(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126637
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いた繊維強化プラスチック
(51)【国際特許分類】
C08G 59/68 20060101AFI20240912BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20240912BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240912BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240912BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240912BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240912BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08G59/68
C08G59/62
C08L63/00 C
C08K7/02
C08K7/06
C08K3/04
C08J5/24 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035164
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】山田 亮
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 圭太
(72)【発明者】
【氏名】長谷 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】切替 徳之
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB29
4F072AD28
4F072AE02
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH04
4F072AH21
4F072AH48
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD081
4J002CD131
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD11
4J036AD12
4J036AD21
4J036AE07
4J036AG04
4J036AG06
4J036AG07
4J036CA06
4J036CA08
4J036CB16
4J036CC02
4J036DC38
4J036FA02
4J036GA29
4J036JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】維強化熱可塑性プラスチックとして耐熱性及び靭性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供すること、それを含む強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いた繊維強化プラスチックを提供すること。
【解決手段】2官能エポキシ樹脂(A)、2官能化合物(B)、及び重合触媒(D)を含み、エポキシ樹脂(A)1モルに対して化合物(B)は0.90~1.10モルであり、重合触媒(D)の含有量はエポキシ樹脂(A)と化合物(B)との総量100重量部に対して0.01~10重量部であり、重合触媒(D)が下記式(1)で表されるN-置換アミノピリジン系化合物であり、
有機溶剤の含有量はエポキシ樹脂組成物の0~4重量%であり、85℃における粘度が0.1~100Pa・sであり、エポキシ樹脂(A)及び化合物(B)の融点又は軟化点が-20~215℃であるエポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ樹脂(A)、1分子中にエポキシ基と反応する官能基を2つ有する化合物(B)、及び重合触媒(D)を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、下記条件(i)~(vi)を満たすことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(i)エポキシ樹脂(A)1モルに対して化合物(B)は0.90~1.10モルであり、
(ii)重合触媒(D)の含有量は、エポキシ樹脂(A)と化合物(B)との総量100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下であり、
(iii)重合触媒(D)が、下記式(1)で表されるN-置換アミノピリジン系化合物であり、
【化1】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、更にR
1とR
2が相互に結合して複素環を形成してもよく、結合手として、-O-、-NH-、又は-NR
4-があってもよい。但し、R
4は炭素数1~12の炭化水素基である。R
3は独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、kは0~4の整数である。
(iv)有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含む場合は、有機溶剤の含有量がエポキシ樹脂組成物の0.01重量%以上4重量%以下であり、
(v)エポキシ樹脂組成物の85℃における粘度が0.1Pa・s以上100Pa・s以下であり、
(vi)エポキシ樹脂(A)及び化合物(B)の融点又は軟化点が-20℃以上215℃以下であること。
【請求項2】
化合物(B)の官能基がフェノール性水酸基及び/又はアセチル基である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)と化合物(B)とが均一に溶解している請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
重合触媒(D)が、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-ピロリジノピリジン、4-ピペリジノピリジン、4-(4-メチルピペリジノ)ピリジン、4-モルホリノピリジン、及び4-ピペラジノピリジンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維(F)とを含有することを特徴とする強化繊維含有エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
強化繊維(F)として炭素繊維を20~80重量%の割合で含むことを特徴とする請求項5に記載の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグ。
【請求項8】
請求項5に記載の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化プラスチック。
【請求項9】
請求項7に記載のプリプレグを用いた繊維強化プラスチック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いた繊維強化プラスチックに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)は軽量、高強度などの優れた物性を示し、多くの分野で利用されている。その中でも、炭素繊維を強化繊維として用いたもの(CFRP)は、特に機械的強度に優れることで知られている。
【0003】
FRPの母材(マトリックス)樹脂として、価格、物性のバランスに優れるため、エポキシ樹脂が主に使用されており、その中でも、特許文献1は、エポキシ樹脂とフェノール性水酸基含有化合物とを予め強化繊維と混合し、重合触媒及び反応遅延剤を使用して重付加反応により重合させ、繊維強化熱可塑性樹脂を成形する方法を提案している。特許文献2は、2官能エポキシ樹脂と、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる官能基を有する2官能化合物とを重付加反応させることも提案している。こうしたエポキシ樹脂は、現場重合型熱可塑性エポキシ樹脂とも言われ、これを使用したFRPは量産性、成型性、リサイクル性に優れると期待されている。現場重合型熱可塑性エポキシ樹脂は、重合前の低粘度状態で繊維へ含浸させるため含浸性がよく、強化繊維の割合を高めることができ、汎用的な熱硬化エポキシ樹脂を使用した場合に比べ、衝撃強度や靭性に優れる。
【0004】
本発明者らの検討によると、熱可塑性エポキシ樹脂の重合反応を強化繊維中で十分に進める為には、エポキシ樹脂と2官能化合物が均一に相溶している必要がある。反応成分がエポキシ樹脂中に均一に相溶せず析出した状態だと、現場重合型エポキシ樹脂の重合反応を繊維中で十分に進めることが出来ない。溶剤を用いれば、例えば2官能化合物として剛直骨格のフェノール化合物などを使用する場合、エポキシ樹脂中に相溶させることも可能となるが、溶剤成分が重合反応を阻害し、また成型物中に残存することで物性低下を招くおそれがあるため、好ましくない。
【0005】
剛直骨格を有するフェノール化合物の例としては、ビスフェノールフルオレンに代表されるフルオレン骨格を有する化合物がある。特許文献3の実施例では、ビスクレゾールフルオレンを用い、Tgを139℃まで向上させた現場重合型熱可塑性エポキシ樹脂が開示されているが、樹脂組成物中に溶剤を30重量部以上含んでおり、重合物中に溶剤が残留し物性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0006】
特許文献4では、2種類以上の2官能フェノール化合物を必須成分として含有し、2官能エポキシ樹脂の1モルに対して2官能フェノール化合物の総和は0.9~1.1モルであり、60℃における粘度が1Pa・s以上50Pa・s以下である前駆体混合物が提案されている。重合触媒としては、ホスフィン化合物やイミダゾール化合物が挙げられている。
【0007】
非特許文献1では、熱可塑性エポキシ樹脂に剛直骨格を導入していくと、樹脂が脆性化する事が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-321897号公報
【特許文献2】国際公開第2004/060981号
【特許文献3】国際公開第2006/123577号
【特許文献4】国際公開第2022/070849号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】強化プラスチックス、Vol.66 No.9(2020年9月号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
繊維強化熱可塑性プラスチック用に好適である熱可塑性エポキシ樹脂の高耐熱化の為には、剛直骨格な化合物を導入する必要があるが、樹脂の脆性化が課題となる。また高融点の化合物を均一に相溶させる為に、溶剤を多量に添加する必要があるが、溶剤成分が残存すると機械物性に悪影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の重合触媒と、融点又は軟化点が215℃以下の化合物を併用することで本発明の完成に至った。
【0012】
すなわち本発明は、1分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ樹脂(A)、1分子中にエポキシ基と反応する官能基を2つ有する化合物(B)、及び重合触媒(D)を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、下記条件(i)~(vi)を満たすことを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関するものである。
(i)エポキシ樹脂(A)1モルに対して化合物(B)は0.90~1.10モルであり、
(ii)重合触媒(D)の含有量は、エポキシ樹脂(A)と化合物(B)との総量100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下であり、
(iii)重合触媒(D)が、下記式(1)で表されるN-置換アミノピリジン系化合物であり、
【化1】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、更にR
1とR
2が相互に結合して複素環を形成してもよく、結合手として、-O-、-NH-、又は-NR
4-があってもよい。但し、R
4は炭素数1~12の炭化水素基である。R
3は独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、kは0~4の整数である。
(iv)有機溶剤を含まないか又は有機溶剤を含む場合は、有機溶剤の含有量がエポキシ樹脂組成物の0.01重量%以上4重量%以下であり、
(v)エポキシ樹脂組成物の85℃における粘度が0.1Pa・s以上100Pa・s以下であり、
(vi)エポキシ樹脂(A)及び化合物(B)の融点又は軟化点が-20℃以上215℃以下であること。
【0013】
化合物(B)の官能基がフェノール性水酸基及び/又はアセチル基であることが好ましい。
【0014】
上記エポキシ樹脂組成物(E)は、エポキシ樹脂(A)と化合物(B)とが均一に溶解していることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記エポキシ樹脂組成物(E)と強化繊維(F)とを含有することを特徴とする強化繊維含有エポキシ樹脂組成物である。強化繊維(F)としては、炭素繊維が好ましく、20~80重量%の割合で含有することが好ましい。
【0016】
また本発明は、上記強化繊維含有エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグである。
また本発明は、上記強化繊維含有エポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化プラスチックであり、上記プリプレグを用いた繊維強化プラスチックである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性及び靭性に優れた熱可塑性繊維強化プラスチック(FRP)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物(E)は、1分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ化合物(A)と、1分子中に前記エポキシ基と反応する官能基を2つ有する化合物(B)と、上記式(1)で表されるN-置換アミノピリジン系化合物を重合触媒(D)として必須成分として含み、加熱により重合し、熱可塑性エポキシ樹脂となる組成物である。この組成物には、有機溶剤や、充填剤、難燃剤などの添加剤が含まれていてもよい。
なお、本明細書において、1分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ樹脂(A)を「エポキシ樹脂(A)」や「2官能エポキシ樹脂(A)」と称することがある。1分子中に前記エポキシ基と反応する官能基を2つ有する化合物(B)を「化合物(B)」や「2官能化合物(B)」と称することがある。また、単に「樹脂組成物」と表現する場合は、「エポキシ樹脂組成物」と「強化繊維含有エポキシ樹脂組成物」の両方を指す。
【0019】
エポキシ樹脂組成物(E)で使用するエポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量(g/eq.)が100以上500以下の範囲のものを好適に使用できる。その下限値は、好ましくは150g/eq.、より好ましくは180g/eq.である。その上限値は、好ましくは300g/eq.、より好ましくは280g/eq.である。
軟化点又は融点が-20℃以上215℃以下であり、1分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ樹脂であればよい。これらの範囲から外れると、組成物の相溶性や耐熱性が不十分となる。それらの下限値は、好ましくは20℃、より好ましくは40℃である。その上限値は、好ましくは200℃、より好ましくは150℃である。
エポキシ樹脂(A)の物性値、すなわち、エポキシ当量、軟化点又は融点の具体値は、市販されている材料の販売元カタログなどから入手可能である。また、エポキシ当量については、仕込比から算出したり、JIS K7236規格に準拠して測定することもできる。軟化点については、JIS K7234-1986に記載されている環球法により測定する事も可能である。融点については、JIS K0064-1992に記載の方法で測定する事や、示差走査熱量測定装置を用いて測定をすることも可能である。
【0020】
エポキシ樹脂(A)の純度は95重量%以上であることが好ましい。エポキシ樹脂(A)中に1官能の不純物が含まれている場合には重合後の分子量が上がらなくなる恐れがあるため、得られた熱可塑性樹脂製品の機械物性が悪くなる恐れがある。そのため、1官能の不純物はエポキシ樹脂(A)に対して2重量%以下であることが好ましい。3官能以上の不純物が含まれている場合には、その不純物を起点に架橋構造を形成しやすくなるため、重合物の分散が大きくなるほか、ゲル化して熱可塑性を損なう恐れがある。そのため、3官能以上の不純物についてはエポキシ樹脂(A)に対して1重量%以下であることが好ましい。エポキシ樹脂(A)としての純度が高ければ、位置異性体やオリゴマーが含まれてもよい。また、エポキシ樹脂(A)は1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(例えば、ZX-1201(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)など)、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂(例えば、OGSOL CG-500(大阪ガスケミカル株式会社製)など)、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)など)、テトラ-t-ブチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、チオジフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂や、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(例えば、YX4000(三菱ケミカル株式会社製)など)、ジメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テトラ-t-ブチルビフェノール型エポキシ樹脂などのビフェノール型エポキシ樹脂や、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、メチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルハイドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂などのベンゼンジオール型エポキシ樹脂や、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロアントラハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビスナフトールフルオレン型エポキシ樹脂、ジフェニルジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂(A)としては、更に、上記2官能エポキシ樹脂の芳香環に水素を添加した2官能エポキシ樹脂や、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸などの種々のジカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、アニリンなどのアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるグリシジルアミン型エポキシ樹脂や、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテルなどの鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコール型エポキシ樹脂や、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの環状構造を有するアルキレングリコール型エポキシ樹脂や、脂肪族環状エポキシ樹脂や、リン含有2官能エポキシ樹脂(例えば、FX-305(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ジフェニルホスフィニルハイドロキノンジグリシジルエーテルなど)なども挙げられる。
【0023】
耐熱性の向上のためには、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂や、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスナフトールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスナフトールフルオレン型エポキシ樹脂などのフルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0024】
フルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂としては、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂がある。
【化2】
【0025】
一般式(2)において、Zは式(2a)で表される2価の基であり、Gはグリシジル基であり、nは繰り返し数であり、その平均値は0以上6以下、好ましくは0.1~3.0である。
式(2a)において、Arは独立に、ベンゼン環又はナフタレン環のいずれかの芳香族環基であり、これらの芳香族環は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数2~12のアルキニル基のいずれかを置換基として有してもよい。
R4は独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数2~12のアルキニル基である。
jは独立に、0~4の整数であり、0、1、又は2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0026】
一般式(2)で表されるエポキシ樹脂は、下記一般式(3)で表されるフルオレン環構造を有する2官能フェノール化合物と、エピハロヒドリンとを、アルカリ金属化合物の存在下で反応させて得ることができる。
【化3】
一般式(3)において、Ar、R
4,及びjは、式(2a)のAr、R
4,及びjと同義である。
【0027】
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0028】
炭素数1~12のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、t-ペントキシ基、シクロペントキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n-ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n-オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n-ノニロキシ基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシロキシ基、n-デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n-ウンデシロキシ基、n-ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基などが挙げられる。
【0029】
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基などが挙げられる。
【0030】
炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0031】
炭素数6~12のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、エチルフェノキシ基、スチリルオキシ基、キシリルオキシ基、n-プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、メシチルオキシ基、エチニルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビニルナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0032】
炭素数7~13のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基、ジメチルベンジルオキシ基、トリメチルベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、1-フェニルエトキシ基、2-フェニルイソプロボキシ基、ナフチルメトキシ基などが挙げられる。
【0033】
炭素数2~12のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルビニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シンナミル基、ナフチルビニル基などが挙げられる。
【0034】
炭素数2~12のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1,3-ブタジイニル基、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基などが挙げられる。
【0035】
一般式(3)で表されるフルオレン環構造を有する2官能フェノール化合物としては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
【0036】
エポキシ樹脂(A)としてのフルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂の含有量は、全エポキシ樹脂(A)中の8重量%以上100重量%以下が好ましく、より好ましくは13重量%以上100重量%以下である。含有量が8重量%よりも少量であると耐熱性向上の寄与が低くなる恐れがある。
【0037】
エポキシ樹脂(A)としては、フルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂だけでなく、各種の2官能エポキシ樹脂を使用できる。
例えば、破壊靭性向上の観点からは、ビフェニル構造やナフタレン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂が特に好ましい。樹脂組成物の低粘度化の観点からは、結晶性エポキシ樹脂が好ましく、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。難燃性付与のためには、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有2官能エポキシ樹脂が好ましく、リン含有2官能エポキシ樹脂がより好ましい。
【0038】
エポキシ樹脂(A)は、例えば、2官能フェノール化合物と、エピクロルヒドリンやエピブロモヒドリンなどのエピハロヒドリンとを、アルカリ金属化合物の存在下で反応させて得られるエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ-t-ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、チオジフェノール、ジヒドロキシスチルベンなどのビスフェノール類や、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラ-t-ブチルビフェノールなどのビフェノール類や、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシンなどのベンゼンジオール類や、ジヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロアントラハイドロキノンなどの多環芳香族炭化水素類のジオールや10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-8-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)-8-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオールなどのリン含有フェノール類が挙げられる。
【0040】
反応触媒であるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドや、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどの有機酸のアルカリ金属塩や、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウムなどが挙げられる。
エポキシ化反応に際してのアルカリ金属化合物の使用量は、2官能フェノール化合物中の官能基に対して0.80~1.20倍モル、好ましくは0.85~1.05倍モルである。これより少ないと残存する加水分解性塩素の量が多くなり好ましくない。アルカリ金属化合物としては、水溶液、アルコール溶液又は固体の状態で使用される。
【0041】
エポキシ化反応に際しては、2官能フェノール化合物に対しては過剰量のエピハロヒドリンが使用される。通常、2官能フェノール化合物中の官能基1モルに対して、1.5~15倍モルのエピハロヒドリンが使用されるが、好ましくは2~10倍モル、より好ましく5~8倍モルである。これより多いと生産効率が低下し、これより少ないとエポキシ樹脂の高分子量体の生成量が増え、フェノキシ樹脂の原料に適さなくなる場合がある。
【0042】
エポキシ化反応は、通常、120℃以下の温度で行われる。反応の際、温度が高いと、いわゆる難加水分解性塩素量が多くなり高純度化が困難になる場合がある。好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは85℃以下の温度である。
【0043】
2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンを反応させると、例えば、式(2)で表されるフルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂の繰返し数nは0より大きくなるのが通常である。nを0に近づけるためには、公知の方法で製造したエポキシ樹脂を蒸留、晶析などの手法で高度に精製するか、又は2官能フェノール化合物をアリル化した後に、オレフィン部分を酸化することでエポキシ化する方法がある。
【0044】
エポキシ樹脂組成物(E)に使用する2官能化合物(B)としては、芳香環に結合した水酸基を2個有するジフェノール化合物(B1)、芳香環に結合したアシルオキシ基を2つ有するジエステル系化合物(B2)、又は芳香環に結合した水酸基とアシルオキシ基とを1個ずつ有するモノエステル系化合物(B3)のいずれかであればよい。なお、ジエステル系化合物(B2)とモノエステル系化合物(B3)を区別せずに、「エステル系化合物」と称することがある。これらの内、ジフェノール化合物(B1)が好ましい。
2官能化合物(B)は、水酸基当量やエステル基当量(g/eq.)が80以上500以下の範囲のものを好適に使用できる。その下限値は、好ましくは100g/eq.、より好ましくは110g/eq.である。その上限値は、好ましくは300g/eq.、より好ましくは250g/eq.である。
2官能化合物(B)の軟化点又は融点は、-20℃以上215℃以下である必要がある。これらの範囲から外れると、組成物の相溶性や耐熱性が不十分となる。それらの下限値は、好ましくは50℃、より好ましくは100℃である。その上限値は、好ましくは210℃、より好ましくは200℃である。
2官能化合物(B)の物性値、すなわち、水酸基当量又はエステル基当量、軟化点又は融点の具体値は、市販されている材料の販売元カタログなどから入手可能である。また、水酸基当量又はエステル基当量については、仕込比から算出したり、JIS K0070規格に準拠して測定することもできる。軟化点については、JIS K7234-1986に記載されている環球法により測定する事も可能である。融点については、JIS K0064-1992に記載の方法で測定する事や、示差走査熱量測定装置を用いて測定をすることも可能である。
【0045】
2官能化合物(B)の純度が95重量%以上であることが好ましい。1官能の不純物が含まれている場合には重合後の分子量が上がらなくなる恐れがあるために製造された熱可塑性樹脂の機械物性が悪くなる恐れがある。そのため、1官能の不純物は、2官能化合物(B)に対して2重量%以下であることが好ましい。3官能以上の不純物が含まれている場合には、その不純物を起点に架橋構造を形成しやすくなるため、重合物の分散が大きくなるほか、ゲル化して熱可塑性を損なう恐れがある。そのため、3官能以上の不純物は、2官能化合物(B)に対して1重量%以下であることが好ましい。2官能化合物(B)としての純度が高ければ、位置異性体については含まれていてもよい。また、2官能化合物(B)は1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。なお、アシルオキシ基は、R-CO-O-で表され、Rは炭素数1~19の炭化水素基である。炭素数1~19の炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基が好ましい。
【0046】
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが挙げられる。
炭素数7~13のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
これらの中でも、炭素数1~7の炭化水素基を有するアシルオキシ基が好ましく、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メチルベンゾイルオキシ基がより好ましく、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が更に好ましく、アセチルオキシ基が特に好ましい。
【0047】
ジフェノール化合物(B1)としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、2、4’-ビスフェノールS、ビスフェノールAP、ビスフェノールC、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ-t-ブチルビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、チオジフェノール、ジヒドロキシスチルベンなどのビスフェノール化合物や、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシンなどのベンゼンジオール化合物や、ジヒドロキシナフタレンや、ジフェニルホスフィニルヒドロキノンなどのリン含有フェノール化合物などが挙げられる。
特に、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物に使用する場合は、ビスフェノール化合物が好ましい。また難燃性を付与する目的で、リン含有フェノール化合物を用いてもよい。
【0048】
ジエステル系化合物(B2)及びモノエステル系化合物(B3)としては、上記ジフェノール化合物(B1)の水酸基がアシルオキシ基(活性エステル)に2個又は1個置換された化合物が挙げられる。ジエステル系化合物(B2)はジフェノール化合物(B1)を有機酸の酸無水物、有機酸のハロゲン化物、又は有機酸などのアシル化剤との縮合反応でアシル化して得られる。モノエステル系化合物(B3)もジフェノール化合物(B1)のアシル化時のアシル化剤のモル比を調整することで得られる、モノエステル系化合物(B3)、ジエステル系化合物(B2)、及びジフェノール化合物(B1)の混合物から単離することで得られる。アシル化を行う事で化合物の融点が低下する。そのため、エポキシ樹脂との相溶性の向上が見込まれる。
【0049】
上記アシル化に使用する酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、オクタン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、フェノキシ酢酸、アクリル酸、メタクリル酸などの有機酸や、有機酸の酸無水物や、有機酸のハロゲン化物や、有機酸のエステル化物などを使用することができる。
有機酸の酸無水物としては、例えば、無水酢酸、安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物などが挙げられる。
有機酸のエステル化物としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどが挙げられる。有機酸のハロゲン化物としては、例えば、酢酸クロリド、安息香酸クロリド、フェノキシ酢酸クロリドなどが挙げられる。
これらのアシル化剤としては、酢酸クロリド、安息香酸クロリド、フェノキシ酢酸クロリドなどの有機酸のハロゲン化物や無水酢酸、安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物などの酸ハロゲン化物や有機酸の酸無水物が好ましく、エステル化の後水洗が不要で、電材用途で嫌われるハロゲンの混入を避ける意味で、無水酢酸や安息香酸無水物などの酸無水物がより好ましく、無水酢酸が更に好ましい。
【0050】
エポキシ樹脂組成物(E)において、2官能化合物(B)の割合は、2官能エポキシ樹脂(A)1.00モルに対して、0.90~1.10モルであり、好ましくは0.95~0.99モル、より好ましくは0.97~0.98モルである。
エポキシ樹脂組成物(E)では、2官能エポキシ樹脂(A)と2官能化合物(B)が逐次的に反応し、直鎖構造をとることで熱可塑性を発現する。2官能エポキシ樹脂(A)が過剰であると重合物がエポキシ基末端となり、2官能化合物(B)が過剰であると重合物がフェノール基末端又はアシルオキシ基末端となり反応が終了する。
2官能化合物(B)の割合が0.99モル超の場合、重合物がフェノール基末端又はアシルオキシ基末端となって反応が終了するため、高分子量化しにくい恐れがある。一方、2官能化合物(B)の割合が0.95モル未満の場合、過剰なエポキシ基が副反応を起こすことにより、重合物がゲル化し熱可塑性が損なわれる恐れがある。
【0051】
ジエステル系化合物(B2)としては、例えば、下記式(3)で示される化合物が挙げられる。
【化4】
【0052】
式(3)において、Xは単結合、炭素数1~13の炭化水素基、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-のいずれかである。
炭素数1~13の炭化水素基としては、炭素数1~9のアルキレン基又は炭素数6~13のアリーレン基が好ましく、例えば、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-CHPh-、-C(CH3)Ph-、-C(Ph)2-、1,1-シクロプロピレン基、1,1-シクロブチレン基、1,1-シクロペンチレン基、1,1-シクロヘキシレン基、4-メチル-1,1-シクロヘキシレン基、3,3,5-トリメチル-1,1-シクロヘキシレン基、1,1-シクロオクチレン基、1,1-シクロノニレン基、1,2-エチレン基、1,2-シクロプロピレン基、1,2-シクロブチレン基、1,2-シクロペンチレン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,2-フェニレン基、1,3-プロピレン基、1,3-シクロブチレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,3-フェニレン基、1,4-ブチレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、1,1-フルオレン基、1,2-キシリレン基、1,4-キシリレン基、テトラヒドロジシクロペンタジエニレン基、テトラヒドロトリシクロペンタジエニレン基などが挙げられる。
これらの内、Xは、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CHPh-、-C(CH3)Ph-、1,1-シクロヘキシレン基、4-メチル-1,1-シクロヘキシレン基、3,3,5-トリメチル-1,1-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、1,1-フルオレン基が好ましく、単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CH3)Ph-、1,1-シクロヘキシレン基、3,3,5-トリメチル-1,1-シクロヘキシレン基、1,1-フルオレン基がより好ましい。
なお、Phはフェニル基(-C6H5)を表し、全炭素数が13以下であればフェニル基は置換基を有してもよい。アルキレン基はアルキリデン基を含む意味である。
【0053】
Y1は独立に、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基のいずれかである。
炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。
炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、ナフチル基などが挙げられる。
これらの内、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、又はナフチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、又はトリル基がより好ましい。
【0054】
Y2は独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基のいずれかであり、水素原子以外の基が好ましい。アルキル基、アリール基の例としては、前記Y1で例示した基と同様である。好ましいY2はY1と同様である。
Y3は独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基のいずれかである。アルキル基、アリール基の例としては、Y1で例示した基と同様である。好ましいY3は水素原子又はY1と同様である。
【0055】
ジエステル系化合物(B2)は、リン含有化合物であってもよく、リン含有化合物としては、例えば、下記式(4)で示される環状リン含有化合物(DOPO-HQ)のジアセチル化物などが挙げられる。
【化5】
【0056】
エポキシ樹脂組成物(E)に難燃性を付与する場合のリン含有率は、リン含有エポキシ樹脂やリン含有2官能化合物を使用する場合、エポキシ樹脂(A)と化合物(B)の総量100重量%に対して、1重量%以上6重量%以下が好ましく、1.5重量%以上5重量%以下がより好ましく、2重量%以上4重量%が更に好ましい。また、エポキシ樹脂組成物(E)には、2官能エポキシ樹脂(A)や2官能化合物(B)としてリン含有化合物を配合するのではなく、又はこうしたリン含有化合物に加えて、これら以外の各種の公知リン含有化合物を配合してもよい。
【0057】
また、2官能エポキシ樹脂(A)、2官能化合物(B)のいずれとも反応する活性基を持たず、単体では重合反応を阻害しない不純物成分、例えば原料由来の非反応性不純物についても、量が多くなると重合後の分子量が小さくなる恐れがある。そのため、このような不純物成分は2官能エポキシ樹脂(A)及び2官能化合物(B)のいずれに対しても2重量%以下であることが好ましい。
【0058】
エポキシ樹脂組成物(E)において、2官能化合物(B)が2官能エポキシ樹脂(A)中に結晶状態で存在すると、ミクロで見た時にモル比が設計から外れる。この状態で反応を開始すると、重合が十分に進行しないことがある。重合を十分に進行させるためには、2官能化合物(B)と2官能エポキシ樹脂(A)が相互に均一に相溶しているエポキシ樹脂組成物(E)が好ましい。
また、強化繊維などを配合する前のエポキシ樹脂組成物(E)は完全に相溶又は均一な液状となっていることが好ましいが、例えば、気泡を含まない状態でガラス製シャーレに厚さ2mmになるように溶融混合物を入れて厚み方向のヘイズ値を測定した場合において、その厚み方向のヘイズ値が30%未満であれば、重合反応に影響しない水準まで溶解又は均一な液状となったものと判断する。ヘイズ値についてより好ましくは20%未満、更に好ましくは10%未満である。なお、ヘイズ値の測定方法は実施例に記載の条件に従う。
【0059】
2官能化合物(B)と2官能エポキシ樹脂(A)とを加熱し相溶する装置の例として、フラスコや金属缶などの容器と、オイルバス、マントルヒーター、恒温槽などの加熱機器の組み合わせたもの、熱媒を循環させたプラネタリーミキサー、ニーダー、二軸押出機、単軸押出機などが挙げられるが、これらに限定せず、適した装置を使用することが可能である。
【0060】
本発明で使用できる重合触媒(D)としては、式(1)で表されるN-置換アミノピリジン系化合物である。
【化6】
【0061】
式(1)において、R1及びR2は独立に、炭素数1~12の炭化水素基であり、更にR1とR2が相互に結合して複素環を形成してもよく、結合手として、-O-、-NH-、又は-NR4-があってもよい。但し、R4は炭素数1~12の炭化水素基、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
炭素数1~12の炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基が挙げられる。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基などが挙げられる。
炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
R1及びR2は、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、又は相互に結合して形成されたシクロペンタン環やシクロヘキサン環を有する基である。
【0062】
R3は独立に、炭素数1~12の炭化水素基、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。炭素数1~12の炭化水素基としては、R1、R2で例示したものが挙げられる。
kは置換基R3の数を表し、0~4の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0063】
N-置換アミノ基の置換位置は、ピリジンの2位、3位、4位のいずれでもよいが、4位が好ましく、下記式(5)で表される化合物がより好ましい。
【化7】
式中、R
1及びR
2は式(1)のR
1及びR
2と同義である。
【0064】
重合触媒(D)としては、例えば、2-ジメチルアミノピリジン、2-ピロリジノピリジン、2-(ジメチルアミノ)-6-メチルピリジン、2-メチルエチルアミノピリジン、2-メチルブチルアミノピリジン、2-ジエチルアミノピリジン、2-メチルプロピルアミノピリジン、2-ピロリジノ-4-メチルピリジン、2-ピロリジノ-5-メチルピリジン、2-ピロリジノ-6-メチルピリジン、2-モルホリノピリジン、3-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジエチル-3-ピリジンアミン、4-ジメチルアミノピリジン、4-ジエチルアミノピリジン、4-ジプロピルアミノビリジン、4-ジブチルアミノピリジン、4-ジベンジルアミノビリジン、4-ジヘキシルアミノビリジン、4-ジヘキシルアミノビリジン、4-ジオクチルアミノピリジン、4-ジノニルアミノピリジン、4-ジデシルアミノビリジン、4-ウンデシルアミノピリジン、4-ドデシルアミノピリジン、4-ジベンジルアミノビリジン、4-ジフェニルアミノピリジン、4-ピロリジノピリジン、4-ピペリジノビリジン、4-(4-メチルピペリジノ)ピリジン、4-モルホリノピリジン、4-メチルエチルアミノピリジン、4-メチルプロピルアミノピリジン、4-メチルベンジルアミノピリジン、4-メチルフェニルアミノピリジン、2-メチル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-エチル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2-フェニル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、3-メチル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、3-エチル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、3-フェニル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、3,5-ジメチル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2,5-ジ-t-ブチル-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-(ピリジン-4-イル)アゾカンなどが挙げられる。
これらのN-置換アミノピリジン系化合物は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
これらのN-置換アミノピリジン系化合物のうち、4-ジメチルアミノピリジン、4-ジエチルアミノピリジン、4-ジプロピルアミノビリジン、4-ジブチルアミノピリジン、4-ジベンジルアミノビリジン、4-ジヘキシルアミノビリジン、4-ジヘキシルアミノビリジン、4-ジオクチルアミノピリジン、4-ジノニルアミノピリジン、4-ジデシルアミノビリジン、4-ウンデシルアミノピリジン、4-ドデシルアミノピリジン、4-ジベンジルアミノビリジン、4-ジフェニルアミノピリジン、4-ピロリジノピリジン、4-ピペリジノビリジン、4-(4-メチルピペリジノ)ピリジン、4-モルホリノピリジン、4-メチルエチルアミノピリジン、4-メチルプロピルアミノピリジン、4-メチルベンジルアミノピリジン、4-メチルフェニルアミノピリジンが好ましい。
なかでも、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(下記式(5a))、4-ピロリジノピリジン(下記式(5b))、4-ピペリジノピリジン(下記式(5c))、4-(4-メチルピペリジノ)ピリジン(下記式(5d))、4-モルホリノピリジン(下記式(5e))、4-ピペラジノピリジン(下記式(5f))がより好ましく、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-ピロリジノピリジン、4-ピペラジノピリジンが更に好ましい。
【化8】
【0066】
重合触媒(D)の配合量は、エポキシ樹脂組成物を構成するD成分以外の全量(例えば、エポキシ樹脂(A)と化合物(B)との総量、あるいは溶剤(S)を少量使用する場合は(S)成分も含めた総量)100重量部に対して、0.01~10重量部である。0.01重量部未満である場合は、現場重合において時間がかかってしまうために生産性が低下する恐れがあるほか、目標の分子量に到達するまでに何らかの理由で失活する恐れがある。一方、10重量部を超える場合は、重合反応が速やかに進行する一方で貯蔵安定性を損なってプロセス適合性に問題が発生する恐れがあり、反応に関与するが骨格には取り込まれない成分であるため、重合後の物性を損なう恐れがあるほか、高価であるため、経済的にも不利益である。好ましくは0.05~5.0重量部、より好ましくは0.1~3.0重量部、さらに好ましくは0.1~1.0重量部である。可使時間と重合時間とのバランスなどを総合的に考慮して、適宜選択できる。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物(E)において、重合触媒(D)として、N-置換アミノピリジン系化合物と共に、その他の触媒を併用してもよい。その他の触媒としては、「二段法」といわれるエポキシ樹脂の製造方法で使用される触媒であれば特に制限されない。例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン類、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール系化合物などが挙げられる。これらその他の触媒は、1種のみでも2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物に使用する場合は、その他の触媒を含まないことが好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂組成物(E)は、有機溶剤を含有しないことが好ましいが、必要に応じて、重合触媒(D)の溶媒として又は粘度調整のために、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、エポキシ樹脂(A)と化合物(B)との反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではないが、入手のし易さから、炭化水素系、ケトン系、エーテル系が好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。ただし、反応中に有機溶剤が多量に存在すると重合反応を阻害し、重合物中に有機溶剤が残存すると機械物性や耐熱性を悪化させる恐れがある。このため、有機溶剤を配合する場合、その割合は、エポキシ樹脂組成物(E)中の4重量%以下であり、2重量%以下が好ましい。有機溶剤を配合する場合の下限値は限定されないが、通常0.01重量%以上であり、より好ましくは0.5重量%以上である。
【0069】
エポキシ樹脂組成物(E)は、強化繊維への含浸性を維持するためには低粘度であることが好ましい。85℃に加温した際の粘度(Pa・s)は、100以下であり、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下である。粘度の下限値は0.1以上であり、好ましくは1以上である。また、初期に測定した粘度の2倍になるまでの時間(粘度倍加時間)は、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上である。
【0070】
エポキシ樹脂組成物(E)の重合の進行状況は、重合物の重量平均分子量の推移で判断することがよい。重量平均分子量が増加傾向にある場合は、重合反応が完了していない可能性がある。エポキシ樹脂組成物から熱可塑性プラスチック重合物を得るための重合条件は、例えば、180℃で1時間以下の加熱条件であることが好ましい。
【0071】
強化繊維含有エポキシ樹脂組成物の重合の進行状況も、同様に重合物の重量平均分子量の推移で判断することができる。強化繊維含有エポキシ樹脂組成物から繊維強化熱可塑性プラスチック重合物を得るための重合条件は、例えば、180℃で4時間以下の加熱条件であることが好ましい。
【0072】
エポキシ樹脂組成物(E)を重合することで得られる重合物(又は繊維強化プラスチック)の重量平均分子量(Mw)は30,000以上200,000以下である。重合物のMwが範囲下限未満の場合、十分に重合が進行していない化合物を多く含むこととなり、機械的強度が悪化する恐れがある。一方、重合物のMwが範囲上限超の場合、架橋反応が進行しており、熱可塑性が損なわれている恐れがある。Mwは、好ましく35,000以上150,000以下、より好ましくは40,000以上100,000以下である。
重合物のエポキシ当量(g/eq.)は10,000以上が好ましい。エポキシ当量が10,000未満であると、十分に重合が進行していない恐れがある。エポキシ当量は好ましくは20,000以上、より好ましくは25,000以上である。
重合物のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは140℃以上である。
【0073】
重合物の曲げ破壊靭性KIC(MPa√m)は0.8以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上であり、更に好ましくは1.3以上である。破壊靭性KICの上限値は限定されないが、通常10.0以下であるとされる。なお、曲げ破壊靭性KICは、実施例に記載の測定方法により評価した。
【0074】
原料としてリン含有化合物を使用した場合、重合物のリン含有率は、好ましくは1.0~6.0重量%、より好ましくは1.5~5.0重量%、更に好ましくは2.0~4.0重量%である。
【0075】
エポキシ樹脂組成物(E)は添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、ヒュームドシリカなどの充填剤、水酸化アルミニウムや赤燐などの難燃剤、コアシェルゴムなどの改質剤、キシレン樹脂などの粘度調整剤などが挙げられる。重合反応を安定させる観点から、添加剤は樹脂相とは異なるものが配合されることが好ましいが、反応に影響しない範囲において、可塑剤、相溶型の難燃剤が含まれていてもよい。
【0076】
エポキシ樹脂組成物(E)は、重合させることにより、熱可塑性プラスチックとなる。この熱可塑性エポキシ樹脂は繊維強化プラスチックの樹脂成分として優れる。
本発明の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂組成物(E)と強化繊維(F)を混合又は含侵することにより得られる。また、プリプレグは下記のようにして得ることができる。
【0077】
エポキシ樹脂組成物(E)を、離型処理された紙又はプラスチックフィルムに塗工し、必要に応じて、離型処理されたカバーフィルムを付与することで、エポキシ樹脂組成物フィルムを得ることができる。離型紙や離形プラスチックフィルム、カバーフィルムに関しては公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物フィルムの厚さはプリプレグの設計厚さと樹脂比率によって定められるが、通常の厚さは1μm以上300μm以下である。1μm未満の場合、強化繊維をきれいに解繊しなければ繊維の目開きが目立ってしまう問題があり、300μmを超える場合は強化繊維に均一に含浸しにくくなる。好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0078】
本発明で使用する強化繊維(F)は、炭素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、バサルト繊維などのプラスチックを強化するためのものであり、特に限定されるものではない。また、繊維の形態についても繊維を引きそろえたUDシート、織物、トウ、チョップドファイバー、不織布、抄紙などが挙げられ、特に限定されるものではない。ただし、含浸性の観点から、それぞれの繊維束の厚みは1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下である。
【0079】
本発明の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、又はプリプレグは、上記エポキシ樹脂組成物及び/又はエポキシ樹脂組成物フィルムと強化繊維から得られる。強化繊維とエポキシ樹脂組成物の比率は重量比で、好ましくは2:8~8:2である。樹脂含有率(Rc)でいえば、20~80重量%であり、強化繊維の割合を高めることが可能であり、必要であればRcを35重量%以下にすることもできる。強化繊維の比率が、強化繊維が少なすぎると繊維強化材料に求められる強度を十分に満足できない恐れがあり、強化繊維が多すぎるとボイドなどの欠陥が生じる恐れがある。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は重量部を表し、「%」は重量%を表す。また、各種当量の単位は全て「g/eq.」である。
実施例において用いた原料、重合触媒、溶媒、強化繊維は以下のとおりである。
【0081】
[エポキシ樹脂]
A1:ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ESF-300、エポキシ当量250、軟化点87℃)
【化9】
A2:テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX4000、エポキシ当量186、融点105℃)
【化10】
A3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD-8125、エポキシ当量172、融点42℃)
【化11】
【0082】
[フェノール化合物、エステル系化合物]
B1:ビスフェノールA(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、水酸基当量114、融点158℃)
【化12】
B2:4,4’-ビス(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(本州化学工業株式会社製、BisP-HTG、水酸基当量155、融点206℃)
【化13】
B3:合成例1で得られた2官能アセチル化化合物(10-(2,5-ジアセトキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、式(4)で表されるリン化合物、リン含有率7.6%、アセチル基当量204、融点140℃)
【化14】
B4:9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製、BPF,水酸基当量175、融点225℃)
【化15】
B5:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(三光株式会社製、HCA-HQ、水酸基当量162、融点250℃)、合成例1の原料として使用した。
【化16】
【0083】
[重合触媒]
D1:4-ジメチルアミノピリジン(東京化成工業株式会社製、DMAP、式(5a)、融点108℃)
【化17】
D2:4-ピロリジノピリジン(東京化成工業株式会社製、式(5b)、融点56℃)
【化18】
D3:トリ-o-トリルホスフィン(北興化学工業株式会社製、TOTP、融点124℃)
【化19】
【0084】
[その他]
S:シクロヘキサノン
F:PAN系炭素繊維(東レ株式会社製、トレカ T700-12K-60E)
【0085】
実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)相溶性(ヘイズ値):
化合物(B)がエポキシ樹脂(A)中に均一に溶融しているかどうかはヘイズ値により判断した。具体的には、エポキシ樹脂組成物(E)を無色透明のガラス製シャーレに気泡が入らないよう厚み2mmになるように入れ、村上色彩技術研究所製のヘイズ標準板を参考に、ヘイズ値を「5%未満(<5)」「5%以上10%未満(<10)」「10%以上20%未満(<20)」「20%以上30%未満(<30)」「30%以上(30<)」の5段階で評価した。ヘイズ値が30%未満であれば、フェノール化合物(及びエステル系化合物)がエポキシ樹脂中に均一に溶解していると判断できる。
【0086】
(2)粘度:
JIS K6870規格及びJIS K5600-2-3規格に準拠して、85℃での粘度を測定した。アントンパール社製のMCR 102により測定した。測定周波数3Hz、負荷歪1% 20mm直径の平プレート、プレート間ギャップは0.5mmの条件で、85℃に加温した際の粘度を測定した。
【0087】
(3)重量平均分子量(Mw)
GPC測定により求めた。具体的には、本体HLC8320GPC(東ソー株式会社製)にカラム(TSKgel SuperH-H、SuperH2000、SuperHM-H、SuperHM-H、以上東ソー株式会社製)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1.0mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのTHFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを使用し、注入量は50μLとした。標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PStQuick A、PStQuick B、PStQuick C)より求めた検量線より換算して、Mwを求めた。なお、データ処理はHLC8320 EcoSEC DATA Analysis version 1.14(東ソー株式会社製)を使用した。
【0088】
(4)ガラス転移温度(Tg):
JIS K7121規格に準じて、示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR6000 DSC6200)にて10℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC・Tmg(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)の温度で表した。
【0089】
(5)樹脂板の曲げ破壊靭性(KIC)
ASTM D5045に準拠して、試験機は(島津サイエンス製オートグラフAGS-X)を使用して行った。厚み6mmの樹脂板からASTM D5045に記載の試験片形状に加工を行った後、ASTM D5045に従ってSENB試験を実施した。この際、サンプル数n=5とし、その平均値をKIC値として採用した。
【0090】
(6)CFRP成型板の曲げ強度:
JIS K7074規格に従って3点曲げ試験(A法)にて、90度方向で測定した。試験機は(島津サイエンス製オートグラフAGS-X)を使用し、サンプルの寸法は厚さ2mm、長さ100mm、幅15mmとし、曲げスパンは70mmとし、試験速度1mm/minにて試験を実施した。
【0091】
合成例1(エステル系化合物)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、2官能フェノール化合物(B5)を162部、無水酢酸を105部、ピリジンを79部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら60℃まで昇温し、2時間反応を行った。その後、150℃、1.3kPa(10torr)の条件で2時間減圧乾燥を行い、上記式(4)で表されるリン含有化合物B3を203部得た。
【0092】
実施例1
ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(A1)を107部、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(A2)を65部、ビスフェノールA(B1)を50部、4,4’-ビス(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ビスフェノール(B2)を50部それぞれはかりとり、ヘンシェルミキサーを用いて粉砕混合し、混合物(M1)を得た。
混合物(M1)100部を計りとり、単軸押出機(アイ・ケー・ジー株式会社製、RMS30-28、L/D=28、フルフライトスクリュー、シリンダー温度200℃)を用いて溶融混合を行った。押出機内での滞留時間が1分となるように回転数を40rpmに設定した。
溶融した樹脂は金属缶に全量回収し、速やかに85℃になるまで冷却して、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物100部に、重合触媒として4-ジメチルアミノピリジン(D1)0.1部を添加し、85℃に加温した状態で混合した。混合後は速やかに抜き出して、直ちに20℃まで冷却して、エポキシ樹脂組成物(E1)を得た。エポキシ樹脂組成物(E1)の粘度は14.1Pa・sであり、相溶性(ヘイズ値)は10%(<20)であった。
【0093】
得られたエポキシ樹脂組成物(E1)を85℃程度に加温撹拌して、あらかじめクリアランスを6mmにセットした鉄製クロムメッキ金型容器に流し込み、熱風循環式オーブン内で180℃、60分間熱重合を行い、重合物(樹脂板)を得た。得られた重合物のMwは65000であり、Tgは152℃であり、破壊靭性値K1cは1.4MPa√mであった。
【0094】
85℃に予熱したホットプレートの上に離型処理された離型紙を、離型面が上になるように固定し、エポキシ樹脂組成物(E1)を離型紙上に乗せてから、85℃に予熱したバーコーターを用いて樹脂の面積重量が79g/m2になるように塗工した。塗工後直ちにホットプレート上から取り外し空冷して、エポキシ樹脂組成物シートを得た。
続いて、得られたエポキシ樹脂組成物シート上に、繊維の面積重量が153g/m2となるようにPAN系炭素繊維(F)を貼り合わせ、90℃に予熱したホットプレスを用いて面圧が0.5MPaになるように圧力を加え、1分後に取り出して空冷して、Rc=34%のプリプレグを得た。
得られたプリプレグを繊維の配向方向を同一にして13枚積層した後、離型フィルムを上下面に貼り付け、厚さ3mmのアルミ板で挟み込んだ。プリプレグを挟み込んだアルミ板とカプラーをバグフィルムで包み込んだのち、カプラーと真空ポンプを接続し、バグフィルム内の空気を脱気した。あらかじめ180℃に予熱している熱風循環式オーブンにバグを静置し、真空引きを維持したまま硬化を実施し、厚さ2mmの一方向繊維強化プラスチック(CFRP板)を成型した。なお、硬化条件は180℃、240分とした。得られた一方向強化繊維プラスチックの90度曲げ強度を測定した結果76MPaであった。
【0095】
実施例2~7、比較例1~3
表1の処方の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の操作で、エポキシ樹脂組成物(E2~E10)、重合物、エポキシ樹脂組成物シート、プリプレグ、及び一方向強化繊維プラスチックを得た。なお、E8~E10は比較例である。比較例1~比較例3では重合触媒(D3)を添加する際、予め重合触媒(D3)1部をシクロヘキサノン(S)2部に溶解させてから、所定の量を添加した。
得られたエポキシ樹脂組成物(E2~E10)及び重合物について、実施例1と同様に、各物性の測定を行い、その評価結果を表1に示した。
【0096】
比較例4
攪拌機、温度計、マントルヒーターを備えたセパラブルフラスコ内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A3)を100部、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(B4)を100部はかり取り、220℃まで攪拌しながら加熱を行った。220℃に到達した時点でエポキシ樹脂(A3)とフェノール化合物(B1)は相溶し、その後速やかに85℃まで冷却することでエポキシ樹脂組成物(E11)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物(E11)100部に対し、予めシクロヘキサノン(S)2部に重合触媒トリ-o-トリルホスフィン(D3)1部を溶解させた溶液を添加、混合を試みたが、エポキシ樹脂組成物の粘度が高く均一に混合することができなかった為、以降の評価を省略した。エポキシ樹脂組成物(E11)の85℃での粘度を測定したところ130Pa・sであった。
【0097】
比較例5
攪拌機、温度計、マントルヒーターを備えたセパラブルフラスコ内に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A3)を100部、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(B4)を100部、有機溶剤としてシクロヘキサノン(S)を100部はかり取り、130℃まで攪拌しながら加熱を行った。130℃に到達した時点でエポキシ樹脂(A3)とフェノール化合物(B1)は相溶し、その後速やかに85℃まで冷却することでエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物100部に対し、重合触媒としてトリ-o-トリルホスフィン(D3)1部を添加し、85℃に加温した状態で混合を行った。混合後は速やかに20℃まで冷却を行い、エポキシ樹脂組成物(E12)を得た。
【0098】
得られたエポキシ樹脂組成物(E12)について、実施例1と同様に、各物性の測定を行い、その評価結果を表1に示した。なお、重合物(樹脂板)を成型したところ、発泡が多く発生し、正常な試験片が得られなかった為、破壊靭性の試験は省略した。
【0099】
60℃に予熱したホットプレートの上に離型処理された離型紙を、離型面が上になるように固定し、エポキシ樹脂組成物(E12)を離型紙上に乗せてから、60℃に予熱したバーコーターを用いて面積重量が119g/m2になるように塗工した。塗工後直ちにホットプレート上から取り外し空冷して、エポキシ樹脂組成物シートを得た。
続いて、得られたエポキシ樹脂組成物シート上に、繊維の面積重量が153g/m2となるように炭素繊維(F)を貼り合わせ、90℃に予熱したホットプレスを用いて面圧が0.5MPaになるように圧力を加えプリプレグを作製した。加圧後は100℃に加温した恒温槽内で30分間乾燥させた後に取り出して空冷し、Rc=34%のプリプレグを得た。
得られたプリプレグを繊維の配向方向を同一にして13枚積層した後、100℃に加熱した金型で10分間接触加熱した後、金型から取り出してローラーで脱泡した。その後、離型フィルムを上下面に貼り付け、厚さ3mmのアルミ板で挟み込んだ。プリプレグを挟み込んだアルミ板とカプラーをバグフィルムで包み込んだのち、カプラーと真空ポンプを接続し、バグフィルム内の空気を脱気した。あらかじめ180℃に予熱している熱風循環式オーブンにバグを静置し、真空引きを維持したまま硬化を実施し、厚さ2mmの一方向繊維強化プラスチック(CFRP板)を成型した。なお、硬化条件は180℃、240分とした。得られた一方向強化繊維プラスチックの90度曲げ強度を測定した結果35MPaであった。
【0100】