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特開2024-126203温度センサ、センサユニット、及び計測システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126203
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】温度センサ、センサユニット、及び計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/16 20060101AFI20240912BHJP
   G01N 25/20 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
G01K7/16 B
G01N25/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034432
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、太陽光発電技術研究組合「BIPV用日射熱取得率評価装置の設計と、BIPVモジュール発電量評価及び解析」委託研究、産業技術力強化法(平成12年法律第44号)第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 真一
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊輔
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB10
2G040CA02
2G040DA03
2G040HA05
(57)【要約】
【課題】簡易な構造により温度測定の高精度化を実現する温度センサ、センサユニット、及び計測システムを提供すること。
【解決手段】絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、センサ素子に接続された一対の端子と、を有する温度センサ。センサ素子は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリットが形成されている。センサ素子は、上記スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端側と他端側とに、それぞれ、一対の端子における各端子が接続されている。センサユニットは、複数の温度センサが連結されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、
前記基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、
前記センサ素子に接続された一対の端子と、を有し、
前記センサ素子は、
一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットが形成されており、
前記スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端側と他端側とに、それぞれ、前記一対の端子における各端子が接続されている、温度センサ。
【請求項2】
絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、
前記基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、
前記センサ素子に接続された一対の端子と、を有し、
前記センサ素子は、
一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットが形成されており、
前記スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端部の、前記延伸方向における中央の箇所と、前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における中央の箇所とに、それぞれ、前記一対の端子における各端子が接続されている、温度センサ。
【請求項3】
絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、
前記基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、
前記センサ素子に接続された一対の端子と、を有し、
前記センサ素子は、
一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットが形成されており、
前記スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端部の、前記延伸方向における中央の箇所と、前記延伸方向における一端部又は他端部の、前記直交方向における中央の箇所とに、それぞれ、前記一対の端子における各端子が接続されている、温度センサ。
【請求項4】
前記一対の端子は、
前記センサ素子における矩形の領域内に配置された内端子と、
前記センサ素子における矩形の領域外に配置された外端子と、により構成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記一対の端子のうちの一方は、ネジの螺入が可能なネジ穴が形成されており、
前記一対の端子のうちの他方は、前記ネジ穴よりも径の大きな通し穴が形成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記内端子及び前記外端子のうちの一方は、ネジの螺入が可能なネジ穴が形成され、
前記内端子及び前記外端子のうちの他方は、前記ネジ穴よりも径の大きな通し穴が形成されている、請求項4に記載の温度センサ。
【請求項7】
請求項1に記載の温度センサを複数有する、センサユニット。
【請求項8】
各温度センサそれぞれの前記一対の端子は、
前記センサ素子における矩形の領域内に配置された内端子と、
前記センサ素子における矩形の領域外に配置された外端子と、により構成されており、
複数の前記温度センサは、
前記直交方向における一端部の、前記延伸方向における一端側に前記内端子を有し、前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における一端側に前記外端子を有する、1又は複数の前記温度センサと、
前記延伸方向における一端部の、前記直交方向における一端側に前記内端子を有し、前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における一端側に前記外端子を有する、1又は複数の前記温度センサと、
前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における一端側に前記内端子を有し、前記延伸方向における他端部の、前記直交方向における一端側に前記外端子を有する、1又は複数の前記温度センサと、により構成されている、請求項7に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記一対の端子は、
前記センサ素子における矩形の領域内に配置された内端子と、
前記センサ素子における矩形の領域外に配置された外端子と、により構成されており、
複数の前記温度センサは、
前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における一端側に前記内端子を有し、前記延伸方向における他端部の、前記直交方向における一端側に前記外端子を有する、1又は複数の前記温度センサと、
前記直交方向における一端部の、前記延伸方向における他端側に前記内端子を有し、前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における一端側に前記外端子を有する、1又は複数の前記温度センサと、により構成されている、請求項7に記載のセンサユニット。
【請求項10】
前記内端子及び前記外端子のうちの一方は、ネジの螺入が可能なネジ穴が形成され、
前記内端子及び前記外端子のうちの他方は、前記ネジ穴よりも径の大きな通し穴が形成されている、請求項8又は9に記載のセンサユニット。
【請求項11】
請求項2に記載の1又は複数の温度センサと、
請求項3に記載の1又は複数の温度センサと、を含むセンサユニット。
【請求項12】
各温度センサそれぞれの前記一対の端子は、
前記センサ素子における矩形の領域内に配置された内端子と、
前記センサ素子における矩形の領域外に配置された外端子と、により構成されている、請求項11に記載のセンサユニット。
【請求項13】
各温度センサは、それぞれ、
前記内端子及び前記外端子のうちの一方に、ネジの螺入が可能なネジ穴が形成され、
前記内端子及び前記外端子のうちの他方に、前記ネジ穴よりも径の大きな通し穴が形成されている、請求項12に記載のセンサユニット。
【請求項14】
請求項1~3の何れか一項に記載の温度センサと、
前記温度センサからの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物の熱に関する性質を示す特性データを求める管理装置と、を有する、計測システム。
【請求項15】
請求項7~9の何れか一項に記載のセンサユニットと、
前記センサユニットからの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物の熱に関する性質を示す特性データを求める管理装置と、を有する、計測システム。
【請求項16】
請求項11に記載のセンサユニットと、
前記センサユニットからの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物の熱に関する性質を示す特性データを求める管理装置と、を有する、計測システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の表面などに配設されて用いられる温度センサ、センサユニット、及び計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体の表面に貼り付けられ、該物体の温度に関する情報を取得するための温度センサが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。特許文献1には、複数の熱電対を組み合わせてなるサーモパイルにより構成された熱流センサが開示されている。特許文献2には、基材の表面に平面視矩形状の複数の金属層が形成された熱流センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-35235号公報
【特許文献2】特開2012-42304号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の温度センサは、線状のセンサ素子が用いられていることから、基材の表面全体に占めるセンサ素子の割合、つまり実効面積が小さくなる。実効面積とは、平面視における面積について、温度センサ全体に占めるセンサ素子の割合のことである。温度センサは、実効面積が小さくなると、光の照射に対する感度が低くなるため、温度の測定精度も低下する。
【0005】
これに対し、特許文献2の温度センサは、センサ素子としての複数の金属層が基材の表面に並べて配置されているため、特許文献1の温度センサよりも、測定対象物に対するセンサ素子の実効面積は大きくなる。しかしながら、特許文献2の温度センサは、複数の金属層間に一定の距離を確保する必要があるため、実効面積の確保も十分とはいえず、さらにセンサ全体の構造が複雑化されているため、製造効率の低下を回避することができない。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現する温度センサ、センサユニット、及び計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る温度センサは、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、センサ素子に接続された一対の端子と、を有し、センサ素子は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットが形成されており、スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端側と他端側とに、それぞれ、一対の端子における各端子が接続されている。
本発明の一態様に係るセンサユニットは、上記の温度センサを複数有するものである。
【0008】
本発明の第2の態様に係る温度センサは、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、センサ素子に接続された一対の端子と、を有し、センサ素子は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットが形成されており、スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端部の、延伸方向における中央の箇所と、直交方向における他端部の、延伸方向における中央の箇所とに、それぞれ、一対の端子における各端子が接続されている。
本発明の第3の態様に係る温度センサは、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子と、センサ素子に接続された一対の端子と、を有し、センサ素子は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットが形成されており、スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端部の、延伸方向における中央の箇所と、延伸方向における一端部又は他端部の、直交方向における中央の箇所とに、それぞれ、一対の端子における各端子が接続されている。
本発明の一態様に係るセンサユニットは、第2の態様に係る1又は複数の温度センサと、第3の態様に係る1又は複数の温度センサと、を含むものである。
【0009】
本発明の一態様に係る計測システムは、上記の温度センサと、温度センサからの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物の熱に関する性質を示す特性データを求める管理装置と、を有するものである。
本発明の一態様に係る計測システムは、上記のセンサユニットと、センサユニットからの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物の熱に関する性質を示す特性データを求める管理装置と、を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、一端側と他端側から交互に形成された複数のスリットを有するセンサ素子と、センサ素子に接続された一対の端子と、を有している。すなわち、センサ素子は、膜状であって、設定幅の間隔をあけて直交方向に蛇行するよう形成されているため、測定対象物との間の熱伝導率の向上を図り、測温抵抗体としての機能を高めることができる。よって、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係るセンサユニット及び計測システムを概略的に例示した構成図である。
図2図1のセンサユニットが有する温度センサの断面形状を模式的に例示した概略断面図である。
図3図1のセンサユニットが有する温度センサの第1の例を示す平面図である。
図4図1のセンサユニットが有する温度センサの第2の例を示す平面図である。
図5図1のセンサユニットが有する温度センサの第3の例を示す平面図である。
図6図1の各温度センサにおける基板と各端子との接続状態を例示した平面図である。
図7図6のA-A線に沿った概略断面図である。
図8図1の各温度センサにおける各端子の構成例を示す平面図である。
図9図8のB-B線に沿った概略断面図である。
図10】ある温度センサの外端子におけるネジ穴と、他の温度センサの内端子における通し穴との位置合わせをした状態でネジを螺入する様子を例示した説明図である。
図11図10の状態から通し穴及びネジ穴にネジを挿入して締め付け、外端子と内端子とを締結した状態を例示した説明図である。
図12】バーリング加工が施された外端子を例示した概略断面図である。
図13】ナットが溶着された外端子を例示した概略断面図である。
図14】曲げ加工が施された外端子の一例を示す平面図である。
図15図14のC-C線に沿った概略断面図である。
図16】曲げ加工が施された外端子の他の例を示す平面図である。
図17図16のD-D線に沿った概略断面図である。
図18図1のセンサユニット又は図2図4の各温度センサを用いて熱流を求める際の各工程を例示したフローチャートである。
図19図1のセンサユニット又は図2図4の各温度センサと照度センサとを用いて熱流を求める際の各工程を例示したフローチャートである。
図20】本発明の実施の形態1の変形例Aに係るセンサユニット及び計測システムを概略的に例示した構成図である。
図21図20のセンサユニットが有する温度センサのうちの1つを示す平面図である。
図22】本発明の実施の形態1の変形例Bに係るセンサユニット及び計測システムを概略的に例示した構成図である。
図23図22のセンサユニットが有する温度センサの一例を示す平面図である。
図24図22のセンサユニットが有する温度センサの他の例を示す平面図である。
図25】本発明の実施の形態2に係るセンサユニット及び計測システムを概略的に例示した構成図である。
図26図25の計測システムにより熱流を求める際の各工程を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1図17に基づき、本発明の実施の形態1に係るセンサユニット60及び計測システム100の構成例について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で符号の一部を省略することがある。まず、図1図5を参照し、センサユニット60の全体的な構成例について説明する。
【0013】
図1に示すように、計測システム100は、複数の温度センサ10により構成されたセンサユニット60と、センサユニット60からの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物(被測定試料)Mの特性データを求める管理装置80と、を有している。特性データは、測定対象物Mの熱に関する性質を示す情報である。測定対象物Mは、温度センサ10を取り付けて特性データの取得対象とする物体である。図1に例示するセンサユニット60は、複数の温度センサ10として、1又は複数の温度センサ11と、1又は複数の温度センサ12と、1又は複数の温度センサ13と、を有している。以降においても、温度センサ11~13を区別せずに指す場合は、これらを温度センサ10と総称する。温度センサ10は、平面視で矩形状となるよう形成されている。
【0014】
図2に例示するように、温度センサ10は、絶縁性を有する基板50と、基板50の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子20と、を有している。基板50は、ガラスエポキシなど、樹脂を含む材料により構成される。センサ素子20は、導電性を有する白金や銅などの金属により形成された薄膜のパターンである。センサ素子20は、基板50上に、蒸着法、スパッタリング法などの種々の手法により成膜される。
【0015】
図1に例示する温度センサ10は、横幅Wxと縦幅Wyとが概ね等しくなっている。横幅Wx及び縦幅Wyは、例えば約300mmに設定され、使用状況などに合わせて適宜変更するとよい。本実施の形態1において、基板50とセンサ素子20とは、平面視で概ね等しいサイズ及び形状となっている。図3図5のような平面視において、基板50は、スリット31等の箇所から視認することができる(符号は省略)。もっとも、基板50は、センサ素子20よりも平面視でひとまわり大きくでもよく、すなわち、平面視でセンサ素子20と同程度のサイズ及び形状であればよい。
【0016】
図1では、センサ素子20を内側、つまり測定対象物M側に向けた温度センサ11については、符号を「11’」としてドットを付している。同様に図1では、センサ素子20を内側に向けた温度センサ12については符号を「12’」としてドットを付し、センサ素子20を内側に向けた温度センサ13については符号を「13’」としてドットを付している。このように、温度センサ10は、センサ素子20側を測定対象物Mに向けて配置してもよく、基板50側を測定対象物Mに向けて配置してもよい。
【0017】
温度センサ10は、センサ素子20に接続された一対の端子(41、42)を有している。一対の端子のうちの一方は、所定のネジ4nの螺入が可能なネジ穴4hが形成されており、一対の端子のうちの他方は、ネジ穴4hよりも径の大きな通し穴4kが形成されている。ネジ穴4hには、ねじ切り加工を施すとよい。
【0018】
より具体的に、一対の端子(41、42)は、図1等に示すように、センサ素子20における矩形の領域内に配置された内端子41と、センサ素子20における矩形の領域外に配置された外端子42と、により構成されている。センサ素子20における矩形の領域とは、センサ素子20の外郭における4つの角をつないだ平面視で正方形状又は長方形状の領域のことである。本実施の形態1の温度センサ10は、内端子41に通し穴4kが形成され、外端子42にネジ穴4hが形成されている。もっとも、温度センサ10は、内端子41にネジ穴4hが形成され、外端子42に通し穴4kが形成されてもよい。以降、温度センサ10の内端子41及び外端子42を除く部分を「センサ本体」ともいう。
【0019】
センサ素子20は、一端側と他端側から交互に、所定間隔W(幅W)をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット31(図3図5参照)が形成されている。ここで、スリット31が延びる方向を「延伸方向」とし、延伸方向に対し直交する方向を「直交方向」とする。センサ素子20は、直交方向に沿って蛇行するよう、ひとつながりに形成されている。
【0020】
スリット31は、エッチング、レーザ加工、機械加工などを用いて形成される。後述する他のスリットについても同様である。スリット31を含む各スリットの設定幅Sは、狭すぎると短絡の原因となるため、50μm程度を下限とし、広すぎると光吸収のための実効面積の拡大を実現することができないため、1mm程度を上限にするとよい。実効面積とは、平面視において、温度センサ10又はセンサユニット60全体に占めるセンサ素子20の割合のことである。
【0021】
センサ素子20は、同一のパターン形状で各スリットの幅を広くすると(幅W等を狭くすると)、抵抗値が大きくなるので検出感度は向上するが、実効面積が減少するので検出効率は低下する。したがって、センサ素子20は、実効面積を確保しつつ抵抗値を大きくするために、膜厚Pを極力薄くするとよい。センサ素子20の膜厚Pは、例えば10μm~50μmの範囲内にするとよい。
【0022】
センサ素子20の膜厚Pは、形成時に、蒸着時間などを制御することで調整してもよく、形成後に、砥石等で全体を研磨することにより調整してもよい。形成後の研磨で膜厚Pを調整する場合は、基板50の表面粗さとセンサ素子20の材質にもよるが、研磨前のセンサ素子20が薄すぎると欠落部分発生のおそれがあるため、留意を要する。センサ素子20は、各スリットの幅の調整、あるいは砥石等による膜厚Pの調整により、抵抗値を微調整することができる。センサ素子20は、抵抗値の微調整の後、表面に黒色低反射処理を施すとよい。図3図5に例示する温度センサ11~13は、直交方向における一端側と他端側とに、それぞれ、一対の端子における各端子が設けられている。
【0023】
図3に示すように、温度センサ11は、センサ素子20として、複数のスリット31と、枝スリット32とが形成されたセンサ素子20Aを有している。図3に例示するセンサ素子20Aは、12本のスリット31と、1本の枝スリット32と、を有している。温度センサ11は、直交方向における一端部に内端子41を有し、直交方向における他端部に外端子42を有している。温度センサ11は、内端子41と外端子42とが、延伸方向における一端側に並んで配置されている。すなわち、温度センサ11は、直交方向における一端部の、延伸方向における一端側に内端子41を有し、直交方向における他端部の、延伸方向における一端側に外端子42を有している。枝スリット32は、延伸方向における一端側から延びるスリット31のうちで、内端子41に最も近いものの中途の箇所から枝分かれしている。枝スリット32は、スリット31との分岐箇所から平面視でL字状となるよう形成されている。
【0024】
センサ素子20Aは、枝スリット32及びこれから延伸方向の一端側へ延びるスリット31の一部と、外端子42に最も近いスリット31とにより区画される主パターン部1Aと、内端子41が接続される内パターン部2Aと、外端子42が接続される外パターン部3Aと、を含む。主パターン部1Aは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。幅Wは、例えば約20mmに設定され、センサ素子20Aの全域における抵抗値の均質化等を考慮して適宜変更される。後述するセンサ素子20B~20Fについても同様である。
【0025】
内パターン部2Aは、主パターン部1Aの蛇行形状における一端に接続されている。内パターン部2Aは、全体の幅が幅Wよりも広くなっており、平面視長方形状の中継部2aと、平面視U字状の端子部2bと、により構成されている。端子部2bは、直交方向における一端側に矩形状の切欠きが形成されており、該切欠きの延伸方向に沿う辺の箇所に内端子41が接続されている。もっとも、内パターン部2Aは、一部又は全体の幅が幅Wよりも狭くてよい。外パターン部3Aは、主パターン部1Aの蛇行形状における他端に接続されている。図3に例示する外パターン部3Aは、平面視長方形状に形成され、短手方向の幅Wが幅Wよりも広くなっている。幅Wは、例えば約30mmに設定される。もっとも、外パターン部3Aの幅Wは、幅Wよりも狭くてよい。外端子42は、外パターン部3Aの直交方向における他端部の、延伸方向における一端側の位置に接続されている。
【0026】
図4に示すように、温度センサ12は、センサ素子20として、複数のスリット31と、枝スリット33とが形成されたセンサ素子20Bを有している。図4に例示するセンサ素子20Bは、12本のスリット31と、1本の枝スリット33と、を有している。温度センサ12は、延伸方向における一端部の、直交方向における一端側に内端子41を有し、直交方向における他端部の、延伸方向における一端側に外端子42を有している。枝スリット33は、延伸方向における一端側から延びるスリット31のうちで、内端子41に最も近いものの中途の箇所から枝分かれしている。枝スリット33は、スリット31との分岐箇所から平面視でL字状となるよう形成されている。
【0027】
センサ素子20Bは、枝スリット33及びこれから延伸方向の一端側へ延びるスリット31の一部と、外端子42に最も近いスリット31とにより区画される主パターン部1Bと、内端子41が接続される内パターン部2Bと、外端子42が接続される外パターン部3Bと、を含む。主パターン部1Bは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。
【0028】
内パターン部2Bは、主パターン部1Bの蛇行形状における一端に接続されている。内パターン部2Bは、全体の幅が幅Wよりも広くなっており、平面視長方形状の中継部2cと、中継部2cから内側に延びる端子部2dと、により構成されている。内端子41は、端子部2dの延伸方向における一端部に接続されている。もっとも、内パターン部2Bは、一部又は全体の幅が幅Wよりも狭くてよい。外パターン部3Bは、センサ素子20Aの外パターン部3Aと同様に形成されている。
【0029】
図5に示すように、温度センサ13は、センサ素子20として、複数のスリット31と、枝スリット34とが形成されたセンサ素子20Cを有している。図5に例示するセンサ素子20Cは、11本のスリット31と、1本の枝スリット34と、を有している。温度センサ13は、直交方向における他端部の、延伸方向における一端側に内端子41を有し、延伸方向における他端部の、直交方向における一端側に外端子42を有している。枝スリット34は、延伸方向における一端側から延びるスリット31のうちで、外端子42に最も近いものの中途の箇所から枝分かれしている。枝スリット34は、スリット31との分岐箇所から平面視でL字状となるように形成されている。
【0030】
センサ素子20Cは、枝スリット34及びこれから延伸方向の他端側へ延びるスリット31の一部と、内端子41側から2番目のスリット31とにより区画される主パターン部1Cと、内端子41が接続される内パターン部2Cと、外端子42が接続される外パターン部3Cと、を含む。主パターン部1Cは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。
【0031】
内パターン部2Cは、主パターン部1Cの蛇行形状における他端に接続されている。図5に例示する内パターン部2Cは、全体の幅が幅Wよりも広くなっており、平面視L字状の中継部2aと、中継部2aの延伸方向における他端部に接続された平面視長方形状の端子部2bと、により構成されている。もっとも、内パターン部2Cは、一部又は全体の幅が幅Wよりも狭くてよい。内端子41は、端子部2bの延伸方向における一端部に接続されている。外パターン部3Cは、主パターン部1Cの蛇行形状における一端に接続されている。外パターン部3Cは、全体の幅が幅Wよりも広くなっており、平面視L字状に形成されている。もっとも、外パターン部3Cは、一部又は全体の幅が幅Wよりも狭くてよい。外端子42は、外パターン部3Cの延伸方向における他端部に接続されている。
【0032】
図3図5に例示するように、基板50は、内端子41が配置される部分に、平面視で矩形状の切欠き部51が形成されている。スリット31の終端部からセンサ素子20の周縁部までの距離Wrは、センサ素子20全体での抵抗値のバランス等を考慮して設定される。内パターン部2A~2C及び外パターン部3A~3Cの幅及び形状は、それぞれ、センサ素子20A~20Cの全域に抵抗値のばらつきが生じないよう調整するとよい。
【0033】
各図の例では、外端子42の先端部にネジ穴4hが形成されており、内端子41の先端部には、ネジ穴4hよりも径の大きな通し穴4kが形成されている。したがって、複数の温度センサ10の各々について、内端子41を、隣接する温度センサ10の外端子42に連結し、外端子42を、隣接する他の温度センサ10の内端子41に連結することにより(一端に配置される温度センサ10の内端子41と他端に配置される温度センサ10の外端子42とを除く)、センサユニット60における温度センサ10同士の間隔を狭くすることができる。そして、図1のように、配置及び組み合わせを工夫することにより、全体として平面視矩形状のセンサユニット60を構築することができる。したがって、複数の温度センサ10を組み合わせたセンサユニット60においても、測定対象物Mに対するセンサ素子20全体の実効面積の拡大を図ることができる。図1のセンサユニット60は、複数の温度センサ10が、蛇行するようひとつながりに連結されたものである。
【0034】
次に、図6図9を参照し、内端子41及び外端子42の具体的な構成、及びこれらと基板50との関係について説明する。内端子41とセンサ本体との接続関係と、外端子42とセンサ本体との接続関係とは同様であるため、ここでは外端子42について具体的に説明し、内端子41についての説明は省略する。
【0035】
図6及び図7は、内端子41及び外端子42が基板50及びセンサ素子20とは別体として設けられる例である。図6及び図7の例において、外端子42は、リン青銅等を材料とする薄板状の部材に、金めっき又はニッケルめっきが施されたものであり、その端部がセンサ素子20の表面に重ねられ、ハンダ付けされている。温度センサ10は、抵抗測温体であるため、内端子41及び外端子42とセンサ素子20との接合にハンダ48を用いても、原理的に検出精度への影響はない。もっとも、内端子41及び外端子42は、ロウ付けによりセンサ素子20の表面に取り付けられてもよい。
【0036】
図8及び図9は、内端子41及び外端子42が基板50及びセンサ素子20と一体的に形成される場合の構成例である。図9に例示する外端子42は、基板50と一体的に形成される基部43と、センサ素子20と一体的に形成される導電部44と、を有している。金属製の薄膜からなる導電部44だけでは、ネジ4nの締結時に導電部44が削れ、導通性が損なわれる可能性がある。そのため、内端子41及び外端子42には、図9のように、導電部44の表面に、導電性を有する補強部45を形成し、導電層の膜厚を実質的に厚くするとよい。
【0037】
次いで、図10図13を参照し、内端子41と外端子42との連結に関連する構成について説明する。各図では、内端子41に通し穴4kが形成され、外端子42にネジ穴4hが形成された例を示している。したがって、図10のように、外端子42の上に、ネジ穴4hと通し穴4kとが重なるように内端子41を重ね、ネジ4nを螺入する。これにより、図11のように、内端子41と外端子42とが、導通性が確保された状態で連結される。内端子41がネジ穴4hを有する構成(外端子42が通し穴4kを有する構成)を採った場合は、内端子41の上にネジ穴4hと通し穴4kとが合わさるように外端子42を重ねてネジ4nを螺入する。
【0038】
例えば、図12のように、外端子42のネジ穴4hの周縁にバーリング加工を施すことにより補助部4bを形成し、ネジ4nによる締結強度を高めてもよい。また、図13のように、外端子42のネジ穴4hの位置に合わせて真鍮製等のナット46を溶着し、ネジ4nによる締結強度を高めてもよい。内端子41がネジ穴4hを有する構成を採った場合は、内端子41のネジ穴4hの周縁にバーリング加工を施してもよく、内端子41のネジ穴4hの位置に合わせて真鍮製等のナット46を溶着してもよい。
【0039】
続いて、図14図17を参照し、温度センサ10同士を締結する際の、センサ本体と各端子との接続箇所などへの機械的ストレスを低減するための構造的工夫について説明する。すなわち、内端子41及び外端子42のうちの少なくとも一方は、センサ本体との接続箇所とネジ穴4h又は通し穴4kとの間の部分に曲げ加工を施してもよい。
【0040】
図14及び図15の外端子42は、断面視半円状あるいは断面視U字状の湾曲部4mを有する例である。図16及び図17の外端子42は、断面視波形状の湾曲部4mを有する例である。内端子41は、図14図17の湾曲部4mと同様、湾曲した形状を有していてもよい。ただし、内端子41は、外端子42よりも長さが短いため、加工の程度に制限が加わる。内端子41及び外端子42は、曲げ加工を施すことにより、ネジ穴4hに螺入するネジ4nの軸方向に対する柔軟性を高めることができる。そのため、センサ本体と各端子との接続箇所等への機械的ストレスを低減することができる。
【0041】
ここで改めて、図1を参照し、管理装置80の機能的構成など、センサユニット60を用いた温度計測に係る構成について説明する。図1のように、計測システム100は、センサユニット60と管理装置80との間に介在する中継装置70を有している。中継装置70は、例えばソースメータからなり、予め設定された値の電流をセンサユニット60に流し、センサユニット60にかかる電圧を測定すると共に、測定値を管理装置80へ送信するものである。中継装置70は、導線8aを介してセンサユニット60における内端子41に接続され、導線8bを介してセンサユニット60における外端子42に接続されている。
【0042】
管理装置80は、PC(Personal Computer)などにより構成され、センサユニット60及びその周辺環境を管理し、センサユニット60からの出力に基づく情報を用い、測定対象物Mの熱に関する性質を示す特性データを求めるものである。PCには、タブレットPC、ノートPC、デスクトップ型PCなどが含まれる。管理装置80は、通信部81と、制御部82と、記憶部83と、入力部84と、表示部85と、を有している。
【0043】
通信部81は、制御部82が外部機器との間で有線又は無線による通信を行うためのインタフェースである。記憶部83には、計測処理プログラム83pなどの制御部82の動作プログラムの他、種々の情報が記憶される。記憶部83は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、SSD(Solid State Drive)、又はHDD(Hard Disk Drive)などにより構成することができる。
【0044】
入力部84は、例えば、キーボードと、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスと、を含んで構成される。入力部84は、ユーザによる入力操作を受け付け、受け付けた内容に応じた操作信号を制御部82へ送信する。表示部85は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、制御部82からの指示により種々の情報を表示する。管理装置80は、入力部84及び表示部85の代わりに、文字又は画像等を表示する表示パネルと、該表示パネルに積層されてタッチ操作を検出する検出手段と、を含むタッチパネルを有していてもよい。管理装置80は、タッチパネルと入力部84とを併せ持つものであってもよい。
【0045】
制御部82は、特性データを求めるための演算など、種々の演算処理を行うものである。制御部82は、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、取得処理手段82cと、演算処理手段82dと、を有している。入力処理手段82aは、入力部84から出力される操作信号に応じた処理を実行する。例えば、入力処理手段82aは、ユーザによる入力操作に応じて、操作の内容を示す制御信号を出力処理手段82bへ出力する。出力処理手段82bは、ユーザによる入力部84の操作に応じて、種々の情報を含む画面を表示部85に表示させる。
【0046】
取得処理手段82cは、中継装置70から測定値を経時的に取得し、取得した測定値の変動状況などを管理する。取得処理手段82cは、設定された2つの条件下において、測定値が安定しているか否かを判定する。取得処理手段82cは、第1条件下での安定した測定値を第1測定値として記憶部83に記録し、第2条件下での安定した測定値を第2測定値として記憶部83に記録する。
【0047】
計測システム100は、第1条件及び第2条件を満たすか否かを判定するための検出装置65を有していてもよい。検出装置65は、例えば照度センサにより構成される。取得処理手段82cは、検出装置65による検出値をもとに第1条件及び第2条件を満たすか否かを判定する機能を有していてもよい。取得処理手段82cは、第1条件及び第2条件を満たすか否かを判定するための時計機能あるいは計時機能を有していてもよい。
【0048】
演算処理手段82dは、記憶部83に記録された第1測定値及び第2測定値を用いて特性データを求めるものである。本実施の形態1において、演算処理手段82dは、特性データとして熱流Qを求めるよう構成されている。
【0049】
より具体的に、演算処理手段82dは、電圧の値を示す第1測定値[V]を下記式(1)のVに代入し、第1測定値に対応するセンサユニット60の抵抗値である第1抵抗値R[Ω]求める。演算処理手段82dは、式(1)のI[A]として、中継装置70が電圧測定の際にセンサユニット60に流した電流の値を用いる。
【0050】
(数1)
R=V/I ・・・ (1)
【0051】
抵抗Rと温度tとの間には、下記式(2)の関係があり、式(2)を温度tについて整理すると、下記式(3)となる。Rは、0℃の環境下でのセンサユニット60の抵抗値[Ω]であり、aはセンサユニット60の抵抗温度係数である。抵抗温度係数aは、事前の演算により求められ、記憶部83に記憶されている。
【0052】
(数2)
R=R(1+at) ・・・ (2)
【0053】
(数3)
t=(R-R)/aR ・・・ (3)
【0054】
演算処理手段82dは、求めた第1抵抗値Rを式(3)に代入することで、第1条件下でのセンサユニット60の温度である第1温度t[℃]を求める。
【0055】
また、演算処理手段82dは、電圧の値を示す第2測定値[V]を式(1)に適用し、第2測定値に対応するセンサユニット60の抵抗値である第2抵抗値R[Ω]を求める。次いで演算処理手段82dは、求めた第2抵抗値Rを式(3)に代入することで、第2条件下でのセンサユニット60の温度である第2温度t[℃]を求める。
【0056】
そして、演算処理手段82dは、下記式(4)及び(5)に示す関係に基づき、測定対象物Mを通過する熱流Qを求める。熱流束q(W/m)は、単位時間に単位面積を横切る熱量である。式(4)において、λ[W/m]はセンサユニット60の熱伝導率であり、d[m]は、温度センサ10の厚みである。Δtは、第1温度tと第2温度tとの差分である。第1温度tの方が第2温度tよりも高い場合、Δtは「t-t」となり、第1温度tの方が第2温度tよりも低い場合、Δtは「t-t」となる。
【0057】
(数4)
q=(λ/d)・Δt ・・・ (4)
【0058】
(数5)
Q=q・S ・・・ (5)
【0059】
式(5)における面積S[m]は、センサユニット60に備わる全てのセンサ素子20の表面の面積の合計(≒センサユニット60の表面の面積)である。温度センサ10を単体で用いる場合、面積S[m]は、センサ素子20の表面の面積(≒温度センサ10の表面の面積)である。演算処理手段82dは、熱流Qを直接的に求めてもよく、熱流束qと熱流Qとの双方を求めてもよい。なお、抵抗温度係数a、抵抗値R、熱伝導率λ、厚みd、及び面積Sなどの情報は、事前に記憶部83等に記憶される。
【0060】
制御部82は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各種機能を実現させる計測処理プログラム83pと、により構成することができる。すなわち、計測処理プログラム83pは、コンピュータとしての制御部82及び記憶部83を、入力処理手段82a、出力処理手段82b、取得処理手段82c、及び演算処理手段82dとして機能させるためのプログラムである。
【0061】
図1では、管理装置80が中継装置70を介してセンサユニット60に接続された構成例を示しているが、これに限定されない。温度センサ10は、必ずしも複数個を組み合わせて使用する必要はなく、単体で使用してもよい。すなわち、計測システム100は、1つの温度センサ10と管理装置80と中継装置70とにより構成されてもよい。
【0062】
計測システム100は、複数のセンサユニット60と、管理装置80と、各センサユニット60それぞれと管理装置80との間に介在する1又は複数の中継装置70と、を含んで構成してもよい。計測システム100は、互いに連結されていない複数の温度センサ10と、管理装置80と、各温度センサ10それぞれと管理装置80との間に介在する1又は複数の中継装置70と、を含んで構成してもよい。計測システム100は、互いに連結されていない1又は複数の温度センサ10と、1又は複数のセンサユニット60と、管理装置80と、温度センサ10及びセンサユニット60の各々と管理装置80との間に介在する1又は複数の中継装置70と、を含んで構成してもよい。
【0063】
続いて、図18のフローチャートに基づき、本実施の形態1の計測処理方法の一例について説明する。測定対象物Mは、太陽光が直接的又は間接的に当たる場所に配置されているものとする。ここでは、第1測定時刻になるという条件が第1条件に相当し、第2測定時刻になるという条件が第2条件に相当する。
【0064】
管理装置80の制御部82は、入力部84を介して計測システム100の起動を指示する操作を受け付けると、システムを起動し、表示部85に初期画面を表示させる(ステップS101)。ユーザは、初期画面又はそこから遷移した画面を通じて、温度センサ10又はセンサユニット60を用いた計測に係る条件及びパラメータなどを設定することができる。制御部82は、ユーザによる計測に係る条件などの設定操作を受け付けると、受け付けた数値等を記憶部83に格納する。例えば制御部82は、条件及びパラメータなどをユーザに確認させるための確認画面を表示部85に表示させ、適宜数値変更などを受け付ける。もっとも、条件などの設定が事前に行われている場合、当該工程は省略される(ステップS102)。
【0065】
制御部82は、中継装置70などの計測系のウォームアップのための待ち時間が経過するまで待機する(ステップS103/No)。制御部82は、待ち時間が経過すると(ステップS103/Yes)、第1測定時刻になるまで待機する。第1測定時刻は、例えば日没後の時刻に設定される(ステップS104/No)。制御部82は、第1測定時刻になると(ステップS104/Yes)、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する(ステップS105)。
【0066】
制御部82は、測定値が安定するまで逐次取得を継続し(ステップS106/No)、測定値が安定したとき(ステップS106/Yes)、その際の測定値に基づく値を第1測定値として記録する(ステップS107)。制御部82は、例えば、測定値が一定時間に亘って許容範囲内に収まったときに測定値が安定したと判定する。この場合、制御部82は、測定値が安定したとき、その際の測定値、又は一定時間における複数の測定値の平均値などを第1測定値として記録する。一定時間は予め設定され、許容範囲は、測定値及び測定値の変動に応じて動的に設定される。
【0067】
次いで制御部82は、第2測定時刻になるまで待機する。第2測定時刻は、例えば日中の時刻に設定される(ステップS108/No)。制御部82は、第2測定時刻になると(ステップS108/Yes)、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する(ステップS109)。
【0068】
制御部82は、測定値が安定するまで逐次取得を継続し(ステップS110/No)、測定値が安定したとき(ステップS110/Yes)、その際の測定値に基づく値を第2測定値として記録する(ステップS111)。制御部82は、例えば、測定値が一定時間に亘って許容範囲内に収まったときに測定値が安定したと判定する。この場合、制御部82は、測定値が安定したとき、その際の測定値、又は一定時間における複数の測定値の平均値などを第2測定値として記録する。一定時間は予め設定され、許容範囲は、測定値及び測定値の変動に応じて動的に設定される。
【0069】
続いて制御部82は、式(1)に基づき、第1測定値を用いて第1抵抗値Rを求めると共に、第2測定値を用いて第2抵抗値Rを求める。次いで制御部82は、式(3)に基づき、第1抵抗値Rから第1温度tを求め、第2抵抗値Rから第2温度tを求める。そして制御部82は、式(4)及び式(5)に基づき、第1温度t及び第2温度tを用いて、測定対象物Mを通過する熱流Qを求める(ステップS112)。
【0070】
次に制御部82は、求めた熱量Qなどを含む演算結果の情報を、記憶部83に記憶させ、表示部85に表示させる。制御部82は、ユーザによる印刷の指示があった場合、演算結果の情報を紙媒体に印字して、あるいはCSV等により出力する(ステップS113)。
【0071】
続いて、図19のフローチャートに基づき、本実施の形態1の計測処理方法の他の例について説明する。測定対象物Mは、太陽光が直接的又は間接的に当たる場所に配置されているものとする。本例において、管理装置80の制御部82は、照度センサからなる検出装置65による検出値を用いて第1条件及び第2条件を満たすか否かを判定する。ここでは、第1照度以上になるという条件が第1条件に相当し、第2照度以下になるという条件が第2条件に相当する。図18と同等の処理については同一のステップ番号を付し、説明は適宜省略又は簡略化する。
【0072】
制御部82は、ステップS101~S103の処理を図18の場合と同様に行う。制御部82は、待ち時間が経過すると(ステップS103/Yes)、検出装置65から送信される検出値が第1照度に到達するまで待機する。第1照度は、例えば日没後の照度を基準として設定される(ステップS201/No)。制御部82は、検出値が第1照度以上になると(ステップS201/Yes)、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する(ステップS105)。そして、制御部82は、ステップS106~S107の処理により第1測定値を記録する(ステップS107)。
【0073】
次いで制御部82は、検出値が第2照度に上昇するまで待機する。第2照度は、例えば日中の照度を基準として設定される(ステップS202/No)。制御部82は、第2照度以下になると(ステップS202/Yes)、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する(ステップS109)。そして、制御部82は、ステップS109~S111の処理により第2測定値を記録する(ステップS111)。
【0074】
続いて制御部82は、式(1)に基づいて第1抵抗値R及び第2抵抗値Rを求め、式(3)に基づいて第1温度t及び第2温度tを求める。そして、制御部82は、式(4)及び式(5)に基づき、測定対象物Mを通過する熱流Qを求める(ステップS112)。次に制御部82は、求めた熱量Qなどを含む演算結果の情報を記憶部83に記憶させ、表示部85に表示させる。制御部82は、ユーザによる印刷の指示があった場合、演算結果の情報を紙媒体に印字して、あるいはCSV等により出力する(ステップS113)。
【0075】
以上のように、本実施の形態1における温度センサ10は、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板50と、基板50の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子20(20A、20B、又は20C)と、センサ素子に接続された一対の端子(41、42)と、を有している。センサ素子20は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット31が形成されている。すなわち、センサ素子20は、膜状であって、設定幅Sの間隔をあけて直交方向に蛇行するよう形成されており、測定対象物Mに対し平行に配置される面積につき、温度センサ全体に対するセンサ素子の割合が大きくなっている。つまり、温度センサ10は、従来構成よりも実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、温度の測定精度も高まっている。また、一対の端子における各端子は、ぞれぞれ、センサ素子20の、直交方向における一端側と他端側とに配置されている。すなわち、一対の端子は、センサ素子20の直交方向における両端側に分かれて配置されているため、センサ素子の蛇行形状とも相俟って、端子間の長さを確保することができ、抵抗値を高めることができる。よって、測定対象物Mとの間の熱伝導率の向上を図り、測温抵抗体としての機能を高めることができるため、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【0076】
より具体的に、温度センサ10は、センサ素子20と基板50とが平面視で同程度の大きさとなっており、例えば温度センサ10が約300mm四方の場合、設定幅Sは約50μmから約1000μmまでの範囲で設定される。このように、本実施の形態1の温度センサ10は、実効面積が従来構成よりも大きくなっており、測定対象物Mと温度センサ10との間の熱伝導率が相対的に高くなるため、従来よりも高精度な温度測定を実現することができる。
【0077】
一対の端子は、センサ素子20における矩形の領域内に配置された内端子41と、センサ素子20における矩形の領域外に配置された外端子42と、により構成されている。したがって、複数の温度センサ10を連結して用いる場合、温度センサ10同士の間隔を狭くすることができる。よって、複数の温度センサ10を連結したセンサユニット60全体の実効面積の拡大を図ることができる。ところで、内端子41は、必ずしも全てが矩形の領域内に配置される必要はなく、例えば先端の部分等が矩形の領域外に配置されてもよい。
【0078】
一対の端子のうちの一方は、ネジ4nの螺入が可能なネジ穴4hが形成されており、一対の端子のうちの他方は、ネジ穴4hよりも径の大きな通し穴4kが形成されている。したがって、所定のネジ4nを使用することにより、複数の温度センサ10を容易に連結することができる。また、センサユニット60について、温度センサ10ごとに校正を行う場合、ネジ4nの取り外しという簡易な手法により、温度センサ10を1個単位で容易に取り外すことができるため、作業性の向上を図ると共に、校正の効率を高めることができる。
【0079】
本実施の形態1のセンサユニット60は、1又は複数の温度センサ11と、1又は複数の温度センサ12と、1又は複数の温度センサ13と、を有している。そのため、図1にも例示するように、温度センサ11と温度センサ12と温度センサ13とを組み合わせることで、複数の温度センサ10がひとつながりとなり、全体として平面視矩形状をなすセンサユニット60を構築することができる。よって、センサユニット60全体での実効面積の拡大を図ることができ、検出効率を高めることが可能となる。
【0080】
ところで、温度センサ10及びセンサユニット60は、温度変化によって電気抵抗値が変化するセンサ素子20の特性を利用した測温抵抗体である。そのため、温度誤差が少なく、長期に亘って安定した測定を行うことができる。温度センサ10及びセンサユニット60は、振動の少ない良好な環境で用いれば、長期に亘って誤差が±0.15℃程度という安定性が望める。温度センサ10は、0℃付近の温度帯では、熱電対に比べて約1/10の温度誤差での測定を実現することができる。
【0081】
<変形例A>
図20及び図21と共に図5を参照し、実施の形態1の変形例Aに係るセンサユニット60A及び計測システム100Aの構成例について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で符号の一部を省略することがある。センサユニット60及び計測システム100と同等の構成部材には同じ符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0082】
図20に示すように、計測システム100Aは、複数の温度センサ10により構成されたセンサユニット60Aと、例えばソースメータからなる中継装置70と、中継装置70による測定値を用いて測定対象物Mの特性データを求める管理装置80と、を有している。センサユニット60Aは、複数の温度センサ10として、1又は複数の温度センサ13(図5参照)と、1又は複数の温度センサ14(図21参照)と、を有している。図20では、センサ素子20を内側に向けた温度センサ13については符号を「13’」としてドットを付し、センサ素子20を内側に向けた温度センサ14については符号を「14’」としてドットを付している。
【0083】
温度センサ14は、絶縁性を有する基板50と、基板50の一方の面に形成された膜状のセンサ素子20と、センサ素子20に接続された一対の端子(41、42)と、を有している。図21に示すように、温度センサ14は、センサ素子20として、複数のスリット31が形成されたセンサ素子20Dを有している。図21に例示するセンサ素子20Dは、12本のスリット31を有している。温度センサ14は、直交方向における一端部の、延伸方向における他端側に内端子41を有し、かつ直交方向における他端部の、延伸方向における一端側に外端子42を有している。
【0084】
センサ素子20Dは、内端子41側から2番目のスリット31と外端子42に最も近いスリット31とにより区画される主パターン部1Dと、内端子41が接続される内パターン部2Dと、外端子42が接続される外パターン部3Dと、を含む。主パターン部1Dは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。
【0085】
内パターン部2Dは、主パターン部1Dの蛇行形状における一端に接続されている。内パターン部2Dは、全体の幅が幅Wよりも広くなっており、平面視L字状に形成された中継部2eと、平面視長方形状の端子部2fと、を有している。もっとも、内パターン部2Dは、一部又は全体の幅が幅Wよりも狭くてよい。内端子41は、端子部2fの延伸方向における他端部に接続されている。外パターン部3Dは、主パターン部1Dの蛇行形状における他端に接続されている。図21に例示する外パターン部3Dは、平面視長方形状に形成されており、全体の幅が幅Wよりも広くなっている。もっとも、外パターン部3Dは、一部又は全体の幅が幅Wよりも狭くてよい。計測システム100Aの他の構成及び計測システム100Aによる計測処理方法は、計測システム100の場合と同様である。
【0086】
以上のように、温度センサ14は、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板50と、基板50の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなすセンサ素子20Dと、センサ素子20Dに接続された一対の端子(41、42)と、を有している。センサ素子20Dは、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット31が形成されている。すなわち、センサ素子20Dは、膜状であって、設定幅Sの間隔をあけて直交方向に蛇行するよう形成されている。よって、温度センサ14は、従来構成よりも実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、温度の測定精度も高まっている。また、一対の端子における各端子は、ぞれぞれ、センサ素子20Dの、直交方向における一端部と他端部とに配置されているため、センサ素子の蛇行形状とも相俟って、端子間の長さを確保することができ、抵抗値を高めることができる。よって、測定対象物Mとの間の熱伝導率の向上を図り、測温抵抗体としての機能を高めることができるため、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【0087】
本変形例Aのセンサユニット60Aは、1又は複数の温度センサ13と、1又は複数の温度センサ14と、を有している。そのため、図20にも例示するように、温度センサ13と温度センサ14とを組み合わせることにより、複数の温度センサ10がひとつながりとなり、全体として平面視矩形状をなすセンサユニット60Aを構築することができる。よって、センサユニット60A全体での実効面積の拡大を図ることができ、検出効率を高めることが可能となる。他の効果等については、上述した温度センサ11~13及びセンサユニット60と同様である。
【0088】
<変形例B>
図22図24を参照し、実施の形態1の変形例Bに係るセンサユニット60B及び計測システム100Bの構成例について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で、符号の一部を省略することがある。センサユニット60及び計測システム100と同等の構成部材には同じ符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0089】
図22に示すように、計測システム100Bは、複数の温度センサ10により構成されたセンサユニット60Bと、例えばソースメータからなる中継装置70と、中継装置70による測定値を用いて測定対象物Mの特性データを求める管理装置80と、を有している。センサユニット60Bは、複数の温度センサ10として、1又は複数の温度センサ15(図23参照)と、1又は複数の温度センサ16(図24参照)と、を有している。図22では、センサ素子20を内側に向けた温度センサ16については符号を「16’」としてドットを付している。
【0090】
温度センサ15は、絶縁性を有する基板50と、基板50の一方の面に形成された膜状のセンサ素子20と、センサ素子20に接続された一対の端子(41、42)と、を有している。図23に示すように、温度センサ15は、センサ素子20として、複数のスリット31が形成されたセンサ素子20Eを有している。図23に例示するセンサ素子20Eは、8本のスリット31を有している。温度センサ15は、直交方向における他端部の、延伸方向における中央の箇所に内端子41を有し、直交方向における一端部の、延伸方向における中央の箇所に外端子42を有している。
【0091】
センサ素子20Eは、内端子41に最も近いスリット31と外端子42に最も近いスリット31とにより区画される主パターン部1Eと、内端子41が接続される内パターン部2Eと、外端子42が接続される外パターン部3Eと、を含む。主パターン部1Eは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。内パターン部2Eには、複数のスリットからなるスリット群35が形成されている。外パターン部3Eには、複数のスリットからなるスリット群36が形成されている。スリット群35及びスリット群36は、測温抵抗体としての不感部分を極小とするために設計され、設けられたものである。
【0092】
温度センサ16は、絶縁性を有する基板50と、基板50の一方の面に形成された膜状のセンサ素子20と、センサ素子20に接続された一対の端子(41、42)と、を有している。図24に示すように、温度センサ16は、センサ素子20として、複数のスリット31が形成されたセンサ素子20Fを有している。図24に例示するセンサ素子20Fは、12本のスリット31を有している。温度センサ16は、延伸方向における一端部又は他端部の、直交方向における中央の箇所に内端子41を有している。図24では、内端子41が延伸方向における一端部に設けられた温度センサ16を例示している。温度センサ16は、直交方向における一端部の、延伸方向における中央の箇所に外端子42を有している。
【0093】
センサ素子20Fは、内端子41に最も近いスリット31と外端子42に最も近いスリット31とにより区画される主パターン部1Fと、内端子41が接続される内パターン部2Fと、外端子42が接続される外パターン部3Fと、を含む。主パターン部1Fは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。内パターン部2Fは、直交方向における他端部に配置された中継部2gと、延伸方向における一端部に配置され、内端子41が接続される端子部2hと、を有している。内パターン部2Fは、中継部2gと端子部2hとにより、平面視でL字状に形成されている。端子部2hには、複数のスリットからなるスリット群37が形成されている。外パターン部3Fには、複数のスリットからなるスリット群38が形成されている。スリット群37及びスリット群38は、測温抵抗体としての不感部分を極小とするために設計され、設けられたものである。計測システム100Bの他の構成及び計測システム100Bによる計測処理方法は、計測システム100の場合と同様である。
【0094】
以上のように、本変形例Bにおける温度センサ10(15、16)は、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板50と、基板50の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなすセンサ素子20(20E、20F)と、センサ素子20に接続された一対の端子(41、42)と、を有している。センサ素子20は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット31が形成されておいる。すなわち、温度センサ15及び16において、センサ素子20は、膜状であって、設定幅Sの間隔をあけて直交方向に蛇行するよう形成されている。よって、温度センサ15及び16は、従来構成よりも実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、温度の測定精度も高まっている。また、センサ素子20Eにおいて、一対の端子における各端子は、それぞれ、直交方向における一端側と他端側に配置されている。センサ素子20Fでは、一方の端子が直交方向における一端側に配置されており、他方の端子は、主パターン部1Fの直交方向における他端部に接続された内パターン部2Fに接続されている。より具体的に、内パターン部2Fは、端子部2hにスリット群37が形成されており、他方の端子は、端子部2hの中継部2gとは反対側の端部に接続されている。したがって、温度センサ15及び16は、センサ素子20E及び20Fの蛇行形状とも相俟って、端子間の長さを確保することができ、抵抗値を高めることができる。よって、測定対象物Mとの間の熱伝導率の向上を図り、測温抵抗体としての機能を高めることができるため、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【0095】
本変形例Bのセンサユニット60Bは、1又は複数の温度センサ15と、1又は複数の温度センサ16と、を有している。そのため、図22にも例示するように、温度センサ15と温度センサ16とを組み合わせることにより、複数の温度センサ10がひとつながりとなり、全体として平面視矩形状をなすセンサユニット60Bを構築することができる。よって、センサユニット60B全体での実効面積の拡大を図ることができ、検出効率を高めることが可能となる。他の効果等については、上述した温度センサ11~14及びセンサユニット60、60Aと同様である。
【0096】
実施の形態2.
図25及び図26に基づき、本発明の実施の形態2に係る計測システム200の構成例について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で符号の一部を省略することがある。本実施の形態2の計測システム200は、測定対象物Mに疑似太陽光を照射できるよう疑似太陽光源装置8を配置し、太陽光が照射されている環境と照射されていない環境とを擬似的に作り出せるよう構成されている。計測システム200につき、計測システム100と同等の構成部材には同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0097】
計測システム200は、センサユニット60と、中継装置70と、疑似太陽光源装置8と、管理装置180と、を有している。管理装置180は、センサユニット60からの出力に基づく情報を用い、測定対象物Mの熱に関する性質を示す特性データを求めるものである。
【0098】
疑似太陽光源装置8は、内部に光源(図示せず)を含むと共に、光源から発せられる光を遮断し又は通過させる開閉装置(図示せず)を有している。開閉装置は、例えば可動式のシャッターにより構成され、管理装置180により制御される。開閉装置は、光源から発せられる光を遮断する閉状態と、光源から発せられる光を通過させる開状態と、を有している。疑似太陽光源装置8の内部又はその近傍には、周囲の照度を計測する照度センサ66が設けられていてもよい。図25では、疑似太陽光源装置8の内部に照度センサ66が設けられている例を示している。
【0099】
管理装置180は、通信部81と、制御部182と、記憶部83と、入力部84と、表示部85と、を有している。制御部182は、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、光源処理手段182nと、取得処理手段82cと、演算処理手段182dと、を有している。
【0100】
光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の光源を点灯又は消灯させる機能と、開閉装置を開状態又は閉状態にする機能と、を有している。本実施の形態2の光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度が安定したか否かを判定する機能を有している。光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度の安定を、光源点灯からの経過時間をもとに判定してもよく、照度センサ66から送信される検出値をもとに判定してもよい。該判定に係る光源点灯からの経過時間は、疑似太陽光源装置8のウォームアップに要する時間をもとに設定するとよい。
【0101】
光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度が安定したとき、照度の安定を示す安定データを演算処理手段182dへ送信するか、あるいは照度の安定を示す安定フラグを立てる。また、光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度が安定したとき、開閉装置を開状態にする。演算処理手段182dは、光源処理手段182nから安定データを受信した後、あるいは安定フラグが立っていることを確認した後に、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する。演算処理手段182dにおける他の構成は、実施の形態1の演算処理手段82dにおける構成と同様である。
【0102】
制御部182は、CPU又はGPUなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各種機能を実現させる計測処理プログラム183pと、により構成することができる。すなわち、計測処理プログラム183pは、コンピュータとしての制御部182及び記憶部83を、入力処理手段82a、出力処理手段82b、光源処理手段182n、取得処理手段82c、及び演算処理手段182dとして機能させるためのプログラムである。実施の形態2の計測システム200には、上述した変形例A及び変形例Bの構成を適用することもできる。
【0103】
続いて、図26のフローチャートに基づき、本実施の形態2の計測処理方法、つまり図25のような環境下での管理装置180による計測処理の流れの一例について説明する。ここでは、疑似太陽光源装置8が消灯し且つ開閉装置が閉状態である、という条件が第1条件に相当し、疑似太陽光源装置8が点灯し且つ開閉装置が開状態である、という条件が第2条件に相当する。上述した図18及び図19と同等の処理については同一の符号を付し、説明は省略又は簡略化する。
【0104】
図26に示すように、制御部182は、システムを起動し(ステップS101)、必要に応じてユーザによる設定操作に応じた処理を実行する(ステップS102)。そして、制御部182は、待ち時間が経過すると(ステップS103/Yes)、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する(ステップS105)。制御部182は、測定値が安定するまで逐次取得を継続し(ステップS106/No)、測定値が安定したとき(ステップS106/Yes)、その際の測定値に基づく値を第1測定値として記録する(ステップS107)。
【0105】
次いで制御部182は、疑似太陽光源装置8を点灯させ(ステップS301)、その照度が安定するまで待機する(ステップS302/No)。制御部182は、疑似太陽光源装置8の照度が安定すると(ステップS302/Yes)、開閉装置を開状態にする。これにより、疑似太陽光が測定対象物Mに照射される(ステップS303)。そして、制御部182は、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する(ステップS109)。もっとも、制御部182は、開閉装置を開状態にしてから測定値の取得を開始するまでの間に、一定のタイムラグを設けてもよい。そして、制御部182は、ステップS109~S111の処理により第2測定値を記録する(ステップS111)。
【0106】
続いて制御部182は、式(1)に基づいて第1抵抗値R及び第2抵抗値Rを求め、式(3)に基づいて第1温度t及び第2温度tを求める。そして、制御部182は、式(4)及び式(5)に基づき、測定対象物Mを通過する熱流Qを求める(ステップS112)。次に制御部182は、求めた熱量Qなどを含む演算結果の情報を記憶部83に記憶させ、表示部85に表示させる。制御部182は、ユーザによる印刷の指示があった場合、演算結果の情報を紙媒体に印字して、あるいはCSV等により出力する(ステップS113)。
【0107】
以上のように、本実施の形態2における温度センサ10は、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板50と、基板50の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状のセンサ素子20(20A、20B、又は20C)と、センサ素子20に接続された一対の端子(41、42)と、を有している。センサ素子20は、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット31が形成されている。よって、温度センサ10は、従来構成よりも実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、温度の測定精度も高まっている。そして、直交方向における一端側と他端側とに、それぞれ、一対の端子における各端子が接続されているため、端子間の長さを確保することができ、抵抗値を高めることが可能となる。したがって、温度センサ10によれば、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【0108】
また、本実施の形態2の計測システム200は、疑似太陽光源装置8を用いるよう構成されているため、日没後に相当する環境と、日中に相当する環境とを、任意のタイミングで生成することができる。よって、熱流Q等の特性データの演算に要する時間を短縮することができると共に、天気に依拠しない画一的な測定を行うことができるため、さらなる測定精度の向上を図ることができる。
【0109】
ここで、上述した実施の形態は、温度センサ、センサユニット、及び計測システムの具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、センサユニット60、60A、60Bにおける複数の温度センサ10の組み合わせや総数、各温度センサそれぞれの数や配置等は、各図の例に限らず、任意に設定し、変更することができる。各温度センサ11~16における各スリットの本数・配置等は、各図の例に限らず、任意に設計し、変更することができる。各図では、一対の端子が内端子41と外端子42とにより構成された例を示したが、これに限定されない。一対の端子は、双方がセンサ素子20における矩形の領域外に配置されてもよく、この場合、基板50には切欠き部51を設けなくてよい。ただし、複数の温度センサ10を連結させてセンサユニットを構成する場合、実効面積拡大の観点から、各温度センサ10の間の距離を狭くすべく、一対の端子のうちの一方は、少なくとも一部がセンサ素子20における矩形の領域内に配置される構成を採るとよい。計測システム100及び200は、管理装置80及び180に上述した中継装置70の機能を持たせ、中継装置70を設けずに構成してもよい。この場合、管理装置80及び180は、温度センサ10又はセンサユニット60からの出力を用い、測定対象物Mの熱に関する性質を示す特性データを求めるものとなる。
【符号の説明】
【0110】
1A~1F 主パターン部、2a、2c、2e、2g 中継部、2A~2F 内パターン部、2b、2d、2f、2h 端子部、3A~3F 外パターン部、4b 補助部、4h ネジ穴、4k 通し穴、4m 湾曲部、4n ネジ、8 疑似太陽光源装置、8a、8b 導線、10、11~16 温度センサ、20、20A~20F センサ素子、31 スリット、32、33、34 枝スリット、35~38 スリット群、41 内端子、42 外端子、43 基部、44 導電部、46 ナット、48 ハンダ、50 基板、51 切欠き部、60、60A、60B センサユニット、65 検出装置、66 照度センサ、70 中継装置、80、180 管理装置、81 通信部、82、182 制御部、82a 入力処理手段、82b 出力処理手段、82c 取得処理手段、82d、182d 演算処理手段、182n 光源処理手段、83 記憶部、83p、183p 計測処理プログラム、84 入力部、85 表示部、100、100A、100B、200 計測システム。
図1
図2
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