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特開2024-126205温度センサ、センサユニット、擾乱因子測定ユニット、及び計測システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126205
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】温度センサ、センサユニット、擾乱因子測定ユニット、及び計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/16 20060101AFI20240912BHJP
   G01N 25/18 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
G01K7/16 B
G01N25/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034436
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、太陽光発電技術研究組合「BIPV用日射熱取得率評価装置の設計と、BIPVモジュール発電量評価及び解析」委託研究、産業技術力強化法(平成12年法律第44号)第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 真一
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊輔
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB10
2G040AB12
2G040CA02
2G040DA02
(57)【要約】
【課題】簡易な構造により温度測定の高精度化を実現する温度センサ、センサユニット、擾乱因子測定ユニット、及び計測システムを提供すること。
【解決手段】絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、基板の一方の面に形成された膜状の第1素子と、基板の他方の面に形成された膜状の第2素子と、第1素子に接続された一対の第1端子と、第2素子に接続された一対の第2端子と、を有する温度センサ。第1素子及び第2素子は、それぞれ、平面視で矩形状をなしており、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットを有している。センサユニットは、複数の温度センサが連結されたものであり、擾乱因子測定ユニットは、外部の光を遮るように形成された筐体の内部に温度センサ又はセンサユニットが配設されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、
前記基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状の第1素子と、
前記基板の他方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状の第2素子と、
前記第1素子に接続された一対の第1端子と、
前記第2素子に接続された一対の第2端子と、を有し、
前記第1素子と前記第2素子とは、前記基板を挟んで対向するよう配置されており、
前記第1素子及び前記第2素子は、それぞれ、
一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットを有する、温度センサ。
【請求項2】
前記一対の第1端子と前記一対の第2端子とは、平面視で重ならないよう配置されている、請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記一対の第1端子は、
前記第1素子における矩形の領域内に配置された第1内端子と、
前記第1素子における矩形の領域外に配置された第1外端子と、により構成され、
前記一対の第2端子は、
前記第2素子における矩形の領域内に配置された第2内端子と、
前記第2素子における矩形の領域外に配置された第2外端子と、により構成されている、請求項1に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記第1内端子と前記第2内端子とは、
前記基板におけるある一辺の箇所に、平面視で設定距離を隔てて配置されており、
前記第1外端子と前記第2外端子とは、
前記基板における他の一辺の箇所に、平面視で前記設定距離を隔てて配置されている、請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記一対の第1端子のうちの一方、及び前記一対の第2端子のうちの一方には、それぞれ、ネジの螺入が可能なネジ穴が形成され、
前記一対の第1端子のうちの他方、及び前記一対の第2端子のうちの他方には、それぞれ、前記ネジ穴よりも径の大きな通し穴が形成されている、請求項1又は2に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記第1内端子及び前記第1外端子のうちの一方、及び前記第2内端子及び前記第2外端子のうちの一方には、それぞれ、ネジの螺入が可能なネジ穴が形成され、
前記第1内端子及び前記第1外端子のうちの他方、及び前記第2内端子及び前記第2外端子のうちの他方には、それぞれ、前記ネジ穴よりも径の大きな通し穴が形成されている、請求項3又は4に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記一対の第1端子は、
前記スリットの延伸方向における一端側に配置され、
前記一対の第2端子は、
前記スリットの延伸方向における他端側に配置されている、請求項1又は2に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記第1内端子及び前記第2内端子は、
前記スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端部に設けられ、
前記第1外端子及び前記第2外端子は、
前記直交方向における他端部に設けられている、請求項3又は4に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記第1内端子は、
前記スリットの延伸方向における他端部の、前記延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端側に設けられ、
前記第1外端子は、
前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における一端側に設けられ、
前記第2内端子は、
前記延伸方向における他端部の、前記直交方向における他端側に設けられ、
前記第2外端子は、
前記直交方向における他端部の、前記延伸方向における他端側に設けられている、請求項3又は4に記載の温度センサ。
【請求項10】
前記第1内端子は、
前記スリットの延伸方向における他端部の、前記スリットの延伸方向に対し直交する方向である直交方向における他端側に設けられ、
前記第1外端子は、
前記直交方向における一端部の、前記延伸方向における他端側に設けられ、
前記第2内端子は、
前記延伸方向における他端部の、前記直交方向における一端側に設けられ、
前記第2外端子は、
前記直交方向における一端部の、前記延伸方向における一端側に設けられている、請求項3又は4に記載の温度センサ。
【請求項11】
前記第1内端子は、
前記スリットの延伸方向における他端部の、前記延伸方向に対し直交する方向である直交方向における一端側に設けられ、
前記第1外端子は、
前記直交方向における一端部の、前記延伸方向における一端側に設けられ、
前記第2内端子は、
前記延伸方向における他端部の、前記直交方向における他端側に設けられ、
前記第2外端子は、
前記直交方向における一端部の、前記延伸方向における他端側に設けられている、請求項3又は4に記載の温度センサ。
【請求項12】
請求項1~4の何れか一項に記載の温度センサを複数有する、センサユニット。
【請求項13】
外部の光を遮るように形成された筐体と、
前記筐体の内部に配設された請求項1~4の何れか一項に記載の温度センサと、を有する、擾乱因子測定ユニット。
【請求項14】
外部の光を遮るように形成された筐体と、
前記筐体の内部に配設された請求項12に記載のセンサユニットと、を有する、擾乱因子測定ユニット。
【請求項15】
測定対象物が疑似太陽光源装置と対向する面に貼り付けられる計測箱の少なくとも1つの面に取り付けられた請求項12に記載のセンサユニットと、
前記センサユニットからの出力に基づき、前記測定対象物の熱に関する性質を示す情報を求める管理装置と、を有する計測システム。
【請求項16】
測定対象物が疑似太陽光源装置と対向する面に貼り付けられる計測箱の少なくとも1つの面に取り付けられた、請求項1~4の何れか一項に記載の温度センサを複数有するセンサユニットと、
外部の光を遮るように形成された筐体、及び前記筐体の内部に配設された、請求項1~4の何れか一項に記載の温度センサを含む擾乱因子測定ユニットと、
前記計測箱に取り付けられた前記センサユニットからの出力と、前記筐体内部の前記温度センサからの出力とに基づき、前記測定対象物の熱に関する性質を示す情報を求める管理装置と、を有する計測システム。
【請求項17】
測定対象物が疑似太陽光源装置と対向する面に貼り付けられる計測箱の少なくとも1つの面に取り付けられた請求項12のセンサユニットと、
外部の光を遮るように形成された筐体、及び前記筐体内部に配設された請求項12に記載のセンサユニットを含む擾乱因子測定ユニットと、
前記計測箱に取り付けられた前記センサユニットからの出力と、前記筐体の内部の前記センサユニットからの出力とに基づき、前記測定対象物の熱に関する性質を示す情報を求める管理装置と、を有する計測システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の表面などに配設されて用いられる温度センサ、センサユニット、擾乱因子測定ユニット、及び計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体の表面に貼り付けられ、該物体の温度に関する情報を取得するための温度センサが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。特許文献1には、複数の熱電対を組み合わせてなるサーモパイルにより構成された熱流センサが開示されている。特許文献2には、基材の表面に平面視矩形状の複数の金属層が形成された熱流センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-35235号公報
【特許文献2】特開2012-42304号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の温度センサは、線状のセンサ素子が用いられていることから、基材の表面全体に占めるセンサ素子の割合、つまり実効面積が小さくなる。実効面積とは、平面視における面積について、温度センサ全体に占めるセンサ素子の割合のことである。温度センサは、実効面積が小さくなると、光の照射に対する感度が低くなるため、温度の測定精度も低下する。
【0005】
これに対し、特許文献2の温度センサは、センサ素子としての複数の金属層が基材の表面に並べて配置されているため、特許文献1の温度センサよりも、測定対象物に対するセンサ素子の実効面積は大きくなる。しかしながら、特許文献2の温度センサは、複数の金属層間に一定の距離を確保する必要があるため、実効面積の確保も十分とはいえず、さらにセンサ全体の構造が複雑化されているため、製造効率の低下を回避することができない。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現する温度センサ、センサユニット、擾乱因子測定ユニット、及び計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る温度センサは、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板と、基板の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状の第1素子と、基板の他方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状の第2素子と、第1素子に接続された一対の第1端子と、第2素子に接続された一対の第2端子と、を有し、第1素子と第2素子とは、基板を挟んで対向するよう配置されており、第1素子及び第2素子は、それぞれ、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットを有するものである。
本発明の一態様に係る擾乱因子測定ユニットは、外部の光を遮るように形成された筐体と、筐体の内部に配設された上記の温度センサと、を有するものである。
【0008】
本発明の一態様に係るセンサユニットは、上記の温度センサを複数有するものである。
本発明の一態様に係る計測システムは、測定対象物が疑似太陽光源装置と対向する面に貼り付けられる計測箱の少なくとも1つの面に取り付けられた上記のセンサユニットと、センサユニットからの出力に基づき、前記測定対象物の熱に関する性質を示す情報を求める管理装置と、を有するものである。
本発明の一態様に係る擾乱因子測定ユニットは、外部の光を遮るように形成された筐体と、筐体の内部に配設された上記のセンサユニットと、を有するものである。
【0009】
本発明の一態様に係る計測システムは、測定対象物が疑似太陽光源装置と対向する面に貼り付けられる計測箱の少なくとも1つの面に取り付けられた、上記の温度センサを複数有するセンサユニットと、外部の光を遮るように形成された筐体、及び筐体の内部に配設された、上記の温度センサを含む擾乱因子測定ユニットと、計測箱に取り付けられたセンサユニットからの出力と、筐体内部の温度センサからの出力とに基づき、測定対象物の熱に関する性質を示す情報を求める管理装置と、を有するものである。
本発明の一態様に係る計測システムは、測定対象物が疑似太陽光源装置と対向する面に貼り付けられる計測箱の少なくとも1つの面に取り付けられた上記のセンサユニットと、外部の光を遮るように形成された筐体、及び筐体の内部に配設された上記のセンサユニットを含む擾乱因子測定ユニットと、計測箱に取り付けられたセンサユニットからの出力と、筐体内部のセンサユニットからの出力とに基づき、測定対象物の熱に関する性質を示す情報を求める管理装置と、を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、膜状の第1素子と膜状の第2素子とにより基板が挟まれた構造を採っており、第1素子には一対の第1端子が接続され、第2素子には一対の第2端子が接続されている。そして、第1素子及び第2素子は、それぞれ、一端側と他端側から交互に、所定間隔をあけて平行に延びる設定幅の複数のスリットを有している。すなわち、第1素子及び第2素子は、それぞれ、膜状であって、設定幅の間隔をあけて直交方向に蛇行するよう形成されているため、取付対象の物体に対し平行な面の面積につき、温度センサ全体に対するセンサ素子の割合が大きくなっている。したがって、測定対象物との間の熱伝導率の向上を図り、測温抵抗体としての機能を高めることができるため、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係るセンサユニット及び計測システムを概略的に例示した構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る温度センサ及び計測システムを概略的に例示した構成図である。
図3図1のセンサユニットが有する温度センサの第1の例を示す平面図である。
図4図1のセンサユニットが有する温度センサの第2の例を示す平面図である。
図5図1のセンサユニットが有する温度センサの第3の例を示す平面図である。
図6図1のセンサユニットが有する温度センサの第4の例を示す平面図である。
図7図1の各温度センサにおける基板と各端子との接続状態を例示した平面図である。
図8図7のA-A線に沿った概略断面図である。
図9図1の各温度センサにおける各端子の構成例を示す平面図である。
図10図8のB-B線に沿った概略断面図である。
図11】ある温度センサの外端子におけるネジ穴と、他の温度センサの内端子における通し穴との位置合わせをした状態でネジを螺入する様子を例示した説明図である。
図12図11の状態から通し穴及びネジ穴にネジを挿入して締め付け、外端子と内端子とを締結した状態を例示した説明図である。
図13】バーリング加工が施された外端子を例示した概略断面図である。
図14】ナットが溶着された外端子を例示した概略断面図である。
図15】曲げ加工が施された外端子の一例を示す平面図である。
図16図15のC-C線に沿った概略断面図である。
図17】曲げ加工が施された外端子の他の例を示す平面図である。
図18図17のD-D線に沿った概略断面図である。
図19図1のセンサユニット又は図3図6の各温度センサを用いて熱流を求める際の各工程を例示したフローチャートである。
図20】本発明の実施の形態2に係る計測システムを概略的に例示した構成図である。
図21図20の計測システムにおける接続関係を例示した構成図である。
図22】本発明の実施の形態2に係る計測システムにつき、5つの面にセンサユニットが設けられた計測箱及びその周辺を側面側から見た場合の概略的な構成例を示す説明図である。
図23】本発明の実施の形態2に係る計測システムにつき、6つの面にセンサユニットが設けられた計測箱及びその周辺を側面側から見た場合の概略的な構成例を示す説明図である。
図24図20の管理装置の機能的構成を例示したブロック図である。
図25図20図24に例示する計測システムを用いて日射熱取得率(SHGC)を求めるための各工程のうち、疑似太陽光源装置を点灯する前までの処理の流れを例示したフローチャートである。
図26図20図24に例示する計測システムを用いて日射熱取得率(SHGC)を求めるための各工程のうち、疑似太陽光源装置を点灯してからの処理の流れを例示したフローチャートである。
図27】本発明の実施の形態3に係る計測システムを概略的に例示した構成図である。
図28図27の計測システムにおける接続関係を例示した構成図である。
図29図27の管理装置の機能的構成を例示したブロック図である。
図30】疑似太陽光源装置による疑似太陽光が直接当たるように配置された温度センサ10に係る抵抗値の経時特性を例示したグラフである。
図31】擾乱因子測定ユニットの内部の温度センサに係る抵抗値の経時特性を例示したグラフである。
図32図30の経時特性データに対し、図31の経時特性データに基づく擾乱因子除去演算を施した後の波形を例示したグラフである。
図33図27図29に例示する計測システムを用いて日射熱取得率(SHGC)を求めるための各工程のうち、疑似太陽光源装置を点灯する前までの処理の流れを例示したフローチャートである。
図34図27図29に例示する計測システムを用いて日射熱取得率(SHGC)を求めるための各工程のうち、疑似太陽光源装置を点灯してからの処理の流れを例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1図19に基づき、本発明の実施の形態1に係るセンサユニット60及び計測システム100について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で符号の一部を省略することがある。まず、図1図6を参照し、温度センサ10及びセンサユニット60の全体的な構成例について説明する。
【0013】
図1に例示する計測システム100は、複数の温度センサ10により構成されたセンサユニット60と、センサユニット60からの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物(被測定試料)Mの特性データを求める管理装置80と、を有している。図2に例示する計測システム100は、温度センサ10と、温度センサ10からの出力又は該出力に基づく情報を用い、測定対象物M(図2では省略)の特性データを求める管理装置80と、を有している。
【0014】
特性データは、測定対象物Mの熱に関する性質を示す情報である。測定対象物Mは、温度センサ10又はセンサユニット60を直接的又は間接的に取り付け、特性データの取得対象とする物体である。図1に例示するセンサユニット60は、複数の温度センサ10として、1又は複数の温度センサ11と、1又は複数の温度センサ12と、1又は複数の温度センサ13と、1又は複数の温度センサ14と、を有している。以降においても、温度センサ11~14を区別せずに指す場合は、これらを温度センサ10と総称する。
【0015】
温度センサ10は、平面視で矩形状となるよう形成されている。図1に例示する温度センサ10は、横幅Wxと縦幅Wyとが概ね等しくなっている。横幅Wx及び縦幅Wyは、例えば約300mmに設定され、使用状況などに合わせて適宜変更するとよい。図1に例示するセンサユニット60は、6つの温度センサ11と、4つの温度センサ12と、1つの温度センサ13と、1つの温度センサ14と、を組み合わせた構成となっている。以下では、温度センサ10の第2素子30側を測定対象物Mに向けて取り付ける場合について説明するが、温度センサ10は、第1素子20側を測定対象物Mに向けて取り付けても、同様に使用することができる。
【0016】
図2に例示するように、温度センサ10は、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板50と、基板50の一方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状の第1素子20と、基板50の他方の面に形成され、平面視で矩形状をなす膜状の第2素子30と、を有している。基板50は、ガラスエポキシなど、樹脂を含む材料により構成される。第1素子20及び第2素子30は、それぞれ、導電性を有する白金や銅などの金属により形成された薄膜のパターンである。第1素子20及び第2素子30は、それぞれ、基板50上に、蒸着法、スパッタリング法などの種々の手法によって成膜される。以下、第1素子20と第2素子30とをセンサ素子と総称することがある。
【0017】
第1素子20と第2素子30とは、平面視で同程度の大きさとなるよう形成され、基板50を挟んで対向するよう配置されている。図2では、説明の便宜上、平面視における基板50の面積と第1素子20及び第2素子30の面積とが大きく異なる構成例を示しているが、実際の温度センサ10は、平面視における基板50の面積と第1素子20及び第2素子30の面積とが概ね等しくなるよう形成される。もっとも、基板50は、第1素子20及び第2素子30よりも平面視でひとまわり大きくてもよく、すなわち、平面視で第1素子20及び第2素子30と同程度のサイズ及び形状であればよい。図2は、各構成部材を明確に区別して示すための便宜的なものであり、基板50、第1素子20、及び第2素子30のサイズ、形状、厚み等は、これに限定されない。なお、図3図6のような平面視において、基板50は、スリット41等の箇所から視認することができる(符号は省略)。
【0018】
温度センサ10は、第1素子20に接続された一対の第1端子(21、22)と、第2素子30に接続された一対の第2端子(31、32)と、を有している。本実施の形態1において、一対の第1端子と一対の第2端子とは、平面視で重ならないよう配置されている。
【0019】
より具体的に、一対の第1端子は、図1等に示すように、第1素子20における矩形の領域内に配置された第1内端子21と、第1素子20における矩形の領域外に配置された第1外端子22と、により構成されている。一対の第2端子は、図1等に示すように、第2素子30における矩形の領域内に配置された第2内端子31と、第2素子30における矩形の領域外に配置された第2外端子32と、により構成されている。第1素子20又は第2素子30における矩形の領域とは、第1素子20又は第2素子30の外郭における4つの角をつないだ平面視で正方形状又は長方形状の領域のことである。
【0020】
温度センサ10は、第1内端子21及び第1外端子22のうちの一方に、所定のネジ4nの螺入が可能なネジ穴4hが形成され、他方に、ネジ穴4hよりも径の大きな通し穴4kが形成されている。また、温度センサ10は、第2内端子31及び第2外端子32のうちの一方にネジ穴4hが形成され、他方に通し穴4kが形成されている。ネジ穴4hには、ねじ切り加工を施すとよい。
【0021】
図3図6では、第1内端子21及び第2内端子31に通し穴4kが形成され、第1外端子22及び第2外端子32にネジ穴4hが形成された例を示している。もっとも、温度センサ10は、第1内端子21及び第2内端子31にネジ穴4hが形成され、第1外端子22及び第2外端子32に通し穴4kが形成されてもよい。温度センサ10は、第1内端子21及び第2外端子32にネジ穴4hが形成され、第1外端子22及び第2内端子31に通し穴4kが形成されてもよい。温度センサ10は、第1外端子22及び第2内端子31にネジ穴4hが形成され、第1内端子21及び第2外端子32に通し穴4kが形成されてもよい。以降、温度センサ10のうち、第1内端子21、第1外端子22、第2内端子31、及び第2外端子32を除く部分を「センサ本体」という。また、第1内端子21及び第2内端子31については「内端子」と総称することがあり、第1外端子22及び第2外端子32については「外端子」と総称することがある。
【0022】
第1素子20及び第2素子30は、それぞれ、一端側と他端側から交互に、所定間隔W(幅W)をあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット41(図3図6参照)が形成されている。ここで、スリット41が延びる方向を「延伸方向」とし、延伸方向に対し直交する方向を「直交方向」とする。第1素子20及び第2素子30は、それぞれ、直交方向に沿って蛇行するよう、ひとつながりに形成されている。
【0023】
スリット41は、エッチング、レーザ加工、機械加工などを用いて形成される。後述する他のスリットについても、スリット41と同様に形成される。スリット41を含む各スリットの設定幅Sは、狭すぎると短絡の原因になるため、50μm程度を下限とし、広すぎると光吸収のための実効面積の拡大を実現することができないため、1mm程度を上限にするとよい。実効面積とは、平面視において、温度センサ10又はセンサユニット60全体に占める第1素子20又は第2素子30の割合のことである。
【0024】
センサユニット60において、複数の温度センサ10それぞれの第1素子20を連結させて組み合わせた部分を第1素子群といい、複数の温度センサ10それぞれの第2素子30を連結させて組み合わせた部分を第2素子群という。
【0025】
第1素子20及び第2素子30は、同一のパターン形状で各スリットの幅を広くすると(幅W等を狭くすると)、抵抗値が大きくなるので検出感度は向上するが、実効面積が減少するので検出効率は低下する。したがって、第1素子20及び第2素子30は、実効面積を確保しつつ抵抗値を大きくするために、膜厚を極力薄くするとよい。以降、第1素子20及び第2素子30の膜厚のことを「素子膜厚」と称する。素子膜厚は、例えば10μm~50μmの範囲内にするとよい。
【0026】
素子膜厚は、形成時に、蒸着時間などを制御することで調整してもよく、形成後に、砥石等で全体を研磨することにより調整してもよい。形成後の研磨により素子膜厚を調整する場合は、基板50の表面粗さと第1素子20及び第2素子30の材質にもよるが、研磨前の第1素子20又は第2素子30が薄すぎると欠落部分発生のおそれがあるため、留意を要する。第1素子20及び第2素子30は、各スリットの幅の調整、あるいは砥石等による素子膜厚の調整により、抵抗値を微調整することができる。第1素子20及び第2素子30は、抵抗値の微調整の後、表面に黒色低反射処理を施すとよい。
【0027】
ここで、図3図6を参照し、本実施の形態1における各温度センサ10の具体的な構成について説明する。図3図6において、左側の(a)は、第1素子20を表側に向けた状態例であり、右側の(b)は、(a)の温度センサ10を裏返した状態例、つまり第2素子30を表側に向けた状態例である。図3図6では、第1内端子21及び第1外端子22と、第2内端子31及び第2外端子32とを、外観上区別できるようにするため、裏側に配置された各端子にドットを付している。基板50は、第1内端子21が配置される部分、及び第2内端子31が配置される部分に、平面視で矩形状の切欠き部55が形成されている。
【0028】
図3図6に例示する温度センサ10は、第1内端子21と第2内端子31とが、基板50におけるある一辺の箇所に、平面視で設定距離Tを隔てて配置されており、第1外端子22と第2外端子32とが、基板50における他の一辺の箇所に、平面視で設定距離Tを隔てて配置されている。かかる構成により、複数の温度センサ10を連結して用いる際、ある温度センサ10の内端子側と、他の温度センサ10の外端子側とを連結すればよいため、複数の温度センサ10を容易に組み合わせることができる。
【0029】
もっとも、温度センサ10は、第1内端子21と第2外端子32とが、基板50における一辺の箇所に、平面視で設定距離Tを隔てて配置され、第1外端子22と第2内端子31とが、基板50における他の一辺の箇所に、平面視で設定距離Tを隔てて配置されてもよい。かかる構成であっても、図1の例と同様、複数の温度センサ10を連結して組み合わせることにより、全体として平面視で矩形状のセンサユニット60を構成することができる。
【0030】
図3に例示するように、温度センサ11は、第1素子20として、複数のスリット41と、少なくとも1本の枝スリット42と、が形成された第1素子20Aを有している。第1素子20Aは、複数のスリット41が形成されている主パターン部21Aと、第1内端子21が接続される内パターン部22Aと、第1外端子22が接続される外パターン部23Aと、を含む。温度センサ11は、第2素子30として、複数のスリット41と、少なくとも1本の枝スリット42と、が形成された第2素子30Aを有している。第2素子30Aは、複数のスリット41が形成されている主パターン部31Aと、第2内端子31が接続される内パターン部32Aと、第2外端子32が接続される外パターン部33Aと、を含む。
【0031】
図3(a)に例示する第1素子20Aは、12本のスリット41と、1本の枝スリット42と、を有している。枝スリット42は、延伸方向における一端側から延びるスリット41のうちで、第1内端子21に最も近いものの中途の箇所から枝分かれしている。図3(b)に例示する第2素子30Aは、12本のスリット41と、1本の枝スリット42と、1本の端スリット43と、を有している。第2素子30Aの枝スリット42は、延伸方向における他端側から延びるスリット41の一端側の端部に接続され、平面視でL字状となるよう形成されている。端スリット43は、直交方向における他端部から延び、平面視でL字状となるよう形成されている。
【0032】
温度センサ11は、第1内端子21と第1外端子22とが、延伸方向における一端側に並んで配置されている。温度センサ11は、第2内端子31と第1外端子32とが、延伸方向における他端側に並んで配置されている。さらに、温度センサ11は、第1内端子21及び第2内端子31が、直交方向における一端部に設けられ、第1外端子22及び第2外端子32が、直交方向における他端部に設けられている。すなわち、温度センサ11は、第1内端子21が、直交方向における一端部の、延伸方向における一端側に設けられ、第1外端子22は、直交方向における他端部の、延伸方向における一端側に設けられている。また、温度センサ11は、第2内端子31が、直交方向における一端部の、延伸方向における他端側に設けられており、第2外端子32が、直交方向における他端部の、延伸方向における他端側に設けられている。
【0033】
図4に例示するように、温度センサ12は、第1素子20として、複数のスリット41と、少なくとも1本の枝スリット42と、が形成された第1素子20Bを有している。第1素子20Bは、複数のスリット41が形成されている主パターン部21Bと、第1内端子21が接続される内パターン部22Bと、第1外端子22が接続される外パターン部23Bと、を含む。温度センサ12は、第2素子30として、複数のスリット41が形成された第2素子30Bを有している。第2素子30Bは、複数のスリット41が形成されている主パターン部31Bと、第2内端子31が接続される内パターン部32Bと、第2外端子32が接続される外パターン部33Bと、を含む。
【0034】
図4(a)に例示する第1素子20Bは、13本のスリット41と、1本の枝スリット42と、を有している。枝スリット42は、延伸方向における他端側から延びるスリット41のうちで、第1内端子21に最も近いものの中途の箇所から枝分かれしている。図4(a)の例において、枝スリット42が接続されているスリット41は、第1内端子21側の端部が平面視で段状に形成されている。図4(b)に例示する第2素子30Aは、13本のスリット41と、平面視でU字状に形成された縁スリット44と、を有している。縁スリット44は、直交方向における一端側から、延伸方向における他端側を経て、直交方向における他端側まで延びるよう形成され、数箇所に凹凸(段差)を有している。
【0035】
温度センサ12において、第1内端子21及び第2内端子31は、延伸方向における他端部に設けられ、第1外端子22及び第2外端子32は、直交方向における他端部に設けられている。より具体的に、温度センサ12において、第1内端子21は、延伸方向における他端部の、直交方向における一端側に設けられており、第1外端子22は、直交方向における他端部の、延伸方向における一端側に設けられている。また、温度センサ12において、第2内端子31は、延伸方向における他端部の、直交方向における他端側に設けられ、第2外端子32は、直交方向における他端部の、延伸方向における他端側に設けられている。
【0036】
図5に例示するように、温度センサ13は、第1素子20として、複数のスリット41と、少なくとも1本の枝スリット42と、が形成された第1素子20Cを有している。第1素子20Cは、複数のスリット41が形成されている主パターン部21Cと、第1内端子21が接続される内パターン部22Cと、第1外端子22が接続される外パターン部23Cと、を含む。温度センサ13は、第2素子30として、複数のスリット41が形成された第2素子30Cを有している。第2素子30Cは、複数のスリット41が形成されている主パターン部31Cと、第2内端子31が接続される内パターン部32Cと、第2外端子32が接続される外パターン部33Cと、を含む。
【0037】
図5(a)に例示する第1素子20Cは、13本のスリット41と、1本の枝スリット42と、1本の端スリット43と、を有している。第1素子20Cの枝スリット42は、延伸方向における他端側から延びるスリット41のうちで、第1外端子22に最も近いものの中途の箇所から枝分かれしている。図5(a)の例において、枝スリット42が接続されているスリット41は、第1内端子21側の端部が平面視で段状に形成されている。なお、孤立パターン20xは、第1素子20Cの一部ではあるが、抵抗値の調整のため、他の部分とは導通していない。図5(b)に例示する第2素子30Cは、13本のスリット41と、平面視でL字状に形成された縁スリット44と、を有している。縁スリット44は、延伸方向における他端側及び直交方向における他端側に沿って延びるようL字状に形成され、数箇所に凹凸(段差)を有している。
【0038】
温度センサ13において、第1内端子21及び第2内端子31は、延伸方向における他端部に設けられ、第1外端子22及び第2外端子32は、直交方向における一端部に設けられている。より具体的に、温度センサ13において、第1内端子21は、延伸方向における他端部の、直交方向における他端側に設けられ、第1外端子22は、直交方向における一端部の、延伸方向における他端側に設けられている。また、温度センサ13において、第2内端子31は、延伸方向における他端部の、直交方向における一端側に設けられ、第2外端子32は、直交方向における一端部の、延伸方向における一端側に設けられている。
【0039】
図6に例示するように、温度センサ14は、第1素子20として、複数のスリット41が形成された第1素子20Dを有すると共に、第2素子30として、複数のスリット41が形成された第2素子30Dを有している。第1素子20Dは、複数のスリット41が形成されている主パターン部21Dと、第1内端子21が接続される内パターン部22Dと、第1外端子22が接続される外パターン部23Dと、を含む。第2素子30Dは、複数のスリット41が形成されている主パターン部31Dと、第2内端子31が接続される内パターン部32Dと、第2外端子32が接続される外パターン部33Dと、を含む。
【0040】
図6(a)に例示する第1素子20Dは、13本のスリット41と、1本の縁スリット44と、を有している。縁スリット44は、延伸方向における他端側及び直交方向における他端側に沿って延びるようL字状に形成され、数箇所に凹凸(段差)を有している。図6(b)に例示する第2素子30Dは、13本のスリット41と、平面視でL字状に形成された端スリット43と、を有している。なお、孤立パターン30xは、第2素子30Dの一部ではあるが、抵抗値の調整のため、他の部分とは導通していない。
【0041】
温度センサ14において、第1内端子21及び第2内端子31は、延伸方向における他端部に設けられ、第1外端子22及び第2外端子32は、直交方向における一端部に設けられている。より具体的に、温度センサ14において、第1内端子21は、延伸方向における他端部の、直交方向における一端側に設けられ、第1外端子22は、直交方向における一端部の、延伸方向における一端側に設けられている。また、温度センサ14において、第2内端子22は、延伸方向における他端部の、直交方向における他端側に設けられ、第2外端子32は、直交方向における一端部の、延伸方向における他端側に設けられている。
【0042】
主パターン部21A~21D、31A~31Dは、予め設定された幅Wをもつ平面視長方形状の薄膜が、延伸方向の一端側と他端側とで交互に繋げられた態様となっている。幅Wは、例えば約20mmに設定される。幅Wは、第1素子20A~20Dの全域における抵抗値の均質化等を考慮して適宜調整される。内パターン部22A~22D及び外パターン部23A~23Dの幅及び形状は、それぞれ、第1素子20A~20Dの全域に抵抗値のばらつきが生じないよう調整するとよい。内パターン部32A~32D及び外パターン部33A~33Dの幅及び形状は、それぞれ、第2素子30A~30Dの全域に抵抗値のばらつきが生じないよう調整するとよい。
【0043】
各図の例では、各外端子の先端部にネジ穴4hが形成されており、各内端子の先端部には、ネジ穴4hよりも径の大きな通し穴4kが形成されている。したがって、複数の温度センサ10の各々について、第1内端子21及び第2内端子31を、それぞれ、隣接する温度センサ10の第1外端子22及び第2外端子32に連結し、第1外端子22及び第2外端子32を、それぞれ、隣接する他の第1内端子21及び第2内端子31に連結することにより(一端に配置される温度センサ10の各内端子と他端に配置される温度センサ10の各外端子とを除く)、センサユニット60における温度センサ10同士の間隔を狭くすることができる。そして、図1のように、配置及び組み合わせを工夫することにより、全体として平面視矩形状のセンサユニット60を構築することができる。したがって、複数の温度センサ10を組み合わせたセンサユニット60においても、測定対象物Mに対するセンサ素子全体の実効面積の拡大を図ることができる。図1のセンサユニット60は、複数の温度センサ10が、蛇行するようひとつながりに連結されたものである。
【0044】
温度センサ11~14の各端子の配置は、各図の例に限らず、適宜変更することができる。例えば、温度センサ11は、図3の構成に限らず、第1内端子21の位置と第2内端子31の位置とを入れ替えてもよく、第1外端子22の位置と第2外端子32の位置とを入れ替えてもよい。かかる構成を採り、図1のように温度センサ11を連結させるときは、交互に向きを反転させるとよい。かかる構成の温度センサ11に対し、他の温度センサ12~14を組み合わせる場合は、温度センサ12~14の各端子の配置も調整する必要がある。
【0045】
次に、図7図10を参照し、第1内端子21、第1外端子22、第2内端子31、及び第2外端子32の具体的な構成、及びこれら各端子と基板50との関係について説明する。これら各端子とセンサ本体との接続関係は、何れも同様であるため、ここでは第1外端子22について具体的に説明し、他の各端子についての説明は省略する。
【0046】
図7及び図8は、各端子が基板50及び第1素子20又は第2素子30とは別体として設けられる例である。図7及び図8の例において、第1外端子22は、リン青銅等を材料とする薄板状の部材に、金めっき又はニッケルめっきが施されたものであり、その端部が第1素子20の表面に重ねられ、ハンダ付けされている。温度センサ10は、測温抵抗体であるため、各端子と第1素子20又は第2素子30との接合にハンダ48を用いても、原理的に検出精度への影響はない。もっとも、各端子は、ロウ付けにより第1素子20又は第2素子30の表面に取り付けられてもよい。
【0047】
図9及び図10は、各端子が基板50及び第1素子20又は第2素子30と一体的に形成される場合の構成例である。図10に例示する第1外端子22は、基板50と一体的に形成される基部45と、第1素子20と一体的に形成される導電部46と、を有している。金属製の薄膜からなる導電部46だけでは、ネジ4nの締結時に導電部46が削れ、導通性が損なわれる可能性がある。そのため、第1外端子22には、図10のように、導電部46の表面に、導電性を有する補強部47を形成し、導電層の膜厚を実質的に厚くするとよい。第1内端子21、第2内端子31、及び第2外端子32は、第1外端子22と同様に構成するとよい。
【0048】
次いで、図11図14を参照し、内端子と外端子との連結に関連する構成について説明する。各図では、各内端子に通し穴4kが形成され、各外端子にネジ穴4hが形成された例を示している。したがって、図11のように、外端子の上に、ネジ穴4hと通し穴4kとが重なるように内端子を重ね、ネジ4nを螺入する。これにより、図12のように、内端子と外端子とが、導通性が確保された状態で連結される。内端子がネジ穴4hを有する構成を採った場合は、内端子の上にネジ穴4hと通し穴4kとが合わさるように外端子を重ねてネジ4nを螺入する。
【0049】
例えば、図13のように、外端子のネジ穴4hの周縁にバーリング加工を施すことにより補助部4bを形成し、ネジ4nによる締結強度を高めてもよい。また、図14のように、外端子のネジ穴4hの位置に合わせて真鍮製等のナット49を溶着し、ネジ4nによる締結強度を高めてもよい。内端子がネジ穴4hを有する構成を採った場合は、内端子のネジ穴4hの周縁にバーリング加工を施してもよく、内端子のネジ穴4hの位置に合わせて真鍮製等のナット49を溶着してもよい。
【0050】
続いて、図15図18を参照し、温度センサ10同士を締結する際の、センサ本体と各端子との接続箇所などへの機械的ストレスを低減するための構造的工夫について説明する。すなわち、第1内端子21、第1外端子22、第2内端子31、及び第2外端子32のうちの少なくとも1つには、センサ本体との接続箇所とネジ穴4h又は通し穴4kとの間の部分に曲げ加工を施してもよい。各端子の曲げ加工は、何れも同様に施されるため、図15図18では、第1外端子22についてのみ例示する。
【0051】
図15及び図16の第1外端子22は、断面視半円状あるいは断面視U字状の湾曲部4mを有する例である。図17及び図18の第1外端子22は、断面視波形状の湾曲部4mを有する例である。第2外端子32についても同様、湾曲部4mを有するよう構成することができる。各内端子は、図15図18の湾曲部4mと同様、湾曲した形状を有していてもよいが、各外端子よりも長さが短いため、加工の程度に制限が加わる。各端子は、曲げ加工を施すことにより、ネジ穴4hに螺入するネジ4nの軸方向に対する柔軟性を高めることができるため、センサ本体と各端子との接続箇所等への機械的ストレスを低減することができる。
【0052】
ここで改めて、図1及び図2を参照し、管理装置80の機能的構成など、センサユニット60を用いた温度計測に係る構成について説明する。図1に例示する計測システム100は、センサユニット60と管理装置80との間に介在する2台の中継装置70を有している。一方の中継装置70は、導線8aを介して第1素子群における第1内端子21に接続され、導線8bを介して第1素子群における第1外端子22に接続されている。他方の中継装置70は、導線8aを介して第2素子群における第2内端子31に接続され、導線8bを介して第2素子群における第2外端子32に接続されている。各中継装置70は、例えばソースメータからなり、予め設定された値の電流を第1素子群又は第2素子群に流し、第1素子群又は第2素子群にかかる電圧を測定すると共に、測定した値(測定値)を管理装置80へ送信するものである。
【0053】
図2に例示する計測システム100は、温度センサ10と管理装置80との間に介在する中継装置70を有している。図2に例示する中継装置70は、2chソースメータからなり、予め設定された値の電流を第1素子20及び第2素子30に流し、第1素子20及び第2素子30それぞれにかかる電圧を測定すると共に、各測定値を管理装置80へ送信するものである。もっとも、図1の計測システム100に、2chソースメータからなる中継装置70を採用してもよく、図2の計測システム100に、2台の中継装置70を採用してもよい。
【0054】
管理装置80は、PC(Personal Computer)などにより構成され、センサユニット60及びその周辺環境を管理し、温度センサ10又はセンサユニット60からの出力に基づく情報を用い、測定対象物Mの熱に関する性質を示す特性データを求めるものである。PCには、タブレットPC、ノートPC、デスクトップ型PCなどが含まれる。管理装置80は、通信部81と、制御部82と、記憶部83と、入力部84と、表示部85と、を有している。
【0055】
通信部81は、制御部82が外部機器との間で有線又は無線による通信を行うためのインタフェースである。記憶部83には、計測処理プログラム83pなどの制御部82の動作プログラムの他、種々の情報が記憶される。記憶部83は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のPROM(Programmable ROM)、SSD(Solid State Drive)、又はHDD(Hard Disk Drive)などにより構成することができる。
【0056】
入力部84は、例えば、キーボードと、マウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスと、を含んで構成される。入力部84は、ユーザによる入力操作を受け付け、受け付けた内容に応じた操作信号を制御部82へ送信する。表示部85は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)からなり、制御部82からの指示により種々の情報を表示する。管理装置80は、入力部84及び表示部85の代わりに、文字又は画像等を表示する表示パネルと、該表示パネルに積層されてタッチ操作を検出する検出手段と、を含むタッチパネルを有していてもよい。管理装置80は、タッチパネルと入力部84とを併せ持つものであってもよい。
【0057】
制御部82は、特性データを求めるための演算など、種々の演算処理を行うものである。制御部82は、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、取得処理手段82cと、演算処理手段82dと、を有している。入力処理手段82aは、入力部84から出力される操作信号に応じた処理を実行する。例えば、入力処理手段82aは、ユーザによる入力操作に応じて、操作の内容を示す制御信号を出力処理手段82bへ出力する。出力処理手段82bは、ユーザによる入力部84の操作に応じて、種々の情報を含む画面を表示部85に表示させる。
【0058】
取得処理手段82cは、中継装置70から測定値を経時的に取得し、取得した測定値の変動状況などを管理する。図1の構成の場合、取得処理手段82cは、第1素子群からの出力に基づく測定値を中継装置70から連続的に取得し、安定した測定値を第1測定値として記憶部83に記録する。同様に、取得処理手段82cは、第2素子群からの出力に基づく測定値を中継装置70から連続的に取得し、安定した測定値を第2測定値として記憶部83に記録する。図2の構成の場合、取得処理手段82cは、第1素子20からの出力に基づく測定値を中継装置70から連続的に取得し、安定した測定値を第1測定値として記憶部83に記録する。同様に、取得処理手段82cは、第2素子30からの出力に基づく測定値を中継装置70から連続的に取得し、安定した測定値を第2測定値として記憶部83に記録する。
【0059】
演算処理手段82dは、記憶部83に記録された第1測定値及び第2測定値を用いて特性データを求めるものである。本実施の形態1において、演算処理手段82dは、特性データとして熱流Qを求めるよう構成されている。
【0060】
より具体的に、演算処理手段82dは、電圧の値を示す第1測定値[V]を下記式(1)のVに代入し、第1測定値に対応するセンサユニット60の抵抗値である第1抵抗値R[Ω]求める。演算処理手段82dは、式(1)のI[A]として、中継装置70が電圧測定の際にセンサユニット60に流した電流の値を用いる。
【0061】
【数1】
【0062】
抵抗Rと温度tとの間には、下記式(2)の関係があり、式(2)を温度tについて整理すると、下記式(3)となる。Rは、0℃の環境下でのセンサユニット60の抵抗値[Ω]であり、aはセンサユニット60の抵抗温度係数である。抵抗温度係数aは、事前の演算により求められ、記憶部83に記憶されている。
【0063】
【数2】
【0064】
【数3】
【0065】
演算処理手段82dは、求めた第1抵抗値Rを式(3)に代入することで、第1条件下でのセンサユニット60の温度である第1温度t[℃]を求める。
【0066】
また、演算処理手段82dは、電圧の値を示す第2測定値[V]を式(1)に適用し、第2測定値に対応するセンサユニット60の抵抗値である第2抵抗値R[Ω]を求める。次いで演算処理手段82dは、求めた第2抵抗値Rを式(3)に代入することで、第2条件下でのセンサユニット60の温度である第2温度t[℃]を求める。
【0067】
そして、演算処理手段82dは、下記式(4)及び(5)に示す関係に基づき、測定対象物Mを通過する熱流Qを求める。熱流束q(W/m)は、単位時間に単位面積を横切る熱量である。式(4)において、λ[W/m]はセンサユニット60の熱伝導率であり、d[m]は、温度センサ10の厚みである。Δtは、第1温度tと第2温度tとの差分である。第1温度tの方が第2温度tよりも高い場合、Δtは「t-t」となり、第1温度tの方が第2温度tよりも低い場合、Δtは「t-t」となる。
【0068】
【数4】
【0069】
【数5】
【0070】
図1の構成の場合、式(5)における面積S[m]は、センサユニット60に備わる全ての第1素子20又は第2素子30の表面の面積の合計(≒センサユニット60の表面の面積)となる。図2の構成の場合、式(5)における面積S[m]は、第1素子20又は第2素子30の表面の面積(≒温度センサ10の表面の面積)となる。演算処理手段82dは、熱流Qを直接的に求めてもよく、熱流束qと熱流Qとの双方を求めてもよい。なお、抵抗温度係数a、抵抗値R、熱伝導率λ、厚みd、及び面積Sなどの情報は、予め記憶部83等に記憶されている。
【0071】
制御部82は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各種機能を実現させる計測処理プログラム83pと、により構成することができる。すなわち、計測処理プログラム83pは、コンピュータとしての制御部82及び記憶部83を、入力処理手段82a、出力処理手段82b、取得処理手段82c、及び演算処理手段82dとして機能させるためのプログラムである。もっとも、制御部82の各種機能のうちの一部は、ハードウェアにより構成してもよい。
【0072】
計測システム100は、複数のセンサユニット60と、管理装置80と、各センサユニット60それぞれと管理装置80との間に介在する1又は複数の中継装置70と、を含んで構成してもよい。計測システム100は、互いに連結されていない複数の温度センサ10と、管理装置80と、各温度センサ10それぞれと管理装置80との間に介在する1又は複数の中継装置70と、を含んで構成してもよい。計測システム100は、互いに連結されていない1又は複数の温度センサ10と、1又は複数のセンサユニット60と、管理装置80と、温度センサ10及びセンサユニット60の各々と管理装置80との間に介在する1又は複数の中継装置70と、を含んで構成してもよい。
【0073】
続いて、図19のフローチャートに基づき、本実施の形態1の計測処理方法の一例について説明する。特性データの演算に際して、測定対象物Mは、太陽光が直接的又は間接的に当たる場所に配置するとよい。
【0074】
管理装置80の制御部82は、入力部84を介して計測システム100の起動を指示する操作を受け付けると、システムを起動し、表示部85に初期画面を表示させる(ステップS101)。ユーザは、初期画面又はそこから遷移した画面を通じて、温度センサ10又はセンサユニット60を用いた計測に係る条件及びパラメータなどを設定することができる。制御部82は、ユーザによる計測に係る条件などの設定操作を受け付けると、受け付けた数値等を記憶部83に格納する。例えば制御部82は、条件及びパラメータなどをユーザに確認させるための確認画面を表示部85に表示させ、適宜数値変更などを受け付ける。もっとも、条件などの設定が事前に行われている場合、当該工程は省略される(ステップS102)。
【0075】
制御部82は、中継装置70などの計測系のウォームアップのための待ち時間が経過するまで待機する(ステップS103/No)。制御部82は、待ち時間が経過すると(ステップS103/Yes)、第1素子群及び第2素子群のそれぞれから(図1の構成)、もしくは第1素子20及び第2素子30のそれぞれから(図2の構成)、中継装置70を介して測定値を取得する(ステップS104)。
【0076】
制御部82は、測定値が安定するまで各測定値を継続的に取得する(ステップS105/No)。制御部82は、第1素子群又は第1素子20に係る測定値が安定したとき(ステップS105/Yes)、該測定値を第1測定値として記録する(ステップS106)。同様に制御部82は、第2素子群又は第2素子30に係る測定値が安定したとき(ステップS105/Yes)、該測定値を第2測定値として記録する(ステップS106)。例えば、制御部82は、測定値が一定時間に亘って許容範囲内に収まったときに測定値が安定したと判定する。この場合、制御部82は、測定値が安定したとき、その際の測定値、又は一定時間における複数の測定値の平均値などを第1測定値又は第2測定値として記録する。一定時間は予め設定され、許容範囲は、測定値及び測定値の変動に応じて動的に設定される。
【0077】
制御部82は、第1測定値の記録が先に終わった場合、第2素子群又は第2素子30からの測定値の取得を継続し、第2測定値の記録が先に終わった場合、第1素子群又は第1素子20からの測定値の取得を継続する(ステップS107/No)。
【0078】
制御部82は、第1測定値及び第2測定値の記録が完了すると(ステップS107/Yes)、記録した第1測定値及び第2測定値を用いて測定対象物Mを通過する熱流Qを求める。すなわち、制御部82は、式(1)に基づき、第1測定値を用いて第1抵抗値Rを求めると共に、第2測定値を用いて第2抵抗値Rを求める。次いで制御部82は、式(3)に基づき、第1抵抗値Rから第1温度tを求め、第2抵抗値Rから第2温度tを求める。そして制御部82は、式(4)及び式(5)に基づき、第1温度t及び第2温度tを用いて熱流Qを求める(ステップS108)。
【0079】
次に制御部82は、求めた熱量Qなどを含む演算結果の情報を、記憶部83に記憶させ、表示部85に表示させる。制御部82は、ユーザによる印刷の指示があった場合、演算結果の情報を紙媒体に印字して、あるいはCSVなどにより出力する(ステップS109)。
【0080】
以上のように、本実施の形態1における温度センサ10(11~14)は、絶縁性を有する平面視で矩形状の基板50と、平面視で矩形状をなす膜状の第1素子20(20A~20D)と、平面視で矩形状をなす膜状の第2素子30(30A~30D)と、を有している。また、温度センサ10は、第1素子20に接続された一対の第1端子(21、22)と、第2素子30に接続された一対の第2端子(31、32)と、を有しており、第1素子20と第2素子30とは、基板50を挟んで対向するよう配置されている。そして、第1素子20及び第2素子30は、それぞれ、一端側と他端側から交互に、所定間隔Wをあけて平行に延びる設定幅Sの複数のスリット41を有している。すなわち、第1素子20及び第2素子30は、膜状であって、設定幅Sの間隔をあけて直交方向に蛇行するよう形成されており、取付対象の物体に対し平行な面の面積につき、温度センサ全体に対するセンサ素子の割合が大きくなっている。つまり、温度センサ10は、従来構成よりも実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、温度の測定精度も高まっている。また、第1内端子21と第1外端子22との間、及び第2内端子31と第2外端子32との間には、設定幅Sの間隔をあけて蛇行するパターンが形成されており、端子間の長さが確保されているため、第1素子20全体、第2素子30全体としての抵抗値を高めることができる。よって、測定対象物Mとの間の熱伝導率の向上を図り、測温抵抗体としての機能を高めることができるため、簡易な構造により、温度測定の高精度化を実現することができる。
【0081】
温度センサ10において、一対の第1端子(21、22)と一対の第2端子(31、32)とは、平面視で重ならないよう配置されている。したがって、温度センサ10の各端子に導線をつなぐ際、他の端子が干渉しないため、作業性の向上を図ることができる。また、複数の温度センサ10を連結させてセンサユニット60を構成する場合、各端子が互いに干渉しないため、第1素子20側の第1端子同士の接続と、第2素子30側の第2端子同士の接続との双方を、温度センサ10における一方の面側から容易に行うことができる。
【0082】
ここで、温度センサ10は、一対の第1端子(21、22)のうちの一方、及び一対の第2端子(31、32)のうちの一方にネジ穴4hを形成し、一対の第1端子(21、22)のうちの他方、及び一対の第2端子(31、32)のうちの他方に通し穴4kを形成してもよい。このようにすれば、所定のネジ4nを使用することにより、複数の温度センサ10を容易に連結することができ、かつ温度センサ10同士を接続するための配線等が不要となる。さらに、一対の第1端子(21、22)と一対の第2端子(31、32)とが平面視で重ならないよう配置すれば、温度センサ10における一方の面側から容易にネジ止めを行うことができる。例えば、センサユニット60について、温度センサ10ごとに校正を行う場合、一方向からネジ4nを取り外すだけで、温度センサ10を1個単位で容易に取り外すことができるため、校正の効率化を図ることができる。
【0083】
本実施の形態1において、温度センサ10は、第1素子20における矩形の領域内に配置された第1内端子21と、第1素子20における矩形の領域外に配置された第1外端子22と、を有している。また、温度センサ10は、第2素子30における矩形の領域内に配置された第2内端子31と、第2素子30における矩形の領域外に配置された第2外端子32と、を有している。したがって、複数の温度センサ10を連結して用いる場合、温度センサ10同士の間隔を狭くすることができ、複数の温度センサ10を連結したセンサユニット60全体の実効面積の拡大が実現可能となる。ところで、第1内端子21及び第2内端子31は、必ずしも全てが矩形の領域内に配置される必要はなく、例えば先端の部分等が矩形の領域外に配置されてもよい。
【0084】
温度センサ10は、第1内端子21及び第1外端子22のうちの一方、及び第2内端子31及び第2外端子32のうちの一方に、ネジ穴4hが形成され、第1内端子21及び第1外端子22のうちの他方、及び第2内端子31及び第2外端子32のうちの他方に、通し穴4kが形成されてもよい。このようにすれば、所定のネジ4nを使用することにより、複数の温度センサ10を容易に連結することができ、1個単位での温度センサ10の取り外しも簡単に行うことができる。
【0085】
温度センサ10は、第1内端子21と第2内端子22とが、基板50におけるある一辺の箇所に、平面視で設定距離Tを隔てて配置されており、第1外端子22と第2外端子32とが、基板50における他の一辺の箇所に、平面視で設定距離Tを隔てて配置されている。したがって、複数の温度センサ10を連結させる際、ある温度センサ10の第1内端子21及び第2内端子22と、他の温度センサ10の第1外端子22及び第2外端子32とを対向させ、相互に連結させることができる。つまり、複数の温度センサ10を、複雑な組み合わせを考えることなく、単純に組み合わせて連結することができるため、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0086】
温度センサ10は、一対の第1端子(21、22)を延伸方向における一端側に配置し、一対の第2端子(31、32)を延伸方向における他端側に配置してもよい。このような端子配置により、温度センサ10は、複数個を真っ直ぐに連結することができる。かかる端子配置の温度センサ10には、図3の温度センサ11について、第1内端子21と第1外端子22の配置を入れ替えた構成、又は第2内端子22と第2外端子32の配置を入れ替えた構成も含まれる。より好ましくは、図3に示す温度センサ11のように、第1内端子21及び第2内端子31を直交方向における一端部に設け、第1外端子22及び第2外端子32を直交方向における他端部に設けるとよい。
【0087】
本実施の形態1のセンサユニット60は、1又は複数の温度センサ11と、1又は複数の温度センサ12と、1又は複数の温度センサ13と、1又は複数の温度センサ14と、を有している。そのため、図1にも例示するように、温度センサ11と温度センサ12と温度センサ13と温度センサ14を組み合わせることで、複数の温度センサ10がひとつながりとなり、全体として平面視矩形状をなすセンサユニット60を構築することができる。よって、センサユニット60全体での実効面積の拡大を図ることができ、検出効率を高めることが可能となる。
【0088】
ところで、温度センサ10及びセンサユニット60は、温度変化によって電気抵抗値が変化する第1素子20及び第2素子30の特性を利用した測温抵抗体である。そのため、温度誤差が少なく、長期に亘って安定した測定を行うことができる。温度センサ10及びセンサユニット60は、振動の少ない良好な環境で用いれば、長期に亘って誤差が±0.15℃程度という安定性が望める。温度センサ10は、0℃付近の温度帯では、熱電対に比べて約1/10の温度誤差での測定を実現することができる。
【0089】
実施の形態2.
図20図26に基づき、本発明の実施の形態2に係る計測システム200について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で符号の一部を省略することがある。計測システム200は、日射熱取得率(SHGC)を測定するためのシステムとして構築されている。計測システム200において、計測システム100と同等の構成部材には同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0090】
図20に例示するように、計測システム200は、測定対象物Mが疑似太陽光源装置8と対向する面に貼り付けられる計測箱61と、計測箱61の少なくとも1つの面に取り付けられたセンサユニット60と、を有している。疑似太陽光源装置8は、内部に光源(図示せず)を有しており、測定対象物Mは、該光源と対向するよう配置される。また、計測システム200は、1又は複数のセンサユニット60からの出力を用いて、測定対象物Mの熱に関する性質を示す特性データを求める管理装置180を有している。
【0091】
図20及び図21に例示する計測システム200は、5つのセンサユニット60を有しており、各センサユニット60は、計測箱61の5つの面それぞれに取り付けられている。計測箱61は、複数のセンサユニット60と共に測定室500に配置されており、測定対象物Mは、測定室500と恒温室600との境界をなす壁部550に設けられた枠部5に取り付けられている。測定対象物Mは、疑似太陽光源装置8に対向するよう配置されており、疑似太陽光源装置8とは反対側の面が計測箱61に貼り付けられている。測定室500には、空調機などの設備機器7が設けられている。
【0092】
疑似太陽光源装置8は、内部の光源から発せられる光を遮断し又は通過させる開閉装置6を有している。開閉装置6は、例えば可動式のシャッターにより構成され、管理装置180により制御される。疑似太陽光源装置8は、光源から発せられる光を開閉装置6により遮断する閉状態と、光源から発せられる光を対象物に照射する開状態と、を有している。
【0093】
計測システム200は、疑似太陽光源装置8の照度を検出する検出装置65と、恒温室600内の温度を計測する温度計測装置66aと、測定室500内の温度を計測する温度計測装置66cと、を有している。検出装置65は、例えば照度センサからなり、検出した照度を示す検出値を管理装置180へ送信する。温度計測装置66a及び温度計測装置66cは、例えばサーミスタからなり、計測した温度を示す計測値を管理装置180へ送信する。
【0094】
ここで、計測箱61の各面について、疑似太陽光が照射される面、つまり測定対象物Mが取り付けられる面を「照射面」、照射面に対向する面を「対向面」、疑似太陽光源装置8側から見て右側の側面を「右側面」、左側の側面を「左側面」、上側の面を「天面」、下側の面を「底面」とする。以下、説明の便宜上、照射面、対向面、右側面、左側面、天面、底面に取り付けられるセンサユニット60を、それぞれ、照射面ユニット60n、対向面ユニット60a、右側面ユニット60b、左側面ユニット60c、天面ユニット60d、底面ユニット60eともいう(図20図23参照)。
【0095】
図22及び図23は、日射熱取得率(SHGC)の測定原理を説明するための模式図であり、計測箱61及びその周辺を側面側から見た構成を概略的に示している。図22の構成は、図20及び図21の計測システム200に対応している。図23の構成は、図20及び図21の計測システム200に、さらに照射面ユニット60nが追加されたものである。つまり、図23の構成では、計測箱61の測定対象物Mが取り付けられる面側にもセンサユニット60が取り付けられている。照射面ユニット60nは、測定対象物Mの四方を囲う枠部5のうちの、少なくとも一方向の部分に配置される。例えば、照射面ユニット60nは、温度センサ10が枠状(平面視でロの字状)に連結されたものであってよく、温度センサ10が平面視でU字状(コ字状)に連結されたものであってよい。また、照射面ユニット60nは、例えば枠部5の上側と下側など、別々に配置された複数の温度センサ10又はセンサユニット60を組み合わせたものであってよい。
【0096】
図22及び図23に示すように、対向面ユニット60aと計測箱61との間には、冷却板62が設けられている。冷却板62は、センサユニット60の感度をあげるために、センサユニット60の表面と裏面の温度差が一定程度となるよう調整するためのものである。計測システム200は、計測箱61内に配置される箱内バッフル63aと、疑似太陽光源装置8と測定対象物Mとの間に配置される光源側バッフル63bと、を有している。箱内バッフル63aと対向面ユニット60aとの間には、箱内(計測箱61内)の温度を制御するためのヒータ67が設けられており、ヒータ67には、送風機からなる箱内ファン67aが付設されている。光源側バッフル63bと壁部550との間には、送風機からなる箱外ファン68が設けられている。箱内バッフル63a及び光源側バッフル63bは、例えば透光性を有するガラスなどで構成され、光を透過させ、気流を制御するものである。箱内バッフル63aは、箱内ファン67aにより送り出される空気がヒータ67を通過し、測定対象物M側へ逃げないようにするためのものである。光源側バッフル63bは、箱外ファン68により送り出される空気が箱内に流れ込むような気流をつくるためのものである。もっとも、計測システム200は、1又は複数のセンサユニット60と管理装置280とにより構成され、計測箱61などは外部の構成であってもよい。
【0097】
〔日射熱取得率(SHGC)の測定原理〕
次に、図23を参照して、SHGCの測定原理について説明する。まず、SHGCは、下記式(6)で表される。式(6)における取得熱量QGainは、一般に、照射日射による室内の取得熱量とされており、下記式(7)で表される。式(7)において、熱量Saは、試験体透過後に室内全面で吸収される日射による熱量である。熱量SL1は、試験体に吸収された後に対流・放射で室内に伝達する熱量である。熱量SL2は、室内からの反射日射が試験体に吸収された後に対流・放射で室内に伝達する熱量である。
【0098】
【数6】
【0099】
【数7】
【0100】
本実施の形態2において、取得熱量QGainは、疑似太陽光源装置8の照射時における箱内の取得熱量であり、熱量Saは、疑似太陽光が測定対象物Mを透過した後に箱内の全面で吸収される熱量である。また、熱量SL1は、測定対象物Mに吸収された後、対流・放射により箱内に伝達する熱量であり、熱量SL2は、箱内からの反射日射が測定対象物Mに吸収された後、対流・放射により箱内に伝達する熱量である。
【0101】
ただし、式(7)は、理論上の演算式であり、実際には下記式(8)の関係から取得熱量QGainを求めるようになっている。式(8)において、貫流熱量Qwは、疑似太陽光源装置8の照射時において、測定対象物Mを貫いて流れる熱の量である。
【0102】
【数8】
【0103】
熱量Q、熱量Q、熱量Q、及び熱量Qは、疑似太陽光源装置8の照射時における熱量である。熱量Qは、冷却板62により除去される熱量であり、対向面ユニット60aからの出力に基づく測定値をもとに演算される。熱量Qは、枠部5から計測箱61に流入する熱量であり、照射面ユニット60nからの出力に基づく測定値をもとに演算される。熱量Qは、計測箱61の周壁4面から計測箱61に流入する熱量であり、右側面ユニット60b、左側面ユニット60c、天面ユニット60d、及び底面ユニット60eからの出力に基づく測定値をもとに演算させる。熱量Qは、ヒータ67により供給される熱量であり、事前設定に基づくものである。
【0104】
貫流熱量Qwは、下記式(9)により表される。ASpは、測定対象物Mにおいて疑似太陽光が照射される面(疑似太陽光源装置8に対向配置された面)の面積であり、予め記憶部83等に記憶されている。箱外温度θneは、疑似太陽光源装置8の照射時における計測箱61周辺の外気の温度であり、温度計測装置66cにより計測される。箱内温度θniは、疑似太陽光源装置8の照射時における箱内の温度であり、温度計測装置66bにより計測される。
【0105】
【数9】
【0106】
熱貫流率U'は、疑似太陽光源装置8の非照射時における熱貫流率であり、具体的には、下記式(10)で表される。式(10)において、箱外温度θ'neは、疑似太陽光源装置8の非照射時における計測箱61周辺の外気の温度である。箱内温度θ'niは、疑似太陽光源装置8の非照射時における箱内の温度である。貫流熱量Q'は、疑似太陽光源装置8の非照射時において、測定対象物Mを貫いて流れる熱の量であり、下記式(11)により表される。
【0107】
【数10】
【0108】
【数11】
【0109】
熱量Q'、熱量Q'、熱量Q'、熱量Q'は、疑似太陽光源装置8の非照射時における熱量である。熱量Q'は、対向面ユニット60aからの出力に基づく測定値をもとに演算される。熱量Q'は、照射面ユニット60nからの出力に基づく測定値をもとに演算される。熱量Q'は、右側面ユニット60b、左側面ユニット60c、天面ユニット60d、及び底面ユニット60eからの出力に基づく測定値をもとに演算させる。熱量Q'は、ヒータ67により供給される熱量であり、事前設定に基づくものである。
【0110】
式(6)における照射熱量QSolorは、疑似太陽光源装置8から照射される疑似太陽光に基づく熱量であり、下記式(12)により表される。式(12)において、照射強度ISolorは、疑似太陽光源装置8の照射強度であり、事前設定に基づくものである。すなわち、照射熱量QSolorは、事前設定により予め記憶部83等に記憶されている。
【0111】
【数12】
【0112】
すなわち、SHGCは、下記式(13)のように表され、式(13)に式(9)を適用すると、下記式(14)のようになる。
【0113】
【数13】
【0114】
【数14】
【0115】
図22のように、計測システム200が照射面ユニット60nを有しない構成を採った場合、SHGCは、下記式(15)により求められる。この場合、式(11)の代わりに式(16)が適用される。もっとも、式(13)又は式(14)のように熱量Qを考慮し、かつ、式(11)のように熱量Q'を考慮した方が、SHGCの測定精度は向上する。
【0116】
【数15】
【0117】
【数16】
【0118】
次に、図24を参照し、管理装置180の機能的構成について説明する。管理装置180は、通信部81と、制御部182と、記憶部83と、入力部84と、表示部85と、を有している。制御部182は、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、光源処理手段182nと、取得処理手段82cと、演算処理手段182dと、を有している。
【0119】
光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の光源を点灯又は消灯させる機能と、開閉装置6を開状態又は閉状態にする機能と、を有している。本実施の形態2の光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度が安定したか否かを判定する機能を有している。光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度の安定を、光源点灯からの経過時間をもとに判定してもよく、検出装置65から送信される検出値をもとに判定してもよい。前者の判定に係る経過時間は、疑似太陽光源装置8のウォームアップに要する時間をもとに設定するとよい。後者の判定については、例えば、検出装置65から送信される検出値が、一定時間の間、予め設定された基準範囲に収まったことを条件としてもよい。
【0120】
光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度が安定したとき、照度の安定を示す安定データを演算処理手段182dへ送信するか、あるいは照度の安定を示す安定フラグを立てる。また、光源処理手段182nは、疑似太陽光源装置8の照度が安定したとき、開閉装置を開状態にする。演算処理手段182dは、光源処理手段182nから安定データを受信した後、あるいは安定フラグが立っていることを確認した後に、中継装置70からの測定値の逐次取得を開始する。
【0121】
演算処理手段182dは、日射熱取得率(SHGC)の演算に係る処理を実行する。より具体的に、演算処理手段182dは、疑似太陽光源装置8の非照射時において、熱量Q'、熱量Q'、及び熱量Q'(計測システム200が照射面ユニット60nを含む場合に限る)を求める。そして、演算処理手段182dは、求めた熱量Q'、熱量Q'、熱量Q'と、記憶部83等に記憶された熱量Q'とを式(11)に適用して、貫流熱量Q'を求める。さらに、演算処理手段182dは、箱外温度θ'neを温度計測装置66cから取得すると共に、箱内温度θ'niを温度計測装置66bから取得し、記憶部83等から試料面積ASpを取得し、これらを貫流熱量Q'と共に式(10)に適用して熱貫流率U'を求める。
【0122】
また、演算処理手段182dは、疑似太陽光源装置8の照射時において、箱外温度θneを温度計測装置66cから取得すると共に、箱内温度θniを温度計測装置66bから取得し、記憶部83等から試料面積ASpを取得し、これらを熱貫流率U'と共に式(9)に適用して貫流熱量Qwを求める。さらに、演算処理手段182dは、熱量Q、熱量Q、及び熱量Q(計測システム200が照射面ユニット60nを含む場合に限る)を求める。そして、演算処理手段182dは、求めた貫流熱量Qw、熱量Q、熱量Q、熱量Qと、記憶部83等に記憶された熱量Q及び照射熱量QSolorとを式(13)に適用して、SHGCを求める。
【0123】
もっとも、演算処理手段182dによるSHGCの演算手順は、上記の例に限定されない。例えば、演算処理手段182dは、式(14)あるいは、式(14)に式(10)及び式(11)を適用した演算式に基づく処理により、上記の演算のうちの一部をまとめて行うようにしてもよい。演算処理手段182dにおける他の構成は、実施の形態1の演算処理手段82dにおける構成と同様である。
【0124】
制御部182は、CPU又はGPUなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各種機能を実現させる計測処理プログラム183pと、により構成することができる。すなわち、計測処理プログラム183pは、コンピュータとしての制御部182及び記憶部83を、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、光源処理手段182nと、取得処理手段82cと、演算処理手段182dとして機能させるためのプログラムである。もっとも、制御部182の各種機能のうちの一部は、ハードウェアにより構成してもよい。
【0125】
図20及び図21では、計測システム200が、2chソースメータからなる2台の中継装置70と、1chソースメータからなる1台の中継装置70とを有する例を示しているが、これに限定されない。すなわち、中継装置70のチャンネル数や台数は、特に限定されず、各図と同様の機能を発揮する組み合わせであればよく、センサユニット60の数などに併せて調整するとよい。
【0126】
続いて、図25及び図26のフローチャートに基づき、図20図24に例示する計測システムによる日射熱取得率(SHGC)の計測処理方法について説明する。ここでは、計測箱61の各面それぞれに、複数の温度センサ10からなるセンサユニット60が取り付けられた構成を前提に説明する。上述した図19と同等の処理については同一の符号を付し、説明は省略又は簡略化する。まず、図25を参照し、システムの起動から熱貫流率U'を求めるまでの動作の流れを説明する。
【0127】
制御部182は、システムを起動し(ステップS101)、必要に応じてユーザによる設定操作に応じた処理を実行する(ステップS102)。そして、制御部182は、待ち時間が経過すると(ステップS103/Yes)、恒温室600の温度が安定しているかどうかを判定する。例えば、制御部182は、温度計測装置66aから逐次取得する計測値が基準時間の間の安定範囲内に収まっているか否かを判定する。基準時間は予め設定され、安定範囲は動的に設定される。つまり、制御部182は、逐次更新される基準時間において、計測値の変動が許容範囲内に収まっているか否かを判定する(ステップS301)。
【0128】
制御部182は、恒温室600の温度が安定するまで判定処理を繰り返し(ステップS301/No)、恒温室600の温度が安定すると(ステップS301/Yes)、各センサユニット60から中継装置70を介して測定値を取得する(ステップS302)。制御部182は、各センサユニット60それぞれに係る測定値について、ステップS105と同様、安定性に係る判定を行う(ステップS303)。
【0129】
すなわち、制御部182は、対向面ユニット60aについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2測定値として記録する(ステップS304)。そして、制御部182は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q'、を求める(ステップS305)。また、制御部182は、照射面ユニット60nについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2測定値として記録する(ステップS304)。そして、制御部182は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q'を求める(ステップS305)。さらに、制御部182は、右側面ユニット60b、左側面ユニット60c、天面ユニット60d、及び底面ユニット60eについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2測定値として記録する(ステップS304)。そして、制御部182は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q'を求める(ステップS305)。
【0130】
つまり、制御部182は、全てのセンサユニット60に係る測定値の記録が終わるまで、ステップS302~S304の一連の処理を繰り返し実行する。もっとも、制御部182は、全てのセンサユニット60に係る第1測定値及び第2測定値の記録が終わった後、まとめて熱量Q'、熱量Q'、及び熱量Q'の演算処理を行ってもよい。次いで、制御部182は、熱量Q'、熱量Q'、熱量Q'、及び熱量Q'を式(11)に適用して貫流熱量Q'を求める(ステップS306)。
【0131】
また、制御部182は、箱内温度θ'niを温度計測装置66bから取得すると共に、箱外温度θ'neを温度計測装置66cから取得する(ステップS307)。次いで、制御部182は、箱外温度θ'neから箱内温度θ'niを減算することにより、非照射時温度差(θ'ne-θ'ni)を求める(ステップS308)。
【0132】
そして、制御部182は、貫流熱量Q'と、試料面積ASpと、非照射時温度差(θ'ne-θ'ni)とを式(10)に適用して熱貫流率U'を求める。もっとも、制御部182は、ステップS308の処理を省略し、箱外温度θ'ne及び箱内温度θ'niをそのまま式(10)に適用してもよい。
【0133】
次に、図26を参照し、疑似太陽光源装置8の点灯から演算結果の表示までの動作の流れを説明する。制御部182は、熱貫流率U'の演算が終わると、ステップS301と同様、恒温室600の温度が安定しているかどうかを判定する(ステップS310)。制御部182は、恒温室600の温度が安定するまで判定処理を繰り返し(ステップS310/No)、恒温室600の温度が安定すると(ステップS310/Yes)、疑似太陽光源装置8を点灯させ(ステップS311)、その照度が安定するまで待機する(ステップS312/No)。制御部182は、疑似太陽光源装置8の照度が安定したか否かの判定を、疑似太陽光源装置8のウォームアップ時間をもとに行ってもよく、検出装置65から送信される検出値をもとに行ってもよい。制御部182は、疑似太陽光源装置8の照度が安定すると(ステップS312/Yes)、開閉装置6を開状態にする。これにより、疑似太陽光が測定対象物Mに照射される(ステップS313)。
【0134】
次いで制御部182は、各センサユニット60から中継装置70を介して測定値を取得する(ステップS314)。制御部182は、各センサユニット60それぞれに係る測定値について、ステップS105と同様、安定性に係る判定を行う(ステップS315)。
【0135】
すなわち、制御部182は、対向面ユニット60aについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2測定値として記録する(ステップS316)。そして、制御部182は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q、を求める(ステップS317)。また、制御部182は、照射面ユニット60nについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2測定値として記録する(ステップS316)。そして、制御部182は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Qを求める(ステップS317)。さらに、制御部182は、右側面ユニット60b、左側面ユニット60c、天面ユニット60d、及び底面ユニット60eについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2測定値として記録する(ステップS316)。そして、制御部182は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Qを求める(ステップS317)。
【0136】
つまり、制御部182は、全てのセンサユニット60に係る測定値の記録が終わるまで、ステップS314~S316の一連の処理を繰り返し実行する。もっとも、制御部182は、全てのセンサユニット60に係る第1測定値及び第2測定値の記録が終わった後、まとめて熱量Q、熱量Q、及び熱量Qの演算処理を行ってもよい。
【0137】
また、制御部182は、箱内温度θniを温度計測装置66bから取得すると共に、箱外温度θneを温度計測装置66cから取得する(ステップS318)。次いで、制御部182は、箱外温度θneから箱内温度θniを減算することにより、照射時温度差(θne-θni)を求める(ステップS319)。
【0138】
続いて制御部182は、熱貫流率U'、試料面積ASp、及び照射時温度差(θne-θni)を式(9)に適用して貫流熱量Qwを求める(ステップS320)。そして、制御部182は、貫流熱量Qw、熱量Q、熱量Q、熱量Q、熱量Q、及び照射熱量QSolorを式(13)に適用してSHGCを求める。もっとも、制御部182は、ステップS319の処理を省略し、箱外温度θ'ne及び箱内温度θ'niをそのまま式(13)に適用してもよい。また、式(9)による貫流熱量Qwの演算を省略し、各値を式(14)にそのまま適用してSHGCを求めてもよい(ステップS321)。
【0139】
次に、制御部182は、求めたSHGCなどを含む演算結果の情報を記憶部83に記憶させ、表示部85に表示させる。制御部182は、ユーザによる印刷の指示があった場合、演算結果の情報を紙媒体に印字して、あるいはCSVなどにより出力する(ステップS322)。
【0140】
上記の動作説明は、図25及び図26に付されたステップ番号の順に説明したが、これに限らず、各工程の順序は、SHGCの演算が可能な範囲で適宜変更してもよい。また、制御部182は、上記各種の演算の一部をまとめて行うよう構成してもよい。
【0141】
以上のように、本実施の形態2における計測システム200は、計測箱61と、計測箱61の少なくとも1つの面に取り付けられたセンサユニット60と、センサユニット60からの出力に基づき、計測箱61に取り付けられた測定対象物Mの熱に関する性質を示す情報を求める管理装置180と、を有している。センサユニット60は、実施の形態1において説明したとおり、実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、これを含む計測システム200によれば、熱流やSHGCなどのデータを精度よく求めることができる。計測システム200は、4つ以下のセンサユニット60を有するものであってよいが、5つのセンサユニット60を有し、これらがそれぞれ計測箱61の5つの内面に取り付けられるよう構成するとよい。計測システム200は、6つのセンサユニット60を有し、これらがそれぞれ計測箱61の6つの内面に取り付けられるよう構成すると、より好ましい。計測システム200は、1又は複数のセンサユニット60の代わりに、温度センサ10を有するよう構成してもよい。計測システム200の他の効果等は、上述した実施の形態1の計測システム100と同様である。
【0142】
実施の形態3.
図27図36に基づき、本発明の実施の形態3に係る計測システム300の構成例について説明する。各図では、図面の煩雑さを避ける等の意図で符号の一部を省略することがある。実施の形態3の計測システム300は、日射熱取得率(SHGC)を測定するためのシステムとして構築されており、測定環境下で起こる擾乱の影響を低減させるための擾乱因子除去演算を採り入れている点に特徴がある。
【0143】
すなわち、測定環境下には、擾乱を発生させる様々な要因(設備機器7など)が存在している。そして、発生した擾乱は、温度センサ10又はセンサユニット60に係る測定値の精度に影響し、結果としてSHGCの測定精度を低下させる。そのため、本実施の形態3における計測システム300は、擾乱に係る成分を補正値として数値化し、これを温度センサ10又はセンサユニット60等に係る測定値(仮測定値)に適用することで、熱量演算のための真値を求めるよう構成されている。計測システム100及び200と同等の構成部材には同一の符号を用いて説明は省略又は簡略化する。
【0144】
計測システム300は、測定対象物Mが疑似太陽光源装置8と対向する面に貼り付けられる計測箱61と、計測箱61の少なくとも1つの面に取り付けられたセンサユニット60と、を有している。また、計測システム300は、センサユニット60と同じ空間に配置された1又は複数の擾乱因子測定ユニット90を有している。そして、計測システム300は、1又は複数のセンサユニット60の出力、及び1又は複数の擾乱因子測定ユニット90の出力を用いて、測定対象物Mの熱に関する性質を示す情報を求める管理装置280を有している。もっとも、計測システム300は、1又は複数のセンサユニット60と、1又は複数の擾乱因子測定ユニット90と、管理装置280と、により構成され、計測箱61は外部の構成であってもよい。
【0145】
擾乱因子測定ユニット90は、6面が閉塞され、内部への光を遮断する筐体91と、筐体91の内部に設けられた1又は複数の温度センサ10と、を有している。擾乱因子測定ユニット90の内部に配置される複数の温度センサ10は、ひとつながりに連結され、センサユニット60として構成されている。
【0146】
図27及び図28に例示する計測システム300は、5つのセンサユニット60と、3つの擾乱因子測定ユニット90と、を有している。5つのセンサユニット60は、それぞれ、計測箱61の5つの面に取り付けられている。図27の例において、3つの擾乱因子測定ユニット90は、それぞれ、計測箱61の対向面、側面、天面に対応づけられている。計測箱61の対向面、側面、天面に取り付けられる擾乱因子測定ユニット90を、それぞれ、正面ユニット90A、側方ユニット90B、上方ユニット90Cともいう(図27及び図28参照)。正面ユニット90Aは、温度センサ10又はセンサユニット60が、計測箱61の対向面と平行に配置されている。側方ユニット90Bは、温度センサ10又はセンサユニット60が、計測箱61の右側面及び左側面と平行に配置されている。上方ユニット90Cは、温度センサ10又はセンサユニット60が、計測箱61の天面及び底面と平行に配置されている。
【0147】
次に、図29を参照して、管理装置280の機能的構成について説明する。管理装置180は、通信部81と、制御部282と、記憶部83と、入力部84と、表示部85と、を有している。制御部282は、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、光源処理手段182nと、取得処理手段82cと、演算処理手段282dと、を有している。
【0148】
演算処理手段282dは、SHGCの演算に係る処理を実行するものである。演算処理手段282dは、擾乱因子測定ユニット90から中継装置70を介して取得する測定値(調整値に相当)を用い、温度センサ10又はセンサユニット60から中継装置70を介して取得する測定値(仮測定値)を最適化するための補正値を求める機能を有している。演算処理手段282dは、計測システム300が有する全ての温度センサ10及びセンサユニット60に係る測定値に補正を加えるよう構成してもよく、計測システム300が有する温度センサ10及びセンサユニット60のうちの一部に係る測定値に補正を加えるよう構成してもよい。
【0149】
より具体的に、演算処理手段282dは、下記式(17)に基づき、擾乱因子測定ユニット90に係る測定値(調整値)に、予め設定された補正係数と、枚数換算値と、を乗ずることにより、温度センサ10、センサユニット60、又はセンサユニット群に対応する補正値を求める。ここで、センサユニット群とは、複数のセンサユニット60を組み合わせたもの、あるいは1又は複数の温度センサ10と1又は複数のセンサユニット60とを組み合わせたものである。
【0150】
【数17】
【0151】
例えば、演算処理手段282dは、対向面ユニット60aに対する擾乱因子除去演算と、照射面ユニット60nに対する擾乱因子除去演算と、右側面ユニット60bと左側面ユニット60cと天面ユニット60dと底面ユニット60eとを組み合わせたセンサユニット群に対する擾乱因子除去演算と、を行うよう構成することができる。式(17)の枚数換算値は、対向面ユニット60a及び照射面ユニット60nに対する擾乱因子除去演算において下記式(18)のように表され、センサユニット群に対する擾乱因子除去演算において下記式(19)のように表される。計測箱61の1つの面に1つの温度センサ10が取り付けられる構成の場合、該温度センサ10に対する擾乱因子除去演算において、式(17)の枚数換算値は下記式(20)のように表される。補正係数は、温度センサ10又はセンサユニット60の配置や枚数等、センサユニット群の配置、枚数、組み合わせ等に応じて調整され、設定される。具体的には、例えば、実機を運転し、その出力をグラフに描画して分析し、擾乱が最小となるように補正係数を設定する。その際、グラフ上の任意の区間を定め、該区間における擾乱因子の振幅が数値的に最小となるよう演算処理を繰り返しながら補正係数を決めるとよい。補正係数の設定処理は、全て自動で行うようにしてもよく、一部を手動で行うようにしてもよい。
【0152】
【数18】
【0153】
【数19】
【0154】
【数20】
【0155】
そして、演算処理手段282dは、下記式(21)に基づき、温度センサ10又はセンサユニット60等に係る測定値(仮測定値)から、求めた補正値を減ずることにより、擾乱因子が除去された測定値の真値を求めるよう構成されている。
【0156】
【数21】
【0157】
演算処理手段282dによる擾乱因子除去演算、つまり補正値及び真値の演算手法については、その一例を、図33及び図34のフローチャートを参照しつつ後述する。演算処理手段282dにおける他の構成は、実施の形態2の演算処理手段182dにおける構成と同様である。
【0158】
計測システム300が有する擾乱因子測定ユニット90の数は、各図の例に限定されない。例えば、計測システム300は、右側面に対応づけられた擾乱因子測定ユニット90と、左側面に対応づけられた擾乱因子測定ユニット90とを、個別に有する構成を採ってもよい。計測システム300は、1つ又は2つの擾乱因子測定ユニット90を有するよう構成してもよく、4つ以上の擾乱因子測定ユニット90を有するよう構成してもよい。計測システム300は、4つ以下のセンサユニット60を有するものであってよいが、5つのセンサユニット60を有し、これらがそれぞれ計測箱61の5つの内面に取り付けられるよう構成するとよい。計測システム300は、6つのセンサユニット60を有し、これらがそれぞれ計測箱61の6つの内面に取り付けられるよう構成すると、より好ましい。計測システム300は、1又は複数のセンサユニット60の代わりに、温度センサ10を有するよう構成してもよい。
【0159】
制御部282は、CPU又はGPUなどの演算装置と、こうした演算装置と協働して上記又は下記の各種機能を実現させる計測処理プログラム283pと、により構成することができる。すなわち、計測処理プログラム283pは、コンピュータとしての制御部182及び記憶部83を、入力処理手段82aと、出力処理手段82bと、光源処理手段182nと、取得処理手段82cと、演算処理手段282dとして機能させるためのプログラムである。もっとも、制御部282の各種機能のうちの一部は、ハードウェアにより構成してもよい。
【0160】
次に、図30図32を参照し、擾乱因子除去演算の原理について説明する。図30図32は、測温抵抗体としての温度センサ10に係る測定値から式(1)により求まる抵抗値の変化を例示したものである。図30図32では、横軸に時間をとり、縦軸に抵抗値をとっている。
【0161】
図30は、温度センサ10に安定した疑似太陽光を一定時間照射した後、その照射を中止して一定時間が経過するまでの、温度センサ10の抵抗値の変化、つまり温度変化を例示したグラフである。図30における抵抗値の変化には、測定環境下で発生している擾乱の影響がノイズとして含まれている。特に、領域Zの波形には、擾乱の影響が現れている。
【0162】
図31は、図30に係る温度センサ10と同一環境下(同一空間)に配置した擾乱因子測定ユニット90の温度センサ10につき、図30に係る温度センサ10と同時に測定した抵抗値(測定環境擾乱因子)の変化を例示したグラフである。そして、図30の経時特性データに対し、図31の経時特性データに基づく擾乱因子除去演算を施すと、図32のように、擾乱の影響として現れるノイズが除去されたデータを得ることができる。なお、図32に例示するグラフについて、縦軸の値に1000を足すと、補正後の抵抗値(真値)となる。このように、擾乱因子測定ユニット90を用いて擾乱因子除去演算を行うことにより、高精度な元データが得られ、SHGCを更に精度よく求めることができる。
【0163】
続いて、図33及び図34のフローチャートに基づき、図27図29に例示する計測システムによる日射熱取得率(SHGC)の計測処理方法について説明する。ここでは、計測箱61の各面それぞれに、複数の温度センサ10からなるセンサユニット60が取り付けられた構成を前提に説明する。また、センサユニット60と擾乱因子測定ユニット90との対応づけとして、対向面ユニット60aに関する擾乱因子除去演算に正面ユニット90Aを用い、右側面ユニット60b及び左側面ユニット60cに関する擾乱因子除去演算に側方ユニット90Bを用い、天面ユニット60dに関する擾乱因子除去演算に上方ユニット90Cを用いる例を示す。つまり、ここでは、照射面ユニット60n及び底面ユニット60eに関しては擾乱因子除去演算を行わない例を示す。なお以下、第1正面補正値、第2正面補正値、第1側面補正値、第2側面補正値、第1天面補正値、及び第2天面補正値は、式(17)の「補正値」に対応する。また、第1正面係数、第2正面係数、第1側方係数、第2側方係数、第1上方係数、第2上方係数は、式(17)の「補正係数」に相当する。上述した図25及び図26と同等の処理については同一の符号を付し、説明は省略又は簡略化する。
【0164】
まず、図33を参照し、システムの起動から熱貫流率U'を求めるまでの動作の流れを説明する。制御部282は、ステップS101~S103及びS301の処理を、図25の場合と同様に実行する。制御部282は、恒温室600の温度が安定すると(ステップS301/Yes)、各センサユニット60及び各擾乱因子測定ユニット90から中継装置70を介して測定値を取得する(ステップS401)。制御部282は、各センサユニット60及び各擾乱因子測定ユニット90のそれぞれに係る測定値について、ステップS105と同様、安定性に係る判定を行う(ステップS402)。
【0165】
すなわち、制御部282は、対向面ユニット60aについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録する。また、制御部282は、正面ユニット90Aについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1調整値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2調整値として記録する(ステップS403)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、正面ユニット90Aに係る第1調整値に対し、第1正面係数と、対向面ユニット60aの温度センサ10の数を正面ユニット90Aの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、正面第1補正値を求める。また、制御部282は、式(17)に基づき、正面ユニット90Aに係る第2調整値に対し、第2正面係数と、対向面ユニット60aの温度センサ10の数を正面ユニット90Aの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、正面第2補正値を求める(ステップS404)。次に制御部282は、式(21)に基づき、仮第1測定値から正面第1補正値を減算することにより、真値に相当する第1測定値を求める。また、制御部282は、式(21)に基づき、仮第2測定値から正面第2補正値を減算することにより、真値に相当する第2測定値を求める(ステップS405)。そして、制御部282は、求めた第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q'、を求める(ステップS305)。
【0166】
同様に、制御部282は、右側面ユニット60b及び左側面ユニット60cについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録する。また、制御部282は、側方ユニット90Bについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1調整値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2調整値として記録する(ステップS403)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、側方ユニット90Bに係る第1調整値に対し、第1側方係数と、右側面ユニット60b及び左側面ユニット60cの温度センサ10の数を側方ユニット90Bの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、側面第1補正値を求める。また、制御部282は、式(17)に基づき、側方ユニット90Bに係る第2調整値に対し、第2側方係数と、右側面ユニット60b及び左側面ユニット60cの温度センサ10の数を側方ユニット90Bの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、側面第2補正値を求める(ステップS404)。次に制御部282は、式(21)に基づき、仮第1測定値から側面第1補正値を減算することにより、真値に相当する側面第1測定値を求める。また、制御部282は、式(21)に基づき、仮第2測定値から側面第2補正値を減算することにより、真値に相当する側面第2測定値を求める(ステップS405)。
【0167】
また、制御部282は、天面ユニット60dについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録する。また、制御部282は、上方ユニット90Cについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1調整値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2調整値として記録する(ステップS403)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、上方ユニット90Cに係る第1調整値に対し、第1上方係数と、天面ユニット60dの温度センサ10の数を上方ユニット90Cの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、天面第1補正値を求める。また、制御部282は、式(17)に基づき、上方ユニット90Cに係る第2調整値に対し、第2上方係数と、天面ユニット60dの温度センサ10の数を上方ユニット90Cの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、天面第2補正値を求める(ステップS404)。次に制御部282は、式(21)に基づき、仮第1測定値から天面第1補正値を減算することにより、真値に相当する天面第1測定値を求める。また、制御部282は、式(21)に基づき、仮第2測定値から天面第2補正値を減算することにより、真値に相当する天面第2測定値を求める(ステップS405)。
【0168】
そして、制御部282は、側面第1測定値と、天面第1測定値と、底面ユニット60eに係る第1測定値とを合算し、4側面に係る第1測定値を求める。また、制御部282は、側面第2測定値と、天面第2測定値と、底面ユニット60eに係る第2測定値とを合算し、4側面に係る第2測定値を求める。そして、制御部282は、求めた4側面に係る第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q'を求める(ステップS305)。
【0169】
制御部282は、図20における制御部182と同様の演算により熱量Q'を求める(ステップS305)。つまり、制御部282は、全てのセンサユニット60に係る測定値の記録が終わるまで、ステップS401~S405の一連の処理を繰り返し実行する。もっとも、制御部282は、全てのセンサユニット60に係る第1測定値及び第2測定値の記録が終わった後、まとめて熱量Q、熱量Q、及び熱量Qの演算処理を行ってもよい。制御部282は、ステップS306の処理、ステップS307及びS308の処理、次いでステップS309の処理を、図25の場合と同様に実行する。
【0170】
次に、図34を参照し、疑似太陽光源装置8の点灯から演算結果の表示までの動作の流れを説明する。制御部282は、ステップS310~S313の処理を、図26の場合と同様に実行する。次いで制御部282は、各センサユニット60及び各擾乱因子測定ユニット90から中継装置70を介して測定値を取得する(ステップS501)。制御部282は、各センサユニット60及び各擾乱因子測定ユニット90のそれぞれに係る測定値について、ステップS105と同様、安定性に係る判定を行う(ステップS502)。
【0171】
すなわち、制御部282は、対向面ユニット60aについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録する。また、制御部282は、正面ユニット90Aについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1調整値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2調整値として記録する(ステップS503)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、正面ユニット90Aに係る第1調整値に対し、第1正面係数と、対向面ユニット60aの温度センサ10の数を正面ユニット90Aの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、正面第1補正値を求める。また、制御部282は、式(17)に基づき、正面ユニット90Aに係る第2調整値に対し、第2正面係数と、対向面ユニット60aの温度センサ10の数を正面ユニット90Aの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、正面第2補正値を求める(ステップS504)。次に制御部282は、式(21)に基づき、仮第1測定値から正面第1補正値を減算することにより、真値に相当する第1測定値を求める。また、制御部282は、式(21)に基づき、仮第2測定値から正面第2補正値を減算することにより、真値に相当する第2測定値を求める(ステップS505)。そして、制御部282は、求めた第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Qを求める(ステップS317)。
【0172】
同様に、制御部282は、右側面ユニット60b及び左側面ユニット60cについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録する。また、制御部282は、側方ユニット90Bについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1調整値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2調整値として記録する(ステップS503)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、ステップS404と同様に側面第1補正値及び側面第2補正値を求める(ステップS504)。次に制御部282は、式(21)に基づき、ステップS405と同様に側面第1測定値及び側面第2測定値を求める(ステップS505)。また、制御部282は、天面ユニット60dについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録する。制御部282は、上方ユニット90Cについて、第1素子群に係る安定した測定値を第1調整値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を第2調整値として記録する(ステップS503)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、ステップS404と同様に天面第1補正値及び天面第2補正値を求める(ステップS504)。次に制御部282は、式(21)に基づき、ステップS405と同様に天面第1測定値及び天面第2測定値を求める(ステップS505)。そして、制御部282は、側面第1測定値と、天面第1測定値と、底面ユニット60eに係る第1測定値とを合算し、4側面に係る第1測定値を求める。制御部282は、側面第2測定値と、天面第2測定値と、底面ユニット60eに係る第2測定値とを合算し、4側面に係る第2測定値を求める。そして、制御部282は、求めた4側面に係る第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Qを求める(ステップS317)。
【0173】
制御部282は、図21における制御部182と同様の演算により熱量Qを求める(ステップS317)。つまり、制御部282は、全てのセンサユニット60に係る測定値の記録が終わるまで、ステップS501~S505の一連の処理を繰り返し実行する。もっとも、制御部282は、全てのセンサユニット60に係る第1測定値及び第2測定値の記録が終わった後、まとめて熱量Q、熱量Q、及び熱量Qの演算処理を行ってもよい。そして、制御部282は、ステップS318及びS319の処理、ステップS320~S322の処理を図21の場合と同様に実行する。
【0174】
上記の動作説明は、図33及び図34に付されたステップ番号の順に説明したが、これに限らず、各工程の順序は、SHGCの演算が可能な範囲で適宜変更してもよい。また、制御部282は、上記各種の演算の一部をまとめて行うよう構成してもよい。
【0175】
センサユニット60と擾乱因子測定ユニット90との対応づけは、上記の例に限らず、適宜変更してもよい。例えば、制御部282は、照射面ユニット60nに関する擾乱因子除去演算を行うよう構成してもよい。その一例として、制御部282は、照射面ユニット60nについて、第1素子群に係る安定した測定値を仮第1測定値として記録し、第2素子群に係る安定した測定値を仮第2測定値として記録してもよい(ステップS403)。次いで制御部282は、式(17)に基づき、正面ユニット90Aに係る第1調整値に対し、第1正面係数と、照射面ユニット60nの温度センサ10の数を正面ユニット90Aの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、照射面第1補正値を求めてもよい。また、制御部282は、式(17)に基づき、正面ユニット90Aに係る第2調整値に対し、第2正面係数と、照射面ユニット60nの温度センサ10の数を正面ユニット90Aの温度センサ10の数で除した値と、を乗じることにより、照射面第2補正値を求めてもよい(ステップS404)。次に制御部282は、式(21)に基づき、仮第1測定値から照射面第1補正値を減算することにより、真値に相当する第1測定値を求めてもよい。また、制御部282は、式(21)に基づき、仮第2測定値から照射面第2補正値を減算することにより、真値に相当する第2測定値を求めてもよい(ステップS405)。そして、制御部282は、記録した第1測定値及び第2測定値を式(1)、式(3)~式(5)に適用し、ステップS108の処理と同様に熱量Q'を求めてもよい(ステップS305)。制御部282は、熱量Qについても同様、例えば正面ユニット90Aに係る調整値を用いて照射面ユニット60nに関する擾乱因子除去演算を行ってもよい(ステップS503~S505)。制御部282は、正面ユニット90Aに係る調整値の代わりに、側方ユニット90B又は上方ユニット90Cに係る調整値を用いるよう構成してもよい。もっとも、計測システム300は、照射面ユニット60nに対応づけて設けられた擾乱因子測定ユニット90を有していてもよい。制御部282は、底面ユニット60eに関しても、正面ユニット90A、側方ユニット90B、又は上方ユニット90C等に係る調整値を用いることにより、擾乱因子除去演算を行ってもよい。
【0176】
以上のように、本実施の形態3における計測システム300は、少なくとも1つのセンサユニット60と、少なくとも1つの擾乱因子測定ユニット90と、を有している。そして、計測システム300は、計測箱61に取り付けられたセンサユニット60からの出力と、擾乱因子測定ユニット90からの出力とに基づき、測定対象物Mの熱に関する性質を示す情報を求める管理装置280を有している。センサユニット60は、実施の形態1において説明したとおり、実効面積が大きく、光の照射に対する感度が高いため、これを含む計測システム300によれば、熱流やSHGCなどのデータを精度よく求めることができる。擾乱因子測定ユニット90は、筐体91の内部に温度センサ10を有するよう構成してもよく、筐体91の内部にセンサユニット60を有するよう構成してもよい。ここで、温度センサ10は、上述したように、測温抵抗体としての感度が従来構成よりも高い。そのため、温度センサ10又はセンサユニット60を含む擾乱因子測定ユニット90を用いることにより、測定室500内の擾乱を精度よく数値化し、演算結果の調整のために用いることができる。すなわち、計測システム300によれば、熱流やSHGCなどの演算処理の高精度化を実現することができる。計測システム200の他の効果等は、上述した実施の形態1の計測システム100と同様である。
【0177】
ここで、上述した実施の形態は、温度センサ、センサユニット、擾乱因子測定ユニット、及び計測システムの具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、センサユニット60における複数の温度センサ10の組み合わせや総数、各温度センサそれぞれの数や配置等は、各図の例に限らず、任意に設定し、変更することができる。各温度センサ11~14における各スリットの本数・配置等は、各図の例に限らず、任意に設計し、変更することができる。各図では、一対の端子が内端子と外端子とにより構成された例を示したが、これに限定されない。一対の端子は、双方がセンサ素子における矩形の領域外に配置されてもよく、この場合、基板50には切欠き部51を設けなくてよい。ただし、複数の温度センサ10を連結させてセンサユニット60を構成する場合、実効面積拡大の観点から、各温度センサ10の間の距離を狭くすべく、一対の端子のうちの一方は、少なくとも一部がセンサ素子における矩形の領域内に配置される構成を採るとよい。計測システム100、200、300は、管理装置80、180、280に上述した中継装置70の機能を持たせ、中継装置70を設けずに構成してもよい。この場合、管理装置80、180、280は、温度センサ10又はセンサユニット60からの出力を用い、測定対象物Mの熱に関する性質を示す特性データを求めるものとなる。
【符号の説明】
【0178】
4b 補助部、4h ネジ穴、4k 通し穴、4m 湾曲部、4n ネジ、5 枠部、6 開閉装置、7 設備機器、8a、8b 導線、10、11~14 温度センサ、20、20A~20D 第1素子、21A~21D 主パターン部、22A~22D 内パターン部、23A~23D 外パターン部、20x 孤立パターン、21 第1内端子、22 第1外端子、30、30A~30D 第2素子、31A~31D 主パターン部、32A~32D 内パターン部、33A~33D 外パターン部、30x 孤立パターン、31 第2内端子、32 第2外端子、41 スリット、42 枝スリット、43 端スリット、44 縁スリット、45 基部、46 導電部、47 補強部、49 ナット、50 基板、51 切欠き部、60 センサユニット、60a 対向面ユニット、60b 右側面ユニット、60c 左側面ユニット、60d 天面ユニット、60e 底面ユニット、60n 照射面ユニット、61 計測箱、62 冷却板、63a 箱内バッフル、63b 光源側バッフル、65 検出装置、66a~66c 温度計測装置、67 ヒータ、67a 箱内ファン、68 箱外ファン、70 中継装置、80、180、280 管理装置、81 通信部、82、182、282 制御部、82a 入力処理手段、82b 出力処理手段、82c 取得処理手段、82d、182d、282d 演算処理手段、182n 光源処理手段、83 記憶部、83p、183p、283p 計測処理プログラム、84 入力部、85 表示部、90 擾乱因子測定ユニット、90A 正面ユニット、90B 側方ユニット、90C 上方ユニット、91 筐体、100、200、300 計測システム、500 測定室、550 壁部、600 恒温室。
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