IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-成膜装置、および成膜方法 図1
  • 特開-成膜装置、および成膜方法 図2
  • 特開-成膜装置、および成膜方法 図3
  • 特開-成膜装置、および成膜方法 図4
  • 特開-成膜装置、および成膜方法 図5
  • 特開-成膜装置、および成膜方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125766
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】成膜装置、および成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240911BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240911BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033815
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA40
4K030BA43
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA06
4K030CA12
4K030EA04
4K030EA06
4K030EA11
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA06
4K030HA01
4K030KA04
4K030KA25
4K030KA26
4K030KA39
4K030KA41
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC05
5F045AC08
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AE01
5F045AF02
5F045AF03
5F045BB17
5F045DP19
5F045DP28
5F045EC09
5F045EE14
5F045EE17
5F045EF03
5F045EK06
5F058BA08
5F058BB01
5F058BB07
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BC09
5F058BD04
5F058BD05
5F058BD10
5F058BD12
5F058BF04
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BG02
(57)【要約】
【課題】成膜の製造コストおよび基板の熱履歴を抑えながら、膜質を一層向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】成膜装置は、処理容器と、前記処理容器内で基板を保持する基板保持部と、前記処理容器内に処理ガス、およびパージガスを供給可能なガス供給部と、前記ガス供給部の動作を制御する制御部と、を含む。前記ガス供給部は、前記処理容器内に前記パージガスを供給するガス供給ノズルを備える。前記ガス供給ノズルは、前記パージガスを加熱可能な加熱機構を有する。前記制御部は、前記パージガスを前記処理容器に供給する工程において、前記加熱機構を動作させて、前記ガス供給ノズルから吐出する前記パージガスを加熱する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内で基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器内に処理ガス、およびパージガスを供給可能なガス供給部と、
前記ガス供給部の動作を制御する制御部と、を含む成膜装置であって、
前記ガス供給部は、前記処理容器内に前記パージガスを供給するガス供給ノズルを備え、
前記ガス供給ノズルは、前記パージガスを加熱可能な加熱機構を有し、
前記制御部は、前記パージガスを前記処理容器に供給する工程において、前記加熱機構を動作させて、前記ガス供給ノズルから吐出する前記パージガスを加熱する、
成膜装置。
【請求項2】
前記処理ガスは、前記基板に吸着される原料ガスと、前記原料ガスと反応する反応ガスと、を含み、
前記ガス供給ノズルは、前記原料ガスと共に前記パージガスをまとめて供給可能な第1ガス供給ノズルと、前記反応ガスを供給可能な第2ガス供給ノズルと、を有し、
前記加熱機構は、前記第1ガス供給ノズルに設けられている、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記処理容器は、複数の前記基板を鉛直方向に並べて収容可能であり、
前記ガス供給ノズルは、前記処理容器内において鉛直方向に延在する方向に沿って複数のガス孔を有し、
前記加熱機構は、前記複数のガス孔のうち最上端に位置するガス孔から最下端に位置するガス孔の範囲にわたって設けられている、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記処理容器の外部に当該処理容器を温度調整する温調炉を備え、
前記制御部は、前記温調炉が前記処理容器を温度調整する温度よりも前記加熱機構の温度を高く設定して前記ガス供給ノズルが供給するガスを加熱する、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記処理ガスは、前記基板に吸着される原料ガスと、前記原料ガスと反応する反応ガスと、を含み、
前記制御部は、
(A)前記原料ガスを前記処理容器に供給する工程と、
(B)前記(A)の工程後に、前記パージガスのみを前記処理容器に供給する工程と、
(C)前記(B)の工程後に、前記反応ガスを前記処理容器に供給する工程と、
(D)前記(C)の工程後に、前記パージガスのみを前記処理容器に供給する工程と、をこの順に実施する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記(A)の工程において、前記加熱機構により加熱した前記原料ガスおよび前記パージガスを前記処理容器に供給する、
請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記(D)の工程において、前記加熱機構により加熱した前記パージガスを前記処理容器に供給する、
請求項5に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記(C)の工程において、前記加熱機構により加熱した前記パージガスを前記処理容器に供給する、
請求項5に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記(A)の工程、前記(B)の工程、前記(C)の工程、前記(D)の工程にわたって、前記加熱機構により加熱した前記パージガスを前記処理容器に供給する、
請求項5に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記(A)の工程、前記(B)の工程、前記(C)の工程、前記(D)の工程にわたって、同じ流量の前記パージガスを前記処理容器に供給する、
請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
処理容器と、
前記処理容器内で基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器内に処理ガス、およびパージガスを供給可能なガス供給部と、を含み、
前記ガス供給部は、前記処理容器内に前記パージガスを供給するガス供給ノズルを備え、
前記ガス供給ノズルは、前記パージガスを加熱可能な加熱機構を有する成膜装置の成膜方法であって、
前記パージガスを前記処理容器に供給する工程において、前記加熱機構を動作させて前記ガス供給ノズルから吐出する前記パージガスを加熱する、
成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置、および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法による成膜では、通常、処理容器内の成膜温度が高いほど原料ガスや反応ガス等の処理ガスが活性化して、基板に積層される膜の膜質が向上する。ただし、成膜装置は、膜質の向上のために処理容器全体の加熱量を増大すると、製造コストおよび基板の熱履歴(サーマルバジェット)が高くなる。
【0003】
一方、特許文献1には、処理ガス用の供給ノズル内において処理ガスを事前に加熱して、処理容器内で処理ガスを活性化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5017913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、成膜の製造コストおよび基板の熱履歴を抑えながら、膜質を一層向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、処理容器と、前記処理容器内で基板を保持する基板保持部と、前記処理容器内に処理ガス、およびパージガスを供給可能なガス供給部と、前記ガス供給部の動作を制御する制御部と、を含む成膜装置であって、前記ガス供給部は、前記処理容器内に前記パージガスを供給するガス供給ノズルを備え、前記ガス供給ノズルは、前記パージガスを加熱可能な加熱機構を有し、前記制御部は、前記パージガスを前記処理容器に供給する工程において、前記加熱機構を動作させて、前記ガス供給ノズルから吐出する前記パージガスを加熱する、成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、成膜の製造コストおよび基板の熱履歴を抑えながら、膜質を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る成膜装置を概略的に示す断面図である。
図2】ガス供給部の第1ガス供給ノズルを示す断面図である。
図3図3(A)は、第1例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。図3(B)は、第2例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。
図4図4(A)は、第3例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。図4(B)は、第4例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。
図5図5は、第5例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。
図6】本実施形態に係る成膜方法により成膜した膜をウェットエッチングした際のエッチング量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係る成膜装置1を概略的に示す断面図である。図1に示すように、成膜装置1は、複数の基板Wを鉛直方向に並べて保持し、原子層堆積(ALD)法により各基板Wの表面に所望の膜を成膜する縦型の基板処理装置(熱処理装置)に構成されている。成膜が施される基板Wは、特に限定されず、例えば、シリコンウエハ、もしくは化合物半導体ウエハ等の半導体基板、またはガラス基板があげられる。
【0011】
成膜装置1は、各基板Wを収容して成膜を行う処理容器10と、処理容器10内にガスを供給するガス供給部30と、処理容器10内からガスを排気するガス排気部40と、処理容器10の周囲に配置される温調炉50と、を備える。また、成膜装置1は、この成膜装置1の各構成を制御する制御部90を有する。
【0012】
処理容器10は、円筒状に形成され、軸が鉛直方向(上下方向)に沿うように設置される。また、処理容器10は、内筒11と、この内筒11を収容する外筒12と、を有する2重筒構造を呈している。内筒11および外筒12は、石英等の耐熱性材料により形成され、互いに同軸上に配置されている。なお、処理容器10は、2重筒構造に限らず、単筒構造でもよく、あるいは3以上の筒からなる構造でもよい。
【0013】
内筒11は、開放した下端を備える一方で、天井壁を上端に備える。また、内筒11は、各基板Wの直径よりも大きな内径を有すると共に、各基板Wの鉛直方向の配置範囲よりも長い軸方向長さを有する。内筒11の内部は、収容された各基板Wにガスを供給して成膜を施す処理空間P1となる。内筒11の所定の周方向位置には、処理空間P1から内筒11と外筒12の間の流通空間P2にガスを流出させる開口15が設けられている。例えば、開口15の鉛直方向の長さは、各基板Wの配置範囲以上に設定されている。なお、開口15の形成位置については、特に限定されず、例えば、内筒11の天井壁に形成されてもよい。
【0014】
また、内筒11は、開口15と反対側の周方向位置に、処理空間P1に連通すると共に、ガス供給部30のガス供給ノズル31を収容可能な収容部13を有する。収容部13は、内筒11の軸(鉛直方向)と平行に延在している。一例として、収容部13は、内筒11の側壁の一部を径方向外側に突出させた凸部14の内側に設けられる。
【0015】
外筒12は、内筒11よりも大きな内径を有しており、内筒11を非接触に覆っている。外筒12の内側に形成される流通空間P2は、内筒11の上方および側方に連続し、開口15から移動したガスを鉛直方向下側に流通させる。
【0016】
処理容器10の下端は、ステンレス鋼により形成された円筒状のマニホールド17に支持されている。マニホールド17は、マニホールド側フランジ17fを上端に有する。マニホールド側フランジ17fは、外筒12の下端に形成された外筒側フランジ12fを固定および支持している。外筒側フランジ12fとマニホールド側フランジ17fとの間には、外筒12およびマニホールド17を気密にシールするシール部材19が設けられている。また、マニホールド17は、環状の支持プレート20を上部側の内壁に備える。支持プレート20は、内壁から径方向内側に突出して、内筒11の下端を固定および支持する。
【0017】
マニホールド17の下端開口には、基板配置ユニット22の蓋体21が離脱可能に配置される。マニホールド17の下端は、蓋体21の接触に伴ってマニホールド17の下端開口を気密に塞ぐシール部材18を備える。
【0018】
基板配置ユニット22は、上下方向に延出するウエハボート16を、蓋体21から上方に向けて突出させている。ウエハボート16は、鉛直方向に沿って図示しない複数の棚を有しており、鉛直方向の所定間隔毎に各基板Wを保持する。ウエハボート16による各基板Wの保持状態で、各基板Wは、相互に水平方向に支持されている。
【0019】
さらに、基板配置ユニット22は、ウエハボート16を回転自在に支持する回転機構23と、回転機構23を支持する昇降機構25とを含む。回転機構23は、蓋体21の中心部に設けられ、図示しない回転源と、回転源により回転する回転軸24と、を有する。回転軸24の上端には、回転プレート26および断熱ユニット27が連結されている。回転軸24は、回転に伴いウエハボート16を連れ回りさせる。
【0020】
昇降機構25は、鉛直方向に延在する柱部25Aと、柱部25Aと相対的に昇降するアーム25Bとを有する。アーム25Bは、略水平方向に延在して回転機構23およびウエハボート16を支持している。成膜装置1は、昇降機構25のアーム25Bを昇降することで、蓋体21とウエハボート16と一体に上下動させ、処理容器10内に対してウエハボート16を挿入および離脱させる。
【0021】
ガス供給部30は、処理容器10の処理空間P1内の各基板Wにガスを供給するために、1以上のガス供給ノズル31を備える。ガス供給部30により供給するガスとしては、前駆体(プリカーサ)を基板Wに堆積させるための原料ガス、前駆体と反応する反応ガス、処理空間P1内をパージするパージガスがあげられる。例えば、アルミナ(Al)を基板Wに成膜する場合には、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMA)等のアルミニウム含有ガスを適用し、反応ガスとしてオゾン(O)等の酸素含有ガスを適用することがあげられる。シリコン酸化膜を成膜する場合、原料ガスとしてジクロロシラン(DCS)等のシリコン含有ガスを適用し、反応ガスとしてオゾン等の酸素含有ガスを適用することがあげられる。シリコン窒化膜を成膜する場合、原料ガスとしてシリコン含有ガスを適用し、反応ガスとしてアンモニア等の窒素含有ガスを適用することがあげられる。なお、他の金属膜を成膜する場合も、目的の金属を含有するガスを原料ガスとし、この原料ガスと反応する適宜の反応ガスを採用し得ることは勿論である。
【0022】
アルミナ、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を成膜する際に適用されるパージガスとしては、窒素(N)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスがあげられる。以下では、各基板Wにアルミナを成膜する例をあげて、成膜装置1の各構成および動作について説明していく。
【0023】
本実施形態において、ガス供給部30は、2つのガス供給ノズル31(第1ガス供給ノズル31A、第2ガス供給ノズル31B)を備えている。第1ガス供給ノズル31Aは、原料ガスと、パージガスとを処理容器10内に供給するノズルである。第2ガス供給ノズル31Bは、反応ガスを処理容器10内に供給するノズルである。なお、ガス供給部30は、この構成に限定されず、例えば、原料ガス、反応ガス、パージガスの種類毎に(すなわち、3つ以上の)ガス供給ノズル31を備えてもよい。逆に、ガス供給部30は、原料ガス、反応ガス、パージガスを1つのガス供給ノズル31により供給する構成でもよい。
【0024】
各ガス供給ノズル31(第1ガス供給ノズル31A、第2ガス供給ノズル31B)は、石英製のインジェクタ管であり、マニホールド17に固定される。また、各ガス供給ノズル31は、内筒11内を鉛直方向に沿って延びると共に、下端においてL字状に屈曲してマニホールド17の内外を貫通している。各ガス供給ノズル31は、内筒11内において鉛直方向の所定の間隔毎に複数のガス孔31hを備えており、各ガス孔31hから水平方向にガスを吐出する。各ガス孔31hの間隔は、例えば、ウエハボート16に支持される各基板Wの間隔と同じになるように設定される。また、各ガス孔31hの鉛直方向の位置は、鉛直方向に隣り合う基板W同士の中間に位置するように設定されている。これにより、各ガス孔31hは、各基板Wの間の隙間にガスを円滑に供給できる。
【0025】
そして、本実施形態に係る第1ガス供給ノズル31Aは、処理容器10内に吐出する原料ガスおよびパージガスを事前に加熱する機能を有している。なお、本実施形態に係る第2ガス供給ノズル31Bは、処理容器10内に吐出する反応ガスを事前に加熱しない。ただし、成膜装置1は、処理容器10内に吐出する前に反応ガスを加熱する機能を有してもよく、この場合、第2ガス供給ノズル31Bは、第1ガス供給ノズル31Aと同様に構成され得る。
【0026】
図2は、ガス供給部30の第1ガス供給ノズル31Aを示す断面図である。図2に示すように、第1ガス供給ノズル31Aは、加熱機構34を有する内側チューブ32と、この内側チューブ32を収容して原料ガスおよびパージガスを流通させる外側チューブ33と、を含む2重管構造を呈している。なお、第1ガス供給ノズル31Aは、ガスを加熱する機能を有していればその構成については特に限定されず、単管構造でもよく、3以上の管からなる構造でもよい。
【0027】
内側チューブ32および外側チューブ33は、それぞれ石英等の耐熱性材料により硬質な管に形成され、互いに同軸上に配置されている。なお、内側チューブ32および外側チューブ33は、相互に異なる材料により形成されてもよい。例えば、内側チューブ32は、外側チューブ33よりも熱伝導率が高い材料により形成されてもよい。
【0028】
内側チューブ32は、外側チューブ33内を延在し、延在先端(鉛直方向の上端)において外側チューブ33に固定されている。内側チューブ32は、加熱機構34を内部空間に収容している。内側チューブ32の伝熱性を高めるため、内側チューブ32の肉厚は、外側チューブ33の肉厚よりも薄く形成されてもよい。
【0029】
加熱機構34は、アルミナコア341と、ヒータ素線342と、温度センサ343と、ヒータ素線342および温度センサ343の各々に接続される複数の配線344と、を備える。また、加熱機構34は、内側チューブ32の延在基端よりも外側において複数の配線344を覆うことで、高周波ノイズ等を遮断する被覆部345を有する。
【0030】
アルミナコア341およびヒータ素線342は、加熱機構34の加熱領域HRを構成している。アルミナコア341およびヒータ素線342は、第1ガス供給ノズル31Aにおいて、外側チューブ33に形成された複数のガス孔31hに対向する位置に配置される。具体的には、アルミナコア341およびヒータ素線342は、内側チューブ32の延在先端から外側チューブ33の鉛直方向最下端のガス孔31hよりも下側の位置までの範囲にわたって設けられている。
【0031】
アルミナコア341は、加熱領域HRにおいて内側チューブ32の内壁全体を覆うように被覆されている。アルミナコア341は、その内部または内周面においてヒータ素線342を保持(埋設)している。
【0032】
ヒータ素線342は、加熱領域HRの下端において複数の配線344に接続される共に、接続箇所から鉛直方向上側に向かって適宜の配線パターン(例えば、螺旋状)でアルミナコア341に保持されている。これにより、加熱機構34は、複数の配線344からヒータ素線342への電力供給に応じて、内側チューブ32の加熱領域HR(アルミナコア341)全体を略均一に加熱できる。
【0033】
例えば、ヒータ素線342は、0℃~850℃程度の範囲で加熱領域HRの温度を調整可能に構成される。第1ガス供給ノズル31Aが原料ガスやパージガスを実際に加熱する際の設定温度は、ガスの種類および基板Wを加熱する際の目標温度にもよるが、一例として、600℃~700℃程度の範囲に設定することがあげられる。
【0034】
また、温度センサ343は、加熱領域HRの下端に設置され、内側チューブ32の加熱領域HRの温度を測定する。温度センサ343が測定した温度情報は、制御部90に送信され、制御部90による加熱機構34の制御に使用される。
【0035】
一方、外側チューブ33は、内側チューブ32よりも太い管に形成され、内側チューブ32を収容している。第1ガス供給ノズル31Aは、内側チューブ32の外周面と外側チューブ33の内周面との間(外側チューブ33の内部空間)に、原料ガスおよびパージガスを流通させるガス流路35を有する。第1ガス供給ノズル31Aは、ガス流路35の形状を維持するため、内側チューブ32と外側チューブ33が相互に支持し合う1以上の支持フレーム(不図示)をガス流路35内に備えてもよい。
【0036】
外側チューブ33は、L字状に形成されたメイン管331と、メイン管331の基端部に接続されて原料ガスおよびパージガスを導入する継手管332と、を有する。メイン管331は、鉛直方向の延在箇所に複数のガス孔31hを有している。また、メイン管331において加熱機構34の加熱領域HRに対向する部位は、他の部位(加熱領域HRよりも下側の箇所)よりも大径に形成されている。これにより、メイン管331は、内側チューブ32により加熱されたガスの移動速度の上昇を抑制して、各ガス孔31hからガスを安定的に吐出することが可能となる。
【0037】
継手管332は、第1供給経路361に接続されるポート332pを有するT字状に形成されている。継手管332の一端は、メイン管331の基端部にシール333を介して気密に連結されている。また、継手管332の他端は、内側チューブ32の基端部にシール333を介して気密に連結されている。
【0038】
図1に戻り、ガス供給部30は、処理容器10の外部に設けられ、上記の第1ガス供給ノズル31Aに原料ガスおよびパージガスを供給する第1供給部36と、第2ガス供給ノズル31Bに反応ガスを供給する第2供給部38と、を有する。また、第1供給部36は、第1ガス供給ノズル31Aに接続される第1供給経路361と、第1供給経路361に接続される原料ガス供給機構362およびパージガス供給機構368と、を含む。
【0039】
原料ガス供給機構362は、原料ガス経路363と、原料ガス源364と、キャリアガス源365と、流量調整器366と、複数のバルブ367と、を有する。原料ガス経路363は、キャリアガス源365から原料ガス源364を通って第1供給経路361に至るように形成される。原料ガス源364は、原料ガス(TMAガス)を貯留している。キャリアガス源365は、キャリアガスとしてパージガスと同じ種類の不活性ガス(Nガス)を貯留している。流量調整器366は、キャリアガス源365の下流側に設けられ、キャリアガス源365から供給されるNガスの流量を調整する。複数のバルブ367は、原料ガス経路363の適宜の箇所にそれぞれ設けられ、原料ガス経路363の流路を開閉する。
【0040】
パージガス供給機構368は、パージガス経路369と、パージガス源370と、流量調整器371と、複数のバルブ372と、を有する。パージガス経路369は、パージガス源370から第1供給経路361に至るように形成される。パージガス源370は、パージガス(Nガス)を貯留している。流量調整器371は、パージガス源370の下流側に設けられ、パージガス源370から供給されるNガスの流量を調整する。複数のバルブ372は、パージガス経路369の適宜の箇所にそれぞれ設けられ、パージガス経路369の流路を開閉することで、TMAガスの供給および供給停止、Nガスの供給および供給停止を個別に切り替える。
【0041】
一方、第2供給部38は、第2供給経路381と、反応ガス源382と、バルブ383と、を有する。反応ガス源382は、供給する反応ガスに応じて適切な構成を採用することが可能であり、例えば、反応ガスとしてOガスを供給する場合には、オゾン生成装置を適用できる。バルブ383は、第2供給経路381の流路を開閉することで、Oガスの供給と、供給停止を切り替える。なお、第2供給部38は、図示しない流量調整器を第2供給経路381に備えてもよい。
【0042】
ガス排気部40は、処理容器10内のガスを外部に排気する。ガス供給ノズル31により供給されたガスは、内筒11の処理空間P1から流通空間P2に移動した後、ガス出口41を介して排気される。ガス出口41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持プレート20の上方に形成されている。ガス出口41には、ガス排気部40の排気経路42が接続されている。ガス排気部40は、排気経路42の上流から下流に向かって順に、圧力調整弁43、真空ポンプ44を備える。ガス排気部40は、処理容器10内のガスを真空ポンプ44により吸引すると共に、圧力調整弁43により排気するガスの流量を調整することで、処理容器10内の圧力を調整する。
【0043】
また、処理容器10の内部(例えば、内筒11内の処理空間P1)には、処理容器10内の温度を検出する温度センサ80が設けられている。温度センサ80は、複数(本実施形態では5つ)の測温子81~85を鉛直方向の異なる位置に有する。複数の測温子81~85は、熱電対、測温抵抗体等を適用し得る。温度センサ80は、複数の測温子81~85毎に検出した温度を、制御部90にそれぞれ送信する。
【0044】
一方、温調炉50は、処理容器10全体を覆い、処理容器10に収容された各基板Wを外側から加熱および冷却する。具体的には、温調炉50は、天井を有する円筒状の筐体51と、筐体51の内側に設けられるヒータ52と、を有する。
【0045】
筐体51は、処理容器10とマニホールド17の境界に位置するベースプレート54の上面に取り付けられ、内側に収容された処理容器10を加熱する。筐体51は、処理容器10に対し間隔をあけて設置され、処理容器10と当該筐体51との間に温調空間53を形成している。
【0046】
筐体51は、天井部を有して処理容器10全体を覆う断熱部51aと、断熱部51aの外周側において断熱部51aを補強する補強部51bと、を含む。断熱部51aは、例えば、シリカ、アルミナ等を主成分として形成され、熱伝達を抑制する。補強部51bは、ステンレス鋼等の金属により形成されている。また、温調炉50の外部への熱影響を抑制するために、補強部51bの外周側は、図示しない水冷ジャケットで覆われている。
【0047】
温調炉50のヒータ52は、処理容器10内の複数の基板Wを加熱する適宜の構成を適用してよい。例えば、ヒータ52としては、赤外線を放射して処理容器10を加熱する赤外線ヒータを用いることができる。この場合、ヒータ52は、線状に形成され、断熱部51aの内周面に保持部(不図示)を介して、螺旋状、環状、円弧状、シャンク形状または蛇行するように保持される。
【0048】
温調炉50のヒータ52が各基板Wを加熱する際の目標温度は、成膜する膜の種類にもよるが、例えば、200℃~400℃程度の範囲に設定することがあげられる。すなわち、ガス供給部30の加熱機構34が原料ガスおよびパージガスを加熱する温度は、温調炉50の目標温度に対して1.5倍~3.5倍の範囲に設定することが好ましい。これにより、成膜装置1は、第1ガス供給ノズル31Aから吐出する前に、原料ガスやパージガスを充分に活性化させることができる。
【0049】
さらに、温調炉50は、成膜時または成膜後に処理容器10を冷却するために、エア等の冷却ガスを温調空間53に流通させる冷却部60を備える。冷却部60は、温調炉50の外部に設けられる外部供給経路61および流量調整器62と、補強部51bに設けられる供給流路63と、断熱部51aに設けられる供給孔64と、を有する。
【0050】
外部供給経路61は、図示しないブロアに接続されると共に、途中位置で複数の分岐経路61aに分岐している。流量調整器62は、複数の分岐経路61a毎に設けられ、各分岐経路61aを流通するエアの流量を調整する。
【0051】
供給流路63は、補強部51bの軸方向(鉛直方向)に沿って複数箇所に形成されている。複数の供給流路63の各々は、平面断面視で、円筒状の補強部51b内を周方向に沿って環状に延在している。
【0052】
各供給孔64は、断熱部51aの軸方向および周方向に沿ってマトリックス状に形成されている。軸方向に並ぶ各供給孔64は、軸方向に並ぶ各供給流路63と同じ軸方向位置に配置され、水平方向に沿って各供給流路63と連通している。各供給孔64は、断熱部51aを貫通するように形成され、各供給流路63に導入されたエアを温調空間53に向けて噴出する。
【0053】
また、冷却部60は、温調空間53内に供給されたエアを排出する排気孔65を筐体51の天井に備える。排気孔65は、筐体51の外部に設けられた外部排気経路66に接続されている。
【0054】
成膜装置1の制御部90は、プロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェース等を有するコンピュータを適用することができる。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を適宜組み合わせたものである。
【0055】
メモリ92は、成膜装置1を動作させるプログラム、成膜におけるプロセス条件等のレシピを記憶している。制御部90は、メモリ92のプログラムおよびレシピをプロセッサ91により読み出して実行することで、成膜装置1における成膜方法を実施する。なお、制御部90は、ネットワークを介して情報通信するホストコンピュータまたは複数のクライアントコンピュータにより構成されてもよい。
【0056】
成膜方法において、制御部90は、温調炉50によって処理容器10内の各基板Wの温度を調整しながら、ガス供給部30によるガスの供給およびガス排気部40によるガスの排気を制御する。特に、本実施形態に係る成膜装置1は、制御部90によりガス供給部30のガス(原料ガス、反応ガス、パージガス)の供給順、供給量、温度等を適宜制御することで、基板Wに成膜される膜の膜質の向上を図る。以下、本実施形態に係る成膜方法について、いくつか例示していく。
【0057】
図3(A)は、第1例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。図3(B)は、第2例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。図4(A)は、第3例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。図4(B)は、第4例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。図5は、第5例に係る成膜方法を示すタイミングチャートである。
【0058】
制御部90は、成膜方法においてガス供給部30の動作を制御することで、原料ガス供給工程((A)の工程)、第1パージ工程((B)の工程)、反応ガス供給工程((C)の工程)、および第2パージ工程((D)の工程)を、この順に実施する。また、制御部90は、成膜方法(原料ガス供給工程、第1パージ工程、反応ガス供給工程、第2パージ工程)の実施中に、温調炉50を動作させて各基板Wの温度を調整する。温調炉50の目標温度は、上記したように200℃~400℃の範囲のうち適宜の温度値に設定される。さらに、制御部90は、成膜方法の実施中に、ガス排気部40を動作させて処理容器10内のガスを排出することで、処理容器10の内圧を目標圧力に維持する。
【0059】
原料ガス供給工程において、制御部90は、第1供給部36を制御して、第1ガス供給ノズル31Aから処理空間P1に、原料ガスであるTMAガスを供給する。第1供給部36の原料ガス供給機構362は、上記したように、Nガス(キャリアガス)の供給下にTMAガスを搬送する。この際のTMAガスの流量は、例えば、0.5smlに設定される。また、第1例に係る成膜方法の原料ガス供給工程において、制御部90は、パージガス供給機構368を動作させ、パージガスであるNガスをTMAガスと同時に処理空間P1に供給する。この際のNガスの流量は、例えば、50slmに設定される。したがって、図3(A)に示す原料ガス供給工程では、TMAガスおよびNガスの各々がオン状態となっていることを示している。なお、図3(A)~図5のタイミングチャートにおけるパージガスの縦軸は、高い程ほど流量が大きいことを示している。
【0060】
そして、原料ガス供給工程において、制御部90は、加熱機構34を動作させて内側チューブ32の加熱領域HRを加熱する。加熱機構34が加熱する目標温度は、上記したように600℃~700℃の範囲のうち適宜の温度値である。これにより、TMAガスおよびNガスの両方が第1ガス供給ノズル31A内で加熱され、活性化した状態で処理空間P1に吐出されるようになる。成膜装置1は、この活性化したTMAガスを基板Wの表面に吸着できる。
【0061】
次に第1パージ工程において、制御部90は、第1供給部36を制御して、第1ガス供給ノズル31Aから処理空間P1にNガスを供給する。この場合、制御部90は、原料ガス供給機構362によるTMAガスの供給を停止し、パージガス供給機構368からNガスのみを供給する。この際のNガスの流量は、原料ガス供給工程と同じ量(50slm)である。また、第1パージ工程において、制御部90は、加熱機構34の動作を停止して、加熱していないNガスを処理空間P1に供給する。
【0062】
そして、制御部90は、第1パージ工程後に若干のインターバルをあけて、反応ガス供給工程を行う。制御部90は、第2供給部38を制御して、第2ガス供給ノズル31Bから処理空間P1に反応ガスであるOガスを供給する。第2ガス供給ノズル31Bから供給されたOガスは、基板Wの表面に付着しているTMAガスと反応することで、基板Wの表面にアルミナ(Al)を形成する。
【0063】
なお、第1例の成膜方法では、第1パージ工程以降の工程(インターバル、反応ガス供給工程)でもパージガス供給機構368を動作させており、第1ガス供給ノズル31Aから第1パージ工程よりも少ない流量かつ非加熱のNガス(パージガス)を供給している。この際のNガスの流量は、例えば、5smlである。
【0064】
最後の第2パージ工程において、制御部90は、第1供給部36を動作させて、第1ガス供給ノズル31Aから処理空間P1にNガスを供給する。この際のNガスの流量は、反応ガス供給工程と同じ量(5sml)である。ただし、制御部90は、加熱機構34を動作させて、第1ガス供給ノズル31A内でNガスを加熱し、活性化した状態のNガスを処理空間P1に吐出する。成膜装置1は、活性化したNガスにより基板Wの表面に残存する反応副生成物を良好にパージすることが可能となる。
【0065】
以上のように、第1例の成膜方法では、パージガス(Nガス)を処理空間P1に供給する原料ガス供給工程および第2パージ工程において、吐出するパージガスを加熱する。これにより、成膜方法は、基板Wの成膜時に生じる反応副生成物を効果的に除去して、成膜される膜の膜質を向上させることが可能となる。しかも、原料ガス供給工程では、原料ガスも加熱によって活性化されるので、基板Wの表面に活性化した原料ガスを多量に付着させることができる。
【0066】
次に、図3(B)に示す第2例の成膜方法について説明する。第2例の成膜方法は、原料ガス供給工程におけるパージガスの流量が、第1例の成膜方法と異なっている。具体的には、制御部90は、第1供給部36を制御して、第1ガス供給ノズル31Aから処理空間P1に、原料ガスであるTMAガスおよびパージガスであるNガスを供給する。そしてこの際のNガスの流量を、例えば、5slmとしている。したがって、図3(B)に示す原料ガス供給工程では、Nガスの流量の高さが、図3(A)に示すNガスの流量の高さよりも低くなっている。
【0067】
ただし、原料ガス供給工程において、制御部90は、加熱機構34を動作させて、TMAガスおよびNガスの両方を第1ガス供給ノズル31A内で加熱する。そのため、成膜装置1は、活性化したTMAガスを基板Wの表面に吸着できる。しかも、成膜装置1は、Nガスの流量が少ないことで、Nガスの流通に伴うTMAの付着の阻害を可及的に抑制しつつ、吸着時に生じる反応副生成物を除去することができる。なお、第2例の反応ガス供給工程および第2パージ工程は、第1例の反応ガス供給工程および第2パージ工程と同様である。
【0068】
次に、図4(A)に示す第3例の成膜方法について説明する。第3例の成膜方法は、第2パージ工程のみにおいてNガスを加熱する点で、第1例の成膜方法と異なっている。すなわち、原料ガス供給工程では、加熱機構34の動作を停止して加熱していない状態のTMAガスおよびNガスを処理空間P1に供給する。また、第1パージ工程および反応ガス供給工程は、第1例と同様の制御を行う。
【0069】
第2パージ工程において、制御部90は、パージガス供給機構368を動作させて、例えば、50smlの流量のNガスを処理空間P1に供給する。そして、第1ガス供給ノズル31Aでは第2パージ工程において、加熱機構34によりNガスを加熱して活性化した状態とする。この場合でも、成膜装置1は、第2パージ工程にて活性化したNガスにより反応副生成物を良好に除去することができるので、膜質を向上させることが可能となる。
【0070】
次に、図4(B)に示す第4例の成膜方法について説明する。第4例の成膜方法は、全ての工程(原料ガス供給工程、第1パージ工程、反応ガス供給工程、第2パージ工程)にわたって加熱機構34によりNガス(およびTMAガス)を加熱する構成としている。なお、各工程にけるNガスの流量は、第3例の成膜方法と同様である。
【0071】
制御部90は、第1ガス供給ノズル31Aを定常的に加熱していることで、第1ガス供給ノズル31Aから供給するTMAガスおよびNガスを常に活性化させることができる。これにより、成膜装置1は、例えば、第1ガス供給ノズル31Aによる加熱開始時や加熱終了時に伴うガスの加熱が遅れること(加熱不足等)を防止でき、活性化したガスを安定的に供給することができる。そして、活性化したNガスは、反応副生成物を良好に除去することが可能となる。
【0072】
次に、図5に示す第5例の成膜方法について説明する。第5例の成膜方法は、全ての工程にわたってNガスの流量を高めた状態とし、また全ての工程にわたって加熱機構34によりガスを加熱する構成としている点で、第1例~第4例の成膜方法と異なる。この際のNガスの流量としては、50smlとすることがあげられる。つまり、第5例の成膜方法では、継続的に活性化した多量のNガスを処理空間P1に継続的に供給する。これにより、成膜装置1は、反応ガス供給工程において、処理空間P1に浮遊する反応副生成物等をNガスにより良好に除去することができる。結果的に、基板Wに成膜される膜の膜質を一層高めることができる。
【0073】
図6は、本実施形態に係る成膜方法により成膜した膜をウェットエッチングした際のエッチング量を示すグラフである。なお、成膜方法では、温調炉50により温度調整する基板Wの温度は300℃に設定しており、この温調炉50による温度制御を変えずに上記した第1例~第5例に係る成膜方法を実施した際に基板Wに成膜された膜の膜質を評価している。なお、図6のグラフにおいて最左端のバーは、第1ガス供給ノズル31Aの加熱を行わなかった場合のエッチング量を示す参考例である。
【0074】
図6のグラフにおいて縦軸は、ウェットエッチングした際のエッチング量を示している。すなわち、ウェットエッチングのエッチング量が多い場合には、基板Wに成膜された膜が多く削れたことを意味している。換言すれば、成膜された膜の耐久性が低い(膜が脆い)ことになり、膜の膜質が低いと見ることができる。
【0075】
図6に示すように、第1ガス供給ノズル31Aの加熱を行わなかった参考例に係る成膜方法の膜に比べて、第1例~第5例に係る成膜方法を実施した場合の膜は、いずれもエッチング量が少なくなっている。したがって、第1例~第5例の成膜方法を実施することによって、基板Wに成膜される膜の膜質が向上していると捉えることができる。特に、第5例の成膜方法を実施した場合に、基板Wに成膜された膜のエッチング量が最も低かった。これは、活性化(加熱)したNガスを処理容器10内に多量に供給することによって、基板Wに成膜される膜の膜質をより向上できることを示している。
【0076】
以上の実施形態で説明した本開示の技術的思想および効果について以下に記載する。
【0077】
本開示の第1の態様は、処理容器10と、処理容器10内で基板Wを保持する基板保持部(ウエハボート16)と、処理容器10内に処理ガス、およびパージガスを供給可能なガス供給部30と、ガス供給部30の動作を制御する制御部90と、を含む成膜装置1であって、ガス供給部30は、処理容器10内にパージガスを供給するガス供給ノズル31を備え、ガス供給ノズル31は、パージガスを加熱可能な加熱機構34を有し、制御部90は、パージガスを処理容器10に供給する工程において、加熱機構34を動作させて、ガス供給ノズル31から吐出するパージガスを加熱する。
【0078】
上記によれば、成膜装置1は、ガス供給ノズル31の加熱機構34によりパージガスを加熱することで、パージガスを容易に活性化することができる。活性化されたパージガスは、基板W付近に存在する反応副生成物等を効果的に除去することが可能であり、これにより基板Wに成膜される膜の膜質を一層向上させることができる。特に、加熱機構34は、処理容器10の外側からガスを加熱する構成に比べてガスを直接加熱できる。よって、成膜装置1は、パージガスの加熱にかかる電力を低減でき、成膜の製造コストおよび基板の熱履歴を抑えることが可能となる。
【0079】
また、処理ガスは、基板Wに吸着される原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスと、を含み、ガス供給ノズル31は、原料ガスと共にパージガスをまとめて供給可能な第1ガス供給ノズル31Aと、反応ガスを供給可能な第2ガス供給ノズル31Bと、を有し、加熱機構34は、第1ガス供給ノズル31Aに設けられている。これにより、成膜装置1は、パージガスと共に原料ガスを加熱することができ、処理容器10内において活性化した原料ガスを基板に付着させることが可能となる。
【0080】
また、処理容器10は、複数の基板Wを鉛直方向に並べて収容可能であり、ガス供給ノズル31は、処理容器10内において鉛直方向に延在する方向に沿って複数のガス孔31hを有し、加熱機構34は、複数のガス孔31hのうち最上端に位置するガス孔31hから最下端に位置するガス孔31hの範囲にわたって設けられている。これにより、成膜装置1は、ガス孔31hから吐出する直前のガス(パージガス)全体を加熱して、活性化したガスを処理容器10内に供給できる。
【0081】
また、処理容器10の外部に当該処理容器10を温度調整する温調炉50を備え、制御部90は、温調炉50が処理容器10を温度調整する温度よりも加熱機構34の温度を高く設定してガス供給ノズル31が供給するガスを加熱する。これにより、成膜装置1は、温調炉50の加熱コストおよび基板の熱履歴を低減しながら、加熱機構34によりガスを簡単に加熱できる。
【0082】
また、処理ガスは、基板Wに吸着される原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスと、を含み、制御部90は、(A)原料ガスを処理容器10に供給する工程と、(B)(A)の工程後に、パージガスのみを処理容器10に供給する工程と、(C)(B)の工程後に、反応ガスを処理容器10に供給する工程と、(D)(C)の工程後に、パージガスのみを処理容器10に供給する工程と、をこの順に実施する。これにより、成膜装置1は、基板Wの表面に所望の膜を良好に成膜することができる。
【0083】
また、制御部90は、(A)の工程において、加熱機構34により加熱した原料ガスおよびパージガスを処理容器10に供給する。これにより、成膜装置1は、処理容器10内において活性化した原料ガスを基板Wに付着させ、またパージガスにより反応副生成物を良好に除去することが可能となる。
【0084】
また、制御部90は、(D)の工程において、加熱機構34により加熱したパージガスを処理容器10に供給する。これにより、成膜装置1は、反応ガスの供給により生じた反応副生成物を、活性化したパージガスにより良好に除去できる。
【0085】
また、制御部90は、(C)の工程において、加熱機構34により加熱したパージガスを処理容器10に供給する。これにより、成膜装置1は、反応ガスの供給時でも反応ガスに加えて、活性化したパージガスを供給できる。
【0086】
また、制御部90は、(A)の工程、(B)の工程、(C)の工程、(D)の工程にわたって、加熱機構34により加熱したパージガスを処理容器10に供給する。これにより、成膜装置1は、パージガスの加熱開始時や加熱終了時に生じる加熱不足等を回避して、活性化したパージガスを供給できる。
【0087】
また、制御部90は、(A)の工程、(B)の工程、(C)の工程、(D)の工程にわたって、同じ流量のパージガスを処理容器10に供給する。これにより、成膜装置1は、活性化したパージガスを安定的に供給でき、基板Wに成膜される膜の膜質をより向上させることができる。
【0088】
また、本開示の第2の態様は、処理容器10と、処理容器10内で基板Wを保持する基板保持部(ウエハボート16)と、処理容器10内に処理ガス、およびパージガスを供給可能なガス供給部30と、を含み、ガス供給部30は、処理容器10内にパージガスを供給するガス供給ノズル31を備え、ガス供給ノズル31は、パージガスを加熱可能な加熱機構34を有する成膜装置1の成膜方法であって、パージガスを処理容器10に供給する工程において、加熱機構34を動作させてガス供給ノズル31から吐出するパージガスを加熱する。この場合でも、成膜装置1は、成膜の製造コストおよび基板の熱履歴を抑えながら、膜質を一層向上させることができる。
【0089】
今回開示された実施形態に係る成膜装置1および成膜方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 成膜装置
10 処理容器
16 ウエハボート
30 ガス供給部
31 ガス供給ノズル
34 加熱機構
90 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6