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特開2024-126513加工対象物の寸法決定装置及び寸法決定方法並びに加工対象物の寸法決定のためのプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126513
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】加工対象物の寸法決定装置及び寸法決定方法並びに加工対象物の寸法決定のためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B23Q15/00 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034921
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅
(57)【要約】
【課題】加工後の加工対象物を、意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法を、経験や勘に頼ることなく確実に取得できるようにする。
【解決手段】加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する。取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する固有ひずみ取得部と、
前記固有ひずみ取得部で取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する寸法取得部と、
を備えた加工対象物の加工処理前寸法決定装置。
【請求項2】
前記寸法取得部は、
加工対象物の有限要素法による解析モデルの各部の寸法を取得する、
請求項1に記載の加工対象物の加工処理前寸法決定装置。
【請求項3】
材質及び加工条件に対応付けて加工処理後の加工対象物の各部の固有ひずみのデータが格納された固有ひずみ格納部と、
加工対象物の材質及び加工条件を選択する選択部と、
を備え、
前記固有ひずみ取得部は、前記選択部で選択された材質及び加工条件に対応付けられた加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、前記固有ひずみ格納部から取り出して取得する、
請求項1に記載の加工対象物の加工処理前寸法決定装置。
【請求項4】
加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する固有ひずみ取得処理と、
取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する寸法取得処理と、
が実行される加工対象物の加工処理前寸法決定方法。
【請求項5】
前記寸法取得処理は、
加工対象物の有限要素法による解析モデルの各部の寸法を取得する処理を含む、
請求項4に記載の加工対象物の加工処理前寸法決定方法。
【請求項6】
加工対象物の材質及び加工条件を選択する選択処理、
を含み、
前記固有ひずみ取得処理は、選択された材質及び加工条件に対応付けられた加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、取得する処理を含む、
請求項4に記載の加工対象物の加工処理前寸法決定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する固有ひずみ取得処理と、
取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する寸法取得処理と、
を実行させる加工対象物の加工処理前寸法決定のためのプログラム。
【請求項8】
前記寸法取得処理は、
加工対象物の有限要素法による解析モデルの各部の寸法を取得する処理を含む、
請求項7に記載の加工対象物の加工処理前寸法決定のためのプログラム。
【請求項9】
前記固有ひずみ取得処理は、選択された材質及び加工条件に対応付けられた加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、固有ひずみ格納部から取り出して取得する処理を含む、
請求項7に記載の加工対象物の加工処理前寸法決定のためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物の寸法決定装置及び寸法決定方法並びに加工対象物の寸法決定のためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工や表面改質(以下、単に加工と呼ぶ)に伴い加工対象物の表面には、非弾性ひずみ(以下、適宜、固有ひずみという)が発生する。加工対象物で非弾性ひずみが発生すると加工対象物が変形してしまう。これにより加工対象物の最終的な寸法は、当初の設計通りの寸法とならず、精度よく加工対象物を加工することができなという問題があった。
【0003】
このため固有ひずみの発生を考慮して、加工後の加工対象物の寸法精度を確保できるような加工を実施する必要がある。
【0004】
しかし、従来の加工方法は、多くの場合、加工する職人の経験や勘に頼っているのが実情である。
【0005】
また、数値解析により加工のシミュレーションを実施する方法も考えられる。
【0006】
しかし、この加工のシミュレーションを実施する方法は、複雑な加工挙動を再現することが難しいだけでなく、加工対象物の加工後の形状を予測できたとしても、予め加工対象物をどのような寸法にして加工すべきかは、結局、経験や勘に頼らざるを得ず、場当たり的なアプローチとなっているのが実情である。
【0007】
加工対象物の加工後の形状や固有ひずみを予測したり推定する技術は既に特許出願されている。
【0008】
特許文献1には、金属板の形状を予測する方法であって、金属板に付与された塑性伸びひずみ差に基づいて座屈後の波形状を予測するという発明が記載されている。
【0009】
特許文献2には、材料条件や溶接条件に依存して変化する固有ひずみを用いて、溶接構造物の溶接変形を解析するという発明が記載されている。
【0010】
特許文献3には、固有ひずみと弾性ひずみの関係に基づいて、加工によって生じた固有ひずみの推定値を求めるという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2022-175003号公報
【特許文献2】特開2013-217822号公報
【特許文献3】特許6163643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、加工後の加工対象物を意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法を、経験や勘に頼ることなく確実に取得できるようにすることを課題とする。
【0013】
また、本発明は、加工後の加工対象物を意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法を、従来技術と比較して膨大な記憶容量のデータベースを要せずに取得できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様は、加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する固有ひずみ取得部と、前記固有ひずみ取得部で取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する寸法取得部と、を備えた加工対象物の加工処理前寸法決定装置である。
【0015】
第2の態様は、第1の態様において、前記寸法取得部は、加工対象物の有限要素法による解析モデルの各部の寸法を取得する、加工対象物の加工処理前寸法決定装置である。
【0016】
第3の態様は、第1の態様において、材質及び加工条件に対応付けて加工処理後の加工対象物の各部の固有ひずみのデータが格納された固有ひずみ格納部と、加工対象物の材質及び加工条件を選択する選択部と、を備え、前記固有ひずみ取得部は、前記選択部で選択された材質及び加工条件に対応付けられた加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、前記固有ひずみ格納部から取り出して取得する、加工対象物の加工処理前寸法決定装置である。
【0017】
第4の態様は、加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する固有ひずみ取得処理と、取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する寸法取得処理と、が実行される加工対象物の加工処理前寸法決定方法である。
【0018】
第5の態様は、第4の態様において、前記寸法取得処理は、加工対象物の有限要素法による解析モデルの各部の寸法を取得する処理を含む、加工対象物の加工処理前寸法決定方法である。
【0019】
第6の態様は、第4の態様において、加工対象物の材質及び加工条件を選択する選択処理、 を含み、前記固有ひずみ取得処理は、選択された材質及び加工条件に対応付けられた加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、取得する処理を含む、加工対象物の加工処理前寸法決定方法である。
【0020】
第7の態様は、コンピュータに、加工対象物に所定の加工処理を施したときの加工対象物の各部の固有ひずみを取得する固有ひずみ取得処理と、取得された加工対象物の各部の固有ひずみとは逆方向の同じ大きさの固有ひずみを前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の対応する各部に付加したときの加工対象物の寸法を、前記所定の加工処理を施す前の加工対象物の寸法として取得する寸法取得処理と、を実行させる加工対象物の加工処理前寸法決定のためのプログラムである。
【0021】
第8の態様は、第7の態様において、前記寸法取得処理は、加工対象物の有限要素法による解析モデルの各部の寸法を取得する処理を含む、加工対象物の加工処理前寸法決定のためのプログラムである。
【0022】
第9の態様は、第7の態様において、前記固有ひずみ取得処理は、選択された材質及び加工条件に対応付けられた加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、固有ひずみ格納部から取り出して取得する処理を含む、加工対象物の加工処理前寸法決定のためのプログラムである。
【発明の効果】
【0023】
第1の態様から第9の態様によれば、加工後の加工対象物を意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法を、経験や勘に頼ることなく確実に取得できる。
【0024】
また、第1の態様から第9の態様によれば、加工後の加工対象物を意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法を、従来技術と比較して膨大な記憶容量のデータベースを要せずに取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態の加工対象物の寸法決定装置の機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態のシステムのネットワークの構成を例示する図である。
図3図3は、実施形態の設計側コンピュータ端末、加工側コンピュータ端末及びサーバのハードウェア構成を例示する図で、図1の機能構成を実現するためのハードウェア構成図である。
図4図4(A)、図4(B)、図4(C)は、実施形態の加工対象物の加工手順を示す図である。
図5図5は、加工対象物の設計図面を例示した斜視図である。図4Bは、実施形態の推定結果を例示する図である。
図6図6(A)、図6(B)、図6(C)はそれぞれ、図4(A)、図4(B)、図4(C)に対応する図で、加工に伴う変形の影響を示す図である。
図7図7は、NC工作機械の加工システムを例示する図である。
図8A図8Aは、第1実施形態の加工対象物の寸法決定のためのプログラムを示すフローチャートである。
図8B図8Bは、第2実施形態の加工対象物の寸法決定のためのプログラムを示すフローチャートである。
図9A図9Aは、加工後の加工対象物に対応する有限要素解析モデルを示す図である。
図9B図9Bは、加工前の加工対象物に対応する有限要素解析モデルを示す図である。
図10図10(A)、図10(B)、図10(C)はそれぞれ、図4(A)、図4(B)、図4(C)及び図6(A)、図6(B)、図6(C)に対応する図で、寸法取得処理で取得した加工前寸法で設計製造された加工対象物を、切断加工したときの形状変化を示す図である。
図11図11は、固有ひずみ格納部に格納される固有ひずみのデータを示す図である。
図12A図12Aは、加工側コンピュータ端末の表示装置の表示画面に表示される選択画面を示す図である。
図12B図12Bは、加工側コンピュータ端末の表示装置の表示画面に表示される取得画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る加工対象物の寸法決定装置及び寸法決定方法並びに加工対象物の寸法決定のためのプログラムの実施形態を説明する。
【0027】
図1は、実施形態の加工対象物の寸法決定装置の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
実施形態の加工対象物の寸法決定装置100は、固有ひずみ格納部110と、選択部120と、固有ひずみ取得部130と、寸法取得部140を含んで構成されている。
【0029】
図2は、実施形態のシステムのネットワークの構成を例示する図である。
【0030】
図1の機能は、図2に示すように、設計側コンピュータ端末10と、加工側コンピュータ端末20と、サーバ30と、設計側コンピュータ端末10、加工側コンピュータ端末20及びサーバ30を通信可能に接続するネットワーク40の組合せで実現することができる。
【0031】
また図1の機能は、固有ひずみ格納部110に格納されるデータを単一のコンピュータ端末の記憶媒体に記憶しておき、後述する加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB1、PB2についても単一のコンピュータ端末にインストールしておくことにより単一のコンピュータ端末、つまり設計側コンピュータ端末10単体あるいは加工側コンピュータ端末20単体でも実現することができる。
【0032】
ネットワーク40は、インターネットやイントラネット等で構成される。サーバ30は、サーバ機器あるいはクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバ等で構成されている。サーバ30のデータベース31は、固有ひずみ格納部110として機能する。
【0033】
図3は、実施形態の設計側コンピュータ端末10、加工側コンピュータ端末20及びサーバ30のハードウェア構成を例示する図で、図1の機能構成を実現するためのハードウェア構成図である。
【0034】
図3に示すように、設計側コンピュータ端末10、加工側コンピュータ端末20及びサーバ30は、システムバス15を介してCPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力装置16、表示装置17、通信I/F18、外部記憶装置19が相互に通信可能に接続されるように構成されている。
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、システムバス15に接続される各デバイスを制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、システムバス15に接続される各デバイスの制御及び各種の演算処理を行う。
【0035】
ROM12又はストレージ14には、CPU11が実行する制御プログラムであるBIOS(Basic Input/Output System)やOS(Operating System)や、本実施形態を実現するためのコンピュータで読み取りが可能で実行が可能な実施形態の加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB1、PB2を含む各種プログラム及び必要な各種データを保持している。
【0036】
RAM13は、CPU11の主メモリ、ワークエリア等として機能し作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、BIOS、OSを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0037】
入力装置16は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボード、スキャナなどの読み取り装置を含み、各種の入力を行うために使用される。
【0038】
表示装置17は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示装置17は、タッチパネル方式を採用して、入力装置16として機能しても良い。
【0039】
通信インタフェース18は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。通信インタフェース18は、ネットワーク40と接続してデータの送受信の制御を行う。
【0040】
外部記憶装置19は、USBメモリなどの各種のメモリカード、HDD、SSDなどの着脱可能に接続される外部記憶媒体で構成されている。
【0041】
(加工対象物の加工手順)
【0042】
図4(A)、図4(B)、図4(C)は、実施形態の加工対象物OBの加工手順を示す。
【0043】
図4(A)は、加工対象物OBの加工前の状態を示す。これを加工対象物OB1と称する。
【0044】
図4(B)は、加工対象物OBの加工中の状態を示す。これを加工対象物OB2と称する。
【0045】
図4(C)は、加工対象物OBの加工後の状態を示す。これを加工対象物OB3と称する。
【0046】
加工前の加工対象物OB1、加工中の加工対象物OB2及び加工後の加工対象物OB3を、加工対象物OBと総称する。
【0047】
図4(A)に示すように、加工前の加工対象物OB1は、正面(紙面)でみてT字状で断面(紙面に垂直な面)が四角形の部材であり、第1角柱部BL1と、第1角柱部BL1の中央下側面S1より突出した第2角柱部BL2からなる。加工対象物OBは、材質が金属製(例えばS45C)の部材である。
【0048】
図4(B)に示すように、第1角柱部BL1の側端S12、S13が拘束された状態で、第1角柱部BL1の中央下側面S1を切断面S1として第2角柱部BL2が切断される。なお切断面S1とは反対側の面全域を図中S2で示す。
【0049】
図4(C)に示すように、第1角柱部BL1の側端S12、S13の拘束が解除され、第1角柱部BL1からなる加工対象物OB3が得られる。なお、図4A図4B図4Cでは、加工に伴う変形の影響を示す形状の図示は省略している。
【0050】
(加工による生じる固有ひずみと変形)
【0051】
図5は、加工対象物OBの設計図面を例示した斜視図を示す。
【0052】
加工後の加工対象物OB3は、高さHが40mm、幅Wが40mm、長さLが1000mmという目標寸法となる角柱部材である。
【0053】
図6(A)、図6(B)、図6(C)はそれぞれ、図4(A)、図4(B)、図4(C)に対応する図で、加工に伴う変形の影響を示す図である。
【0054】
仮に加工前の加工対象物OB1(図6(A))に本実施形態を適用することなく切断加工を行うと、図6(B)に示すように、切断面S1の部位ARに固有ひずみ(非弾性ひずみ)が生じ、図6(C)に示すように加工後の加工対象物OB3は変形してしまい、図5に示す目標寸法にはならない。
【0055】
本実施形態では、加工により生じる固有ひずみを用いて、加工後の加工対象物OB3を、意図する形状、つまり図5に示す設計通りの目標寸法にするための加工前の加工対象物OB1の寸法を取得する。
【0056】
(第1実施形態)
【0057】
NC(Numerical Control)工作機械の加工システムに適用した実施形態について説明する。
【0058】
図7は、NC(Numerical Control)工作機械の加工システムを例示する。
【0059】
設計側コンピュータ端末10は、加工対象物OBを製造する機関(例えば製造メーカー)の設計部門DP1に配置されている。設計側コンピュータ端末10では、加工対象物OBの3次元機械設計データMDが生成される。3次元機械設計データMDは、CAD(Computer-Aided Design)データを含んでいる。加工対象物OBの3次元機械設計データMDは、図5に示す加工対象物OBの3次元形状データを含む。
【0060】
加工対象物OBの3次元機械設計データMDは、加工対象物OB3の各部の目標(設計)寸法SZDの情報及び材質MTの情報及び加工条件MCの情報を含んでいる。例えば加工対象物OBの3次元機械設計データMDは、図5に示す加工後の加工対象物OB3の各部の目標寸法SZD(H=40mm、W=40mm、L=1000mm)、材質MT1(S45C)、加工条件MC1(エンドミルによる切断)の情報を含んでいる。
【0061】
設計側コンピュータ端末10で作成された加工対象物OBの3次元機械設計データMDは、ネットワーク40を介してサーバ30のデータベース31に格納される。
【0062】
加工側コンピュータ端末20は、加工対象物OBを製造する機関(例えば製造メーカー)の工場加工部門DP2に配置されている。
【0063】
加工側コンピュータ端末20は、ネットワーク40を介してサーバ30にアクセスしてデータベース31に格納された加工対象物OBの3次元機械設計データMDを取得する。
【0064】
加工側コンピュータ端末20は、加工対象物OBの3次元機械設計データMDに基づいて、加工対象物OBの加工前寸法SZを取得する。
【0065】
加工側コンピュータ端末20は、取得した加工対象物OBの加工前寸法SZに基づいてNCデータNCDを生成する。生成したNCデータNCDに応じてNC工作機械50が制御され、加工対象物OBが加工される。
【0066】
なお、加工対象物OBの加工前寸法SZを取得する機能と、加工前寸法SZに基づいてNCデータNCDを生成する機能を別々の機器に分担させてもよい。例えば加工側コンピュータ端末20が、加工対象物OBの加工前寸法SZを取得して、これをNC工作機械50に搭載の制御機器に送信するように構成してもよい。この場合、NC工作機械50搭載の制御機器は加工対象物OB1の加工前寸法SZに基づいてNCデータNCDを生成して、生成したNCデータNCDに応じてNC工作機械50を制御する。
【0067】
なお、NC工作機械50は、金属、木材、石材、樹脂等の材質の加工対象物OBに切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ等の加工を施すための機械である。NCデータNCDは、加工対象物OBを加工するためのエンドミル等のツールの座標移動指令(位置及び速度)などの工作機械制御用のデータである。
【0068】
図8Aは、第1実施形態の加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB1を示すフローチャートである。また加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB1は、第1実施形態の加工対象物の寸法決定方法の各ステップを示す。
【0069】
加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB1は、設計側コンピュータ端末10、加工側コンピュータ端末20で処理が実行可能に、サーバ30又は設計側コンピュータ端末10又は加工側コンピュータ端末20のROM12又はストレージ14に格納されている。
【0070】
(固有ひずみ取得処理ST11)
【0071】
固有ひずみ取得部110は、加工前の加工対象物OB1に所定の加工処理、例えば切断加工処理を施したときの加工後の加工対象物OB3の各部の固有ひずみを取得する(ST11)。
【0072】
加工対象物OBと同じ材質MT1(S45C)の部材を用意し、同一の加工条件MC1(エンドミルによる切断)で加工したときに加工後の加工対象物OB3の各部位にどのような方向にどのような大きさの固有ひずみε*が付与されるかを推定する。推定手法として、例えば、固有ひずみを部材に付与させることにより発生する弾性ひずみ、残留応力、変位などの物理量を計測することにより、それらの値から逆問題解析により加工後の加工対象物OB3の部材全域の固有ひずみ分布を推定する手法を適用することができる。ここで、加工後の加工対象物OB3の部材表面の弾性ひずみは、X線回折法により非破壊で計測することができる。X線回折法により非破壊で計測した加工対象物OB3の部材表面の弾性ひずみと、予め設定された固有ひずみと弾性ひずみの関係を用いて、加工によって生じた固有ひずみの値を推定することができる。固有ひずみの推定方法は、本発明の発明者を発明者とする特許第6163643号公報、特許6283866号公報に記載のものを適用することができる。
【0073】
図9Aは、加工後の加工対象物OB3に対応する有限要素解析モデルFM3を示す。ここで有限要素解析モデルは、有限要素法(Finite Element Method, FEM)に基づき数値解析を行うために構造物を複数の有限個の要素(メッシュ)に分割した構造物のモデルのことである。加工対象物OB3の有限要素解析モデルFM3は、図5に示す加工対象物OBの3次元機械設計データMD(CADデータ)に基づいて作成することができる。
【0074】
加工対象物OB3の有限要素解析モデルFM3の各要素のうち切断加工による固有ひずみが生じる部位ARに相当する要素は、切断面S1に対応する要素EM5、EM6、EM7、EM8である。要素EM1、EM2、EM3、EM4は、切断面S1とは反対側の面(斜線にて示す)に対応する要素である。 加工後の加工対象物OB3に生じる固有ひずみは以下のように推定することができる。
【0075】
まず加工対象物OBと同じ材質MT1(S45C)の部材(図示せず)を用意する。この部材は、加工対象物OBと同じ寸法(H=40mm、W=40mm、L=1000mm)の部材でもよく、異なる寸法(例えばH=80mm、W=80mm、L=2000mm)の部材であってもよい。
【0076】
つぎに、この部材に実際の加工条件MC1と同一の加工条件(エンドミルによる切断)による加工を施す。そして各部の固有ひずみを推定するために、X線回折法により加工後の部材の表面の弾性ひずみを計測する。
【0077】
有限要素解析モデルFM3の各要素のうち加工が施された側の面S1(要素EM5、EM6、EM7、EM8に相当)と反対側の面S2(要素EM1、EM2、EM3、EM4を含む各要素に相当)にてX線回折法により弾性ひずみを精度良く計測することができる。有限要素解析モデルFM3の面S2の表面の節点における面内方向成分(例えば2方向成分)の弾性ひずみを計測する。
【0078】
つぎに、計測した弾性ひずみを用いて要素EM5、EM6、EM7、EM8に生じる固有ひずみを推定する。要素EM5、EM6、EM7、EM8には、部材の長さL方向(軸方向)に均一に、符号プラスのひずみε*=+1.0×10-3が生じると推定される。このように材質MT1(S45C)、加工条件MC1(エンドミルによる切断)で加工したときに加工後の加工対象物OB3の各部位で生じる固有ひずみε*が、固有ひずみデータD11として取得される。
【0079】
固有ひずみデータD11に示される固有ひずみε*は、図6(C)に示す加工後の加工対象物OB3の変形に対応している。加工後の加工対象物OB3は、切断加工が施された側の面S1(要素EM5、EM6、EM7、EM8に相当)が伸び、切断加工が施された側の面S1とは反対側の面S2(要素EM1、EM2、EM3、EM4を含む各要素に相当)が縮むように湾曲状に変形する。
【0080】
なお、上記するように実際の部材に実際の加工を施して、部材表面の弾性ひずみの計測値に基づき加工対象物OBに生じる固有ひずみを推定することで固有ひずみデータD11を取得してもよく、有限要素法などを用いて構造物のモデルを数値解析することによって加工対象物OBに生じる固定ひずみを推定することで固有ひずみデータD11を取得してもよい。
【0081】
(寸法取得処理ST12)
【0082】
寸法取得部140は、固有ひずみ取得処理ST11で取得された加工後の加工対象物OB3の各部(要素EM5、EM6、EM7、EM8)で生じる固有ひずみε*(=+1.0×10-3)とは逆方向の同じ大きさの固有ひずみ-ε*(=-1.0×10-3)を所定の加工処理(切断加工)を施す前の加工対象物OB1の対応する各部(要素EM5、EM6、EM7、EM8)に付加したときの加工対象物OB1の寸法を、所定の加工処理(切断加工)を施す前の加工対象物OB1の加工前寸法SZとして取得する(ST12)。
【0083】
加工対象物OBの3次元機械設計データMDは、設計側コンピュータ端末10で作成されている。設計側コンピュータ端末10で作成された加工対象物OBの3次元機械設計データMDは、ネットワーク40を介してサーバ30のデータベース31に格納される。
【0084】
加工側コンピュータ端末20は、ネットワーク40を介してサーバ30にアクセスしてデータベース31に格納された加工対象物OBの3次元機械設計データMDを取得する。
【0085】
加工側コンピュータ端末20では、加工対象物OBの3次元機械設計データMD(CADデータ)に基づいて、加工前の加工対象物OB1の有限要素解析モデルFM1が作成される。
【0086】
図9Bは、加工前の加工対象物OB1に対応する有限要素解析モデルFM1を示す。
【0087】
有限要素解析モデルFM1は、実際の加工対象物OB1と同じ寸法(第1角柱部BL1についての寸法:H=40mm、W=40mm、L=1000mm)であり、同じ材質MT1(S45C)のものとして作成される。
【0088】
つぎに固有ひずみ取得処理ST11で取得された加工後の加工対象物OB3の各部の固有ひずみε*(=+1.0×10-3)とは逆方向の同じ大きさの固有ひずみ-ε*(=-1.0×10-3)を、有限要素解析モデルFM1の対応する要素EM5、EM6、EM7、EM8に付加する。この結果、有限要素解析モデルFM1は変形し、要素EM5、EM6、EM7、EM8に付加された逆方向で同じ大きさの固有ひずみ-ε*(=-1.0×10-3)に応じて、有限要素解析モデルFM1の各要素が変位する。例えば逆方向で同じ大きさの固有ひずみ-ε*(=-1.0×10-3)が付加された要素EM5の長さ寸法は、元の長さlから、l-ε*×lに変化しようとする。なお、ここで要素EM5の周りに拘束がなければ、要素EM5は元の寸法lからl-ε*×lに変化する。しかし、隣り合う要素など、要素EM5の周囲の要素の拘束の影響により、要素EM5の最終的な寸法はl-ε*×lに必ずしもならないのが一般的である。
【0089】
こうして加工後に固有ひずみε*が生じるとされる要素EM5、EM6、EM7、EM8に逆方向で同じ大きさの固有ひずみ-ε*を付加することで変形した有限要素解析モデルFM1の寸法を、加工前の加工対象物OB1の加工前寸法SZとして取得することができる。
【0090】
加工前の加工対象物OB1の加工前寸法SZが取得されると、取得された加工前寸法SZの加工対象物OB1が製造される。この製造された加工前寸法SZの加工対象物OB1に対して切断加工を実施することができる。
【0091】
加工側コンピュータ端末20は、取得した加工対象物OB1の加工前寸法SZに基づいてNCデータNCDを生成する。生成したNCデータNCDに応じてNC工作機械50が制御され、加工前寸法SZの加工対象物OB1が切断加工される。
【0092】
図10(A)、図10(B)、図10(C)はそれぞれ、図4(A)、図4(B)、図4(C)及び図6(A)、図6(B)、図6(C)に対応する図で、寸法取得処理ST12で取得した加工前寸法SZで設計製造された加工対象物OB1を、切断加工したときの形状変化を示す。
【0093】
加工前の加工対象物OB1(図10(A))は、加工前寸法SZで設計製造されているため、切断加工が施される側の面S1(要素EM5、EM6、EM7、EM8に相当)が縮み、切断加工が施される側の面S1とは反対側の面S2(要素EM1、EM2、EM3、EM4を含む各要素に相当)が伸びるように湾曲状に変形している。
【0094】
加工前の加工対象物OB1(図10(A))に切断加工が施されると、図10(B)に示すように、切断面S1の部位ARに固有ひずみ+ε*が生じる。しかし、加工中の加工対象物OB2の拘束が解除されると、図10(C)に示すように、切断加工によって生じた固有ひずみε*による変形は、加工前に予め付加された逆方向で同じ大きさの固有ひずみ-ε*に応じた変形によって相殺されて、加工前の加工対象物OB3を、図5に示す設計通りの目標寸法SZDにすることができる。
【0095】
以上のように第1実施形態によれば、加工後の加工対象物OB3を、経験や勘に頼ることなく確実に、意図する形状、つまり図5に示す設計通りの目標寸法SZD(H=40mm、W=40mm、L=1000mm)にすることができる。
【0096】
(第2実施形態)
【0097】
材質MT及び加工条件MCに対応付けて加工処理後の加工対象物の各部の固有ひずみのデータを、予め読み出し可能に格納しておく実施も可能である。
【0098】
図8Bは、第2実施形態の加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB2を示すフローチャートである。また加工対象物の寸法決定のためのプログラムPB2は、第2実施形態の加工対象物の寸法決定方法の各ステップを示す。
【0099】
(固有ひずみ格納部110に格納されるデータ)
【0100】
図11は、固有ひずみ格納部110に格納される固有ひずみのデータD10を示す。固有ひずみデータD10は、サーバ30のデータベース31に記憶されている。
【0101】
固有ひずみのデータD10は、材質MT及び加工条件MCに対応付けられている。
【0102】
例えば第1実施形態で例示した材質MT1(S45C)、加工条件MC1(エンドミルによる切断)で加工したときに加工後の加工対象物OB3の各部位で生じる固有ひずみε*は、固有ひずみデータD11として、コンピュータによって読み出し可能に格納されている。
【0103】
同様に材質MT2(アルミ合金A5052)、加工条件MC2(研削盤による研削)で加工したときに加工後の加工対象物OB3の各部位で生じる固有ひずみε*は、固有ひずみデータD12として、コンピュータによって読み出し可能に格納されている。
【0104】
他の固有ひずみデータD13、D14、D15・・・についても同様である。
【0105】
固有ひずみデータD11、D12、D13、D14、D15・・・は、第1実施形態の固有ひずみ取得処理ST11と同様な処理によって取得することができる。
【0106】
(選択処理ST21)
【0107】
選択部120は、加工対象物OBの材質MT及び加工条件MCを選択する(ST21)。
【0108】
図12Aは、加工側コンピュータ端末20の表示装置17の表示画面に表示される選択画面70を示す。
【0109】
加工側コンピュータ端末20側のオペレータは、選択画面70上で、加工対象物OBの材質MT及び加工条件MCを選択することができる。
【0110】
選択画面70には、材質選択部71と、加工条件選択部72が設けられている。
【0111】
材質選択部71は、加工対象物OBの材質MTを選択するためのプルダウンメニュー、チェックボックス、入力テキストボックスなどで構成することができる。例えば加工対象物OBの材質MT1(S45C)、MT2(アルミ合金A5052)、MT3、MT4、MT5・・・の中から1つの材質を選択することができる。
【0112】
加工条件選択部72は、加工対象物OBの加工条件MCを選択するためのプルダウンメニュー、チェックボックス、入力テキストボックスなどで構成することができる。例えば加工対象物OBの加工条件MC1(エンドミルによる切断)、MC2(研削盤による研削)、MC3、MC4、MC5・・・の中から1つの加工条件を選択することができる。
【0113】
材質選択部71を選択操作することで、例えば材質MT1(S45C)を選択することができる。また加工条件選択部72を選択操作することで加工条件MC1(エンドミルによる切断)を選択することができる。
【0114】
(固有ひずみ取得処理ST22)
【0115】
この選択操作に応じて、選択された材質MT1(S45C)及び加工条件MC1(エンドミルによる切断)に対応する固有ひずみデータD11が、サーバ30のデータベース31から読み出される。
【0116】
加工側コンピュータ端末20の表示装置17の表示画面は、図12Bに示す取得画面80に遷移する。
【0117】
取得画面80には、固有ひずみ表示部81が設けられている。
【0118】
固有ひずみ表示部81には、第1実施形態の固有ひずみ取得処理ST11で説明したのと同様の内容のデータ、つまり固有ひずみデータD11の内容が表示される(ST22)。
【0119】
なお、選択画面70で、材質MT2(アルミ合金A5052)及び加工条件MC2(研削盤による研削)が選択されると、この選択内容に対応する固有ひずみデータD12が、サーバ30のデータベース31から読み出される。同様に材質MT3及び加工条件MC3の選択に応じて、対応する固有ひずみデータD13が、サーバ30のデータベース31から読み出され、材質MT4及び加工条件MC4の選択に応じて、対応する固有ひずみデータD14が、サーバ30のデータベース31から読み出され、材質MT5及び加工条件MC5の選択に応じて、対応する固有ひずみデータD15が、サーバ30のデータベース31から読み出される。
【0120】
(寸法取得処理ST23)
【0121】
寸法取得処理ST23では、第1実施形態の寸法取得処理ST12と同様の処理が実行されて、加工前の加工対象物OB1の加工前寸法SZが取得される。
【0122】
本実施形態によれば、下記のような有用な効果が得られる。
【0123】
本実施形態によれば、加工後の加工対象物を意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法SZを、経験や勘に頼ることなく確実に取得できる。
【0124】
本実施形態では「加工条件と固有ひずみの関係」をデータベースに記憶している。比較例として「加工条件と変形の関係」をデータベースに記憶する例を挙げる。
【0125】
「加工条件と固有ひずみの関係」をデータベースに記憶する本実施形態によれば、加工条件が定まれば加工対象物の設計寸法に依存することなく、加工後の加工対象物の変形後の形状を求めることができ、変形が生じないような加工前の加工対象物の加工前寸法SZを決定することができる。
【0126】
これに対して「加工条件と変形の関係」をデータベースに記憶する比較例によれば、変形は寸法依存性が高いため、変形が生じないような加工前の加工対象物の加工前寸法を決定するには、加工対象物の設計寸法の違いに応じて「加工条件と変形の関係」のデータ構造を構築する必要がある。このため膨大な記憶容量のデータベースを要することになる。
【0127】
よって、本実施形態によれば、加工後の加工対象物を意図する形状にするための加工前の加工対象物の寸法SZを、従来技術と比較して膨大な記憶容量のデータベースを要せずに取得できる。
【0128】
本実施形態では、NC工作機械による加工を例示しているが、これに限定されることなく任意の加工機械に適用することができる。また本実施形態は、機械加工、溶接、熱処理加工、表面処理等のあらゆる加工方法に適用することができる。
【0129】
本実施形態では、有限要素法により構造物を数値解析しているが、有限要素法以外の境界要素法、有限体積法、有限差分法などの手法を用いて構造物を数値解析してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本実施形態によれば、加工精度が要求される特に精密加工の分野で、加工精度を高めることができる。このため製品の品質向上や開発期間短縮、歩留まり向上が実現される。
【符号の説明】
【0131】
100 加工対象物の寸法決定装置
110 固有ひずみ格納部
120 選択部
130 固有ひずみ取得部
140 寸法取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B