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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125441
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】液晶光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240911BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240911BHJP
   H01L 31/054 20140101ALN20240911BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
H01L31/04 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128318
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【テーマコード(参考)】
2H149
2H249
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2H149AA24
2H149AB01
2H149BA05
2H149EA03
2H149EA04
2H149EA05
2H149EA22
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA13Z
2H149FA15Z
2H149FA24W
2H149FA27W
2H149FA39W
2H149FA42Z
2H149FA56W
2H149FA66
2H149FA67
2H149FA68
2H149FA69
2H149FC00
2H149FC09
2H149FD03
2H249AA02
2H249AA06
2H249AA43
2H249AA51
2H249AA61
2H249AA64
5F151JA21
5F251JA21
(57)【要約】
【課題】光の利用効率の低下を抑制することが可能な液晶光学素子を提供する。
【解決手段】本実施形態の液晶光学素子は、第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する光導波部と、前記第2主面に配置された配向膜と、前記配向膜に重なり、コレステリック液晶を有し、前記光導波部を介して入射した光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する液晶層と、前記液晶層よりも低い屈折率を有する第1低屈折率層を介して前記液晶層に対向する透明な第1カバー部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する光導波部と、
前記第2主面に配置された配向膜と、
前記配向膜に重なり、コレステリック液晶を有し、前記光導波部を介して入射した光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する液晶層と、
前記液晶層よりも低い屈折率を有する第1低屈折率層を介して前記液晶層に対向する透明な第1カバー部材と、を備える、液晶光学素子。
【請求項2】
前記液晶層は、
前記コレステリック液晶からなる第1層と、
前記コレステリック液晶からなる第2層と、を備え、
前記第1層及び前記第2層において、前記コレステリック液晶は、同等の螺旋ピッチを有し、逆回りに旋回している、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
さらに、前記液晶層と前記第1カバー部材との間に前記第1低屈折率層が介在した状態で前記第1カバー部材の周縁部を前記液晶層に接着する第1接着剤を備える、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
さらに、前記光導波部よりも低い屈折率を有する第2低屈折率層を介して前記光導波部に対向する透明な第2カバー部材を備える、請求項3に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
さらに、前記光導波部と前記第2カバー部材との間に前記第2低屈折率層が介在した状態で前記第2カバー部材の周縁部を前記光導波部に接着する第2接着剤を備える、請求項4に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
さらに、前記液晶層と前記第1カバー部材との間に前記第1低屈折率層が介在した状態で前記第1カバー部材を支持する支持体を備える、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
さらに、前記光導波部よりも低い屈折率を有する第2低屈折率層を介して前記光導波部に対向する透明な第2カバー部材を備える、請求項6に記載の液晶光学素子。
【請求項8】
前記支持体は、前記光導波部と前記第2カバー部材との間に前記第2低屈折率層が介在した状態で前記第2カバー部材を支持している、請求項7に記載の液晶光学素子。
【請求項9】
さらに、前記光導波部、前記配向膜、及び、前記液晶層の積層体と前記支持体との間、前記第1カバー部材と前記支持体との間、及び、前記第2カバー部材と前記支持体との間にそれぞれ介在した緩衝材を備える、請求項8に記載の液晶光学素子。
【請求項10】
さらに、前記液晶層及び前記第1カバー部材に接し、前記第1低屈折率層で囲まれた第1主スペーサを備える、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項11】
さらに、前記液晶層から離間し、前記第1カバー部材に接し、前記第1低屈折率層で囲まれた第1副スペーサを備える、請求項10に記載の液晶光学素子。
【請求項12】
さらに、前記光導波部よりも低い屈折率を有する第2低屈折率層を介して前記光導波部に対向する透明な第2カバー部材と、
前記光導波部及び前記第2カバー部材に接し、前記第2低屈折率層で囲まれた第2主スペーサと、を備える、請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項13】
さらに、前記光導波部から離間し、前記第2カバー部材に接し、前記第2低屈折率層で囲まれた第2副スペーサを備える、請求項12に記載の液晶光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子は、波長λの光が入射した際に、入射光を0次回折光及び1次回折光に分割するものである。液晶材料を用いた光学素子では、格子周期の他に、液晶層の屈折率異方性Δn(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、及び、液晶層の厚さdといったパラメータの調整が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-522601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、光の利用効率の低下を抑制することが可能な液晶光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の液晶光学素子は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、を有する光導波部と、前記第2主面に配置された配向膜と、前記配向膜に重なり、コレステリック液晶を有し、前記光導波部を介して入射した光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する液晶層と、前記液晶層よりも低い屈折率を有する第1低屈折率層を介して前記液晶層に対向する透明な第1カバー部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態1に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図2図2は、液晶層3の構造を模式的に示す断面図である。
図3図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図4図4は、実施形態1に係る液晶光学素子100の変形例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、実施形態2に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図6図6は、実施形態3に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図7図7は、実施形態4に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実施形態5に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図9図9は、実施形態6に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図10図10は、実施形態7に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図11図11は、太陽電池装置200の外観の一例を示す図である。
図12図12は、図11に示した太陽電池装置200の動作を説明するための図である。
図13図13は、太陽電池装置200の外観の他の例を示す図である。
図14図14は、図13に示した太陽電池装置200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、光導波部1と、配向膜2と、液晶層3と、第1カバー部材21と、第1接着剤AD1と、を備えている。
【0010】
光導波部1は、光を透過する透明部材、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。光導波部1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。光導波部1は、任意の形状を取り得る。例えば、光導波部1は、湾曲していてもよい。光導波部1の屈折率は、例えば、空気の屈折率よりも大きい。光導波部1は、例えば、窓ガラスとして機能する。
【0011】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0012】
光導波部1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1主面F1と、第2主面F2と、側面F3と、を有している。第1主面F1及び第2主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。側面F3は、第1方向A1に沿って延びた面である。図1に示す例では、側面F3は、X-Z平面と略平行な面であるが、側面F3は、Y-Z平面と略平行な面を含んでいる。
【0013】
配向膜2は、第2主面F2に配置されている。配向膜2は、X-Y平面に沿って配向規制力を有する水平配向膜である。このような配向膜2は、例えばポリイミドなどの透明な材料によって形成されている。
【0014】
液晶層3は、第1方向A1において、配向膜2に重なっている。つまり、配向膜2は、光導波部1と液晶層3との間に位置し、また、光導波部1及び液晶層3に接している。液晶層3は、第1主面F1の側から入射した光LTiの少なくとも一部を光導波部1に向けて反射するものである。一例では、液晶層3は、光導波部1を介して入射した光LTiのうち、第1円偏光及び第1円偏光とは逆回りの第2円偏光の少なくとも一方を反射するコレステリック液晶を有している。なお、コレステリック液晶については、後に詳述するが、一方向に旋回したコレステリック液晶は、特定波長の光のうち、旋回方向に対応した円偏光を反射する反射面32を形成する。
【0015】
液晶層3において反射される第1円偏光及び第2円偏光は、例えば赤外線であるが、可視光であってもよいし、紫外線であってもよい。なお、本明細書において、液晶層3における「反射」とは、液晶層3の内部における回折を伴うものである。
【0016】
第1カバー部材21は、第1方向A1において、液晶層3に対向している。第1カバー部材21は、液晶層3から離間している。液晶層3と第1カバー部材21との間には、第1低屈折率層S1が介在している。第1低屈折率層S1は、液晶層3及び第1カバー部材21よりも低い屈折率を有している。第1低屈折率層S1は、例えば真空(屈折率;1.0)または空気層(屈折率;約1.0)である。
【0017】
第1カバー部材21は、透明平板であり、例えば、無機ガラスまたは透明樹脂によって形成されている。
無機ガラスとしては、例えば、ソーダ石灰ガラス(屈折率;約1.52)、ホウケイ酸ガラス(屈折率;約1.47)などが適用可能である。
透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(屈折率;1.49~1.53)、ポリエチレンテレフタレート(屈折率;約1.60)、ポリカーボネート(屈折率;約1.59)、ポリ塩化ビニル(屈折率;約1.54)などが適用可能である。
【0018】
第1カバー部材21の厚さは、0.1mm~25mmであり、好ましくは、1mm~20mmである。
【0019】
第1接着剤AD1は、液晶層3と第1カバー部材21との間に第1低屈折率層S1が介在した状態で第1カバー部材21の周縁部を液晶層3に接着している。第1接着剤AD1は、例えば連続したループ状に形成され、その内側で第1低屈折率層S1としての空気層を封止している。
【0020】
第1接着剤AD1としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、変性シリコーン樹脂などの化学反応系接着剤が適用可能である。また、第1接着剤AD1の他の例としては、水性系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤なども適用可能である。
【0021】
次に、図1に示す実施形態1において、液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0022】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iを含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、光導波部1に対して略垂直に入射するものとする。なお、光導波部1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。例えば、互いに異なる複数の入射角度をもって光導波部1に光LTiが入射してもよい。
【0023】
光LTiは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入し、第2主面F2から出射して、配向膜2を透過し、液晶層3に入射する。そして、液晶層3は、光LTiのうち、一部の光LTrを光導波部1に向けて反射し、他の光LTtを透過する。ここでは、光導波部1及び液晶層3における吸収等の光損失は無視している。
液晶層3で反射される光LTrは、例えば、所定波長の第1円偏光である。また、液晶層3を透過する光LTtは、所定波長の第2円偏光と、所定波長とは異なる波長の光を含んでいる。ここでの所定波長とは、例えば赤外線Iであり、液晶層3で反射される光LTrは赤外線Iの第1円偏光I1である。液晶層3を透過する光LTtは、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iの第2円偏光I2を含んでいる。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0024】
液晶層3は、第1円偏光I1を、光導波部1における光導波条件を満足する進入角θで、光導波部1に向けて反射する。ここでの進入角θとは、光導波部1と空気との界面で全反射を起こす臨界角θc以上の角度に相当する。進入角θは、光導波部1に直交する垂線に対する角度を示す。
【0025】
光導波部1、配向膜2、及び、液晶層3が同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の光導波体となり得る。この場合、光LTrは、光導波部1と空気との界面、及び、液晶層3と第1低屈折率層(例えば空気層)S1との界面において、反射を繰り返しながら、側面F3に向けて導光される。
【0026】
このような実施形態1によれば、液晶層3が第1カバー部材21によって保護されているため、液晶層3への汚れや水滴の付着が抑制されるとともに、液晶層3の損傷が抑制される。このため、液晶層3に汚れや水滴が付着することによる不所望な光の散乱、あるいは、液晶層3の損傷による不所望な光の散乱が抑制され、しかも、液晶層3での反射率の低下が抑制される。したがって、液晶光学素子100における光の利用効率の低下が抑制される。
【0027】
図2は、液晶層3の構造を模式的に示す断面図である。
なお、光導波部1は二点鎖線で示している。また、図1に示した配向膜及び第1カバー部材の図示は省略している。
【0028】
液晶層3は、螺旋状構造体として、コレステリック液晶31を有している。複数のコレステリック液晶31の各々は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AXを有している。螺旋軸AXは、光導波部1の第2主面F2に対して略垂直である。
コレステリック液晶31の各々は、第1方向A1に沿って螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(360度)を示す。螺旋ピッチPは、第1方向A1に沿ってほとんど変化することなく一定である。コレステリック液晶31の各々は、複数の液晶分子315を含んでいる。複数の液晶分子315は、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられている。
【0029】
液晶層3は、第1方向A1おいて第2主面F2に対向する第1境界面317と、第1境界面317の反対側の第2境界面319と、第1境界面317と第2境界面319との間の複数の反射面32と、を有している。第1境界面317は、光導波部1を透過した光LTiが液晶層3に入射する面である。第1境界面317及び第2境界面319の各々は、コレステリック液晶31の螺旋軸AXに対して略垂直である。第1境界面317及び第2境界面319の各々は、光導波部1(あるいは第2主面F2)に略平行である。
【0030】
第1境界面317は、コレステリック液晶31の両端部のうちの一端部e1に位置する液晶分子315を含んでいる。第1境界面317は、図示しない配向膜と液晶層3との境界面に相当する。
第2境界面319は、コレステリック液晶31の両端部のうちの他端部e2に位置する液晶分子315を含んでいる。第2境界面319は、液晶層3と図示しない第1低屈折率層との境界面に相当する。
【0031】
図2に示す例では、複数の反射面32は、互いに略平行である。反射面32は、第1境界面317及び光導波部1(あるいは第2主面F2)に対して傾斜しており、一方向に延びる略平面形状を有している。反射面32は、ブラッグの法則に従って、第1境界面317から入射した光LTiのうち一部の光LTrを選択反射する。具体的には、反射面32は、光LTrの波面WFが反射面32と略平行になるように、光LTrを反射する。更に具体的には、反射面32は、第1境界面317に対する反射面32の傾斜角度φに応じて光LTrを反射する。
【0032】
反射面32は、次のように定義できる。すなわち、液晶層3において選択的に反射される所定波長の光(例えば円偏光)が感じる屈折率は、光が液晶層3の内部を進行するのに伴って徐々に変化する。このため、液晶層3においてフレネル反射が徐々に起こる。そして、複数のコレステリック液晶31において光が感じる屈折率が最も大きく変化する位置で、フレネル反射が最も強く起こる。つまり、反射面32は、液晶層3においてフレネル反射が最も強く起こる面に相当する。
【0033】
複数のコレステリック液晶31のうち、第2方向A2に隣接するコレステリック液晶31の各々の液晶分子315の配向方向は互いに異なっている。また、複数のコレステリック液晶31のうち、第2方向A2に隣接するコレステリック液晶31の各々の空間位相は互いに異なっている。反射面32は、配向方向が揃った液晶分子315によって形成される面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。つまり、複数の反射面32の各々は、第1境界面317あるいは光導波部1に対して傾斜している。
【0034】
なお、反射面32の形状は、図2に示したような平面形状に限らず、凹状や凸状の曲面形状であってもよく、特に限定されるものではない。また、反射面32の一部に凸凹を有していたり、反射面32の傾斜角度φが均一でなかったり、複数の反射面32が、規則的に整列していなかったりしてもよい。複数のコレステリック液晶31の空間位相分布に応じて、任意の形状の反射面32を構成することができる。
【0035】
図2では、図面の簡略化のため、X-Y平面内に位置する複数の液晶分子315のうち、平均的配向方向を向いている液晶分子315を代表して示している。
【0036】
コレステリック液晶31は、選択反射帯域Δλに含まれる所定波長λの光のうち、コレステリック液晶31の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を反射する。例えば、コレステリック液晶31の旋回方向が右回りの場合、所定波長λの光のうち、右回りの円偏光を反射し、左回りの円偏光を透過する。同様に、コレステリック液晶31の旋回方向が左回りの場合、所定波長λの光のうち、左回りの円偏光を反射し、右回りの円偏光を透過する。
【0037】
コレステリック液晶31の螺旋ピッチをP、液晶分子315の異常光に対する屈折率をne、液晶分子315の常光に対する屈折率をnoと記載すると、一般的に、垂直入射した光に対するコレステリック液晶31の選択反射帯域Δλは、「no*P~ne*P」で示される。なお、詳細には、コレステリック液晶31の選択反射帯域Δλは、「no*P~ne*P」の範囲に対して、反射面32の傾斜角度φや、第1境界面317への入射角度などに応じて変化する。
【0038】
図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図3には、コレステリック液晶31の空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、コレステリック液晶31に含まれる液晶分子315のうち、第1境界面317に位置する液晶分子315の配向方向として示している。
【0039】
第2方向A2に沿って並んだコレステリック液晶31の各々について、第1境界面317に位置する液晶分子315の配向方向は互いに異なる。つまり、第1境界面317におけるコレステリック液晶31の空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだコレステリック液晶31の各々について、第1境界面317に位置する液晶分子315の配向方向は略一致する。つまり、第1境界面317におけるコレステリック液晶31の空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0040】
特に、第2方向A2に並んだコレステリック液晶31に着目すると、各液晶分子315の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第1境界面317において、第2方向A2に沿って並んだ複数の液晶分子315の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ複数のコレステリック液晶31の空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、図2に示した液晶層3のように、第1境界面317及び光導波部1に対して傾斜する反射面32が形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子315の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子315の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子315の長軸方向に相当する。このような液晶分子315の配向方向は、配向膜2になされた配向処理によって制御される。
【0041】
ここで、図3に示すように、第1境界面317において、第2方向A2に沿って液晶分子315の配向方向が180度だけ変化するときの2つのコレステリック液晶31の間隔をコレステリック液晶31の周期Tと定義する。なお、図3においてDPは液晶分子315の旋回方向を示している。図2に示した反射面32の傾斜角度φは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。
【0042】
液晶層3は、以下のようにして形成される。例えば、所定の配向処理がなされた配向膜2の上に液晶材料を塗布した後、複数の液晶分子315に光を照射し、複数の液晶分子315を重合させることで、液晶層3が形成される。又は、所定の温度又は所定の濃度において液晶状態を示す高分子液晶材料を、複数のコレステリック液晶31を形成するように配向制御し、その後、配向を維持したまま固体に転移させることで、液晶層3が形成される。
液晶層3において、隣り合うコレステリック液晶31は、重合又は固体への転移によって、コレステリック液晶31の配向を維持したまま、つまり、コレステリック液晶31の空間位相を維持したまま、互いに結合している。その結果、液晶層3において、各液晶分子315の配向方向が固定されている。
【0043】
一例として、選択反射帯域Δλが赤外線となるように、コレステリック液晶31の螺旋ピッチPが調整された場合について説明する。液晶層3の反射面32での反射率を高くする観点では、液晶層3の第1方向A1に沿った厚さは、螺旋ピッチPの数倍から10倍程度とすることが望ましい。つまり、液晶層3の厚さは、1~10μm程度となり、好ましくは2~7μmとなる。
【0044】
(変形例)
図4は、実施形態1に係る液晶光学素子100の変形例を模式的に示す断面図である。図4に示す例は、図1に示した例と比較して、液晶層3が、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311を有する第1層3Aと、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶312を有する第2層3Bと、を有している点で相違している。第1層3A及び第2層3Bは、第1方向A1に沿って重なっている。第1層3Aは配向膜2と第2層3Bとの間に位置し、第2層3Bは第1層3Aと第1低屈折率層S1との間に位置している。
【0045】
第1層3Aに含まれるコレステリック液晶311は、選択反射帯域のうち、第1旋回方向の第1円偏光を反射するように構成されている。コレステリック液晶311は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX1を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP11を有している。
第2層3Bに含まれるコレステリック液晶312は、選択反射帯域のうち、第2旋回方向の第2円偏光を反射するように構成されている。コレステリック液晶312は、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AX2を有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチP12を有している。螺旋軸AX1は、螺旋軸AX2に平行である。螺旋ピッチP11は、螺旋ピッチP12と同等である。
【0046】
コレステリック液晶311及び312は、ともに選択反射帯域として赤外線Iを反射するように形成されている。第1層3Aのコレステリック液晶311は、赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射する反射面321を形成する。第2層3Bのコレステリック液晶312は、第2層3Bにおいて、赤外線Iのうちの第2円偏光I2を反射する反射面322を形成する。
【0047】
このような液晶光学素子100においては、可視光V、紫外線U、及び、赤外線Iを含む光LTiが入射すると、液晶層3は、赤外線Iを含む光LTrを反射し、可視光V及び紫外線Uを含む光LTtを透過する。
液晶層3の第1層3Aに形成された反射面321では、赤外線Iのうちの第1円偏光I1が光導波部1に向けて反射される。また、液晶層3の第2層3Bに形成された反射面322では、第1層3Aを透過した赤外線Iの第2円偏光I2が光導波部1に向けて反射される。液晶層3で反射された第1円偏光I1及び第2円偏光I2を含む光LTrは、光導波部1と空気との界面、及び、第2層3Bと第1低屈折率層S1との界面で反射されながら、側面F3に向けて導光される。
【0048】
このような変形例では、赤外線Iの第1円偏光I1のみならず、第2円偏光I2も導光することができ、光の利用効率をさらに向上することができる。
なお、液晶層3は、3層以上の多層体であってもよい。また、液晶層3を構成する各層の螺旋ピッチが異なっていてもよい。
【0049】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図5に示す実施形態2は、図1に示した実施形態1と比較して、さらに、光導波部1に対向する透明な第2カバー部材22が設けられた点で相違している。光導波部1、配向膜2、及び、液晶層3の積層体は、第1カバー部材21と第2カバー部材22との間に設けられている。
【0050】
第2カバー部材22は、光導波部1から離間している。光導波部1と第2カバー部材22との間には、第2低屈折率層S2が介在している。第2低屈折率層S2は、光導波部1及び第2カバー部材22よりも低い屈折率を有している。第2低屈折率層S2は、例えば真空(屈折率;1.0)または空気層(屈折率;約1.0)である。
【0051】
第2カバー部材22は、透明平板であり、第1カバー部材21と同様に、無機ガラスまたは透明樹脂によって形成されている。第2カバー部材22の厚さは、0.1mm~25mmであり、好ましくは、1mm~20mmである。
【0052】
第2接着剤AD2は、光導波部1と第2カバー部材22との間に第2低屈折率層S2が介在した状態で第2カバー部材22の周縁部を光導波部1に接着している。第2接着剤AD2は、例えば連続したループ状に形成され、その内側で第2低屈折率層S2としての空気層を封止している。
第2接着剤AD2は、上記した第1接着剤AD1と同様のものが適用可能である。
【0053】
このような実施形態2においても、上記の実施形態1と同様の効果が得られる。加えて、光導波部1が第2カバー部材22によって保護されているため、光導波部1への汚れや水滴の付着が抑制されるとともに、光導波部1の損傷が抑制される。このため、光導波部1に汚れや水滴が付着することによる不所望な光の散乱、あるいは、光導波部1の損傷による不所望な光の散乱が抑制される。したがって、液晶光学素子100における光の利用効率の低下が抑制される。
【0054】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図6に示す実施形態3は、図1に示した実施形態1と比較して、第1接着剤AD1の代わりに、第1カバー部材21を支持する支持体40が設けられた点で相違している。
【0055】
支持体40は、光導波部1、配向膜2、及び、液晶層3の積層体と、第1カバー部材21とをそれぞれ支持している。そして、支持体40は、液晶層3と第1カバー部材21との間に第1低屈折率層S1が介在した状態で第1カバー部材21を支持している。第1低屈折率層S1は、空気層などである。
支持体40は、アルミニウム、鉄、スチールなどの金属、硬質塩化ビニル樹脂などの樹脂、木材、複合素材などで形成されている。
【0056】
このような実施形態3においても、上記の実施形態1と同様の効果が得られる。
【0057】
(実施形態4)
図7は、実施形態4に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図7に示す実施形態4は、図5に示した実施形態2と比較して、第1接着剤AD1及び第2接着剤AD2の代わりに、第1カバー部材21及び第2カバー部材22を支持する支持体40が設けられた点で相違している。第1カバー部材21は第1低屈折率層S1を介して液晶層3に対向し、第2カバー部材22は第2低屈折率層S2を介して光導波部1に対向している。
【0058】
支持体40は、光導波部1、配向膜2、及び、液晶層3の積層体と、第1カバー部材21と、第2カバー部材22とをそれぞれ支持している。そして、支持体40は、液晶層3と第1カバー部材21との間に第1低屈折率層S1が介在した状態で第1カバー部材21を支持するとともに、光導波部1と第2カバー部材22との間に第2低屈折率層S2が介在した状態で第2カバー部材22を支持している。第1低屈折率層S1及び第2低屈折率層S2は、空気層などである。
支持体40を形成する材料については、実施形態3で説明した通りである。
【0059】
このような実施形態4においても、上記の実施形態2と同様の効果が得られる。
【0060】
(実施形態5)
図8は、実施形態5に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図8に示す実施形態5は、図7に示した実施形態4と比較して、支持体40の支持面に緩衝材41が設けられた点で相違している。緩衝材41は、光導波部1、配向膜2、及び、液晶層3の積層体と支持体40との間に介在している。また、緩衝材41は、第1カバー部材21と支持体40との間に介在している。さらに、緩衝材41は、第2カバー部材22と支持体40との間に介在している。
【0061】
このような緩衝材41は、支持体40よりも柔らかい材料によって形成されている。緩衝材41を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム素材や、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、発泡ポリプロピレンなどの緩衝素材などが適用可能である。
【0062】
このような実施形態5においても、上記の実施形態2と同様の効果が得られる。加えて、光導波部1、液晶層3、第1カバー部材21、第2カバー部材22の各々が硬質の支持体40と接することによる損傷が抑制される。
【0063】
なお、実施形態5で説明した緩衝材41は、図6に示した実施形態3においても適用可能であり、光導波部1、配向膜2、及び、液晶層3の積層体と支持体40との間、第1カバー部材21と支持体40との間にそれぞれ緩衝材41が介在していてもよい。
【0064】
(実施形態6)
図9は、実施形態6に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図9に示す実施形態6は、図5に示した実施形態2と比較して、第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2が設けられた点で相違している。
【0065】
第1主スペーサMS1は、液晶層3及び第1カバー部材21に接している。第1主スペーサMS1は、第1カバー部材21から液晶層3に向かって先細る柱状に形成されている。複数の第1主スペーサMS1は、第1接着剤AD1で囲まれた内側に配置され、それぞれ第1低屈折率層S1で囲まれている。また、複数の第1主スペーサMS1は、ほぼ同一の高さH1を有しており、第1カバー部材21と液晶層3との間にほぼ均一な厚さの第1低屈折率層S1を形成している。
【0066】
第2主スペーサMS2は、光導波部1及び第2カバー部材22に接している。第2主スペーサMS2は、第2カバー部材22から光導波部1に向かって先細る柱状に形成されている。複数の第2主スペーサMS2は、第2接着剤AD2で囲まれた内側に配置され、それぞれ第2低屈折率層S2で囲まれている。また、複数の第2主スペーサMS2は、ほぼ同一の高さH2を有しており、第2カバー部材22と光導波部1との間にほぼ均一な厚さの第2低屈折率層S2を形成している。高さH1は、一例では高さH2と同一であるが、高さH2とは異なっていてもよい。
【0067】
図9に示す例では、第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2は、互いに重畳する位置に配置されているが、互いにずれた位置に配置されていてもよい。また、第1主スペーサMS1の個数は、一例では第2主スペーサMS2の個数と同一であるが、第2主スペーサMS2の個数とは異なっていてもよい。また、第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2のいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0068】
第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2は、透明である。第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2は、視認されにくくする観点では、第1カバー部材21及び第2カバー部材22の屈折率と同等の屈折率を有する材料で形成されることが望ましい。一例では、第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2は、透明なアクリル樹脂(屈折率;1.49~1.53)によって形成されている。
【0069】
このような実施形態6においても、上記の実施形態2と同様の効果が得られる。加えて、第1カバー部材21または第2カバー部材22に強い衝撃が加わったとしても、第1カバー部材21と液晶層3との間隔(第1低屈折率層S1の厚さ)、及び、第2カバー部材22と光導波部1との間隔(第2低屈折率層S2の厚さ)を保持することができる。このため、これらの間隔の変化に起因した干渉による見栄えの低下が抑制される。
【0070】
(実施形態7)
図10は、実施形態7に係る液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
図10に示す実施形態7は、図9に示した実施形態6と比較して、第1主スペーサMS1の一部を第1副スペーサSS1に置換し、第2主スペーサMS2の一部を第2副スペーサSS2に置換した点で相違している。
【0071】
第1副スペーサSS1は、液晶層3から離間し、第1カバー部材21に接している。第1副スペーサSS1は、第1カバー部材21から液晶層3に向かって先細る柱状に形成されている。複数の第1副スペーサSS1は、第1接着剤AD1で囲まれた内側に配置され、それぞれ第1低屈折率層S1で囲まれている。第1副スペーサSS1と液晶層3との間には、第1低屈折率層S1が介在している。第1副スペーサSS1の高さH11は、第1主スペーサMS1の高さH1より小さい(H11<H1)。第1主スペーサMS1の個数は、第1副スペーサSS1の個数より少ないことが望ましい。
【0072】
第2副スペーサSS2は、光導波部1から離間し、第2カバー部材22に接している。第2副スペーサSS2は、第2カバー部材22から光導波部1に向かって先細る柱状に形成されている。複数の第2副スペーサSS2は、第2接着剤AD2で囲まれた内側に配置され、それぞれ第2低屈折率層S2で囲まれている。第2副スペーサSS2と光導波部1との間には、第2低屈折率層S2が介在している。第2副スペーサSS2の高さH21は、第2主スペーサMS2の高さH2より小さい(H21<H2)。第2主スペーサMS2の個数は、第2副スペーサSS2の個数より少ないことが望ましい。
【0073】
図10に示す例では、第1副スペーサSS1及び第2副スペーサSS2は、互いに重畳する位置に配置されているが、互いにずれた位置に配置されていてもよい。また、第1主スペーサMS1と第2副スペーサSS2とが重畳するように配置されてもよいし、第2主スペーサMS2と第1副スペーサSS1とが重畳するように配置されてもよい。
また、第1副スペーサSS1の個数は、一例では第2副スペーサSS2の個数と同一であるが、第2副スペーサSS2の個数とは異なっていてもよい。また、第1副スペーサSS1及び第2副スペーサSS2のいずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0074】
第1副スペーサSS1及び第2副スペーサSS2は、透明であり、第1主スペーサMS1及び第2主スペーサMS2と同様の材料によって形成されている。
【0075】
このような実施形態7においても、上記の実施形態2と同様の効果が得られる。加えて、液晶層3に接する第1主スペーサMS1の個数を減らすことで、液晶層3を伝播する光の漏れ出しあるいは散乱が抑制される。また、光導波部1に接する第2主スペーサMS2の個数を減らすことで、光導波部1を伝播する光の漏れ出しあるいは散乱が抑制される。これにより、液晶光学素子100における光の利用効率の低下が抑制される。
【0076】
また、第1主スペーサMS1及び第1カバー部材21が変形するような強い衝撃が加わったときに、第1副スペーサSS1が液晶層3に接し、また、第2主スペーサMS2及び第2カバー部材22が変形するような強い衝撃が加わったときに、第2副スペーサSS2が光導波部1に接する。これにより、第1カバー部材21と液晶層3との間隔(第1低屈折率層S1の厚さ)、及び、第2カバー部材22と光導波部1との間隔(第2低屈折率層S2の厚さ)を保持することができる。このため、これらの間隔の変化に起因した干渉による見栄えの低下が抑制される。
【0077】
上記の実施形態2乃至7の各々について、図4を参照して説明した変形例を適用することができる。すなわち、液晶層3は、コレステリック液晶311を有する第1層3A、及び、コレステリック液晶312を有する第2層3Bの多層体であってもよい。また、液晶層3は、3層以上の多層体であってもよい。
また、図9及び図10に示した第1接着剤AD1及び第2接着剤AD2の代わりに、図7に示した支持体40が適用されてもよいし、図8に示した緩衝材41付きの支持体40が適用されてもよい。
【0078】
次に、本実施形態に係る液晶光学素子100の適用例として、太陽電池装置200について説明する。
【0079】
図11は、太陽電池装置200の外観の一例を示す図である。
太陽電池装置200は、上記したいずれかの液晶光学素子100と、発電装置210と、を備えている。発電装置210は、液晶光学素子100の一辺101に沿って設けられている。発電装置210と対向する液晶光学素子100の一辺101は、図1などに示した光導波部1の側面F3に沿った辺である。このような太陽電池装置200において、液晶光学素子100は、発電装置210に所定波長の光を導く導光素子として機能する。
【0080】
なお、液晶光学素子100として、図6に示した実施形態3、図7に示した実施形態4、及び、図8に示した実施形態5で説明した支持体40を備える液晶光学素子100が適用される場合、支持体40は、点線で示すように、液晶光学素子100の他の三辺102乃至104に設けられる。
【0081】
発電装置210は、複数の太陽電池を備えている。太陽電池は、光を受光して、受光した光のエネルギーを電力に変換するものである。つまり、太陽電池は、受光した光によって発電する。太陽電池の種類は、特に限定されない。例えば、太陽電池は、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機物系太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池、又は、量子ドット型太陽電池である。シリコン系太陽電池としては、アモルファスシリコンを備えた太陽電池や、多結晶シリコンを備えた太陽電池などが含まれる。
【0082】
図12は、図11に示した太陽電池装置200の動作を説明するための図である。
光導波部1の第1主面F1は、屋外に面している。液晶層3は、屋内に面している。図12において、配向膜、第1カバー部材等の図示を省略している。
【0083】
液晶層3は、太陽光のうちの赤外線Iを反射するように構成されている。なお、液晶層3は、図1に示したように赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射して第2円偏光I2を透過するように構成されてもよいし、図4に示したように赤外線Iの第1円偏光I1及び第2円偏光I2を反射するように構成されてもよい。液晶層3で反射された赤外線Iは、側面F3に向かって液晶光学素子100を伝播する。発電装置210は、側面F3を透過した赤外線Iを受光して発電する。
【0084】
太陽光のうちの可視光V及び紫外線Uは、液晶光学素子100を透過する。特に、可視光Vの主要な成分である第1成分(青成分)、第2成分(緑成分)、及び、第3成分(赤成分)の各々は、液晶光学素子100を透過する。このため、太陽電池装置200を透過した光の着色を抑制することができる。また、太陽電池装置200における可視光Vの透過率の低下を抑制することができる。
【0085】
図13は、太陽電池装置200の外観の他の例を示す図である。
図14は、図13に示した太陽電池装置200の発電装置210を含む断面図である。
図13及び図14に示す例は、図11及び図12に示した例と比較して、支持体40が液晶光学素子100の4辺101乃至104に設けられた点で相違している。液晶光学素子100の一辺101あるいは光導波部1の側面F3と対向する発電装置210は、支持体40で覆われている。液晶光学素子100の他の三辺102乃至104も支持体40で覆われている。
このような太陽電池装置200においても、光導波部1の第1主面F1が屋外に面するように配置されることで、図12を参照して説明したように動作し、上記したのと同様の効果が得られる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、光の利用効率の低下を抑制することが可能な液晶光学素子を提供することができる。
【0087】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
100…液晶光学素子
1…光導波部 F1…第1主面 F2…第2主面 F3…側面
3…液晶層 31…コレステリック液晶 32…反射面
3A…第1層 3B…第2層
21…第1カバー部材 22…第2カバー部材
40…支持体 41…緩衝材
S1…第1低屈折率層 S2…第2低屈折率層
AD1…第1接着剤 AD2…第2接着剤
MS1…第1主スペーサ MS2…第2主スペーサ
SS1…第1副スペーサ SS2…第2副スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14