(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125855
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
C03B 18/04 20060101AFI20240911BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240911BHJP
G01N 21/88 20060101ALN20240911BHJP
G01N 21/896 20060101ALN20240911BHJP
【FI】
C03B18/04
G06T7/00 610B
G01N21/88 J
G01N21/896
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033963
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 壮郎
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 尚起
(72)【発明者】
【氏名】中野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】大村 義豊
(72)【発明者】
【氏名】岡田 啓
(72)【発明者】
【氏名】塚本 徹
(72)【発明者】
【氏名】北山 大介
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA42
2G051AB07
2G051CA04
2G051CA07
2G051DA07
2G051EB05
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA69
5L096HA09
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる情報処理装置を提供する。
【解決手段】所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する判定部を備える、情報処理装置。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する判定部を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向及び前記流れ方向とは直交する方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記画像データと補助データを前記学習済みモデルに入力し、
前記補助データは、前記欠陥に関する前記流れ方向に対する角度のデータ、前記欠陥に関する長短径のデータ、或いは、前記欠陥に関する検出時の座標のデータのうちの1以上を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、時間的に変化する複数の前記画像データについて前記判定結果を取得し、取得した複数の前記判定結果に基づいて前記欠陥の発生位置を推定する、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像データは、前記ガラス板の一部が撮像された画像のデータであり、前記欠陥が写った欠陥部を含む、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記画像データは、シュリーレン法によって取得された画像のデータである、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
元画像データに対して所定の強調処理を行う画像強調部を備え、
前記判定部は、前記画像強調部によって前記強調処理が行われた結果の画像データを前記学習済みモデルに入力する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記ガラス板の製造方法はフロート法であり、
前記欠陥は、前記ガラス板の裏面に存在する凹部欠陥である、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記流れ方向は、複数の領域に区分されており、
前記判定部は、それぞれの前記領域毎に異なる前記学習済みモデルを用いる、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
教師データを用いて前記学習済みモデルを生成する学習制御部を備える、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する、
情報処理方法。
【請求項12】
コンピューターに、
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力する機能と、
前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項13】
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを入力し、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の推定結果データを出力する、
機械学習の学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
フロート法などによりガラス板を製造することが行われている。フロート法では、浴槽内の溶融スズ上に連続的に供給される溶融ガラスを溶融スズ上で流動させて帯板状に形成する。
このような製造法では、溶融スズに溶存したガス成分が気泡を形成する。当該気泡に起因して、溶融ガラスの面(フロート法では裏面)に凹状の欠陥(FOBB:Fine Open Bottom Bubble)が形成される。
【0003】
特許文献1には、光学材料における色及び形状が不定型となる不良を検出する検査装置が記載されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、ガラス板の面に発生した欠陥の位置が不明な場合があった。このため、当該欠陥の原因箇所を特定することが難しい場合があった。
【0006】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び学習済みモデルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する判定部を備える、情報処理装置である。
【0008】
本開示の一態様は、情報処理装置が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する、情報処理方法である。
【0009】
本開示の一態様は、コンピューターに、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力する機能と、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【0010】
本開示の一態様は、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを入力し、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の推定結果データを出力する、機械学習の学習済みモデルである。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び学習済みモデルによれば、ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るガラス製造装置の概略的な構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るフロートバスの構成例を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係るフロートバスの流れ方向における欠陥の発生位置と性質との関係を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態に係るフロートバスの幅方向における欠陥の発生位置と性質との関係を模式的に示す図である。
【
図5】実施形態に係る撮像領域の画像の時間的変化の一例を模式的に示す図である。
【
図6】実施形態に係る欠陥部が含まれる画像の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る階調値の強調処理の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る強調処理後の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態について説明する。
【0014】
[ガラス製造装置]
図1は、実施形態に係るガラス製造装置1の概略的な構成例を示す図である。
図1には、説明の便宜上、三次元直交座標系であるXYZ直交座標系を示してある。
ガラス製造装置1は、熔解窯11と、フロートバス12と、徐冷炉13と、洗浄検査・切断部14と、を備える。
【0015】
熔解窯11では、熔解工程の処理が行われる。
熔解工程では、複数種類の原料を混ぜて調製したガラス原料を熔解して、溶融ガラスを得る。ガラス原料は、熔解窯11の内部に投入された後、バーナから噴射される火炎の輻射熱や電気熔融などの加熱手段によって熔解され、溶融ガラスとなる。
【0016】
フロートバス12では、成形工程の処理が行われる。
成形工程では、熔解工程で得られる溶融ガラスを浴槽内の溶融スズ上に連続的に供給し、溶融スズ上で溶融ガラスを流動させて成形し、板状のガラスであるガラス板(所謂、ガラスリボン)を得る。ガラス板は、所定方向に流動しながら冷却され、溶融スズから引き上げられる。
【0017】
徐冷炉13では、徐冷工程の処理が行われる。
徐冷工程では、成形工程で得られるガラス板を徐冷炉13の内部で徐冷する。ガラス板は、徐冷炉13の内部において、徐冷炉13の入口から出口に向けて、ロール上を水平に搬送されながら徐冷される。
【0018】
洗浄検査・切断部14では、洗浄検査工程の処理、及び、切断工程の処理が行われる。
洗浄検査工程では、徐冷工程で徐冷されたガラス板に対して洗浄検査を行う。
切断工程では、徐冷工程で徐冷されたガラス板を切断機で所定寸法に切断する。切断工程において、ガラス板の幅方向両縁部(所謂、耳部)が切除される。ガラス板の幅方向両縁部は、表面張力等の影響で肉厚になるため、切除される。
切断工程の後、ガラス板が出荷される。
【0019】
[フロートバス]
図2は、実施形態に係るフロートバス12の構成例を示す断面図である。
図2には、
図1の場合と同様なXYZ直交座標系を示してある。
図2に示される断面は、X軸の負側から正側を見た視点でのフロートバス12の側方断面である。
本実施形態では、説明の便宜上、フロートバス12における溶融ガラスG(ガラス板)の上面(Z軸の正側の面)を表面とし、下面(Z軸の負側の面)を裏面として説明するが、これらの面は他の呼称で呼ばれてもよい。
【0020】
フロートバス12は、浴槽22内の溶融スズM上に連続的に供給された溶融ガラスGを、溶融スズM上で流動させて成形する。溶融ガラスGは、フロートバス12の入口21付近で溶融スズM上に供給された後、所定方向に流動しながら冷却され、フロートバス12の出口23付近で溶融スズMから引き上げられる。
フロートバス12は、溶融スズMを収容する浴槽22、浴槽22の外周上縁に沿って設置される側壁24、及び側壁24に連結されて浴槽22の上方を覆う天井26などで構成される。天井26には、浴槽22と天井26との間に形成される空間28に還元性ガスを供給するガス供給路30が設けられている。ガス供給路30には、加熱源としてのヒータ32が挿通されている。
【0021】
ガス供給路30は、溶融スズMの酸化を防止するため、フロートバス12内の空間28に還元性ガスを供給する。還元性ガスは、例えば、水素ガスを1~15体積%、窒素ガスを85~99体積%含んでいる。フロートバス12内の空間28は、側壁24を構成する煉瓦同士の隙間などから大気が混入することを防止するため、大気圧よりも高い気圧に設定されている。
ヒータ32は、フロートバス12内の温度分布を調節するため、例えば、溶融ガラスGの流動方向(Y方向)及び幅方向(X方向)に間隔をおいて複数設けられている。ヒータ32の出力は、フロートバス12の入口21から出口23に向かうほど溶融ガラスGの温度が低くなるように制御される。ヒータ32の出力は、溶融ガラスGの厚さが幅方向(X方向)に均一になるように制御される。
【0022】
浴槽22は、上方に開放された箱状の金属ケース34、並びに金属ケース34内に設置されるボトム煉瓦36及びサイド煉瓦38で構成される。金属ケース34は、浴槽22内に側方或いは下方から大気が混入することを防止する。複数のボトム煉瓦36は、熱膨張によって互いに接触しない程度の僅かな間隔をおいて二次元的に配列されている。複数のボトム煉瓦36は、環状に並ぶ複数のサイド煉瓦38で囲まれている。
【0023】
浴槽22内の溶融スズMは、ヒータ32によって上方から加熱されることで、下方に向かうほど低温になる。このため、溶融スズMに溶存したガス成分(例えば、酸素、水素、水など)は、比較的低温のボトム煉瓦36の上面36aで過飽和析出し、気泡Bを形成する。また、ボトム煉瓦36中を透過したガス(例えば水素など)は、ボトム煉瓦36の上面36aで気泡Bを形成する。
これらの気泡Bは、ある程度の大きさに成長すると、ボトム煉瓦36の上面36aから離れ、溶融スズMと溶融ガラスGの界面まで浮上し、溶融ガラスGの下面に凹状の欠陥を形成する。この結果、製品であるガラス板の溶融スズMとの接触面(裏面)に凹状の欠陥(FOBB)が形成される。
【0024】
上述のようなガラス板の欠陥は、ガラス板の裏面に開口した半球状の凹型の欠点として現れる。すなわち、当該欠陥は、フロートバス12で発生した気泡がガラス板(
図2では、溶融ガラスG)の裏面に押し付けられることで発生する。
このような欠陥は、防止されるべきであり、例えば、1個の欠陥があるだけでガラス板が廃棄される場合もある。特に、ディスプレイ用のガラス板では、このような欠陥はデバイス製作時に配線の断線を引き起こす可能性があるため防止されるべきである。
【0025】
[欠陥の発生位置と性質]
<流れ方向の位置>
図3は、実施形態に係るフロートバス12の流れ方向における欠陥の発生位置と性質との関係を模式的に示す図である。
図3には、説明の便宜上、フロートバス12の流れ方向に相当するY軸を示してある。
フロートバス12の流れの上流側(Y軸の負側)では、下流側(Y軸の正側)と比べて、溶融ガラスGの温度が高く、溶融ガラスGの粘度が低い。
逆に言えば、フロートバス12の流れの下流側では、上流側と比べて、溶融ガラスGの温度が低く、溶融ガラスGの粘度が高い。
【0026】
図3には、フロートバス12の流れの上流側で発生した欠陥について、上方(Z軸の正側)から当該欠陥を俯瞰した場合の輪郭A1、及び、側方(X軸に平行な方向)から当該欠陥の断面を見た場合の深さD1の例を模式的に示してある。
また、
図3には、フロートバス12の流れの下流側で発生した欠陥について、上方(Z軸の正側)から当該欠陥を俯瞰した場合の輪郭A2、及び、側方(X軸に平行な方向)から当該欠陥の断面を見た場合の深さD2の例を模式的に示してある。
ここで、
図3の例では、幅方向(X軸に平行な方向)における欠陥の傾きについては考慮していない。
【0027】
フロートバス12の流れの上流側で発生した欠陥は、下流側で発生した欠陥と比べて、楕円状(円状も含む。)の輪郭A1の長径と短径との比(本実施形態では、アスペクト比とも呼ぶ。)が大きくなり、深さD1が大きくなる、といった性質を持つ。
逆に言えば、フロートバス12の流れの下流側で発生した欠陥は、上流側で発生した欠陥と比べて、楕円状(円状も含む。)の輪郭A2のアスペクト比が小さくなり、深さD2が小さくなる、といった性質を持つ。
ここで、本実施形態では、楕円状(円状も含む。)の輪郭を想定してアスペクト比を定義したが、他の形状の輪郭についてもアスペクト比が任意に定義されてもよい。一例として、任意の形状について、当該形状に外接する四角形を想定して、当該四角形の長径と短径との比をアスペクト比としてもよい。
【0028】
このように、欠陥の深さは、温度及び粘性と相関し、流れ方向における当該欠陥の発生位置(Y軸に平行な方向における位置)と相関する。
本実施形態では、この相関に着目して欠陥の発生位置を推定する。この相関に着目した点は、新規かつ否容易であると考えられる。
すなわち、本実施形態では、歪み(欠陥)と発生位置との関係性に着目している。具体的には、本出願人は、ガラス板の製造工程の成形工程(ガラス板が変形している工程であり、フロート法ではバス工程)で欠陥が生じた場合、流れ方向の位置によって、欠陥を三次元測定法(例えば、シュリーレン法)で撮像した画像が異なることを見出した。このため、本出願人は、三次元測定法で撮像した画像を考慮することで、欠陥が成形工程のどこで発生したのかを明らかにでき、オペレーションの向上につながると考えた。
このような相関性は、ガラス板の温度及び粘性が変化することに起因する。そして、ガラス板の流れ方向に沿って当該ガラス板の温度が変化することから、欠陥が発生した際の当該ガラス板の温度の違いによって、三次元測定法で撮像した画像にも違いが発生する。
【0029】
<流れ方向の区分>
図4には、流れ方向における3個の領域として、上流P1、中流P2、下流P3の領域を示してある。
このような流れ方向の区分は、欠陥の発生位置の推定に利用されてもよく、或いは、利用されなくてもよい。
なお、
図4の例では、流れ方向を3個の領域に区分した場合を示したが、区分の数及びそれぞれの領域の大きさは任意であってもよい。
【0030】
<幅方向の位置>
図4は、実施形態に係るフロートバス12の幅方向における欠陥の発生位置と性質との関係を模式的に示す図である。
図4には、説明の便宜上、XY座標を示してある。
図4には、フロートバス12を上方(Z軸の正側)から俯瞰した場合の溶融ガラスGの様子を模式的に示してある。具体的には、
図4には、フロートバス12における溶融ガラスGの幅の領域を表すガラス幅領域Eを示してある。流れ方向におけるガラス幅領域Eは、流れ方向におけるガラス幅の変化を表す。
【0031】
溶融ガラスGには、幅方向の外側(両方の外側)に向かう引張力F1~F4が印加される。これにより、ガラス幅領域Eは、流れの上流から下流に向かって、次第に幅が広くなっていく。
このため、溶融ガラスGに発生した欠陥は、発生位置から下流に行くにつれて、幅方向の外側に移動する。例えば、発生位置に示されている欠陥部H1は、それよりも下流において、幅方向の外側に移動した欠陥部H1aとなる。また、例えば、発生位置に示されている欠陥部H2は、それよりも下流において、幅方向の外側に移動した欠陥部H2aとなる。
ここで、欠陥部は、ガラス板に発生した欠陥が画像に映った部分(画像部分)を表す。
【0032】
<検査部>
図4には、欠陥の検査部311(
図1では洗浄検査・切断部14の検査部)を概略的に示してある。
図4の例では、検査部311は、幅方向に並ぶ3個の撮像部C1~C3を有する。
撮像部C1は、検査領域R1の画像を撮像する。撮像部C2は、検査領域R2の画像を撮像する。撮像部C3は、検査領域R3の画像を撮像する。ここで、検査領域R1、検査領域R2、検査領域R3は、それぞれの撮像部C1~C3に対応して幅方向に並んでいる。
図4の例では、検査領域R1に欠陥部H12が存在し、検査領域R3に欠陥部H11が存在する。ここで、欠陥部H11は欠陥部H1及び欠陥部H1aに対応し、欠陥部H12は欠陥部H2及び欠陥部H2aに対応する。
また、
図4の例では、検査領域R2には欠陥部が存在しない。
このように、それぞれの撮像部C1~C3は、ガラス板の一部の領域の画像を撮像する。当該領域に欠陥が含まれる場合には、当該画像に当該欠陥が写った部分(欠陥部)が含まれる。
【0033】
ここで、本実施形態では、3個の撮像部C1~C3を示したが、撮像部の数は任意であってもよい。
また、幅方向に並ぶ検査領域R1~R3は、
図4ではそれぞれの検査領域R1~R3を見易くするために互いに離隔した位置に示してあるが、例えば、互いに隣接していてもよく、つまり、総じて溶融ガラスGの幅方向の全体を検査できるものであってもよい。あるいは、
図4に示されるように、互いに離隔した複数の検査領域が用いられてもよい。
また、
図4では、それぞれの撮像部C1~C3を簡易的に示してあるが、それぞれの撮像部C1~C3は複数のカメラなどの機器が組み合わされた部位であってもよい。
【0034】
ここで、流れ方向の発生位置が同じ欠陥では、幅方向の発生位置によって検査部311で検出される欠陥部の幅方向の位置が変化すると考えられる。
例えば、流れ方向の発生位置が同じ欠陥では、幅方向の発生位置が右側(例えばX軸の負側)であるほど、検査部311で検出される欠陥部の幅方向の位置も右側(例えばX軸の負側)になると考えられる。
【0035】
<欠陥部を含む画像>
本実施形態で用いられる画像について説明する。
本実施形態では、機械学習の教師データ、及び学習済みモデルによって判定を行う対象のデータとして、深さに相関がある画像のデータが用いられる。
このような画像の例として、撮像対象が搬送状態にあり、厚さが1mm以下の透明体のμmオーダーの欠陥深さと相関する画像が用いられる。
より具体例として、このような画像として、シュリーレン法によって取得される画像が用いられてもよい。例えば、シュリーレン法で、透明体の面に生じる歪みを深さと置き換え、歪みの情報を説明変数、欠陥の深さ情報を目的変数として学習させて、歪みの情報から欠陥の発生位置を推定することが実現される。
【0036】
<シュリーレン法>
ここで、シュリーレン法としては、一般的に知られている任意の手法が用いられてもよい。
なお、シュリーレン法は、透明な気体、液体及び固体中の不均質状態が密度勾配となって通過光が曲げられる場合に、この僅かな屈折率の変化を平行度の高い光により大きな明暗の差に変えて観測する手法である。これにより、シュリーレン法では、被測定物の密度分布が明暗のコントラストとして観測される。ここで、シュリーレン法によって取得される画像には深さ情報が含まれるが、シュリーレン法は、本来的には、深さの情報を取得するための手法ではない。
なお、シュリーレン法が用いられる場合、撮像部C1~C3としては、シュリーレン法を実現するための複数の機器(カメラなど)から構成される。
【0037】
ここで、本実施形態で用いられる画像の取得手法として、シュリーレン法は一例であり、他の手法が用いられてもよい。
本実施形態では、例えば、ガラス板の面に欠陥が発生したときの変形量の情報を画像により取得できればよく、光干渉式、三角測量式、又は、白色干渉顕微鏡などのように、三次元測定が可能な手法が用いられてもよい。
【0038】
<欠陥部を含む画像の時間的変化の例>
図5は、実施形態に係る撮像領域R1の画像の時間的変化の一例を模式的に示す図である。
図5には、説明の便宜上、時間(t)を表す軸を示してある。
図5には、1個の検査領域R1について、撮像される画像の時間的変化を模式的に示してある。
図5の例では、検査領域R1において、欠陥部H21、欠陥部H22、欠陥部H23、欠陥部H24、欠陥部H25が、記載の順に、撮像画像に映る。
通常、フロートバス12において溶融ガラスGの面に欠陥が発生する原因が生じると、作業員などによってその原因を取り除かないと、同じ位置(又は、近い位置)で欠陥が発生し続け、検査部311で当該欠陥に起因する画像中の欠陥部が検出され続ける。
【0039】
<欠陥を含む画像の例>
図6は、実施形態に係る欠陥部521が含まれる画像511の一例を示す図である。
図6の例では、シュリーレン法によって取得される画像のイメージを示しているが、実際の画像ではなく、説明のための例示である。
なお、
図6には、欠陥部521が撮像された場合の画像511を示しているが、欠陥部が存在しないガラス部分が撮像された場合には撮像画像に欠陥部は含まれない。
本実施形態では、検査部311によって検査されるガラス板の領域のうち、幅方向の一部及び流れ方向の一部の領域が、画像511の領域となっている。
【0040】
[情報処理装置]
図7は、実施形態に係る情報処理装置111の構成例を示す図である。
情報処理装置111は、例えば、コンピューターから構成される。
情報処理装置111は、入力部131と、出力部132と、通信部133と、記憶部134と、制御部135と、を備える。
出力部132は、表示部151を備える。
制御部135は、学習制御部191と、判定部192と、画像強調部193と、を備える。
【0041】
入力部131は、ユーザーの操作に応じて情報を入力する機能、及び、外部の装置から情報を入力する機能を有している。
出力部132は、外部に情報を出力する機能を有している。例えば、表示部151は、表示対象の情報を画面に表示出力する機能を有している。
通信部133は、外部の装置と通信を行う機能を有している。
【0042】
記憶部134は、各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部134は、学習モデル171、及び、教師データ172などを記憶する。
学習モデル171は、あらかじめ記憶部134に設定されてもよく、或いは、任意のタイミングで外部から設定されてもよい。
教師データ172は、あらかじめ記憶部134に設定されてもよく、或いは、任意のタイミングで外部から設定されてもよい。
【0043】
ここで、学習モデル171としては、任意のモデルが用いられてもよく、例えば、ニューラルネットワークのモデルが用いられてもよい。
学習モデル171では、例えば、入力された画像データの特徴量(画像特徴量)を抽出し、当該特徴量に基づいて推定結果(判定結果)を出力する。当該特徴量は、ガラス板の面の歪み(欠陥)を表す情報である。
当該推定結果は、欠陥の発生位置を各位置毎に、又は、位置の範囲を用いて特定する。当該推定結果が位置の範囲を特定する場合には、当該範囲に発生位置がある可能性が高いという絞り込みが可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、画像データの特徴量を抽出する特徴量抽出部の機能と、抽出された当該特徴量に基づいて欠陥の発生位置に関する推定結果(判定結果)を出力する推定部の機能と、が一体化されて学習モデル171に含まれる場合を示す。
他の例として、特徴量抽出部の機能と、推定部の機能とが、別々の学習モデルを用いて構成されてもよい。この場合、特徴量抽出部の機能を有する学習モデルに画像データが入力されて、当該学習モデルからの出力結果(特徴量の抽出結果)が推定部の機能を有する学習モデルに入力され、当該学習モデルからの出力が発生位置の推定結果(判定結果)として用いられる。
【0045】
制御部135は、各種の処理及び制御を行う。
学習制御部191は、教師データ172を用いて、学習モデル171の学習を行う。当該学習は、機械学習である。
【0046】
判定部192は、判定対象となる画像データを学習済みの学習モデル171に入力して、学習モデル171からの出力を判定結果として出力部132により出力する。
判定部192は、例えば、学習済みの学習モデル171からの出力(推定結果)をそのまま採用して判定部192による判定結果としてもよく、或いは、学習済みの学習モデル171からの出力(推定結果)に基づいて更なる判定(例えば、トレンドの判定など)を行い、その判定の結果を判定部192による判定結果としてもよい。
【0047】
ここで、判定対象となる画像データは、入力部131から入力されてもよく、或いは、あらかじめ記憶部134に記憶されていてもよい。
例えば、検査部311によって取得される画像データ、又は、当該画像データが加工された画像データを、リアルタイムで入力部131から入力することで、判定部192は、常時、リアルタイムで欠陥の発生位置の判定処理を行ってもよい。
【0048】
画像強調部193は、画像に含まれる欠陥部を強調する画像処理を行う機能を有する。
画像強調部193が用いられる場合、画像強調前の画像(例えば、撮像された生画像など)に対して画像強調部193が画像強調処理を行い、画像強調処理後の画像のデータが教師データ172及び判定対象の画像データとして用いられる。これにより、欠陥部が強調された画像を用いて学習及び判定が可能である。
なお、画像強調部193は、必ずしも情報処理装置111に備えられなくてもよい。例えば、情報処理装置111の外部装置において画像の強調処理が行われて、強調処理が行われた後の画像のデータが情報処理装置111に入力されてもよい。
【0049】
<学習及び判定に用いられる画像の選択>
本実施形態では、教師データ172として用いられる画像のデータとして、フロートバス12で気泡によって発生した欠陥に起因する欠陥部を含む画像のデータが選択されている。つまり、他の原因で発生した欠陥に起因した欠陥部が主に映る画像のデータは教師データ172から排除されている。
このような選択処理は、例えば、AI(Artificial Intelligence)の機能を用いて行われる。当該機能としては、例えば、公知の機能が用いられてもよい。
当該機能は、例えば、情報処理装置111の内部(例えば、学習制御部191)に備えられてもよく、或いは、情報処理装置111の外部装置に備えられて、あらかじめ当該外部装置によって画像の選択処理が行われてもよい。つまり、当該外部装置において画像の選択処理が行われた後の画像が情報処理装置111に入力されてもよい。
【0050】
同様に、本実施形態では、判定対象データとして用いられる画像のデータとして、フロートバス12で気泡によって発生した欠陥に起因する欠陥部を含む画像のデータが選択される。つまり、他の原因で発生した欠陥に起因した欠陥部が主に映る画像のデータは判定対象データから排除されている。
このような選択処理は、例えば、AIの機能を用いて行われる。当該機能としては、例えば、公知の機能が用いられてもよい。
当該機能は、例えば、情報処理装置111の内部(例えば、判定部192)に備えられてもよく、或いは、情報処理装置111の外部装置に備えられて、あらかじめ当該外部装置によって画像の選択処理が行われてもよい。つまり、当該外部装置において画像の選択処理が行われた後の画像が情報処理装置111に入力されてもよい。
【0051】
<学習及び判定の第1例>
学習モデル171の入力データ(教師データ172、判定対象データ)として、欠陥部を含む画像のデータが用いられる。
そして、学習モデル171の出力データを、フロートバス12の流れ方向における当該欠陥部の発生位置の判定結果のデータとして用いる。
【0052】
本例では、判定部192は、学習済みモデル(学習済みの学習モデル171)により、欠陥の深さと関係する情報を撮像(スキャン)した画像から、流れ方向における欠陥の発生位置を推定する。
判定部192は、例えば、同じ検査領域R1~R3において時間的に変化する大量の画像について欠陥の発生位置を推定し、その推定結果をトレンド集計することで、流れ方向における欠陥の発生位置をより正確に特定してもよい。一例として、判定部192は、欠陥の発生位置の推定結果を時間集計することで、当該発生位置の頻度を集計し、欠陥が最も発生している場所を特定してもよい。このように、判定部192は、トレンドに基づいて、欠陥の発生位置を特定してもよい。
【0053】
<学習及び判定の第2例>
学習モデル171の入力データ(教師データ172、判定対象データ)として、欠陥部を含む画像のデータと、補助的なデータ(補助データ)が用いられる。
そして、学習モデル171の出力データを、フロートバス12の流れ方向及び幅方向における当該欠陥部の発生位置の判定結果のデータとして用いる。
【0054】
本例では、判定部192は、学習済みモデル(学習済みの学習モデル171)により、欠陥の深さと関係する情報を撮像(スキャン)した画像及び補助データから、流れ方向及び幅方向における欠陥の発生位置を推定する。
判定部192は、例えば、同じ検査領域R1~R3において時間的に変化する大量の画像について欠陥の発生位置を推定し、その推定結果をトレンド集計することで、流れ方向及び幅方向における欠陥の発生位置をより正確に特定してもよい。一例として、判定部192は、欠陥の発生位置の推定結果を時間集計することで、当該発生位置の頻度を集計し、欠陥が最も発生している場所を特定してもよい。このように、判定部192は、トレンドに基づいて、欠陥の発生位置を特定してもよい。
【0055】
ここで、補助データとして、例えば、欠陥部に関して、角度(主軸の角度)のデータ、長短径のデータ、検出座標のデータなどのうちの1以上が用いられてもよい。
角度のデータは、流れ方向(Y軸に平行な方向)を進行方向とみなした場合の幅方向における欠陥部の角度の大小に関するデータである。例えば、流れ方向(Y軸に平行な方向)と、欠陥部の流れ方向の径とのなす角が用いられる。欠陥の発生位置が上流であるほど、引張力F1~F4によって、当該欠陥の角度が傾いて、画像に含まれる欠陥部が流れ方向に対して傾く角度が大きくなっていく。
長短径のデータは、欠陥部の長径と短径との関係(例えば、比)のデータである。例えば、欠陥部の長径は流れ方向の径であり、欠陥部の短径は幅方向の径である。
検出座標のデータは、検査部311において欠陥部が検出された幅方向における座標のデータであり、つまり、検査時における欠陥部の幅方向の座標のデータである。
【0056】
ここで、欠陥部の角度及び長短径の情報、並びに検出座標の情報は、幅方向における欠陥の発生位置に相関し得る。
なお、欠陥部の角度及び長短径の情報については、これらの組み合わせから幅方向における欠陥部の発生位置の推定が可能であると考えられるが、欠陥部の角度の情報と、長短径の情報とが、別々に利用される場合があってもよい。
【0057】
なお、本実施形態では、欠陥部を含む画像のデータと補助データを用いて流れ方向及び幅方向における欠陥の発生位置を推定する場合を示した。
他の例として、流れ方向の発生位置を推定可能な情報ばかりでなく幅方向の発生位置を推定可能な画像データが用いられる場合には、補助データを用いずに、欠陥部を含む画像のデータを用いて流れ方向及び幅方向における欠陥の発生位置を推定する構成とされてもよい。このような画像データとして、例えば、幅方向のすべての領域を検査領域(撮像領域)に含む画像などのデータが用いられてもよい。
【0058】
<学習及び判定の第3例>
第3例は、上記の第1例又は第2例に適用されてもよい。
教師データ172として、流れ方向における所定の領域で発生した欠陥の画像データのみが用いられてもよい。
このような領域としては、例えば、
図4に示される上流P1、中流P2、下流P3が用いられてもよい。
この場合、それぞれの領域(上流P1、中流P2、下流P3)毎に、異なる学習モデル171が生成されてもよい。この場合、判定部192は、それぞれの領域に対応する学習モデルを用いることで、それぞれの領域で発生した欠陥に適合して、当該欠陥の発生位置を推定できる。
例えば、それぞれの領域(上流P1、中流P2、下流P3)毎に、欠陥が発生し易いチャンネル(幅方向の位置)が異なる場合がある。また、例えば、時間毎に、欠陥が発生し易いチャンネル(幅方向の位置)のトレンドが異なる場合がある。
学習制御部191及び判定部192は、それぞれ、流れ方向における領域毎に、異なる学習モデルを用いる。
【0059】
<学習及び判定の第4例>
第4例は、上記の第1例~第3例のいずれかに適用されてもよい。
本例では、ガラス板の製造工程(反応工程)の種類毎に、異なる学習モデルを用いる。
学習制御部191及び判定部192は、それぞれ、ガラス板の製造工程の種類毎に、異なる学習モデルを用いる。
ここで、ガラス板の製造工程の種類としては、例えば、使用される温度、使用される金属、使用されるガス量、使用される速度などのうちの1以上が異なる種類があり得る。
一例として、ガラスの硝材毎に、異なる学習モデルが用いられてもよい。当該硝材の種類としては、例えば、硬度が異なる種類(硬めの材料、又は、やわらかめの材料)などがあり得る。
【0060】
<画像の強調処理の具体例>
図8は、実施形態に係る階調値の強調処理の一例を示す図である。
図8には、元の階調値Q1と、変化後(強調処理後)の階調値Q2と、の関係を示してある。
図8の例では、元の階調値Q1及び変化後の階調値Q2が、それぞれ、0~255の値をとる場合を示してある。
本例の強調処理では、シュリーレン法によって取得された画像の階調値を元の階調値Q1として、変化後の階調値Q2に変換する。本例では、階調値が大きいほど白色に近付き、階調値が小さいほど黒色に近付く。
そして、変化後の階調値Q2を有する画像のデータを、教師データ172及び判定対象データとして用いる。
【0061】
図8に示されるように、所定の背景値V1において元の階調値Q1と変化後の階調値Q2とが一致し、背景値V1よりも小さい階調値では元の階調値Q1に対して変化後の階調値Q2は小さくなり、背景値V1よりも大きい階調値では元の階調値Q1に対して変化後の階調値Q2は大きくなる。
このような階調値の変換により、背景値V1の前後の階調値が強調されて、画像に含まれる欠陥部の白黒が明確化される。例えば、画像全体に対して欠陥部が小さい場合においても、当該欠陥部の白さと黒さが画像処理により強調されることで、深さと相関する識別力の高い画像特徴量が得られる。
ここで、
図8の例では、階調値を強調させる関数として、シグモイド関数が用いられているが、他の関数が用いられてもよい。
【0062】
図9は、実施形態に係る強調処理後の画像611の一例を示す図である。
図9には、
図6に示される画像511に強調処理が行われた結果の画像611を示してある。
強調処理後の画像611では、欠陥部621が強調されている。
なお、
図6と同様に、
図9の例は、実際の画像ではなく、説明のためのイメージの例示である。
【0063】
一例として、画像強調部193は、画像データの背景階調値を決定する背景階調値決定部と、当該背景階調値に対して輝度が大きいほど元の階調値よりも階調値を大きくし、当該背景階調値よりも輝度が小さいほど元の階調値よりも階調値を小さくするテーブル(例えば、ルックアップテーブル)を作成するルックアップテーブル作成部と、当該ルックアップテーブルに基づいて画像データの強調処理(加工処理)を行う加工部と、を有してもよい。
【0064】
ここで、本実施形態では、シュリーレン法によって取得された画像に対して強調処理を行う場合を示したが、他の手法(三次元測定法)で撮像された画像に対して強調処理が行われてもよい。
特に、シュリーレン法で撮像された画像では、輝度情報に基づいてガラス板の面の歪み情報を得る必要があるが、その違い(歪みの度合い)が表れにくくなる場合があるため、歪み方を強調する画像処理を行う効果が大きい。
【0065】
[以上の実施形態について]
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置111では、ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる。
【0066】
本実施形態に係る情報処理装置111では、判定部192は、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、当該ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデル(学習済みの学習モデル171)に入力し、当該学習済みモデルからの出力結果を、流れ方向における欠陥の発生位置の判定結果として取得する。
したがって、情報処理装置111では、流れ方向における欠陥の発生位置を推定できる。
【0067】
本実施形態に係る情報処理装置111では、判定部192は、学習済みモデルからの出力結果を、流れ方向及び幅方向(流れ方向とは直交する方向)における欠陥の発生位置の判定結果として取得する。
したがって、情報処理装置111では、流れ方向及び幅方向における欠陥の発生位置を推定できる。
【0068】
本実施形態に係る情報処理装置111では、判定部192は、画像データと補助データを学習済みモデルに入力する。
補助データは、欠陥に関する流れ方向に対する角度のデータ、欠陥に関する長短径のデータ、或いは、欠陥に関する検出時の座標のデータのうちの1以上を含む。
したがって、情報処理装置111では、補助データを用いることで、欠陥の発生位置の推定精度を向上できる。
【0069】
本実施形態に係る情報処理装置111では、判定部192は、時間的に変化する複数の画像データについて判定結果を取得し、取得した複数の判定結果に基づいて欠陥の発生位置を推定する。
したがって、情報処理装置111では、トレンドに基づいて欠陥の発生位置を推定可能であり、推定精度を向上できる。
【0070】
本実施形態に係る情報処理装置111では、画像データは、ガラス板の一部が撮像された画像のデータであり、欠陥が写った欠陥部を含む。
したがって、情報処理装置111では、撮像部C1~C3により撮像された画像に基づいて、欠陥の発生位置を推定できる。
【0071】
本実施形態に係る情報処理装置111では、画像データは、シュリーレン法によって取得された画像のデータである。
したがって、情報処理装置111では、シュリーレン法によって取得された画像を利用して、欠陥の発生位置を推定できる。
【0072】
本実施形態に係る情報処理装置111では、画像強調部193は、元画像データ(例えば、生画像のデータ)に対して所定の強調処理を行う。
判定部192は、画像強調部193によって強調処理が行われた結果の画像データを学習済みモデルに入力する。
したがって、情報処理装置111では、画像強調処理を行うことで、欠陥の発生位置の推定精度を向上できる。
【0073】
本実施形態に係る情報処理装置111では、ガラス板の製造方法はフロート法である。欠陥は、ガラス板の裏面に存在する凹部欠陥である。
したがって、情報処理装置111では、フロート法で発生するガラス板の裏面の欠陥について、当該欠陥の発生位置を推定できる。
【0074】
本実施形態に係る情報処理装置111では、流れ方向は、複数の領域に区分されている。
判定部192は、それぞれの領域(例えば、上流P1、中流P2、下流P3)毎に異なる学習済みモデルを用いる。
したがって、情報処理装置111では、流れ方向の領域毎に区分することで、欠陥の発生位置の推定精度を向上できる。
【0075】
本実施形態に係る情報処理装置111では、学習制御部191は、教師データ172を用いて学習済みモデル(学習を行った後の学習モデル171)を生成する。
したがって、情報処理装置111では、判定部192による判定を行う際に使用される学習モデル171に、教師データ172を用いた学習を行える。
【0076】
本実施形態では、情報処理装置111により行われる処理の方法を提供できる。
例えば、情報処理方法では、情報処理装置111が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、当該ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、当該学習済みモデルからの出力結果を、流れ方向における欠陥の発生位置の判定結果として取得する。
したがって、当該情報処理方法では、ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる。
【0077】
本実施形態では、情報処理装置111を構成するコンピューターを動作させるプログラム(コンピュータープログラム)を提供できる。
例えば、プログラムは、コンピューターに、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、当該ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力する機能と、当該学習済みモデルからの出力結果を、流れ方向における欠陥の発生位置の判定結果として取得する機能と、を実現させる。
したがって、当該プログラムでは、ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる。
【0078】
本実施形態では、機械学習の学習済みモデルを提供できる。
例えば、学習済みモデルは、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、当該ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを入力し、流れ方向における欠陥の発生位置の推定結果データを出力する。
したがって、当該学習済みモデルでは、ガラス板の面に発生した欠陥の位置を推定できる。
【0079】
ここで、本実施形態では、フロート法によって製造されるガラス板の裏面(下面)に発生する欠陥を対象としたが、フロート法以外の手法によって製造されるガラス板の所定面に発生する欠陥が対象とされてもよい。当該所定面は、表面(上面)であってもよい。
例えば、本実施形態に係る情報処理装置111による処理は、フロート法の代わりに、フュージョン法に適用されてもよい。
なお、シュリーレン法で取得される画像では、ガラス板の表面に発生した欠陥の画像部分(欠陥部)もしくはガラス板の裏面に発生した欠陥の画像部分(欠陥部)のどちらでも発生位置の推定ができる。
ガラス板の表面(上面)に発生する欠陥についても、例えば、上方からガラス板に落ちてくる金属片などのゴミに起因した凹状の欠陥となる。
【0080】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1個の欠陥部を含む画像を例示して説明した。
他の例として、2個以上の欠陥部を含む画像のデータが、教師データ172又は判定対象データに含まれる場合があってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、学習モデル171に対して学習を行う機能(学習制御部191の機能)と、学習済みモデル(学習済みの学習モデル171)を用いて判定を行う機能(判定部192の機能)と、が一体化されて情報処理装置111に備えられる場合を示した。
他の例として、これらの機能がそれぞれ別の装置(例えば、別のコンピューター)に備えられてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、学習時に関して、学習制御部191と学習モデル171とが同じ装置(情報処理装置111)に備えられる場合を示した。他の例として、学習制御部191と学習モデル171とが別の装置(例えば、別のコンピューター)に備えられて、これらの装置が連携して本実施形態と同様な学習処理を行ってもよい。
また、本実施形態では、判定時に関して、判定部192と学習済みの学習モデル171とが同じ装置(情報処理装置111)に備えられる場合を示した。他の例として、判定部192と学習済みの学習モデル171とが別の装置(例えば、別のコンピューター)に備えられて、これらの装置が連携して本実施形態と同様な判定処理を行ってもよい。
【0083】
なお、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、オペレーティングシステム或いは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワーク或いは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバー或いはクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。当該揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)であってもよい。記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体であってもよい。
【0084】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、或いは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク或いは電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイルであってもよい。差分ファイルは、差分プログラムと呼ばれてもよい。
【0085】
また、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能は、プロセッサーにより実現されてもよい。例えば、実施形態における各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するコンピューター読み取り可能な記録媒体により実現されてもよい。ここで、プロセッサーは、例えば、各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよく、或いは、各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、当該ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路のうちの少なくとも一方を含んでもよい。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置、或いは、1又は複数の回路素子のうちの一方又は両方を用いて、構成されてもよい。回路装置としてはIC(Integrated Circuit)などが用いられてもよく、回路素子としては抵抗或いはキャパシターなどが用いられてもよい。
【0086】
ここで、プロセッサーは、例えば、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーは、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、DSP(Digital Signal Processor)等のような、各種のプロセッサーが用いられてもよい。また、プロセッサーは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路であってもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUにより構成されていてもよく、或いは、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、アナログ信号を処理するアンプ回路或いはフィルター回路等のうちの1以上を含んでもよい。
【0087】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0088】
[付記]
(構成例1)~(構成例13)を示す。
【0089】
(構成例1)
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する判定部を備える、
情報処理装置。
【0090】
(構成例2)
前記判定部は、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向及び前記流れ方向とは直交する方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する、
(構成例1)に記載の情報処理装置。
【0091】
(構成例3)
前記判定部は、前記画像データと補助データを前記学習済みモデルに入力し、
前記補助データは、前記欠陥に関する前記流れ方向に対する角度のデータ、前記欠陥に関する長短径のデータ、或いは、前記欠陥に関する検出時の座標のデータのうちの1以上を含む、
(構成例2)に記載の情報処理装置。
【0092】
(構成例4)
前記判定部は、時間的に変化する複数の前記画像データについて前記判定結果を取得し、取得した複数の前記判定結果に基づいて前記欠陥の発生位置を推定する、
(構成例1)から(構成例3)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0093】
(構成例5)
前記画像データは、前記ガラス板の一部が撮像された画像のデータであり、前記欠陥が写った欠陥部を含む、
(構成例1)から(構成例4)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0094】
(構成例6)
前記画像データは、シュリーレン法によって取得された画像のデータである、
(構成例5)に記載の情報処理装置。
【0095】
(構成例7)
元画像データに対して所定の強調処理を行う画像強調部を備え、
前記判定部は、前記画像強調部によって前記強調処理が行われた結果の画像データを前記学習済みモデルに入力する、
(構成例5)又は(構成例6)に記載の情報処理装置。
【0096】
(構成例8)
前記ガラス板の製造方法はフロート法であり、
前記欠陥は、前記ガラス板の裏面に存在する凹部欠陥である、
(構成例1)から(構成例7)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0097】
(構成例9)
前記流れ方向は、複数の領域に区分されており、
前記判定部は、それぞれの前記領域毎に異なる前記学習済みモデルを用いる、
(構成例1)から(構成例8)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0098】
(構成例10)
教師データを用いて前記学習済みモデルを生成する学習制御部を備える、
(構成例1)から(構成例9)のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0099】
(構成例11)
情報処理装置が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する、
情報処理方法。
【0100】
(構成例12)
コンピューターに、
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを機械学習の学習済みモデルに入力する機能と、
前記学習済みモデルからの出力結果を、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の判定結果として取得する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【0101】
(構成例13)
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の面に発生する製造時の欠陥の深さを把握可能な画像データを入力し、前記流れ方向における前記欠陥の発生位置の推定結果データを出力する、
機械学習の学習済みモデル。
【符号の説明】
【0102】
1…ガラス製造装置、11…熔解窯、12…フロートバス、13…徐冷炉、14…洗浄検査・切断部、21…入口、22…浴槽、23…出口、24…側壁、26…天井、28…空間、30…ガス供給路、32…ヒータ、34…金属ケース、36…ボトム煉瓦、36a…上面、38…サイド煉瓦、111…情報処理装置、131…入力部、132…出力部、133…通信部、134…記憶部、135…制御部、151…表示部、171…学習モデル、172…教師データ、191…学習制御部、192…判定部、193…画像強調部、311…検査部、511、611…画像、521、621、H1、H1a、H2、H2a、H11、H12、H21~H25…欠陥部、A1、A2…輪郭、B…気泡、C1~C3…撮像部、D1、D2…深さ、E…ガラス幅領域、F1~F4…引張力、G…溶融ガラス、M…溶融スズ、P1…上流、P2…中流、P3…下流、Q1、Q2…階調値、R1~R3…検査領域、V1…背景値