IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井造船株式会社の特許一覧

特開2024-126167物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー
<>
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図1
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図2
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図3
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図4
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図5
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図6
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図7
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図8
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図9
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図10
  • 特開-物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126167
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバー
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240912BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034383
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 昌博
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】多数のデータの中から必要なデータを簡便に確認することができる物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバーを提供する。
【解決手段】管理サーバー10により物流施設1での保全作業に関する対象データD1aをクライアントコンピュータ20に提示する物流施設のデータセットの提示方法において、管理サーバー10は、保全作業に関する複数種類のデータが物流施設1でのそれぞれの部品3について集積しているデータセットD1を有していて、保全作業の実施および立案の予定を管理サーバー10により監視し、その予定に基づいて、管理サーバー10により、データセットD1の中からその予定での保全対象部品3aに関する対象データD1aを特定するデータ処理を行って、特定したその対象データD1aをクライアントコンピュータ20に提示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を一時的に保管する物流施設で使用されている多数種類の設備のそれぞれが、複数または単一の部品で構成されていて、管理サーバーにより保全作業に関するデータを対象データとしてクライアントコンピュータに提示する物流施設のデータセットの提示方法において、
前記管理サーバーは、複数種類の前記データが前記物流施設でのそれぞれの前記部品について集積しているデータセットを有していて、
前記保全作業の実施および立案の予定を前記管理サーバーにより監視し、
監視している前記予定に基づいて、前記管理サーバーにより、前記データセットの中からその予定における前記保全作業の対象となる保全対象部品に関する前記データを前記対象データとして特定するデータ処理を行って、特定した前記対象データを前記クライアントコンピュータに提示する物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項2】
前記予定の監視では、前記クライアントコンピュータから送信された前記保全対象部品を示すメディアデータを前記管理サーバーにより受信したことをその保全対象部品への前記保全作業が立案されて、前記予定が立てられたと見做して、
前記対象データの特定では、受信した前記メディアデータに基づいて前記管理サーバーにより前記保全対象部品を特定するデータ処理を行う請求項1に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項3】
前記管理サーバーの前記記憶部には、前記物流施設を運用するユーザーのアカウントとそのユーザーが運用する前記物流施設で使用されるそれぞれの前記設備とその設備の型番とが紐付けされたアカウントデータが格納されていて、
前記メディアデータに基づいた前記保全対象部品の特定では、前記ユーザーが使用するユーザークライアントコンピュータから前記メディアデータが送信されると前記アカウントデータに基づいて、前記管理サーバーにより前記ユーザーが運用する前記物流施設で使用されるそれぞれの前記設備の前記型番を特定するデータ処理を行って、特定した前記型番を有する前記設備の前記部品を候補として選択して、選択した前記候補の中から前記保全対象部品を選択する請求項2に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項4】
前記メディアデータに基づいた前記保全対象部品の特定では、前記部品の状態を前記管理サーバーにより監視し、前記クライアントから前記メディアデータが送信されると監視している前記部品の状態に基づいて、前記管理サーバーにより、その状態が基準よりも悪い状態悪化部品を特定するデータ処理を行って、特定した前記状態悪化部品の中から前記保全対象部品を選択する請求項2または3に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項5】
前記メディアデータに基づいて前記保全対象部品を特定できない場合に、前記管理サーバーにより前記保全作業に関する保全サービスを提供するサービス提供者が使用しているサービスクライアントコンピュータに前記保全対象部品を特定できない通知を出し、
前記対象データの特定では、前記通知を受信した前記サービスクライアントコンピュータから指定された前記保全対象部品を用いる請求項2に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項6】
前記管理サーバーは、前記予定が予め立てられた保全計画データを有していて、
前記対象データの特定では、前記保全計画データに基づいて前記管理サーバーにより前記保全対象部品を特定するデータ処理を行う請求項1に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項7】
前記保全計画データに基づく前記保全対象部品の特定では、前記予定の日程に基づいて、前記管理サーバーにより、前記保全計画データの中からその日程が所定時間後に迫る前記予定を選択するデータ処理を行うことにより、選択した前記予定で予め決められていた前記保全対象部品を特定する請求項6に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項8】
前記管理サーバーの記憶部に格納された前記データセットは、前記部品に対応したディレクトリ名を冠して、その部品についての複数種類の前記データが格納された部品用ディレクトリをそれぞれの前記部品ごとに有していて、
前記管理サーバーにより、それぞれの前記部品用ディレクトリの中から前記保全対象部品に対応したディレクトリ名を冠する前記部品用ディレクトリを選択するデータ処理を行うことにより、選択したその部品用ディレクトリに格納されている複数種類の前記データを前記対象データとする請求項1または2または6に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項9】
前記データセットには、複数種類の前記データが複数の前記物流施設でのそれぞれの前記部品について集積している請求項1または2または6に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項10】
前記予定に関して前記管理サーバーにより前記物流施設を運用しているユーザーが使用しているユーザークライアントコンピュータと前記保全作業に関する保全サービスを提供するサービス提供者が使用しているサービスクライアントコンピュータとの間の双方向通信を中継する場合には、前記管理サーバーにより前記ユーザークライアントコンピュータと前記サービスクライアントコンピュータとの両方に前記対象データを提示する請求項1または2または6に記載の物流施設のデータセットの提示方法。
【請求項11】
荷物を一時的に保管する物流施設で使用されている多数種類の設備のそれぞれが、複数または単一の部品で構成されていて、保全作業に関するデータを対象データとしてクライアントコンピュータに提示する物流施設のデータセットの管理サーバーにおいて、
演算処理部、主記憶部、および、補助記憶部を備えていて、前記補助記憶部に、複数種類の前記データが前記物流施設でのそれぞれの前記部品について集積しているデータセットが記憶されていて、
前記演算処理部は、前記保全作業の実施と立案の予定を監視するデータ処理と、前記予定に基づいて、前記データセットの中からその予定における前記保全作業の対象となる保全対象部品に関する前記データを前記対象データとして特定するデータ処理と、特定した前記対象データを前記クライアントコンピュータに提示するデータ処理と、を実行する構成にした物流施設のデータセットの管理サーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバーに関し、より詳しくは、荷物を一時的に保管する物流施設で使用されている設備の多数種類の部品ごとの各種データが集積したデータセットの中から所望するデータを簡便に確認できる物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)などのXR(クロスリアリティ)の技術の利用が進んでいる。例えば、VR技術を利用して遠隔地からの点検作業を支援するシステムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明は、VR技術を利用して点検員が遠隔地からでも、実際に点検現場に居るかのように点検現場の画像や音を確認することが可能になっている。
【0003】
ところで、荷物を一時的に保管する物流施設には、多数種類の設備が運用されている。例えば、物流施設の一例であるコンテナターミナルでは、コンテナを荷役するクレーンやコンテナを運搬する運搬車両などの荷役機器の他にリーファコンテナに接続される電源設備、コンテナターミナルの各所に設置された照明設備、コンテナターミナルの出入口に設置されたゲート設備などの多数種類の設備が使用されている。また、クレーンのような大型の荷役機器は、走行装置のモータ、減速機、ガーダ、トロリの横行装置などの多数の部品から構成されている。
【0004】
物流施設でのそれぞれの部品ごとに図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなどのデータが存在する。つまり、物流施設でのデータセットは、それらのデータが集積することにより膨大な量になっている。それ故、物流施設の保全作業(事後保全、予防保全、改良保全、予知保全など)の対象となる部品に関するデータを確認しようとしても、多数のデータのなかから必要なデータを見つけ出すには専門的な知識が必要になっていた。特許文献1に記載の発明を利用して、専門的な知識が乏しい点検者が、その所定の設備や部品の点検項目、あるいは、点検結果で発見された異常を解消するためのデータを確認しようとしても、膨大な量のデータセットの中から対象となるデータを探し出すのは容易ではない。それ故、物流施設のデータセットの中から所望するデータを簡便に確認するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-149349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、物流施設のデータセットの中から所望するデータを簡便に確認できる物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の物流施設のデータセットの提示方法は、荷物を一時的に保管する物流施設で使用されている多数種類の設備のそれぞれが、複数または単一の部品で構成されていて、管理サーバーにより保全作業に関するデータを対象データとしてクライアントコンピュータに提示する物流施設のデータセットの提示方法において、前記管理サーバーは、複数種類の前記データが前記物流施設でのそれぞれの前記部品について集積しているデータセットを有していて、前記保全作業の実施および立案の予定を前記管理サーバーにより監視し、監視している前記予定に基づいて、前記管理サーバーにより、前記データセットの中からその予定における前記保全作業の対象となる保全対象部品に関する前記データを前記対象データとして特定するデータ処理を行って、特定した前記対象データを前記クライアントコンピュータに提示することを特徴とする。
【0008】
本発明の物流施設のデータセットの管理サーバーは、荷物を一時的に保管する物流施設で使用されている多数種類の設備のそれぞれが、複数または単一の部品で構成されていて、保全作業に関するデータを対象データとしてクライアントコンピュータに提示する物流施設のデータセットの管理サーバーにおいて、演算処理部、主記憶部、および、補助記憶部を備えていて、前記補助記憶部に、複数種類の前記データが前記物流施設でのそれぞれの前記部品について集積しているデータセットが記憶されていて、前記演算処理部は、前記保全作業の実施と立案の予定を監視するデータ処理と、前記予定に基づいて、前記データセットの中からその予定における前記保全作業の対象となる保全対象部品に関する前記データを前記対象データとして特定するデータ処理と、特定した前記対象データを前記クライアントコンピュータに提示するデータ処理と、を実行する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クライアントコンピュータに対して管理サーバーから提示される対象データは、実施または立案しようとしている保全作業に適したデータであり、クライアントが所望したデータになっている。それ故、物流施設での多数種類の設備や部品に関する知識が乏しいクライアントでも、膨大な量のデータが集積したデータセットの中から所望するデータを簡便に確認することができる。
【0010】
また、クライアントが所望するデータを適時、簡便に確認可能になることにより、クライアントがデータセットを管理する必要が無くなるため、管理サーバーが一括でそのデータセットを管理することができる。即ち、多数のクライアントにデータセットを管理させることで生じる情報漏洩のリスクを大幅に低減することができる。このように、本発明は、多数のデータの中から所望するデータを簡便に確認可能な構成でありながら、データセットの機密性の向上に非常に有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】物流施設のデータセットの管理サーバーの実施形態を例示する構成図である。
図2】データセットのデータ構造を例示する説明図である。
図3】保全計画データを例示する説明図である。
図4】アカウントデータを例示する説明図である。
図5】学習データを例示する説明図である。
図6】物流施設のデータセットの提示方法の実施形態の手順を例示するフロー図である。
図7】メディアデータと分類モデルとを用いる保全対象部品の特定手法を例示する説明図である。
図8】物流施設のデータセットの提示方法の実施形態の変形例1の手順を例示するフロー図である。
図9】サービス提供者の関与による保全対象部品の特定手法を例示する説明図である。
図10】物流施設を例示する説明図である。
図11】データセットでの在庫データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバーを、図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1に例示する物流施設のデータセットの管理サーバーの実施形態を用いて物流施設のデータセットの提示方法が実施される。管理サーバー10および提示方法は、データセットD1に存在する大量のデータの中からクライアント(物流施設1を運用するユーザー、物流施設1での保全作業のサービスを提供するサービス提供者など)が所望するデータを確認するために使用される。即ち、この実施形態によって、クライアントが保全作業の実施や立案を行う際に、管理サーバー10により、データセットD1の中からその保全作業に適した対象データD1aが特定されて、特定された対象データD1aがクライアントに提示される。
【0014】
まず、物流施設1について説明する。
【0015】
物流施設1は、荷物を一時的に保管することで物流の拠点となっているコンテナターミナルや倉庫施設などの公知の種々の物流施設を用いることができる。なお、物流施設1には、複数種類の鋼板などを製造および出荷する製造施設も含む。
【0016】
物流施設1では、多数種類の設備2(2a、2b)が使用されている。設備2には、複数の部品で構成される設備2aと単一の部品で構成される設備2bとが存在する。設備2aは、例えば、コンテナターミナルでコンテナを荷役する公知の種々のクレーンや運搬車両(構内シャシ)である。設備2bは、例えば、コンテナターミナルで、リーファコンテナに電力を供給する電源設備、コンテナターミナルの各所に設置された照明機器、コンテナターミナルの出入口に設置されたゲート装置などである。また、設備2bには、蔵置レーンなどの保管エリアも含めてもよい。設備2aの一例は、クレーンであり、そのクレーンを構成する複数の部品3は、構造物の一部であるガーダ、走行装置のモータや減速機、トロリ、吊具などである。設備2bの一例は、リーファコンテナ用の電源設備であり、その電源設備を構成する単一の部品3は、電源装置である。
【0017】
以上のとおり、物流施設1ではそれらの設備2を構成する多数の部品3が存在しており、それぞれの部品ごとに保全作業に関するデータとして、図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなどの複数種類のデータが存在する。したがって、それらの多数のデータが集積しているデータセットD1は、データ量が多量になっている。データセットD1については後述する(図2参照)。
【0018】
次に、管理サーバー10の詳細について説明する。
【0019】
管理サーバー10は、多数のクライアントコンピュータ20(20A、20B)および管理システム30と相互に通信可能に接続されている。多数のクライアントコンピュータ20は、多数のユーザークライアントコンピュータ20Aおよび多数のサービスクライアントコンピュータ20Bが含まれる。管理システム30は、物流施設1での荷物の管理や設備2の管理を行っている。管理サーバー10とクライアントコンピュータ20および管理システム30とは、同一のネットワーク(LAN)を介して相互に接続されていてもよく、複数のネットワークがインターネットルータを介して相互に接続された広域通信網(WAN)を介して相互に接続されていてもよく、インターネットを介して相互に接続されていてもよい。
【0020】
管理サーバー10は、物理サーバーや仮想サーバーなどの公知の種々のサーバーを用いることができる。管理サーバー10とクライアントコンピュータ20および管理システム30とがネットワーク(インターネットも含む)で接続されたシステムは、クライアントサーバーシステムでもよく、Webシステムでもよい。クライアントサーバーシステムは、Webブラウザではなく、専用のアプリケーションを使用するシステムを示し、Webシステムは、Webブラウザを使用するシステムを示す。管理サーバー10は、Webサーバー、アプリケーションサーバー、データサーバー、および、メールサーバーなどの複数のサーバーで構成されてもよい。
【0021】
管理サーバー10は、演算処理部(CPU)11、主記憶部(メモリ)12、補助記憶部(例えば、HDD)13、入出力部(例えば、ネットワークのインターフェース)14を備えている。補助記憶部13には、データセットD1(図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなど)、メディアデータD2、保全計画データD3、アカウントデータD4、および、学習データ(教師データ、訓練データ)D5が記憶されている。
【0022】
ユーザークライアントコンピュータ20Aは、ユーザーにより使用されるクライアントコンピュータ20を示す。ユーザーはそれぞれの物流施設1を運用している組織である。物流施設1によっては、複数のユーザーにより運用される場合もある。物流施設1の運用には、設備2の保全作業(予防保全、事後保全、予知保全、改良保全)が含まれていて、ユーザーには、設備2を運転する運転者、設備2が使用される物流施設1の作業者や物流施設1を管理する施設管理者、設備2での保全作業を行う保全作業者や点検作業(予防保全作業)を行う点検者が含まれる。
【0023】
サービスクライアントコンピュータ20Bは、サービス提供者により使用されるクライアントコンピュータ20を示す。サービス提供者は管理サーバー10を管理するとともに管理サーバー10を利用した保全サービスを提供している組織である。サービス提供者は、それぞれの物流施設1を施工に関与し、導入される設備2を開発、設計、製造、販売していて、それぞれの物流施設1での保全サービスを請け負っている。サービス提供者の管理部署により管理サーバー10が管理されており、開発、設計、製造、販売に係る部署によりサービスクライアント40が使用されている。なお、サービス提供者とは別に、複数の部品3で構成される設備2aのそれぞれの部品や単一の部品3で構成される設備2bを開発、設計、製造、販売した組織であるメーカーが使用するメーカークライアントコンピュータが管理サーバー10に接続されていてもよい。
【0024】
クライアントコンピュータ20は、所定のアプリケーションソフトウェアにより管理サーバー10と相互に通信可能に接続された公知の種々のコンピュータを用いることができる。クライアントコンピュータ20は、所定のアプリケーションソフトウェアによりネットワークあるいはインターネットを介して管理サーバー10に接続可能であればよい。コンピュータとしては、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレットパーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、スマートフォン(モバイルフォン、セルフォン)、ウェアラブルデバイスなどである。クライアントコンピュータ20は、メディアデータD2を取得可能であることが好ましく、メディアデータD2の取得には、コンピュータに付属するカメラ、マイク、キーボードなどの入力機器が用いられる。
【0025】
所定のアプリケーションソフトウェアは、Webブラウザを介して管理サーバー10で動作するWebアプリケーションソフトウェアでもよく、管理サーバー10に保存され、管理サーバーからユーザークライアントコンピュータ20Aやサービスクライアントコンピュータ20Bにダウンロードされてインストールされる専用のソフトウェア(ネイティブアプリケーションソフトウェア)でもよい。また、所定のアプリケーションソフトウェアは、CD-ROMやフラッシュメモリなどの電子記憶媒体により提供されるパッケージ型のソフトウェアでもよい。
【0026】
クライアントコンピュータ20が管理サーバー10にログイン(接続)する場合には、所定のアプリケーションソフトウェアにより管理サーバー10へのログイン作業が行われる。このログイン作業には、例えば、後述するアカウントデータD4が用いられる。
【0027】
管理システム30は、物流施設1での荷物や多数の設備2を管理している。管理システム30は、公知のコンピュータを用いることができる。管理システム30は、多数の設備2に設置された制御システムや多数種類のセンサと通信可能に接続されていて、それらの制御システムやセンサから得られたデータをデータ処理することにより、保全作業の実施を計画している。このデータ処理での保全作業の計画には、公知の種々の計画手法を用いることができる。管理システム30により計画された保全作業の実施の予定が保全計画データD3として、管理サーバー10に送信されて、管理サーバー10の補助記憶部13に記憶される。なお、管理サーバー10が管理システム30の機能を有していて、保全計画データD3を作成してもよく、その場合、管理システム30は必須ではない。
【0028】
次に、管理サーバー10が有している各種のデータの詳細について説明する。
【0029】
図2は、補助記憶部13に記憶されているデータセットD1のデータ構造の一例を示している。データセットD1には、保全作業に関する複数種類のデータ(図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなど)が複数の物流施設1でのそれぞれの部品3について集積している。データセットD1は、一つの物流施設1における多数のデータが集積していてもよく、また、一組織のユーザー専用の多数のデータが集積していてもよいが、複数の物流施設1における多数のデータが集積していることが好ましい。複数の物流施設1における多数のデータが集積することで、データセットD1でのデータ量は多くなるため、ユーザーが所望するデータの探索には不利になるが、データセットD1の機密性や管理性が向上するというメリットがある。複数の物流施設1における多数のデータを集積するのみでは、データ量が増えることによるデメリットの影響があるが、本実施形態の提示方法を利用することによりユーザー自身が所望するデータを探し出す必要がなく、データ量が増えることによるデメリットは解消される。したがって、複数の物流施設1における多数のデータの集積による機密性や管理性の向上というメリットのみを授受できる。
【0030】
データセットD1は、ルートディレクトリDrおよび各サブディレクトリDs(Dsa、Dsb、Dsc、Dsl)を有している。データセットD1は、ルートディレクトリDr(図2中のroot)から、下位の階層を有さないサブディレクトリであるリーフディレクトリ(図2中のleaf)までの多数の階層が積み重ねられる木構造(階層構造)で構成されている。図2中では、左側がより上位の階層のディレクトリを示し、右側がより下位の階層のディレクトリを示している。
【0031】
ルートディレクトリDrは、木構造における最上位の階層のディレクトリである。ルートディレクトリDrは、一つに限定されずに、複数の物流施設1でのデータセットD1を管理する場合、それぞれの物流施設1に対して一つずつ設けることもでき、それぞれのユーザーに対して一つずつ設けることもできる。ルートディレクトリDrが物流施設1ごとやユーザーごとに設けられることで、ユーザーが所望するデータの探索には有利になる。一方で、設備2を構成する部品に関する複数種類のデータは、異なる物流施設1で共通のものもあるため、ルートディレクトリDrが物流施設1ごとやユーザーごとに設けられると、データセットD1のデータ量が膨大となる。ルートディレクトリDrを幾つ設けるかは、管理サーバー10の補助記憶部13の記憶容量に応じて適宜、選択可能である。
【0032】
サブディレクトリDsは、ルートディレクトリDrに格納されるディレクトリである。図2中のサブディレクトリDsは、設備用ディレクトリDsa、型番用ディレクトリDsb、部位用ディレクトリDsc、部品用ディレクトリ(リーフディレクトリ)Dslの四つである。サブディレクトリDsとしては、部位用ディレクトリ7cを大部位用ディレクトリ、中部位用ディレクトリ、小部位用ディレクトリの三つのディレクトリに分けたり、部品用ディレクトリDslの直上の階層のディレクトリに複合部品用ディレクトリを設けたりしてもよい。サブディレクトリDsは、少なくとも部品用ディレクトリDslを含んでいればよく、他のディレクトリは適宜、選択可能である。
【0033】
設備用ディレクトリDsaは、ルートディレクトリDrに格納されていて、ルートディレクトリDrの直下の階層に位置する。設備用ディレクトリDsaは、設備2に対応したディレクトリ名を冠している。設備用ディレクトリDsaのディレクトリ名は、例えば、設備2の名称を用いることができるが、それぞれの設備2に付与された通し番号(型番と異なる番号)を用いることもできる。図2中では、「クレーン」、「電源設備」(リーファコンテナ用の電源設備)が設備用ディレクトリDsaのディレクトリ名になっている。設備用ディレクトリDsaは必須ではない。ただし、データセットD1には、型番用ディレクトリDsbや部品用ディレクトリDlの数が大量に存在するため、設備用ディレクトリDsaを設けることは、データセットD1の整理には有効であり、より利便性が増す。
【0034】
型番用ディレクトリDsbは、設備用ディレクトリDsaに格納されて、設備用ディレクトリDsaの直下の階層に位置する。なお、設備用ディレクトリDsaを設けない場合、型番用ディレクトリDsbは、ルートディレクトリDrに格納されて、ルートディレクトリDrの直下の階層に位置する。型番用ディレクトリDsbは、設備2が有する専用の型番に対応したディレクトリ名を冠している。型番用ディレクトリDsbのディレクトリ名は、例えば、その型番を用いることができる。図2中では、「XXXX01」、「YYYY01」が型番用ディレクトリDsbのディレクトリ名になっている。型番用ディレクトリDsbも設備用ディレクトリDsaと同様に必須ではない。ただし、物流施設1では、名称が同一の設備2どうしであっても、その設備2の型番が異なれば構成する部品3が異なり、部品3に関する複数種類のデータが異なる場合がある。それ故、データセットD1では、型番用ディレクトリDsbを設けることで、型番ごとに異なる部品3に関する複数種類のデータを分類することが可能になる。これにより、データセットD1の整理には有利になる。
【0035】
部位用ディレクトリDscは、型番用ディレクトリDsbに格納されていて、型番用ディレクトリDsbの直下の階層に位置する。なお、型番用ディレクトリDsbを設けない場合、部位用ディレクトリDscは、設備用ディレクトリDsaに格納されて、設備用ディレクトリDsaの直下の階層に位置する。部位用ディレクトリDscは、設備2の各部位に対応したディレクトリ名を冠している。設備2の各部位は、設備2において複数の部品3で構成されているものである。したがって、設備2の各部位は、複数の部品で構成される設備2aを構成する各部位を示している。設備2の各部位は、例えば、クレーンの複数の部位であり、ガーダおよび脚からなる構造体、ガーダを横行するトロリ、脚の下端に設置された走行装置、ワイヤロープにより吊り下げられた吊具、ワイヤロープを巻き取る巻取装置、トロリを横行させる横行装置、などである。部位用ディレクトリDscのディレクトリ名は、設備2の各部位の名称を用いることができるが、それぞれの部位に付与された通し番号(型番と異なる番号)を用いることもできる。図2中では、「走行装置」、「構造物」が部位用ディレクトリDscのディレクトリ名になっている。部位用ディレクトリDscは、前述の型番用ディレクトリDsbと同様に必須ではない。ただし、クレーンのように、複数種類の部品で構成される設備2aでは、同種の部品3が多数存在する。それ故、データセットD1では、部位用ディレクトリDscを設けることで、部位ごとに異なる部品3に関する複数種類のデータを分類することが可能になる。これにより、データセットD1の整理には有利になる。
【0036】
部品用ディレクトリDslは、ルートディレクトリDr、設備用ディレクトリDsa、型番用ディレクトリDsb、または、部位用ディレクトリDscのいずれかのディレクトリに格納されていて、データセットD1の木構造では、最下位の階層に位置する。即ち、部品用ディレクトリDslは、所謂、リーフディレクトリである。部品用ディレクトリDslが格納されるディレクトリは、設備2ごとに異なっている。設備2aを構成する部品3に対応した部品用ディレクトリDslは、部位用ディレクトリDscに格納されており、設備2bを構成する部品3に対応した部品用ディレクトリDslは、型番用ディレクトリDsbに格納されている。部品用ディレクトリDslは、それぞれの部品3に対応したディレクトリ名を冠している。部品用ディレクトリDslのディレクトリ名は、部品3の名称を用いることができるが、それぞれの部品3に付与された通し番号(型番と異なる番号)を用いることもできる。図2中では、「モータ」、「減速機」、「ガーダ」、「電源装置」が部品用ディレクトリDslのディレクトリ名になっている。部品用ディレクトリDslには、ディレクトリ名に対応する部品3の保全作業に関する複数種類のデータ(図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなど)が格納されている。
【0037】
複数種類のデータは、保全作業に関するデータ(保全作業に用いるデータ)である。保全作業には、予防保全作業(定期点検作業などを含む)、事後保全作業、予知保全作業、改良保全作業が含まれる。保全作業には、複数の部品3で構成される設備2aの保全作業と単一の部品3で構成される設備2bの保全作業とが含まれていて、設備2aの保全作業には、設備2aを構成する全ての部品3を対象にした保全作業の他、複数の部品3の中の一部の部品3を対象にした保全作業が含まれる。
【0038】
複数種類のデータには、図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データの中の少なくとも二つ以上のデータを含む。図面データは、設備2の設計時や製造時に用いられたデータであり、部品3の機能、構造、あるいは、配置を示すデータである。仕様データは、設備2が満たしている要求事項が集積されており、図面データでは表せない機械的や機能的な目標値や許容値、部品3に仕様された部材、部品3の製造方法、部品3の検査などが記載されたデータである。マニュアルデータは、設備2や部品3を運用する手順や、設備2や部品3を点検する手順やその点検の基準(点検項目)を示すデータである。プログラムデータは、設備2や部品3の運用で使用されるプログラムを示すデータ(ソースコードなど)である。在庫データは、部品3の在庫状況(在庫数、保管位置など)を示すデータである。在庫データには、物流施設1での部品3の在庫状況の他に、サービス提供者やメーカーでの部品3の在庫状況(在庫数、納期など)を含むことが望ましい。複数種類のデータは、例えば、構造計算表を示すデータ、画像データ、音データ、点検の結果を示すデータなどの上記以外のデータを含んでもよい。また、図面データ、仕様データ、および、マニュアルデータは、それらのデータが統合された設計図書データでもよい。また、仕様データに図面データが含まれていたり、マニュアルデータに図面データが含まれていたりもする。
【0039】
データセットD1は、保全作業の実施により設備2やそれを構成する部品3の設計変更が生じた場合に、設計変更により変更された図面データや仕様データなどの新たなデータが追加されて更新される。また、データセットD1は、保全作業により部品3の在庫状況が変更した場合に、新たな在庫状況が在庫データに反映される。データセットD1に格納されている各データを更新する場合には、設計変更前のデータと設計変更後のデータとを比較可能に、それぞれのデータを格納しておくとよい。
【0040】
データセットD1は、そのデータ構造が木構造(あるいは、階層構造)を成すことにより、複数種類のデータが物流施設1でのそれぞれの部品3ごとに紐付けされた状態になっている。つまり、部品3が特定されることにより、その部品3に関する複数種類のデータが簡便に見つけ出せるようになっている。また、データセットD1が木構造を成すことにより、複数種類のデータが整理された状態になり、新たに図面データや仕様データを更新する場合に、目的のディレクトリを簡便に探索することが可能になっている。
【0041】
メディアデータD2は、クライアントコンピュータ20から送信されて管理サーバー10の補助記憶部13に記憶されている。メディアデータD2は、保全作業の対象である保全対象部品3aを示しており、具体的には、保全対象部品3aの特徴(名称、外観、動作音、型番など)を示している。メディアデータD2は、クライアントコンピュータ20から所定のアプリケーションソフトウェアを介して管理サーバー10に送信される。メディアデータD2は、例えば、Webアプリケーションの入力フォームから管理サーバー10に送信されたり、メールソフトを用いて送信されたメールデータとして管理サーバー10に送信されたりする。
【0042】
メディアデータD2は、保全対象部品3a、その保全対象部品3aを含む設備2の全体、または、その保全対象部品3aを含む設備2の一部の部位を撮像した静止画や動画などの画像データ、それらの動作中の音を録音した音データ、保全対象部品3aの名称や型番が記載された文章などの文字データが例示される。保全対象部品3aは、一つの部品3に限定されるものではなく、複数の部品3が含まれていてもよい。メディアデータD2は、一種類のデータに限定されずに、例えば、画像データ、音データ、および、文字データの組み合わせでもよく、複数の画像データでもよい。音データは、ユーザーが発した保全対象部品3aの名称や型番を録音したデータでもよい。文字データは、メールデータの件名、本文に記載されたものでもよい。
【0043】
図3に例示する保全計画データD3は、物流施設1を管理運営している管理システム30により作成されて、管理サーバー10の補助記憶部13に記憶されている。なお、管理サーバー10が管理システム30と同様の機能を有する場合、管理サーバー10が保全計画データD3を作成してもよい。
【0044】
保全計画データD3は、予め計画された保全作業の実施の予定を複数、備えている。詳述すると保全計画データD3には、表の最左列に記載された各物流施設1(1(1)、・・・、1(n))で運用されているそれぞれの保全対象部品3a(3a(1)、3a(2)、・・・、3a(m))に対する保全作業(予防保全作業、予知保全作業、事後保全作業、改良保全作業など)を実施する日程が集積している。保全計画データD3では、保全作業の内容として、物流施設1の管理番号(1~n)と保全対象部品3aの管理番号(1~m)と保全作業の種類が示されている。また、保全計画データD3では、保全作業の日程として、図3中の矢印で保全作業の開始日時、終了日時、期間などが示されている。即ち、保全計画データD3では、保全作業の実施の予定として、保全作業の内容と日程とが明らかになっている。
【0045】
保全計画データD3は、データセットD1と同様に、一つの物流施設1における複数の保全作業の実施の予定が集積していてもよく、また、一組織のユーザー専用の複数の保全作業の実施の予定が集積していてもよいが、複数の物流施設1における多数の保全作業の実施の予定が集積していることが好ましい。保全計画データD3に複数の物流施設1における多数の保全作業の予定が集積していることにより、保全計画データD3でのデータ量が増えるが、サービス提供者が複数の物流施設1での保全作業の実施の予定を把握するには有利になる。
【0046】
保全計画データD3は、保全作業の実施の予定の他に、内容や日程が決まっている保全作業の立案の予定を備えていることが望ましい。保全作業の立案には、多数の設備2に設置された制御システムや多数種類のセンサにより得られたデータから発見できない物流施設1の運用で生じた突発的な異常や問題点に対して、それらの異常や問題点の解消、改善するための保全作業の計画の他に、計画するまでの過程が含まれる。したがって、内容や日程が決まっている保全作業の立案の予定には、ユーザーおよびサービス提供者の異常や問題点に関する検討を行う会議、サービス提供者からの異常や問題点に対する保全作業に関する説明なども含まれる。このように、保全計画データD3に、保全作業の実施の予定の他に、内容や日程が決まっている保全作業の立案の予定が含まれることで、保全作業に関する会議などの際に、必要なデータを簡便に確認することが可能になり、より利便性が増す。
【0047】
図4に例示するアカウントデータD4は、管理サーバー10の補助記憶部13に記憶されている。アカウントデータD4は、表の上段欄に記載されているように、種別(ユーザーまたはサービス提供者)とID(Identity Document:A1、A2、A3、・・・、An)とパスワードとを有している。IDおよびパスワードがユーザーおよびサービス提供者のそれぞれで固有のアカウントである。具体的に、管理サーバー10により、クライアントコンピュータ20の所定のアプリケーションソフトウェアに入力されたIDおよびパスワードと、管理サーバー10のアカウントデータD4とが照合される。所定のアプリケーションソフトウェアに入力されたIDおよびパスワードが正しい場合に、管理サーバー10と接続されて、ログイン状態になる。
【0048】
アカウントであるIDおよびパスワードは、任意に設定可能である。IDは、ユーザーやサービス提供者が使用しているメールアドレス、クライアントコンピュータ20のネットワークのIPアドレスやMACアドレスでもよい。パスワードは、予め設定した任意の文字列の他、クライアントコンピュータ20が所定のアプリケーションソフトウェアを起動するたびに発行されるワンタイムパスワードを用いることもできる。また、パスワードの代わりにユーザーやサービス提供者の身体的な特徴を示す生体情報でもよい。さらに、管理サーバー10への接続には、複数の認証方式(例えば、パスワードとワンタイムパスワード、パスワードとプッシュ通知)を組み合わせてもよい。
【0049】
アカウントデータD4は、アカウントであるIDおよびパスワードのみで構成されてもよいが、ユーザーに関して、ユーザーが運用している物流施設1でのそれぞれの設備2の名称とその型番を有することが望ましい。設備2は、名称が同一でも異なる型番のものもあり、型番が異なる同一名称の設備2どうしでは、使用されている部品が異なる場合がある。後述するメディアデータD2を用いた対象データD1aの特定では、メディアデータD2から設備2の型番を判別することが難しい。アカウントデータD4が設備2の型番を有することで、ユーザーのアカウントとそのユーザーが運用している物流施設1で使用されている設備2の型番とが紐付けられる。つまり、ユーザークライアントコンピュータ20Aと管理サーバー10との接続により、ユーザーが運用している物流施設1での設備2の型番がある程度絞り込まれることになる。これにより、メディアデータD2のみでは判別が難しい設備2の型番の特定には有利になり、後述する(S120)のステップでの保全対象部品3aの特定精度の向上に寄与する。
【0050】
アカウントデータD4には、ユーザーやサービス提供者が使用しているメールアドレスが含まれるとよい。アカウントデータD4にメールアドレスが含まれることにより、クライアントコンピュータ20が管理サーバー10に接続されてログイン状態になっていない場合でも、管理サーバー10からユーザーやサービス提供者に連絡を取る(通知を出す)ことが可能となる。アカウントデータD4に、メーカーを含める場合、メーカーのアカウントには、そのメーカーが関与している部品3を紐づけるとよい。
【0051】
図5に例示する学習データD5は、管理サーバー10の補助記憶部13に記憶されている。学習データD5は、種々のデータに対してサービス提供者によりラベルが付与されて作成されている。具体的に、学習データD5は、表の左列に記載された画像データ、音データ、文字データなどのデータと右列に記載されたラベル(正解ラベル)を有している。サービス提供者であれば、設備2やその設備2を構成する部品3の開発、設計、製造、点検、あるいは、修理の過程において、多量の画像データや音データを蓄積している。学習データD5には、サービス提供者が蓄積したそれらの多量の画像データや音データを用いることができる。また、サービス提供者が蓄積している多量の画像データや音データに加えて、ユーザーやサービス提供者から送信されたメディアデータD2を学習データD5に用いることもできる。学習データD5のラベルは、データセットD1のデータ構造における各ディレクトリ名を用いるとよい。また、データが文字データの場合のラベルも、同様に、データセットD1のデータ構造における各ディレクトリ名を用いるとよい。具体的に、学習データD5のラベルは、設備用ディレクトリDsa、型番用ディレクトリDsb、部位用ディレクトリDsc、および、部品用ディレクトリDlのそれぞれのディレクトリ名を用いるとよい。
【0052】
図6に例示するデータセットD1の提示方法の手順の一例では、まず、保全作業の実施および立案の予定を管理サーバー10により監視する(S110)。次いで、監視しているその予定に基づいて、所定のプログラムが管理サーバー10に各手順を実行させる(S120~S140)。最終的に、クライアントコンピュータ20にユーザーが所望するデータとして対象データD1aが提示されると終了となる。以下に各ステップ(S110~S140)の内容を詳述する。
【0053】
ステップ(S110)では、保全作業の実施および立案の予定を管理サーバー10により監視するデータ処理が実行される。保全作業の実施および立案の予定には、実施される予定の他に、実施されない可能性がある予定が含まれる。実施される予定は、日程が決まっている予定であり、例えば、保全計画データD3で計画されている予防保全、予知保全、改良保全の予定であり、また、異常が発生した以後に計画される事後保全の予定である。加えて、内容や日程が決まっている保全作業の立案の予定(会議や説明)である。実施されない可能性がある予定は、日程が未定の予定であり、保全計画データD3に計画されていない予定である。この日程が未定の予定には、例えば、ユーザーやサービス提供者からの突発的な異常や問題点の提起が含まれる。
【0054】
保全作業の実施および立案の予定の監視には、管理システム30により更新される保全計画データD4の監視の他に、クライアントからの管理サーバー10へのアクセスも含まれる。クライアントからの管理サーバー10へのアクセスは、物流施設1の運用時に発生した異常や問題点に対して保全作業を実施したり、その保全作業を立案したりする場合に生じる。即ち、クライアントからの管理サーバー10へのアクセスにより、保全作業の立案の予定が新たに立てられたと見做すことができる。具体的に、保全作業の対象となる保全対象部品3aのメディアデータD2をクライアントコンピュータ20から管理サーバー10に送信し、管理サーバー10が送信されたそのメディアデータD2を受信すると、その保全対象部品3aへの保全作業の立案の予定が立てられたと見做すことができる。このように、クライアントから管理サーバー10へのアクセスを保全作業の立案の予定が立てられたと見做すことで、突発的な異常や運用上の問題点の発生に対応可能になる。したがって、予め計画されている保全計画データD4では監視の対象外となる事態にも対応可能になり、クライアントが所望するデータを簡便に確認するには有利になる。
【0055】
管理サーバー10が受信したメディアデータD2は、補助記憶部13に記憶される。メディアデータD2は、対象データD1aが提示された後に補助記憶部13から削除してもよいが、補助記憶部13に記憶させておくことが望ましい。これにより、この提示方法が実行される度にメディアデータD2が補助記憶部13に記憶されることになる。補助記憶部13に記憶された多数のメディアデータD2は、図5に例示する学習データD5として利用することが可能となる。
【0056】
ステップ(S120)では、管理サーバー10により、監視している保全作業の実施および立案の予定に基づいて、保全対象部品3aを特定するデータ処理が実行される。具体的に、管理サーバー10は、保全計画データD3を用いたデータ処理を実行することにより保全対象部品3aを特定する。また、管理サーバー10は、学習データD5を用いた機械学習により構築された分類モデル15とメディアデータD2とを用いたデータ処理を実行することにより保全対象部品3aを特定する。
【0057】
保全計画データD3を用いた保全対象部品3aの特定について説明する。上述した図3に例示する保全計画データD3には、保全作業の実施および立案の予定として、その予定の内容(保全対象部品3aを含む)と日程とが明らかになっている。したがって、保全計画データD3を用いることにより保全対象部品3aを特定することができる。具体的に、管理サーバー10は、監視している保全計画データD3の中から日程が所定時間後に迫った保全作業の実施および立案の予定を選択する。所定時間は、ユーザーやサービス提供者が任意に設定でき、例えば、三日~十日程度である。次いで、管理サーバー10は、選択した予定の内容に基づいて、保全対象部品3aを特定する。予定の内容には、物流施設1の管理番号(1~n)と保全対象部品3aの管理番号(1~m)と保全作業の種類が含まれていて、予定の内容を確認するだけで保全対象部品3aを簡便に特定できる。
【0058】
分類モデル15とメディアデータD2とを用いた保全対象部品3aの特定について説明する。
【0059】
図7は、このステップ(S120)で用いる分類モデル15の一例を示す。分類モデル15を構築する機械学習は、公知の種々の教師あり機械学習を用いることができる。教師あり機械学習のアルゴリズムとしては、ロジスティック回帰、サポートベクターマシーン、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク(畳み込みニューラルネットワーク、再起型ニューラルネットワーク、残差ネットワークなど)、単純ベイズ、k近傍法などが例示される。また、複数のアルゴリズムを用いるアンサンブル学習も例示される。
【0060】
分類モデル15の構築の一例では、公知のホールドアウト法やk分割法などの交差検証法を用いた。交差検証法では、メーカーが蓄積した多量の画像データや音データやユーザーから送信されたメディアデータD2を学習データD5と評価データとに分割して構築した分類モデル15の評価を行う。分類モデル15の評価の指標には、正解率、適合率、再現率、F値、特異度、偽陽性率、LogLoss、ROC曲線の面積を示すAUCなどを用いることができる。この分類モデル15は、多クラス分類であることから、その評価の指標には、マクロ平均やマイクロ平均を用いるとよい。
【0061】
また、分類モデル15の構築には、設備2の各部位どうしの関連性や各部品どうしの関連性、あるいは、設備2以外の周囲環境との関連性を考慮するとよい。例えば、メディアデータD2が示す保全対象部品3aがクレーンの走行装置である場合に、走行装置は構造体である脚の下端に配置されることから画像データには走行装置の他に脚が存在する可能性があり、走行装置と脚との関連性は高い。また、保全対象部品3aがクレーンの吊具である場合に、吊具はコンテナなどの物品を吊り上げていることから画像データには吊具の他にコンテナなどの物品が存在する可能性があり、吊具とコンテナとの関連性は高い。このように、設備2の構造的な特徴や周囲環境の特徴などを考慮することで、メディアデータD2が示す保全対象部品3aの絞り込みには有利になり、分類モデル15の精度が向上する。
【0062】
保全対象部品3aは、多岐に亘る。そこで、このステップ(S120)では、分類モデル15による分類により保全対象部部品3aの候補を複数特定し、特定したそれぞれの候補の中から確信度が基準よりも高い候補を保全対象部品3aとして特定するとよい。保全対象部品3aの候補とは、分類モデル15による多クラス分類により完全に保全対象部品3aではないと分類された部品3を除いた残りの部品を示す。確信度は、保全対象部品3aである可能性の度合いを示す。確信度が低い部品3では保全対象部品3aである可能性が低いが、確信度が高い部品3では保全対象部品3aである可能性が高い。なお、確信度の高低は、度合いの高低を示しており、確信度の指標の数値の高低を示すものではない。確信度の基準のレベルは任意に設定することができるが、可能性がより高い部品3のみが保全対象部品3aの候補として特定されるように設定するとよく、概ね一致する部品3のみが保全対象部品3aの候補として特定されるように設定するとよい。なお、複数の部品3の確信度が基準よりも高い場合は、それらの複数の部品3が保全対象部品3aとして特定される。
【0063】
確信度の指標としては、尤度、MAP推定、ベイズ推定、ソフトマックス関数の出力値などを用いることができる。例えば、確信度の指標としてソフトマックス関数の出力値を用いる場合に、出力値が0.5~0.7以上であれば確信度が基準よりも高いと判断できる。このように、確信度が基準よりも高くなる特定条件を設けることで、多数の部品3の中から保全対象部品3aである可能性がより高いものだけを特定することができるので、不確かな結果が出力されることを回避することができる。
【0064】
分類モデル15とメディアデータD2とを用いた保全対象部品3aの特定では、ユーザークライアントコンピュータ20AからメディアデータD2が送信されるとアカウントデータD4に基づいて、管理サーバー10によりユーザーが運用する物流施設1で使用されるそれぞれの設備2やその型番を特定するデータ処理を行って、特定した型番を有する設備2の部品3を保全対象部品3aの候補として選択することが望ましい。メディアデータD2のみでは、分類モデル15を用いてもそのメディアデータD2が示す保全対象部品3aを特定することが難しい場合でも、保全対象部品3aを有する設備2やその型番により保全対象部品3aの候補を絞ることにより、保全対象部品3aの特定精度を向上するには有利になる。このように、保全対象部品3aの特定には、アカウントデータD4を用いて保全対象部品3aの候補を絞るとよい。
【0065】
分類モデル15とメディアデータD2とを用いた保全対象部品3aの特定では、ユーザークライアントコンピュータ20からメディアデータD2が送信されると監視している部品3の状態に基づいて、管理サーバー10によりその状態が基準よりも悪い状態悪化部品3bを特定するデータ処理を行って、特定した状態悪化部品3bの中から保全対象部品3aを特定することが望ましい。部品3の状態は、管理サーバー10が直接的に監視してもよく、保全計画データD3を作成している管理システム30を介して間接的に監視してもよい。管理システム30は、各物流施設1での各設備2に設けられた制御システムや多数種類のセンサが取得している複数種類のデータを有していて、この複数種類のデータに基づいて保全計画データD3を作成している。したがって、管理システム30は各部品3の状態を予め把握しているため、管理サーバー10は管理システム30が予め把握している各部品3の状態を監視すればよい。なお、管理サーバー10が各設備2の制御システムや多数種類のセンサに直接的に接続されていてもよく、この場合、管理サーバー10が直に各部品3の状態を監視する。
【0066】
状態悪化部品3bは、部品3の状態(部品3の作動や設備2の運用)が基準よりも悪化している部品3を示す。部品3の状態が悪化しているほど、部品の作動や設備2の運用に影響が出るため保全作業を実施する必要があり、部品3の状態が良好なほど、部品3の作動や設備2の運用に影響が出ないため保全作業を実施する必要がない。状態の悪化を示す基準のレベルは、任意に設定できるが、部品3の作動や設備2の運用に際して何らかの影響が出ている部品3を特定可能に設定すればよい。換言すると、保全作業(予防保全作業、予知保全作業)を実施した方がよい部品3を特定可能に設定すればよい。このように、部品3の状態を監視しておき、その状態に基づいて多数の部品3の中から保全作業の実施の可能性が高い状態悪化部品3bを特定しておくことにより、保全対象部品3aを状態悪化部品3bとして予測できる。これにより、メディアデータD2のみでは、分類モデル15を用いてもそのメディアデータD2が示す保全対象部品3aを特定することが難しい場合でも、部品3の状態の監視により保全対象部品3aの候補を絞ることにより、保全対象部品3aを特定することが可能となる。よって、保全対象部品3aの特定には、部品3の状態を監視して保全対象部品3aの候補を絞るとよい。なお、基準のレベルは、各部品3の相対評価を用いることもでき、状態の悪化を数値化してその代表値を算出して、算出した代表値を指標として用いて状態悪化部品3bを特定することもできる。
【0067】
ステップ(S130)では、管理サーバー10により、データセットD1のそれぞれの部品用ディレクトリDslの中から特定した保全対象部品3aに対応するディレクトリ名を冠する部品用ディレクトリDslを選択して、選択した部品用ディレクトリDslに格納されている複数のデータを対象データD1aとして特定するデータ処理が実行される。なお、複数の保全対象部品3aが特定されている場合、このステップ(S130)では、複数の部品用ディレクトリDslが選択される。
【0068】
対象データD1aを提示するステップ(S140)では、管理サーバー10により選択した部品用ディレクトリDlに格納されている複数種類のデータ(図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなど)を対象データD1aとして対象となるクライアントコンピュータ20に提示するデータ処理が実行される。対象データD1aの提示は、クライアントコンピュータ20の所定のアプリケーションソフトウェアを用いてクライアントコンピュータ20のモニタなどに直に表示する方法が例示される。また、対象データD1aの提示は、メールに対象データD1aを添付したメールをクライアントコンピュータ20に送信してもよい。対象となるクライアントコンピュータ20は、予定されている保全作業の実施および立案を行うユーザーおよびサービス提供者に基づいて選択される。保全計画データD3には、予定の内容に保全作業の実施および立案を行うユーザーおよびサービス提供者が明らかになっているため、それらのユーザーおよびサービス提供者が使用しているクライアントコンピュータ20が対象データD1aの提示の対象になる。また、メディアデータD2を送信してきたユーザーおよびサービス提供者が使用しているクライアントコンピュータ20が対象データD1aの提示の対象になる。
【0069】
対象データD1aとして提示されるデータは、選択した部品用ディレクトリDslに格納されているすべてのデータに限定されず、選択した部品用ディレクトリDslに格納された複数のデータの中から選択されていればよい。クライアントコンピュータ20から対象データD1aの種類が指定されている場合、管理サーバー10により選択した部品用ディレクトリDlに格納されているデータの中から指定された種類のデータを対象データD1aとして提示する。対象データD1aは、例えば、予防保全作業の実施の場合にマニュアルデータのみであってもよく、保全作業の立案の場合に在庫データのみであってもよい。
【0070】
対象データD1aの提示は、対象データD1aを直に提示する方法に限定されるものではない。対象データD1aの提示は、設備2を模した三次元モデルデータを利用したり、XR(クロスリアリティ)の技術を利用したりすることができる。例えば、三次元モデルデータを利用した方法では、保全対象部品3aを有する設備2の三次元モデルデータをクライアントコンピュータ20に所定のアプリケーションソフトウェアを用いて表示し、表示したその三次元モデルデータに存在する保全対象部品3aを示すデータに対象データD1aをリンクさせるとよい。これにより、表示された三次元モデルデータをクライアントが確認することで、管理サーバー10により特定した保全対象部品3aが所望する保全対象部品3aか否かを確認することができる。クライアントがリンクされた保全対象部品3aを選択することで、リンクした対象データD1aが表示される。対象データD1aの提示は、クライアントコンピュータ20と仮想現実デバイス(VRゴーグルなど)とを組み合せて、仮想現実(VR)の技術を利用してもよい。
【0071】
対象データD1aが複数の保全対象部品3aに関するデータである場合に、その対象データD1aを提示する際に、対象データD1aを木構造(階層構造)で提示することもできる。例えば、保全対象部品3aがクレーンの走行装置のモータである場合に、データセットD1の走行装置に対応したディレクトリ名を関する部位用ディレクトリDscを対象データD1aとして提示する。このように、対象データD1aが多岐の部品に亘る場合は、提示する対象データD1aを木構造で提示することで、クライアントにより分かり易いデータを提供することが可能となる。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、クライアントコンピュータ20に対して管理サーバー10から提示される対象データD1aは、実施および立案しようとしている保全作業に適したデータであり、クライアントが所望するデータになっている。それ故、物流施設1での多数種類の設備2や部品3に関する知識が乏しいクライアントでも、膨大な量のデータが集積したデータセットD1の中から所望するデータを簡便に確認することができる。
【0073】
また、クライアントが所望するデータを随時、簡便に確認可能になることにより、クライアントがデータセットD1を管理する必要が無くなるため、管理サーバー10が一括で管理することができる。つまり、多数のクライアントにデータセットD1を管理させることで生じる情報漏洩のリスクを大幅に低減することができる。このように、本実施形態は、多数のデータの中から所望するデータを簡便に確認可能な構成でありながら、データセットD1の機密性の向上に非常に有利になる。
【0074】
従来、サービス提供者に比して知識が乏しいユーザーは、保全作業の実施や立案に必要なデータをサービス提供者に要望し、サービス提供者からの指示によりデータセットD1の中から必要なデータを見つけ出したり、サービス提供者から直に必要なデータを受け取ったりしていた。サービス提供者側の対応によっては、ユーザーが必要なデータを確認するまでに時間が掛かり、ユーザー側での保全作業の遅れの要因となっていた。これに関して、本実施形態によれば、サービス提供者側が直接的に対応する頻度を減らすことができる。これにより、ユーザー側での作業を遅延させることなく円滑に進めることができる。また、サービス提供者側での対応の手間を省くことができる。
【0075】
保全計画データD4に基づいて特定された対象データD1aは、クライアントによる保全作業の実施前にクライアントに提示されるため、クライアントが保全作業を実施する前に、その保全作業に関するデータを予め把握することができる。即ち、クライアントはクライアントコンピュータ20により管理サーバー10に接続(アクセス)するだけで、実施予定の保全作業に関するデータを前もって確認することができる。
【0076】
メディアデータD2に基づいて特定された対象データD1aは、保全計画データD4には計画されていない突発的な保全作業や保全作業の立案に要するデータである。このように、本実施形態によれば、突発的な保全作業や保全作業の立案の際にも、それらの作業に必要なデータを迅速、かつ、簡便に確認することができる。
【0077】
ただし、メディアデータD2に基づいて特定された対象データD1aは、保全計画データD4に計画されている保全作業の実施や立案に要するデータでもよい。本実施形態の対象データD1aの特定には、保全計画データD4に基づいた手法のみを採用してもよく、メディアデータD2と分類モデル15とを用いた手法のみを採用してもよい。後者のみを採用した場合でも、予定されていた保全作業の実施や立案の際に、その保全作業に関するデータをメディアデータD2を管理サーバー10に送信するという簡便な方法により、確認することができる。
【0078】
次に、物流施設でのデータセットの提示方法および管理サーバーの実施形態の変形例1について説明する。
【0079】
図8は変形例1でのデータセットD1の提示方法での手順の一例を示す。変形例1では、上述したステップ(S120)で保全対象部品3aが特定できない場合にも、所望するデータを確認することが可能になっている。具体的に、変形例1では、上述した図4の手順に対して別のステップS150~S170が追加されている。即ち、変形例1の手順では、保全対象部品3aを特定するステップ(S120)で保全対象部品3aが特定できない場合に(S150:NO)、保全対象部品3aの特定にサービス提供者を関与させる(S160、S170)。したがって、変形例1では、メディアデータD2に示す保全対象部品3aがサービス提供者により指定されて、指定されたその保全対象部品3aに関する対象データD1aがクライアントに提示される(S140)。
【0080】
ステップ(S150)では、管理サーバー10により上記のステップ(S120)で保全対象部品3aを特定したか否かを判定するデータ処理が実行される。保全対象部品3aを特定したか否かの判断基準としては、任意に設定することができるが、上述した確信度や保全対象部品3aの候補の数を用いるとよい。例えば、確信度が基準よりも高く設定された閾値よりも高い場合に、保全対象部品3aを特定したと判断できる。また、保全対象部品3aの候補の数が予め設定された所定値以下の場合に、保全対象部品3aを特定したと判断できる。判断基準により保全対象部品3aが特定されたと判定すると、上述したステップ(S130)へ進み、判断基準により保全対象部品3aが特定されていないと判定すると、サービス提供者にエラーを通知するステップ(S160)へ進む。
【0081】
ステップ(S160)では、管理サーバー10により、サービス提供者にステップ(S130)でエラーが出力されたことを通知するデータ処理が実行される。具体的に、管理サーバー10は、所定のアプリケーションソフトウェアを用いてサービスクライアントコンピュータ20Bにエラーを通知する。なお、サービス提供者のメールアドレスにその通知をメールで送信してもよい。このステップにより、サービス提供者が管理サーバー10でのエラーを認識し、サービスクライアントコンピュータ20Bの所定のアプリケーションソフトウェアにより管理サーバー10に接続して、そのエラーに対処することが可能になる。
【0082】
ステップ(S170)では、サービスクライアントコンピュータ20Bにより保全対象部品3aが指定されて、管理サーバー10がその保全対象部品3aの指定を受信するデータ処理が実行される。エラーの通知を受信したサービス提供者は、所定のアプリケーションソフトウェアによりエラーの対象となったメディアデータD2を確認する。次いで、サービス提供者は、サービスクライアントコンピュータ20Bから所定のアプリケーションソフトウェアにより、メディアデータD2が示す保全対象部品3aを指定するデータを管理サーバー10に送信する。次いで、管理サーバー10は、送信されたそのデータを受信して、受信したそのデータを用いて保全対象部品3aを特定する。このように、サービス提供者の関与によりメディアデータD2が示す保全対象部品3aが特定される。
【0083】
図9は、サービス提供者の関与により保全対象部品3aを特定する手法の一例を示す。この手法は、メディアデータD2と分類モデル15を用いたデータ処理により保全対象部品3aを特定できない場合に行われる。サービス提供者であれば、設備2の開発、設計、製造、点検、あるいは、修理などの経験則により、設備2の一部の部品3を対象としたメディアデータD2からその部品3を概ね把握することができる。よって、分類モデル15の代わりに、サービス提供者の経験則に基づいて、メディアデータD2から保全対象部品3aが特定されて、保全対象部品3aを指定するデータが管理サーバー10に送信される。保全対象部品3aを指定するデータとしては、保全対象部品3aに対応したディレクトリ名、その保全対象部品3aを有する設備2に対応したディレクトリ名、その設備2の型番に対応したディレクトリ名が記載された文字データが例示される。なお、保全対象部品3aを指定するデータは、前述した全てのディレクトリ名が必須ではなく、その中の一つのディレクトリ名が記載された文字データでもよい。保全対象部品3aを指定するデータは、そのデータにより保全対象部品3aが指定されるものに限定されずに、保全対象部品3aの候補を絞り込むことが可能なデータでもよい。管理サーバー10は、そのデータと分類モデル15を用いて、保全対象部品3aを特定する。
【0084】
以上のように、変形例1によれば、管理サーバー10によりメディアデータD2が示す保全対象部品3aを特定できない場合でも、サービス提供者の関与により保全対象部品3aを特定することが可能となる。それ故、ユーザーが所望するデータを確認できない事態を回避することができる。これにより、メディアデータD2に示す保全対象部品3aがより確実に特定されて、対象データD1aがユーザーに提示される。
【0085】
変形例1では、管理サーバー10のデータ処理のみでは保全対象部品3aが特定できず、サービス提供者の関与により保全対象部品3aが特定できたメディアデータD2を、学習データD5に追加するとよい。このように、学習データD5が拡充されることにより、その学習データD5を用いて構築された分類モデル15の分類精度が向上する。この結果、管理サーバー10のデータ処理のみでは保全対象部品3aが特定できない頻度が減り、ユーザーが所望するデータを迅速に提示可能になるとともにサービス提供者の手間を大幅に低減することができる。なお、学習データD5には、ユーザークライアントコンピュータ20Aから送信された全てのメディアデータD2を用いることもできるが、サービス提供者の関与無しに管理サーバー10のみでそのメディアデータD2が示す保全対象部品3aを特定可能な場合、そのメディアデータD2を学習データD5に追加すると、機械学習が過学習の状態となり、却って分類モデル15の分類精度が低下するおそれがある。そこで、過学習とならないように、学習データD5として不足するデータとして、管理サーバー10のデータ処理のみでは保全対象部品3aが特定できず、サービス提供者の関与により保全対象部品3aが特定できたメディアデータD2を追加するとよい。
【0086】
ユーザーが図面データ、仕様データ、マニュアルデータ、プログラムデータ、在庫データなどのデータを要望する場合は、ユーザーが運用している設備2に何らかの問題が生じた場合、設備2の点検方法などを確認した場合、あるいは、設備2の運用方法を変更したい場合などである。この場合に、ユーザーが管理サーバー10からユーザークライアントコンピュータ20Aに提示された対象データD1aを確認することで、ユーザーの要望は概ね満たされる。一方で、対象データD1aを確認してもユーザーではその要望が満たされない場合もある。そこで、ユーザーとサービス提供者とが対象データD1aを互いに確認しながら、話し合えるようなサービスの提供が望まれている。
【0087】
これに関して、管理サーバー10により、ユーザークライアントコンピュータ20Aとサービスクライアントコンピュータ20Bとの間の双方向通信を中継するデータ処理を実行することが望ましい。ユーザークライアントコンピュータ20Aとサービスクライアントコンピュータ20Bとの間の双方向通信としては、P2P(Peerto Peer)方式、SFU(Selective Forwarding Unit)方式、MCU(Multipoint Control Unit)方式が例示される。中継する機能を果たすためのサーバーとして、シグナリングサーバー、STUNサーバー、および、TURNサーバーが例示され、管理サーバー10は、データを提示するためのサーバーに加えて、それらのサーバーで構成されることが望ましい。
【0088】
管理サーバー10がユーザークライアントコンピュータ20Aとサービスクライアントコンピュータ20Bとの間の双方向通信を中継する機能を有することで、WebRTC(Web Real-Time Communication)を利用することが可能となる。これにより、ユーザーとサービス提供者とが、双方向通信によるWeb会議を利用することが可能となる。管理サーバー10は、ユーザークライアントコンピュータ20Aとサービスクライアントコンピュータ20BとがWeb会議を利用している場合に、対象データD1aをユーザークライアントコンピュータ20Aとサービスクライアントコンピュータ20Bとに同時に提示することが望ましい。また、サービスクライアントコンピュータ20Bには、メディアデータD2も提示することが望ましい。このとき、サービス提供者側は、ユーザーとの窓口となっている担当者、設備2やその設備2を構成する部品を開発、設計した技術者、設備2や部品を製造した製造者など、様々な部署が各々、サービスクライアントコンピュータ20Bにより参加することが望ましい。これにより、サービス提供者からユーザーで生じた問題解決の技術情報やソリューションを提供して、短時間に問題解決を図るサービスを提供することが可能となる。
【0089】
このように、ユーザー側で発生した問題に対して、遠隔地にいるサービス提供者側にも対象データD1aやメディアデータD2が提示されることで、その問題を共有することができる。また、サービス提供者側は、様々な部署で問題を共有することができる。これにより、研究開発と製造技術との連携が強化され、互いの技術力を結集することで、問題解決に大きく寄与する。
【0090】
図10に例示するように物流施設1がコンテナターミナルである場合、各部品3の在庫の管理には、物流施設1で扱う荷物であるコンテナ4(4a、4b)が用いられている。図9中では、荷物として扱われるコンテナ4aと各部品3の在庫が格納されたコンテナ4bとが存在している。コンテナ4bは、保全作業を実施する場所に物流施設1で使用されているクレーンや運搬車両などにより運ばれる。それ故、コンテナ4bが、物流施設1の各所に点在するため、在庫の管理が煩雑になっていた。
【0091】
管理サーバー10、あるいは、管理システム30が電波式測位装置を用いて、コンテナ4bの現在位置を取得して、データセットD1での在庫データが取得したそのコンテナ4bの現在位置を有していることが望ましい。電波式測位装置としては、公知の全球測位衛星システム(GNSS)、ビーコン測位、超広帯域無線(UWB)測位、IEEE802.11規格の無線LAN測位などの屋内測位システム(IPS)、および、RFIDを用いることができる。これにより、提示された在庫データを確認すれば、保全作業に要する各部品3の在庫が格納されたコンテナ4bの現在位置を把握することができる。
【0092】
保全作業に要する各部品3の在庫は、物流施設1、サービス提供者、あるいは、メーカーが有している。従来では、物流施設1に在庫が無い場合、サービス提供者に在庫の有無を確認して、さらに、サービス提供者が在庫を有していない場合、メーカーに在庫の有無を確認していた。それ故、保全作業の立案には、逐一、物流施設1、サービス提供者、あるいは、メーカーに在庫の有無を確認する必要があった。
【0093】
そこで、データセットD1での在庫データが、物流施設1、サービス提供者、および、メーカーでの各部品3の在庫の有無を有していることが望ましい。さらに、その在庫データが、サービス提供者やメーカーからの各部品3の納品状況(納期や費用)を有していることがより望ましい。これにより、提示された在庫データを確認すれば、保全作業に要する各部品3の納品状況を把握することができる。
【0094】
図11は、データセットD1での所定の部品3における在庫データの一例を示す。この在庫データには、物流施設1、サービス提供者、および、メーカーでの在庫状況や納品状況が部品3について集積している。在庫状況として、物流施設1での部品3の在庫数や現在位置、サービス提供者での部品3の在庫数、メーカーでの部品3の在庫数が確認できる。また、納品状況として、サービス提供者からの納期や費用、メーカーから納期や費用が確認できる。このように、在庫データを用いて部品3の在庫状況や納品状況を確認可能になることで、保全作業の立案や実施を円滑に進めるには有利になる。
【0095】
メディアデータD2には特に制約を設ける必要がないが、制約を設けない場合にメディアデータD2が示す保全対象部品3aを管理サーバー10が特定できない可能性が高くなる。そこで、ユーザークライアントコンピュータ20Aから管理サーバー10に送信されるメディアデータD2が、保全対象部品3aが組み込まれた設備2やその型番を特定可能に制約される制約条件を設けるとよい。即ち、ユーザーには、管理サーバー10に送信するメディアデータD2を保全対象部品3aが組み込まれた設備2やその型番を特定可能なデータにする制約が課せられる。その制約条件を満足するメディアデータD2を受信した場合に管理サーバー10により対象データD1aが提示され、その制約条件を満足しないメディアデータD2を受信した場合に管理サーバー10により再度、制約条件を満たしたメディアデータD2を送信する通知が提示される。制約を満足するメディアデータD2としては、保全対象部品3aが写る画像データと、保全対象部品3aを有する設備2の名称が記載された文字データとの組み合わせが例示される。管理サーバー10は、ユーザークライアントコンピュータ20Aから送信されるメディアデータD2が制約を満足するように、所定のアプリケーションソフトウェアに制約条件として設備2の名称やその型番を入力する入力項目を追加してもよい。また、設備2やその型番を特定可能にする識別情報(固有の番号や一次元バーコードなど)を設備2や部品3の様々な箇所に設置しておき、制約を満足するメディアデータD2として、その識別情報が写る画像データを取得してもよい。
【0096】
分類モデル15は、設備2ごとや設備2の型番ごとに構築されてもよい。これにより、設備2ごとや型番ごとに異なる特徴をより反映した分類モデル15により、分類精度の向上には有利になる。また、分類モデル15は、設備2の部位を特定するモデルと、特定したその部位を構成する部品を特定するモデルとを含む複数のモデルで構成されてもよい。このように、分類モデル15として設備2、型番、部位、部品のそれぞれの特定に特化した専用のモデルを構築することにより、保全対象部品3aの特定精度の向上にはより有利になる。さらに、分類モデル15は、ユーザーごとに作成されてもよい。ユーザーが運用する設備2には、ユーザーごとに意匠が異なる場合がある。メディアデータD2として画像データを用いる場合に、ユーザーごとに異なる意匠を考慮することで、保全対象部品3aの特定精度の向上には有利になる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の物流施設のデータセットの提示方法および管理サーバーは特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 物流施設
2 設備
3 部品
3a 保全対象部品
10 管理サーバー
11 演算処理部
12 主記憶部
13 補助記憶部
14 入出力部
15 分類モデル
20 クライアントコンピュータ
D1 データセット
D1a 対象データ
D2 メディアデータ
D3 保全計画データ
D4 アカウントデータ
D5 学習データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11