(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125557
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】ビニル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/02 20060101AFI20240911BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20240911BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240911BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240911BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08G61/02
C08F299/02
C08J5/24 CER
B32B5/28 Z
B32B27/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033445
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】宗 正浩
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J032
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD42
4F072AE02
4F072AF14
4F072AF23
4F072AF24
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4F072AL13
4F100AK11
4F100AK11A
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4J127FA07
4J127FA14
4J127FA38
4J127FA40
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】低い誘電率、低い誘電正接でありながら、高いガラス転移温度を有する硬化物を与えるビニル樹脂を、環境対応要求を満たしながら製造する方法を提供する。
【解決手段】ヒドロキシ樹脂と、不飽和結合を含有する酸無水物又は酸ハロゲン化物の一種以上とを、有機溶媒の存在下において反応させるビニル樹脂の製造方法であって、上記有機溶媒は、25℃での比誘電率が2.0以上7.0以下であり、23℃における水への溶解度が0.5g/100g以上15g/100g以下であり、常圧での沸点が75℃以上160℃以下であることを特徴とするビニル樹脂の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ樹脂と、不飽和結合を含有する酸無水物又は酸ハロゲン化物の一種以上とを、有機溶媒の存在下において反応させるビニル樹脂の製造方法であって、上記有機溶媒は、25℃での比誘電率が2.0以上7.0以下であり、23℃における水への溶解度が0.5g/100g以上15g/100g以下であり、常圧での沸点が75℃以上160℃以下であることを特徴とするビニル樹脂の製造方法。
【請求項2】
得られた反応物としてのビニル樹脂を、100~180℃の温度範囲の減圧下で、溶媒及び揮発性不純物を除去して固形化する請求項1に記載のビニル樹脂の製造方法。
【請求項3】
ヒドロキシ樹脂が、下記一般式(3)で表されるヒドロキシ樹脂である請求項1又は2に記載のビニル樹脂の製造方法。
【化1】
ここで、R
1は独立に、炭素数1~12の炭化水素基を示し、R
11は水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を示し、iは0~3の整数であり、nは繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数である。
【請求項4】
請求項3に記載のビニル樹脂の製造方法で得られることを特徴とする下記一般式(1)で表されるビニル樹脂。
【化2】
ここで、R
1、R
11、i、及びnは、それぞれ上記一般式(3)における定義と同義である。Xは独立に、水素原子又は上記式(1a)で表されるビニル基含有基を示し、少なくとも1つはビニル基含有基であり、R
2は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数1~8のアルキル基のアルケニル基である。
【請求項5】
請求項4に記載のビニル樹脂を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項4に記載のビニル樹脂とラジカル重合開始剤とを必須成分として含有するビニル樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のビニル樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
請求項6に記載のビニル樹脂組成物又はその半硬化物と、繊維質基材とからなるプリプレグ。
【請求項9】
請求項6に記載のビニル樹脂組成物又はその半硬化物の樹脂層と、支持フィルムとからなる樹脂シート。
【請求項10】
請求項6に記載のビニル樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のプリント基板、封止材、注型材等に有用なビニル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加にともない高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有する電気絶縁材料が求められている。さらに、それら電気絶縁材料が使われているプリント基板又は電子部品は実装時に高温のハンダリフローに曝されるために耐熱性の高い、すなわち高いガラス転移温度を示す材料が望まれている。特に最近は、環境問題から融点の高い鉛フリーのハンダが使われるために、より耐熱性の高い電気絶縁材料の要求が高まってきている。これらの要求に対し、従来、種々の化学構造を持つビニル樹脂を使用した硬化樹脂が提案されている。
【0003】
また、一般的にビニル樹脂を反応及び抽出する溶媒は、ベンゼン、トルエンやキシレン等の芳香族溶媒が使用されているが、環境対応の観点からこれらの溶剤を使用しない条件での合成が求められている。
【0004】
特許文献1では、キシレン等の水と共沸する溶剤中で、フェノール化合物と不飽和基含有カルボン酸とを酸触媒下、ホウ酸及び2,2-ジアルキルマロン酸を加えエステル化する製造方法が報告されているが、エステル基の導入率が低い課題があった。
【0005】
特許文献2では、ポリフェニレンエーテルと不飽和基含有カルボン酸無水物との反応を4-ジアルキルアミノピリジン存在下、トルエン等の芳香族溶媒中で行うことが示されているが、近年の環境対応によるトルエンフリー化には対応できていなかった。
【0006】
特許文献3では、アルカリ触媒として酢酸ナトリウムの存在下、ポリフェニレンエーテルを不飽和基含有カルボン酸無水物類と反応させることにより、末端に不飽和基を導入したポリフェニレンエーテルが得られることが記載されているが、反応性が低いために過剰量の不飽和基含有カルボン酸無水物が必要であった。
【0007】
特許文献4では、炭酸カリウム等のアルカリ化合物存在下、ポリフェニレンエーテルと(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる方法が記載されているが、大過剰のアルカリ化合物が必要なうえ、最適な反応溶媒はトルエンとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-105667号公報
【特許文献2】特表2007-507592号公報
【特許文献3】特開2019―210451号公報
【特許文献4】WO2022/163360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、低い誘電率、低い誘電正接でありながら、高いガラス転移温度を有する硬化物を与えるビニル樹脂及びその樹脂組成物を製造する方法であり、電気・電子産業、宇宙・航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料として用いることができる樹脂組成物、硬化物又はこれを含む材料を、環境対応要求を満たした状態で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、特定の性状の有機溶媒を使用することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、ヒドロキシ樹脂と、不飽和結合を含有する酸無水物又は酸ハロゲン化物の一種以上とを、有機溶媒の存在下において反応させるビニル樹脂の製造方法であって、上記有機溶媒は、25℃での比誘電率が2.0以上7.0以下であり、23℃における水への溶解度が0.5g/100g以上15g/100g以下であり、常圧での沸点が75℃以上160℃以下であることを特徴とするビニル樹脂の製造方法である。そして、上記ビニル樹脂を、100~180℃の温度範囲の減圧下で、溶媒及び揮発性不純物を除去して固形化することが好ましい。
【0012】
上記ヒドロキシ樹脂は、下記一般式(3)で表されるヒドロキシ樹脂が好ましい。
【化1】
ここで、R
1は独立に、炭素数1~12の炭化水素基を示し、R
11は水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を示し、iは0~3の整数であり、nは繰り返し数を示し、その平均値は0~5の数である。
【0013】
本発明の製造方法で得られるビニル樹脂は、下記一般式(1)で表されるビニル樹脂である。
【化2】
ここで、R
1、R
11、i、及びnは、それぞれ上記一般式(3)における定義と同義である。Xは独立に、水素原子又は上記式(1a)で表されるビニル基含有基を示し、少なくとも1つはビニル基含有基であり、R
2は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、又は炭素数1~8のアルケニル基である。
【0014】
本発明は、ビニル樹脂とラジカル重合開始剤とを必須成分として含有するビニル樹脂組成物であり、ビニル樹脂又はビニル樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
さらにはビニル樹脂組成物又はその半硬化物と、繊維質基材とからなる、プリプレグ及び支持フィルムとを備える樹脂シートであり、ビニル樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える積層板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、低い誘電率、低い誘電正接でありながら、高いガラス転移温度を有する硬化物を与えるビニル樹脂の製造方法及びその樹脂組成物を製造する方法であり、電気・電子産業、宇宙・航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料として用いることができる樹脂組成物、硬化物又はこれを含む材料を、環境対応要求を満たした状態で提供することができ、高速通信用電子材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1で得られたビニル樹脂のGPCチャートを示す。
【
図2】実施例1で得られたビニル樹脂のIRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ヒドロキシ樹脂と、不飽和結合を含有する酸無水物又は酸ハロゲン化物の一種以上とを、有機溶媒存在下において反応させるビニル樹脂の製造方法であって、使用する有機溶媒としては、25℃での比誘電率が2.0以上7.0以下であり、23℃における水への溶解度が0.5g/100g以上15g/100g以下であり、常圧での沸点が75℃以上160℃以下であることを特徴とする。そして、反応生成物としてのビニル樹脂を、100~180℃の温度範囲の減圧下で、溶媒及び揮発性不純物を除去して固形化することが好ましい。
【0018】
本発明の製法によって得られるビニル樹脂は、特に好ましくは、下記一般式(1)で表される。
【化3】
【0019】
一般式(1)において、R1は炭素数1~12の炭化水素基を示し、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、又はアリル基が好ましい。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、メチルブチル基、n-ヘキシル基、ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、トリメチルブチル基、n-オクチル基、ジメチルペンチル基、エチルペンチル基、イソオクチル基、エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基等の炭化水素基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、トリメチルシクロヘキシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、シクロドデシル基等の炭素数5~12のシクロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、スチリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
炭素数7~12のアラルキル基としては、ベンジル基、α-メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
これら以外にも、インダニル基、ジシクロペンテニル基、ノルボルニル基、デカヒドロナフチル基等の多環構造基が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの置換基の中では、入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、メチル基、フェニル基、ベンジル基、α-メチルベンジル基、ジシクロペンテニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。R1の置換位置は、オキシ基に対して、オルソ位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、オルソ位が好ましい。
【0020】
R11は水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を示す。R11が炭素数1~12の炭化水素基の場合、R1と同様の置換基が好ましい。
【0021】
iはR1の置換数であって0~3の整数であり、好ましくは1、2又は3、より好ましくは2又は3である。
【0022】
一般式(1)において、Xは独立に、水素原子、又は下記式(1a)で表されるビニル基含有基を示し、少なくとも1つはビニル基含有基であり、原料のビニル基含有酸無水物又は酸ハロゲン化物に由来する基である。
【化4】
【0023】
式(1a)において、R2は、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、及びオクテニル基等が挙げられる。R2は水素原子又はメチル基が好ましい。
【0024】
一般式(1)において、nは繰り返し数であって、0以上の数を示し、その平均値で0~5、好ましくは0.1~5の数を示す。平均値は数平均である。耐熱性向上目的では、3官能以上が好ましいため、nは1.1~4.0が好ましく、1.2~3.0がより好ましい。また、低粘度化目的では、nは0.1~1が好ましく、0.1~0.5以下がより好ましく、0.1~0.2が更に好ましい。nが1未満の場合は、i(置換基R1の数)は1以上が必須であり、2又は3が好ましい。
【0025】
本発明の製法によって得られるビニル樹脂は、平均分子量が、重量平均分子量(Mw)として、好ましくは400~2,000、より好ましくは450~1,000であり、数平均分子量(Mn)として、好ましくは300~2,000、より好ましくは400~1,000、更に好ましくは450~800である。ビニル当量(g/eq.)は、好ましくは200~600、より好ましくは220~400である。一方、水酸基当量(g/eq.)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上であり、特に好ましくは20,000~30,000の範囲である。
分子量分布としては、n=1体含有量が好ましくは50~95面積%、より好ましくは60~90面積%、n=2体以上の含有量が好ましくは5~50面積%、より好ましくは10~40面積%である。低粘度化目的では、この範囲ではなく、n=0体含有量が好ましくは50~95面積%、好ましくは60~90面積%であり、n=1体含有量が好ましくは5~50面積%、n=2体以上の含有量は5面積%未満が好ましい。
【0026】
本発明の一般式(3)で表されるビニル樹脂は、下記一般式(3)で表されるヒドロキシ樹脂と、下記一般式(4a)で表される酸無水物又は下記一般式(4b)で表される酸ハロゲン化物とを反応させることによって、好適に得ることができる。
【化5】
【化6】
【0027】
一般式(3)において、R1、R11、i、及びnは、上記一般式(1)における定義と同義である。
一般式(4a)及び(4b)において、R3は、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基又はアルケニル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、及びオクテニル基等が挙げられる。入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、R3は水素原子又はメチル基が好ましい。
R4は、ハロゲンを示し、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0028】
一般式(3)で表されるヒドロキシ樹脂は、例えば、下記一般式(2)で表される置換基含有フェノール類と、ジシクロペンタジエンとを、三フッ化ホウ素・エーテル触媒等のルイス酸存在下で反応させて得ることができる。
【0029】
【0030】
一般式(2)において、R1及びiは上記一般式(1)のR1及びiとそれぞれ同義であり、好ましい置換基も同様である。
【0031】
上記置換基含有フェノール類としては、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、ペンチルフェノール、イソペンチルフェノール、ネオペンチルフェノール、シクロペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、(メチルペンチル)フェノール、(ジメチルブタン)フェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、トリルフェノール、キシリルフェノール、ベンジルフェノール、α-メチルベンジルフェノール、アリルフェノール、ジメチルフェノール、ジエチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、ジ(n-ブチル)フェノール、ジ(t-ブチル)フェノール、ジペンチルフェノール、ジイソペンチルフェノール、ジネオペンチルフェノール、ジシクロペンチルフェノール、ジヘキシルフェノール、ジシクロヘキシルフェノール、ジフェニルフェノール、ジトリルフェノール、ジキシリルフェノール、ジベンジルフェノール、ビス(α-メチルベンジル)フェノール、メチルエチルフェノール、メチル-t-ブチルフェノール、メチルアリルフェノール、トリルフェニルフェノール等が挙げられる。入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、クレゾール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、ジメチルフェノール、ジフェニルフェノール、ジベンジルフェノールが好ましく、メチルフェノール(別称:クレゾール)、フェニルフェノール、ジメチルフェノール(別称:キシレノール)が特に好ましい。
【0032】
置換位置としてはオルソ位が好ましく、置換基を2個有する下記一般式(2-1)で表される2,6-ジ置換フェノール類がより好ましい。
【化8】
R
1は上記一般式(2)における定義と同義である。
【0033】
上記2,6-ジ置換フェノール類としては、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2,6-ジプロピルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ(n-ブチル)フェノール、2,6-ジ(t-ブチル)フェノール、2,6-ジヘキシルフェノール、2,6-ジシクロヘキシルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,6-ジベンジルフェノール、2,6-ビス(α-メチルベンジル)フェノール、2-エチル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、2-トリル-6-フェニルフェノール等が挙げられる。入手の容易性及び硬化物とするときの反応性の観点から、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジメチルフェノールが好ましく、2,6-ジメチルフェノール(別称:2,6-キシレノール)が特に好ましい。
【0034】
上記反応に用いる触媒はルイス酸であり、具体的には三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛、塩化鉄等であるが、中でも取り扱いの容易さから、三フッ化ホウ素・エーテル錯体が好ましい。触媒の使用量は、三フッ化ホウ素・エーテル錯体の場合、ジシクロペンタジエン100質量部に対して、0.001~20質量部であり、好ましくは0.5~15質量部である。
【0035】
反応におけるフェノール類とジシクロペンタジエンの比率は、フェノール類1モルに対し、ジシクロペンタジエンを0.08~0.80モル、好ましくは0.09~0.60モル、より好ましくは0.10~0.50モル、更に好ましくは0.10~0.40モル、特に好ましくは0.10~0.20モルである。この反応においては、一般式(3)で表されるヒドロキシ樹脂だけでなく、ジシクロペンタジエン構造とフェノールの水酸基が結合した構造が含まれる場合もある。
【0036】
一般式(3)で表される多官能ヒドロキシ樹脂の水酸基当量(g/eq.)は、好ましくは150~500、より好ましくは160~300であり、170~250が最も好ましい。平均分子量は、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは300~1,000、より好ましくは400~700であり、数平均分子量(Mn)が、好ましくは300~1,000、より好ましくは400~700である。軟化点は、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。
【0037】
反応方法としては、置換基含有フェノール類と触媒を反応器に仕込み、ジシクロペンタジエンを1~10時間かけて滴下していく方式がよい。
【0038】
反応温度としては、50~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましく、120~160℃が更に好ましい。反応時間は1~10時間が好ましく、3~10時間がより好ましく、4~8時間が更に好ましい。
【0039】
反応終了後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを加えて触媒を失活させる。その後、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の溶媒を加えて溶解し、水洗した後、減圧下で溶媒を回収することにより、目的とするフェノール樹脂を得ることができる。なお、ジシクロペンタジエンを可及的に全量反応させ、置換基含有フェノール類の一部を未反応、好ましくは10%以下を未反応として、それを減圧回収することが好ましい。
【0040】
なお、反応に際しても、粘度調整等必要に応じて、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類等の溶媒を用いてもよい。
【0041】
本発明のビニル樹脂は、こうして得られたヒドロキシ樹脂を、ビニル基を含有する一般式(4a)で表される酸無水物又は一般式(4b)で表される酸ハロゲン化物と反応させることにより、好適に得ることができる。
【化9】
【0042】
ビニル基を含有する式(4a)の酸無水物としては、例えば、無水アクリル酸、無水メタクリル酸等が挙げられ、無水メタクリル酸が好ましい。ビニル基を含有する式(4b)の酸ハロゲン化物としては、例えば、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミド等が挙げられ、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸ブロミドが好ましい。
【0043】
ヒドロキシ樹脂とビニル基含有の酸無水物又は酸ハロゲン化物との反応は、ヒドロキシ樹脂を、溶媒中、塩基性化合物の存在下で、反応させる方法が挙げられる。この場合、ヒドロキシ樹脂、塩基性化合物と溶媒を反応器に仕込み、溶解した後、酸無水物又は酸ハロゲン化物を添加して反応させる方式がよい。
【0044】
ヒドロキシ樹脂とビニル基含有の酸無水物又は酸ハロゲン化物との使用割合は、ヒドロキシ樹脂のフェノール性水酸基1当量に対し、酸無水物又は酸ハロゲン化物が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.8~1.5当量、さらに好ましくは1.0~1.4当量になるように反応させるとよい。なお、本明細書では、酸無水物又は酸ハロゲン化物の1当量とは酸無水物又は酸ハロゲン化物の1モルと同義である。
【0045】
本発明のビニル樹脂の製造に用いる溶媒は、25℃での比誘電率が2.0以上7.0以下であり、23℃における水への溶解度が0.5g/100g以上15g/100g以下であり、常圧での沸点が75℃以上160℃以下の有機溶媒である。これらの特性を満たす限り、特に限定するものではないが、例えば、2-メチルテトラヒドロフランやシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピルや酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。25℃での比誘電率は、好ましくは3.0以上6.0以下である。23℃における水への溶解度は、好ましくは1.0g/100g以上5.0g/100g以下である。常圧での沸点は、好ましくは90℃以上130℃以下である。
25℃での比誘電率が7.0以下であることにより、反応及び溶剤回収時の高分子量化反応を抑制することができる。23℃における水への溶解度が0.5g/100g以上15g/100g以下であることにより、反応後の水洗時に容易に不純物を除去することができる。また、常圧での沸点が75℃以上であることにより還流での脱水が可能となり、水洗後に残留した水分を容易に除去することができる。反応後の分液性と脱水の容易さからシクロペンチルメチルエーテル、酢酸ブチルが特に好ましい。
有機溶媒の物性値、すなわち、比誘電率、溶解度及び沸点の具体値は、市販されている材料の販売元カタログ等から入手可能である。
【0046】
ヒドロキシ樹脂のビニル化反応において、溶媒の使用量は、ヒドロキシ樹脂の総量100質量部に対し、好ましくは20~500質量部、より好ましくは50~400質量部、特に好ましくは100~300質量部である。
【0047】
本発明のビニル樹脂の製造に用いる塩基性化合物としては、有機塩基化合物、アルカリ金属水酸化物や炭酸塩等が好ましく、具体的な例としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが挙げられ、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
ビニル基を含有する酸ハロゲン化物又は酸無水物は、フェノール水酸基と反応することによって等モルの酸性物質を発生し、反応の進行を阻害するため、塩基性化合物によって、中和することができる。
塩基性化合物の使用量は、ヒドロキシ樹脂のフェノール性水酸基1当量に対して、塩基性化合物の当量が、通常1.0~2.5当量であり、好ましくは1.0~1.8当量、より好ましくは1.0~1.5当量、さらに好ましくは1.0~1.2当量である。なお、本明細書では、塩基性化合物の1当量とは塩基性化合物の1モルと同義である。
【0048】
本発明のビニル樹脂の製造において、反応温度は、通常15~150℃であり、好ましくは35~120℃である。また、より高純度のビニル樹脂を得るためには、2段階以上に分けて反応温度を上昇させることが好ましく、例えば、1段階目は15~50℃、2段階目は45~120℃とすることが特に好ましい。反応時間は、通常0.5~10時間であり、好ましくは1~8時間、特に好ましくは1~5時間である。反応時間が0.5時間以上であることで反応が十分進行し、10時間以下であることで、副生成物の生成量を低く抑えることが可能になる。
【0049】
ビニル基を含有する酸無水物又は酸ハロゲン化物の自己重合の懸念がある場合にはキノン類、ニトロ化合物、ニトロフェノール類、ニトロソ化合物、ニトロン化合物、フェノール類、酸素等の重合禁止剤を使用してもよい。
【0050】
反応終了後、溶媒を留去せずにそのまま、又は必要に応じて溶媒を添加した後、目的物に対する溶解性の低い水,メタノール等の低級アルコール或いはこれらの混合溶媒を加え洗浄を行うことにより、副生した塩や不純物を除去することができる。
【0051】
一般的なビニル樹脂は加温条件に対して不安定であるが、本発明の製法によって得られるビニル樹脂は安定性が高く、加温条件で溶剤を留去することができ、揮発性の不純物を除去することが可能である。よって、固形として安定的に保存できる。軟化点は、好ましくは50~120℃、より好ましくは70~100℃である。
得られた反応生成物としてのビニル樹脂を固形にするために、溶剤留去や不純物除去の加温条件としては、100℃から180℃が好ましく、120℃から160℃がより好ましい。この範囲より低温の場合は、樹脂粘度が高くなるため、酸無水物又は酸ハロゲン化物から発生した酸が残留し易い一方、この範囲より高温の場合は、ビニル樹脂がゲル化する可能性が高くなる。また、溶剤の留去や揮発性の不純物の除去は、減圧下で行うことが好ましい。
【0052】
なお、本発明のビニル樹脂の製造は、通常、窒素等不活性ガスを系内(気中又は液中)に吹き込みながら行うとよい。不活性ガスを系内に吹き込みながら反応を行うことで、得られる生成物が着色することを防ぐことができる。
不活性ガスの単位時間当たり吹き込み量は、その反応に用いる釜の容積によっても異なり、例えば0.5~20時間でその釜の容積が置換できるように、不活性ガスの単位時間当たりの吹き込み量を調整することが好ましい。
【0053】
本発明の製法によって得られるビニル樹脂は、単独でも硬化させることができるが、各種添加剤を配合した多官能樹脂組成物として使用することも好適である。例えば、硬化促進のためにラジカル重合開始剤を配合して硬化させることができる。
【0054】
ラジカル重合開始剤(ラジカル重合触媒ともいう。)は、例えば、本発明のビニル樹脂組成物を加熱等の手段により架橋反応を起こして硬化する際、反応温度を低くしたり、不飽和基の架橋反応を促進したりする目的で配合される。ラジカル重合開始剤の量は、ビニル樹脂100質量部に対して、0.01~12質量部が好ましく、0.1~8質量部がより好ましい。
【0055】
ラジカル重合開始剤として、代表的な例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるが、これらに限定されない。また過酸化物ではないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等も使用できる。
【0056】
本発明のビニル樹脂組成物は、式(1)で表されるビニル樹脂以外のビニル樹脂や、熱硬化性樹脂を配合できる。例えば、ビニルエステル樹脂、ポリビニルベンジル樹脂、ポリアリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシアナート樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。
【0057】
また、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、PPS樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂や、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、水添スチレン-ブタジエン共重合体、水添スチレン-イソプレン共重合体等の熱可塑性エラストマーや、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム類等を配合することも可能である。
【0058】
配合できるビニル樹脂として、分子中に1個以上の重合性不飽和炭化水素基を有する1種以上のビニル化合物類である場合、その種類は特に限定されない。すなわち、こうしたビニル化合物類は、本発明のビニル樹脂と反応させることによって、架橋を形成させて、硬化させることができるものであればよい。重合性不飽和炭化水素基が炭素-炭素不飽和二重結合であるものがより好ましく、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に2個以上有する化合物がより好ましい。
【0059】
硬化性樹脂としてのビニル化合物類の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の平均個数(ビニル基(置換ビニル基を含む)の数。末端二重結合数ともいう。)は、ビニル化合物類のMwによって異なるが、例えば、1~20個であることが好ましく、2~18個であることがより好ましい。この末端二重結合数が少なすぎると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られにくい傾向がある。また、末端二重結合数が多すぎると、反応性が高くなりすぎ、例えば、組成物の保存安定性が低下したり、組成物の流動性が低下したりする等の不具合が発生する恐れがある。
【0060】
硬化性樹脂としてのビニル化合物類は、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、末端が(メタ)アクリロイル基やスチリル基で変性された変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート化合物、ポリブタジエン等のように分子中にビニル基を2個以上有するビニル化合物類(多官能ビニル化合物類)、及びスチレン、ジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物等が挙げられる。この中でも、炭素-炭素二重結合を分子中に2個以上有するものが好ましく、具体的には、TAIC、多官能(メタ)アクリレート化合物、変性PPE樹脂、多官能ビニル化合物類、及びジビニルベンゼン化合物等が挙げられる。これらを用いると、硬化反応により架橋がより好適に形成されると考えられ、樹脂組成物の硬化物の耐熱性をより高めることができる。また、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物を併用してもよい。炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に1個有する化合物としては、分子中にビニル基を1個有する化合物(モノビニル化合物類)等が挙げられる。
【0061】
本発明のビニル樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、信頼性を低下させない範囲で、公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独で使用してもよく、同一系の難燃剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
本発明のビニル樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、充填材、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、フラックス、揺変性付与剤、平滑剤、着色剤、顔料、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、離型剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
【0063】
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。
【0064】
その他の成分としては、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の成分の配合量は、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.01~20質量%の範囲が好ましい。
【0065】
本発明のビニル樹脂組成物は、溶剤に溶解させることにより、樹脂ワニスにすることができる。溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得る。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1-メトキシ-2-プロパノール等の沸点が160℃以下の溶剤であることが好ましく、また、不揮発分20~80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル化合物類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分20~80質量%となる割合で使用することが好ましい。なお、本発明の積層板は樹脂ワニスを硬化させて得られる。具体的には、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
【0066】
本発明のビニル樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムとして使用できる。例えば、半導体封止材料の硬化物は注型物又は成型物であり、この用途の硬化物を得る方法としては、該化合物を注型、又はトランスファ-成形機、射出成形機等を用いて成形し、さらに、80~230℃で0.5~10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。また、樹脂ワニスの硬化物は積層物であり、この硬化物を得る方法としては、樹脂ワニスを上記繊維状充填剤や紙等の基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得て、それを単独同士で、又は銅箔等の金属箔と積層し熱プレス成形して得ることができる。また、本発明のビニル樹脂組成物の未硬化シート又は部分硬化シートは、例えば、ビルドアップフィルム、ボンディングシート、カバーレイシート、フリップチップボンダー用のバンプシートや、基板用の絶縁層や接着層として好適に使用することができる。
【0067】
また、チタン酸バリウム等の無機の高誘電体粉末、又はフェライト等の無機磁性体を配合することにより電子部品用材料、特に高周波電子部品材料として有用である。
【0068】
次に、本発明のプリプレグとその硬化物について説明する。本発明のプリプレグには、機械的強度を高め、寸法安定性を増大させるために基材を加える。
【0069】
このような基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラス布、アスベスト布、金属繊維布、及びその他合成又は天然の無機繊維布、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾザール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の合成繊維から得られる織布又は不織布、綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布、カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊紙等の天然セルロース系布等の布類、紙類等がそれぞれ単独で、又は2種以上併せて用いられる。
【0070】
基材の占める割合は、プリプレグ中に5~90質量%、好ましくは10~80質量%、更に好ましくは20~70質量%であることがよい。基材が5質量%より少なくなると硬化物の寸法安定性や強度が低下する傾向にある。また基材が90質量%より多くなると硬化物の誘電特性が低下する傾向にある。
本発明のプリプレグには、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等一般のものが使用できる。
【0071】
本発明のプリプレグを製造する方法としては、例えば、本発明のビニル樹脂組成物と必要に応じて他の成分を上記の芳香族系、ケトン系等の溶媒、又はその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0072】
本発明のプリプレグを、加熱等の方法により硬化することによって硬化物が得られる。その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、プリプレグを複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの硬化物(積層板)を得ることができる。また、一度接着硬化させた硬化物とプリプレグを組み合わせて新たな層構成の多層積層体を得ることも可能である。積層成形と硬化は、通常熱プレス等を用い同時に行われるが、両者をそれぞれ単独で行ってもよい。すなわち、あらかじめ積層成形して得た未硬化又は半硬化のプリプレグを、熱処理又は別の方法で処理することによって硬化させることができる。
【0073】
成形及び硬化は、例えば、温度:80~300℃、圧力:0.1~1,000kgf/cm2、時間:1分~10時間の範囲、より好ましくは、温度:150~250℃、圧力:1~500kgf/cm2、時間:1分~5時間の範囲で行うことができる。
【0074】
本発明の積層体とは、本発明のプリプレグの層と金属箔の層より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3~200μm、より好ましくは3~105μmの範囲である。
【0075】
本発明の積層体を製造する方法としては、例えば、上で説明した本発明のビニル樹脂組成物と基材から得たプリプレグと、金属箔を目的に応じた層構成で積層し、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化させる方法を挙げることができる。本発明のビニル樹脂組成物の積層体においては、硬化物と金属箔が任意の層構成で積層される。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。上記の他、積層と硬化を複数回繰り返して多層化することも可能である。
【0076】
金属箔との接着には接着剤を用いることもできる。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シアノアクリレート系等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。上記の積層成形と硬化は、本発明のプリプレグの硬化物の製造と同様の条件で行うことができる。
【0077】
本発明のビニル樹脂組成物をフィルム状に成形することもできる。その厚みは特に限定されないが、3~200μm、より好ましくは5~105μmの範囲である。
本発明のフィルムを製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば、ビニル樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒、又はその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、PETフィルム等の樹脂フィルムに塗布した後乾燥する方法等が挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0078】
本発明の樹脂シートをボンディングシートとして使用する場合は、例えば、二つの基材を樹脂シートで接着できる。二つの基材の各々は、例えば、積層板又はプリント配線板である。具体的には、例えば、支持フィルム上にビニル樹脂組成物を塗布法等によりシート状に成形してから加熱することで、乾燥又は半硬化させることで樹脂シートを作製する。この樹脂シートを、基材(第一基材)に重ね、樹脂シートから支持フィルムを剥がし、別の基材(第二基材)を重ねる。即ち、第一基材、樹脂シート(ビニル樹脂組成物)、及び第二基材の順に積層する。続いて、加熱し硬化させることにより、第一基材と第二基材とがビニル樹脂組成物の硬化物を介して接着される。
【0079】
本発明のビニル樹脂組成物と金属箔より樹脂付き金属箔を得ることができる。ここで用いられる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3~200μm、より好ましくは5~105μmの範囲である。
樹脂付き金属箔を製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば、ビニル樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒、又はその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、金属箔に塗布した後乾燥する方法が挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0080】
電子材料用基板は、本発明の積層体を用いてなるものである。電子材料用基板は、耐熱性、耐水性が求められる環境下での信頼性や高周波信号の伝送信頼性が要求される携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種電気・電子機器用の部品として好適に用いることができる。特に、本発明の硬化物の優れた誘電特性の耐熱安定性及び微細パターンの回路形成に対応した寸法安定性、成形性から、上記電気・電子機器用の回路基板として好適に用いることができる。具体的には、片面、両面、多層プリント基板、フレキシブル基板、ビルドアップ基板が挙げられる。上記の導体層として金属めっきを用いた多層回路基板も好ましい例として含まれる。
【実施例0081】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。
また、測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
【0082】
(1)水酸基当量:
JIS K0070規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。なお、特に断りがない限り、ヒドロキシ樹脂の水酸基当量はフェノール性水酸基当量を意味する。
(2)軟化点:
JIS K7234規格、環球法に準拠して測定した。具体的には、自動軟化点装置(株式会社メイテック製、ASP-MG4)を使用した。
(3)ビニル当量:
JIS K0070規格に準拠して測定した。具体的には、試料にウィイス液(一塩化ヨウ素溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰の塩化ヨウ素をヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出した。ヨウ素価をビニル当量に換算した。
【0083】
(4)比誘電率及び誘電正接:
IPC-TM-650 2.5.5.9に準拠して測定した。具体的には、マテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
(5)ガラス転移温度(Tg):
JIS C6481規格に準拠して測定した。具体的には、動的粘弾性測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR DMS6100)にて5℃/分の昇温条件で測定を行った時のtanδピークトップで表した。
【0084】
(6)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
本体(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターで濾過したものを50μL使用した。標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PStQuick Kit-H)より求めた検量線より換算して、Mw及びMnを求めた。なお、データ処理は、東ソー株式会社製GPC-8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
(7)IR:
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely製、Spectrum One FT-IR Spectrometer 1760X)を用い、ダイアモンドATRを使用し、トルエンに溶解させたサンプルをATR上に塗布、乾燥させた後、波数650~4000cm-1の吸光度を測定した。
【0085】
実施例、比較例で使用する材料や略号は以下の通りである。
[ヒドロキシ樹脂]
P1:合成例1で得た芳香族多価ヒドロキシ樹脂
【0086】
[有機溶剤]
S1:シクロペンチルメチルエーテル(25℃比誘電率4.8、23℃水への溶解度1.1g/100g、常圧沸点106℃)
【化10】
S2:酢酸ブチル(25℃比誘電率5.0、23℃水への溶解度1.4g/100g、常圧沸点126℃)
【化11】
S3:メチルイソブチルケトン(25℃比誘電率13.1、23℃水への溶解度1.9g/100g、常圧沸点116℃)
【化12】
【0087】
[ビニル樹脂]
V1:実施例1で得たビニル樹脂
V2:実施例2で得たビニル樹脂
V3:実施例3で得たビニル樹脂
VH1:末端ビニルベンジルエーテル変性PPE樹脂(三菱ガス化学株式会社製、OPE-2ST、Mn1187)
VH2:末端メタクリル変性PPE樹脂(SABICジャパン合同会社製、SA9000、Mw1600)
【0088】
[その他]
PO:有機過酸化物(日油株式会社製、パーブチルP)
AO:酸化防止剤(株式会社ADEKA製、アデカスタブAO-60)
【0089】
合成例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、滴下ロート、及び冷却管を備えたガラス製セパラブルフラスコからなる反応装置に、2,6-キシレノール(下記構造式)500部、
【化13】
47%BF
3エーテル錯体7.3部を仕込み、撹拌しながら100℃に加温した。同温度に保持しながら、ジシクロペンタジエン(下記構造式)67.6部(2,6-キシレノールに対して0.12倍モル)
【化14】
を1時間で滴下した。さらに115~125℃の温度で4時間反応し、水酸化カルシウム11部を加えた。さらに10%のシュウ酸水溶液19部を添加した。その後、160℃まで加温して脱水した後、5mmHgの減圧下、200℃まで加温して未反応の原料を蒸発除去した。メチルイソブチルケトン(MIBK)1320部を加えて生成物を溶解し、80℃の温水400部を加えて水洗し、下層の水槽を分離除去した。その後、5mmHgの減圧下、160℃に加温してMIBKを蒸発除去して、赤褐色の芳香族多価ヒドロキシ化合物(P1)を164部得た。
得られた芳香族多価ヒドロキシ化合物(P1)の水酸基当量は195であり、軟化点は73℃であった。GPCでのMwは470、Mnは440、n=1体含有量は86.2面積%、n=2体以上の含有量は11.0面積%であった。
【0090】
実施例1
合成例1と同様な装置にヒドロキシ樹脂(P1)を100部、塩基性化合物としてピリジン42.6部(P1の水酸基当量に対し1.05当量)、ジメチルアミノピリジン3.1部(P1の水酸基当量に対し0.05当量)及び溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル(S1)200部を仕込み、80℃まで昇温して溶解した。20℃まで冷却した後、無水メタクリル酸(下記構造式)94.9部(P1の水酸基当量に対し1.2当量)
【化15】
を30分かけて滴下し、さらに115℃で3時間反応させた。得られた樹脂をシクロペンチルメチルエーテル(S1)360部に溶解し、メタノール濃度30%のメタノール水241部で洗浄した。その後、5mmHgの減圧下、150℃に加熱した条件で溶剤を減圧留去し、固形のビニル樹脂(V1)を130部得た。
得られたビニル樹脂(V1)は、水酸基当量25000、ビニル当量は290、軟化点は86℃であった。式(1)で表されるビニル樹脂であって、R
1がメチル基、iが2であり、GPCでのMwは650、Mnは550、n=1体含有量は78.9面積%、n=2体以上の含有量は19.4面積%であった。
ビニル樹脂(V1)のGPCを
図1に、IRチャートを
図2に示す。
【0091】
実施例2
合成例1と同様な装置にヒドロキシ樹脂(P1)を100部、塩基性化合物としてピリジン42.6部(P1の水酸基当量に対し1.05当量)、ジメチルアミノピリジン3.1部(P1の水酸基当量に対し0.05当量)及び有機溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル(S1)200部を仕込み、80℃まで昇温して溶解した。20℃まで冷却した後、メタクリル酸クロリド(下記構造式)64.3部(P1の水酸基当量に対し1.2当量)
【化16】
を30分かけて滴下し、さらに115℃で3時間反応させた。得られた樹脂をシクロペンチルメチルエーテル(S1)290部に溶解し、メタノール濃度30%のメタノール水211部で洗浄した。その後、5mmHgの減圧下、150℃の条件で溶剤を減圧留去し、固形のビニル樹脂(V2)を130部得た。
得られたビニル樹脂(V2)は、水酸基当量22000、ビニル当量は295、軟化点は87℃であった。式(1)で表されるビニル樹脂であって、R
1がメチル基、iが2であり、GPCでのMwは640、Mnは540、n=1体含有量は79.6面積%、n=2体以上の含有量は18.4面積%であった。
【0092】
実施例3
合成例1と同様な装置にヒドロキシ樹脂(P1)を100部、塩基性化合物としてピリジン42.6部(P1の水酸基当量に対し1.05当量)、ジメチルアミノピリジン3.1部(P1の水酸基当量に対し0.05当量)及び溶媒として酢酸ブチル(S2)200部を仕込み、80℃まで昇温して溶解した。20℃まで冷却した後、無水メタクリル酸94.9部(P1の水酸基当量に対し1.2当量)を30分かけて滴下し、さらに115℃で3時間反応させた。得られた樹脂を酢酸ブチル(S2)360部に溶解し、メタノール濃度30%のメタノール水241部で洗浄した。その後、5mmHgの減圧下、150℃に加熱した条件で溶剤を減圧留去し、固形のビニル樹脂(V3)を130部得た。
得られたビニル樹脂(V3)は、水酸基当量24000、ビニル当量は290、軟化点は86℃であった。式(1)で表されるビニル樹脂であって、R1がメチル基、iが2であり、GPCでのMwは630、Mnは530、n=1体含有量は78.9面積%、n=2体以上の含有量は19.3面積%であった。
【0093】
比較例1
合成例1と同様な装置にヒドロキシ樹脂(P1)を100部、塩基性化合物としてピリジン42.6部(P1の水酸基当量に対し1.05当量)、ジメチルアミノピリジン3.1部(P1の水酸基当量に対し0.05当量)及び有機溶媒としてメチルイソブチルケトン(S3)200部を仕込み、80℃まで昇温して溶解した。20℃まで冷却した後、無水メタクリル酸94.9部(P1の水酸基当量に対し1.2当量)を30分かけて滴下し、さらに115℃で3時間反応させた。得られた樹脂をメチルイソブチルケトン(S3)360部に溶解し、メタノール濃度30%のメタノール水240部で洗浄した。その後、5mmHgの減圧下、150℃に加熱した条件で溶剤を減圧留去したところ重合反応が発生し、目的のビニル樹脂は得られなかった。
【0094】
実施例4~8、比較例2~5
表1に示す配合割合(部)で混合し、メチルエチルケトン(MEK)に溶解して不揮発分50%の均一なビニル樹脂組成物ワニスを得た。得られたビニル樹脂組成物ワニスをPETフィルムに塗布し、130℃で5分乾燥を行い、PETフィルムからはがして、樹脂組成物を得た。樹脂組成物を鏡面板に挟み、減圧下、130℃で30分及び220℃で100分、2MPaの圧力をかけながら硬化して、硬化物を得た。得られた硬化物の比誘電率、誘電正接、及びTgの測定結果を表1に示す。
【0095】
【0096】
実施例のビニル樹脂は、比較例に比べて、低誘電率、低誘電正接でありながら、高いガラス転移温度を有する硬化物を与えるという優れた物性を示した。さらに、近年のベンゼン、トルエンやキシレン等の有害性の高い有機溶剤を含むことなく合成することができる。