(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126737
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】セメント焼成設備及び燃焼方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/44 20060101AFI20240912BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20240912BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240912BHJP
B01D 53/74 20060101ALI20240912BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240912BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C04B7/44 ZAB
C04B7/38
B01D53/62
B01D53/74
B01D53/78
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035326
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 信
(72)【発明者】
【氏名】岡田 豊
【テーマコード(参考)】
4D002
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002BA02
4D002BA04
4D002BA13
4D002BA20
4D002EA01
4G112KA04
4G112KA05
(57)【要約】
【課題】セメント焼成設備で発生する燃焼排ガスを有効活用することにより、セメント焼成設備から排出される二酸化炭素濃度を高めて二酸化炭素を効率的に回収し、かつ燃料の燃焼性を改善してセメント焼成設備の熱効率を向上する、セメント焼成設備及びセメント焼成設備における燃焼方法を提供する。
【解決手段】セメント原料の乾燥及び粉砕装置、サスペンションプレヒータ、ロータリーキルン及びクリンカクーラを備え、また排ガスを冷却する排ガス冷却装置、酸素付加装置を有し、酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び二酸化炭素回収装置を備え、かつ、混合ガス調製手段及び燃料供給手段を有する燃料供給システムを備えるセメント焼成設備、及びセメント焼成設備における燃焼方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、
前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、
前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び
前記セメントクリンカを冷却するクリンカクーラを備え、
前記サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスに酸素を付加する酸素付加装置を有し、前記酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、前記クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスであって、前記酸素付加装置において酸素を付加する前の排ガスから一部の排ガスAを抜き出し、前記排ガスAから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置、
を備え、かつ、
前記排ガスから一部の排ガスBを抜き出し、前記排ガスBと、酸素と、を混合して混合ガスを調製する混合ガス調製手段、及び前記混合ガスに燃料を挿入し、前記燃料を含む前記混合ガスを供給する燃料供給手段を有する燃料供給システムを備える、
セメント焼成設備。
【請求項2】
前記燃料が、可燃性固体である請求項1に記載のセメント焼成設備。
【請求項3】
前記可燃性固体が、化石燃料、可燃性廃棄物及び再生可能燃料から選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載のセメント焼成設備。
【請求項4】
前記混合ガス調製手段が、前記排ガスBの流量調節手段1及び前記酸素の流量調節手段1を有する請求項1又は2に記載のセメント焼成設備。
【請求項5】
前記混合ガス調製手段が、前記混合ガスの流量調節を行う混合ガス流量調節手段を有する請求項1又は2に記載のセメント焼成設備。
【請求項6】
前記混合ガス調製手段が、さらに前記二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素を混合する手段を有する請求項1又は2に記載のセメント焼成設備。
【請求項7】
前記燃料を含む前記混合ガスの供給先が、前記サスペンションプレヒータが有するバーナ及び前記ロータリーキルンが有するバーナから選ばれる少なくとも一のバーナである請求項1又は2に記載のセメント焼成設備。
【請求項8】
さらに、前記排ガスから一部の排ガスCを抜き出し、前記排ガスCと、酸素と、を混合して燃焼用ガスを調製する燃焼用ガス調製手段、及び前記燃焼用ガスを前記ロータリーキルンが有するバーナに供給する燃焼用ガス供給手段を有する燃焼用ガス供給システムを備える、請求項1又は2に記載のセメント焼成設備。
【請求項9】
前記燃焼用ガス調製手段が、前記排ガスCの流量調節手段2及び前記酸素の流量調節手段2を有する請求項8に記載のセメント焼成設備
【請求項10】
前記燃焼用ガス調製手段が、前記燃焼用ガスの流量調節を行う燃焼用ガス流量調節手段を有する請求項8に記載のセメント焼成設備。
【請求項11】
前記燃焼用ガス調製手段が、さらに前記二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素を混合する請求項8に記載のセメント焼成設備。
【請求項12】
セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、
前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、
前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び
前記セメントクリンカを冷却するクリンカクーラを備え、
前記サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスに酸素を付加する酸素付加装置を有し、前記酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、前記クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスであって、前記酸素付加装置において酸素を付加する前の排ガスから一部の排ガスAを抜き出し、前記排ガスAから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置、
を備え、かつ、
前記排ガスから一部の排ガスBを抜き出し、前記排ガスBと、酸素と、を混合して混合ガスを調製する混合ガス調製手段、及び前記混合ガスに燃料を挿入し、前記燃料を含む前記混合ガスを供給する燃料供給手段を有する燃料供給システムを備えるセメント焼成設備において、
前記燃料供給システムを用いて、前記粉末原料の予熱及びか焼及び前記予熱及びか焼された粉末原料の焼成を行う、セメント焼成設備における燃焼方法。
【請求項13】
前記セメント焼成設備が、さらに前記排ガスから一部の排ガスCを抜き出し、前記排ガスCと、酸素と、を混合して燃焼用ガスを調製する燃焼用ガス調製手段、及び前記燃焼用ガスを前記ロータリーキルンが有するバーナに供給する燃焼用ガス供給手段を有する燃焼用ガス供給システムを備え、
前記燃焼用ガス供給システムを用いて、前記燃焼用ガスをロータリンキルンが有するバーナに供給する、請求項12に記載のセメント焼成設備における燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セメント焼成設備及び燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化への関心が高まり、大気中への二酸化炭素の放出量の削減が求められている。発電所、焼却炉、セメント工場、製鉄所、工場設備等の各種設備において、操業により発生する二酸化炭素を含む排ガスの大気中への放出量を低減するために、排ガス中の二酸化炭素を分離回収することが検討されている。とりわけ、セメント工場における二酸化炭素の放出量の削減は重要な課題として捉えられている。
【0003】
一般的なセメント焼成設備としては、
図1に示される構成を有する設備が例示される。
図1に示されるセメント焼成設備は、セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び前記セメントクリンカを空冷するクリンカクーラを備えている。
【0004】
クリンカクーラでセメントクリンカと熱交換して高温となった空気(700~900℃程度)の一部はサスペンションプレヒータへ導入され、燃料の燃焼用空気として利用される。サスペンションプレヒータは、クリンカクーラから導入された高温空気(700~900℃程度)を燃焼用空気の一部として利用し、燃料を燃焼させることにより、粉末原料を予熱及びか焼し、主原料である石灰石を800~900℃程度で分解(CaCO3→CaO+CO2)する。か焼された粉末原料は、ロータリーキルンへ送られ焼成される。
【0005】
他方、か焼により発生したガスを含む燃焼ガスは、サスペンションプレヒータの最上段から供給され順次下方に落下する粉末原料の予熱に利用された後に、サスペンションプレヒータから排気される。サスペンションプレヒータ排ガス(350℃程度)はセメント原料の乾燥等に熱利用された後に、除塵等の無害化処理が行われ大気へ放出される。
【0006】
ロータリーキルンは、クリンカクーラ前段から導入された高温空気(800~1000℃程度)を燃焼用空気として利用し、燃料の燃焼を行うことにより、か焼された粉末原料を焼成しセメントクリンカを製造する(1450℃程度)。より具体的には、主に酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、か焼により生成した酸化カルシウム(CaO)等を含むか焼された粉末原料を焼成することにより、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2(C3S))、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2(C2S))、アルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3(C3A))、鉄アルミン酸四カルシウム(4CaO・Al2O3・Fe2O3(C4AF))等の鉱物を含むセメントクリンカが得られる。
【0007】
このようにして得られたセメントクリンカは、クリンカクーラで輸送可能な温度(160℃程度)まで空冷されクリンカサイロに貯蔵される。
また、クリンカ焼成により発生した燃焼排ガスを含むガス(1000℃程度)は、ロータリーキルンの後方より、サスペンションプレヒータの下段に導入され、粉末原料の予熱に利用された後に、サスペンションプレヒータより排気される。
【0008】
上記のような従来のセメント焼成設備において、二酸化炭素の排出量の低減について様々な取り組みが行われている。
例えば、化石燃料の代替として廃プラ等の可燃性廃棄物を用いて、化石エネルギー起源の二酸化炭素の排出量を削減することが検討されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
また、サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する工程、冷却された排ガス中に含まれる水蒸気を除去する除湿工程、除湿した排ガスに酸素を付加する工程、及び酸素付加された排ガスをクリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する循環工程を含み二酸化炭素を濃縮させる工程と、酸素を付加する上流で二酸化炭素を濃縮した排ガスの一部を抽出し二酸化炭素を液化する液化工程と、を有するセメント焼成設備の二酸化炭素の回収方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-52746号公報
【特許文献2】特開2008-239359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記
図1に示されるような構成を有する従来のセメント焼成設備では、サスペンションプレヒータ及びロータリーキルンでの燃料の燃焼により発生するエネルギー起源の二酸化炭素に加えて、か焼により非エネルギー起源の二酸化炭素が発生する。
非エネルギー起源の二酸化炭素の濃度は、原理的に100%であり、また、その発生量はエネルギー起源の二酸化炭素の1.5~2.0倍といわれている。
【0012】
一方、燃料の燃焼には、クリンカクーラから導入された高温空気を燃焼用ガスとして使用しているため、燃焼排ガスには空気中の窒素ガスが多く含まれている。そのため、エネルギー起源の二酸化炭素を含む燃焼排ガスの二酸化炭素濃度は低く、また、非エネルギー起源の二酸化炭素も、燃焼排ガスと合流するため、サスペンションプレヒータから排出される排ガス中の二酸化炭素濃度も低くなる。
また、クリンカクーラにおけるクリンカの冷却、及び燃料の供給手段として、空気を使用しているため、サスペンションプレヒータ排ガス中の二酸化炭素濃度はさらに低下することになる。
【0013】
上記特許文献1に記載される、バイオマス、廃プラ等の化石燃料の代替燃料の活用といった手法のみでは、非エネルギー起源の二酸化炭素の排出量を削減できないため、二酸化炭素の排出量の低減策としては十分といえない。
【0014】
また、特許文献2に示される方法では、
図2の模式図に示されるフローにより構成される装置が採用されている。特許文献2に示される方法では、セメント焼成設備に排ガス中の二酸化炭素を回収する装置を設置し、大気への二酸化炭素の放出量の削減を図っている。さらに、排ガスに酸素を付加しながらクリンカクーラの冷却ガスとして利用し循環させることで、排ガス中の二酸化炭素の濃度を高め、二酸化炭素回収装置において二酸化炭素が効率よく回収されるように図られている。しかし、循環する排ガス(以下、「循環排ガス」とも称する。)の利用はクリンカクーラの冷却ガスとしての利用にとどまっており、排ガス中の二酸化炭素濃度をさらに高めることで、二酸化炭素を効率よく回収するためには更なる改善の余地がある。
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、セメント焼成設備で発生する燃焼排ガスを有効活用することにより、セメント焼成設備から排出される二酸化炭素濃度を高めて二酸化炭素を効率的に回収し、かつ燃料の燃焼性を改善してセメント焼成設備の熱効率を向上する、セメント焼成設備及びセメント焼成設備における燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のセメント焼成設備を提供する。
1.セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、
前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、
前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び
前記セメントクリンカを冷却するクリンカクーラを備え、
前記サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスに酸素を付加する酸素付加装置を有し、前記酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、前記クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスであって、前記酸素付加装置において酸素を付加する前の排ガスから一部の排ガスAを抜き出し、前記排ガスAから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置、
を備え、かつ、
前記排ガスから一部の排ガスBを抜き出し、前記排ガスBと、酸素と、を混合して混合ガスを調製する混合ガス調製手段、及び前記混合ガスに燃料を挿入し、燃料を含む前記混合ガスを供給する燃料供給手段を有する燃料供給システムを備える、
セメント焼成設備。
【0017】
本発明は、以下のセメント焼成設備を、好ましい実施態様として提供する。
2.前記燃料が、可燃性固体である上記1に記載のセメント焼成設備。
3.前記可燃性固体が、化石燃料、可燃性廃棄物及び再生可能燃料から選ばれる少なくとも一種である上記2に記載のセメント焼成設備。
4.前記混合ガス調製手段が、前記排ガスBの流量調節手段1及び前記酸素の流量調節手段1を有する上記1又は2に記載のセメント焼成設備。
5.前記混合ガス調製手段が、前記混合ガスの流量調節を行う混合ガス流量調節手段を有する上記1又は2に記載のセメント焼成設備。
6.前記混合ガス調製手段が、さらに前記二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素を混合する手段を有する上記1又は2に記載のセメント焼成設備。
7.前記燃料を含む前記混合ガスの供給先が、前記サスペンションプレヒータが有するバーナ及び前記ロータリーキルンが有するバーナから選ばれる少なくとも一のバーナである上記1又は2に記載のセメント焼成設備。
8.さらに、前記排ガスから一部の排ガスCを抜き出し、前記排ガスCと、酸素と、を混合して燃焼用ガスを調製する燃焼用ガス調製手段、及び前記燃焼用ガスを前記ロータリーキルンが有するバーナに供給する燃焼用ガス供給手段を有する燃焼用ガス供給システムを備える、上記1又は2に記載のセメント焼成設備。
9.前記燃焼用ガス調整手段が、前記排ガスCの流量調節手段2及び前記酸素の流量調節手段2を有する上記8に記載のセメント焼成設備。
10.前記燃焼用ガス調製手段が、前記燃焼用ガスの流量調節を行う燃焼用ガス流量調節手段を有する上記8に記載のセメント焼成設備。
11.前記燃焼用ガス調製手段が、さらに前記二酸化炭素回収装置で回収された二酸化炭素を混合する上記8に記載のセメント焼成設備。
【0018】
また、本発明は、以下のセメント焼成設備における燃焼方法を提供する。
12.セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、
前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、
前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び
前記セメントクリンカを冷却するクリンカクーラを備え、
前記サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスに酸素を付加する酸素付加装置を有し、前記酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、前記クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスであって、前記酸素付加装置において酸素を付加する前の排ガスから一部の排ガスAを抜き出し、前記排ガスAから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置、
を備え、かつ、
前記排ガスから一部の排ガスBを抜き出し、前記排ガスBと、酸素と、を混合して混合ガスを調製する混合ガス調製手段、及び前記混合ガスに燃料を挿入し、燃料を含む前記混合ガスを供給する燃料供給手段を有する燃料供給システムを備えるセメント焼成設備において、
前記燃料供給システムを用いて、前記粉末原料の予熱及びか焼及び前記予熱及びか焼された粉末原料の焼成を行う、セメント焼成設備における燃焼方法。
【0019】
本発明は、以下のセメント焼成設備における燃焼方法を、好ましい実施態様として提供する。
13.前記セメント焼成設備が、さらに前記排ガスから一部の排ガスCを抜き出し、前記排ガスCと、酸素と、を混合して燃焼用ガスを調製する燃焼用ガス調製手段、及び前記燃焼用ガスを前記ロータリーキルンが有するバーナに供給する燃焼用ガス供給手段を有する燃焼用ガス供給システムを備え、
前記燃焼用ガス供給システムを用いて、前記燃焼用ガスをロータリンキルンが有するバーナに供給する、上記12に記載のセメント焼成設備における燃焼方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、セメント焼成設備で発生する燃焼排ガスを有効活用することにより、セメント焼成設備から排出される二酸化炭素濃度を高めて二酸化炭素を効率的に回収し、かつ燃料の燃焼性を改善してセメント焼成設備の熱効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来(特許文献1)のセメント焼成設備を説明するための模式図である。
【
図2】従来(特許文献2)のセメント焼成設備を説明するための模式図である。
【
図3】本実施形態のセメント焼成設備の好ましい一態様を示す模式図である。
【
図4】燃料供給システムの好ましい一態様を示す模式図である。
【
図5】燃料供給システム及びサスペンションプレヒータのバーナの流路の形状の好ましい一態様を示す模式図である。
【
図6】ロータリーキルンバーナの流路の形状の好ましい一態様の断面図を示す。
【
図7】ロータリーキルンバーナの燃焼用ガス供給システムの好ましい一態様を示す模式図である。
【
図8】燃焼用ガス供給システムの好ましい一態様を示す模式図である。
【
図9】実施例1で用いたセメント焼成設備の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、発明の効果を阻害しない範囲において任意に変更して実施し得るものである。なお、本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。また、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値である。例えば、とある数値範囲について「CC~DD」及び「EE~FF」と記載されている場合、「CC~FF」、「EE~DD」といった数値範囲も含まれる。
【0023】
[セメント焼成設備]
本実施形態のセメント焼成設備は、
セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、
前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、
前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び
前記セメントクリンカを冷却するクリンカクーラを備え、
前記サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスに酸素を付加する酸素付加装置を有し、前記酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、前記クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスであって、前記酸素付加装置において酸素を付加する前の排ガスから一部の排ガスAを抜き出し、前記排ガスAから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置、
を備え、かつ、
前記排ガスから一部の排ガスBを抜き出し、前記排ガスBと、酸素と、を混合して混合ガスを調製する混合ガス調製手段、及び前記混合ガスに燃料を挿入し、燃料を含む混合ガスを供給する燃料供給手段を有する燃料供給システムを備える、
というものである。
【0024】
既述のように、特許文献1に記載される、バイオマス、廃プラ等の化石燃料の代替燃料の活用といった手法では、二酸化炭素の排出量の低減には十分とはいえない状況となっている。また、特許文献2に記載される方法では、排ガスの利用はクリンカクーラの冷却ガスとしての利用にとどまっており、二酸化炭素回収装置において二酸化炭素を効率よく回収するためにはさらなる改善の余地がある。また、燃料の燃焼性の改善による熱効率の向上について、何ら検討されていない。
本実施形態のセメント焼成設備は、空気に替えて排ガスと酸素とを混合した混合ガスに、例えば可燃性固体のような燃料を挿入し、セメント焼成設備に燃料と混合ガスを供給することを可能とする、燃料供給システムを採用する。燃料供給システムの採用により、クリンカクーラの冷却ガスにとどまらず、例えばロータリーキルン、サスペンションプレヒータ等の各機器が有するバーナに燃料とともに混合ガスを供給することにより循環排ガスを利用することが可能となる。そして、空気を混合ガスに替えることにより空気中の窒素を低減でき、サスペンションプレヒータ排ガスの二酸化炭素濃度を高めることができる。
かくして、セメント焼成設備から排出される二酸化炭素を二酸化炭素回収装置において効率的に回収し、かつセメント焼成設備の熱効率を向上することが可能となる。
【0025】
以下、
図3を用いながら、本実施形態のセメント焼成設備について説明する。
図3は、本実施形態のセメント焼成設備の好ましい一態様を示す模式図である。
図3には、本実施形態のセメント焼成設備が、サスペンションプレヒータ、ロータリーキルン及びクリンカクーラを備えること、また排ガス冷却装置、酸素付加装置、排ガス循環経路及び二酸化炭素回収装置を備えること、かつ混合ガス調製手段及び燃料供給手段を有する燃料供給システムを備えること、が示されている。
【0026】
本実施形態のセメント焼成設備において、一般的なセメント焼成設備で使用される装置、すなわち、乾燥及び粉砕装置、サスペンションプレヒータ、ロータリーキルン、クリンカクーラを備えている。これらの機器は、従来から使用されている装置を使用することができる。また、セメント原料は従来から使用される原料を制限なく使用することができる。
また、二酸化炭素回収装置としては、液体吸収方式、膜分離方式、固体吸着方式、圧縮液化回収方式等のなかから適宜選択することができる。
【0027】
〔排ガスの循環に用いられる機器及び装置〕
本実施形態のセメント焼成設備は、上記セメントクリンカの製造に用いられる機器に加えて、サスペンションプレヒータ排ガスを冷却する排ガス冷却装置、及び酸素付加装置を有する排ガス循環経路を備えている。
図3に示されるように、本実施形態のセメント焼成設備において、サスペンションプレヒータから排出される排ガスは、以下のルートを循環する。
ルートI-1:排ガス冷却装置、酸素付加装置、クリンカクーラ及びサスペンションプレヒータを循環するルート
ルートI-2:排ガス冷却装置、酸素付加装置、クリンカクーラ、ロータリーキルン及びサスペンションプレヒータを循環するルート
ルートII-1:排ガス冷却装置から排出される排ガスから一部を抜き出した排ガスBが混合ガス調製手段、燃料供給手段及びサスペンションプレヒータを循環するルート
ルートII-2:排ガスBが混合ガス調製手段、燃料供給手段、ロータリーキルン及びサスペンションプレヒータを循環するルート
ルートIII:排ガス冷却装置から排出される排ガスから一部を抜き出した排ガスCが混合ガス調製手段、燃料供給手段、ロータリーキルン及びサスペンションプレヒータを循環するルート
【0028】
本実施形態のセメント焼成設備は、排ガスの循環ルートIに加えてルートIIを有する構成とすることで、排ガスの有効な利用が可能となり、サスペンションプレヒータから排出される燃焼排ガスの排出量を低減し排ガス中の二酸化炭素濃度をより高めることができるため、二酸化炭素回収装置において二酸化炭素を効率よく回収することができる。
さらに、ルートIIIを備えることで、排ガスのさらなる有効利用が可能となり、燃焼排ガスの排出量をさらに低減し排ガス中の二酸化炭素濃度をより一層高めることができるため、二酸化炭素回収装置において二酸化炭素をより一層効率よく回収することができる。
【0029】
燃料供給システムで供給する燃料は、可燃性のものであれば特に制限なく採用可能であり、可燃性気体、可燃性液体及び可燃性固体のいずれも採用可能であるが、可燃性固体が好適に使用される。
可燃性固体は、可燃性液体、可燃性気体等に比べて燃焼性が悪く、混合ガス中の酸素濃度を高めることによる燃焼性の改善効果がより大きく表れるためである。
【0030】
可燃性固体としては、固形又は粉末の状態のものが該当し、例えば、粉砕された石炭やオイルコークス等の化石燃料;破砕された廃プラスチック、廃肉骨粉、破砕された廃タイヤ、繊維屑等の廃棄物;オガライト、オガ炭、ブリケット等の木質バイオマス燃料、刈草、野草、飼料作物等の各種草本を、炭化、半炭化、ペレット化等の処理をして得られる草本バイオマス燃料等のバイオマス燃料、また破砕された木質チップ等の再生可能燃料;等が主に挙げられる。
ここで固形状とは、最大長さ5mm以上の固体を含む可燃性固体をいい、粉末状とは、最大長さ5mm未満の固体を含む可燃性固体をいう。
【0031】
固形状の可燃性固体としては、破砕された廃プラスチック、破砕された木質チップ等が該当し、粉末状の可燃性固体としては、粉砕された石炭やオイルコークス、廃肉骨粉等が該当する。
これら可燃性固体は、種類ごとに性状や形状、燃焼性が異なるため、可燃性固体の種類ごとに燃料供給システムを備えることが好ましい。
【0032】
上記ルートIIの燃焼排ガス(排ガスB)を燃料供給システムへ導入し、混合ガス調製手段において酸素製造装置により製造される酸素と混合し、燃料の燃焼性に適した酸素濃度目標値に調節することができる。これにより、燃料の燃焼性を改善させ、クリンカ製造(か焼及び焼成)に適した燃焼状態を可能とすることができ、セメント焼成設備の熱効率を向上できる。
【0033】
燃料供給システムを燃料の種類ごとに備えることが好ましい。これにより、それぞれの燃料の燃焼性に応じて酸素濃度を調整することが可能となるため、さらに好適にセメント焼成設備の熱効率を向上できる。
また、これと同様の観点から、燃料供給システムは、供給先ごとに備えることが好ましい。すなわち、
図3に示されるように、サスペンションプレヒータへの供給用として、サスペンションプレヒータ燃料供給システム、ロータリーキルンへの供給用として、ロータリーキルン燃料供給システムを有することが好ましい。
【0034】
〔燃料供給システム〕
本実施形態のセメント焼成設備は、燃料供給システムを備える。燃料供給システムは、混合ガス調製手段及び燃料供給手段を有し、混合ガスに燃料を挿入し、燃料を含む混合ガスをセメント焼成設備に供給する。燃料の供給には、空気の代わりに酸素を付加した排ガス(混合ガス)を利用することで、セメント焼成設備内の二酸化炭素の濃度を高めることができるため、二酸化炭素回収装置において効率的に二酸化炭素の回収が可能となる。
また、このような供給システムを採用することで、供給先への定量供給がしやすくなり、定量供給する燃料の搬送特性と燃焼性に応じて、混合ガスの流量と酸素濃度を調節できる。これにより、燃料を安定してセメント焼成設備に定量供給しやすくなるとともに、燃料の燃焼性に適した酸素濃度とすることができるため、セメント焼成設備に適した燃焼が可能となり熱効率が向上する。
【0035】
(混合ガス質量流量の目標値の設定)
混合ガスの質量流量目標値は、燃料の流量目標値と固気比により、下記式で決定することができる。
Wz=W/m (1)
(上記数式(1)において、Wz(kg/h):混合ガス質量流量目標値、W(kg/h):燃料流量目標値及びm(-):固気比を示す。)
【0036】
固気比mは、固体燃料の種類及び形状、また輸送距離等の輸送経路の状況等に応じて、実験及び経験等をもとに決定することができる数値である。
【0037】
例えば、上記の粉砕した石炭の固気比mとしては、好ましくは0.1t-粉体/t-混合ガス以上、より好ましくは0.5t-粉体/t-混合ガス以上、さらに好ましくは1.0t-粉体/t-混合ガス以上であり、上限として好ましくは3.0t-粉体/t-混合ガス以下、より好ましくは2.5t-粉体/t-混合ガス以下、さらに好ましくは2.0t-粉体/t-混合ガス以下である。固気比mが3.0t-粉体/t-混合ガス以下であると(混合ガスに対して燃料の割合が一定量以下であると)、燃料が搬送しやすくなり、搬送配管の閉塞が生じにくくなる。また、固気比が0.5t-粉体/t-混合ガス以上であると(混合ガスに対して燃料の割合が一定量以上であると)、燃料は搬送しやすくなり、混合ガス量が抑えられ、輸送経路の圧力損失を抑制することができるので経済的である。
【0038】
これと同様の観点から、破砕した廃プラスチックの場合、その固気比mとしては、好ましくは0.1t-粉体/t-混合ガス以上、より好ましくは0.15t-粉体/t-混合ガス以上であり、上限として好ましくは1.5t-粉体/t-混合ガス以下、より好ましくは1.3t-粉体/t-混合ガス以下、さらに好ましくは1.0t-粉体/t-混合ガス以下である。また、破砕した木質チップの場合の固気比mも、上記破砕した廃プラスチックと同じである。
【0039】
(混合ガス酸素濃度(体積比率)目標値の設定)
混合ガス中の酸素濃度の目標値は、燃料の燃焼性、すなわち燃料の種類に応じて設定されることが望ましい。混合ガス中の酸素濃度は、好ましくは23容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは27容量%以上、より更に好ましくは28容量%以上であり、上限として好ましくは40容量%以下、より好ましくは35容量%以下である。23容量%以上であると、酸素の支燃性が向上し、燃焼状態が向上するため、火炎温度が向上する。他方、40容量%以下であると、火炎温度の上昇が抑制され、設備の焼損などの不具合の発生が抑制される。
【0040】
(酸素流量(体積)目標値及び排ガス流量(体積)目標値の設定)
上記数式(1)により設定できる混合ガスの質量流量目標値、また混合ガス中の酸素濃度(体積比率)の目標値を用いて、下記の方法により酸素の体積流量目標値と排ガスの体積流量目標値を決定することができる。
【0041】
ガス体積流量及びガス質量流量のバランスより、以下の数式で示される関係が成り立つ。以下の数式における各符号は以下の表に示されるとおりである。
【0042】
【0043】
(ガス体積流量のバランス)
Qz=Qx+Qy (2)
Qx=Qz×Oz=(Qx+Qy)×Oz (3)
(ガス質量流量のバランス)
Wz=Wx+Wy=Qx×ρx+Qy×ρy (4)
ここで、上記数式(3)を変形すると、以下の数式(3’)となる。
Qy=Qx×(1-Oz)/Oz (3’)
次いで、(3’)を(4)に代入して整理すると、以下の数式(5)が導かれる。
Qx=Wz/(ρx+ρy×(1-Oz)/Oz) (5)
数式(5)により、Qxを算出することで、数式(3’)及び(2)から、Qy及びQzを算出することができる。なお、排ガスの体積流量目標値Qyに、酸素を含む場合は、酸素の体積流量目標値Qxの補正を行えばよい。
【0044】
(混合ガス調製手段)
混合ガス調製手段では、混合ガスと酸素とを混合して、混合ガスを調製する。本実施形態のセメント焼成設備では、排ガスBの流量調節手段1及び酸素の流量調節手段1を有することが好ましい。これらの流量調節手段を有することで、上式により決定された酸素流量目標値、排ガス流量目標値となるように調節し混合することができるからである。
【0045】
混合ガス調製手段が好ましく有する排ガスBの流量調節手段1及び酸素の流量調節手段1を用いた、排ガス及び酸素の流量の調節方法について、
図4を用いて説明する。
図4には、燃料供給システムが有する、混合ガス調製手段及び燃料搬送流体供給手段の好ましい一態様を示す模式図である。
図4には、混合ガス調製手段として、排ガスB、酸素、二酸化炭素及び大気の流量を調節するための、流量計(各々11a、11b、11c及び11d)及び流量調整バルブ(各々12a、12b、12c及び12d)を有することが示されている。流量調節された酸素と排ガスは混合器13において混合される。混合器13としては、例えばインラインミキサのような混合器を用いることができる。
【0046】
酸素の流量は、流量計11bの値が目標値となるように流量調整バルブ12bを調節することで調整することができ、排ガスの流量は、流量計11aの値が目標値となるように流量調整バルブ12aを調節することで調整することができる。流量調節は、自動制御で行ってもよい。また、二酸化炭素及び大気についても同様である。
【0047】
混合ガス調製手段は、
図4に示されるように、排ガスBに替えて、二酸化炭素回収装置において回収され貯蔵された二酸化炭素を混合することができる。
セメント焼成装置の運転開始の際などに、排ガス循環が十分でなく、循環排ガス中の二酸化炭素濃度が低い場合がある。このような場合には、回収した二酸化炭素を使用することにより、循環排ガス中の二酸化炭素濃度をすみやかに上昇させることができ、混合ガスに循環排ガスを使用する通常操業への切替え時間を短縮することができる。
【0048】
燃料供給システムは、
図4に示されるように、混合ガスに替えて空気単独で使用することもできる。
これにより、混合ガス調製手段に不具合が生じた場合に、混合ガスを空気に切り替えることにより、燃料の供給を継続することができ、セメント焼成設備の操業を継続することができる。このように、本実施形態の焼成設備は、いかなる状況にも対応することができる。
【0049】
(燃料供給手段)
燃料供給手段は、混合ガスに燃料を挿入し、混合ガスとともに燃料をセメント焼成設備に供給する手段である。
図4を用いて説明する。
図4に示される混合ガス調製手段は、ブロワ21及び燃料供給装置22を有しており、燃料供給装置22は、定量供給機23及びエジェクター24を有している。
【0050】
混合ガス調製手段における混合器13で混合された混合ガスは、燃料供給手段のブロワ21に投入される。ブロワ21から吐出された混合ガスに、定量供給器23で計量された燃料を、エジェクター24で導入しセメント焼成設備へ供給する。これにより、酸素濃度が調整された混合ガスと燃料とを定量供給しやすくなり、サスペンションプレヒータ排ガスの二酸化炭素濃度を向上しやすくできるとともに、燃料の燃焼性が向上しやすくなり、セメント焼成設備の熱効率の向上が図りやすくなる。
【0051】
燃料供給システムの供給先としては、サスペンションプレヒータが有するバーナ、及びロータリーキルンが有するバーナが挙げられ、これらの供給先ごとに備えることができる。
サスペンションプレヒータでは、粉末原料のか焼に必要な温度(好ましくは800~900℃)を確保できればよいため、比較的発熱量の低い燃料を使用することができる。これにより、幅広い発熱量の燃料が利用できるため、燃料の調達が容易となり、コスト削減にも寄与する。また、比較的発熱量の低い燃料と酸素濃度を調整した混合ガスを供給することにより燃焼性を向上できるため、セメント焼成装置の熱効率を改善することができる。
【0052】
ロータリーキルンでは、クリンカ焼成に必要な温度(好ましくは1450℃程度)を達成するため、発熱量の高い燃料を供給することが好ましい。
酸素濃度を調整した混合ガスと、発熱量の高い燃料を供給することにより、さらに燃焼性を向上させることができるため、セメント焼成設備の熱効率を改善できる。
【0053】
一つの燃料供給システムから、複数のバーナに供給することができる。複数のバーナを用いて燃焼させることにより、炉内を均一に加熱することができるため、セメント焼成設備の熱効率を改善できる。この方法は、サスペンションプレヒータにおいて有効である。
【0054】
複数の燃料供給システムから、複数の流路を有する一本のバーナに供給することができる。この方法は、バーナの設置スペースの削減のためにサスペンションプレヒータにも、またロータリーキルンバーナにおいても用いられる。複数の種類の燃料を一本のバーナに供給し燃焼させることにより、セメント焼成に最適な火炎を形成することができることを考慮すると、ロータリーキルンバーナにおいて特に有効であり、セメント焼成設備の熱効率を向上させることができる。
【0055】
サスペンションプレヒータでは、か焼部の雰囲気温度を好ましくは800~900℃に維持することにより、粉末原料に含まれる石灰石の80%程度の分解を行っている。この温度を維持するため、クリンカクーラから導入された酸素を含んだ高温のガスを導入し燃焼用ガスの一部に利用し、燃料供給システムから供給される混合ガスと燃料を燃焼させている。
図5に、サスペンションプレヒータを供給先とする燃料供給システムの好ましい一態様(
図5の(5-1))、またサスペンションプレヒータのバーナの流路の形状の好ましい一態様を示す模式図(
図5の(5-2)及び(5-3)を示す。
【0056】
図5に示されるように、サスペンションプレヒータを供給先とする燃料供給システムは、サスペンションプレヒータが有する複数の供給先に対して一の流量調整を行い得る調整手段として、流量調整ダンパを有することが好ましい。これにより、各供給先について過不足なく燃料を供給することが可能となる。また、
図5には、サスペンションプレヒータを供給先とする場合の燃料供給システムの態様が示されているが、例えばロータリーキルンが複数の供給先を有する場合も、同様である。
【0057】
サスペンションプレヒータが有するバーナには、一つの流路を有するバーナ、二つ以上の流路を有するバーナのいずれが用いられていてもよく、使用する燃料の種類及び性状に応じて使い分けることが好ましい。
図5にサスペンションプレヒータが有するバーナの流路の形状の好ましい一態様の断面図を示す。
図5の(5-2)は一つの流路を有するバーナの流路の形状を示すものであり、
図5の(5-3)は二つ以上の流路を有するバーナの流路の形状を示すものである。
【0058】
図5の(5-2)に示されるバーナ50は、燃料供給システムから供給された燃料と混合ガスを供給し燃焼させるものであり、閉塞しにくい特徴を有することから、上記及び後述する燃料の中でも固形状の可燃性固体の供給に好ましく用いられる。
これにより、混合ガスに含まれる酸素が固形状の可燃性固体の燃焼を促進させることができる。
【0059】
図5の(5-3)に示されるバーナ60には、7つの分散板64により吐出口を仕切っている外側の流路61と、プレート62の中央に設けられた円筒形流路63の二つの流路を備えている。バーナ60は、流路61、流路63それぞれの燃料供給システムから燃料を含んだ混合ガスを供給し一本のバーナで燃焼させることができる。
また、流路61及び流路63のいずれかの流路を、単独で燃料を含む混合ガスの流路として用いて燃焼させてもても差し支えない。
【0060】
流路61は、分散板64を有し、燃料の分散性を向上できるため、より均質な燃焼状態とすることが可能となる。特に、粉末状の可燃性固体と混合ガスを好適に供給し燃焼させることができる。
【0061】
流路63は、流路61とは別の燃料供給システムから供給される燃料と混合ガスを供給することができる。分散板等を設けず閉塞しにくい形状のため、固形状の可燃性固体と混合ガスを好適に供給し燃焼させることができる。
また、流路63からは、可燃性液体や可燃気体を供給することもできる。燃焼性に優れる可燃性液体や可燃性気体を、可燃性固体と混焼することにより、可燃性固体の燃焼を促進できるため、セメント焼成装置の熱効率をより向上できる。
【0062】
燃料としては既述のように可燃性固体に限られず、可燃性液体、可燃性気体を使用することが可能であり、例えば流路61から可燃性固体を供給せず、流路63のみで可燃性液体、または、可燃性気体を燃焼させても差し支えない。
【0063】
ここで、可燃性液体としては、灯油、重油、再生油等の化石燃料;廃油、廃グリセリン等の廃棄物;バイオオイル、廃植物油(例えば植物性廃食用油等)、その他産業廃棄物から製造した再生燃料等の再生可能燃料;等が主に挙げられる。また可燃性気体としては、液化石油ガス、天然ガス等の化石燃料;アンモニア、水素等のカーボンフリー燃料;等が主に挙げられる。
【0064】
ロータリーキルンでは、クリンカクーラ前段から導入された酸素を含んだ高温のガスを燃焼用ガスの一部として導入し、か焼された粉末原料をロータリーキルンバーナで焼成する。焼成には好ましくは1450℃程度という高温を要するため、ロータリーキルンバーナには高温の火炎を生成することが要求される。
そのため、ロータリーキルンバーナには、燃料供給用流路に加え、酸素を含む燃焼用ガスを供給する流路を備えている。
【0065】
図6に、ロータリーキルンバーナの流路の形状の好ましい一態様の断面図を示す。
図6に示されるロータリーキルンバーナには、燃料供給用流路として、流路72、流路74、及び流路75―1~75-3が設けられている。また、流路71及び流路73は、気体の流路として好適に用いられ、中でも燃焼用ガスの流路として好適に用いられる。
【0066】
図6に示されるロータリーキルンバーナにおいて、流路72はリング状の流路であり、燃料を分散し噴出させることができる。このため、粉末状の可燃性固体と混合ガスの流路として好適に用いられる。流路72においては、混合ガスに含まれる酸素が、粉末状の可燃性固体の燃焼を促進し、高温火炎の生成に寄与する。さらに、流路72に分散用仕切り板を設けること、分散用仕切り板にらせん状の角度を設けることにより、さらなる燃焼促進を図ることもできる。
【0067】
流路74は、その形状から閉塞しにくい特徴を有するため、流路72とは別の燃料供給システムから供給される固形状の可燃性固体と混合ガスの流路として好適に用いられる。流路74においては、混合ガスに含まれる酸素が、固形状の可燃性固体の燃焼を促進し、高温火炎の生成に寄与する。また、流路74は、他の流路に対してロータリーキルンバーナの中央近傍、好ましくは中央近傍内側に配置することにより、火炎の高温部分に供給できるため燃焼が促進される。
【0068】
流路75-1~75-3は、さらに別の燃料供給システムから供給される固形状の可燃性固体と混合ガスの供給に好ましく用いられる。これらの流路75-1~75-3を同時に有することで、複数の固形状の可燃性固体を使用することができる。また、燃焼性のよい可燃性液体及び可燃性気体を供給してもよく、多様な燃料が使用できるように図られている。
【0069】
以上、各機器に用いられるバーナについての説明を行ったが、あくまで好ましい一例を説明したものであり、サスペンションプレヒータのか焼効率の向上、及びロータリーキルンの焼成功率の向上を図るために、例えば流路の数をかえること、流路の形状をかえることは可能である。また、例えばサスペンションプレヒータが有するバーナとして好ましく用いられるものとして説明した
図5に示されるバーナ50及び60をロータリーキルンが有するバーナに追設して用いることにより、燃料の使用拡大を図ることもできる。
【0070】
〔燃焼用ガス供給システム〕
本実施形態のセメント焼成設備は、さらに、前記排ガスから一部の排ガスCを抜き出し、前記排ガスCと、酸素と、を混合して燃焼用ガスを調製する燃焼用ガス調製手段、及び前記燃焼用ガスを前記ロータリーキルンバーナに供給する燃焼用ガス供給手段を有する燃焼用ガス供給システム(以下、「ロータリーキルンバーナ燃焼用ガス供給システム」とも称する。)を備えることが好ましい。
ロータリーキルンバーナ燃焼用ガス供給システムは、既述のルートIIIのルートに該当し、排ガス冷却装置から排出される排ガスから一部を抜き出した排ガスCがロータリーキルンバーナ燃焼用ガス供給システム、ロータリーキルン及びサスペンションプレヒータを循環するルートである(
図3におけるルートIIIを参照)。
【0071】
図3にも示されるように、ルートIIIは、上記ルートI及びIIとは異なり、燃料供給手段により燃料は供給されず、燃焼用ガス調製手段で得られた燃焼用ガスをそのままロータリーキルンバーナの燃焼用ガス流路に供給するルートである。
既述のようにロータリーキルンでは、好ましくは1450℃程度の温度でクリンカを焼成するため、ロータリーキルンバーナでは、燃料供給流路に加え、燃焼用ガス流路を備えることにより、高温の安定した火炎を形成することができる。
【0072】
流路71及び流路73(
図6参照)から噴出される燃焼用ガスの流量及びガス流速は、ロータリーキルンバーナで燃焼する単位燃料あたりのモーメンタム(N/MW)を指標として下記の数式(6)により決定される。
M
TE(N/MW)=E
G(N)/E
T(MW) (6)
(上記数式(6)において、M
TEは単位燃料あたりのモーメンタム、E
Gはガス流の運動量(ガス量(kg/s)×速度(m/s);N)及びE
Tは燃料の熱量(MW)を示す。)
【0073】
上記数式(6)において、単位燃料あたりのモーメンタムMTEは、好ましくは4N/MW以上、より好ましくは6N/MW以上であり、上限として好ましくは10N/MW以下、より好ましくは9N/MW以下である。単位燃料あたりのモーメンタムMTEが上記範囲内であると、燃料と燃焼用ガスとの混合が促進され、高温の安定した火炎を形成することができる。
【0074】
燃焼用ガス供給システムにより供給する燃焼用ガスに含まれる酸素の濃度について、酸素濃度の目標値は、燃料の燃焼性に応じて設定されることが望ましい。燃焼用ガス中の酸素濃度は、好ましくは23容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは27容量%以上、より更に好ましくは28容量%以上であり、上限として好ましくは40容量%以下、より好ましくは35容量%以下である。23容量%以上であると、酸素の支燃性が向上し、燃焼状態が向上するため、火炎温度が向上する。他方、40容量%以下であると、火炎温度の上昇が抑制され、設備の焼損等の不具合の発生が抑制される。
【0075】
図7には、ロータリーキルンバーナ燃焼用ガス供給システムの好ましい一態様を示す模式図が示されている。
図7に示されるロータリーキルンバーナ燃焼用ガス供給システムは、排ガスCと酸素を混合して燃焼用ガスを調製する燃焼用ガス調整手段、調整された燃焼用ガスを供給先に供給する燃焼用ガス供給手段を備えている。
【0076】
図7に示されるロータリーキルンバーナ燃焼用ガス供給システムにより供給される燃焼用ガスは、好ましく設けられる排ガスCの流量調節手段2及び酸素の流量調節手段2により、排ガスの流量及び排ガス中の酸素濃度が調整されながら、燃焼用ガス供給手段によりロータリーキルンバーナに供給される。このように、燃焼用ガス調製手段は排ガスCの流量調節手段2及び酸素の流量調節手段2を有することにより、セメント焼成設備内の二酸化炭素の濃度を高めることができるため、二酸化炭素回収装置において効率的に二酸化炭素が回収できる。また、燃焼用ガスの流量と酸素濃度を調整することにより、クリンカ焼成に適した高温の安定した火炎を形成できるため、セメント焼成設備の熱効率が向上する。これと同様の観点から、燃焼用ガス調製手段は燃焼用ガスの流量調節を行う燃焼用ガス流量調節手段を有することも好ましい。
【0077】
図7に示される燃焼用ガス調製手段では、酸素の流量と排ガスの流量とを調節して混合することにより、燃焼用ガスの酸素濃度と流量を目標値に調整することができる。
既述のとおり、燃焼用ガス流量目標値Qc(Nm
3/h)は、単位燃料あたりのモーメンタムにより決定される。そのため、燃焼用ガス流量目標値Qc(Nm
3/h)は、排ガス流量目標値Qa(Nm
3/h)と酸素流量目標値Qb(Nm
3/h)は、酸素濃度目標値b(%)を用いて、以下の数式(7)及び(8)により決定することができる。
Qa=Qc×(100―b)/100 (7)
Qb=Qc×b/100 (8)
酸素の流量及び排ガスの流量を、上記数式(7)及び(8)により決定された目標値に調節し混合することにより、酸素濃度及び流量が目標値に調節された燃焼用ガスが得られる。なお、排ガスに酸素を含む場合は、酸素流量目標値の補正を行えばよい。
【0078】
酸素流量及び排ガス流量の調節方法について、
図7を用いて説明する。
図7には、燃焼用ガス供給システムが、燃焼用ガス調製手段として、排ガスC、酸素、二酸化炭素及び大気の流量を調節するための、流量計(各々31a、31b、31c及び31d)及び流量調整バルブ(各々32a、32b、32c及び32d)を有することが示されている。流量調節された酸素と排ガスは混合器33において混合される。混合器33としては、上記混合機13と同様に、例えばインラインミキサのような混合器を用いることができる。
酸素の流量は、流量計31bの値が目標値となるように流量調整バルブ32bを調節することで調整することができ、排ガスの流量は、流量計31aの値が目標値となるように流量調整バルブ32aを調節することで調整することができる。流量調節は、自動制御で行ってもよい。また、二酸化炭素及び大気についても同様である。
【0079】
燃焼用ガス調製手段は、
図7に示されるように、排ガスCに替えて、二酸化炭素回収装置において回収され貯蔵された二酸化炭素を混合することができる。
セメント焼成装置の運転開始の際などに、排ガス循環が十分でなく、循環排ガス中の二酸化炭素濃度が低い場合がある。このような場合には、排ガスCに替えて回収した二酸化炭素を使用することにより、循環排ガス中の二酸化炭素濃度をすみやかに上昇させることができ、混合ガスに循環排ガスを使用する通常操業への切替え時間を短縮できる。
【0080】
燃焼用ガス調製手段は、
図7に示されるように、燃焼用ガスに替えて空気単独で使用することもできる。
これにより、燃焼用ガス調製手段に不具合が生じた場合に、燃焼用ガスを空気に切り替えることにより、燃焼用ガスの供給を継続することができ、セメント焼成設備の操業を継続することができる。このように、本実施形態の焼成設備は、いかなる状況にも対応することができる。
【0081】
図3では、排ガス冷却装置から混合ガス調製手段までのルートについて、便宜上排ガスB及び排ガスCのルートを分けて記載されているが、共用していてもよい。また、排ガスA、排ガスB及び排ガスCを排ガス循環経路から抜き出す場合、その順序は特に問わない。
【0082】
図7に示される燃焼用ガス供給システムは、例えばロータリーキルンバーナの流路71及び流路73等の供給先ごとに設けられることが好ましい。これにより、流路別に酸素濃度及びガス流量を調整できるため、より精密な火炎を調整し形成することができる。
また、燃焼用ガスを供給する流路が複数ある場合は、
図8に示されるように、複数の流路に対して一の燃焼用ガス供給システムを設けて、複数の流路に定量供給できる装置、例えばダンパなど備えて燃焼用ガスを振り分けてもよい。例えば、燃料の燃焼性が良好であり、流路別に酸素濃度を精密に調整する必要が無い場合などに利用できる。このような構成とすることで、機器数を削減できるため、経済的に有利である。
【0083】
[セメント焼成設備における燃焼方法]
本実施形態のセメント焼成設備における燃焼方法は、
セメント原料を乾燥及び粉砕して粉末原料とする乾燥及び粉砕装置、
前記粉末原料を予熱及びか焼するサスペンションプレヒータ、
前記予熱及びか焼された粉末原料を焼成し、セメントクリンカとするロータリーキルン、及び
前記セメントクリンカを冷却するクリンカクーラを備え、
前記サスペンションプレヒータから排出される排ガスを冷却する排ガス冷却装置、
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスに酸素を付加する酸素付加装置を有し、前記酸素付加装置において酸素を付加された排ガスを、前記クリンカクーラの冷却ガスとして循環利用する排ガス循環経路、及び
前記排ガス冷却装置において冷却された排ガスであって、前記酸素付加装置において酸素を付加する前の排ガスから一部の排ガスAを抜き出し、前記排ガスAから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置、
を備え、かつ、
前記排ガスから一部の排ガスBを抜き出し、前記排ガスBと、酸素と、を混合して混合ガスを調製する混合ガス調製手段、及び前記混合ガスに燃料を挿入し、前記燃料を含む前記混合ガスを供給する燃料供給手段を有する燃料供給システムを備えるセメント焼成設備において、
前記燃料供給システムを用いて、前記粉末原料の予熱及びか焼及び前記予熱及びか焼された粉末原料の焼成を行う、というものである。
【0084】
本実施形態のセメント焼成設備における燃焼方法は、上記本実施形態のセメント焼成設備において、燃料供給システムを用いてセメント原料の焼成を行うものである。そのため、本実施形態のセメント焼成設備における燃焼方法によれば、セメント焼成設備から排出される二酸化炭素の濃度を高め、及びこれを含む燃焼排ガスの排出量を低減し効率よく二酸化炭素を回収できるとともに、かつ熱効率を向上することが可能となる。
このように、本実施形態のセメント焼成設備における燃焼方法は、上記本実施形態のセメント焼成設備において、燃料供給システムを用いてセメント原料の焼成を行うものであるため、その詳細については既に説明したとおりである。
【実施例0085】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
【0086】
(比較例1)
図1に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備を用いた。ロータリーキルンが有するバーナ(ロータリーキルンバーナ)及びサスペンションプレヒータが有するバーナ(サスペンションプレヒータバーナ)として、各々
図5に示される断面形状を有するバーナを用いた。
ロータリーキルンバーナ、サスペンションプレヒータバーナに、第1表に示される燃料を供給した。その際、燃料供給用ガスとして空気を用い、ロータリーキルンバーナに供給する燃焼用ガスとして空気を用い、クリンカの冷却用ガスとしても空気を用いた。また、クリンカ焼成温度は1450℃、か焼温度は880℃を保持するようにし、クリンカクーラでは、クリンカを160℃まで冷却するように、冷却用空気を供給した。
【0087】
(比較例2)
図2に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備を用いた。比較例1で用いた
図1に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備に加えて、排ガスがクリンカクーラを循環する経路及び二酸化炭素回収装置を備えている。
ロータリーキルンバーナ、サスペンションプレヒータバーナに、第1表に示される燃料を供給した。循環排ガスを含むクリンカクーラの冷却ガスの組成は第1表に示されるとおりである。
【0088】
(実施例1)
図9に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備を用いた。比較例2で用いた
図1に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備に加えて、ロータリーキルンバーナ及びサスペンションプレヒータバーナに燃料供給システムを備えている。ロータリーキルンバーナ、サスペンションプレヒータバーナに、第1表に示される燃料を供給した。この場合の、混合ガスの組成は第1表に示されるとおりである。
【0089】
(実施例2)
図3に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備を用いた。実施例1で用いた
図1に示されるフロー図の構成を有するセメント焼成設備に加えて、ロータリーキルンバーナへ燃焼用ガスを供給する燃焼用ガス供給システムを備えている。ロータリーキルンバーナ、サスペンションプレヒータバーナに、第1表に示される燃料を供給した。この場合の、燃焼用ガスの組成は第1表に示されるとおりである。
【0090】
【表2】
注)第1表中、「K」はロータリーキルン、「SP」はサスペンションプレヒータを示す。また、固気比mは、燃料1と混合ガスとの比である。
【0091】
実施例及び比較例で使用した燃料1~3は以下のとおりである。
・燃料1:可燃性固体(石炭粉砕品:25.7GJ/t、篩(目開き90μm)通過分85質量%含有)
・燃料2:可燃性固体(廃プラスチック破砕品:33.1GJ/t、40mmスクリーン通過品)
・燃料3:可燃性固体(木質チップ破砕品:14.4GJ/t、40mmスクリーン通過品)
【0092】
実施例1及び2、並びに比較例1及び2について、ロータリーキルン及びサスペンションプレヒータにおいて、燃料の燃焼により発生する排ガスの組成及び合計流量を第1表に示す。第1表の結果によれば、ロータリーキルン内の排ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度は、比較例1を100とした場合、実施例1及び2は各々617及び650となり、二酸化炭素の濃度は6倍以上に向上したことが分かった。また、サスペンションプレヒータの燃焼排ガス中における二酸化炭素の濃度は、比較例1を100とした場合、実施例1及び2はともに577となり、二酸化炭素の濃度は6倍弱に向上したことが分かった。
【0093】
ロータリーキルンの燃焼排ガス及びサスペンションプレヒータの燃焼排ガスの合計流量は、比較例1を100とした場合、実施例1及び2は各々70及び67となり、燃焼排ガスの流量は30%以上減少することが分かった。
さらに、燃焼性が向上した結果、石炭の使用量が実施例1では99、実施例2では98に低減した。
【0094】
以上の結果から、本実施形態のセメント焼成設備によれば、排出される二酸化炭素濃度を向上し及びこれを含む燃焼排ガスの排出量を低減し、かつ熱効率を向上することが可能となることが確認された。