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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126354
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ケース構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20240912BHJP
   H02G 3/14 20060101ALI20240912BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20240912BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20240912BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C45/27
H02G3/14
H02G3/16
H05K5/00 C
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034673
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】神薗 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 明晴
(72)【発明者】
【氏名】宇野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】東 沙織
(72)【発明者】
【氏名】田村 和也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 彰久
【テーマコード(参考)】
4E360
4F202
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB13
4E360BA04
4E360BB22
4E360BB30
4E360GA60
4E360GB99
4E360GC08
4F202AH56
4F202AM36
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK06
4F202CK12
5G361AA06
5G361AC02
5G361AC05
5G361AD01
5G361AE02
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】 ケース部とカバー部とを高い信頼性で接合することが可能なケース構想体を提供する。
【解決手段】 電気接続箱は、電気部品等が収容されるケース部と、ケース部の上方に取り付けられるアッパーカバーと、ケース部の下方に取り付けられるロアカバーとからなる。カバー部材とケース部の一方の本体部に係止爪部が設けられ、カバー部材とケース部の他方の本体部に、係止爪部が係止される係合部9が設けられる。係合部9は、本体部8から起立する一対の脚部9aと、一対の脚部9aを連結する天部9bからなる。天部9bが、係止爪部が係止される部位となる。それぞれの脚部9aは、天部9bとの連結部までの間に複数段にそれぞれ90度未満の角度で屈曲する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部材が収容されるケース部と、前記ケース部に接続されるカバー部材とからなるケース構造体であって、
前記カバー部材と前記ケース部の一方の本体部には係止爪部が設けられ、前記カバー部材と前記ケース部の他方の本体部には、前記係止爪部が係止される係合部を有し、
前記係合部は、前記本体部から起立する一対の脚部と、一対の前記脚部を連結し、前記係止爪部が係止される天部とを有し、それぞれの前記脚部は、前記本体部と本体部連結部を介して接続される第1脚部と、前記天部と天部連結部を介して接続される第2脚部とを有し、前記本体部連結部と前記天部との間において複数段にそれぞれ90度未満の角度で屈曲することを特徴とするケース構造体。
【請求項2】
それぞれの前記脚部は、前記本体部から前記天部までの間において連続的に屈曲し、略円弧状に湾曲することを特徴とする請求項1記載のケース構造体。
【請求項3】
前記第1脚部と前記第2脚部との間が第1屈曲部となり流路軸が屈曲し、前記天部連結部が第2屈曲部となりさらに流路軸が屈曲することを特徴とする請求項1記載のケース構造体。
【請求項4】
前記第1脚部の幅に対し、前記第2脚部の幅の方が広いことを特徴とする請求項3記載のケース構造体。
【請求項5】
前記第2脚部の幅に対し、前記天部における幅の方が広いことを特徴とする請求項3記載のケース構造体。
【請求項6】
一対の前記脚部が前記天部の中央に対して対称ではなく、異なる形態であることを特徴とする請求項1記載のケース構造体。
【請求項7】
平面視において、前記係合部は、前記本体部の側壁部に沿って複数配置され、前記本体部のゲート位置が、前記係合部が配置されている部位の前記側壁部に垂直なすべての領域を除く部位に配置されることを特徴とする請求項1記載のケース構造体。
【請求項8】
前記ケース構造体は、電気部品が収容される前記ケース部と前記カバー部材とを有する電気接続箱であることを特徴とする請求項1記載のケース構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載される電気接続箱などのケース構造体の係合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、内部にヒューズやリレー等が収容された電気接続箱が設置される。このような電気接続箱は、通常、電気部品が収容されるケース部の上下にアッパーカバーとロアカバーが配置される。ケース部、アッパーカバー及びロアカバーは、合成樹脂で形成される。
【0003】
このようなケース部は、通常、薄肉の四角箱状であるため、成形時に外周壁にソリやヒケが発生しやすい。ケース部の外周壁が外方に膨らむソリの場合、アッパーカバーやロアカバーがガタついて異音の発生の要因となり、各カバーがケース部にロックされなくなる恐れもある。
【0004】
これに対し、ケース部の上方にカバーを被せる電気接続箱において、カバーの外周壁に突起爪を備えたロック係止部を形成するとともに、ケース部の外周壁に、ロック係止部の突起爪を係止する突起爪係止部と、カバー外周壁の外面側に接する押え部とを一体的に備えたロック部を形成した電気接続箱が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-9532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ケース部の外周壁と押え部との間にカバーのロック係止部が上方から挿入され、突起爪が突起爪係止部により係止されると共にカバー外周壁が押え部に矯正保持される。カバー側のロック係止部は、カバー外周壁より三角状に突出した突起爪とする一方、ケース部側のロック部は、略逆U字状で上向きに立ち上がった形状としている。
【0007】
図5は、特許文献1におけるケース部に形成されるロック部100の形状を示す概略図である。ロック部100は、ケース部の本体から突出する一対の脚部103と、脚部103同士を連結する天部105とからなる。カバーのロック係止部101の突起爪102は、天部105の下面に係止されてカバーとケース部とが固定される。
【0008】
ここで、前述したように、通常、ケース部は合成樹脂の射出成型によって成形される。すなわち、ケース部の形状のキャビティを有する金型に樹脂が注入されて成形が行われる。この際、本体部側に配置されるゲートから注入された樹脂は、金型のキャビティ内部を流動して各部にいきわたる。
【0009】
ロック部100においても、本体部側から樹脂が注入されて、それぞれの脚部103を流れて天部105でそれぞれの脚部103を流れてきた樹脂同士が融合してロック部100が成形される。この際、樹脂の融合部が完全に融合せずに融着不良となると、いわゆるウェルドが発生する。
【0010】
このようなウェルドは、金型内に注入後の樹脂が短時間で勢いよく流れて融合すると生じにくい。しかし、図5に示すように、脚部103を流れた樹脂(図中矢印X)は、天部105方向に90度に方向を流れる方向が変化し(図中矢印Y)、天部105内を流動する(図中矢印Z)。このように、脚部103から天部105への屈曲部において、樹脂の流れる方向が大きく変化する。このため、屈曲部において樹脂の流速が減じ、流れが乱れるため、天部105での樹脂の流速が低下する。
【0011】
このように天部105においては、樹脂の流れが十分ではなく、天部105の略中央にウェルドが生じやすくなる。ウェルドは通常部位と比較して強度が弱くなるため、天部105の略中央にウェルドが生じると、ロック係止部101によって力が加わると破損の恐れがある。特に自動車においては常に振動が加わるため、走行中にウェルドを基点に破損する恐れがある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、ケース部とカバー部とを高い信頼性で接合することが可能なケース構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明は、収容部材が収容されるケース部と、前記ケース部に接続されるカバー部材とからなるケース構造体であって、前記カバー部材と前記ケース部の一方の本体部には係止爪部が設けられ、前記カバー部材と前記ケース部の他方の本体部には、前記係止爪部が係止される係合部を有し、前記係合部は、前記本体部から起立する一対の脚部と、一対の前記脚部を連結し、前記係止爪部が係止される天部とを有し、それぞれの前記脚部は、前記本体部と本体部連結部を介して接続される第1脚部と、前記天部と天部連結部を介して接続される第2脚部とを有し、前記本体部連結部と前記天部との間において複数段にそれぞれ90度未満の角度で屈曲することを特徴とするケース構造体である。
【0014】
それぞれの前記脚部は、前記本体部から前記天部までの間において連続的に屈曲し、略円弧状に湾曲してもよい。
【0015】
前記第1脚部と前記第2脚部との間が第1屈曲部となり流路軸が屈曲し、前記天部連結部が第2屈曲部となりさらに流路軸が屈曲してもよい。
【0016】
前記第1脚部の幅に対し、前記第2脚部の幅の方が広くてもよい。
【0017】
前記第2脚部の幅に対し、前記天部の幅の方が広くてもよい。
【0018】
一対の前記脚部が前記天部の中央に対して対称ではなく、異なる形態であってもよい。
【0019】
前記ケース構造体は、電気部品が収容される前記ケース部と前記カバー部材とを有する電気接続箱であることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、脚部が、天部との連結部までの間に複数段にそれぞれ90度未満の角度で屈曲するため、急激な樹脂の流れの向きの変わる部位が存在せず、樹脂をスムーズに天部の中央まで流すことができる。このため、ウェルドの発生を抑制し、ウェルドの発生による強度低下を抑制することができる。
【0021】
また、脚部を天部につながるように連続的に屈曲させることで、外側部を円弧状にすることもできる。このようにすることで、樹脂の流速を急激に落とすことなくよりスムーズに流すことが可能となる。
【0022】
なお、少なくとも脚部が、本体部から天部との連結部までの間において、順に第1屈曲部と第2屈曲部の2か所で屈曲させることで、効果を得ることができる。
【0023】
この際、第1屈曲部よりも本体部側における脚部の幅に対し、第1屈曲部よりも第2屈曲部側における脚部の幅の方を広くすることで、天部側の脚部の強度を高めることができる。
【0024】
同様に、第2屈曲部よりも第1屈曲部側における脚部の幅に対し、天部の幅の方が広くすることで、天部の強度を向上させることができる。なお、天部の幅を広くすると、樹脂の流速は脚部と比較して遅くなるが、脚部の屈曲角度が小さいため、流速の低減は最小限にとどまり、ウェルドの発生を抑制することができる。
【0025】
また、一対の脚部が、天部の中央に対して対称ではなく、異なる形態とすることで、それぞれの脚部を流れた樹脂が、天部の中央で融合せず、樹脂の融合部を中央からずらすことができる。このため、多少のウェルドが生じたとしても、強度低下を抑制することができる。
【0026】
また、平面視において、係合部が本体部の側壁部に沿って複数配置される場合において、本体部の樹脂が注入されるゲート位置を、係合部が配置されている部位の側壁部に垂直なすべての領域を除く部位に配置ことで、それぞれの係合部において、一対の脚部へ樹脂が到達するタイミングをずらすことができる。なお、製品においては、ゲートの位置はゲート跡によって把握することができる。
【0027】
このようなケース構造体としては、車両における電気接続箱への適用が特に有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ケース部とカバー部とを高い信頼性で接合することが可能なケース構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】電気接続箱1の斜視図。
図2】ロアカバー7の側面図。
図3】(a)は、係合部9を示す拡大図、(b)は他の実施形態の係合部9を示す図。
図4】ロアカバー7の底面図。
図5】従来のロック部100を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態にかかるケース構造体について説明する。図1は、電気接続箱1の斜視図である。電気接続箱1は、電気部品等が収容されるケース部3と、ケース部3の上方に取り付けられるアッパーカバー5と、ケース部3の下方に取り付けられるロアカバー7とからなる。
【0031】
なお、アッパーカバー5とロアカバー7を合わせてカバー部材という場合がある。また、以下、ロアカバー7とケース部3との固定構造について説明するが、同様の固定構造は、アッパーカバー5とケース部3にも適用可能である。また、図示した例では、電気接続箱1は、ケース部3とアッパーカバー5及びロアカバー7からなる例を示すが、アッパーカバーとロアケース(カバー部材とケース部材)のみからなってもよい。また、以下の説明では、ケース構造体が電気接続箱である例を説明するが、収容部材が収容されるケース部と、ケース部に接続されるカバー部材とを有すれば、他のケース構造体へも適用可能である。
【0032】
ケース部3の本体部の外周部には、複数の係止爪部11が下方に向けて設けられる。また、ロアカバー7の本体部の外周部には、複数の係合部9が上方に向けて設けられる。係合部9は、係止爪部11に対応した部位に配置され、係止爪部11は係合部9に係止される。なお、ケース部3に係合部9を設け、ロアカバー7に係止爪部11を設けてもよい。
【0033】
図2は、ロアカバー7の側面図である。なお、以下の説明では係止爪部11側の図示を省略する。前述したように、ロアカバー7の本体部8の側壁部には、上方(固定対象側)に向けて複数の係合部9が設けられる。
【0034】
図3は、係合部9の拡大図である。係合部9は、本体部8から起立する一対の脚部9aと、一対の脚部9aを連結する天部9bからなる。天部9bが、係止爪部11が係止される部位となる。すなわち、天部9bの内側(下方)には、係止爪部11が係止される直線部が形成される。
【0035】
それぞれの脚部9aは、本体部連結部10を介して本体部8と接続される第1脚部9aaと、天部連結部12を介して天部9bと接続される第2脚部9abとを有する。本体部連結部10と天部9bとの間において複数段にそれぞれ90度未満の角度で屈曲する。図示した例では、それぞれの脚部9aは、本体部8から天部9bとの連結部までの間において、順に第1屈曲部13aと第2屈曲部13bで屈曲する。すなわち、本体部連結部10と天部連結部12との間は第1屈曲部13aにより成型時の樹脂の流路軸が屈曲し、天部連結部12が第2屈曲部13bとなり、さらに樹脂の流路軸が屈曲する。第1屈曲部13aの屈曲角度θ1(第1脚部9aaの軸に対する第2脚部9abの軸の外角)と第2屈曲部13bの屈曲角度θ2(第2脚部9abの軸に対する天部9bの軸の外角)は、いずれも90度未満であるため、各屈曲部の外角(脚部9aと天部9bの外側の角部)は、全て鋭角となる。例えば、図示した例では、第1屈曲部13aの外角は15度であり、第2屈曲部13bの外角は75度である。
【0036】
ここで、第1脚部9aaの幅(図中Aであって、樹脂の流れる方向に対して垂直な幅)に対し、第2脚部9abの幅(図中Bであって、樹脂の流れる方向に対して垂直な幅)の方が広いことが望ましい。また、同様に、第2脚部9abの幅(図中B)に対し、天部9bにおける幅(図中Cであって、樹脂の流れる方向に対して垂直な幅)の方が広いことが望ましい。
【0037】
射出成型時に係合部9が成形される際には、樹脂は本体部8から脚部9aに流入し、第1屈曲部13a、第2屈曲部13bを介して天部9bに流入する。この際、各屈曲部の屈曲角度θ1、θ2が小さいため、樹脂はほとんど勢いが弱まることなく天部9bまで到達する。このため、ウェルドの発生を抑制することができる。
【0038】
なお、前述したように、係合部9を構成するフレーム形状では、基部側(本体部8側)に対して、末端側(天部9b側)の方が、幅(断面積)が広くなる。このため、流路断面積が広くなることで樹脂の流速は減少する。しかし、本実施形態では、流れの向きの変化が小さいため、断面積が多少大きくなっても、従来のような形態と比較して、短時間で樹脂が融合するため、ウェルドの発生を抑制することができる。
【0039】
また、複数回の屈曲によって、天部9bの内面側の直線部(すなわち係止爪部11が引っかかる部位)の長さが短くなる。しかし、天部9bの幅を広くすることで、係止爪部11が引っかかる長さが短くなることによる強度低下を補い、十分な接合強度を確保することができる。
【0040】
なお、図3(a)に示す例では、それぞれの脚部9aに2か所の屈曲部を形成したが、屈曲部は複数であれば屈曲部数は限定されない。例えば、図3(b)に示すように、それぞれの脚部9aを、本体部連結部10から天部9bまでの間において連続的に屈曲させることで(多数の屈曲部同士を限りなく近づけて形成することで)、略円弧状に湾曲させてもよい。すなわち、脚部9aから天部9bまでの外周面側を全て円弧状としてもよい。
【0041】
このように、係合部9を構成するフレーム形状において、脚部9aから天部9bにかけて、前述した天部9bの内面側の直線部(係止爪部11が引っかかる部位)以外をなだらかに湾曲させることで、よりスムーズに樹脂を流すことができる。特に、天部9bの外周面側が円弧状に形成されるため、中央部の幅を最も広くすることができる。
【0042】
なお、図示した例では、一対の脚部9aを流れた樹脂が天部9bの略中央で融合する例を説明したがこれには限られない。例えば、一対の脚部9aが天部9bの中央に対して対称ではなく、異なる形態とすることもできる。すなわち、一方の脚部9aから天部9bに向かう樹脂の流れD1と、他方の脚部9aから天部9bに向かう樹脂の流れD2とが異なるようにしてもよい。
【0043】
例えば、一対の脚部9aに対して、互いの長さを変えてもよい。また、一対の脚部9aの少なくとも一部の幅や厚みを変えてもよい。また、脚部9aと本体部8との連結部の大きさを互いに変えてもよい。このように一対の脚部9aを非対称とすることで、樹脂の融合部を天部9bの中央からずらすことができる。このため、最も力のかかる天部9bの中央部に樹脂の融合部が設けられることを抑制し、より高い信頼性を確保することができる。
【0044】
なお、この場合において、脚部9a同士の形態の差は必ずしも大きくする必要はない。本実施形態では、脚部9aに流入してから天部9bに至るまで、樹脂の流速があまり落ちずに流れるため、わずかな流速の違いや、脚部9aへの樹脂流入タイミングがわずかに変わるだけで、樹脂の融合部を大きくずらすことができる。
【0045】
例えば、従来のように、90度の屈曲部を設けると、当該部位で大きく流速が落ちる。このため、天部9bに到達するタイミングが多少変わっても、融合部の位置を大きく変化させることができない。これに対し本実施形態では、流速が早いまま融合させることができるため、わずかな脚部9aの形態の差でも、融合部の位置を大きく変えることができる。
【0046】
また、それぞれの係合部9に対して、一対の脚部9aに樹脂が同時に流入するのではなく、異なるタイミングとすることもできる。図4は、ロアカバー7の底面図である。前述したように、平面視(底面視)において、ロアカバー7の本体部8の側壁に沿って、複数の係合部9が配置される。
【0047】
ここで、先述したように、ロアカバー7は射出成型によって成形される。射出成型では、金型のキャビティへの樹脂の注入口であるゲートのレイアウトが重要であり、通常は、樹脂のエア溜りなどが生じにくく、また、確実に全体に樹脂がいきわたるようにゲートが配置される。例えば、本体部8の肉厚部や、本体部8の中央部近傍、又は本体部8の一端側から樹脂が注入される。
【0048】
本実施形態では、本体部8のゲート位置が、係合部9が配置されている部位の側壁部に垂直なすべての領域(図中ハッチング部)を除く部位に配置される。この結果、ゲートの配置が、本体部8の中央からずれた位置に配置される場合もある。なお、複数個所にゲートを配置する場合でも、上記領域を除く位置に全てのゲートを配置することが望ましい。
【0049】
このように、上記領域を除く位置にゲートを配置することで、ゲートからそれぞれの係合部9における一対の脚部9aまでの距離を異なるようにすることができる。このため、ゲートから流れる樹脂が係合部9に到達した際、樹脂の到達部を係合部9の中心からずれた位置とすることができる。このため、一対の脚部9aに対して、異なるタイミングで樹脂を流入させることができる。なお、上記領域で囲まれた範囲(ハッチング以外の部位であって、ゲート設置可能範囲)の略中央近傍にゲートを配置することが望ましい。
【0050】
以上、本実施形態によれば、ロアカバー7の係合部9の脚部9aが、天部9bまでの間に複数段にそれぞれ90度未満の角度で屈曲するため、樹脂がスムーズに天部9bの中央まで流れ、ウェルドの発生を抑制することができる。また、屈曲部を連続的に形成することで(すなわち、多数の屈曲部を限りなく近づけて屈曲させることで)、よりスムーズに樹脂を流すことができる。
【0051】
また、従来の係合部と比較して係止爪部11がかかる部分の長さが短くなっても、天部9bの幅を脚部9aの幅よりも広くすることで、係合部9の強度を確保することができる。
【0052】
また、係合部9の一対の脚部9aの形態を非対象とすることで、脚部9aを流れる樹脂の流れを変えることができる。この結果、樹脂の融合部を天部9bの中心からずらした位置に形成することができる。
【0053】
また、ロアカバー7の本体部8に対するゲートを、係合部9が配置されている部位の側壁部に垂直なすべての領域を除く部位に配置することで、ゲートから金型内に流入した樹脂が、係合部9の一対の脚部9aに対して異なるタイミングで到達するため、脚部9aへの樹脂の流入タイミングをずらし、樹脂の融合部の位置を天部9bの中央からずらすことができる。
【0054】
また、本実施形態では、樹脂を天部9bの中央までスムーズに流すことができるため、樹脂の流速が落ちにくい。このため、脚部9aのわずかな形態の違いや、脚部9aへのわずかな樹脂の到達タイミングの違いでも、天部9bにおける融合部の位置を中央から大きくずらすことができる。
【0055】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、前述したように、ロアカバー7に係合部9を形成したが、ロアカバー7に係止爪部11を設け、ケース部3に係合部9を形成してもよい。また、ロアカバー7とケース部3との固定ではなく、アッパーカバー5とケース部3との固定にも適用することができる。すなわち、カバー部材とケース部3の一方の本体部に係止爪部11が設けられ、カバー部材とケース部3の他方の本体部に、係止爪部11が係止される係合部9を形成すればよい。
【符号の説明】
【0057】
1………電気接続箱
3………ケース部
5………アッパーカバー
7………ロアカバー
8………本体部
9………係合部
9a………脚部
9aa………第1脚部
9ab………第2脚部
9b………天部
10………本体部連結部
11………係止爪部
12………天部連結部
13a………第1屈曲部
13b………第2屈曲部
100………ロック部
101………ロック係止部
102………突起爪部
103………脚部
105………天部
図1
図2
図3
図4
図5