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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125583
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】電極の製造方法及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240911BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240911BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240911BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20240911BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240911BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/66 A
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01G13/00 381
H01G11/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033496
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉平
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078BB33
5E082AB10
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE06
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA17
5H050DA04
5H050EA22
5H050FA17
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA03
5H050HA07
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】液体組成物を吐出する際に生じるミストを効率的に吸引する。
【解決手段】所定の搬送方向に搬送される基材に対して層形成部にて液体組成物を吐出して前記基材上に液体組成物層を形成することで電極を製造する電極の製造方法であって、前記基材上に液体組成物層を形成する領域よりも前記搬送方向における下流側に設けられた排気部にて、前記基材の搬送経路上の大気を、前記基材の搬送経路上の大気が前記搬送方向と交差する方向に通過可能な開口部を介して吸引し、経路を通過させて外部に排気し、前記開口部が、前記搬送経路に向かって延出する延出部を前記搬送方向における下流側に具備し、前記大気の通過方向に交差する方向おける断面積は、前記経路の少なくとも一部が前記開口部よりも広い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に搬送される基材に対して層形成部にて液体組成物を吐出して前記基材上に液体組成物層を形成することで電極を製造する電極の製造方法であって、
前記基材上に液体組成物層を形成する領域よりも前記搬送方向における下流側に設けられた排気部にて、前記基材の搬送経路上の大気を、前記基材の搬送経路上の大気が前記搬送方向と交差する方向に通過可能な開口部を介して吸引し、経路を通過させて外部に排気し、
前記開口部が、前記搬送経路に向かって延出する延出部を前記搬送方向における下流側に具備し、
前記大気の通過方向に交差する方向おける断面積は、前記経路の少なくとも一部が前記開口部よりも広い、電極の製造方法。
【請求項2】
前記層形成部と前記排気部とは、空隙を介して配置され、
前記空隙において前記搬送経路に対して所定の間隔を隔てて設けられたカバー部材を備える、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記開口部の前記搬送方向における上流側の前記基材との距離は、前記カバー部材における前記基材と対向する面と前記基材との距離と略同一である、請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記排気部は、前記搬送方向における下流側の壁部が、前記搬送経路に近づくにつれて前記搬送方向における上流側に向かうように斜めに傾いている、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記経路は、前記大気に含まれる液化ミストを捕集する捕集手段を有する、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記開口部の前記搬送方向における下流側と前記基材との距離は、前記層形成部における前記基材と最も近接する部分と前記基材との距離と略同一である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記基材は、シート状である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記基材は、紙、金属または感熱紙のいずれかである、請求項7に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
前記基材は、非多孔質である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
前記基材は、非多孔質の集電体を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項11】
前記基材は、非多孔質の集電体と、前記集電体上に設けられた活物質を含む電極合材層と、を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項12】
前記液体組成物は、絶縁性粒子を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項13】
前記液体組成物は、重合性化合物を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項14】
所定の搬送方向に搬送される基材に対して液体組成物を吐出して前記基材上に液体組成物層を形成する層形成部と、
前記層形成部よりも前記搬送方向における下流側に設けられ、前記基材の搬送経路上の大気を吸引して排気する排気部と、を備え、
前記排気部は、
前記基材の搬送経路上の大気が前記搬送方向と交差する方向に通過可能な開口部と、
前記開口部を通過した前記大気が通過していき当該大気を外部に排出する経路と、を有し、
前記開口部は、前記搬送経路に向かって延出する延出部を前記搬送方向における下流側に具備し、
前記大気の通過方向に交差する方向おける断面積は、前記経路の少なくとも一部が前記開口部よりも広い、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に対して液体組成物を吐出することで、基材上に液体組成物層を形成する液体吐出装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、吐出された液体組成物のうち基材に付着しなかった微小な粒子による液体吐出装置内の汚染を低減するために、吸引口と、排出口と、これらを接続する空気流路とを有するミスト回収機構が開示されている。このミスト回収機構では、吸引口よりも狭い経路を空気流路に形成し、均一な風量で吸引を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、吸引口よりも狭い経路が空気流路に形成されているため、吸引口の風速が小さくなりミストの回収能力に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、液体組成物を吐出する際に生じるミストを効率的に吸引できる電極の製造方法及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、
所定の搬送方向に搬送される基材に対して層形成部にて液体組成物を吐出して前記基材上に液体組成物層を形成することで電極を製造する電極の製造方法であって、
前記基材上に液体組成物層を形成する領域よりも前記搬送方向における下流側に設けられた排気部にて、前記基材の搬送経路上の大気を、前記基材の搬送経路上の大気が前記搬送方向と交差する方向に通過可能な開口部を介して吸引し、経路を通過させて外部に排気し、
前記開口部が、前記搬送経路に向かって延出する延出部を前記搬送方向における下流側に具備し、
前記大気の通過方向に交差する方向おける断面積は、前記経路の少なくとも一部が前記開口部よりも広い、電極の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体組成物を吐出する際に生じるミストを効率的に吸引できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の液体吐出装置の実施の一形態である電極製造装置の一構成例を示す図である。
図2】液体吐出装置にて生じる基本的な現象を説明するための図である。
図3】基材の種類により生じる現象を説明するための図である。
図4】本実施形態における作用を説明するための図である。
図5】本実施形態におけるシミュレーションの条件を示す図である。
図6】本実施形態におけるシミュレーションにて測定した風量の位置を示す図
図7図5に示した条件における風量の割合を示す図である。
図8】ミスト回収装置の開口部の形状による風量の違いを説明するための図である。
図9】本実施形態における排気経路の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
〈全体の構成〉
図1は、本発明の液体吐出装置の実施の一形態である電極製造装置の一構成例を示す図である。図1(a)は全体の構成を示す図であり、図1(b)は液体吐出ヘッド10a~10dを液体の吐出方向から見た図である。
【0011】
図1(a)に示すように、本構成例による電極製造装置1は、搬送部2と、検出器4と、光源5と、ヒータ6と、液体吐出ヘッド10a~10dと、ミスト回収装置20a~20dと、を備えている。
【0012】
搬送部2は、搬送ローラ2aが支持するロール状の液体吐出ヘッド10a~10dからの液体組成物の吐出対象としての基材を、搬送ローラ2a,2bの反時計回りの回転により、搬送ローラ2bに対して、即ち図中矢印で示した搬送方向Aに搬送する。検出器4、光源5、ヒータ6、液体吐出ヘッド10a~10d及びミスト回収装置20a~20dは、搬送部2による基材の搬送経路に対向するように設けられている。
【0013】
検出器4は、液体吐出ヘッド10a~10dに対して基材の搬送方向上流側に設けられており、基材上の形状等を検知して出力する。
【0014】
光源5は、液体吐出ヘッド10a~10dに対して基材の搬送方向下流側に設けられている。光源5は、液体吐出ヘッド10a~10dから液体組成物が吐出されることによって基材上に形成された液体組成物層が重合性化合物(モノマー)を含む場合、光を照射し重合性化合物を重合させることで、液体組成物層を硬化させる。従って、液体組成物層が重合性化合物を含まない場合は、光源5は設けられなくてもよい。
【0015】
ここで、液体組成物としては、例えば樹脂層を形成するためのものとしては樹脂粒子または重合性化合物と、溶媒と、を含むものが挙げられ、無機層を形成するためのものとしては、無機酸化物粒子と、分散媒と、を含むものが挙げられる。無機酸化物粒子としては、例えばアルミナやシリカなどが挙げられる。
【0016】
ヒータ6は、光源5に対して基材の搬送方向下流側に設けられている。ヒータ6は、光源5から照射された光によって硬化した液体組成物層を加熱することにより、硬化を促進したり乾燥させたりする。
【0017】
液体吐出ヘッド10a~10dは、本願発明にて層形成部の一例となるものであって、基材の搬送方向に液体吐出ヘッド10a~10dの順で並んで配置されている。液体吐出ヘッド10a~10dのそれぞれは図1(b)に示すように、複数のノズル12が基材の搬送方向に直交する方向に略一定の間隔で並んだヘッド列11a,11bを有する。ヘッド列11a,11bは、基材の搬送方向に並んでいる。液体吐出ヘッド10a~10dは、搬送経路を搬送されてくる基材に対して液体組成物を吐出する。
【0018】
例えば、基体上に多孔質層を形成する場合は、一つの液体ヘッドより多孔質層を形成しようとすると、層が不均一となり、電気化学素子としたときの特性にムラが生じる懸念がある。このような場合、複数の液体吐出ヘッドで同じ種類の液体組成物(インク)を用いることで、層を均一に形成することが可能となる。
【0019】
ミスト回収装置20a~20dは、本願発明にて排気部の一例となるものであって、基材の搬送経路上の大気を吸引して排気する。ミスト回収装置20a~20dは、基材の搬送方向に並んで配置されている。ミスト回収装置20aは、基材の搬送方向において液体吐出ヘッド10aの下流側に隣接して配置されている。ミスト回収装置20bは、基材の搬送方向において液体吐出ヘッド10bの下流側に隣接して配置されている。ミスト回収装置20cは、基材の搬送方向において液体吐出ヘッド10cの下流側に隣接して配置されている。ミスト回収装置20dは、基材の搬送方向において液体吐出ヘッド10dの下流側に隣接して配置されている。ミスト回収装置20a~20bの詳細な構成及び動作は後述する。
【0020】
上記のように構成された電極製造装置1は、搬送方向Aに搬送される基材に対して、液体吐出ヘッド10a~10dから液体組成物を吐出する。それにより、電極製造装置1は、基材上に液体組成物層を形成して電極を製造する。その際、液体吐出ヘッド10a~10dによって基材上に液体組成物層を形成する領域よりも基材の搬送方向における下流側において、ミスト回収装置20a~20dによって基材の搬送経路上の大気を吸引して排気する。
【0021】
また、基材の搬送経路には、基材に対して液体吐出ヘッドとは対向する方向に位置し、基材を支持する支持部を設けてもよい。支持部としては、例えばベルトコンベアなどが挙げられる。
【0022】
〈基材〉
図1に示した電極製造装置1は、集電体を基材としてこの集電体上に活物質を含む液体組成物を吐出することで電極合材層を形成することができる。また、電極製造装置1は、絶縁性粒子や重合性化合物を含む液体組成物を用いて、集電体の表面上に形成された電極合材層を基材として、その表面を覆うように液体組成物層を形成することができる。このような基材としては、シート状であることが考えられるが、シート状には限られない。
【0023】
本実施形態に係る集電体は、導電性箔であって、一般に蓄電デバイスである二次電池、キャパシタ、なかでもリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。導電性箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、及びそれらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき集電体等が用いられる。この集電体には、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパーまたは繊維状の電極を不織又は織状で平面状にしたものや、上記穴あき集電体のうち微細な穴を有するものが使用可能である。
【0024】
本実施形態に係る電極合材層は、集電体上に設けられた活物質を含む層である。電極合材層は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及びまたは溶解し、この液体を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。電極合材層を形成するには、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工等を用いられ、塗布後に乾燥して電極合材層を形成する。
【0025】
〈液体吐出装置にて生じる基本的な現象〉
図1に示した電極製造装置1は、搬送経路を搬送されてくる基材に対して液体吐出ヘッド10a~10dから液体組成物を吐出する。そのため、吐出された液体組成物のうち基材に付着しなかった微小な粒子や溶媒などの液体がミストとなって大気中を漂うことになる。
【0026】
図2は、液体吐出装置にて生じる基本的な現象を説明するための図であり、図1(a)中-Y方向から見た図である。
【0027】
図1(a)に示した液体吐出ヘッド10a~10dのそれぞれは、図2に示すように、図1(b)に示したヘッド列11a,11bを含むヘッド部13と、ヘッド列11a,11bをアレイ状にヘッド部13として保持するアレイ部14とを有している。
【0028】
ヘッド部13からは、搬送されてくる基材100に対して、基材100上に液体組成物層を形成するために液体組成物が吐出される。しかしながら、ヘッド部13から吐出された液体組成物には、基材100に付着しないものも存在する。基材100に付着しなかった微小な粒子や溶媒などの液体は、ミスト7となって大気中に拡散する。そして、この拡散したミスト7が電極製造装置1の内部に付着し、電極製造装置1内が汚染されてしまうことになる。
【0029】
ここで、上述した現象について基材の種類毎に詳細に説明する。
【0030】
図3は、基材の種類により生じる現象を説明するための図である。
【0031】
図3(a)に示すように、紙等の多孔質からなる基材100aにヘッド部13から液体組成物を吐出する場合、基材100a上に液体組成物層8が形成されるとともに、基材100aに付着しなかった微小な粒子や溶媒などの液体が、ミスト7となって大気中に拡散する。ここで、基材100aは多孔質からなるものであるため微細な孔101を有している。そのため、大気中に拡散したミスト7の一部は基材100aの孔101に入り込んだり付着したりすることになる。
【0032】
一方、図1に示した電極製造装置1は、図3(b)に示すように、非多孔質の導電性箔からなる集電体を基材100bとして、この集電体上に液体組成物を吐出することで電極合材層である液体組成物層8を形成するものである。そして、基材100bにヘッド部13から液体組成物を吐出すると、基材100b上に液体組成物層8が形成されるとともに、基材100bに付着しなかった微小な粒子や溶媒などの液体が、ミスト7となって大気中に拡散する。ここで、基材100bは非多孔質からなるものであるため、多孔質からなるもののように孔を有さず、また、表面が滑らかなものとなっている。そのため、拡散したミスト7は、基材が多孔質からなるもののように基材100bに付着することは少なく、大気中に拡散しつづけることになり、また発生するミストの量も多くなる。
【0033】
つまり、図1に示した電極製造装置1において、非多孔質からなる基材100b上に液体組成物を吐出する場合、ミスト7の拡散により電極製造装置1内の汚染が生じやすい。ただし、紙等の多孔質からなる基材に液体組成物を吐出する場合においても、装置内の汚染が生じることには変わりはない。
【0034】
〈ミスト回収装置〉
以下に、図1に示したミスト回収装置20a~20dの詳細について説明する。なお、以下においては、ミスト回収装置20aについてのみ説明するが、ミスト回収装置20b~20dについても、その構成及び作用は同様であり、また、液体吐出ヘッド10b~10dとの関係も同様である。
【0035】
図4は、本実施形態における作用を説明するための図である。図4(a)は、図1(a)中-Y方向から見た図であり、ミスト回収装置20aは生じる作用をわかりやすくするために断面で示している。図4(b)は、ミスト回収装置20aの外観斜視図である。
【0036】
ミスト回収装置20aは図4に示すように、基材100の搬送方向において液体吐出ヘッド10aの下流側に空隙を介して配置されている。この空隙には、インナーカバー9aが備えられている。インナーカバー9aは、本願発明にてカバー部材の一例となるものである。インナーカバー9aは、基材100の搬送経路に対して所定の間隔を隔てて配置されている。例えば、アレイ部14の基材100に対向する部分と同一平面となるような高さに配置されている。インナーカバー9aは、ミスト回収装置20aと液体吐出ヘッド10bとの間、ミスト回収装置20bと液体吐出ヘッド10cとの間、ミスト回収装置20cと液体吐出ヘッド10dとの間にも同様に備えられている。
【0037】
ミスト回収装置20aは、上壁部23と、上流側壁部21と、下流側壁部22と、側壁部28a,28bとを有している。上流側壁部21と下流側壁部22とが互いに対向し、2つの側壁部28a,28bが互いに対向している。側壁部28bには、ダクトパイプ24aが取り付けられている。そして、下面側の部分にて、基材の搬送経路と平行な方向に開口した開口部29aを有している。なお、開口部29aは、基材の搬送経路に対して若干傾いていてもよい。このような形態も含めて、開口部29aは、基材の搬送経路に対して略平行な方向に開口していると定義する。
【0038】
開口部29aは、基材100の搬送経路上の大気が基材100の搬送方向と交差する方向に通過可能となっており、ダクトパイプ24aを介した吸引力によって基材100の搬送経路上の大気を吸引する。これにより、上壁部23と上流側壁部21と下流側壁部22と側壁部28a,28bとで囲まれた空間29bが、開口部29aにより吸引された大気が通過していき外部に排出するための経路の一部を構成している。
【0039】
上流側壁部21は、基材100の搬送方向上流側に配置される壁部である。下流側壁部22は、基材100の搬送方向下流側に配置される壁部である。上流側壁部21及び下流側壁部22は、図1(a)中Y方向の幅が、基材または支持部3の幅と略同一となっている。これにより、ミスト回収装置20aは、基材または支持部3の幅方向の全域を覆って配置されている。
【0040】
上流側壁部21の下方、すなわち、基材100の搬送経路側の端部21aは、インナーカバー9aと同一の高さとなっている。なお、上流側壁部21の端部21aの高さは、インナーカバー9aの高さと若干異なっていてもよい。このような形態も含めて、基材100の搬送経路側の端部21aが、インナーカバー9aと略同一の高さとなっていると定義する。これにより、開口部29aの上流側壁部21の基材100との距離は、インナーカバー9aにおける基材100と対向する面と基材100との距離と略同一となっている。
【0041】
下流側壁部22は、基材100の搬送経路に近づくにつれてその一部が基材100の搬送方向における上流側に向かうように斜めに傾いている。これにより、開口部29aにより吸引された大気を外部に排出するための経路の一部を構成する空間29bの大気の通過方向に交差する方向における断面積が、開口部29aの大気の通過方向に交差する方向における断面積よりも広くなっている。下流側壁部22は、基材100の搬送経路側に、開口部29aから下方に向かって延出した延出部22bを有している。下流側壁部22の上下方向の長さは、上流側壁部21よりも長くなっている。例えば、下流側壁部22の下方、すなわち、延出部22bの端部22aを、ヘッド部13の基材100と最も近接する部分と略同一の高さとすることが考えられる。それにより、開口部29aの基材100の搬送方向における下流側と基材100との距離が、液体吐出ヘッド10aにおける基材100と最も近接する部分と基材100との距離と略同一なものとなる。
【0042】
上記のように構成されたミスト回収装置20a~20dを有する電極製造装置1においては、基材100に対してヘッド部13から液体組成物を吐出すると、基材100に付着しなかった微小な粒子や溶媒などの液体が、ミスト7となって大気中に拡散する。ここで、本実施形態における電極製造装置1は、液体吐出ヘッド10a~10dに対して基材100の搬送方向下流側のそれぞれにミスト回収装置20a~20dを備えている。それにより、大気中に拡散したミスト7がミスト回収装置20a~20dに吸引されていく。その際、液体吐出ヘッド10a~10dとミスト回収装置20a~20dとのそれぞれは、空隙を介して配置されているものの、この空隙には、インナーカバー9aが備えられている。そのため、大気中に拡散したミスト7が、液体吐出ヘッド10a~10dとミスト回収装置20a~20dとの間の空隙から電極製造装置1内に拡散してしまうことが抑制される。
【0043】
以下に、上述したようなミスト回収装置20a~20dの構成による作用について詳細に説明する。
【0044】
まず、下流側壁部22が延出部22bを有することによる作用について説明する。
【0045】
図5は、本実施形態におけるシミュレーションの条件を示す図であり、ミスト回収装置の先端形状を示す。
【0046】
ミスト回収装置について図5に示した3つの構成を用いてシミュレーションを行った。
【0047】
図5(a)~(c)に示す共通の構成として、下流側壁部22の下方の端部22aと基材100との間隔d1を1.0mmとした。また、上流側壁部21とインナーカバー9aとの間隔d2と、下流側壁部22とインナーカバー9aとの間隔d3をそれぞれ0.5mmとした。また、インナーカバー9aと基材100との間隔d4を5.5mmとした。
【0048】
この状態で、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100とを間隔d1だけ離した場合と、間隔d6として3.5mmだけ離した場合と、間隔d8として5.5mmだけ離した場合とで風量を測定した。なお、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔d1が1.0mmの場合、上流側壁部21と下流側壁部22との最も近接する領域間の間隔d5は1.52mmであった。また、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔d6が3.5mmの場合、上流側壁部21と下流側壁部22との最も近接する領域間の間隔d7は1.93mmであった。また、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔d8が5.5mmの場合、上流側壁部21と下流側壁部22との最も近接する領域間の間隔d9は2.29mmであった。
【0049】
図6は、本実施形態におけるシミュレーションにて測定した風量の位置を示す図である。
【0050】
ミスト回収装置20aは、ダクトパイプ24aを介した吸引によって開口部29aから大気を吸引するものである。その際、ダクトパイプ24aを介した吸引による風量をQとする。また、インナーカバー9aと基材100との間における基材の搬送方向上流側からの風量をQ1とし、下流側からの風量をQ2とする。また、ミスト回収装置20aの上流側壁部21及び下流側壁部22とインナーカバー9aとの間の風量をQ3とし、支持部3上に設けられたローラカバー9bとインナーカバー9aとの間の風量をQ4とする。
【0051】
すると、これらの間には、
Q=Q1+Q2+Q3+Q4
の関係が成り立つ。
【0052】
そこで、図5(a)~(c)に示す条件のそれぞれにおいて、Q1,Q2,Q3を測定するとともに、Q4を上式から算出してみた。
【0053】
図7は、図5に示した条件における風量の割合を示す図である。
【0054】
図7に示すように、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が1.0mmの場合と、3.5mmの場合とでは、3.5mmの方が、風量Q1の割合が大きくなる。
【0055】
ここで、図4に示したようにヘッド部13から液体組成物が吐出された際に生じたミスト7は、インナーカバー9aと基材100との間における上流側からの風量Q1の割合が大きいほど、ミスト回収装置20aに効率的に回収される。
【0056】
そのため、下流側壁部22の下方の端部22aを上流側壁部21の下方の端部21aよりも基材100に近づけることにより、ミスト回収装置20aにてミスト7を効率的に回収することができるようになる。
【0057】
次に、開口部29aの上流側壁部21の基材100との距離が、インナーカバー9aにおける基材100と対向する面と基材100との距離と略同一となっていることによる作用について説明する。
【0058】
図8は、ミスト回収装置20aの開口部29aの形状による風量の違いを説明するための図である。図8(a)は、図5(a)に示したように上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が1.0mmの場合の風量を示す。図8(b)は、図5(b)に示したように上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が3.5mmの場合の風量を示す。図8(c)は、図5(c)に示したように上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が5.5mmの場合の風量を示す。
【0059】
図8(b)に示すように、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が3.5mmの場合、上流側壁部21の下方の端部21aがインナーカバー9aよりも下方に位置することになる。そのため、上流側壁部21の下方にインナーカバー9aから突出した突出部21bが生じることになる。この状態で基材100上の大気を搬送方向上流側から吸引した場合、吸引される大気は突出部21bを避けるように迂回して開口部29aから吸引されることになる。
【0060】
一方、図8(c)に示すように、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が5.5mmの場合、上流側壁部21の下方の端部21aが、インナーカバー9aと略同一の高さとなっている。そのため、この状態で基材100上の大気を搬送方向上流側から吸引した場合、搬送方向上流側からの大気は滑らかに開口部29aを介して吸引されることになる。これにより、ヘッド部13から液体組成物が吐出された際に生じたミスト7が、ミスト回収装置20aにて効率的に回収されることになる。
【0061】
次に、開口部29aの断面積が狭いことによる作用について説明する。
【0062】
図8に示した矢印の太さは、風速を表している。図8に示すように、ミスト回収装置20aにおいては、大気の通過方向に交差する方向における断面積が狭い領域ほど風速が大きくなっている。そのため、開口部29aの大気の通過方向に交差する方向における断面積を狭くすることで、ミスト回収装置20aにて効率的にミスト7を回収することができる。
【0063】
上述したように本実施形態においては、基材100の搬送方向について液体吐出ヘッド10a~10dの下流側に設けられたミスト回収装置20a~20dにおいて、液体組成物を吐出する際に生じるミストを効率的に吸引できる。その際、上述したように、非多孔質からなる基材100b上に液体組成物を吐出するものにおいては、ミスト7の拡散により電極製造装置1内の汚染が生じやすいため、その効果が顕著なものとなる。
【0064】
また、本実施形態においては、下流側壁部22が基材100の搬送経路に近づくにつれて基材100の搬送方向上流側に向かうように斜めに傾いていることで、開口部29aの断面積を狭くしている。このように、下流側壁部22が斜めに傾いている場合、基材100の搬送方向上流側から開口部29aを介して大気が吸引されると、大気に拡散したミスト7が下流側壁部22にてすくい上げられるように作用する。これによっても、ミスト回収装置20aにて効率的にミスト7を回収することができる。
【0065】
また、本実施形態においては、下流側壁部22の下方の端部22aが、ヘッド部13の基材100と最も近接する部分と略同一の高さとしている。このような構成にすると、ミスト回収装置20aを基材100に接しない範囲で最も基材100に近づけることができる。これにより、開口部29aを介して吸引する大気の風量において、インナーカバー9aと基材100との間における基材100の搬送方向下流側からの風量を小さくすることができる。
【0066】
なお、図8に示すように、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が1.0mmの場合、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が3.5mmや5.5mmの場合と比べて、開口部29aでの風速が大きくなっている。そのため、基材100が、銅箔のような非多孔状である場合(例えば電極に用いられる集電箔)、基材100がミスト回収装置20aによる吸引の影響を受けやすく、バタつきが生じやすい。一方、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が3.5mmや5.5mmの場合は、上流側壁部21の下方の端部21aと基材100との間隔が1.0mmの場合と比べて、開口部29aでの風速が小さくなっている。また、大気の吸引による風の流れを基材100の搬送方向上流側から下流側に向かうようにすることができる。これにより、基材のバタつきを抑制することができる。
【0067】
また、上記シミュレーションでは支持部3が設けられる構成における結果を示したが、支持部3は設けられなくてもよい。ただし、Y方向において基材の少なくとも片端よりも外側にその一部が位置する支持部を設けられることが好ましい。このような構成とすることにより支持部によってZ方向における気流の壁が生じるため、Q4を小さくすることができ、ヘッド部13から液体組成物が吐出された際に生じたミスト7が、ミスト回収装置20aにて効率的に回収することができる。この点について、支持部は、Y方向において基材の少なくとも片端よりも外側にその一部が位置するような構成であればよいが、Y方向において、基材の両端の外側にその一部が、位置する支持部であることがより好ましい。
更に支持部の一部の領域を基材が覆う構造となるが、このとき、少なくとも支持部において基材に覆われない領域は非多孔質であることが好ましい。このような構成とすることで、よりZ方向における気流の壁が生じるため、Q4を小さくすることができ、ヘッド部13から液体組成物が吐出された際に生じたミスト7を、ミスト回収装置20aにて効率的に回収することができる。
【0068】
〈ミスト捕集部〉
ミスト回収装置20a~20dにて回収されたミスト7を含む大気は、ミスト回収装置20a~20dに接続されたダクトパイプを介して電極製造装置1の外部に排気されることになる。その際、ダクトパイプのよる排気経路が途中直上するルートを有している場合、大気に含まれたミスト7がその量によっては直上する途中で液化してしまい排気できない虞がある。
【0069】
そこで、本実施形態においては、ミスト回収装置20a~20dにて回収されたミスト7を含む大気を排気する排気経路に、ミスト7を捕集するミスト捕集部を有する。
【0070】
図9は、本実施形態における排気経路の構成の一例を示す図である。
【0071】
図9に示すように、ミスト回収装置20a~20dのそれぞれには、ミスト回収装置20a~20dにて回収されたミスト7を含む大気を外部に排気するための経路を構成するダクトパイプ24a~24d,26a~26d,27a~27dが接続されている。また、経路の途中には、経路を分岐するための分岐部材25a~25dが設けられている。
【0072】
具体的には、ミスト回収装置20aには、ダクトパイプ24aの一端が接続されており、ダクトパイプ24aは水平方向に延びるように配置されている。ダクトパイプ24aの他端には分岐部材25aが接続されており、分岐部材25aによって排気経路が2つに分岐されている。分岐部材25aによって分岐された排気経路の一方は、ダクトパイプ27aによって上方に導かれている。分岐部材25aによって分岐された排気経路の他方は、ダクトパイプ26aによって下方に導かれており、ダクトパイプ26aの先端にはミスト貯留部30aが設けられている。
【0073】
また、ミスト回収装置20bには、ダクトパイプ24bの一端が接続されており、ダクトパイプ24bは水平方向に延びるように配置されている。ダクトパイプ24bの他端には分岐部材25bが接続されており、分岐部材25bによって排気経路が2つに分岐されている。分岐部材25bによって分岐された排気経路の一方は、ダクトパイプ27bによって上方に導かれている。分岐部材25bによって分岐された排気経路の他方は、ダクトパイプ26bによって下方に導かれており、ダクトパイプ26bの先端にはミスト貯留部30bが設けられている。
【0074】
また、ミスト回収装置20cには、ダクトパイプ24cの一端が接続されており、ダクトパイプ24cは水平方向に延びるように配置されている。ダクトパイプ24cの他端には分岐部材25cが接続されており、分岐部材25cによって排気経路が2つに分岐されている。分岐部材25cによって分岐された排気経路の一方は、ダクトパイプ27cによって上方に導かれている。分岐部材25cによって分岐された排気経路の他方は、ダクトパイプ26cによって下方に導かれており、ダクトパイプ26cの先端にはミスト貯留部30cが設けられている。
【0075】
また、ミスト回収装置20dには、ダクトパイプ24dの一端が接続されており、ダクトパイプ24dは水平方向に延びるように配置されている。ダクトパイプ24dの他端には分岐部材25dが接続されており、分岐部材25dによって排気経路が2つに分岐されている。分岐部材25dによって分岐された排気経路の一方は、ダクトパイプ27dによって上方に導かれている。分岐部材25dによって分岐された排気経路の他方は、ダクトパイプ26dによって下方に導かれており、ダクトパイプ26dの先端にはミスト貯留部30dが設けられている。
【0076】
ダクトパイプ27a~27dは、その先端が電極製造装置1の外部に取り出され、外部にて1本のダクトパイプに接続されている。
【0077】
なお、分岐部材25a~25dとダクトパイプ26a~26dとミスト貯留部30a~30dとから、本願発明の捕集手段の一例が構成されている。
【0078】
このような構成においては、ミスト回収装置20a~20dにて回収されたミスト7を含む大気は、まずダクトパイプ24a~24d内を排気されていき、その後、分岐部材25a~25dを介してダクトパイプ27a~27d内を排気されていく。ここで、ダクトパイプ27a~27dは、ミスト7を含む大気を上方に排気していくが、ミスト7がその量によっては途中で液化して下方に落下する場合がある。しかしながら、本実施形態においては、分岐部材25a~25dに、下方に向かうダクトパイプ26a~26dが接続されており、ダクトパイプ26a~26dの先端にはミスト貯留部30a~30dが設けられている。
【0079】
そのため、ダクトパイプ27a~27dによって上方に排気されていく大気に含まれるミスト7が途中で液化して下方に落下した場合でも、落下したミスト7は、ミスト貯留部30a~30dに貯留されることになる。これにより、ミスト回収装置20a~20dにて吸引した大気を排気していくダクトパイプ24a~24d,27a~27d内にミスト7が溜まることを低減できる。
【0080】
また、4つのミスト回収装置20a~20dにて吸引された大気を外部に排気するためのダクトパイプが電極製造装置1の外部に出るまでそれぞれ対応して4本設けられている。そのため、4つのミスト回収装置20a~20d毎の吸引力の調整等、ハンドリングのしやすさを実現できる。
【0081】
なお、上述したダクトパイプ24a~24d,26a~26d,27a~27d、分岐部材25a~25d及びミスト貯留部30a~30dは、全て電極製造装置1の筐体の内部に設けられている。そして、電極製造装置1の筐体の外部に、ダクトパイプ24a~24d,27a~27d及び分岐部材25a~25dを介した排気の程度を調整する調整機構が設けられている。しかしながら、捕集手段を構成する分岐部材25a~25dとダクトパイプ26a~26dとミスト貯留部30a~30dは電極製造装置1の筐体の外部に設けてもよい。ただ、分岐部材25a~25dとダクトパイプ26a~26dとミスト貯留部30a~30dを電極製造装置1の筐体の内部に設けた方が、装置全体の小型化及び見た目のスリム化を図ることができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、液体吐出ヘッド10a~10dのそれぞれに対応してミスト回収装置20a~20dが設けられている。しかしながら、液体吐出ヘッド10a~10dに設けられたヘッド列11a,11bのそれぞれに対応してミスト回収装置20a~20dを設けてもよい。ただ、本実施形態のように、液体吐出ヘッド10a~10dのそれぞれに対応してミスト回収装置20a~20dが設けることで、電極製造装置1の小型化を図ることができるとともに、その構成の簡略化も図ることができる。
【0083】
また、本実施形態においては、液体吐出装置として、集電体を基材としてこの集電体上に液体組成物を吐出することで電極合材層を形成する電極製造装置1を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の液体吐出装置は、基材として紙や感熱紙にインクを吐出して画像を形成するプリンタ装置にも適用することができる。
【0084】
また、上記各実施の形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明を限定するものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0085】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(付記1)
所定の搬送方向に搬送される基材に対して層形成部にて液体組成物を吐出して前記基材上に液体組成物層を形成することで電極を製造する電極の製造方法であって、
前記基材上に液体組成物層を形成する領域よりも前記搬送方向における下流側に設けられた排気部にて、前記基材の搬送経路上の大気を、前記基材の搬送経路上の大気が前記搬送方向と交差する方向に通過可能な開口部を介して吸引し、経路を通過させて外部に排気し、
前記開口部が、前記搬送経路に向かって延出する延出部を前記搬送方向における下流側に具備し、
前記大気の通過方向に交差する方向おける断面積は、前記経路の少なくとも一部が前記開口部よりも広い、電極の製造方法。
(付記2)
前記層形成部と前記排気部とは、空隙を介して配置され、
前記空隙において前記搬送経路に対して所定の間隔を隔てて設けられたカバー部材を備える、付記1に記載の電極の製造方法。
(付記3)
前記開口部の前記搬送方向における上流側の前記基材との距離は、前記カバー部材における前記基材と対向する面と前記基材との距離と略同一である、付記2に記載の電極の製造方法。
(付記4)
前記排気部は、前記搬送方向における下流側の壁部が、前記搬送経路に近づくにつれて前記搬送方向における上流側に向かうように斜めに傾いている、付記1乃至3のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記5)
前記経路は、前記大気に含まれる液化ミストを捕集する捕集手段を有する、付記1乃至4のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記6)
前記開口部の前記搬送方向における下流側と前記基材との距離は、前記層形成部における前記基材と最も近接する部分と前記基材との距離と略同一である、付記1乃至5のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記7)
前記基材は、シート状である、付記1乃至6のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記8)
前記基材は、紙、金属、感熱紙である、付記1乃至7のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記9)
前記基材は、非多孔質である、付記1乃至8のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記10)
前記基材は、非多孔質の集電体を含む、付記1乃至9のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記11)
前記基材は、非多孔質の集電体と、前記集電体上に設けられた活物質を含む電極合材層と、を含む、付記1乃至10のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記12)
前記液体組成物は、絶縁性粒子を含む、付記1乃至11のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記13)
前記液体組成物は、重合性化合物を含む、付記1乃至11のいずれかに記載の電極の製造方法。
(付記14)
所定の搬送方向に搬送される基材に対して液体組成物を吐出して前記基材上に液体組成物層を形成する層形成部と、
前記層形成部よりも前記搬送方向における下流側に設けられ、前記基材の搬送経路上の大気を吸引して排気する排気部と、を備え、
前記排気部は、
前記基材の搬送経路上の大気が前記搬送方向と交差する方向に通過可能な開口部と、
前記開口部を通過した前記大気が通過していき当該大気を外部に排出する経路と、を有し、
前記開口部は、前記搬送経路に向かって延出する延出部を前記搬送方向における下流側に具備し、
前記大気の通過方向に交差する方向おける断面積は、前記経路の少なくとも一部が前記開口部よりも広い、液体吐出装置。
【符号の説明】
【0086】
1 電極製造装置
2 搬送部
2a,2b 搬送ローラ
3 支持部
4 検出器
5 光源
6 ヒータ
7 ミスト
8 液体組成物層
9a インナーカバー
9b ローラカバー
10a~10d 液体吐出ヘッド
11a,11b ヘッド列
12 ノズル
13 ヘッド部
14 アレイ部
20a~20d ミスト回収装置
21 上流側壁部
21a,22a 端部
21b 突出部
22 下流側壁部
22b 延出部
23 上壁部
24a~24d,26a~26d,27a~27d ダクトパイプ
25a~25d 分岐部材
28a,28b 側壁部
29a 開口部
29b 空間
30a~30d ミスト貯留部
100,100a,100b 基材
101 孔
A 搬送方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2016-34702号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9