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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125848
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】導波路型分光器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20240911BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20240911BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20240911BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240911BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20240911BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G02B6/12 336
G02B6/12 301
G02B6/125 301
G02B6/30
G02B6/42
G01J3/18
G01J3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033949
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼高
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【テーマコード(参考)】
2G020
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2G020CB02
2G020CC32
2G020CC49
2G020CC63
2G020CD60
2H137AA14
2H137AB08
2H137AB11
2H137BA01
2H137BA15
2H137BA44
2H137BA47
2H137BB12
2H137BB17
2H137BC02
2H137BC50
2H137CA22A
2H137CA34
2H137CB06
2H137CB22
2H137CB24
2H137CB25
2H137CB26
2H137DB13
2H137HA01
2H147AA02
2H147AB05
2H147AB17
2H147AB21
2H147BD01
2H147BD02
2H147BD07
2H147BD15
2H147BE04
2H147BE11
2H147BG06
2H147CA01
2H147CA05
2H147CA08
2H147CB01
2H147CB03
2H147CD02
2H147DA15
2H147GA10
2H147GA25
(57)【要約】
【課題】高機能であって小型化に適する導波路型分光器を提供すること。
【解決手段】導波路型分光器は、第1アレイ導波路回折格子と第2アレイ導波路回折格子とを含む複数のアレイ導波路回折格子と、入力された光を分割してまたは該光の経路を切り換えて、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の少なくとも一つに出力する光分岐部と、が集積された導波路基板と、前記複数のアレイ導波路回折格子の出力側スラブ導波路のそれぞれから出力された分光光を受光する光検出素子アレイと、を備え、前記複数のアレイ導波路回折格子の出力側スラブ導波路と前記光検出素子アレイとは、前記導波路基板の第1側面において対向している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アレイ導波路回折格子と第2アレイ導波路回折格子とを含む複数のアレイ導波路回折格子と、入力された光を分割してまたは該光の経路を切り換えて、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の少なくとも一つに出力する光分岐部と、が集積された導波路基板と、
前記複数のアレイ導波路回折格子の出力側スラブ導波路のそれぞれから出力された分光光を受光する光検出素子アレイと、
を備え、
前記複数のアレイ導波路回折格子の出力側スラブ導波路と前記光検出素子アレイとは、前記導波路基板の第1側面において対向している
導波路型分光器。
【請求項2】
前記第2アレイ導波路回折格子は、動作波長範囲、動作波長範囲の幅、および分解能の少なくとも一つが前記第1アレイ導波路回折格子とは異なる
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項3】
前記光検出素子アレイは、前記複数のアレイ導波路回折格子の分光方向に沿って配列された複数の光検出素子を有しており、
前記光検出素子アレイは、前記第1アレイ導波路回折格子からの分光光を受光する第1受光領域と、前記第2アレイ導波路回折格子からの分光光を受光する第2受光領域とを有し、
前記第2受光領域に存在する前記光検出素子は、前記第1受光領域に存在する前記光検出素子において受光感度が低い低感度受光領域で受光するまたは前記光検出素子によって受光されない波長の光を、受光感度が高い高感度受光領域で受光するように配列されている
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項4】
前記低感度受光領域は前記光検出素子における受光面の周縁領域または互いに隣接する前記光検出素子の境界であり、前記高感度受光領域は前記光検出素子における受光面の前記周縁領域よりも中央に近い中央領域である
請求項3に記載の導波路型分光器。
【請求項5】
前記導波路基板は、前記第1側面において前記光検出素子アレイが取り付けられる取付領域と、前記第1側面と対向する第2側面とを有し、
前記導波路基板の側面において、前記取付領域を前記第2側面へ投影した投影領域から外れた領域に設けられた光入力部をさらに備える
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項6】
前記導波路基板の側面と、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の入力側とに接続された第1導波路を備える
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項7】
前記光分岐部の出力側と、前記光検出素子アレイとに、前記複数のアレイ導波路回折格子を経由せずに接続された第2導波路を備える
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項8】
前記導波路基板の側面と、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の少なくとも一つの出力側とに接続された第3導波路を備える
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項9】
前記導波路基板の側面に設けられた光入力部と、
前記光入力部と隣接して2つの入出力部が設けられた折り返し構造の第4導波路と、
前記光入力部と前記第4導波路の前記2つの入出力部とのそれぞれに接続する3つの光ファイバを有する光ファイバアレイと、
前記光ファイバアレイを保持する保持部と、
を備える請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項10】
前記第1アレイ導波路回折格子と前記第2アレイ導波路回折格子とは1つの入力側スラブ導波路を共有している
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項11】
前記導波路基板は、前記第1側面と対向する第2側面を有し、
前記導波路基板には、前記第2側面から見て、前記光検出素子アレイにおいて前記分光光を受光する受光領域を覆うように設けられた遮光溝が形成されている
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項12】
前記導波路基板と熱的に接触した温度調節素子を備える
請求項1に記載の導波路型分光器。
【請求項13】
積層された複数の前記導波路基板を備える
請求項1に記載の導波路型分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路型分光器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な分光器は、回折格子やプリズムなどの空間光学系の光部品で構成されているものが多い。これに対して、アレイ導波路回折格子(AWG)を用いて分光を行う光信号モニタが開示されている(特許文献1)。AWGを用いて分光を行う構成は機器の小型化の際に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4099695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、AWGを用いた分光器において機能を高めようとした場合、小型化がし難い場合がある。たとえば、広い動作波長範囲と高い分解能とを両立しようとする場合、動作波長範囲と分解能とはトレードオフの関係にあるため、AWGが大型化するという問題がある。また、このような大型のAWGは製造が困難である場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高機能であって小型化に適する導波路型分光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、第1アレイ導波路回折格子と第2アレイ導波路回折格子とを含む複数のアレイ導波路回折格子と、入力された光を分割してまたは該光の経路を切り換えて、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の少なくとも一つに出力する光分岐部と、が集積された導波路基板と、前記複数のアレイ導波路回折格子の出力側スラブ導波路のそれぞれから出力された分光光を受光する光検出素子アレイと、を備え、前記複数のアレイ導波路回折格子の出力側スラブ導波路と前記光検出素子アレイとは、前記導波路基板の第1側面において対向している導波路型分光器である。
【0007】
前記第2アレイ導波路回折格子は、動作波長範囲、動作波長範囲の幅、および分解能の少なくとも一つが前記第1アレイ導波路回折格子とは異なってもよい。
【0008】
前記光検出素子アレイは、前記複数のアレイ導波路回折格子の分光方向に沿って配列された複数の光検出素子を有しており、前記光検出素子アレイは、前記第1アレイ導波路回折格子からの分光光を受光する第1受光領域と、前記第2アレイ導波路回折格子からの分光光を受光する第2受光領域とを有し、前記第2受光領域に存在する前記光検出素子は、前記第1受光領域に存在する前記光検出素子において受光感度が低い低感度受光領域で受光するまたは前記光検出素子によって受光されない波長の光を、受光感度が高い高感度受光領域で受光するように配列されていてもよい。
【0009】
前記低感度受光領域は前記光検出素子における受光面の周縁領域または互いに隣接する前記光検出素子の境界であり、前記高感度受光領域は前記光検出素子における受光面の前記周縁領域よりも中央に近い中央領域であってもよい。
【0010】
前記導波路基板は、前記第1側面において前記光検出素子アレイが取り付けられる取付領域と、前記第1側面と対向する第2側面とを有し、前記導波路基板の側面において、前記取付領域を前記第2側面へ投影した投影領域から外れた領域に設けられた光入力部をさらに備えてもよい。
【0011】
前記導波路型分光器は、前記導波路基板の側面と、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の入力側とに接続された第1導波路を備えてもよい。
【0012】
前記導波路型分光器は、前記光分岐部の出力側と、前記光検出素子アレイとに、前記複数のアレイ導波路回折格子を経由せずに接続された第2導波路を備えてもよい。
【0013】
前記導波路型分光器は、前記導波路基板の側面と、前記複数のアレイ導波路回折格子の入力側スラブ導波路の少なくとも一つの出力側とに接続された第3導波路を備えてもよい。
【0014】
前記導波路型分光器は、前記導波路基板の側面に設けられた光入力部と、前記光入力部と隣接して2つの入出力部が設けられた折り返し構造の第4導波路と、前記光入力部と前記第4導波路の前記2つの入出力部とのそれぞれに接続する3つの光ファイバを有する光ファイバアレイと、前記光ファイバアレイを保持する保持部と、を備えてもよい。
【0015】
前記第1アレイ導波路回折格子と前記第2アレイ導波路回折格子とは1つの入力側スラブ導波路を共有していてもよい。
【0016】
前記導波路基板は、前記第1側面と対向する第2側面を有し、前記導波路基板には、前記第2側面から見て、前記光検出素子アレイにおいて前記分光光を受光する受光領域を覆うように設けられた遮光溝が形成されていてもよい。
【0017】
前記導波路型分光器は、前記導波路基板と熱的に接触した温度調節素子を備えてもよい。
【0018】
前記導波路型分光器は、積層された複数の前記導波路基板を備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高機能であって小型化に適する導波路型分光器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態1に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図2図2は、図1に示す導波路型分光器によって実現される特性の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態2に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図4図4は、図3に示す導波路型分光器によって実現される特性の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態3に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図6図6は、図5に示す光検出素子アレイにおける分光光の受光の状態を示す図である。
図7図7は、実施形態4に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図8図8は、実施形態5に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図9図9は、実施形態6に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図10図10は、実施形態7に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図11図11は、実施形態8に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図12図12は、実施形態9に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図13図13は、実施形態10に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図14図14は、実施形態11に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
図15図15は、実施形態12に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中で適宜xyz座標軸を示し、これにより方向を説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100は、導波路基板110と光検出素子アレイ120とを備えている。
【0023】
導波路基板110は、xy平面に延びてz方向に厚みを有するような平面視で略四角形状の基板であり、半導体やガラスなどの光学材料で構成されている。導波路基板110は、yz平面に略平行な第1側面110aと、yz平面に略平行であり、x方向において第1側面110aと対向する第2側面110bを有する。
【0024】
導波路型分光器100は、さらに光入力部1と、光分割部2と、複数のAWG31~3nと、光ファイバ130と、レンズ140とを備えている。ここで、nは2以上の整数である。光入力部1と、光分割部2と、AWG31~3nとは、導波路基板110にn集積されている。
【0025】
光入力部1は、第2側面110bに設けられている。光入力部1は、外部から光ファイバ130を伝搬して出力され、レンズ140によって集光された光L1の入力を受け付ける。光L1は導波路型分光器100により分光する対象の光である。
【0026】
光分割部2は、光入力部1およびAWG31~3nと導波路にて接続されている。光分割部2は、光入力部1から入力された光L1をn分割して分割光L21~L2nを生成し、分割光L21~L2nのそれぞれをAWG31~3nのそれぞれに出力する。光分割部2は、パワースプリッタや、偏波分離機能を有する偏波ビームスプリッタ(PBS)や、波長分割機能を有するAWGなど、導波路型分光器100の機能に応じて様々な要素にて構成される。光分割部2は、光分岐部の一例である。
【0027】
AWG31~3nのそれぞれは、入力側スラブ導波路3aと、入力側スラブ導波路3aに接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路3bと、アレイ導波路3bに接続され、光を出力する出力側スラブ導波路3cとを備えている。AWG31は第1アレイ導波路回折格子の一例であり、AWG3nは第2アレイ導波路回折格子の一例である。
【0028】
AWG31~3nのそれぞれは、入力側スラブ導波路3aに光分割部2から分割光L21~L2nのそれぞれが入力され、これを分光する。AWG31~3nのそれぞれは分割光L21~L2nのそれぞれが分光された光である分光光L31~L3nを出力側スラブ導波路3cから出力する。
【0029】
光検出素子アレイ120は、第1側面110aの取付領域110a1に取り付けられている。AWG31~3nの出力側スラブ導波路3cと光検出素子アレイ120とは、第1側面110aにおいて対向している。光検出素子アレイ120は、AWG31~3nの分光方向であるY方向に沿って配列された複数の光検出素子を有しており、分光光L31~L3nを受光する。光検出素子アレイ120は、受光した分光光L31~L3nの強度に応じた電流信号を外部に出力する。この電流信号から、入力された光L1に関する分光データを得ることができる。
【0030】
光検出素子アレイ120は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やフォトダイオードアレイにて構成されている。CCDやCMOSの場合、光検出素子は一つの画素であり、フォトダイオードアレイの場合、光検出素子は一つのフォトダイオードである。
【0031】
また、第1側面110aの取付領域110a1を第2側面110b側へ投影した投影領域を投影領域110b1とすると、光入力部1は、第2側面110bにおいて110b1から外れた領域に設けられている。
【0032】
以上のように構成された導波路型分光器100は、1つの大型のAWGの代わりにAWG31~3nを備えているので、1つの大型のAWGよって実現されるような高機能が得られつつ、1つの大型のAWGによってその機能を実現するよりも導波路基板110の面積を小さくできるなどにより小型化に適する。また、AWG31~3nはそれよりも大型のAWGよりも製造が容易なので、導波路型分光器100は製造性にも優れている。
【0033】
図2は、導波路型分光器100によって実現される特性の一例を示す図である。図2では、導波路型分光器100の動作波長範囲WR100を示している。動作波長範囲WR100は、AWG31~3nのそれぞれの動作波長範囲WR1~WRnを足し合わせた範囲となる。図2に示す例では、導波路型分光器100では動作波長範囲WR1~WRnが互いに重ならないようにAWG31~3nが設計されている。また、図2に示す例は、AWG31~3nの動作波長範囲の幅と分解能とが全て等しい例であるが、動作範囲、動作波長範囲の幅、および分解能の少なくとも一つが異なっていてもよい。
【0034】
ここで、動作波長範囲WR100を1つの大型のAWGによって実現しようとすると、分解能が比較的低くなるが、導波路型分光器100では、動作波長範囲WR1~WRnのそれぞれにおける分解能を比較的高くできる。したがって、導波路型分光器100では、1つの大型のAWGによって構成された分光器に対して、より広い動作波長範囲とより高い分解能とを両立することができる。このように、導波路型分光器100は、高機能であって小型化に適する。
【0035】
なお、動作波長範囲WR1~WRnや動作波長範囲WR1~WRnの幅や分解能は、AWG31~3nのアレイ導波路3bにおけるチャネル導波路の長さや本数を変更することによって調整できる。
【0036】
図2に示す特性の場合は、導波路型分光器100における第2アレイ導波路回折格子の一例であるAWG3nは、第1アレイ導波路回折格子の一例であるAWG31とは動作波長範囲が異なる。
【0037】
また、導波路型分光器100では、光入力部1が、第2側面110bにおいて投影領域110b1から外れた領域に設けられている。これにより、光入力部1から入力された光L1の一部が迷光となった場合に、この迷光がAWG31~3nを通らずに光検出素子アレイ120における分光光L31~L3nを受光する受光素子に入力されることが抑制または防止される。その結果、導波路型分光器100では、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0038】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Aは、図1に示す導波路型分光器100の構成において、光分割部2とAWG31~3nとを、光分割部2Aと2つのAWG31、31Aとに置き換えた構成を有する。
【0039】
光分割部2Aは、光入力部1およびAWG31、31Aと導波路にて接続されている。光分割部2Aは、光入力部1から入力された光L1を2分割して分割光L21、L2Aを生成し、分割光L21、L2AのそれぞれをAWG31、3Aのそれぞれに出力する。光分割部2Aは、導波路型分光器100の機能に応じて様々な要素にて構成される。
【0040】
AWG31の構成および機能は、図1のAWG31と同様のものなので説明を省略する。AWG3Aは、入力側スラブ導波路3Aaと、アレイ導波路3Abと、出力側スラブ導波路3Acとを備えている。AWG3Aは第2アレイ導波路回折格子の一例である。
【0041】
AWG3Aは、入力側スラブ導波路3Aaに光分割部2Aから分割光L2Aが入力され、これを分光する。AWG3Aは分割光L2Aが分光された光である分光光L3Aを出力側スラブ導波路3Acから出力する。
【0042】
光検出素子アレイ120は、分光光L3、L3Aを受光する。光検出素子アレイ120は、受光した分光光L31、L3Aの強度に応じた電流信号を外部に出力する。この電流信号から、入力された光L1に関する分光データを得ることができる。
【0043】
ここで、第2アレイ導波路回折格子の一例であるAWG3Aは、動作波長範囲、動作波長範囲の幅、および分解能が、第1アレイ導波路回折格子の一例であるAWG31とは異なる。
【0044】
図4は、導波路型分光器100Aによって実現される特性の一例を示す図である。図4では、AWG3Aの動作波長範囲WRAの幅は、AWG31の動作波長範囲WR1の幅より狭く、動作波長範囲WR1に含まれている。また、AWG3Aの分解能はAWG31の分解能よりも高い。このような導波路型分光器100Aは、たとえば動作波長範囲WR1のような波長範囲では或る程度の分解能で比較的広い分光データを得ながら、動作波長範囲WRAのような動作波長範囲WR1の一部の範囲ではより高分解能で分光データを得られる。このような機能は、1つのAWGによって実現しようとすると、非常に大型かつ複雑な構成のAWGが必要となるが、導波路型分光器100Aによれば比較的小型かつ簡易な構成でこのような高機能を実現できる。
【0045】
このように、導波路型分光器100Aは、高機能であって小型化に適する。
【0046】
また、導波路型分光器100Aにおいても、光入力部1が、第2側面110bにおいて投影領域110b1から外れた領域に設けられている。これにより、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0047】
(実施形態3)
図5は、実施形態3に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Bは、図1に示す導波路型分光器100の構成において、光分割部2とAWG31~3nと光検出素子アレイ120とを、光分割部2BとAWG31、3Bと光検出素子アレイ120Bとに置き換えた構成を有する。
【0048】
光分割部2Bは、光入力部1およびAWG31、3Bと導波路にて接続されている。光分割部2Bは、光入力部1から入力された光L1を2分割して分割光L21、L2Bを生成し、分割光L21、L2BのそれぞれをAWG31、3Bのそれぞれに出力する。光分割部2Bは、導波路型分光器100Bの機能に応じて様々な要素にて構成される。
【0049】
AWG31の構成および機能は、図1のAWG31と同様のものなので説明を省略する。
【0050】
AWG3Bの構成も、AWG31と同様のものなので説明を省略する。AWG3Bは、入力側スラブ導波路に光分割部2Bから分割光L2Bが入力され、これを分光する。AWG3Bは分割光L2Bが分光された光である分光光L3Bを出力側スラブ導波路から出力する。AWG3Bは第2アレイ導波路回折格子の一例である。
【0051】
光検出素子アレイ120は、分光光L3、L3Bを受光する。光検出素子アレイ120は、受光した分光光L31、L3Bの強度に応じた電流信号を外部に出力する。この電流信号から、入力された光L1に関する分光データを得ることができる。
【0052】
図6は、図5に示す光検出素子アレイ120Bにおける分光光L31、L3Bの受光の状態を示す図である。分光光L31は、波長λ1、λ2、・・・、λm-1、λmの分光成分を含むものとする。同様に、分光光L3Bも、波長λ1、λ2、・・・、λm-1、λmの分光成分を含むものとする。ここで、mは4以上の偶数である。また、図中、AWG31、3Bからの、波長λ1、λ2、λm-1、λmの分光成分の光路を、それぞれ実線、破線、点線、一点鎖線で示している。
【0053】
光検出素子アレイ120Bは、AWG31、3Bの分光方向であるY方向に沿って配列された複数の光検出素子121Bを有している。また、光検出素子アレイ120Bは、第1アレイ導波路回折格子の一例であるAWG31からの分光光L31を受光する第1受光領域120B1と、第2アレイ導波路回折格子の一例であるAWG3Bからの分光光L3Bを受光する第2受光領域120B2とを有している。
【0054】
そして、光検出素子アレイ120Bにおいて、第2受光領域120B2に存在する光検出素子は、第1受光領域120B1に存在する光検出素子において受光感度が低い低受光領域で受光するまたは光検出素子によって受光されない波長の光を、受光感度が高い高受光領域で受光するように配列されている。
【0055】
以下、具体的に説明する。たとえば、第1受光領域120B1に存在する光検出素子121B1aは、分光光L31のうち波長λ1の分光成分を受光面の中央付近で受光する。光検出素子121B1aは、受光面の周縁領域よりも中央に近い中央領域では受光感度が高いので、波長λ1の分光成分は光検出素子121B1aによって高感度に受光される。中央領域は高感度受光領域の一例である。
【0056】
しかしながら、図6に示すように、光検出素子121B1aは、分光光L31のうち波長λ2の分光成分を受光面の周縁領域で受光する。周縁領域は受光感度が低い低感度受光領域の一例である。または、波長λ2の分光成分は光検出素子121B1aとこれに隣接する光検出素子との境界に結像する場合もあり、この場合には光検出素子121B1aおよびこれに隣接する光検出素子は、波長λ2の分光成分を受光しない。
【0057】
一方、第2受光領域120B2に存在する光検出素子121B2aは、分光光L3Bのうち波長λ2の分光成分を受光面の中央付近で受光する。このように、光検出素子121B2aは、光検出素子121B1aにおいて低感度受光領域で受光するまたは光検出素子121B1aによって受光されない波長λ2の分光成分を、高感度受光領域で受光する。
【0058】
また、図6からわかるように、第1受光領域120B1に存在する光検出素子121B1aは、第2受光領域120B2に存在する光検出素子121B2aにおいて低感度受光領域で受光するまたは光検出素子121B2aによって受光されない波長λ1の分光成分を、高感度受光領域で受光する、ということもできる。
【0059】
同様に、第1受光領域120B1に存在する光検出素子121B1bは、分光光L31のうち波長λm-1の分光成分を受光面の中央付近で受光する。しかしながら光検出素子121B1bは、分光光L31のうち波長λmの分光成分を受光面の周縁領域で受光するまたは受光しない。
【0060】
これに対して、第2受光領域120B2に存在する光検出素子121B2bは、分光光L3Bのうち波長λmの分光成分を受光面の中央付近で受光する。このように、光検出素子121B2bは、光検出素子121B1bにおいて低感度受光領域で受光するまたは光検出素子121B1aによって受光されない波長λmの分光成分を、高感度受光領域で受光する。
【0061】
また、図6からわかるように、第1受光領域120B1に存在する光検出素子121B1bは、第2受光領域120B2に存在する光検出素子121B2bにおいて低感度受光領域で受光するまたは受光されない波長λm-1の分光成分を、高感度受光領域で受光する。
【0062】
このような受光状態は、たとえば、第1受光領域120B1に存在する光検出素子を、AWG31に対して、λ1、λ3、・・・、λm-1の分光成分が受光面の中心に結像するように配置し、第1受光領域120B1に存在する光検出素子を、AWG3Bに対して、波長λ2、λ4、・・・、λmの分光成分が受光面の中心に結像するように配置することで実現できる。たとえば、検出素子の受光面のY方向における受光幅が、λ1が結像する位置とλ2が結像する位置との距離の2倍である場合、AWG31と第1受光領域120B1に存在する光検出素子とのY方向における相対位置と、AWG3Bと第2受光領域120B2に存在する光検出素子とのY方向における相対位置とは、Y方向に受光幅の1/2だけずれて配置される。
【0063】
以上ように構成された導波路型分光器100Bは、導波路型分光器100と同様に高機能であって小型化に適する。
【0064】
さらに、導波路型分光器100Bでは、波長λ1、λ2、λm-1、λmの分光成分のいずれもが、光検出素子アレイ120Bのいずれかの光検出素子によって高感度に受光されるので、全動作波長範囲内で均一な分光感度・分解能が得られる。
【0065】
また、導波路型分光器100Bにおいても、光入力部1が、第2側面110bにおいて投影領域110b1から外れた領域に設けられている。これにより、光検出素子アレイ120Bが出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0066】
(実施形態4)
図7は、実施形態4に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Cは、図1に示す導波路型分光器100の構成において、光入力部1を光入力部1Cに置き換え、第1導波路41~4nを追加した構成を有する。
【0067】
光入力部1Cは、第1側面110aにおいて取付領域110a1から外れた領域に設けられている。光入力部1Cは、光分割部2と導波路にて接続されている。また、光入力部1Cは、光ファイバ130およびレンズ140と光学的に接続しており、光L1が入力される。
【0068】
第1導波路41~4nは、それぞれ、AWG31~3nのそれぞれの入力側スラブ導波路3aの入力側と、導波路基板110の第2側面110bとに接続されている。
【0069】
このように構成された導波路型分光器100Cは、導波路型分光器100と同様に、高機能であって小型化に適する。
【0070】
さらに、導波路型分光器100Cでは、第1導波路41~4nを、導波路型分光器100Cの製造時の導波路基板110と光検出素子アレイ120との調心に用いることができる。具体的には、第1導波路41~4nのそれぞれの第2側面110bから試験光を入力すると、試験光はそれぞれの入力側スラブ導波路3aに入力されAWG31~3nのそれぞれから出力される。出力する試験光を光検出素子アレイ120でモニタしながら導波路基板110と光検出素子アレイ120との位置合わせを行うことで、調心を行うことができる。さらに、第1導波路41~4nのいずれか一つ、たとえば第1導波路41から試験光を入力すれば、試験光はAWG31のみから出力されるので、AWG31と光検出素子アレイ120との個別の調心を高精度に実行することができる。
【0071】
なお、導波路基板110と光検出素子アレイ120との調心は、光入力部1から試験光を入力することでも実行可能であるが、この場合、試験光は光分割部2を通過してからAWG31~3nのそれぞれに達するので、その強度が弱められてしまう場合がある。さらに、AWG31~3nの全てから試験光が出力されてしまうと、いずれか一つのAWGと光検出素子アレイ120との個別の調心を実行することが難しい場合がある。
【0072】
また、導波路型分光器100Cにおいては、光入力部1が、第1側面110aにおいて取付領域110a1から外れた領域に設けられている。このような領域も、導波路基板110の側面において投影領域110b1から外れた領域の一例である。これにより、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0073】
(実施形態5)
図8は、実施形態5に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Dは、図7に示す導波路型分光器100Cの構成において、第1導波路41~4nを、第2導波路51、52に置き換えた構成を有する。
【0074】
第2導波路51、52は、光分割部2の出力側と、光検出素子アレイ120とに、AWG31~3nを経由せずに接続されている。具体的には、第2導波路51、52は光検出素子アレイ120が備える光検出素子のうち、AWG31~3nとは光学的に接続していない光検出素子と光学的に接続されている。
【0075】
このように構成された導波路型分光器100Dは、導波路型分光器100と同様に、高機能であって小型化に適すとともに、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0076】
さらに、導波路型分光器100Dでは、第2導波路51、52を、導波路型分光器100Dの製造時の導波路基板110と光ファイバ130およびレンズ140との調心に用いることができる。具体的には、光ファイバ130から試験光を入力すると、試験光は光分割部2を経由してAWG31~3nを経由せずに第2導波路51、52を伝搬し、光検出素子アレイ120の光検出素子に入力される。そこで、試験光を光検出素子アレイ120でモニタしながら導波路基板110と光ファイバ130およびレンズ140との位置合わせを行うことで、調心を行うことができる。また、第2導波路51、52は、導波路基板110と光検出素子アレイ120とのおおよその位置合わせに使用してもよい。その位置合わせの方法は導波路基板110と光ファイバ130およびレンズ140との調心方法と同様である。
【0077】
(実施形態6)
図9は、実施形態6に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Eは、図7に示す導波路型分光器100Cの構成において、第1導波路41~4nを、第3導波路61に置き換えた構成を有する。
【0078】
第3導波路61は、導波路基板110の側面の一例である第2側面110bと、AWG31~3nの入力側スラブ導波路3aの少なくとも一つ、本実施形態ではAWG31の入力側スラブ導波路3aの出力側とに接続されている。
【0079】
このように構成された導波路型分光器100Eは、導波路型分光器100と同様に、高機能であって小型化に適すとともに、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0080】
さらに、導波路型分光器100Eでは、第3導波路61を、導波路型分光器100Eの製造時の導波路基板110と光ファイバ130およびレンズ140との調心に用いることができる。具体的には、光ファイバ130から試験光を入力すると、試験光は光分割部2を経由してAWG31の入力側スラブ導波路3aに入力し、さらに入力側スラブ導波路3aの出力側から第3導波路61を経由して第2側面110bから出力される。そこで、出力された試験光をパワーメータなどでモニタしながら導波路基板110と光ファイバ130およびレンズ140との位置合わせを行うことで、調心を行うことができる。
【0081】
なお、AWG31~3nでは、入力側スラブ導波路3aを通過した後にアレイ導波路3bに結合されない余剰の光成分が必ず発生する。そこで、第3導波路61の入力側スラブ導波路3aとの接続点を、アレイ導波路3bから外側に外れ、余剰光成分が出力される点とすれば、第3導波路61には余剰光が出力される。これにより、余剰光成分を調心に有効活用できるとともに、調心のために分割部に追加の導波路を形成しなくてもよい。
【0082】
(実施形態7)
図10は、実施形態7に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Fは、導波路型分光器100Fは、図7に示す導波路型分光器100Cの構成において、光入力部1Cと第1導波路41~4nと光ファイバ130とレンズ140とを、光入力部1と第4導波路71と光ファイバブロック150とに置き換えた構成を有する。
【0083】
光入力部1は、図1に示す光入力部1と同じであって、第2側面110bに設けられている。
【0084】
第4導波路71は、第2側面110bに光入力部1と隣接して入出力部71a、71bが設けられた、折り返し構造の導波路である。
【0085】
光ファイバブロック150は、3本の光ファイバ151、152、153を有する光ファイバアレイ154と、光ファイバアレイ154を保持するブロック状の保持部155とを備えている。光ファイバブロック150は第2側面110bに取り付けられている。
【0086】
保持部155は、光ファイバ151が光入力部1と接続し、光ファイバ152が第4導波路71と入出力部71aで接続し、光ファイバ153が第4導波路71と入出力部71bで接続するように、光ファイバアレイ154を保持する。
【0087】
光ファイバ151は、外部から光L1を伝搬し、光入力部1に光L1を出力する。
【0088】
光ファイバ152、153は、以下のように、導波路型分光器100Fの製造時の光ファイバ151と光入力部1との調心に用いられる。
【0089】
すなわち、保持部155によって保持される光ファイバ151、152、153の相互の位置関係と、光入力部1、入出力部71a、71bの相互の位置関係とが一致するように、導波路基板110と光ファイバブロック150とは作製されている。そこで、たとえば光ファイバ152から試験光を入力し、光ファイバ153から出力される試験光をモニタしながら、導波路基板110と光ファイバブロック150との調心を行う。この場合、光ファイバ153から出力される試験光の強度が最大になるときに光ファイバ152と入出力部71aとが調心されるとともに光ファイバ153と入出力部71bとが調心されることとなるが、このとき同時に光ファイバ151と光入力部1とも調心されることとなる。
【0090】
したがって、導波路型分光器100Fでは、導波路基板110と光検出素子アレイ120との調心の有無にかかわらず光ファイバ151と光入力部1とを調心することができる。
【0091】
このように構成された導波路型分光器100Fにおいても、導波路型分光器100と同様に、高機能であって小型化に適するとともに、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0092】
(実施形態8)
図11は、実施形態8に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Gでは、導波路基板110Gに、遮光溝110c1、110c2~110cn-1、110cnが設けられている点で図7に示す導波路型分光器100Cとは異なる。
【0093】
遮光溝110c1、110c2~110cn-1、110cnは、第2側面110bから見て、光検出素子アレイ120においてAWG31、32~3n-1、3nからの分光光を受光する受光領域121、122~12n-1、12nを覆うように設けられている。遮光溝110c1、110c2~110cn-1、110cnは、導波路基板110Gの表面からz方向における負の向きに、AWG31、32~3n-1、3nよりも深い位置まで達するように設けられている。
【0094】
このように構成された導波路型分光器100Gにおいても、導波路型分光器100と同様に、高機能であって小型化に適するとともに、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。
【0095】
また、導波路型分光器100Gでは、遮光溝110c1、110c2~110cn-1によって、第2側面110b側から入力した迷光が遮光されるので、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることがさらに抑制または防止される。
【0096】
(実施形態9)
図12は、実施形態9に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Hは、図1に示す導波路型分光器100の構成において、AWG31~3nをAWG3H1、3H2~3Hk-1、3Hkに置き換えた構成を有する。ここで、kは4以上の偶数とする。
【0097】
AWG3H1、3H2は、1つの入力側スラブ導波路3aを共有している。また、同様に、AWG3Hk-1、3Hkも、1つの入力側スラブ導波路3aを共有している。このように、導波路型分光器100Hでは、AWG3Hj、3Hj+1が、1つの入力側スラブ導波路3aを共有している。ここで、jは1以上(k-1)以下の整数である。AWG3j、3j+1は、1つの入力側スラブ導波路を共有する第1アレイ導波路回折格子および第2アレイ導波路回折格子の一例である。
【0098】
このように構成された導波路型分光器100Hにおいても、導波路型分光器100と同様に、高機能であって小型化に適するとともに、光検出素子アレイ120が出力する電流信号に迷光によるノイズ成分が含まれることが抑制または防止される。また、導波路型分光器100Hでは、2つのAWGが1つの入力側スラブ導波路を共有しているので、導波路基板110の面積を小さくできる。
【0099】
(実施形態10)
図13は、実施形態10に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Iは、図1に示す導波路型分光器100と、導波路型分光器100の導波路基板110を搭載するペルチェ素子160と、導波路型分光器100に実装された温度検出素子170を備えている。温度検出素子170はたとえばサーミスタである。ペルチェ素子160は導波路基板と熱的に接触した温度調節素子の一例である。
【0100】
温度検出素子170は、導波路基板110の温度に応じた電気信号を外部の制御器Cに出力する。制御器Cは、公知のペルチェ素子制御器であって、温度検出素子170が検出した温度が所定の設定温度範囲に収まるようにペルチェ素子160に駆動電流を供給する。ペルチェ素子160は、制御器Cから駆動電流を供給され、導波路基板110を温度調節する。
【0101】
ここで、導波路基板110の分光特性は、導波路基板110の温度に応じて変化する。導波路型分光器100Iでは、導波路基板110の温度を調節できる。これにより、導波路型分光器100Iでは、たとえば導波路基板110の作製誤差による分光特性の所望特性からのずれを補正したり、導波路基板110の分光特性を可変にしたり、導波路基板110の分光特性を周囲温度によらず安定させたりすることができる。
【0102】
(実施形態11)
図14は、実施形態11に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Jは、z方向において2層に積層された導波路基板110J1、110J2と、光検出素子アレイ120Jと、導波路基板110J1、110J2のそれぞれに対応したレンズ140と、光分割部180とを備えている。導波路基板110J1、110J2は、積層された複数の導波路基板の一例である。
【0103】
導波路基板110J1、110J2は、上記実施形態1~9に係るいずれかの導波路基板である。導波路基板110J1、110J2は、分光特性が互いに同じものでも異なるものでもよい。
【0104】
光分割部180は、外部から入力された光L1を2分割して分割光L11、L12を生成し、分割光L11、L12のそれぞれを導波路基板110J1、110J2のそれぞれに出力する。光分割部180は、パワースプリッタや、PBSや、AWGなど、導波路型分光器100Jの機能に応じて様々な要素にて構成される。
【0105】
光検出素子アレイ120Jは、導波路基板110J1、110J2のそれぞれの第1側面110J1a、110J2aの取付領域に取り付けられている。導波路基板110J1、110J2のそれぞれのAWGの出力側スラブ導波路と光検出素子アレイ120Jとは、第1側面110J1a、110J2aにおいて対向している。光検出素子アレイ120Jは、z方向に並んだ1次元アレイ121J、122Jを有している。1次元アレイ121J、122Jは、導波路基板110J1、110J2のそれぞれの分光方向であるY方向に沿って配列された複数の光検出素子が成す1次元アレイである。1次元アレイ121Jは導波路基板110J1と対向する位置に設けられており、1次元アレイ122Jは導波路基板110J2と対向する位置に設けられている。光検出素子アレイ120Jは、導波路基板110J1、110J2のそれぞれからの分光光を受光し、これらの強度に応じた電流信号を外部に出力する。この電流信号から、入力された光L1に関する分光データを得ることができる。
【0106】
この導波路型分光器100Jによれば、光L1を2つの導波路基板110J1、110J2によって分光し、これらの分光データを同時に得ることができる。なお、導波路基板110J1、110J2は実施形態に係るいずれかの導波路基板なので、高機能であって小型である。したがって、導波路型分光器100Jはより高機能で小型である。
【0107】
(実施形態12)
図15は、実施形態12に係る導波路型分光器の模式的な構成図である。導波路型分光器100Kは、z方向において2層に積層された導波路基板110K1、110K2と、光検出素子アレイ120Kと、導波路基板110K1、110K2のそれぞれに対応したレンズ140と、光スイッチ190とを備えている。導波路基板110K1、110K2は、積層された複数の導波路基板の一例である。
【0108】
導波路基板110K1、110K2は、上記実施形態1~9に係るいずれかの導波路基板である。導波路基板110K1、110K2は、分光特性が互いに同じものでも異なるものでもよい。
【0109】
光スイッチ190は、外部からの制御によって、外部から入力された光L1の経路を切り換えて、導波路基板110K1、110K2のいずれかに出力する。図1では、光L1を導波路基板110K1に出力する場合が示されている。光スイッチ190は、たとえばマッハツェンダ干渉型の光スイッチである。
【0110】
光検出素子アレイ120Kは、導波路基板110K1、110K2のそれぞれの第1側面110K1a、110K2aの取付領域に取り付けられている。導波路基板110K1、110K2のそれぞれのAWGの出力側スラブ導波路と光検出素子アレイ120Kとは、第1側面110K1a、110K2aにおいて対向している。光検出素子アレイ120Kは、1次元アレイ121Kを有している。1次元アレイ121Kは、導波路基板110J1、110J2のそれぞれの分光方向であるY方向に沿って配列された複数の光検出素子が成す1次元アレイである。1次元アレイ121Kは導波路基板110K1および導波路基板110K2と対向する位置に設けられている。光検出素子アレイ120Kは、導波路基板110K1、110K2のいずれかからの分光光を受光し、これらの強度に応じた電流信号を外部に出力する。この電流信号から、入力された光L1に関する分光データを得ることができる。
【0111】
この導波路型分光器100Jによれば、光スイッチ190の切り換え動作によって、光L1を2つの導波路基板110K1、110K2によって分光し、これらの分光データを得ることができる。なお、導波路基板110K1、110K2は実施形態に係るいずれかの導波路基板なので、高機能であって小型である。したがって、導波路型分光器100Kはより高機能で小型である。さらに、導波路型分光器100Jはz方向に薄型にできる。
【0112】
なお、上記実施形態において、複数のAWGの少なくとも一つ(たとえば第1アレイ導波路回折格子)が、入力される光がTEモードの場合に最適に動作するように設計されていてもよいし、複数のAWGの少なくとも別の一つ(たとえば第2アレイ導波路回折格子)が、入力される光がTMモードの場合に最適に動作するように設計されていてもよい。たとえば、第1アレイ導波路回折格子がTEモードに対して中心波長が設計され、第2アレイ導波路回折格子がTMモードに対して中心波長が設計されていてもよい。このような導波路型分光器であれば、光L1としてTEモードの光が入力された場合もTMモードの光が入力された場合も好適な分光特性が得られる。また、光分割部をPBSで構成すれば、任意の偏波状態の光L1が入力された場合でも、これをTEモードの光とTMモードの光とに分割し、それぞれの光を最適なAWGで分光できる。
【0113】
また、上記実施形態において、半導体基板に集積される光分割部を、入力された光の経路を切り換えて、複数のAWGの入力側スラブ導波路のいずれかに出力する光分岐部に置き換えてもよい。このような光分岐部は、たとえば光スイッチであり、たとえばマッハツェンダ型の光スイッチである。
【0114】
また、上記実施形態では、光入力部が第1側面または第2側面に設けられているが、導波路基板の他の側面に設けられてもよい。
【0115】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、上記の第1~第4導波路のいずれか2つ以上が、同一の導波路基板に設けられていてもよい。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
1、1C :光入力部
2、2A、2B、180:光分割部
3a、3Aa :入力側スラブ導波路
3b、3Ab :アレイ導波路
3c、3Ac :出力側スラブ導波路
41~4n :第1導波路
51、52 :第2導波路
61 :第3導波路
71 :第4導波路
71a、71b:入出力部
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、100H、100I、100J、100K:導波路型分光器
110、110G、110J1、110J2、110K1、110K2 導波路基板
110a、110J1a、110J2a、110K1a、110K2a:第1側面
110a1 :取付領域
110b :第2側面
110b1 :投影領域
110c1、110c2:遮光溝
120、120B、120J、120K:光検出素子アレイ
120B1 :第1受光領域
120B2 :第2受光領域
121~12n :受光領域
121B、121B1a、121B1b、121B2a、121B2b:光検出素子
121J、122J、121K :1次元アレイ
130、151、152、153:光ファイバ
140 :レンズ
150 :光ファイバブロック
154 :光ファイバアレイ
155 :保持部
160 :ペルチェ素子
170 :温度検出素子
190 :光スイッチ
31~3n、3A、3B :AWG
C :制御器
L1 :光
L21~L2n、L2A、L2B:分割光
L31~L3n、L3A、L3B:分光光
WR1、WR100、WRA:動作波長範囲
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