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特開2024-126209活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、偏光フィルム保護層、およびそれを用いた偏光板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126209
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、偏光フィルム保護層、およびそれを用いた偏光板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20240912BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20240912BHJP
   C08G 65/06 20060101ALI20240912BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 5/5397 20060101ALI20240912BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240912BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240912BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20240912BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240912BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08G59/68
C09D4/00
C09D163/00
C09D7/48
C08G65/06
C08L71/00 Z
C08K5/07
C08K5/3475
C08K5/36
C08K5/5397
C08L63/00 C
B32B27/18 A
B32B27/16 101
B32B27/38
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034442
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 拓
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J002
4J005
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA03W
2H149FA10X
2H149FA12Z
2H149FA51X
2H149FA54X
2H149FA58X
2H149FA59X
2H149FB01
2H149FD25
4F100AK53A
4F100BA01
4F100CA07A
4F100CA30A
4F100EH46A
4F100GB41
4F100JB14A
4F100JJ03
4F100JL11
4F100JN01
4F100JN10
4J002CD021
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CH021
4J002CH032
4J002ED059
4J002EE037
4J002EE039
4J002EE059
4J002EH076
4J002EH156
4J002EU177
4J002EU187
4J002EU196
4J002EU239
4J002EV089
4J002EV247
4J002EV298
4J002EV307
4J002EV309
4J002EW048
4J002EW149
4J002EY018
4J002EY028
4J002EZ008
4J002FD057
4J002FD146
4J002FD158
4J002FD159
4J005AA01
4J005AA04
4J005AA07
4J005BA00
4J005BB01
4J036AA01
4J036AB05
4J036AB07
4J036AC05
4J036AD01
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD15
4J036AD21
4J036AF05
4J036AF06
4J036AF08
4J036AJ01
4J036AJ07
4J036AJ08
4J036AJ10
4J036AK02
4J036DA01
4J036EA02
4J036EA04
4J036FA10
4J036FA12
4J036FA14
4J036GA01
4J036GA03
4J036GA22
4J036GA24
4J036GA25
4J036GA26
4J036GA29
4J036HA02
4J036JA01
4J036JA08
4J038DB261
4J038DB262
4J038GA02
4J038JB16
4J038JC32
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA12
4J038PA17
4J038PB08
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】 偏光フィルム保護用に用いた際に、紫外線吸収機能を有し、活性エネルギー線
硬化性に優れ、偏光フィルムとの密着性に優れ、かつ高温高湿条件下においても偏光フィ
ルムの保護性能に優れる活性エネルギー硬化性樹脂組成物、及び活性エネルギー線硬化性
樹脂組成物が硬化した偏光フィルム保護層、その保護層を有する偏光板を提供する。
【解決手段】 環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)、および少なくとも
2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、光酸発生剤(D)、光
ラジカル重合開始剤(E)、光増感剤(F)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で
あって、光酸発生剤(D)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が(D)/(E)
>2、かつ光増感剤(F)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が0.25<
(F)/(E)<3であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)、および少なくとも2つの不飽和
炭化水素基を有する化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、光酸発生剤(D)、光ラジカル重合
開始剤(E)、光増感剤(F)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
光酸発生剤(D)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が(D)/(E)>2、
かつ光増感剤(F)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が0.25<(F)/
(E)<3であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)として、オキセタン化合物(A1
)を含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)として、エポキシ化合物(A2)
を含有することを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ化合物(A2)が芳香環構造および/または脂環構造を有するエポキシ化合物
であることを特徴とする請求項3記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ化合物(A2)の含有量が、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(
A)100質量部に対して51~99質量部であることを特徴とする請求項3記載の活性
エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)が、ラジカル重合性多官能モ
ノマーであることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
紫外線吸収剤(C)がベンゾトリアゾール系化合物またはベンゾフェノン系化合物である
ことを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
光酸発生剤(D)が芳香族ヨードニウム塩もしくは芳香族スルホニウム塩のいずれかであ
ることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
光ラジカル重合開始剤(E)がアシルフォスフォンオキサイド類であることを特徴とする
請求項1記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
光増感剤(F)がアントラセン誘導体もしくはチオキサントン誘導体であることを特徴と
する請求項1記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化して
なることを特徴とする偏光フィルム保護層。
【請求項12】
請求項11に記載の偏光フィルム保護層を含有することを特徴とする偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、偏光フィルム保護層、およびそれを用
いた偏光板に関するものであり、さらに詳しくは、液晶表示装置等に用いられる偏光板を
構成する偏光フィルム用の保護層に好適な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関するも
のである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビ、コンピューターディスプレイ、携帯電話やデジタルカメ
ラ等の画像表示装置として幅広く用いられている。かかる液晶表示装置は、液晶が封入さ
れたガラス基板の両側に偏光板が積層された構成となっており、必要に応じて位相差板等
の各種光学機能フィルムがこれに積層されている。
【0003】
従来偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムよりなる偏光フィルムの少なくとも一
方の面、好ましくは両方の面に保護フィルムを貼り合わせた構成として用いられている。
ここで、偏光フィルムとしては、高ケン化度のポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポ
リビニルアルコールを「PVA」と略記する。)を用いて製膜してなるPVA系フィルム
中にヨウ素等の二色性材料が分散、吸着され、好ましくはさらにホウ酸等の架橋剤によっ
て架橋された、一軸延伸PVA系フィルムが広く用いられている。このような偏光フィル
ムは、一軸延伸PVA系フィルムであるがゆえに、高湿度下においては膨潤しやすくなる
ため、耐湿性や強度を補うことを目的に、偏光フィルムに保護フィルムが貼り合わされる
【0004】
かかる保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレ
フィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が透明性
、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる点で用いられているが、特には
トリアセチルセルロース(TAC)樹脂からなる保護フィルムが広く用いられてきた。
【0005】
そして、これらの保護フィルムは、接着剤によって偏光フィルムと貼り合わされるが、
かかる接着剤としては、親水性表面をもつ偏光フィルムに対する接着性の点から、PVA
系樹脂水溶液、特に偏光フィルムと同様の高ケン化度PVA系樹脂を主体とするPVA系
樹脂水溶液が好ましく用いられている。
【0006】
ところで、近年では、偏光板の薄膜化が求められており、これまで保護フィルムとして
最も一般的に使用されてきたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いずに、エ
ネルギー線硬化性組成物を偏光フィルムにコーティングしたのち、エネルギー線を照射す
ることで保護膜を形成する検討が行われてきた。
【0007】
例えば、特許文献1では、PVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フ
ィルムと、当該偏光フィルムの少なくとも一方側に形成された、活性エネルギー線硬化性
樹脂組成物の硬化物を主成分とする保護膜とを備え、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組
成物が、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する脂環式エポキシ
化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であって、
当該(メタ)アクリロイル基を有する化合物および合開始剤のみからなる硬化物が300
0MPa以上の弾性率を与える(メタ)アクリル系化合物を含有する、偏光板が提案され
ており、耐湿熱性に優れ、さらに薄型軽量化されても偏光フィルムの収縮が抑制された偏
光板を提供できる旨が記載されている。
さらに、近年では偏光板の品質向上のために耐光性の向上が求められており、これを達
成するために偏光フィルム保護層に紫外線吸収機能が求められる傾向にある。例えば保護
層として保護フィルムを用いた場合では、保護フィルム内に紫外線吸収剤を練りこむ方法
などが一般的に使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-164596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記特許文献1では、偏光板の耐湿熱性(耐久性)には着目されているも
のの、活性エネルギー線硬化性組成物から得られる保護膜と偏光フィルムとの密着性は着
目されていない。ここで、一般に、偏光板の耐久性と、保護層と偏光フィルムとの密着性
はトレードオフの関係にあり、耐久性が良好な組成においては密着性が低下する傾向があ
る。実際に、特許文献1の保護膜付き偏光板でも、硬化性樹脂からなる保護膜と偏光フィ
ルムとの密着性は不十分なものであった。さらに、特許文献1には紫外線吸収機能を保護
層に付与するための具体的な解決方法に関する記載はなく、本発明者がさらに検討したと
ころ、紫外線吸収剤を活性エネルギー線硬化性組成物に単純に添加すると、硬化膜の耐久
性や密着性がさらに低下することが判明した。これは紫外線吸収剤によって活性エネルギ
ー線硬化性組成物の光吸収性が下がるためであり、活性エネルギー線硬化性組成物を保護
層として使用する場合に特有の課題である。
【0010】
そこで、本発明ではこのような背景下において、偏光フィルム保護用に用いた際に、紫
外線吸収機能を有し、活性エネルギー線硬化性に優れ、偏光フィルムとの密着性に優れ、
かつ高温高湿条件下においても偏光フィルムの保護性能に優れる活性エネルギー硬化性樹
脂組成物、及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化した偏光フィルム保護層、その
保護層を有する偏光板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、活性エネルギー線硬
化性樹脂組成物に環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)、および少なくと
も2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、光酸発生剤(D)、
光ラジカル重合開始剤(E)、光増感剤(F)を含有させることに加え、(D)と(E)との
含有比率、および(F)と(E)との含有比率を特定範囲に調整することにより、偏光フ
ィルム保護用に用いた際に、偏光フィルムとの密着性に優れ、かつ高温高湿条件下におい
ても偏光フィルムの保護性能に優れる、言い換えると耐湿熱性に優れる活性エネルギー硬
化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、以下の[1]~[12]を、その要旨とする。
環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)、および少なくとも2つの不飽和
炭化水素基を有する化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、光酸発生剤(D)、光ラジカル重合
開始剤(E)、光増感剤(F)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、光酸
発生剤(D)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が(D)/(E)>2、かつ光
増感剤(F)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が0.25<(F)/(E)
<3であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[2] 環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)として、オキセタン化合物
(A1)を含有することを特徴とする[1]に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物

[3] 環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)として、エポキシ化合物(
A2)を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化性
樹脂組成物。
[4] エポキシ化合物(A2)が芳香環構造および/または脂環構造を有するエポキシ
化合物であることを特徴とする[3]に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[5] エポキシ化合物(A2)の含有量が、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性
樹脂(A)100質量部に対して51~99質量部であることを特徴とする[3]または
[4]に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
[6] 少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)が、ラジカル重合性多
官能モノマーであることを特徴とする[1]~[5]いずれかに記載の活性エネルギー線
硬化性樹脂組成物。
[7] 紫外線吸収剤(C)がベンゾトリアゾール系化合物またはベンゾフェノン系化合物
であることを特徴とする[1]~[6]いずれかに記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成
物。
[8] 光酸発生剤(D)が芳香族ヨードニウム塩もしくは芳香族スルホニウム塩のいずれ
かであることを特徴とする[1]~[7]いずれかに記載の活性エネルギー硬化性樹脂組
成物。
[9] 光ラジカル重合開始剤(E)がアシルフォスフォンオキサイド類であることを特徴
とする[1]~[8]いずれかに記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成物。
[10] 光増感剤(F)がアントラセン誘導体もしくはチオキサントン誘導体であること
を特徴とする[1]~[9]いずれかに記載の活性エネルギー硬化性樹脂組成物。
[11] [1]~[10]いずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化
してなることを特徴とする偏光フィルム保護層。
[12] [11]に記載の偏光フィルム保護層を含有することを特徴とする偏光板。
【0013】
また、本発明は、かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化した偏光フィルム保
護層、その保護層を有する偏光板も提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線による硬化性に優れ
、偏光フィルムの保護層とした際に偏光フィルムと良好な密着性を示す。さらに、かかる
保護層を有する偏光板は、耐湿熱性(高温高湿条件下の耐久性)や耐水性、耐冷熱衝撃性
などの耐久性に加え、耐光性にも優れるものである。
【0015】
本発明の活性エネルギー性硬化性組成物が、活性エネルギー線による硬化性に優れ、偏
光フィルムの保護層とした際に偏光フィルムと良好な密着性を示し、かかる保護層を有す
る偏光板が耐湿熱性などの耐久性にも優れる理由を以下に述べる。
まず、本発明の活性エネルギー性硬化性組成物は、硬化時にカチオン重合とラジカル重
合の両方が起こると考えられる。カチオン重合とラジカル重合の重合速度を比べると、ラ
ジカル重合の方が一般的に高い。そのため、先にラジカル重合が進行して保護膜が形成さ
れることで、光酸発生剤から発生した酸の拡散が遅くなり、カチオン重合の進行速度が遅
くなる。その結果、硬化収縮が低減され、密着性が良好となると考えらえる。さらに、カ
チオン重合は光を照射せずとも常温でも後硬化反応が進行するため、最終的に十分な重合
反応が進行し、その結果、形成された保護膜を有する偏光板は耐湿熱性に優れると考えら
れる。また、このように2つの重合反応を併用することで、より低強度の活性エネルギー
線でも十分な重合が進みやすくなることが予想されることから、開始剤や添加剤の種類や
組成比を制御することによって、紫外線吸収剤により紫外線吸収機能を付与した場合でも
十分な硬化性を付与することができ、結果として上記の密着性や耐湿熱性に加えて、実用
的な硬化性と耐光性も両立できたものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである
。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数字または物性値
を含む表現として用いるものとする。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、「硬化性樹脂組成物」と略す場合
がある。)は、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)、および少なくとも
2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)、紫外線吸収剤(C)、光酸発生剤(D)、光
ラジカル重合開始剤(E)、光増感剤(F)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で
あって、光酸発生剤(D)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が(D)/(E)
>2、かつ光増感剤(F)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が0.25<
(F)/(E)<3である。
以下、順に硬化性樹脂組成物の各成分を説明する。
【0018】
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ
)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとは
アクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0019】
<環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)>
本発明で用いられる環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)としては、2
官能以上のオキセタン化合物(A1)、およびエポキシ化合物(A2)を含有することが
好ましい。
【0020】
(2官能以上のオキセタン化合物(A1))
本発明で用いられる2官能以上のオキセタン化合物(A1)としては例えば、3-エチ
ル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4
-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、4,4'-ビス
[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル等があげられる。これ
ら2官能以上のオキセタン化合物(A1)は単独で、もしくは2種以上併せて用いること
ができる。
【0021】
これらのなかでも、容易に入手可能であり、希釈性(低粘度)、相溶性に優れるなどの
点から、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、
3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタ
ン等が好ましく用いられる。
【0022】
また、相溶性や接着性の点から、分子量500以下の室温(25℃)で液状のものが好
ましく用いられる。
【0023】
上記2官能以上のオキセタン化合物(A1)として、具体的には、例えば、市販品の、
アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-221(いずれも東亞合成
社製)を用いることができる。特にはアロンオキセタンOXT-221が好ましい。
【0024】
2官能以上のオキセタン化合物(A1)の官能基数としては、2官能以上であることが
必要であり、好ましくは2~6官能、特に好ましくは2~4官能である。
かかる官能基数が1官能の場合、耐湿熱性が悪化し本発明の効果が発揮されず好ましく
なく、また、多すぎても密着性が低下する傾向がある。一方、かかる含有割合を上記好ま
しい範囲内とすることで、硬化性と密着性のバランスがより良好となる傾向があり、好ま
しい。
【0025】
上記2官能以上のオキセタン化合物(A1)の含有割合は、カチオン硬化性樹脂(A)
全体100質量部に対して、通常1~90質量部、好ましくは1~49質量部、特に好ま
しくは5~45質量部、更に好ましくは15~45質量部である。
かかる含有割合が少なすぎると硬化性が低下しやすい傾向があり、多すぎると偏光フィ
ルムとの密着性が低下する傾向がある。一方、かかる含有割合を上記好ましい範囲内とす
ることで、硬化性と密着性のバランスがより良好となる傾向あり、好ましい。
【0026】
(エポキシ化合物(A2))
本発明で用いられるエポキシ化合物(A2)としては、芳香環構造および/または脂環
構造を有するエポキシ化合物であることが好ましく、例えば、芳香環構造を有するエポキ
シ化合物(A2-1)、脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-2)、芳香環構造およ
び脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-3)が挙げられる。
【0027】
上記芳香環構造を有するエポキシ化合物(A2-1)としては、例えば、フェニルグリ
シジルエーテル、フェノール(エチレンオキシド)変性グリシジルエーテル、アルキルフ
ェノールグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノール型
エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ
樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポ
キシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型
エポキシ樹脂等が挙げられる。
なかでもビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレ
ゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂が特に好ま
しい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビ
スフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型
エポキシ樹脂などが挙げられ、これらビスフェノール構造が混合されたエポキシ樹脂でも
よい。
これらの中でも取扱いが容易である点でビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノ
ールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
上記脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-2)としては、脂環族多価アルコールの
ポリグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂、脂環式環に直接エポキシ基が結合した脂環
式エポキシ化合物等がある。
脂環族多価アルコールのポリグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂としては、ビスフ
ェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック
エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ化合物に水素添加した水添型エポキシ樹脂化合物や1,
6-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノ
ールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂環式環に直接エポキシ基が結合した脂環式エポキシ化合物としては、3',4'-エポ
キシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプ
ロラクトン変性3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサ
ンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、リモネンジオキサ
イド、ジシクロペンタジエンジエポキシド等があげられる。
【0029】
上記芳香環構造および脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-3)としては、例えば
、ジシクロペンタジエン骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂、スチレン-ブタジエン
ブロック共重合体のエポキシ化物等があげられる。
【0030】
上記芳香環構造を有するエポキシ化合物(A2-1)としては、具体的には、市販品の
、jER828、jER1001、jER1004、jER1007、jER806、j
ER157S70(いずれも三菱ケミカル社製)、EOCN-1020(日本化薬社製)
、脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-2)としては、具体的には、市販品の、YX
8000、YX8034(いずれも三菱ケミカル社製)、EP-4088S(ADEKA
社製)、セロキサイド2021P(ダイセル社製)、THI-DE(ENEOS社製)、
芳香環構造および脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-3)としては、具体的には、
市販品の、XD-1000(日本化薬社製)、エポフレンドAT501(ダイセル社製)
等が挙げられる。
【0031】
これらのエポキシ化合物(A2)は単独で用いることもできるし、複数を組み合わせて
用いることもできる。
【0032】
これらの中でも、樹脂組成物に十分な硬化性を付与する点で脂環構造を有するエポキシ
化合物(A2-2)を用いることが好ましく、特に好ましくは脂環式環に直接エポキシ基
が結合した脂環式エポキシ化合物であり、更に好ましくは3',4'-エポキシシクロヘキ
シルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである。
【0033】
エポキシ化合物(A2)の含有するエポキシ基数は通常1個以上であればよく、好まし
くは2個以上、特に好ましくは2~10個、更に好ましくは2~4個である。
かかる官能基数が多すぎると、密着性が低下する傾向がある。一方、かかる含有割合を
上記好ましい範囲内とすることで、硬化性と硬化膜の特性バランスがより良好となる傾向
があり、好ましい。
【0034】
エポキシ化合物(A2)の含有割合は、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂
(A)全体100質量部に対して、通常10~99質量部、好ましくは51~99質量部
、特に好ましくは55~95質量部、更に好ましくは55~85質量部である。
かかる含有割合が少なすぎると偏光フィルムとの密着性が低下する傾向があり、多すぎ
ると硬化性が低下しやすい傾向がある。一方、かかる含有割合を上記好ましい範囲内とす
ることで、硬化性と密着性のバランスがより良好となる傾向があり、好ましい。
【0035】
また、上記脂環構造を有するエポキシ化合物に対する、芳香環構造を有するエポキシ化
合物と芳香環構造および脂環構造を有するエポキシ化合物との合計量の含有割合({(A
2-1)+(A2-3)}/(A2-2)、質量比)は、通常100/0~20/80で
あり、好ましくは100/0~50/50、更に好ましくは100/0~70/30であ
る。
脂環構造を有するエポキシ化合物(A2-2)の含有割合が多くなると、密着性が低下
する傾向がある。一方、かかる含有割合を上記好ましい範囲内とすることで、硬化性と密
着性のバランスがより良好となる傾向があり、好ましい。
【0036】
上記2官能以上のオキセタン化合物(A1)とエポキシ化合物(A2)の含有割合((
A1)/(A2))は、通常1/99~90/10、好ましくは10/90~60/40
、特に好ましくは20/80~49/51である。
かかる2官能以上のオキセタン化合物(A1)の割合が多すぎると密着性が低下する傾
向があり、エポキシ化合物(A2)の割合が多すぎると耐湿熱性が低下する傾向がある。
一方、かかる含有割合を上記好ましい範囲内とすることで、硬化性と密着性のバランスが
より良好となる傾向があり好ましい。
【0037】
<少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)>
本発明で用いられる少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)としては
、ラジカル重合性多官能モノマーであることが好ましい。
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば2官能以上の官能基を有するビニル化
合物、2官能以上の官能基を有する(メタ)アクリル系化合物があげられるが、硬化性に
優れる点で2官能以上の官能基を有する(メタ)アクリル系化合物が特に好ましい。
【0038】
上記2官能以上の官能基を有する(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、2官能
(メタ)アクリル系化合物、3官能以上の(メタ)アクリル系化合物があげられる。
【0039】
かかる2官能(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(
メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ
ールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6
-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペン
タエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ
(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレ
ート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等の
長鎖または分岐鎖構造を有するジ(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノールジ
(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシ
クロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性シクロヘキサ
ンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するジ(メタ)アクリレート;
エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサ
イド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性ビス
フェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メ
タ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート等の芳香環を
有するジ(メタ)アクリレート;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシ
アヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等の複素環構造を有するジ(メ
タ)アクリレート;等があげられる。
【0040】
かかる3官能以上の(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペン
タエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)
アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンポ
リ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)ア
クリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、
カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変
性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタ
エリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリ
トールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)ア
クリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート等のアルキル
変性された構造を有する3官能以上の(メタ)アクリレート、等の長鎖または分岐鎖構造
を有する3官能以上の(メタ)アクリレート;イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ト
リアクリレート等の環構造を有するトリ(メタ)アクリレート;等があげられる。
【0041】
これらの中でも、密着性と耐湿熱性のバランスの点で2官能(メタ)アクリル系化合物
が好ましく、特に好ましくは、長鎖または分岐鎖構造を有するジ(メタ)アクリレート、
脂環構造を有するジ(メタ)アクリレート、複素環構造を有するジ(メタ)アクリレート
であり、更に好ましくは、耐湿熱性がより向上する点で、脂環構造、複素環構造を有する
(メタ)アクリル系化合物である。
【0042】
上記長鎖または分岐鎖構造を有するジ(メタ)アクリレートの中でも、1,4-ブタン
ジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、
グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートが特
に好ましい。
【0043】
上記脂環構造を有するジ(メタ)アクリレートの中でも、シクロヘキサンジメタノール
ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリ
シクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性シクロヘキ
サンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0044】
上記複素環構造を有するジ(メタ)アクリレートの中でも、ジオキサングリコールジ(
メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートが
特に好ましい。
【0045】
また、具体的には、長鎖または分岐鎖構造を有するジ(メタ)アクリレートとしては1
,4-ブタンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製ビスコート#195)、脂
環構造を有するジ(メタ)アクリレートとしてはトリシクロデカンジメタノールジアクリ
レート(共栄社化学社製ライトアクリレートDCP-A)、複素環構造を有するジ(メタ
)アクリレートとしてはジオキサングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製NK
エステルA-DOG)等があげられる。
【0046】
上記少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)の含有量は、(A)+(
B)成分の合計100質量部に対して5~45質量部であることが必要であり、好ましく
は7~43質量部、特に好ましくは10~40質量部、更に好ましくは10~35質量部
である。
かかる含有量が、下限値以下であっても、上限値以上であっても偏光フィルムに対する
密着性が悪化し本発明の効果を発揮できない。一方、含有量を上記好ましい範囲内とする
ことで、偏光フィルムへの密着性に加え硬化性や硬化膜の耐湿熱性などの種々特性がより
向上する傾向があり、好ましい。
なお、(A)と(B)に表される構造を両方有する化合物は、(A)に含まれるものと
してその含有量を計算するものとする。
【0047】
<紫外線吸収剤(C)>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、偏光板フィルム保護層としたときに耐光性
を付与する観点で紫外線吸収剤を含むことを特徴とする。
上記紫外線吸収剤(C)としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブ
チルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イ
ル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベン
ゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1
,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,5-ビス(5′-tert-ブチル-
2′-ベンゾキサゾリル)チオフェン、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-te
rt-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2′-ヒドロキシ-3
′,5′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ
ール、2,2′-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(
1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2′-ヒドロキシ-3′-
sec-ブチル-5′-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾト
リアゾール系化合物;
2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフ
ェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ
ベンゾフェノン-5-スルホン酸3水和物、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェ
ノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジロキシ-2-ヒド
ロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2
′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、1,4-ビス(4-ベンゾイ
ル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタン、2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾ
フェノンなどのベンゾフェノン系化合物;
トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチル
フェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチロキシ)フェノール、
2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシ
フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2
-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシ
フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2
-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2′-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキ
シフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチ
ロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチ
ロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,
3,5-トリアジンなどのトリアジン系化合物;などが挙げられ、好ましくは2-(2-
ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H
-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)
フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フ
ェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,5-ビ
ス(5′-tert-ブチル-2′-ベンゾキサゾリル)チオフェン、2-(2′-ヒド
ロキシ-3′,5′-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール
、2-[2′-ヒドロキシ-3′,5′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]
-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-tert-ブ
チルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリ
アゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2
-(2′-ヒドロキシ-3′-sec-ブチル-5′-tert-ブチルフェニル)ベン
ゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物であることが、他の成分との相溶性向
上および、組成物としたときの硬化性の向上や、得られた保護層の密着性や耐湿熱性バラ
ンスを取りやすい点で好ましく、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(
1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェ
ノールおよび2-[2′-ヒドロキシ-3′,5′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)
フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールであることが特に好ましい。
これら紫外線吸収剤(C)は、単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0048】
<光酸発生剤(D)>
上記光酸発生剤としては、活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じ
る化合物であり、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホ
ニウム塩のようなオニウム塩、鉄-アレン錯体等があげられる。
上記光酸発生剤を使用することにより、オキセタン化合物(A1)の重合反応が十分に
進行し、偏光フィルムとの接着性が向上し、かつ十分な強度を有する保護層となる傾向が
ある。
【0049】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロ
アンチモネート、ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾ
ニウム・ヘキサフルオロボレート等があげられる。
【0050】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(
ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェ
ート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニ
ル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート等があげられる。
【0051】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフル
オロホスフェート、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、トリフ
ェニルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル〔4
-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、4,4'-
ス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4'-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフ
ィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4'-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキ
シ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、7
-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン・ヘキサフルオ
ロアンチモネート、ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム・ヘキサ
フルオロアンチモネート、4,4'-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィ
ド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-
イソプロピルチオキサントン・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フ
ェニルカルボニル-4'-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド・ヘキサフルオ
ロホスフェート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4'-ジフェニル
スルホニオ-ジフェニルスルフィド・ヘキサフルオロアンチモネート、4-(p-ter
t-ブチルフェニルカルボニル)-4'-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルス
ルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等があげられる。
【0052】
上記鉄-アレン錯体としては、例えば、キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)-
ヘキサフルオロアンチモネート、クメン-シクロペンタジエニル鉄(II)-ヘキサフル
オロホスフェート、キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)-トリス(トリフルオロ
メチルスルホニル)メタナイド等があげられる。
上記光酸発生剤(D)は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0053】
これらの中でも、長波長の光源に対して高感度で反応するという点から、芳香族ヨード
ニウム塩、芳香族スルホニウム塩を用いることが好ましく、特に好ましくはジフェニル[
4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(サンアプ
ロ社製CPI-100P)やジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム
・ヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ社製CPI-101A)である。
【0054】
上記光酸発生剤(D)の含有量は、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A
)と少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)の合計量100質量部に対
して0.5~20質量部であることが好ましく、特に好ましくは1~15質量部、更に好
ましくは2~10質量部である。
かかる含有量が多すぎると、溶解性の低下や、耐湿熱性が低下する傾向がある。また、
少なすぎても、硬化が不充分となり、偏光フィルムとの接着性や保護膜の強度が低下する
傾向がある。一方含有量が上記好ましい範囲内であることで、硬化性と耐湿熱性のバラン
スをより向上できる傾向があり、好ましい。
【0055】
<光ラジカル開始剤(E)>
上記光ラジカル開始剤(E)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒド
ロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェ
ニルアセトフェノン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2
-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-
モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチ
ルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1
-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプ
ロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o
-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メ
チル-ジフェニルサルファイド、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカル
ボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N
,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメ
タナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等
のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサント
ン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-
4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4
-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,
4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジ
メトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビ
ス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシル
フォスフォンオキサイド類;等が挙げられる。なお、これら光ラジカル開始剤は、1種の
みが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4
,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4'-ジエチルアミノベ
ンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル
、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イ
ソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサ
ンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0057】
上記光ラジカル開始剤(E)の中でも、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェ
ノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル
、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン
、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンや2,4,6-トリメ
チルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾ
イル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6
-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオ
キサイド類が好ましく、特に好ましくは、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェ
ノン(IGMResins社製Omnirad651)、2,4,6-トリメチルベンゾ
イル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(IGMResins社製TPO)やビス(2
,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Res
ins社製Omnirad819)である。
【0058】
上記光ラジカル開始剤(E)の含有量は、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹
脂(A)と少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)の合計量100質量
部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.3~15質量
部、更に好ましくは0.7~10質量部である。
かかる含有量が多すぎると低分子量成分が多くなり架橋密度が低下し耐湿熱性が低下す
る傾向があり、少なすぎると硬化性に乏しく物性が不安定となる傾向がある。一方含有量
が上記好ましい範囲内であることで、硬化性と耐湿熱性のバランスをより向上できる傾向
があり、好ましい。
【0059】
また反応性を向上させ、硬化物の機械強度や接着強度を向上させるために、光増感剤(
F)を添加することもできる。光増感剤としては、例えば、9,10-ジブトキシアント
ラセン等のアントラセン誘導体;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエ
ーテル、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベン
ゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4
’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾ
フェノン等のベンゾフェノン誘導体;2-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキ
ノン等のアントラキノン誘導体などのカルボニル化合物;2-クロロチオキサントン、2
-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、等のチオ
キサントン誘導体などの有機硫黄化合物;過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジ
アゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等があげられる。これらは単独でもしくは2
種以上併せて用いることができる。なかでも、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導
体を用いることが好ましい。
【0060】
上記光増感剤(F)は、光酸発生剤(D)および光ラジカル開始剤(E)の総量を10
0質量部とした場合に、0.01~30質量部の範囲で含有することが好ましい。光増感
剤の含有量が多すぎると、組成物や、得られる接着剤層が着色する傾向があり、少なすぎ
ると、反応性が低下し、増感効果が得られない傾向がある。一方含有量が上記好ましい範
囲内であることで、増感効果をより向上できる傾向があり、好ましい。
【0061】
上記光増感剤(F)としては、例えば、アントラキュアー UVS-1331、アント
ラキュアー UVS-581(いずれも川崎化成工業社製)、KAYACURE DET
X-S、KAYACURE EPA(いずれも日本化薬社製)が挙げられる。
【0062】
本発明においては、光酸発生剤(D)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)
が(D)/(E)>2であることが必要であり、好ましくは(D)/(E)>3、特に好ましくは
(D)/(E)>4、更に好ましくは(D)/(E)>5である。
かかる値が上記範囲内にあることにより、密着性と耐湿熱性を両立しやすいという効果
を奏することができる。
また(D)/(E)の上限値は通常(D)/(E)≦12、好ましくは(D)/(E)≦10である
【0063】
本発明においては光増感剤(F)と光ラジカル重合開始剤(E)の含有量比(質量比)が0
.25<(F)/(E)<3であることが必要であり、好ましくは0.35<(F)/(E<
2.5、特に好ましくは0.5<(F)/(E)<2、更に好ましくは0.7<(F)/(E)
<1.5である。
かかる値が上記範囲内にあることにより、活性エネルギー線硬化性と密着を両立しやす
いという効果を奏することができる。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、上記各成分以外に、本発明の効果を
損なわない範囲において、環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂以外のビニルエ
ーテル等のカチオン硬化性化合物、単官能の重合性化合物、シランカップリング剤、ポリ
オール類、帯電防止剤、その他の接着剤、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ロジン、ロジ
ンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系
石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、可塑剤
、着色剤、充填剤、老化防止剤、機能性色素等の他の添加剤や、溶剤、紫外線あるいは放
射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。これら
添加剤の配合量は、添加剤毎に適宜設定されるが、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂
組成物全体の30質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは20質量%以下であ
る。
また、上記添加剤の他にも、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の構成成分の製造原料
等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0065】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記各成分を用いて所定割合にて配合
し、混合することにより得られる。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線照射にて硬化するこ
とにより、保護層となるものであり、偏光フィルムを保護するための活性エネルギー線硬
化性樹脂組成物として好適に用いることができるものである。
【0067】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光フィルムに本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化
してなる保護層を有するものであり、詳しくは、偏光フィルムの少なくとも一方の面、好
ましくは両面に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布または貼り合わされ
たものに、活性エネルギー線照射を行なうことで偏光板が形成される。
【0068】
上記偏光フィルムとしては、通常、平均重合度が1,500~10,000、ケン化度
が85~100モル%のPVA系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素-
ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、
2~10倍、好ましくは3~7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
【0069】
上記PVA系樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造さ
れるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフ
ィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含
有していてもよい。また、PVAを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポ
リブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂お
よびPVA誘導体を用いても良い。
【0070】
上記活性エネルギー線には、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ
線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装
置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射もしくは電子線照射による硬化が有利である。
【0071】
上記紫外線照射を行なう際の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯
、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックラ
イト、LEDランプ等が用いられる。
上記紫外線照射の照射量は365nmの積算で、通常2~3000mJ/cm、好ま
しくは10~2000mJ/cmの条件で行われる。
【0072】
特に上記高圧水銀灯の場合は、例えば、通常5~3000mJ/cm、好ましくは5
0~2000mJ/cmの条件で行われる。
また、上記無電極ランプの場合は、例えば、通常2~2000mJ/cm、好ましく
は10~1500mJ/cmの条件で行われる。
【0073】
そして、照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によ
っても異なるが、通常は、数秒~数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。一方、上
記電子線照射の場合には、例えば、50~1000keVの範囲のエネルギーを持つ電子
線を用い、2~50Mradの照射量とするのがよい。
【0074】
また、硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線または電子線等の活性エネルギー
線の照射、あるいは、紫外線または電子線等の活性エネルギー線の照射後に加熱処理を実
施してもよい。例えば、偏光フィルムが耐えられる温度範囲である10~100℃の条件
が好ましい。
【0075】
上記活性エネルギー線(紫外線、電子線等)の照射方向は、任意の適切な方向から照射
することができるが、不均一な硬化を防ぐ点で、硬化性樹脂組成物の塗工面側から照射す
ることが好ましい。
【0076】
本発明の活性エネルギー線組成物は偏光フィルムの保護層として用いられるものである
ことから、本発明の偏光板を製造する際は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
を硬化させる際にさらに別のフィルムを同時に貼り合わせないことを特徴とする。このよ
うに本発明の活性エネルギー線組成物をフィルム同士の貼り合わせに用いることなく硬化
させることで、本発明の硬化物の密着性や耐湿熱性といった、偏光フィルムの保護層とし
て用いられる際に必要な諸物性を最大限に発揮できる傾向にある。
上記に保護層の厚さは、下限が通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さら
に好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、最も好ましくは10μm以上であ
る。本発明の保護層の厚さの下限値が好ましい厚み以上であることで、偏光フィルムの保
護層として十分な耐湿熱性を確保しやすい傾向にある。
一方、上限値は通常30μm以下、好ましくは25μm以下、特に好ましくは20μm
以下、さらに好ましくは15μm以下である。上記厚さの上限値が大きすぎると打ち抜き
加工時の割れ等により偏光板の加工性が低下する傾向がある。
本発明の保護層単独での透過率は、10μm膜厚として、380nmにて通常5~40
%であり、8~30%であることが好ましく、10~25%であることが特に好ましい。
透過率がこの範囲内であることで、偏光板の耐湿熱性と耐光性を両立しやすくなる傾向に
ある。
【0077】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、種々の偏光フィルム保護用に用いると
非常に優れた耐湿熱性を示すものである。
【実施例0078】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えな
い限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
実施例および比較例に先立って、下記に示す活性エネルギー線硬化性組成物の各成分を
用意した。
【0080】
[環状エーテル構造を有するカチオン硬化性樹脂(A)]
〔オキセタン化合物(A1)〕
(A1-1):3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチ
ル}オキセタン;東亞合成社製、商品名「アロンオキセタンOXT-221」(分子内に
オキセタニル基を2個有するオキセタン化合物)
【0081】
〔エポキシ化合物(A2)〕
(A2-1):3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘ
キサンカルボキシレート;ダイセル社製、商品名「セロキサイド2021P」(分子内に
脂環式エポキシ基を2個有する脂環式エポキシ化合物)
【0082】
〔少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)〕
(B-1):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;共栄社化学社製、商品名「
ライトアクリレートDCP-A」)
【0083】
〔紫外線吸収剤(C)〕
(C-1):2-[2-ヒドロキシ-3′,5′-ビス(α,α-ジメチルベンジル)
フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール;BASF社製、商品名「Tinuvin234

(C-2):2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-
フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;BASF
社製、商品名「Tinuvin928」
【0084】
〔光酸発生剤(D)〕
(D-1):ジフェニル〔4-(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウム・ヘキサフル
オロアンチモネート;サンアプロ社製、商品名「CPI-101A」
【0085】
〔光ラジカル重合開始剤(E)〕
(E-1):フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
;IGM Resins社製、商品名「Omnirad819」
【0086】
〔光増感剤(F)〕
(F-1):9,10-ジブトキシアントラセン;川崎化成工業社製、商品名「UVS
-1331」
【0087】
〔その他添加剤(G)〕
(G-1):イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル];信越化学工業
株式会社製、商品名「KBM-9659」
【0088】
〔実施例1、2、比較例1~5〕
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製>
上記各配合成分を、後記の表1に示す割合で配合し、混合することにより活性エネルギ
ー線硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を偏光フィルム保護用硬化性樹脂組成物と
して用いて、以下の通り評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
<偏光フィルムの作製>
60μmのPVAフィルムを、水温30℃の水槽に浸漬しつつ、1.5倍に延伸した。
つぎに、ヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム15g/Lよりなる染色槽(30℃)にて
240秒間浸漬しつつ1.3倍に延伸した。さらに、ホウ酸50g/L、ヨウ化カリウム
30g/Lの組成のホウ酸処理槽(50℃)に浸漬すると共に、同時に3.08倍に一軸
延伸しつつ5分間にわたってホウ酸処理を行った。その後、90℃で乾燥して総延伸倍率
6倍の偏光フィルムを製造した。
【0090】
<偏光板試験片の作製>
上記で調製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を偏光フィルムの片面と離型PET
フィルム(三井化学東セロ社製SPPET3801BU 厚み38μm)の間に挟み、ラ
ミネーターを通すことで塗工した。その後、高圧水銀ランプの取り付けられた紫外線照射
装置にてピーク照度:1,200mW/cm、積算露光量:1,200mJ/cm
波長365nm)で離型PETフィルム面より紫外線照射を行って活性エネルギー線硬化
性樹脂組成物を硬化させて保護層とした(膜厚:15μm)。
偏光フィルムのもう一方の面に、同様の硬化性樹脂組成物を同様の条件で保護層を作成
し、離型PETフィルムをそれぞれ剥離することで、偏光フィルムの両面に活性エネルギ
ー線硬化性樹脂組成物を硬化させた保護層とした偏光板試験片を作製した。
【0091】
<性能評価>
(380nmUV透過率)
上記で調製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を離型PETフィルム(三井化学東
セロ社製SPPET3801BU 厚み38μm)2枚の間に挟み、ラミネーターを通す
ことで塗工した。その後、高圧水銀ランプの取り付けられた紫外線照射装置にてピーク照
度:1,200mW/cm2、積算露光量:1,200mJ/cm2(波長365nm)
で紫外線照射を行って活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化膜とした(膜
厚:10μm)。
上記で作成した硬化膜を離型PETフィルムから剥離して紫外可視分光光度計により測
定し、380nmにおける透過率を求めた。
【0092】
(密着性)
上記で得られた偏光板試験片を、40mm×40mmの大きさに裁断し、感圧接着剤を
介してガラスに貼合した。得られたガラス付き偏光板に2mm間隔にて縦横にカッターで
切込みを入れ100個の碁盤目を作製した後、碁盤目部分にセロハンテープを圧着させ、
テープの端を90°方向にテープを剥離した際の、保護層の残存個数を確認し、下記基準
により評価した。結果を表1に示す。
【0093】
(評価基準)
○:保護層の残存個数が、51~100であった。
△:保護層の残存個数が、1~50であった。
×:保護層の残存個数が、0であった。
【0094】
(耐湿熱性)
上記で得られた偏光板試験片を、40mm×40mmの大きさに裁断し、感圧接着剤を
介してガラスに貼り合わせた。得られたガラス付き偏光板を85℃及び85%の恒温恒湿
器内に120時間放置した後、偏光板の偏光度を自動偏光フィルム測定装置VAP-70
70S(日本分光株式会社製)にて測定した。偏光板の偏光度を下記基準にて評価した。
結果を表2に示す。
【0095】
(評価基準)
〇:120時間後の偏光度が99.8%以上
△:120時間後の偏光度が99.0以上99.8%未満
×:120時間後の偏光度が99.0%未満
【0096】
【表1】
【0097】
上記結果から、実施例1および2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、比較例1~
5に比べて、保護膜としての十分な紫外線吸収特性を有している上に、偏光フィルムへの
密着性および耐湿熱性いずれも優れていることが明白である。紫外線吸収剤を有さない比
較例1では、保護フィルムとの密着性や耐湿熱性は優れるものの、紫外線を透過すること
から偏光板としたときに偏光フィルムが劣化しやすい。比較例2のようにラジカル重合性
を有する化合物のみにて硬化させると、硬化収縮率が大きいため保護層としたときの密着
性に劣る傾向にある。比較例3~5と比較すると、環状エーテル構造を有するカチオン硬
化性樹脂(A)、少なくとも2つの不飽和炭化水素基を有する化合物(B)、紫外線吸収
剤(C)、光酸発生剤(D)、光ラジカル重合開始剤(E)、および光増感剤(F)の組成比が本
願の範囲外であると耐湿熱性に劣る傾向にあることがわかる。これは、光酸発生剤(D)、
光ラジカル重合開始剤(E)、および光増感剤(F)の組成比が一定範囲内であることで、カ
チオン重合とラジカル重合の反応速度を適切なものに制御でき、結果として密着性、耐湿
熱性双方に優れた保護層を形成できるためであると考えられる。
従って、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が特に偏光板用途、特に保護層と
しての用途において非常に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の当該樹脂組成物を硬化した偏光フィルム保護層は偏光フィルムに対する密着性
に優れ、当該保護層を有する偏光板は耐湿熱性に優れるため、液晶表示装置などの画像表
示装置に好適に使用することができる。