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特開2024-126313半導体装置及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126313
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H01L25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034613
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義信
(72)【発明者】
【氏名】大河原 奎佑
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
(72)【発明者】
【氏名】中村 奏美
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕貴
(57)【要約】
【課題】生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、基板2と、基板2の一面2aに接合されたコントローラチップ(第1の半導体チップ)3と、複数のメモリチップ(第2の半導体チップ)4が接着層A2を介して積層され、基板2の一面2aに接合されたチップ積層体5と、を備え、チップ積層体5は、複数のメモリチップ4が一方向にシフトしたシフト積層部分5Fを有し、シフト積層部分5Fは、スペーサ11によって構成された支持体6によって支持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一面に接合された第1の半導体チップと、
複数の第2の半導体チップが接着層を介して積層され、前記基板の一面に接合されたチップ積層体と、を備え、
前記チップ積層体は、前記複数の第2の半導体チップが一方向にシフトしたシフト積層部分を有し、
前記シフト積層部分は、スペーサによって構成された支持体によって支持されている半導体装置。
【請求項2】
前記スペーサは、熱伝導性を有している請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記支持体は、前記基板の一面と前記チップ積層体のシフト積層部分との間に配置されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記第1の半導体チップと前記チップ積層体のシフト積層部分との間に配置されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記支持体は、前記スペーサが複数積層されたスペーサ積層体によって構成されている請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スペーサ積層体は、前記複数のスペーサが前記チップ積層体における前記シフト積層部分のシフト方向と同じ方向にシフトしたシフト積層部分を有している請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記スペーサ積層体は、前記複数のスペーサが前記チップ積層体における前記シフト積層部分のシフト方向と反対の方向にシフトしたシフト積層部分を有している請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の半導体チップは、前記基板の一面において、前記チップ積層体の前記シフト積層部分と、前記スペーサ積層体の前記シフト積層部分とに囲まれた領域に配置されている請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記スペーサは、熱硬化性樹脂層と、前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する高剛性層とによる2層構成となっている請求項1~8のいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項10】
前記スペーサは、一対の熱硬化性樹脂層によって前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する高剛性層を挟んだ3層構成となっている請求項1~8のいずれか一項記載の半導体装置。
【請求項11】
基板の一面に第1の半導体チップを接合する第1の接合ステップと、
複数の第2の半導体チップを接着層を介して積層し、前記基板の一面にチップ積層体を接合する第2の接合ステップと、を備え、
前記第2の接合ステップの実施にあたって、前記複数の第2の半導体チップを一方向にシフトしながら積層することによってシフト積層部分を形成し、スペーサによって構成された支持体によって当該シフト積層部分を支持する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一態様として、基板上に配置されたコントローラチップ上に半導体チップを積層した構造がある。特許文献1に記載の半導体アセンブリは、いわゆるドルメン構造(或いはトンネル構造)と称される構造を有している。この従来の半導体アセンブリは、基板と、基板上に配置されたコントローラチップと、コントローラチップの上方に配置された複数のメモリチップとを備え、メモリチップが支柱のような支持部材によって支持されている。基板とコントローラチップ、基板とメモリチップ、及びメモリチップ同士は、例えば接着フィルムによる接着層を用いて接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-515306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上述のような半導体装置の分野において、高集積化、小型化、高速化の要求が高まっている。これらの要求を満たすため、半導体装置においては、基板上のメモリチップの積層段数が増加の一途を辿っている。メモリチップの積層段数を増加させる場合、例えばメモリチップを一方向に少しずつシフトさせながら積層する部分(以下、「シフト積層部分」と称す)を設ける手法が考えられる。シフト積層部分を設ける手法によれば、各メモリチップに対するボンディングワイヤの配置が容易となる。また、斜めに積層されたメモリチップの積層体(以下、「チップ積層体」と称す)の積層方向から見て、当該積層体と重なるようにコントローラチップを配置できるため、半導体装置の小型化が図られるという利点もある。
【0005】
一方、シフト積層部分を採用する構成においては、積層段数が増加するほど積層端のメモリチップが基板から離れること、及び複数の接着層が熱伝導のボトルネックとなることで、積層端近くの接着層の濡れ拡がりが不十分となり、接着層内にボイドが生じてしまうことが考えられる。また、接着層への熱の付加にあたって、チップ積層体をコレットで積層方向に押圧する際に、押圧力によってチップ積層体が崩れてしまうことも考えられる。
【0006】
このような問題に対しては、例えば付加する熱を高温にする、コレットによる押圧力を大きくする、熱の付加時間を長くする、といった対策が想定され得る。しかしながら、付加する熱を高温にすると、接着層の発泡や基板の反りなどが発生するおそれがあり、コレットによる押圧力を大きくすると、チップ積層体に過剰な負荷がかかってメモリチップにクラックが発生するおそれがある。したがって、これらの対策では、半導体装置の製造歩留まりが得られにくいという問題がある。また、熱の付加時間を長くすると、製造工程に要する時間が長くなり、半導体装置の生産性が低下してしまうことが考えられる。
【0007】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る半導体装置は、基板と、基板の一面に接合された第1の半導体チップと、複数の第2の半導体チップが接着層を介して積層され、基板の一面に接合されたチップ積層体と、を備え、チップ積層体は、複数の第2の半導体チップが一方向にシフトしたシフト積層部分を有し、シフト積層部分は、スペーサによって構成された支持体によって支持されている。
【0009】
この半導体装置では、複数の第2の半導体チップが一方向にシフトしたシフト積層部分をチップ積層体に設けることにより、各第2の半導体チップに対するボンディングワイヤの配置が容易となる。また、第2の半導体チップの積層段数が多くなった場合に、基板の厚さ方向から見て、チップ積層体と重なるように第1の半導体チップを配置できるため、半導体装置の小型化が図られる。さらに、この半導体装置では、チップ積層体のシフト積層部分がスペーサによって構成された支持体によって支持されている。この支持体は、コレットによる押圧力に対するチップ積層体の支えとして機能すると共に、チップ積層体への伝熱経路の一つとして機能し得る。したがって、接合時の温度、熱の付加時間、コレットによる押圧力を増大させることなく複数の第2の半導体チップの接合を実施でき、接合時の接着層の発泡や基板の反り、第2の半導体チップにおけるクラックの発生などを好適に抑制できる。熱の付加時間を抑えることで、製造工程に要する時間も抑えることができる。以上により、この半導体装置では、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。
【0010】
スペーサは、熱伝導性を有していてもよい。この場合、支持体による伝熱経路の伝熱効率を十分に高めることができる。
【0011】
支持体は、基板の一面とチップ積層体のシフト積層部分との間に配置されていてもよい。このような構成によれば、支持体によってチップ積層体のシフト積層部分をしっかりと支えることができる。また、接合時の熱を支持体を介して基板側からチップ積層体に効率良く伝導できる。
【0012】
支持体は、第1の半導体チップとチップ積層体のシフト積層部分との間に配置されていてもよい。このような構成によれば、支持体によってチップ積層体のシフト積層部分をしっかりと支えることができる。また、第1の半導体チップの厚さの分、スペーサの厚さを削減できる。
【0013】
支持体は、スペーサが複数積層されたスペーサ積層体によって構成されていてもよい。この場合、チップ積層体における第2の半導体チップの積層段数が増加した場合であっても、支持体の高さをスペーサの積層段数によって容易に調整できる。
【0014】
スペーサ積層体は、複数のスペーサがチップ積層体におけるシフト積層部分のシフト方向と同じ方向にシフトしたシフト積層部分を有していてもよい。この場合、チップ積層体のシフト積層部分をスペーサ積層体のシフト積層部分によって複数箇所で支持できる。したがって、支持体によってチップ積層体のシフト積層部分を一層十分に支えることができる。また、接合時の熱をチップ積層体に一層効率良く伝導できる。
【0015】
スペーサ積層体は、複数のスペーサがチップ積層体におけるシフト積層部分のシフト方向と反対の方向にシフトしたシフト積層部分を有してもよい。この場合、支持体によってチップ積層体のシフト積層部分をしっかりと支えることができる。
【0016】
第1の半導体チップは、基板の一面において、チップ積層体のシフト積層部分と、スペーサ積層体のシフト積層部分とに囲まれた領域に配置されていてもよい。この場合、チップ積層体のシフト積層部分と、スペーサ積層体のシフト積層部分とに囲まれた余剰の領域に第1の半導体チップを配置できるため、半導体装置の小型化が図られる。
【0017】
スペーサは、熱硬化性樹脂層と、熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する高剛性層とによる2層構成となっていてもよい。この場合、高剛性層によってスペーサの剛性を確保しつつ、熱硬化性樹脂層によってスペーサと基板との接合或いはスペーサ同士の接合を実現できる。したがって、チップ積層体のシフト積層部分を支持体によって一層しっかりと支えることができる。
【0018】
スペーサは、一対の熱硬化性樹脂層によって熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する高剛性層を挟んだ3層構成となっていてもよい。この場合、高剛性層によってスペーサの剛性を確保しつつ、一対の熱硬化性樹脂層によってスペーサと基板との接合、スペーサ同士の接合、或いはスペーサとチップ積層体のシフト積層部分との接合を実現できる。したがって、チップ積層体のシフト積層部分を支持体によって一層しっかりと支えることができる。
【0019】
本開示の一側面に係る半導体装置の製造方法は、基板の一面に第1の半導体チップを接合する第1の接合ステップと、複数の第2の半導体チップを接着層を介して積層し、基板の一面にチップ積層体を接合する第2の接合ステップと、を備え、第2の接合ステップの実施にあたって、複数の第2の半導体チップを一方向にシフトしながら積層することによってシフト積層部分を形成し、スペーサによって構成された支持体によって当該シフト積層部分を支持する。
【0020】
この半導体装置の製造方法では、複数の第2の半導体チップが一方向にシフトしたシフト積層部分をチップ積層体に設けることにより、各第2の半導体チップに対するボンディングワイヤの配置が容易となる。また、基板の厚さ方向から見て、チップ積層体と重なるように第1の半導体チップを配置できるため、半導体装置の小型化が図られる。さらに、この半導体装置の製造方法では、チップ積層体のシフト積層部分をスペーサによって構成された支持体によって支持している。この支持体は、コレットによる押圧力に対するチップ積層体の支えとして機能すると共に、チップ積層体への伝熱経路の一つとして機能し得る。したがって、接合時の温度、熱の付加時間、コレットによる押圧力を増大させることなく複数の第2の半導体チップの接合を実施でき、接合時の接着層の発泡や基板の反り、第2の半導体チップにおけるクラックの発生などを好適に抑制できる。熱の付加時間を抑えることで、製造工程に要する時間も抑えることができる。以上により、この半導体装置の製造方法では、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2】(a)は、スペーサの層構成の一例を示す模式的な断面図であり、(b)は、スペーサの層構成の別例を示す模式的な断面図である。
図3】(a)は、図1に示した半導体装置の製造に係る第1の接合ステップを示す模式的な断面図であり、(b)は、後続する第2の接合ステップを示す模式的な断面図である。
図4】本開示の第2実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図5】(a)は、図4に示した半導体装置の製造に係る第1の接合ステップを示す模式的な断面図であり、(b)は、後続する第2の接合ステップを示す模式的な断面図である。
図6】本開示の第3実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図7】(a)は、図6に示した半導体装置の製造に係る第1の接合ステップを示す模式的な断面図であり、(b)は、後続する第2の接合ステップを示す模式的な断面図である。
図8】本開示の第4実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図9】(a)は、図8に示した半導体装置の製造に係る第1の接合ステップを示す模式的な断面図であり、(b)は、後続する第2の接合ステップを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る半導体装置及び半導体装置の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0024】
以下の説明では、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。図中の寸法及び寸法割合は便宜的なものであり、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む。本明細書において段階的に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書における「層」は、平面図として観察したときに、被形成物の全面に形成されている態様、及び被形成物の一部に形成されている態様のいずれも包含される。
[第1実施形態]
【0025】
図1は、本開示の第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。図1に示す半導体装置1Aは、NAND型フラッシュメモリなどのメモリ用半導体パッケージとして構成されている。図1に示すように、半導体装置1Aは、基板2と、コントローラチップ(第1の半導体チップ)3と、複数のメモリチップ(第2の半導体チップ)4を積層してなるチップ積層体5と、複数のボンディングワイヤWと、支持体6とを含んで構成されている。コントローラチップ3、複数のメモリチップ4、及び複数のボンディングワイヤWは、基板2の一面2aに設けられた封止材7によって封止されている。封止材7は、例えばエポキシ樹脂によって構成されている。封止材7の構成材料には、フィラー、硬化剤、硬化促進剤などが含まれていてもよい。また、必要に応じて着色剤、離型剤、改質剤、難燃剤などが含まれていてもよい。
【0026】
基板2は、例えば有機基板である。基板2は、リードフレーム等の金属基板であってもよい。基板2は、一面2a及び他面2bを有している。基板2の一面2a及び他面2bには、ソルダーレジスト等による表面処理が施されている。基板2の他面2bの所定の位置には、半導体装置1Aの実装に用いられる複数の接続端子が設けられている。基板2には、複数の接続端子の位置に対応して、基板2の一面2aから他面2bに至る複数のビアが設けられている。
【0027】
コントローラチップ3は、接着層A1を介して基板2の一面2aに接合されている。コントローラチップ3は、複数のボンディングワイヤW及び基板2のビア内の導電層を介して、基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続されている。コントローラチップ3と基板2の電極との電気的な接続には、ボンディングワイヤWに代えて、バンプ接続(例えばCuバンプとハンダを用いた接続)が用いられていてもよい。
【0028】
接着層A1の厚さは、例えば10~25μm程度となっている。接着層A1の構成材料としては、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後の硬化処理によって完全硬化(Cステージ)状態になるものである。熱硬化性樹脂組成物には、例えばエポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマ(例えばアクリル樹脂)とが含まれている。また、必要に応じて、無機フィラー及び硬化促進剤などが含まれていてもよい。
【0029】
チップ積層体5は、複数のメモリチップ4が接着層A2を介して積層されることによって構成されている。チップ積層体5におけるメモリチップ4の積層段数は、図1の例では8段となっているが、実際には半導体装置1Aに要求されるメモリ容量に応じて設定される。チップ積層体5における最下段のメモリチップ4は、接着層A2を介して基板2の一面2aに接合されている。複数のメモリチップ4のそれぞれは、複数のボンディングワイヤW及び基板2のビア内壁の導電層を介して、基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続されている。チップ積層体5は、基板2の一面2aにおいて、コントローラチップ3から離間した位置に配置されている。本実施形態では、コントローラチップ3とチップ積層体5とは、基板2の厚さ方向から見て、互いに重ならない位置に配置されている。
【0030】
接着層A2の厚さは、例えば3~140μm程度となっている。接着層A2の厚さは、例えば3~20μm程度となっていてもよい。接着層A2の構成材料としては、接着層A1と同様に、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後の硬化処理によって完全硬化(Cステージ)状態になるものである。熱硬化性樹脂組成物には、例えばエポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマ(例えばアクリル樹脂)とが含まれている。また、必要に応じて、無機フィラー及び硬化促進剤などが含まれていてもよい。
【0031】
チップ積層体5は、複数のメモリチップ4が一方向にシフトしたシフト積層部分5Fを有している。本実施形態では、チップ積層体5の全体がシフト積層部分5Fとなっている。シフト積層部分5Fでは、積層方向に隣り合う下段のメモリチップ4に対し、上段のメモリチップ4がコントローラチップ3側にシフトしている。上段のメモリチップ4のシフトにより、下段のメモリチップ4の頂面の一部が基板2と反対側に露出すると共に、上段のメモリチップ4の底面の一部が接着層A2と共に基板2側に露出する。メモリチップ4の頂面の露出領域は、ボンディングワイヤWの接続領域として用いられている。メモリチップ4の底面の接着層A2の露出領域は、支持体6によるチップ積層体5の支持領域として用いられている。
【0032】
支持体6は、チップ積層体5のシフト積層部分5Fを支持する部材である。支持体6は、熱伝導性を有するスペーサ11によって構成されている。本実施形態では、支持体6は、単体のスペーサ11によって構成されている。支持体6は、基板2の厚さ方向について、基板2の一面2aとチップ積層体5のシフト積層部分5Fとの間に配置され、チップ積層体5の中段のメモリチップ4を支持している。
【0033】
スペーサ11の底面は、基板2の一面2aにおいて、コントローラチップ3とチップ積層体5との間の位置に配置され、後述の熱硬化性樹脂層12によって基板2の一面2aに接合されている。スペーサ11の頂面は、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、中間層(図1では5段目)となるメモリチップ4の底面の接着層A2の一部に接合されている。
【0034】
スペーサ11は、2段目以降のメモリチップ4のいずれを支持するものであってもよい。スペーサ11は、積層方向の中間に位置するメモリチップ4を支持してもよく、中間よりも下段側或いは上段側に位置するメモリチップ4を支持してもよい。スペーサ11は、支持しているメモリチップ4の下段のメモリチップ4の側面に対して接触していてもよく、離間していてもよい。
【0035】
本実施形態では、スペーサ11は、図2(a)に示すように、熱硬化性樹脂層12と、熱硬化性樹脂層12よりも高い剛性を有する高剛性層13とによる2層構成となっている。熱硬化性樹脂層12は、例えばダイアタッチフィルム(DAF: Die Attach Film)に相当する部材によって構成されている。熱硬化性樹脂層12は、例えば半硬化(Bステージ)状態を経て、その後の硬化処理によって完全硬化物(Cステージ)状態となり得るものである。熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマ(例えば、アクリル樹脂)とが含まれる。熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、カップリング剤及び硬化促進剤等が更に含まれていてもよい。
【0036】
熱硬化性樹脂層12は、電気伝導性ダイアタッチフィルム(C-DAF: Conductive Die Attach Film)に相当する部材によって構成されていてもよい。この場合、熱硬化性樹脂組成物には、金属粒子が更に含まれ得る。金属粒子は、スペーサ11の熱伝導性の向上にも寄与する。金属粒子としては、例えば銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、スズ、鉛、及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられる。金属粒子は、銀、銅、及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であってもよい。金属粒子は、1種の金属によって構成されていてもよく、2種以上の金属によって構成されていてもよい。金属粒子が2種以上の金属から構成される場合、金属粒子の表面を当該金属粒子とは異なる金属で被覆した金属被覆金属粒子を用いてもよい。
【0037】
金属粒子は、例えば電気伝導率(0℃)が40×10S/m以上である金属、又は熱伝導率(20℃)が250W/m・K以上である金属)から構成される導電性粒子であってもよい。電気伝導率(0℃)が40×10S/m以上である金属としては、金(49×10S/m)、銀(67×10S/m)、銅(65×10S/m)などが挙げられる。熱伝導率(20℃)が250W/m・K以上である金属としては、金(295W/m・K)、銀(418W/m・K)、銅(372W/m・K)などが挙げられる。電気伝導率、熱伝導率、及び酸化耐性の観点から、金属粒子は、銀粒子であってもよい。銀粒子は、例えば銀単独で構成される粒子であってもよく、金属粒子の表面を銀で被覆した銀被覆金属粒子であってもよい。銀被覆金属粒子としては、例えば銀被覆銅粒子などが挙げられる。
【0038】
高剛性層13は、例えばポリイミド層、或いは金属層によって構成されている。高剛性層13は、コントローラチップ3及びメモリチップ4とは異なるダミーの半導体チップ(シリコンチップ)によって構成されていてもよい。金属層としては、例えば銅層、アルミニウム層などを用いることができる。金属層を用いる場合、例えば基板2の構成材料と金属材料との間の光学的なコントラストにより、スペーサ11を基板2の一面2aに配置する際のスペーサ11の視認性を高めることができる。
【0039】
スペーサ11は、図2(b)に示すように、一対の熱硬化性樹脂層12,12によって熱硬化性樹脂層12よりも高い剛性を有する高剛性層13を挟んだ3層構成となっていてもよい。3層構成のスペーサ11を用いる場合、当該スペーサ11の頂面側の熱硬化性樹脂層12は、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、中間層(図1では5段目)となるメモリチップ4の底面の接着層A2の一部に接合される。
【0040】
本実施形態及び後述の第2実施形態~第4実施形態では、図2(a)に示す2層構成のスペーサ11を例示しているが、これらの各実施形態について図2(b)に示す3層構成のスペーサ11に置き換えることが可能である。第3実施形態及び第4実施形態のように、スペーサ11が複数積層されたスペーサ積層体15によって支持体6を構成する場合、2層構成のスペーサ11と3層構成のスペーサ11とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
図3(a)及び図3(b)は、図1に示した半導体装置1Aの製造工程を示す模式的な断面図である。半導体装置1Aを製造するにあたっては、基板2の一面2aにコントローラチップ3を接合する第1の接合ステップS01と、複数のメモリチップ4を接着層A1を介して積層し、基板2の一面2aにチップ積層体5を接合する第2の接合ステップS02とを実施する。以下の説明では、第1の接合ステップS01の後に第2の接合ステップS02を実施する態様を例示するが、第1の接合ステップS01と第2の接合ステップS02とは、いずれを先に実施してもよい。
【0042】
第1の接合ステップS01では、図3(a)に示すように、まず、加熱ステージHに基板2を載置する。次に、基板2の一面2aに接着層A1を介してコントローラチップ3を配置し、加熱ステージHによって接着層A1に熱を付加することで、基板2の一面2aにコントローラチップ3を接合する。接合後、複数のボンディングワイヤW及び基板2のビア内の導電層を介して、コントローラチップ3を基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続する。
【0043】
また、基板2の一面2aに支持体6を配置し、加熱ステージHによって熱硬化性樹脂層12に熱を付加することで、基板2の一面2aにおいてコントローラチップ3と離間した位置に支持体6を接合する(支持体接合ステップ)。基板2の一面2aに対するコントローラチップ3の接合と支持体6の接合とは、いずれを先に実施してもよく、同時に実施してもよい。基板2の一面2aへのコントローラチップ3及び支持体6の接合の際の加熱ステージHの温度は、例えば100℃~140℃、荷重は0.05MPa~0.2MPa、熱及び荷重の付加時間は0.3秒~3.0秒である。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、基板2の一面2aに複数のメモリチップ4を接着層A2を介して積層し、チップ積層体5を形成する。複数のメモリチップ4の積層の際、積層方向に隣り合う下段のメモリチップ4に対し、上段のメモリチップ4をコントローラチップ3側にシフトさせ、チップ積層体5の全体にシフト積層部分5Fを形成する。このとき、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、所定段のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部をスペーサ11の頂面に載置し、シフト積層部分5Fを支持体6によって支持する。
【0045】
第2の接合ステップS02では、チップ積層体5の形成の後、加熱ステージHによってチップ積層体5の各接着層A2に熱を付加することで、基板2の一面2aに最下段のメモリチップ4を接合すると共に、積層方向に隣り合うメモリチップ4,4同士を互いに接合する。接合の際、加熱ステージHから基板2を介してチップ積層体5に付加される熱は、下段のメモリチップ4から上段のメモリチップ4に向かって順に伝熱する(図3(b)の矢印F1)。本実施形態では、チップ積層体5のシフト積層部分5Fが支持体6によって支持されているため、加熱ステージHから基板2を介してチップ積層体5に付加される熱は、支持体6を伝熱した後、当該支持体6が支持する中段のメモリチップ4から上段及び下段のメモリチップ4に向かって順に伝熱する(図3(b)の矢印F2)。
【0046】
接合にあたっては、最上段のメモリチップ4にコレット(不図示)を当接し、当該コレットによってチップ積層体5の各メモリチップ4に基板2の厚さ方向の押圧力を付与してもよい。この場合、コレットからチップ積層体5に付与される押圧力に対し、各メモリチップ4が下段のメモリチップ4によって支持されることに加え、シフト積層部分5Fを支持する支持体6が支柱として機能する。したがって、複数のメモリチップ4が一方向にシフトしたシフト積層部分5Fを有するチップ積層体5においても、コレットから付与される押圧力に対してチップ積層体5がしっかりと支持される。
【0047】
基板2の一面2aへの最下段のメモリチップ4の接合及び積層方向に隣り合うメモリチップ4,4同士の接合の際の加熱ステージHの温度は、コントローラチップ3及び支持体6の接合の際と同様、例えば100℃~140℃、荷重は0.05MPa~0.2MPa、熱及び荷重の付加時間は0.3秒~3.0秒である。
【0048】
チップ積層体5の接合の後、複数のボンディングワイヤW及び基板2のビア内の導電層を介して、各メモリチップ4を基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続する。ボンディングワイヤWの接合後、基板2の一面2aに封止材7を形成し、コントローラチップ3、複数のメモリチップ4、及び複数のボンディングワイヤWを封止する。これにより、図1に示した半導体装置1Aが得られる。
【0049】
以上説明したように、半導体装置1Aでは、複数のメモリチップ4が一方向にシフトしたシフト積層部分5Fをチップ積層体5に設けることにより、各メモリチップ4に対するボンディングワイヤWの配置が容易となる。また、メモリチップ4の積層段数が多くなった場合に、基板2の厚さ方向から見て、チップ積層体5と重なるようにコントローラチップ3を配置できるため、半導体装置1Aの小型化が図られる。
【0050】
さらに、半導体装置1Aでは、チップ積層体5のシフト積層部分5Fがスペーサ11によって構成された支持体6によって支持されている。支持体6は、コレットによる押圧力に対するチップ積層体5の支えとして機能すると共に、チップ積層体5への伝熱経路の一つとして機能し得る。したがって、接合時の温度、熱の付加時間、コレットによる押圧力を増大させることなく複数のメモリチップ4の接合を実施でき、接合時の接着層A2の発泡や基板2の反り、メモリチップ4におけるクラックの発生などを好適に抑制できる。熱の付加時間を抑えることで、製造工程に要する時間も抑えることができる。以上により、半導体装置1Aでは、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。
【0051】
本実施形態では、スペーサ11が熱伝導性を有している。このため、支持体6による伝熱経路の伝熱効率を十分に高めることができる。
【0052】
本実施形態では、支持体6が基板2の一面2aとチップ積層体5のシフト積層部分5Fとの間に配置されている。このような構成によれば、支持体6によってチップ積層体5のシフト積層部分5Fをしっかりと支えることができる。また、接合時の熱を支持体6を介して基板2側からチップ積層体5に効率良く伝導できる。
【0053】
本実施形態では、スペーサ11は、熱硬化性樹脂層12と、熱硬化性樹脂層12よりも高い剛性を有する高剛性層13とによる2層構成となっている。この場合、高剛性層13によってスペーサ11の剛性を確保しつつ、熱硬化性樹脂層12によってスペーサ11と基板2との接合を実現できる。したがって、チップ積層体5のシフト積層部分5Fを支持体6によって一層しっかりと支えることができる。
【0054】
スペーサ11は、一対の熱硬化性樹脂層12,12によって熱硬化性樹脂層12よりも高い剛性を有する高剛性層13を挟んだ3層構成となっていてもよい。この場合、高剛性層13によってスペーサ11の剛性を確保しつつ、一対の熱硬化性樹脂層12,12によってスペーサ11と基板2との接合、或いはスペーサ11とチップ積層体5のシフト積層部分5Fとの接合を実現できる。したがって、チップ積層体5のシフト積層部分5Fを支持体6によって一層しっかりと支えることができる。
[第2実施形態]
【0055】
図4は、本開示の第2実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。同図に示すように、第2実施形態に係る半導体装置1Bは、支持体6がコントローラチップ3とチップ積層体5のシフト積層部分5Fとの間に配置されている点で、支持体6が基板2とチップ積層体5のシフト積層部分5Fとの間に配置されている第1実施形態と相違している。
【0056】
具体的には、半導体装置1Bでは、コントローラチップ3の頂面に支持体6が載置されている。スペーサ11の底面は、熱硬化性樹脂層12によってコントローラチップ3の頂面に接合されている。スペーサ11の頂面は、第1実施形態と同様に、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、中間層(図1では5段目)となるメモリチップ4の底面の接着層A2の一部に接合されている。
【0057】
図5(a)及び図5(b)は、図4に示した半導体装置1Bの製造工程を示す模式的な断面図である。第1の接合ステップS01は、第1実施形態と同様である。第1の接合ステップS01の実施後、図5(a)に示すように、コントローラチップ3の頂面に支持体6を配置し、加熱ステージHによって熱硬化性樹脂層12に熱を付加することで、コントローラチップ3の頂面に支持体6を接合する。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、基板2の一面2aに複数のメモリチップ4を接着層A2を介して積層し、チップ積層体5を形成する。複数のメモリチップ4の積層の際、第1実施形態と同様に、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、所定段のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部をスペーサ11の頂面に載置し、シフト積層部分5Fを支持体6によって支持する。
【0059】
第2の接合ステップS02は、第1の実施形態と同様である。すなわち、チップ積層体5の形成の後、加熱ステージHによってチップ積層体5の各接着層A2に熱を付加することで、基板2の一面2aに最下段のメモリチップ4を接合すると共に、積層方向に隣り合うメモリチップ4,4同士を互いに接合する。チップ積層体5の接合の後、各メモリチップ4を基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続し、基板2の一面2aに封止材7を形成することで、図4に示した半導体装置1Bが得られる。
【0060】
かかる半導体装置1Bにおいても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。また、半導体装置1Bでは、コントローラチップとチップ積層体のシフト積層部分との間に配置されている。このような構成によれば、支持体6によってチップ積層体5のシフト積層部分5Fをしっかりと支えることができる。また、コントローラチップ3の厚さの分、スペーサ11の厚さを削減できる。
[第3実施形態]
【0061】
図6は、本開示の第3実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。同図に示すように、第3実施形態に係る半導体装置1Cは、スペーサ11が複数積層されたスペーサ積層体15によって支持体6が構成されている点で、単体のスペーサ11で支持体6が構成されている第1実施形態と相違している。
【0062】
具体的には、半導体装置1Cでは、複数(ここでは3段)のスペーサ11によってスペーサ積層体15が構成されている。1段目のスペーサ11の底面は、熱硬化性樹脂層12によって基板2の一面2aに接合されている、2段目及び3断面のスペーサ11の底面は、熱硬化性樹脂層12によって下段側のスペーサ11の頂面にそれぞれ接合されている。
【0063】
スペーサ積層体15は、複数のスペーサ11がチップ積層体5におけるシフト積層部分5Fのシフト方向と同じ方向にシフトしたシフト積層部分15Fを有している。スペーサ積層体15のシフト積層部分15Fでは、上段のスペーサ11のシフトにより、下段のスペーサ11の頂面の一部が露出する。スペーサ11の頂面の露出領域は、チップ積層体5のシフト積層部分5Fを支持する支持領域として用いられている。図6の例では、1段目のスペーサ11は、3段目のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部に接合され、2段目のスペーサ11は、5段目のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部に接合されている、また、3段目のスペーサ11は、7段目のメモリチップの底面の接着層A2の一部に接合されている。
【0064】
図7(a)及び図7(b)は、図6に示した半導体装置1Cの製造工程を示す模式的な断面図である。第1の接合ステップS01は、第1実施形態と同様である。第1の接合ステップS01の実施後、図7(a)に示すように、基板2の一面2aに複数のスペーサ11を積層する。そして、加熱ステージHによって各段の熱硬化性樹脂層12に熱を付加することで、スペーサ積層体15を形成する。複数のスペーサ11の積層の際、積層方向に隣り合う下段のスペーサ11に対し、上段のスペーサ11をコントローラチップ3側にシフトさせ、スペーサ積層体15の全体にシフト積層部分15Fを形成する。
【0065】
次に、図7(b)に示すように、基板2の一面2aに複数のメモリチップ4を接着層A2を介して積層し、チップ積層体5を形成する。複数のメモリチップ4の積層の際、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、所定段のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部を各段のスペーサ11の頂面にそれぞれ載置し、シフト積層部分5Fをスペーサ積層体15によって支持する。
【0066】
第2の接合ステップS02は、第1の実施形態と同様である。すなわち、チップ積層体5の形成の後、加熱ステージHによってチップ積層体5の各接着層A2に熱を付加することで、基板2の一面2aに最下段のメモリチップ4を接合すると共に、積層方向に隣り合うメモリチップ4,4同士を互いに接合する。チップ積層体5の接合の後、各メモリチップ4を基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続し、基板2の一面2aに封止材7を形成することで、図6に示した半導体装置1Cが得られる。
【0067】
かかる半導体装置1Cにおいても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。半導体装置1Cでは、スペーサ11が複数積層されたスペーサ積層体15によって支持体6が構成されている。このような構成によれば、チップ積層体5におけるメモリチップ4の積層段数が増加した場合であっても、支持体6の高さをスペーサ11の積層段数によって容易に調整できる。
【0068】
また、半導体装置1Cでは、スペーサ積層体15は、複数のスペーサ11がチップ積層体におけるシフト積層部分5Fのシフト方向と同じ方向にシフトしたシフト積層部分15Fを有している。これにより、チップ積層体5のシフト積層部分5Fをスペーサ積層体15のシフト積層部分15Fによって複数箇所で支持できる。したがって、支持体6によってチップ積層体5のシフト積層部分5Fを一層十分に支えることができる。また、加熱ステージHから支持体6介してチップ積層体5に伝熱する熱のルートが複数に分岐するため(図7(b)の矢印F2)、接合時の熱をチップ積層体5に一層効率良く伝導できる。
[第4実施形態]
【0069】
図8は、本開示の第4実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。同図に示すように、第4実施形態に係る半導体装置1Dは、スペーサ11が複数積層されたスペーサ積層体15によって支持体6が構成されている点で、単体のスペーサ11で支持体6が構成されている第1実施形態と相違している。また、スペーサ積層体15のシフト積層部分15Fにおける各段のスペーサ11のシフト方向が第3実施形態と相違している。
【0070】
具体的には、半導体装置1Dでは、複数(ここでは3段)のスペーサ11によってスペーサ積層体15が構成され、スペーサ積層体15は、複数のスペーサ11がチップ積層体5におけるシフト積層部分5Fのシフト方向と反対方向にシフトしたシフト積層部分15Fを有している。図8の例では、最上段となる3段目のスペーサ11が7段目のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部に接合されている。
【0071】
半導体装置1Dでは、複数のスペーサ11のシフト方向がチップ積層体5におけるシフト積層部分5Fのシフト方向となっていることで、チップ積層体5のシフト積層部分5Fと、スペーサ積層体15のシフト積層部分15Fとに囲まれた領域Rが基板2の一面2a側に形成されている。コントローラチップ3は、基板2の一面2aにおいて領域R内に位置し、且つ基板2の厚さ方向から見てチップ積層体5と重なるように配置されている。
【0072】
図9(a)及び図9(b)は、図8に示した半導体装置1Dの製造工程を示す模式的な断面図である。第1の接合ステップS01は、第1実施形態と同様である。第1の接合ステップS01の実施後、図9(a)に示すように、基板2の一面2aに複数のスペーサ11を積層する。そして、加熱ステージHによって各段の熱硬化性樹脂層12に熱を付加することで、スペーサ積層体15を形成する。複数のスペーサ11の積層の際、積層方向に隣り合う下段のスペーサ11に対し、上段のスペーサ11をチップ積層体5側にシフトさせ、スペーサ積層体15の全体にシフト積層部分15Fを形成する。
【0073】
次に、図7(b)に示すように、基板2の一面2aに複数のメモリチップ4を接着層A2を介して積層し、チップ積層体5を形成する。複数のメモリチップ4の積層の際、チップ積層体5のシフト積層部分5Fにおいて、所定段のメモリチップ4の底面の接着層A2の一部を最上段のスペーサ11の頂面に載置し、シフト積層部分5Fをスペーサ積層体15によって支持する。
【0074】
第2の接合ステップS02は、第1の実施形態と同様である。すなわち、チップ積層体5の形成の後、加熱ステージHによってチップ積層体5の各接着層A2に熱を付加することで、基板2の一面2aに最下段のメモリチップ4を接合すると共に、積層方向に隣り合うメモリチップ4,4同士を互いに接合する。チップ積層体5の接合の後、各メモリチップ4を基板2の他面2b側の所定の接続端子に電気的に接続し、基板2の一面2aに封止材7を形成することで、図8に示した半導体装置1Dが得られる。
【0075】
かかる半導体装置1Dにおいても、第1実施形態と同様の作用効果を奏し、生産性及び製造歩留まりの双方を十分に確保できる。半導体装置1Dでは、スペーサ11が複数積層されたスペーサ積層体15によって支持体6が構成されている。このような構成によれば、チップ積層体5におけるメモリチップ4の積層段数が増加した場合であっても、支持体6の高さをスペーサ11の積層段数によって容易に調整できる。半導体装置1Dでは、スペーサ積層体15は、複数のスペーサ11がチップ積層体におけるシフト積層部分5Fのシフト方向と反対の方向にシフトしたシフト積層部分15Fを有している。これにより、支持体6によってチップ積層体5のシフト積層部分5Fをしっかりと支えることができる。
【0076】
さらに、半導体装置1Dでは、コントローラチップ3は、基板2の一面2aにおいて、チップ積層体5のシフト積層部分5Fと、スペーサ積層体15のシフト積層部分15Fとに囲まれた領域Rに配置されている。このように、チップ積層体5のシフト積層部分5Fと、スペーサ積層体15のシフト積層部分15Fとに囲まれた余剰の領域Rにコントローラチップ3を配置することで、基板2の一面2aの配置効率が向上し、半導体装置1Dの小型化が図られる。
[変形例]
【0077】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、複数の第2の半導体チップとしていずれもメモリチップ4を例示しているが、複数の第2の半導体チップは、同種の半導体チップに限られず、異種の半導体チップを含んで構成されていてもよい。図2(b)に示したように、一対の熱硬化性樹脂層12,12によって高剛性層13を挟むことでスペーサ11を構成する場合、一対の熱硬化性樹脂層12,12は、互いに同じ構成及び組成であってもよく、互いに異なる構成及び組成であってもよい。
【0078】
また、例えば上記各実施形態では、チップ積層体5の全体がシフト積層部分5Fとなっているが、チップ積層体5の一部のみがシフト積層部分5Fとなっていてもよい。また、チップ積層体5において、コントローラチップ3側にシフトするシフト積層部分5Fと、コントローラチップ3と反対側にシフトするシフト積層部分5Fとが組み合わせられていてもよい。この場合、コントローラチップ3と反対側にシフトするシフト積層部分5Fを別の支持体6によって支持する態様としてもよい。第3実施形態では、スペーサ積層体15が基板2の一面2aに接合されているが、第2実施形態のようにスペーサ積層体15がコントローラチップ3の頂面に接合された態様としてもよい。
【0079】
本開示の要旨は、以下の[1]~[11]に示すとおりである。
[1]基板と、前記基板の一面に接合された第1の半導体チップと、複数のメモリチップが接着層を介して積層され、前記基板の一面に接合されたチップ積層体と、を備え、前記チップ積層体は、前記複数のメモリチップが一方向にシフトしたシフト積層部分を有し、前記シフト積層部分は、スペーサによって構成された支持体によって支持されている半導体装置。
[2]前記スペーサは、熱伝導性を有している[1]記載の半導体装置。
[3]前記支持体は、前記基板の一面と前記チップ積層体のシフト積層部分との間に配置されている[1]又は[2]記載の半導体装置。
[4]前記支持体は、前記第1の半導体チップと前記チップ積層体のシフト積層部分との間に配置されている[1]又は[2]記載の半導体装置。
[5]前記支持体は、前記スペーサが複数積層されたスペーサ積層体によって構成されている[1]~[4]のいずれか記載の半導体装置。
[6]前記スペーサ積層体は、前記複数のスペーサが前記チップ積層体における前記シフト積層部分のシフト方向と同じ方向にシフトしたシフト積層部分を有している[5]記載の半導体装置。
[7]前記スペーサ積層体は、前記複数のスペーサが前記チップ積層体における前記シフト積層部分のシフト方向と反対の方向にシフトしたシフト積層部分を有している[5]記載の半導体装置。
[8]前記第1の半導体チップは、前記基板の一面において、前記チップ積層体の前記シフト積層部分と、前記スペーサ積層体の前記シフト積層部分とに囲まれた領域に配置されている[7]記載の半導体装置。
[9]前記スペーサは、熱硬化性樹脂層と、前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する高剛性層とによる2層構成となっている[1]~[8]のいずれか記載の半導体装置。
[10]前記スペーサは、一対の熱硬化性樹脂層によって前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する高剛性層を挟んだ3層構成となっている[1]~[8]のいずれか記載の半導体装置。
[11]基板の一面に第1の半導体チップを接合する第1の接合ステップと、複数のメモリチップを接着層を介して積層し、前記基板の一面にチップ積層体を接合する第2の接合ステップと、を備え、前記第2の接合ステップの実施にあたって、前記複数のメモリチップを一方向にシフトしながら積層することによってシフト積層部分を形成し、スペーサによって構成された支持体によって当該シフト積層部分を支持する半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0080】
1A~1D…半導体装置、2…基板、2a…一面、3…コントローラチップ(第1の半導体チップ)、4…メモリチップ(第2の半導体チップ)、5…チップ積層体、5F…シフト積層部分、6…支持体、11…スペーサ、12…熱硬化性樹脂層、13…高剛性層、15…スペーサ積層体、15F…シフト積層部分、A2…接着層、R…領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9