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特開2024-125793三次元測定機およびインライン測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125793
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】三次元測定機およびインライン測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240911BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240911BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240911BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B11/00 G
B23Q17/20 A
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033859
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
【テーマコード(参考)】
2F062
2F065
3C029
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062AA51
2F062CC22
2F062CC23
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE09
2F062FF05
2F062FG07
2F062GG17
2F062GG71
2F062GG75
2F062HH01
2F062HH04
2F065AA02
2F065AA04
2F065AA09
2F065BB01
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF51
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ03
2F065JJ26
3C029BB02
3C029EE02
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】工作機械で加工途上のワークの測定を効率よく行える三次元測定機およびインライン測定システムを提供する。
【解決手段】搬送経路3でワーク2を搬送しつつ工作機械4で加工する製造ライン1には、工作機械4で加工されるワーク2を測定可能な三次元測定機5が設置され、インライン測定システム6が構成される。三次元測定機5は、工作機械4の側方に設置された測定機本体20と、測定機本体20から工作機械4まで延びる支持体23と、支持体23で支持されて工作機械4で加工されるワーク2を測定可能なプローブ24と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械で加工されるワークを測定可能な三次元測定機であって、
前記工作機械の側方に設置される測定機本体と、前記測定機本体から前記工作機械まで延びる支持体と、前記支持体で支持されて前記工作機械で加工される前記ワークを測定可能なプローブと、を有する三次元測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元測定機において、
前記支持体には、前記プローブを支持する部分の前記測定機本体に対する変位を検出する変位検出装置が設置されている三次元測定機。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元測定機において、
前記変位検出装置は、
前記支持体の前記プローブを支持する部分に設置された反射器と、
前記支持体の前記測定機本体の側に設置されて前記反射器との間にレーザビームを形成するレーザ干渉計と、
前記反射器の入射側に設置されて前記レーザビームを分割して前記測定機本体の側へ送るビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタからの前記レーザビームを受光して前記レーザビームの二次元受光位置を検出する二次元センサと、を有する三次元測定機。
【請求項4】
請求項2に記載の三次元測定機において、
前記支持体には、前記プローブを支持する部分での前記支持体の延伸方向の傾斜を検出する傾斜検出装置を有する三次元測定機。
【請求項5】
ワークを加工する工作機械と、前記工作機械に支持された前記ワークを測定する三次元測定機と、を有するインライン測定システムであって、
前記三次元測定機は、前記工作機械の側方に設置された測定機本体と、前記測定機本体から前記工作機械まで延びる支持体と、前記支持体で支持されて前記工作機械で加工される前記ワークを測定可能なプローブと、を有するインライン測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造ライン上のワークを測定する三次元測定機およびインライン測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いる製造ラインでは、工作機械で加工されるワークの形状寸法を、工作機械からワークを取り出すことなく測定するために、インライン測定システムが用いられている。
例えば、工作機械を有する製造ラインの途中に三次元測定機を設置し、工作機械で順次加工されたワークの形状寸法をインライン測定している(特許文献1参照)。
また、製造ラインに設置された工作機械にタッチ信号プローブを装着し、加工中のワークの形状寸法を機上測定すること、つまり工作機械の三次元測定機化も行われている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-55644号公報
【特許文献2】特開2016-80507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1では、製造ラインの途中に設置された三次元測定機により、工作機械から送り出されたワークを測定できる。しかし、特許文献1では、工作機械で加工途上のワークの測定はできない。
前述した特許文献2では、加工途上のワークの測定が可能であるが、工作機械を加工および測定に兼用するために、加工時には主軸に刃物を装着し、測定時には主軸にプローブを装着する。つまり、測定のつどプローブの交換動作が必要であり、作業効率の低下が避けられない。
このようなことから、工作機械で加工途上のワークの測定を効率よく行えるようにすることが求められていた。
【0005】
本発明の目的は、工作機械で加工途上のワークの測定を効率よく行える三次元測定機およびインライン測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三次元測定機は、ワークを加工する工作機械に支持された前記ワークを測定可能な三次元測定機であって、前記工作機械の側方に設置される測定機本体と、前記測定機本体から前記工作機械まで延びる支持体と、前記支持体で支持されて前記工作機械で加工される前記ワークを測定可能なプローブと、を有する。
このような本発明では、工作機械の側方あるいは隣接した位置に設置された測定機本体から支持体を延ばしてプローブを工作機械の加工領域内に導入し、ワークの三次元形状を測定することができる。プローブとしては、接触式のタッチプローブや倣いプローブ、非接触式のラインレーザプローブや粗さ測定プローブなどが適宜利用できる。
本発明では、工作機械でワークの加工を進めつつ、途上の段階で測定機本体から支持体を延ばして加工途上のワークの測定を行うことができる。工作機械においては、ワークの測定の際に工具とプローブとの交換などを行う必要がない。これにより、工作機械で加工途上のワークの測定を効率よく行うことができる。
【0007】
本発明の三次元測定機において、前記支持体には、前記プローブを支持する部分の前記測定機本体に対する変位を検出する変位検出装置が設置されていることが好ましい。
このような本発明では、支持体のプローブを支持する部分の測定機本体に対する変位を変位検出装置で検出することで、支持体の変形等に基づく変位を補正することができる。
変位としては、支持体の延伸方向に直交する2軸の変位(例えば垂直方向および水平方向)、および支持体の延伸方向の変位が該当する。とくに、本発明では、支持体の変形の主因が重力による垂れ下がりであり、支持体のプローブを支持する部分の垂直方向の変位の補正が最も必要となる。
支持体の延伸方向の変位の検出には、例えばレーザ干渉計などの高精度距離測定装置が利用できる。支持体の延伸方向に直交する2軸の変位については、支持体に平行なレーザビームを二次元センサで受光する構成などが利用できる。
既存の三次元測定機では、プローブの3軸座標を測定機本体に設置された各軸方向のスケールなどで検出している。測定機本体と工作機械との距離が大きくなった際には、支持体の測定機本体側の位置からプローブ支持位置までの距離が大きくなり、支持体のプローブを支持する部分の測定機本体に対する変位が拡大し、測定機本体側での測定精度が低下する可能性がある。これに対し、変位検出装置により、支持体の変形を検出して測定機本体での測定値を補正することで、高精度かつ効率的な測定を行うことができる。
【0008】
本発明の三次元測定機において、前記変位検出装置は、前記支持体の前記プローブを支持する部分に設置された反射器と、前記支持体の前記測定機本体の側に設置されて前記反射器との間にレーザビームを形成するレーザ干渉計と、前記反射器の入射側に設置されて前記レーザビームを分割して前記測定機本体の側へ送るビームスプリッタと、前記ビームスプリッタからの前記レーザビームを受光して前記レーザビームの二次元受光位置を検出する二次元センサと、を有することが好ましい。
このような本発明では、レーザ干渉計で支持体の延伸方向の変位を検出しつつ、二次元センサで支持体の延伸方向に交差する2軸方向の変位を検出できる。この際、二次元センサで検出するレーザビームは、レーザ干渉計によるレーザビームを分割して利用しており、構造の簡素化および稼働電力の抑制ができる。
【0009】
本発明の三次元測定機において、前記支持体には、前記プローブを支持する部分での前記支持体の延伸方向の傾斜を検出する傾斜検出装置を有することが好ましい。
このような本発明では、傾斜検出装置により、支持体のプローブを支持する部分での支持体の延伸方向の傾斜を検出できる。例えば、変位検出装置により、支持体の測定器本体側に対するプローブを支持する部分における、支持体の延伸方向に交差する2軸方向の変位を検出すると、検出された変位量には、当該部分の並進成分だけでなく回転成分の影響が含まれる。ここで、傾斜検出装置により当該部分の傾斜から回転成分を検出することで、並進成分と角度成分とを併て補正演算を行うことができ、より適切な補正を行うことができる。
【0010】
本発明のインライン測定システムは、ワークを加工する工作機械と、前記工作機械に支持された前記ワークを測定する三次元測定機と、を有するインライン測定システムであって、前記三次元測定機は、前記工作機械の側方に設置された測定機本体と、前記測定機本体から前記工作機械まで延びる支持体と、前記支持体で支持されて前記工作機械で加工される前記ワークを測定可能なプローブと、を有する。
このような本発明のインライン測定システムによれば、前述した本発明の三次元測定機で説明した通りの効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、工作機械で加工途上のワークの測定を効率よく行える三次元測定機およびインライン測定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の製造ラインを示す平面図。
図2】前記実施形態の三次元測定機およびインライン測定システムを示す立面図。
図3】前記実施形態の変位検出装置を示す立面図。
図4】前記実施形態の二次元センサを示す正面図。
図5】前記実施形態の支持体の変位の並進成分を示す模式図。
図6】前記実施形態の支持体の変位の回転成分を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、製造ライン1は、ワーク2を搬送する搬送経路3を有する。搬送経路3の途中にはワーク2を加工する複数の工作機械4,41,42,43が設置されている。工作機械4の側方には、工作機械4で加工されるワーク2のインライン測定を行うための三次元測定機5が設置されている。
【0014】
製造ライン1および三次元測定機5には、制御装置7および操作端末8が接続されている。制御装置7は、操作端末8からの操作指示に基づいて、製造ライン1におけるワーク2の搬送動作、および工作機械4,41~43による加工動作の制御を行う。さらに、制御装置7は、製造ライン1における搬送動作および加工動作に連携して、三次元測定機5にワーク2の測定動作を実行させる。操作端末8には、製造ライン1における動作状況、および三次元測定機5による測定結果などが適宜表示される。
これらの製造ライン1および三次元測定機5により、インライン測定システム6が構成されている。
【0015】
図2において、工作機械4は、床面に固定されたベッド11と、ベッド11の上面に支持されたテーブル12とを有する。テーブル12は、製造ライン1の搬送経路3の一部を構成するものであり、テーブル12の上面には搬送経路3の上流側(図1上方、図2奥側)からワーク2が順次搬送される。
テーブル12の上方には、3軸移動可能な移動機構13により主軸ヘッド14が支持されている。主軸ヘッド14には電動モータで回転駆動される主軸15が支持されている。主軸15には切削加工用の工具16が装着されている。
このような工作機械4では、主軸15を回転させた状態で、移動機構13により工具16をワーク2に近接させることで、ワーク2の切削加工が可能である。
【0016】
工作機械4には、ベッド11の上面に三次元測定機5の校正動作に用いる基準球17が設置されている。
三次元測定機5においては、プローブ24で基準球17の表面を検出する校正動作により、プローブ24の校正動作を行うことができる。
基準球17を用いた校正動作は、基本的に製造ライン1および三次元測定機5の起動時に1回だけ行う。ただし三次元測定機5の校正動作は、必要に応じて随時行ってもよい。
製造ライン1に設置された他の工作機械41~43は、各々の加工内容に応じて相違があるが、それぞれ工作機械4と同様に構成されている。
【0017】
図2において、三次元測定機5は、製造ライン1の側方に設置された測定機本体20と、測定機本体20から製造ライン1まで延びる支持体23と、支持体23で支持されて搬送経路3で搬送されるワーク2を測定可能なプローブ24と、を有する。
測定機本体20は、工作機械4に隣接する床面上に固定されたベッド21と、ベッド21の上面に支持されたコラム22とを有する。コラム22の側面には、ブロック25が昇降自在に支持されている。ブロック25には、水平に延びる長尺の支持体23が支持されている。
支持体23は、測定機本体20から工作機械4のテーブル12の上面まで達する十分な長さとされており、先端に支持されたプローブ24がテーブル12に支持されたワーク2に接触可能である。
プローブ24としては、接触式のタッチプローブや倣いプローブ、非接触式のラインレーザプローブや粗さ測定プローブなどが適宜利用できる。
【0018】
ベッド21とコラム22との間には、図示しないY軸移動機構が設置され、コラム22、ブロック25、支持体23ないしプローブ24はベッド21に対してY軸方向(図2奥行き方向、支持体23の延伸方向に直交する2軸のうち水平方向)へ移動可能である。
コラム22とブロック25との間には、図示しないZ軸移動機構が設置され、ブロック25、支持体23およびプローブ24は、コラム22およびベッド21に対してZ軸方向(図2上下方向、支持体23の延伸方向に直交する2軸のうち垂直方向)へ昇降可能である。
ブロック25と支持体23との間には、図示しないX軸移動機構が設置され、支持体23およびプローブ24は、コラム22およびベッド21に対してX軸方向(図2左右方向、支持体23の延伸方向)へ移動可能である。
これらのXYZ各軸の移動量は、各軸に沿って設置された図示しないスケールにより検出可能である。
【0019】
このような三次元測定機5では、制御装置7の制御により各軸移動機構を動作させ、支持体23の先端に支持されたプローブ24を工作機械4のテーブル12の上方へ進出させ、プローブ24をワーク2に接触させるとともに、プローブ24で接触が検知された際の各軸移動量を検出することで、ワーク2の表面の三次元座標位置を測定可能である。
【0020】
三次元測定機5の支持体23には、プローブ24を支持する部分の測定機本体20に対する変位を検出する変位検出装置30が設置されている。
ブロック25にはレーザ干渉計31および二次元センサ34が設置され、プローブ24が装着される支持体23の先端部分には反射器32およびビームスプリッタ33が設置されている。
【0021】
図3において、レーザ干渉計31は支持体23と平行なレーザビームB1を形成し、反射器32で反射されたレーザビームB2がレーザ干渉計31に戻される。レーザ干渉計31はレーザビームB2を参照して反射器32までの距離を測定し、測定機本体20の機械座標系に対するプローブ24のX軸方向位置を高精度に測定可能である。
【0022】
ビームスプリッタ33は、ハーフミラー331,332を有する。ハーフミラー331は、反射器32の入射側に設置されてレーザ干渉計31からのレーザビームB1を分割し、ハーフミラー332は、測定機本体20側へ戻る支持体23と平行なレーザビームB3を形成する。
二次元センサ34は、ビームスプリッタ33からのレーザビームB3を受光し、レーザビームB3の二次元受光位置を検出する。
二次元センサ34としては、例えばフォトダイオードの表面抵抗を利用した二次元PSD(二次元位置検出センサ)が利用でき、連続したX座標およびY座標の電気信号が得られ、位置分解能および応答性に優れるとされている。二次元センサ34として、CCD(電荷結合素子)を利用した二次元イメージセンサを用いてもよい。
【0023】
図4には、二次元センサ34におけるレーザビームB3の受光状態が示されている。
二次元センサ34は、微細な光センサを二次元配列したパネル状のセンサであり、レーザビームB3の受光位置PB3について、基準位置P0からのZ軸方向の変位dZおよびY軸方向の変位dYを検出可能である。
支持体23が、測定機本体20に対して設計上の基準位置にあるとき、二次元センサ34におけるレーザビームB3の受光位置PB3は基準位置P0となる。一方、支持体23の変形あるいは測定機本体20に対する変位が生じた際には、二次元センサ34におけるレーザビームB3の受光位置PB3が基準位置P0からずれて変位dY,dZが生じる。
支持体23の変形あるいは測定機本体20に対する変位は、測定機本体20のYZ各軸スケールで測定されるプローブ24の各軸位置の誤差となる。これに対し、二次元センサ34で変位dY,dZを検出し、制御装置7において変位dY,dZに基づく幾何学的演算を行ってYZ各軸位置を補正することで、測定されるワーク2の表面の三次元座標位置を高精度に維持可能である。
【0024】
前述した変位検出装置30において、二次元センサ34で検出される変位dY,dZは、支持体23およびプローブ24の全体としての各軸方向のずれに起因する変位(並進成分)と、支持体23の延伸軸線の撓みによる測定機本体20の支持部分に対するプローブ24支持部分の傾きに起因する変位(回転成分)と、を含んでいる。
例えば、支持体23の変形では重力によるZ方向下向きの変位が大きいが、Z軸方向の変位dZは図5および図6に示す並進成分dZtと回転成分dZrとが合成されたものとなる。
【0025】
図5において、支持体23は、主に重力により全体として測定機本体20の支持部分に対して下方へ変位し、その変位量はZ軸と平行な並進成分dZtとなる。
図6において、支持体23に対する重力の影響は、測定機本体20側に対してプローブ24側が下向きに撓むように変形させ、この撓みによる変形は支持体23のプローブ24支持部分での傾きRzとして現れ、二次元センサ34においては回転成分dZrとなる。
従って、プローブ24支持部分での傾きRzを検出し、回転成分dZrを演算したうえ、二次元センサ34で検出されたZ軸方向の並進成分である変位dZと併せて補正演算を行うことで、Z軸位置の補正に適用すべき適切な並進成分dZtを補正値として算出することができる。
これは、Y軸方向の変位dYについても同様であり、回転成分dYrを検出することで補正に適用すべき並進成分dYtを算出することができる。
【0026】
三次元測定機5の支持体23には、プローブ24を支持する部分での測定機本体20に対する支持体23延伸方向の傾斜(図6の傾きRz)を検出する傾斜検出装置35が設置されている。
傾斜検出装置35としては、重力方向を検出して重力方向に対するプローブ24支持部分の傾きを測定する傾斜センサなどが利用できる。傾斜センサとしては、例えば、重錘あるいは振り子を用いる機械式センサあるいはMEMS(微小な電気機械システム)センサや、液面を検出する液体式センサなどが利用できる。
傾斜検出装置35としては、他に光学的な方位センサなどを用いてもよく、レーザ干渉計31に角度検出機能がある場合、これを利用してもよく、重力が関与しないY軸方向の回転成分dYrの検出にはこのような光学的なセンサが好ましい。
【0027】
本実施形態によれば次のような効果が得られる。
本実施形態では、製造ライン1および三次元測定機5によりインライン測定システム6が形成される。インライン測定システム6においては、製造ライン1の側方に設置された測定機本体20から支持体23を延ばしてプローブ24を製造ライン1内に導入し、ワーク2の三次元形状のインライン測定を行うことができる。
本実施形態では、測定機本体20は製造ライン1の側方に設置されるため、製造ライン1の途中に三次元測定機5の設置スペースを確保する必要がなく、製造ライン1の長大化を回避できる。
これにより、製造ライン1の長大化を回避しつつ、専用の三次元測定機5を用いた効率的なインライン測定を実現できる。
【0028】
本実施形態では、三次元測定機5におけるプローブ24の3軸座標を、基本的に測定機本体20に設置された各軸方向のスケールで検出している。X軸座標はレーザ干渉計31でも検出できる。X軸座標はレーザ干渉計31だけで検出し、測定機本体20に設置されたX軸方向のスケールによる検出は省略してもよい。さらに、三次元測定機5においては、変位検出装置30で支持体23のプローブ24を支持する部分の測定機本体20に対する変位を検出することで、支持体23の変形等に基づく変位を補正することができる。
とくに、本実施形態の変位検出装置30では、レーザ干渉計31および反射器32で支持体23の延伸方向(X軸方向)の変位を検出しつつ、二次元センサ34で支持体23の延伸方向に交差する2軸方向(Y軸方向およびZ軸方向)の変位を検出できる。この際、二次元センサ34で検出するレーザビームB3は、レーザ干渉計31によるレーザビームB1をビームスプリッタ33分割して利用しており、構造の簡素化および稼働電力の抑制ができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、傾斜検出装置35により、支持体23のプローブ24を支持する部分での支持体23の延伸方向の傾斜を検出し、支持体23の変形等に基づく変位の補正を適切に行うことができる。
前述した通り、本実施形態では、変位検出装置30により、支持体23の測定機本体20側に対するプローブ24を支持する部分における、支持体23の延伸方向に交差する2軸方向(YZ軸方向)の変位を検出している。そして、検出されたYZ軸方向の変位量には、当該部分の並進成分だけでなく回転成分の影響が含まれる。ここで、傾斜検出装置35により当該部分の傾斜から回転成分を検出することで、回転成分と並進成分とを併せて補正演算を行うことができ、適切な補正を行うことができる。
【0030】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、製造ライン1は搬送経路3および工作機械4,41,42,43で構成され、工作機械4の側方に三次元測定機5が設置されていた。これに対し、工作機械41,42,43の側方にそれぞれ同様な三次元測定機5を設置してもよい。また、工作機械4,41,42,43の数は3以下でもよく、5以上であってもよい。
工作機械4の構成は任意であり、垂直な主軸15を有するものに限らず、横向きの主軸を用いるものであってもよい。三次元測定機5の構成も任意であり、製造ライン1へと延びる支持体23を支持しつつ3軸方向へ移動できる構成であればよい。
【0031】
変位検出装置30としては、支持体23の延伸方向(X軸方向)、同方向に交差する2軸方向(Y軸方向およびZ軸方向)の変位が検出できればよく、各軸に沿って高精度の変位検出器を設置してもよい。例えば、Z軸変位dZおよびY軸変位dYについては、レーザ干渉計31によるX軸ビームを利用する二次元センサ34に代えて、各軸ごとに高精度の変位検出器、例えばレーザートラッカーを使用してもよい。ただし、前記実施形態の構成とすることで、レーザ干渉計31によるX軸ビームを流用してY軸およびZ軸の変位検出までを行うことができ、構成の簡素化が可能である。
前記実施形態では、傾斜検出装置35を用いて支持体23のプローブ24支持位置の傾斜から回転成分を検出し、変位検出装置30で検出される並進成分と回転成分とを併せて補正演算を行うことで、測定値の適切な補正による高精度化を図っていた。ここで、傾斜検出装置35としては、重力式の傾斜センサに限らず、光学式の方位検出を行う機構であってもよく、例えば、二次元センサ34とレーザビームB1,B3を用いる機構を2組設置し、並進成分と傾き成分とを検出してもよい。
前記実施形態では、支持体23の延伸方向(X軸方向)、同方向に交差する2軸方向(Y軸方向およびZ軸方向)の各変位dX,dY,dZを検出していたが、支持体23の変形の主因が重力による垂れ下がりであり、支持体23のプローブ24を支持する部分の垂直方向の変位dZの補正が最も必要であって、X軸方向の変位dX,Y軸方向の変位dYについては精度の緩和、簡素化あるいは省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は製造ライン上のワークを測定する三次元測定機およびインライン測定システムに利用できる。
【符号の説明】
【0033】
1…製造ライン、11…ベッド、12…テーブル、13…移動機構、14…主軸ヘッド、15…主軸、16…工具、17…基準球、2…ワーク、20…測定機本体、21…ベッド、22…コラム、23…支持体、24…プローブ、25…ブロック、3…搬送経路、30…変位検出装置、31…レーザ干渉計、32…反射器、33…ビームスプリッタ、34…二次元センサ、35…傾斜検出装置、4,41,42,43…工作機械、5…三次元測定機、6…インライン測定システム、7…制御装置、8…操作端末、B1,B2,B3…レーザビーム、dY,dZ…変位、dYr,dZr…回転成分、dYt,dZt…並進成分、P0…基準位置、PB3…受光位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6