(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126172
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】組成物およびその製造方法、成形体ならびに発泡体
(51)【国際特許分類】
C08L 33/08 20060101AFI20240912BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20240912BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240912BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20240912BHJP
C08F 8/14 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08L33/08
C08K5/05
C08K5/17
C08L33/10
C08F8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034389
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】井戸 栄善
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 俊介
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG041
4J002BG051
4J002BP031
4J002EC036
4J002EN026
4J002GA00
4J002GC00
4J002GK00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL04Q
4J100HA13
4J100HA61
4J100HC09
4J100HC43
4J100HE14
4J100JA11
4J100JA43
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA64
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】本発明は、シャープな融解ピークを有する蓄熱材が得られる組成物およびその製造方法、前記組成物の成形体および発泡体を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含み、示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解エンタルピー△Hが、50J/g以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、
アルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、
を含み、
示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解エンタルピー△Hが、50J/g以上である、組成物。
【請求項2】
前記アルコール(b1)の含有量が、前記組成物の総量の20質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミン(b2)の含有量が、前記組成物の総量の20質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合体(A)と前記アルコール(b1)の反応生成物(B1)、および前記重合体(A)と前記アミン(b2)の反応生成物(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解ピークの半値半幅が、3.0℃以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
70℃未満で24時間保持したときに溶融しないか、または液状物質がブリードアウトしない、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記重合体(A)が、メタクリレートに基づく単位をさらに有する共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記重合体(A)が、エチレンに基づく単位を有さない、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記重合体(A)が、メチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記重合体(A)が、n-ブチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
触媒(C)の存在下で、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)とを反応させることを含む、組成物の製造方法。
【請求項12】
前記組成物の総量の20質量%以上の前記アルコール(b1)を残存させることをさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
触媒(C)の存在下で、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アミン(b2)とを反応させることを含む、組成物の製造方法。
【請求項14】
前記組成物の総量の20質量%以上の前記アミン(b2)を残存させることをさらに含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記触媒(C)が、グアニジン有機触媒である、請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記重合体(A)が、メタクリレートに基づく単位をさらに有する共重合体である、請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記重合体(A)が、エチレンに基づく単位を有さない、請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記重合体(A)が、メチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記重合体(A)が、n-ブチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、請求項11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の成形体。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物およびその製造方法、成形体ならびに発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱性能を有する蓄熱材が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を含有する構成単位を二種以上含有する重合体を含む蓄熱材が記載されている。該重合体においては、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を含有する二種以上の構成単位の数が、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を含有する全ての構成単位の合計数を100%としてそれぞれ20%以上であり、示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解エンタルピーが30J/g以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄熱材には効率よく熱を蓄え、また、効率よく熱を放出できることが求められる。そのためには、吸熱ピークの形状ができるだけシャープであることが好ましい。本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の重合体の融解ピーク形状には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、シャープな融解ピークを有する蓄熱材が得られる組成物およびその製造方法、前記組成物の成形体および発泡体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含み、示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解エンタルピー△Hが、50J/g以上である、組成物。
[2]前記アルコール(b1)の含有量が、前記組成物の総量の20質量%以上である、[1]に記載の組成物。
[3]前記アミン(b2)の含有量が、前記組成物の総量の20質量%以上である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記重合体(A)と前記アルコール(b1)の反応生成物(B1)、および前記重合体(A)と前記アミン(b2)の反応生成物(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解ピークの半値半幅が、3.0℃以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]70℃未満で24時間保持したときに溶融しないか、または液状物質がブリードアウトしない、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記重合体(A)が、メタクリレートに基づく単位をさらに有する共重合体である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]前記重合体(A)が、エチレンに基づく単位を有さない、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]前記重合体(A)が、メチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]前記重合体(A)が、n-ブチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]触媒(C)の存在下で、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)とを反応させることを含む、組成物の製造方法。
[12]前記組成物の総量の20質量%以上の前記アルコール(b1)を残存させることをさらに含む、[11]に記載の製造方法。
【0007】
[13]触媒(C)の存在下で、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アミン(b2)とを反応させることを含む、組成物の製造方法。
[14] 前記組成物の総量の20質量%以上の前記アミン(b2)を残存させることをさらに含む、[13]に記載の製造方法。
[15]前記触媒(C)が、グアニジン有機触媒である、[11]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]前記重合体(A)が、メタクリレートに基づく単位をさらに有する共重合体である、[11]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]前記重合体(A)が、エチレンに基づく単位を有さない、[11]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]前記重合体(A)が、メチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、[11]~[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]前記重合体(A)が、n-ブチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体である、[11]~[17]のいずれかに記載の製造方法。
[20][1]~[10]のいずれかに記載の組成物の成形体。
[21][1]~[10]のいずれかに記載の組成物の発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シャープな融解ピークを有する蓄熱材が得られる組成物およびその製造方法、前記組成物の成形体および発泡体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例5の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。
【
図2】参考例7の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。
【
図3】実施例7の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。
【
図4】参考例9の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語の意味は、以下の通りである。
式(1)で示す化合物は、「化合物(1)」と記す。他の式で示す化合物も同様に記す。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0011】
<組成物>
本発明の組成物は、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む。
そして、示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解エンタルピー△Hが、50J/g以上である。
【0012】
蓄熱性能および形状保持性が向上する観点から、本発明の組成物の融解エンタルピー△Hは30J/g以上が好ましく、50J/g以上がより好ましく、100J/g以上がさらに好ましい。
【0013】
融解エンタルピー△Hは、以下の示差走査熱量測定により測定される融解曲線の10℃以上60℃未満の温度範囲内の部分をJIS K7122-1987に準拠した方法により解析して得られる融解熱である。
示差走査熱量測定:示差走査熱量計により、窒素雰囲気下で、5mgの試料を封入したアルミニウムパンを150℃で3分間保持する。次に該アルミニウムパンを10℃/分の速度で150℃から-30℃まで降温する。次に該アルミニウムパンを-30℃で3分間保持する。次に該アルミニウムパンを10℃/分の速度で-30℃から150℃まで昇温する。-30℃から150℃まで昇温したときの示差走査熱量測定曲線を融解曲線とする。
【0014】
本発明の組成物の融解ピーク温度は、蓄熱材の用途に応じて適宜設定されるために特に限定されるものではないが、例えば、10~100℃、30~100℃、30~80℃等であり得る。融解ピーク温度が前記数値範囲内の下限値以上であると、低温範囲の蓄熱性能に優れる蓄熱材が得られやすい。融解ピーク温度が前記数値範囲内の上限値以下であると、高温範囲の蓄熱性能に優れる蓄熱材が得られやすい。
融解ピーク温度は、上述した示差走査熱量測定により測定される融解曲線を、JIS K7121-1987に準拠した方法により解析して得られる融解ピークの頂点の温度であり、融解吸熱量が最大となる温度である。融解曲線にJIS K7121-1987により定義される融解ピークが複数ある場合には、融解吸熱量が最大の融解ピークの頂点の温度を融解ピーク温度とする。
【0015】
融解ピークがよりシャープになることで蓄熱性能が向上する観点から、本発明の組成物の融解ピークの半値半幅は3.0℃以下が好ましく、2℃以下がより好ましく、1℃以下がさらに好ましい。融解ピークの半値半幅は、上述した示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解ピークについて算出される。
【0016】
(重合体(A))
重合体(A)は、アクリレートに基づく単位(以下、「アクリレート単位(a1)」と記す。)を有する。重合体(A)は2種以上のアクリレート単位(a1)を有する共重合体であってもよく、アクリレート単位(a1)と、アクリレート以外の他のモノマーに基づく単位(以下、「他のモノマー単位(a2)」と記す。)と、を有する共重合体であってもよい。また、重合体(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
アクリレートは、ヒドロキシ基、アミノ基およびエポキシ基を含有しないアクリル酸エステルである。例えば、アクリル酸メチル(メチルアクリレート)、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソステアリル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートおよびその誘導体、水添ロジンアクリレートおよびその誘導体、アクリル酸ドコシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2-メトキシエチルが挙げられる。ただし、アクリレートはこれらの例示に何ら限定されない。
アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
他のモノマーは、アクリレートと共重合可能なモノマーであれば特に限定されない。例えば、プロピレン、メタクリレート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリルが挙げられる。ただし、他のモノマーはこれらの例示に何ら限定されない。
他のモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
メタクリレートはヒドロキシ基、アミノ基およびエポキシ基を含有しないメタクリル酸エステルである。例えば、メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソステアリル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートおよびその誘導体、水添ロジンアクリレートおよびその誘導体、メタクリル酸ドコシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2-メトキシエチルが挙げられる。ただし、メタクリレートはこれらの例示に何ら限定されない。
メタクリルクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
重合体(A)は、メタクリレートに基づく単位をさらに有することが好ましい。つまり、重合体(A)としては、アクリレート単位(a1)とメタクリレートに基づく単位とを有するものが好ましい。
【0021】
重合体(A)としては、下記の共重合体(A1)、共重合体(A2)が好ましい。
共重合体(A1):メチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体。
共重合体(A2):n-ブチルアクリレートに基づく単位とメタクリレートに基づく単位とを有する共重合体。
【0022】
重合体(A)が他のモノマー単位(a2)としてエチレンに基づく単位を有する場合、蓄熱材の高温での形状維持性能が発現しにくいことがある。また、エチレン由来の融解ピークの影響を受ける結果、蓄熱材の融解ピークのシャープさが損なわれることもある。よって、重合体(A)は、エチレンに基づく単位を有さないことが好ましい。
【0023】
重合体(A)は2種以上のアクリレート単位(a1)を有する共重合体であってもよいが、重合体(A)が他のモノマー単位(a2)を有する場合、アクリレート単位(a1)の割合は重合体(A)の全構成単位に対して5~99質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましい。アクリレート単位(a1)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、アルコール(b1)との反応生成物(B1)、アミン(b2)との反応生成物(B2)がより多く生成しやすい。アクリレート単位(a1)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応生成物(B1)、反応生成物(B2)の収率が向上しやすい。
【0024】
重合体(A)が他のモノマー単位(a2)を有する場合、他のモノマー単位(a2)の割合は重合体(A)の全構成単位に対して1~95質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましい。他のモノマー単位(a2)の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、反応生成物(B1)、反応生成物(B2)の収率が向上しやすい。他のモノマー単位(a2)の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、アルコール(b1)との反応生成物(B1)、アミン(b2)との反応生成物(B2)がより多く生成しやすい。
【0025】
重合体(A)の数平均分子量は30,000~500,000が好ましく、30,000~200,000がより好ましく、30,000~100,000がさらに好ましい。重合体(A)の数平均分子量が前記数値範囲内の下限値以上であると、反応後に得られる共重合体を成型材料、粘接着剤等の用途に適用しやすい。重合体(A)の数平均分子量が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応後に得られる共重合体を塗料等の用途に適用しやすい。
【0026】
(アルコール(b1))
アルコール(b1)としては、重合体(A)のアクリレート単位(a1)と反応し得るものであれば、特に限定されない。ここでいう「反応」とは、典型的にはエステル交換反応であるが、必ずしもこれに限定されない。
アルコール(b1)としては、典型的には、長鎖アルキル基を有するアルコールが挙げられる。長鎖アルキル基は直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。また、アルコール(b1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
アルコール(b1)の長鎖アルキル基の炭素数は特に限定されるものではないが、例えば、12~30が好ましく、14~24がより好ましく、16~22がさらに好ましい。アルコール(b1)の長鎖アルキル基の炭素数が前記数値範囲内の下限値以上であると、高温範囲での蓄熱性能に優れる蓄熱材が得られやすい。アルコール(b1)の長鎖アルキル基の炭素数が前記数値範囲内の上限値以下であると、低温範囲での蓄熱性能に優れる蓄熱材が得られやすい。
【0028】
直鎖状の長鎖アルキル基を有するアルコールとして、例えば、n-テトラデシルアルコール、n-ペンタデシルアルコール、n-ヘキサデシルアルコール、n-ヘプタデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-ノナデシルアルコール、n-エイコシルアルコール、n-ヘンエイコシルアルコール、n-ドコシルアルコール、n-トリコシルアルコール、n-テトラコシルアルコール、n-ペンタコシルアルコール、n-ヘキサコシルアルコール、n-ヘプタコシルアルコール、n-オクタコシルアルコール、n-ノナコシルアルコール、n-トリアコンチルアルコールが挙げられる。
【0029】
分岐鎖状の長鎖アルキル基を有するアルコールとして、例えば、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソノナデシルアルコール、イソエイコシルアルコール、イソヘンエイコシルアルコール、イソドコシルアルコール、イソトリコシルアルコール、イソテトラコシルアルコール、イソペンタコシルアルコール、イソヘキサコシルアルコール、イソヘプタコシルアルコール、イソオクタコシルアルコール、イソノナコシルアルコール、イソトリアコンチルアルコールが挙げられる。
【0030】
(アミン(b2))
アミン(b2)としては、重合体(A)のアクリレート単位(a1)と反応し得るものであれば、特に限定されない。ここでいう「反応」とは、典型的にはアミド化反応であるが、必ずしもこれに限定されない。
アミン(b2)としては、典型的には、長鎖アルキル基を有するアミンが挙げられる。長鎖アルキル基は直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。また、アミン(b2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
長鎖アルキル基の炭素数は特に限定されるものではないが、例えば、12~30が好ましく、14~24がより好ましく、16~22がさらに好ましい。アミン(b2)の長鎖アルキル基の炭素数が前記数値範囲内の下限値以上であると、高温範囲での蓄熱性能に優れる蓄熱材が得られやすい。アミン(b2)の長鎖アルキル基の炭素数が前記数値範囲内の上限値以下であると、低温範囲での蓄熱性能に優れる蓄熱材が得られやすい。
【0032】
直鎖状の長鎖アルキル基を有するアミンとして、例えば、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-ノナデシルアミン、n-エイコシルアミン、n-ヘンエイコシルアミン、n-ドコシルアミン、n-トリコシルアミン、n-テトラコシルアミン、n-ペンタコシルアミン、n-ヘキサコシルアミン、n-ヘプタコシルアミン、n-オクタコシルアミン、n-ノナコシルアミン、n-トリアコンチルアミンが挙げられる。
【0033】
分岐鎖状の長鎖アルキル基を有するアミンとして、例えば、イソテトラデシルアミン、イソペンタデシルアミン、イソヘキサデシルアミン、イソヘプタデシルアミン、イソオクタデシルアミン、イソノナデシルアミン、イソエイコシルアミン、イソヘンエイコシルアミン、イソドコシルアミン、イソトリコシルアミン、イソテトラコシルアミン、イソペンタコシルアミン、イソヘキサコシルアミン、イソヘプタコシルアミン、イソオクタコシルアミン、イソノナコシルアミン、イソトリアコンチルアミンが挙げられる。
【0034】
(反応生成物(B1)、反応生成物(B2))
触媒の存在下において、重合体(A)のアクリレート単位(a1)は、アルコール(b1)とエステル交換反応することができ、また、アミン(b2)とアミド化反応することができる。好適な実施形態に係る組成物は、重合体(A)とアルコール(b1)の反応生成物(B1)、および重合体(A)とアミン(b2)の反応生成物(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含み得る。
典型的な反応生成物(B1)は、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のエステル結合にアルコール(b1)に由来する長鎖アルキル基が結合した重合体である。
典型的な反応生成物(B2)は、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のエステル結合にアミン(b2)に由来する長鎖アルキル基が結合した重合体である。
【0035】
組成物が反応生成物(B1)および反応生成物(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む場合、高温環境下での蓄熱材の溶融や表面の液体の滲みを抑制できる。好適例においては、70℃未満で24時間保持したときに溶融しないか、または液状物質がブリードアウトしなくなる、という格別の効果が奏される。
【0036】
(他の成分)
本発明の組成物は、重合体(A)、アルコール(b1)、アミン(b2)、反応生成物(B1)および反応生成物(B2)以外の他の成分を任意成分としてさらに含んでもよい。任意成分としては、例えば、無機フィラー、有機フィラー、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、結晶造核剤、顔料、吸着剤、金属塩化物、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩、滑剤、シリコーン化合物が挙げられる。
任意成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
無機フィラーとしては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリンが挙げられる。
有機フィラーとしては、例えば、繊維、木粉、セルロースパウダーが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミン系酸化防止剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリジアミン系紫外線吸収剤、アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤が挙げられる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラックが挙げられる。
吸着剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウムのような金属酸化物が挙げられる。
金属塩化物としては、例えば、塩化鉄、塩化カルシウムが挙げられる。
滑剤としては、例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂肪族アミド、脂肪族エステルが挙げられる。
【0038】
(組成)
重合体(A)の含有量は組成物の総量の1~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。重合体(A)の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、高温環境下での蓄熱材の溶融や表面の液体の滲みを抑制しやすい。重合体(A)の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、融解エンタルピー△Hの大きな蓄熱材が得られやすい。
【0039】
アルコール(b1)の含有量は組成物の総量の20質量%以上が好ましく、20~60質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。アルコール(b1)の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、融解エンタルピー△Hの大きな蓄熱材が得られやすい。アルコール(b1)の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、高温環境下での蓄熱材の溶融や表面の液体の滲みを抑制しやすい。
【0040】
アミン(b2)の含有量は組成物の総量の20質量%以上が好ましく、20~60質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。アミン(b2)の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、融解エンタルピー△Hの大きな蓄熱材が得られやすい。アミン(b2)の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、高温環境下での蓄熱材の溶融や表面の液体の滲みを抑制しやすい。
【0041】
反応生成物(B1)の含有量は組成物の総量の0~80質量%以上が好ましく、0~60質量%がより好ましく、0~50質量%がさらに好ましい。反応生成物(B1)の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、高温環境下での蓄熱材の溶融や表面の液体の滲みを抑制しやすい。反応生成物(B1)の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、融解エンタルピー△Hの大きな蓄熱材が得られやすい。
【0042】
反応生成物(B2)の含有量は組成物の総量の0~80質量%以上が好ましく、0~60質量%がより好ましく、0~50質量%がさらに好ましい。反応生成物(B2)の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、高温環境下での蓄熱材の溶融や表面の液体の滲みを抑制しやすい。反応生成物(B2)の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、融解エンタルピー△Hの大きな蓄熱材が得られやすい。
【0043】
(組成物の製造方法)
本発明の組成物は、重合体(A)とアルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、必要に応じて反応生成物(B1)、反応生成物(B2)および任意成分とを混合することで製造できる。混合方法は特に限定されない。種々の混練装置、混合装置および手法が適用され得る。
【0044】
好適な実施形態に係る組成物の製造方法は、触媒(C)の存在下で、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)とを反応させることを含む。
典型的には、重合体(A)のアクリレート単位(a1)とアルコール(b1)との間でエステル交換反応が起きる。重合体(A)のアクリレート単位(a1)を-(CH2CH(C(=O)O-Ra1))-で表し、アルコール(b1)をRb1-OHで表すとき、Ra1とRb1との間でエステル交換反応が起きる(Rb1は、長鎖アルキル基である。)。結果、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のうち、少なくとも一部のRa1がRb1に変換される。そのため、アクリレート単位(a1)のエステル結合を介してアルコール(b1)に由来する構造、すなわち、-Rb1基を重合体(A)に導入できる。
【0045】
触媒(C)は、重合体(A)とアルコール(b1)との間のエステル交換反応において触媒として機能する化合物である。触媒(C)としては、特に限定されるものではないが、例えば、グアニジン系化合物、チタン系化合物、スズ系化合物、p-トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0046】
触媒(C)としては、エステル交換反応やアミド化反応による導入効率が向上することから、グアニジン系化合物が好ましい。
グアニジン系化合物としては、例えば、下記の化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、化合物(4)が挙げられる。
【0047】
【0048】
式(4)中、R1、R2、R3、R4は水素原子、メチル基、エチル基またはtert-ブチル基である。
【0049】
なかでも、グアニジン系化合物としては化合物(1)、すなわち、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)が好ましい。
【0050】
エステル交換反応のための触媒(C)の使用量は、アルコール(b1)100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましく、1~2質量部がさらに好ましい。触媒(C)の使用量が前記数値範囲内の下限値以上であると、エステル交換反応の反応効率がより向上する。触媒(C)の使用量が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応生成物に残存する触媒量を少なくできる。
【0051】
エステル交換反応に際し、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のすべてをエステル交換反応させてもよく、アクリレート単位(a1)の一部をエステル交換反応させてもよい。好適な実施形態に係る組成物の製造方法は、組成物の総量の20質量%以上のアルコール(b1)を残存させることをさらに含んでもよい。未反応のアルコール(b1)を組成物中に20質量%以上意図的に残存させることで、吸熱ピークの大きさ(深さ)を制御できる。結果、所望の蓄熱性能を有する蓄熱材が得られやすくなる。
【0052】
エステル交換反応の反応温度は特に限定されないが、例えば、70~200℃が好ましい。エステル交換反応の反応温度が前記数値範囲内の下限値以上であると、エステル交換反応の反応効率が向上しやすい。エステル交換反応の反応温度が前記数値範囲内の上限値以下であると、触媒の分解が抑制されやすい。
【0053】
エステル交換反応の反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5~24時間が好ましい。エステル交換反応の反応時間が前記数値範囲内の下限値以上であると、エステル交換反応の反応効率が向上しやすい。エステル交換反応の反応時間が前記数値範囲内の上限値以下であると、触媒の分解が抑制されやすい。
【0054】
エステル交換反応は溶媒中で行ってもよく、溶媒を用いずに行ってもよい。溶媒は、エステル交換反応に不活性な化合物であればよく、特に限定されない。また、アルコール(b1)を溶媒として用いてもよい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の極性溶媒が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
エステル交換反応を行う際、反応によって生成するアルコールを取り除く目的でモレキュラーシーブを加えてもよい。モレキュラーシーブの使用量は重合体(A)100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。モレキュラーシーブの使用量が前記数値範囲内の下限値以上であるとエステル交換反応の反応効率が向上しやすい。モレキュラーシーブの使用量が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応溶液を撹拌しやすい。
【0056】
他の好適な実施形態に係る組成物の製造方法は、触媒(C)の存在下で、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アミン(b2)とを反応させることを含む。
典型的には、アクリレート単位(a1)とアミン(b2)との間でアミド化反応が起きる。重合体(A)のアクリレート単位(a1)を-(CH2CH(C(=O)O-Ra1))-で表し、アミン(b2)をN(Rb2)(Rb3)Hで表すとき、Ra1とRb2、Rb3との間でアミド化反応が起きる(Rb2、Rb3はそれぞれ独立に、長鎖アルキル基または水素原子であり、同時に水素原子ではない。)。結果、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のうち、少なくとも一部のRa1がRb2またはRb3に変換される。そのため、アクリレート単位(a1)のエステル結合を介してアミン(b2)に由来する構造、すなわち、-Rb2基または-Rb3基を重合体(A)に導入できる。
【0057】
アミド化反応においても、触媒(C)の詳細および好ましい態様は、エステル交換反応において説明した内容と基本的には同じである。アミド化反応においても、グアニジン有機触媒は優れた触媒として機能する。特に、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)を使用することで、アミド化反応による反応生成物(B2)の収率が高くなる。
【0058】
アミド化反応のための触媒(C)の使用量は、アミン(b2)100質量部に対して0.5~5質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましく、1~2質量部がさらに好ましい。触媒(C)の使用量が前記数値範囲内の下限値以上であると、アミド化反応の反応効率がより向上する。触媒(C)の使用量が前記数値範囲内の上限値以下であると、反応生成物に残存する触媒量を少なくできる。
【0059】
アミド化反応に際し、重合体(A)のアクリレート単位(a1)のすべてをアミド化反応させてもよく、アクリレート単位(a1)の一部をアミド化反応させてもよい。この好適な実施形態に係る組成物の製造方法は、組成物の総量の20質量%以上の前記アミン(b2)を残存させることをさらに含んでもよい。未反応のアミン(b2)を組成物中に20質量%以上意図的に残存させることで、吸熱ピークの大きさ(深さ)を制御できる。結果、所望の蓄熱性能を有する蓄熱材が得られやすくなる。
【0060】
アミド化反応の反応温度は特に限定されないが、例えば、70~200℃が好ましい。アミド化反応の反応温度が前記数値範囲内の下限値以上であると、アミド化反応の反応効率が向上しやすい。アミド化反応の反応温度が前記数値範囲内の上限値以下であると、触媒の分解を抑制しやすい。
【0061】
アミド化反応の反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5~24時間が好ましい。アミド化反応の反応時間が前記数値範囲内の下限値以上であると、アミド化反応の反応効率が向上しやすい。アミド化反応の反応時間が前記数値範囲内の上限値以下であると、触媒の分解が抑制されやすい。
【0062】
アミド化反応は溶媒中で行ってもよく、溶媒を用いずに行ってもよい。溶媒は、アミド化反応に不活性な化合物であればよく、特に限定されない。溶媒の例としては、エステル交換反応の説明で例示した化合物と同じものが挙げられる。
【0063】
(作用機序)
以上説明した組成物においては、アクリレートに基づく単位を有する重合体(A)と、アルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含む。アルコール(b1)およびアミン(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことで、シャープな融解ピークを有する蓄熱材が得られる。また、組成物から得られる蓄熱材は形状保持性に優れる。
【0064】
<成形体、発泡体>
本発明の組成物は蓄熱材用組成物として有用であり、その成形体および発泡体は蓄熱材として有用である。
例えば、本発明の組成物を含む成形材料は押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、圧延成形のような種々の成形法により任意の立体形状に成形可能である。
【0065】
本発明の組成物から得られる蓄熱材の形状は何ら限定されず、蓄熱材の用途、使用目的に応じて選択され得る。例えば、球状、角状(キューブ状)、数珠玉状(ビーズ状)、円柱状(ペレット状)、粉末状、棒状(スティック状)、針状、繊維状(ファイバー状)、ストランド状、糸状、紐状、縄状、綱状、板状、シート状、膜状(フィルム状)、織布状、不織布状、箱状(カプセル状)、発泡体状、任意の立体形状が挙げられる。
【0066】
蓄熱材は本発明の組成物を含む成形材料からなるものであってもよく、本発明の組成物を含む成形材料から得られる本発明に係る成形体(以下「本成形体」)と、本成形体以外の他の材料とを併用してもよい。他の材料としては、例えば、重合体(A)、反応生成物(B1)および反応生成物(B2)以外の他のポリマー、金属、金属以外の無機物が挙げられる。
【0067】
例えば、球状等の本成形体が他の材料で覆われたコア-シェル構造を有する蓄熱材、他の材料が本成形体で覆われたコア-シェル構造を有する蓄熱材があり得る。
他にも、例えば繊維状等の本成形体が他の材料で覆われた芯鞘構造の蓄熱材、他の材料が本成形体で覆われた芯鞘構造の蓄熱材もあり得る。
さらに他にも、例えば板状等の本成形体が他の材料により両面または片面を覆われた積層構造を有する蓄熱材、他の材料が本成形体により両面または片面を覆われた積層構造を有する蓄熱材があり得る。
さらに他にも、例えば発泡体状の本成形体が、発泡体状とは異なる形状の本成形体または他の材料とコアシェル構造、芯-鞘構造または積層構造を形成していてもよい。このように本成形体は他の材料との多層成形体であってもよい。
【0068】
(繊維)
本成形体からなる繊維は、本発明の組成物を含む成形材料を紡糸することにより製造できる。該成形材料は、重合体(A)、反応生成物(B1)および反応生成物(B2)以外の他のポリマーをさらに含んでもよい。他のポリマーを含む成形材料を紡糸した場合、海島構造、シリンダー構造、ラメラ構造、共連続構造等のモルフォロジーが形成され得る。
紡糸法は特に限定されず、種々の手法が適用され得る。また、芯鞘型複合繊維、貼り合わせ型複合繊維、分割型複合繊維、海島型複合繊維のような複合繊維もあり得る。
本成形体からなる繊維は、例えば、織物、編物、不織布のようないずれの布地、生地にも適用され得る。
【0069】
(発泡体)
本成形体からなる発泡体は、発泡剤により本発明の組成物を発泡させることにより製造できる。発泡体は本発明の組成物および発泡剤を加熱することで製造できる。加熱の前または後において、本発明の組成物に含まれる重合体(A)、反応生成物(B1)、反応生成物(B2)を架橋してもよい。
【0070】
発泡剤は、典型的には、物理発泡剤、熱分解型発泡剤である。発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
物理発泡剤としては、例えば、空気、酸素、チッソ、二酸化炭素、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、水、石油エーテル、塩化メチル、塩化エチル、モノクロルトリフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロテトラフルオロエタンが挙げられる。
熱分解型発泡剤としては、例えば、炭酸ナトリウム等の無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、N,N-ジニトロペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド等の有機系発泡剤が挙げられる。
【0071】
分解温度が200℃より高い熱分解型発泡剤を使用する場合、発泡助剤を併用することは、一例において有用である。発泡助剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物;炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;塩化亜鉛等の金属塩化物;尿素;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、二塩基性フタル酸鉛等の金属石鹸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機錫化合物;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛等の無機塩類が挙げられる。
発泡助剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
より微細な気泡を有する発泡体を得るために発泡核剤を併用することは、一例において有用である。発泡核剤としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミノシリケート、クレー、石英粉、珪藻土類;ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンからなる粒径100μm以下の有機ポリマービーズ;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム等の金属塩;酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。
発泡核剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
<用途>
蓄熱材の用途として、例えば、建築材料、家具、インテリア用品、寝具、浴室材料、車輌、空調設備、電化製品、保温容器、衣類、日用品、農業資材、発酵システム、熱電変換システム、熱搬送媒体が挙げられる。他の材料からなる断熱材、遮熱材、高熱伝導材および防火材を必要に応じて本成形体からなる蓄熱材と併用してもよい。
以下、蓄熱材のより詳細な適用例を例示する。ただし、蓄熱材の適用は以下の例示に限定されるものではない。
【0074】
建築材料としては、例えば、床材、壁材、壁紙、天井材、屋根材、床暖房システム、畳、扉、襖、雨戸、障子、窓、窓枠が挙げられる。
家具、インテリア用品、寝具としては、例えば、パーティションボード、ブラインド、カーテン、絨毯、布団、マットレスが挙げられる。
浴室材料としては、例えば、浴槽材、風呂蓋材、浴室床材、浴室壁材、浴室天井材が挙げられる。
【0075】
車輌の部材としては、例えば、エンジン暖機システム、ガソリン蒸発損失防止装置(キャニスター)、車内空調、内装材、保冷車輌のコンテナの部材、保温車輌のコンテナの部材が挙げられる。
空調設備の部材としては、例えば、躯体蓄熱式空調システムの蓄熱材、水蓄熱式空調システムの蓄熱槽の部材、氷蓄熱式空調システムの蓄熱槽の部材、熱媒配管材またその保温材、冷媒配管材またはその保温材、熱交換型換気システムのダクト材が挙げられる。
【0076】
電化製品としては、例えば、テレビ、ブルーレイレコーダープレーヤー、DVDレコーダープレーヤー、モニタ、ディスプレイ、プロジェクタ、リアプロジェクションテレビ、コンポ、ラジカセ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレットPC、PDA、プリンタ、3Dプリンタ、スキャナ、家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機、電子機器用蓄電池、電子機器用変圧器等の電子機器;
電気ストーブ、ファンヒーター、除湿機、加湿器、ホットカーペット、こたつ、電気毛布、電気ひざ掛け、電気あんか、暖房便座、温水洗浄便座、アイロン、ズボンプレッサー、布団乾燥機、衣類乾燥機、ヘアドライヤー、ヘアアイロン、温熱マッサージ器、温熱治療器、食器洗浄機、食器乾燥機、乾燥式生ごみ処理機等の加熱式生活家電;
IHクッキングヒーター、ホットプレート、電子レンジ、オーブンレンジ、炊飯器、餅つき機、ホームベーカリー、トースター、電子発酵器、電気ポット、電気ケトル、コーヒーメーカー等の加熱式調理家電;
ミキサー、フードプロセッサー、精米機等の摩擦熱が発生する調理家電;
冷蔵庫、冷凍庫、恒温恒湿保冷庫、牛乳保冷庫、玄米保冷庫、野菜保冷庫、保冷米櫃、冷凍冷蔵ショーケース、プレハブ型保冷庫、プレハブ型冷蔵ショーケース、温冷配膳車、ワインセラー、食品用自動販売機、弁当保温キャビネット等の電源付保温保冷庫が挙げられる。
【0077】
衣類としては、例えば、寝間着、防寒着、手袋、靴下、スポーツウェア、ウエットスーツ、ドライスーツ、耐熱保護衣、耐火保護衣が挙げられる。
日用品としては、例えば、食器、弁当箱、水筒、魔法瓶、懐炉、湯たんぽ、保冷材、電子レンジ加熱式保温材が挙げられる。
農業資材としては、例えば、ビニールハウス用フィルム、農用保温シート、潅水用ホース、潅水用パイプ、育苗用農電マットが挙げられる。
発酵システムは、堆肥やバイオガスを製造するためのものである。例えば、バイオ式生ごみ処理機、堆肥製造用発酵槽、バイオガス製造用発酵槽が挙げられる。
【実施例0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0079】
<略称>
・nBA:n-ブチルアクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・MA :メチルアクリレート
・Et :エチレン
・TBD:1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン
・C14OH:1-テトラデカノール(CH3(CH2)13OH)
・C18OH:1-オクタデカノール(CH3(CH2)17OH)
・THF:テトラヒドロフラン
・T1:融解ピーク温度
・T2:24時間放置したとき、溶融または表面で液体の滲みが起きない最高温度
・半値半幅:示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解ピークの半値半幅
・△H:示差走査熱量測定によって10℃以上60℃未満の温度範囲内に観測される融解エンタルピー△H
【0080】
<測定方法、分析方法>
(示差走査熱量測定)
各例の組成物および混合物をはさみで細かく裁断することで、試料を調製した。示差走査熱量計により、窒素雰囲気下で、5mgの試料を封入したアルミニウムパンを150℃で3分間保持した。次に該アルミニウムパンを10℃/分の速度で150℃から-30℃まで降温した。次に該アルミニウムパンを-30℃で3分間保持した。次に該アルミニウムパンを10℃/分の速度で-30℃から150℃まで昇温した。-30℃から150℃まで昇温したときの示差走査熱量測定曲線を融解曲線とした。
【0081】
(T1:融解ピーク温度)
示差走査熱量測定により測定した融解曲線を、JIS K7121-1987に準拠した方法により解析して得られる融解ピークの頂点の温度として取得した。
【0082】
(半値半幅)
示差走査熱量測定により測定した融解曲線のベースラインを基準として融解ピーク強度の半分の値を取る2点間の距離を解析して取得した。
【0083】
(△H:融解エンタルピー)
示差走査熱量測定により測定した融解曲線の融解ピークを積分することで取得した。
【0084】
(T2)
針金を用いて吊るした状態で板状の反応生成物を固定することで、試料を調製した。乾燥装置を用い、最初は40℃で24時間放置した。試料の溶融または表面の液体の滲みが起きなくなるまで放置時の温度を徐々に10℃ずつ上げていき、溶融または液体の滲みが起きたときの温度を記録した。記録は放置温度が110℃に到達するまで行った。
【0085】
(変換率(%))
変換率(%)は下式より算出した。
変換率(%)=(n1/n0)×100
式中、n1は、エステル交換反応後のポリマーが有するアルコール由来のアクリレート単位(a1)のモル数(mol)であり、n0は、エステル交換反応前の重合体(A)が有するアクリレート単位(a1)のモル数(mol)である。n0およびn1は、1HNMRより解析して求めた。
【0086】
<実施例1>
重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。Kurarity LA2140eは、MMA-BA-MMAのトリブロック共重合体であり、その質量比(MMA:BA:MMA)は10:80:10である。
重合体(A):60質量%とC14OH:40質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。実施例1では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):60質量%と、未反応のC14OH:40質量%とを含む組成物を得た。
【0087】
<実施例2>
実施例1と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。
重合体(A):40質量%とC14OH:60質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。実施例2では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):40質量%と、未反応のC14OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0088】
<実施例3>
実施例1、2と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。
まず、反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C14OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC14OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC14OHとの合計量が40質量%になるようにC14OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):51質量%と、未反応部の重合体(A):9質量%と、未反応のC14OH:40質量%とを含む板状の組成物を得た。
【0089】
<実施例4>
実施例1~3と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C14OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC14OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC14OHとの合計量が60質量%になるようにC14OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):34質量%と、未反応部の重合体(A):6質量%と、未反応のC14OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0090】
<実施例5>
実施例1~4と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。
重合体(A):60質量%とC18OH:40質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。実施例5では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):60質量%と、未反応のC18OH:40質量%とを含む組成物を得た。
【0091】
<実施例6>
実施例1~5と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。
重合体(A):40質量%とC18OH:60質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。実施例6では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):40質量%と、未反応のC18OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0092】
<実施例7>
実施例1~6と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。Kurarity LA2140eは、MMA-BA-MMAのトリブロック共重合体であり、その質量比(MMA:BA:MMA)は10:80:10である。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C18OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC18OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC18OHとの合計量が40質量%になるようにC18OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):46質量%と、未反応部の重合体(A):14質量%と、未反応のC18OH:40質量%とを含む板状の組成物を得た。
【0093】
<実施例8>
実施例1~7と同じく、重合体(A)としてKurarity LA2140e(クラレ社製品)を使用した。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C18OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC18OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC18OHとの合計量が60質量%になるようにC18OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):31質量%と、未反応部の重合体(A):9質量%と、未反応のC18OH:60質量%とを含む板状の組成物を得た。
【0094】
<実施例9>
重合体(A)としてMMA-MAのランダム共重合体を使用した。その質量比(MMA:MA)は90:10である。
重合体(A):60質量%とC18OH:40質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。実施例9では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):60質量%と、未反応のC18OH:40質量%とを含む組成物を得た。
【0095】
<実施例10>
実施例9と同じく、重合体(A)としてMMA-MAのランダム共重合体を使用した。
重合体(A):40質量%とC18OH:60質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。実施例10では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):40質量%と、未反応のC18OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0096】
<参考例1、2>
参考例1では、C14OHについて分析した。参考例2ではC18OHについて分析した。
【0097】
<参考例3>
重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
重合体(A):60質量%とC14OH:40質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。参考例3では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):60質量%と、未反応のC14OH:40質量%とを含む組成物を得た。
【0098】
<参考例4>
参考例3と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
重合体(A):40質量%とC14OH:60質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。参考例4では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):40質量%と、未反応のC14OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0099】
<参考例5>
参考例3、4と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C14OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC14OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC14OHとの合計量が40質量%になるようにC14OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):23質量%と、未反応部の重合体(A):37質量%と、未反応のC14OH:40質量%とを含む板状の組成物を得た。
【0100】
<参考例6>
参考例3~5と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C14OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC14OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC14OHとの合計量が60質量%になるようにC14OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):15質量%と、未反応部の重合体(A):25質量%と、未反応のC14OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0101】
<参考例7>
参考例3~6と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
重合体(A):60質量%とC18OH:40質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。参考例7では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):60質量%と、未反応のC18OH:40質量%とを含む組成物を得た。
【0102】
<参考例8>
参考例3~7と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
重合体(A):40質量%とC18OH:60質量%をTHFに溶解し、溶解液を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させ、板状の組成物を得た。参考例8では、エステル交換反応を実施しなかった。そのため、未反応部としての重合体(A):40質量%と、未反応のC18OH:60質量%とを含む組成物を得た。
【0103】
<参考例9>
参考例3~8と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C18OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC18OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC18OHとの合計量が40質量%になるようにC18OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):25質量%と、未反応部の重合体(A):35質量%と、未反応のC18OH:40質量%とを含む板状の組成物を得た。
【0104】
<参考例10>
参考例3~9と同じく、重合体(A)としてEt-MAのランダム共重合体を使用した。
反応容器中にトルエン:60質量%、重合体(A):15質量%、C18OH:20質量%、TBD:5質量%を加えた。反応容器を120℃に加熱することで6時間エステル交換反応させた。反応温度は、熱媒の温度計の計測値とした。また、反応溶液を熱媒に浸漬した時点から熱媒から取り出した時点までの間を反応時間とした。
反応終了後、反応溶液をTHFで希釈し、ヘキサン中で再沈澱させることで反応生成物(B1)、未反応の重合体(A)および未反応のC18OHを含む混合物を得た。該混合物をTHFに溶解した後、未反応のC18OHとの合計量が60質量%になるようにC18OHをさらに加えた後、室温で攪拌した。その後、組成物を容器に移し、溶媒のTHFを揮発させた。このようにして、反応生成物(B1):17質量%と、未反応部の重合体(A):23質量%と、未反応のC18OH:60質量%とを含む板状の組成物を得た。
【0105】
【0106】
【0107】
<結果>
表1、2に示す通り、実施例1~10では、吸熱ピークの半値半幅が3.0未満と低くなった。参考例1~10では、吸熱ピークの半値半幅が3.0以上となった。このように実施例1~10では、吸熱ピークの形状が参考例1~10よりシャープであった。
【0108】
加えて、実施例1~10では総じてT2が高く、形状保持性も良好であった。特に、実施例3、7、9にてT2は100℃以上となり、良好な形状保持性が発現した。
【0109】
図1は、実施例5の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。
図2は、参考例7の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。実施例5および参考例7の組成物はいずれも未反応のC14OHを40質量%含むが、実施例5の方がよりシャープな融解ピークが得られた。
この結果から、アクリレート単位(a1)を有する重合体(A)にC14OHやC18OHのようなアルコール(b1)を加えるだけで、シャープな吸熱ピークが観察されると考えられる。
【0110】
図3は、実施例7の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。
図4は、参考例9の示差走査熱量測定の融解曲線を示す。実施例7および参考例9の組成物はいずれも未反応のC18OHを40質量%含むが、実施例7の方がよりシャープかつ明らかに深い融解ピークが得られた。
この結果から、アクリレート単位(a1)を有する重合体(A)とC14OHやC18OHのようなアルコール(b1)をエステル交換反応させることでも、シャープな吸熱ピークが観察されると考えられる。