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特開2024-125918プローブ校正方法、プログラム、制御装置及び測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024125918
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】プローブ校正方法、プログラム、制御装置及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
G01B5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034051
(22)【出願日】2023-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭佑
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA04
2F062BB09
2F062CC23
2F062DD23
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF26
2F062HH13
2F062MM01
(57)【要約】
【課題】プローブの自動校正における安全性及び操作性が確保される、プローブ校正方法、プログラム及び測定装置を提供する。
【解決手段】プローブ校正方法は、校正球構造体に関する校正球情報を取得し(S10)、プローブに関するプローブ情報を取得し(S10)、プローブを用いて校正球を測定する際にプローブが移動する校正経路を生成し(S12)、校正経路を移動するプローブが校正球構造体と衝突するか否かを判定し(S14)、プローブが前記校正球構造体と衝突しないと判定された校正経路を適用してプローブを移動させ、プローブを用いて校正球を測定する(S24)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブを用いて校正球を測定し、前記校正球の測定結果に基づき前記プローブを校正するプローブ校正方法であって、
コンピュータが、
前記校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得工程と、
前記プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得工程と、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記プローブを用いて前記校正球を測定する際に前記プローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成工程と、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記校正経路を移動する前記プローブが前記校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定工程と、
前記衝突検知判定工程において、前記プローブが前記校正球構造体と衝突しないと判定された前記校正経路を適用して前記プローブを移動させ、前記プローブを用いて前記校正球を測定する校正球測定工程と、
を実行するプローブ校正方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、
前記衝突検知判定工程において、前記プローブが前記校正球構造体と衝突すると判定された場合に、前記校正経路を構成するプロービング目標点を規定するパラメータを調整するパラメータ調整工程を実行し、
前記衝突検知判定工程は、前記パラメータ調整工程において調整されたパラメータに基づき生成された前記校正経路について、前記プローブが前記校正球構造体と衝突するか否かを判定する請求項1に記載のプローブ校正方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、
前記パラメータ調整工程の実施回数が規定の回数を超えるか否かを判定する調整回数判定工程と、
前記調整回数判定工程において、前記パラメータ調整工程の実施回数が規定回数を超えると判定された場合に、前記パラメータ調整工程の実施回数が規定回数を超えることを表す情報を報知する報知工程と、
を実行する請求項2に記載のプローブ校正方法。
【請求項4】
前記校正球構造体は、
前記校正球を先端に支持する校正球支持シャフトと、
前記校正球構造体が載置される載置面に対して立設させる校正球支持台であり、前記校正球支持シャフトの基端を支持する校正球支持台と、
を備え、
前記校正球情報取得工程は、前記校正球の半径、前記載置面に対して平行となる面における基準方向に対する前記校正球支持シャフトの回転角、前記載置面と直交する方向に対する前記校正球支持シャフトの倒れ角及び前記校正球支持シャフトの軸と直交する断面における最大長さを前記校正球情報として取得する請求項1に記載のプローブ校正方法。
【請求項5】
前記プローブは、前記校正球へ接触させる球形状の接触子を先端に支持するスタイラスを備え、
前記プローブ情報取得工程は、前記プローブに適用される基準面と直交する方向に対する前記スタイラスの倒れ角、前記基準面に対して平行となる面における基準方向に対する前記スタイラスの回転角及び前記接触子の半径を前記プローブ情報として取得する請求項1に記載のプローブ校正方法。
【請求項6】
前記プローブは、前記校正球へ接触させる球形状の接触子を先端に支持するスタイラスを備え、
前記校正経路生成工程は、前記スタイラスの延びる方向を基準とするスタイラス基準座標系における前記校正経路を、前記プローブが具備される装置に適用されるマシン座標系へ変換する座標系変換工程を含む請求項1に記載のプローブ校正方法。
【請求項7】
前記衝突検知判定工程は、前記校正経路が前記校正球構造体と交差するか否かを判定し、前記校正経路が前記校正球構造体と交差すると判定される場合は、前記プローブが前記校正球構造体と衝突すると判定する請求項1に記載のプローブ校正方法。
【請求項8】
前記プローブは、前記校正球へ接触させる球形状の接触子を先端に支持するスタイラスを備え、
前記校正経路生成工程は、
前記校正経路において、前記接触子を前記校正球へ接触させて前記プローブが前記校正球を測定する第1プロービング目標点として、前記スタイラスが延びるスタイラス方向へ前記プローブを移動させて前記校正球と接触した位置を設定し、
前記校正経路において、前記接触子を前記校正球へ接触させて前記プローブが前記校正球を測定する第2プロービング目標点として、前記第1プロービング目標点と前記校正球の中心とを通る方向に対して直交する平面のうち、外周の長さが最大となる最大周長平面の前記外周における位置を設定する請求項1に記載のプローブ校正方法。
【請求項9】
前記校正経路生成工程は、
前記校正経路において前記接触子が通過する第1経路点として、前記第1プロービング目標点から延びる前記校正球の法線の方向に、前記校正球の中心から規定の第1距離を有する位置を設定し、
前記校正経路において前記接触子が通過する第2経路点として、前記第2プロービング目標点から延びる前記校正球の法線の方向に、前記校正球の中心から規定の第2距離を有する位置を設定する請求項8に記載のプローブ校正方法。
【請求項10】
前記第1距離をLs1とし、前記第2距離をLs2とし、前記校正球の半径をRcとし、前記接触子の半径をRsとし、前記校正球の半径Rc及び前記接触子の半径Rsに基づき規定される第1安全距離をC1とする場合に、
前記第1距離Ls1は、Ls1=(Rc+Rs+C1)×21/2
と表され、
前記第2距離Ls2は、L2=(Rc+Rs+C1)×21/2
と表される請求項9に記載のプローブ校正方法。
【請求項11】
前記校正経路生成工程は、
前記校正経路において、前記接触子を前記校正球へ接触させて前記プローブが前記校正球を測定する第3プロービング目標点として、前記最大周長平面の前記外周における位置を設定し、
前記校正経路において前記接触子が通過する第3経路点として、前記第3プロービング目標点から延びる前記校正球の法線の方向に、前記校正球の中心から規定の第3距離を有する位置を設定し、
前記第2プロービング目標点から前記第3プロービング目標点へ前記接触子を移動させる際に、第2経路点から前記第1経路点へ前記接触子を移動させ、前記第1経路点から前記第3経路点へ前記接触子を移動させ、前記第3経路点から前記第3プロービング目標点へ前記接触子を移動させる前記校正経路を生成する請求項9に記載のプローブ校正方法。
【請求項12】
前記第3距離をLs3とし、前記校正球の半径をRcとし、前記接触子の半径をRsとし、第1安全距離をC1とする場合に、前記第3距離Ls3は、Ls3=(Rc+Rs+C1)×21/2と表される請求項11に記載のプローブ校正方法。
【請求項13】
前記校正球構造体は、
前記校正球を先端に支持する校正球支持シャフトと、
前記校正球構造体が載置される載置面に対して立設させる校正球支持台であり、前記校正球支持シャフトの基端を支持する校正球支持台と、
を備え、
前記衝突検知判定工程は、前記第2プロービング目標点及び前記校正球の外周面に沿う前記第1プロービング目標点から前記第2プロービング目標点までの経路に位置する第2中間点が、前記校正球支持シャフトと接触するか否かを判定する請求項8に記載のプローブ校正方法。
【請求項14】
前記衝突検知判定工程は、前記校正球支持シャフトの重心を通り、前記校正球支持シャフトが延在する方向へ延びる前記校正球支持シャフトの軸と前記校正球とが接触する校正球支持点と、前記第2プロービング目標点及び前記第2中間点のそれぞれとの前記校正球の外周面に沿う評価距離をLeとし、前記校正球の直径をDscとし、前記校正球の半径Rc及び接触子の半径Rsに基づき規定される第2安全距離をC2とする場合に、
前記評価距離Leが、Le>(Dsc/2)+C2
を満たす場合に、前記プローブと前記校正球構造体が衝突しないと判定する請求項13に記載のプローブ校正方法。
【請求項15】
プローブを用いて校正球を測定し、前記校正球の測定結果に基づき前記プローブを校正するプログラムであって、
コンピュータに、
前記校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得機能、
前記プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得機能、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記プローブを用いて前記校正球を測定する際に前記プローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成機能、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記校正経路を移動する前記プローブが前記校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定機能、及び
前記衝突検知判定機能を用いて、前記プローブが前記校正球構造体と衝突しないと判定された前記校正経路を適用して前記プローブを移動させて、前記プローブを用いて前記校正球を測定する測定機能を実現させるプログラム。
【請求項16】
プローブを用いて校正球を測定し、前記校正球の測定結果に基づき前記プローブの校正を制御する制御装置であって、
前記校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得部と、
前記プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記プローブを用いて前記校正球を測定する際に前記プローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成部と、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記校正経路を移動する前記プローブが前記校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定部と、
前記衝突検知判定部において、前記プローブが前記校正球構造体と衝突しないと判定された前記校正経路を適用して前記プローブを移動させて、前記プローブを用いて前記校正球を測定する校正球測定部と、
を備えた制御装置。
【請求項17】
前記校正球情報を表す第1表示信号を表示装置へ送信する表示制御部を備えた請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記衝突検知判定部の判定結果を表す第2表示信号を表示装置へ送信する表示制御部を備えた請求項16に記載の制御装置。
【請求項19】
測定対象物の測定点へ接触させて、前記測定対象物を測定するプローブと、
前記プローブを用いて校正球を測定し、前記校正球の測定結果に基づき前記プローブの校正を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得部と、
前記プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記プローブを用いて前記校正球を測定する際に前記プローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成部と、
前記校正球情報及び前記プローブ情報を参照して、前記校正経路を移動する前記プローブが前記校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定部と、
前記衝突検知判定部において、前記プローブが前記校正球構造体と衝突しないと判定された前記校正経路を適用して前記プローブを移動させ、前記プローブを用いて前記校正球を測定する校正球測定部と、
を備えた測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ校正方法、プログラム、制御装置及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMMの利用において、校正球が使用されるプローブの校正は、日常的に繰り返される基本的な操作の一つである。なお、CMMは、三次元測定機の英語表記Coordinate Measuring Machineの省略語である。
【0003】
一方、プローブの先端球であるチップの直径、及び先端球を支持するスタイラスの長さなどのプローブの仕様が変更される度に、校正球を測定する際の校正経路を、都度、ユーザが作成することは困難である。そのために、校正経路を自動で生成し、校正球が使用される校正が実施される機能を有するCMMが一般に普及している。
【0004】
特許文献1は、基準球を用いて接触式のプローブの校正を実施する三次元測定機が記載される。同文献に記載の装置は、主軸2の軸線に対してスタイラス軸線が平行であるストレート形のタッチプローブに対して、基準球が用いられる自動校正を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-017057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術において、プローブの校正に適用される校正経路を作成する際に、プローブと校正球との衝突が発生すると判定された場合に、校正経路のパラメータを手動で調整する必要がある。また、プローブと校正球との衝突が懸念される場合には、プローブの実際の動作を操作者が確認して衝突の可能性を判定し、衝突が発生すると判定された場合に稼働中の装置を手動で停止させる必要がある。
【0007】
すなわち、従来技術におけるプローブの自動校正では、安全性及び操作性について課題が存在する。安全性に関する課題として、プローブと校正球との衝突が起こり得る校正経路を適用して、装置を動作させてしまうことが挙げられる。また、操作性に関する課題として、校正経路を調整する際に、測定範囲等の校正経路のパラメータを操作者が調整しなければならないことが挙げられる。
【0008】
特許文献1には、上記した安全性に関する課題及び操作性に関する課題は記載及び示唆されていない。また、同文献には、上記した課題を解決する具体的な手法についての開示はない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、プローブの自動校正における安全性及び操作性が確保される、プローブ校正方法、プログラム及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0011】
本開示の第1態様に係るプローブ校正方法は、プローブを用いて校正球を測定し、校正球の測定結果に基づきプローブを校正するプローブ校正方法であって、コンピュータが、校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得工程と、プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得工程と、校正球情報及びプローブ情報を参照して、プローブを用いて校正球を測定する際にプローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成工程と、校正球情報及びプローブ情報を参照して、校正経路を移動するプローブが校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定工程と、衝突検知判定工程において、プローブが校正球構造体と衝突しないと判定された校正経路を適用してプローブを移動させ、プローブを用いて校正球を測定する校正球測定工程と、を実行するプローブ校正方法である。
【0012】
本開示の第1態様に係るプローブ校正方法によれば、校正経路を自動生成する際に、校正球構造体に関する校正球情報及びプローブに関するプローブ情報が取得され、校正球情報及びプローブ情報に基づく校正経路が自動生成される。これにより、操作者が校正経路のパラメータ入力等の手動操作をせずに校正経路が自動生成される。
【0013】
また。自動生成された校正経路について、プローブと校正球構造体との衝突検知判定が実施され、衝突しないと判定された場合に自動生成された校正経路を適用して校正球の測定が実施される。これにより、プローブの自動校正における安全性が確保される。
【0014】
プローブは、校正球に接触させる接触子及び接触子を先端に支持し、プローブ支持シャフトに基端が支持されるスタイラスを備える態様を適用し得る。
【0015】
プローブは、プローブの姿勢を変更する構造を有するヘッドを用いて支持される態様を適用し得る。
【0016】
第2態様に係るプローブ校正方法は、第1態様のプローブ校正方法において、コンピュータが、衝突検知判定工程において、プローブが校正球構造体と衝突すると判定された場合に、校正経路を構成するプロービング目標点を規定するパラメータを調整するパラメータ調整工程を実行し、衝突検知判定工程は、パラメータ調整工程において調整されたパラメータに基づき生成された校正経路について、プローブが校正球構造体と衝突するか否かを判定してもよい。
【0017】
かかる態様によれば、プローブと校正球構造体との衝突が発生すると判定される場合に、プロービング目標点を規定するパラメータが調整される。これにより、パラメータ調整における操作者の手動操作が回避される。
【0018】
パラメータ調整の例として、プローブ情報の調整を適用してもよい。
【0019】
第3態様に係るプローブ校正方法は、第1態様又は第2態様のプローブ校正方法において、コンピュータが、パラメータ調整工程の実施回数が規定の回数を超えるか否かを判定する調整回数判定工程と、調整回数判定工程において、パラメータ調整工程の実施回数が規定回数を超えると判定された場合に、パラメータ調整工程の実施回数が規定回数を超えることを表す情報を報知する報知工程と、を実行してもよい。
【0020】
かかる態様によれば、パラメータ調整の回数が制限され、かつ、自動校正が困難な場合に手動校正への変更が促進される。これにより、自動校正の長期間化が抑制される。
【0021】
第4態様に係るプローブ校正方法は、第1態様から第3態様のいずれか一態様のプローブ校正方法において、校正球構造体は、校正球を先端に支持する校正球支持シャフトと、校正球構造体が載置される載置面に対して立設させる校正球支持台であり、校正球支持シャフトの基端を支持する校正球支持台と、を備え、校正球情報取得工程は、校正球の半径、載置面に対して平行となる面における基準方向に対する校正球支持シャフトの回転角、載置面と直交する方向に対する校正球支持シャフトの倒れ角及び校正球支持シャフトの軸と直交する断面における最大長さを校正球情報として取得してもよい。
【0022】
かかる態様において、校正球支持シャフトが円筒形状の場合、校正球支持シャフトの軸と直交する断面における最大長さとして、校正球支持シャフトの直径を取得してもよい。
【0023】
第5態様に係るプローブ校正方法は、第1態様から第4態様のいずれか一態様のプローブ校正方法において、プローブは、校正球へ接触させる球形状の接触子を先端に支持するスタイラスを備え、プローブ情報取得工程は、プローブに適用される基準面と直交する方向に対するスタイラスの倒れ角、基準面に対して平行となる面における基準方向に対するスタイラスの回転角及び接触子の半径をプローブ情報として取得してもよい。
【0024】
かかる態様において、プローブに適用される基準面として、校正球構造体の載置面を適用してもよい。
【0025】
第6態様に係るプローブ校正方法は、第1態様から第5態様のいずれか一態様のプローブ校正方法において、プローブは、校正球へ接触させる球形状の接触子を先端に支持するスタイラスを備え、校正経路生成工程は、スタイラスの延びる方向を基準とするスタイラス基準座標系における校正経路を、プローブが具備される装置に適用されるマシン座標系へ変換する座標系変換工程が含まれてもよい。
【0026】
かかる態様において、校正経路を構成する点を表す位置ベクトルをスタイラス基準座標系からマシン座標系へ変換してもよい。
【0027】
第7態様に係るプローブ校正方法は、第1態様から第6態様のいずれか一態様のプローブ校正方法において、衝突検知判定工程は、校正経路が校正球構造体と交差するか否かを判定し、校正経路が校正球構造体と交差すると判定される場合は、プローブが校正球構造体と衝突すると判定してもよい。
【0028】
かかる態様において、プロービング目標点と校正球構造体における校正球を支持する部分との間の距離に基づき、プローブと校正球構造体が衝突検知判定を実施してもよい。
【0029】
第8態様に係るプローブ校正方法は、第1態様から第7態様のいずれか一態様のプローブ校正方法において、プローブは、校正球へ接触させる球形状の接触子を先端に支持するスタイラスを備え、校正経路生成工程は、校正経路において、接触子を校正球へ接触させてプローブが校正球を測定する第1プロービング目標点として、スタイラスが延びるスタイラス方向へプローブを移動させて校正球と接触した位置を設定し、校正経路において、接触子を校正球へ接触させてプローブが校正球を測定する第2プロービング目標点として、第1プロービング目標点と校正球の中心とを通る方向に対して直交する平面のうち、外周の長さが最大となる最大周長平面の外周における位置を設定してもよい。
【0030】
かかる態様によれば、校正球の極に対して第1プロービング目標点が設定され、校正球の赤道に対して第2プロービング目標点が設定される。これにより、校正球の極の側の半分に対して測定が実施され、一定の測定精度が維持される校正球の測定が可能である。また、校正経路が校正球の極の側の半分に限定されるので、校正球の全体に対して校正経路が設定される場合と比較してプローブの移動範囲が限定され、プローブと校正球構造体との衝突回避が促進される。
【0031】
第9態様に係るプローブ校正方法は、第8態様のプローブ校正方法において、校正経路生成工程は、校正経路において接触子が通過する第1経路点として、第1プロービング目標点から延びる校正球の法線の方向に、校正球の中心から規定の第1距離を有する位置を設定し、校正経路において接触子が通過する第2経路点として、第2プロービング目標点から延びる校正球の法線の方向に、校正球の中心から規定の第2距離を有する位置を設定してもよい。
【0032】
かかる態様によれば、第1プロービング目標点から第2プロービング目標点へプローブを移動させる際に、プローブを校正球から規定の距離が離された経路点を通過させる。これにより、第1プロービング目標点から第2プロービング目標点へプローブを移動させる際におけるプローブと校正球との衝突が回避される。
【0033】
第10態様に係るプローブ校正方法は、第9態様のプローブ校正方法において、第1距離をLs1とし、第2距離をLs2とし、校正球の半径をRcとし、接触子の半径をRsとし、校正球の半径Rc及び接触子の半径Rsに基づき規定される第1安全距離をC1とする場合に、第1距離Ls1は、Ls1=(Rc+Rs+C1)×21/2と表され、第2距離Ls2は、L2=(Rc+Rs+C1)×21/2と表されてもよい。
【0034】
かかる態様において、第1安全距離C1は、接触子の半径Rs以上、校正球の半径Rc以下としてもよい。
【0035】
第11態様に係るプローブ校正方法は、第9態様又は第10態様のプローブ校正方法において、校正経路生成工程は、校正経路において、接触子を校正球へ接触させてプローブが校正球を測定する第3プロービング目標点として、最大周長平面の外周における位置を設定し、校正経路において接触子が通過する第3経路点として、第3プロービング目標点から延びる校正球の法線の方向に、校正球の中心から規定の第3距離を有する位置を設定し、第2プロービング目標点から第3プロービング目標点へ接触子を移動させる際に、第2経路点から第1経路点へ接触子を移動させ、第1経路点から第3経路点へ接触子を移動させ、第3経路点から第3プロービング目標点へ接触子を移動させる校正経路を生成してもよい。
【0036】
かかる態様によれば、第2プロービング目標点から第3プロービング目標点までのプローブの移動において、校正球から規定の距離が離された第1経路点、第2経路及び点第3経路点を通過する。これにより、プローブと校正球との衝突が回避される。
【0037】
また、第2プロービング目標点から第3プロービング目標点までのプローブの移動において、校正球における支持される側と反対側の第1経路点を通過する。これにより、校正球における支持される側へのプローブの移動が抑制される。
【0038】
第12態様に係るプローブ校正方法は、第11態様のプローブ校正方法において、第3距離をLs3とし、校正球の半径をRcとし、接触子の半径をRsとし、第1安全距離をC1とする場合に、第3距離Ls3は、Ls3=(Rc+Rs+C1)×21/2と表されてもよい。
【0039】
かかる態様において、第1安全距離C1は、接触子の半径Rs以上、校正球の半径Rc以下としてもよい。
【0040】
第13態様に係るプローブ校正方法は、第8態様から第12態様のいずれか一態様のプローブ校正方法において、校正球構造体は、校正球を先端に支持する校正球支持シャフトと、校正球構造体が載置される載置面に対して立設させる校正球支持台であり、校正球支持シャフトの基端を支持する校正球支持台と、を備え、衝突検知判定工程は、第2プロービング目標点及び校正球の外周面に沿う第1プロービング目標点から第2プロービング目標点までの経路に位置する第2中間点が、校正球支持シャフトと接触するか否かを判定してもよい。
【0041】
かかる態様によれば、第2プロービング目標点が、校正球支持シャフトの側へ規定される場合であっても、第2プロービング目標点を測定する際のプローブと校正球支持シャフトとの衝突が回避される。
【0042】
第14態様に係るプローブ校正方法は、第13態様のプローブ校正方法において、衝突検知判定工程は、校正球支持シャフトの重心を通り、校正球支持シャフトが延在する方向へ延びる校正球支持シャフトの軸と校正球とが接触する校正球支持点と、第2プロービング目標点及び第2中間点のそれぞれとの校正球の外周面に沿う評価距離をLeとし、校正球の直径をDscとし、校正球の半径Rc及び接触子の半径Rsに基づき規定される第2安全距離をC2とする場合に、評価距離Leが、Le>(Dsc/2)+C2を満たす場合に、プローブと校正球構造体が衝突しないと判定してもよい。
【0043】
かかる態様において、第2安全距離C2は、接触子の半径Rs以上、校正球の半径Rc以下としてもよい。
【0044】
本開示の第15態様に係るプログラムは、プローブを用いて校正球を測定し、校正球の測定結果に基づきプローブを校正するプログラムであって、コンピュータに、校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得機能、プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得機能、校正球情報及びプローブ情報を参照して、プローブを用いて校正球を測定する際にプローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成機能、校正球情報及びプローブ情報を参照して、校正経路を移動するプローブが校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定機能、及び衝突検知判定機能を用いて、プローブが校正球構造体と衝突しないと判定された校正経路を適用してプローブを移動させて、プローブを用いて校正球を測定する測定機能を実現させるプログラムである。
【0045】
本開示の第15態様に係るプログラムによれば、本開示の第1態様に係るプローブ校正方法と同様の作用効果を得ることが可能である。第1態様から第14態様に係るプローブ校正方法の構成要件は、他の態様に係るプログラムの構成要件へ適用し得る。
【0046】
本開示の第16態様に係る制御装置は、プローブを用いて校正球を測定し、校正球の測定結果に基づきプローブの校正を制御する制御装置であって、校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得部と、プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、校正球情報及びプローブ情報を参照して、プローブを用いて校正球を測定する際にプローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成部と、校正球情報及びプローブ情報を参照して、校正経路を移動するプローブが校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定部と、衝突検知判定部において、プローブが校正球構造体と衝突しないと判定された校正経路を適用してプローブを移動させて、プローブを用いて校正球を測定する校正球測定部と、を備えた制御装置である。
【0047】
本開示の第16態様に係る制御装置によれば、本開示の第1態様に係るプローブ校正方法と同様の作用効果を得ることが可能である。第1態様から第14態様に係るプローブ校正方法の構成要件は、他の態様に係る制御装置の構成要件へ適用し得る。
【0048】
第17態様に係る制御装置は、第16態様の制御装置において、校正球情報を表す第1表示信号を表示装置へ送信する表示制御部を備えてもよい。
【0049】
かかる態様によれば、取得される校正球情報を操作者が視認し得る。
【0050】
第18態様に係る制御装置は、第16態様又は第17態様の制御装置において、衝突検知判定部の判定結果を表す第2表示信号を表示装置へ送信する表示制御部を備えてもよい。
【0051】
かかる態様によれば、衝突検知判定の判定結果を操作者が視認し得る。
【0052】
本開示の第19態様に係る測定装置は、測定対象物の測定点へ接触させて、測定対象物を測定するプローブと、プローブを用いて校正球を測定し、校正球の測定結果に基づきプローブの校正を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、校正球が具備される校正球構造体に関する校正球情報を取得する校正球情報取得部と、プローブに関するプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、校正球情報及びプローブ情報を参照して、プローブを用いて校正球を測定する際にプローブが移動する校正経路を生成する校正経路生成部と、校正球情報及びプローブ情報を参照して、校正経路を移動するプローブが校正球構造体と衝突するか否かを判定する衝突検知判定部と、衝突検知判定部において、プローブが校正球構造体と衝突しないと判定された校正経路を適用してプローブを移動させ、プローブを用いて校正球を測定する校正球測定部と、を備えた測定装置である。
【0053】
本開示の第19態様に係る測定装置によれば、本開示の第1態様に係るプローブ校正方法と同様の作用効果を得ることが可能である。第1態様から第14態様に係るプローブ校正方法の構成要件は、他の態様に係る測定装置の構成要件へ適用し得る。
【0054】
第19態様に係る測定装置の例として、三次元の測定対象物を測定する三次元測定機が挙げられる。測定装置の例として、輪郭形状測定機、円心度測定機及び円筒形状測定機等が挙げられる
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、校正経路を自動生成する際に、校正球構造体に関する校正球情報及びプローブに関するプローブ情報が取得され、校正球情報及びプローブ情報に基づく校正経路が自動生成される。これにより、操作者が校正経路のパラメータ入力等の手動操作をせずに校正経路が自動生成される。
【0056】
また。自動生成された校正経路について、プローブと校正球構造体との衝突検知判定が実施され、衝突しないと判定された場合に自動生成された校正経路を適用して校正球の測定が実施される。これにより、プローブの自動校正における安全性が確保される。
【0057】
プローブは、校正球に接触させる接触子及び接触子を先端に支持し、プローブ本体に基端が支持されるスタイラスを備える態様を適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。
図2図1に示す三次元測定機に適用される電気的構成を示す機能ブロック図である。
図3】実施形態に係るプローブ校正方法の手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態に係るプローブ校正方法に適用される校正球の例及びスタイラスの例を示す模式図である。
図5】校正球情報に含まれるシャフト回転角の説明図である。
図6】校正球情報に含まれるシャフト倒れ角の説明図である。
図7】校正球情報に含まれるシャフト直径の説明図である。
図8】スタイラス角度情報に含まれるスタイラス倒れ角の説明図である。
図9】スタイラス角度情報に含まれるスタイラス回転角の説明図である。
図10】自動経路生成におけるプロービング目標点の模式図である。
図11】プロービング目標点の具体例を示す表である。
図12】座用変換の模式図である。
図13】自動経路生成における経路点の模式図である。
図14】第1退避距離の模式図である。
図15】校正経路情報の一例を示す表である。
図16】衝突検知判定の模式図である。
図17】衝突検知判定における評価点の模式図である。
図18】衝突判定式の説明図である。
図19】パラメータ調整の模式図である。
図20】パラメータ調整データの具体例を示す表である。
図21】校正球情報入力画面の具体例を示す説明図である。
図22】衝突検知判定結果表示画面の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0060】
[実施形態に係る三次元測定機の全体構成]
図1は実施形態に係る三次元測定機の全体構成図である。三次元測定機10は、測定対象物であるワークの測定点の座標値を取得し、ワークの三次元形状の測定及びワークに含まれる幾何要素の解析を実施する。なお、三次元測定機は、英語表記Coordinate Measuring Machineの省略語を用いてCMMと称されることがある。また、実施形態に記載の三次元測定機は測定装置の一例である。
【0061】
同図に示す三次元測定機10は、架台12、テーブル14、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、Xガイド18、Xキャリッジ20、Zキャリッジ22及びヘッド24を備える。
【0062】
架台12はテーブル14の下面を支持する支持台である。テーブル14は定盤が適用される。テーブル14は、上面のX軸方向における一方の端部に右Yキャリッジ16Rが立設され、他方の端部に左Yキャリッジ16Lが立設される。
【0063】
テーブル14のX軸方向における両端部の上面及び側面は、Y軸方向に沿って右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lが摺動する摺動面が形成される。また、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、テーブル14の摺動面に対向する位置にエアベアリングが具備される。すなわち、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、テーブル14を用いて、Y軸方向について移動自在に支持される。なお、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lに具備されるエアベアリングの図示を省略する。
【0064】
Xガイド18は、右Yキャリッジ16Rを用いてX軸方向の一方の端部が支持され、左Yキャリッジ16Lを用いてX軸方向の他方の端部が支持される。右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L及びXガイド18は門型フレーム26を構成する。門型フレーム26は、Y軸方向について移動自在に構成される。
【0065】
Xガイド18は、Xキャリッジ20が摺動する摺動面がX軸方向に沿って形成される。Xキャリッジ20は、Xガイド18の摺動面に対向する位置にエアベアリングが具備される。Xキャリッジ20は、Xガイド18を用いてX軸方向について移動自在に支持される。なお、Xガイド18の摺動面に対向する位置に具備されるエアベアリングの図示を省略する。
【0066】
Zキャリッジ22は、Xキャリッジ20を用いて、Z軸方向に沿って移動自在に支持される。Xキャリッジ20は、Z軸方向についてZキャリッジ22を案内するエアベアリングが具備される。なお、Z軸方向についてZキャリッジ22を案内するエアベアリングの図示を省略する。
【0067】
ヘッド24は、Zキャリッジ22の下端に取り付けられる。ヘッド24は、プローブヘッド24A、プローブモジュール24B及びスタイラス24Cを含むプローブ24Fが取り付けられる。スタイラス24Cは、スタイラスシャフト24D及びチップ24Eを含んで構成される。また、スタイラス24Cは、スタイラスシャフト24Dをプローブモジュール24Bへ取り付ける取付部を含む。なお、取付部の図示を省略する。図1には、1つのスタイラス24Cを備えるシングルスタイラスタイプのプローブ24Fが図示される。
【0068】
ヘッド24は、チップ24Eを無段階に位置決めし得る無段階位置決め機構を備える5軸同時制御プローブヘッドを適用し得る。5軸には、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を含み、更に、回転方向を示すA軸及びB軸が含まれる。なお、実施形態に記載のチップ24Eは、校正球へ接触させる接触子であり、球形状を有する接触子の一例である。
【0069】
三次元測定機10は、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部を備える。X駆動部はX軸方向に沿ってXキャリッジ20を移動させる。Y駆動部はY軸方向に沿って門型フレーム26を移動させる。Z駆動部はZ軸方向に沿ってZキャリッジ22を移動させる。
【0070】
三次元測定機10は、X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部を適宜動作させて、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について、任意の位置へヘッド24を移動させ得る。なお、図1ではX駆動部、Y駆動部及びZ駆動部の図示を省略する。X駆動部、Y駆動部及びZ駆動部は、駆動部28として図2に図示する。
【0071】
三次元測定機10は、プローブヘッド24Aに対して、プローブモジュール24B及びスタイラス24Cを、Z軸方向に直交する回転軸RSAの回りに一体に回転させるA軸駆動部を備える。
【0072】
また、三次元測定機10は、Z軸方向に平行となる回転軸RSBの回りにプローブヘッド24Aを回転させるB軸駆動部を備える。A軸駆動部及びB軸駆動部は、スタイラス24Cを任意の姿勢に設定し得る。なお、図1ではA軸駆動部及びB軸駆動部の図示を省略する。A軸駆動部及びB軸駆動部は、駆動部28として図2に図示する。
【0073】
Xガイド18は、X軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、Xキャリッジ20はX軸方向位置検出ヘッドが具備される。X軸方向位置検出ヘッドは、X軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、X軸方向位置検出信号を出力する。
【0074】
テーブル14は、X軸方向における一方の端の側面にY軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、右Yキャリッジ16RはY軸方向位置検出ヘッドが具備される。Y軸方向位置検出ヘッドは、Y軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、Y軸方向位置検出信号を出力する。
【0075】
Zキャリッジ22は、Z軸方向位置検出用リニアスケールが具備される。また、Xキャリッジ20はZ軸方向位置検出ヘッドが具備される。Z軸方向位置検出ヘッドは、Z軸方向位置検出用リニアスケールの値を読み取り、Z軸方向位置検出信号を出力する。
【0076】
ヘッド24は、スタイラス24Cの回転角度を検出するエンコーダが具備される。スタイラス24Cの回転角度は、回転軸RSAの回りを回転する際のA軸方向における回転角度θA及び回転軸RSBの回りを回転する際のB軸方向における回転角度θBが適用される。
【0077】
ヘッド24は、チップ24Eのワークへの接触を検出する接触センサを備える。接触センサは接触検出信号を出力する。すなわち、三次元測定機10は、ワークにおける任意の測定点へのチップ24Eの接触を検出した際に、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置検出信号を取得し、かつ、A軸方向及びB軸方向の回転角度検出信号を取得し、チップ24Eの座標値を導出し得る。ここで、測定点へのチップ24Eの接触とは、規定の測定点に対してチップ24Eを位置決めし、チップ24Eを停止させて、測定点に対してチップ24Eが振れる状態である。チップ24Eの接触の検出とは、測定点に対してチップ24Eを停止させた際に、測定点とチップ24Eとが接触しているか、又は非接触であるかを検出する。
【0078】
三次元測定機10は、コントローラ30及びコンピュータ40を備える。コントローラ30及びコンピュータ40は、三次元測定機10の測定制御部として機能する。コントローラ30は、X駆動部、Y駆動部、Z駆動部、A軸駆動部及びB軸駆動部へ制御信号を送信し、チップ24Eの位置及びスタイラス24Cの姿勢を制御する。
【0079】
コントローラ30は、ジョイスティック及び操作ボタン等を備えるコントローラ操作部32を備える。コントローラ操作部32は、ヘッド24を手動操作する際に操作される。
【0080】
コントローラ30は、通信インターフェースを備える。コントローラ30は、通信インターフェースを介して、各種の位置検出ヘッド及び接触センサ等と電気接続される。コントローラ30は、各種の位置検出ヘッド及び接触センサ等が出力する各種の検出信号を取得する。
【0081】
コントローラ30は、通信インターフェースを介して、コンピュータ40と通信可能に接続される。コントローラ30とコンピュータ40との通信プロトコルは、TCP/IPを適用し得る。なお、TCPはTransmission Control Protocolの省略語である。また、IPはInternet Protocolの省略語である。
【0082】
コンピュータ40は、三次元測定機10の各種の機能に対応する命令が含まれるソフトウェア81が記憶されるコンピュータ可読媒体82を備える。また、コンピュータ40は、ソフトウェア81の各種の命令を実行するプロセッサ83を備える。プロセッサ83は、非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体82へ記憶されるソフトウェア81の各種の命令を実行して、三次元測定機10の各種の機能を実現する。なお、ソフトウェアはプログラムと同義である。以下、ソフトウェアはプログラムと称する場合がある。
【0083】
コンピュータ40は、測定データを取得し、取得した測定データを解析し、解析結果を出力する。解析結果は、ディスプレイ50へ表示させてもよいし、印刷装置を用いて印刷用紙へ印刷させてもよい。
【0084】
三次元測定機10は、ディスプレイ50及び入力装置52を備える。ディスプレイ50は、コンピュータ40から送信される表示信号に基づき、三次元測定機10における各種の情報を表示する。
【0085】
入力装置52は、キーボート及びマウス等が含まれる。入力装置52はユーザが入力する各種の情報を表す信号をコンピュータ40へ送信する。コンピュータ40は、入力装置52から送信される信号に基づき、各種の処理を実施する。ディスプレイ50はタッチパネル方式を適用して、入力装置52と一体に構成してもよい。
【0086】
[三次元測定機の電気的構成]
図2図1に示す三次元測定機に適用される電気的構成を示す機能ブロック図である。コンピュータ40は、駆動制御部60を備える。ワークの自動測定が実施される場合に、駆動制御部60はコントローラ30へ指令信号を送信する。
【0087】
コントローラ30は、コンピュータ40から送信される指令信号に基づき駆動部28を制御して、キャリッジ29を動作させ、かつ、ヘッド24を回転させ、自動測定を実施する。
【0088】
ワークの手動測定が実施される場合に、コントローラ30はコントローラ操作部32の操作に応じて駆動部28を制御して、キャリッジ29を動作させ、かつ、ヘッド24を回転させる。
【0089】
なお、図2に示す駆動部28は、X駆動部、Y駆動部、Z駆動部、A軸回転駆動部及びB軸回転駆動部が含まれる。また、キャリッジ29は、図1に示すXキャリッジ20、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L及びZキャリッジ22が含まれる。
【0090】
コンピュータ40は、モード設定部62を備える。モード設定部62は、三次元測定機10の動作モードを設定する。三次元測定機10の動作モードは、自動測定モード、手動測定モード及び校正モードが含まれる。
【0091】
自動測定モードは、測定プログラムを実行してワークの自動測定を実施する場合に設定される動作モードである。手動測定モードは、オペレータがコントローラ操作部32を操作してヘッド24を移動させて、ワークを測定する場合に設定される動作モードである。
【0092】
校正モードは、プローブ24Fの校正を実施するモードである。三次元測定機10は、プローブ24Fを用いて校正球を測定し、測定結果に基づきプローブ24Fの校正情報を生成する。三次元測定機10は、プローブ24Fの校正情報を用いてワークの測定データを補正する。プローブ24Fの校正は、自動校正と手動校正との切り替えが可能である。
【0093】
モード設定部62は、モード設定情報を取得し、モード設定情報に応じて、三次元測定機10の動作モードを設定する。コンピュータ40は、設定された動作モードをディスプレイ50へ表示させてもよい。
【0094】
コンピュータ40は、測定データ取得部64を備える。測定データ取得部64は、ワークの測定データとして、ワークの測定点へ接触させたチップ24Eの座標値を表すプロービング信号をヘッド24から取得する。
【0095】
測定データ取得部64は、三次元測定機10が自動測定モードに設定されている場合に、ワークに対して予め規定される測定点に接触させたチップ24Eの座標値を表すプロービング信号を取得する。
【0096】
測定データ取得部64は、三次元測定機10が手動測定モードに設定されている場合に、ユーザが定義した測定点の座標値を表すプロービング信号を取得する。ユーザは、コントローラ操作部32を操作して測定点を定義し得る。
【0097】
測定データ取得部64を介して取得された測定点におけるチップ24Eの座標値は、測定点の識別情報と関連付けされ、記憶される。測定点の識別情報は、複数の測定点に対して付与される連続番号、測定対象における測定点の部位名等を適用し得る。測定点の識別情報は、複数の情報の組み合わせを適用し得る。測定データ取得部64を用いて取得される測定データ84は、メモリ82Aへ記憶される。
【0098】
コンピュータ40は、校正球情報取得部65を備える。校正球情報取得部65はプローブ24Fの校正を実施する際に、プローブ24Fを用いて測定される校正球に関する校正球情報85を校正の事前に取得する。校正球情報取得部65を用いて取得される校正球情報85は、メモリ82Aへ記憶される。
【0099】
校正球情報85は、校正球の半径、校正球を支持する校正球支持シャフトの回転角、校正球支持シャフトの倒れ角及び校正球支持シャフトの直径が含まれる。校正球情報85の詳細は後述する。校正球情報85の取得は、入力装置52を用いて操作者が入力してもよいし、センサ等を用いて校正球構造体が自動計測され取得されてもよい。
【0100】
コンピュータ40は、スタイラス角度情報取得部66を備える。スタイラス角度情報取得部66は、プローブヘッド24Aに対するスタイラス24Cの角度に関するスタイラス角度情報86を取得する。スタイラス角度情報取得部66を用いて取得されるスタイラス角度情報86は、メモリ82Aへ記憶される。
【0101】
スタイラス角度情報86は、スタイラス24Cの倒れ角、スタイラス24Cの回転角及びチップ24Eの半径が含まれる。スタイラス角度情報86の詳細は後述する。スタイラス角度情報86の取得は、入力装置52を用いて操作者が入力してもよいし、センサ等を用いてスタイラス24Cが自動計測され取得されてもよい。なお、実施形態に記載のスタイラス角度情報86は、プローブ情報の一例である。
【0102】
コンピュータ40は、自動経路生成部68を備える。自動経路生成部68は、プローブ24Fの自動校正に適用される校正経路であり、プローブ24Fに具備されるチップ24Eが通過するルートである校正経路を生成する。校正経路は、校正経路情報87としてメモリ82Aへ記憶される。
【0103】
コンピュータ40は、衝突検知判定部74を備える。衝突検知判定部74は、自動校正が実施される際に校正経路を移動するプローブ24Fにおいて、校正球を含む校正球構造体へチップ24Eが衝突するか否かを判定する。
【0104】
コンピュータ40は、パラメータ調整部78える。パラメータ調整部78は、衝突検知判定部74が校正球を含む校正球構造体へチップ24Eが衝突すると判定する場合に、プローブ24Fの校正経路のパラメータを調整する。パラメータ調整部78は、パラメータが調整されたプローブ24Fの校正経路を、校正経路情報87としてメモリ82Aへ記憶する。パラメータ調整部78は、パラメータが調整された後の校正経路を、パラメータが調整される前の校正経路とは別に記憶してもよいし、パラメータが調整される前の校正経路を上書きして更新してもよい。
【0105】
ここで、チップ24Eの校正球構造体への衝突とは、チップ24Eが移動する期間において、校正球構造体へチップ24Eの一部が触れる状態である。換言すると、チップ24Eの校正球構造体への衝突とは、一定以上の速さを有するチップ24Eが校正球構造体と触れる状態を意味する。
【0106】
コンピュータ40は、校正処理部79備える。校正処理部79は、校正経路情報87に基づき、プローブ24Fの校正処理を実施する。プローブ24Fの校正処理の詳細は後述する。
【0107】
コンピュータ40は、入力信号取得部70を備える。入力信号取得部70は、入力装置52から送信される入力情報を表す信号を取得する。コンピュータ40は、入力情報に基づき各種の制御を実施する。
【0108】
コンピュータ40は、表示制御部72を備える。表示制御部72は、ディスプレイ50へ表示信号を送信する。ディスプレイ50は、表示制御部72から送信される表示信号に基づき、三次元測定機10における各種の情報を表示する。
【0109】
コンピュータ40は、コンピュータ可読媒体82を備える。コンピュータ可読媒体82は、主記憶装置であるメモリ82A及び補助記憶装置であるストレージ82Bを含み得る。コンピュータ可読媒体82は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ等を適用し得る。コンピュータ可読媒体82は、複数のデバイスの組み合わせを適用し得る。
【0110】
コンピュータ可読媒体82は、各種のソフトウェア81、測定データ84、校正球情報85、スタイラス角度情報86及び校正経路情報87等が記憶される。すなわち、コンピュータ可読媒体82は、各種のソフトウェア81が記憶される領域、測定データ84が記憶される領域、校正球情報85が記憶される領域、スタイラス角度情報86が記憶される領域及び校正経路情報87が記憶される領域が含まれる。コンピュータ可読媒体82は、各種のソフトウェア81を実行する際に使用される各種のパラメータが記憶される領域が含まれていてもよい。
【0111】
コンピュータ40に具備される各種の処理部は、図1に示すプロセッサ83を用いて実現される。プロセッサは、汎用的なデバイスであるCPUを適用してもよいし、専用のデバイスを適用してもよい。なお、CPUはCentral Processing Unitの省略語である。1つの処理部は1つのプロセッサを用いて構成されてもよいし、複数のプロセッサを用いて構成されてもよい。複数の処理部が1つのプロセッサを用いて構成されてもよい。複数のプロセッサは、同じ種類のデバイスが用いられてもよいし、互いに異なる種類のデバイスが用いられてもよい。
【0112】
コンピュータ40は、パーソナルコンピュータであってもよいし、ワークステーションであってもよい。コンピュータ40は仮想マシンであってもよい。コンピュータ40は、三次元測定機10の外部装置として構成され、ネットワークを介して三次元測定機10と通信自在に接続されてもよい。
【0113】
なお、実施形態に記載のコンピュータ40は、制御装置の一例である。実施形態に記載のスタイラス角度情報取得部66は、プローブ情報取得部の一例である。実施形態に記載の自動経路生成部68は、校正経路生成部の一例である。実施形態に記載の校正処理部79は、校正球測定部の一例である。
【0114】
[実施形態に係るプローブ校正方法の手順]
図3は実施形態に係るプローブ校正方法の手順を示すフローチャートである。情報取得工程S10では、図2に示す校正球情報取得部65は、校正球情報85を取得する。また、情報取得工程S10では、スタイラス角度情報取得部66は、スタイラス角度情報86を取得する。情報取得工程S10は、校正球情報85を取得する校正球情報取得工程及びスタイラス角度情報86を取得するスタイラス角度情報取得工程が含まれる。情報取得工程S10の後に自動経路生成工程S12へ進む。なお、実施形態に記載の情報取得工程S10は、プローブ情報取得工程の一例である。
【0115】
自動経路生成工程S12では、自動経路生成部68はプローブ24Fの自動校正に適用される校正経路を生成し、校正経路情報87として記憶する。自動経路生成工程S12の後に、衝突検知判定工程S14へ進む。なお、実施形態に記載の自動経路生成工程S12は、校正経路生成工程の一例である。
【0116】
衝突検知判定工程S14では、衝突検知判定部74は自動経路生成工程S12において生成される校正経路に沿って移動するチップ24Eが、校正球構造体と衝突するか否かを判定する。衝突検知判定工程S14において、チップ24Eが校正球構造体と衝突すると判定される場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、調整回数判定工程S16へ進む。
【0117】
調整回数判定工程S16では、パラメータ調整部78は、パラメータ調整工程S18の実施回数が規定回数以下であるか否かを判定する。調整回数判定工程S16において、パラメータ調整工程S18の実施回数が規定回数以下と判定される場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、パラメータ調整工程S18へ進む。
【0118】
パラメータ調整工程S18では、パラメータ調整部78は、校正経路のパラメータの調整を実施する。パラメータ調整工程S18の後に自動経路生成工程S12へ進む。自動経路生成工程S12では、自動経路生成部68は調整されたパラメータを適用して、新たな校正経路を生成する。
【0119】
一方、調整回数判定工程S16において、パラメータ調整工程S18の実施回数が規定回数を超えると判断される場合はNo判定となる。No判定の場合は、報知工程S20へ進む。報知工程S20では、校正処理部79は、プローブ24Fの自動校正を中止する旨を報知する。校正処理部79は、ディスプレイ50へプローブ24Fの自動校正を中止する旨を表す文字情報を表示させてもよい。校正処理部79は、音声及び警告音などの音情報を適用して、プローブ24Fの自動校正を中止する旨を報知してもよい。
【0120】
衝突検知判定工程S14において、チップ24Eが校正球構造体と衝突しないと判定される場合はNo判定となる。No判定の場合は、自動校正開始処理工程S22へ進む。自動校正開始処理工程S22では、校正処理部79はプローブ24Fの自動校正の開始処理を実行する。自動校正の開始処理は、校正経路の読み出し処理等が含まれる。自動校正開始処理工程S22の後に、自動校正工程S24へ進む。
【0121】
自動校正工程S24では、校正処理部79はプローブ24Fの自動校正を実施する。プローブ24Fの自動校正が開始されると、継続判定工程S26へ進む。自動校正工程S24では、プローブ24Fを用いて1つの測定点に対して複数回の測定を行い、複数回の測定結果の代表値を当該測定点の測定結果としてもよい。なお、実施形態に記載の自動校正工程S24は、校正球測定工程の一例である。
【0122】
継続判定工程S26では、校正処理部79はプローブ24Fの自動校正を継続するか否かを判定する。継続判定工程S26では、規定の終了条件を満たしていないと判定される場合は、Yes判定となる。Yes判定の場合は、自動校正工程S24が継続される。規定の終了条件の例として、プローブ24Fの自動校正の完了及び強制停止指令の取得などが挙げられる。
【0123】
一方、継続判定工程S26において、規定の終了条件を満たすと判定される場合は、No判定となる。No判定の場合は、規定の終了処理が実行され、プローブ校正方法の手順は終了される。
【0124】
[プローブ自動校正の詳細]
〔自動校正が適用される校正球の条件〕
図4は実施形態に係るプローブ校正方法に適用される校正球の例及びスタイラスの例を示す模式図である。実施形態に係るプローブ校正方法は、単一のシャフトが1つの校正球を支える構造を有する校正球構造体を用いて実施される。図4に示す校正球構造体100及び校正球構造体110は、いずれも、上記の構造を有している。
【0125】
すなわち、校正球構造体100は先端に校正球102を支持する校正球支持シャフト104を備える。校正球支持シャフト104の基端は校正球支持台106に支持される。校正球支持シャフト104が延びる方向は、校正球支持台106が延びる方向に対して交差する。
【0126】
校正球構造体110は、先端に校正球102を支持する校正球支持シャフト104Aを備える。校正球支持シャフト104Aの基端は校正球支持台106に支持される。校正球支持シャフト104Aが延びる方向は、校正球支持台106が延びる方向に対して平行となる。
【0127】
一方、校正球構造体120は、2つの校正球支持シャフトのそれぞれが、第1校正球122A又は第2校正球122Bを支持する構造を有する。校正球構造体120は、実施形態に係るプローブ校正方法に適用されない。
【0128】
すなわち、校正球構造体120は、第1校正球支持シャフト124Aの先端に第1校正球122Aが支持され、かつ、第2校正球支持シャフト124Bの先端に第2校正球122Bが支持される第1校正球支持シャフト124Aの基端及び第2校正球支持シャフト124Bの基端は、校正球支持台126に支持される。
【0129】
〔自動校正が適用されるスタイラスの条件〕
実施形態に係るプローブ校正方法は、プロービング方向とスタイラスシャフト24Dの延びる方向が一致するスタイラス24Cであり、かつ、1つのプローブに対して1つのスタイラス24Cが具備される。プロービング方向とは、プロービング実施する際に、チップ24Eが移動する方向である。実施形態に係るプローブ校正方法は、図4に示すスタイラス24Cを用いて実施される。
【0130】
一方、図4に示すスタイラス140は、プロービング方向と第2スタイラスシャフト24D2の延びる方向が一致しているが、第1スタイラスシャフト24D1の延びる方向が一致せず、交差している。また、図4に示すスタイラス150は、複数のチップ24Eを備えている。したがって、実施形態に係るプローブ校正方法には、スタイラス140及びスタイラス150は用いられない。
【0131】
[校正球情報の具体例]
〔シャフト回転角〕
図5は校正球情報に含まれるシャフト回転角の説明図である。同図に示すXは、校正球構造体100が載置される面に設定される直交座標系の一方の軸であり、Yは他方の座標軸を表す。図6に示すX及びYについても同様である。校正球構造体100が載置される面は、図1に示すテーブル14の上面を適用し得る。
【0132】
図5に示す校正球構造体100は、校正球102、校正球支持シャフト104及び校正球支持台106を備える。校正球構造体100におけるシャフト回転角Rotは、校正球構造体100の載置面であるXY平面に対して平行となる面において、基準方向であるX軸方向に対して校正球支持シャフト104が延在する方向がなす角度である。シャフト回転角Rotは、0度以上、360度未満の範囲で規定される。なお、図5では基準方向となるX方向、及び校正球支持シャフト104が延在する方向は、一点鎖線を用いて図示される。
【0133】
〔シャフト倒れ角〕
図6は校正球情報に含まれるシャフト倒れ角の説明図である。図6に示すZはXY平面と直交する方向であり、校正球支持台106が延びる方向がZ軸方向の正方向である。シャフト倒れ角Tiltは、XY平面と直交する面における、校正球支持台106が延びる方向に対して校正球支持シャフト104が延びる方向がなす角度である。シャフト倒れ角Tiltは、0度以上、180度以下の範囲で規定される。なお、図6には、校正球102の半径Rc及び校正球102の中心Ocを図示する。また、同図ではZ軸方向である校正球支持台106が延びる方向、及び校正球支持シャフト104が延びる方向は、一点鎖線を用いて図示される。
【0134】
〔シャフト直径〕
図7は校正球情報に含まれるシャフト直径の説明図である。シャフト直径Dscは、円筒形状を有する校正球支持シャフト104の直径である。校正球支持シャフト104が四角柱形状の場合、シャフト直径Dscは、校正球支持シャフト104の延在方向と直交する断面における対角線の長さとして把握される。
【0135】
また、校正球支持シャフト104が多角形柱形状の場合、シャフト直径Dscは、校正球支持シャフト104の延在方向と直交する断面における最長の対角線の長さとして把握される。なお、図5から図7までのそれぞれに示す校正球102の半径Rcは校正球情報に含まれる。
【0136】
実施形態に記載のシャフト直径Dsc及び校正球支持シャフト104の延在方向と直交する断面における最長の対角線の長さは、校正球支持シャフトの軸と直交する断面における最大長さの一例である。
【0137】
[スタイラス角度情報の具体例]
〔スタイラス倒れ角〕
図8はスタイラス角度情報に含まれるスタイラス倒れ角の説明図である。同図には、図1等に示すヘッド24の構造を簡略化して図示する。例えば、図8では、図1に示すプローブモジュール24B及びスタイラス24Cがスタイラス24Cとして図示される。
【0138】
図8に示すXは、チップ24Eに適用される座標系の基準面に設定される直交座標系の一方の軸である。同図に示すYは、上記の基準面に設定される直交座標系の他方の軸である。同図に示すZはチップ24Eに適用される座標系の基準面であるXY平面に対して直交する方向であり、プローブヘッド24Aからプローブ24Fが延びる方向がZ軸方向の負方向である。図9に示すX及びYも同様である。
【0139】
図8に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、図6に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を適用し得る。以下の説明では、図8に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向が、図6に示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向と一致していることとする。
【0140】
スタイラス倒れ角Aは、Z軸方向に対してプローブヘッド24Aからプローブ24Fが延びる方向がなす角であり、0度以上、180度以下の範囲で規定される。スタイラス倒れ角Aは、A軸駆動部を用いてプローブモジュール24B及びスタイラス24Cを回転させて調整し得る。なお、図8には、チップ24Eの半径Rs及びチップ24Eの中心Osを図示する。なお、スタイラス倒れ角Aは、図1に示す回転軸RSAの回りを回転する際のA軸方向における回転角度である。また、図8ではZ軸方向及びプローブヘッド24Aからプローブ24Fが延びる方向は、一点鎖線を用いて図示される。
【0141】
〔スタイラス回転角〕
図9はスタイラス角度情報に含まれるスタイラス回転角の説明図である。スタイラス回転角Bは、XY平面において、Y軸方向に対してプローブモジュール24B及びスタイラス24Cが延びる方向がなす角であり、-180度以上、180度以下の範囲で規定される。スタイラス回転角Bは、B軸駆動部を用いてプローブモジュール24B及びスタイラス24Cを回転させて調整し得る。なお、スタイラス回転角Bは、図1に示す回転軸RSBの回りを回転する際のB軸方向における回転角度である。また、図9ではY軸方向及びプローブモジュール24B及びスタイラス24Cが延びる方向は、一点鎖線を用いて図示される。
【0142】
[自動経路生成の具体例]
〔プロービング目標点の設定〕
図10は自動経路生成におけるプロービング目標点の模式図である。自動経路生成では、スタイラス角度情報を用いて、プロービング目標点及び経路点の算出が行われる。プロービング目標点は、スタイラス自動校正の際にプローブ24Fを用いて測定される点であり、校正球102の外周面に設定される。
【0143】
プロービング目標点の設定では、スタイラス角度に合わせた座標系が適用される。スタイラス角度とは、スタイラス倒れ角A及びスタイラス回転角Bの総称である。図10には、スタイラス角度に合わせた座標系として、スタイラス24Cが延びる方向をZc方向とし、Zc方向に対して直交する面に設定される、互いに異なる2方向をそれぞれXc方向及びYc方向とする3次元直交座標系を図示する。
【0144】
最初に設定される第1プロービング目標点Po1は、校正球102の極101に設定される。ここで、校正球102の極101は、プローブ24Fが延びるZc方向について、校正球102へ向けてプローブ24Fを移動させ、チップ24Eが接触した校正球102の外周面における位置として規定される。なお、プローブ24Fが延びるZc方向は、一点鎖線を用いて図示される。図12及び図13についても同様である。
【0145】
校正球102の赤道103には、第2プロービング目標点Po2、第3プロービング目標点Po3、第4プロービング目標点Po4及び第5プロービング目標点Po5が設定される。ここで、校正球102の赤道103は、校正球102の極101及び校正球102の中心Ocを通る直線と直交する円形状の断面のうち、外周の長さが最大となる最大周長平面の外縁を表す閉曲線として規定される。図10には、第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までの各プロービング目標点が、校正球102の赤道103に沿って、等間隔に配置される場合が図示される。なお、実施形態に記載のスタイラス24Cが延びるZc方向は、スタイラス方向の一例である。
【0146】
図11はプロービング目標点の具体例を示す表である。同図には、校正球102の中心Ocを原点(0,0,0)とする位置ベクトル(ic,jc,kc)として、第1プロービング目標点Po1から第5プロービング目標点Po5までの各プロービング目標点を表す。
【0147】
第1プロービング目標点Po1は、位置ベクトル(0,0,1)と表される。第2プロービング目標点Po2は、位置ベクトル(1,0,0)と表される。第3プロービング目標点Po3は、位置ベクトル(0,1,0)と表される。第4プロービング目標点Po4は、位置ベクトル(-1,0,0)と表される。第5プロービング目標点Po5は、位置ベクトル(0,-1,0)と表される。なお、第6プロービング目標点Po6は、第1プロービング目標点Po1と一致し、位置ベクトル(0,0,1)と表される。
【0148】
〔座標変換〕
図12は座用変換の模式図である。同図に示す座標変換では、第1プロービング目標点Po1から第5プロービング目標点Po5までの各プロービング目標点の位置ベクトルが、三次元測定機10のマシン座標系へ変換される。同図には、三次元測定機10のマシン座標系として、XYZ座標系を図示する。
【0149】
すなわち、座標変換では、スタイラス角度に合わせたスタイラス基準座標系であるXcYcZc座標系における位置ベクトル(ic,jc,kc)が、マシン座標系であるXYZ座標系に一致するように変換される。
【0150】
座標変換には、スタイラス角度情報を用いて、オイラー角の変換が適用される。すなわち、XcYcZc座標系における位置ベクトル(ic,jc,kc)は、下記の式1を用いて、マシン座標系であるXYZ座標系の位置ベクトル(i,j,k)へ変換される。
【0151】
【数1】
【0152】
上記の式1におけるAは、スタイラス倒れ角Aであり、Bはスタイラス回転角Bである。
【0153】
各プロービング目標点のマシン座標系における座標値(Xob,Yob,Zob)は、位置ベクトル(i,j,k)に対して校正球102の半径Rcを乗じて算出される。各プロービング目標点のマシン座標系における座標値(Xob,Yob,Zob)は、以下の式2を用いて表される。
【0154】
【数2】
【0155】
なお、上記した座標変換は、図3に示す自動経路生成工程S12における座標系変換工程として実行され得る。
【0156】
〔経路点の設定〕
図13は自動経路生成における経路点の模式図である。経路点の設定では、第1プロービング目標点Po1から第5プロービング目標点Po5のそれぞれに対して、第1経路点Pr1、第2経路点Pr2、第3経路点Pr3、第4経路点Pr4及び第5経路点Pr5が設定される。
【0157】
第1経路点Pr1、第2経路点Pr2、第3経路点Pr3、第4経路点Pr4及び第5経路点Pr5は、それぞれに対応するプロービング目標点と同心球上に、各プロービング目標点から離れる方向に配置される。
【0158】
すなわち、第1経路点Pr1は、第1プロービング目標点Po1における校正球102の法線の方向へ、第1プロービング目標点Po1から規定の距離だけ離れた位置に設定される。第2経路点Pr2は、第2プロービング目標点Po2における校正球102の法線の方向へ、第2プロービング目標点Po2から規定の距離だけ離れた位置に設定される。第3経路点Pr3、第4経路点Pr4及び第5経路点Pr5についても、各プロービング目標点における法線の方向へ、各プロービング目標点から距離だけ離れた位置に設定される。図13には、第1経路点Pr1等の座標値がチップ24Eの中心Osの位置として決められる態様が図示される。
【0159】
校正経路は、任意のプロービング目標点から次のプロービング目標点へチップ24Eが移動する際に、必ず第1経路点Pr1へ戻るように設定される。すなわち、第1プロービング目標点Po1から第2プロービング目標点Po2へチップ24Eを移動させる場合、第1プロービング目標点Po1、第1経路点Pr1、第2経路点Pr2及び第2プロービング目標点Po2の順にチップ24Eを移動させる。
【0160】
同様に、第2プロービング目標点Po2から第3プロービング目標点Po3へチップ24Eを移動させる場合、第2プロービング目標点Po2、第2経路点Pr2、第1経路点Pr1、第3経路点Pr3及び第3プロービング目標点Po3の順にチップ24Eを移動させる。
【0161】
各経路点の座標値(Xr,Yr,Zr)は、それぞれに対応するプロービング目標点(Xob,Yob,Zob)を表す位置ベクトル(i,j,k)に対して、退避距離SafeLengthを乗じて算出される。すなわち、各経路点の座標値(Xr,Yr,Zr)は、以下の式3を用いて表される。
【0162】
【数3】
【0163】
図14は退避距離の模式図である。同図に示す符号Prnは、n番目の経路点であり、符号Prn+1は、n+1番目の経路点である。なお、nは1以上の整数である。同図に示す退避距離SafeLengthは、以下の式4を用いて表される。
【0164】
【数4】
【0165】
上記の式4のクリアランスを表す定数である第1安全距離C1は、n番目の経路点Prnからn+1番目の経路点Prn+1までの経路について、チップ24Eが校正球102と衝突しない条件から規定される。第1安全距離C1は、0を超える距離として規定される。第1安全距離C1の例として、チップ24Eの半径Rs以上、校正球102の半径Rc以下の範囲が挙げられる。なお、実施形態に記載の退避距離SafeLengthは、第1距離Ls1の一例であり、第2距離Ls2の一例であり、第3距離Ls3の一例である。
【0166】
図15は校正経路情報の一例を示す表である。図2に示す校正経路情報87は、図15に示す校正経路要素ごとの座標値が含まれる。校正経路要素は、プロービング目標点及び経路点が含まれる。
【0167】
図15には、第1プロービング目標点Po1から第6プロービング目標点Po6までを順に測定する際のプロービング目標点及び経路点と座標値との関係が図示される。なお、第6プロービング目標点Po6は、第1プロービング目標点Po1と同一である。
【0168】
図15に示すプロービング目標点ごとの位置ベクトルの各成分の添え字は、プロービング目標点を意味する。すなわち、位置ベクトル(iPo1,jPo1,kPo1)は、第1プロービング目標点Po1の位置ベクトルを表す。なお、図15に示す表では、第3プロービング目標点Po3から第5プロービング目標点Po5までの校正経路情報が省略される。
【0169】
[衝突検知判定の具体例]
図16は衝突検知判定の模式図である。同図には、第2プロービング目標点Po2が校正球支持シャフト104の根本位置と被る場合が図示される。校正球支持シャフト104の根本位置とは、校正球支持シャフト104が校正球102を支持する位置である。
【0170】
すなわち、図3に示す衝突検知判定工程S14では、自動経路生成工程S12において生成される校正経路に含まれる複数のプロービング目標点いずれかの座標値が、校正球支持シャフト104の範囲に含まれる複数の座標値のいずれかと一致するか否かを判定してもよい。
【0171】
衝突検知判定工程S14において、校正経路を構成するいずれかのプロービング目標点と、校正球支持シャフト104の範囲に含まれる複数の座標値のいずれかが一致する場合に、校正球構造体100とチップ24Eとの衝突が発生すると判定される。
【0172】
図17は衝突検知判定における評価点の模式図である。同図には、第2プロービング目標点Po2が校正球支持シャフト104の根本位置と被らない場合が図示される。図3に示す衝突検知判定工程S14において実行される衝突検知判定では、例えば、第2プロービング目標点Po2について、第2プロービング目標点Po2及び第2中間点Pm12を衝突検知判定における評価点としてもよい。第2中間点Pm12は、校正球102の外周面における、第1プロービング目標点Po1と第2プロービング目標点Po2とを結ぶ曲線の中間点である。
【0173】
すなわち、衝突検知判定において、1つのプロービング目標点に対して2つの評価点が存在する。衝突検知判定では、全ての評価点について、各評価点と校正球支持シャフト104の軸中心点Pscとの距離を、校正球102の外周面において評価する。
【0174】
校正球支持シャフト104の軸中心点Pscとは、校正球支持シャフト104の中心軸105と校正球102の外周面との交点である。すなわち、校正球支持シャフト104の軸中心点Pscは、校正球支持シャフト104の重心を通り、校正球支持シャフト104が延在する方向へ延びる校正球支持シャフト104の中心軸105と、校正球102とが接触する校正球支持点として把握される。
【0175】
任意の中間点Pmの位置ベクトル(imid,jmid,kmid)は、以下の式5を用いて表される。なお、式5におけるnはプロービング目標点を区別する整数であり、2以上の整数が適用される。例えば、第1プロービング目標点Po1と第2プロービング目標点Po2との中間点である第2中間点Pm12を表す位置ベクトルの場合は、n=2である。
【0176】
【数5】
【0177】
また、校正球支持シャフト104の方向ベクトル(ishaft,jshaft,kshaft)は、以下の式6を用いて表される。
【0178】
【数6】
【0179】
上記の式6における校正球支持シャフト104の方向ベクトル(1,Rot,Tilt)は、極座標を適用して表される方向ベクトル(ishaft,jshaft,kshaft)である。また、校正球支持シャフト104の方向ベクトル(sin(Tilt)×cos(Rot),sin(Tilt)×sin(Rot),cos(Tilt))は、直交座標系を適用して表される方向ベクトル(ishaft,jshaft,kshaft)である。
【0180】
図18は衝突判定式の説明図である。図18には、任意の評価点Qと校正球支持シャフト104の軸中心点Pscとの校正球102の外周面における距離である評価距離Leを図示する。評価距離Leは、校正球102の半径Rcに対して、評価点Qと校正球102の中心Ocとを結ぶ線分と、校正球支持シャフト104の軸中心点Pscと校正球102の中心Ocとを結ぶ線分とのなす角度θを乗算して算出される。すなわち、任意の評価点Qと校正球支持シャフト104の軸中心点Pscとの校正球102の外周面における距離Lは、Le=Rc×θと表される。
【0181】
角度θは、上記の式6に示す校正球支持シャフト104の位置ベクトル(ishaft,jshaft,kshaft)、評価点Qの位置ベクトル(iq,jq,kq)を用いて、以下の式7を用いて表される。
【0182】
【数7】
【0183】
評価距離Leが、校正球支持シャフト104の半径Rshaftに対して第2安全距離C2を加算した値以下の場合に、校正球支持シャフト104とチップ24Eとの衝突が発生すると判定される。一方、評価距離Leが、校正球支持シャフト104の半径に対して第2安全距離C2を加算した値を超える場合は、校正球支持シャフト104とチップ24Eとの衝突が発生しないと判定される。校正球支持シャフト104とチップ24Eとの衝突が発生しない条件は、以下の式8を用いて表される。なお、校正球支持シャフト104の半径は、図7に示す校正球支持シャフト104のシャフト直径Dscの2分の1である。
【0184】
【数8】
【0185】
複数の評価点のうち、上記の式8の条件を満たさない評価点が1つ以上存在する場合は、校正球支持シャフト104とチップ24Eとの衝突が発生すると判定される。なお、第2安全距離C2は、第1安全距離C1と同様に、0を超える距離であればよく、チップ24Eの半径Rs上、校正球102の半径Rc以下の範囲と規定し得る。
【0186】
[パラメータ調整の具体例]
図19はパラメータ調整の模式図である。図3に示すパラメータ調整工程S18では、校正経路の自動生成に対して適用されるパラメータが調整される。図19には、校正経路の自動生成に対して適用されるパラメータの例として、測定範囲が例示される。測定範囲の調整は、校正球102の中心Ocとプロービング目標点とを結ぶ線分と、校正球102の極101と校正球102の中心Ocとを通る校正球102の軸とのなす角度の調整を適用し得る。
【0187】
例えば、第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までのそれぞれが、測定範囲を狭めるに従い、校正球102の極101の側へ近づくように測定範囲パラメータが定義される。
【0188】
測定範囲パラメータは、自動経路生成工程S12において設定される位置ベクトル(ic,jc,kc)を変化させる。例えば、第2プロービング目標点Po2は、第21プロービング目標点Po21へ変化させ、更に、第21プロービング目標点Po21は、第31プロービング目標点Po31へ変化させる。
【0189】
同様に、第3プロービング目標点Po3は、第31プロービング目標点Po31へ変化させ、更に、第32プロービング目標点Po32へ変化させる。第4プロービング目標点Po4は、第41プロービング目標点Po41へ変化させ、更に、第42プロービング目標点Po42へ変化させる。第5プロービング目標点Po5は、第51プロービング目標点Po51へ変化させ、更に、第52プロービング目標点Po52へ変化させる。
【0190】
自動経路生成工程S12におけるその後の処理は、パラメータ調整前と同様であり、パラメータ調整は、全体として衝突検知判定の際の測定範囲を狭めるという処理が実現される。
【0191】
図20はパラメータ調整の具体例を示す表である。同図には、プロービング目標点ごとの測定範囲の調整に起因する位置ベクトルの変化を示す。測定範囲の調整として、測定範囲90度に対応する第1プロービング目標点Po1等から、測定範囲67.5度に対応する第21プロービング目標点Po21への調整、及び測定範囲67.5度に対応する第21プロービング目標点Po21から、測定範囲45度に対応する第22プロービング目標点Po22等への調整を示す。
【0192】
例えば、第2プロービング目標点Po2について、測定範囲が90度から67.5度へ調整され、第21プロービング目標点Po21へ変化すると、位置ベクトル(1,0,0)が位置ベクトル(0.92,0,0.38)へ変化する。更に、測定範囲が67.5度から45度へ調整され、第21プロービング目標点Po21が第22プロービング目標点Po22へ変化すると、位置ベクトル(0.92,0,0.38)が位置ベクトル(0.71,0,0.71)へ変化する。
【0193】
第3プロービング目標点Po3から第5プロービング目標点Po5までのそれぞれについても、第2プロービング目標点Po2と同様に、測定範囲の調整に起因して、位置ベクトルが変化する。
【0194】
[ユーザインターフェースの具体例]
〔校正球情報入力画面の具体例〕
図21は校正球情報入力画面の具体例を示す説明図である。同図に示す校正球情報入力画面200は、図3に示す情報取得工程S10において、図1に示すディスプレイ50へ表示される。
【0195】
校正球情報入力画面200は、タイトル表示部202、依頼情報表示部204、入力情報表示部206、ボタン表示部208及び入力キー表示部210が含まれる。タイトル表示部202は、校正球情報入力画面200のタイトルを表す文字情報が表示される。
【0196】
依頼情報表示部204は、操作者への依頼を表す文字情報が表示される。入力情報表示部206は、入力情報である校正球102の半径Rc、シャフト回転角Rot、シャフト倒れ角Tilt及びシャフト直径Dscのそれぞれの入力値が表示される。
【0197】
ボタン表示部208は、操作者が操作する操作ボタン220が表示される。図21には操作ボタン220として、1つ前の画面へ戻る際に操作される戻るボタン222、入力された情報を確定させるオーケーボタン224及び入力された情報をキャンセルするキャンセルボタン226が例示される。
【0198】
入力キー表示部210は、操作者が数値等を入力する際に操作するテンキー230、入力値が表示される入力値表示部232及び入力可能な数値範囲を示す入力範囲表示部234が表示される。
【0199】
情報取得工程S10において、スタイラス角度情報が取得される際に、スタイラス倒れ角A、スタイラス回転角B及びチップ24Eの半径Rsの値が表示されるスタイラス角度情報入力画面が、ディスプレイ50へ表示されてもよい。
【0200】
また、パラメータ調整工程S18において、調整されるパラメータ及びパラメータの値が表示されるパラメータ入力画面が、ディスプレイ50へ表示されてもよい。スタイラス角度情報入力画面及びパラメータ入力画面は、図21に示す校正球情報入力画面200と同様の構成を適用し得る。なお、実施形態に記載の表示制御部72は、校正球情報を表す第1表示信号を表示装置へ送信する表示制御部の一例である。
【0201】
〔衝突検知判定結果表示画面の具体例〕
図22は衝突検知判定結果表示画面の具体例を示す説明図である。同図に示す衝突検知判定結果表示画面240は、衝突検知判定結果が含まれるポップアップ242が表示される。ポップアップ242は、衝突検知判定結果を示すコード及び文字情報が含まれる衝突検知判定結果情報244、衝突検知判定結果の詳細を表す文字情報及びメッセージコードが含まれる詳細情報246が含まれる。
【0202】
ポップアップ242は、ポップアップ242を閉じる際に操作者が操作するオーケーボタン248が含まれる。衝突検知判定結果表示画面240を視認した操作者は、衝突検知判定結果情報244の内容に従い、プローブ24Fの校正を自動校正から手動校正への切り替えを実施し得る。なお、実施形態に記載の表示制御部72は、衝突検知判定部の判定結果を表す第2表示信号を表示装置へ送信する表示制御部の一例である。
【0203】
[プローブ校正プログラムの構成例]
図3に示すプローブ校正方法の各工程は、コンピュータ40がプローブ校正プログラムを実行して、各工程に対応する機能を実現してもよい。各工程に対応する機能として、情報取得機能、自動経路生成機能、衝突検知判定機能、調整回数判定機能、パラメータ調整機能、校正処理機能及び報知機能が挙げられる。なお、実施形態に記載の情報取得機能校正球情報取得機能及びプローブ情報取得機能の一例である。実施形態に記載の自動経路生成機能は、校正経路生成機能の一例である。実施形態に記載の校正処理機能は、測定機能の一例である。
【0204】
[実施形態の作用効果]
実施形態に係るプローブ校正方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0205】
〔1〕
プローブ24Fを用いて校正球102を測定し、測定結果に基づきプローブ24Fの校正情報を生成するプローブ24Fの校正において、自動生成された校正経路について、プローブ24Fに具備されるスタイラスの先端のチップ24Eと校正球構造体100との衝突が発生するか否かを判定する衝突検知判定が実施される。チップ24Eと校正球構造体100との衝突が発生しないと判定される校正経路を適用して、プローブ24Fを用いて校正球102の自動測定が実施され、測定結果に基づきプローブ24Fの校正情報が生成される。これにより、プローブ24Fの自動校正における安全性が確保される。
【0206】
また、校正球102の半径Rc等が含まれる校正球情報85及びスタイラス倒れ角A等が含まれるスタイラス角度情報86を用いて、プローブ24Fの校正経路が自動生成される。これにより、操作者が校正経路のパラメータ等を入力せずに、プローブ24Fの自動校正に適用される校正経路が自動生成され、プローブ24Fの自動校正における操作性が確保される。
【0207】
〔2〕
チップ24Eと校正球構造体100との衝突が発生すると判定される場合は、校正経路のパラメータが調整され、調整後のパラメータを用いて校正経路が生成される。これにより、パラメータ調整における操作者の手動操作が回避される。
【0208】
〔3〕
パラメータの調整の回数が規定の回数に達した場合は、プローブ24Fの自動調整が中止される旨が報知される。これにより、パラメータ調整の回数が制限され、パラメータ調整の長期間化が抑制される。また、手動校正への変更が促進され得る。
【0209】
〔4〕
校正球情報85は、校正球102の半径Rc、校正球支持シャフト104の回転角であるシャフト回転角Rot、校正球支持シャフト104の倒れ角であるシャフト倒れ角Tilt及び校正球支持シャフト104の直径Dscが含まれる。これにより、校正球102の構造及び校正球支持シャフトの形状等に応じた校正経路が生成される。
【0210】
〔5〕
スタイラス角度情報86は、スタイラス倒れ角A、スタイラス回転角B及びチップ24Eの半径Rsが含まれる。これにより、スタイラス24Cの形状及び姿勢に応じた校正経路が生成される。
【0211】
〔6〕
校正球102の極101に対して第1プロービング目標点Po1が設定される。第1プロービング目標点Po1に対して、第1経路点Pr1が設定される。第1経路点Pr1は、第1プロービング目標点Po1から延びる校正球102の法線の方向について、第1プロービング目標点Po1から規定の距離が離された位置に設定される。
【0212】
校正球102の赤道に対して第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までが設定される。第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までのそれぞれに対して、第2経路点Pr2から第5経路点Pr5までのそれぞれが設定される。各経路点は各プロービング目標点に対して、第1経路点Pr1と同様に設定される。
【0213】
これにより、校正球102の極101の側の半分に対して測定が実施され、一定の測定精度が維持される校正球102の測定が可能である。また、校正経路が校正球102の極101の側の半分に限定されるので、校正球102の全体に対して校正経路が設定される場合と比較してチップ24Eの移動範囲が限定され、チップ24Eと校正球構造体100との衝突回避が促進される。
【0214】
〔7〕
例えば、第2プロービング目標点Po2から第3プロービング目標点Po3へチップ24Eを移動させる場合、第2経路点Pr2、第1経路点Pr1、第3経路点Pr3をこの順で経由する。校正球102の中心Ocから各経路点の距離SafeLengthは、校正球の半径Rc、チップの半径Rs及び第1安全距離C1を用いて、SafeLength=(Rc+Rs+C1)×21/2と表される。
【0215】
これにより、チップ24Eが各プロービング目標点から各経路点へ移動する際、及び各経路点から第1経路点へ移動する際における、チップ24Eと校正球102との衝突が回避される。
【0216】
〔8〕
第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までのそれぞれは、衝突検知判定の評価点として設定される。第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までのそれぞれについて、第1プロービング目標点Po1との間の中間点が設定される。各中間点は、校正球102の外周面において、第1プロービング目標点Po1と第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までのそれぞれとを結ぶ線分の中点として規定される。各中間点は、衝突検知判定の評価点として設定される。
【0217】
衝突検知判定では、全ての評価点が、校正球支持シャフト104に被るか否かが判定される1つ以上の評価点が校正球支持シャフト104に被る場合は、校正球支持シャフト104とチップ24Eとの衝突が発生すると判定される。
【0218】
これにより、各プロービング目標点が校正球支持シャフト104の軸中心点Pscの側へ設定される場合であっても、各プロービング目標点をチップ24Eが測定する際のチップ24Eと校正球支持シャフト104との衝突検知判定が実現される。
【0219】
〔9〕
校正球支持シャフト104の中心軸105と校正球102の外周面との交点である、校正球支持シャフト104の軸中心点Pscと、各評価点の評価距離Leが、校正球支持シャフト104の直径Dscの2分の1に第2安全距離C2を加算した値以下の場合は、該当の評価点が校正球支持シャフト104に被り、チップ24Eと校正球支持シャフト104との衝突が発生すると判定される。
【0220】
これにより、チップ24Eが経路点からプロービング目標点へ移動する際のチップ24Eと校正球支持シャフト104との衝突検知判定が実現される。
【0221】
〔10〕
パラメータ調整では、第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までの測定範囲を狭めるように調整される。測定範囲を狭めるように調整されると、第2プロービング目標点Po2から第5プロービング目標点Po5までが校正球102の赤道から極101へ近づく。
【0222】
これにより、赤道103を挟んで極101と反対側の校正球支持シャフト104の軸中心点Pscと、各評価点との評価距離Leが相対的に長くされ、チップ24Eと校正球支持シャフト104との衝突が回避される。
【0223】
本実施形態に係るプローブ校正方法は、輪郭形状測定機、円心度測定機及び円筒形形状測定機など、ワークに対してプローブを接触させてワークを測定する測定装置への適用が可能である。
【0224】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0225】
10…三次元測定機、12…架台、14…テーブル、16L…左Yキャリッジ、16R…右Yキャリッジ、18…Xガイド、20…Xキャリッジ、22…Zキャリッジ、24…ヘッド、24A…プローブヘッド、24B…プローブモジュール、24Cスタイラス、24D…スタイラスシャフト、24D1…第1スタイラスシャフト、24D2…第2スタイラスシャフト、24E…チップ、24F…プローブ、26…門型フレーム、28…駆動部、29…キャリッジ、30…コントローラ、32…コントローラ操作部、40…コンピュータ、50…ディスプレイ、52…入力装置、60…駆動制御部、62…モード設定部、64…測定データ取得部、65…校正球情報取得部、66…スタイラス角度情報取得部、68…自動経路生成部、70…表示制御部、72…入力信号取得部、74…衝突検知反転部、78…パラメータ調整部、79…校正処理部、81…ソフトウェア、82…コンピュータ可読媒体、82A…メモリ、82B…ストレージ、83…プロセッサ、84…測定データ、85…校正球情報、86…スタイラス角度情報、87…校正経路情報、100…校正球構造体、101…極、102…校正球、103…赤道、104…校正球支持シャフト、104A…校正球支持シャフト、105…中心軸、106…校正球支持台、120…校正球構造体、122A…第1校正球、122B…第2校正球、124A…第1校正球支持シャフト、124B…第2校正球支持シャフト、126…校正球支持台、140…スタイラス、150…スタイラス、200…校正球情報入力画面、202…タイトル表示部、204…依頼情報表示部、206…入力情報表示部、208…ボタン表示部、210…入力キー表示部、220…操作ボタン、222…戻るボタン、224…オーケーボタン、226…キャンセルボタン、230…テンキー、232…入力値表示部、240衝突検知判定結果表示画面、242…ポップアップ、244…衝突検知判定結果情報、246…詳細情報、248…オーケーボタン、A…スタイラス倒れ角、B…スタイラス回転角、C1…第1安全距離、C2…第2安全距離、Dsc…シャフト直径、Le…評価距離、Oc…校正球の中心、Os…チップの中心、Po1…第1プロービング目標点、Po2…第2プロービング目標点、Po3…第3プロービング目標点、Po4…第4プロービング目標点、Po5…第5プロービング目標点、Po6…第6プロービング目標点、Pm…任意の中間点、Pm12…第2中間点、Pr1…第1経路点、Pr2…第2経路点、Pr3…第3経路点、Pr4…第4経路点、Pr5…第5経路点、Pr6…第6経路点、Prn…n番目の経路点、Prn+1…n+1番目の経路点、Psc…軸中心点、Q…評価点、Rc…校正球の半径、Rot…シャフト回転角、Rs…チップの半径、RSA…回転軸、RSB…回転軸、SafeLength…退避距離、Tilt…シャフト倒れ角、θA…回転角、θB…回転角、S10…情報取得工程、S12…自動経路生成工程、S14…衝突検知判定工程、S16…調整回数判定工程、S18…パラメータ調整工程、S20…報知工程、S22…自動校正開始工程、S24…自動校正工程、S26…継続判定工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図22