(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126071
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 151/06 20060101AFI20240912BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240912BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09J151/06
C09J7/38
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034217
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 公太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 果奈美
(72)【発明者】
【氏名】松村 一成
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J040BA202
4J040DL121
4J040FA232
4J040GA07
4J040HB21
4J040HD20
4J040JA09
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA02
(57)【要約】
【課題】粘着力及び保持力に優れる粘着層を形成できる粘着剤組成物、粘着剤組成物の硬
化物を含む粘着剤、及び粘着剤を含む粘着シートを提供する。
【解決手段】光励起によって活性種を生成する単量体(a1)由来の構成単位を含む(メ
タ)アクリル系グラフト共重合体(A)を70~99質量%含み、粘着付与剤(B)を1
~30質量%含む、粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光励起によって活性種を生成する単量体(a1)由来の構成単位を含む(メタ)アクリ
ル系グラフト共重合体(A)を70~99質量%含み、粘着付与剤(B)を1~30質量
%含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着付与剤(B)がロジン系樹脂である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)が、直鎖状または分岐状のアルキル基
を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位を含有する請求項1に記
載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記光励起によって活性種を生成する単量体(a1)の活性種が、ラジカルである、請
求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記単量体(a1)が、ベンゾフェノン骨格、チオキサントン骨格、及びアントラキノ
ン骨格からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有する、請求項1に記載の粘着剤
組成物。
【請求項6】
前記単量体(a1)が、下記式(1)で表される単量体である、請求項1に記載の粘着
剤組成物。
【化1】
(式中、R
A及びR
Bはそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ
基、またはハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、mは0~4の整数を示し、X
は、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基、
または(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基を示す。)
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)の総量100質量%中、前記単量体(
a1)に由来する構成単位の含有量が、0.01質量%以上20質量%以下である、請求
項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)のガラス転移温度が0℃以下である、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)が、カルボキシ基含有ビニル系単量体
(a3)に由来する構成単位を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)の総量100質量%中、前記カルボキ
シ基含有ビニル系単量体(a3)に由来する構成単位の含有量が、0.1質量%以上20
質量%以下である、請求項9に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)が、ビニル系ラジカル重合性単量体(
m1)由来の構成単位と、マクロモノマー(M)由来の構成単位とを含む請求項1に記載
の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記マクロモノマー(M)が、下記式(2)の構造を有する請求項11に記載の粘着剤
組成物。
【化2】
(式中、X
1~X
n-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはCH
2OHを
示し、Y
1~Y
nは、それぞれ独立して、前記マクロモノマー(M)のモノマー構成単位
であるビニル系ラジカル重合性単量体(m2)のビニル基に結合するX
1~X
n-1以外
の置換基を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。)
【請求項13】
請求項1~12に記載の粘着剤組成物の硬化物を含む粘着剤。
【請求項14】
請求項13に記載の粘着剤を含む、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(メタ)アクリル系グラフト共重合体及び粘着付与剤を含む粘着剤組成物、粘
着剤組成物の硬化物を含む粘着剤、及び粘着剤を含む粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系粘着剤は、シールやラベル、粘着テープなどの汎用品から、ディスプレイ周
辺フィルムやシートの貼り合わせ等、多岐にわたる用途で使用されている。近年では、環
境負荷低減や省エネルギー化を目的として、アクリル系粘着剤の無溶剤化や乾燥工程削減
が求められている。それらの要求に応えるために、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤の検
討が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マクロモノマー由来の構成単位と、(メタ)アクリロイルオ
キシ基を有するベンゾフェノン誘導体を重合したグラフト共重合体が、塗工性や保持力、
耐基材汚染性に優れた粘着剤として使用できることが開示されている。特許文献2には、
アルキル(メタ)アクリレートと紫外線架橋基含有エチレン性不飽和モノマーを単量体単
位として含むポリマーと、20部未満の粘着付与剤を含有する粘着剤組成物を備えたマス
キングテープが、接着力の経時的な上昇防止と高い保持力を両立できることが開示されて
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/158475号公報
【特許文献2】特開2017-39856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物は粘着力が不十分である。また、特許文献2
に記載の組成物は保持力が不十分であるため、これらの方法では粘着力と保持力を両立す
ることができない。
本発明は、粘着力及び保持力に優れる粘着層を形成できる粘着剤組成物、粘着剤組成物
の硬化物を含む粘着剤、及び粘着剤を含む粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]光励起によって活性種を生成する単量体(a1)由来の構成単位を含む(メタ)ア
クリル系グラフト共重合体(A)を70~99質量%含み、粘着付与剤(B)を1~30
質量%含む、粘着剤組成物。
[2]前記粘着付与剤(B)がロジン系粘着付与剤(B1)である[1]の粘着剤組成物
。
[3]前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)が、直鎖状または分岐状のアルキ
ル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位を含有する[1]ま
たは[2]の粘着剤組成物。
[4]前記光励起によって活性種を生成する単量体(a1)の活性種が、ラジカルである
、[1]~[3]の粘着剤組成物。
[5]前記単量体(a1)が、ベンゾフェノン骨格、チオキサントン骨格、及びアントラ
キノン骨格からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有する、[1]~[4]の粘
着剤組成物。
[6]前記単量体(a1)が、下記式(1)で表される単量体である、[1]~[5]の
粘着剤組成物。
【0007】
【0008】
(式中、RA及びRBはそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ
基、またはハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、mは0~4の整数を示し、X
は、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基、
または(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基を示す。)
[7]前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)の総量100質量%中、前記単量
体(a1)に由来する構成単位の含有量が、0.01質量%以上20質量%以下である、
[1]~[6]の粘着剤組成物。
[8]前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)のガラス転移温度が0℃以下であ
る、[1]~[7]記載の粘着剤組成物。
[9]前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)が、カルボキシ基含有ビニル系単
量体(a3)に由来する構成単位を含む、[1]~[8]に記載の粘着剤組成物。
[10]前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)の総量100質量%中、前記カ
ルボキシ基含有ビニル系単量体(a3)に由来する構成単位の含有量が、0.1質量%以
上20質量%以下である、[9]の粘着剤組成物。
[11]前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)が、ビニル系ラジカル重合性単
量体(m1)由来の構成単位と、マクロモノマー(M)由来の構成単位とを含む[1]~
[10]の粘着剤組成物。
[12]前記マクロモノマー(M)が、下記式(2)の構造を有する[11]の粘着剤組
成物。
【0009】
【0010】
(式中、X1~Xn-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはCH2OHを
示し、Y1~Ynは、それぞれ独立して、前記マクロモノマー(M)のモノマー構成単位
であるビニル系ラジカル重合性単量体(m2)のビニル基に結合するX1~Xn-1以外
の置換基を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。)
[13][1]~[12]の粘着剤組成物の硬化物を含む粘着剤。
[14][13]に記載の粘着剤を含む、粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、粘着力及び保持力に優れる粘着層を形成できる粘着剤組成物、粘着剤組成物
の硬化物を含む粘着剤、及び粘着剤を含む粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる
例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、
その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の総
称である。「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称
である。「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の
総称であり、CH2=C(R)-C(=O)-(Rは水素原子またはメチル基)で表され
る基である。「マクロモノマー」とは、ラジカル重合性基または付加反応性の官能基を有
する重合物を意味する。「ビニル系ラジカル重合性単量体」とは、マクロモノマーではな
いエチレン性不飽和結合を有する単量体を意味する。数値範囲を示す「~」は、その前後
に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。マクロモノマー及び(
メタ)アクリル系共重合体の数平均分子量及び質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラ
フィー(GPC)によるポリスチレン基準の分子量である。
【0013】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(単位:℃)は、以下のFoxの
計算式により求められる計算値である。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
(式中、Wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度
(℃)を示す。)
【0014】
なお、単量体iのホモポリマーのガラス転移温度は、ポリマーハンドブック〔Poly
mer HandBook,J.Brandrup,Interscience,198
9〕に記載されている値を用いることができる。
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤組成物の合計質量100質量%に対して、光励起によ
って活性種を生成する単量体(a1)由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系グラフト
共重合体(A)を70~99質量%、及び、粘着付与剤(B)を1~30質量%含有する
。
【0015】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)は、
構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位であるグラフト共
重合体を意味する。(A)成分は、(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系ラジカル重
合性単量体(たとえばスチレン等)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0016】
(A)成分は、主鎖ポリマー構造と、主鎖ポリマー構造(幹ポリマー構造)に化学結合
する側鎖ポリマー構造(枝ポリマー構造)で構成されたグラフト共重合体である。本明細
書において、グラフト共重合体とは、主鎖ポリマー構造に、側鎖ポリマー構造として接続
された1種以上のブロックを持つ高分子である。主鎖ポリマーと側鎖ポリマーの構造は、
異なってもよいし、同じであってもよい。グラフト共重合体の製造方法としては特に限定
されないが、末端にラジカル重合性二重結合を有するマクロモノマーを側鎖ポリマー構造
として製造した後に、主鎖ポリマーの構成単位となるモノマーとラジカル重合する方法や
、反応点を有する主鎖ポリマーと反応点を有するマクロモノマーを予め製造した後、それ
らを反応させる方法、主鎖ポリマーの製造後に水素引き抜き能を有する開始剤を使用して
主鎖ポリマー上にラジカルを発生させ、側鎖ポリマーの構成単位となるモノマーを反応さ
せて側鎖ポリマー構造を製造する方法等が挙げられる。
【0017】
前記(A)成分は、光励起によって活性種を生成する単量体(a1)(以下、「(a1
)成分」ともいう。)由来の構成単位を含む。
(a1)成分は、紫外線や電子線などの光励起によって活性種を生成し、架橋構造を形
成する。活性種としては、ラジカル、カチオン、アニオンを例示でき、反応性の点からラ
ジカルが好ましい。
【0018】
光励起によってラジカルを生成する単量体としては、ベンゾフェノン骨格、チオキサン
トン骨格、アントラキノン骨格等を有する単量体が挙げられる。これらの骨格はベンゾフ
ェノン骨格を含むため、光励起によってベンゾフェノン骨格の励起3重項状態が生成し、
炭化水素基からの水素引き抜きにより2級水酸基を有する炭素ラジカルAとなる。この炭
素ラジカルAが、水素を引き抜かれて生成した炭素ラジカルBと結合することにより、架
橋点に3級水酸基、及び2つのフェニル基を有する架橋構造を形成する。架橋構造は、例
えば、ジフェニルヒドロキシメチル基を含むことが好ましい。架橋構造におけるフェニル
基は、置換基を有していてもいなくてもよい。
(a1)成分としては、下記式(1)で表されるベンゾフェノン誘導体が反応性の点か
ら好ましい。
【0019】
【0020】
式(1)中、RA及びRBはそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カル
ボキシ基、またはハロゲン原子を示す。
アルキル基としては、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、炭素
数1~5の直鎖または分岐のアルキル基がより好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルコキシ基が好ましく、
炭素数1~5の直鎖または分岐のアルコキシ基がより好ましい。
【0021】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ
る。
nは0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0がより好ましい。mは0~4の
整数であり、0~3の整数が好ましく、0がより好ましい。Xは、(メタ)アクリロイル
オキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基、または(メタ)アクリロイ
ルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基を示す。(メタ)アクリロイルオキシアル
キレンオキシ基におけるアルキレン基としては、炭素数2~10のアルキレン基が好まし
く、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましい。(メタ)アクリロイルオキシアルキレ
ンオキシ基としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2-(メタ)アクリ
ロイルオキシプロポキシ基等が挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキ
シカルボニルオキシ基としては、4-(メタ)アクリロイルオキシブトキシカルボニルオ
キシ基等が挙げられる。
【0022】
(a1)成分の具体例としては、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェ
ノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、2-ヒド
ロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-
(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メ
チル-2-(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4
-(メタ)アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ
-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン、4-(((
4-ベンゾイルフェノキシ)カルボニル)オキシ)ブチル(メタ)アクリレート等が挙げ
られる。硬化性に優れるため、保持力を良好にできることから、4-(メタ)アクリロイ
ルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾ
フェノン、4-(((4-ベンゾイルフェノキシ)カルボニル)オキシ)ブチル(メタ)
アクリレートが特に好ましい。
【0023】
(a1)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(a1)成分の含有量は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)の合計質量10
0質量%に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.02
質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以上10質量%以
下であることがさらに好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることが特に好ま
しい。構成単位Aの含有量が前記下限値以上であると、保持力向上の点から好ましい。構
成単位Aの含有量が前記上限値以下であると、他の成分との相溶性の点で好ましい。
【0024】
(a1)成分は、(A)成分の構成単位として、主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造
のどちらか一方に含まれてもよいし、主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造の両方に含ま
れてもよい。
前記(A)成分は、直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリ
レート(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)由来の構成単位を含有してもよい
。
【0025】
(a2)成分の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ
)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレー
ト、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(
メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレ
ート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オ
クチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)ア
クリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート
、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、セチ
ル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレ
ート、i-アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、i
-ノニル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、3-i-プロピルヘ
プチル(メタ)アクリレート、i-ウンデシル(メタ)アクリレート、2-t-ブチルヘ
プチル(メタ)アクリレート、i-ドデシル(メタ)アクリレート、i-トリデシル(メ
タ)アクリレート、i-テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
粘着力を良好にできることから、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリ
レート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-
ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)ア
クリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n
-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(
メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メ
タ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2
-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、
エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートがより
好ましい。
【0027】
(a2)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(a2)成分の含有量は、粘着力が良好となることから、(メタ)アクリル系グラフト
共重合体(A)の合計質量100質量%に対して、30質量%以上99.9質量%以下で
あることが好ましく、40質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましく、5
0質量%以上99.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
(a2)成分は、(A)成分の構成単位として、主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造
のどちらか一方に含まれてもよいし、主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造の両方に含ま
れてもよい。メチルメタクリレートを側鎖ポリマー構造に含有し、エチルアクリレートま
たはn-ブチルアクリレートまたは2-エチルヘキシルアクリレートを主鎖ポリマー構造
に含有することが特に好ましい。
【0029】
前記(A)成分は、カルボキシ基含有ビニル系単量体(a3)(以下、「(a3)成分
」ともいう。)由来の構成単位を含有してもよい。
(a3)成分の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)
アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル
酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロ
イルオキシエチル等が挙げられる。
粘着力を良好にできることから、アクリル酸が特に好ましい。
【0030】
(a3)成分の含有量は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)の合計質量10
0質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.2質量
%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であ
ることがさらに好ましい。(a3)成分の含有量が前記範囲であると、粘着力の向上の点
から好ましい。
【0031】
(a3)成分は、(A)成分の構成単位として、主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造
のどちらか一方に含まれてもよいし、主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造の両方に含ま
れてもよい。
前記(A)成分は、(a1)~(a3)成分以外のその他のビニル系ラジカル重合性単
量体由来の構成単位を含有しても良い。その他のビニル系ラジカル重合性単量体としては
、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、
酢酸ビニル、並びに(a1)~(a3)以外の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる
。
【0032】
(a1)~(a3)成分以外の(メタ)アクリレート化合物としては、シクロペンチル
(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メ
タ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル
(メタ)アクリレート等の環状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;2
-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレー
ト、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリ
レート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリ
レート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メ
タ)アクリレート等の水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)
アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート
、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリ
コール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリ
レート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル
(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベ
ンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ
)アクリレート、(1-ナフチル)メチル(メタ)アクリレート等の芳香環構造を有する
アルキル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシ
ジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレオイルモルフォリン等のヘテロ環構造を有
するアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエ
チル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキ
ル(メタ)アクリレート;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-
(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチ
ルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオ
ロデシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル
アミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは
2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記(A)成分は、ビニル系ラジカル重合性単量体(m1)(以下、「(m1)成分」
ともいう。)由来の構成単位と、マクロモノマー(M)(以下、「(M)成分」ともいう
。)由来の構成単位を含んでもよい。
(m1)成分としては、例えば、前記(a1)~(a3)成分及び、その他のビニル系
ラジカル重合性単量体として挙げた化合物が挙げられる。粘着力と保持力が良好となるこ
とから、(m1)成分として、前記(a1)~(a3)成分を含有することが好ましく、
(a1)成分として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、またはn-ブチルアク
リレート、または2-エチルヘキシルアクリレート;(a2)成分として、4-(メタ)
アクリロイルオキシベンゾフェノン、または4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)
エトキシ]ベンゾフェノン、4-(((4-ベンゾイルフェノキシ)カルボニル)オキシ
)ブチル(メタ)アクリレート;(a3)成分として、アクリル酸を含有することより好
ましい。
【0034】
(m1)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記(M)成分は、ラジカル重合性基及び繰り返し構造を有する化合物であれば特に限
定はされず、例えば、ポリイソブチレンや水素化ポリブタジエンの末端をビニル系ラジカ
ル重合性基で変性した化合物や、ビニル系ラジカル重合性基を有する単量体(m2)(以
下、「(m2)成分」ともいう。)由来の構成単位を2以上含み、末端にラジカル重合性
基を有する化合物等が挙げられる。設計度の高さから、(m2)成分の構成単位を2以上
含み、末端にラジカル重合性基を有する化合物であることが好ましい。マクロモノマー(
M)は2種以上を併用してもよい。
【0035】
(m2)成分としては、前記(a1)~(a3)成分及び、その他のラジカル重合性ビ
ニル系化合物として挙げた化合物が挙げられる。保持力が良好となることから、(m2)
成分として、(a1)成分または(a2)成分を含有することが好ましく、(a2)成分
を含有することがより好ましく、メチルメタクリレートを含有することが特に好ましい。
さらに前記(M)成分は、ラジカル重合性の点から、以下の式(2)で示される構造を
有することが好ましい。
【0036】
【0037】
(式中、X1~Xn-1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはCH2OHを
示し、Y1~Ynは、それぞれ独立して、前記マクロモノマー(M)のモノマー構成単位
であるビニル系ラジカル重合性単量体(m2)のビニル基に結合するX1~Xn-1以外
の置換基を示す。Zは末端基を表し、nは2~10000の整数を表す。)
X1~Xn-1及びY1~Ynは、それぞれ独立して、(m2)成分のビニル基に結合
する置換基である。Y1~Ynは、例えば、OR1、ハロゲン原子、COR2、COOR
3、CN、CONR4R5、NHCOR6、またはR7を示し、R1~R7はそれぞれ独
立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を示す。
【0038】
なお末端基のZは、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原
子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
(M)成分の含有量は、粘着力と保持力が良好となることから、前記(A)成分の総質
量に対して、0.1~40質量%であることが好ましく、0.5~30質量%がさらに好
ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0039】
(M)成分のGPCで測定した質量平均分子量(Mw)は、(B)成分との相溶性や、
ホットメルト加工性が良好となることから、500~10万が好ましく、600~5万が
より好ましく、1000~2万がさらに好ましい。
前記(M)成分は、公知の方法で製造したものを用いてもよく、市販のものを用いても
よい。前記(M)成分の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造す
る方法(米国特許第4680352号明細書)、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不
飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04304号)、重合性基を
化学的に結合させる方法(特開昭60-133007号公報及び米国特許第514795
2号明細書)及び熱分解による方法(特開平11-240854号公報)が挙げられる。
【0040】
製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用
いて製造する方法が好ましい。コバルト連鎖移動剤は連鎖移動定数が高いため、少量の添
加で分子量が制御されたマクロモノマーを得ることができる。
コバルト連鎖移動剤としては、公知のコバルト錯体が使用できる。前記コバルト連鎖移
動剤の量は、前記(m2)成分100質量部に対して、0.00001~0.1質量部が
好ましく、0.00005~0.05質量部であることがより好ましく、0.0001~
0.02質量部であることが特に好ましい。
【0041】
前記(A)成分のGPCで測定した質量平均分子量(Mw)は、(B)成分との相溶性
や、ホットメルト加工性が良好となることから、5000~200万が好ましく、1万~
100万がより好ましく、3万~50万がさらに好ましい。
前記(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、粘着力が良好となることから、0℃以下
が好ましく、-5℃以下がより好ましく、―10℃以下がさらに好ましく、―15℃以下
が特に好ましい。
【0042】
本発明の(メタ)アクリル系グラフト共重合体(A)は、公知の重合開始剤を用いて、
公知の方法で製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合
法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が適用でき、その中でも溶液重合法が好
ましい。
重合開始剤は、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤が好ましい。
【0043】
溶液重合における溶媒としては、例えば、アセトン、トルエン、キシレン、プロピレン
グリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、
メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-
プロピル、酢酸i-プロピル、エチル3-エトキシプロピオネート、イソプロピルアルコ
ール等の有機溶剤が挙げられる。
【0044】
本発明の粘着剤組成物は、粘着付与剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)を含
有する。(B)成分を含有することで、粘着力を向上することができる。
(B)成分の具体例としては、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、ロジンフェノール樹脂
、ロジンエステル樹脂、不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、マレイン
化ロジンエステル、重合ロジンエステル等)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、テルペン
フェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂)、石油樹脂、
クマロン・インデン樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる
。(B)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
(A)成分との相溶性に優れ、粘着力を良好とできることから、ロジン系樹脂(ロジン
、ロジンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジン
エステル樹脂、マレイン化ロジンエステル、重合ロジンエステル等)が好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、前記(A)成分を70~99質量%と、前記(B)成分を1
~30質量%とを含有する。(A)成分及び(B)成分の含有量をこの範囲とすることで
、粘着力と保持力を良好なものとすることができる。
(A)成分の含有量は、75~97質量%がより好ましく、80~95質量%がさらに
好ましい。(B)成分の含有量は、3~25質量%がより好ましく、5~20質量%がさ
らに好ましい。
【0046】
[粘着剤組成物/粘着剤]
本発明の粘着剤組成物は、前記(A)成分及び前記(B)成分を含む。
本発明の粘着剤組成物は、さらにその他の成分を含有してもよい。その他の成分として
は、例えば、溶剤、充填剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、金属不活
性化剤、老化防止剤、吸湿剤、防錆剤、加水分解防止剤、反応触媒が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、ヒドロキシルアミン系、イオウ
系の酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の配合する場合の配合量は、(メタ)アクリル
系共重合体の100質量部に対して0.1~5質量部が好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、溶剤を含む液状の粘着剤組成物の態様でもよく、溶剤を含ま
ないホットメルト型の粘着剤組成物の態様でもよい。
【0048】
本発明の粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型であり、必要に応じて硬化させ粘着
剤として用いることができる。活性エネルギー線としては、汎用性の点から、紫外線が好
ましい。紫外線の光源としては、例えばキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドラ
ンプ等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、前記(A)成分及び前記(B)成分を含むことから、粘着力
と保持力に優れた粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤は、本発明の粘着剤組成物の硬化物を含む。
【0049】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層を有する。一
態様としては、本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物に紫外線を照射してなる本
発明の粘着剤を含む粘着剤層を有する。
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤組成物をシート状に成形した粘着剤層のみから
なる態様でもよく、本発明の粘着剤組成物をシート状に成型した粘着剤層の片面または両
面に剥離性基材が積層した積層体の態様でもよい。
【0050】
粘着剤層は本発明の粘着剤組成物を含むものであってもよく、本発明の粘着剤組成物の
硬化物を含むものであってもよい。粘着シートの取り扱い性の点では、本発明の粘着剤組
成物を紫外線により硬化させた硬化物のみからなる接着剤層が好ましい。
本発明の粘着剤組成物または本発明の粘着剤組成物の硬化物を含む粘着層は透明両面粘
着層として使用できる。
【0051】
粘着層の厚さは、用途に応じて適宜設定できる。例えば10~500μmが好ましく、
20~100μmがより好ましい。
本発明の粘着シートを用いて貼り合せる部材は特に限定されない。例えば、ラベルやシ
ールの貼り合せ、車両用、建築用等の窓貼りフィルムの貼り合せ、液晶パネル等のディス
プレイ表示における各種パネルの貼り合せ、ガラス等の透明板材の貼り合せ、建材や自動
車の加飾フィルムの貼り合せに用いることができる。
【実施例0052】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定
されるものではない。以下において、「部」は「質量部」である。
各例において、以下の測定方法を用いた。
【0053】
<測定方法>
(マクロモノマーの分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8320)を用
いて測定した。マクロモノマー(M)のテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調製後、
東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperHZM-M(内径4.6mm、長さ
15cm)、HZM-M(内径4.6mm、長さ15cm)、HZ-2000(内径4.
6mm、長さ15cm)、TSKguardcolumn SuperHZ-L(内径4
.6mm、長さ3.5cm)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0
.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の
条件で測定し、標準ポリスチレン換算にてMw、Mn、及びMw/Mnを算出した。
【0054】
(共重合体の質量平均分子量)
共重合体の質量平均分子量(Mw)は、GPC装置(東ソー株式会社製、HLC-81
20)を用いて測定した。共重合体の0.3質量%THF溶液を調製し、東ソー社製カラ
ム(TSKgel SuperHM-H×4、TSKguardcolumn Supe
rH-H)が装着された上記装置に上記溶液20μLを注入し、流量:0.6mL/分、
溶離液:THF(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレ
ン換算にてMw、Mn、及びMw/Mnを算出した。
【0055】
<評価方法>
(粘着力の評価方法)
試験片の剥離PETを剥がして粘着層を露出させ、貼り合せ面が25mm×70mmに
なるように30mm×110mmのステンレス(SUS)板に3kgのハンドローラーを
用いて貼り合せた。23℃において、剥離角度180°、引張速度300mm/min.
で、SUS板に対する剥離強度(N/25mm)を測定し、粘着力とした。以下の基準で
粘着力を評価した。
〇:6[N/25mm]以上
△:4[N/25mm]以上、6[N/25mm]未満
×:4[N/25mm]未満
【0056】
(保持力の評価方法)
試験片の一端において、剥離PETを剥がして粘着層を露出させ、30mm×110m
mのSUS板に3kgのハンドローラーを用いて、貼り合せ面が25×25mmとなるよ
うに水平に貼り合せた。温度80℃、湿度85%の恒温恒湿層試験機内にて15分放置し
た。その直後に、貼り合せ面に対して剪断方向に力がかかるようにSUS板を設置し、試
験片の他端を下にして1.0kgの荷重をかけ、保持時間を測定した。保持力を以下の基
準で評価した。
〇:保持時間が500秒以上
△:保持時間が300秒以上、500秒未満
×:保持時間が300秒未満
【0057】
製造例1[分散剤1の製造]
撹拌機、冷却管、温度計、及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水を9
00部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウムを60部、メタクリル酸カリウムを1
0部、及びメタクリル酸メチル(MMA)を12部入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換
しながら50℃に昇温した。さらに、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチル
プロピオンアミジン)二塩酸塩を0.08部添加し、60℃に昇温した。昇温後、滴下ポ
ンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。混合物を
60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0058】
製造例2[連鎖移動剤1の製造]
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物を1
.00g、ジフェニルグリオキシムを1.93g、あらかじめ窒素バブリングにより脱酸
素したジエチルエーテルを80mL入れ、室温で30分間撹拌した。さらに、三フッ化ホ
ウ素ジエチルエーテル錯体の10mLを加え、6時間撹拌した。混合物をろ過し、固体を
ジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体である連鎖移動剤1を2
.12g得た。
【0059】
製造例3[マクロモノマー(M-1)の製造]
撹拌機、冷却管、温度計、及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水を1
45部、硫酸ナトリウムを0.1部、及び分散剤1(固形分10質量%)を0.25部入
れて撹拌し、均一な水溶液とした。さらに、メチルメタクリレートを100部、連鎖移動
剤1を0.0022部、及び重合開始剤として、パーオクタO(日油社製、商品名「パー
オクタO」)を0.4部加え、水性懸濁液とした。
【0060】
さらに、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して3.5時間攪拌し、さらに重合率
を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、混合物を40℃に冷却して、
マクロモノマーを含む水性懸濁液を得た。得られた水性懸濁液をフィルタで濾過し、フィ
ルタ上に残った残留物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マク
ロモノマー(M-1)を得た。
このマクロモノマー(M-1)の分子量を表1に示す。
【0061】
【0062】
製造例4[(メタ)アクリル系共重合体(A-1)の製造]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチ
ルを40部、IPAを7.7部、マクロモノマー(M-1)を5部入れ、窒素ガス通気下
で外温を85℃に昇温した。外温が85℃に達し、内温が安定した後、20部の酢酸エチ
ル、91.5部のn-ブチルアクリレート、3部のAA、0.5部の4-メタクリロイル
オキシベンゾフェノン(新菱社製、商品名「4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン」
)、重合開始剤として、0.13部のナイパーBMT-K40(日油製、商品名「ナイパ
ーBMT-K40」)からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後に5部の酢酸
エチルを加え、1時間保持した後、0.5部のパーオクタO及び10部の酢酸エチルから
なる混合物を30分間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤(BAS
F社製、商品名「イルガノックス1010」)を0.5部投入し、固形分((モノマー+
溶剤仕込み量)中のモノマー仕込み量の割合、以下同様)が53質量%になるように酢酸
エチルを添加した後、室温まで冷却して(メタ)アクリル系共重合体(A-1)を含む共
重合体溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体の分子量及びガラス転移温度(計算値)を表2に
示す。
【0063】
製造例5[(メタ)アクリル系共重合体(A-2)の製造]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチ
ルを40部、IPAを7.7部、マクロモノマー(M-1)を5部入れ、窒素ガス通気下
で外温を85℃に昇温した。外温が85℃に達し、内温が安定した後、20部の酢酸エチ
ル、91.7部のn-ブチルアクリレート、3部のAA、0.3部の4-メタクリロイル
オキシベンゾフェノン、重合開始剤として、0.13部のナイパーBMT-K40からな
る混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後に5部の酢酸エチルを加え、1時間保持し
た後、0.5部のパーオクタO及び10部の酢酸エチルからなる混合物を30分間かけて
添加した。その後、2時間保持した後、イルガノックス1010を0.5部投入し、固形
分((モノマー+溶剤仕込み量)中のモノマー仕込み量の割合、以下同様)が53質量%
になるように酢酸エチルを添加した後、室温まで冷却して(メタ)アクリル系共重合体(
A-2)を含む共重合体溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体の分子量及びガラス転移温度(計算値)を表2に
示す。
【0064】
製造例6[(メタ)アクリル系共重合体(A′-1)の製造]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチ
ルを40部、IPAを5部部入れ、窒素ガス通気下で外温を85℃に昇温した。外温が8
5℃に達し、内温が安定した後、20部の酢酸エチル、94.5部のn-ブチルアクリレ
ート、5部のAA、0.5部の4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、重合開始剤と
して、0.13部のナイパーBMT-K40からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴
下終了後に5部の酢酸エチルを加え、1時間保持した後、0.5部のパーオクタO及び1
0部の酢酸エチルからなる混合物を30分間かけて添加した。その後、2時間保持した後
、イルガノックス1010を0.5部投入し、固形分((モノマー+溶剤仕込み量)中の
モノマー仕込み量の割合、以下同様)が53質量%になるように酢酸エチルを添加した後
、室温まで冷却して(メタ)アクリル系共重合体(A′-1)を含む共重合体溶液を得た
。
得られた(メタ)アクリル系共重合体の分子量及びガラス転移温度(計算値)を表2に
示す。
【0065】
【0066】
なお、表中の記号は以下の意味を示す。
マクロモノマー(M-1):製造例3で製造したマクロモノマー(M-1)
4MBP:4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン
n-BA:n-ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
【0067】
実施例1
(メタ)アクリル系共重合体(A-1)を含む共重合体溶液141.5部((A―1)
を75部含有)に、(B)成分として、スーパーエステルA-100(荒川化学社製のロ
ジンエステル樹脂、商品名「スーパーエステルA-100」)を25部溶解し、膜厚38
μmのPETフィルム(以下、「PET」とも言う。)上に、粘着剤組成物をアプリケー
ターで塗工し、90℃で1時間乾燥して粘着剤組成物層を形成した。
【0068】
350mWの高圧水銀ランプを使用して、粘着剤組成物層に紫外線を照射し、硬化させ
て粘着剤層を得た。照射エネルギーは35mJ/cm2(積算光量計UV-350(オー
ク(株)製)による実測値)とした。その上面に、剥離処理をしたPETフィルム(以下
、「剥離PET」とも言う。)を重ねて、剥離PET-粘着剤層-PETの構成の積層体
を得た。粘着剤層の厚さは50μmとした。硬化後の積層体を25mm幅、長さ250m
mの短冊状に裁断して試験片とし、粘着力と保持力の評価を行った。結果を表3、および
表4に示す。
【0069】
実施例2~10、比較例1~3
表3、および表4に記載の通りに組成を変更した以外は、実施例1と同様にして試験片
とし、粘着力と保持力の評価を行った。結果を表3、および表4に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
なお、表中の記号は以下の意味を示す。
(A-1):製造例4で製造した(メタ)アクリル系共重合体(A-1)
(A-2):製造例5で製造した(メタ)アクリル系共重合体(A-2)
(A′-1):製造例6で製造した(メタ)アクリル系共重合体(A′-1)
スーパーエステルA-100:荒川化学社製のロジンエステル樹脂、商品名「スーパーエ
ステルA-100」)
スーパーエステルA-125:荒川化学社製のロジンエステル樹脂、商品名「スーパーエ
ステルA-125」)
【0073】
表3、および表4から明らかなように、各実施例で得られた粘着剤は、粘着力と保持力
がともに優れた結果であった。一方、B成分を含有しない比較例1は粘着力が低かった。
B成分の含有量が1~30質量%の範囲外である比較例2、及び(A)成分の代わりにグ
ラフト構造を有さない(メタ)アクリル系共重合体(A′-1)を含有する比較例3は、
保持力が低かった。