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特開2024-126431化合物、有機半導体材料、有機半導体素子、及び有機太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126431
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】化合物、有機半導体材料、有機半導体素子、及び有機太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/22 20060101AFI20240912BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20240912BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20240912BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20240912BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D495/22 CSP
H10K10/40
H10K10/46
H10K50/11
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034804
(22)【出願日】2023-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】陣内 青萌
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 卓司
(72)【発明者】
【氏名】森山 太一
【テーマコード(参考)】
3K107
4C071
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107CC03
3K107DD59
4C071AA04
4C071AA07
4C071AA08
4C071BB03
4C071BB08
4C071CC25
4C071DD40
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG01
4C071GG05
4C071JJ05
4C071JJ07
4C071KK14
4C071LL05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】農作物育成施設にも利用可能な有機太陽電池に好適な使用できる緑色波長域において高い変換効率を有する新規化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示される化合物。

(一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】

(一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む、有機半導体材料。
【請求項3】
請求項2に記載の有機半導体材料を含む層を有する、有機半導体素子。
【請求項4】
請求項3に記載の有機半導体素子を含む、有機太陽電池。
【請求項5】
下記一般式(XXII)で示される化合物。
【化2】

(一般式(XXII)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項6】
下記一般式(XV)で示される化合物。
【化3】

(一般式(XV)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、Rは、炭素原子数1-8の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項7】
下記一般式(XIV)で示される化合物。
【化4】

(一般式(XIV)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項8】
下記一般式(XIII)で示される化合物。
【化5】

(一般式(XIII)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、Rは、炭素原子数1-7の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、それを含む有機半導体材料、及びそれを含む有機半導体素子、並びにそれを用いた有機太陽電池に関する。更に、本発明は、前記化合物を製造するための中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池は、大面積加工性、柔軟性、軽量性などの特徴を活かした用途展開により、再生可能エネルギーとしてカーボンニュートラル社会の実現への貢献が期待されている。有機太陽電池の用途の一つとして、透過性を利用した太陽光利用型植物工場やビニールハウスなどの農作物育成施設への応用が提案されている。有機太陽電池の半導体層であるp型有機半導体材料及びn型有機半導体材料から構成されており、有機太陽電池の透過光スペクトルは有機半導体材料に用いる化合物の構造を置換基などにより修飾することで制御できる。
【0003】
特許文献1には、第1波長領域(350~500nm及び600~700nmの波長範囲)において実質的に透光性であり、光電層を備えた薄膜太陽電池モジュール及びそれを備えた温室が開示され、光電層は、第2波長領域(500nm~600nmの波長範囲)における太陽放射を電気エネルギーへ変換するように構成され、光電層に好適な電子供与材料として、ポリチオフェン類(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT))、ポリシクロペンタジチオフェン類(例えば、ポリ(シクロペンタジチオフェン-コベンゾチアジアゾール))、及びこれらのコポリマーからなる群から選ばれたポリマーが挙げられることが記載されている。しかしながら、特許文献1には、具体的な有機太陽電池の製造法やその発電特性などのデータは一切示されておらず、本明細書に記載の一般式(I)で示される化合物の構造は具体的に記載されていない。
【0004】
また、非特許文献1には、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)とメタノフラーレンのバルクヘテロ接合に基づく高効率ポリマー太陽電池の報告が開示されているが、波長選択性に関して何ら記載はされておらず、500-600nmの波長領域内の発電特性が記載されていないため、農作物生育施設に好適な有機半導体材料であるかどうかを判断することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-522101号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature Materials 4,864-868(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、農作物生育施設に好適に使用できる緑色光領域(500-600nm)における変換効率が高い有機半導体材料の探索が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、シクロペンタジエン環部分の四級炭素がスピロ環を形成する拡張π共役化合物を探索した結果、本明細書に記載の一般式(I)で示される化合物が、緑色光領域(500-600nm)において優れたn型有機半導体特性を有し、有機半導体材料として高い光電変換効率を達成することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下に存する。
【0009】
[1].下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】

(一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[2].[1]に記載の化合物を含む、有機半導体材料。
[3].[2]に記載の有機半導体材料を含む層を有する、有機半導体素子。
[4].[3]に記載の有機半導体素子を含む、有機太陽電池。
[5].下記一般式(XXII)で示される化合物。
【化2】

(一般式(XXII)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[6].下記一般式(XV)で示される化合物。
【化3】

(一般式(XV)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、Rは、炭素原子数1-8の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[7].下記一般式(XIV)で示される化合物。
【化4】

(一般式(XIV)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[8].下記一般式(XIII)で示される化合物。
【化5】

(一般式(XIII)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、Rは、炭素原子数1-7の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る化合物は、上記一般式(I)で示される構造を有するため、500-600nmの波長領域内において優れたn型有機半導体特性を有する。そのため、本発明に係る化合物は、有機半導体材料として有用であり、これを用いた有機太陽電池はより一層500-600nmの波長領域内において優れた光電変換効率を有する。
【0011】
また、上記一般式(I)で示される化合物は、本発明の上記一般式(XXII)、一般式(XV)、一般式(XIV)及び(XIII)で示される化合物を中間体として用いることで、有機半導体材料に有用な化合物を生成物として簡便に、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(化合物の構造)
本発明の化合物は、一般式(I)で示される(以下、化合物(I)ともいう)。
【0013】
【化6】
【0014】
上記一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。ここで、Rの炭素原子数は、1-20であれば好ましく、炭素原子数が1-10であればより好ましく、炭素原子数が2-7であれば更に好ましい。Rの炭素原子数は1-10であれば好ましく、炭素原子数が2-8であればより好ましい。Rの炭素原子数は1-10であれば好ましく、炭素原子数が2-6であればより好ましい。
【0015】
(化合物の製造方法)
化合物(I)の製造方法は特に限定されない。一例として、以下の反応スキームに沿って、一般式(II)で表される化合物、一般式(V)で表される化合物、一般式(X)で表される化合物、一般式(XVI)で表される化合物、及び一般式(XXIII)で表される化合物から合成して製造することができる。前記化合物はいずれも市販されている。より具体的な一例は、後述の実施例に記載されている。
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
【化9】
【0019】
【化10】
【0020】
上記一般式(II)で表されるチオフェンから、後述する工程A及びB経て一般式(IV)で表される化合物を合成する。次いで、上記一般式(IV)で表される化合物と上記一般式(V)で表される2,5-ジブロモテレフタル酸ジアルキルから、後述する工程Cを経て一般式(VI)で表される化合物を合成し、更に、後述する工程D、E及びFを経て一般式(IX)で表される化合物を合成する。ここで合成された一般式(IX)で表される化合物は、後続する反応によって合成される生成物に対して中間体としての役割を果たし得る。
【0021】
これとは別に、上記一般式(X)で表される2-アルキルチオフェンから、後述する工程G及びHを経て一般式(XII)で表される化合物を合成する。ここで合成された一般式(XII)で表される化合物は、後続する反応によって合成される生成物に対して中間体としての役割を果たし得る。
【0022】
続いて、上記一般式(IX)で表される化合物と上記一般式(XII)で表される化合物から、後述する工程Iを経て一般式(XIII)で表される化合物を合成し、次いで後述する工程Jを経て一般式(XIV)で表される化合物を合成し、更に後述する工程Kを経て一般式(XV)で表される化合物を合成する。ここで合成されたこれらの化合物は、それぞれ後続する反応によって合成される生成物に対して中間体としての重要な役割を果たし得る。
【0023】
更に、上記一般式(XVI)で表される2-n-アルキルベンゾトリアゾールから、後述する工程L、M、N、О及びPを経て一般式(XXI)で表される化合物を合成する。次いで上記一般式(XXI)で表される化合物と上記一般式(XV)で表される化合物から、後述する工程Qを経て一般式(XXII)を合成する。更に上記一般式(XXII)と一般式(XXIII)で表される3-アルキルロダニンから、後述する工程Rを経て一般式(I)で表される化合物を生成物として合成する。
【0024】
後述する各種化合物の合成工程における温度の調整は、各反応が首尾よく進行するように、既知の方法及び装置を適宜選択することができる。例えば、反応対象物を加熱する場合は、ウォーターバスやオイルバス、マイクロ波などを使用することができ、反応対象物を0℃以下にする場合は、氷浴や液体窒素を使用することができる。
【0025】
<工程A>
まず、一般式(II)で示される化合物(以下「化合物(II)」という)から、一般式(III)で示される化合物(以下「化合物(III)」という)を製造する(工程A)。化合物(III)において、Rは、炭素原子数1-7の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0026】
工程Aは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(II)にリチオ化剤を作用させた後に、シリル化剤を反応させ、化合物(III)を製造する。
【0027】
リチオ化剤としては、当該反応が進行するリチオ化剤であれば特に限定はなく、例えば、n-ブチルリチウム(n-BuLi)などが挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(II)1当量に対して、0.5~5当量が好ましく、より好ましくは0.9~1.5当量の割合で使用することができる。
【0028】
シリル化剤としては、当該反応が進行するシリル化剤であれば特に限定はなく、例えば、トリイソプロピルシリルクロリドなどが挙げられる。シリル化剤の使用量は、化合物(II)1当量に対して、0.5~5当量が好ましく、より好ましくは0.9~1.5当量の割合で使用することができる。
【0029】
工程Aの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0030】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-100~50℃が好ましく、より好ましくは-78~30℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Aにより製造された化合物(III)は、工程Bに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0031】
<工程B>
次いで、化合物(III)から、一般式(IV)で示される化合物(以下「化合物(IV)」という)を製造する(工程B)。化合物(IV)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0032】
工程Bは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(III)にリチオ化剤を作用させた後に、ホウ素化剤を反応させ、化合物(IV)を製造する。
【0033】
リチオ化剤としては、当該反応が進行するリチオ化剤であれば特に限定はなく、例えば、n-ブチルリチウム(n-BuLi)などが挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(III)1当量に対して、0.5~5当量が好ましく、より好ましくは0.9~1.5当量の割合で使用することができる。
【0034】
ホウ素化剤としては、当該反応が進行するホウ素化剤であれば特に限定はなく、例えば、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランなどが挙げられる。ホウ素化剤の使用量は、化合物(III)1当量に対して、0.5~5当量が好ましく、より好ましくは0.9~1.5当量の割合で使用することができる。
【0035】
工程Bの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0036】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-78~50℃が好ましく、より好ましくは-78~30℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Bにより製造された化合物(IV)は、工程Cに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0037】
<工程C>
次いで、化合物(IV)と一般式(V)で示される化合物(以下「化合物(V)」という)とから、一般式(VI)で示される化合物(以下「化合物(VI)」という)を製造する(工程C)。化合物(V)において、Rは炭素原子数1-4の直鎖状のアルキル基である。化合物(VI)において、R及びRの炭素原子数は前述の通りである。
【0038】
工程Cは、具体的には、例えば、化合物(IV)と化合物(V)を反応(クロスカップリング反応)させることにより、化合物(VI)を製造する。
【0039】
化合物(V)の使用量は、化合物(IV)1当量に対して、0.25~1.0当量が好ましく、より好ましくは0.3~0.8当量の割合で使用することができる。
【0040】
工程Cの反応は、通常、触媒、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。
【0041】
触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドなどが挙げられる。触媒の使用量は、化合物(IV)1当量に対して、0.01~0.5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.2当量の割合で使用することができる。
【0042】
塩基は、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はないが、例えば、炭酸セシウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(IV)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。
【0043】
溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、トルエンなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0044】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、50~200℃が好ましく、より好ましくは80~180℃である。反応時間は、通常、0.1~48時間である。工程Cで得られた化合物(VI)は、工程Dに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0045】
<工程D>
次いで、化合物(VI)から、一般式(VII)で示される化合物(以下「化合物(VII)」という)を製造する(工程D)。化合物(VII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0046】
工程Dは、具体的には、例えば、化合物(VI)と塩基を反応(加水分解反応)させることにより、化合物(VII)を製造する。
【0047】
塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はなく、例えば、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(VI)1当量に対して、2~10当量が好ましく、より好ましくは2~6当量の割合で使用することができる。
【0048】
工程Dの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、水、メタノール、エタノールなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0049】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、室温~120℃が好ましく、より好ましくは室温~80℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Dにより製造された化合物(VII)は、工程Eに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0050】
<工程E>
次いで、化合物(VII)から、一般式(VIII)で示される化合物(以下「化合物(VIII)」という)を製造する(工程E)。化合物(VIII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0051】
工程Eは、具体的には、例えば、化合物(VII)と塩素化剤を作用させた後に、ピペリジンを反応させることにより、化合物(VIII)を製造する。
【0052】
塩素化剤としては、当該反応が進行する塩素化剤であれば特に限定はなく、例えば、塩化オキサリル、塩化チオニルなどが挙げられる。塩素化剤の使用量は、化合物(VII)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~12当量の割合で使用することができる。
【0053】
ピペリジンの使用量は、化合物(VII)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~12当量の割合で使用することができる。
【0054】
工程Eの反応は、通常、触媒及び溶媒の存在下で行うことができる。
【0055】
触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。使用する量も特に制限はなく、当該反応が進行するように適宜調整できる。
【0056】
溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、塩化メチレン、ジエチルエーテルなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0057】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-40~60℃が好ましく、より好ましくは-20~40℃である。反応時間は、通常、0.1~48時間である。工程Eで得られた化合物(VIII)は、工程Fに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0058】
<工程F>
次いで、化合物(VIII)から、一般式(IX)で示される化合物(以下「化合物(IX)」という)を製造する(工程F)。化合物(IX)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0059】
工程Fは、具体的には、例えば、化合物(VIII)にリチオ化剤を反応させることにより、化合物(IX)を製造する。
【0060】
リチオ化剤としては、当該反応が進行するリチオ化剤であれば特に限定はなく、例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)などが挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(VIII)1当量に対して、2~50当量が好ましく、より好ましくは2~25当量の割合で使用することができる。
【0061】
工程Fの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0062】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-78~50℃が好ましく、より好ましくは-20~30℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Fにより製造された化合物(IX)は、工程Iに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0063】
<工程G>
次に、一般式(X)で示される化合物(以下「化合物(X)」という)から、一般式(XI)で示される化合物(以下「化合物(XI)」という)を製造する(工程G)。化合物(X)及び化合物(XI)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0064】
工程Gは、具体的には、例えば、化合物(X)に酸化剤を反応(酸化的ホモカップリング反応)させることにより、化合物(XI)を製造する。
【0065】
酸化剤としては、当該反応が進行する酸化剤であれば特に限定はなく、例えば、炭酸銀などが挙げられる。酸化剤の使用量は、化合物(X)1当量に対して、1~10当量が好ましく、より好ましくは1~3当量の割合で使用することができる。
【0066】
工程Gの反応は、通常、触媒、配位子及び溶媒の存在下で行うことができる。
【0067】
触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、酢酸パラジウムなどが挙げられる。触媒の使用量は、化合物(X)1当量に対して、0.01~0.5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.2当量の割合で使用することができる。
【0068】
配位子としては、当該反応が進行する配位子であれば特に限定はなく、例えば、2,2’-ビピリジルなどが挙げられる。配位子の使用量は、化合物(X)1当量に対して、0.01~0.5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.2当量の割合で使用することができる。
【0069】
溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0070】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、室温~200℃が好ましく、より好ましくは50~180℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Gで得られた化合物(XI)は、工程Hに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0071】
<工程H>
次いで、化合物(XI)から、一般式(XII)で示される化合物(以下「化合物(XII)」という)を製造する(工程H)。化合物(XII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0072】
工程Hは、具体的には、例えば、化合物(XI)に臭素化剤を反応(臭素化反応)させることにより、化合物(XII)を製造する。
【0073】
臭素化剤としては、当該反応が進行する臭素化剤であれば特に限定はなく、例えば、N-ブロモスクシンイミド(NBS)などが挙げられる。臭素化剤の使用量は、化合物(XI)1当量に対して、0.5~2当量が好ましく、より好ましくは0.8~1.2当量の割合で使用することができる。
【0074】
工程Hの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、クロロホルム、酢酸などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。反応温度は、通常、-40~60℃が好ましく、より好ましくは-20~40℃である。
【0075】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Hで得られた化合物(XII)は、工程Iに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0076】
<工程I>
次に、化合物(IX)と化合物(XII)とから、一般式(XIII)で示される化合物(以下「化合物(XIII)」という)を製造する(工程I)。化合物(XIII)において、R及びRの炭素原子数は前述の通りである。
【0077】
工程Iは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(XII)にリチオ化剤を作用させた後に、化合物(IX)を反応させ、化合物(XIII)を製造する。
【0078】
リチオ化剤としては、当該反応が進行するリチオ化剤であれば特に限定はなく、例えば、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)などが挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(XII)1当量に対して、0.5~2当量が好ましく、より好ましくは0.7~1.2当量の割合で使用することができる。
【0079】
化合物(IX)の使用量は、化合物(XII)1当量に対して、0.1~2当量が好ましく、より好ましくは0.1~1当量の割合で使用することができる。
【0080】
工程Iの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサンなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0081】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-100~50℃が好ましく、より好ましくは-100~0℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Iにより製造された化合物(XIII)は、工程Jに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0082】
<工程J>
次いで、化合物(XIII)から、一般式(XIV)で示される化合物(以下「化合物(XIV)」という)を製造する(工程J)。化合物(XIV)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0083】
工程Jは、具体的には、例えば、化合物(XIII)に臭素化剤を反応させることにより、化合物(XIV)を製造する。
【0084】
臭素化剤としては、当該反応が進行する臭素化剤であれば特に限定はなく、例えば、三臭化ホウ素などが挙げられる。臭素化剤の使用量は、化合物(XIII)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。
【0085】
工程Jの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、塩化メチレンなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0086】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-40~60℃が好ましく、より好ましくは-20~40℃である。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Jで得られた化合物(XIV)は、工程Kに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0087】
<工程K>
次いで、化合物(XIV)から、一般式(XV)で示される化合物(以下「化合物(XV)」という)を製造する(工程K)。化合物(XV)において、Rの炭素原子数は前述の通りであり、Rは、炭素原子数1-8の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。ここで、Rの炭素原子数は1-8であれば好ましく、炭素原子数が1-4であればより好ましい。
【0088】
工程Kは、具体的には、例えば、化合物(XIV)とリチオ化剤を作用させた後に、スズ化剤を反応させることにより、化合物(XV)を製造する。
【0089】
リチオ化剤としては、当該反応が進行するリチオ化剤であれば特に限定はなく、例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)などが挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(XIV)1当量に対して、1~100当量が好ましく、より好ましくは2~50当量の割合で使用することができる。
【0090】
スズ化剤としては、当該反応が進行するスズ化剤であれば特に限定はなく、例えば、トリメチルスズクロリド、トリブチルスズクロリドなどが挙げられる。スズ化剤の使用量は、化合物(XIV)1当量に対して、1~100当量が好ましく、より好ましくは2~50当量の割合で使用することができる。
【0091】
工程Kの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0092】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-100~50℃が好ましく、より好ましくは-78~30℃である。反応時間は、通常、0.05~48時間である。工程Kにより製造された化合物(XV)は、工程Qに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0093】
<工程L>
次に、一般式(XVI)で示される化合物(以下「化合物(XVI)」という)から、一般式(XVII)で示される化合物(以下「化合物(XVII)」という)を製造する(工程L)。化合物(XVI)及び化合物(XVII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0094】
工程Lは、具体的には、例えば、化合物(XVI)に臭素化剤を反応させることにより、化合物(XVII)を製造する。
【0095】
臭素化剤としては、当該反応が進行する臭素化剤であれば特に限定はなく、例えば、臭素などが挙げられる。臭素化剤の使用量は、化合物(XVI)1当量に対して、0.5~3当量が好ましく、より好ましくは0.8~2当量の割合で使用することができる。
【0096】
工程Lの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、臭化水素酸などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0097】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-20~150℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Lで得られた化合物(XVII)は、工程Mに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0098】
<工程M>
次いで、化合物(XVII)から、一般式(XVIII)で示される化合物(以下「化合物(XVIII)」という)を製造する(工程M)。化合物(XVIII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0099】
工程Mは、具体的には、例えば、化合物(XVII)に臭素化剤とトリオキサンを反応させることにより、化合物(XVIII)を製造する。
【0100】
臭素化剤としては、当該反応が進行する臭素化剤であれば特に限定はなく、例えば、臭化水素などが挙げられる。臭素化剤の使用量は、化合物(XVII)1当量に対して、0.5~30当量が好ましく、より好ましくは1~15当量の割合で使用することができる。
【0101】
トリオキサンの使用量は、化合物(XVII)1当量に対して、0.5~20当量が好ましく、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。
【0102】
工程Mの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、酢酸、硫酸などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0103】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、室温から180℃が好ましく、より好ましくは60~150℃である。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Mで得られた化合物(XVIII)は、工程Nに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0104】
<工程N>
次いで、化合物(XVIII)から、一般式(XIX)で示される化合物(以下「化合物(XIX)」という)を製造する(工程N)。化合物(XIX)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0105】
工程Nは、具体的には、例えば、化合物(XVIII)に酢酸カリウムを反応させることにより、化合物(XIX)を製造する。
【0106】
酢酸カリウムの使用量は、化合物(XVIII)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。
【0107】
工程Nの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0108】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、室温から180℃が好ましく、より好ましくは60~150℃である。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Nで得られた化合物(XIX)は、工程Оに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0109】
<工程О>
次いで、化合物(XIX)から、一般式(XX)で示される化合物(以下「化合物(XX)」という)を製造する(工程О)。化合物(XX)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0110】
工程Оは、具体的には、例えば、化合物(XIX)に塩基を反応(加水分解反応)させることにより、化合物(XX)を製造する。
【0111】
塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はなく、例えば、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(XIX)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。
【0112】
工程Оの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、水、メタノールなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0113】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、室温から180℃が好ましく、より好ましくは60~150℃である。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Оで得られた化合物(XX)は、工程Pに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0114】
<工程P>
次いで、化合物(XX)から、一般式(XXI)で示される化合物(以下「化合物(XXI)」という)を製造する(工程P)。化合物(XXI)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0115】
工程Pは、具体的には、例えば、化合物(XX)に酸化剤を反応(酸化反応)させることにより、化合物(XXI)を製造する。
【0116】
酸化剤としては、当該反応が進行する酸化剤であれば特に限定はなく、例えば、酸化マンガンなどが挙げられる。酸化剤の使用量は、化合物(XX)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは1~15当量の割合で使用することができる。
【0117】
工程Pの反応は、通常、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、塩化メチレンなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0118】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-20~80℃が好ましく、より好ましくは0~50℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Pで得られた化合物(XXI)は、工程Qに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0119】
<工程Q>
次いで、化合物(XXI)と化合物(XV)とから、一般式(XXII)で示される化合物(以下「化合物(XXII)」という)を製造する(工程Q)。化合物(XXII)において、R及びRの炭素原子数は前述の通りである。
【0120】
工程Qは、具体的には、例えば、化合物(XXI)と化合物(XV)を反応(クロスカップリング反応)させることにより、化合物(XXII)を製造する。
【0121】
化合物(XXI)の使用量は、化合物(XV)1当量に対して、1~8当量が好ましく、より好ましくは2~6当量の割合で使用することができる。
【0122】
工程Qの反応は、通常、触媒及び溶媒の存在下で行うことができる。
【0123】
触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドなどが挙げられる。触媒の使用量は、化合物(XV)1当量に対して、0.01~0.5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.3当量の割合で使用することができる。
【0124】
溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、トルエンなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0125】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、50~250℃が好ましく、より好ましくは80~200℃である。反応時間は、通常、0.05~48時間である。工程Qで得られた化合物(XXII)は、工程Rに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0126】
<工程R>
次いで、化合物(XXII)と一般式(XXIII)で示される化合物(以下「化合物(XXIII)」という)とから、一般式(I)で示される化合物(以下「化合物(I)」という)を製造する(工程R)。化合物(XXIII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。化合物(I)において、R、R及びRの炭素原子数は前述の通りである。
【0127】
工程Rは、具体的には、例えば、化合物(XXII)と化合物(XXIII)とを反応(クネーフェナーゲル縮合反応)させることにより、化合物(I)を製造する。
【0128】
化合物(XXIII)の使用量は、化合物(XXII)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。
【0129】
工程Rの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。
【0130】
塩基としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、ピペリジンなどが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(XXII)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは2~15当量の割合で使用することができる。
【0131】
溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、クロロホルムなどが挙げられ、これらの溶媒を併用してもよい。
【0132】
当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、0~120℃が好ましく、より好ましくは室温から100℃である。反応時間は、通常、0.5~48時間である。工程Rで製造された化合物(I)は公知の方法で精製しても良い。このようにして、本発明の化合物(I)を製造することができる。
【0133】
(有機半導体材料)
本発明の化合物(I)は、有機半導体材料として用いることができる。特に、n型有機半導体材料として優れた効果を有する。
【0134】
(有機半導体素子)
前記の有機半導体材料を含有する層を基板上に形成して、有機半導体素子として用いることができる。基板としては、例えば、ガラス、樹脂を用いても良い。有機半導体材料を含む層は、溶媒に溶解した溶液を塗布したり、有機半導体材料を蒸着したりして、公知の方法で形成することができる。
【0135】
(有機半導体デバイス)
前記の有機半導体素子を用いて、必要に応じて電極や配線を施して、有機半導体デバイスとすることができる。有機半導体デバイスとしては、有機エレクトロニクス全般、例えば、有機太陽電池、有機トランジスタ(有機電界効果型トランジスタ、光トランジスタなど)、有機エレクトロルミネッセンス、センサ(光センサなど)、メモリ、電子写真用感光体、コンデンサ及び/又はバッテリーなどにおいても使用することができる。また、プロトン導電膜の材料としても使用し得る。
【0136】
(有機太陽電池)
前記の有機半導体材料を用いて、有機太陽電池を作製することができる。有機太陽電池は、例えば、基板上に電極層、電子輸送層(電子取出層)、光電変換層(光活性層)、正孔輸送層(正孔取出層)、及び電極層を順に積層した構造を有する。本発明に係る化合物を含む有機半導体材料は、例えば、光電変換層(光活性層)を形成する。
【0137】
基板としては、例えば、受光性能を阻害しないよう、光透過性を有する基板が挙げられる。そのような基板としては、例えば、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロックなどが用いられる他、無色又は有色の透明性を有する樹脂を用いても良い。また、そのような樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、及びポリメチルペンテンなどが挙げられる。
【0138】
電極としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)電極、銀電極、アルミニウム電極、金電極、クロム電極、酸化チタン電極、酸化亜鉛電極などが挙げられる。
【0139】
電子輸送層(電子取出層)としては、例えば、フェナントロリン、バソキュプロイン、及びペリレンなどの有機半導体分子並びにこれらの誘導体;遷移金属錯体などの有機物;LiF、CsF、CsO、CsCO、TiOx(xは0~2の任意の数字)、及びZnOなどの無機化合物;Ca、Baなどの金属;などが挙げられる。
【0140】
正孔輸送層(正孔取出層)としては、例えば、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)polystyrene sulfonate(PEDOT:PSS)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、及びポリカルバゾールなどの導電性高分子;MoO及びWOなどの無機化合物;フタロシアニン、及びポルフィリンなどの有機半導体分子並びにこれらの誘導体;遷移金属錯体;トリフェニルアミン化合物及びヒドラジン化合物などの電荷移動剤;TTF(テトラチアフルバレン)のような電荷移動錯体;などの正孔移動度が高い材料が挙げられる。
【0141】
本発明の化合物(I)をn型半導体材料として用いる場合において、発電材料として共に用いるp型半導体材料としては、ドナー型π共役高分子やドナーアクセプタ型π共役高分子などが挙げられる。
【0142】
ドナー型π共役高分子としては、ポリ-3-へキシルチオフェン(P3HT)、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリ-アルコキシ-p-フェニレンビニレン、ポリ-9,9-ジアルキルフルオレン、ポリ-p-フェニレンビニレンを挙げることができる。
ドナーアクセプタ型π共役高分子中のドナーユニットとしては、ベンゾチオフェン、ジチエノシロール、N-アルキルカルバゾールが、またアクセプタユニットとしては、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェン、チオフェンピロールジオンなどが挙げられ、具体的には、これらのユニットを組み合わせた、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン-co-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]チオフェン)(PTBxシリーズ)、ポリ(ジチエノ[1,2-b:4,5-b’][3,2-b:2’,3’-d]シロール-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)類などの高分子化合物が挙げられる。
【0143】
これらのうちで、好ましいものとしては、ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7)、ポリ[4,8-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン]-2,6-ジイル-alt-((5-オクチルチエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオン)-1,3-ジイル)(PBCTTPD)、ポリ[(4,4’-ビス(2-エチルヘキシル)ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール)-2,6-ジイル-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル)(PSBTBT)、ポリ[N-9’’-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-alt-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)](PCDTBT)、ポリ[1-(6-{4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]-6-メチルベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2-イル}{3-フルオロ-4-メチルチエノ[3,4-b]チオフェン-2-イル}-1-オクタノン)(PBDTTT-CF)が挙げられる。
【実施例0144】
以下、実施例に基づき、有機半導体材料を構成する各種化合物の合成、化合物を含む有機半導体材料を用いた有機太陽電池の特性について更に詳しく説明する。なお、これらの記載は本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
後述するように、得られた化合物の物性データとして、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを測定し、具体的には、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMM-ECS400」又はブルカー株式会社製の商品名「ULTRASHIELD300」を用いて測定した。
ケミカルシフトは、百万分率(ppm)で表し、内部標準(0ppm)には、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで表し、略号s、d、t、q、sept、dd、m及びbrは、各々、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、七重線(septet)、複合二重線(double doublet)、多重線(multiplet)、及び広幅線(broad)を表すものとする。
【0146】
実施例で用いた全ての化学物質及びカラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲル及びアルミナは、いずれも試薬級の品質のものを用い、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、又はシグマアルドリッチジャパン株式会社より購入したものを用いた。
【0147】
[化合物1~5]
以下、化合物1~20の化学構造式は、後述の化学反応式を参照されたい。
(化合物1の合成)
反応容器にチオフェン(1.3g、15mmol)、THF(18mL)を投入して、反応容器内を窒素置換し-78℃に冷却した後に、n-ブチルリチウム(10.8mL、17.3mmol)を滴下投入し-78℃で30分間攪拌した後、-78℃下でトリイソプロピルシリルクロリド(3.5mL、17mmol)を滴下投入した後に室温に昇温し終夜攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物はヘプタンを移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、化合物1を無色オイルで得た(3.72g、収率99%)。
【0148】
得られた化合物1の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.61(dd,J=4.6Hz,0.88Hz,2H),7.29(dd,J=3.3Hz,0.88Hz,2H),7.21(dd,J=4.6Hz,3.3Hz,2H),1.32(sept,J=7.2Hz,6H),1.10(d,J=7.2Hz,36H)。
【0149】
(化合物2の合成)
反応容器に化合物1(4.0g、17mmol)、THF(75mL)を投入して、反応容器内を窒素置換し-78℃に冷却した後に、n-ブチルリチウム(12mL、19mmol)を滴下投入し-78℃で30分間攪拌した後、-78℃下で2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(3.5mL、17mmol)を滴下投入した後に室温に昇温し終夜攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過精製を行い、酢酸エチル溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた反応混合物を酢酸エチルとヘプタンの混合溶媒を移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、化合物2を無色オイルで得た(2.93g、収率47%)。
【0150】
得られた化合物2の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.73(d,J=3.3Hz,2H),7.35(d,J=3.3Hz,2H),1.49-1.29(m,30H),1.09(d,J=7.2Hz,18H)。
【0151】
(化合物3の合成)
反応容器に2,5-ジブロモテレフタル酸ジエチル(0.62g、1.6mmol)、化合物2(1.3g、3.3mmol)、炭酸セシウム(1.2g、3.7mmol)、トルエン(20mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.19g、0.16mmol)を投入して、反応容器内を窒素置換した後、120℃で終夜攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を酢酸エチルとヘプタンの混合溶媒を移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、化合物3を白色固体で得た(0.83g、収率74%)。
【0152】
得られた化合物3の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.81(s,2H),7.21(d,J=3.5Hz,2H),7.17(d,J=3.5Hz,2H),4.18(q,J=7.2Hz,4H),1.32(sept,J=7.2Hz,6H),1.18-1.05(m,42H)。
【0153】
(化合物4の合成)
反応容器に化合物3(3.47g、4.96mmol)、エタノール(150mL)、4N-水酸化ナトリウム水溶液(6.2mL、24.8mmol)を順次投入し、60℃で終夜攪拌した。その後、反応混合物を0℃まで冷却し、2N-塩酸(17.5mL)を加えて反応液を酸性として、得られた析出物をろ取した。更に、得られたろ液に含まれるエタノールを減圧下で留去し、酢酸エチルで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、前述の析出物と併せて黄色固体として、化合物4を黄色固体で得た(3.20g、収率99%)。
【0154】
得られた化合物4の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,DMSO-d):δ=7.73(s,2H),7.39(d,J=3.5Hz,2H),7.32(d,J=3.5Hz,2H),1.32(sept,J=7.3Hz,6H),1.09(d,J=7.3Hz,36H)。
【0155】
(化合物5の合成)
反応容器に化合物4(3.20g、4.98mmol)、及び塩化メチレン(350mL)を加えた後、反応容器内を0℃に冷却し、塩化オキサリル(6.32g、49.8mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド1滴加え、0℃で30分間、次いで室温で3時間攪拌した。得られた反応混合物から析出物をろ過により取り除き、ろ液に含まれる溶媒を減圧下で留去した後、ジエチルエーテル(300mL)を加えて反応容器を0℃に冷却しピペリジン(4.24g、49.8mmol)を加え、0℃で10分間、次いで室温で20分攪拌した。反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過精製を行い、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄して、化合物5を白色固体で得た(3.87g、収率99%)。
【0156】
得られた化合物5の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.55(s,2H),7.45(d,J=3.5Hz,2H),7.23(d,J=3.5Hz,2H),4.14-4.00(m,2H),3.31-2.82(m,8H),1.48-1.28(m,14H),1.19-1.08(m,36H)。
【0157】
(化合物6の合成)
反応容器にリチウムジイソプロピルアミドのTHF溶液(50mL、25.8mmol)を調製し、0℃で化合物5(1.00g、1.29mmol)、THF(250mL)を順次加えて、0℃で2時間攪拌した。次いで、反応混合物に氷水(HO)を加えた後に、クロロホルムで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンと塩化メチレンの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物6を青色固体で得た(0.57g、収率73%)。
【0158】
得られた化合物6の物性データは次の通りである。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.27(s,2H),7.26(s,2H),1.35(sept,J=7.2Hz,6H),1.12(d,J=7.2Hz,36H)。
【0159】
上述した化合物6の合成における反応式を以下に示す。
【0160】
【化11】
【0161】
[化合物7~8]
(化合物7の合成)
反応容器に2-ヘキシルチオフェン(3.00g、17.8mmol)、酢酸パラジウム(281mg、1.25mmol)、2,2'-ビピリジル(195mg、1.25mmol)、炭酸銀(7.17g、26.0mmol)、1,4-ジオキサン(45mL)を投入し、反応容器を窒素置換した後に終夜で加熱還流した。その後、室温まで空冷後に反応混合物をセライトろ過し、ろ液に含まれる溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物7を黄褐色オイルで得た(5.26g、収率88%)。
【0162】
得られた化合物7の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=6.89(d,J=3.5Hz,2H),6.67-6.63(m,2H),2.77(t,J=7.4Hz,4H),1.74-1.60(m,4H),1.43-1.25(m,12H),0.94-0.84(m,6H)。
【0163】
(化合物8の合成)
反応容器に化合物7(5.14g、15.3mmol)、クロロホルム(150mL)、酢酸(75mL)を加えて反応容器を0℃に冷却した後に、N-ブロモスクシンイミド(2.86g、16.1mmol)を加えて0℃で1時間撹拌した。次いで室温まで昇温し室温で1時間攪拌した。得られた反応混合物に氷水を加えた後にクロロホルムで有機層を抽出し、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過精製を行い、溶媒を減圧下で留去した。得られた反応混合物を、ヘキサンを移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物8を黄色オイルで得た(5.62g、収率89%)。
【0164】
得られた化合物8の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.18(d,J=3.6Hz,1H),6.75-6.72(m,1H),6.70-6.68(m,1H),2.86-2.71(m,4H),1.77-1.61(m,4H),1.46-1.27(m,12H),0.97-0.87(m,6H)。
【0165】
上述した化合物8の合成における反応式を以下に示す。
【0166】
【化12】
【0167】
[化合物9~11]
(化合物9の合成)
反応容器に化合物8(4.88g、11.8mmol)及びTHF(180mL)を加えて反応容器内を窒素置換した。その後、反応容器を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(4.14mL、10.9mmol)を加えて-78℃で1.5時間攪拌した。その後、-78℃で反応混合物に化合物6(1.02g、1.68mmol)のTHF(150mL)溶液を加えて、-78℃で1時間攪拌し、0℃に昇温し1時間攪拌した。次いで、反応混合物に氷水、2N-塩酸(32mL)を加えた後に、クロロホルムで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物9を緑色オイルで得た(1.02g、収率48%)。
【0168】
得られた化合物9の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.11(s,2H),7.05(s,2H),6.95(s,2H),6.34(d,J=3.6Hz,2H),6.25(d,J=3.6Hz,2H),2.76(t,J=7.6Hz,4H),2.58(t,J=7.6Hz,4H),2.45(s,2H),1.69(sept,J=8.0Hz,4H),1.45-1.22(m,26H),1.18-1.05(m,36H),0.94-0.86(m,18H)。
【0169】
(化合物10の合成)
反応容器に化合物9(790mg、0.619mmol)、塩化メチレン(79mL)を投入し、反応容器を0℃に冷却した後に三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液(3.71mL、3.71mmol)を加えて、0℃で1時間攪拌した。次いで、氷水を加えた後に、クロロホルムで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンとクロロホルムの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物10を緑色オイルで得た(0.325g、収率57%)。
【0170】
得られた化合物10の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.12(d,J=4.8Hz,2H),6.87(s,2H),6.53(d,J=4.8Hz,2H),6.19(s,4H),2.73(t,J=7.6Hz,8H),1.69-1.60(m,8H),1.36-1.24(m,24H),0.85(t,J=7.8Hz,12H)。
【0171】
(化合物11の合成)
反応容器にリチウムジイソプロピルアミドのTHF溶液(12.3mmol)を調製し、-78℃で化合物10(0.38g、0.41mmol)、THF(10mL)を加えて、-78℃で1時間攪拌した後、トリブチルスズクロリド(BuSnCl)(4.8g、18.5mmol)を加えて、-78℃で15分攪拌した後、室温まで昇温し、得られた反応混合物の溶媒を減圧下で留去した。次いで、反応混合物に水を加えた後に、クロロホルムで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンを移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物11を緑色オイルで得た(534mg、収率86%)。
【0172】
得られた化合物11の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=6.82(s,2H),6.53(s,2H),6.19(s,4H),2.70(t,J=7.6Hz,8H),1.71-1.54(m,8H),1.39-1.24(m,48H),1.19(t,J=8.0Hz,12H),0.93-0.81(m,30H)。
【0173】
上述した化合物11の合成における反応式を以下に示す。
【0174】
【化13】
【0175】
[化合物12~16]
(化合物12の合成)
反応容器に2-n-オクチルベンゾトリアゾール(3.89g、16.8mmol)、48%の臭化水素酸(40mL)を加えて加熱還流しながら臭素(1.29mL、25.0mmol)を30分間かけて滴下しながら加えた。その後、100℃で1時間反応した後に反応容器を室温まで冷却した。得られた反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、次いで、ヘプタンで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、化合物12を白色オイルで得た(5.44g、収率99%)。
【0176】
得られた化合物12の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.82(d,J=8.4Hz,1H),7.57(d,J=7.2Hz,1H),7.26(dd,J=8.4Hz,7.2Hz,1H),4.80-4.70(m,2H),2.20-2.07(m,2H),1.42-1.19(m,10H),0.92-0.82(m,3H)。
【0177】
(化合物13の合成)
反応容器に化合物12(5.4g、7.1mmol)、30%の臭化水素酢酸溶液(16mL、82mmol)、酢酸(8.0mL)、トリオキサン(1.57g、34.9mmol)、濃硫酸(0.08mL)を順次加え、110℃で終夜攪拌した。次いで、反応容器を室温まで冷却し、反応混合物に氷水を加えて酢酸エチルで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、化合物13を白色オイルで得た(7.6g、収率99%)。
【0178】
得られた化合物13の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.57(d,J=8.0Hz,1H),7.53(d,J=8.0Hz,1H),4.86(s,3H),4.79-4.76(m,2H),2.18-2.08(m,2H),1.44-1.19(m,10H),0.91-0.82(m,3H)。
【0179】
(化合物14の合成)
反応容器に化合物13(7.6g、19mmol)、DMF(20mL)、酢酸カリウム(8.0g、81mmol)を加えて、105℃で終夜攪拌した。反応容器を室温まで冷却し、反応混合物に水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物14を黄色固体で得た(2.7g、収率38%)。
【0180】
得られた化合物14の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.55(d,J=7.4Hz,1H),7.25(d,J=7.4Hz,1H),5.49(s,2H),4.76(t,J=7.4Hz,2H),2.14(s,3H),2.13-2.10(m,2H),1.38-1.24(m,12H),0.87(t,J=7.2Hz,3H)。
【0181】
(化合物15の合成)
反応容器に化合物14(2.7g、7.1mmol)、メタノール(24mL)、飽和炭酸カリウム溶液(6mL、36mmol)を加えて、90℃で終夜攪拌した。その後、反応容器を室温まで冷却し、メタノールを減圧下で留去した。次いで、塩化メチレンで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物15を黄色固体で得た(2.27g、収率94%)。
【0182】
得られた化合物15の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=7.54(d,J=7.6Hz,1H),7.22(d,J=7.6Hz,1H),5.06(s,2H),4.74(t,J=7.4Hz,2H),2.18-2.08(m,2H),1.38-1.24(m,12H),0.87(t,J=7.2Hz,3H)。
【0183】
(化合物16の合成)
反応容器に化合物15(2.27g、6.71mmol)、塩化メチレン(20mL)、酸化マンガン(IV)(5.76g、66.3mmol)を順次加えて室温で終夜攪拌した。次いで、析出した不純物をろ過にて除去した後に、塩化メチレンで抽出した反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を移動相とするアルミナカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物16を黄色固体で得た(1.64g、収率74%)。
【0184】
得られた化合物16の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=10.44(s,1H),7.84(d,J=7.4Hz,1H),7.67(d,J=7.4Hz,1H),4.85(t,J=7.6Hz,2H),2.22-2.12(m,2H),1.38-1.24(m,12H),0.87(t,J=7.2Hz,3H)。
【0185】
上述した化合物16の合成における反応式を以下に示す。
【0186】
【化14】
【0187】
[化合物17~18]
(化合物17の合成)
反応容器に化合物11(378mg、0.251mmol)、化合物16(340mg、1.00mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(58mg、0.050mmol)、トルエン(10mL)を加えて窒素雰囲気とした。その後、マイクロ波反応装置で180℃で10分間攪拌した。得られた反応混合物の溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、クロロホルムを移動相とするゲル浸透クロマトグラフィーにより精製し化合物17を暗赤褐色固体で得た(343mg、収率95%)。
【0188】
得られた化合物17の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=10.36(s,2H),7.88(d,J=7.6Hz,2H),7.68(d,J=7.6Hz,2H),7.58(s,2H),7.00(s,2H),6.28(s,4H),4.82(t,J=7.2Hz,4H),2.76(t,J=7.6Hz,8H),2.22-2.12(m,4H),1.72-1.60(m,8H),1.39-1.24(m,44H),0.88-0.82(m,18H)。
【0189】
(化合物18の合成)
反応容器に化合物17(321mg、0.223mmol)、3-エチルロダニン(287mg、1.49mmol)、クロロホルム(10mL)及びピぺリジン(0.2mL、2mmol)を加え、反応容器を窒素雰囲気とした後に、75℃で12時間撹拌した。反応液に20mLのメタノールを加え、生じた黒色沈殿をろ過回収した。得られた粉末状粗生成物をクロロホルムとn-ヘキサンの混合溶液を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製した後、クロロホルムとアセトンを利用した再結晶処理を行い、化合物18を暗紫色固体で得た(120mg、収率31%)。
【0190】
得られた化合物18の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.24(s,2H),7.62(d,J=7.6Hz,2H),7.54(s,2H),7.43(d,J=7.6Hz,2H),6.98(s,2H),6.28(s,4H),4.78(t,J=7.2Hz,4H),4.22(q,J=7.2Hz,4H),2.76(t,J=7.6Hz,8H),2.20-2.08(m,4H),1.66-1.54(m,8H),1.39-1.24(m,50H),0.88-0.82(m,18H)。
【0191】
上述した化合物18の合成における反応式を以下に示す。
【0192】
【化15】
【0193】
[化合物19~20]
(化合物19~20の合成)
化合物7、化合物8、化合物9、化合物10、化合物11、化合物17、化合物18のそれぞれのヘキシル基(-C13)をオクチル基(-C17)又は2-エチルヘキシル基(-CH(C)C)に変更した以外は、上記合成例と同様にして化合物19、化合物20を合成した。
【0194】
得られた暗紫色固体の化合物19の物性を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.24(s,2H),7.62(d,J=7.8Hz,2H),7.54(s,2H),7.43(d,J=7.8Hz,2H),6.98(s,2H),6.28(s,4H),4.78(t,J=7.4Hz,4H),4.23(q,J=7.2Hz,4H),2.76(t,J=7.6Hz,8H),2.24-2.12(m,4H),1.74-1.65(m,8H),1.39-1.18(m,55H),0.88-0.80(m,18H)。
【0195】
得られた暗紫色固体の化合物20の物性データを以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ=8.24(s,2H),7.61(d,J=7.8Hz,2H),7.55(t,J=3.4Hz,2H),7.43(d,J=7.8Hz,2H),6.98(t,J=1.6Hz,2H),6.25(t,J=2.0Hz,4H),4.77(t,J=7.4Hz,4H),4.22(q,J=7.2Hz,4H),2.80-2.69(m,8H),2.26-2.14(m,4H),1.39-1.18(m,56H),0.88-0.82(m,24H),0.79-0.74(m,12H)。
【0196】
合成した化合物19及び化合物20の構造式を以下に示す。
【0197】
【化16】
【0198】
続いて、合成した化合物18、化合物19及び化合物20を用いて有機太陽電池を作製し、光電変換効率などの性能を評価した。
【0199】
[有機太陽電池の作製と性能評価]
(実施例1)
化合物18をn型有機半導体材料として用いて有機太陽電池の評価を行った。
p型有機半導体材料としてはP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、Sigma-Aldrich社製)を、電極としてはITO(陰極)及び銀(陽極)を、正孔輸送材料としては酸化モリブデンを、電子輸送材料としては酸化亜鉛をそれぞれ用いた。
まず、ITO膜(150nm)がパターニングされたガラス基板(0.8mm)をトルエン、アセトン、純水、イソプロピルアルコールでそれぞれ15分間超音波洗浄した後、オゾンUVを90分照射して表面を洗浄した。その後、スピンコート法製膜装置を用い、前記ITO膜がパターニングされたガラス基板上に、酢酸亜鉛二水和物、2-メトキシエタノール及び2-エタノールアミン溶液をスピンコート(4000rpm、15秒間)し、酢酸亜鉛層を形成させて200℃で30分間加熱することで酸化亜鉛層(30nm)を形成した。次いで、スピンコート法製膜装置を用い、事前にクロロベンゼン(1mL)に溶かしたP3HT(20mg)と化合物18(20mg)を含有する溶液を前述の酸化亜鉛層の上にスピンコート(1000rpm、60秒間)し、有機半導体層(110nm)を形成させて、積層体を得た。次いで、小型高真空蒸着装置を用い、前記で作製した積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、正孔輸送層としての酸化モリブデン層(10nm)、金属電極としての銀層(100nm)を製膜し有機太陽電池を作製した。
【0200】
得られた有機太陽電池に、ソーラーシュミレーター(三永電機製作所社製、XES-301S、AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。
【0201】
電流密度-電圧特性をグラフ化し、それに基づいて短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、形状因子FFを求めたところ、Jsc=8.77mA/cm、Voc=0.91V、FF=0.64であった。光電変換効率(η)を、式η=(Jsc×Voc×FF)/100より算出したところ、5.11%であった。また、緑色光領域(500-600nm)における光電変換効率(PCE-GR)は、ACS Sustainable Chem. Eng. 11,1548-1556(2023)を参考に、以下の(式1)により算出したところ、17.5%であった。
【0202】
【数1】

ここで、EQEλは有機太陽電池の外部収率、nPhotonλは波長λにおける疑似太陽光(AM1.5G)の光子束、Pは疑似太陽光(AM1.5G)中の500-600nmの波長領域で照射されるエネルギー(15.1mW/cm)を表す。
【0203】
(実施例2)
化合物19をn型有機半導体材料として用いて有機太陽電池の評価を行った。実施例1の化合物18を化合物19に変更した以外は実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その特性を評価した。
【0204】
短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、形状因子FF、光電変換効率(η)、及び緑色光領域(500-600nm)における光電変換効率(PCE-GR)を求めたところ、Jsc=6.71mA/cm、Voc=0.81V、FF=0.48、η=2.60%、PCE-GR=7.60%であった。
【0205】
(実施例3)
化合物20をn型有機半導体材料として用いて有機太陽電池の評価を行った。実施例1の化合物18を化合物20に変更した以外は実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その特性を評価した。
【0206】
短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、形状因子FF、光電変換効率(η)、及び緑色光領域(500-600nm)における光電変換効率(PCE-GR)を求めたところ、Jsc=10.86mA/cm、Voc=0.88V、FF=0.47、η=4.55%、PCE-GR=12.1%であった。
【0207】
(比較例1)
[60]PCBM(Aldrich製)をn型有機半導体材料として用いて有機太陽電池の評価を行った。実施例1の化合物18を化合物[60]PCBMに変更した以外は実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その特性を評価した。
【0208】
短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、形状因子FF、光電変換効率(η)、及び緑色光領域(500-600nm)における光電変換効率(PCE-GR)を求めたところ、Jsc=8.40mA/cm、Voc=0.57V、FF=0.53、η=2.55%、PCE-GR=6.89%であった。
【0209】
実施例1~3及び比較例1から得られた結果を表1に示す。表1に示すように、本発明化合物である化合物18、化合物19及び化合物20が、市販の[60]PCBMに比べて、良好な緑色光領域(500-600nm)における光電変換効率(PCE-GR)を示すことが分かる。
【0210】
【表1】
【0211】
このように、本発明の化合物は、n型有機半導体材料として緑色光領域(500-600nm)における高い光電変換効率を達成できることが実証された。本発明の化合物は、例えばフラーレン誘導体の代替となり得る。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の化合物は緑色光領域において良好な光電変換効率などの半導体特性を有するため、有機半導体材料として有機太陽電池などの有機半導体デバイスに利用可能である。更に、本発明の有機半導体材料は、緑色光領域(500-600nm)における変換効率が高いため、農作物生育施設に好適に使用できると期待される。