい。増幅部15及び信号出力部31がNMOSトランジスタにより構成される場合において、光電変換信号の読み出しを行うときには、上述したように、ダーク信号の読み出しを行うときよりも低い電圧の信号CLIPが信号出力部31に供給されるようにしてもよい。増幅部15及び信号出力部31がPMOSトランジスタにより構成される場合には、光電変換信号の読み出しを行うときに、ダーク信号の読み出しを行うときよりも高い電圧の信号CLIPが信号出力部31に供給されるようにしてもよい。供給部30は、信号線22の電圧が電源電圧(又は接地電圧)から信号CLIPに基づく電圧までの値となるように、信号線22に電圧を供給する。信号線22の電圧は、供給部30によって、信号CLIPに基づく電圧を上限値又は下限値とする範囲内の値となるように制限される。
【0069】
(変形例5)
上述した実施の形態では、撮像素子3が第1基板111と第2基板112とを積層して構成される例について説明した。しかし、第1基板111と第2基板112とは積層されていなくてもよい。
【0070】
(変形例6)
上述した実施の形態では、撮像素子3は、裏面照射型の構成とする例について説明した。しかし、撮像素子3を、光が入射する入射面側に配線層101を設ける表面照射型の構成としてもよい。
【0071】
(変形例7)
上述した実施の形態および変形例では、光電変換部としてフォトダイオードを用いる例について説明した。しかし、光電変換部として光電変換膜(有機光電膜)を用いるようにしてもよい。
【0072】
(変形例8)
上述の実施の形態及び変形例で説明した撮像素子及び撮像装置は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ、無人航空機(ドローン、ラジコン機等)に搭載されるカメラ等に適用されてもよい。
【0073】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0074】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特願2019-180780号(2019年9月30日出願)
【符号の説明】
【0075】
1…撮像装置、3…撮像素子、4…制御部、10…画素、11…光電変換部、20…画素ブロック、30…供給部、35…画素制御部、36…供給制御部、40…AD変換部、50…処理部、60…読み出し部、70…読み出し制御部、111…第1基板、112…第2基板