(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126605
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】鉄道車両用のケーブル接続構造体
(51)【国際特許分類】
B61G 5/10 20060101AFI20240912BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B61G5/10
H02G15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035095
(22)【出願日】2023-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相島 幸則
(72)【発明者】
【氏名】村田 亘
【テーマコード(参考)】
5G375
【Fターム(参考)】
5G375AA02
5G375BA26
5G375CA02
5G375CA19
5G375CB04
5G375DB09
5G375DB16
(57)【要約】
【課題】限られたスペースへの配置を容易にするケーブル接続構造体を提供する。
【解決手段】鉄道車両用のケーブル接続構造体1は、鉄道車両に搭載される。ケーブル接続構造体1は、ケーブル21及びケーブル21の端部に取り付けられたコネクタ23を有する複数のコネクタ付きケーブル2と、複数のコネクタ付きケーブル2のコネクタ23が嵌合された複数の嵌合部32を有するとともに、鉄道車両の屋根101に配されるジョイント3bとを備える。複数の嵌合部32は、鉛直方向Zの複数の位置に形成されている。複数のコネクタ付きケーブル2は、隣り合う車両100間を渡るよう配されるコネクタ付きケーブル2としての渡り線2cを有する。渡り線2cは、複数の嵌合部32のうちの最も下側に位置する嵌合部32よりも上側に位置する嵌合部32に嵌合されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載される鉄道車両用のケーブル接続構造体であって、
ケーブル及び前記ケーブルの端部に取り付けられたコネクタを有する複数のコネクタ付きケーブルと、
前記複数のコネクタ付きケーブルの前記コネクタが嵌合された複数の嵌合部を有するとともに、前記鉄道車両の屋根に配されるジョイントと、を備え、
前記複数の嵌合部は、鉛直方向の複数の位置に形成されており、
前記複数のコネクタ付きケーブルは、隣り合う車両間を渡るよう配されるコネクタ付きケーブルとしての渡り線を有し、
前記渡り線は、前記複数の嵌合部のうちの最も下側に位置する嵌合部よりも上側に位置する嵌合部に嵌合されている、
鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項2】
前記複数の嵌合部のうちの2つの嵌合部は、鉛直方向に並ぶよう形成されており、
鉛直方向に並ぶ前記2つの嵌合部のうちの上側の嵌合部に、前記渡り線が嵌合されている、
請求項1に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項3】
前記ジョイントは、ベース部と、前記ベース部から車両前後方向に突出した前記複数の嵌合部とを有し、
前記複数の嵌合部は、前記ベース部から車両前後方向の一方側に突出した下側嵌合部と、前記ベース部から前記下側嵌合部が突出する側と同じ側に突出するとともに前記下側嵌合部よりも上側の位置に形成された上側嵌合部とを有し、
前記上側嵌合部には、前記渡り線が嵌合されており、
前記渡り線のコネクタは、車両前後方向に延びる前記ケーブルの端部が挿入されたケーブル挿入部と、前記嵌合部と車両前後方向に嵌合するコネクタ側嵌合部とを有する、
請求項1に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項4】
前記複数のコネクタ付きケーブルは、1つの車両に固定されるコネクタ付きケーブルとしての固定線を有し、
前記下側嵌合部には、前記固定線が嵌合されている、
請求項3に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項5】
前記下側嵌合部に嵌合されている前記固定線は、車両の屋根側から床下側へ伸びる床下分岐線である、
請求項4に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項6】
前記床下分岐線のコネクタは、車幅方向に延びる前記ケーブルの端部が挿入された第2ケーブル挿入部と、前記嵌合部と車両前後方向に嵌合する第2コネクタ側嵌合部とを有する、
請求項5に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項7】
前記複数の嵌合部は、前記ベース部から前記上側嵌合部及び前記下側嵌合部が突出した側と反対側に突出した少なくとも1つの反対側嵌合部を有する、
請求項3に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【請求項8】
前記ジョイント及び前記ジョイントに嵌合された複数の前記コネクタは、鉄道車両の屋根に設けられた上側に開口する配置凹部内に配置されている、
請求項1に記載の鉄道車両用のケーブル接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用のケーブル接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両の屋根上に取り付けられたジョイント装置とジョイント装置に接続された複数の高圧用ケーブルとを有する高圧機器システムが開示されている。特許文献1に記載の高圧機器システムは、複数の高圧用ケーブルと、それぞれの高圧用ケーブルが挿入された複数のケーブルコネクタ部と、複数のケーブルコネクタ部を電気的に接続するジョイント装置とを備える。
【0003】
特許文献1に記載のジョイント装置は、複数のケーブルコネクタ部が嵌合される複数のジョイントコネクタ部を有する。そして、特許文献1に記載のジョイント装置は、複数のジョイントコネクタ部がいずれも同一水平面上に配される姿勢で鉄道車両の屋根に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高圧機器システムは、複数のジョイントコネクタ部がいずれも同一水平面上に配される姿勢で鉄道車両の屋根に取り付けられているため、鉄道車両の屋根近傍の広いスペースを占有することとなる。さらに、ジョイント装置に複数のケーブルコネクタ部を組み付ける際の作業スペースを考慮すると、特許文献1に記載の高圧機器システムを搭載するためには、屋根上により広いスペースが要求される。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、限られたスペースへの配置を容易にするケーブル接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の目的を達成するため、鉄道車両に搭載される鉄道車両用のケーブル接続構造体であって、ケーブル及び前記ケーブルの端部に取り付けられたコネクタを有する複数のコネクタ付きケーブルと、前記複数のコネクタ付きケーブルの前記コネクタが嵌合された複数の嵌合部を有するとともに、前記鉄道車両の屋根に配されるジョイントと、を備え、前記複数の嵌合部は、鉛直方向の複数の位置に形成されており、前記複数のコネクタ付きケーブルは、隣り合う車両間を渡るよう配されるコネクタ付きケーブルとしての渡り線を有し、前記渡り線は、前記複数の嵌合部のうちの最も下側に位置する嵌合部よりも上側に位置する嵌合部に嵌合されている、鉄道車両用のケーブル接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、限られたスペースへの配置を容易にするケーブル接続構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態における、ケーブル接続構造体が搭載される鉄道車両の構成を示す模式図である。
【
図2】第1の実施の形態における、ケーブル接続構造体が取り付けられた鉄道車両の平面図である。
【
図3】第1の実施の形態における、ケーブル接続構造体の側面図である。
【
図5】第1の実施の形態における、ケーブル接続構造体の一部を拡大した断面図である。
【
図6】第1の実施の形態における、1つのコネクタ付きケーブル及び三接続ジョイントの分解断面図である。
【
図7】第2の実施の形態における、
図4に対応する図である。
【
図8】第3の実施の形態における、ケーブル接続構造体の取付構造を説明するための模式図である。
【
図9】第4の実施の形態における、ケーブル接続構造体が取り付けられた鉄道車両の平面図である。
【
図10】第4の実施の形態における、ケーブル接続構造体の側面図である。
【
図12】第5の実施の形態における、ケーブル接続構造体が取り付けられた鉄道車両の平面図である。
【
図14】第6の実施の形態における、ケーブル接続構造体が取り付けられた鉄道車両の平面図である。
【
図15】第6の実施の形態における、
図14のXV線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図6を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(鉄道車両)
図1は、本形態におけるケーブル接続構造体が搭載される鉄道車両10の構成を示す模式図である。
【0012】
鉄道車両10は、進行方向に連結された複数の車両100を備える。本明細書において、単に「車両100」といったときは、鉄道車両10を構成する1つ1つの車両100を意味するものとし、「鉄道車両10」といったときは、複数の車両100が連結された全体の構成を意味するものとする。
【0013】
鉄道車両10の少なくとも1つの車両100の屋根101には、集電装置102が搭載されている。集電装置102は、例えば架線(トロリ線)から給電を受けるパンタグラフ102aを含む。集電装置102に供給された電力は、複数の車両100の屋根101上に設けられた電気経路である屋根上経路103及び屋根上経路103から床下に向けて分岐された電気経路である床下分岐経路104を介して、車両100の床下機器105に供給される。床下機器105は、特に限定されないが、例えば、集電装置102から車輪駆動用のモータまでの電気経路に設けられた遮断器、変圧器、インバータ等が想定される。
【0014】
屋根上経路103は、集電装置102からの電力が出力される出力線2aと、車両100の屋根101上において車両100の略全長に渡って敷設された屋根上線2bと、隣り合う車両100間を渡るよう配された渡り線2cとを有する。さらに、屋根上経路103は、屋根上線2b及び渡り線2cが接続された二接続ジョイント3aと、屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐経路104を構成する床下分岐線2dが接続された三接続ジョイント3bと、出力線2a、屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐線2dが接続された四接続ジョイント3cとを有する。出力線2a、屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐線2dのそれぞれは、後述するコネクタ付きケーブルにて構成されている。
【0015】
(ケーブル接続構造体)
図2は、本形態のケーブル接続構造体1が取り付けられた鉄道車両10の平面図である。
図3は、ケーブル接続構造体1の側面図である。なお、
図3においては、1つのコネクタ23及びその近傍を断面にて表している。
図4は、
図3のIV-IV線矢視断面図である。
図5は、ケーブル接続構造体1の一部を拡大した断面図である。
図6は、1つのコネクタ付きケーブル2及び三接続ジョイント3bの分解断面図である。
【0016】
以後、ケーブル接続構造体1が鉄道車両10に搭載された状態において、鉄道車両10の長手方向となる方向を「車両前後方向X」とし、鉄道車両10の幅方向となる方向を「車幅方向Y」とし、鉛直方向Zとなる方向を「鉛直方向Z」とする。また、「上側」といったときは、ケーブル接続構造体1が鉄道車両10に搭載された状態における鉛直方向Zの上側を意味するものとし、「下側」といったときは、ケーブル接続構造体1が鉄道車両10に搭載された状態における鉛直方向Zの下側を意味するものとする。
【0017】
図2及び
図3に示すごとく、本形態のケーブル接続構造体1は、三接続ジョイント3bと、三接続ジョイント3bに接続された3つのコネクタ付きケーブル2としての屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐線2dとを有する。三接続ジョイント3bは、幹線としての屋根上線2bから入力される電力を、渡り線2c及び床下分岐線2dに分配する。
【0018】
図3及び
図4に示すごとく、三接続ジョイント3bは、ベース部31と、ベース部31から突出するとともに、3つのコネクタ付きケーブル2が接続された3つの嵌合部32とを有する。
【0019】
ベース部31は、車幅方向Yの寸法が鉛直方向Zの寸法よりも小さくなるよう形成されている。また、ベース部31は、車両前後方向Xに短尺に形成されている。ベース部31の下端部には、鉛直方向Zと、三接続ジョイント3bとコネクタ付きケーブル2との嵌合方向(本形態においては車両前後方向X)との双方に直交する方向(本形態においては車幅方向Y)の両側に突出した2つの取付部311が形成されている。取付部311には、鉛直方向Zに貫通したボルト挿通孔311aが形成されている。三接続ジョイント3bは、ボルトB1をボルト挿通孔311aに挿通するとともに車両100の屋根101に螺合することにより、屋根101に固定される。
図1及び
図2に示すごとく、三接続ジョイント3bは、例えば、車両100の車両前後方向Xの端の位置であって車幅方向Yの略中央位置に配されている。
【0020】
図3に示すごとく、嵌合部32は、ベース部31から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ状に形成されている。
図3及び
図4に示すごとく、3つの嵌合部32は、鉛直方向Zの複数の位置に形成されている。本形態において、3つの嵌合部32は、互いに鉛直方向Zの異なる位置に形成されている。3つの嵌合部32は、ベース部31から車両前後方向Xの一方側に突出した2つの嵌合部32と、ベース部31から車両前後方向Xの他方側に突出した1つの嵌合部32とを有する。ベース部31から車両前後方向Xの一方側に突出した2つの嵌合部32のうち、下側に位置するものを「下側嵌合部321」と呼び、上側に位置するものを「上側嵌合部322」と呼ぶ。また、ベース部31から下側嵌合部321及び上側嵌合部322が突出した側と反対側に突出した嵌合部32を「反対側嵌合部323」と呼ぶ。そして、これら3つを特に区別しない場合は、「嵌合部32」と呼ぶ。
【0021】
3つの嵌合部32は、鉛直方向Zの下側から、下側嵌合部321、反対側嵌合部323、上側嵌合部322の順に形成されている。本形態においては、3つの嵌合部32は、それぞれの鉛直方向Zの形成範囲(すなわち嵌合部32の上端から下端までの範囲)が互いに鉛直方向Zの重複した範囲とならないよう、互いに鉛直方向Zに間隔をあけて形成されている例を示しているが、これに限られない。例えば、反対側嵌合部323の鉛直方向Zの形成範囲の一部と、下側嵌合部321の鉛直方向Zの形成範囲の一部及び上側嵌合部322の鉛直方向Zの形成範囲の一部の少なくとも一方とが鉛直方向Zの重複した範囲となるよう、3つの嵌合部32の鉛直方向Zの間隔を詰めてもよい。また、例えば、反対側嵌合部323が下側嵌合部321と鉛直方向Zの同位置に形成されていてもよい。このような場合、3つの嵌合部32は、上側嵌合部322が形成された鉛直方向Zの位置と、反対側嵌合部323及び下側嵌合部321が形成された鉛直方向Zの位置との2つの鉛直方向Zの位置に形成されることとなる。
【0022】
本形態において、3つの嵌合部32は、車幅方向Yの同位置に形成されている。そして、下側嵌合部321と上側嵌合部322とは鉛直方向Zに並んでいる。
【0023】
図6に示すごとく、三接続ジョイント3bは、3つのコネクタ付きケーブル2同士を電気的に接続するジョイント導体部33と、ジョイント導体部33を覆う電気的絶縁性を有するジョイント絶縁部34とを有する。
【0024】
ジョイント導体部33は、ベース部31を構成するとともに鉛直方向Zに長尺に形成されたベース導体部331と、ベース導体部331から車両前後方向Xに延設されるとともに3つの嵌合部32を構成する3つの延設導体部332とを有する。延設導体部332のベース導体部331と反対側の端面は、ジョイント絶縁部34から露出した露出端面332aとなっている。また、延設導体部332には、露出端面332aに開口する雌ねじ孔332bが形成されている。雌ねじ孔332bには、コネクタ付きケーブル2の後述のボルトB3が螺合されている。
【0025】
ジョイント絶縁部34は、電気的絶縁性を有する樹脂からなる。ジョイント絶縁部34は、ジョイント導体部33の露出端面332aを除く部位を覆っている。また、ジョイント絶縁部34の一部によって、取付部311が構成されている。このような場合において、ジョイント絶縁部34は、ボルトB1の軸力に耐え得るよう剛性を高める処理がなされていてもよいし、ボルト挿通孔311aに、金属等からなるカラーが埋設されていてもよい。
【0026】
次に、三接続ジョイント3bに接続される3つのコネクタ付きケーブル2(すなわち屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐線2d)につき説明する。
【0027】
図3に示すごとく、屋根上線2bは反対側嵌合部323に接続されており、渡り線2cは上側嵌合部322に接続されており、床下分岐線2dは下側嵌合部321に接続されている。ここで、3つのコネクタ付きケーブル2のうち、屋根上線2b及び床下分岐線2dは、1つの車両100に固定される固定線である。一方、渡り線2cは、隣り合う車両100にかけ渡される。それゆえ、渡り線2cは、例えば鉄道車両10がカーブする際等に屈曲しやすく、鉄道車両10の走行に伴って屈曲が繰り返されるため、固定線と比べて高頻度の交換が要求される。そこで、本形態のケーブル接続構造体1においては、渡り線2cを、複数の嵌合部32のうちの最も下側に位置する下側嵌合部321よりも上側に位置する上側嵌合部322に嵌合させることで、渡り線2cの交換作業を行いやすくしている。
【0028】
本形態において、3つのコネクタ付きケーブル2は、互いに同様の構成を有するため、1つのコネクタ付きケーブル2に着目して説明する。
図5に示すごとく、コネクタ付きケーブル2は、ケーブル21と、ケーブル21のケーブル中心導体211に固定されたケーブル端子22と、ケーブル21の端部が挿入されたコネクタ23とを有する。
【0029】
ケーブル21は、中心から順に、ケーブル中心導体211、ケーブル内部半導電層(図示略)、ケーブル絶縁体212、ケーブル外部半導電層213、ケーブルシールド層(図示略)及びケーブルシース214を備える。ケーブル中心導体211は、撚線からなる。ケーブル内部半導電層及びケーブル外部半導電層213は、導電性粉末を分散して導電性を持たせたポリマー系材料からなり、電界の集中を緩和する役割を有する。ケーブルシールド層は、例えば、ケーブル外部半導電層213にワイヤーを螺旋状に巻き付けて形成されるとともに、ケーブル接続構造体1の使用時においては接地電位に接続される。ケーブルシース214は、例えば電気的絶縁性を有するゴムからなり、ケーブル21の最外層を構成している。
【0030】
ケーブル21は、ケーブル中心導体211、ケーブル絶縁体212、ケーブル外部半導電層213が先端側から順に露出するよう段剥ぎされている。ケーブル21において露出したケーブル中心導体211に、ケーブル端子22が固定されている。
【0031】
図5及び
図6に示すごとく、ケーブル端子22は、柱状の導体からなる。ケーブル端子22には、ケーブル21に接続される側の端面に開口するかしめ孔221と、コネクタ23に接続される側の端面に開口する雌ねじ孔222とが形成されている。ケーブル中心導体211をかしめ孔221に挿入するとともにケーブル端子22をケーブル中心導体211に向けてかしめることにより、ケーブル中心導体211とケーブル端子22とが機械的及び電気的に接続されている。ケーブル端子22に形成された雌ねじ孔222には、ケーブル端子22と後述の接続導体232とを機械的及び電気的に接続するためのボルトB2が螺合されている。ケーブル端子22と、ケーブル21において露出したケーブル中心導体211及びケーブル絶縁体212とは、コネクタ23内に挿入されている。
【0032】
コネクタ23は、ハウジング231と、ハウジング231に保持された接続導体232と、ハウジング231の後述のケーブル挿入部231fの開口を閉塞する第1栓部材233及び第1カバー234と、ハウジング231の後述のコネクタ側嵌合部231gの開口を閉塞する第2栓部材235及び第2カバー236とを備える。
【0033】
ハウジング231は、互いに一体的に成形された絶縁体231a、第1半導電層231b、第2半導電層231c、第3半導電層231d及び管状部材231eを有する。ハウジング231は、絶縁体231aを形成するための成形型内に、ハウジング231を構成する部材(すなわち、第1半導電層231b、第2半導電層231c、第3半導電層231d及び管状部材231e)及び接続導体232を配置し、成形型内に絶縁体231aを構成する溶融状態の樹脂を注入して硬化させるインサート成形によって製造され得る。
【0034】
絶縁体231aは、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(すなわちEPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のポリマー系材料からなる。第1半導電層231b、第2半導電層231c及び第3半導電層231dのそれぞれは、導電性粉末を分散して導電性を持たせたポリマー系材料からなる。第1半導電層231bは、接続導体232の周囲に配されるとともにケーブル端子22及びケーブル21の端部を取り囲むように配され、接続導体232、ケーブル端子22及びケーブル21の端部の周囲の電界集中を緩和する。第2半導電層231cは、ケーブル絶縁体212及びケーブル外部半導電層213の周囲に配され、ケーブル絶縁体212の周囲の電界集中を緩和する。第3半導電層231dは、コネクタ23の外表面を構成しており、ハウジング231の外周における電界集中を緩和する。
【0035】
管状部材231eは、ハウジング231におけるケーブル21が引き出される側の端部に設けられている。管状部材231eは、ハウジング231にケーブル21を挿入する際の挿入口となる。管状部材231eとケーブル21との間は、水密となるように封止部24によって封止されている。管状部材231eは、封止部24に対して接着性が良好な素材によって構成されている。例えば、封止部24は、粘着材が設けられたポリエチレンテープ、エポキシテープ等を巻き付けて形成されており、管状部材231eは、黄銅、アルミニウム合金等の金属からなる。
【0036】
ハウジング231は、ケーブル挿入部231f、コネクタ側嵌合部231g及び連結部231hを有する。ケーブル挿入部231fは、筒状を呈しており、車両前後方向Xに延びるケーブル21の端部が挿入されている。コネクタ側嵌合部231gは、筒状を呈しており、三接続ジョイント3bの嵌合部32と車両前後方向Xに嵌合している。コネクタ側嵌合部231gは、ケーブル挿入部231fの外周側に位置している。連結部231hは、ケーブル挿入部231fとコネクタ側嵌合部231gとを連結する。
【0037】
ケーブル挿入部231fの軸方向とコネクタ側嵌合部231gの軸方向とは、いずれも同じ方向(本形態においては車両前後方向X)である。このように、ケーブル挿入部231fの軸方向とコネクタ側嵌合部231gの軸方向とが同じとなるコネクタ23を、軸方向コネクタ23aと呼ぶこととする。
【0038】
なお、ケーブル挿入部231f及びコネクタ側嵌合部231gの軸方向(本形態においては車両前後方向X)の一方側であって、軸方向コネクタ23aからケーブル21が引き出された側を基端側とし、その反対側を先端側とする。例えば、
図3において、三接続ジョイント3bの右側に位置するコネクタ付きケーブル2に関しては、先端側は紙面左側であり、基端側は紙面右側であるのに対し、三接続ジョイント3bの左側に位置する2つのコネクタ付きケーブル2に関しては、先端側は紙面右側であり、基端側は紙面左側である。
【0039】
図5に示すごとく、ケーブル挿入部231fの内側に、ケーブル端子22が固定されたケーブル21が挿入されている。ケーブル21がケーブル挿入部231f内に挿入された状態においては、第1半導電層231bがケーブル絶縁体212の先端側の端部に全周にわたって接触しており、第2半導電層231cが、第1半導電層231bよりも基端側の位置において、ケーブル絶縁体212及びケーブル外部半導電層213に全周にわたって接触している。そして、ケーブル21に固定されたケーブル端子22は、ボルトB2を用いて接続導体232に固定されている。
【0040】
接続導体232は、銅合金等の導電率の高い素材からなる。接続導体232は、ケーブル挿入部231fとコネクタ側嵌合部231gとの並び方向に長尺で、車両前後方向Xに厚みを有する板状に形成されている。図示は省略するが、接続導体232において第1半導電層231bと接触する面の少なくとも一部は、第1半導電層231bとの密着性を高めるべく湾曲面等にしてもよい。
【0041】
接続導体232は、第1半導電層231bに埋設された埋設部232aと、ケーブル挿入部231fの内側に露出したケーブル接続部232bと、コネクタ側嵌合部231gの内側に露出したジョイント接続部232dとを有する。ケーブル接続部232bには、接続導体232とケーブル端子22とを接続するためのボルトB2を挿通させるボルト挿通孔232cが形成されており、ジョイント接続部232dには、接続導体232とジョイント導体部33とを接続するためのボルトB3を挿通させるボルト挿通孔232eが形成されている。
【0042】
ボルトB2は、頭部B21から先端側に延設された雄ねじ部B22を有する。雄ねじ部B22は、第1栓部材233に螺合されている。
【0043】
第1栓部材233は、雄ねじ部B22が螺合される雌ねじ孔233bが形成された金属製のナット部材233aと、図示しないソケットレンチのドライブ角を嵌合させるための四角穴233dが形成された金属製の被嵌合部材233cと、ナット部材233a及び被嵌合部材233cを一体化するモールド樹脂233eとを有する。第1栓部材233は、ソケットレンチを用いてナット部材233aの雌ねじ孔233bにボルトB2の雄ねじ部B22を螺合させることによりボルトB2に固定されている。第1栓部材233は、ケーブル挿入部231fの先端側の開口を閉塞している。
【0044】
ケーブル挿入部231fの先端側の開口が第1栓部材233によって閉塞された状態において、ケーブル挿入部231fの先端側の端部は、第1カバー234によって覆われている。第1カバー234は、例えばポリマー系材料(シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(すなわちEPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等)からなる。
【0045】
ボルトB3は、ボルトB2と同様であり、第2栓部材235は、第1栓部材233と同様の構成を有するため、重複する説明は省略する。コネクタ側嵌合部231gの基端側の開口が第2栓部材235によって閉塞された状態において、コネクタ側嵌合部231gの基端側の端部は、第2カバー236によって覆われている。第2カバー236は、例えばポリマー系材料(シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(すなわちEPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等)からなる。
コネクタ付きケーブル2は、以上のような構成を有する。
【0046】
本形態において、各コネクタ付きケーブル2の軸方向コネクタ23aは、ケーブル挿入部231fとコネクタ側嵌合部231gとが鉛直方向Zに並ぶ姿勢で配されている。これにより、ケーブル接続構造体1のジョイント周辺部の車幅方向Yの小型化が図られる。また、下側嵌合部321に嵌合されるコネクタ付きケーブル2の軸方向コネクタ23aと、上側嵌合部322に嵌合されるコネクタ付きケーブル2の軸方向コネクタ23aとは、ケーブル挿入部231fに対してコネクタ側嵌合部231gが位置する側が、この2つの軸方向コネクタ23aの互いに近い側となる姿勢で配されている。
【0047】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態において、複数の嵌合部32は、鉛直方向Zの複数の位置に形成されている。このように、嵌合部32を鉛直方向Zに立体的に配置することで、三接続ジョイント3bが占有する屋根101近傍のスペースを縮小することができる。
【0048】
また、渡り線2cは、複数の嵌合部32のうちの最も下側に位置する嵌合部32よりも上側に位置する嵌合部32に嵌合されている。前述ごとく、渡り線2cは、1つの車両100に固定される固定線と比べて高頻度に交換する必要があるところ、複数の嵌合部32のうちの最も下側に位置する嵌合部32よりも上側に位置する嵌合部32に嵌合されることで、嵌合部32と渡り線2cとの脱着作業が行いやすくなる。
【0049】
また、複数の嵌合部32のうちの2つの嵌合部32は、鉛直方向Zに並ぶよう形成されている。それゆえ、これら2つの嵌合部32付近において、鉛直方向Zとベース部31からの2つの嵌合部32の突出方向(本形態においては車両前後方向X)との双方に直交する方向(本形態においては車幅方向Y)における小型化を図りやすい。さらに、鉛直方向Zに並ぶ2つの嵌合部32のうちの上側の嵌合部32に、渡り線2cが嵌合されている。鉛直方向Zに並ぶ嵌合部32のうちの下側の嵌合部32に嵌合されたコネクタ付きケーブル2は、上側の嵌合部32及びこれに接続されたコネクタ付きケーブル2が邪魔になって脱着作業が行い難いため、上側の嵌合部32に、交換頻度が高くなる渡り線2cを嵌合させることが望ましい。
【0050】
また、複数の嵌合部32は、ベース部31から車両前後方向Xに突出した複数の嵌合部32を有する。そして、複数の嵌合部32に嵌合する少なくとも1つのコネクタ23は、軸方向コネクタ23aである。これにより、ケーブル接続構造体1の三接続ジョイント3b周辺部の車幅方向Yの小型化を一層図りやすい。
【0051】
また、下側嵌合部321には、固定線が嵌合されている。前述のごとく、下側嵌合部321へのコネクタ付きケーブル2の嵌合作業は行い難いところ、渡り線2cを比べて交換の必要性が低い固定線を下側嵌合部321に固定することが望ましい。
【0052】
また、下側嵌合部321に嵌合されている固定線は、車両100の屋根101側から床下側へ伸びる床下分岐線2dである。前述のごとく、上側嵌合部322には渡り線2cが配されているところ、渡り線2c及び床下分岐線2dは、いずれも三接続ジョイント3bから車間側に向かって延びている。それゆえ、ベース部31から同じ側に突出している上側嵌合部322及び下側嵌合部321に、渡り線2c及び床下分岐線2dをそれぞれ嵌合させることで、電気配線を簡素化しやすい。
【0053】
また、複数の嵌合部32は、ベース部31から上側嵌合部322及び下側嵌合部321が突出した側と反対側に突出した少なくとも1つの反対側嵌合部323を有する。それゆえ、ケーブル接続構造体1の三接続ジョイント3b周辺部が車幅方向Yに大型化することなく、3つ以上のコネクタ付きケーブル2を互いに接続することができる。
【0054】
以上のごとく、本形態によれば、限られたスペースへの配置を容易にするケーブル接続構造体を提供することができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態について、
図7を参照して説明する。
図7は、本形態における、
図4に対応する図である。
【0056】
本形態は、第1の実施の形態と基本構造を同様としつつ、3つの嵌合部32の位置を変更したケーブル接続構造体1の形態である。具体的には、本形態のケーブル接続構造体1において、3つの嵌合部32は、車幅方向Yの互いに異なる位置に形成されている。本形態において、3つの嵌合部32は、車幅方向Yの一方側から、下側嵌合部321、反対側嵌合部323、上側嵌合部322の順に形成されている。そして、車両前後方向Xから見たとき、下側嵌合部321、反対側嵌合部323及び上側嵌合部322は、斜めに並んでいる。下側嵌合部321に嵌合された床下分岐線2dの軸方向コネクタ23aと、上側嵌合部322に嵌合された床下分岐線2dの軸方向コネクタ23aとは、車幅方向Yに離隔して形成されているとともに、一部同士が鉛直方向Zの重複する範囲に形成されている。
【0057】
本形態のその他の構成は、第1の実施の形態の構成と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0058】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態のように、複数の嵌合部32が車幅方向Yの複数の位置に形成されているような場合であっても上側嵌合部322及び反対側嵌合部323が比較的上側に位置していることで、屋根101上の上側嵌合部322及び反対側嵌合部323の下にはスペースが設けられ、ケーブル接続構造体1が占有する屋根101近傍のスペースが縮小される。そのため、例えば屋根101におけるケーブル接続構造体1の設置個所近傍が平面ではなく、上側に向かって隆起した隆起部がある場合や、屋根101上に何らかの部品があるような場合等においても、上側嵌合部322又は反対側嵌合部323の下側のスペースに前述の隆起部や部品を配置することで、限られたスペースへのケーブル接続構造体1の配置が可能となる。
【0059】
また、下側嵌合部321と上側嵌合部322とが車幅方向Yのずれた位置に形成されており、これらに嵌合された軸方向コネクタ23aは、車幅方向Yに離隔して形成されているとともに、一部同士が鉛直方向Zの重複する範囲に形成されている。それゆえ、ケーブル接続構造体1の鉛直方向Zの大型化を抑制することができる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0060】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態について、
図8を参照して説明する。
図8は、本形態における、ケーブル接続構造体1の取付構造を説明するための模式図である。
【0061】
本形態は、第1の実施の形態に対し、車両100の屋根101へのケーブル接続構造体1の配置の仕方を変更した形態である。本形態において、車両100の屋根101には、上側に開口する配置凹部101aが設けられている。そして、三接続ジョイント3b及び三接続ジョイント3bに嵌合された複数のコネクタ23が配置凹部101a内に配置されている。本形態において、三接続ジョイント3b及び三接続ジョイント3bに嵌合された複数のコネクタ23は、その全体が配置凹部101a内に収まっている。
【0062】
配置凹部101aは、屋根101の一部が下側に凹むように形成されてもよいし、屋根101に固定されるとともに上側に開口したケース等によって構成されてもよいし、屋根101に形成された凹部の内側に配されたケースによって構成されてもよい。配置凹部101aがケースにて形成されている場合は、ケースの上側の開口を塞ぐカバーを設けてもよい。また、ケーブル接続構造体1を構成する3つのケーブル21を、配置凹部101aを構成する側壁101bを貫通させることで、ケーブル21を配置凹部101a外に引き出してもよい。
【0063】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、三接続ジョイント3b及び三接続ジョイント3bに嵌合された複数のコネクタ23が、車両100の屋根101に設けられた上側に開口する配置凹部101a内に配置されている。それゆえ、渡り線2cの交換作業をする際に、渡り線2cが下側に奥まった位置にあると交換作業が行い難いところ、渡り線2cのコネクタ23は、上側嵌合部322に嵌合されて比較的高い位置にあるため、渡り線2cの交換作業時におけるコネクタ23の脱着作業が行いやすくなる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0064】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態について、
図9乃至
図11を参照して説明する。
図9は本形態のケーブル接続構造体1が取り付けられた鉄道車両10の平面図である。
図10は、ケーブル接続構造体1の側面図である。
図11は、
図10のXI-XI線矢視断面図である。
【0065】
本形態は、第1の実施の形態に対し、主に床下分岐線2dのコネクタ23の形状を変更したケーブル接続構造体1の形態である。なお、屋根上線2b及び渡り線2cのそれぞれのコネクタ23については、第1の実施の形態と同様な軸方向コネクタ23aである。
【0066】
図11に示すごとく、床下分岐線2dのコネクタ23のハウジング231は、第2ケーブル挿入部231i及び第2コネクタ側嵌合部231jを有する。第2ケーブル挿入部231iは、車幅方向Yに軸方向を有する筒状に形成されており、車幅方向Yに延びるケーブル21の端部が挿入されている。第2コネクタ側嵌合部231jは、車両前後方向Xに軸方向を有する筒状に形成されており、下側嵌合部321と車両前後方向Xに嵌合している。このように、第2ケーブル挿入部231iの軸方向と第2コネクタ側嵌合部231jの軸方向とが直交するコネクタ23を、直交コネクタ23bと呼ぶこととする。第2コネクタ側嵌合部231jは、第2ケーブル挿入部231iにおけるケーブル21が引き出された側と反対側の端部から車両前後方向Xの両側に突出するよう形成されており、直交コネクタ23bは全体として略T字状に形成されている。
【0067】
第2ケーブル挿入部231iの内側に、ケーブル端子22が固定されたケーブル21が挿入されている。ケーブル端子22のケーブル中心導体211と反対側は、第2コネクタ側嵌合部231jの内側空間まで延設されている。そして、ケーブル端子22には、ケーブル端子22と下側嵌合部321のジョイント導体部33とを接続するためのボルトB4を挿通させるボルト挿通孔223が形成されている。第2コネクタ側嵌合部231jの一方の開口から第2コネクタ側嵌合部231j内に下側嵌合部321が挿入されており、第2コネクタ側嵌合部231jの他方の開口からボルトB4にてケーブル端子22と下側嵌合部321とが固定されている。ボルトB4の構成は、第1の実施の形態におけるボルトB2及びボルトB3と同様である。また、第2コネクタ側嵌合部231jの下側嵌合部321と反対側の開口は第3栓部材237及び第3カバー238にて閉塞されている。第3栓部材237は、第1の実施の形態における第1栓部材233及び第2栓部材235と同様の構成を有し、第3カバー238は、第1の実施の形態における第1カバー234及び第2カバー236と同様の構成を有する。
【0068】
直交コネクタ23bのハウジング231は、第1の実施の形態と同様、絶縁体231a、第1半導電層231b、第2半導電層231c、第3半導電層231d及び管状部材231eを有する。これらについては、第1の実施の形態のものと概ね同様の構成を有する。
その他は、第1の実施の形態と同様である。
【0069】
(第4の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、下側嵌合部321と床下分岐線2dのコネクタ23との接続方向が車両前後方向Xであり、かつ、下側嵌合部321に嵌合される床下分岐線2dのコネクタ23が直交コネクタ23bである。床下分岐線2dは、三接続ジョイント3bから延び、例えば車両連結部106の脇等の、鉄道車両10の車幅方向Yの端を通って床下まで配線される。そのため、床下分岐線2dのコネクタ23を直交コネクタ23bとすることで、三接続ジョイント3bから車両連結部106の脇までの床下分岐線2dの屈曲箇所を減らしやすく、床下分岐線2dの配置が容易となる。また、直交コネクタ23bを用いることで、ケーブル接続構造体1の鉛直方向Zの小型化が図りやすい。
その他、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0070】
[第5の実施の形態]
本発明の第5の実施の形態について、
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は、本形態のケーブル接続構造体1が取り付けられた鉄道車両10の平面図である。
図13は、
図12のXIII線矢視図である。
【0071】
本形態は、四接続ジョイント3cと、四接続ジョイント3cに接続された4つのコネクタ付きケーブル2(具体的には出力線2a、屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐線2d)とを有するケーブル接続構造体1の形態である。出力線2aは、前述のごとく、集電装置102と四接続ジョイント3cを接続するコネクタ付きケーブル2である。四接続ジョイント3cは、幹線としての出力線2aから入力される電力を、屋根上線2b、渡り線2c及び床下分岐線2dに分配する。
【0072】
四接続ジョイント3cは、車幅方向Yに短尺に形成されたベース部31と、ベース部31から車幅方向Yの一方側に突出した4つの嵌合部32とを有する。4つの嵌合部32は、車両前後方向X及び鉛直方向Zの2行2列に並んでいる。つまり、本形態において、4つの嵌合部32は、1行目に形成された2つの嵌合部32の鉛直方向Zの位置と、2行目に形成された2つの嵌合部32の鉛直方向Zの位置との2つの鉛直方向Zの位置に形成されている。また、四接続ジョイント3cのジョイント導体部33は、4つの嵌合部32に嵌合された4つのコネクタ付きケーブル2を互いに電気的に接続するよう構成されている。
【0073】
4つの嵌合部32のうちの上側の2つの嵌合部32の一方に渡り線2cが嵌合されている。渡り線2cに嵌合される嵌合部32の下側の嵌合部32には、床下分岐線2dが嵌合されている。また、残りの2つの嵌合部32に、出力線2a及び屋根上線2bが嵌合されている。本形態において、出力線2aは、屋根上線2bに嵌合される嵌合部32の上側の嵌合部32に嵌合されている例を示しているが、出力線2aが下側の嵌合部32に、屋根上線2bが上側の嵌合部32に嵌合されていてもよい。
【0074】
4つのコネクタ付きケーブル2のそれぞれのコネクタ23は、第4の実施の形態で示した直交コネクタ23bである。一方の列の2つの嵌合部32に接続された2つのコネクタ付きケーブル2は、第2ケーブル挿入部231iが、他方の列と反対側に向かって延びる姿勢で配されている。他方の列の2つの嵌合部32に接続された2つのコネクタ付きケーブル2も同様の姿勢で配されている。
その他は、第1の実施の形態と同様である。
【0075】
(第5の実施の形態の作用及び効果)
本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0076】
[第6の実施の形態]
本発明の第6の実施の形態について、
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は、本形態のケーブル接続構造体1が取り付けられた鉄道車両10の平面図である。
図15は、
図14のXV線矢視図である。
【0077】
本形態は、二接続ジョイント3aと、二接続ジョイント3aに接続された2つのコネクタ付きケーブル2(具体的には屋根上線2b及び渡り線2c)とを有するケーブル接続構造体1の形態である。
【0078】
二接続ジョイント3aは、車幅方向Yに短尺に形成されたベース部31と、ベース部31から車幅方向Yの一方側に突出した2つの嵌合部32とを有する。2つの嵌合部32は、鉛直方向Zに並んでいる。また、二接続ジョイント3aのジョイント導体部33は、2つの嵌合部32に嵌合された2つのコネクタ付きケーブル2を互いに電気的に接続するよう構成されている。そして、上側の嵌合部32に、渡り線2cが嵌合されており、下側の嵌合部32に屋根上線2bが嵌合されている。
その他は、第1の実施の形態と同様である。
【0079】
(第6の実施の形態の作用及び効果)
本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を有する。
【0080】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0081】
[1]鉄道車両(10)に搭載される鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)であって、ケーブル(21)及び前記ケーブル(21)の端部に取り付けられたコネクタ(23)を有する複数のコネクタ付きケーブル(2)と、前記複数のコネクタ付きケーブル(2)の前記コネクタ(23)が嵌合された複数の嵌合部(32)を有するとともに、前記鉄道車両(10)の屋根(101)に配されるジョイント(3a,3b,3c)と、を備え、前記複数の嵌合部(32)は、鉛直方向(Z)の複数の位置に形成されており、前記複数のコネクタ付きケーブル(2)は、隣り合う車両(100)間を渡るよう配されるコネクタ付きケーブル(2)としての渡り線(2c)を有し、前記渡り線(2c)は、前記複数の嵌合部(32)のうちの最も下側に位置する嵌合部(32)よりも上側に位置する嵌合部(32)に嵌合されている、鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0082】
[2]前記複数の嵌合部(32)のうちの2つの嵌合部(32)は、鉛直方向(Z)に並ぶよう形成されており、鉛直方向(Z)に並ぶ前記2つの嵌合部(32)のうちの上側の嵌合部(32)に、前記渡り線(2c)が嵌合されている、[1]に記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0083】
[3]前記ジョイント(3a,3b,3c)は、ベース部(31)と、前記ベース部(31)から車両前後方向(X)に突出した前記複数の嵌合部(32)とを有し、前記複数の嵌合部(32)は、前記ベース部(31)から車両前後方向(X)の一方側に突出した下側嵌合部(321)と、前記ベース部(31)から前記下側嵌合部(321)が突出する側と同じ側に突出するとともに前記下側嵌合部(321)よりも上側の位置に形成された上側嵌合部(322)とを有し、前記上側嵌合部(322)には、前記渡り線(2c)が嵌合されており、前記渡り線(2c)のコネクタ(23)は、車両前後方向(X)に延びる前記ケーブル(21)の端部が挿入されたケーブル挿入部(231f)と、前記嵌合部(32)と車両前後方向(X)に嵌合するコネクタ側嵌合部(231g)とを有する、[1]又は[2]に記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0084】
[4]前記複数のコネクタ付きケーブル(2)は、1つの車両(100)に固定されるコネクタ付きケーブル(2)としての固定線を有し、前記下側嵌合部(321)には、前記固定線が嵌合されている、[3]に記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0085】
[5]前記下側嵌合部(321)に嵌合されている前記固定線は、車両(100)の屋根(101)側から床下側へ伸びる床下分岐線(2d)である、[4]に記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0086】
[6]前記床下分岐線(2d)のコネクタ(23)は、車幅方向に延びる前記ケーブル(21)の端部が挿入された第2ケーブル挿入部(231i)と、前記嵌合部(32)と車両前後方向(X)に嵌合する第2コネクタ側嵌合部(231j)とを有する、[5]に記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0087】
[7]前記複数の嵌合部(32)は、前記ベース部(31)から前記上側嵌合部(322)及び前記下側嵌合部(321)が突出した側と反対側に突出した少なくとも1つの反対側嵌合部(323)を有する、[3]乃至[6]のいずれか1つに記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0088】
[8]前記ジョイント(3a,3b,3c)及び前記ジョイント(3a,3b,3c)に嵌合された複数の前記コネクタ(23)は、鉄道車両(10)の屋根(101)に設けられた上側に開口する配置凹部(101a)内に配置されている、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の鉄道車両(10)用のケーブル接続構造体(1)。
【0089】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、前記各実施の形態の構成を適宜組み合わせた構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…ケーブル接続構造体 10…鉄道車両
100…車両 101…屋根
101a…配置凹部 2…コネクタ付きケーブル
2c…渡り線 2d…床下分岐線
21…ケーブル 23…コネクタ
231f…ケーブル挿入部 231g…コネクタ側嵌合部
231i…第2ケーブル挿入部 231j…第2コネクタ側嵌合部
3a…二接続ジョイント(ジョイント) 3b…三接続ジョイント(ジョイント)
3c…四接続ジョイント(ジョイント) 31…ベース部
32…嵌合部 321…下側嵌合部
322…上側嵌合部 323…反対側嵌合部
X…車両前後方向 Z…鉛直方向