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特開2024-126748昇降圧回路、電源回路および調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126748
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】昇降圧回路、電源回路および調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035347
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 朋之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB14
5H730BB57
5H730EE13
5H730EE58
5H730FF06
5H730FG07
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】昇降圧回路の入力インピーダンスの調整を容易に行えることが好ましい。
【解決手段】動作周期ごとに、入力電力による充電動作および充電電力の放出動作を1回以上繰り返して、前記入力電力を昇降圧するDCDCコンバータと、前記DCDCコンバータが有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータに基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する周期制御部とを備える昇降圧回路を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作周期ごとに、入力電力による充電動作および充電電力の放出動作を1回以上繰り返して、前記入力電力を昇降圧するDCDCコンバータと、
前記DCDCコンバータが有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータに基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する周期制御部と
を備える昇降圧回路。
【請求項2】
1回の前記充電動作の時間の長さを示す充電時間を検出する時間検出器を更に備え、
前記周期制御部は、前記充電時間に更に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
請求項1に記載の昇降圧回路。
【請求項3】
前記周期制御部は、前記DCDCコンバータへの入力電圧と、前記DCDCコンバータからの出力電圧とに更に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
請求項2に記載の昇降圧回路。
【請求項4】
前記充電動作および前記放出動作を1回ずつ行う場合の時間の長さを示すサイクル時間を検出する時間検出器を更に備え、
前記周期制御部は、前記サイクル時間に更に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
請求項1に記載の昇降圧回路。
【請求項5】
前記周期制御部は、前記サイクル時間に前記インピーダンス調整パラメータを乗算した値に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
請求項4に記載の昇降圧回路。
【請求項6】
前記周期制御部は、前記インピーダンス調整パラメータに基づいて、前記動作周期の各期間において前記充電動作および前記放出動作を繰り返す回数を制御する
請求項4に記載の昇降圧回路。
【請求項7】
入力電力を生成する電源と、
前記入力電力を昇降圧する昇降圧回路と
を備え、
前記昇降圧回路は、
動作周期ごとに、前記入力電力による充電動作および充電電力の放出動作を1回以上繰り返して、前記入力電力を昇降圧するDCDCコンバータと、
前記DCDCコンバータが有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータに基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する周期制御部と
を有する電源回路。
【請求項8】
動作周期ごとに、入力電力による充電動作および充電電力の放出動作を1回以上繰り返して、前記入力電力を昇降圧するDCDCコンバータの入力インピーダンスを調整する調整方法であって、
前記充電動作および前記放出動作を1回ずつ行う場合の時間の長さを示すサイクル時間を検出し、
前記サイクル時間と、前記DCDCコンバータが有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータとに基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
調整方法。
【請求項9】
前記サイクル時間に前記インピーダンス調整パラメータを乗算した値に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
請求項8に記載の調整方法。
【請求項10】
前記インピーダンス調整パラメータに基づいて、前記動作周期の各期間において前記充電動作および前記放出動作を繰り返す回数を制御して、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する
請求項8に記載の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降圧回路、電源回路および調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源から電力を取り出し、負荷を駆動する昇降圧回路が知られている(例えば、特許文献1-3参照)。
[特許文献1]米国特許第11157032号明細書
[特許文献2]特許第6152919号
[特許文献3]特許第5921447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昇降圧回路の入力インピーダンスの調整を容易に行えることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、昇降圧回路を提供する。昇降圧回路は、動作周期ごとに、入力電力による充電動作および充電電力の放出動作を1回以上繰り返して、前記入力電力を昇降圧するDCDCコンバータを備えてよい。昇降圧回路は、前記DCDCコンバータが有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータに基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御する周期制御部を備えてよい。
【0005】
上記いずれかの昇降圧回路は、1回の前記充電動作の時間の長さを示す充電時間を検出する時間検出器を備えてよい。上記いずれかの昇降圧回路において、前記周期制御部は、前記充電時間に更に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0006】
上記いずれかの昇降圧回路において、前記周期制御部は、前記DCDCコンバータへの入力電圧と、前記DCDCコンバータからの出力電圧とに更に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0007】
上記いずれかの昇降圧回路は、前記充電動作および前記放出動作を1回ずつ行う場合の時間の長さを示すサイクル時間を検出する時間検出器を備えてよい。上記いずれかの昇降圧回路において、前記周期制御部は、前記サイクル時間に更に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0008】
上記いずれかの昇降圧回路において、前記周期制御部は、前記サイクル時間に前記インピーダンス調整パラメータを乗算した値に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0009】
上記いずれかの昇降圧回路において、前記周期制御部は、前記インピーダンス調整パラメータに基づいて、前記動作周期の各期間において前記充電動作および前記放出動作を繰り返す回数を制御してよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、入力電力を生成する電源と、第1の態様に係るいずれかの昇降圧回路とを備える電源回路を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様においては、動作周期ごとに、入力電力による充電動作および充電電力の放出動作を1回以上繰り返して、前記入力電力を昇降圧するDCDCコンバータの入力インピーダンスを調整する調整方法を提供する。調整方法では、前記充電動作および前記放出動作を1回ずつ行う場合の時間の長さを示すサイクル時間を検出してよい。庁組成方法では、前記サイクル時間と、前記DCDCコンバータが有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータとに基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0012】
上記何れかの調整方法において、前記サイクル時間に前記インピーダンス調整パラメータを乗算した値に基づいて、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0013】
上記何れかの調整方法において、前記インピーダンス調整パラメータに基づいて、前記動作周期の各期間において前記充電動作および前記放出動作を繰り返す回数を制御して、前記DCDCコンバータの前記動作周期を制御してよい。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一つの実施形態に係る電源回路200の一例を示す図である。
図2】DCDCコンバータ110の構成例を示す図である。
図3】DCDCコンバータ110の動作例を示すタイミングチャートである。
図4】動作周期の各期間において、充電動作および放出動作をM回ずつ繰り返す例を示す。
図5】時間検出器170として、TDC回路172を用いた例を示す図である。
図6図5に示したDCDCコンバータ110の動作例を示すタイミングチャートである。
図7】周期制御部130および時間検出器170の回路構成例を示す図である。
図8図7に示した昇降圧回路100の動作例を示すタイミングチャートである。
図9】周期制御部130および時間検出器170の他の回路構成例を示す図である。
図10図9に示した昇降圧回路100の動作例を示すタイミングチャートである。
図11】本発明の一つの実施形態に係る入力インピーダンスRinの調整方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書では、各図における同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、説明の便宜上一部の構成を図示しない場合がある。
【0017】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。また図中の各端子および構成要素は、配線等を用いて接続されてよい。図中の各グランド端子は共通の端子であってよく、異なる端子であってもよい。
【0018】
昇圧または降圧を行うDCDCコンバータには、様々な電源が接続され得る。DCDCコンバータに接続される電源は、ソーラー発電、振動発電、電磁波給電など、電源の出力抵抗が十分小さくない場合がある。出力抵抗が比較的に大きい電源から、最大電力が得られる動作点をこえて電流を引き出そうとすると、出力電圧が急激に低下し、電力を効率よく取り出すことができない場合がある。
【0019】
これに対して、DCDCコンバータの動作点を、最大電力が得られる動作点に追従させる、最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御が知られている。MPPT制御を実現する方式はいくつか知られており、例えば山登り法(Hill Climbing Method)がある。山登り法では、電源からDCDCコンバータに流入する電流と電力を測定する。そして、電流制御によって流入電流を増やした場合に流入電力が増加すれば、さらに流入電流を増やす。逆に流入電流を増やしたにもかかわらず流入電力が低下すれば、流入電流を減らすことによって、最大電力点(MPP)に追従させる。
【0020】
山登り法では、流入電力を直接観測しているため精度よくMPPT制御を実現できるが、流入電力の測定と、最大電力点の算出に複雑な電気回路を用いることになり、また、多くの電力を消費する。山登り法は、比較的に出力電力の大きい太陽光発電のコンディショナ等に適用されている。
【0021】
出力電力の小さい小型ソーラー発電、熱発電、振動発電、電磁波給電のようなエナジーハーベスト分野に対しては、無負荷状態の電源の開放電圧(Voc)を測定し、電源の出力電圧が、測定した開放電圧の50%から80%程度になるようにDCDCコンバータの出力を制御する方式が知られている。この場合、開放電圧を測定している間はDCDCコンバータが停止状態になってしまう。また、電源の出力状態は周囲状況により変化する。状態変動の頻度が高い電源に対してMPPT制御しようとすると、頻繁に開放電圧を測定することになり、DCDCコンバータの動作効率が低下する。また、振動発電や電磁波給電などの一部の電源は、発電中に無負荷状態にすると、電圧が上昇しすぎる場合がある。また、マイクロ波を整流して直流電力を生成する電源は、トランジスタやダイオードなど半導体素子で構成された整流器を使用している。これらの半導体素子は内部抵抗を持つため、素子に電流が流れると、電流の2乗に比例する電力を消費する。このため電磁波給電などの高周波回路では、出力インピーダンスを高くし、高い出力電圧かつ低い出力電流で動作させるように、アンテナおよび整合回路を設計する。しかし、半導体素子はその耐圧以上の電圧を印加することはできないため、開放電圧を測定するMPPT制御では、半導体素子の耐圧の50%以下でしか動作させることができず、効率のもっともよい領域を使用することができなくなってしまう。
【0022】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る電源回路200の一例を示す図である。電源回路200は、電源210および昇降圧回路100を備える。電源210は、例えば小型ソーラー発電、熱発電、振動発電、電磁波給電等の環境発電装置であるが、これに限定されない。図1においては、電源210の出力インピーダンスを抵抗Rsで示している。
【0023】
昇降圧回路100は、電源210からの入力電力を昇降圧する。昇降圧とは、電圧の昇圧または降圧の少なくとも一方を指す。昇降圧回路100は、電源210からの入力電圧VINを昇圧し、または、降圧する。
【0024】
昇降圧回路100はDCDCコンバータ110を備える。DCDCコンバータ110は、所定の動作周期ごとに、電源210からの入力電力による充電動作と、充電した電力の放出動作を繰り返す。例えば充電動作では、DCDCコンバータ110の内部のコイルに入力電力によるエネルギーを蓄えて、放電動作では、当該コイルに蓄えたエネルギーを後段の回路に放出する。充電動作と放電動作を繰り返すことで、入力電圧VINを昇降圧する。
【0025】
昇降圧回路100は、DCDCコンバータ110の動作周期を調整することで、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスを調整する。昇降圧回路100は、DCDCコンバータ110が入力電力を昇降圧している間に、動作周期を調整してよい。昇降圧回路100は、DCDCコンバータ110が負荷に電圧VOUTを出力している間に、動作周期を調整してよい。つまり昇降圧回路100は、DCDCコンバータ110の動作を停止させずに、DCDCコンバータ110の動作周期を調整することで、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスを調整してよい。これにより、DCDCコンバータ110の動作効率を低下させずに、DCDCコンバータ110をMPPT制御できる。
【0026】
本例の昇降圧回路100は、周期制御部130を備える。周期制御部130は、DCDCコンバータ110が有するべき入力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータNに基づいて、DCDCコンバータ110の動作周期を制御する制御信号ENを生成する。周期制御部130は、動作周期の1周期の長さを制御してよく、後述するように、動作周期における充電動作および放出動作の繰り返し回数を制御してもよい。
【0027】
例えば制御信号ENは、動作周期と同一周期でパルスが配置されたパルス信号である。DCDCコンバータ110は、制御信号ENのパルスが入力される毎に、動作周期の各期間を開始する。制御信号ENのパルス間隔を調整することで、DCDCコンバータ110の動作周期の1周期の長さを制御できる。
【0028】
本例の昇降圧回路100は、時間検出器170を備える。時間検出器170は、DCDCコンバータ110の1回の充電動作の時間の長さを示す充電時間TLSを検出する。周期制御部130は、充電時間TLSに更に基づいて、DCDCコンバータ110の動作周期を制御してよい。本例の時間検出器170は、充電時間TLSに応じたサイクル時間Tswを算出する。サイクル時間Tswは、充電動作および放出動作を1回ずつ行った場合の時間の長さである。周期制御部130は、サイクル時間Tswに基づいて、DCDCコンバータ110の動作周期を制御してよい。例えば周期制御部130は、サイクル時間Tswに、インピーダンス調整パラメータNを乗算した値に基づいて、DCDCコンバータ110の動作周期を制御してよい。周期制御部130は、サイクル時間Tswに、インピーダンス調整パラメータNを乗算した値を、DCDCコンバータ110の動作周期の1周期の長さとしてよい。インピーダンス調整パラメータNは、例えば正の整数であるが、正の実数であってもよい。
【0029】
時間検出器170は、充電時間TLSに対して所定の演算を行うことでサイクル時間Tswを算出してよい。他の例では、時間検出器170は、DCDCコンバータ110の1回の放出動作の時間の長さを示す放出時間THSを更に検出してよい。この場合、時間検出器170は、充電時間TLSと放出時間THSの和を、サイクル時間Tswとしてよい。
【0030】
時間検出器170は、DCDCコンバータ110に充電動作および放出動作のいずれを行わせるかを示すスイッチ制御信号LSon、HSonを検出してよい。スイッチ制御信号の遷移タイミングに基づいて、充電時間TLSおよび放出時間THSを検出できる。
【0031】
DCDCコンバータ110の動作周期を制御することで、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスを調整できる。入力インピーダンスを調整できる理由は後述する。電力効率の観点では、電源210の出力インピーダンスRsと、DCDCコンバータ110の実効的な入力インピーダンスRinが等しいとき、得られる電力及び効率が最大となる。ハーベスタ等の電源210に使用する発電デバイスは、出力インピーダンスが既知であるものが多い。出力インピーダンスに応じたインピーダンス調整パラメータNを設定することで、DCDCコンバータ110の動作周期を制御して、入力インピーダンスRinを出力インピーダンスRsに近づけることができる。これにより、高効率な電源回路200を構成することができる。
【0032】
インピーダンス調整パラメータNは、昇降圧回路100の外部から設定されてよい。例えばインピーダンス調整パラメータNは、昇降圧回路100の使用者により設定されてよい。インピーダンス調整パラメータNを変更することで、昇降圧回路100を多様な電源210に適用できる。
【0033】
昇降圧回路100は、インピーダンス調整パラメータNを生成するパラメータ生成部を備えていてもよい。例えばパラメータ生成部は、接続される電源210の種類に基づいてインピーダンス調整パラメータNを生成してよく、電源210が出力インピーダンスRsを示す情報を保持している場合には、当該情報に基づいてインピーダンス調整パラメータNを生成してもよい。
【0034】
図2は、DCDCコンバータ110の構成例を示す図である。本例のDCDCコンバータ110は、コイル114、スイッチ116、スイッチ118およびスイッチ制御部112を有する。
【0035】
本明細書では、各素子の両端を、一端および他端と称する場合がある。コイル114の一端は電源210に接続され、入力電圧VINが印加される。スイッチ116は、コイル114の他端を出力端子に接続するか否かを切り替える。スイッチ118は、コイル114の他端を基準電位(例えば接地)に接続するか否かを切り替える。
【0036】
スイッチ118は、スイッチ制御信号LSonにより制御される。例えばスイッチ制御信号LSonがHレベルの場合にスイッチ118がオンになり、Lレベルの場合にスイッチ118がオフになる。スイッチ116は、スイッチ制御信号HSonにより制御される。例えばスイッチ制御信号HSonがHレベルの場合にスイッチ116がオンになり、Lレベルの場合にスイッチ116がオフになる。
【0037】
スイッチ118がオン、スイッチ116がオフの状態では、コイル114は電源210からの入力電力を蓄積する。この動作は、上述した充電動作に対応している。スイッチ118がオン状態となっている時間(例えばLSon=H、HSon=Lの時間)が、上述した充電時間TLSに対応する。スイッチ118がオフ、スイッチ116がオンの状態では、コイル114は蓄積した電力を出力端子(VOUT)に放出する。この動作は、上述した放出動作に対応している。スイッチ116がオン状態となっている時間(例えばLSon=L、HSon=Hの時間)が、上述した放出時間THSに対応する。
【0038】
スイッチ制御部112は、制御信号ENに基づいて、スイッチ116およびスイッチ118のオンオフの状態を制御する。例えばスイッチ制御部112は、制御信号ENのパルスに応じてスイッチ118をオン状態にし、スイッチ116をオフ状態にする。これによりDCDCコンバータ110が充電動作を開始する。スイッチ制御部112は、充電動作を開始した後にDCDCコンバータ110の状態が所定の条件を満たした場合に、スイッチ118をオフ状態にし、スイッチ116をオン状態にする。これによりDCDCコンバータ110が放出動作を開始する。スイッチ制御部112は、放出動作を開始した後にDCDCコンバータ110の状態が所定の条件を満たした場合に、放出動作を終了する。例えばスイッチ制御部112は、予め設定された時間だけ充電動作を行ってよい。またスイッチ制御部112は、コイル114から流れる電流が0になるまで、放電動作を行ってよい。スイッチ制御部112は、動作周期の各期間において、充電動作および放出動作を1回行ってよく、複数回繰り返してもよい。充電動作および放出動作を何回行うかは、スイッチ制御部112に予め設定されてよく、外部から設定されてもよい。充電動作および放出動作を繰り返し、また、出力端子側へのエネルギーの放出量を制御することで、入力電圧VINを昇降圧した出力電圧VOUTを生成できる。
【0039】
図3は、DCDCコンバータ110の動作例を示すタイミングチャートである。動作周期の各期間は、制御信号ENのパルスにより開始する。本例では、動作周期の各期間において、充電動作および放出動作を1回ずつ行う例を示している。
【0040】
本例のDCDCコンバータ110は、充電動作でコイル114に充電した電力を、放出動作で全て放出する。つまり、放出動作は、コイル114から出力端子に流れるインダクタ電流が0になるまで継続する。充電時間TLSにおけるコイル114に対するチャージ電流が、放出時間THSで0になる関係を利用して、放出時間THSは、充電時間TLS、入力電圧VINおよび出力電圧VOUTを用いて(数1)で表すことができる。
【数1】
【0041】
サイクル時間Tswは、充電時間TLSと放出時間THSの和なので、(数2)となる。
【数2】
周期制御部130は、DCDCコンバータ110への入力電圧VINと、DCDCコンバータ110からの出力電圧VOUTに基づいて、DCDCコンバータ110の動作周期を制御してよい。周期制御部130は、数2に示すように、入力電圧VIN、出力電圧VOUTおよび充電時間TLSからサイクル時間Tswを算出し、サイクル時間Tswに基づいてDCDCコンバータ110の動作周期を制御してよい。図2に示すDCDCコンバータ110の入力インピーダンスRinは、コイル114のインダクタンスL、動作周期の1期間の長さT、電源210からの入力電流Iin、入力電圧VIN、出力電圧VOUTを用いて(数3)で与えられる。
【数3】
【0042】
(数3)に示されるように、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスRinは、入力電圧VINおよび出力電圧VOUTに依存する。入力電圧VINは電源210の環境等による発電状況により変化し、出力電圧VOUTは、電力を供給する供給先の負荷、または、2次電池の充電状況等により変化する。DCDCコンバータ110の入力インピーダンスRinは、入力電圧VINおよび出力電圧VOUTに応じて変化する。
【0043】
本例の周期制御部130は、サイクル時間Tswに、インピーダンス調整パラメータNを乗算した値を、DCDCコンバータ110の動作周期Tとする。動作周期Tは(数4)で与えられる。
【数4】
(数3)および(数4)から、入力インピーダンスRinは、(数5)で示される。
【数5】
【0044】
(数5)において、インダクタンスLおよび充電時間TLSは固定パラメータである。従って、インピーダンス調整パラメータN(すなわち、動作周期Tの長さ)を調整することで、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスRinを調整できる。
【0045】
図4は、動作周期の各期間において、充電動作および放出動作をM回ずつ繰り返す例を示す。MはNより小さい範囲で設定可能な整数である。本例におけるDCDCコンバータ110の入力インピーダンスRinは、(数6)で示される。
【数6】
(数6)に示すように、パラメータNおよびMのいずれによっても、入力インピーダンスRinを調整できる。周期制御部130は、インピーダンス調整パラメータとして、パラメータNおよびMの少なくとも一方を受け取ってよい。周期制御部130は、インピーダンス調整パラメータMに基づいて、動作周期の各期間において充電動作および放出動作を繰り返す回数(M)を制御してよい。周期制御部130は、インピーダンス調整パラメータNに基づいて動作周期の周期Tを調整し、且つ、インピーダンス調整パラメータMに基づいて動作周期の各期間における繰り返し回数Mを調整してよい。
【0046】
周期制御部130は、インピーダンス調整パラメータNを用いた入力インピーダンスRinの制御と、インピーダンス調整パラメータMを用いた入力インピーダンスRinの制御とを使い分けてもよい。例えば、動作周期の変動を抑制したい場合には、インピーダンス調整パラメータMを用いて入力インピーダンスRinを制御してよい。この場合、インピーダンス調整パラメータNは固定値であってよい。
【0047】
図5は、時間検出器170として、TDC(Time-to-Digital-Converter)回路172を用いた例を示す図である。TDC回路172は、サイクル時間Tswをデジタル値Tdで出力する。他の構造は、図1から図4において説明した例と同様である。
【0048】
図6は、図5に示したDCDCコンバータ110の動作例を示すタイミングチャートである。図6においてTd(n)は、TDC回路172で検出したサイクル時間Tsw(n)の長さをデジタル値に変換したデータである。周期制御部130は、デジタル値Td(n)で示される時間に、インピーダンス調整パラメータNを乗算した値を、動作周期の1周期Tとする。これにより、インピーダンス調整パラメータNに応じて、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスRinを調整できる。サイクル時間Tswに対して十分に周波数の高いクロック信号を用いることで、TDC回路172および周期制御部130をほぼデジタル回路で構成でき、昇降圧回路100を簡易に構成できる。
【0049】
図7は、周期制御部130および時間検出器170の回路構成例を示す図である。本例の周期制御部130は、カウンタ140、比較器138、電流源132、コンデンサ136およびスイッチ134を有する。本例の時間検出器170は、内部スイッチ制御部174、電流源176、スイッチ178、コンデンサ182およびスイッチ180を有する。
【0050】
図8は、図7に示した昇降圧回路100の動作例を示すタイミングチャートである。内部スイッチ制御部174は、スイッチ制御信号HSonおよびLSonを受け取る。内部スイッチ制御部174は、スイッチ制御信号HSonおよびLSonに基づいて、サイクル時間Tswを検出する。内部スイッチ制御部174は、動作周期の各期間の開始タイミングから、サイクル時間Tswの間、スイッチ178をオン状態にし、サイクル時間Tswが経過した場合のスイッチ178をオフ状態にする。
【0051】
スイッチ178がオン状態になると、電流源176からの定電流Iにより、容量Cのコンデンサ182が充電される。サイクル時間Tswが経過した後のコンデンサ182の電圧は、VA=I×Tsw/Cとなる。電圧VAは、サイクル時間Tswの長さを電圧値に変換した情報である。
【0052】
比較器138は、電圧VAと電圧VBとを比較する。電圧VBは、電流源132からの定電流Iにより充電されるコンデンサ136の電圧である。電流源132および電流源176の電流値は同一であり、コンデンサ136とコンデンサ182の容量値は同一である。このため、動作周期の各期間の開始直後は、電圧VAおよび電圧VBは同様に上昇する。
【0053】
比較器138は、電圧VBが電圧VAより大きくなったか否かを検出する。電圧VAは、サイクル時間Tswが経過した後は一定値に維持されるので、サイクル時間Tswが経過した直後に、電圧VBが電圧VAより大きくなる。比較器138は電圧VBが電圧VAより大きくなった場合に、スイッチ134をオン状態にしてコンデンサ136を放電させると共に、カウンタ140における計数値を増加(例えば+1)させる。コンデンサ136が放電され電圧VBが基準電圧に遷移すると、スイッチ134がオフ状態となり、コンデンサ136が再度充電される。このような動作を繰り返すことで、サイクル時間Tswが経過する毎に、カウンタ140における計数値が増加する。
【0054】
カウンタ140には、インピーダンス調整パラメータNが入力される。カウンタ140は、計数値がNに達した場合に、制御信号ENのパルスを生成して、DCDCコンバータ110に入力する。制御信号ENのパルスに応じてDCDCコンバータ110が動作して、スイッチ制御信号HSonおよびLSonが生成される。カウンタ140は、計数値がNに達した場合に、スイッチ180をオン状態に制御してコンデンサ182を放電させるとともに、計数値を初期値(例えば1)に戻す。これにより、動作周期の次の期間の動作が開始する。本例によれば、小規模なアナログ回路と、高速動作を不要とするデジタル回路を用いて時間検出器170および周期制御部130を構成できるので、時間検出器170および周期制御部130の消費電力を低減できる。
【0055】
図9は、周期制御部130および時間検出器170の他の回路構成例を示す図である。本例の時間検出器170の構成は、図7の例と同様である。本例の周期制御部130は、図7の周期制御部130に対して、カウンタ140に代えてトリガ部142を有する。他の構造は、図7の例と同様である。ただし、電流源132の電流値IBおよびコンデンサ136の容量値CBの少なくとも一方は、電流源176の電流値IAおよびコンデンサ182の容量値CAと異なる。本例では、電流値IBは電流値IAより小さい。
【0056】
図10は、図9に示した昇降圧回路100の動作例を示すタイミングチャートである。時間検出器170の入出力および動作は、図8の例と同様である。スイッチ制御信号HSonおよびLSonと、スイッチ178を制御する信号は、図8の例と同様である。ただし、本例の電圧VAは、(数7)で与えられる。
【数7】
【0057】
本例の電圧VBは、動作周期の各期間の開始タイミングで基準電圧に遷移した後、電流源132の電流値IBに応じて徐々に上昇する。本例の電圧VBは、電圧VAよりも小さい傾きで上昇しており、また、サイクル時間Tswが過ぎても上昇を続ける。本例では、サイクル時間が経過した後の電圧VA(Tsw)と、動作周期の各期間の開始から周期T=N×Tswが経過したタイミングの電圧VB(N×Tsw)は、(数8)の関係を有する。
【数8】
【0058】
比較器138は、電圧VBが電圧VAより大きくなったか否かを判定する。電圧VBが電圧VAより大きくなった場合、比較器138は、スイッチ134およびスイッチ180をオン状態に制御して、コンデンサ136およびコンデンサ182を放電させる。これにより、電圧VBおよび電圧VAが基準電圧にリセットされる。電圧VBおよび電圧VAをリセットした後、スイッチ134およびスイッチ180がオフ状態に制御され、電圧VBおよび電圧VAが再度上昇する。これにより、動作周期の次の期間の動作が開始する。
【0059】
電流源132の電流値IB、コンデンサ136の容量値CB、電流源176の電流値IAおよびコンデンサ182の容量値CAは、(数8)の関係を満たすように設定される。電流源132は可変電流源であってよく、コンデンサ136は可変コンデンサであってよい。電流源132およびコンデンサ136を、(数8)の関係を満たすように設定してよい。これにより、T=N×Tswの動作周期で、DCDCコンバータ110を動作させることができ、DCDCコンバータ110の入力インピーダンスを調整できる。
【0060】
(数7)および(数8)から、インピーダンス調整パラメータNは、(数9)で与えられる。
【数9】
周期制御部130は、電流源132の電流値IBおよびコンデンサ136の容量値CBの少なくとも一方を、インピーダンス調整パラメータNに基づいて設定してもよい。これにより、インピーダンス調整パラメータNに応じて入力インピーダンスRinを調整できる。周期制御部130は、電流源176の電流値IAおよびコンデンサ182の容量値CAの少なくとも一方を、インピーダンス調整パラメータNに基づいて設定してもよい。
【0061】
図11は、本発明の一つの実施形態に係る入力インピーダンスRinの調整方法の概要を示す図である。当該調整方法では、図1から図10において説明した方法で、入力インピーダンスRinを調整する。図11に示すように、調整方法は、時間検出段階S1102、調整パラメータ取得段階S1104、および、動作周期制御段階S1106を有する。
【0062】
時間検出段階S1102では、前記充電動作および前記放出動作を1回ずつ行う場合の時間の長さを示すサイクル時間Tswを検出する。調整パラメータ取得段階S1104では、インピーダンス調整パラメータN(またはM)を取得する。動作周期制御段階S1106では、サイクル時間Tswおよびインピーダンス調整パラメータに基づいて、DCDCコンバータ110の動作周期を制御する。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0064】
100・・・昇降圧回路、110・・・DCDCコンバータ、112・・・スイッチ制御部、114・・・コイル、116・・・スイッチ、118・・・スイッチ、130・・・周期制御部、132・・・電流源、134・・・スイッチ、136・・・コンデンサ、138・・・比較器、140・・・カウンタ、142・・・トリガ部、170・・・時間検出器、172・・・TDC回路、174・・・内部スイッチ制御部、176・・・電流源、178・・・スイッチ、180・・・スイッチ、182・・・コンデンサ、200・・・電源回路、210・・電源
図1
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図11