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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126240
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】研削装置及び研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/14 20060101AFI20240912BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240912BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240912BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240912BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B24B49/14
B24B7/04 A
B24B55/02 B
B24B55/06
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034496
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 諭
(72)【発明者】
【氏名】後藤 利光
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB92
3C034CA19
3C034CB03
3C043BA03
3C043CC04
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C047FF04
3C047FF11
3C047GG15
3C047HH13
5F057AA39
5F057BA11
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB15
5F057GA04
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で被加工物の加工点の温度を高精度に測定することができる研削装置と、加工点の過熱による被加工物の加工不良を防ぐことができる研削方法を提供すること。
【解決手段】研削装置1は、チャックテーブル10と、粗研削ユニット20及び仕上げ研削ユニット30と、研削水供給ユニット40と、チャックテーブル10と研削ホイール25,35の全部または一部を覆う加工室カバー50と、該加工室カバー50の外側に配置されて該加工室カバー50内の温度を測定する赤外線温度計60とを備える。また、本発明に係る研削方法は、赤外線温度計60によって測定された研削水の温度が閾値を超えると、研削ホイール25,35を上昇させてウェーハWから離間させ、研削水の温度が閾値以内の設定値まで下がると、研削ホイール25,35を下降させてウェーハWの研削を再開する。或いは、研削水の温度が閾値を超えると、研削加工を中止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研削する研削装置であって、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該被加工物を研削する研削ホイールをスピンドルの先端に装着可能な研削ユニットと、
該被加工物と該研削ホイールとの接触領域に研削水を供給する研削水供給ユニットと、
該チャックテーブルと該研削ホイールの全部または一部を覆う加工室カバーと、
該加工室カバーの外側に配置されて該加工室カバー内の温度を測定する赤外線温度計と、
を備え、
該加工室カバーの全部または一部を透明部材で構成し、該透明部材を透過する赤外線の強さを該赤外線温度計が測定して該加工室カバー内の温度を測定することを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該赤外線温度計は、
該研削ホイールの回転によって飛散する該研削水が該加工室カバーに接触する位置の該加工室カバーの外側に配置され、飛散する該研削水の温度を測定することを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該透明部材は、ポリ塩化ビニル樹脂またはアクリル樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項4】
各構成要素を制御する制御ユニットをさらに備え、
該制御ユニットは、
該研削水の温度の閾値を設定する閾値設定部と、
該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値以内か否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項5】
請求項1~4記載の研削装置によって該被加工物を研削する研削方法であって、
該制御ユニットは、
該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値を超えると、該研削ホイールを上昇させて該被加工物から離間させ、
該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値以内の設定値まで下がると、該研削ホイールを下降させて該被加工物の研削を再開することを特徴とする研削方法。
【請求項6】
請求項1~4記載の研削装置によって該被加工物を研削する研削方法であって、
該制御ユニットは、
該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値を超えると、研削加工を中止することを特徴とする研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウェーハなどの被加工物を研削する研削装置及び該研削装置を用いて実施される研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話やパソコン(パーソナルコンピュータ)などの各種電子機器に対して小型・薄型化が要求されていることから、これらの電子機器に用いられている半導体デバイスも小型・薄型化される傾向にある。すなわち、半導体デバイスの製造工程においては、円板状の薄い半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に配列されたストリートと称される分割予定ラインによって多数の矩形領域に区画され、各矩形領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。このように多数のデバイスが形成されたウェーハをダイシング装置で分割予定ラインに沿って切断することによって、複数の半導体チップが形成される。
【0003】
そして、個々の半導体チップの小型化と薄型化を図るため、通常、ウェーハを分割予定ラインに沿って切断する前に該ウェーハの裏面(デバイスが形成された面とは反対側の面)が所定の厚みに研削されている。このウェーハの裏面を研削する研削装置は、高速回転する研削ホイールの研削砥石をウェーハの裏面に押し当てることによってなされるが、この研削によって発生する研削屑の除去と、研削砥石とウェーハの接触面に発生する摩擦熱による研削砥石やウェーハの過熱を防ぐため、研削加工中には研削砥石とウェーハとの接触部に研削水が供給されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、研削加工において、加工条件が不適切であったり、ウェーハが高剛性(高硬度)材料で構成されている場合には、研削砥石とウェーハとの接触部が摩擦熱によって過熱されて高温となり、研削砥石が傷んだり、ウェーハ焼けなどの加工不良が発生する。このため、特許文献2には、ウェーハを支持する支持基台の内部に温度測定ユニットを収容し、この温度測定ユニットによって測定される支持基台の支持面(加工点)の温度が予め定められた閾値を超えると、エラー信号を出力するとともに、加工動作を中止する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-124690号公報
【特許文献2】特開2019-123050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2において提案されているように、被加工物であるウェーハを支持する支持基台を別に設け、この支持基台の内部に、温度センサやその電源である電池、記録部、無線通信装置などによって構成される温度測定ユニットを組み込む必要があるため、支持基台の構造が複雑化するとともに、コストアップを免れない。
【0007】
また、支持基台の内部に収容された温度測定ユニットに、研削屑を含む研削水が飛散して付着するため、温度測定ユニットによる加工点の温度を高精度に測定することができないばかりか、温度測定ユニットの故障を招き易いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な構成でコストアップを招くことなく、被加工物の加工点の温度を高精度に測定することができる研削装置と、加工点の過熱による被加工物の加工不良などを防ぐことができる研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、被加工物を研削する研削装置であって、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該被加工物を研削する研削ホイールをスピンドルの先端に装着可能な研削ユニットと、該被加工物と該研削ホイールとの接触領域に研削水を供給する研削水供給ユニットと、該チャックテーブルと該研削ホイールの全部または一部を覆う加工室カバーと、該加工室カバーの外側に配置されて該加工室カバー内の温度を測定する赤外線温度計と、を備え、該加工室カバーの全部または一部を透明部材で構成し、該透明部材を透過する赤外線の強さを該赤外線温度計が測定して該加工室カバー内の温度を測定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記研削装置によって該被加工物を研削する研削方法であって、該制御ユニットは、該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値を超えると、該研削ホイールを上昇させて該被加工物から離間させ、該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値以内の設定値まで下がると、該研削ホイールを下降させて該被加工物の研削を再開することを特徴とする。ここで、閾値以内の設定値は、閾値よりも低い値に設定されている。
【0011】
さらに、本発明は、前記研削装置によって該被加工物を研削する研削方法であって、該制御ユニットは、該赤外線温度計によって測定された該研削水の温度が該閾値を超えると、研削加工を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る研削装置によれば、赤外線温度計を加工室カバーの外側に配置するだけの簡単な構成によって加工室カバー内の温度(具体的には、研削ホイールの回転に伴う遠心力によって周囲に飛散する研削水の温度)を測定することができ、研削装置の構造の複雑化やコストアップを招くことがない。そして、加工室カバーの外側に配置される赤外線温度計には、研削屑を含む研削水が付着することがないため、該赤外線温度計の故障を招くことなく、加工室内の温度(飛散する研削水の温度)を高精度に測定することができる。
【0013】
本発明に係る研削方法によれば、ウェーハの研削において赤外線温度計によって測定される温度が閾値を超えると、つまり、ウェーハの加工領域が摩擦熱によって過熱状態にあると判断される場合には、研削ホイールを僅かに上昇させてウェーハから僅かに離間させた状態で、該研削ホイールを空転(エアカット)させ、研削水の温度が所定の設定値(<閾値)以内に下がるまで研削ホイールを空転(エアカット)させるようにしたため、研削水の温度が閾値を超えて上昇し続ける事態の発生が防がれ、過熱による加工具(研削砥石)の耐久寿命の低下やウェーハの加工不良などを招くことがない。
【0014】
また、本発明に係る研削方法によれば、ウェーハの研削において赤外線温度計によって測定される温度が閾値を超えると、つまり、ウェーハの加工領域が摩擦熱によって過熱状態にあると判断される場合には、研削加工を中止するようにしたため、研削水の温度が閾値を超えて上昇し続ける事態の発生が防がれ、過熱による加工具(研削砥石)の耐久寿命の低下やウェーハの加工不良などを招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る研削装置の斜視図である。
図2】本発明に係る研削装置要部(粗研削ユニット、チャックテーブル、昇降機構など)をX軸方向から見た側断面図である。
図3図2のA部拡大詳細図である。
図4】本発明に係る研削装置要部(粗研削ユニットと仕上げ研削ユニット、チャックテーブル、ターンテーブル、加工室カバーなど)をY軸方向から見た正断面図である。
図5】本発明に係る研削方法をその工程順に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
[研削装置の構成]
まず、本発明に係る研削装置の構成を図1図4に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0018】
図1に示す研削装置1は、被加工物である薄い円板状のウェーハWを研削する装置であって、回転可能な円盤状のターンテーブル2上に配置された3つのチャックテーブル10と、チャックテーブル10上に保持されたウェーハWを研削する研削ユニットである粗研削ユニット20及び仕上げ研削ユニット30と、チャックテーブル10に保持されたウェーハWの加工領域に研削水を供給する研削水供給ユニット40と、チャックテーブル10とターンテーブル2及び粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の一部を覆う加工室カバー50と、該加工室カバー50の内部に形成された加工室S1,S2内の温度(より詳細には、加工室S1,S2内で飛散する研削水の温度)を非接触で測定する赤外線温度計60と、以上の各構成要素を制御する制御ユニット70を主要な構成要素として備えている。ここで、ウェーハWは、薄い円板状の部材であって、単結晶のシリコン母材で構成されており、その表面(図1においては、下面)には、ICやLSIなどの複数の不図示のデバイスが形成されている。そして、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護されている。
【0019】
なお、研削装置1には、その他の構成要素として、研削加工中のウェーハWの厚みを測定する厚み測定器81,82と、研削加工されたウェーハWを洗浄する洗浄ユニット90と、研削加工前の複数のウェーハWを収納するカセット91と、研削加工後のウェーハWを収納するカセット92と、カセット91から取り出したウェーハWを位置合わせする位置合わせテーブル93と、カセット91,92に対してウェーハWを出し入れするとともに、カセット91から取り出したウェーハWを位置合わせテーブル93へと搬送する搬出入ロボット94と、位置合わせテーブル93において位置合わせされたウェーハWをウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段95と、仕上げ研削領域R3において仕上げ研削されたウェーハWをチャックテーブル10から取り外して洗浄ユニット90へと搬送する第2搬送手段96などが備えられているが、これらについての詳細な説明は省略する。
【0020】
ここで、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30、研削水供給ユニット40、加工室カバー50、赤外線温度計60及び制御ユニット70の構成についてそれぞれ説明する。
【0021】
(チャックテーブル)
3つのチャックテーブル10は、円板状の部材であって、Z軸方向に垂直な中心軸回りに間欠的に回転(公転)するターンテーブル2上に周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。そして、これらのチャックテーブル10は、ターンテーブル2の間欠的な回転によって該ターンテーブル2のZ軸方向に垂直な軸中心回りに角度120°ずつ公転してウェーハ搬出入領域R1と粗研削領域R2及び仕上げ研削領域R3の間を順次移動するとともに、図2及び図4に示す回転機構11によってZ軸方向の垂直な軸中心回りに所定の速度で回転(自転)する。
【0022】
ここで、各チャックテーブル10は、図2及び図4に示すように、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが中央部にそれぞれ組み込まれており、各ポーラス部材10Aの上面は、円板状のウェーハWを吸引保持する保持面を構成している。そして、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0023】
また、図2に示すように、各チャックテーブル10は、傾き調整機構12によって保持面の水平面に対する傾きが調整可能であって、傾き調整機構12は、チャックテーブル10を傾動可能に支持する2つのアクチュエータ13(図2には1つのみ図示)と1つのピボット14を備えている。ここで、2つのアクチュエータ13と1つのピボット14は、周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されており、各アクチュエータ13のロッド13aをモータ15によって上下動させることによって、チャックテーブル10がピボット14を中心として傾動する。なお、図2においては、ターンテーブル2などは図示を省略している。
【0024】
(粗研削ユニットと仕上げ研削ユニット)
粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に並設される状態で垂直に配置されている。ここで、粗研削ユニット20は、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハWの上面(裏面)を粗研削するユニットであり、仕上げ研削ユニット30は、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハの上面(裏面)を仕上げ研削するユニットであって、両者の基本構成は同じである。
【0025】
すなわち、粗研削ユニット20は、図1図2及び図4に示すように、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23(図2及び図4参照)と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24(図2図4参照)と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25(図2図4参照)とを備えている。ここで、研削ホイール25は、図3及び図4に示すように、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石25bによって構成されている。なお、スピンドルモータ22は、制御ユニット70に電気的に接続されている。
【0026】
また、仕上げ研削ユニット30も粗研削ユニット20と同様に、ホルダ31に固定されたスピンドルモータ32と、該スピンドルモータ32によって回転駆動される垂直なスピンドル33(図4参照)と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35とを備えている(図4参照)。ここで、研削ホイール35は、図4に示すように、円板状の基台35aと、該基台35aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石35bによって構成されているが、これらの研削砥石35bは、粗研削ユニット20の研削砥石25bよりも細かい砥粒によって構成されている。なお、スピンドルモータ32は、制御ユニット70に電気的に接続されている。
【0027】
ところで、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、図1に示すように、ベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って垂直に立設された一対のブロック状のコラム101の各-Y軸方向端面(前面)にそれぞれ設けられた昇降機構3によって昇降可能に支持されている。ここで、両昇降機構3の構成は同じであるため、以下、対応する構成要素には同一符号を付して説明する。
【0028】
各昇降機構3は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をそれぞれ独立にZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板4と、該昇降板4の昇降動をガイドするためのガイドレール5をそれぞれ備えている。そして、各昇降板4には、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30がそれぞれ取り付けられている。また、ガイドレール5は、コラム101の前面に垂直に配設されている。
【0029】
そして、各ガイドレール5の横には、回転可能なボールネジ6がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ6の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ7に連結されている。また、ボールネジ6の下端は、軸受8(図2参照)によってコラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ6には、図2に示すように、昇降板4の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設されたナット部材9が螺合している。なお、図2に示すように、ナット部材9には、ボールネジ6と平行に配置された垂直なスケール16の目盛りを光学的に読み取るための読み取り部17が取り付けられている。なお、各サーボモータ7は、制御ユニット70に電気的に接続されている。
【0030】
したがって、以上のように構成された各昇降機構3のサーボモータ7を起動して各ボールネジ6を正逆転させると、各ボールネジ6に螺合するナット部材9(図2参照)が突設された各昇降板4がガイドレール5に沿って昇降するため、該昇降板4に取り付けられた粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30もそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って互いに独立して昇降動する。
【0031】
(研削水供給ユニット)
研削水供給ユニット40は、図1に示すように、研削加工中に粗研削ユニット20の研削砥石25bとウェーハWとの接触領域(加工領域)に研削水を供給する第1研削水供給ユニット41と、仕上げ研削ユニット30の研削砥石35bとウェーハWとの接触領域(加工領域)に研削水を供給する第2研削水供給ユニット42を備えている。本実施形態では、第1研削水供給ユニット41と第2研削水供給ユニット42は、1つ(共通)の研削水供給源43を備えており、この研削水供給源43から延びる配管44,45にそれぞれ設けられた開閉弁V1,V2を開閉操作することによって、研削水供給源43からの研削水を粗研削ユニット20または仕上げ研削ユニット30へと選択的に供給することができる。すなわち、第1研削水供給ユニット41は、共通の研削水供給源43と配管44及び開閉弁V1を含んで構成され、第2研削水供給ユニット42は、研削水供給源43と配管45及び開閉弁V2を含んで構成されている。なお、開閉弁V1,V2は、制御ユニット70に電気的に接続されており、その開閉動作が制御ユニット70によって制御される。
【0032】
ここで、本実施形態では、共通の研削水供給源43から延びる一方の配管44は、図2に示すように、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22の軸心に垂直に形成された供給路22aと、スピンドル23の軸心に垂直に形成された供給路23a、マウント24の中心に形成された円孔24aと該円孔24aから径方向に沿って放射状に形成された複数の水平な供給路24b(図3参照)及び各供給路24bに連通するよう研削ホイール25の基台25aに垂直に形成された複数のノズル25c(図3参照)に選択的に接続される。また、他方の配管45は、仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ32、スピンドル33、マウント34及び研削ホイール35に形成された同様の供給路やノズル(不図示)に選択的に接続される。なお、研削水には、純水が好適に用いられる。
【0033】
(加工室カバー)
加工室カバー50は、図1に破線にて示すように、ターンテーブル2の粗研削領域R2と仕上げ研削領域R3に臨む部分と、粗研削領域R2と仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10と、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の一部(研削ホイール25,35部分)を覆う多角形のケースであって、その内部は、図4に示すように、垂直な仕切り壁51によって加工室S1,S2に区画されている。ここで、一方の加工室S1には、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に保持されたウェーハWを租研削する粗研削ユニット20の一部(研削ホイール25部分)が収容され、他方の加工室S2には、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に保持されたウェーハWを仕上げ研削する粗研削ユニット20の一部(研削ホイール35部分)が収容される。
【0034】
ところで、加工室カバー50は、図4に示すように、平面視多角形の天板50aと、該天板50aの周縁から垂直下方に延びる側板50bと、該側板50bの下端から直角に折り曲げられた底板50cを備えている。
【0035】
(赤外線温度計)
赤外線温度計60は、被測定物から放射される赤外線をレンズで検出素子(サーモパイル)に集光し、検出素子が赤外線を吸収して暖められると、該検出素子が温度に応じた電気信号を出力するため、この電気信号を増幅するとともに、放射率補正を行うことによって被測定物の温度を非接触で測定するものである。本実施形態では、図1及び図4に示すように、加工室カバー50の左右(-X方向と+X方向)の側板50bの外面に取り付けられている。より詳細には、加工室カバー50内の加工室S1,S2において、それぞれ回転する研削ホイール25,35によって周囲に飛散する研削水が加工室カバー50に接触する位置の外側、つまり、加工室カバー50の左右の側板50bの研削ホイール25,35の各研削砥石25b,35bとウェーハWとの接触部の高さ位置の外面に赤外線温度計60がそれぞれ取り付けられている(図4参照)。
【0036】
本実施形態においては、加工室カバー50の左右の側板50bの外面に取り付けられた赤外線温度計60は、各加工室S1,S2内の温度、より具体的には、ウェーハWの研削加工中に周囲に飛散する研削水の温度を測定するものであって、図1図2及び図4に示すように、これらの赤外線温度計60は、制御ユニット70にそれぞれ電気的に接続されている。
【0037】
そして、本実施形態においては、図4に示すように、加工室カバー50の左右の側板50bのうち、赤外線温度計60が取り付けられる箇所には、赤外線が透過可能な透明部材52がそれぞれ組み込まれている。ここで、本実施形態では、透明部材52としては、ポリ塩化ビニル樹脂またはアクリル樹脂が使用されている。なお、本実施形態では、加工室カバー50の左右の側板50bの赤外線温度計60が取り付けられる部分のみを透明部材52で構成したが、加工室カバー50の全体を透明部材で構成してもよい。
【0038】
(制御ユニット)
制御ユニット70は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリなどを備えている。この制御ユニット70は、ウェーハWの研削加工中に赤外線温度計60によって測定される研削水(加工室S1,S2において周囲に飛散する加工水)の温度の閾値を設定する閾値設定部71と、赤外線温度計60によって測定された研削水の温度が閾値以内であるか否かを判定する判定部72を備えている。なお、これらの閾値設定部71と判定部72の具体的な作用については後述する。
【0039】
[研削方法]
次に、以上のように構成された研削装置1を用いて実施される本発明に係る研削方法を図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0040】
ウェーハWを研削加工する際には、図1に示す搬出入ロボット94によってカセット91から加工前の1枚のウェーハWが取り出され、取り出されたウェーハWが位置合わせテーブル93へと移送される。すると、位置合わせテーブル93においては、ウェーハWが位置合わせされ、位置合わせされたウェーハWは、第1搬送手段95によってウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと移送されて該チャックテーブル10上に保護テープTを下にして吸引保持される。すなわち、ウェーハWが載置されたチャックテーブル10のポーラス部材10A(図2及び図4参照)が不図示の吸引源に接続されて該ポーラス部材10Aに負圧が発生するため、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面上に吸引保持される。
【0041】
すると、ターンテーブル2がその垂直な軸中心回りに図1の矢印方向(反時計方向)に角度120°だけ回転してウェーハWと共に粗研削領域R2へと移動する。この粗研削領域R2においては、チャックテーブル10の保持面に保持されたウェーハWの裏面(上面)が粗研削ユニット20によって粗研削される。
【0042】
すなわち、図2及び図4に示す回転機構11によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22が起動されて研削ホイール25が所定の速度(例えば、1000rpm)で回転駆動される(図5のステップS1)。
【0043】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び研削ホイール25(研削砥石25b)がそれぞれ回転している状態で、昇降機構3を駆動して研削ホイール25(研削砥石25b)を-Z軸方向に下降させる(図5のステップS2)。すなわち、サーボモータ7が駆動されてボールネジ6が回転すると、このボールネジ6に螺合するナット部材9(図2参照)が設けられた昇降板4が粗研削ユニット20と共に-Z軸方向に下降する。すると、研削砥石25bの下面(研削面)がウェーハWの上面(裏面)に接触する。このとき、図1に示す第1研削水供給ユニット41の開閉弁V1が開く一方、第2研削水供給ユニット42の開閉弁V2が閉じられ、研削水供給源43からの研削水が配管44と粗研削ユニット20のスピンドルモータ22に形成された供給路22a、スピンドル23に形成された供給路23a、マウント24に形成された円孔24aと供給路24bを通って研削ホイール25の複数のノズル25cからウェーハWに向かって供給される。
【0044】
すると、研削水の供給を受けながら、ウェーハWの上面(裏面)が研削砥石25bによって粗研削され(図5のステップS3)、その厚みが厚み測定器81によって測定されるとともに(図5のステップS4)、加工室S1内の温度、つまり、研削砥石25bとウェーハWとの接触面(加工部)に供給されて遠心力によって周囲に飛散する研削水の温度が赤外線温度計60によって測定される(図5のステップS5)。この研削水の温度の測定においては、研削水から放射される赤外線が加工室カバー50の側板50bの一部に組み込まれた透明部材52(図4参照)を透過して赤外線温度計60に入射するため、該赤外線温度計60によって研削水の温度が正確に測定され、その結果が制御ユニット70へと送信される。
【0045】
すると、制御ユニット70の判定部72は、測定された研削水の温度が閾値設定部71によって設定された閾値(本実施形態では、43℃(研削水の供給温度が23℃である場合))以内であるかを判定する(図5のステップS6)。研削砥石25bとウェーハWとの接触部(加工部)が摩擦熱によって過熱状態にあるために測定された研削水の温度が閾値を超えた場合(ステップS6:No)には、昇降機構3によって研削ホイール25を僅かに上昇させ(ステップS7)、研削砥石25bをウェーハWの上面から僅かに離間させた状態で、研削ホイール25を空転させる(エアカット)。
【0046】
上述のように、研削砥石25bをウェーハWの上面から僅かに離間させた状態で、研削ホイール25を空転させると、研削ホイール25とウェーハWが研削水によって冷却されるために、これらの研削ホイール25とウェーハWの回転に伴う遠心力によって周囲に飛散する研削水の温度が下がる。このような状態で、赤外線温度計60によって測定される研削水の温度が所定の設定値(本実施形態では、40℃)以内に低下したか否かが判定され(ステップS8)、研削水の温度が所定の設定値以内に低下していない場合(ステップS8:No)には、研削水の温度が所定の設定値以内に低下するまで研削ホイール25の空転(エアカット)が継続される。ここで、所定の設定値とは、制御ユニット70の閾値設定部71によって設定された閾値(本実施形態では、43℃)よりも低い温度(本実施形態では、40℃)である。
【0047】
以上のように、ウェーハWの粗研削において赤外線温度計60によって測定される温度が閾値を超えると、つまり、研削砥石25bとウェーハWが摩擦熱によって過熱状態にあると判断される場合には、研削ホイール25を僅かに上昇させて研削砥石25bをウェーハWから僅かに離間させた状態で、研削ホイール25を空転させ、研削水の温度が所定の設定値(<閾値)以内に下がるまで研削ホイール25を空転させるようにしたため、研削水の温度が閾値を超えて上昇し続ける事態の発生が防がれ、過熱による研削砥石25bの耐久寿命の低下やウェーハWの加工不良などを招くことがない。
【0048】
以上の研削ホイール25の空転によって研削水の温度が所定の設定値以内まで低下すると(ステップS8:Yes)、粗研削が再開され、ステップS2~S6の処理が繰り返される。この場合、研削水の温度は閾値よりも低い設定値以内まで下がっているため、ステップS6の判断結果はYesとなり、処理はステップS9へと進む。すなわち、ステップS9においては、図1に示す厚み測定器81によって測定されるウェーハWの厚みが所定の厚みに達したか否か(ウェーハWの粗研削量が所定の値に達したか否か)が判定される(ステップS9)。
【0049】
粗研削によってウェーハWが所定の厚みに達していない場合(ステップS9:No)には、ウェーハWの粗研削が継続され(ステップS2~S10)、ウェーハWが所定厚みまで粗研削された場合(ステップS9:Yes)には、仕上げ研削ユニット30によるウェーハWの仕上げ研削が粗研削と同様になされる。
【0050】
すなわち、図2及び図4に示す回転機構11によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ32が起動されて研削ホイール35が所定の速度(例えば、1000rpm)で回転駆動される(図5のステップS10)。
【0051】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び研削ホイール35(研削砥石35b)がそれぞれ回転している状態で、昇降機構3を駆動して研削ホイール35を-Z軸方向に下降させる(図5のステップS11)。そして、図1に示す第2研削水供給ユニット42の開閉弁V2が開く一方、第1研削水供給ユニット41の開閉弁V1が閉じられ、研削水供給源43からの研削水が配管45と仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ22、スピンドル23、マウント24及び研削ホイール25の各軸心に形成された不図示の供給路を通って研削ホイール35の中心からウェーハWに向かって供給される。
【0052】
すると、研削水の供給を受けながら、ウェーハWの上面(裏面)が研削砥石35bによって仕上げ研削され(図5のステップS12)、その厚みが厚み測定器82によって測定されるとともに(図5のステップS13)、加工室S2内の温度、つまり、研削砥石35bとウェーハWとの接触面(加工部)に供給されて遠心力によって周囲に飛散して加工室カバー50の内壁へと到達する研削水の温度が赤外線温度計60によって測定される(図5のステップS14)。この研削水の温度の測定においても、研削水から放射される赤外線が加工室カバー50の側板50bの一部に組み込まれた透明部材52(図4参照)を透過して赤外線温度計60に入射するため、該赤外線温度計60によって研削水の温度が正確に測定され、その結果が制御ユニット70へと送信される。
【0053】
すると、制御ユニット70の判定部72は、測定された研削水の温度が閾値設定部71によって設定された閾値以内であるかを判定し(図5のステップS15)、研削砥石35bとウェーハWとの接触部(加工部)が摩擦熱によって過熱状態にあるために測定された研削水の温度が閾値を超えた場合(ステップS15:No)には、昇降機構3によって研削ホイール35を僅かに上昇させ(ステップS16)、研削砥石25bをウェーハWの上面から僅かに離間させた状態で、研削ホイール35を空転させる(エアカット)。
【0054】
上述のように、研削砥石35bをウェーハWの上面から僅かに離間させた状態で、研削ホイール35を空転(エアカット)させると、該研削ホイール35とウェーハWが研削水によって冷却されるために、これらの研削ホイール35とウェーハWの回転に伴う遠心力によって周囲に飛散する研削水の温度が下がる。このような状態で、赤外線温度計60によって測定される研削水の温度が所定の設定値(本実施形態では、43℃)以内に低下したか否かが判定され(ステップS17)、研削水の温度が所定の設定値(本実施形態では、40℃)以内に低下していない場合(ステップS17:No)には、研削水の温度が所定の設定値以内に低下するまで研削ホイール35の空転(エアカット)が継続される。ここで、所定の設定値(本実施形態では、40℃)とは、制御ユニット70の閾値設定部71によって設定された閾値(本実施形態では、43℃)よりも低い温度である。
【0055】
以上のように、ウェーハWの仕上げ研削において赤外線温度計60によって測定される温度が閾値を超えると、つまり、研削砥石35bとウェーハWが摩擦熱によって過熱状態にあると判断される場合には、研削ホイール35を僅かに上昇させて研削砥石35bをウェーハWから僅かに離間させた状態で、研削ホイール35を空転させ、研削水の温度が所定の設定値(<閾値)以内に下がるまで研削ホイール35を空転させるようにしたため、研削水の温度が閾値を超えて上昇し続ける事態の発生が防がれ、過熱による研削砥石35bの耐久寿命の低下やウェーハWの研削不良などを招くことがない。
【0056】
以上の研削ホイール35の空転(エアカット)によって研削水の温度が所定の設定値以内まで低下すると(ステップS17:Yes)、仕上げ研削が再開され、ステップS11~S15の処理が繰り返される。この場合、研削水の温度は閾値よりも低い設定値以内まで下がっているため、ステップS15の判断結果はYesとなり、処理はステップS18へと進む。すなわち、ステップS18においては、図1に示す厚み測定器82によって測定されるウェーハWの厚みが所定の厚みに達したか否か(ウェーハWの仕上げ研削量が所定の値に達したか否か)が判定される(ステップS18)。
【0057】
仕上げ研削によってウェーハWが所定の厚みに達していない場合(ステップS18:No)には、ウェーハWの仕上げ研削が継続され(ステップS11~S18)、ウェーハWが所定厚みまで仕上げ研削された場合(ステップS18:Yes)には、昇降機構3によって研削ホイール35が上昇し(ステップS19)、ウェーハWに対する一連の研削加工(粗研削と仕上げ研削)が終了する(ステップS20)。
【0058】
以上のように、本発明に係る研削装置1によれば、赤外線温度計60を加工室カバー50の外側に配置するだけの簡単な構成によって加工室カバー50内の温度(具体的には、研削ホイール25,35の回転に伴う遠心力によって周囲に飛散する研削水の温度)を測定することができ、当該研削装置1の構造の複雑化やコストアップを招くことがない。そして、加工室カバー50の外側に配置される赤外線温度計60には、研削屑を含む研削水が付着することがないため、該赤外線温度計60の故障を招くことなく、加工室S1,S2内の温度(飛散する研削水の温度)を高精度に測定することができる。
【0059】
また、本発明に係る研削装置1を用いて実施される本発明に係る研削方法によれば、ウェーハWの研削において赤外線温度計60によって測定される温度が閾値を超えると、つまり、ウェーハWの加工領域が摩擦熱によって過熱状態にあると判断される場合には、研削ホイール25,35を僅かに上昇させてウェーハWから僅かに離間させた状態で、該研削ホイール25,35を空転させ(エアカット)、研削水の温度が所定の設定値(<閾値)以内に下がるまで研削ホイール25,35を空転させるようにしたため、研削水の温度が閾値を超えて上昇し続ける事態の発生が防がれ、過熱による研削砥石25b,35bの耐久寿命の低下やウェーハWの加工不良などを招くことがない。
【0060】
なお、本実施形態に係る研削方法においては、粗研削或いは仕上げ研削中に赤外線温度計60によって測定される研削水の温度が閾値を超えると、研削ホイール25,35を僅かに上昇させて空転させるようにしたが、研削水の温度が閾値を超えた場合には、研削加工を中止するようにしてもよい。このように、ウェーハWの研削において赤外線温度計60によって測定される温度が閾値を超えると、つまり、ウェーハWの加工領域が摩擦熱によって過熱状態にあると判断される場合には、研削加工を中止することによって、研削水の温度が閾値を超えて上昇し続ける事態の発生が防がれ、過熱による研削砥石25b,35bの耐久寿命の低下やウェーハWの加工不良などを招くことがない。
【0061】
また、以上の実施の形態に係る研削装置1においては、加工水を粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30の各軸中心からウェーハWに向けてそれぞれ供給する方式を採用しているが、チャックテーブル10の側部に配置されたノズルからウェーハWに向けて加工水を側方から供給する方式を採用することもできる。
【0062】
さらに、以上は本発明に係る研削装置として,ウェーハの研削装置を例として説明したが、本発明は、ウェーハ以外の他の任意の被加工物を研削する研削装置に対しても同様に適用可能である。
【0063】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1:研削装置(加工装置)、2:ターンテーブル、3:昇降機構、4:昇降板、
5:ガイドレール、6:ボールネジ、7:サーボモータ、8:軸受、9:ナット部材、
10:チャックテーブル、10A:ポーラス部材、11:回転機構、
13:アクチュエータ、13a:ロッド、14:ピボット、15:モータ、
16:スケール、17:読み取り部、20:粗研削ユニット(研削ユニット)、
21:ホルダ、22:スピンドルモータ、22a:供給路、23:スピンドル、
23a:供給路、24:マウント、24a:円孔、24b:供給路、
25:研削ホイール、25a:基台、25b:研削砥石、25c:ノズル、
30:仕上げ研削ユニット(研削ユニット)、31:ホルダ、32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:マウント、35:研削ホイール、35a:基台、
35b:研削砥石、40:研削水供給ユニット、41:第1研削水供給ユニット、
42:第2研削水供給ユニット、43:研削水供給源、44,45:配管、
50:加工し位置カバー、50a:天板、50b:側板、50c:底板、
51:仕切り壁、52:透明部材、60:赤外線温度計、70:制御ユニット、
71:閾値設定部、72:判定部、81,82:厚み測定器、90:洗浄ユニット、
91,92:カセット、93:位置合わせテーブル、94:搬出入ロボット、
95:第1搬送手段、96:第2搬送手段、100:ベース、101:コラム、
R1:ウェーハ搬出入領域、R2:粗研削領域、R3:仕上げ研削領域、
S1,S2:加工室、T:保護テープ、V1,V2:開閉弁、W:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5