(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126549
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】多重化装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/647 20110101AFI20240912BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20240912BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H04N21/647
H04N21/61
H04L27/26 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034965
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕靖
(72)【発明者】
【氏名】兜森 椋
(72)【発明者】
【氏名】大西 正芳
(72)【発明者】
【氏名】大槻 一博
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164GA03
5C164TA04S
5C164TA21P
5C164TB45P
(57)【要約】
【課題】UHF帯の周波数利用効率を向上させるとともに、送信設備のコストを低減させる。
【解決手段】多重化装置21は、複数の演奏所から、コンテンツ伝送信号をパケット毎に受信する受信部211と、パケットから、階層毎に区別された階層毎データ、及び同期制御情報を抽出する抽出部212と、階層毎データのみからなるペイロード、及び前記同期制御情報のみからなるペイロードを生成するペイロード生成部213と、階層毎データのみからなるペイロードに、該データの階層の種類を示すヘッダを付加し、同期制御情報のみからなるペイロードに、該データが同期制御情報であることを示すヘッダを付加して、新たなパケットを生成するヘッダ付加部214と、ヘッダが付加された新たなパケットを1本のストリームとして送信する送信部216と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演奏所から、コンテンツ伝送信号をパケット毎に受信する受信部と、
前記パケットから、階層毎に区別された階層毎データ、及び同期制御情報を抽出する抽出部と、
前記階層毎データのみからなるペイロード、及び前記同期制御情報のみからなるペイロードを生成するペイロード生成部と、
前記階層毎データのみからなるペイロードに、該データの階層の種類を示すヘッダを付加し、前記同期制御情報のみからなるペイロードに、該データが同期制御情報であることを示すヘッダを付加して、新たなパケットを生成するヘッダ付加部と、
前記ヘッダが付加された新たなパケットを1本のストリームとして送信する送信部と、
を備える、多重化装置。
【請求項2】
前記受信部は、複数の放送事業者がそれぞれ生成するコンテンツ伝送信号を受信する、請求項1に記載の多重化装置。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1に記載の多重化装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重化装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の地上デジタル放送のコンテンツ伝送信号(プログラム伝送信号)は、1放送事業者につき1ストリーム(放送TS;Transport Stream)であり、UHF(Ultra High Frequency)帯には1chあたり6MHzの周波数帯域が割り当てられている。コンテンツ伝送信号は、演奏所(スタジオ)から送信所まで、各放送事業者の自営回線(無線・有線)で伝送される。コンテンツ伝送信号を演奏所から送信所まで伝送する回線はSTL(Studio to Transmitter Link)と称され、コンテンツ伝送信号を送信所から送信所(例えば、親局から中継局)まで伝送する回線はTTL(Transmitter to Transmitter Link)と称される。
【0003】
特許文献1には、映像・音声データ(コンテンツデータ)の伝送効率を向上させるために、TLV(Type Length Value)パケットを生成した後、FEC(Forward Error Correction)ブロックを生成せずにコンテンツ伝送信号を生成するコンテンツ伝送信号生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、UHF帯の470~770MHz(13~62ch)のうち、地上デジタル放送は470~710MHz(13~52ch)を使用しており、周波数帯が逼迫している。そのため、次世代の地上放送高度化方式では周波数利用効率を向上させることが望まれている。また、送信所では各放送事業者がそれぞれ送信設備を設置していたため、トータルでの設備コストが高くなるという課題がある。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、周波数利用効率を向上させるとともに、送信設備のコストを低減させることが可能な多重化装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る多重化装置は、複数の演奏所から、コンテンツ伝送信号をパケット毎に受信する受信部と、前記パケットから、階層毎に区別された階層毎データ、及び同期制御情報を抽出する抽出部と、前記階層毎データのみからなるペイロード、及び前記同期制御情報のみからなるペイロードを生成するペイロード生成部と、前記階層毎データのみからなるペイロードに、該データの階層の種類を示すヘッダを付加し、前記同期制御情報のみからなるペイロードに、該データが同期制御情報であることを示すヘッダを付加して、新たなパケットを生成するヘッダ付加部と、前記ヘッダが付加された新たなパケットを1本のストリームとして送信する送信部と、を備える。
【0008】
さらに、一実施形態において、前記受信部は、複数の放送事業者がそれぞれ生成するコンテンツ伝送信号を受信する。
【0009】
また、一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、上記多重化装置として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、UHF帯の周波数利用効率を向上させるとともに、送信設備のコストを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る配信システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る演奏所の構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る再多重化装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る再多重化装置が生成するTLVパケットの構成例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る再多重化装置が生成するSTLPパケットの構成例を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る多重化装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】一実施形態に係るOFDM変調装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】一実施形態に係るOFDMフレーム生成装置が生成するFECブロックの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る配信システム1の構成例を示す図である。
図1に示す配信システム1は、複数の演奏所10と、送信所20と、を備える。演奏所10と送信所20とは、STLを介して接続される。
【0014】
演奏所10は、各放送事業者によるコンテンツ伝送信号を、無線又は有線で送信所20に送信する。
図1では、第1放送事業者の演奏所10-1、第2放送事業者の演奏所10-2、及び第3放送事業者の演奏所10-3がコンテンツ伝送信号を無線で送信所20に送信し、第4放送事業者の演奏所10-4がコンテンツ伝送信号を有線で送信所20に送信する様子を示している。
【0015】
次世代の地上放送高度化方式では、従来の地上デジタル放送よりも伝送容量が拡大したことと、映像符号化方式を改善したことにより、1つのメディア(放送事業者)・番組の映像レートを低減しても高画質で視聴可能となる。そのため、周波数の有効活用の点から、UHFの1ch(6MHzの周波数帯域)に複数のメディア・番組を重畳することが可能となる。そこで、本発明における演奏所10は、各放送事業者が複数のメディア・番組を重畳することを想定している。例えば、UHFの物理的な伝送容量が30Mbpsの場合、2メディア又は2番組を多重するのであれば、1メディア又は1番組あたりのコンテンツ伝送信号のレートを15Mbps以下にする必要がある。
【0016】
従来では、送信所(のOFDM変調装置などUHFの電波を発射するに至る様々な機器)は放送事業者ごとに設けられており、各送信所は各放送事業者の演奏所から送信されたコンテンツ伝送信号を受信する。一方、本発明では、1つの送信所20が、複数の放送事業者の演奏所10から送信されたコンテンツ伝送信号を受信して多重化する。
【0017】
<演奏所>
図2は、演奏所10の構成例を示すブロック図である。演奏所10は、映像音声多重化装置11(11a,11b,11c)と、再多重化装置12と、を備える。映像音声多重化装置11及び再多重化装置12は、専用のハードウェアである必要は無く、コンピュータソフトウェアの形態であってもよい。
【0018】
演奏所10は、複数の階層のデータを多重化して1chで伝送する階層伝送を行う。
図2では、A階層、B階層、及びC階層という3階層のデータを伝送するが、階層伝送の階層数は3階層に限られるものではない。また、演奏所10は、緊急地震速報などの即時性が高い情報を低遅延(Low Latency)で視聴者に届けるために、LLch(Low Latency channel)と呼ばれる、時間インターリーブなどの処理を行わない低遅延伝送チャンネルを設け、LLchデータをA/B/C階層と同じ1chで伝送してもよい。
【0019】
映像音声多重化装置11aは、外部から入力したA階層用のコンテンツ信号(映像・音声信号及び字幕信号)を多重化し、所定の形式のパケットにパケット化して、A階層用パッケージとして再多重化装置12に出力する。同様に、映像音声多重化装置11bは、外部から入力したB階層用のコンテンツ信号を多重化し、所定の形式のパケットにパケット化して、B階層用パッケージとして再多重化装置12に出力する。映像音声多重化装置11cは、外部から入力したC階層用のコンテンツ信号を多重化し、所定の形式のパケットにパケット化して、C階層用パッケージとして再多重化装置12に出力する。
【0020】
映像音声多重化装置11はMMT(MPEG Media Transport)形式のパケットであるMMTP(MMT Protocol)パケットにパケット化するものとする。映像音声多重化装置11と再多重化装置12との間の伝送路は、IP(Internet Protocol)伝送路であり、映像音声多重化装置11はMMTPパケットをIPパケットに格納し、MMTP/IPパケットとして再多重化装置12に出力する。
【0021】
再多重化装置12は、映像音声多重化装置11a,11b,11cから入力したMMTP/IPパケット、及びLLch信号のMMTP/IPパケットからSTLPパケットを生成し、さらに1系統に再多重化してコンテンツ伝送信号を生成する。
【0022】
<<再多重化装置>>
次に、再多重化装置の詳細について説明する。
図3は、再多重化装置12の構成例を示すブロック図である。
図3に示す再多重化装置12は、フレーム時刻生成部101と、TMCC(Transmission Multiplexing Configuration Control)生成部102と、同期制御パケット構成部103と、階層分離部104と、IPヘッダ圧縮部105と、TLV(Type Length Value)化部106と、OFDMフレーム構成情報生成部107と、バイトオフセット付加部108と、階層合成部109と、STLP(STL Protocol)送信部110と、を備える。
【0023】
フレーム時刻生成部101は、外部から入力したPTP(Precision Time Protocol)/NTP(Network Time Protocol)に基づいて、OFDMフレームの周期を示すフレーム周期情報、及び時刻を示す時刻情報を生成する。そして、フレーム時刻生成部101は、フレーム周期情報を同期制御パケット構成部103に出力し、時刻情報をSTLP送信部110に出力する。時刻情報は、例えばNTP形式で示される。
【0024】
TMCC生成部102は、外部から入力した設定情報(OFDM変調のパラメータ、中継局の遅延制御情報など)に基づいてTMCC情報を生成し、同期制御パケット構成部103に出力する。なお、UHFの電波は1chで送信するため、各メディア・番組の送出パラメータ及び遅延制御時間は揃えておく必要がある。
【0025】
同期制御パケット構成部103は、TMCC生成部102により生成されたTMCC情報と、フレーム時刻生成部101から得られたフレーム周期情報とから、OFDMフレームの開始点を示す情報であるOFDMフレーム開始指示(例えば、1OFDMの周期のフラグ情報)を生成し、OFDMフレーム構成情報生成部107に出力する。
【0026】
また、同期制御パケット構成部103は、OFDMフレームの同期制御情報を格納した同期制御パケットを生成し、STLP送信部110に出力する。同期制御パケットは、OFDMフレーム構成情報生成部107から得られたFECブロックバイトオフセット情報を含む。
【0027】
階層分離部104は、演奏所10のマスターなどの送出設備から出力されたコンテンツ信号のMMTP/IPパケットを入力し、パケット種別により階層分離を行い、IPヘッダ圧縮部105に出力する。本実施形態では、階層分離部104は、A階層、B階層、及びC階層の3階層に分離する。
【0028】
IPヘッダ圧縮部105は、階層分離部104から入力したMMTP/IPパケットに対して、必要に応じて、IPヘッダの圧縮を行い、TLV化部106に出力する。
【0029】
TLV化部106は、IPヘッダ圧縮部105から入力したパケットを、可変長のTLV(Type Length Value)パケットにカプセル化してTLVパケットを生成し、バイトオフセット付加部108に出力する。また、TLV化部106は、TLVパケットのパケット長の情報をOFDMフレーム構成情報生成部107に出力する。
【0030】
図4は、TLVパケットの構成例を示す図である。なお、以下では、各フィールドに付された数字は、各フィールドのビット数の一例を示す。
【0031】
図4に示すように、TLVパケットは、予約領域と、パケット種別と、データ長と、データ領域とを含む。パケット種別は、TLVパケットの種別を示す。パケット種別により、A階層、B階層、C階層のいずれの階層のデータであるかを特定することができる。データ長は、データ領域に格納されるデータのサイズを示す。TLV化部106は、IPヘッダ圧縮部105から入力したIPパケットをデータ領域に格納する。なお、予約領域については、例えば全ビットを“1”としてもよい。
【0032】
OFDMフレーム構成情報生成部107は、設定情報から得られた伝送モード、GI(Guard Interval)比、TMCC情報等と、同期制御パケット構成部103から入力したOFDMフレーム開始指示とに基づいて、送信所20で構成されるOFDMフレームにおけるFECブロックのOFDMフレーム先頭からのバイトオフセットを示すFECブロックバイトオフセット情報(例えば、3バイトの情報)を生成し、同期制御パケット構成部103に出力する。なお、FECブロックバイトオフセット情報は、OFDMフレームを跨がない場合のFECブロックのOFDMフレーム先頭からのバイトオフセットを示す情報としてもよい。
【0033】
また、OFDMフレーム構成情報生成部107は、設定情報から得られた符号長や符号化率(符号化の設定情報)、及びTLV化部106から得られたTLVパケットのパケット長の情報に基づいて、LDPCパリティ部の長さやFECブロック長の情報を得て、FECブロックにおけるTLVパケットの格納場所を示すTLVバイトオフセット情報(例えば、3バイトの情報)を生成し、バイトオフセット付加部108に出力する。
【0034】
バイトオフセット付加部108は、TLV化部106から入力したTLVパケットに対して、OFDMフレーム構成情報生成部107から入力したTLVバイトオフセット情報を付加し、階層合成部109に出力する。
【0035】
階層合成部109は、バイトオフセット付加部108から入力した各階層のパケットを合成してデータパケットを生成し、STLP送信部110に出力する。
【0036】
STLP送信部110は、同期制御パケット構成部103から入力した同期制御パケットに対して、シーケンス番号及びパケット種別情報を挿入したSTLPパケット(以下、「同期制御STLPパケット」と称する。)を生成する。また、STLP送信部110は、階層合成部109から入力したデータパケットに対して、シーケンス番号及びパケット種別情報を挿入したSTLPパケット(以下、「データSTLPパケット」と称する。)を生成する。そして、STLP送信部110は、1OFDM時間ごとに、先頭に1個の同期制御STLPパケットと、後続する複数個のデータSTLPパケットとを、コンテンツ伝送信号として、STLを介して送信所20に送信する。
【0037】
パケット種別情報は、当該STLPパケットが、同期制御STLPパケット及びデータSTLPパケットのいずれであるかを示すとともに、データSTLPパケットである場合には、A階層、B階層、C階層、及びLLchのいずれの階層のデータであるかを示す情報である。表1に、3ビットのパケット種別の一例を示す。L0chとは部分受信に対応したLLchのことをいい、L1chとは非部分受信に対応したLLchのことをいう。なお、本明細書では、LLchも階層として扱い、後述する「階層毎データ」とはA階層データ、B階層データ、C階層データ、及びLLchデータのいずれかを指すものとする。
【0038】
【0039】
図5に、STLPパケットの構成例を示す。
図5(a)は同期制御STLPパケットの構成例を示しており、
図5(b)はデータSTLPパケットの構成例を示しており、
図5(c)は同期制御STLPパケット及びデータSTLPパケットに含まれるSTLPヘッダの構成例を示している。なお、本明細書において、「IPv4ヘッダ」は「IPv6ヘッダ」であってもよい。
【0040】
図5(a)に示す同期制御STLPパケットは、IPv4ヘッダと、UDPヘッダと、STLPヘッダと、同期制御情報と、を含む。同期制御情報は、OFDMフレーム構成情報生成部107により生成された、FECブロックのOFDMフレーム先頭からのバイトオフセットを示すFECブロックバイトオフセット情報を含む。これにより、コンテンツ伝送信号を受信した送信所20側で、FECブロックを構成することが可能となる。また、同期制御情報は、TMCC情報、次のOFDMフレームを送信すべき時刻を示す時刻情報などを含む。
【0041】
図5(b)に示すデータSTLPパケットは、IPv4ヘッダと、UDPヘッダと、STLPヘッダと、バイトオフセット付加部108により生成されたTLVバイトオフセットと、TLV化部106により生成されたTLVパケット(TLVペイロード)と、を含む。データSTLPはスタッフィングして固定長にすることなく、入力されたIPパケットをTLV形式で伝送することにより、パケットのスリム化を図ることが可能となる。TLVパケットの前にTLVバイトオフセット情報を載せ、OFDMフレームの先頭からのバイトオフセット情報を得ることにより、OFDMフレームの先頭を知ることが可能となる。
【0042】
図5(c)に示すSTLPヘッダは、パケット種別と、フレーム番号フラグと、シーケンス番号と、フレーム番号と、タイムスタンプと、を含む。フレーム番号は、データが含まれるフレームの番号(フレームを跨ぐ場合は、先頭が含まれるフレーム番号)を示す。シーケンス番号は、0から通しでインクリメントされる番号を示す。タイムスタンプは、再多重化装置12を出発する時刻をNTP長形式で示したものである。
【0043】
<送信所>
再び
図1を参照する。送信所20は、STLP多重化装置21と、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調装置22と、を備える。STLP多重化装置21及びOFDM変調装置22は、専用のハードウェアである必要は無く、コンピュータソフトウェアの形態であってもよい。
【0044】
STLP多重化装置21は、複数の演奏所10の再多重化装置12で多重フレームを形成したコンテンツ伝送信号を受信し、該コンテンツ伝送信号について一度多重フレームを分解してから再度多重フレームを形成し、多重化コンテンツ伝送信号をOFDM変調装置22に出力する。STLP多重化装置21は、再多重化装置12で多重化されたコンテンツ伝送信号をさらに多重化するものであるため、「再々多重化装置」と称されてもよい。
【0045】
OFDM変調装置22は、STLP多重化装置21により生成された多重化コンテンツ伝送信号に対してOFDM変調処理を行い、OFDM信号を生成する。そして、OFDM変調装置22は、アンテナを介してOFDM信号を受信装置に送信する。受信装置は、このOFDM信号を受信し、復調処理及び誤り訂正復号処理を行う。
【0046】
<<STLP多重化装置>>
次に、STLP多重化装置21の詳細について説明する。
図6は、STLP多重化装置21の構成例を示すブロック図である。
図6に示すSTLP多重化装置21は、受信部211と、抽出部212と、ペイロード生成部213と、ヘッダ付加部214と、STLPバッファ215と、STLP送信部216と、を備える。
【0047】
受信部211は、コンテンツ伝送信号を、STLを介してSTLPパケット毎に演奏所10から受信し、抽出部212に出力する。受信部211は、n個のSTLP受信部211-k(1≦k≦n)からなり、n個の放送事業者がそれぞれ生成するコンテンツ伝送信号を受信する。すなわち、STLP受信部211-k(1≦k≦n)は、第k放送事業者の演奏所10-kから送信されたコンテンツ伝送信号を、STLPパケット毎に受信する。
【0048】
抽出部212は、STLPパケットからSTLPヘッダを取り外し、階層毎に区別された階層毎データ、及び同期制御情報を抽出する。抽出部212は、n個のTLV抽出部212-k(1≦k≦n)からなる。
【0049】
TLV抽出部212-kは、STLP受信部211-kからSTLPパケットを受信する。TLV抽出部212-kは、STLPヘッダのパケット種別により、当該STLPパケットがデータSTLPパケットであるか、同期制御STLPパケットであるかを判別する。TLV抽出部212-kは、当該STLPパケットがデータSTLPパケットである場合には階層毎データ(TLV)を抽出し、同期制御STLPパケットである場合には同期制御情報を抽出する。そして、TLV抽出部212-kは、抽出したA階層データをA階層データSTLP生成部213aに出力し、抽出したB階層データをB階層データSTLP生成部213bに出力し、抽出したC階層データをC階層データSTLP生成部213cに出力し、抽出したL0chデータをL0chデータSTLP生成部213l0に出力し、抽出したL1chデータをL1chデータSTLP生成部213l1に出力する。また、TLV抽出部212-kは、抽出した同期制御情報を同期制御STLP生成部213tに出力する。
【0050】
ペイロード生成部213は、抽出部212により抽出された階層毎データのみからなるペイロード、及び抽出部212により抽出された同期制御情報のみからなるペイロードを生成する。ペイロード生成部213は、A階層データSTLP生成部213aと、B階層データSTLP生成部213bと、C階層データSTLP生成部213cと、L0chデータSTLP生成部213l0と、L1chデータSTLP生成部213l1と、同期制御STLP生成部213tと、からなる。
【0051】
A階層データSTLP生成部213aは、複数の放送事業者により生成されたコンテンツ伝送信号のうち、A階層データのみからなるSTLPペイロードを生成し、ヘッダ付加部214に出力する。B階層データSTLP生成部213bは、複数の放送事業者により生成されたコンテンツ伝送信号のうち、B階層データのみからなるSTLPペイロードを生成し、ヘッダ付加部214に出力する。C階層データSTLP生成部213cは、複数の放送事業者により生成されたコンテンツ伝送信号のうち、C階層データのみからなるSTLPペイロードを生成し、ヘッダ付加部214に出力する。L0chデータSTLP生成部213l0は、複数の放送事業者により生成されたコンテンツ伝送信号のうち、L0chデータのみからなるSTLPペイロードを生成し、ヘッダ付加部214に出力する。L1chデータSTLP生成部213l1は、複数の放送事業者により生成されたコンテンツ伝送信号のうち、L1chデータのみからなるSTLPペイロードを生成し、ヘッダ付加部214に出力する。
【0052】
同期制御STLP生成部213tは、複数の放送事業者により生成されたコンテンツ伝送信号のうち、同期制御情報のみからなるSTLPペイロードを生成し、ヘッダ付加部214に出力する。同期制御STLP生成部213tは、OFDMフレーム周期で、STLPペイロードをヘッダ付加部214に出力する。
【0053】
ヘッダ付加部214は、階層毎データのみからなるペイロードに、該データの階層の種類を示すSTLPヘッダを付加し、同期制御情報のみからなるペイロードに該データが同期制御情報であることを示すSTLPヘッダを付加する。さらに、ヘッダ付加部214は、UDPヘッダ及びIPv4ヘッダも付加し、新たなSTLPパケットを生成する。
【0054】
具体的には、ヘッダ付加部214は、A階層データSTLP生成部213aにより生成されたSTLPペイロードに、パケット種別を「A階層」とするSTLPヘッダなどを付加する。また、ヘッダ付加部214は、B階層データSTLP生成部213bにより生成されたSTLPペイロードに、パケット種別を「B階層」とするSTLPヘッダなどを付加する。また、ヘッダ付加部214は、C階層データSTLP生成部213cにより生成されたSTLPペイロードに、パケット種別を「C階層」とするSTLPヘッダなどを付加する。また、ヘッダ付加部214は、L0chデータSTLP生成部213l0により生成されたSTLPペイロードに、パケット種別を「L0ch」とするSTLPヘッダなどを付加する。また、ヘッダ付加部214は、L1chデータSTLP生成部213l1により生成されたSTLPペイロードに、パケット種別を「L1ch」とするSTLPヘッダなどを付加する。また、ヘッダ付加部214は、同期制御STLP生成部213tにより生成されたSTLPペイロードに、パケット種別を「同期制御情報」とするSTLPヘッダなどを付加する。
【0055】
STLPバッファ215は、ヘッダ付加部214によりSTLPヘッダなどのヘッダが付加された新たなSTLPパケットを、1OFDMフレーム分格納する。
【0056】
STLP送信部216は、STLPバッファ215から1OFDMフレーム分のSTLPパケットを取得する。そして、STLP送信部216は、1OFDMフレーム分のSTLPパケットを繋げて1本のSTLPのストリーム(多重化コンテンツ伝送信号)を生成し、OFDM変調装置22に送信する。すなわち、STLP送信部216は、OFDMフレームと1対1に対応する多重フレームを形成した1本のSTLPのストリームを生成する。
【0057】
<<OFDM変調装置>>
次に、OFDM変調装置22の詳細について説明する。
図7は、OFDM変調装置22の構成例を示すブロック図である。
図7に示すOFDM変調装置22は、パケットフィルタ部221と、階層分離部222と、TLVマッピング部223と、FECブロック形成部224と、エネルギー拡散部225と、誤り訂正符号化部226と、ビットインターリーブ部227と、マッピング部228と、階層合成部229と、フレームヘッダ付加部230と、時間・周波数インターリーブ部231と、TMCC解析部232と、LLch変調部233と、パイロット信号生成部234と、OFDMフレーム構成部235と、OFDM送信処理部236と、を備える。
【0058】
パケットフィルタ部221は、再多重化装置12から受信した多重化コンテンツ伝送信号(同期制御パケット及びデータパケット)について、IPv4ヘッダ及びUDPヘッダを除去し、階層分離部222に出力する。
【0059】
階層分離部222は、各階層に属するパケットを分離し、各階層の処理系に振り分ける。また、各階層と比べて低遅延で伝送されるチャンネルのデータ(例えば、緊急地震速報)を、LLch変調部233に出力する。また、階層分離部222は、同期制御パケットに含まれる同期制御情報をTMCC解析部232に出力する。
【0060】
TLVマッピング部223は、FECブロック領域を用意し、データパケットに含まれるTLVバイトオフセット情報に基づいて、FECブロック領域にTLVパケットをマッピングし、FECブロック形成部224に出力する。
【0061】
FECブロック形成部224は、同期制御パケットに含まれるFECブロックバイトオフセット情報に基づいて、TLVパケットを連結して主信号領域に格納したFECブロックを1OFDMフレーム分形成し、エネルギー拡散部225に出力する。
【0062】
図8は、FECブロックの構成例を示す図である。
図8に示すように、FECブロックは、FECブロックヘッダと、主信号と、BCHパリティと、LDPC(Low Density Parity Check)パリティとを含み、さらにスタッフビットを含んでもよい。
【0063】
FECブロックヘッダは、FECブロックの主信号領域に格納される最初のTLVパケットの先頭の位置を、FECブロックヘッダを除いたFECブロックの先頭からのバイト数で示す情報である。
【0064】
なお、FECブロックのサイズは、LDPC符号化の符号長(Short, Middle, Long)に応じて、3種類のサイズが設定される。また、主信号、スタッフビット、及びLDPCパリティのサイズは、符号化率に応じて定まる。BCHパリティ領域は、24バイトで固定としている。
【0065】
エネルギー拡散部225は、FECブロック形成部224から入力したFECブロックに対してエネルギー拡散処理を施し、誤り訂正符号化部226に出力する。
【0066】
誤り訂正符号化部226は、受信側で伝送誤りを訂正可能とするために、エネルギー拡散部225から入力した信号を誤り訂正符号化(本実施形態ではLDPC符号化)し、符号化信号を生成する。そして、誤り訂正符号化部226は、生成した符号化信号をビットインターリーブ部227に出力する。
【0067】
ビットインターリーブ部227は、誤り訂正符号の性能を高めるために、誤り訂正符号化部226から入力した符号化信号をビット単位でインターリーブ処理してビットデータを生成する。そして、ビットインターリーブ部227は、生成したビットデータをマッピング部228に出力する。
【0068】
マッピング部228は、ビットインターリーブ部227から入力したビットデータをIQ平面へマッピングし、変調方式に応じたキャリア変調が施されたキャリアシンボルを生成する。そして、マッピング部228は、生成したキャリアシンボルを階層合成部229に出力する。
【0069】
階層合成部229は、各階層のマッピング部228から入力したキャリアシンボルを合成し、フレームヘッダ付加部230に出力する。
【0070】
フレームヘッダ付加部230は、階層合成部229から入力したキャリアシンボルにフレームヘッダを付加し、時間・周波数インターリーブ部231に出力する。
【0071】
時間・周波数インターリーブ部231は、フレームヘッダ付加部230から入力したキャリアシンボルの順序を時間方向及び周波数方向に並べ替えてインターリーブ処理されたインターリーブ信号を生成する。そして、時間・周波数インターリーブ部231は、生成したインターリーブ信号をOFDMフレーム構成部235に出力する。
【0072】
TMCC解析部232は、階層分離部222から入力した同期制御情報からTMCC信号を生成し、OFDMフレーム構成部235に出力する。
【0073】
LLch変調部233は、階層分離部222から入力したデータを所定の変調方式(例えばDBPSK)で変調してシンボルを生成し、OFDMフレーム構成部235に出力する。
【0074】
パイロット信号生成部234は、パイロット信号(SP信号及びCP信号)を生成して、OFDMフレーム構成部235に出力する。
【0075】
OFDMフレーム構成部235は、時間・周波数インターリーブ部231から入力したインターリーブ信号に、TMCC解析部232から入力したTMCC信号、LLch変調部233から入力したシンボル、及びパイロット信号生成部234から入力したパイロット信号を挿入してOFDMフレームを構成する。そして、OFDMフレーム構成部235は、生成したOFDMフレームをOFDM送信処理部236に出力する。
【0076】
OFDM送信処理部236は、OFDMフレーム構成部235から入力したOFDMフレームに対してOFDM変調処理を行ってOFDM信号を生成し、生成したOFDM信号を、アンテナを介して受信装置に送信する。より詳細には、OFDM送信処理部236は、OFDMフレーム構成部235から入力したOFDMフレームのOFDMシンボルに対して、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)処理を行って時間領域の有効シンボル信号を生成する。そして、OFDM送信処理部236は、有効シンボル信号の先頭にガード区間を挿入した後、直交変調処理及びD/A変換処理を行ってOFDM信号を生成する。
【0077】
上述したように、本発明に係るSTLP多重化装置21による処理は、複数の演奏所10から、コンテンツ伝送信号をSTLPパケット毎に受信するステップと、STLPパケットから階層毎データ及び同期制御情報を抽出するステップと、階層毎データのみからなるペイロード及び同期制御情報のみからなるペイロードを生成するステップと、階層毎データのみからなるペイロードに該データの階層の種類を示すSTLPヘッダを付加し、同期制御情報のみからなるペイロードに該データが同期制御情報であることを示すSTLPヘッダを付加して、新たなパケットを生成するステップと、STLPヘッダが付加された新たなパケットを1本のストリームとして送信するステップと、を含む。
【0078】
かかる処理により、STLP多重化装置21は複数のメディア・番組を1ストリームに多重した多重化コンテンツ伝送信号を生成することが可能となる。そして、多重化コンテンツ伝送信号をOFDM変調装置22に入力することにより、6MHzのUHF1chに複数のメディア・番組を多重して電波を発射することができ、周波数利用効率を上げることが可能となる。例えば、6MHzのUHF1chに、第1放送事業者の第1番組、第2放送事業者の第2番組、及び第3放送事業者の第3番組を多重したり、第1放送事業者の第1番組、第4番組、及び第5番組を多重したり、第1放送事業者の第1番組及び第4番組、並びに第2放送事業者の第2番組を多重したりするなど、複数のメディア・番組を組み合わせて多重することが可能となる。
【0079】
また、従来と同様に、STL(無線・有線)を用いた放送ネットワークを構築することが可能である。さらに、放送事業者毎にOFDM変調装置を設ける必要がなくなるため、送信設備のコストを低減させることが可能となる。
【0080】
(プログラム)
上記のSTLP多重化装置21として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。コンピュータは、STLP多重化装置21の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのプロセッサによってこのプログラムを読み出して実行する。これらの処理内容の一部はハードウェアで実現されてもよい。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。
【0081】
また、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
【0082】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 配信システム
10 演奏所
11a,11b,11c 映像音声多重化装置
12 再多重化装置
20 送信所
21 STLP多重化装置
22 OFDM変調装置
101 フレーム時刻生成部
102 TMCC生成部
103 同期制御パケット構成部
104 階層分離部
105 IPヘッダ圧縮部
106 TLV化部
107 OFDMフレーム構成情報生成部
108 バイトオフセット付加部
109 階層合成部
110 STLP送信部
211 受信部
212 抽出部
213 ペイロード生成部
213a A階層データSTLP生成部
213b B階層データSTLP生成部
213c C階層データSTLP生成部
213l0 L0chデータSTLP生成部
213l1 L1chデータSTLP生成部
213t 同期制御STLP生成部
214 ヘッダ付加部
215 STLPバッファ
216 STLP送信部
221 パケットフィルタ部
222 階層分離部
223 TLVマッピング部
224 FECブロック形成部
225 エネルギー拡散部
226 誤り訂正符号化部
227 ビットインターリーブ部
228 マッピング部
229 階層合成部
230 フレームヘッダ付加部
231 時間・周波数インターリーブ部
232 TMCC解析部
233 LLch変調部
234 パイロット信号生成部
235 OFDMフレーム構成部
236 OFDM送信処理部