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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125440
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】液晶光学素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240911BHJP
   H02S 40/22 20140101ALI20240911BHJP
【FI】
G02B5/30
H02S40/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128317
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【テーマコード(参考)】
2H149
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2H149AB01
2H149DA02
2H149EA03
2H149EA06
2H149FA03W
2H149FA27Y
5F151JA23
5F151JA25
5F251JA23
5F251JA25
(57)【要約】
【課題】所望の反射性能を得ることが可能な液晶光学素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態の液晶光学素子は、第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する光導波部と、前記第2主面に配置された配向膜と、前記配向膜に重なり、コレステリック液晶を有し、前記光導波部を介して入射した光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する液晶層と、前記液晶層に重なり、水溶性ポリマーまたはフッ素系樹脂によって形成された透明な第1保護層と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する光導波部と、
前記第2主面に配置された配向膜と、
前記配向膜に重なり、コレステリック液晶を有し、前記光導波部を介して入射した光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する液晶層と、
前記液晶層に重なり、水溶性ポリマーまたはフッ素系樹脂によって形成された透明な第1保護層と、
を備える、液晶光学素子。
【請求項2】
前記コレステリック液晶は、前記配向膜に近接する第1領域において第1螺旋ピッチを有し、前記第1領域と前記第1保護層との間の第2領域において第2螺旋ピッチを有し、
前記第1螺旋ピッチと前記第2螺旋ピッチとの差は、20nm以下である、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記液晶層は、前記第1保護層を構成する成分を含まない、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記第1保護層は、ポリビニルアルコールによって形成されている、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記液晶層の厚さは、前記第1保護層の厚さより厚い、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
前記液晶層は、
前記コレステリック液晶からなる第1層と、
前記コレステリック液晶からなる第2層と、を備え、
前記第1層及び前記第2層において、前記コレステリック液晶は、同等の螺旋ピッチを有し、逆回りに旋回している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
さらに、前記第1保護層に対向する透明な第1カバー部材と、
前記第1保護層と前記第1カバー部材との間に空間を形成した状態で前記第1カバー部材を支持する支持体と、を備える、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
さらに、前記光導波部に対向する第2カバー部材を備え、
前記支持体は、前記光導波部と前記第2カバー部材との間に空間を形成した状態で前記第2カバー部材を支持している、請求項7に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
さらに、前記第1保護層に重なる透明な第2保護層を備え、
前記第2保護層は、前記第1保護層とは異なる材料によって形成され、
前記第2保護層の透湿度は、前記第1保護層の透湿度より小さい、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
さらに、前記第2保護層に対向する透明な第1カバー部材と、
前記第2保護層と前記第1カバー部材との間に空間を形成した状態で前記第2保護層及び前記第1カバー部材を支持する支持体と、を備える、請求項9に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
さらに、前記光導波部に対向する第2カバー部材を備え、
前記支持体は、前記光導波部と前記第2カバー部材との間に空間を形成した状態で前記光導波部及び前記第2カバー部材を支持している、請求項10に記載の液晶光学素子。
【請求項12】
光導波部の上に配向膜を形成し、
前記配向膜の上にコレステリック液晶を有する液晶層を形成し、
前記液晶層の上に、ポリビニルアルコールを純水に溶かした水溶液を塗布した後に乾燥し、第1保護層を形成する、液晶光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶光学素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子は、波長λの光が入射した際に、入射光を0次回折光及び1次回折光に分割するものである。液晶材料を用いた光学素子では、格子周期の他に、液晶層の屈折率異方性Δn(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、及び、液晶層の厚さdといったパラメータの調整が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-522601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、所望の反射性能を得ることが可能な液晶光学素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の液晶光学素子は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する光導波部と、前記第2主面に配置された配向膜と、前記配向膜に重なり、コレステリック液晶を有し、前記光導波部を介して入射した光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する液晶層と、前記液晶層に重なり、水溶性ポリマーまたはフッ素系樹脂によって形成された透明な第1保護層と、を備える。
【0006】
本実施形態の液晶光学素子の製造方法は、
光導波部の上に配向膜を形成し、前記配向膜の上にコレステリック液晶を有する液晶層を形成し、前記液晶層の上に、ポリビニルアルコールを純水に溶かした水溶液を塗布した後に乾燥し、第1保護層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図2図2は、液晶層3の構造を模式的に示す断面図である。
図3図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図4図4は、本実施形態における液晶層3を模式的に示す図である。
図5図5は、第1保護層11を形成する前後での透過スペクトルの測定結果を示す図である。
図6図6は、実施形態1に係る液晶光学素子100の変形例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、実施形態2に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実施形態3に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図9図9は、実施形態4に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図10図10は、実施形態5に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図11図11は、実施形態6に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図12図12は、太陽電池装置200の外観の一例を示す図である。
図13図13は、太陽電池装置200の動作を説明するための図である。
図14図14は、液晶層3の反射スペクトルの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、光導波部1と、配向膜2と、液晶層3と、第1保護層11と、を備えている。
【0011】
光導波部1は、光を透過する透明部材、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。光導波部1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。光導波部1は、任意の形状を取り得る。例えば、光導波部1は、湾曲していてもよい。光導波部1の屈折率は、例えば、空気の屈折率よりも大きい。光導波部1は、例えば、窓ガラスとして機能する。
【0012】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0013】
光導波部1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1主面F1と、第2主面F2と、側面F3と、を有している。第1主面F1及び第2主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。側面F3は、第1方向A1に沿って延びた面である。図1に示す例では、側面F3は、X-Z平面と略平行な面であるが、側面F3は、Y-Z平面と略平行な面を含んでいる。
【0014】
配向膜2は、第2主面F2に配置されている。配向膜2は、X-Y平面に沿って配向規制力を有する水平配向膜である。このような配向膜2は、例えばポリイミドなどの透明な材料によって形成されている。
【0015】
液晶層3は、第1方向A1において、配向膜2に重なっている。つまり、配向膜2は、光導波部1と液晶層3との間に位置し、また、光導波部1及び液晶層3に接している。液晶層3は、第1主面F1の側から入射した光LTiの少なくとも一部を光導波部1に向けて反射するものである。一例では、液晶層3は、光導波部1を介して入射した光LTiのうち、第1円偏光及び第1円偏光とは逆回りの第2円偏光の少なくとも一方を反射するコレステリック液晶を有している。なお、コレステリック液晶については、後に詳述するが、一方向に旋回したコレステリック液晶は、特定波長の光のうち、旋回方向に対応した円偏光を反射する反射面32を形成する。
【0016】
液晶層3において反射される第1円偏光及び第2円偏光は、例えば赤外線であるが、可視光であってもよいし、紫外線であってもよい。なお、本明細書において、液晶層3における「反射」とは、液晶層3の内部における回折を伴うものである。
【0017】
第1保護層11は、第1方向A1において、液晶層3に重なっている。つまり、液晶層3は、配向膜2と第1保護層11との間に位置し、また、配向膜2及び第1保護層11に接している。また、第1保護層11は、透明であり、特に、可視光に対しては高い光透過性を有するものである。
このような第1保護層11は、水溶性ポリマーまたはフッ素系樹脂によって形成されている。
【0018】
本明細書での水溶性ポリマーとは、液晶層3に対して低い相溶性を有する溶媒である水に対して可溶性を呈する高分子材料である。高分子材料の一例としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマーが適用可能である。また、高分子材料の他の例としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系半合成ポリマーが適用可能である。さらに、高分子材料の他の例としては、酸化でんぷん、変性でんぷんなどのでんぷん系半合成ポリマーが適用可能である。
本明細書でのフッ素系樹脂とは、フッ素系溶液を溶媒として用いるものである。
【0019】
次に、図1に示す実施形態1において、液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0020】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iを含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、光導波部1に対して略垂直に入射するものとする。なお、光導波部1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。例えば、互いに異なる複数の入射角度をもって光導波部1に光LTiが入射してもよい。
【0021】
光LTiは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入し、第2主面F2から出射して、配向膜2を透過し、液晶層3に入射する。そして、液晶層3は、光LTiのうち、一部の光LTrを光導波部1に向けて反射し、他の光LTtを透過する。ここでは、光導波部1及び液晶層3における吸収等の光損失は無視している。
液晶層3で反射される光LTrは、例えば、所定波長の第1円偏光である。また、液晶層3を透過する光LTtは、所定波長の第2円偏光と、所定波長とは異なる波長の光を含んでいる。ここでの所定波長とは、例えば赤外線Iであり、液晶層3で反射される光LTrは赤外線Iの第1円偏光I1である。液晶層3を透過する光LTtは、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iの第2円偏光I2を含んでいる。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0022】
液晶層3は、第1円偏光I1を、光導波部1における光導波条件を満足する進入角θで、光導波部1に向けて反射する。ここでの進入角θとは、光導波部1と空気との界面で全反射を起こす臨界角θc以上の角度に相当する。進入角θは、光導波部1に直交する垂線に対する角度を示す。
【0023】
光導波部1、配向膜2、液晶層3、及び、第1保護層11が同等の屈折率を有している場合、これらが単体の光導波体となり得る。この場合、光LTrは、光導波部1と空気との界面、及び、第1保護層11と空気との界面において、反射を繰り返しながら、側面F3に向けて導光される。
【0024】
このような実施形態1によれば、液晶層3に重なる第1保護層11が設けられたことにより、液晶層3の損傷が抑制される。そして、液晶層3の損傷による不所望な光の散乱や液晶層3での反射率の低下が抑制される。したがって、光の利用効率の低下が抑制される。
【0025】
図2は、液晶層3の構造を模式的に示す断面図である。
なお、光導波部1は二点鎖線で示している。また、図1に示した配向膜及び第1保護層の図示は省略している。
【0026】
液晶層3は、螺旋状構造体として、コレステリック液晶31を有している。複数のコレステリック液晶31の各々は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AXを有している。螺旋軸AXは、光導波部1の第2主面F2に対して略垂直である。
コレステリック液晶31の各々は、第1方向A1に沿って螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(360度)を示す。螺旋ピッチPは、第1方向A1に沿ってほとんど変化することなく一定である。コレステリック液晶31の各々は、複数の液晶分子315を含んでいる。複数の液晶分子315は、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられている。
【0027】
液晶層3は、第1方向A1おいて第2主面F2に対向する第1境界面317と、第1境界面317の反対側の第2境界面319と、第1境界面317と第2境界面319との間の複数の反射面32と、を有している。第1境界面317は、光導波部1を透過した光LTiが液晶層3に入射する面である。第1境界面317及び第2境界面319の各々は、コレステリック液晶31の螺旋軸AXに対して略垂直である。第1境界面317及び第2境界面319の各々は、光導波部1(あるいは第2主面F2)に略平行である。
【0028】
第1境界面317は、コレステリック液晶31の両端部のうちの一端部e1に位置する液晶分子315を含んでいる。第1境界面317は、図示しない配向膜と液晶層3との境界面に相当する。
第2境界面319は、コレステリック液晶31の両端部のうちの他端部e2に位置する液晶分子315を含んでいる。第2境界面319は、液晶層3と図示しない第1保護層との境界面に相当する。
【0029】
図2に示す例では、複数の反射面32は、互いに略平行である。反射面32は、第1境界面317及び光導波部1(あるいは第2主面F2)に対して傾斜しており、一方向に延びる略平面形状を有している。反射面32は、ブラッグの法則に従って、第1境界面317から入射した光LTiのうち一部の光LTrを選択反射する。具体的には、反射面32は、光LTrの波面WFが反射面32と略平行になるように、光LTrを反射する。更に具体的には、反射面32は、第1境界面317に対する反射面32の傾斜角度φに応じて光LTrを反射する。
【0030】
反射面32は、次のように定義できる。すなわち、液晶層3において選択的に反射される所定波長の光(例えば円偏光)が感じる屈折率は、光が液晶層3の内部を進行するのに伴って徐々に変化する。このため、液晶層3においてフレネル反射が徐々に起こる。そして、複数のコレステリック液晶31において光が感じる屈折率が最も大きく変化する位置で、フレネル反射が最も強く起こる。つまり、反射面32は、液晶層3においてフレネル反射が最も強く起こる面に相当する。
【0031】
複数のコレステリック液晶31のうち、第2方向A2に隣接するコレステリック液晶31の各々の液晶分子315の配向方向は互いに異なっている。また、複数のコレステリック液晶31のうち、第2方向A2に隣接するコレステリック液晶31の各々の空間位相は互いに異なっている。反射面32は、配向方向が揃った液晶分子315によって形成される面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。つまり、複数の反射面32の各々は、第1境界面317あるいは光導波部1に対して傾斜している。
【0032】
なお、反射面32の形状は、図2に示したような平面形状に限らず、凹状や凸状の曲面形状であってもよく、特に限定されるものではない。また、反射面32の一部に凸凹を有していたり、反射面32の傾斜角度φが均一でなかったり、複数の反射面32が、規則的に整列していなかったりしてもよい。複数のコレステリック液晶31の空間位相分布に応じて、任意の形状の反射面32を構成することができる。
【0033】
図2では、図面の簡略化のため、X-Y平面内に位置する複数の液晶分子315のうち、平均的配向方向を向いている液晶分子315を代表して示している。
【0034】
コレステリック液晶31は、選択反射帯域Δλに含まれる所定波長λの光のうち、コレステリック液晶31の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を反射する。例えば、コレステリック液晶31の旋回方向が右回りの場合、所定波長λの光のうち、右回りの円偏光を反射し、左回りの円偏光を透過する。同様に、コレステリック液晶31の旋回方向が左回りの場合、所定波長λの光のうち、左回りの円偏光を反射し、右回りの円偏光を透過する。
【0035】
コレステリック液晶31の螺旋ピッチをP、液晶分子315の異常光に対する屈折率をne、液晶分子315の常光に対する屈折率をnoと記載すると、一般的に、垂直入射した光に対するコレステリック液晶31の選択反射帯域Δλは、「no*P~ne*P」で示される。なお、詳細には、コレステリック液晶31の選択反射帯域Δλは、「no*P~ne*P」の範囲に対して、反射面32の傾斜角度φや、第1境界面317への入射角度などに応じて変化する。
【0036】
図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図3には、コレステリック液晶31の空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、コレステリック液晶31に含まれる液晶分子315のうち、第1境界面317に位置する液晶分子315の配向方向として示している。
【0037】
第2方向A2に沿って並んだコレステリック液晶31の各々について、第1境界面317に位置する液晶分子315の配向方向は互いに異なる。つまり、第1境界面317におけるコレステリック液晶31の空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだコレステリック液晶31の各々について、第1境界面317に位置する液晶分子315の配向方向は略一致する。つまり、第1境界面317におけるコレステリック液晶31の空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0038】
特に、第2方向A2に並んだコレステリック液晶31に着目すると、各液晶分子315の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第1境界面317において、第2方向A2に沿って並んだ複数の液晶分子315の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ複数のコレステリック液晶31の空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、図2に示した液晶層3のように、第1境界面317及び光導波部1に対して傾斜する反射面32が形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子315の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子315の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子315の長軸方向に相当する。このような液晶分子315の配向方向は、配向膜2になされた配向処理によって制御される。
【0039】
ここで、図3に示すように、第1境界面317において、第2方向A2に沿って液晶分子315の配向方向が180度だけ変化するときの2つのコレステリック液晶31の間隔をコレステリック液晶31の周期Tと定義する。なお、図3においてDPは液晶分子315の旋回方向を示している。図2に示した反射面32の傾斜角度φは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。
【0040】
液晶層3は、以下のようにして形成される。例えば、所定の配向処理がなされた配向膜2の上に液晶材料を塗布した後、複数の液晶分子315に光を照射し、複数の液晶分子315を重合させることで、液晶層3が形成される。又は、所定の温度又は所定の濃度において液晶状態を示す高分子液晶材料を、複数のコレステリック液晶31を形成するように配向制御し、その後、配向を維持したまま固体に転移させることで、液晶層3が形成される。
液晶層3において、隣り合うコレステリック液晶31は、重合又は固体への転移によって、コレステリック液晶31の配向を維持したまま、つまり、コレステリック液晶31の空間位相を維持したまま、互いに結合している。その結果、液晶層3において、各液晶分子315の配向方向が固定されている。
【0041】
一例として、選択反射帯域Δλが赤外線となるように、コレステリック液晶31の螺旋ピッチPが調整された場合について説明する。液晶層3の反射面32での反射率を高くする観点では、液晶層3の第1方向A1に沿った厚さは、螺旋ピッチPの数倍から10倍程度とすることが望ましい。つまり、液晶層3の厚さは、1~10μm程度となり、好ましくは2~7μmとなる。
【0042】
ここで、液晶層3に接する第1保護層11が液晶層3に対して高い相溶性を有する溶媒を用いて形成される場合について説明する。
第1保護層11を形成するための水溶液を液晶層3の上に塗布した際、溶媒が液晶層3に浸透するのに伴って第1保護層11を形成する高分子材料も液晶層3に浸透しやすく、液晶層3が膨張する。液晶層3の膨張に伴って、コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、第1方向A1に拡大する。液晶層3に浸透した溶媒は後の乾燥工程で蒸発するが、液晶層3に浸透した高分子材料は液晶層3にとどまり、螺旋ピッチが拡大した状態で維持されてしまう。上記の通り、コレステリック液晶31の選択反射帯域Δλは螺旋ピッチに依存する。このため、第1保護層11を形成する前後で選択反射帯域Δλを比較した場合、第1保護層11が形成された後に螺旋ピッチが拡大することで、選択反射帯域Δλは長波長側にシフトしてしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では、液晶層3に接する第1保護層11は、上記の通り、液晶層3に対して低い相溶性を有する溶媒を用いて形成されている。このため、第1保護層11を構成する成分(溶媒及び高分子材料)は、液晶層3にほとんど浸透しない。
【0044】
図4は、本実施形態における液晶層3を模式的に示す図である。
液晶層3は、配向膜2に近接する第1領域R1と、第1保護層11に近接する第2領域R2と、を有している。第2領域R2は、第1領域R1と第1保護層11との間の領域である。
コレステリック液晶31は、第1領域R1において第1螺旋ピッチP1を有し、第2領域R2において第2螺旋ピッチP2を有している。
【0045】
第1保護層11を形成する過程で、第1保護層11を形成するための水溶液は、液晶層3にはほとんど浸透しない。このため、液晶層3と第1保護層11との界面(図2の第2境界面319)はほぼ平坦である。また、液晶層3において、第1保護層11を形成するための溶媒や高分子材料が第1領域R1及び第2領域R2に浸透した痕跡はほとんど確認されない。つまり、液晶層3は、第1保護層11を構成する成分をほとんど含まない。しかも、第1保護層11を形成する過程での液晶層3の膨張が抑制され、コレステリック液晶31の螺旋ピッチの拡大が抑制される。つまり、コレステリック液晶31の螺旋ピッチは、第1保護層11を形成する前の螺旋ピッチに維持される。
【0046】
なお、第1領域R1は、第2領域R2よりも配向膜2の近くに位置しているため、配向膜2による配向規制力の影響を強く受ける。このため、第1螺旋ピッチP1と第2螺旋ピッチP2とを比較した場合、第2螺旋ピッチP2が第1螺旋ピッチP1より大きくなる場合があり得るが、その差はわずかである。一例では、第1螺旋ピッチP1と第2螺旋ピッチP2との差ΔPは、20nm以下である。差ΔPが20nm以下であれば、コレステリック液晶31は、第1方向A1に沿ってほぼ一定の螺旋ピッチを有するものみなすことができる。
仮に、第1保護層11を構成する成分が液晶層3に僅かに浸透した場合、コレステリック液晶31は、第1保護層11に近い第2領域R2において局所的に膨張し、第1螺旋ピッチP1と第2螺旋ピッチP2との差ΔPが20nmを超える。換言すると、差ΔPが20nm以下であれば、液晶層3が第1保護層11を構成する成分をほとんど含んでいないとみなすことができる。
【0047】
ここで、液晶光学素子100の製造方法の一例について説明する。
まず、光導波部1の上(あるいは第2主面F2)に配向膜2を形成する。配向膜2には、所定の配向処理を施す。
その後、配向膜2の上にコレステリック液晶31を有する液晶層3を形成する。液晶層3を形成する方法については、上記の通りである。
続いて、液晶層3の上に第1保護層11を形成する。
【0048】
ここでは、第1保護層11が水溶性ポリマーの1つであるポリビニルアルコール(PVA)によって形成される場合について説明する。使用するポリビニルアルコール(関東化学製)は、重合度が500であり、けん化度が86.5%~89%である。このポリビニルアルコールの粉末を純水に溶かして、濃度が15wt%のポリビニルアルコール水溶液を用意する。
そして、このポリビニルアルコール水溶液を液晶層3の表面にバーコーターなどを用いて均一塗布する。その後、自然乾燥、もしくは加熱(例えば、125℃、3分)により純水を除去することで、ポリビニルアルコール製の第1保護層11を形成する。
【0049】
このような工程を経て形成した液晶光学素子100について、例えば、配向膜2の厚さは110nmであり、液晶層3の厚さは4.1μmであり、第1保護層11の厚さは2.4μmであった。この例では、液晶層3の厚さは、第1保護層11の厚さより厚い。
【0050】
このような液晶光学素子100において、第1保護層11を形成する前後での透過スペクトルを測定した。
【0051】
図5は、第1保護層11を形成する前後での透過スペクトルの測定結果を示す図である。
図の横軸は波長(nm)を示し、図の縦軸は透過率(%)を示している。図中のB1は、第1保護層11を形成する前の透過スペクトルの測定結果を示している。図中のB2は、第1保護層11を形成した後の透過スペクトルの測定結果を示している。
図示した測定結果によれば、第1保護層11を形成する前後において、選択反射帯域Δλが500nm~560nmであり、ほとんど変化していないことが確認された。
【0052】
液晶層3と第1保護層11との厚さの関係については、以下の通りである。
液晶層3の厚さは、1μm~10μmであり、好ましくは2μm~7μmである。液晶層3の厚さは、上記の通り、螺旋ピッチPの数倍から10倍程度であることが望ましいが、液晶層3の厚さが螺旋ピッチPの10倍を超える厚さであったとしても、反射率は飽和する傾向にある。
第1保護層11の厚さは、1μm~1000μmであり、好ましくは2μm~100μmである。第1保護層11の厚さは、厚いほど保護性能が上がるが、生産性の低下を招くおそれがある。上記の例のように、第1保護層11の厚さが2.4μmであっても十分な保護性能が発揮されることが確認されている。
【0053】
以上説明したように、実施形態1によれば、液晶層3に重なる第1保護層11が設けられたことにより、液晶層3の損傷が抑制され、光の利用効率の低下が抑制される。また、第1保護層11が液晶層3に対して相溶性の低い材料を用いて形成されているため、液晶層3に含まれるコレステリック液晶31の螺旋ピッチは、第1保護層11を形成する前後でほとんど変化しない。このため、所望の反射性能を実現することができる。
【0054】
(変形例)
図6は、実施形態1に係る液晶光学素子100の変形例を模式的に示す断面図である。図6に示す例は、図1に示した例と比較して、液晶層3が、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311を有する第1層3Aと、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶312を有する第2層3Bと、を有している点で相違している。第1層3A及び第2層3Bは、第1方向A1に沿って重なっている。第1層3Aは配向膜2と第2層3Bとの間に位置し、第2層3Bは第1層3Aと第1保護層11との間に位置している。
【0055】
第1層3Aに含まれるコレステリック液晶311は、選択反射帯域のうち、第1旋回方向の第1円偏光を反射するように構成されている。コレステリック液晶311は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX1を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP11を有している。
第2層3Bに含まれるコレステリック液晶312は、選択反射帯域のうち、第2旋回方向の第2円偏光を反射するように構成されている。コレステリック液晶312は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX2を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP12を有している。螺旋軸AX1は、螺旋軸AX2に平行である。螺旋ピッチP11は、螺旋ピッチP12と同等である。
【0056】
コレステリック液晶311及び312は、拡大して模式的に示すように、ともに選択反射帯域として赤外線Iを反射するように形成されている。第1層3Aのコレステリック液晶311は、赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射する反射面321を形成する。第2層3Bのコレステリック液晶312は、第2層3Bにおいて、赤外線Iのうちの第2円偏光I2を反射する反射面322を形成する。
【0057】
このような液晶光学素子100においては、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iを含む光LTiが入射すると、液晶層3は、赤外線Iを含む光LTrを反射し、可視光V及び紫外線Uを含む光LTtを透過する。
液晶層3の第1層3Aに形成された反射面321では、赤外線Iのうちの第1円偏光I1が光導波部1に向けて反射される。また、液晶層3の第2層3Bに形成された反射面322では、第1層3Aを透過した赤外線Iの第2円偏光I2が光導波部1に向けて反射される。液晶層3で反射された第1円偏光I1及び第2円偏光I2を含む光LTrは、光導波部1と空気との界面、及び、第1保護層11と空気との界面で反射されながら、側面F3に向けて導光される。
【0058】
このような変形例では、赤外線Iの第1円偏光I1のみならず、第2円偏光も導光することができ、光の利用効率をさらに向上することができる。
なお、液晶層3は、3層以上の多層体であってもよい。また、液晶層3を構成する各層の螺旋ピッチが異なっていてもよい。
【0059】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図7に示す実施形態2は、図1に示した実施形態1と比較して、第1保護層11に対向する透明な第1カバー部材21が設けられた点で相違している。
【0060】
第1カバー部材21は、透明平板であり、例えば、ガラス板やアクリル板である。第1カバー部材21の厚さは、0.1mm~25mmであり、好ましくは、1mm~20mmである。
【0061】
支持体40は、光導波部1、配向膜2、液晶層3、及び、第1保護層11の積層体と、第1カバー部材21とをそれぞれ支持している。そして、支持体40は、第1保護層11と第1カバー部材21との間に空間S1を形成した状態で第1カバー部材21を支持している。空間S1は、例えば空気層であり、第1保護層11及び第1カバー部材21よりも低い屈折率を有する低屈折率層である。
【0062】
このような実施形態2においても、上記の実施形態1と同様の効果が得られる。加えて、第1保護層11が第1カバー部材21によって外気から遮蔽されるため、第1保護層11がたとえ吸湿性を有する材料によって形成されていたとしても、第1保護層11を介した液晶層3への水分浸入が抑制される。したがって、液晶層3における反射性能の経年劣化が抑制される。
【0063】
なお、図示した例では、第1カバー部材21が第1保護層11から離間しているが、第1カバー部材21が第1保護層11に接していてもよい。
【0064】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図8に示す実施形態3は、図7に示した実施形態2と比較して、さらに、光導波部1に対向する透明な第2カバー部材22が設けられた点で相違している。光導波部1、配向膜2、液晶層3、及び、第1保護層11の積層体は、第1カバー部材21と第2カバー部材22との間に設けられている。
【0065】
第2カバー部材22は、透明平板であり、例えば、ガラス板やアクリル板である。第2カバー部材22の厚さは、0.1mm~25mmであり、好ましくは、1mm~20mmである。
【0066】
支持体40は、光導波部1、配向膜2、液晶層3、及び、第1保護層11の積層体と、第1カバー部材21と、第2カバー部材22と、をそれぞれ支持している。そして、支持体40は、光導波部1と第2カバー部材22との間に空間S2を形成した状態で第2カバー部材22を支持している。空間S2は、例えば空気層であり、光導波部1及び第2カバー部材22よりも低い屈折率を有する低屈折率層である。
【0067】
このような実施形態3においても、上記の実施形態2と同様の効果が得られる。加えて、光導波部1が第2カバー部材22によって保護されているため、光導波部1の損傷が抑制され、光導波部1での不所望な光の散乱が抑制される。
【0068】
なお、図示した例では、第2カバー部材22が光導波部1から離間しているが、第2カバー部材22が光導波部1に接していてもよい。
【0069】
(実施形態4)
図9は、実施形態4に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図9に示す実施形態4は、図1に示した実施形態1と比較して、第1保護層11に重なる透明な第2保護層12が設けられた点で相違している。第1保護層11は、液晶層3と第2保護層12との間に位置し、液晶層3及び第2保護層12に接している。
【0070】
第2保護層12は、第1保護層11とは異なる材料によって形成され、しかも、第2保護層12の透湿度は、第1保護層11の透湿度より小さい。このような第2保護層12は、有機膜であってもよいし、無機膜であってもよい。
【0071】
以下に、第2保護層12を形成し得る有機膜としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネイト(PC)、アラミド、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン、フッ素樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィン系樹脂などが適用可能である。
また、第2保護層12を形成し得る無機膜としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiOx)などが適用可能である。
【0072】
第2保護層12が有機膜である場合、第2保護層12の厚さは、1μm~1000μmであり、好ましくは、2μm~100μmである。
第2保護層12が無機膜である場合、第2保護層12の厚さは、10nm~10μmであり、好ましくは、50nm~5μmである。
【0073】
このような実施形態4においても、上記の実施形態1と同様の効果が得られる。加えて、低透湿性を有する第2保護層12が第1保護層11のほぼ全面に重なっているため、第1保護層11がたとえ吸湿性を有する材料によって形成されていたとしても、第1保護層11を介した液晶層3への水分浸入が抑制される。したがって、液晶層3における反射性能の経年劣化が抑制される。
【0074】
(実施形態5)
図10は、実施形態5に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図10に示す実施形態5は、図9に示した実施形態4と比較して、第2保護層12に対向する透明な第1カバー部材21が設けられた点で相違している。第1カバー部材21の詳細については、実施形態2で説明した通りである。
【0075】
支持体40は、光導波部1、配向膜2、液晶層3、第1保護層11、及び、第2保護層12の積層体と、第1カバー部材21とをそれぞれ支持している。そして、支持体40は、第2保護層12と第1カバー部材21との間に空間S1を形成した状態で第1カバー部材21を支持している。空間S1は、空気層などの低屈折率層である。
【0076】
このような実施形態5においても、上記の実施形態4と同様の効果が得られる。加えて、第1保護層11及び第2保護層12が第1カバー部材21によって外気から遮蔽されるため、第1保護層11及び第2保護層12を介した液晶層3への水分浸入が抑制される。したがって、液晶層3における反射性能の経年劣化が抑制される。
【0077】
なお、図示した例では、第1カバー部材21が第2保護層12から離間しているが、第1カバー部材21が第2保護層12に接していてもよい。
【0078】
(実施形態6)
図11は、実施形態6に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図11に示す実施形態6は、図10に示した実施形態5と比較して、さらに、光導波部1に対向する透明な第2カバー部材22が設けられた点で相違している。第2カバー部材22の詳細については、実施形態3で説明した通りである。光導波部1、配向膜2、液晶層3、第1保護層11、及び、第2保護層12の積層体は、第1カバー部材21と第2カバー部材22との間に設けられている。
【0079】
支持体40は、光導波部1、配向膜2、液晶層3、第1保護層11、及び、第2保護層12の積層体と、第1カバー部材21と、第2カバー部材22と、をそれぞれ支持している。そして、支持体40は、光導波部1と第2カバー部材22との間に空間S2を形成した状態で第2カバー部材22を支持している。空間S2は、空気層などの低屈折率層である。
【0080】
このような実施形態6においても、上記の実施形態5と同様の効果が得られる。加えて、光導波部1が第2カバー部材22によって保護されているため、光導波部1の損傷が抑制され、光導波部1での不所望な光の散乱が抑制される。
【0081】
なお、図示した例では、第2カバー部材22が光導波部1から離間しているが、第2カバー部材22が光導波部1に接していてもよい。
【0082】
上記の実施形態2乃至6の各々について、図6を参照して説明した変形例を適用することができる。すなわち、液晶層3は、コレステリック液晶311を有する第1層3A、及び、コレステリック液晶312を有する第2層3Bの多層体であってもよい。また、液晶層3は、3層以上の多層体であってもよい。
【0083】
次に、本実施形態に係る液晶光学素子100の適用例として、太陽電池装置200について説明する。
【0084】
図12は、太陽電池装置200の外観の一例を示す図である。
太陽電池装置200は、上記したいずれかの液晶光学素子100と、発電装置210と、を備えている。発電装置210は、液晶光学素子100の一辺に沿って設けられている。発電装置210と対向する液晶光学素子100の一辺は、図1などに示した光導波部1の側面F3に沿った辺である。このような太陽電池装置200において、液晶光学素子100は、発電装置210に所定波長の光を導く導光素子として機能する。
【0085】
発電装置210は、複数の太陽電池を備えている。太陽電池は、光を受光して、受光した光のエネルギーを電力に変換するものである。つまり、太陽電池は、受光した光によって発電する。太陽電池の種類は、特に限定されない。例えば、太陽電池は、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機物系太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池、又は、量子ドット型太陽電池である。シリコン系太陽電池としては、アモルファスシリコンを備えた太陽電池や、多結晶シリコンを備えた太陽電池などが含まれる。
【0086】
図13は、太陽電池装置200の動作を説明するための図である。
光導波部1の第1主面F1は、屋外に面している。液晶層3は、屋内に面している。図13において、配向膜、第1保護層等の図示を省略している。
【0087】
液晶層3は、太陽光のうちの赤外線Iを反射するように構成されている。なお、液晶層3は、図1に示したように赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射して第2円偏光I2を透過するように構成されてもよいし、図6に示したように赤外線Iの第1円偏光I1及び第2円偏光I2を反射するように構成されてもよい。液晶層3で反射された赤外線Iは、側面F3に向かって液晶光学素子100を伝播する。発電装置210は、側面F3を透過した赤外線Iを受光して発電する。
【0088】
太陽光のうちの可視光V及び紫外線Uは、液晶光学素子100を透過する。特に、可視光Vの主要な成分である第1成分(青成分)、第2成分(緑成分)、及び、第3成分(赤成分)の各々は、液晶光学素子100を透過する。このため、太陽電池装置200を透過した光の着色を抑制することができる。また、太陽電池装置200における可視光Vの透過率の低下を抑制することができる。
【0089】
《実施例》
次に、赤外線の第1円偏光を反射するように形成した液晶層3の一実施例について説明する。
【0090】
図14は、液晶層3の反射スペクトルの測定結果を示す図である。
図の横軸は波長(nm)を示し、図の縦軸は反射率(%)を示している。
液晶層3において、屈折率異方性Δnは0.2であり、平均屈折率は1.66であり、コレステリック液晶31の螺旋ピッチPは530nmであり、コレステリック液晶31の周期Tは650nmとした。このとき、液晶層3の反射スペクトルを測定したところ、選択反射帯域Δλが820nm~1000nmであることが確認された。
【0091】
以上説明したように、本実施形態によれば、所望の反射性能を得ることが可能な液晶光学素子及びその製造方法を提供することができる。
【0092】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
100…液晶光学素子
1…光導波部 F1…第1主面 F2…第2主面 F3…側面
3…液晶層 31…コレステリック液晶 32…反射面
R1…第1領域 R2…第2領域
3A…第1層 3B…第2層
11…第1保護層 12…第2保護層
21…第1カバー部材 22…第2カバー部材
40…支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14