(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125775
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】樹脂成形材料及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20240911BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20240911BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08L33/06
C08K3/014
C08J5/00 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033831
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】今岡 笙太郎
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AC09
4F071AC10
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE04
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4F071AE11
4F071AE22
4F071AH03
4F071AH07
4F071AH12
4F071AH16
4F071AH19
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC07
4J002BG041
4J002BG051
4J002EG027
4J002EG037
4J002EH066
4J002EJ026
4J002EU176
4J002EU186
4J002FD056
4J002FD167
4J002GG01
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料における黄変の問題を解決し、耐候性に優れると共に、良好な外観と色調を有する樹脂成形体を与える樹脂成形材料及びその樹脂成形体を提供する。
【解決手段】紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料であって、前記紫外線吸収剤が、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、樹脂成形材料。この樹脂成形材料を成形してなる樹脂成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料であって、
前記紫外線吸収剤が、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、樹脂成形材料。
【請求項2】
前記マロン酸エステル系化合物が、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステル及び/又は2-(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルである、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項3】
前記マロン酸エステル系化合物が、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルである、請求項2に記載の樹脂成形材料。
【請求項4】
前記トリアジン系化合物が、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-s-トリアジン及び2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項5】
前記トリアジン系化合物が、2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールである、請求項4に記載の樹脂成形材料。
【請求項6】
前記シアノアクリレート系化合物が、2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート及び2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項7】
前記シアノアクリレート系化合物が、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートである、請求項6に記載の樹脂成形材料。
【請求項8】
前記脂肪酸金属塩の金属が、1~3価の金属である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項9】
前記脂肪酸金属塩の金属が、1価の金属である、請求項8に記載の樹脂成形材料。
【請求項10】
前記脂肪酸金属塩の金属が、Li、Na、Mg、Ca、Ba、KまたはAlである、請求項8に記載の樹脂成形材料。
【請求項11】
前記脂肪酸金属塩の金属が、Liである、請求項10に記載の樹脂成形材料。
【請求項12】
前記脂肪酸金属塩の脂肪酸が、炭素数8~22の飽和脂肪酸及び炭素数8~22の不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項13】
前記脂肪酸金属塩の脂肪酸が、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸及びモンタン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項12に記載の樹脂成形材料。
【請求項14】
前記脂肪酸金属塩の脂肪酸が、ステアリン酸である、請求項13に記載の樹脂成形材料。
【請求項15】
前記メタクリル系樹脂ペレット中の前記紫外線吸収剤の含有量が、前記メタクリル系樹脂ペレットの総質量100質量部に対して0.001質量部~0.3質量部である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項16】
前記脂肪酸金属塩の外添量が、前記メタクリル系樹脂ペレットの総質量100質量部に対して0.0001質量部~0.3質量部である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項17】
前記メタクリル系樹脂ペレットの表面積が10mm2~450mm2である、請求項1に記載の樹脂成形材料。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂成形材料の押出成形又は射出成形への使用。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂成形材料を成形してなる、樹脂成形体。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂成形材料を成形してなる、車両用部材。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂成形材料を成形してなる、光学用部材。
【請求項22】
請求項1~17のいずれか一項に記載の樹脂成形材料を成形してなる、医療用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形材料と、この樹脂成形材料を成形してなる樹脂成形体、車両用部材、光学用部材、容器及び医療用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂は、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネル、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、エンブレムといった車両の内外装材料等の車両用部材;建築部材;洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備向け部材;レンズ、導光体等の光学用部材、化粧品等の容器、キュベット等の医療用部材等の成形材料として多用されている。
【0003】
これらの用途に適用される場合、メタクリル系樹脂は、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸等の成形法により成形される。例えば、射出成形では、射出成形機の高温のシリンダー内にメタクリル系樹脂ペレットが搬送され、その後、溶融した樹脂が種々の形状に加工された金型内に射出され、その後冷却して得られた成形体が金型から離型されて製品として取り出される。
【0004】
従来、メタクリル系樹脂の射出成形時の可塑化性や離型性、低温成形性などを改善して、得られる製品の外観等を改善するために、メタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させることが行われている。
例えば、特許文献1には、ステアリン酸リチウム等の1価の脂肪酸金属塩をアクリルポリマー粒子に適用することで、低温で射出成形を行って良好な光学性能と高審美的外観を有する厚膜の製品を得ることが記載されている。
【0005】
ところで、メタクリル系樹脂製品においては、保管時や使用時の耐候性を確保するために、紫外線吸収剤を成形材料に配合することが行われている。この場合、紫外線吸収剤としては、耐候性付与効果等の観点から、通常ベンゾトリアゾール系化合物が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤を用いた例がないため、得られる樹脂成形体は耐候性に劣るという課題がある。
特許文献1において、耐候性の課題は、ベンゾトリアゾール系化合物を添加することで解決できると考えられる。しかしながら、本発明者の検討により、脂肪酸金属塩とベンゾトリアゾール系化合物とが共存した場合、得られる樹脂成形体は黄変を起こすことが判明した。
メタクリル系樹脂は、その透明性から意匠部品に使用されることが多く、良好な外観と色調が求められることから、黄変は大きな問題となる。
従来、このような紫外線吸収剤と脂肪酸金属塩との共存による黄変を解決する技術は知られていなかった。
【0008】
本発明は、紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料における黄変の問題を解決し、耐候性に優れると共に、良好な外観と色調を有する樹脂成形体を与える樹脂成形材料及びその樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、脂肪酸金属塩を外添させるメタクリル樹脂ペレットに含有させる紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物の1種又は2種以上を用いることにより、黄変を抑制することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1] 紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料であって、前記紫外線吸収剤が、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、樹脂成形材料。
【0011】
[2] 前記マロン酸エステル系化合物が、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステル及び/又は2-(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルである、[1]に記載の樹脂成形材料。
【0012】
[3] 前記マロン酸エステル系化合物が、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルである、[2]に記載の樹脂成形材料。
【0013】
[4] 前記トリアジン系化合物が、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-s-トリアジン及び2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0014】
[5] 前記トリアジン系化合物が、2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールである、[4]に記載の樹脂成形材料。
【0015】
[6] 前記シアノアクリレート系化合物が、2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート及び2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0016】
[7] 前記シアノアクリレート系化合物が、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートである、[6]に記載の樹脂成形材料。
【0017】
[8] 前記脂肪酸金属塩の金属が、1~3価の金属である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0018】
[9] 前記脂肪酸金属塩の金属が、1価の金属である、[8]に記載の樹脂成形材料。
【0019】
[10] 前記脂肪酸金属塩の金属が、Li、Na、Mg、Ca、Ba、KまたはAlである、[8]に記載の樹脂成形材料。
【0020】
[11] 前記脂肪酸金属塩の金属が、Liである、[10]に記載の樹脂成形材料。
【0021】
[12] 前記脂肪酸金属塩の脂肪酸が、炭素数8~22の飽和脂肪酸及び炭素数8~22の不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0022】
[13] 前記脂肪酸金属塩の脂肪酸が、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸及びモンタン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[12]に記載の樹脂成形材料。
【0023】
[14] 前記脂肪酸金属塩の脂肪酸が、ステアリン酸である、[13]に記載の樹脂成形材料。
【0024】
[15] 前記メタクリル系樹脂ペレット中の前記紫外線吸収剤の含有量が、前記メタクリル系樹脂ペレットの総質量100質量部に対して0.001質量部~0.3質量部である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0025】
[16] 前記脂肪酸金属塩の外添量が、前記メタクリル系樹脂ペレットの総質量100質量部に対して0.0001質量部~0.3質量部である、[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0026】
[17] 前記メタクリル系樹脂ペレットの表面積が10mm2~450mm2である、[1]~[16]のいずれかに記載の樹脂成形材料。
【0027】
[18] [1]~[17]のいずれかに記載の樹脂成形材料の押出成形又は射出成形への使用。
【0028】
[19] [1]~[17]のいずれかに記載の樹脂成形材料を成形してなる、樹脂成形体。
【0029】
[20] [1]~[17]のいずれかに記載の樹脂成形材料を成形してなる、車両用部材。
【0030】
[21] [1]~[17]のいずれかに記載の樹脂成形材料を成形してなる、光学用部材。
【0031】
[22] [1]~[17]のいずれかに記載の樹脂成形材料を成形してなる、医療用部材。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料において、前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物の1種又は2種以上を用いることにより、紫外線吸収剤と脂肪酸金属塩との併用時の黄変の問題を解決し、耐候性に優れると共に、良好な外観と色調を有するメタクリル系樹脂成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、詳細に本発明の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0034】
[樹脂成形材料]
本発明の樹脂成形材料は、紫外線吸収剤を含むメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させた樹脂成形材料であって、前記紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることを特徴とする。
以下において、上記紫外線吸収剤を含有するメタクリル系樹脂ペレットを「本発明のメタクリル系樹脂ペレット」と称す場合がある。
また、以下において、メタクリル系樹脂ペレットに紫外線吸収剤を含有させることを「内添」と称し、メタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を付着させる又は塗布することを「外添」と称す場合がある。
【0035】
<メカニズム>
本発明に従って、メタクリル系樹脂ペレットに内添する紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物、及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いると、脂肪酸金属塩と共存しても、黄変を抑制することができるメカニズムについては、以下のように考えられる。
【0036】
通常メタクリル樹脂に使用されることが多い、ベンゾトリアゾール系化合物による耐候性向上のメカニズムは以下の通りである。
即ち、紫外線によりベンゾトリアゾール系化合物(例えばTinuvin(登録商標)-P)が励起状態に遷移し、フェノール系水酸基-ベンゾトリアゾール基間の分子内水素結合を介して、フェノール系水酸基のプロトンがベンゾトリアゾール基側に移動することで、発光を伴うことなく電子基底状態へと失活する。この過程によって、紫外線エネルギーを熱エネルギーに変換する。
つまり、ベンゾトリアゾール系化合物は、この分子内水素結合に関与する、フェノール系水酸基を分子内に持つことで、紫外線劣化を防止して耐候性向上効果が発揮される。
【0037】
このように、ベンゾトリアゾール系化合物は、フェノール系水酸基を持つことから、脂肪酸金属塩のような金属種が存在すると、錯形成反応を起こすことがあり、この反応により生成される金属錯体が黄変を引き起こす原因と考えられる。
【0038】
しかしながら、紫外線吸収剤がマロン酸エステル系化合物又はシアノアクリレート系化合物である場合、フェノール系水酸基を分子内に持たないため、上述した錯形成反応が起きないと考えられる。また、紫外線吸収剤がトリアジン系化合物である場合、ベンゾトリアゾール系化合物と比較してフェノール系水酸基の反応性が低いため、脂肪酸金属塩との錯形成反応が起きにくくなると考えられる。
したがって、フェノール系水酸基による錯形成反応を起こすことがなく、黄変が抑制されると考えられる。
【0039】
<メタクリル系樹脂ペレット>
本発明のメタクリル系樹脂ペレットはメタクリル系樹脂組成物(以下、「本発明のメタクリル系樹脂組成物」と称す場合がある。)を含有する。本発明のメタクリル系樹脂組成物は、少なくともメタクリル系重合体(メタクリル系樹脂と同義である。)と後述する紫外線吸収剤を含有する。
【0040】
<メタクリル系重合体>
メタクリル系重合体は、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位(以下、「メタクリル酸メチル単位」ともいう。)を主成分とする重合体である。本発明のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系重合体を含有することにより、得られる樹脂成形体の透明性が向上するとともに、樹脂成形体の熱分解が抑制され、耐候性、成形性を良好にすることができる。本発明において、「メタクリル酸メチル単位を主成分とする」とは、一態様として、メタクリル系重合体(100質量%)中のメタクリル酸メチル単位の含有割合が50質量%以上であることをいう。
【0041】
上記の理由から、本発明のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系重合体(100質量%)中のメタクリル酸メチル単位の含有割合は、50質量%以上であることが好ましい。このようなメタクリル系重合体として、例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体、メタクリル酸メチル単位50質量%以上100質量%未満とメタクリル酸メチル以外の単量体由来の繰り返し単位(以下、「他の単量体単位」ともいう。)0質量%を超えて50質量%以下とを含む共重合体を挙げることができる。
【0042】
他の単量体単位を形成するメタクリル酸メチル以外の単量体としては、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。一分子内にラジカル重合可能な二重結合を1つ有する単官能単量体であってもよいし、一分子内にラジカル重合可能な二重結合を2つ以上有する多官能単量体であってもよい。メタクリル系重合体の流動性、成形性、及び熱分解性のバランスに優れる観点から、メタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸エステルが好ましい。
【0043】
メタクリル系重合体が、他の単量体単位としてアクリル酸エステル由来の繰り返し単位(以下、「アクリル酸エステル単位」ともいう。)を含む場合、メタクリル系重合体(100質量%)中に、メタクリル酸メチル単位50質量%以上100質量%未満とアクリル酸エステル単位0質量%を超えて50質量%以下とを含有することが好ましく、メタクリル酸メチル単位70質量%以上99.9質量%以下とアクリル酸エステル単位0.1質量%以上30質量%以下とを含有することがより好ましく、メタクリル酸メチル単位80質量%以上99.7質量%以下とアクリル酸エステル単位0.3質量%以上20質量%以下を含有することがさらに好ましく、メタクリル酸メチル単位90質量%以上99.6質量%以下とアクリル酸エステル単位0.4質量%以上10質量%以下を含有することが特に好ましい。
【0044】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルであり、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがさらに好ましい。アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
メタクリル系重合体の別の態様としては、主鎖に、(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう。ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「メタクリル酸エステル」、又は「メタクリル酸エステルとアクリル酸エステル」を意味する。)及び環構造由来の構造単位(以下、「環構造単位」と略する。)を含む重合体(A)を挙げることができる。環構造単位としては、例えば、グルタル酸無水物構造単位、マレイン酸無水物構造単位、グルタルイミド構造単位、ラクトン環構造単位、及びN-置換マレイミド構造単位が挙げられる。環構造単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
重合体(A)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合の下限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体が透明性に優れ、加工性、機械的特性に優れるというメタクリル系樹脂本来の性能を損なわない観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位(構造単位を含む。以下同様。)の総モル数(100mol%)に対して、50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、80mol%以上がさらに好ましく、90mol%以上が特に好ましい。重合体(A)中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有割合の上限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体の耐熱性に優れる観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、99.999mol%以下が好ましく、99.9mol%以下がより好ましく、99.8mol%以下がさらに好ましく、99.5mol%以下が特に好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、50~99.999mol%が好ましく、70~99.9mol%がより好ましく、80~99.8mol%がさらに好ましく、90~99.5mol%が特に好ましい。
【0047】
重合体(A)中の環構造単位の含有割合の下限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体が耐熱性に優れる観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、0.001mol%以上が好ましく、0.01mol%以上がより好ましく、0.05mol%以上がさらに好ましい。重合体(A)中の環構造単位の含有割合の上限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体が耐熱性に優れ、成形着色の抑制、成形外観、及び耐候性に優れる観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、10mol%以下が好ましく、3mol%以下がより好ましく、0.3mol%以下がさらに好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.001~10mol%が好ましく、0.01~3mol%がより好ましく、0.05~0.3mol%がさらに好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル単位を形成するメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルのうち、アクリル酸エステルとしては、前述のメタクリル系重合体の説明で例示したアクリル酸エステルが挙げられる。また、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸iso-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸iso-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル等を挙げることができる。
これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
重合体(A)は、カルボキシル基を有する単量体に由来する構成単位(以下、「カルボキシル基を有する単量体単位」ともいう。)を含むことができる。一部のカルボキシル基を有する単量体単位は、例えばエステル基との間の環化反応により環構造単位を形成し、メタクリル系重合体の主鎖中に環構造単位を導入しうる。そのため、メタクリル系重合体に、カルボキシル基を有する単量体単位が含まれていてもよい。カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」と称す。)、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸、クロトン酸が挙げられる。カルボキシル基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
重合体(A)の一態様としては、(メタ)アクリル酸エステル単位として、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位(A1)(以下、「単位(A1)」ともいう。)、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位(A2)(以下、「単位(A2)」ともいう。)、及び環構造単位としてグルタル酸無水物構造単位(A3)(以下、「単位(A3)」ともいう。)を含む重合体が挙げられる。
【0051】
重合体(A)が単位(A3)を含むことにより、得られる樹脂成形体の耐熱性を向上させやすい。単位(A3)は、以下の化学構造式で示される。
【0052】
【0053】
(式中、RA及びRBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。)
【0054】
重合体(A)中の単位(A1)の含有割合の下限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体が、透明性に優れ、加工性、機械的特性に優れるというメタクリル系樹脂本来の性能を損なわない観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、80mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましく、94mol%以上がさらに好ましい。重合体(A)中の単位(A1)の含有割合の上限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体の耐熱性に優れる観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、99.4mol%以下が好ましく、99mol%以下がより好ましく、98mol%以下がさらに好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、80~99.4mol%が好ましく、90~99mol%がより好ましく、94~98mol%がさらに好ましい。
【0055】
単位(A2)としては、得られる樹脂成形体の耐熱性に優れることから、メタクリル酸が好ましい。
【0056】
重合体(A)中の単位(A2)の含有割合の下限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体の耐熱性、機械特性に優れる観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、0.5mol%以上が好ましく、1mol%以上がより好ましく、2mol%以上がさらに好ましい。重合体(A)中の単位(A2)の含有割合の上限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体の成形外観、低吸水性、及び成形性に優れるというアクリル樹脂本来の性能を損なわない観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、20mol%以下が好ましく、7mol%以下がより好ましく、3.5mol%以下がさらに好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.5~20mol%が好ましく、1~7mol%がより好ましく、2~3.5mol%がさらに好ましい。
【0057】
重合体(A)中の単位(A3)の含有割合の下限値は特に限定されない。得られる樹脂成形体が耐熱性に優れる観点から、重合体(A)に含まれる繰り返し単位の総モル数(100mol%)に対して、0.001mol%以上が好ましく、0.01mol%以上がより好ましく、0.05mol%以上がさらに好ましい。重合体(A)中の単位(A3)の含有割合の上限値は、得られる樹脂成形体の成形着色の抑制、成形外観、及び耐候性に優れる観点から、10mol%以下が好ましく、3mol%以下がより好ましく、0.3mol%以下がさらに好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.001~10mol%が好ましく、0.01~3mol%がより好ましく、0.05~0.3mol%がさらに好ましい。
【0058】
単位(A3)は、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸を共重合させた共重合体において、単位(A1)に由来するメトキシカルボニル基と、隣接する単位(A2)に由来するカルボキシル基との環化反応により構築された単位であってもよい。
【0059】
本発明において、重合体(A)等のメタクリル系樹脂中の各単位の含有量は、1H-NMR測定から算出した値とする。具体的には、国際公開第2019/013186号に開示された方法を用いることができる。
【0060】
メタクリル系重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法が挙げられる。生産性に優れる観点から、塊状重合法、懸濁重合法が好ましい。
【0061】
メタクリル系重合体のうち、単位(A1)、単位(A2)及び単位(A3)を含む重合体(A)を製造する方法は特に限定されない。例えば、国際公開第2017/022393号、国際公開第2019/013186号に開示された製造方法を用いることができる。
【0062】
<紫外線吸収剤>
本発明に使用される紫外線吸収剤としては、得られる樹脂成形体の耐候性および色調に優れる観点から、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いる。前記の化合物群から選ばれる限り、紫外線吸収剤としては特に制限はなく、従来公知の紫外線吸収剤を用いることができる。
【0063】
<マロン酸エステル系化合物>
マロン酸エステル系化合物としては、従来公知のマロン酸エステル系化合物であれば特に限定されないが、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類などが挙げられる。中でも短波長域の透過率に優れる観点から、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステル、2-(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルが好ましく、マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルがより好ましい。
これらのマロン酸エステル系化合物は、市販品を用いることができ、例えば、クラリアントケミカルズ株式会社製のHOSTAVIN(登録商標)シリーズを用いてもよい。
これらのマロン酸エステル系化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
<トリアジン系化合物>
トリアジン系化合物としては、従来公知のトリアジン系化合物であれば特に限定されないが、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-s-トリアジン、2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールなどが挙げられる。これらのうち、得られる樹脂成形体の色調に優れる観点から、2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノールが好ましい。
これらのトリアジン系化合物は、市販品を用いることができ、例えば、BASFジャパン社製のTinuvin(登録商標)シリーズを用いてもよい。
これらのトリアジン系化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
<シアノアクリレート系化合物>
シアノアクリレート系化合物としては、従来公知のシアノアクリレート系化合物であれば特に限定されないが、例えば、2-エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、得られる樹脂成形体の色調に優れる観点から、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートが好ましい。
これらのシアノアクリレート系化合物は、市販品を用いることができ、例えば、BASFジャパン社製のUvinul(登録商標)シリーズを用いることができる。
これらのシアノアクリレート系化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
本発明のメタクリル系樹脂ペレット中の紫外線吸収剤の内添量(含有量)の下限値および上限値は特に限定されないが、得られる樹脂成形体が耐候性に優れる観点から、メタクリル系樹脂ペレットの総質量100質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.002質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上、最も好ましくは0.009質量部以上である。
一方、得られる樹脂成形体の色調が優れる観点から、紫外線吸収剤の内添量は、0.3質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.07質量部以下、特に好ましくは0.06質量部以下、最も好ましくは0.05質量部以下である。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、本発明のメタクリル系樹脂ペレット中の紫外線吸収剤の内添量は、好ましくは0.001質量部~0.3質量部、より好ましくは0.002質量部~0.1質量部、さらに好ましくは0.003質量部~0.07質量部、特に好ましくは0.005質量部~0.06質量部、最も好ましくは0.009質量部~0.05質量部である。
【0067】
<その他の添加剤>
本発明のメタクリル系樹脂ペレットには、上記特定の紫外線吸収剤以外に、通常、メタクリル系樹脂ペレットに内添される各種の添加剤の1種又は2種以上が、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。
該添加剤としては、光拡散剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、染料、熱安定化剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定材、耐衝撃改良材、流動性向上剤、離型剤、加工弾性付与剤、上記特定の紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤等が挙げられる。ただし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤については、前述の通り、黄変の原因となることから、実質的にメタクリル系樹脂ペレット中に含まれないことが好ましい。ここで、実質的に含まれないとは、メタクリル系樹脂ペレット100質量部中の含有量が検出限界以下であることを意味する。
【0068】
<形状・大きさ・表面積>
本発明のメタクリル系樹脂ペレットは、例えば、射出成形機等の成形機に供されるものであり、その形状には特に制限はなく、円柱状、球状、サイコロ状等であってよい。
メタクリル系樹脂ペレットの大きさについても特に制限はないが、例えば円柱状の場合、円柱の軸方向の長さ(軸長)が1.5~6mmで、軸方向に直交する面の長径の長さが1.5~5mm程度であることが好ましく、軸方向に直交する面の短径の長さが1.5~4.5mm程度であることが好ましい。他の形状の場合は、上記した寸法の円柱状ペレットと同等の体積となる程度の大きさであることが好ましい。
メタクリル系樹脂ペレットの表面積についても特に制限はないが、例えば円柱状の場合、10mm2~450mm2であることが好ましく、30mm2~300mm2であることがより好ましく、40mm2~200mm2であることが特に好ましい。他の形状の場合は、上記した寸法の円柱状ペレットと同等の表面積となることが好ましい。メタクリル系樹脂ペレットの表面積が上記範囲内であれば、脂肪酸金属塩を所定の範囲、外添させることが可能となり、外観、色調、耐候性に優れた樹脂成形体を提供することが可能となる。
【0069】
<メタクリル系樹脂ペレットの製造方法>
前述の紫外線吸収剤と、必要に応じて用いられるその他の添加剤を内添した本発明のメタクリル系樹脂ペレットを製造するには、常法に従ってメタクリル系樹脂を製造する際に重合反応槽内或いは重合反応槽への原料投入径路において、紫外線吸収剤と、必要に応じて用いられるその他の添加剤を所定の割合で添加して重合反応を行い、反応生成物をペレット化すればよい。或いは、製造されたメタクリル系樹脂と、紫外線吸収剤と、必要に応じて用いられるその他の添加剤とを所定の割合で一軸押出機や二軸押出機に投入し、加熱して溶融混練した後ペレット化することでも、これらが内添された本発明のメタクリル系樹脂ペレットを得ることができる。
【0070】
紫外線吸収剤と、必要に応じて用いられるその他の添加剤の一部を重合反応槽内或いは重合反応槽への原料投入径路において添加し、残部を製造されたメタクリル系樹脂に対して一軸押出機や二軸押出機で溶融混練してもよい。
【0071】
<脂肪酸金属塩>
本発明のメタクリル系樹脂ペレットに外添される脂肪酸金属塩の金属種としては、入手容易性の観点から、1~3価の金属が好ましく、特に1~2価の金属が好ましく、とりわけ1価の金属が好ましい。
【0072】
脂肪酸金属塩の金属としては、具体的には、Li、Na、Mg、Ca、Al、Ba、K、Zn等が挙げられ、これらのうち、Li、Na、Mg、Ca、Al、Ba、Kがメタクリル系樹脂との相溶性が高く、得られる樹脂成形体に曇りが発生しづらいため好ましく、特にLiが、得られる樹脂成形体の外観向上効果の観点から好ましい。
【0073】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、メタクリル系樹脂との相溶性の観点から、炭素数8~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数8~22の不飽和脂肪酸が好ましい。
【0074】
炭素数8~22の飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(炭素数8)、ペラルゴン酸(炭素数9)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、ペンタデシル酸(炭素数15)、パルミチン酸(炭素数16)、マルガリン酸(炭素数17)、ステアリン酸(炭素数18)、アラキジン酸(炭素数20)、ヘンイコシル酸(炭素数21)、ベヘン酸(炭素数22)等が挙げられる。
【0075】
炭素数8~22の不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸(炭素数14)、パルミトレイン酸(炭素数16)、サピエン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、エライジン酸(炭素数18)、バクセン酸(炭素数18)、ガドレイン酸(炭素数20)、エイコセン酸(炭素数20)、エルカ酸(炭素数22)、リノール酸(炭素数18)、エイコサジエン酸(炭素数20)、ドコサジエン酸(炭素数22)、α-リノレン酸(炭素数18)、γ-リノレン酸(炭素数18)、ピノレン酸(炭素数18)、α-エレオステアリン酸(炭素数18)、β-エレオステアリン酸(炭素数18)、ミード酸(炭素数20)、ジホモ-γ-リノレン酸(炭素数20)、エイコサトリエン酸(炭素数20)、ステアリドン酸(炭素数18)、アラキドン酸(炭素数20)、エイコサテトラエン酸(炭素数20)、アドレン酸(炭素数22)、ボセオペンタエン酸(炭素数18)、エイコサペンタエン酸(炭素数20)、オズボンド酸(炭素数22)、イワシ酸(炭素数22)、ドコサヘキサエン酸(炭素数22)等が挙げられる。
【0076】
本発明の脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、入手容易性の観点から、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸またはモンタン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。
脂肪酸金属塩としては、得られる樹脂成形体の外観向上効果の観点から、ステアリン酸リチウムが最も好ましい。
これらの脂肪酸金属塩は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
本発明のメタクリル系樹脂ペレットに対する本発明の脂肪酸金属塩の外添量の下限値および上限値は特に限定されないが、メタクリル系樹脂ペレットの総質量100質量部に対して0.0001質量部以上、0.5質量部以下が好ましい。
脂肪酸金属塩の外添量が上記下限以上であれば、本発明の脂肪酸金属塩による成形時の可塑化挙動改善効果により得られる樹脂成形体の外観向上効果をより有効に得ることができる。この下限値は、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上、特に好ましくは0.03質量部以上、最も好ましくは0.05質量部以上である。
脂肪酸金属塩の外添量が上記上限以下であれば、離型時に金型表面に余剰の脂肪酸金属塩が残存することによる金型や樹脂成形体の汚染が発生しにくい。この上限値は、より好ましくは0.4質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、特に好ましくは0.2質量部以下、最も好ましくは0.1質量部以下である。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、本発明の脂肪酸金属塩の外添量は0.0001質量部~0.5質量部、より好ましくは0.005質量部~0.4質量部、さらに好ましくは0.01質量部~0.3質量部、特に好ましくは0.03質量部~0.2質量部、最も好ましくは0.05質量部~0.1質量部である。
【0078】
<樹脂成形材料の製造方法>
本発明のメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を外添させて本発明の樹脂成形材料を製造する方法としては、特に制限はないが、例えばドライブレンドする方法や、撹拌装置を用いて、本発明のメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を噴霧または粉体を添加して撹拌する方法や、脂肪酸金属塩を含有する液中にメタクリル系樹脂ペレットを分散させ、その後ペレット表面の溶剤を除去する方法が挙げられる。
【0079】
ドライブレンドの方法としては、例えば一般的なリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機でメタクリル系樹脂ペレットと脂肪酸金属塩を混合する方法が挙げられる。
【0080】
上述した噴霧して撹拌する場合に用いられる撹拌装置の一例として、有底円筒形状の容器と、その容器の内側壁面に沿って自転および公転するスクリューと、容器内に投入した本発明のメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を噴霧する噴霧手段とを備えるものが挙げられる。
噴霧手段としては、例えば、脂肪酸金属塩を噴霧するスプレーノズル等が挙げられる。噴霧手段は、脂肪酸金属塩を加熱するためのヒーター等の加熱手段を有していてもよい。
【0081】
このような撹拌装置の容器内に本発明のメタクリル系樹脂ペレットを投入し、容器内の本発明のメタクリル系樹脂ペレットに対して、撹拌下に、噴霧手段から脂肪酸金属塩を粉末状、液状あるいは溶融状態にして噴霧して添着させる。
次いで、脂肪酸金属塩が噴霧、添着されたメタクリル系樹脂ペレットは、容器の内側壁面に沿って自転および公転するスクリューによって更に均一に撹拌される。これにより、本発明のメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩を均一に外添させることができる。
【0082】
本発明のメタクリル系樹脂ペレットに脂肪酸金属塩をより均一に外添させるために、脂肪酸金属塩の種類に応じて、容器内の温度を変化させることが好ましい。例えば、容器内の温度を60~80℃程度に上げることで、脂肪酸金属塩の均一外添性を高めることができる。
容器内の温度を変化させる方法としては、例えば、容器内に加熱した不活性ガスを流通させる方法、ヒーターで容器内を加熱する方法、容器のジャケットに熱媒などを流通させて温度制御する方法等が挙げられる。
【0083】
脂肪酸金属塩を含有する液中に本発明のメタクリル系樹脂ペレットを分散させ、その後メタクリル系樹脂ペレット表面の溶剤を除去する方法としては、例えば、溶剤への脂肪酸金属塩の合計添加量を、0.05~1質量%とした溶液又は分散液を調製し、これを本発明のメタクリル系樹脂ペレットに噴霧するか、該液中に本発明のメタクリル系樹脂ペレットを投入して処理する方法が挙げられる。
【0084】
脂肪酸金属塩含有液を噴霧することで、脂肪酸金属塩を本発明のメタクリル系樹脂ペレットに塗布する方法として例えば、コンベアなどの移送装置上にメタクリル系樹脂ペレットを並べ、噴霧器内を通過させる際に脂肪酸金属塩含有液を連続的に噴霧する方法などが挙げられる。
【0085】
脂肪酸含有塩含有液中にメタクリル系樹脂ペレットを投入し、脂肪酸金属塩を本発明のメタクリル系樹脂ペレットに外添させる方法は、通常知られている方法で実施可能であり、例えば、攪拌機を備えた混合槽に脂肪酸金属塩含有液およびメタクリル系樹脂ペレットを投入し、0℃~溶剤の沸点以下の温度にて、所定時間混合を行い、濾過等の方法で、メタクリル系樹脂ペレットおよび液を分離する。
【0086】
次に、送風あるいは必要に応じて熱風を与えることにより溶剤を乾燥させる。この際、脂肪酸金属塩は揮発しないため、そのままメタクリル系樹脂ペレット表面に残留する。従って乾燥後、脂肪酸金属塩をメタクリル系樹脂ペレットに外添することが可能となる。
【0087】
溶剤としては、通常用いられる溶剤を用いることが可能であり、本発明のメタクリル系樹脂ペレットのメタクリル系樹脂の組成により、溶剤へのメタクリル系樹脂の溶解が無い又はほとんど観察されないものを用いることが好ましい。このような溶剤としては例えば、水を挙げることができる。好ましい溶剤としては、乾燥工程の効率および作業性のよさから、常圧における沸点が30℃~150℃の溶剤が好ましく、コスト及び安全性を考えると水が特に好ましい。
【0088】
[樹脂成形体]
本発明の樹脂成形体は、本発明の樹脂成形材料を成形してなるものである。
本発明の樹脂成形体は、公知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸等によって成形されるものであれば、特に限定されないが、優れた可塑化特性を得ることができる観点から、本発明の樹脂成形材料は、押出成形用樹脂成形材料または射出成形用樹脂成形材料として好適である。
【0089】
本発明の樹脂成形体の具体例としては、テールランプカバーや、ヘッドランプカバー、メーターパネル、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、エンブレムといった車両の内外装材料等の車両用部材;建築部材;洗面化粧台、浴槽、水洗便器等の住宅設備向け部材;レンズ、導光体等の光学用部材;化粧品等の容器;キュベット等の医療用部材などが挙げられる。
これらのうち、特に本発明の樹脂成形体は、その優れた外観、耐候性、透明性、耐薬品性により、車両用部材、光学用部材、容器、医療用部材に好適に用いられる。
【実施例0090】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0091】
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた原料は以下の通りである。
【0092】
<メタクリル系樹脂>
メタクリル樹脂:三菱ケミカル社製「ACRYPET(登録商標)VH」
【0093】
<脂肪酸金属塩>
ステアリン酸リチウム(表1中「ステアリン酸Li」と記載する。)
【0094】
<紫外線吸収剤>
マロン酸エステル系化合物:クラリアントケミカルズ社製「HOSTAVIN(登録商標)PR-25」マロン酸[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステル
トリアジン系化合物:BASFジャパン社製「Tinuvin(登録商標)-1577 ED」2,2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール
ベンゾトリアゾール系化合物:BASFジャパン社製「Tinuvin(登録商標)-P」2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール
【0095】
[評価方法]
以下の実施例及び比較例で製造された樹脂成形体の評価方法は以下の通りである。
【0096】
(1) 外観
樹脂成形体試験片を目視確認し、シルバー(外観不良)の発生数から下記基準で評価した。
○:試験片10個中、シルバーの発生した試験片の数が1個以下
△:試験片10個中、シルバーの発生した試験片の数が2個以上4個以下
×:試験片10個中、シルバーの発生した試験片の数が5個以上
【0097】
(2) 色調
樹脂成形体試験片について、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計「U-4100」を用い、透過方式にてJIS K7105に準拠し、C光源透過法にて光路長140mmのイエローインデックス(YI)値を測定した。測定は3個の試験片について行い、その平均値を算出し、下記基準で評価した。
○:YI値が10.0未満
×:YI値が10.0以上
【0098】
(3) 耐候性
樹脂成形体試験片について、以下の促進暴露試験を行い、試験後のYI値を上記(2)色調と同様に測定した。
<促進暴露試験>
促進暴露試験は、岩崎電気株式会社製「アイスーパーUVテスター」を用いて行った。具体的には、外観評価で作製した射出成形試験片を切断し、評価室内に樹脂成形体試験片(50mm×50mm×4mm)を設置し、アイスーパーUVテスターから波長300~400nmの照射強度150mW/m2の紫外線を200時間照射した。25時間ごとに照射位置を調整することで、試験片に均一にUV照射を行った。
試験前後の試験片について、分光光度計(機種名「U-4100」、日立ハイテクノロジーズ製)を用い、光路長4.0mmにおけるL*、a*、b*を測定し、色差ΔE*abを求め、下記基準に従って判定した。
○:ΔE*ab値が5.0未満
×:ΔE*ab値が5.0以上
【0099】
[実施例1]
メタクリル系樹脂と、紫外線吸収剤としてマロン酸エステル系化合物を、得られるメタクリル系樹脂ペレット100質量部に対して内添量が0.03質量部となるように用い、これらを二軸押出機(機種名「TEM35」、芝浦機械(株)製)に供給し、押出機のシリンダー温度250℃で溶融混練し、金型温度60℃でマロン酸エステル系化合物含有メタクリル系樹脂ペレットを得た。
このメタクリル系樹脂ペレットは、軸方向に直交する方向の長径が3.2mm、軸長が3.0mmの円柱状である。
得られたマロン酸エステル系化合物含有メタクリル系樹脂ペレットに、以下の方法でステアリン酸リチウムを外添させた。
80℃で16時間以上乾燥させたメタクリル系樹脂ペレットと、粉末状のステアリン酸リチウムをポリエチレン袋に入れ、1分間ハンドブレンドすることで、マロン酸エステル系化合物含有メタクリル系樹脂ペレット100質量部にステアリン酸リチウムが表1に示す量で外添した樹脂成形材料を得た。
【0100】
得られた樹脂成形材料を80℃で約16時間熱風乾燥した後に、下記条件で射出成形を行い、樹脂成形体の試験片を20個製造し、前述の(1)~(3)の評価を行った。
・射出成形機:機種名:EC75-SXII、芝浦機械製株式会社製
・金型:120mm×140mm×4mmのプレート成形体用金型
・シリンダー温度:230℃
・ホッパー下温度:50℃
・金型温度:60℃
・サイクル時間:60秒
・スクリュー回転数:90rpm
・背圧:10MPa
評価結果を表1に示す。
【0101】
[実施例2]
紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物(HOSTAVIN PR-25)の代りに、トリアジン系化合物(Tinuvin-1577 ED)を内添させたこと以外は、実施例1と同様に樹脂成形体の試験片を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
[比較例1]
紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物(HOSTAVIN PR-25)の代りに、ベンゾトリアゾール系化合物(Tinuvin-P)を内添させたこと以外は、実施例1と同様に樹脂成形体の試験片を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
[比較例2]
マロン酸エステル系化合物(HOSTAVIN PR-25)含有ペレットに、ステアリン酸リチウムを外添させずに射出成形に供したこと以外は、実施例1と同様に樹脂成形体の試験片を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
[比較例3]
トリアジン系化合物(Tinuvin-1577 ED)含有ペレットに、ステアリン酸リチウムを外添させずに射出成形に供したこと以外は、実施例2と同様に樹脂成形体の試験片を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
[比較例4]
ベンゾトリアゾール系化合物(Tinuvin-P)含有ペレットに、ステアリン酸リチウムを外添させずに射出成形に供したこと以外は、比較例1と同様に樹脂成形体の試験片を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
[比較例5]
メタクリル系樹脂に紫外線吸収剤を混練せずに、直接ペレット化し、得られた紫外線吸収剤非含有のメタクリル系樹脂ペレットに、実施例1と同様にしてステアリン酸リチウムを外添させたこと以外は、実施例1と同様に樹脂成形体の試験片を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
【0108】
表1の実施例1~2より明らかなように、メタクリル系樹脂ペレットにマロン酸エステル系化合物、又はトリアジン系化合物である紫外線吸収剤を内添し、ステアリン酸リチウムを外添した本発明の樹脂成形材料によれば、外観、色調、耐候性のすべてにおいて優れたメタクリル系樹脂成形体を得ることができる。マロン酸エステル系化合物を用いた実施例1の結果から、マロン酸エステル系化合物と同様にフェノール系水酸基を含有しないシアノアクリレート系化合物であれば、マロン酸エステル系化合物と同様に、外観、色調、耐候性のすべてにおいて優れたメタクリル系樹脂成形体を得ることができることが分かる。
これに対して、メタクリル系樹脂ペレットにベンゾトリアゾール系化合物を内添し、脂肪酸金属塩を外添させた比較例1では、射出成形時の可塑化特性および耐候性は良好だが、ベンゾトリアゾール系化合物と金属塩が共存することで黄変の問題があり、色調に劣る。
メタクリル系樹脂ペレットにマロン酸エステル系化合物又はトリアジン系化合物である紫外線吸収剤を含み、ステアリン酸リチウムが外添されていない比較例2~3のペレットでは、黄変の問題はないが、射出成形時の可塑化特性が劣る結果、外観不良(シルバー)を引き起こす。この結果から、マロン酸エステル系化合物と同様、シアノアクリレート系化合物についても同様の結果が得られることが分かる。
ステアリン酸リチウムを外添し、ペレット中に紫外線吸収剤を含まない比較例4のペレットでは、射出成形時の可塑化特性が良好で黄変の問題はないが、耐候性に劣る。
【0109】
以上より、メタクリル系樹脂ペレットに外観改善のために脂肪酸金属塩を外添するとともに、耐候性改善のために紫外線吸収剤を内添する場合において、本発明に従って、紫外線吸収剤として、マロン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物またはシアノアクリレート系化合物を用いることにより、外観、色調、耐候性に優れた樹脂成形体を提供することができることが分かる。