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特開2024-125632液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置、並びに、液体吐出ヘッドの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125632
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置、並びに、液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240911BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240911BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 613
B41J2/16 401
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033572
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】竹内 惇
(72)【発明者】
【氏名】マカヴォイ,グレゴリー ジョン
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056HA05
2C056HA16
2C056HA17
2C056KB16
2C057AF78
2C057AF80
2C057AG29
2C057AP31
2C057AP34
2C057BA05
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル板振動方式の液体吐出ヘッドにおいて、個別液室内に滞留する気泡による吐出不良を抑制する。
【解決手段】液体を吐出するノズル2と、ノズルに連通する個別液室4と、個別液室のノズル形成壁110に設けられるアクチュエータ5とを備え、アクチュエータを駆動して個別液室内の液体をノズルから吐出させる液体吐出ヘッド1であって、ノズル形成壁と対向する側に位置する個別液室の開口部4aには、流路隔壁120aによって互いに仕切られた複数の液体流路3a,3bが接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する個別液室と、
前記個別液室のノズル形成壁に設けられるアクチュエータとを備え、
前記アクチュエータを駆動して前記個別液室内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記個別液室の開口部には、流路隔壁によって互いに仕切られた複数の液体流路が接続されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数の液体流路が、前記個別液室へ液体を供給する供給流路であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズルが複数備わっており、
前記個別液室が前記ノズルごとに備わっており、
前記アクチュエータが前記個別液室ごとに備わっており、
前記複数の液体流路が前記個別液室ごとに備わっており、
前記供給流路の流路入口は、前記個別液室の開口部に接続される前記供給流路の流路出口と対向する側に位置し、前記複数の液体流路の各供給流路へ供給される液体を収容する共通液室に面していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記複数の液体流路は、前記個別液室へ液体を供給する供給流路と、該個別液室から液体を排出する排出流路とを含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズルは、二次元方向に配列され、
前記個別液室が前記ノズルごとに備わっており、
前記アクチュエータが前記個別液室ごとに備わっており、
前記複数の液体流路が前記個別液室ごとに備わっており、
第一方向で隣り合う各ノズルの個別液室に接続される複数の液体流路が共通の流路隔壁によって仕切られ、
前記第一方向に対して交差する第二方向に並んで配置される各共通の流路隔壁の前記第一方向の端部が、前記供給流路と前記排出流路とを仕切る仕切り壁によって連結されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記個別液室を区画する壁部のうち前記ノズルからの液体吐出方向に対して直交する側に位置する側壁を形成する液室側壁層と、前記流路隔壁を形成する流路隔壁層とが、Siによって形成され、
前記液室側壁層と前記流路隔壁層とがSiO層によって接続されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記個別液室の開口部に接続される前記複数の液体流路の開口面積又は開口形状が互いに異なることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記個別液室を区画する壁部のうち前記ノズルからの液体吐出方向に対して直交する側に位置する側壁を形成する液室側壁層の厚みが1[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記流路隔壁を形成する流路隔壁層の厚みが200[μm]以上2000[μm]以下の範囲内であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項11】
液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する個別液室と、前記個別液室のノズル形成壁に設けられるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別液室内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記個別液室の開口部に接続される複数の液体流路を互いに仕切る流路隔壁を形成する工程を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置、並びに、液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
【0002】
従来、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する個別液室と、前記個別液室のノズル形成壁に設けられるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別液室内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のノズル及びアクチュエータが形成されたノズルプレート(ノズル形成壁)と、前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数のインク圧力室(個別液室)が形成されたインク圧力室構造体とを備える液体吐出ヘッドが開示されている。アクチュエータは、ノズルと同軸の円環形状に形成され、各インク圧力室内のインクを加圧するように駆動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個別液室のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる従来の液体吐出ヘッドでは、個別液室内に生じる気泡による吐出不良が発生しやすいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルに連通する個別液室と、前記個別液室のノズル形成壁に設けられるアクチュエータとを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別液室内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッドであって、前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記個別液室の開口部には、流路隔壁によって互いに仕切られた複数の液体流路が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、個別液室のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる、いわゆるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドにおいて、個別液室内に滞留する気泡による吐出不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態におけるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図。
図2】同液体吐出ヘッドのノズル面を模式的に示す斜視図。
図3】同液体吐出ヘッドにおける1つの個別液室の周辺構成を示す拡大断面図。
図4】同液体吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す正面図であり、同液体吐出ヘッドのフレーム部の液体供給口を通るように液体吐出方向に沿って切断したときの断面図。
図5】同液体吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す平面図であり、図1中のA-A'断面を示す断面図。
図6】同液体吐出ヘッドの内部構造を拡大平面図であり、図1中のB-B'断面を示す断面図。
図7】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図8】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図9】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図10】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図11】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図12】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図13】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図14】同液体吐出ヘッドの製造工程を説明するための断面図。
図15】変形例1における液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図。
図16】同液体吐出ヘッドの内部構造を模式的に示す平面図であり、図15中のA-A'断面を示す断面図。
図17】変形例2における液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図。
図18】変形例3における液体吐出ヘッドの内部構造を拡大平面図であり、図1中のB-B'断面に相当する断面図。
図19】変形例4における液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図。
図20】変形例4における液体吐出ヘッドの他の例を模式的に示す断面図。
図21】実施形態における印刷装置の概略説明図。
図22】同印刷装置のヘッドユニットの一例の平面説明図。
図23】他の印刷装置の要部平面説明図。
図24】本例の印刷装置の要部側面説明図。
図25】本例の液体吐出ユニットの要部平面説明図。
図26】本例の液体吐出ユニットの正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置に設けられる液体吐出ヘッドに適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することのできる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
本実施形態における液体吐出ヘッドは、ノズルを有するノズル板に設けられるアクチュエータにより個別液室の圧力を変動させることにより個別液室内の液体をノズルから吐出するノズル板振動方式の液体吐出ヘッドである。ノズル板振動方式は、一般的なユニモルフ型ピエゾヘッド(個別液室のノズルに連通する連通口を有する壁部(ノズル形成壁)に対向する面を振動させて液体を吐出するもの)に比べて小さい力で液滴が飛ばせるという特徴があり、アクチュエータの省電力化を図ることができる。
【0010】
ノズル密度を高くすると電圧印加のための配線をレイアウトするスペースが限られ、基板表面での配線構築が困難となる。基板内に配線や駆動回路を構築することで、ノズル密度が高い構成でも、配線をレイアウトすることができる。一般に、アクチュエータとして用いられる圧電素子の材料として、圧電特性の高さから、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)が広く利用されている。ただし、配線や駆動回路が構築された基板上に圧電膜を成膜する場合、PZTの成膜・結晶化温度は600℃以上を要することから、圧電素子の材料としてPZTを用いると、基板内の駆動回路とその配線が高温に耐えられなくなる。そのため、基板内に配線や駆動回路を構築する構成では、圧電材料としては、PZTよりも成膜温度の低い圧電材料が求められ、PZTに比べ圧電特性の低い材料を選択することを余儀なくされる。しかしながら、上述したノズル板振動方式は、一般的なユニモルフ型ピエゾヘッドに比べ小さい力で液滴が飛ばせるという特徴があるため、PZTに比べ圧電特性の低い材料を選択しても、良好に液体を吐出することが可能である。よって、非鉛材料など成膜・結晶化温度は低いがパワーの小さい圧電材料でも良好に液体を吐出することができる。これにより、基板内に配線や駆動回路を構築することができ、高密度化が可能となる。さらに、ノズル板振動方式は、個別液室の容積を小さくできることから、ヘッドの小型化も可能となる。
【0011】
図1は、本実施形態におけるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
図2は、本実施形態の液体吐出ヘッドのノズル面を模式的に示す斜視図である。
液体吐出ヘッド1は、ノズル板110と、個別液室基板100と、流路基板120とを備えている。そのほか、液体吐出ヘッド1は、後述するように、フレーム部140なども備えている。
【0012】
ノズル板110は、薄膜状であり、液体を吐出する複数のノズル2と、ノズル2の周囲に配置される環状のアクチュエータである電気機械変換素子としての圧電素子5とを有している。個別液室基板100は、複数のノズル2に各々連通する複数の個別液室(圧力室、加圧液室ともいう。)4を有している。各個別液室4の一面(図1中下側の面)にノズル2(振動膜103)があり、当該一面と対向する側に、個別液室の開口部4aが配置される。流路基板120は、複数の個別液室4に連通する液体流路3a,3bを有している。
【0013】
図3は、本実施形態の液体吐出ヘッドにおける1つの個別液室の周辺構成を示す拡大断面図である。
個別液室基板100は、SOI(Silicon on Insulator)基板であり、振動膜103が成膜される側に駆動回路101および配線部102を有している。駆動回路101は、トランジスタや抵抗などを含む回路である。配線部102は、第一電極51に駆動波形を印加するための配線部と、第二電極53に駆動波形を印加するための配線部とを有している。また、配線部102は、振動膜103に開けられた第三コンタクト7cを介して電気接続パッド55に電気的に接続されている。
【0014】
ノズル板110は、複数のノズル2が形成され、圧電素子5を覆うノズル形成部(膜)111を有しており、このノズル形成部111のノズル面には、撥液膜112が形成されていてもよい。液体の吐出を続けた場合、吐出と同時に発生したミストがノズル面に付着する。このミストがノズル面に多量に付着すると、ノズル2から吐出した液体が、ノズル面に付着した液体の影響を受けて、所望の着弾位置からずれてしまうおそれがある。ノズル面に撥液膜112を形成することで、ノズル面への液体の付着を抑制することができ、ノズル2から吐出した液体が、ノズル面に付着した液体の影響を受けるのを抑制することができる。
【0015】
ノズル板110の圧電素子5は、第一電極51(下部電極ともいう。)と、圧電膜52と、第二電極53(上部電極ともいう。)とを有している。圧電素子5は第一絶縁膜8aに覆われている。第一絶縁膜8aは、第一電極51への電気的な接続を行うための孔状の第四コンタクト7dと、第二電極53への電気的な接続を行うための孔状の第五コンタクト7eとが形成されている。
【0016】
また、第一絶縁膜8aには、圧電素子5の第一電極51と個別液室基板100の配線部102とを電気的に連結する第一引出し配線9aと、圧電素子5の第二電極53と個別液室基板100の配線部102とを電気的に連結する第二引出し配線9bとが形成されている。
【0017】
第一引出し配線9aは、第四コンタクト7dを介して第一電極51に電極的に接続され、第一コンタクト7aを介して配線部102に電極的に接続されている。第二引出し配線9bは、第五コンタクト7eを介して第二電極53に電極的に接続され、第二コンタクト7bを介して配線部102に電極的に接続されている。第一引出し配線9aおよび第二引出し配線9bは、第二絶縁膜8bに覆われている。本実施形態では、第二絶縁膜8bは、圧電素子5も覆っており、樹脂からなるノズル形成部111に侵入した湿気が圧電素子5へ侵入するのを防止して圧電素子5を保護する機能を有している。
【0018】
なお、第一電極51及び第二電極53にそれぞれ引き出し配線部を設けて、振動膜に開けられたコンタクトを介して配線部102に直接、電極的に接続してもよい。また、第二絶縁膜8b上にノズル形成部111との密着性を確保するための密着改善膜を形成してもよい。
【0019】
液体吐出ヘッド1内に満たされた液体は、ノズル2に入り込み、ノズル内でメニスカスを形成する。圧電素子5の各電極51,53に所定の駆動波形(電圧)を印加することで、圧電膜52が振動し、振動膜103が図3中上下方向に振動する。振動膜103が振動することで個別液室内の液体に圧力変化が生じ、ノズル2から液体が吐出される。
【0020】
振動膜103の材質としては、SiOやSiN、金属酸化物や樹脂など少なくとも絶縁性を持つ材質であれば良い。しかし、変位を大きくするためにはヤング率が低い材料が望ましく、かつ個別液室基板100との線膨張係数の差を考えるとその差が比較的小さいSiO(二酸化ケイ素)が、振動膜103の材質として最も望ましい。
【0021】
第一電極51と第二電極53は電気抵抗が小さく反応性の低い金属が望ましく、Ir、Moなどの金属が望ましい。圧電膜52を構成する圧電材料としては、本実施形態のように、密度向上のために個別液室基板100に駆動回路101と配線部102を内蔵する場合は、それらを破壊しないために、その成膜温度が450℃以下である圧電材料が望ましい。成膜温度が450℃以下である圧電材料としては、AlNやAlNよりも圧電定数の高いScAlNが挙げられる。
【0022】
また、圧電材料としてScAlNを用いることで、次の利点も得ることができる。すなわち、圧電膜52の結晶配向を揃えることで圧電特性を向上することができるが、その配向制御のために振動膜103と第一電極51の間に配向制御層を設ける必要がある。圧電膜52の圧電材料がScAlNのときは、配向制御層としてもScAlNを用いることで、Moからなる第一電極51の格子定数をScAlNに近づけることができる。その結果、圧電膜52の結晶配向が揃い、圧電特性の向上が可能となる。
【0023】
図4は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の内部構造を模式的に示す正面図であり、フレーム部140の液体供給口33を通るように液体吐出方向に沿って切断したときの断面図である。
図5は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の内部構造を模式的に示す平面図であり、図1中のA-A'断面を示す断面図である。
図6は、本実施形態における液体吐出ヘッド1の内部構造を拡大平面図であり、図1中のB-B'断面を示す断面図である。
【0024】
本実施形態の液体吐出ヘッド1は、図4に示すように、ノズル板110、個別液室基板100、流路基板120、フレーム部140の順で配置され、構成されている。
【0025】
個別液室基板100には、図5に示すように、複数の個別液室4が配列されており、その上面(流路基板120側の面)には、各個別液室4の開口部4aが開口している。流路基板120に形成されている液体流路3a,3bは、各個別液室4の開口部4aに面するように配置されている。本実施形態では、一例として、個別液室4の寸法(開口部4aの直径)は220[μm]であり、個別液室4を区画している隔壁(個別液室4の側壁)の幅は30[μm]としている。
【0026】
本実施形態の流路基板120には、図5及び図6に示すように、個別液室基板100の各個別液室4の開口部4aを横切るように延びる流路隔壁120aが形成されている。この流路隔壁120aにより仕切られた空間が液体流路3a,3bとなる。また、流路基板120には、図5に示すように、各液体流路3a,3bへ流す液体の供給口120bと、各液体流路3a,3bを流れた液体の排出口120cとが形成されている。供給口120bから供給された液体は、図中矢印Cに示すように、液体流路3a,3b内を個別液室基板100の上面に沿って流れ、排出口120cから排出される。
【0027】
流路基板120の上面(個別液室基板100とは反対側の面)には、図4に示すように、フレーム部140が設けられている。流路基板120の供給口120bは、フレーム部140に形成されている供給連通路32を介して、フレーム部140内の供給液体貯留室31に連通されている。
【0028】
液体吐出ヘッド1には、外部の液体貯留部に貯留される液体がフレーム部140の液体供給口33を介して供給される。この液体供給口33から供給された液体は、供給液体貯留室31から供給連通路32を通り、供給口120bから各液体流路3a,3bへ供給される。各液体流路3a,3bに供給された液体は、各個別液室4の開口部4aを介して各個別液室4へと供給される。
【0029】
また、流路基板120の排出口120cは、フレーム部140に形成されている排出連通路を介して、フレーム部140内の排出液体貯留室35に連通されている。これにより、各個別液室4に供給されずに各液体流路3a,3bを通過した液体は、排出口120cから排出連通路を介して排出液体貯留室35へ流れ、液体排出口36から外部のポンプ等を経由して、外部のインク貯留部に戻される。
【0030】
本実施形態の液体吐出ヘッド1は、液体循環方式の液体吐出ヘッドであり、液体吐出ヘッド1内の液体を循環させることが可能となる。これにより、各個別液室4内あるいは各液体流路3a,3b内などの液体吐出ヘッド1内に存在する気泡を外部へ排除したり、沈降しやすい成分をもつ液体を用いる場合に液体吐出ヘッド1内の流路内に液体の成分が沈降することを抑制したりすることができる。
【0031】
ここで、個別液室4のノズル形成壁(ノズル板110)にアクチュエータである圧電素子5が設けられる、いわゆるノズル板振動方式の液体吐出ヘッド1では、個別液室4の角部(個別液室4の下面である振動膜103と個別液室4の側壁100aとの連結箇所)に気泡が滞留することがある。個別液室4内に気泡が滞留していると、圧電素子5の駆動力が個別液室4内の液体に適切に伝搬せず、液体の吐出不良が発生することがある。
【0032】
ノズル板振動方式の液体吐出ヘッドは、ノズル板110と対向する側に位置する個別液室4の開口部4aに、個別液室4へ液体を供給する液体流路が連通する。従来の構成では、個別液室4の開口部4aの全体が1つの液体流路に連通する構成であったため、個別液室4内での液体の動きが少ないものであった。そのため、例えば、当該液体吐出ヘッドへの液体充填作業時に、個別液室4の開口部4aから液体を個別液室4内へ供給して個別液室4内に液体を充填する際、個別液室4の角部に生じる気泡が当該角部に留まったままとなりやすい。また、当該液体吐出ヘッドの稼働中も、個別液室4内の液体の動きが少ないため、個別液室4の角部の気泡は当該角部に滞留し続け、その結果、吐出不良を引き起こす。
【0033】
本実施形態において、各個別液室4の開口部4aは、図5及び図6に示すように、流路隔壁120aによって互いに仕切られた複数(本実施形態では2つ)の液体流路3a,3bに連通している。言い換えると、各個別液室4の開口部4aが流路隔壁120aによって複数の開口部分に分割されている。このような構成によれば、ノズルから液体を吐出した後の個別液室4内への液体の補充のために複数の液体流路3a,3bから個別液室4内へ液体が流入したり、圧電素子5の駆動による個別液室4内への圧力変動によって個別液室4内の液体が複数の液体流路3a,3bへ押し出されたりする。すなわち、個別液室4の開口部4a(複数の開口部分)を介して、個別液室4内へ液体が複数の液体流路3a,3bに対して出入りすることになる。
【0034】
このような各液体流路3a,3bと個別液室4との間の液体の出入りは、仮に各液体流路3a,3bが互いに同じ構造をもち、流路隔壁120aによって個別液室4の開口部4aが全く等しい開口部分に分割される構成であったとしても、製造誤差や、液体吐出ヘッド内における位置の違いなどにより、各液体流路3a,3b間で完全に一致することはない。したがって、個別液室4に対する液体の出入りは、各液体流路3a,3b間で互いに異なるものであり、非対称となる。このような非対称の液体の出入りにより、個別液室4内では、個別液室4の開口部4aの全体が1つの液体流路に連通する従来の構成と比較して、より活発な液体の動きを生じさせることができる。
【0035】
その結果、本実施形態によれば、個別液室4の角部に滞留する気泡が当該角部から移動しやすい。よって、当該液体吐出ヘッドの液体充填作業時あるいは稼働中において、気泡が個別液室4からノズル2を介して外部へ排出され、吐出不良の発生が抑制される。また、当該液体吐出ヘッドの液体充填作業時あるいは稼働中において、気泡が個別液室4の開口部4aから液体流路3a,3bへ排出され、排出口120cを介して排出液体貯留室35から外部へ排出され、吐出不良の発生が抑制される。
【0036】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図7図14は、本実施形態の液体吐出ヘッド1の製造工程を説明するための断面図である。
本実施形態の液体吐出ヘッド1は、基板として、図7に示すように、SOI(Silicon on Insulator)基板200を用いている。SOI基板は、Si(シリコン)で構成される活性層(個別液室基板100となる層)201と、SiO(二酸化ケイ素)で構成されるBOX(buried oxide layer)層202と、Si(シリコン)で構成される支持基板(流路基板120となる層)203とから構成される。BOX層202は、のちにエッチング防止膜として機能する。
【0037】
個別液室基板100となる活性層201の厚み(すなわち、個別液室4の側壁100aを形成する液室側壁層の厚み)は、1[μm]以上200[μm]以下の範囲内であるのが好ましい。活性層201が1[μm]未満であると、個別液室4の高さ(ノズル2が形成されるノズル板110の面(振動膜103の面)から、個別液室4の開口部4a又は流路基板120の流路隔壁120aまでの距離)が小さくなり過ぎて、液体の粘性による液体流動時の圧力損失が大きくなり、高周波での吐出動作が困難となる。また、活性層201が200[μm]を超えると、加工精度上の問題を引き起こしやすい。
【0038】
また、流路基板120となる支持基板203の厚み(すなわち、流路隔壁120aを形成する流路隔壁層の厚み)は、200[μm]以上2000[μm]以下の範囲内であるのが好ましい。支持基板203が200[μm]未満であると、基板が割れやすく、ハンドリング上の問題が生じやすい。また、支持基板203が2000[μm]を超えると、加工精度上の問題を引き起こしやすい。
【0039】
次に、図8に示すように、図7に示すSOI基板200に対し、活性層201の一部を異方性エッチングで除去した後にSiOを埋め込み、エッチング防止膜204を形成する。このプロセスは、例えば、ディープトレンチアイソレーション(Deep Trench Isolation)プロセスによって行うことができる。
【0040】
次に、図9に示すように、活性層201の上に振動膜103、ノズル板110(圧電素子5及びノズル形成部(膜)111)を形成する。これらの形成プロセスは、公知のものを適宜採用することができる。続いて、図10に示すように、振動膜103及びノズル板110を部分的にエッチングで除去して、ノズル2を形成する。
【0041】
次に、図11に示すように、支持基板203の一部を異方性エッチングで除去する。続いて、図12に示すように、残っている支持基板203の表面にSiOを成膜して、エッチング防止膜205を形成する。この結果、支持基板203の除去された部分が液体流路3a,3bとなり、支持基板203の残った部分が流路隔壁120aとなる。
【0042】
次に、図13に示すように、エッチング防止膜であるBOX層202の一部を除去して、活性層201の一部を露出させる。そして、図14に示すように、活性層201の露出した部分から、等方性エッチングにより、振動膜103、エッチング防止膜204及びBOX層202によって囲まれた活性層201の部分を除去する。活性層201の除去された空間は、個別液室4となる。活性層201はSiであるのに対し、エッチング防止膜204及びBOX層202はSiOであるため、エッチング防止膜204及びBOX層202はエッチングストップ層としての役割を果たす。なお、駆動回路101および配線部102は図示されてないが、ノズル板110(圧電素子5及びノズル形成部(膜)111)を形成する前に形成する。これらの形成プロセスは、公知のものを適宜採用することができる。
【0043】
このような方法で個別液室4及び液体流路3a,3bを製造することで、次のようなメリットがある。
【0044】
まず、個別液室4の幅Dの寸法精度を高められるというメリットがある。すなわち、エッチング防止膜204がエッチングストップ層として機能するため、例えばエッチング時の個別液室4の幅Dのウエハ内ばらつきが小さく、加工精度が高い。ノズル板振動方式である液体吐出ヘッド1では、ノズル板110(振動膜103)の振動特性が個別液室4の幅Dに大きく影響するため、この幅Dの加工精度が高いことは重要である。また、個別液室4の幅Dの加工精度が高いことは、個別液室4(個別液室4の側壁100a)に対するノズル2の位置精度も高い点でも、メリットがある。
【0045】
また、個別液室4の開口部4a(個別液室4の側壁100a)に対する流路隔壁120aの位置精度を容易に高められるというメリットがある。仮に、個別液室4の側壁100aを構成する個別液室基板100と、液体流路3a,3bの流路隔壁120aを構成する流路基板120とを、それぞれ別個にエッチングして形成した後に互いを貼り合わせることでも、本実施形態の液体吐出ヘッド1の構成を得ることができる。しかしながら、この場合、基板100,120を互いに貼り合わせる際に個別液室4の開口部4a(個別液室4の側壁100a)に対する流路隔壁120aの高い位置合わせ精度が必要であり、労力がかかる。これに対し、上述した本実施形態の方法では、1枚の基板(SOI基板200)に対してエッチングを繰り返すことにより個別液室4の側壁100aと液体流路3a,3bの流路隔壁120aとを形成する。そのため、個別液室4の開口部4a(個別液室4の側壁100a)に対する流路隔壁120aの位置精度を容易に高められる。
【0046】
〔変形例1〕
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド1の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
上述した実施形態の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に連通する液体流路3a,3bがいずれも、各個別液室4へ液体を供給する供給流路である例であったが、本変形例1の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に連通する液体流路3a,3bが、供給流路と、各個別液室から液体を排出する排出流路とを含む例である。
【0047】
図15は、本変形例1における液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
図16は、本変形例1における液体吐出ヘッド1の内部構造を模式的に示す平面図であり、図15中のA-A'断面を示す断面図である。
なお、以下の説明では、上述した実施形態と重複する説明については適宜省略する。
【0048】
本変形例1においても、各個別液室4の開口部4aは、上述した実施形態と同様、図15及び図16に示すように、流路隔壁120aによって互いに仕切られた複数(本変形例1でも2つ)の液体流路3a,3bに連通している。言い換えると、各個別液室4の開口部4aが流路隔壁120aによって複数の開口部分に分割されている。ただし、本変形例1では、個別液室4に接続する一方の液体流路3aが個別液室4へ液体を供給する供給流路となっており、個別液室4に接続する他方の液体流路3bが個別液室4から液体を排出する排出流路となっている。
【0049】
本変形例1の液体吐出ヘッド1におけるノズル2は、二次元方向に配列されている。具体的には、図16に示すように、図中左右方向に沿って各ノズル2が直線状に配列されて構成されるノズル列が、図中上下方向に複数並べて配置されている。図16では、説明の簡略化のため、5個のノズル2が直線状に配列されているノズル列が3つ並べて配置された例が図示されている。なお、各ノズル列のノズルは、図16に示すように、ノズル列方向(図中左右方向)の位置が互いにズレるように配列されている。これにより、ノズル列間で互いに隣接するノズルの隣接方向(第一方向)は、ノズル列方向(第二方向)に対して直交せず、傾斜する方向となっている。
【0050】
本変形例1の流路基板120では、図16に示すように、第一方向で隣り合う各ノズル(ノズル列間で互いに隣接するノズル)の個別液室4に接続される複数の液体流路3a,3bが共通の流路隔壁120aによって仕切られている。これにより、各共通の流路隔壁120aは、第二方向(図16中左右方向、ノズル列方向)に並んで配置されている。そして、本変形例1において、各共通の流路隔壁120aの第一方向の端部が、供給流路3aと排出流路3bとを仕切る仕切り壁120dによって連結されている。このような構成により、流路隔壁120a及び仕切り壁120dによって仕切られた空間のうち、供給口120bに連通する空間は供給流路3aとなり、排出口120cに連通する空間は排出流路3bとなり、互いに仕切られた状態になる。
【0051】
本変形例1においては、供給口120bから供給された液体は、図中矢印C1に示すように、供給流路3a内を個別液室基板100の上面に沿って流れ、各個別液室4の開口部4aが分割された2つの開口部分のうちの一方側(供給流路3aに接続する側)から、各個別液室4へ液体が供給される。また、各個別液室4内の液体のうちノズル2から吐出されなかった液体は、各個別液室4の開口部4aが分割された2つの開口部分のうちの他方側(排出流路3bに接続する側)から排出される。各個別液室4から排出された液体は、排出流路3b内を個別液室基板100の上面に沿って流れ、排出口120cから排出される。
【0052】
本変形例1によれば、個別液室4の開口部4aに対し、供給流路3aから液体を流入させる流れと、排出流路3bへ液体を流出させる流れとを作り出すことができ、個別液室4内の液体の入れ替えが可能となる。したがって、個別液室4の開口部4aに接続される複数の液体流路のいずれもが供給流路3aである上述した実施形態の構成と比較して、個別液室4内の液体の動きをより活発なものとすることができる。その結果、個別液室4内の気泡を動かして個別液室4内から排出しやすく、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0053】
〔変形例2〕
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド1の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
上述した実施形態及び変形例1の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に接続される複数の液体流路3a,3b内を、液体が個別液室基板100の上面に沿って流れる構成である。液体吐出ヘッド1のノズル数が多く、1つの液体流路3a,3bに接続される個別液室4の数が多くて経路が長くなる場合、液体流路3a,3bを流れる際の圧力損失が無視できなくなり、液体の供給不足になる可能性がある。特に液体の粘度が高い場合、また吐出が高周波の場合に顕著である。
【0054】
図17は、本変形例2における液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
本変形例2の液体吐出ヘッド1は、上述した実施形態と同様、各個別液室4に連通する液体流路3a,3bがいずれも、各個別液室4へ液体を供給する供給流路である例である。ただし、各供給流路3a,3bの流路入口120eは、個別液室4の開口部4aに接続される各供給流路3a,3bの流路出口120f(すなわち、個別液室4の開口部4aが分割された2つの開口部分)と対向する側に位置している。そして、本変形例2の液体吐出ヘッド1では、各供給流路3a,3bへ供給される液体を収容する共通液室120gが、各供給流路3a,3bの流路入口120eに面するように設けられている。
【0055】
本変形例2によれば、液体流路3a,3bを流れる経路長は液体吐出ヘッド1のノズル数に依らず流路隔壁の厚みで決まるため、ノズル数が多い場合でも圧力損失が小さく、スムーズな液体の出入りが実現される。その結果、個別液室4内の液体の動きがより活発なものとなり、個別液室4内の気泡を動かして個別液室4内から排出しやすく、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0056】
〔変形例3〕
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド1の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
上述した実施形態及び変形例1、2の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に接続される液体流路3a,3bの数が2つである例であったが、本変形例3の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に接続される液体流路3a,3bの数が4つである例である。なお、本変形例3の液体吐出ヘッド1の基本構成は、上述した実施形態と同様であり、各個別液室4に連通する液体流路3a,3bがいずれも、各個別液室4へ液体を供給する供給流路である例である。
【0057】
図18は、本変形例3における液体吐出ヘッド1の内部構造を拡大平面図であり、図1中のB-B'断面に相当する断面図である。
本変形例3の液体吐出ヘッド1において、各個別液室4の開口部4aは、図18に示すように、流路隔壁120a1,120a2によって互いに仕切られた複数(本変形例3では4つ)の液体流路3a,3b,3c,3dに連通している。言い換えると、各個別液室4の開口部4aが流路隔壁120a1,120a2によって複数(4つ)の開口部分に分割されている。
【0058】
具体的には、上述した実施形態と同様にノズル2が二次元配列された構成において、本変形例3の流路基板120では、図18に示すように、ノズル列間で互いに隣接するノズルの隣接方向(第一方向)で隣り合う各ノズル(ノズル列間で互いに隣接するノズル)の個別液室4に接続される液体流路が共通の第一流路隔壁120a1によって仕切られている。また、本変形例3の流路基板120では、図18に示すように、ノズル列方向(第二方向)で隣り合う各ノズル(ノズル列内で互いに隣接するノズル)の個別液室4に接続される液体流路は、共通の第二流路隔壁120a2によって仕切られている。そして、本変形例3の液体吐出ヘッド1では、第一流路隔壁120a1と第二流路隔壁120a2との交差箇所が、各個別液室4の開口部4aに対向するように構成されている。
【0059】
これにより、本変形例3において、各個別液室4の開口部4aは、図18に示すように、流路隔壁120a1,120a2によって互いに仕切られた4つの液体流路3a,3b,3c,3dに連通する構成となっている。言い換えると、各個別液室4の開口部4aが流路隔壁120a1,120a2によって4つの開口部分に分割されている。
【0060】
本変形例3によれば、各個別液室4の開口部4aに接続される液体流路3a,3b,3c,3dの数が多いことで、個別液室4に対する液体の出入り箇所を増やすことができる。これにより、個別液室4内における液体の動きが複雑化し、個別液室4内の気泡を動かして個別液室4内から排出しやすくなり、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0061】
なお、本変形例3では、各個別液室4の開口部4aに接続される液体流路3a,3b,3c,3dの数が4つである例であったが、この数は適宜設定することが可能であり、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0062】
〔変形例4〕
次に、本実施形態における液体吐出ヘッド1の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
上述した実施形態及び変形例1、2の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に接続される液体流路3a,3bの開口面積又は開口形状が互いに同じものとした例であったが、本変形例3の液体吐出ヘッド1では、各個別液室4に接続される液体流路3a,3bの開口面積又は開口形状が互いに異なる例である。
【0063】
図19は、本変形例4における液体吐出ヘッドを模式的に示す断面図である。
本変形例4の液体吐出ヘッド1は、上述した実施形態と同様、各個別液室4に連通する液体流路3a,3bがいずれも、各個別液室4へ液体を供給する供給流路である例である。ただし、個別液室4の開口部4aに接続される各液体流路3a,3bの流路出口(すなわち、個別液室4の開口部4aが分割された2つの開口部分)の開口面積又は開口形状が、図19に示すように、互いに異なるように構成されている。
【0064】
具体的には、本変形例4の流路基板120は、図19に示すように、個別液室基板100の各個別液室4の開口部4aを横切るように延びる流路隔壁120aが、開口部4aの開口中央からズレた位置を横切るように配置されている。これにより、個別液室4の開口部4aに接続される一方の液体流路3a,3bの流路出口の開口面積が、当該個別液室4の開口部4aに接続される他方の液体流路3b,3aの流路出口の開口面積よりも大きくなっている。その結果、個別液室4に対する液体の出入りC3,C4を積極的に非対称化することができ、個別液室4内でより活発な液体の動きを生じさせることができる。よって、個別液室4内の気泡を動かして個別液室4内から排出しやすくなり、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0065】
なお、本変形例4の構成は、例えば、図20に示すように、上述した変形例2のような共通液室120gを設けた構成においても、有用である。
【0066】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について、図21及び図22を参照して説明する。
図21は、本実施形態における液体を吐出する装置としての画像形成装置であるインクジェット記録装置である印刷装置の概略説明図である。
図22は、本実施形態の印刷装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0067】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503とを備えている。また、印刷装置500は、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509なども備えている。
【0068】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0069】
本実施形態の印刷装置500では、ヘッドユニット550に、上述した本実施形態に係る2つのヘッドモジュール100A,100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0070】
そして、ヘッドモジュール100A,100Bの搬送方向と直交する方向における液体吐出ヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0071】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について、図23及び図24を参照して説明する。
図23は、本例の印刷装置の要部平面説明図である。
図24は、本例の印刷装置の要部側面説明図である。
【0072】
本例の印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0073】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド1及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ヘッド1は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド1は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド1は、液体循環装置と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0074】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド1に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0075】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。また、主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0076】
このように構成した印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0077】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について、図25を参照して説明する。
図25は、本例の液体吐出ユニットの要部平面説明図である。
【0078】
この液体吐出ユニット440は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド1で構成されている。
【0079】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0080】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について、図26を参照して説明する。
図26は、本例の液体吐出ユニットの正面説明図である。
【0081】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド1と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0082】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド1と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0083】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0084】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0085】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0086】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0087】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0088】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0089】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0090】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0091】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0092】
なお、ここでは、「液体吐出ユニット」について、液体吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、「液体吐出ユニット」には上述した液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品、機構が一体化したものも含まれる。
【0093】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニットなどを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0094】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0095】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0096】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0097】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0098】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0099】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0100】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がる。また、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などもある。
【0101】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0102】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、液体(例えばインク)を吐出するノズル2と、前記ノズルに連通する個別液室4と、前記個別液室のノズル形成壁(例えばノズル板110)に設けられるアクチュエータ(例えば圧電素子5)とを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別液室内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッド1であって、前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記個別液室の開口部4aには、流路隔壁120aによって互いに仕切られた複数の液体流路3a,3b,3c,3dが接続されていることを特徴とするものである。
個別液室のノズル形成壁にアクチュエータが設けられる、いわゆるノズル板振動方式の液体吐出ヘッドでは、個別液室内、特に個別液室の角部(個別液室のノズル形成壁と側壁との連結箇所)に、気泡が滞留することがある。個別液室内に気泡が滞留していると、アクチュエータの駆動力が個別液室内の液体に適切に伝搬せず、液体の吐出不良が発生することがある。
ノズル板振動方式の液体吐出ヘッドは、ノズル形成壁と対向する側に位置する個別液室の開口部に、当該個別液室へ液体を供給する供給流路(液体流路)が連通している。従来の構成では、個別液室の開口部の全体が1つの供給流路に連通する構成であったため、個別液室の開口部の全体から液体がほぼ一様に出入りする。そのため、個別液室内での液体の動きが少なく、例えば、当該液体吐出ヘッドへの液体充填作業時に、個別液室の開口部から液体を個別液室内へ供給して個別液室内に液体を充填する際、個別液室の角部等に気泡が滞留しやすい。また、当該液体吐出ヘッドの稼働中も個別液室内の液体の動きが少ないため、個別液室の角部等の気泡は当該角部に滞留し続ける結果、吐出不良を引き起こす。
本態様においては、個別液室の開口部に、流路隔壁によって互いに仕切られた複数の液体流路が接続されている。これによれば、個別液室の開口部との間で液体を出入させる液体流路が複数になることから、個別液室の開口部に対する液体の出入り(流れ)が複数の液体流路間で非対称となりやすい。よって、個別液室の開口部の全体が1つの供給流路に連通していて個別液室の開口部の全体から液体がほぼ一様に出入りする従来の構成と比較して、個別液室内の液体の動きを生じさせやすい。その結果、個別液室の角部の気泡が個別液室の角部から移動しやすくなり、当該液体吐出ヘッドの液体充填作業時あるいは稼働中において、気泡が個別液室から排出され、吐出不良の発生が抑制される。
【0103】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記複数の液体流路のすべてが、前記個別液室へ液体を供給する供給流路であることを特徴とするものである。
液体流路から液体を排出する排出流路を持たない簡易な構成の液体吐出ヘッドでは、特に個別液室内の液体の動きが生じにくく、個別液室内に気泡が滞留しやすい。本態様によれば、個別液室の開口部へ液体を供給する液体流路が複数になることから、個別液室の開口部に対する液体の流入(流れ)が複数の液体流路(供給流路)間で非対称となりやすく、個別液室内の液体の動きを生じさせやすい。よって、このような簡易な構成の液体吐出ヘッドにおいても、個別液室内の気泡を移動させやすくして、気泡の滞留による吐出不良の発生を抑制することができる。
【0104】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記ノズルが複数備わっており、前記個別液室が前記ノズルごとに備わっており、前記アクチュエータが前記個別液室ごとに備わっており、前記複数の液体流路が前記個別液室ごとに備わっており、前記供給流路の流路入口120eは、前記個別液室の開口部に接続される前記供給流路の流路出口120fと対向する側に位置し、前記複数の液体流路の各供給流路へ供給される液体を収容する共通液室120gに面していることを特徴とするものである。
本態様では、共通液室から液体が流入する液体流路の流路入口と、個別液室へ液体が流出する当該液体流路の流路出口とが互いに対面する位置に配置される。これにより、液体流路内の液体は、当該液体流路を流れる経路長は液体吐出ヘッド1のノズル数に依らず流路隔壁の厚みで決まり、短くなるので液体吐出ヘッドのノズル数が多い場合でも圧力損失が小さく、スムーズな液体の出入りが実現される。したがって、個別液室内の液体の動きがより活発なものとなり、個別液室内の気泡を動かして個別液室内から排出しやすく、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0105】
[第4態様]
第4態様は、第1態様において、前記複数の液体流路は、前記個別液室へ液体を供給する供給流路と、該個別液室から液体を排出する排出流路とを含むことを特徴とするものである。
これによれば、個別液室の開口部に対し、供給流路から液体を流入させる流れと、排出流路へ液体を流出させる流れとを作り出すことができ、個別液室内の液体の入れ替えが可能となる。したがって、個別液室の開口部に接続される複数の液体流路のいずれもが供給流路である構成と比較して、個別液室内の液体の動きをより活発なものとすることができる。その結果、個別液室内の気泡を動かして個別液室内から排出しやすく、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0106】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記ノズルは、二次元方向に配列され、前記個別液室が前記ノズルごとに備わっており、前記アクチュエータが前記個別液室ごとに備わっており、前記複数の液体流路が前記個別液室ごとに備わっており、第一方向(例えば、ノズル列間におけるノズルの隣接方向)で隣り合う各ノズルの個別液室に接続される複数の液体流路が共通の流路隔壁120aによって仕切られ、前記第一方向に対して交差する第二方向(例えばノズル列方向)に並んで配置される各共通の流路隔壁の前記第一方向の端部が、前記供給流路と前記排出流路とを仕切る仕切り壁120dによって連結されていることを特徴とするものである。
これによれば、簡易な構成で、流路隔壁120a及び仕切り壁120dによって仕切られた空間のうちの一方の空間を供給流路とし、他方の空間を排出流路とすることができる。
【0107】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記個別液室を区画する壁部のうち前記ノズルからの液体吐出方向に対して直交する側に位置する側壁100aを形成する液室側壁層(例えば個別液室基板100)と、前記流路隔壁を形成する流路隔壁層(例えば流路基板120)とが、Si(シリコン)によって形成され、前記液室側壁層と前記流路隔壁層とがSiO層によって接続されていることを特徴とするものである。
これによれば、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、1枚の基板(SOI基板)に対してエッチングを繰り返すことにより個別液室の側壁と液体流路の流路隔壁とを形成することができる。そのため、液室側壁層と流路隔壁層とを貼り合わせて形成する場合と比較して、個別液室の開口部(個別液室の側壁)に対する流路隔壁の位置精度を容易に高めることができる。
【0108】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記個別液室の開口部に接続される前記複数の液体流路の開口面積又は開口形状が互いに異なることを特徴とするものである。
これによれば、個別液室に対する液体の出入りを積極的に非対称化することができ、個別液室内でより活発な液体の動きを生じさせることができる。よって、個別液室内の気泡を動かして個別液室内から排出しやすくなり、吐出不良の発生を更に抑制することができる。
【0109】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記個別液室を区画する壁部のうち前記ノズルからの液体吐出方向に対して直交する側に位置する側壁を形成する液室側壁層の厚みが1[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることを特徴とするものである。
これによれば、加工精度上の問題を引き起こしにくい範囲で、高周波での吐出動作を容易にすることができる。
【0110】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記流路隔壁を形成する流路隔壁層の厚みが200[μm]以上2000[μm]以下の範囲内であることを特徴とするものである。
これによれば、加工精度上の問題を引き起こしにくい範囲で、製造工程中におけるハンドリング上の問題が生じにくくすることができる。
【0111】
[第10態様]
第10態様は、液体を吐出する装置であって、第1乃至第9態様のいずれか液体吐出ヘッドを備えることを特徴とするものである。
本態様によれば、個別液室内の気泡の滞留による吐出不良の発生が抑制された液体を吐出する装置を実現することができる。
【0112】
[第11態様]
第11態様は、液体(例えばインク)を吐出するノズル2と、前記ノズルに連通する個別液室4と、前記個別液室のノズル形成壁(例えばノズル板110)に設けられるアクチュエータ(例えば圧電素子5)とを備え、前記アクチュエータを駆動して前記個別液室内の液体を前記ノズルから吐出させる液体吐出ヘッド1の製造方法であって、前記ノズル形成壁と対向する側に位置する前記個別液室の開口部4aに接続される複数の液体流路を互いに仕切る流路隔壁120aを形成する工程を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、個別液室内の気泡の滞留による吐出不良の発生が抑制された液体を吐出する装置を製造することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 :液体吐出ヘッド
2 :ノズル
3a~3d :液体流路
4 :個別液室
4a :開口部
5 :圧電素子
31 :供給液体貯留室
32 :供給連通路
33 :液体供給口
35 :排出液体貯留室
36 :液体排出口
51 :第一電極
52 :圧電膜
53 :第二電極
100 :個別液室基板
100a :側壁
101 :駆動回路
102 :配線部
103 :振動膜
110 :ノズル板
111 :ノズル形成部
112 :撥液膜
120 :流路基板
120a :流路隔壁
120a1 :第一流路隔壁
120a2 :第二流路隔壁
120b :供給口
120c :排出口
120d :仕切り壁
120e :流路入口
120f :流路出口
120g :共通液室
140 :フレーム部
200 :SOI基板
201 :活性層
202 :BOX層
203 :支持基板
204,205:エッチング防止膜
500 :印刷装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【特許文献1】特許第6027914号公報
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