(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024126763
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20240912BHJP
F16L 37/088 20060101ALI20240912BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L37/088
F16L21/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035376
(22)【出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西堀 慎一
(72)【発明者】
【氏名】上森 康大
(72)【発明者】
【氏名】高田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】北山 晃平
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 雄太
【テーマコード(参考)】
3H015
3J106
【Fターム(参考)】
3H015JA02
3J106AA02
3J106AA04
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE24
3J106BE31
3J106CA16
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC01
3J106EC06
3J106ED04
3J106ED08
3J106ED14
3J106EE02
3J106FA01
3J106FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】継手本体の内周面に形成された係止溝と、押ナットの外周面に形成された環状溝とに跨るように係合して継手本体内に押ナットを抜け止め状態に挿入接続するストップリングを有する管継手に関し、1本の弾性リングにより、押ナットの抜け止め保持とフレキ管の接続完了確認ができるようして継手のサイズを小型化すること。
【解決手段】環状溝(21)の幅をストップリング(3)の線径よりも大きくし、継手本体(1)に係止溝(14)に連通する切欠部(40)を形成し、係止溝(14)に係合させたストップリング(3)に押ナット(2)の環状溝(21)の入口側側面(21a)を当接させるフレキ管の接続完了時及び接続完了時のフレキ管を抜き方向に引っ張ってストップリング(3)に奥側側面(21b)を当接させるフレキ管の接続完了確認時のストップリング(3)と環状溝(21)の一部分とを切欠部(40)から目視可能とした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキ管が挿入される押ナットと、
前記押ナットが挿入口から挿入される継手本体と、
前記継手本体内にて前記押ナットの挿入方向前端部に当接すると共に前記フレキ管に係合するリテーナと、
拡縮自在なC型弾性リングであって、前記継手本体の内周面に周方向全域に形成される係止溝と、前記係止溝に対応する前記押ナットの外周面に周方向全域に形成される環状溝とに跨るように係合して、前記押ナットを前記継手本体に対して抜け止め状態に保持するストップリングとを備え、
前記環状溝の幅は前記ストップリングの線径よりも大きく形成されており、
前記継手本体内への押ナットの挿入接続時及び前記押ナットの入口側からフレキ管を挿入したフレキ管の接続完了時には、前記係止溝内に係合状態にある前記ストップリングに、前記環状溝内で相互に対向している環状側面のうち、押ナットの前記入口側に位置する入口側側面が当接し、
前記接続完了時のフレキ管を抜き方向に引っ張ったフレキ管の接続完了確認時には、前記環状溝内の前記入口側側面に対向する奥側側面が前記ストップリングに当接するまで前記押ナットは抜き方向に移動し、
前記継手本体の外周面の所定範囲を切り欠いて、前記係止溝に連通する切欠部が形成され、
前記フレキ管の接続完了時及び前記フレキ管の接続完了確認時の前記ストップリングと前記環状溝の一部を前記切欠部から目視可能とした管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の管継手において、前記切欠部は、前記継手本体の挿入口に開放する形状とした管継手。
【請求項3】
請求項2に記載の管継手において、前記環状溝の環状底部における幅方向の中間部に環状小凸部が設けられ、
押ナットの継手本体への挿入接続時及びフレキ管の接続完了確認時に、前記ストップリングは、前記環状小凸部を超えて、環状溝内を軸線方向に移動可能とした管継手。
【請求項4】
請求項3に記載の管継手において、前記切欠部は、前記係止溝に連通する切欠開放部と、その周方向両側に位置する前記継手本体の切欠面とから構成され、
前記切欠面は、前記継手本体の外周円に対する接線に平行となるように形成されている管継手。
【請求項5】
請求項4に記載の管継手において、前記切欠部は、前記継手本体の外周面の複数個所に設けるようにした管継手。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の管継手において、
拡縮自在なC型弾性リングであって、前記継手本体の前記係止溝より奥側内周面に周方向全域に形成される複数の奥側係止溝と、前記奥側係止溝に対応する前記押ナットの外周面の周方向全域に形成される奥側環状溝とに跨るように係合して前記押ナットを抜け止め状態に保持する第2ストップリングが設けられ、
前記奥側係止溝は、前記継手本体の挿入口側から順に相互に連通するように位置する第1、第2、第3係止溝を有すると共に、前記第2ストップリングを前記継手本体の軸線方向に移動させた各位置で各々に係止可能となり、
前記第1、第2係止溝は前記第2ストップリングの線径よりも浅く形成されていると共に、最も奥に位置する前記第3係止溝は前記第2ストップリングの線径以上の深さに形成されており、
前記奥側環状溝は、前記第2ストップリングの線径以上の深さに形成されている管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手、特に、フレキシブル管を接続するための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス配管等として使用されるフレキシブル管(以下、フレキ管という)をワンタッチで接続可能な管継手として、特許文献1に開示のものが知られている。このものは、フレキ管が挿入される押ナットと、押ナットが抜け止め状態に挿入接続される継手本体とからなり、押ナットの外周面には外方に開放する複数の環状溝が周方向全域に形成されていると共に、継手本体の内周面には内方に開放する複数の係止溝が周方向全域に形成されている。これら押ナットの所定の環状溝と継手本体の所定の係止溝とが一致した状態にて、両者に跨るように係合するストップリングにより、押ナットは継手本体に抜け止め状態に接続される。
【0003】
また、押ナットの挿入方向の前方には、フレキ管に係合するリテーナが設けられていると共に、押ナットが挿入される継手本体の挿入口近傍には、インジケータリングが押ナットに外嵌している。
インジケータリングは、継手本体内に押ナットが組付けられた状態の時、及び、この状態にある押ナット内にフレキ管を挿入したフレキ管の接続完了時においては、継手本体内に隠蔽されており、外からは見えない構造となっている。
【0004】
その後、フレキ管が正しく接続されているかを確認するために、フレキ管を引き抜く方向(以下、抜き方向という。)に引っ張ると、フレキ管によってリテーナが同方向に移動し、前記リテーナに押されて押ナットも同方向に移動し、さらに、押ナットの移動に伴って、ストップリングも、所定の係止溝から、それよりも挿入口側に連通状態に位置する他の係止溝へ移動して係合する。これが、フレキ管の接続完了確認時の様子であり、押ナットは継手本体に抜け止め状態に保持されると共に、押ナットの抜き方向へ移動に伴って、インジケータリングが継手本体の挿入口から露出し目視可能となる。これにより、フレキ管が管継手に正常に接続されていることを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の管継手では、ストップリングとインジケータリングの二つのリングが設けられ、インジケータリングはフレキ管の接続完了確認用として、ストップリングは押しナットの抜け止め保持用としての機能を有するものであるため、継手には二つのリングが必要となり、それらを収容するスペースが必要となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、1本の弾性リングにより、押ナットの抜け止め保持とフレキ管の接続完了確認ができるようにし、継手のサイズを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための技術的手段は、
フレキ管が挿入される押ナットと、
前記押ナットが挿入口から挿入される継手本体と、
前記継手本体内にて前記押ナットの挿入方向前端部に当接すると共に前記フレキ管に係合するリテーナと、
拡縮自在なC型弾性リングであって、前記継手本体の内周面に周方向全域に形成される係止溝と、前記係止溝に対応する前記押ナットの外周面に周方向全域に形成される環状溝とに跨るように係合して、前記押ナットを前記継手本体に対して抜け止め状態に保持するストップリングとを備え、
前記環状溝の幅は前記ストップリングの線径よりも大きく形成されており、
前記継手本体内への押ナットの挿入接続時及び前記押ナットの入口側からフレキ管を挿入したフレキ管の接続完了時には、前記係止溝内に係合状態にある前記ストップリングに、前記環状溝内で相互に対向している環状側面のうち、押ナットの前記入口側に位置する入口側側面が当接し、
前記接続完了時のフレキ管を抜き方向に引っ張ったフレキ管の接続完了確認時には、前記環状溝内の前記入口側側面に対向する奥側側面が前記ストップリングに当接するまで前記押ナットは抜き方向に移動し、
前記継手本体の外周面の所定範囲を切り欠いて、前記係止溝に連通する切欠部が形成され、
前記フレキ管の接続完了時及び前記フレキ管の接続完了確認時の前記ストップリングと前記環状溝の一部を前記切欠部から目視可能としたことを特徴とする管継手である。
【0009】
上記技術的手段は次のように作用する。
ストップリングを、継手本体の係止溝と押ナットの環状溝との間に跨るように介在させることにより、押ナットは継手本体内に抜け止め状態に取り付けられる。これには、押ナットを継手本体に挿入し、押ナットの環状溝と継手本体の係止溝とが一致したときに、環状溝と係止溝との間に形成される環状空間部に、C型弾性リングであるストップリングの一方の開放端を、前記係止溝に連通している切欠部から差し込み、前記ストップリングを前記切欠部から前記環状空間部内に沿わせて挿入する。前記ストップリングの他方の開放端まで前記環状空間部内に挿入させると、継手本体内に押ナットが抜け止め状態に挿入接続された状態となる。
なお、係止溝の幅をストップリングの線径に略一致する大きさに形成しておけば、係止溝内に挿し込まれたストップリングは継手部材内にて位置決めされた状態となる。
【0010】
この状態にて、押ナットを継手本体内に押し込むと、前記継手本体の係止溝に係合して位置決め状態にあるストップリングに、押ナットの環状溝の入口側側面が当接した時点でそれ以上の挿入は阻止され、押ナットと継手本体とは組立完了状態となる。継手本体内に挿入された押ナットにフレキ管を挿入し、フレキ管がリテーナによって抜け止め状態に係止された状態がフレキ管の接続完了時である。
前記フレキ管の接続完了時のフレキ管を抜き方向に引っ張ると、それに伴い、リテーナも抜き方向に移動し、リテーナに押されて押ナットも抜き方向に移動する。このとき、環状溝の入口側側面に当接していたストップリングは、係止溝内に係合したまま、環状溝内を移動し、環状溝の奥側側面に当接した時点で、押ナットのそれ以上の引っ張りは阻止される。ストップリングの移動距離分、前記押ナットは前記継手本体の挿入口から引き出された状態が、フレキ管の接続完了確認時である。
なお、ストップリングは、前記切欠部から常時目視確認可能であり、環状溝の入口側側面又は奥側側面がストップリングに当接している様子や、もしくは、環状溝のうち前記入口側側面寄りの環状底部の一部又は奥側側面寄りの環状底部の一部がストップリングに続いて切欠部から目視可能となる。
【0011】
接続状態にある継手本体と押ナットとを分解するには、切欠部に工具等を挿入し、切欠部内に露出しているストップリングの一部分を工具で支持しながら、少なくとも一方の開放端が前記切欠部内に現れるまでストップリングを環状溝に沿って回す。そして、前記切欠部内に現れた開放端を切欠部の外方へ引っ張り出せば、ストップリングを取り外すことができる。これにより、押ナットを継手部材から取り出すことができる。
フレキ管と継手の接続に不具合があった場合には、継手本体と押ナットとを分離可能とすることで、フレキ管から継手本体、押ナット及びリテーナを取り外すことができるので、フレキ管を再使用することができる。
【0012】
上記管継手において、
前記切欠部は、前記継手本体の挿入口に開放する形状であることが好ましい。
前記切欠部を継手本体の挿入口に開放させることにより、切欠部の軸線方向の幅を大きく設定することができるから、前記切欠部を介して、前記フレキ管の接続完了確認時に環状溝の入口側側面寄りの環状底部が目視確認し易くなる。また、ストップリングが係止溝に係止していることも容易に目視確認可能となる。さらには、切欠部を介して、ストップリングを工具で回したり、開放端を引っ張り出したりする作業がやり易くなる。
【0013】
上記管継手において、
前記環状溝の環状底部における幅方向の中間部に環状小凸部が設けられ、
押ナットの継手本体への挿入接続時及びフレキ管の接続完了確認時に、前記ストップリングは、前記環状小凸部を超えて、環状溝内を軸線方向に移動可能であることが好ましい。
押ナットの継手本体への挿入接続時及びフレキ管の接続完了確認時に、ストップリングが前記環状小凸部を乗り越えて、環状溝内を軸線方向に移動するので、ストップリングが前記環状小凸部を乗り越える際の感触が手に伝わる。よって、押ナットが継手本体に確実に接続されていること、また、フレキ管が確実に接続完了していることを手に伝わる感触でより一層確実に且つ容易に認識することができる。
【0014】
上記管継手において、
前記切欠部は、前記係止溝に連通する切欠開放部と、その周方向両側に位置する前記継手本体の切欠面とから構成され、
前記切欠面は、前記継手本体の外周円に対する接線に平行となるように形成されていることが好ましい。
継手本体の挿入口近傍を、その外周円に対する接線に平行な切込みを有する形状に切り欠くだけで切欠部を形成することができるようにしたから、継手本体に加工を施し易い。また、前記切欠面は前記切欠開放部の開放端と同じ高さに位置する態様となっているから、前記切欠開放部内に露出させたストップリングの開放端を、前記切欠面に沿うように切欠部の側方へ引っ張り出すことができるので、ストップリングが取り外し易い。よって、継手本体と押ナットとの分解作業が一層容易となる。
【0015】
上記管継手において、
前記切欠部は、前記継手本体の外周面の複数個所に設けられていることが好ましい。
複数の切欠部からストップリングと環状溝の一部を目視確認できるから、フレキ管の接続完了確認時に目視確認が一層行い易くなる。
【0016】
上記管継手において、
拡縮自在なC型弾性リングであって、前記継手本体の前記係止溝より奥側内周面に周方向全域に形成される複数の奥側係止溝と、前記奥側係止溝に対応する前記押ナットの外周面の周方向全域に形成される奥側環状溝とに跨るように係合して前記押ナットを抜け止め状態に保持する第2ストップリングが設けられ、
前記奥側係止溝は、前記継手本体の挿入口側から順に相互に連通するように位置する第1、第2、第3係止溝を有すると共に、前記第2ストップリングを前記継手本体の軸線方向に移動させた各位置で各々に係止可能となり、
前記第1、第2係止溝は前記第2ストップリングの線径よりも浅く形成されていると共に、最も奥に位置する前記第3係止溝は前記第2ストップリングの線径以上の深さに形成されており、
前記奥側環状溝は、前記第2ストップリングの線径以上の深さに形成されていることが好ましい。
このものでは継手のサイズをほぼ従来のサイズに維持し、押ナットの抜け止め構造を二重構造とすることができる。
なお、押ナットの奥側環状溝は第2ストップリングの線径以上の深さを有するように設定されているから、前記奥側環状溝内に第2ストップリングを縮径させて収容すれば、押ナットを継手本体の挿入口から挿入することができる。前記奥側環状溝が継手本体の複数の奥側係止溝のうち、挿入口寄りの第1係止溝に対向した時点で、第2ストップリングは弾性復帰して両者に跨るように係止され、押ナットは継手本体に抜け止め状態に保持される。
また、ストップリングを取り外した後に、押ナットを再度押し込んで、第2ストップリングを、その弾性復帰力により、前記第3係止溝内に収容させれば、押ナットと継手本体との間に、両者を抜け止め状態に保持する手段が消失するから、押ナットは引き抜き可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
フレキ管を抜き方向に引っ張って押ナットを継手本体から所定長さ引っ張り出したフレキ管の接続完了確認時には、切欠部から、係止溝に係合状態にあるストップリングと、環状溝の入口側側面寄りの環状底部の一部とが目視可能となるから、継手本体に正常に接続された状態にある押ナットに、フレキ管が問題なく接続完了したことを目で確認することができる。
また、従来のインジケータリングを別途設ける必要がないから、部品点数を削減することができ、構造を簡略化し、継手を小型化することができる。
さらに、ストップリングは切欠部から取り外し可能としたから、前記ストップリングを取り外すことにより、継手本体から押ナット及びリテーナと共にフレキ管を取り外すことができる。このように、ストップリングを取り外すことで、継手本体内の組み込み部品を取り外すことができるので、フレキ管は再利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明実施の形態の管継手の一部切欠断面図である。
【
図2】本発明実施の形態の管継手の要部拡大断面図である。
【
図3】本発明実施の形態の管継手の押ナット側からの側面図である。
【
図4】本発明実施の形態の管継手の、フレキ管の接続完了時の様子を示す一部切欠断面図である。
【
図5】本発明実施の形態の管継手の、フレキ管の接続完了確認時の様子を示す一部切欠断面図である。
【
図6】本発明の他の実施の形態の管継手からストップリングを引き出す様子を示す説明図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施の形態の管継手の要部拡大断面図であり、(A)はフレキ管の接続完了時の様子とそのさらに要部の拡大断面図を示しており、(B)はフレキ管の接続完了確認時の様子を示している。
【
図8】本発明のさらに他の実施の形態の管継手の要部拡大断面図である。
【
図9】
図8に示した管継手の組立完了状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すものは、ガス配管として利用されるフレキ管が接続される管継手の一部切欠断面図であり、押ナット(2)が継手本体(1)に対して、挿入の行き止まりとなる最終差込位置に達するまで挿し込まれた組立完了状態を示している。
図2は、押ナット(2)が上記組立完了状態に達する前の管継手の要部拡大断面図である。
この管継手は、継手本体(1)と押ナット(2)とがストップリング(3)により抜け止め状態に接続されている。
【0020】
継手本体(1)は、
図1に示すように、一方の開放端(図面では左側方)である挿入口(10)から押ナット(2)が挿入される筒部材であり、継手本体(1)内における押ナット(2)の挿入方向前方には、リテーナ(5)、パッキン部材(6)、及び、コイルバネ(70)やスライド部材(71)を有する弾性部材(7)が順に収容されている。なお、他方の開放端側は、雄ネジ筒部(19)となっている。
また、押ナット(2)の外周面が対向する継手本体(1)の挿入口(10)の近傍の内周面には、
図1及び
図2に示すように、ストップリング(3)を係止させるための係止溝(14)が周方向全域に形成されている。
係止溝(14)の深さは、ストップリング(3)の線径よりも浅く形成されていると共に、その幅は、前記線径に略一致する大きさに形成されている。
【0021】
そして、
図3に示すように、継手本体(1)の挿入口(10)における直径方向の両端に位置する2箇所を、係止溝(14)に連通するように、継手本体(1)の外周円に対する接線(L)に平行に切り欠く。これにより、係止溝(14)に連通し且つ挿入口(10)に開放する切欠部(40)が形成される。
切欠部(40)は、係止溝(14)に連通する切欠開放部(41)と、その周方向両側に同一面上に位置する継手本体(1)の切欠面(42)と、切欠面(42)に対して直角に位置する円弧状切欠面(43)とからなり、このような切欠部(40)は、継手本体(1)を挿入口(10)から接線(L)に平行に切り欠くと共に円弧状切欠面(43)が形成されるように垂直に切込みを入れるだけで形成可能であるから、継手本体(1)の加工が容易である。
【0022】
上記構成の継手本体(1)の挿入口(10)から挿入される押ナット(2)は、
図1及び
図2に示すように、挿入方向前端面が、外周面に向かって拡径するテーパ面(25)であり、押ナット(2)の外周面には継手本体(1)の係止溝(14)に対向する位置に環状溝(21)が周方向全域に渡って形成されている。環状溝(21)は、ストップリング(3)の線径よりも浅く形成されていると共に、その幅は、前記線径の2倍以上に設定されている。
また、環状溝(21)よりも奥側には、合成ゴム製のOリング(30)を収容するOリング収容溝(23)が形成されている。
【0023】
継手本体(1)内には、上記したように、予め、弾性部材(7)、パッキン部材(6)及びリテーナ(5)が奥から順に収容されており、継手本体(1)に押ナット(2)を抜け止め状態に接続するには、押ナット(2)を継手本体(1)内に挿入し、
図2に示すように、押ナット(2)の環状溝(21)を継手本体(1)の係止溝(14)に対向させる。環状溝(21)が係止溝(14)に対向したかどうかは、係止溝(14)に連通する切欠部(40)の切欠開放部(41)から目視確認することができる。
【0024】
切欠部(40)の切欠開放部(41)から押ナット(2)の環状溝(21)が目視確認でき、環状溝(21)と係止溝(14)によって環状空間部(20)が形成された状態で、C型弾性リングからなるストップリング(3)の一方の開放端(33)を切欠部(40)を介して環状空間部(20)に挿入して、ストップリング(3)を切欠部(40)から環状空間部(20)に沿わせて挿入していく。ストップリング(3)が、他方の開放端まで環状空間部(20)内に収容された状態が、押ナット(2)が継手本体(1)に対して抜け止め状態に取り付けられた状態である。
【0025】
上記したように、係止溝(14)の幅はストップリング(3)の線径に略一致させているから、係止溝(14)に係合されたストップリング(3)は継手本体(1)内にて位置決めされた状態となる。これに対し、環状溝(21)の幅は、ストップリング(3)の線径より長く設定してあるから、押ナット(2)は、環状溝(21)内にて相互に対向する環状側面の各々がストップリング(3)に当接する範囲内で進退可能となる。
すなわち、
図2の状態から、さらに、押ナット(2)を挿入方向へ押し進めると、環状溝(21)を構成する前記環状側面うち、後述するフレキ管が差し込まれる入口側(22)に位置する入口側側面(21a)が、係止溝(14)に係合状態にあるストップリング(3)に当接するまで押ナット(2)は継手本体(1)内へ挿入可能となり、ストップリング(3)に入口側側面(21a)が当接した時点で、継手本体(1)内への押ナット(2)のそれ以上の挿入が阻止される。この状態にて、ストップリング(3)は係止溝(14)と環状溝(21)とに跨るように係止され、
図1に示す、押ナット(2)が継手本体(1)に対して抜け止め状態に接続された組立完了状態となる。なお、テーパ面(25)の前端部(25a)はリテーナ(5)に当接している。
【0026】
上記組立完了状態にあり、フレキ管が接続される前の管継手では、弾性部材(7)のコイルバネ(70)は圧縮されたロック状態にあり、また、コイルバネ(70)の内側にセットされているスライド部材(71)と継手本体(1)の雄ネジ筒部(19)の基端部(18)との間には所定の隙間が形成されている。
【0027】
上記組立完了状態にある押ナット(2)へのフレキ管(100)の接続動作は次のとおりである。
フレキ管(100)は、
図4に示すように、金属製のコルゲート管(101)を軟質樹脂製のカバー(102)で被覆させたものであり、押ナット(2)の開放端近傍にカバー(102)が差し込まれると共にそれよりも奥側には、コルゲート管(101)のみが挿入される。
【0028】
コルゲート管(101)の先端で弾性部材(7)のスライド部材(71)が、継手本体(1)の雄ネジ筒部(19)の基端部(18)に達するまで押し込まれると、コイルバネ(70)の前記ロック状態が解除され、コイルバネ(70)の弾性復帰力によって、パッキン部材(6)がフレキ管(100)の挿入方向と逆の方向に押されると共に、パッキン部材(6)によって、リテーナ(5)が押ナット(2)のテーパ面(25)に押し付けられる。これにより、リテーナ(5)は内方に曲げられて、内側先端の爪部(51)がコルゲート管(101)の谷部に係合する。これが、
図4に示す、フレキ管(100)がリテーナ(5)によって抜け止め状態に係止された接続完了時の様子である。
【0029】
このとき、ストップリング(3)は、
図1及び
図4に示した係止状態のままであり、継手本体(1)内に位置するものの、係止溝(14)に連通するように切り欠かれた切欠部(40)の切欠開放部(41)に露出しており目視可能となっている。
【0030】
フレキ管(100)が確実に接続完了状態となっているかを確認するために、
図4に示すフレキ管接続完了時のフレキ管(100)を抜き方向に引っ張る。すると、それに伴って、爪部(51)がコルゲート管(101)の谷部に係合されているリテーナ(5)が抜き方向に移動し、リテーナ(5)の移動によって押ナット(2)が抜き方向に移動する。そして、
図5に示すように、押ナット(2)の環状溝(21)の前記環状側面のうち、奥側に位置する奥側側面(21b)がストップリング(3)に当接すると、押ナット(2)の抜き方向の移動が阻止される。この状態が、フレキ管の接続完了確認時の状態であり、環状溝(21)内にて奥側側面(21b)寄りに位置するストップリング(3)と、環状溝(21)の入口側側面(21a)寄りの環状底部の一部が、切欠部(40)の切欠開放部(41)から目視確認可能となる。
【0031】
環状溝(21)の幅を、ストップリング(3)の線径の2倍以上に設定すると、前記フレキ管の接続完了確認時にて、環状溝(21)の奥側側面(21b)に当接しているストップリング(3)から入口側側面(21a)までの長さは、ストップリング(3)の線径以上になり、この長さに相当する環状溝(21)の環状底部が切欠部(40)から目視可能となる。
【0032】
このように、フレキ管(100)を抜き方向に引っ張ったフレキ管の接続完了確認時には、
図5に示すように、継手本体(1)の切欠部(40)から、環状溝(21)の入口側側面(21a)寄りの環状底部が目視できると共に、ストップリング(3)が係止溝(14)と環状溝(21)との間にて係合状態にあることも目視可能となる。
【0033】
上記したような継手本体(1)と押ナット(2)とがストップリング(3)で抜け止め状態に接続された管継手において、継手本体(1)と押ナット(2)との接続個所に不具合が生じたり、どちらか一方に欠陥があったりした場合等、組立完了状態にある継手本体(1)と押ナット(2)とを分離させたい場合がある。そのような場合、専用の工具(図示せず)を切欠部(40)の切欠開放部(41)に露出しているC型弾性リングであるストップリング(3)の外周の一部分に押し当て、ストップリング(3)を押ナット(2)の環状溝(21)に押しつけながら、少なくとも一方の開放端(33)が切欠開放部(41)内に現れるまで、ストップリング(3)と押ナット(2)を一体的に周方向に回す。
【0034】
ストップリング(3)の一方の開放端(33)が、切欠開放部(41)内に現れた時点で、
図3の二点鎖線に示すように、この開放端(33)を切欠部(40)の外方へ引っ張り出す。この実施の形態では、継手本体(1)を外周円に対する接線(L)に平行に切り欠くことにより、同図に示すように、一方の切欠部(40)を垂直方向の上向き姿勢としたとき、切欠開放部(41)の両側に、切欠開放部(41)の開放端と同じ高さの切欠面(42)が水平に位置する態様となるから、専用の工具でストップリング(3)の開放端(33)を引き出す際に、水平な切欠面(42)に沿わせて継手本体(1)の側方へ引っ張れば、ストップリング(3)をスムーズに取り外すことができる。
【0035】
なお、切欠部(40)の切欠面(42)は、必ずしも、同一面上に位置する水平面とする必要はなく、
図6に示すように、係止溝(14)の円弧に対して角度が鋭角になるように斜めに切り欠いてなる傾斜面(421)としても良い。
周方向両側に設けた切欠面を継手本体(1)の外周面に向かって相互に離反する方向に傾斜した逆ハの字形状の傾斜面(421)とすることにより、切欠開放部(41)内に露出させたストップリング(3)の開放端(33)を、傾斜面(421)に沿って引っ張り上げることができるので、ストップリング(3)の取り外しが容易となる。
【0036】
上記要領でストップリング(3)を取り外した後には、継手本体(1)と押ナット(2)との間に、両者を抜け止め状態に係止する部材が消失した状態となるから、押ナット(2)は継手本体(1)から引き抜き可能となる。こうして、フレキ管(100)の接続の有無にかかわらず、継手本体(1)と押ナット(2)とを分離することが可能となる。
【0037】
また、本発明の実施の形態のものでは、切欠部(40)を継手本体(1)の直径方向の両端に一つずつ形成しており、ストップリング(3)を引き抜く際には、ストップリング(3)の開放端(33)を、2つの切欠部(40)のどちらか一方に露出させればよいから、ストップリング(3)の回動角度は小さくて良く、ストップリング(3)の取出し作業が一層容易となる。
また、フレキ管の接続完了確認において、どちらの切欠部(40)からも環状溝(21)及びストップリング(3)の係合状態を目視確認することができ、接続完了状態を確認しやすい。
【0038】
図7に示すものは、環状溝(21)の他の例を示しており、環状溝(21)の環状底部(210)における幅方向の略中間部に、断面三角形状の環状小凸部(31)を突設させたものである。環状小凸部(31)は、押ナット(2)に押されたストップリング(3)が乗り越え可能な高さに設定されており、環状小凸部(31)によって、環状溝(21)は、入口側側面(21a)寄りの部分と、奥側側面(21b)寄りの部分とに二分される構成となる。
【0039】
例えば、同図の(B)に示すように、押ナット(2)の環状溝(21)と、継手本体(1)の係止溝(14)とで形成される環状空間部(20)のうち、奥側側面(21b)寄りの部分に、ストップリング(3)を挿入させた状態から、押ナット(2)をさらに押し込んで、同図の(A)に示す、押ナット(2)と継手本体(1)との組立完了状態とする際、また、この状態にある押ナット(2)にフレキ管(図示せず)を挿入させたフレキ管接続完了時から、フレキ管(100)を引っ張って、同図の(B)に示す、フレキ管接続完了確認時とする際に、ストップリング(3)は、環状小凸部(31)を超えて、環状溝(21)内を軸線方向に移動する。
【0040】
このように、押ナット(2)を継手本体(1)に挿入するとき、また、押ナット(2)に挿入したフレキ管を継手本体(1)から引き出すときに、ストップリング(3)が環状小凸部(31)を乗り越える際の感触が手に伝わり認識される。すなわち、押ナット(2)と継手本体(1)との組立完了時、押ナットの継手本体への接続完了時、さらに、フレキ管の接続操作完了確認時を手に伝わる感触で容易に且つ確実に認識することができる。
【0041】
図8及び
図9に示すものは、継手本体(1)における係止溝(14)の奥側内周面の周方向全域に、相互に連通する複数の溝からなる奥側係止溝(15)を設けると共に、奥側係止溝(15)に対応する押ナット(2)の外周面に奥側環状溝(26)を周方向全域に形成したもので、これら奥側係止溝(15)と奥側環状溝(26)との間に跨るように、第2ストップリング(32)を設ける構成としたものである。なお、奥側環状溝(26)は、Oリング(30)を収容している環状溝(23)よりもさらに奥側に設けられている。
【0042】
奥側係止溝(15)は、継手本体(1)の挿入口(10)側から順に位置し相互に連通する第1~第3係止溝(11)(12)(13)からなり、挿入口(10)寄りの第1、第2係止溝(11)(12)は第2ストップリング(32)の線径よりも浅く、最も奥に位置する第3係止溝(13)は第2ストップリング(32)の線径以上の深さに形成されている。
また、奥側環状溝(26)は第2ストップリング(32)の線径以上の深さに形成されてある。
【0043】
この実施の形態では、押ナット(2)の継手本体(1)への取付けは、第2ストップリング(32)を押ナット(2)の第2環状溝(26)内に縮径させて収容し、その状態で押ナット(2)を継手本体(1)の挿入口から挿入する。
図8に示すように、第2環状溝(26)が継手本体(1)の第1係止溝(11)に対向した時点で、第2ストップリング(32)は弾性復帰して両者に跨るように係止される。
この状態で、ストップリング(3)を切欠部(40)から環状溝(21)と係止溝(14)によって形成された環状空間部(20)に沿わせて挿入する。ストップリング(3)の挿入後、押ナット(2)を継手本体(1)内に押し込むと、ストップリング(3)には、
図9に示すように、環状溝(21)の入口側側面(21a)が当接し、その時点で、継手本体(1)への押ナット(2)のそれ以上の挿入が阻止され、ストップリング(3)は係止溝(14)と環状溝(21)とに跨るように係止される。このとき、第2ストップリング(32)は第2係止溝(12)に移動しており、両者間に跨るように係止されている。この状態が、押ナット(2)が継手本体(1)に対して抜け止め状態に接続された組立完了状態となる。
【0044】
なお、図示しないが、
図9に示す組立完了状態にある押ナット(2)にフレキ管を挿入してフレキ管の接続完了状態とした後、フレキ管を抜き方向に引っ張ったフレキ管の接続完了確認時には
図8の状態に戻る。この状態にて、押ナット(2)は、ストップリング(3)と第2ストップリング(32)とで二重に抜け止め状態に保持される。このように、この実施の形態のものでは、継手のサイズをほぼ従来のサイズに維持した状態で、押ナット(2)の抜け止め構造を二重構造とすることができる。
【0045】
この実施の形態において、継手本体(1)と押ナット(2)とを分離させたい場合、まず、上述したように、切欠部(40)の切欠開放部(41)内に専用の工具(図示せず)を差し込み、C型弾性リングであるストップリング(3)の一部分を工具で支持しながら周方向に回し、ストップリング(3)の一方の開放端(33)が、切欠開放部(41)内に現れた時点で、この開放端(33)を切欠部(40)の外方へ引っ張り出して、ストップリング(3)を取り外す。
次に、押ナット(2)を継手本体(1)内へさらに押し込んで、第2ストップリング(32)を第3係止溝(13)に対応させると、第2ストップリング(32)はその弾性力により第3係止溝(13)に嵌り込む。これにより、継手本体(1)に対する押ナット(2)の抜け止めが解除されるから、この状態で、押ナット(2)を引き出せば、継手本体(1)から押ナット(2)を分離でき、リテーナ(5)、パッキン部材(6)、及び、コイルバネ(70)やスライド部材(71)を有する弾性部材(7)を取り外すことができる。
【符号の説明】
【0046】
(1) ・・・・・・・・継手本体
(2) ・・・・・・・・押ナット
(3) ・・・・・・・・ストップリング
(5) ・・・・・・・・リテーナ
(10)・・・・・・・・挿入口
(14)・・・・・・・・係止溝
(21)・・・・・・・・環状溝
(21a) ・・・・・・・入口側側面
(21b) ・・・・・・・奥側側面
(25a) ・・・・・・・挿入方向前端部
(40)・・・・・・・・切欠部
(100) ・・・・・・・フレキ管