(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126028
(43)【公開日】2024-09-19
(54)【発明の名称】損傷情報処理装置、損傷情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240911BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G06Q10/20
G01N21/88 J
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099444
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2022553881の分割
【原出願日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2020163228
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】松本 一磨
(57)【要約】 (修正有)
【課題】時系列的に不自然な差分を有する箇所をユーザが容易に認識することができる損傷情報処理装置、損傷情報処理方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】損傷情報処理装置(10)は、プロセッサ(20)を備える、構造物の損傷情報処理装置(10)である。プロセッサ(20)は、構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得し、第1の損傷情報と第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出し、差分情報のうち、第1の損傷情報のみ存在する又は第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい第1の分類箇所を検出し、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第1の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備える、構造物の損傷情報処理装置であって、
前記プロセッサは、
構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び前記第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得し、
前記第1の損傷情報と前記第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出し、
前記差分情報のうち、前記第2の損傷情報のみ存在する又は前記第2の損傷情報が前記第1の損傷情報よりも大きい第2の分類箇所を検出し、
前記第1の損傷情報及び前記第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、前記第2の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力する、
損傷情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記差分情報、前記第1の損傷情報、及び前記第2の損傷情報に基づいて、前記第1の損傷情報と前記第2の損傷情報とが重なる又は第1の損傷情報と第2の損傷情報とが等しい第3の分類箇所を検出し、
前記第1の損傷情報及び前記第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、前記第3の分類箇所を示す報知表示を前記表示装置に出力する請求項1に記載の損傷情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第2の分類箇所に対応する損傷情報、又は前記第3の分類箇所に対応する損傷情報に関連した表示の前記表示装置への表示及び非表示を切り替えて行う請求項2に記載の損傷情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記差分情報に含まれる差分の大きさに応じて、前記第2の分類箇所の表示形態を変える請求項1から3のいずれか1項に記載の損傷情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記第1の損傷情報と前記第2の損傷情報とを重畳した情報に関連する表示を、前記表示装置に表示させる表示処理を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の損傷情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1の損傷情報を取得した第1の撮影画像及び前記第2の損傷情報を取得した第2の撮影画像を取得し、
前記第1の撮影画像と前記第2の撮影画像とを並べて前記表示装置に表示させる表示処理を行う請求項1から5のいずれか1項に記載の損傷情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1の撮影画像又は前記第2の撮影画像が予め決められた条件を満たさない場合には、再撮影を推奨する表示を前記表示装置に表示させる表示処理を行う請求項6に記載の損傷情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記第2の分類箇所に対応する前記第1の損傷情報又は前記第2の損傷情報の単数又は複数の補正方法を前記表示装置に出力する請求項1から7のいずれか1項に記載の損傷情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記表示装置に表示されている前記第1の損傷情報又は前記第2の損傷情報の補正情報を受け付け、
前記補正された前記第1の損傷情報又は前記第2の損傷情報に基づいて、再度前記差分情報を抽出する請求項1から8のいずれか1項に記載の損傷情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記第2の分類箇所に対応する前記第1の損傷情報又は前記第2の損傷情報を自動で補正する請求項1から7のいずれか1項に記載の損傷情報処理装置。
【請求項11】
プロセッサを備える、構造物の損傷情報処理装置の損傷情報処理方法であって、
前記プロセッサが行う、
構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び前記第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得するステップと、
前記第1の損傷情報と前記第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出するステップと、
前記差分情報のうち、前記第2の損傷情報のみ存在する又は前記第2の損傷情報が前記第1の損傷情報よりも大きい第2の分類箇所を検出するステップと、
前記第1の損傷情報及び前記第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、前記第2の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力するステップと、
を含む損傷情報処理方法。
【請求項12】
プロセッサを備える、構造物の損傷情報処理装置に損傷情報処理方法を実行させるプログラムであって、
前記プロセッサに、
構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び前記第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得するステップと、
前記第1の損傷情報と前記第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出するステップと、
前記差分情報のうち、前記第2の損傷情報のみ存在する又は前記第2の損傷情報が前記第1の損傷情報よりも大きい第2の分類箇所を検出するステップと、
前記第1の損傷情報及び前記第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、前記第2の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項13】
非一時的かつコンピュータ読取可能な記録媒体であって、請求項12に記載のプログラムが記録された記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷情報処理装置、損傷情報処理方法、及びプログラムに関し、特に、構造物の損傷情報を処理する損傷情報処理装置、損傷情報処理方法、及びプログラムである。
【背景技術】
【0002】
構造物は、老朽化等により損傷が発生することがある。したがって、構造物の損傷に関する点検は、定期的に行われることが多い。そして定期的な点検を行う場合には、過去の点検結果と現在の点検結果を比較して、損傷の成長度合いを把握することが望まれており、これを支援する技術が検討されてきた。
【0003】
特許文献1では、異なる時刻に同じひび割れを撮影した2枚の画像を取得し、その2枚の画像からひび割れの長さ方向の変化及び幅方向の変化を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、損傷の成長度合いを確認するため、異なる時点の二つの点検結果の差分を抽出することがある。この差分を抽出する場合に、様々な理由により、時系列的に不自然な差分となってしまう場合がある。ここで、時系列的に不自然な差分とは例えば、損傷の補修を行っていないにもかかわらず、過去の点検結果では損傷が存在した箇所において、現在の点検結果では同じ位置にその損傷の存在が確認できない場合である。また、時系列的に不自然な差分とは例えば、損傷の補修を行っていないにもかかわらず、損傷の定量値(長さ、幅、又は面積)が現在の点検結果の方が過去の点検結果に比べて小さい場合である。すなわち、時系列的に不自然な差分とは、時系列的に不可逆変化に反する結果が得られる場合である。
【0006】
このように、時系列的に不自然な差分が出力されてしまう原因として、過去の点検結果と現在の点検結果とで、点検条件(点検作業員・使用機器・環境)が異なる場合、点検対象の撮影画像の撮影不備、撮影画像からの損傷の抽出不備などが考えられる。
【0007】
したがって、点検者(ユーザ)は、このような時系列的に不自然な差分となった箇所を認識し、不自然な差分となった箇所に対して、点検条件の見直しや、再撮影、再度の損傷の抽出など対策を行うことが必要である。上述した特許文献1では、このように時系列的に不自然な差分については言及されていない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、時系列的に不自然な差分を有する箇所をユーザが容易に認識することができる損傷情報処理装置、損傷情報処理方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一の態様である損傷情報処理装置は、プロセッサを備える、構造物の損傷情報処理装置であって、プロセッサは、構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得し、第1の損傷情報と第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出し、差分情報のうち、第1の損傷情報のみ存在する又は第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい第1の分類箇所を検出し、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第1の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力する。
【0010】
本態様によれば、第1の損傷情報と第2の損傷情報との差分情報が抽出され、その差分情報のうち、第1の損傷情報にのみ存在する第1の分類箇所を検出する。また、差分情報のうち、第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい第1の分類箇所を検出する。ここで、第1の分類箇所とは、時系列的に先の第1の損傷情報のみが存在する箇所又は第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい箇所であり、時系列的に不自然な差分情報を有する箇所である。そして本態様は、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて第1の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力することで、表示装置は報知表示を表示し、ユーザは容易に第1の分類箇所を認識することができる。
【0011】
好ましくは、プロセッサは、差分情報のうち、第2の損傷情報のみ存在する又は第2の損傷情報が第1の損傷情報よりも大きい第2の分類箇所を検出し、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第2の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力する。
【0012】
好ましくは、プロセッサは、差分情報、第1の損傷情報、及び第2の損傷情報に基づいて、第1の損傷情報と第2の損傷情報とが重なる又は第1の損傷情報と第2の損傷情報とが等しい第3の分類箇所を検出し、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第3の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力する。
【0013】
好ましくは、プロセッサは、第1の分類箇所に対応する損傷情報、第2の分類箇所に対応する損傷情報、又は第3の分類箇所に対応する損傷情報に関連した表示の表示装置への表示及び非表示を切り替えて行う。
【0014】
好ましくは、プロセッサは、差分情報に含まれる差分の大きさに応じて、第2の分類箇所の表示形態を変える。
【0015】
好ましくは、プロセッサは、第1の損傷情報と第2の損傷情報とを重畳した情報に関連する表示を、表示装置に表示させる表示処理を行う。
【0016】
好ましくは、プロセッサは、第1の損傷情報を取得した第1の撮影画像及び第2の損傷情報を取得した第2の撮影画像を取得し、第1の撮影画像と第2の撮影画像とを並べて表示装置に表示させる表示処理を行う。
【0017】
好ましくは、プロセッサは、第1の撮影画像又は第2の撮影画像が予め決められた条件を満たさない場合には、再撮影を推奨する表示を表示装置に表示させる表示処理を行う。
【0018】
好ましくは、プロセッサは、第1の分類箇所に対応する第1の損傷情報又は第2の損傷情報の単数又は複数の補正方法を表示装置に出力する。
【0019】
好ましくは、プロセッサは、表示装置に表示されている第1の損傷情報又は第2の損傷情報の補正情報を受け付け、補正された第1の損傷情報又は第2の損傷情報に基づいて、再度差分情報を抽出する。
【0020】
好ましくは、プロセッサは、第1の分類箇所に対応する第1の損傷情報又は第2の損傷情報を自動で補正する。
【0021】
本発明の他の態様である損傷情報処理方法は、プロセッサを備える、構造物の損傷情報処理装置の損傷情報処理方法であって、プロセッサが行う、構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得するステップと、第1の損傷情報と第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出するステップと、差分情報のうち、第1の損傷情報のみ存在する又は第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい第1の分類箇所を検出するステップと、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第1の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力するステップと、を含む。
【0022】
本発明の他の態様であるプログラムは、プロセッサを備える、構造物の損傷情報処理装置に損傷情報処理方法を実行させるプログラムであって、プロセッサに、構造物の損傷情報であって、第1の損傷情報及び第1の損傷情報よりも時系列的に後の時点の第2の損傷情報を取得するステップと、第1の損傷情報と第2の損傷情報との差分である差分情報を抽出するステップと、差分情報のうち、第1の損傷情報のみ存在する又は第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい第1の分類箇所を検出するステップと、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第1の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1の損傷情報と第2の損傷情報との差分情報が抽出され、その差分情報のうち、第1の損傷情報にのみ存在する、又は、第1の損傷情報が第2の損傷情報よりも大きい第1の分類箇所を検出し、第1の損傷情報及び第2の損傷情報の少なくとも一方の損傷情報と関連付けて第1の分類箇所を示す報知表示を表示装置に出力することで、表示装置は報知表示を表示し、ユーザは容易に第1の分類箇所を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、損傷情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、CPUが備える機能のブロック図である。
【
図3】
図3は、損傷情報処理装置を使用した表示方法を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、損傷情報取得部が損傷情報Aを取得する場合について説明する図である。
【
図5】
図5は、損傷情報取得部が損傷情報Bを取得する場合について説明する図である。
【
図6】
図6は、撮影画像の特徴点を用いて、撮影画像の位置合わせを説明する図である。
【
図7】
図7は、DPマッチングを使用した損傷情報の差分の抽出に関して説明する図である。
【
図9】
図9は、差分情報(定量値)の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、表示出力部で出力された表示用画像(損傷図及び報知表示)を表示部に表示した一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本例の表示形態の一例を説明する図である。
【
図12】
図12は、撮影画像から検出器により、ひび割れの検出を説明する図である。
【
図13】
図13は、損傷情報の補正の受け付けの一例に関して説明する図である。
【
図14】
図14は、損傷情報の補正の受け付けの他の例に関して説明する図である。
【
図15】
図15は、表示部に表示された本例の損傷図を示す図である。
【
図16】
図16は、損傷図の表示及び非表示を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面にしたがって本発明にかかる損傷情報処理装置、損傷情報処理方法、及びプログラムの好ましい実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、損傷情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
損傷情報処理装置10は、コンピュータ又はワークステーションで構成することができる。損傷情報処理装置10のハードウェア構成は、主としてデータ取得部12と、メモリ16と、操作部18と、CPU(プロセッサ)(Central Processing Unit)20と、RAM(Random Access Memory)22と、ROM(Read Only Memory)24とから構成される。また、損傷情報処理装置10は、表示部(表示装置)26に表示用画像を出力する。表示部26は、ネットワークで接続されたクライアントサーバシステムのクライアント端末の表示部26であり、損傷情報処理装置10はクラインアト端末からの要求に応答するサーバとして機能する。したがって、損傷情報処理装置10から出力された表示用画像は、表示部26に表示される。また、別の形態としては、損傷情報処理装置10はコンピュータに搭載され、表示部26はコンピュータに接続されるモニタで構成される。
【0028】
データ取得部12は、データの入力部であり、例えばメモリ16に記憶される情報(データ)を取得する。なお、メモリ16に記憶される情報は、データ取得部12で取得されてもよいし、予めメモリ16に記憶されていてもよい。例えば、データ取得部12では、後で説明する点検対象の撮影画像や損傷情報を取得する。
【0029】
メモリ16は、データベースとして機能する。メモリ16は、データ取得部12で取得された点検対象の撮影画像や損傷情報を記憶する。例えばメモリ16は、定期的に行われた構造物の点検結果である撮影画像や損傷画像を過去から蓄積して記憶している。なお、点検対象の構造物は、建造物、例えば、橋梁、トンネル、ダムなどの土木構造物を含み、その他にビル、家屋、建物の壁、柱、梁などの建築物をも包含するものである。また、点検で検出される構造物の損傷は、ひび割れ、剥離、鉄筋露出、漏水、遊離石灰、腐食などである。
【0030】
操作部18は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスで構成される。ユーザは操作部18を介して指令を損傷情報処理装置10に入力する。
【0031】
CPU20は、メモリ16又はROM24に記憶されるプログラムをRAM22に展開して実行することにより、各機能を実現する。
【0032】
図2は、CPU20が備える機能のブロック図である。
【0033】
CPU20は、損傷情報取得部30、差分抽出部32、検出部34、及び表示出力部36を備える。
【0034】
損傷情報取得部30は損傷情報を取得する。ここで、損傷情報とは、点検対象の構造物の損傷に関する情報を表している情報であり、様々な態様の情報である。例えば、損傷情報は、損傷(ひび割れ)を示すベクトル情報である。また、損傷情報は、損傷(剥離、鉄筋露出、漏水、遊離石灰、腐食)の領域情報である。
【0035】
損傷情報取得部30は、同一の損傷について異なる時点で取得された二つの損傷情報を取得する。損傷情報取得部30は、例えばメモリ16に記憶されている定期点検で得られた損傷情報を取得する。損傷情報取得部30は、a時点で取得された損傷情報A(第1の損傷情報)、損傷情報Aと同一の損傷に関する損傷情報でありb時点で取得された損傷情報B(第2の損傷情報)を取得する。なお、a時点はb時点よりも過去の時点であり、例えばa時点は2015年8月でありb時点は2020年8月である。なお、a時点、b時点は、異なる時点であればよく特に限定されるものではない。
【0036】
差分抽出部32は、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分である差分情報を抽出する。差分抽出部32は、損傷情報Aと損傷情報Bとの相互に異なる箇所を差分情報として抽出する。例えば、損傷情報A及び損傷情報Bが同じひび割れをベクトル情報で表している場合には、損傷情報Aと損傷情報Bとの異なる箇所が差分情報として抽出される。また、例えば損傷情報A及び損傷情報Bが、同じ剥離の領域を面積で表している場合には、損傷情報Aと損傷情報Bとの異なる箇所が抽出される。また、差分抽出部32は、損傷情報Aと損傷情報Bとの定量値(長さ、幅、面積)の差分情報を抽出してもよい。例えば、損傷情報Aと損傷情報Bとがひび割れ幅に関する情報を有している場合には、そのひび割れ幅の差分情報を抽出する。
【0037】
検出部34は、差分情報のうち、時系列的に不自然な差分を有する箇所である第1の分類箇所を検出する。ここで、第1の分類箇所とは、差分情報のうち損傷情報Aのみ存在する箇所である。また、第1の分類箇所とは、損傷情報が定量値で表されている場合には、損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい箇所である。損傷情報Aは損傷情報Bよりも時系列的に前の時点で取得されたにもかかわらず、損傷情報Aには存在するが損傷情報Bには存在しない箇所は時系列的に不自然である。また、損傷情報Aは損傷情報Bよりも時系列的に前の時点で取得されたにもかかわらず、損傷情報Aの定量値の方が損傷情報Bの定量値よりも大きい箇所は、時系列的に不自然である。なお、損傷情報A、損傷情報Bは、検出された損傷に対して補修(修理)が実施されていないこととする。
【0038】
また、検出部34は、差分情報のうち、損傷が成長又は発現した箇所である第2の分類箇所を検出する。ここで第2の分類箇所とは、差分情報のうち損傷情報Bのみ存在する箇所である。また、第2の分類箇所とは、損傷情報が定量値で表されている場合には、損傷情報Bが損傷情報Aよりも大きい箇所である。損傷情報Aを取得した時点aから損傷が成長又は発現すると、損傷情報Bのみにその損傷に対応する損傷情報が反映される。
【0039】
また、検出部34は、損傷情報A、損傷情報B、及び差分情報に基づいて、損傷情報Aと損傷情報Bとが重なる第3の分類箇所を検出する。また、検出部34は、損傷情報A、損傷情報B、及び差分情報に基づいて、損傷情報が定量値で表されている場合には、損傷情報Aと損傷情報Bとが等しい第3の分類箇所を検出する。第3の分類箇所は、損傷情報Aを取得した時点と損傷情報Bを取得した時点とで変化が見られない損傷の箇所である。
【0040】
なお、検出部34は、必要に応じて(ユーザの設定など)上述した第2の分類箇所及び第3の分類箇所を検出する。したがって、検出部34は、第1の分類箇所のみ検出する態様、第1の分類箇所及び第2の分類箇所を検出する態様、第1の分類箇所及び第3の分類箇所を検出する態様、又は、第1の分類箇所、第2の分類箇所及び第3の分類箇所を検出する態様を採用することができる。
【0041】
表示出力部36は、表示部26に表示を行う表示用画像を出力する。表示出力部36は、損傷情報Aと損傷情報Bとを出力して、損傷情報Aと損傷情報Bとを表示部26に表示させる表示処理を行う。例えば表示出力部36は、損傷情報Aと損傷情報Bとを重ねて(重畳して)表示部26に表示する。また、表示出力部36は、表示された損傷情報A及び損傷情報Bの少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第1の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力して、表示部26に報知表示を表示する。このように、第1の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力し、表示部26に報知表示が表示されることにより、第1の分類箇所をユーザに報知することができ、ユーザは容易に第1の分類箇所を認識することができる。
【0042】
また、表示出力部36は、表示された損傷情報A及び損傷情報Bの少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第2の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力して、表示部26に報知表示を表示する。このように、第2の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力し、表示部26に報知表示が表示されることにより、第2の分類箇所をユーザに報知することができ、ユーザは成長又は出現した損傷に容易に認識することができる。
【0043】
また、表示出力部36は、表示された損傷情報A及び損傷情報Bの少なくとも一方の損傷情報と関連付けて、第3の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力して、表示部26に報知表示を表示する。このように、第3の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力し、表示部26に報知表示が表示されることにより、第3の分類箇所をユーザに報知することでき、より正確な点検を行うことができる。
【0044】
次に、損傷情報処理装置10を使用した損傷情報処理方法に関して説明する。
図3は、損傷情報処理装置10を使用した表示方法を示すフロー図である。
【0045】
先ず、損傷情報処理装置10は、損傷情報取得部30により、損傷情報A及び損傷情報Bを取得する(ステップS10:損傷情報取得ステップ)。次に、損傷情報処理装置10は、差分抽出部32により、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報を抽出する(ステップS11:差分情報抽出ステップ)。その後、損傷情報処理装置10は、検出部34により、差分情報のうち第1の分類箇所を検出する(ステップS12:検出ステップ)。なお、検出部34は、ユーザの設定により、差分情報のうち、第2の分類箇所及び/又は第3の分類箇所を検出する。次に、損傷情報処理装置10は、表示出力部36により、第1の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力する(ステップS13:表示ステップ)。また、表示出力部36は、第2の分類箇所及び/又は第3の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力する。
【0046】
次に、上述した表示方法の各ステップの詳しい説明を行う。
【0047】
<損傷情報取得ステップ>
損傷情報取得ステップは損傷情報取得部30により行われる。損傷情報取得部30は、損傷情報を取得してもよいし、入力画像から損傷を抽出して損傷情報を生成し取得してもよい。以下に、損傷情報取得部30に撮影画像が入力され、損傷情報取得部30はその撮影画像から損傷を抽出して損傷情報を取得する場合について説明する。
【0048】
図4は、損傷情報取得部30が損傷情報Aを取得する場合について説明する図である。
【0049】
図4(A)には、損傷情報取得部30が取得した撮影画像(第1の撮影画像)50が示されている。損傷情報取得部30は、時点aで撮影された橋脚Cの撮影画像50を取得する。そして、損傷情報取得部30は、撮影画像50から様々な技術によりひび割れを抽出する。例えば損傷情報取得部30は、画像処理又は機械学習が行われた検出器により、撮影画像50からひび割れを抽出し、損傷情報A(ベクトル情報)を取得する。
【0050】
図4(B)には、損傷情報取得部30が取得した損傷情報Aが示されている。なお、損傷情報Aはベクトル情報であるが、ベクトル情報を基に生成された損傷図が図示されている。損傷情報取得部30は、撮影画像50に写っていたひび割れを抽出して損傷情報Aとして生成し取得する。損傷情報Aは、ベクトル情報であり、撮影画像50におけるひび割れの位置情報、ひび割れの幅及び長さの情報を有する。
【0051】
図5は、損傷情報取得部30が損傷情報Bを取得する場合について説明する図である。
【0052】
図5(A)には、損傷情報取得部30が取得した撮影画像(第2の撮影画像)54が示されている。損傷情報取得部30は、時点bで撮影された橋脚Cの撮影画像54を取得する。そして、損傷情報取得部30は、撮影画像54から様々な技術によりひび割れを抽出する。例えば損傷情報取得部30は、画像処理又は機械学習が行われた検出器により、撮影画像54からひび割れを抽出し、損傷情報B(ベクトル情報)を取得する。
【0053】
図5(B)には、損傷情報取得部30が取得した損傷情報Bが示されている。なお、損傷情報Bはベクトル情報であるが、ベクトル情報を基に生成された損傷図が図示されている。損傷情報取得部30は、撮影画像54に写っていたひび割れを抽出して損傷情報Bとして生成し取得する。損傷情報Bは、ベクトル情報であり、撮影画像54におけるひび割れの位置情報、ひび割れの幅及び長さの情報を有する。
【0054】
なお、入力された撮影画像50及び撮影画像54が損傷情報の取得に適さない場合(予め決められ条件を満たさない場合)には、表示出力部36は再撮影を推奨する表示を表示部26に出力し、表示部26に再撮影を推奨する表示を表示させてもよい。ユーザはこの表示をみて、再撮影を行った撮影画像を再度入力することができる。
【0055】
以上で説明したように、損傷情報取得ステップでは損傷情報取得部30により、損傷情報A及び損傷情報Bが取得される。
【0056】
<差分情報抽出ステップ>
差分情報抽出ステップは差分抽出部32で行われる。差分抽出部32は、様々な手法により損傷情報Aと損傷情報Bとの差分を抽出する。以下に差分抽出部32の差分情報の抽出手法の例を説明する。
【0057】
(例1)
例1では差分抽出部32は、画像特徴を用いて、損傷情報A及び損傷情報Bの位置合わせを行い損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報を抽出する。上述した例では、損傷情報取得部30は、損傷情報Aを取得するために撮影画像50、及び損傷情報Bを取得するために撮影画像54を取得している。このような場合には、差分抽出部32は、撮影画像50と撮影画像54との位置合わせを行い、その位置合わせを行った情報に基づいて、損傷情報Aと損傷情報Bとの位置合わせを行う。
【0058】
図6は、撮影画像50及び撮影画像54の特徴点を用いて、撮影画像50と撮影画像54との位置合わせを説明する図である。
【0059】
先ず差分抽出部32は、撮影画像50及び撮影画像54の特徴点を抽出する。例えば、差分抽出部32は、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)、又はAKAZE(ACCELERATED-KAZE)の特徴点の検出技術を使用して、撮影画像50と撮影画像54での特徴点を抽出する。
図6では、撮影画像50において抽出された複数の特徴点のうちの一つの特徴点PAが示されている。また、撮影画像54において抽出された複数の特徴点のうちの一つの特徴点PBが示されている。
【0060】
その後、差分抽出部32は、撮影画像50と撮影画像54との間で対応する特徴点を導出する。差分抽出部32は、例えば、Brue-Force、FLANN(Fast Library for Approximate Nearest Neighbors)の技術を用いて、撮影画像50と撮影画像54との間の対応点を導出する。
図6に示す場合では、直線CORにより、特徴点PAと特徴点PBとの対応関係が示されている。
【0061】
上述したように差分抽出部32は、撮影画像50の複数の特徴点と撮影画像54の複数の特徴点の対応関係を導出する(対応点の検出)。その後、差分抽出部32は、検出した対応点を用いて、撮影画像50と撮影画像54との位置合わせを行う。具体的には、撮影画像50と撮影画像54との対応関係から、撮影画像50上の座標と撮影画像54上の座標との座標変換モデル(座標変換行列)を生成する。その後、差分抽出部32は、損傷情報Aと損傷情報Bとの位置合わせを、座標変換モデルを使用して行い、位置合わせが行われた損傷情報Aと損傷情報Bとで差分を抽出する。
【0062】
(例2)
例2では差分抽出部32は、動的計画法によるマッチング(DP(Dynamic Programming)マッチング)を用いた方法により損傷情報A及び損傷情報Bの位置合わせを行い、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報を抽出する。なお、DPマッチングによる位置合わせの手法は、ひび割れに関する損傷情報の差分の抽出に好適に用いられる。
【0063】
図7は、DPマッチングを使用した損傷情報の差分の抽出に関して説明する図である。
【0064】
損傷情報AP及び損傷情報BPは、同一のひび割れの異なる時点での損傷情報である。損傷情報AP及び損傷情報BPはそれぞれ、ひび割れを示すベクトル情報である。差分抽出部32は、DPマッチングを使用して、損傷情報APと損傷情報BPとの対応箇所a~dを導出する。そして、差分抽出部32は、対応箇所a~dのそれぞれにおける損傷情報APと損傷情報BPとの差分情報を抽出する。
【0065】
(例3)
例3では差分抽出部32は、AI(Artificial Intelligence)を用いた方法により、損傷情報A及び損傷情報Bの位置合わせを行い、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報を抽出する。例えば差分抽出部32は、深層学習を用いて学習(生成)された、画像の位置合わせを行う認識器を使用して撮影画像50と撮影画像54との位置合わせを行い、その位置合わせ後の位置情報に基づいて、損傷情報Aと損傷情報Bとの位置合わせを行って、差分情報を抽出する。
【0066】
以上で説明したように、差分抽出部32は、様々な手法により損傷情報Aと損傷情報Bとの位置合わせを行い、位置合わせを行った後に、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分を抽出する。
【0067】
<検出ステップ>
検出ステップは、検出部34により行われる。検出部34は、差分情報のうち、損傷情報Aのみを有する箇所又は損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい箇所である第1の分類箇所を検出する。また、検出部34は、差分情報のうち、損傷情報Bのみ有する箇所又は損傷情報Bが損傷情報Aよりも大きい箇所である第2の分類箇所を検出する。また、検出部34は、差分情報、損傷情報A、及び損傷情報Bに基づいて、損傷情報A及び損傷情報Bを有する箇所又は損傷情報Aと損傷情報Bとが等しい箇所である第3の分類箇所を検出する。
【0068】
更に検出部34は、損傷情報の定量値において損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい箇所を第1の分類箇所として検出する。また、検出部34は、損傷情報の定量値において損傷情報Bが損傷情報Aよりも大きい箇所を第2の分類箇所として検出する。また、検出部34は、損傷情報の定量値において損傷情報Aと損傷情報Bとが等しい箇所を第3の分類箇所として検出する。
【0069】
図8は、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報の一例を示す図である。
【0070】
差分情報52は、損傷情報Aと損傷情報Bとの位置合わせを行い、損傷情報Bから損傷情報Aが引き算されることにより得られる。なお、図示された差分情報52は、損傷情報Bから損傷情報Aを差し引いたベクトル情報、損傷情報A、及び損傷情報Bに基づいて生成された損傷図として表示している。差分情報52のうち箇所Q(点線で囲まれた箇所)は、損傷情報Aのみが存在する箇所又は損傷情報が定量値で表されている場合には、損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい箇所であり、検出部34は第1の分類箇所として検出する。また、差分情報52のうち箇所R(黒の実線の箇所)は、損傷情報Bのみが存在する箇所又は損傷情報が定量値で表されている場合には、損傷情報Bが損傷情報Aよりも大きい箇所であり、検出部34は第2の分類箇所として検出する。また、差分情報52のうち箇所S(点線の箇所)は、損傷情報A及び損傷情報Bが存在する箇所又は損傷情報が定量値で表されている場合には、損傷情報Aと損傷情報Bとが等しい箇所であり、検出部34は第3の分類箇所として検出する。
【0071】
このように、検出部34は、差分情報52のうち第1の分類箇所及び第2の分類箇所を検出する。また、検出部34は、損傷情報A、損傷情報B、及び差分情報52に基づいて、第3の分類箇所を検出する。
【0072】
図9は、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報(定量値)の一例を示す図である。
【0073】
図9では、
図8で示した差分情報52において、ひび割れ幅に関する定量値に基づく分類(損傷情報が定量値で表されている場合)について説明が行われる。なお、図示された差分情報は、損傷情報Bが有するひび割れ幅から損傷情報Aが有するひび割れ幅を差し引いた数値が示されている。
【0074】
拡大
図66及び拡大
図68は、差分情報52の一部を拡大した図である。ひび割れ(番号D96_3)の部分では、差分情報が-0.15となっており、検出部34はひび割れ(番号D96_3)の部分を第1の分類箇所として検出する。また、ひび割れ(番号D97_3)の部分では、差分情報が0.05となっており、検出部34はひび割れ(番号D97_3)の部分を第2の分類箇所として検出する。また、ひび割れ(番号D14_1)の部分では、差分情報が0.00となっており、検出部34はひび割れ(番号D14_1)の部分を第3の分類箇所として検出する。
【0075】
このように、検出部34は、ひび割れの幅に関する差分情報のうち第1の分類箇所及び第2の分類箇所を検出する。また、検出部34は、損傷情報A、損傷情報B、及び差分情報52から、第3の分類箇所を検出する。
【0076】
以上説明したように、検出部34は、差分情報52のうち、損傷情報A及び損傷情報Bが存在する箇所に応じて、第1の分類箇所、第2の分類箇所、及び第3の分類箇所を検出する。また、検出部34は、差分情報52が定量値を有する場合には、損傷情報Aと損傷情報Bとの大小関係(等しい場合も含む)に応じて、第1の分類箇所、第2の分類箇所、及び第3の分類箇所を検出する。
【0077】
<表示ステップ>
表示ステップは、表示出力部36で行われる。表示出力部36は、第1の分類箇所を示す報知表示を表示部26に出力し、表示部26に報知表示を表示させる表示処理を行う。また、表示出力部36は、第2の分類箇所を示す表示部26に出力し、表示部26に報知表示を表示させる表示処理を行う。また、表示出力部36は、第3の分類箇所を示す表示部26に報知表示を表示させる表示処理を行う。
【0078】
図10は、表示出力部36で出力された表示用画像(損傷図及び報知表示)を表示部26に表示した一例を示す図である。
【0079】
表示部26には、損傷情報A及び損傷情報Bに基づいて生成された損傷
図53が表示される。損傷
図53において、第1の分類箇所は白色実線の報知表示Mが表示されている。また、損傷
図53において、第2の分類箇所は黒色実線の報知表示Nが表示されている。また、損傷
図53において、第3の分類箇所は点線の報知表示Pが行われている。このように、表示部26に表示される損傷
図53において、色や線種によって、第1の分類箇所、第2の分類箇所、及び第3の分類箇所への報知表示が行われる。
【0080】
また、表示部26は、第1の分類箇所に白色のバルーン形状の報知表示V1を表示している。報知表示V1は、第1の分類箇所として検出された損傷情報Aに基づいて、第1の分類箇所を報知するような位置に表示が行われる。また、表示部26は、損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい定量値を有する第1の分類箇所に黒色のバルーン形状の報知表示V2を表示している。このように、表示部26は、損傷
図53において、バルーン等のマーカによって、第1の分類箇所への報知表示を行う。
【0081】
以上で説明したように、本態様によれば、損傷情報Aと損傷情報Bとの差分情報52が抽出され、その差分情報52のうち、第1の分類箇所を検出する。そして本態様は、損傷情報A及び損傷情報Bの少なくとも一方の損傷情報と関連付けて第1の分類箇所を示す報知表示を表示部26に行うことで、ユーザが時系列的に不自然な差分情報を有する箇所を認識することができる。
【0082】
また、本態様では、差分情報52のうち、第2の分類箇所を検出する。そして本態様は、損傷情報A及び損傷情報Bの少なくとも一方の損傷情報と関連付けて第2の分類箇所を示す報知表示を表示部26に行うことで、ユーザに損傷が成長又は発現した箇所を認識させることができる。
【0083】
また、本態様では、差分情報52、損傷情報A、損傷情報Bに基づいて、第3の分類箇所を検出する。そして、本態様は、損傷情報A及び損傷情報Bの少なくとも一方の損傷情報と関連付けて第3の分類箇所を示す報知表示を表示部26に行うことで、ユーザに損傷が変化してない箇所を認識させることができる。
【0084】
<第1の変形例>
次に、上述の実施形態の第1の変形例に関して説明する。本例では、ユーザから指定された領域に対応する損傷情報Aに関連する撮影画像62及び損傷情報Bに関連する撮影画像64が表示部26に表示される。
【0085】
図11は、本例の表示形態の一例を説明する図である。
図11(A)は、表示部26に表示される損傷
図53を示す図である。
【0086】
ユーザは、表示部26に表示された損傷
図53において、一部の領域Fを指定する。表示出力部36は、一部の領域の指定を受け付け、指定された領域に対応する撮影画像62と撮影画像64とを表示部26に出力する。
【0087】
図11(B)は、表示部26に表示される撮影画像62と撮影画像64と示す図である。
【0088】
撮影画像62は、撮影画像50のF領域に対応する領域の拡大図である。撮影画像64は、撮影画像54のF領域に対応する領域の拡大図である。表示出力部36から表示部26に撮影画像62及び撮影画像64が出力される。そして、表示出力部36は、表示部26に撮影画像62と撮影画像64とが比較可能なように並べられて表示(比較表示)させる表示処理を行う。なお、撮影画像62及び撮影画像64に、対応する損傷図を重畳させて表示させてもよい。
【0089】
このように、ユーザが指定した領域の過去の撮影画像62と現在の撮影画像64と表示部26に表示することにより、ユーザは過去の点検対象の状態と現在の点検対象の状態を比較して観察することができる。
【0090】
<第2の変形例>
次に、上述の実施形態の第2の変形例に関して説明する。本例では、第1の分類箇所の補正方法をユーザに提示する。
【0091】
第1の分類箇所に対応する損傷情報(損傷情報A又は損傷情報B)は、様々な手法により補正することが可能である。したがって、表示出力部36は、単数又は複数の補正方法を表示部26に出力する。そして、表示部26は入力された補正方法を表示し、ユーザに補正方法を提示する。以下に、補正方法の具体例に関して説明する。
【0092】
第1の分類箇所に対応する損傷情報は、点検日時、点検した時の温度を用いて補正を行うことができる。例えば、コンクリートは温度変化により体積が変化するため、点検日時や画像特徴から気温を推定し、損傷情報における定量値(ひび割れ幅)を補正する。また、ユーザが日時や温度入力することにより、損傷情報における定量値を補正することもできる。
【0093】
また、第1の分類箇所の損傷情報を機械学習が行われた検出器により生成している場合には、閾値等を変更することにより、損傷情報の補正を行うことができる。
【0094】
図12は、撮影画像から検出器により、ひび割れの検出を説明する図である。
【0095】
図12(A)には、点検対象を撮影した撮影画像70が示されている。撮影画像70が機械学習により学習を施された検出器(AI)に入力されることにより、撮影画像70に写っているひび割れを検出し検出結果72を出力する。検出器(AI)は、ひび割れである確率を出力し、所定の閾値以上の確率を有するものを損傷として検出する。
【0096】
図12(B)には、検出器(AI)から出力された検出結果72を示す図である。例えば検出器(AI)は、ひび割れの確率が30%以上のものをひび割れとして、検出結果72を生成している。また、検出結果72では、ひび割れの確率が高い箇所を濃い線(矢印Iで示す)で構成し、ひび割れの確率が低い箇所を薄い線(矢印H)で表している。検出結果72では、ひび割れの確率を画素値で表示している。
【0097】
損傷情報Aのみが存在する箇所又は損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい箇所である第1の分類箇所を修正する場合には、損傷情報Bの生成する際の損傷検出の閾値を下げて、検出器(AI)に損傷を再検出させる。これにより、損傷情報Bにおいても損傷情報Aに対応する損傷が検出され、第1の分類箇所として検出された箇所に損傷情報A及び損傷情報Bが存在するようになり又は損傷情報Bの定量値が修正され、第1の分類箇所の補正が行われる。また、他の方法として、損傷情報Aのみが存在する箇所又は損傷情報Aが損傷情報Bよりも大きい箇所である第1の分類箇所を修正する場合には、損傷情報Aの生成する際の損傷検出の閾値を上げて、検出器(AI)に損傷を再検出させる。これにより、第1の分類箇所として検出された箇所に損傷情報A及び損傷情報Bが存在しなくなり又は損傷情報Aの定量値が修正され、第1の分類箇所の補正が行われる。
【0098】
以上で説明したように、第1の分類箇所に対応する損傷情報(損傷情報A又は損傷情報B)の単数又は複数の補正方法を、表示出力部36は表示部26に出力し、表示部26は補正方法を表示部26に表示することにより、ユーザに補正方法を提示する。
【0099】
<第3の変形例>
次に、上述の実施形態の第3の変形例に関して説明する。本例では、ユーザが手動により損傷情報A又は損傷情報Bの補正を行い、再び差分抽出処理が行われる。上述したように、第1の分類箇所に対応する損傷情報(損傷情報A又は損傷情報B)は補正が行われる。本例では、この補正がユーザの手動により行われる。
【0100】
図13は、損傷情報の補正の受け付けの一例に関して説明する図である。
【0101】
損傷情報に基づいてひび割れの損傷
図80が表示部26に表示されている場合に、ユーザは、ポインティングデバイスにより、ひび割れの損傷
図82を追加する。損傷
図82の追加は補正情報として、損傷情報取得部30により受け付けられる。そして、損傷情報取得部30により、既存の損傷情報が補正情報に基づき補正され、その後、再度、差分抽出部32により差分情報が抽出される。
【0102】
図14は、損傷情報の補正の受け付けの他の例に関して説明する図である。
【0103】
損傷情報に基づいて損傷領域(例えば剥離)の損傷
図84が表示部26に示されている場合に、ユーザは、ポインティングデバイスにより、損傷領域の損傷
図86を追加する。損傷
図86の追加は補正情報として、損傷情報取得部30により受け付けられる。そして損傷情報取得部30により、既存の損傷情報が補正情報に基づき補正され、その後、再度、差分抽出部32により差分情報が抽出される。
【0104】
このように、ユーザは、ひび割れ等の線状の損傷の場合には、トレース線の追加や削除などで損傷情報の補正を行うことができる。また、ユーザは、剥離などの面的な損傷の場合には、領域の追加や削除などで損傷情報の補正を行うことができる。
【0105】
なお、上述の例では、ユーザが手動により、損傷情報の補正を行うことを説明したが、自動により損傷情報の補正が行われてもよい。例えば、損傷情報取得部30は、第1の分類箇所として検出された箇所の損傷情報Aを削除したり、第1の分類箇所として検出された箇所に損傷情報Bとして損傷を追加して、損傷情報を自動で補正を行うこともできる。
【0106】
<第4の変形例>
次に、上述の実施形態の第4の変形例に関して説明する。本例では、差分情報(定量値)の大小に応じて、損傷図の表示を変更する。
【0107】
図15は、表示部26に表示された本例の損傷図を示す図である。なお、表示部26は表示出力部36から出力された表示用画像を表示するように表示出力部36により制御される。
【0108】
損傷
図55は、第2の分類箇所に対応する損傷情報に基づいて生成された損傷図である。損傷
図55は、定量値の差分情報(ひび割れの幅)の差分の大小に応じて、ひび割れを示す損傷図の線種を変更している。
【0109】
矢印Wで示されている損傷図は、ひび割れの幅の成長量が大きい差分情報に対応する。この損傷図の表示形態は細い線の点線で表されている。また、矢印Xで示されている損傷図は、ひび割れ幅の成長量が中程度の差分情報に対応する。この損傷図の表示形態は太い線の点線で表示されている。また、矢印Yで示されている損傷図は、ひび割れ幅の成長量が少ない差分情報に対応する。この損傷情報は実線で表示されている。
【0110】
このように、差分情報における定量値の大小に応じて表示形態を変えることにより、ユーザに損傷が成長している危険な箇所を報知することができる。
【0111】
<第5の変形例>
次に、上述の実施形態の第5の変形例に関して説明する。本例では、第1の分類箇所、第2の分類箇所、及び第3の分類箇所に対応する損傷図の表示及び非表示の切り替え制御が行われる。
【0112】
図16は、表示部26で第1の分類箇所に対応する損傷図の表示及び非表示を説明する図である。なお、表示部26は表示出力部36から出力された表示用画像を表示するように表示出力部36により制御される。
【0113】
図16(A)は、表示部26に表示された損傷
図53を示す図である。損傷
図53は、第1の分類箇所、第2の分類箇所、及び第3の分類箇所に対応する損傷情報から生成される損傷図が全て表示されている。なお、第1の分類箇所に対応する損傷図は白線(矢印Zで示す)で表示されている。
【0114】
図16(B)は、第1の分類箇所に対応する損傷図(矢印Z)を非表示にした、損傷
図53を示す図である。表示出力部36は、第1の分類箇所を非表示にした表示用画像を表示部26に出力し、表示部26に表示を行わせる表示処理を行う。
【0115】
このように、第1の分類箇所、第2の分類箇所、又は第3の分類箇所に対応する損傷図の表示部26への表示及び非表示を制御することにより、ユーザに所望の損傷図の表示を提供することができる。
【0116】
<その他>
上記実施形態において、各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0117】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0118】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0119】
上述の各構成及び機能は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の処理ステップ(処理手順)をコンピュータに実行させるプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはそのようなプログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することが可能である。
【0120】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
10 :損傷情報処理装置
12 :データ取得部
16 :メモリ
18 :操作部
20 :CPU
22 :RAM
24 :ROM
26 :表示部
30 :損傷情報取得部
32 :差分抽出部
34 :検出部
36 :表示出力部